JP3663804B2 - フォトレジスト現像廃液の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体、液晶、プリント基板等の電子部品等の製造工程等で発生するフォトレジスト及びテトラアルキルアンモニウムイオンを含有するフォトレジスト現像廃液の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体、液晶、プリント基板等の電子部品等を製造するには、ウェハー等の基板上にネガ型又はポジ型のフォトレジストの皮膜を形成し、パターンマスクを通して光等を照射し、次いで現像液により不要のフォトレジストを溶解して現像し、更にエッチング等の処理を行った後、基板上の不溶性のフォトレジスト膜を剥離しなければならない。フォトレジストは、露光部分が可溶性となるポジ型と露光部分が不溶性となるネガ型があり、ポジ型フォトレジストの現像液としてはアルカリ現像液が主流であり、ネガ型フォトレジストの現像液としては有機溶剤系現像液が主流であるが、アルカリ現像液を用いるものもある。
【0003】
上記アルカリ現像液としては、通常、水酸化テトラアルキルアンモニウム(テトラアルキルアンモニウムヒドロオキシド)の水溶液が用いられる。従って、かかる現像工程から排出される廃液(「フォトレジスト現像廃液」又は「フォトレジストアルカリ現像廃液」と言い、以下単に「現像廃液」と略称することもある)には、通常、溶解したフォトレジストとテトラアルキルアンモニウムイオンが含有されている。ここで、テトラアルキルアンモニウムイオンは、上述したことより明らかな通り、通常は水酸化物イオン(ヒドロオキシドイオン、即ち、OH- )を対イオンとする水酸化テトラアルキルアンモニウムの形であるが、廃液(廃水)は工場によって異なってくるものであり、何が混入してくるか分からず、また、場合によっては他の廃水と混合されることがあり得るので、少なくとも一部のテトラアルキルアンモニウムイオンは他種のイオンを対イオンとする塩の形の場合もあり得る。従って、本明細書中の一般的な説明では対イオンを特定せず、「イオン」と言う概念で捉えたものとするが、廃液中のテトラアルキルアンモニウムイオンのは、上述のように、通常は水酸化テトラアルキルアンモニウムとして存在するので、これを中心として本発明を説明する。
【0004】
従来、かかるフォトレジスト及びテトラアルキルアンモニウムイオンを含有するフォトレジスト現像廃液を処理するには、蒸発法や逆浸透膜法により濃縮し廃棄処分する方法、活性汚泥により生物分解処理し放流する方法が知られている。また、上記のようにして得た濃縮廃液あるいはもともとテトラアルキルアンモニウムイオン濃度の高い濃厚廃液については、電気透析法や電解法によりテトラアルキルアンモニウムイオンを好ましくは水酸化物の形(電解法では必然的に水酸化物の形となる)で回収し、再利用するといった試みがなされている。
【0005】
現像廃液を活性汚泥により生物分解処理する方法は、テトラアルキルアンモニウムイオンの生物分解性が悪く、また、他の有機物成分が廃液に混在しており、該他の有機物成分の方が生物分解性が良い場合は、該他の有機成分を分解する微生物の方の増殖が活発となり、テトラアルキルアンモニウムイオンを分解する微生物の増殖が不活発となり、テトラアルキルアンモニウムイオンを分解する微生物を有効に保持するためには大規模な処理施設が必要となる。
【0006】
このため、中濃度から高濃度の現像廃液は蒸発法や逆浸透膜法によりアルカリ可溶性のフォトレジストとテトラアルキルアンモニウムイオンを濃縮した後、濃縮廃液は廃棄処分(焼却又は業者引取)せざるを得ず、廃棄処分のためのコストが莫大なものとなっている。
【0007】
一方、電気透析や電解によりテトラアルキルアンモニウムイオンを好ましくは水酸化物の形(電解法では必然的に水酸化物の形となる)で回収する方法が公害対策や資源の有効活用等の点でベストであるため、これらの方法の研究開発が進み、現像液として再利用できる程度に高純度の水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液を回収可能な方法や装置も提案されている(特開平5−17889号公報、特開平7−328642号公報、特願平8−263793号、特願平8−324867号、特願平8−352594号)。しかし、電気透析後の脱塩液(テトラアルキルアンモニウムイオンが希薄となった液)や電解後の陽極液(脱塩液)中には、依然として水酸化テトラアルキルアンモニウムが約100ppm〜約1000ppmで含まれており、場合によっては、約1000ppm〜約5000ppmで含まれることもあり、フォトレジストについては、電気透析又は電解処理前の現像廃液又は前段で中和処理やイオン交換体接触処理(例えば、陰イオン交換体接触処理)などの何らかの処理を行なった場合はその処理液(以下、これらの電気透析や電解の被処理液を「原廃液」と言うこともある)中の濃度と同程度含まれるといった問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、フォトレジスト及びテトラアルキルアンモニウムイオンを含有するフォトレジスト現像廃液の上述のような従来の処理方法の欠点を解消し、低コストで効果的なフォトレジスト現像廃液の処理方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フォトレジスト及びテトラアルキルアンモニウムイオンを主として含有するフォトレジスト現像廃液を処理するに当たって、前記フォトレジスト現像廃液又は前記フォトレジスト現像廃液に由来する処理液を電気透析及び電解の少なくとも一方の方法で処理してテトラアルキルアンモニウムイオンの濃縮液と脱塩液とに分離する工程、及び前記脱塩液又は前記脱塩液に由来する処理液を、必要に応じてpH調整し、生物処理を行う工程とを含むことを特徴とするフォトレジスト現像廃液の処理方法を提供するものである。
【0010】
本発明の方法においては、フォトレジスト及びテトラアルキルアンモニウムイオンを含有するフォトレジスト現像廃液(以下、時に「現像廃液」と略称する)を、直接、電気透析及び/又は電解してもよいが、その前段において、フォトレジスト現像廃液を少なくとも陰イオン交換体を含むイオン交換体と接触させてフォトレジストを主とする不純物を吸着除去するイオン交換体接触処理(特願平8−263793号)、フォトレジスト現像廃液を中和し、不溶性となったフォトレジストを遠心分離、膜分離(膜濾過)等により分離除去する中和処理、フォトレジスト現像廃液を中和し、不溶性となったフォトレジストを遠心分離、膜分離等により分離除去して得られる中和処理液を少なくとも陰イオン交換体を含むイオン交換体と接触させて残留フォトレジストを主とする不純物を吸着除去する上記2処理の組み合わせ(特願平8−263793号)等の前処理により得られるフォトレジスト現像廃液に由来する処理液を電気透析及び/又は電解してもよい。しかし、特に陰イオン交換体の交換容量及び/又は中和に要する酸の量の観点からは、先に電気透析及び/又は電解を行い、その後に上記のような前処理と同じ処理を行なう方が好ましい。
【0011】
このような処理を行なった場合、電気透析及び/又は電解により得られる脱塩液中のフォトレジスト(テトラアルキルアンモニウムイオン以外の他の有機物成分)濃度が低くなるので、該脱塩液を必要に応じてpH調整し、直接的に生物処理することもでき、また、電気透析及び/又は電解により得られる濃縮液中のフォトレジスト濃度も低くなるので、濃縮液を現像液として再生回収する場合には意義が有る。濃縮液を現像液として再生回収する場合には、水素形(H形)及び/又はテトラアルキルアンモニウム形(TAA形)の陽イオン交換樹脂を陰イオン交換体(好ましくは陰イオン交換樹脂、より好ましくは強塩基性イオン交換樹脂の特にOH形)と組み合わせて用い、陽イオン性不純物の除去も併せて行なってもよい(特願平8−324867号)。陰イオン交換体と陽イオン交換樹脂を併用する場合は、両者の混床で用いたり、陰イオン交換樹脂を上流側に、前記陽イオン交換樹脂を下流側に積層する積層イオン交換樹脂として用いたり、陰イオン交換樹脂の層(カラム、塔)を前記陽イオン交換樹脂の層(カラム、塔)よりも上流側に配設して用いるのが好ましい(特願平8−324867号)。この理由は、高分子物質であるフォトレジストは、陽イオン交換樹脂の表面を汚染し、その陽イオン交換の活性度を低下させてしまうおそれがあるので、上流側に陰イオン交換体を配置し、前もってフォトレジストを充分除去しておくのが有利であることや、上流側に陰イオン交換樹脂を配置する場合、陰イオン交換樹脂からは極微量のアミン類が溶出することがあるので、下流側に配置した陽イオン交換樹脂で、この溶出アミン類を捕捉することができるからである。
【0012】
水酸化テトラアルキルアンモニウム及びフォトレジストを含有する現像廃液は、通常pH12〜14のアルカリ性を呈しており、フォトレジストはアルカリ性液中では溶解している。本発明はかかるアルカリ性の現像廃液にもそのまま適用することができる。
【0013】
通常のフォトレジスト現像廃液中で、フォトレジストはカルボキシル基等による陰イオン性の高分子として溶解しており、一方、テトラアルキルアンモニウムヒドロオキシドは、陽イオンであるテトラアルキルアンモニウムイオンと陰イオンである水酸化物イオンに解離している。このような廃液を陰イオン交換樹脂と接触させることで、廃液中のフォトレジストを陰イオン交換体に吸着させ、除去することができる。
【0014】
アルカリ可溶性のフォトレジストは、カルボキシル基等を有しており、現像の際はテトラアルキルアンモニウムによってカルボキシル基等が解離し、フォトレジストが現像液に溶解するものなので、現像廃液を中和してpH10以下、好ましくはpH8以下(酸性でも可)にすると、カルボキシル基等が遊離の状態になりフォトレジストの大半は不溶性となって、遠心分離や膜分離(膜濾過)等の方法でフォトレジストの大半を除去できるようになる。本明細書では、このように、現像廃液等を中和し、フォトレジストを遠心分離や膜分離等の方法で或る程度除去した処理液を「中和処理液」と言う。
【0015】
また、蒸発、逆浸透膜処理等の前処理を単独で又は上記のイオン交換体接触処理、中和処理又は中和処理+イオン交換体接触処理との組み合わせで行って得られるフォトレジスト現像廃液に由来する処理液を電気透析及び/又は電解してもよい。また、特開平6−142649号公報に開示されているように、現像廃液中のテトラアルキルアンモニウムイオンを陽イオン交換体に吸着させ、酸水溶液からなる溶離液を用いてテトラアルキルアンモニウムイオンを溶離して得られる溶出液としてのテトラアルキルアンモニウム塩水溶液をフォトレジスト現像廃液に由来する処理液として用いることもできる。
【0016】
フォトレジストアルカリ現像廃液中のテトラアルキルアンモニウムイオンは、各種電子部品等を製造する際に使用するフォトレジストの現像液に用いられるアルカリとしての水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化メチルトリエチルアンモニウム、水酸化トリメチルエチルアンモニウム、水酸化ジメチルジエチルアンモニウム、水酸化トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム(即ち、コリン)、水酸化トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化ジメチルジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化ジエチルジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化メチルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化エチルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化テトラ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム等(特に、前二者)の水酸化テトラアルキルアンモニウムから由来する。
【0017】
現像廃液中のテトラアルキルアンモニウムイオンの対イオンは、上述したように主に水酸化物イオン(OH- )であるのが通常であるが、工場によっては、また、中和を行った場合には、弗化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、燐酸水素イオン、燐酸二水素イオン等の無機陰イオン、及び、蟻酸イオン、酢酸イオン、蓚酸イオン等の有機陰イオンから選ばれる少なくとも一種がテトラアルキルアンモニウムイオンの少なくとも一部の対イオンとなるのが一般的である。特に炭酸イオン、炭酸水素イオンは、空気中の炭酸ガスが現像廃液中に溶け込んで少量存在することが多い。
【0018】
次に、図2を参照しつつ、本発明の現像廃液の処理方法において電気透析を行う場合のその原理と基本的構成を説明する。なお、テトラアルキルアンモニウムイオンはその対イオンが水酸化物イオンで、水酸化テトラアルキルアンモニウム(テトラアルキルアンモニウムヒドロオキシド)の形である通常の場合について説明する。
【0019】
図2に示したように、陰極1と陽極2の間には陽イオン交換膜(カチオン交換膜)3と陰イオン交換膜(アニオン交換膜)4が交互に並べられて複数のセルを構成している。セルに送られた水酸化テトラアルキルアンモニウム及びフォトレジストを含有する原廃液(ここでは、現像廃液、または、少なくとも陰イオン交換体を含むイオン交換体と接触させて得られる処理液)中の水酸化テトラアルキルアンモニウムは、陽イオンとしてのテトラアルキルアンモニウムイオン(TAA+ )と陰イオンとしての水酸化物イオン(OH- )に解離しているため、陰極1と陽極2間に直流電流が印加されるとテトラアルキルアンモニウムイオンは陽イオン交換膜3を通って陰極側に移動するが次の陰イオン交換膜で殆ど阻止され、一方、水酸化物イオンは陰イオン交換膜4を通って陽極側に移動するが次の陽イオン交換膜で殆ど阻止されるため、或るセルでは水酸化テトラアルキルアンモニウムが濃縮され、該セルに隣接するセルでは水酸化テトラアルキルアンモニウムが減少することになる。即ち、陰イオン交換膜4を陰極1に面した側に有するセル(A)は濃縮セルとして機能し、ここでは水酸化テトラアルキルアンモニウムが濃縮されて濃縮液となり、陰イオン交換膜4を陽極2に面した側に有するセル(B)は脱塩セルとして機能し、ここでは水酸化テトラアルキルアンモニウムが減少して脱塩液となる。原廃液中のフォトレジストはイオン交換膜を殆ど通らないため濃縮セル及び脱塩セルをそのまま通過して濃縮液中及び脱塩液中に残留する。
【0020】
上述の説明で明らかなように、図2に示したように脱塩セル及び濃縮セルの両方に原廃液を通液した場合は、濃縮液中にもフォトレジストがそのまま残留することとなるが、濃縮セル側では水酸化テトラアルキルアンモニウムのみが濃縮されるのであってフォトレジストは濃縮されないので、濃縮液中のフォトレジストは原廃液中の濃度とほぼ同じであり、この点において、水酸化テトラアルキルアンモニウムのみでなくフォトレジストも同時に濃縮されてしまう蒸発法や逆浸透膜法とは明らかに相違する。フォトレジスト用アルカリ現像液として再利用できる高純度の水酸化テトラアルキルアンモニウムの溶液を再生回収することを目的とする場合、電気透析でフォトレジストを殆ど含まない濃縮液を得ることが好ましく、そのためには、脱塩セル側に原廃液を通液し、濃縮セル側に(超)純水又はフォトレジストを含まない低濃度の水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液〔例えば、(超)純水に新品の水酸化テトラアルキルアンモニウムを少量溶解させた液〕等の電解質溶液を通液する。
【0021】
ここで、陰イオン交換膜の代わりに、耐アルカリ性が陰イオン交換膜より優れるポリビニールアルコール系等の中性膜を用いてもよい。中性膜はイオン性官能基の無い単なる高分子膜であるが、これはテトラアルキルアンモニウムイオンを通すもののその透過性は陽イオン交換膜より低いので、両者間の輸率の差を利用してテトラアルキルアンモニウムイオンの電気透析による濃縮を行うことができるのである。但し、中性膜を陰イオン交換膜の代わりに用いた時は、陰イオン交換膜の場合に比べて電流効率は悪くなる。
【0022】
次に、図3を参照しつつ、本発明の現像廃液の処理方法において電解を行う場合のその原理と基本的構成を説明する。なお、テトラアルキルアンモニウムイオンはその対イオンが水酸化物イオンで、水酸化テトラアルキルアンモニウムの形である通常の場合について説明する。
【0023】
図3に示したように、陰極21と陽極22の間には陽イオン交換膜23が配置され、陰極セル(C)と陽極セル(D)を構成している。陽イオン交換膜は、理屈の上では陽イオンしか通さない(実際は僅かに陰イオン等も通す)。陽極セル(D)に原廃液(ここでは、現像廃液、または、少なくとも陰イオン交換体を含むイオン交換体と接触させて得られる処理液)を通液し、陰極セル(C)には好ましくは(超)純水又はフォトレジストを含まない低濃度の水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液〔例えば、(超)純水に新品の水酸化テトラアルキルアンモニウムを少量溶解させた液〕等の電解質溶液を通液する。原廃液中の水酸化テトラアルキルアンモニウムはテトラアルキルアンモニウムイオン(TAA+ )と水酸化物イオン(OH- )に解離しているため、陰極21と陽極22の間に直流電流を印加すると、テトラアルキルアンモニウムイオンは陽イオンであるので陰極(−)側に移動し陽イオン交換膜23を通って陰極セル(C)に入る。陰極21上では水(H2 O←→H+ +OH- )の水素イオン(H+ )が電子(e- )を受け取り、水素ガス(H2 )を生じ、残った陰イオンである水酸化物イオン(OH- )は、陽極セル(D)から陰極セル(C)に入ってきたテトラアルキルアンモニウムイオンの対イオンとなり水酸化テトラアルキルアンモニウムを生成する。従って、電解が進行すると陰極セル(C)中では水酸化テトラアルキルアンモニウムが濃縮されることとなり、濃縮液を生じる。この意味で、陰極セル(C)は濃縮セルとして機能する。一方、陽極22上では、水酸化テトラアルキルアンモニウムの水酸化物イオン(OH- )が電子(e- )を放出し、酸素ガス(O2 )と水とになる。この意味では、陽極セル(D)は脱塩セルとして機能し、脱塩液(テトラアルキルアンモニウムイオンが稀薄になった「稀薄液」)を生じる。
【0024】
なお、陽イオン交換膜を用いる代わりに2枚の親水化処理した多孔質テフロン膜等の中性膜を使用し、陽極室、中間室及び陰極室を設け、中間室に原廃液を通しても電解を行なうことができる(特開昭60−247641号公報)。
【0025】
電気透析と電解の両方を行なう多段方式や、電気透析及び電解の少なくとも一方を多段に行なう多段方式を採ってもよく、このような多段方式の場合、脱塩液中のテトラアルキルアンモニウムイオン濃度を低減することができ、生物処理が行い易くなり、また、濃縮液のテトラアルキルアンモニウムイオン濃度と純度を高めることができ、濃縮液をフォトレジスト用アルカリ現像液として再利用しようとする場合には好都合である。
【0026】
このように、フォトレジスト及びテトラアルキルアンモニウムイオンを含有する原廃液(フォトレジスト現像廃液又はフォトレジスト現像廃液に由来する処理液)の電気透析又は電解を行なうと濃縮液と脱塩液に分離される。以下、主に電気透析の場合を例として、より具体的に説明する。
【0027】
脱塩セルに導入する原廃液中のテトラアルキルアンモニウムイオン濃度、濃縮セルに導入する初期溶液(超純水や希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム水溶液等)のテトラアルキルアンモニウムイオン濃度、電位、透析時間、透析膜(イオン交換膜等)の種類などの各種の電気透析条件によって異なるが、濃縮液中には1〜10重量%程度のテトラアルキルアンモニウムイオンと少量のフォトレジスト、脱塩液中には原廃液とほぼ同濃度のフォトレジストと約100ppm〜約5000ppmのテトラアルキルアンモニウムイオンが含まれるのが通常である。このように、電気透析後の脱塩液は、原廃液と比べると、フォトレジスト濃度は同程度であるが、テトラアルキルアンモニウムイオン濃度は充分に低減されているのが通常である。
【0028】
既述のように、テトラアルキルアンモニウムイオンは活性汚泥による生物分解性が悪いために比較的低濃度の廃液しか処理できない。特に、他の生物分解性の良い有機物成分が混在している場合は、該他の有機物成分を分解する微生物の増殖の方が活発になり、テトラアルキルアンモニウムイオンを分解する微生物の増殖が不活発となるので、更にその生物分解性が悪くなる。一般的には、他の有機物成分を含んだテトラアルキルアンモニウムイオン含有水溶液を生物処理により分解できるテトラアルキルアンモニウムイオンの濃度範囲は、該他の有機物成分の種類や処理条件等にも依存するが、約100ppm(mg/L)以下である。
【0029】
一方、テトラアルキルアンモニウムイオンは生物分解性が悪いながらも生物処理により分解が可能な物質であり、他の有機物成分の混在が微量で、且つ適切な条件で活性汚泥を馴養してやれば、テトラアルキルアンモニウムイオンを分解する微生物が増殖し、テトラアルキルアンモニウムイオン濃度約5000ppm(mg/L)程度までは生物処理により分解が可能である。
【0030】
フォトレジスト現像廃液は、濃いものではテトラアルキルアンモニウムイオン濃度が数パーセント(1〜3重量%)の廃液として排出されるものもあり、このため生物処理による分解は不可能で蒸発や逆浸透膜処理により濃縮した後、焼却や業者引取(場外処理)が行なわれていた。しかし、本発明者等は、フォトレジスト現像廃液を処理するに当たって、電気透析や電解によりテトラアルキルアンモニウムイオンを濃縮する工程、陰イオン交換樹脂(好ましくは更に陽イオン交換樹脂)と接触させる工程などの処理工程を含む方法により、フォトレジスト用アルカリ現像液として再利用できる程に現像廃液を精製することができることを見出した(特願平8−263793号、特願平8−324867号)。
【0031】
しかし、電気透析や電解を行なってもテトラアルキルアンモニウムイオンを濃縮液中に完全に回収することができず、脱塩液中にも約100ppm〜約5000ppmのテトラアルキルアンモニウムイオンが残ってしまい、また、脱塩液中のフォトレジスト濃度は原廃液と殆ど変わらない。即ち、他の有機物成分(主としてフォトレジスト)を含んだ約100ppm〜約5000ppmのテトラアルキルアンモニウムイオン濃度の脱塩された廃液が、原廃液とほぼ同容量生じてしまう。
【0032】
電気透析や電解の電圧を高くして充分な時間処理を行なったり、脱塩液を多段に電気透析や電解(電気透析+電解の多段もある)により処理することで、脱塩液中に残留するテトラアルキルアンモニウムイオン濃度を100ppm程度まで低減することができる(数10ppmも可能)。このような脱塩液は、pH調整のための酸添加量が少なくてすむ上に、テトラアルキルアンモニウムイオン濃度が低いので、生物処理に好適であり、また、水やリンス排水等の他の排水と混合し希釈して生物処理することも可能となる点で好適である。
【0033】
しかし、無闇に高電圧を掛けたり、長時間処理を行なっても、電気エネルギーの多くが水の電気分解等の他のことに使われるだけで電流効率が低下する。このため、適度な電圧で適度な時間処理する方が濃縮・脱塩の効率が良くなる。こうした高効率を重視した条件下で電気透析した場合は、脱塩液中に残留するテトラアルキルアンモニウムイオン濃度は、約1000ppm〜約5000ppmであり、このような脱塩液はそのまま生物処理することはできないのが通常である。このような高効率を重視した条件下で電気透析した場合においても、原廃液中の他の有機物成分(主にフォトレジスト)が微量であれば(例えば、原廃液が、フォトレジスト現像廃液を少なくとも陰イオン交換体を含むイオン交換体と接触させてフォトレジストを主とする不純物を吸着除去して得られる処理液、フォトレジスト現像廃液を中和し、不溶性となったフォトレジストを分離除去して得られる中和処理液、或いは、フォトレジスト現像廃液を中和し、不溶性となったフォトレジストを分離除去して得られる中和処理液を少なくとも陰イオン交換体を含むイオン交換体と接触させて残留フォトレジストを主とする不純物を吸着除去して得られる処理液である場合など)、脱塩液中の他の有機物成分(主にフォトレジスト)も微量となるので、テトラアルキルアンモニウムイオン分解性の微生物の増殖に適した条件下で、馴養した活性汚泥を用いれば、良好な処理液が得られる。しかし、脱塩液中には他の有機物成分(主にフォトレジスト)が或る程度混在しているのが通常であり、このような場合は馴養した活性汚泥を用いても良好な処理液を得ることはできない。
【0034】
この場合、脱塩液を水やリンス排水等の他の排水と混合し希釈してテトラアルキルアンモニウムイオン濃度を約100ppm以下まで低減するのが一方法で、馴養した活性汚泥を用いて良好な処理液を得ることができる。この方法では、生物処理設備の或る程度の大規模化は避けられないが、原廃液と比べて、脱塩液中のテトラアルキルアンモニウムイオン濃度は格段に低減されているので、原廃液の電気透析を行なわない場合と比べると生物処理設備の規模は遙に小さくて済む。
【0035】
上述のような生物処理設備の大規模化を避けるには、このような場合、他の有機物成分(主にフォトレジスト)を除去する必要がある。フォトレジストを除去する手段としては、脱塩液を中和してフォトレジストを不溶物質として析出させ、遠心分離や膜分離(膜濾過)などにより除去する方法、脱塩液を陰イオン交換体と接触させてフォトレジストを吸着除去する方法、更には、上記のような中和処理により得られる中和処理液の残留フォトレジストを陰イオン交換体で更に吸着除去する方法などがあり、これらの方法は原廃液が現像廃液や逆浸透膜処理により得られる濃縮液である場合等に特に有効である。原廃液、従って脱塩液中にはフォトレジストとテトラアルキルアンモニウムイオン以外に他の有機物成分は殆ど存在しないので、脱塩液からフォトレジストを除去して得られる溶液(処理液)は実質的にテトラアルキルアンモニウムイオン(約1000ppm〜約5000ppm)のみを有機物成分として含むこととなり、馴養した活性汚泥を用いれば良好な処理液を得ることができる。
【0036】
上記のようなフォトレジスト除去方法において中和を行なう場合は、生物処理のTOC(全有機性炭素)負荷を増やさないという点で、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸を中和剤として使用するのが好ましい。なお、現像廃液に直接的に酸を加えてフォトレジストを析出するには、脱塩液に酸を加える場合と比べて酸の使用量は非常に多くなる。
【0037】
フォトレジストを除去する別の手段としては、脱塩液を酸化処理してフォトレジストを分解する方法がある。かかる酸化処理は、例えば、オゾン、過酸化水素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、塩素等の酸化剤、触媒酸化(フェントン酸化)、紫外線照射、又はこれらの組み合わせにより行うことができるが、オゾン、過酸化水素、触媒酸化(フェントン酸化)、紫外線照射、又はこれらの組み合わせにより行うのが好ましい。酸化剤を用いる場合は、得られる酸化処理液中に酸化剤が残留しないように添加量を厳密に調整したり、残留した酸化剤を還元剤で分解してから生物処理するが、オゾンの場合は高いpHでは寿命が短く、短時間の内に酸化処理液中に残存しなくなる。なお、テトラアルキルアンモニウムイオンは、一般に、これらの酸化処理によっても容易には分解しない。
【0038】
なお、現像廃液を直接酸化処理してフォトレジストを除去し、次いで、得られる酸化処理液を電気透析及び/又は電解し、ここで得られる脱塩液を生物処理することもできる。
【0039】
脱塩液のテトラアルキルアンモニウムイオン濃度が100ppm程度であっても、フォトレジストの除去を行なえば、生物処理のTOC負荷を低減することができると共に、テトラアルキルアンモニウムイオン分解性微生物の増殖が進行し易いので好ましい。
【0040】
以上、主に電気透析の場合について説明してきたが、フォトレジストとテトラアルキルアンモニウムイオンを含有する原廃液を電解して得られる脱塩液(陽極液)を生物処理する場合も、全く同様のことが言える。即ち、電解により得られる脱塩液中においてもテトラアルキルアンモニウムイオン(電解の場合、水酸化テトラアルキルアンモニウムとなる)濃度が、各種の電解条件によって異なってくるものの、電気透析について述べたとほぼ同程度まで低減されているのが通常であるので、上述の電気透析により得られる脱塩液の処理について説明したのと同様の作用で、低コストで効果的なフォトレジスト現像廃液の処理が可能である。
【0041】
また、活性汚泥による一般的な生物処理に適するように被生物処理液(生物処理槽中)のpHを4.5〜9の範囲、好ましくは6〜8.5の範囲に調整するのが好ましいが、微生物の種類によっては比較的強い酸性やアルカリ性でも生物処理可能な場合もあり、被生物処理液(生物処理槽中)のpHは上記の範囲に限定されるものではない。また、生物処理に適するように熱交換装置を設けて、被処理液を適正温度(例えば、10〜40℃が好ましく、より好ましくは15〜35℃)に加熱又は冷却するのが好ましい。
【0042】
活性汚泥による生物処理を行なうには、曝気槽と固液分離槽(沈澱槽)を用いるのが通常であるが、主曝気槽に加えて後曝気槽を設け、原液供給槽において廃液と後曝気槽を介して返送される返送汚泥を接触させ、次いで主曝気槽で曝気処理し、主曝気槽で曝気処理された曝気液の一部を後曝気槽で曝気処理する方法(特開昭63−267497号公報、特開平7−303893号公報)も採ることができる。
【0043】
以上、活性汚泥法を中心にして生物処理を説明してきたが、この他に、浸漬濾床法、流動床法、接触曝気法等により生物処理を行なうことができる。また、生物処理を2段以上の多段(好ましくは2段)方式で行なうこともでき、例えば、テトラアルキルアンモニウムイオン濃度約2000ppmの脱塩液を第1段で処理液中のテトラアルキルアンモニウムイオン濃度約100ppm程度まで生物処理し、第2段で処理液中のテトラアルキルアンモニウムイオン濃度約1ppm以下まで生物処理することもできる。また、例えば、特開平2−49576号公報に他の有機物の影響を受け難い水酸化テトラメチルアンモニウム分解微生物として提案されているパラコッカス(Paracoccus)属に属する細菌、或いは、前記公報の従来技術の欄に挙げられているシュウドモナス・アミノボランス(Pseudomonas aminovorans )、プロトモナス・エクストロクエンス(Protomonas extorquens )、ミコバクテリウム・エスピー(Mycobacterium sp. )、ノカルディア・エスピーS−255株(Nocardia sp. S-255)等の水酸化テトラメチルアンモニウム分解微生物を用いて生物処理を行なってもよい。
【0044】
生物処理を行なうに当たって、その前段で電気透析及び/又は電解処理すれば、脱塩液中のテトラアルキルアンモニウムイオン濃度は低いので、生物処理を効果的に行なうことができる。一方、濃縮液は約2〜10倍程度に濃縮されているので、廃棄処分としてもよいが、更にイオン交換樹脂等で精製を行なって、フォトレジスト用アルカリ現像液として再利用するのが好ましい。
【0045】
また、脱塩液を逆浸透膜処理してもよい。この場合、脱塩液中のテトラアルキルアンモニウムイオン濃度は原廃液中の濃度と比べて充分低いので、高効率で高い水質の透過水が得られ、これを回収水として再利用し、一方、濃縮水を生物処理するようにすることもできる。
【0046】
現像廃液にフォトレジストが多量に含まれている場合は、電気透析及び/又は電解により得られる脱塩液を中和することによりフォトレジストを不溶性有機物として析出させ、遠心分離や膜分離(膜濾過)等によりフォトレジストを除去した後に生物処理を行なうのが良い。中和に必要な酸の量は、水酸化テトラアルキルアンモニウムの濃度と関係するので、現像廃液の中和処理によりフォトレジストを除去するよりも、電気透析及び/又は電解を行なって得られる脱塩液を中和処理してフォトレジストを除去する方が使用する酸の量を大幅に削減できる点で経済的であり、かかる観点からは後者の方が好ましい。
【0047】
生物処理により得られる処理水は、そのまま放流してもよいが、特開昭62−282689号公報に開示されるように、低圧水銀ランプ光の照射と酸化剤の添加により処理水中に残存する有機物の酸化分解処理と同時に該処理水中に生存しているバクテリアを殺菌処理して(超)純水を再生するようにしてもよい。
【0048】
電気透析及び/又は電解の前段又は後段で用いる陰イオン交換体としては、各種の無機系や有機系のものを用いることができるが、、処理効率の点で繊維状や粒状等のスチレン系やアクリル系等の有機系の陰イオン交換樹脂が好ましく用いられ、或いは、これらの複数の種類を任意の割合で混合もしくは積層して用いても良いが、後述するように、特にフォトレジスト除去効率の点でスチレン系陰イオン交換樹脂が好ましい。なお、アクリル系陰イオン交換樹脂は、(メタ)アクリル酸やそのエステル類をジビニールベンゼン(DVB)等で架橋したものである。また、フォトレジスト除去効率の点で強塩基性陰イオン交換樹脂が好ましいが、弱塩基性陰イオン交換樹脂も特に中性又は酸性側では、フォトレジスト除去効果があり、これらの複数の種類を任意の割合で混合もしくは積層して用いても良い。
【0049】
また、陰イオン交換体の対イオンは、OH- でもCl- 等でもよい。しかし、陰イオン交換体を、電気透析の前段で用い且つ電気透析により得られる濃縮液をフォトレジスト用アルカリ現像液として再利用する場合は、Cl- 等を対イオンとするCl形等の陰イオン交換体を用いるとテトラアルキルアンモニウムの対イオンも少なくとも一部Cl- 等に変わることになるので(この場合、濃縮液を後段で電解すれば、テトラアルキルアンモニウムの対イオンをOH- とすることができる)、OH- イオンを対イオンとするOH形陰イオン交換樹脂を用いるのが好ましい。また、アルカリ現像フォトレジストはノボラック樹脂を母体樹脂とするものが主流で、このノボラック樹脂は多数のベンゼン環を有しており、陰イオン交換体として特にスチレン系のベンゼン環を有する陰イオン交換樹脂等を用いた場合には、静電的相互作用に加えて、ベンゼン環同士の親和(疎水的)相互作用により、高選択的にフォトレジストを除去することができると考えられる。
【0050】
以上、本発明の方法を説明してきたが、好ましい基本的な各実施態様を表したフロー図を図1に示す。このフロー図を参照すれば、本発明の基本的技術思想を容易に理解できるであろう。なお、図1中の( )で囲まれた「pH調整」は場合によっては行なわないこともあることを示し、また、〔 〕で囲まれた「中和・固液分離」は行なわない場合があることを示す。また、脱塩液の中和は行なっても、固液分離は行なわないでよい場合もある。
【0051】
【発明の実施の形態】
電気透析と電解の原理と基本的な構成は、既述の通りであるが、これらについて更に具体的に説明する。
【0052】
電気透析装置は、一般的に使用されているものを使用でき、これに使用されるイオン交換膜としては、陽イオンと陰イオンを選択的に分離できるものであれば特に限定されず、例えば、アシプレックス〔旭化成工業(株)製〕、セレミオン〔旭硝子(株)製〕、ネオセプタ〔徳山曹達(株)製〕等を挙げることができる。また、イオン交換膜の特性も、一般的なものでよく、例えば、厚さは、0.1〜0.6mm、抵抗は、1〜10Ω・cm2 程度のものであればよい。なお、既述の通り、陰イオン交換膜の代わりに、耐アルカリ性が陰イオン交換膜より優れるアシプレックスPVA#100〔旭化成工業(株)製〕等のポリビニールアルコール系等の中性膜を用いてもよい。
【0053】
電気透析装置の構造は、特に限定されず、例えば、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを、脱塩される液の流入孔及び流出孔、濃縮される液の流入孔及び流出孔が設けられているガスケットで適当な間隔を保って交互に複数積層して複数のセルを構成し、両端を一組の電極で挟んで電気透析装置を構成すればよい。
【0054】
電気透析のプロセスの例としては、循環方式と多段処理方式を挙げることができ、これらについては特開平7−328642号公報に開示されているが、ここで念の為説明する。なお、テトラアルキルアンモニウムイオンはその対イオンが水酸化物イオンで、水酸化テトラアルキルアンモニウム(テトラアルキルアンモニウムヒドロオキシド)の形である通常の場合について説明する。
【0055】
図4に示す循環方式では、水酸化テトラアルキルアンモニウムとフォトレジストを含有する原廃液の入った廃液槽6から原廃液をポンプ9により脱塩液槽7に送り、脱塩液槽7からポンプ10により直流電流を印加した電気透析装置5の脱塩セルに送り、脱塩セルから流出する脱塩液を脱塩槽7に戻し循環させる。一方、濃縮液槽8には原廃液、或いは、(超)純水又はフォトレジストを含まない低濃度の水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液〔例えば、(超)純水に新品の水酸化テトラアルキルアンモニウムを少量溶解させた液〕等の電解質溶液、好ましくは(超)純水又は上記のような電解質溶液を仕込んでおき、ポンプ11で電気透析装置5の濃縮セルへ送り、流出する濃縮液を濃縮液槽8に戻し循環させる。脱塩液槽7の脱塩液の電気伝導度を電気伝導度計12で測定し、脱塩されて一定の脱塩率になったところで脱塩液槽7内の脱塩液の一部を槽外に排出し、生物処理工程又はフォトレジストの除去工程及び生物処理工程に廻し、排出した分だけ脱塩液槽7内に廃液槽6より原廃液を送る。一方、濃縮液槽8中の水酸化テトラアルキルアンモニウム濃度が所定の濃度に達したら、濃縮液を濃縮液槽8から取り出す。取り出した濃縮液は、更に濃縮して廃棄処分してもよいが、イオン交換樹脂との接触工程や膜処理工程や再利用等に廻すこともできる。
【0056】
図5に示す多段処理方式では、廃液槽14からポンプ15で送られた原廃液を第1の電気透析装置13−1で電気透析して得られる脱塩液を、第2の電気透析装置13−2へポンプ16で輸送して電気透析し、該脱塩液中に残留する水酸化テトラアルキルアンモニウムの濃縮、回収を図る。第2の電気透析装置13−2で電気透析されて水酸化テトラアルキルアンモニウムが濃縮された濃縮液は、第1の電気透析装置13−1で電気透析されポンプ17で輸送される濃縮液と共に第3の電気透析装置13−3で電気透析することにより、水酸化テトラアルキルアンモニウムを更に高濃度に濃縮する。第3の電気透析装置13−3で電気透析された濃縮液は、更に濃縮して廃棄処分してもよいが、イオン交換樹脂との接触工程や膜処理工程や再利用等に廻すこともできる。第3の電気透析装置13−3で処理された脱塩液は、ポンプ18で第2の電気透析装置13−2に送り、第1の電気透析装置13−1で得られる前記脱塩液と共に電気透析処理して残留する水酸化テトラアルキルアンモニウムの濃縮又は回収を図る。第2の電気透析装置13−2から流出する脱塩液は、殆どがフォトレジストであり、水酸化テトラアルキルアンモニウム濃度は低いので系外に排出して、生物処理工程又はフォトレジストの除去工程及び生物処理工程に廻す。
【0057】
電解を行なう場合に、原廃液中にCl- やBr- 等のOH- より電気分解されやすいイオン種が含まれていると陽極上にCl2 やBr2 等のガスが生じる。この場合、特開昭57−155390号公報に開示されているように、陽極セルを更に陰イオン交換膜で区分し陽極側の区分セルに水酸化アンモニウム等のアルカリ物質を添加しておくと、中和によりCl2 やBr2 等のガスの発生が防止できる。SO4 2- やNO3 - の場合はOH- より電気分解され難いので、OH- の方が電気分解されO2 が発生し、H2 SO4 やHNO3 等が残る。
【0058】
電解を多段で行なう一例としては、陰極と陽極の間に陽イオン交換膜を複数枚(好ましくは2枚)配置して、陽極側のセル(陽極セル)に原廃液を通液し、陰極側のセル(陰極セル)及び中間セルには好ましくは(超)純水又はフォトレジストを含まない低濃度の水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液〔例えば、(超)純水に新品の水酸化テトラアルキルアンモニウムを少量溶解させた液〕等の電解質溶液を通液すると、多段に水酸化テトラアルキルアンモニウムを精製することになり、陰極セルからは高純度の水酸化テトラアルキルアンモニウム濃縮液が得られ、濃縮液をフォトレジスト用アルカリ現像液として再利用する場合には好都合である。陽極セルからの脱塩液を生物処理工程又はフォトレジストの除去工程及び生物処理工程に廻す。中間セルからの溶液は循環使用することもでき、陽極セルから微量ずつ陽イオン交換膜を通って来るフォトレジストで汚れたら原廃液と共に陽極セルに通液してもよい。
【0059】
近年、フォトレジスト現像廃液から水酸化テトラアルキルアンモニウムを、回収、精製、再利用するといった試みがなされており、このような現像液の再生回収方法が公害対策や資源の有効活用等の点でベストであることは言うまでも無い。このような再生回収方法が電気透析や電解工程を含む場合、電気透析や電解工程から得られる脱塩液を、本発明に従って(例えば、図1のフロー)、生物処理を行なうことができる。本発明の方法を有利に用いることができる斯かる再生回収方法の具体例を(フローで)以下に列挙するが、本発明はこれらに限定されるものでは無い。
【0060】
(1)電気透析(特開平7−328642号公報)
(2)電解
(3)逆浸透膜処理→濃縮液電解(特開昭60−247641号公報)
(4)陽イオン交換体接触→溶離→溶出液電解(特開平6−142649号公報)
(5)中和処理→電解(特開平5−17889号公報)
【0061】
(6)電気透析→陰イオン交換体接触(特願平8−263793号)
(7)陰イオン交換体接触→電気透析(特願平8−263793号)
(8)電解→陰イオン交換体接触(特願平8−263793号)
(9)陰イオン交換体接触→電解(特願平8−263793号)
(10)中和処理→陰イオン交換体接触→電解(特願平8−263793号)
【0062】
(11)電気透析→イオン交換樹脂接触〔陰イオン交換樹脂+陽イオン交換樹脂〕(→膜処理)(特願平8−324867号)
(12)電解→イオン交換樹脂接触〔陰イオン交換樹脂+陽イオン交換樹脂〕(→膜処理)(特願平8−324867号)
(13)イオン交換樹脂接触〔陰イオン交換樹脂+陽イオン交換樹脂〕→電気透析(→膜処理)(特願平8−324867号)
(14)イオン交換樹脂接触〔陰イオン交換樹脂+陽イオン交換樹脂〕→電解(→膜処理)(特願平8−324867号)
【0063】
(15)陰イオン交換樹脂接触→電気透析→陽イオン交換樹脂接触(→膜処理)(特願平8−324867号)
(16)陰イオン交換樹脂接触→電解→陽イオン交換樹脂接触(→膜処理)(特願平8−324867号)
【0064】
(17)中和処理→電解→イオン交換樹脂接触〔陰イオン交換樹脂+陽イオン交換樹脂〕(→膜処理)(特願平8−324867号)
(18)中和処理→電気透析→電解→イオン交換樹脂接触〔陰イオン交換樹脂+陽イオン交換樹脂〕(→膜処理)(特願平8−324867号)
(19)中和処理→電解→電気透析→イオン交換樹脂接触〔陰イオン交換樹脂+陽イオン交換樹脂〕(→膜処理)(特願平8−324867号)
【0065】
(20)中和処理→イオン交換樹脂接触〔陰イオン交換樹脂+陽イオン交換樹脂〕→電解(→膜処理)(特願平8−324867号)
(21)中和処理→イオン交換樹脂接触〔陰イオン交換樹脂+陽イオン交換樹脂〕→電気透析→電解(→膜処理)(特願平8−324867号)
(22)中和処理→イオン交換樹脂接触〔陰イオン交換樹脂+陽イオン交換樹脂〕→電解→電気透析(→膜処理)(特願平8−324867号)
【0066】
(23)中和処理→陰イオン交換樹脂接触→電解→陽イオン交換樹脂接触(→膜処理)(特願平8−324867号)
(24)中和処理→陰イオン交換樹脂接触→電気透析→電解→陽イオン交換樹脂接触(→膜処理)(特願平8−324867号)
(25)中和処理→陰イオン交換樹脂接触→電解→電気透析→陽イオン交換樹脂接触(→膜処理)(特願平8−324867号)
【0067】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明がこの実施例に限定されるもので無いことは言うまでも無い。
液晶製造工程から排出されるフォトレジスト及び水酸化テトラメチルアンモニウム(テトラメチルアンモニウムヒドロオキシド、TMAH)を含有するフォトレジスト現像廃液を使用した。この廃液の水質は、TMAH濃度が15000ppm、フォトレジスト由来のTOCが280ppm、pHが13であった。なお、TMAH濃度はイオンクロマト分析法、フォトレジスト濃度は吸光分光光度分析法(吸光光度法)によって測定した。
【0068】
上記現像廃液を試料液として、電気透析装置によって、超純水中にTMAHの分離、回収、濃縮を行った(試料液は脱塩液となり、超純水は濃縮液となる)。電気透析装置は、旭化成工業(株)製マイクロ・アシライザーG3を使用し、この装置において陽イオン交換膜アシプレックスK−501〔旭化成工業(株)製〕と陰イオン交換膜アシプレックスA−201〔旭化成工業(株)製〕を使用した。
【0069】
実施例1
上記現像廃液(試料液)2000ml、超純水200mlを用い、電圧10Vで90分間電気透析を行ったところ、TMAH濃度が2000ppm、フォトレジスト由来のTOCが260ppm、pHが12の脱塩液(供試液A)が得られた。なお、得られた濃縮液は現像液として充分使用可能なものであった。
【0070】
上記の脱塩液の一部を塩酸でpH7まで中和し、供試液Bを得た。
【0071】
上記の脱塩液の一部を塩酸でpH7まで中和し、析出したフォトレジスト(pH9付近から析出し始めた)を、遠心分離器で分離し、その上澄み液を陰イオン交換樹脂アンバーライトIRA−402BL(ローム・アンド・ハース社製)のCl形と接触させ、テトラメチルアンモニウムイオン濃度がTMAH濃度に換算して2000ppm、フォトレジスト由来のTOCが0.1ppm以下、pHが7の溶液(供試液C)を得た。
【0072】
得られた各供試液A〜Cを用いて、後述の生物処理実験を行なった。
【0073】
実施例2
上記現像廃液(試料液)2000ml、超純水200mlを用い、電圧30Vで90分間電気透析を行ったところ、TMAH濃度が600ppm、フォトレジスト由来のTOCが240ppm、pHが11の脱塩液(供試液D)が得られた。なお、得られた濃縮液は現像液として充分使用可能なものであった。
【0074】
上記の脱塩液の一部を純水で10倍容に希釈し、TMAH濃度が60ppm、フォトレジスト由来のTOCが24ppm、pHが10の希釈液を得た。この希釈液の一部を塩酸でpH7まで中和し、供試液Eを得た。
【0075】
上記の希釈液の一部を塩酸でpH7まで中和し、析出したフォトレジスト(pH9付近から析出し始めた)を、遠心分離器で分離し、その上澄み液を陰イオン交換樹脂アンバーライトIRA−402BL(ローム・アンド・ハース社製)のCl形と接触させたところ、テトラメチルアンモニウムイオン濃度がTMAH濃度に換算して600ppm、フォトレジスト由来のTOCが0.1ppm以下、pHが7の溶液(供試液F)を得た。
【0076】
得られた各供試液D〜Fを用いて、後述の生物処理実験を行なった。
【0077】
実施例3
実施例1で得られた脱塩液の一部を塩酸でpH7まで中和し、1500mlをポリビニリデンフルオライド(PVDF)製の1800ml容器に入れ、オゾンを4g/hの流量で5時間吹き込み、フォトレジストを分解した後、塩酸でpH7まで中和し、供試液Gを得た。供試液Gを用いて、後述の生物処理実験を行なった。
【0078】
「生物処理実験」
各供試液を用いて、活性汚泥槽への通水実験を行なった。実験条件は、以下の通りである。
活性汚泥槽容量は、5000ml。TOC:燐濃度=50:1になるようにKH2 PO4 を添加。溶存酸素濃度が2mgO/Lになるように曝気量を調整。MLSS濃度が約2500mg/Lになるように汚泥量を調整。TOC容積負荷は、0.5kgC/m3 /day 。
なお、各供試液A〜GのpH、TOC及びTMAH濃度を表1に纏めた。
【0079】
「実験結果」
各供試液A〜Gを上記条件下に通水し、充分馴養を行なった1ヶ月経過後の活性汚泥での生物処理による平均TOC除去率を表2に示す。
なお、TOCは、燃焼法により測定した(これに対し、フォトレジスト由来のTOCは吸光光度法による測定)。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
表1と表2から次のことが分かる。供試液Aは、pHとフォトレジスト濃度が高く、殆ど生物処理できなかった。供試液Bは、有機物が生物処理により分解したが、TOC除去率は高くなかった。これは、供試液中に分離されていないフォトレジストなどが含まれていたためと考えられる。供試液Cは、中性でフォトレジストが殆ど無く、生物処理による有機物の分解が良く、TOC除去率が高かった。供試液Dは、pHとフォトレジスト濃度が高く、殆ど生物処理できなかった。供試液Eは、有機物が生物処理により分解したが、TOC除去率は高くなかった。これは、供試液中に分離されていないフォトレジストなどが含まれていたためと考えられる。しかし、供試液Eの場合の方が供試液Bの場合よりもTMAH濃度が低く、そのためTOC除去率が幾らか高かった。供試液Fは、中性でフォトレジストが殆ど無く、生物処理による有機物の分解が良く、TOC除去率が高かった。供試液Gは、中性でフォトレジストが酸化分解されており、生物処理による有機物の分解が良く、TOC除去率が高かった。供試液Aと供試液Dの場合、殆ど生物処理できなかったが、比較的強いアルカリ性でも生物処理できる微生物を用いたり、電気透析の条件を選んで、例えば、TMAH濃度を更に低くすれば、生物処理できるようになると思われる。また、供試液B及びEは、TOC容積負荷を更に低くすることにより、充分な処理は可能となるが、他の供試液の場合と比較して処理設備は大きくなる。
【0083】
【発明の効果】
本発明のフォトレジスト現像廃液の処理方法では、少なくともフォトレジストを含むテトラアルキルアンモニウムイオンの溶液(フォトレジスト現像廃液又は陰イオン交換体接触処理液や中和処理液等のフォトレジスト現像廃液に由来する処理液)を電気透析及び/又は電解して得られる脱塩液を、必要に応じpH調整し、生物処理を行なう。これによって、濃厚な現像廃液でも低コストで効果的に処理を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の方法の好ましい基本的な各実施態様を表したフロー図をである。
【図2】図2は、本発明の方法において電気透析を行う場合の電気透析の原理と基本的構成の説明図である。
【図3】図3は、本発明の方法において電解を行う場合の電解の原理と基本的構成の説明図である。
【図4】図4は、電気透析を循環法で実施するためのプロセスの一例を説明するためのフロー図である。
【図5】図5は、電気透析を多段処理法で実施するためのプロセスの一例を説明するためのフロー図である。
【符号の説明】
1 陰極
2 陽極
3 陽イオン交換膜(カチオン交換膜)
4 陰イオン交換膜(アニオン交換膜)
5 電気透析装置
6 廃液槽
7 脱塩液槽
8 濃縮液槽
9、10、11 ポンプ
12 電気伝導度計
13−1 第1電気透析装置
13−2 第2電気透析装置
13−3 第3電気透析装置
14 廃液槽
15、16、17、18 ポンプ
21 陰極
22 陽極
23 陽イオン交換膜
Claims (8)
- フォトレジスト及びテトラアルキルアンモニウムイオンを主として含有するフォトレジスト現像廃液を処理するに当たって、前記フォトレジスト現像廃液又は前記フォトレジスト現像廃液に由来する処理液を電気透析及び電解の少なくとも一方の方法で処理してテトラアルキルアンモニウムイオンの濃縮液と脱塩液とに分離する工程、及び前記脱塩液又は前記脱塩液に由来する処理液を、必要に応じてpH調整し、生物処理を行う工程とを含むことを特徴とするフォトレジスト現像廃液の処理方法。
- 前記フォトレジスト現像廃液に由来する前記処理液が、前記フォトレジスト現像廃液を少なくとも陰イオン交換体を含むイオン交換体と接触させてフォトレジストを主とする不純物を吸着除去して得られる処理液、前記フォトレジスト現像廃液を中和し、不溶性となったフォトレジストを分離除去して得られる中和処理液、或いは、前記フォトレジスト現像廃液を中和し、不溶性となったフォトレジストを分離除去して得られる中和処理液を少なくとも陰イオン交換体を含むイオン交換体と接触させて残留フォトレジストを主とする不純物を吸着除去して得られる処理液であることを特徴とする請求項1に記載のフォトレジスト現像廃液の処理方法。
- 前記脱塩液に由来する処理液が、前記脱塩液を陰イオン交換体と接触させてフォトレジストを主とする不純物を吸着除去して得られる処理液、前記脱塩液を中和し、不溶性となったフォトレジストを分離除去して得られる中和処理液、或いは、前記脱塩液を中和し、不溶性となったフォトレジストを分離除去して得られる中和処理液を陰イオン交換体と接触させて残留フォトレジストを主とする不純物を吸着除去して得られる処理液であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトレジスト現像廃液の処理方法。
- 前記脱塩液又は前記脱塩液に由来する処理液を水又はリンス廃液等の他の排水と混合して希釈した後、必要に応じてpH調整し、生物処理を行なうことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフォトレジスト現像廃液の処理方法。
- 前記脱塩液又は前記脱塩液に由来する処理液を酸化処理してフォトレジストを分解した後、必要に応じてpH調整し、生物処理を行なうことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフォトレジスト現像廃液の処理方法。
- 前記酸化処理をオゾン、過酸化水素、触媒酸化(フェントン酸化)、紫外線照射又はこれらの組み合わせにより行うことを特徴とする請求項5に記載のフォトレジスト現像廃液の処理方法。
- 被生物処理液のpHが4.5〜9の範囲において、前記生物処理をおこなうことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフォトレジスト現像廃液の処理方法。
- 電気透析と電解から選ばれる少なくとも一方を多段に行うことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のフォトレジスト現像廃液の処理方法。
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