JP3662954B2 - 6−デオキシ−6,6,6−トリフルオロ糖類誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、液晶材料などの機能性材料や医農薬中間体として有用である、新規な光学活性6−デオキシ−6,6,6−トリフルオロ糖誘導体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、6−デオキシ−6,6,6−トリフルオロ糖類を製造するには、光学活性アルデヒド類に対してトリフルオロメチル陰イオン(CF3 -)を反応させるのが一般的であり、次の反応が知られている。
【0003】
(1)D−リキソースから誘導した2,3,4,5−テトラキス(ベンジルオキシ)バレロアルデヒドとトリフルロメチルトリメチルシランの混合物にテトラブチルアンモニウムフルオリドを作用させ、トリフルオロメチル基を導入した化合物を合成した後、5段階を経て58%の全収率で望む6−デオキシ−6,6,6−トリフルオロ糖類を合成する方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,796(1991))。
【0004】
(2)(E)−1,1,1−トリフルオロ−4−メトキシ−3−ブテン−2−オンとエチルビニルエーテルを環化付加させてトリフルオロメチル基を有するジヒドロピラン類を62%の収率で合成し、ヒドロボレーションや光学分割など数段階を経て、全収率7%で目的とする6−デオキシ−6,6,6−トリフルオロ糖誘導体を合成する方法(Bull.Soc.Chim.Belg.,99,647(1990)).また、上記(1)と(2)の中間的な手法として次の合成方法が知られている。
【0005】
(3)ヨウ化トリフルオロメチルを亜鉛存在下にグリセルアルデヒドアセトニドと反応せしめ、水を加えた後にトリフルオロメチル基を導入した光学活性体を収率70%で単離し、更に数段階の反応を経て(全収率不明)目的とする6−デオキシ−6,6,6−トリフルオロ糖類を合成する方法(Chem.Pharm.Bull.,39,2459(1991))。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来方法には次に示すような問題点がある。
【0007】
従来法(1)は、トリフルオロメチル基の導入時のジアステレオ選択性に乏しく(1:1)、しかもこれらを分離することが不可能である。更には、環化時の5員環と6員環の選択性も低いため、最終的には8種類の立体異性体混合物を分離精製することが最大の短所となっている。
【0008】
従来法(2)は、原料である(E)−1,1,1−トリフルオロ−4−メトキシ−3−ブテン−2−オンは(E)体だけが調製可能であることおよび全収率が7%と極めて低いという問題点がある。
【0009】
さらに、従来法(3)では、トリフルオロメチル基の導入時のジアステレオ選択性に乏しく、しかも必要とされるものの割合が少なく、このプロセスではさらに一度不斉誘導が必要であり、操作方法が複雑なため効率よく製造することができない。
【0010】
従って本発明の課題は、穏和な条件下でしかも簡便な工程で、6−デオキシ−6,6,6−トリフルオロ糖類の複数の立体異性体を選択的に製造する手法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段および作用】
本発明者らは、上記課題を踏まえ、単一の原料から数種の立体異性体を作り分けられるような反応経路を計画する事にした。この課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、原料として1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オールの光学活性体を用い、(E)または(Z)体のオレフィンへと誘導した。これらオレフィンを触媒量の四酸化オスミウムによる酸化反応に付すことにより立体選択的なジオール化が達成できることを見出し、更に2〜3段階の反応を経て、単一の出発物質から望む4種類の6−デオキシ−6,6,6−トリフルオロ糖誘導体を立体選択的に合成しわける本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オールをリパーゼQLの存在下で酢酸ビニルと反応させることにより、反応生成物である(R)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−イルアセタートと未反応物質である(S)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オールを得、こうして光学分割された化合物を用いた6−デオキシ−6,6,6−トリフルオロ糖誘導体を製造する方法に関するものである。
【0013】
本発明の第1段階の反応は、化学式(1)
【0014】
【化32】
【0015】
で表されるラセミ体の1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オールを、光学分割し、化学式(2)
【0016】
【化33】
【0017】
で表される(S)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オールを合成する工程である。
【0018】
光学分割する方法は特に限定されないが、例えばリパーゼQL存在下に有機溶媒中酢酸ビニルと反応させて光学分割する方法(特開昭61−257191号、特開昭61−268192号、特開昭62−104589号)を採用することができる。
【0019】
リパーゼQL存在下に酢酸ビニルと反応させることによって、未反応物質である(S)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オール(2)が99.6%eeの光学純度、40%の単離収率で得られる。また、反応生成物である(R)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−イルアセタート(2a)は64.4%eeの光学純度、59%の単離収率で得られ,(R)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−イルアセタート(2a)は、穏和な加水分解反応に付すことにより、化学式(2)のエナンチオマーである(R)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オール(2b)を与える。
【0020】
【化34】
【0021】
この反応は、非常に簡便なものであり、反応温度としては0から60℃、好ましくは35から40℃程度で行う。あまり温度が高すぎると、酵素自体の安定性に問題が生じ、逆に低すぎると反応速度の低下につながる。
【0022】
本発明における1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オール(1)と酢酸ビニルとのリパーゼQL存在下での反応は、ヘキサンやベンゼンなどの無極性溶媒や、テトラヒドロフランやエーテルなどの極性溶媒を用いることが可能であるが、ヘキサン中で行うのが望ましい。
【0023】
本発明における1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オール(1)と酢酸ビニルのモル比は、理論的には2:1でよいが、過剰量の酢酸ビニルは反応速度を向上させる効果があるため、過剰量の酢酸ビニルの使用が好ましい。ただし、あまり過剰量であるとエナンチオ選択性の低下を招くため、基質であるアルコールの2倍モル量の酢酸ビニルの使用が好ましい。また、酵素量も同様に反応速度に影響を及ぼすが、あまり過剰に用いると、やはりエナンチオ選択性が低下するため、基質である1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オール(1)1mmolに対して0.01から1g程度、好ましくは0.1gの使用が適当である。
【0024】
反応終了後、最終生成物である(S)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オール(2)と(R)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−イルアセタート(2a)は、濾過により酵素などの不溶成分を取り除いた後に硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去する。最終的に、この混合物はシリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離精製するという公知の方法で、それぞれアルコール(2)とアセタート(2a)に分離される。
【0025】
本発明の第2段階は、前記(S)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オール(2)を用い、Red−Al(水素化ナトリウム=ビス(メトキシエトキシ)アルミニウム)で三重結合を立体選択的に還元して化学式(3)
【0026】
【化35】
【0027】
で表される(S,E)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキセン−3−オールを合成する工程または、リンドラー触媒により三重結合を立体選択的に水素添加して化学式(13)
【0028】
【化36】
【0029】
で表される(S,Z)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキセン−3−オール(9)を合成する工程である。
【0030】
【化37】
【0031】
まず、Red−Alによる化学式(3)の(E)体への誘導は、公知の手法(例えばOrganic Reactions,34,90(1985))により、立体選択的に(E)体のみを得ることができる。また、化学式(13)の(Z)体の場合は、リンドラー触媒を用いる公知の手法(例えばOrganic Synthesis Coll.5,880(1973))により、(Z)体のみを得ることができる。
【0032】
Red−Alによる還元は、−78℃から室温で行えるが、副反応を押さえられる温度である−78℃で反応させることが望ましい。また、反応溶媒はエーテルやTHFなどの非プロトン性極性溶媒や、ベンゼン、トルエンなどのより極性の低い溶媒の使用が可能であるが、トルエンの使用が最も好ましい。
【0033】
一方、リンドラー触媒を用いる水素添加反応では、反応温度は0から50℃でよいが、室温(25℃)程度が望ましい。溶媒は、メタノールやエタノールといったプロトン性極性溶媒や、酢酸エチル、ヘキサンなど広範な種類を利用できるが、ヘキサンを用いて、常圧で水素雰囲気下反応させるのが望ましい。
【0034】
本発明の第3段階は、四酸化オスミウムによるジオール化反応である。ジオール化により、前記化学式(3)の(S,E)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキセン−3−オールから、化学式(4)
【0035】
【化38】
【0036】
で表される(2R,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオールと、化学式(8)
【0037】
【化39】
【0038】
で表される(2S,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオールが得られる。
【0039】
一方、前記化学式(13)の(S,Z)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキセン−3−オールから、化学式(14)
【0040】
【化40】
【0041】
で表される(2R,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオールと、化学式(18)
【0042】
【化41】
【0043】
で表される(2S,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオールが得られる。
【0044】
【化42】
【0045】
この酸化方法に関しては、四酸化オスミウムを1当量用いるものと、四酸化オスミウムを触媒量用い、還元されたオスミウム酸化剤をN−メチルモルホリン=N−オキシドにより酸化して、もとの四酸化オスミウムに戻すという手法が公知となっているが、四酸化オスミウムの毒性や経済性を考慮して、本発明では、後者の四酸化オスミウムを触媒量用い、N−メチルモルホリン=N−オキシドを共酸化剤とする公知の方法に従えばよい(例えば、第4版実験化学講座第23巻有機合成[V]酸化反応、p79;丸善)。
【0046】
使用する四酸化オスミウムの量としては、0.001から1当量まで使用可能であるが、上記の毒性や価格等を考慮すると、0.003から0.01当量の使用が望ましい。また、共酸化剤であるN−メチルモルホリン=N−オキシドは、1から3当量程度でよいが、反応速度や副反応の生起などを配慮すると、1.5当量程度が望ましい。溶媒としては、水と有機溶媒(THFやアセトン、t−ブタノールなど)の混合系が適当であるが、水=アセトン系を使用し、室温で窒素雰囲気下反応をさせることが好ましい。
【0047】
本発明の第4段階は、オスミウムによるジオール化で生成した3つの水酸基のうち、3位ならびに4位のみを選択的に保護をする反応である。トリフルオロメチル基の強い電子吸引性は広く知られた事実であるが、それゆえ、この基に近い水酸基の酸素原子ほど電子密度が低く、求核能がより低くなっていることが容易に推測できる。こうした考えをもとに、前記(2R,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオール(4)を、公知方法により(例えば、新実験化学講座第14巻有機化合物の合成と反応[V]、p2495;丸善)アセトニド化することにより、化学式(5)
【0048】
【化43】
【0049】
(式中、R1およびR2は、それぞれ同一または相異なるアルキル基またはアリール基を表す)
で表される(2R,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオール誘導体を高収率で得ることができる。この時、2−4位間でのアセトニドも副製するが、わずかであった。
【0050】
【化44】
【0051】
本発明方法は、このようにトリフルオロメチル基の電子吸引効果をうまく利用した手法であるが、次に末端のベンジル基を脱離させ、この位置の水酸基を酸化してアルデヒドへ誘導した後に2位の水酸基との間でラクトールを形成させるためには、化合物(4)の段階で3位と4位はそれぞれアンチ配置となっている必要がある。それゆえ、3,4−シン体に対しては、別の保護が必要となる。そこで、次のような手法を考案した。すなわち、(2S,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオール(8)をそれぞれ2当量のt−ブチルジメチルシリル=クロリドならびにイミダゾールと反応させて、AからCで表される3種類の混合物を調製し、これを熱力学的条件下に塩基で処理すれば、最も安定なアルコキシドである2位が未保護のまま残ることになる。
【0052】
【化45】
【0053】
(式中、R3,R4およびR5は、同一または相異なるアルキル基またはアリール基を表す)
この考えは、既に我々が報告している概念を拡張したものである(J.Org.Chem.,58,4346(1993))。実際にこの手法を行ったところ、トリオール(8)からは確かにAからCの混合物が生成したが、この混合物をそのまま分離することなく塩基で処理したところ、望む(2S,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキサノール誘導体(10)を単一の生成物として得ることに成功した。本反応は、化合物(8)から中間体であるAからCの混合物へと変換する段階と、この混合物から(10)へと転位させる段階の2つに分かれているが、いずれの場合も溶媒としてはジメチルホルムアミド(DMF)や塩化メチレン等が適しているが、ここでは塩化メチレンを使用した。また、反応温度は0から50℃程度、望ましくは室温(25℃)付近がよい。更に、シリル基を熱力学的条件下で転位させる際の塩基としては、t−ブトキシカリウムや水素化ナトリウム、n−ブチルリチウムなどが使用可能であるが、t−ブトキシカリウムを用いるのが好ましい。
【0054】
Z体由来のトリオール(14)と(18)は、この段階で分離が不可能である。それゆえ、トリオール(18)はアセトニドとしてもよいのであるが、その条件ではトリオール(14)も当然アセトニドへと変換されてしまい、還化に必要な2つの置換基がアンチの配置、すなわち目的とする糖へと誘導できない構造になってしまう。それゆえ、この混合物はそのまま上記のシリル化を行ったところ、分離可能な(2R,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキサノール誘導体(15)ならびに(2S,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキサノール誘導体(19)が、非常に良好な収率で生成することが明らかとなった。
【0055】
【化46】
【0056】
一般的には、こうした位置選択的な官能基の保護には数段階を要することが多いが、本発明においては、わずか2段階でこの問題を解決しているところに大きな特徴がある。
【0057】
本発明の第5段階は、(5),(10),(15),(19)の各化合物の末端にある保護基であるベンジル基の除去である。この過程は、通常パラジウムや白金、ラネーニッケルなどの不均一系触媒の存在下、水素雰囲気で行えばよい。溶媒には、エタノールや酢酸エチル、酢酸など高極性のものが適しており、特にエタノールが好ましい。また、反応温度も室温(25℃程度)から100℃以上、反応圧力も常圧から数10気圧と幅広い範囲で行うことができる。
【0058】
【化47】
【0059】
この反応は、特にアセトニドのみに有効であるというわけではなく、ビスt−ブチルジメチルシリル体にも適用でき、良好な収率で脱ベンジル体を得ることが可能である。
【0060】
【化48】
【0061】
本発明の最終段階は、こうして合成してきた光学活性ジオールの還化反応である。化合物(6),(11),(16),(20)の4種類の立体異性体を見てみると、これらはいずれもジオール構造を有しており、ベンジル基を有していた末端である1位の水酸基のみを位置選択的に酸化してアルデヒドへと変換する必要がある。この段階でも、トリフルオロメチル基の特質をうまく利用して、2つの水酸基を単純な化学反応で区別することに成功した。ここでは、トリフルオロメチル基の近傍に存在する官能基が比較的酸化されにくいという特質を利用したのである。すなわち、(3S,4R,5R)−6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−イソプロピリデン−1,3,4,5−ヘキサンテトラオール(6)を比較的穏和な酸化剤であるピリジニウムジクロマート(PDC)で処理すると、1位の水酸基のみが酸化されて中間体のヒドロキシアルデヒドとなり、これが更に反応系内で還化して、望む6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−イソプロピリデン−L−オリオース(7)を合成することができる。
【0062】
【化49】
【0063】
この時、(7)がさらに酸化されたラクトンである(3S,4S,5R)−6,6,6−トリフルオロ−3,4−ジヒドロキシ−3,4−O−イソプロピリデンヘキサン−5−オリド(7a)も副生成物として得られた。しかし、後者の(7a)は、(7)と分離する前の混合物のまま、更に水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)で還元することにより、容易に対応するラクトールへと誘導できる。その例としては、(3S,4S,5S)−6,6,6−トリフルオロ−1,5−ヘキサンジオール誘導体(11)を用いた時、2段階で望む6,6,6−トリフルオロ−D−ボイビノース(6−デオキシ−6,6,6−トリフルオロ−D−キシロピラノース)誘導体(12)を高収率で合成できる。
【0064】
【化50】
【0065】
まったく同様な手法を(3S,4S,5R)−6,6,6−トリフルオロ−1,5−ヘキサンジオール誘導体(16)や(3S,4R,5S)−6,6,6−トリフルオロ−1,5−ヘキサンジオール誘導体(20)に応用すれば、それぞれ6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−(ビス−t−ブチルジメチルシリル)−L−オリボース(17)ならびに6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−(ビス−t−ブチルジメチルシリル)−D−ジギトキソース(21)が、いずれも80%以上の非常に良好な収率で合成することができる。
【0066】
【化51】
【0067】
【実施例】
1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オールの酵素による不斉エステル化
ラセミ体の1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オール(20.084g,77.772mmol)のn−ヘキサン溶液(150ml)に、酢酸ビニル(13.3ml、160mmol)とリパーゼQL(7.8g)を加え、この溶液を40℃で12時間撹拌した。酵素等の不溶成分を濾過によって取り除いた後、n−ヘキサンを減圧留去し、n−ヘキサン:酢酸エチル=6:1の溶液を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、下記化学式(2)の(S)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オールを7.943g(30.757mmol、39.5%)、ならびに下記化学式(2a)の(R)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−イルアセタートを13.825g(46.041mmol、59.2%)得た。
【0068】
(S)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オール(2)の光学純度は、公知の方法(J.Org.Chem.,34,2543(1969))に従ってMTPAエステルとし、キャピラリーガスクロマトグラフィー分析を行ったところ(GE XE60,190℃(カラム温度)、23.5分((R)体由来エステル)、26.8分((S)体由来エステル))99.6%eeであった。以下に、各種スペクトルの分析結果を示す。1 H−NMRならびに13C−NMRはVarian社製Gemini−200(それぞれ200MHz、50MHz)、19F−NMRは日立製R−1200F(56.451MHz)、IRはJASCO社製A−102、旋光度はJASCO社製DIP−140、質量スペクトルはJEOL JMX−AX505Hを用いて測定した。
【0069】
【化52】
【0070】
(S)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オール(2)の分析値
・旋光度
[α]D 17 −36.13°(c1.24,CHCl3 ),99.6%ee
・HRMS
C13H13F3O2 としての計算値258.0868 実測値258.0852
・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
1.983(1H,dddd,J=3.46,5.57,6.45,14.76Hz),2.176(1H,ddt,J=8.91,14.77,4.15Hz),3.444(1H,d,J=6.84Hz),3.705(1H,ddd,J=4.15,5.50,9.64Hz),3.864(1H,dt,J=3.54,9.28Hz),4.546(2H,s),4.717(1H,dtq,J=3.81,6.73,2.97Hz),7.2−7.4(5H,m)
・13C NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
35.391,60.914(q,J=1.17Hz),67.139,72.035(q,J=52.77Hz),73.555,87.502(q,J=6.30Hz),114.023(q,J=257.46Hz),127.736,127.989,128.534,137.303
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
28.59(d,J=2.77Hz)
・IR(neat)cm-1:
3400,3100,3075,3025,2950,2925,2275
【0071】
【化53】
【0072】
(R)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−イルアセタート(2a)の分析値
・旋光度
[α]D 17 +37.31°(c1.33,CHCl3 ),64.4%ee
・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
2.062(3H,s),2.0−2.3(2H,m),3.538(1H,dt,J=9.83,5.70Hz),3.596(1H,dt,J=9.86,5.89Hz),4.462(1H,d,J=11.94Hz),4.529(1H,d,J=11.94Hz),5.632(1H,tq,J=7.02,2.88Hz)
・13C NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
20.638,34.083,60.043(q,J=1.32Hz),64.851,72.295(q,J=52.87Hz),73.167,84.401(q,J=6.31Hz),113.812(q,J=257.86Hz),127.738,127.807,128.462,137.826,169.398
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
28.38(d,J=2.77Hz)
・IR(neat)cm-1:
3090,3065,3035,2935,2865,2800,2275,1750。
【0073】
絶対構造の決定
後述の手法によって調製した(S,E)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキセン−3−オール(0.542g,2.083mmol)のメタノール溶液(10ml)を−78℃で30分間オゾンで処理し、その後に80mgの水素化ホウ素ナトリウム(2.1mmol)を加えて終夜撹拌を続けた。この反応溶液を20mlの1規定塩酸水溶液に注ぎ、酢酸エチル(20ml)で3回抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを減圧留去し、生成物と原料(0.185g,0.711mmol,34.1%)を酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離した。さらに生成物を2mlのTHFに溶解し、0.02gの水素化リチウムアルミニウム(0.53mmol)を加えて−78℃で1時間撹拌を続けた。これを上記と同様な処理に付して粗生成物を得たが、このまま3mlの塩化メチレンに溶解し、室温でアセチルクロリド(0.40g,5.1mmol)とピリジン(0.40g,5.1mmol)と終夜反応させ、上記と同様な後処理後、n−ヘキサン:酢酸エチル=2:1の溶液を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、下記化学式(22)の(2S)−1,2−ジアセトキシ−4−ベンジルオキシブタンを0.206g(0.887mmol,42.6%)得た。文献記載の旋光度の符号を比較したところ((R)−22の旋光度[α]D 23 +14.6°(c4.8,CCl4 );J.Chem.Soc.Perkin 1,9(1988))、S体であると決定した。
【0074】
【化54】
【0075】
(2S)−1,2−ジアセトキシ−4−ベンジルオキシブタン(22)の分析値
・旋光度
[α]D 19 −14.23°(c2.79,CCl4 ),48.9%ee
・1H−NMRならびにIRは、上記文献記載のものと一致した。
【0076】
(S)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オールのリンドラー触媒による水素添加反応
上記のリパーゼにより光学分割された(S)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オール(0.40g,2.0mmol)を20mlのヘキサン溶解させ、ここに触媒量(0.02g)のLindlar触媒を加えて、水素雰囲気下、室温で撹拌を行い、所定量の水素が消費された時点で、反応溶液を濾過して触媒を除去した。ヘキサンを減圧留去した後、n−ヘキサン;酢酸エチル=4:1の溶液を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、下記化学式(13)の(S,Z)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキセン−3−オールを0.38g(1.93mmol,96.4%)得た。
【0077】
【化55】
【0078】
(S,Z)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキセン−3−オール(13)の分析値
・旋光度
[α]D 16 +5.46°(c1.00,CHCl3 ),99.6%ee
・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
1.6−2.1(2H,m),3.316(1H,d,J=3.25Hz),3.661(1H,ddd,J=4.06,4.90,8.91Hz),3.739(1H,ddd,J=2.56,4.88,9.38Hz),4.485(1H,d,J=11.90Hz),4.558(1H,d,J=11.72Hz),4.7−5.0(1H,m),5.589(1H,ddq,J=1.23,11.94,8.76Hz),6.033(1H,dd,J=8.81,11.94Hz),7.2−7.5(5H,m)
・13C NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
36.184,67.536(q,J=1.42Hz),68.294,73.416,117.727(q,J=34.47Hz),122.879(q,J=272.00Hz),127.752,127.908,128.537,137.627,144.485(q,J=5.19Hz)
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
20.93(d,J=8.24Hz)
・IR(neat)cm-1:
3425,3075,3050,2950,2875,675.。
【0079】
(S)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オールの水素化ナトリウム=ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウム(Red−Al)による還元反応
Red−Al(2.5mmol,0.74ml(3.4mol/1のトルエン溶液として市販されている))のトルエン溶液(3ml)に−78℃で(S)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキシン−3−オール(0.547g,2.12mmol)を加え、その温度で更に3時間撹拌を継続した。反応を1規定塩酸水溶液10mlを加えて停止させ、通常の後処理後、n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1の溶液を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、下記化学式(3)の(S,E)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキセン−3−オールを0.505g(1.94mmol,91.8%)得た。
【0080】
【化56】
【0081】
(S,E)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキセン−3−オール(3)の分析値
・旋光度
[α]D 18 +8.33°(c1.55,CHCl3 ),99.6%ee
・HRMS
C13H15F3 O2 としての計算値260.1024 実測値260.1012・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
1.7−2.1(2H,m),3.414(1H,d,J=3.81Hz),3.654(1H,dt,J=9.34,4.27Hz),3.734(1H,dt,J=9.38,4.04Hz),4.4−4.6(1H,m),4.521(2H,s),5.950(1H,ddq,J=2.01,15.62,6.57Hz),6.376(1H,ddq,J=4.01,15.60,2.01Hz),7.2−7.4(5H,m).
・13C NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
35.385(q,J=1.32Hz),68.330,69.788,73.535,117.907(q,J=33.65Hz),123.375(q,J=268.84Hz),127.779,128.011,128.581,137.445,141.789(q,J=6.30Hz)
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
15.01(d,J=5.53Hz)
・IR(neat)cm-1:
3450,3075,3050,2950,2875.。
【0082】
オスミウム酸化によるアリルアルコール類のジオール化反応
12mlの66%アセトン=水混合溶媒中に、窒素気流下0℃でN−メチルモルホリン=N−オキシド(2.343g,20mmol)、ならびに四酸化オスミウムのt−ブタノール溶液(2.5重量%)を0.48ml加え、最後に(S,E)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキセン−3−オール(3.349g,12.87mmol)を加えた。2日間室温で撹拌した後、10mlの亜硫酸ナトリウム飽和水溶液を加えて過剰の酸化剤を消費させた後、セライト濾過をすることにより不溶成分を除去した。こうして得られた濾液を、酢酸エチル(20ml)で3回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、酢酸エチルを減圧留去した。得られた粗生成物は、n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶液を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、下記化学式(4)の(2R,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオールと(8)の(2S,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオールを、87:13の比で3.272g(86.4%)得た。
【0083】
【化57】
【0084】
(2R,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオール(4)の分析値
・旋光度
[α]D 16 −9.03°(c1.01,CHCl3 ),99.6%ee
・融点
99.0−99.5℃
・1H NMR:δ(CDCl3+DMSO−d6)ppm(TMS)
1.7−1.9(1H,m),2.106(1H,dddd,J=2.48,4.27,6.60,14.75Hz),3.6−3.8(4H,m),3.8−4.1(3H,m),4.303(1H,dq,J=1.06,7.78Hz),4.523(2H,s),7.2−7.4(5H,m).
・13C NMR:δ(CDCl3+DMSO−d6)ppm(TMS)
32.626,67.800(q,J=29.59Hz),68.660,70.183(q,J=1.83Hz),70.619,73.317,125.333(q,J=282.96Hz),127.714,127.795,128.456,137.743
・19F NMR:δ(CDCl3+DMSO−d6)ppm(TFA)
2.41(d,J=7.56Hz)
・IR(KBr)cm-1:
3355,2960,2880,2865.。
【0085】
(2S,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオール(8)の分析値
・旋光度
[α]18 D−21.20°(c0.77,MeOH),99.6%ee
・融点
79.5−80.0℃
・1H NMR:δ(CDCl3+DMSO−d6)ppm(TMS)
1.6−2.1(2H,m),3.5−4.3(8H,m),4.512(2H,s),7.2−7.4(5H,m)
・13C NMR:δ(CDCl3+DMSO−d6)ppm(TMS)
32.498,68.007,69.780(q,J=1.68Hz),70.367(q,J=30.20Hz),72.342(q,J=1.27Hz),73.381,124.358(q,J=282.67Hz),127.766,127.950,128.498,137.324
・19F NMR:δ(CDCl3+DMSO−d6)ppm(TFA)
1.94(d,J=5.48Hz)
・IR(KBr)cm-1:
3410,3355,2955,2930,2900,2875.。
【0086】
(S,Z)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキセン−3−オールを上記と同様に処理して、分解不可能な下記ジアステレオマー化合物である(2R,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオール(14)、ならびに(2S,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオール(18)を収率71.2%で74:26の比で得た。
【0087】
【化58】
【0088】
(2R,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオール(14)の分析値
・1H NMR:δ(CDCl3+DMSO−d6)ppm(TMS)
1.8−2.0(2H,m),2.7−2.9(1H,br),3.6−3.8(4H,m),3.8−4.1(4H,m),4.466(2H,s),7.2−7.5(5H,m).
・13C NMR:δ(CDCl3+DMSO−d6)ppm(TMS)
31.905,68.411,69.281,71.118(q,J=1.27Hz),72.550(q,J=28.87Hz),73.670,124.746(q,J=282.88Hz),127.863,128.138,128.625,137.051
・19F NMR:δ(CDCl3+DMSO−d6)ppm(TFA)
3.28(d,J=6.21Hz)
・IR(KBr)cm-1:
3290,2925,2875.。
【0089】
(2S,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオール(18)の分析値
・1H NMR:δ(CDCl3+DMSO−d6)ppm(TMS)
1.716(1H,ddt,J=4.44,15.19,6.20Hz),2.179(1H,ddt,J=5.24,15.01,9.21Hz),2.931(1H,d,J=9.70Hz),3.8−4.4(7H,m),4.537(2H,s),7.2−7.4(5H,m)
・13C NMR:δ(CDCl3+DMSO−d6)ppm(TMS)
32.696,69.091,70.292(q,J=1.53Hz),72.097(q,J=1.43Hz),73.057(q,J=29.59Hz),73.646,124.688(q,J=283.08Hz),127.817,128.128,128.638,137.828
・19F NMR:δ(CDCl3+DMSO−d6)ppm(TFA)
2.94(d,J=6.89Hz)
・IR(KBr)cm-1:化合物(14)と(18)が分離できないため、両者に共通である。
【0090】
トリオール類の相対構造決定
ラセミ体の(E)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキセン−3−オールのオスミウム酸化で得られた主ジアステレオマーである(2R * ,3S * ,4S * )−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオールを0.63g(2.27mmol)と2,2−ジメトキシプロパン(3mmol)、触媒量(0.01g)のp−トルエンスルホン酸を4mlのTHFに溶解し、室温で12時間撹拌を続けた。ここに、飽和の炭酸水素ナトリウム水溶液を5ml加え、10mlの酢酸エチルで3回抽出を行った。酢酸エチルを減圧留去した後に、n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1の溶液を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、下記化学式(5)の(2R * ,3R * ,4S * )−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−3,4−O−イソプロビリデン−2,3,4−ヘキサントリオールを0.63g(2.07mmol,収率91.0%)得た。この時、少量の(2R * ,3S * ,4S * )−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,4−O−イソプロビリデン−2,3,4−ヘキサントリオールが副製したが、これは更に公知のアセチル化反応(例えば、新実験化学講座第14巻有機化合物の合成と反応[II],p1012;丸善)に付したところ、下記化学式(5a)の(2R * ,3S * ,4S * )−3−アセトキシ−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,4−O−イソプロビリデン−2,4−ヘキサンジオールを0.03g(0.09mmol,全収率3.3%)得た。
【0091】
後者の化合物(5a)の1 H−NMRを解析した結果(下記参照)、H2 −H3 ならびにH3 −H4 間の結合定数はそれぞれ4.0ならびに6.9Hzであったことから、3ならびに4位の水素はアキシャル配置、すなわち3位と4位の相対配置はアンチであると判断した。また、反応機構を考慮に入れると2位と3位がシンであることは明白であるから、(E)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキセン−3−オールをオスミウム酸化した際に得られる主ジアステレオマーは、2,3−シン、3,4−アンチであると決定した。
【0092】
【化59】
【0093】
(2R * ,3R * ,4S * )−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−3,4−O−イソプロビリデン−2,3,4−ヘキサントリオール(5)の分析値
・旋光度(この化合物は光学活性体でも合成しているので、その光学活性体の旋光度を以下に示す。)
[α]D 18 +4.09°(c1.57,CHCl3 ),99.6%ee
・HRMS
C16H21F3 O4 としての計算値334.1392 実測値334.1396・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
1.396(3H,q,J=0.73Hz),1.522(3H,q,J=0.61Hz),2.000(1H,dddd,J=4.11,5.27,7.63,14.13Hz),2.040(1H,ddt,J=8.95,14.13,5.41Hz),2.838(1H,d,J=10.13Hz),3.606(1H,dt,J=5.25,9.22Hz),3.672(1H,ddd,J=4.06,5.34,9.37Hz),4.00−4.15(1H,m),4.353(1H,dd,J=1.04,7.14Hz),4.483(1H,dt,J=5.37,7.39Hz),4.509(2H,s),7.2−7.4(5H,m).
・13C NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
24.719,26.671,30.385,67.178,67.988(q,J=30.15Hz),73.300,73.324(q,J=1.57Hz),74.993,108.637,124.479(q,J=283.48Hz),127.712,127.731,128.436,138.060.・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
1.36(d,J=7.56Hz)
・IR(neat)cm-1:
3525,3025,3000,2950,2875.。
【0094】
(2R * ,3S * ,4S * )−3−アセトキシ−5−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,4−O−イソプロピリデン−2,4−ヘキサンジオール(5a)の分析値
・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
1.363(3H,s),1.453(3H,s),1.804(1H,ddt,J=9.58,14.39,4.81Hz),1.996(1H,ddt,J=3.47,14.37,7.21Hz),2.082(3H,s),3.548(2H,dd,J=4.81,7.19Hz),3.936(1H,ddd,J=3.47,6.90,9.48Hz),4.298(1H,dq,J=4.03,7.02Hz),4.450(1H,d,J=11.31Hz),4.513(1H,d,J=11.84Hz),5.239(1H,dd,J=3.99,6.88Hz),7.2−7.5(5H,m).
・13C NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
20.872,23.268,24.421,32.822,65.583,68.749(q,J=31.72Hz),68.700,70.805,73.104,102.461,123.233(q,J=280.13Hz),127.674,127.731,128.415,138.254,169.857.
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
5.43(d,J=6.89Hz)
・IR(neat)cm-1:
3065,3030,2995,2940,2865,1749.。
【0095】
ラセミ体の(Z)−1−ベンジルオキシ−6,6,6−トリフルオロ−4−ヘキセン−3−オールのオスミウム酸化で得られたジアステレオマー混合物である(2R * ,3R * ,4S * )−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオール、ならびに(2S * ,3S * ,4S * )−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオールを同様なアセトニド化、ならびにアセチル化反応に付すことにより、下記化学式(14a)の(2R * ,3R * ,4S * )−2−アセトキシ−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−3,4−O−イソプロピリデン−3,4−ヘキサンジオールを70%の収率で得た。また、副生成物として、下記化学式(14b)の(2S * ,3S * ,4S * )−3−アセトキシ−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,4−O−イソプロピリデン−2,4−ヘキサンジオール、ならびに下記化学式(14c)の(2S * ,3S * ,4S * )−2−アセトキシ−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−3,4−O−イソプロピリデン−3,4−ヘキサンジオールを58:42の混合物として、収率26%で得た。
【0096】
化合物(14b)の1 H−NMRを解析した結果(下記参照)、H2 −H3 ならびにH3 −H4 間の結合定数はそれぞれ9.7Hzであったことから、2,3ならびに4位の水素はいずれもアキシャル配置、すなわち2位と3位、ならびに3位と4位の相対配置はいずれもアンチであると判断した。
【0097】
【化60】
【0098】
(2R * ,3R * ,4S * )−2−アセトキシ−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−3,4−O−イソプロピリデン−3,4−ヘキサンジール(14a)の分析値
・1 H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
1.377(3H,q,J=0.61Hz),1.411(3H,q,J=0.73Hz),1.836(1H,ddt,J=8.89,14.18,5.25Hz),1.982(1H,dddd,J=2.93,6.37,8.20,14.22Hz),2.111(3H,s),3.593(1H,ddd,J=5.49,8.30,9.40Hz),3.642(1H,ddd,J=4.95,6.41,9.34Hz),4.042(1H,dd,J=6.34,7.33Hz),4.188(1H,ddd,J=2.93,7.35,8.76Hz),4.498(1H,d,J=12.21Hz),4.524(1H,d,J=11.97Hz),5.490(1H,dq,J=6.35,6.96Hz),7.2−7.5(5H,m).
・13C NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
20.670,26.950,27.642,34.581,67.057,69.805(q,J=31.11Hz),73.385,75.510,77.154(q,J=1.58Hz),110.542,123.256(q,J=281.04Hz),127.951,128.727,138.663,169.094.
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
4.96(d,J=6.89Hz)
・IR(neat)cm-1:
2990,2935,2865,1769.。
【0099】
(2S * ,3S * ,4S * )−3−アセトキシ−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,4−O−イソプロピリデン−2,4−ヘキサンジオール(14b)の分析値(13C NMRならびにIRは、(14b)と(14c)の判別ができなかったので、まとめてここに示す。)
・13C NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
19.368,20.838,21.028,25.937,28.082,29.006,29.152,32.425,65.255,65.504,67.125,67.692,70.470(q,J=30.51Hz),73.410,73.513,74.138(q,J=32.27Hz),100.085,109.642,123.712(q,J=280.94Hz),128.007,128.038,128.753,128.791,138.572,138.701,168.991,169.691.
・IR(neat)cm-1:
3015,2970,1780.
・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
1.439(3H,s),1.500(3H,s),1.6−2.0(2H,m),2.050(3H,s),3.5−3.6(2H,m),4.005(1H,dt,J=2.44,9.71Hz),4.161(1H,dq,J=9.70,5.70Hz),4.454(1H,d,J=12.09Hz),4.529(1H,d,J=12.45Hz),4.908(1H,t,J=9.71Hz),7.2−7.4(5H,m).
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
2.39(d,J=5.48Hz)。
【0100】
(2S * ,3S * ,4S * )−2−アセトキシ−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−3,4−O−イソプロピリデン−3,4−ヘキサンジオール(14c)の分析値
・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
1.366(3H,s),1.449(3H,s),1.6−2.0(2H,m),2.112(3H,s),3.5−3.6(2H,m),4.287(1H,dd,J=5.19,9.34Hz),4.4−4.5(1H,m),4.498(1H,d,J=12.00Hz),4.528(1H,d,J=12.18Hz),5.253(1H,dq,J=9.31,6.51Hz),7.2−7.4(5H,m).
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
6.52(d,J=5.48Hz)。
【0101】
(2R,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオールならびに(2S,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオールのジアステレオマー混合物の3,4−ビス−t−ブチルジメチルシリル化反応
4.169gの表題ジアステレオマー混合物(14.166mmol,(2R,3R,4S):(2S,3S,4S)=74:26)とそれぞれ42.5mmolのt−ブチルジメチルシリルクロリド(6.406g)とイミダゾール(2.893g)を30mlの塩化メチレンに溶解し、終夜室温で撹拌した。ここに1規定塩酸水溶液を50ml加えて反応を停止させ、50mlの塩化メチレン3回抽出をした。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去すると、2位、3位、4位の3つの水酸基のうちの2カ所がt−ブチルジメチルシリル基で保護された化合物が、混合物として得られた。
【0102】
この混合物を精製することなく75mlのTHFに溶解し、14.2mmolのカリウムt−ブトキシド(1.593g)と−78℃で4時間反応させた。ここに1規定塩酸水溶液を15ml加えて反応を停止させ、30mlの酢酸エチルで3回抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1の溶液を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、下記化学式(15)の(2R,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−3,4−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキサノール、ならびに(19)の(2S,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−3,4−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキサノールを、それぞれ4.673g(8.939mmol,63.1%)ならびに1.768g(3.381mmol,23.9%)得た。
【0103】
【化61】
【0104】
(2R,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−3,4−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキサノール(15)の分析値
・旋光度
[α]D 18 −19.83°(c0.99,CHCl3 ),99.6%ee
・HRMS
C13H15F3 O2 としての計算値260.1024 実測値260.1012・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
0.059(3H,s),0.070(3H,s),0.091(3H,s),0.161(3H,s),0.857(9H,s),0.895(9H,s),1.760(1H,ddt,J=10.19,14.28,4.03Hz),2.276(1H,dddd,J=2.20,6.72,9.77,14.16Hz),3.565(1H,ddd,J=4.39,9.28,9.88Hz),3.595(1H,ddd,J=3.69,6.52,9.44Hz),3.932(1H,dd,J=4.03,8.67Hz),4.039(1H,ddq,J=2.20,8.79,6.51Hz),4.111(1H,ddd,J=1.95,3.66,10.26Hz),4.491(2H,s),5.066(1H,d,J=1.46Hz),7.2−7.5(5H,m).
・13C NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
−5.397,−5.270,−4.447,−4.287,17.776(2C),25.589,25.614,30.019,65.787,69.044(q,J=1.58Hz),72.615(q,J=28.16Hz),72.697,72.900,124.858(q,J=281.96Hz),127.409,127.448,128.236,138.306.
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
2.16(d,J=4.80Hz)
・IR(neat)cm-1:
3415,3030,2955,2930,2890,2860.。
【0105】
(2S,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−3,4−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキサノール(19)の分析値
・旋光度
[α]D 18 +1.26°(c0.93,CHCl3 ),99.6%ee
・HRMS
C13H15F3 O2 としての計算値260.1024 実測値260.1012・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
0.054(3H,s),0.083(3H,s),0.102(3H,s),0.135(3H,s),0.887(9H,s),0.909(9H,s),1.835(1H,ddt,J=7.39,14.80,5.01Hz),2.051(1H,ddt,J=5.24,14.87,7.17Hz),3.561(2H,dd,J=5.02,7.06Hz),3.7−3.9(1H,br),3.947(1H,d,J=7.10Hz),3.95−4.06(1H,m),4.157(1H,dd,J=5.22,7.42Hz),4.508(2H,s),7.2−7.4(5H,m).
・13C NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
−5.737,−5.067,−4.248,−3.779,17.987,18.059,25.809,25.870,34.473,66.830,73.046,73.074(q,J=28.77Hz),74.042(q,J=1.17Hz),74.123,124.899(q,J=281.66Hz),127.697,128.379,137.853.
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
3.61(d,J=6.21Hz)
・IR(neat)cm-1:
3410,3065,3030,2955,2930,2880,2860,2740.。
【0106】
(3S,4R,5S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオールの3,4−ビス−t−ブチルジメチルシリル化反応
上記反応と同様に行い、70%の収率で下記化学式(10)の(2S,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−3,4−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキサノールを得た。
【0107】
【化62】
【0108】
(2S,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−3,4−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキサノール(10)の分析値
・旋光度
[α]D 17 −28.31°(c1.08,CHCl3 ),99.6%ee
・HRMS
C13H15F3 O2 としての計算値260.1024 実測値260.1012・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
0.055(3H,s),0.057(3H,s),0.113(3H,s),0.140(3H,s),0.880(9H,s),0.913(9H,s),1.597(1H,ddt,J=10.16,14.23,4.08Hz),2.053(1H,dddd,J=1.87,6.66,9.59,14.21Hz),3.251(1H,d,J=10.25Hz),3.521(1H,dt,J=4.51,9.46Hz),3.551(1H,ddd,J=3.70,6.51,9.11Hz),3.938(1H,d,J=4.88Hz),3.967(1H,ddd,J=1.56,4.73,10.11Hz),4.205(1H,dq,J=9.83,7.90Hz),4.465(1H,d,J=11.97Hz),4.497(1H,d,J=11.96Hz),7.2−7.4(5H,m).
・13C NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
−5.419,−5.142,−4.437,−4.236,17.780,17.918,25.621,25.666,30.892,66.116(q,J=29.69Hz),66.300,69.133,69.580(q,J=1.68Hz),72.598,125.164(d,J=283.28Hz),127.295,127.322,128.189,138.616
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
0.69(d,J=7.56Hz)
・IR(neat)cm-1:
3515,3065,3030,2955,2930,2885,2855.。
【0109】
(2R,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−3,4−O−イソプロピリデン−2,3,4−ヘキサントリオールのラネーニッケルによる脱ベンジル化
(2R,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−3,4−O−イソプロピリデン−2,3,4−ヘキサントリオール(0.996g,2.98mmol)のエタノール溶液(30ml)に、約0.5gのラネーニッケル(W2)を加え、水素雰囲気下、室温で12時間撹拌を続けた。濾過によりラネーニッケルを除去した後濃縮し、n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶液を展開溶媒としたシリカゲルクロマトグラフィーで精製を行い、下記化学式(6)の(3S,4R,5R)−6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−イソプロピリデン−1,3,4,5−ヘキサンテトラオールを95.3%の収率(0.694g、2.84mmol)で得た。
【0110】
【化63】
【0111】
(3S,4R,5R)−6,6,6−トリフルオロー3,4−O−イソプロピリデン−1,3,4,5−ヘキサンテトラオール(6)の分析値
・旋光度
[α]D 18 +18.21°(c1.20,CHCl3 ),99.6%ee
・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
1.418(3H,s),1.550(3H,s)1.849(1H,dddd,J=3.63,5.30,7.19,14.07Hz),2.048(1H,dddd,J=4.63,5.81,9.84,14.09Hz),1.6−2.2(1H,br),2.7−3.3(1H,br),3.822(1H,ddd,J=4.62,7.14,10.76Hz),3.895(1H,dt,J=10.89,5.37Hz),3.9−4.1(1H,m)4.391(1H,dd,J=1.22,7.22Hz),4.522(1H,ddd,J=3.54,7.08,9.68Hz)
・13C NMRδ(CDCl3 )ppm(TMS)
24.246,26.695,32.273,60.536,67.950(q,J=30.10Hz),73.160(q,J=1.83Hz),75.597,109.142,124.431(q,J=283.79Hz)
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
1.31(d,J=6.89Hz)
・IR(neat)cm-1:
3420,3000,2940.。
【0112】
(2S,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−3,4−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキサノールのラネーニッケルによる脱ベンジル化
上記の反応と同様に行い、70.7%の収率で下記化学式(11)の(3S,4S,5S)−3,4−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−6,6,6−トリフルオロ−1,5−ヘキサンジオールを得た。また、この時13.1%の原料も回収された。
【0113】
【化64】
【0114】
(3S,4S,5S)−3,4−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−6,6,6−トリフルオロ−1,5−ヘキサンジオール(11)の分析値
・旋光度
[α]D 18 −36.23°(c0.97,CHCl3 ),99.6%ee
・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
0.081(3H,s),0.110(3H,s)0.118(3H,s),0.156(3H,s),0.885(9H,s),0.917(9H,s),1.651(1H,ddt,J=9.27,14.32,4.76Hz),1.894(1H,dddd,J=2.13,5.77,9.05,14.31Hz),2.6−3.6(2H,br),3.653(1H,ddd,J=4.76,9.15,10.50Hz),3.767(1H,ddd,J=4.83,5.80,10.56Hz),3.915(1H,ddd,J=2.20,4.64,9.77Hz),3.938(1H,d,J=4.63Hz),4.196(1H,q,J=7.81Hz)
・13C NMRδ(CDCl3 )ppm(TMS)
−5.478,−5.092,−4.437,−4.117,17.736,17.885,25.593,25.647,33.416,59.484,66.117(q,J=29.96Hz),69.555(q,J=1.68Hz),69.778,125.091(q,J=283.18Hz)
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
0.70(d,J=8.24Hz)
・IR(neat)cm-1:
3515,2955,2930,2890,2860.。
【0115】
(2R,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−3,4−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキサノールのラネーニッケルによる脱ベンジル化
上記の反応と同様に行い、87.2%の収率で下記化学式(16)の(3S,4S,5R)−3,4−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−6,6,6−トリフルオロ−1,5−ヘキサンジオールを得た。また、この時9.8%の原料も回収された。
【0116】
【化65】
【0117】
(3S,4S,5R)−3,4−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−6,6,6−トリフルオロ−1,5−ヘキサンジオール(16)の分析値
・旋光度
[α]D 18 −23.61°(c1.29,CHCl3 ),99.6%ee
・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
0.085(3H,s),0.117(3H,s),0.148(3H,s),0.188(3H,s),0.876(9H,s),0.904(9H,s),1.6−1.8(1H,br),1.787(1H,ddt,J=9.30,13.97,4.65Hz),2.149(1H,dddd,J=3.53,5.99,9.54,14.11Hz),3.685(1H,dt,J=4.38,10.22Hz),3.829(1H,ddd,J=4.39,6.05,10.59Hz),3.945(1H,dd,J=3.84,8.80Hz),4.0−4.2(2H,m),4.9−5.1(1H,br)
・13C NMRδ(CDCl3 )ppm(TMS)
−5.454(q,J=1.43Hz),−5.158,−4.487,−4.101,17.763,17.798,25.575,25.613,33.252,58.863,69.297(q,J=1.42Hz),72.447(q,J=28.68Hz),73.456,124.791(q,J=282.37Hz)
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
2.28(d,J=5.53Hz)
・IR(neat)cm-1:
3420,2955,2930,2890,2860.。
【0118】
(2S,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−3,4−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキサノールのラネーニッケルによる脱ベンジル化
上記の反応と同様に行い、97.6%の収率で下記化学式(20)の(3S,4R,5S)−3,4−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−6,6,6−トリフルオロ−1,5−ヘキサンジオールを得た。
【0119】
【化66】
【0120】
(3S,4R,5S)−3,4−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−6,6,6−トリフルオロ−1,5−ヘキサンジオール(20)の分析値
・旋光度
[α]D 17 +4.32°(c0.42,CHCl3 ),99.6%ee
・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
0.080(3H,s),0.104(3H,s)0.129(3H,s),0.140(3H,s),0.885(9H,s),0.909(9H,s),1.868(2H,q,J=5.92Hz),2.0−4.0(2H,br),3.686(1H,dt,J=10.61,6.02Hz),3.794(1H,dt,J=10.54,5.27Hz),3.9−4.1(1H,m),3.981(1H,d,J=4.40Hz),4.173(1H,t,J=6.04Hz)
・13C NMRδ(CDCl3 )ppm(TMS)
−5.718,−5.071,−4.253,−3.721,18.060,18.092,25.805,25.914,35.945,59.100,72.622(q,J=28.57Hz),72.809(q,J=1.37Hz),74.683(q,J=1.12Hz),124.784(q,J=282.27Hz)
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
3.69(d,J=6.89Hz)
・IR(neat)cm-1:
3360,2960,2930,2860.。
【0121】
6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−イソプロピリデン−L−オリオースの合成
15mlの塩化メチレンにピリジニウムジクロマート(PDC;3.762g,10mmol)を懸濁させ、そこに窒素雰囲気下0℃で(3S,4R,5R)−6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−イソプロピリデン−1,3,4,5−ヘキサンテトラオール(0.725g,2.97mmol)を加えた後、室温で2日間撹拌した。反応溶液をセライト濾過した後、減圧で濃縮し、得られた粗生成物をn−ヘキサン:酢酸エチル=2:1の溶液を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、下記化学式(7)の6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−イソプロピリデン−L−オリオースが50.1%(0.360g,1.486mmol)の収率で、90:10のアノマー混合物として得られた。また、更に酸化された、下記化学式(7a)の(3S,4S,5R)−6,6,6−トリフルオロ−3,4−ジヒドロキシ−3,4−O−イソプロピリデンヘキサン−5−オリドが32.7%(0.233g,0.97mmol)得られた。なお、前者の6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−イソプロピリデン−L−オリオースのデータは、主異性体のみを示す。
【0122】
【化67】
【0123】
6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−イソプロピリデン−L−オリオース(7)の分析値
・融点
96.5−97.0℃
・旋光度
[α]D 16 −67.82°(c1.39,CHCl3 ),99.6%ee
・1 H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
1.359(3H,s),1.496(3H,s),1.705(1H,ddd,J=3.35,6.88,15.33Hz),2.380(1H,ddd,J=4.33,5.32,15.32Hz),3.3−3.7(1H,br),4.229(1H,dq,J=2.05,6.74Hz),4.380(1H,dd,J=2.05,7.30Hz),4.578(1H,dt,J=7.40,3.76Hz),5.482(1H,dd,J=5.68,6.71Hz)
・13C NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
25.116,26.236,30.675,68.148(q,J=31.31Hz),70.241,70.566(q,J=1.47Hz),90.856,110.285,123.437(q,J=280.33Hz)
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
5.57(d,J=6.89Hz)
・IR(KBr)cm-1:
3475,2995,2970,2930.。
【0124】
(3S,4S,5R)−6,6,6−トリフルオロ−3,4−ジヒドロキシ3,4−O−イソプロピリデンヘキサン−5−オリド(7a)の分析値
・融点
90.0−91.0℃
・旋光度
[α]D 16 −15.28°(c0.98,CHCl3 ),99.6%ee
・1H NMR:δ(CDCl3 +DMSO−d6 )ppm(TMS)
1.352(3H,s),1.420(3H,s),2.794(1H,dd,J=2.39,16.10Hz),2.919(1H,dd,J=3.19,16.05Hz),4.719(1H,dd,J=1.83,7.61Hz),4.813(1H,dt,J=7.72,2.77Hz),4.924(1H,dq,J=1.85,6.55Hz)
・13C NMR:δ(CDCl3 +DMSO−d6 )ppm(TMS)
24.107,25.771,34.684,70.122(q,J=1.42Hz),71.692,73.040(q,J=32.23Hz),110.170,122.056(q,J=280.33Hz),167.455.
・19F NMR:δ(CDCl3 +DMSO−d6 )ppm(TFA)
5.99(d,J=6.21Hz)
・IR(KBr)cm-1:
3000,2950,1765.。
【0125】
6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−(ビス−t−ブチルジメチルシリル)−D−ボイビノースの合成
上記と同様なPDC酸化反応を行って得た粗生成物を塩化メチレン(0.5M)に溶解し、ここにジイソプロピルアルミニウムヒドリド(DIBAL−H;1.0当量)を窒素雰囲気下−78℃で加えて1時間撹拌した。同様な後処理後、得られた粗生成物をn−ヘキサン:酢酸エチル=6:1の溶液を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、下記化学式(12)の6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−(ビス−t−ブチルジメチルシリル)−D−ボイビノースを86.0%の収率で75:25のアノマー混合物として得た。なおデータは主異性体のみを示す。
【0126】
【化68】
【0127】
6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−(ビス−t−ブチルジメチルシリル)−D−ボイビノース(12)
・旋光度
[α]D 17 +21.74°(c1.92,CHCl3 ),99.6%ee
・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
0.072(3H,s),0.086(3H,s),0.145(3H,s),0.159(3H,s),0.894(9H,s),0.929(9H,s),1.726(1H,ddt,J=3.42,14.16,1.10Hz),2.288(1H,ddd,J=2.50,3.60,14.22Hz),3.775(1H,d,J=3.91Hz),3.991(1H,q,J=2.93Hz),4.491(1H,dq,J=0.98,6.96Hz),5.16−5.32(2H,m)
・13C NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
−5.243,−5.183,−4.869,−4.666,17.750,17.790,25.585,30.545,65.558(q,J=30.91Hz),66.555(q,J=1.73Hz),69.905,92.999,124.060(q,J=280.03Hz)
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
5.45(d,J=6.21Hz)
・IR(neat)cm-1:
3495,2955,2930,2900,2860.。
【0128】
6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−(ビス−t−ブチルジメチルシリル)−L−オリボースの合成
上記と同様なPDC酸化反応、ならびにDIBAL−H還元を行い、下記化学式(17)の6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−(ビス−t−ブチルジメチルシリル)−L−オリボースを95.4%の収率で87:13のアノマー混合物として得た。なお、データは主異性体のみを示す。
【0129】
【化69】
【0130】
6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−(ビス−t−ブチルジメチルシリル)−L−オリボース(17)の分析値
・旋光度
[α]D 18 −19.22°(c1.28,CHCl3 ),99.6%ee
・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
0.094(3H,s),0.098(3H,s),0.104(6H,s),0.874(9H,s),0.893(9H,s),1.838(1H,ddd,J=4.32,7.74,13.69Hz),2.001(1H,ddd,J=3.66,4.65,13.70Hz),2.4−3.2(1H,br),3.719(1H,dd,J=5.29,7.32Hz),3.966(1H,ddd,J=3.66,5.23,7.70Hz),4.112(1H,dq,J=7.42,7.42Hz),5.395(1H,t,J=4.49Hz)
・13C NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
−4.584(q,J=1.68Hz),−3.970,−3.222,−2.892,18.360,18.599,26.307,26.436,36.628,70.787,71.355,73.079(q,J=29.29Hz),91.913,124.807(q,J=280.74Hz)
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
5.42(d,J=6.89Hz)
・IR(neat)cm-1:
3420,2955,2940,2900,2860.。
【0131】
6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−(ビス−t−ブチルジメチルシリル)−D−ジギトキソースの合成
上記と同様なPDC酸化反応、ならびにDIBAL−H還元を行い、下記化学式(21)の6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−(ビス−t−ブチルジメチルシリル)−D−ジギトキソースを85.6%の収率で79:21のアノマー混合物として得た。なおデータは主異性体のみを示す。
【0132】
【化70】
【0133】
6,6,6−トリフルオロ−3,4−O−(ビス−t−ブチルジメチルシリル)−D−ジギトキソース(21)の分析値
・旋光度
[α]D 19 +59.78°(c1.10,CHCl3 ),99.6%ee
・1H NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
0.0−0.2(12H,m),0.898(9H,s),0.927(9H,s),1.913(1H,ddd,J=2.42,3.75,14.24Hz),2.00−2.15(1H,m),3.777(1H,dd,J=2.39,9.09Hz),4.1−4.2(1H,m),4.382(1H,dq,J=9.14,6.90Hz),5.15−5.50(2H,m)
・13C NMR:δ(CDCl3 )ppm(TMS)
−5.549(q,J=1.63Hz),−4.635,−4.523,−3.306,17.853,17.938,25.686,25.979,36.368,66.905(q,J=29.28Hz),69.088,71.381,92.369,124.460(q,J=280.23Hz)
・19F NMR:δ(CDCl3 )ppm(TFA)
6.07(d,J=6.89Hz)
・IR(neat)cm-1:
3420,2950,2935,2875,2860.
【0134】
【発明の効果】
本発明は、以下のような優れた効果を有するものであり、本発明が有機フッ素化学工業に貢献するところ大である。
【0135】
(1)本発明は、比較的安価な原料である2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンを出発原料とし、わずか7段階という短工程で、2,6−ジデオキシ−6,6,6−トリフルオロヘキソース類の可能な4種類の立体異性体すべてを、非常に高い光学純度で効率よく合成することができる。
【0136】
(2)いずれの実験操作も、特別な反応装置等が不要であり、ごく簡便に実行することができる。
【0137】
(3)t−ブチルジメチルシリル基での保護や、最終工程の位置選択的酸化など、トリフルオロメチル基の有している強い電子吸引性を有効に利用し、合成経路の短工程化を実現できる。
Claims (4)
- 化学式(1)
で表される(2R,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2,3,4−ヘキサントリオール誘導体を、脱ベンジル化して、得られる一般式(6)
で表される(3S,4R,5R)−6,6,6−トリフルオロ−1,5−ヘキサンジオール誘導体を、酸化することを特徴とする一般式(7)
で表される6,6,6−トリフルオロ−L−オリオース(6−デオキシ−6,6,6−トリフルオロ−L−リキソピラノース)誘導体の製造方法。 - 化学式(1)
で表されるシリルクロリド化合物と反応させて、得られる一般式(10)
で表される(2S,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキサノール誘導体を、脱ベンジル化して、得られる一般式(11)
で表される(3S,4S,5S)−6,6,6−トリフルオロ−1,5−ヘキサンジオール誘導体を、還元することを特徴とする一般式(12)
で表される6,6,6−トリフルオロ−D−ボイビノース(6−デオキシ−6,6,6−トリフルオロ−D−キシロピラノース)誘導体の製造方法。 - 化学式(1)
で表されるシリルクロリド化合物と反応させて、得られる一般式(15)
で表される(2R,3S,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキサノール誘導体を、脱ベンジル化して、得られる一般式(16)
で表される(3S,4S,5R)−6,6,6−トリフルオロ−1,5−ヘキサンジオール誘導体を、還元することを特徴とする、一般式(17)
で表される6,6,6−トリフルオロ−L−オリボース(6−デオキシ−6,6,6−トリフルオロ−L−アラビノピラノース)誘導体の製造方法。 - 化学式(1)
で表されるシリルクロリド化合物と反応させて、得られる一般式(19)
で表される(2S,3R,4S)−6−ベンジルオキシ−1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキサノール誘導体を、脱ベンジル化して得られる一般式(20)
で表される(3S,4R,5S)−6,6,6−トリフルオロ−1,5−ヘキサンジオール誘導体を、還元することを特徴とする一般式(21)
で表される6,6,6−トリフルオロ−D−ジギトキソース(6−デオキシ−6,6,6−トリフルオロ−D−リボピラノース)誘導体の製造方法。
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JPH0873485A JPH0873485A (ja) | 1996-03-19 |
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