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JP3654527B2 - Method for producing phenol derivatives of lignin - Google Patents

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JP3654527B2 JP2002284309A JP2002284309A JP3654527B2 JP 3654527 B2 JP3654527 B2 JP 3654527B2 JP 2002284309 A JP2002284309 A JP 2002284309A JP 2002284309 A JP2002284309 A JP 2002284309A JP 3654527 B2 JP3654527 B2 JP 3654527B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物体の構成成分を分離及び変換する技術に関し、特に、細胞壁構成成分であるリグノセルロースマトリックスを分離し、利用可能な誘導体に変換する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
植物体の主たる構成成分である細胞壁構成成分、すなわち、リグニンとセルロースやヘミセルロースなどとの複合系含有材料(以下、リグノセルロース系材料という。)を、これをフェノール誘導体と酸とを用いて分離・誘導体化する技術がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
かかる技術においては、リグニンをリグニン−セルロースマトリックスから分離するために、相分離という手法を用いている。すなわち、予め、リグノセルロース系材料をフェノール化合物で溶媒和させておくかあるいは収着しておいた上で、リグノセルロース系材料を酸と接触させることにより、リグニンにフェノール化合物をグラフトさせると同時にリグニンをセルロースとのマトリックスから分離するというものである。
また、これらの方法において、分離効率を改善する技術もある(特許文献3)
【0003】
【特許文献1】
特開平2−233701号公報
【特許文献2】
特開平9−278904号公報
【特許文献3】
特開2001−131201号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
現在、この方法で得られるリグニン誘導体の物性等は、由来するリグノセルロース系材料に大きく由来しており、その分子量、フェノール化合物の導入効率、収率等を制御するにはいたっていない。
しかしながら、リグニン含有材料からかかる相分離を伴う構造変換によりリグニン誘導体を得ようとする場合、リグニン誘導体の収率、分子量、フェノール化合物の導入率等をある程度制御できることが望まれる。特に、リグニン誘導体を工業的に得ようとする場合、効率的な反応工程が望まれる。
そこで、本発明では、リグノセルロース系材料からリグニン誘導体を得るのに際して、リグニン誘導体の物性や生産効率等を制御できる技術を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、リグノセルロース系材料をセルロースとリグニン誘導体とに分離するのにあたり、分離変換に必要とされるファクターを検討し、リグノセルロース系材料に親和性の高い媒体であるフェノール誘導体との親和工程、リグニン−セルロース複合体からの成分分離媒体であり反応媒体でもある酸性媒体との接触工程に着目し、超音波などの物理的エネルギーの付加について検討したところ、超音波照射により、セルロース−リグニンマトリックスの変換システムによる脱複合を促進できることを見出した。また、超音波照射により、相分離変換により得られるリグニン誘導体の収率の他、分子量、フェノール化合物の導入比率等を制御できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
【0006】
(1)リグニンのフェノール誘導体の生産方法であって、
フェノール誘導体によりリグノセルロース系材料を親和する工程、及び
フェノール誘導体により予め親和されたリグノセルロース系材料に酸を添加して得られる反応系においてリグニンにフェノール誘導体を導入する工程、
の少なくとも一つの工程において、リグノセルロース系材料を含む混合系に対して超音波を照射する、方法。
(2)前記親和工程は、フェノール誘導体を含有する液相でリグノセルロース系材料を溶媒和する工程である、(1)記載の方法。
(3)前記親和工程は、フェノール誘導体を含有する溶媒を予めリグノセルロース系材料に浸透させる工程と当該溶媒を除去する工程とを備える、(1)記載の方法。
(4)前記導入工程における前記酸を、少なくとも、前記リグノセルロース系材料におけるリグニン−セルロースマトリックスを膨潤させうる強度で添加し、当該導入工程における混合系に超音波を照射する、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記導入工程の前段において、前記リグノセルロース系材料におけるリグニン−セルロースマトリックスを膨潤させない強度の酸を添加し、当該導入工程における混合系に超音波を照射する、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の方法によって得られるリグニンのフェノール誘導体と前記リグノセルロース系材料由来の炭水化物とを含有する組成物。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のリグノフェノール誘導体の生産方法は、フェノール誘導体によりリグノセルロース系材料を親和する工程において、リグノセルロース系材料とフェノール誘導体との混合系に超音波を照射すること、あるいはフェノール誘導体により予め親和されたリグノセルロース系材料に酸を添加した混合系に対して超音波を照射することを特徴としている。
前記親和工程における混合系に超音波を照射することにより、フェノール誘導体とリグノセルロース系材料との接触を高め、リグノセルロース系材料へのフェノール誘導体の収着及び/又は溶媒和を促進させることができる。
また、フェノール誘導体で親和されたリグノセルロース系材料を酸と接触させることにより、リグニン−セルロースマトリックスのリグニンにフェノール誘導体を導入し構造変換すると同時に、ベンジルアリールエーテル結合の開裂により、複合体から分離される。従来は、外力、具体的には機械的攪拌によりフェノール誘導体で親和されたリグノセルロース系材料と酸との接触を図っていたが、超音波をこの混合系に照射することにより、酸による炭水化物の分解、リグニンと酸との接触確率の向上により、フェノール誘導体でリグニン相が親和されたリグニン−セルロース複合体の脱複合が促進され、同時にリグニンへのフェノール誘導体の導入も促進されると考えられる。
【0008】
脱複合の促進により、フェノール誘導体の導入率を高めることができる。特に、酸をリグニン−セルロースマトリックスを膨潤させる強度で添加することにより、超音波照射によるリグノフェノール誘導体の変換・分離をスピードアップすることができる。
さらに、超音波の照射は他の側面においても有用である。すなわち、フェノール誘導体の導入にあたって使用する酸強度を低下させることができる。これにより、水層からの酸の除去工程などを効率化することができる。また、酸強度の低下は、多様なリグノフェノール誘導体の調製も可能とし、さらに、当該リグノフェノール誘導体とリグノセルロース系材料に由来する炭水化物との組成物において容易に炭水化物含有量を調節することができる。
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(リグノセルロース系材料)
本発明で用いる「リグノセルロース系材料」とは、植物細胞壁の構成成分であるリグニン−セルロース複合体を含有する材料であれば足り、特にその種類を問うものではない。例えば、木質化した材料、主として木材である各種材料、例えば、木粉、チップの他、廃材、端材、古紙などの木材資源に付随する農産廃棄物や工業廃棄物を挙げることができる。また用いる木材の種類としては、針葉樹、広葉樹など任意の種類のものを使用するこができる。さらに、ケナフ、稲、さとうきび、とうもろこしなどの各種草本植物の全体あるいは一部、それに関連するバガスなどの農産廃棄物や工業廃棄物なども使用できる。
【0010】
(リグノフェノール誘導体及びその製造プロセス)
リグノフェノール誘導体は、リグニンのアリールプロパンユニット(C9ユニット)のC1位に、フェノール誘導体がC−C結合で導入された1、1−ビス(アリール)プロパン単位を含む重合体を意味するものである。ポリフェノールの一種である。
リグノフェノール誘導体は、また、リグニン含有材料から反応、分離して得られるリグニン由来のポリマーの混合物であり、また、得られるポリマーにおける導入フェノール誘導体の量や分子量は、原料となるリグニン含有材料(典型的にはリグノセルロース系材料である。)および反応条件により変動することが多いとされている。
【0011】
リグノフェノール誘導体は、通常、所定のフェノール誘導体により親和されたリグニン含有材料、好ましくはリグノセルロース系材料を酸に接触させることにより、得ることができる。なお、リグノフェノール誘導体に関するより一般的な記載及びその製造プロセスについては、既に、特開平2−23701号公報、特開平9−278904号公報及び国際公開WO99/14223号公報、2001−64494号公報、2001−261839号公報、2001−131201号公報、2001−34233号公報において記載されている(これらの特許文献に記載の内容は、全て引用により本明細書中に取り込まれるものとする)。
【0012】
本製造プロセスは、リグノセルロース系材料をフェノール誘導体相側に維持しながら、選択的に酸と接触させ、分解したセルロースを酸側に分配し、酸との接触を介してフェノール誘導体が導入されたリグニンをフェノール誘導体側に分配するというリグニンの構造変換と分離とを同時に達成するプロセスである。このような反応系を構築するのにあたり、特に、リグノセルロース系材料を予めフェノール誘導体で親和させておくことが好ましい。ここで、親和とは溶媒和、浸透、並びに吸収及び吸着(収着ともいう。)の意味で用いられている。すなわち、かかる反応系において、リグノセルロースの複合状態を緩和させ、同時に、天然リグニンのアリールプロパンユニットのC1位(ベンジル位)に選択的に前記フェノール誘導体をグラフティングさせて、リグノフェノール誘導体を生成させ、同時にセルロースとリグノフェノール誘導体とに分離できる方法である。
この方法によると、使用したフェノール誘導体のオルト位あるいはパラ位でリグニンのフェニルプロパンユニットのC1位に当該フェノール誘導体がグラフトされた、1、1−ビス(アリール)プロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体を得ることができる。なお、得られるリグノフェノール誘導体においては、通常、フェノールがグラフトされていないアリールプロパンユニットも残存している。
【0013】
リグノセルロース系材料からリグノフェノール誘導体を得る方法としては、各種方法を例示することができる。
これらのいずれの形態においても、フェノール誘導体によりリグノセルロース系材料を親和する工程と、フェノール誘導体により予め親和されたリグノセルロース系材料に酸を添加して得られる反応系においてリグニンにフェノール誘導体を導入する工程とを備えている。
これらの方法は、親和工程が1段かあるいは2段かという点で区別することができ、また、得られたリグノフェノール誘導体の分離方法において区別することもできる。
なお、以下の例示に典型的な4種類の方法を例示するが、これら4種類の方法に限定することを意図するものではない。
【0014】
第1の方法は、特開平2−233701号公報に記載されている方法である。この方法は、1段の親和工程を備えている。1段の親和工程は、木粉等のリグノセルロース系材料に液体状のフェノール誘導体を浸透させ、リグニンをフェノール誘導体により溶媒和させる工程である。なお、フェノール誘導体はベンゼンなどの不活性溶媒によって希釈して用いることもできる。
次に、導入工程について説明する。導入工程は、リグノセルロース系材料に濃酸(上記で説明したもの、例えば、72%硫酸)を添加し混合して、セルロース成分を加水分解するとともに、フェノール誘導体をリグニンに導入する工程である。
この工程では、リグニンを溶媒和したフェノール誘導体と、セルロース成分を溶解した濃酸とが2相分離系を形成する。フェノール誘導体により溶媒和されたリグニンは、フェノール誘導体相が濃酸相と接触する界面においてのみ、酸と接触され、反応が生じる。すなわち、酸との界面接触により生じたリグニン基本構成単位の高反応サイトである側鎖C1位(ベンジル位)のカチオンが、フェノール誘導体により攻撃される。その結果、前記C1位にフェノール誘導体がC−C結合で導入され、またベンジルアリールエーテル結合が開裂することにより低分子化される。これによりリグニンが低分子化され、同時にその基本構成単位のC1位にフェノール誘導体が導入されたリグノフェノール誘導体がフェノール誘導体相に生成される。このフェノール誘導体相から、リグノフェノール誘導体が抽出される。リグノフェノール誘導体は、リグニン中のベンジルアリールエーテル結合が開裂して低分子化されたリグニンの低分子化体の集合体として得られる。なお、ベンジル位へのフェノール誘導体の導入形態は、そのフェノール性水酸基を介して導入されているものもあることが知られている。
図1には、アリールプロパンユニットを有する天然リグニンに対して相分離処理を行うことにより、各種のリグノフェノール誘導体が得られることを示している。
【0015】
フェノール誘導体相からのリグノフェノール誘導体の抽出は、例えば、次の方法で行うことができる。すなわち、フェノール誘導体相を、大過剰のエチルエーテルに加えて得た沈殿物を集めて、アセトンに溶解する。アセトン不溶部を遠心分離などにより除去し、アセトン可溶部を濃縮する。このアセトン可溶部を、大過剰のエチルエーテルに滴下し、沈殿区分を集める。この沈殿区分から溶媒留去し、リグノフェノール誘導体を得る。なお、粗リグノフェノール誘導体は、前記アセトン可溶部を単に減圧蒸留により除去することによって得ることができる。
【0016】
第2および第3の方法は、2段の親和工程を備えている。2段の親和工程は、リグノセルロース系材料に、固体状あるいは液体状のフェノール誘導体(例えば、p−クレゾール又は2、4−ジメチルフェノールなど)を溶解した溶媒(例えば、エタノールあるいはアセトンなど)を浸透させた後、溶媒を留去する工程である。
次に、このリグノセルロース系材料に濃酸を添加してセルロース成分を溶解する(上記導入工程に該当する。)。この結果、第1の方法と同様、フェノール誘導体により溶媒和されたリグニンは、濃酸と接触して生じたリグニンの高反応サイト(側鎖C1位)のカチオンがフェノール誘導体により攻撃されて、フェノール誘導体が導入される。また、ベンジルアリールエーテル結合が開裂してリグニンが低分子化される。得られるリグノフェノール誘導体の特性は、第1の方法で得られるものと同様である。そして、第1の方法と同様にして、フェノール誘導体が導入されたリグノフェノール誘導体を液体フェノール誘導体にて抽出する。液体フェノール誘導体相からのリグノフェノール誘導体の抽出は、第1の方法と同様にして行うことができる(これを第2の方法と称する)。あるいは、濃酸処理後の全反応液を過剰の水中に投入し、不溶区分を遠心分離にて集め、脱酸後、乾燥する。この乾燥物にアセトンあるいはアルコールを加えてリグノフェノール誘導体を抽出する。さらに、この可溶区分を第1の方法と同様に、過剰のエチルエーテル等に滴下して、リグノフェノール誘導体を不溶区分として得る(これを第3の方法と称する)。以上、リグノフェノール誘導体の調製方法の具体例を説明したが、これらに限定されるわけではなく、これらに適宜改良を加えた方法で調製することもできる。
【0017】
第4の方法は、特開2001−131201号公報に記載の方法であり、リグノセルロース系材料、フェノール誘導体、及び酸を含む混合物(本明細書においては反応系ともいう。)にベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサンまたはこれらの混合物から選択される不活性低沸点疎水性有機溶媒とを混合後、遠心分離して3層に分離し、リグノフェノール誘導体画分をバンド状に凝集した第2層として分取する方法である。上記反応系を得るまでの親和工程及び導入工程は、上記第1の方法〜第3の方法と同様に実施することができる。また、分取したリグノフェノール誘導体は、上記第1及び第2の方法に示すようにエーテル不溶画分に分配後、アセトン可溶画分に分取することもできるし、上記第3の方法のように、過剰の水に投入して水不溶画分として得ることができる。好ましくは、上記第3の方法のように、水不溶画分に分取した後、酸を洗浄除去し、最終的にアセトン等に溶解する画分にリグノフェノール誘導体を得る。
【0018】
(フェノール誘導体)
リグノセルロース系材料を予め親和させるリグノフェノール誘導体としては、1価のフェノール誘導体、2価のフェノール誘導体、または3価のフェノール誘導体などを用いることができる。
1価のフェノール誘導体の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいフェノール、1以上の置換基を有していてもよいナフトール、1以上の置換基を有していてもよいアントロール、1以上の置換基を有していてもよいアントロキノンオールなどが挙げられる。
2価のフェノール誘導体の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいカテコール、1以上の置換基を有していてもよいレゾルシノール、1以上の置換基を有していてもよいヒドロキノンなどが挙げられる。
3価のフェノール誘導体の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいピロガロールなどが挙げられる。
本発明においては1価のフェノール誘導体、2価のフェノール誘導体及び3価のフェノール誘導体のうち、1種あるいは2種以上を用いることができるが、好ましくは1価のフェノールを用いる。
【0019】
前記1価から3価のフェノール誘導体が有していてもよい置換基の種類は特に限定されず、任意の置換基を有していてもよいが、好ましくは、電子吸引性の基(ハロゲン原子など)以外の基であり、例えば、炭素数が1〜4、好ましくは炭素数が1〜3の低級アルキル基含有置換基である。導入率を考慮すれば、メチル基、あるいはエチル基などのバルキーでない置換基であることが好ましい。低級アルキル基含有置換基としては、例えば、低級アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、低級アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など)である。また、アリール基(フェニル基など)の芳香族系の置換基を有していてもよい。また、水酸基含有置換基であってもよい。
【0020】
これらのフェノール誘導体は、そのフェノール性水酸基に対してオルト位あるいはパラ位の炭素原子がリグニンのフェニルプロパンユニットのC1位の炭素に結合することにより、フェニルプロパンユニットに導入されることになる。したがって、導入サイトを確保するには、オルト位及びパラ位のうち、少なくともひとつの位置に置換基を有していないことが好ましい。
【0021】
以上のことから、本発明では、無置換フェノール誘導体の他、少なくとも一つの無置換のオルト位あるいはパラ位を有する各種置換形態のフェノール誘導体の1種あるいは2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0022】
フェノール誘導体の好ましい具体例としては、p−クレゾール、2、6−ジメチルフェノール、2、4−ジメチルフェノール、2−メトキシフェノール(Guaiacol)、2、6−ジメトキシフェノール、カテコール、レゾルシノール、ホモカテコール、ピロガロール及びフロログルシノールなどが挙げられる。好ましくは、p−クレゾールである。
【0023】
(酸)
導入工程において用いる酸としては、特に限定しない。例えば、硫酸、塩酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などを挙げることができる。好ましくは、本来的にあるいは濃度によりリグニン−セルロースマトリックスを膨潤させうる強度の酸であることが好ましい。なお、ここで酸で膨潤させる対象は主としてセルロースである。かかる強度の酸としては、例えば、65wt%以上の硫酸、85wt%以上のリン酸、35wt%以上の塩酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、及びギ酸などを挙げることができる。好ましい酸として、72wt%の硫酸、95wt%のリン酸、45wt%のトリフルオロ酢酸及びギ酸を挙げることができる。
なお、セルロース、ヘミセルロース由来の水溶性多糖、オリゴ糖、及び単糖を効率的に回収するには、硫酸を用いることが好ましく、セルロースに対する作用を抑制し、その高次構造をある程度保持した形で回収するには、リン酸など酸強度の低い酸を用いることが好ましい。
【0024】
なお、導入工程の当初あるいは導入工程に先だって、フェノール誘導体とリグノセルロース系材料に、リグニン−セルロースマトリクスを膨潤させない強度で酸を添加した混合系を調製する場合がある。当該混合系に超音波を照射することにより、フェノール誘導体の導入に先だってリグニン−セルロースマトリックスの脱複合を促進できる場合があるからである。ここで、リグニン−セルロースマトリクスを膨潤させない程度の酸としては、上記したリグニン−セルロースマトリクスを膨潤させうる酸の強度よりも弱い程度とすることができる。具体的には、65t%未満の硫酸、85wt%未満のリン酸、35wt%未満の塩酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、及びギ酸などを挙げることができる。好ましい酸として、しくは60wt%以下の硫酸、80wt%以下のリン酸、30wt%以下の塩酸、トリフルオロ酢酸及びギ酸を挙げることができる。なお、導入工程に先だつ混合系においては、さらに弱い酸強度であってもよい。
【0025】
なお、フェノール誘導体の導入頻度は、導入しようとするフェノール誘導体の置換基の有無、位置、大きさ等によって変動する。したがって、導入頻度を調節することができる。特に、置換基の大きさによる立体障害によって導入頻度を容易に調節することができる。置換基を利用して導入位置などを制御しようとする場合、置換基として低級アルキル基を利用すると、炭素数や分枝形態によって容易に導入頻度を調節できる。置換基をメチル基とすると、導入頻度を高く維持して導入位置を制御できる。
【0026】
以下に、リグノセルロース系材料から得られる一次誘導体の有する全体的、一般的性質を挙げる。ただし、本発明におけるリグノフェノール誘導体を、以下の性質を有するものに限定する趣旨ではない。
(1)重量平均分子量が約2000〜20000程度である。
(2)分子内に共役系をほとんど有さずその色調は極めて淡色である。典型的には淡いピンク系白色粉末である。
(3)針葉樹由来で約170℃、広葉樹由来で約130℃に固−液相転移点を有する。
(4)メタノール、エタノール、アセトン、ジオキサン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどに容易に溶解する。
【0027】
(超音波の照射)
(親和工程における超音波の照射)
本発明方法においては、フェノール誘導体によるリグノセルロース系材料の親和工程において、リグノセルロース系材料及び/又はフェノール誘導体に超音波を照射することが好ましい。好ましくは、リグノセルロース系材料とフェノール誘導体とが同時に存在する状態において両者に超音波を照射するようにする。かかる超音波照射により、リグノセルロース系材料へのフェノール誘導体を効率的にかつ十分に浸透させて、両者が十分に親和した状態を容易にかつ速やかに得ることができる。この結果、その後の、リグニンへのフェノール誘導体の導入工程において、効率的にリグニンにフェノール誘導体を導入できるようになる。
【0028】
かかる親和工程は、上記した第1の方法及び第2の方法において例示した親和工程のいずれにも適用することができる。上記第1の方法にあっては、リグノセルロース系材料に液体のフェノール誘導体を浸透させた状態、あるいはリグノセルロース系材料をフェノール誘導体に浸漬した状態で、超音波を照射することができる。また、上記第2の方法にあっては、リグノセルロース系材料にフェノール誘導体を溶解させた有機溶媒(例えば、アセトン、エタノール、ベンゼン、ヘキサン、トルエン、キシレン、またはこれらの混合液)を浸漬あるいは浸透させた状態であって好ましくは有機溶媒の留去前の状態で超音波を照射することができる。なお、超音波を照射しながら有機溶媒を留去することもできる。
【0029】
なお、本発明にあっては、用いる超音波の電圧や周波数は特に限定しないで、フェノール誘導体とリグノセルロース系材料との親和性を向上できる程度以上の条件で照射すればよい。通常用いられ得る超音波発生器の電力及び周波数(電力約100W~約1500W、周波数約20kHz〜約40kHz)であれば、数十秒〜数十分程度の照射で上記効果を得ることができる。
超音波の照射形態は特に限定しないが、液体であるフェノール誘導体中に発振子を侵入させた状態でもよいし、また、液体であるフェノール誘導体が入った容器を浸漬した水槽等に発振子を配置して照射してもよい。
また、超音波照射に伴って、別途機械的攪拌を付随させてもよい。なお、超音波照射は必ずしも連続的である必要はなく、断続的であってもよい。また、親和工程の全時間にわたって使用することを要するものでもなく、親和工程の一部において使用するのみであってもよい。
【0030】
(導入工程における超音波照射)
また、本発明にあっては、上記フェノール誘導体の導入工程において、予め親和されたリグノセルロース系材料に酸を添加して得られる反応系に対して超音波を照射することが好ましい。当該反応系に対して超音波を照射する場合、好ましくはほぼその全域に超音波を照射する。あるいは、他の攪拌混合手段、具体的には攪拌子や攪拌羽根による機械的攪拌手段や噴流等による攪拌手段を付随させることも好ましい。
【0031】
リグニンへのフェノール誘導体の導入工程において、超音波を照射することにより、リグノセルロース系材料におけるリグニン−セルロースマトリックスの脱複合を促進できる。このため、当該マトリックスにおけるセルロース領域にセルロースを膨潤するのに十分程度の酸性下にある場合には、酸が速やかに浸透することにより、セルロースが速やかに膨潤し、分子量の大きい状態でリグニンがマトリックスから分離されやすくなる。したがって、超音波処理により、相対的に高分子領域のリグノフェノール誘導体を効率的に得ることができる。
【0032】
超音波の照射は、また、リグニンと酸との接触確率を向上させ、早期にリグノフェノール誘導体の生成量と高い導入率が得られるという側面がある。導入率の向上は、脱複合の促進によっても促進される。
したがって、単に機械的攪拌を用いる以外は同条件下において得られる導入率を、適度な超音波の照射を伴う導入工程を実施することにより、約4分の1〜半分程度の時間で達成することができる。
また、導入工程でセルロースを膨潤するのに十分程度の酸性下で超音波照射を行うことにより、導入工程の比較的初期においても、分子量が高くかつフェノール誘導体の導入率も高いリグノフェノール誘導体を容易に得ることができる。
なお、親和工程で超音波照射を行っている場合には、リグノセルロース系材料とフェノール誘導体とがよく親和しているので、酸との接触によるリグニン−セルロースマトリックスの脱複合がより一層導入が速やかであり、また、導入後も安定的にフェノール誘導体相への分配され、セルロースとの分離を容易化することができる。
【0033】
第1の方法及び第4の方法における導入工程で超音波照射を行うことにより、生成したリグノフェノール誘導体のフェノール誘導体相への分配を促進することができる。すなわち、相分離が早期に達成される。これはリグニンに効率的にフェノール導入体が導入され変換が促進されたことによるものと推定される。
【0034】
導入工程における超音波照射の電圧や周波数は、親和工程と同様、特に限定しない。フェノール誘導体とリグノセルロース系材料との接触確率は、通常用いられ得る超音波発生器の電力及び周波数(電力約100W〜約1500W、周波数約20kHz〜約40kHz)であれば、数十秒〜数十分程度の照射で十分向上させることができる。
超音波の照射形態は特に限定しないが、液体であるフェノール誘導体中に発振子を侵入させた状態でもよいし、また、液体であるフェノール誘導体が入った容器外部に発振子を配置して照射してもよい。また、親和工程と同様、超音波照射に伴って、別途機械的攪拌を付随させることもできるし、照射は、連続的でも断続的であってもよい。また、導入工程の全時間にわたって使用することを要するものでもなく、導入工程の一部において使用するのみであってもよい。なお、上記したように、超音波照射によりリグニン−セルロースマトリクスの脱複合とリグノフェノール誘導体の導入が促進されることから、超音波照射工程は、導入工程の少なくとも初期において実施することが好ましい。より好ましくは、導入工程の前半において実施するようにする。
なお、導入工程における超音波以外の攪拌あるいは分散手段の強度を変えることによって超音波照射による作用効果を調節することもできる。
【0035】
なお、超音波の照射は、導入工程の前段あるいはその一部として、予めフェノール誘導体で親和されたリグノセルロース系材料と水あるいはセルロースを全くあるいは殆ど加水分解しない程度の酸を含有する希酸溶液との混液に対して行うこともできる。このような予備的照射後に、適切な酸性度、すなわち、リグニン−セルロースマトリクスを膨潤できる程度となるように酸を添加し、導入工程(超音波照射あり、なしのいずれでもよい)を実施することができる。かかる予備的な超音波照射は、親和工程で行う超音波照射同様、リグニンやセルロースがただちに分解あるいは反応することが抑制された状態での照射ではあるが、リグニンやセルロースの複合状態の緩和あるいは解除を促進する。このため、導入工程でのフェノール誘導体と導入やリグニン−セルロースマトリックスの脱複合を促進することができる。
【0036】
超音波照射を伴う導入工程で、使用する酸の強度によって以下の効果を奏する。
例えば、リグニン−セルロースマトリックスを十分に膨潤できる、換言すれば、セルロースを十分に溶解できる酸性下の場合、例えば、72wt%あるいはそれ以上の濃度の硫酸を用いた場合には、当該導入工程で超音波処理を行うと、非常に早期に高い収率でリグノフェノール誘導体を得ることができる他、最終的に生成するリグノフェノール誘導体の生成量を高めることができる。特に、前記第3の方法における水不溶区分におけるリグノフェノール誘導体の比率を容易に高める(換言すればセルロース含量を低下させる)ことができ、その後のリグノフェノールの分取工程を容易化することができる。
【0037】
また、導入工程で超音波処理を用いない場合、酸濃度が確実にセルロースを溶解できる程度の濃度では、効率的なリグノフェノール誘導体の製造は困難であったが、導入工程で超音波を照射することにより、62wt%以上72wt%未満(好ましくは65wt%以上、また、好ましくは70wt%以下)の硫酸でも、十分にセルロースを溶解し、導入工程を促進することができる。したがって、酸の使用量を低減できる他、例えば、第3の方法の分取方法のように、フェノール誘導体導入後の反応系を大量の水に投入して水不溶区分とし、当該水不溶区分から酸を洗浄除去するにあたり、洗浄工程を簡略化することができるという利点がある。
【0038】
さらに、62wt%以上72wt%未満の硫酸を用いた場合、リグノフェノール誘導体の収率やフェノール誘導体の導入効率を超音波照射の条件(時間と強さ)が増強されるのに伴って、フェノール誘導体の導入率やリグノフェノール誘導体の生成量が広い範囲で変化(増加)する。すなわち、かかる程度の酸性下で超音波処理条件を調整することで、広い範囲でフェノール誘導体の導入効率やリグノフェノール誘導体の生成量を容易に調整できる。
すなわち、導入工程における超音波照射条件に酸強度の調整を組み合わせることにより、リグノフェノール誘導体の収率、フェノール誘導体の導入率、得られるリグノフェノール誘導体の分子領域を容易に調整することができる。
【0039】
さらに第3の方法の分取方法を採用する場合、酸の強度が、複合体中のセルロースを加水分解できない程度の酸強度、例えば、約60wt%の硫酸あるいはそれ以下の濃度の硫酸の場合、セルロース含量がリグニンあるいはリグノフェノール誘導体含量を上回る水不溶画分を超音波処理条件の調整により容易に得ることができる。特に、リグノセルロース系材料中のセルロースの非結晶領域あるいはヘミセルロースのみを超音波によって選択的かつ効果的に加水分解して水溶化し、セルロースの結晶領域を高度に含有した水不溶画分を得ることができる。
さらに、65wt%程度の硫酸の場合には、超音波処理条件の調整により、セルロース含量がリグニン(あるいはリグノフェノール誘導体)含量を上回る水不溶画分からリグニン(あるいはリグノフェノール誘導体)含量がセルロース含量を上回る水不溶画分までを容易に得ることができる。さらに、72wt%程度以上の硫酸の場合、超音波処理条件の調整により容易にリグニン含量がセルロース含量を上回る水不溶画分を容易に得ることができる。
なお、65wt%以上の硫酸の場合には、セルロースの結晶領域まで膨潤・加水分解すると同時に、ネットワーク高分子である天然リグニンをリニア型のリグノフェノール誘導体に変換することができる。このため、リグノフェノール誘導体と炭水化物区分との均一な複合系を容易に得ることができる。かかる複合系は、熱可塑性を発現し、成形用、充てん用等の組成物として好ましく使用できる。
【0040】
なお、本発明における超音波の照射は、親和工程及び導入工程のいずれか一工程における混合系に対して行われ、両方の工程において行うこともできる。好ましくは、超音波の照射は、少なくとも導入工程において行う。
【0041】
(リグノフェノール誘導体組成物)
第2〜第4の方法における導入工程において得られる酸性の反応混合物を水に投入して得られる水不溶画分(水不溶画分組成物)は、リグノフェノール誘導体の他、リグノセルロース系材料由来の水不溶性のセルロース等の炭水化物を含有しており、リグノフェノール誘導体含有組成物であるといえる。
既に説明したように、超音波処理と酸強度の組み合わせにより、水不溶画分におけるリグノフェノール誘導体とセルロースなどの炭水化物の含有比率を調節することができる。また、同時に、フェノール誘導体の導入率や分子量も調節することができる。
したがって、導入工程で超音波処理を行うことにより、必要に応じてリグノフェノール誘導体と炭水化物の含有比率やフェノール誘導体の導入比率が調整されたリグノフェノール誘導体含有組成物を得ることができる。
以上のことから、本発明によれば、親和工程及び/又は導入工程において超音波処理を行うリグノフェノール誘導体含有組成物の生産方法を提供することもできる。
【0042】
【実施例】
以下、本発明を具体例について説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1:第1の方法によるリグノフェノール誘導体の調製)
脱脂木粉2種(Douglas fir(60〜80メッシュ)及びBeech(60〜80メッシュ)各1gを精秤し、50ml容ビーカーに移し、p−クレゾール10mlを加え、超音波に5分間照射し、木粉にクレゾールを収着させた。遠沈管を水温30度に調整した超音波装置に固定し、上から攪拌棒を入れて400回転/分で攪拌しながら62wt%硫酸20mlを加えて、同時に超音波を照射した。硫酸を添加後の反応時間を5,10、15、30、45、60分として、その間、継続して超音波を照射した。なお、超音波照射は、出力100W、40kHzで行った。
反応後の処理液を遠心分離し、クレゾール層をジエチルエーテルに滴下し、その沈殿物をアセトンに溶かし、アセトン溶液を濃縮し、再びジエチルエーテルに滴下し、その沈殿物を遠心分離により回収した。
なお、酸処理時に超音波を使用しない以外は上記と同様の実験を行い対照試料を調製した。
【0043】
(実施例2)
実施例1で得た超音波処理によるリグノフェノール誘導体(リグノクレゾール)とコントロールのリグノフェノール誘導体について、GPCにより重量平均分子量を測定し、NMRにてクレゾール導入量を測定した。
結果を、図2〜図5に示す。
【0044】
図2及び図3に示すように、重量平均分子量は、特に反応初期において超音波処理試料よりもコントロール試料が高く、60分処理試料においては、両者の差はわずかであった。これに対し、図4及び図5に示すように、クレゾール導入量は超音波処理試料がコントロール試料をおおよそ上回っていた。
これらのことから、まず、超音波処理試料においてクレゾールの導入率が促進された結果、特に反応初期〜前半において、超音波処理試料においてクレゾールの導入率が高くなっていることが明らかである。
また、超音波処理試料とコントロール試料における重量平均分子量の差異については、実施例1における超音波処理条件が緩やかであり、超音波処理によるリグニン−セルロースマトリックスの脱複合の促進効果があるものの緩やかである一方、超音波によってクレゾールの導入が効率よく(速やかに)行われた結果を反映している。
すなわち、実施例1の超音波処理条件では、リグニン−セルロースマトリックスの脱複合が緩やかに促進され、大きな分子領域のリグノフェノール誘導体がゆっくりと生成分離した一方、クレゾールの導入がよく促進され、クレゾールの導入効率が高い低分子領域のリグノフェノール誘導体が同時にあるいは早期に生成分離してきたため、当初の重量平均分子量がコントロール試料よりも低くなったと考えられる。また、コントロール試料では、超音波処理試料に比較してクレゾールの導入が緩慢なため、クレゾールの導入率が低い高分子量域のリグノフェノール誘導体が先行して抽出される一方、反応が促進されるにつれ、徐々にクレゾールが高頻度に導入された比較的低分子領域のリグノフェノール誘導体が、先の高分子領域のリグノフェノール誘導体に遅れて抽出されてきた結果、当初の分子量が高くなったと考えられる。
【0045】
(実施例3:第1の方法によるリグノフェノール誘導体の調製)
リグノセルロース系材料としてベイツガ(Tsuga canadensis)木粉を使用した。ベイツガ脱脂木粉1g(絶乾重量相当)にp-クレゾール10mlを加え,150r.p.m.にて5分間撹拌し,材料中のリグニンをクレゾールにて溶媒和した。次いで、72wt%硫酸を加え、500r.p.m.にて激しく撹拌しながら,超音波発生器(BRANSON SONIFIER450D)にて超音波(20kHz,180W)を照射して、15分、20分及び40分それぞれ反応させた。なお、超音波照射は最大で20分とし、反応時間15分及び20分の系では全反応時間連続照射し、同40分の系では、前半の20分間のみ照射した。
反応後,反応物を遠心分離し,上層のクレゾール相を冷却撹拌下,ジエチルエーテルに滴下した。得られた不溶解区分をアセトンにて24時間抽出し,ろ液を減圧濃縮後、撹拌下、冷却したジエチルエーテルに滴下し,リグノフェノール誘導体を得た。
なお、酸処理時に超音波照射を行わない以外は、上記手法と同様にしてコントロール試料を得た。
【0046】
酸との反応時においては、以下のことが観察された。
すなわち、p-クレゾールによるリグニン溶媒和工程の後、酸を加えると系の粘度は急激に増加し,数分後から低下し続けた。これは炭水化物の高次構造が酸によって膨潤し,その後加水分解によって低分子化することに起因する。超音波照射試料では、初期に増加した粘度が極めて短時間で減少した。すなわち,これらの結果から、超音波の微視的振動により,高次構造を構築した炭水化物分子内へ迅速に水系媒体が浸透し,その膨潤・加水分解が促進されたことがわかった。
なお、酸処理後,反応系を遠心分離すると,処理時間の延長とともに中間層は減少し,透明な緑色を呈したフェノール相と黄色の水相とに明確に分離され,水相の透明度が上昇した。これは、分子混合体あるいは複合体として中間層に混在する高分子炭水化物とリグノフェノールが,相分離反応の進行につれてそれぞれフェノール相および水相へ移行し,さらに水相の炭水化物は高度に加水分解を受け,水可溶性へと変換したためであるといえる。
【0047】
(実施例4:第2の方法によるリグノフェノール誘導体の調製)
実施例3で用いたのと同様の脱脂木粉1g(絶乾重量相当)にp-クレゾールをリグニンC9単位当たり3mol倍量(約0.48g)収着後,72wt%硫酸を加え,超音波を照射しながら500r.p.m.で撹拌しながら,超音波発生器(BRANSON SONIFIER450D)にて超音波(20kHz,180W)を照射して、15分、20分及び40分それぞれ反応させた。なお、超音波照射は最大で20分とし、反応時間15分及び20分の系では全反応時間連続照射し、同40分の系では、前半の20分間のみ照射した。
反応物を大過剰の脱イオン水に投入し,不溶解区分を遠心分離にて洗浄・脱酸後,凍結乾燥して水不溶解区分組成物(リグノフェノール誘導体とリグノセルロース系材料由来の炭水化物を含有する)を得た。さらに、この組成物をアセトン抽出し、溶解区分を減圧濃縮後、撹拌下、氷冷したジエチルエーテルに滴下し、リグノフェノール誘導体を得た。
なお、酸処理時に超音波照射を行わない以外は、上記手法と同様にしてコントロール試料を得た。
酸との反応工程においては、実施例3と同様、反応時間の延長および超音波照射によって反応混合系の粘度低下が認められ、その傾向は超音波処理試料において顕著であった。また,相分離反応後,反応混合物を大過剰の水に分散させると,反応時間の延長および超音波照射によりその分散性が向上し、不溶解区分のの収量が少なかった。
【0048】
(実施例5)
実施例3及び実施例4で調製したリグノフェノール誘導体試料とコントロール試料について、リグノフェノール誘導体の収率、重量平均分子量(GPCによる)を測定した。結果を図6〜図10に示す。
【0049】
(リグノフェノール誘導体等の収率)
図6に示すように、実施例3におけるリグノフェノール誘導体、すなわち、リグノクレゾールの収率は、いずれの処理時間においても、超音波処理試料がコントロール試料を大きく上回った。
すなわち、超音波を付加した系ではコントロールに比べていずれも収率が2倍程度増加していることから,外部エネルギーとしての超音波は,フェノール‐酸相の接触頻度増加に寄与し,炭水化物区分の加水分解およびリグニンのフェノールグラフティング反応を効果的に促進するといえる。また,反応開始から15分ですでに80%以上の高収率でリグノフェノールが誘導されていることから,超音波照射の効果は相分離反応の極初期段階で発現しており,これにより実質的な相分離反応時間が短縮されたということができる。
【0050】
また、図7に示すように、実施例4の超音波照射試料については、水不溶解区分として得られる炭水化物−リグノフェノール複合試料の収率が明らかに低下していた。反応時間に関わらずその収率は木粉当たり約20〜26%程度であった。すなわち,超音波の照射によって,炭水化物の加水分解が促進され,水可溶の低分子糖区分へと効果的に変換されるとともに,水不溶性の炭水化物−リグノフェノール複合粒子間での凝集が抑制されたため,収率が低下したと考えられる。
一方、図8に示すように、得られた水不溶解区分組成物から抽出,精製したリグノフェノールの収率はいずれの処理においてもほぼ同等であった。このことから、超音波照射により、炭水化物の加水分解及びリグニンC1位への選択的なフェノールグラフティング反応及びアリールエーテル単位間結合の開裂によるフラグメンテーションが効果的に促進されていることがわかった。すなわち,これらの結果から超音波によって炭水化物の加水分解およびリグニンのフェノールグラフティング反応が著しく促進されていることがわかった。
【0051】
(リグノフェノール誘導体の重量平均分子量)
図9に示すように、実施例3のコントロール試料では、反応時間の延長に伴い、得られたリグノフェノールの重量平均分子量が徐々に増加したのに対して,超音波処理にて得られたリグノフェノールはコントロールに比べて高分子量かつ多分散であり、反応時間20分でほぼ一定となった。これは超音波の付加により,炭水化物の高次構造が迅速に解放され、変換されたリグノフェノールが総体的かつ効果的にフェノール相へと移行していることを示している。一方,炭水化物の加水分解速度の遅いコントロール試料では、変換されたリグノフェノールのうち比較的低分子の区分のみがフェノール相へと移行したため,反応初期に低分子量であったと考えられる。
【0052】
また、図10に示すように、実施例4において得られた各試料においても実施例3の試料における重量平均分子量(図9)と同様の傾向が認められた。しかしながら、実施例4の超音波照射の有無による分子量の差は小さく、超音波処理試料がやや重量平均分子量および分散比ともコントロールより高い程度にとどまった。これは,超音波付加により、高度に変換されたリグノフェノールを水分散工程でロスした結果、比較的限定された区分のみが最終生成物として得られたことに起因すると考えられる。
【0053】
(実施例6)リグノフェノール誘導体の調製
(1)親和工程−フェノール誘導体の収着
針葉樹のベイマツ(Pseudotsuga menziessi以下、Douglas firと称する。)を、Retsh社製の超遠心粉砕機ZM100にかけて微粉化し、その後、IIDA製作所製の80メッシュのふるいかけて、80メッシュパスの木粉を得た。
この木粉を、エタノール:ベンゼン=1:2(V/V)溶液にてソックスレー抽出器を用いて、48時間抽出した。抽出後、木粉をステンレスバットに広げ、ドラフト内で溶媒を完全に留去した。さらに、送風乾燥機にて105℃で24時間乾燥させ、絶乾木粉を得た。
【0054】
絶乾木粉3g相当の木粉を、100ml容セパラブルフラスコに入れ、フェノール誘導体のアセトン溶液約30ml(リグニンC9単位あたり3mol倍相当のフェノール誘導体を含む)を加えた。次に、木粉内部に存在する気泡を除去するため攪拌用の羽で少し攪拌し、アルミホイルおよびパラフィルムでビーカーに蓋をして約24時間静置した。静置後、ドラフト内で激しく攪拌してアセトンを完全に留去した。アセトン留去した試料を、フェノール誘導体収着木粉とした。
【0055】
(2)フェノール誘導体の導入工程−硫酸処理
(1)で親和処理したフェノール誘導体収着木粉に、あらかじめ30℃に調整しておいた60wt%、65wt%、72wt%濃度の各硫酸水溶液60mlを加え攪拌機より、500rpmで所定時間攪拌しつつ、超音波発生器(BRANSON SONIFIER450D、20kHz、出力180W)により超音波を照射して、5分、10分、20分の3種類の処理時間で導入工程を行った。工程終了後、それぞれの内容物を11容三角フラスコ中の大過剰の水(約600ml、強制攪拌下)に投入し、硫酸濃度を10%以下に低下させ、約1時間攪拌した。なお、超音波を照射しない以外は、上記と同様に操作を行い、それぞれのコントロールとした。
【0056】
(3)脱酸処理
三角フラスコ内容物を脱イオン水にて遠沈管(ポリプロピレン製)に移し、遠心分離〔8800rpm(10560G)、20min、5℃〕により水可溶区分(浮遊物を含む)と水不溶区分とに分離した。分離後、遠沈管中の可溶区分(浮遊物を含む)を駒込ピペットで51容三角フラスコに取り出し、水不溶区分はさらに脱イオン水を加え、攪拌および遠心分離を行い、未反応のフェノール誘導体および酸を可溶区分として除去した。なお、5l容三角フラスコに取った可溶区分は約1日静置した後、沈殿を乱さないように上澄みを吸引濾過鐘でビーカーに取り、あらかじめ恒量を求めておいたガラス繊維濾紙にてろ過し後、濾紙に残留した浮遊物の恒量を測定した。
【0057】
(4)水不溶区分の乾燥
脱酸処理後の不溶区分は少量の脱イオン水を使用してあらかじめ恒量を測定しておいたプラスチック容器に移し、凍結乾燥し、その後、五酸化二リン上で減圧乾燥し、恒量を求め当初の木粉に対する収率を測定した。
【0058】
(5)導入工程における超音波照射における反応系の観察
[60wt%硫酸水溶液を用いた超音波処理]
60wt%硫酸を用いた反応系において、コントロール試料では、硫酸水溶液を加えた直後に、黄緑色に変化し、約5〜6分程度で少し暗い緑色に変化した。木粉粒子に関しては、硫酸処理後も、木粉粒子状のものが確認された。超音波処理試料においても、反応後に同様の粒子が確認できた。また、硫酸水溶液を添加時に、試料における粘性の上昇は超音波照射の有無に関係なく、確認できなかった。これらの結果は、60%硫酸水溶液が植物細胞壁の十分な膨潤を引き起こすことができないことを意味している。水分散後、処理試料の色は、コントロール試料および超音波処理試料のそれぞれにおいて、処理時間が5分、10分、20分と変化するにつれて赤色化する傾向が得られた。また、超音波処理試料の方がコントロール試料よりも暗色化していた。この試料の赤色化は、木材中の発色成分であるリグニン分子の変換程度に由来している。
【0059】
[65wt%硫酸水溶液を用いた超音波処理]
65wt%硫酸水溶液を用いた処理において、コントロール試料では、硫酸水溶液を加えた直後に緑色へ変化し、その後、約3〜4分でより暗い緑色へと変化した。超音波処理試料では、木粉粒子は約5〜6分で確認できなくなったが、コントロール試料では、木粉粒子が処理時間10分〜13分で確認できなくなった。水分散後、各処理試料の色は、処理時間が5分、10分、20分と増加するにつれて赤色化した。60wt%硫酸処理の場合と同様に、超音波処理試料の方が、コントロール試料よりも暗色化していた。また、コントロール試料では、不溶区分の回収時に白色の沈殿区分が確認された。この白色区分は超音波処理5分、10分試料においても同様に確認されたが、20分の超音波処理においては確認されなかった。この白色区分は、植物細胞壁中の加水分解不十分の炭水化物区分が凝集したものと考えられ、超音波20分処理試料ではこの炭水化物の白色区分が確認されなかったことから、超音波エネルギーにより、炭水化物の加水分解が促進されることが示された。相分離処理試料の赤色化については、60wt%硫酸処理と同様に、木材中の発色成分であるリグニン分子の変換程度に由来している。
【0060】
[72wt%硫酸水溶液を用いた超音波処理]
72wt%硫酸水溶液を用いた処理では、60%硫酸水溶液や65%硫酸水溶液を加えた場合とは異なり、硫酸水溶液を加えた直後にかなり暗い緑色へと変化した。その後、約4〜5分で少し暗色化した。超音波処理試料では、木粉の粒子は約5〜6分で確認できなくなり、コントロール試料では9〜11分で確認できなくなった。水分散後、相分離処理試料の色は緑色をしていた。超音波処理試料の色は、処理時間が5分、10分、20分と増加してもほとんど変化がなかったが、コントロール試料では、処理時間が5分、10分、20分と増加するにつれて緑色化した。また、コントロール試料において、処理時間が5分、10分のものにおいては、65wt%硫酸処理時に確認された白色区分が確認されが、処理時間が20分のものではその白色区分は確認されなかった。超音波処理試料においては、65wt%硫酸処理時に観察された白色区分は確認されなかった。このことから、72wt%硫酸水溶液は炭水化物を十分に加水分解する能力がを持つこと、さらに、超音波エネルギーにより炭水化物の加水分解速度が加速されたこととが示された。
【0061】
なお、あくまで推論であって、本発明を拘束するものではないが、以上のリグニンの酸を添加してからの色の変化は、反応初期の緑色がリグニンの未端に存在するコニフェリルアルデヒドに、1分子のp−クレゾールが導入された際に、分子内の共役系が伸びることにより生じると考えられる。さらに、時間とともに濃緑色へと色が変化するのは、p−クレゾールの導入が十分に生じ、様々な種類の共役系が発生することによって、光の吸収波長を拡大することが可能となることに起因すると考えられる。また、超音波処理試料の明度の減少は、白色成分である炭水化物の加水分解が進行し、重合度の低いオリゴマーレベルの糖になることによつて、溶媒中へ溶解したことに起因すると考えられる。合成された相分離試料の色の違いは、酸化の程度および変換されたリグニン分子の分散程度の違いによって生じたと考えられる。
【0062】
(6)水不溶区分(リグノフェノール誘導体含有組成物)の収率
図11に、絶乾木紛あたりのリグノフェノール誘導体含有組成物の収率のグラフを示す。
60wt%硫酸水溶液を用いた場合、超音波処理試料の方が、コントロール試料に比べやや低い収率を示した。60%硫酸処理での収率低下は、酸に対する抵抗性の低い木材中のヘミセルロース区分およびセルロースの非晶性区分が、酸による加水分解作用を受け、水相へ流出した結果生じたと考えられる。
【0063】
65wt%硫酸水溶液を用いた場合、コントロール試料では、60wt%硫酸処理時とほとんど変わらない収率減少傾向(すなわち、緩やかな減少傾向)がえられた。一方、超音波処理試料においては、大幅な収率減少傾向を示した。コントロール試料については、65wt%硫酸水溶液がセルロースの結晶領域を膨潤させることができ、セルロース区分の加水分解も不十分ではあるが進むため、60wt%硫酸を用いた場合よリセルロース区分の流出が進行することがその原因と考えられる。超音波処理試料における大幅な収率低下は、65wt%硫酸による細胞壁の膨潤と加水分解とを超音波エネルギーが促進し、炭水化物区分と酸との接触性が上昇したため、炭水化物区分の加水分解が促進されたことに起因すると考えられる。
【0064】
72wt%硫酸水溶液を用いた場合では、コントロール試料において、超音波照射65wt%硫酸処理試料とほぼ同等の収率減少傾向を示した。このことは、72%硫酸水溶液に細胞壁の膨潤を引き起こし、さらに十分に炭水化物区分を加水分解する能力があることを示している。一方、超音波処理試料の場合、5分、10分、20分と処理時間を増加させてもその収率に大きな変化がみられなかったことから、超音波エネルギーにより植物細胞壁中の炭水化物の加水分解速度が加速され、約5分の処理で反応が平衡に達したと推測される。
【0065】
(実施例7)
リグノフェノール誘導体組成物中のリグニン含有量測定
十分乾燥させた実施例6の各組成物約200mgを10ml容サンプル管に精秤し、72%硫酸水溶液を3mlを少量ずつガラス棒で練りこみながら加え、20℃の水浴中で反応が均一に進行するように十分に攪拌しながら4時間反応させた。反応後、予め115mlに印をした200ml容三角フラスコに定量的に移し、脱イオン水を加えて、硫酸濃度を3%まで希釈した。希釈した処理物は、ガスバーナーで加熱し、硫酸濃度を3%に保ちつつ、なおかつ炭水化物由来のフルフラール及びメチルフルフラールを系内から除去するため、リービッヒ冷却機を使わずに、脱イオン水を適宜加えながら2時間煮沸した。処理後、恒量既値のlG4ガラスフィルターを用いて内容物を濾過し、不溶解物を熱水で洗浄後、105℃で乾燥させ、恒量を測定し、相分離処理試料中の酸不溶性リグニン量を求めた。濾液は、JASCOV‐520にて205nmでの紫外線吸収を測定し、次式より酸可溶性リグニン量を求め、酸不溶性リグニン量との総和として全リグニン量を算出した。
B=A/(110×D)
リグニン(%)=B×V×100/(1000×W)
A:吸光度
D:希釈率
V:全濾液量(ml)
W:試料重量(g)
【0066】
図12にリグノフェノール誘導体含有組成物中のリグニン含有量のグラフを示す。
硫酸水溶液を添加した直後に全ての試料で黒色化が観察された。60wt%硫酸を用いた試料では、超音波照射の有無に関係なく反応初期にかねりの粘性があったが、65wt%及び72wt%硫酸処理試料では、いずれも酸添加時においてもはや粘性の発現は認められなかった。このことは、60wt%硫酸処理時には、細胞壁の膨潤が十分に生じていないため後段で72wt%硫酸添加時にはじめて粘性が生じ、65wt%硫酸及び72wt%硫酸処理時には、細胞壁の膨潤が既に生じていたため、後段で72wt%硫酸を添加しても粘性上昇が生じなかったと考えられる。
【0067】
硫酸濃度を3wt%に希釈した段階では、超音波処理試料の方がコントロール試料に比べて黒色化していたが、煮沸に伴い赤色化した。これは、リグニンの変換により2次的な変性が抑制されたためであると考えられる。
全体として、導入工程における処理時間が延長されるほど、リグニン含有量が高くなる傾向が得られた。これは、反応時間が長くなるほど、炭水化物がより多く加水分解され、低分子化された炭水化物区分が水相へ流出することに対応する。また、酸可溶性リグニンが通常よりも高い値を示していた。このことは、超音波処理によってリグニン母体中の活性側鎖であるC1位にフェノール誘導体が導入され、二次変性が抑制されたために自己縮合できなかった低分子区分がろ液中に流出したことに起因すると考えられる。
【0068】
(実施例8)リグノフェノール誘導体への追加のフェノール誘導体の導入
この追加のフェノール誘導体の導入、すなわち、第2次変換処理は、既に行った第1次の変換処理により得られた第1次リグノフェノール誘導体中に残存している活性側鎖量を検定するための手法である。本実施例では、1次処理時に用いたフェノール誘導体と異なる別のフェノール誘導体を用いた相分離処理により、リグニン母体中に2種類のフェノール誘導体を導入する。以下、この1次変換処理および2次変換処理によりリグニン母体に導入されたフェノール誘導体の導入頻度を比較することによって1次処理時の細胞壁の解放程度およびリグニンの変換程度を検討した。
【0069】
実施例6で得られた組成物(1次処理試料)を規定量(総体量が少ない72wt%硫酸処理試料は400mg、超音波照射照射65wt%硫酸処理試料は600mg、その他のものは700mg)を50ml容遠沈管に精秤し、そこにフェノール誘導体(エチルフェノール:ベンゼン=7:3の混合媒体)を規定量(総体量が少ない72wt%硫酸処理試料は4ml、超音波照射65wt%硫酸処理試料は6ml、その他のものは7ml)加え、撹枠用の羽で叩くように約10分攪拌した。その後、予め30℃にしておいた72wt%硫酸水溶液を規定量(総体量が少ない72wt%硫酸処理試料は8ml、超音波照射65wt%硫酸処理試料は12ml、その他のものは14ml)加え、約1分攪拌した後、撹幹機に設置し、30℃の水浴中で計60分間攪拌した(500rpm)。攪拌後、遠心分離〔25℃、3500rpm(2200G)、3分〕にて有機相と水相に分離した。
【0070】
200ml容三角フラスコに150mlのジエチルエーテルを加え、水で冷やしながらスターラーで激しく攪拌しながら有機相を滴下した後、界面洗浄のためフェノール誘導体を数ml反応容器へ加え遠心分離〔25℃、3500rpm(2200G)、3分〕し、有機相をエーテルに滴下した。洗浄は計3回行った。その後油状物質が沈降し、上澄み液がクリアになるまで攪拌した。しかし、1時間攪拌を続けても上澄みがクリアにならない時は、遠心分離〔5℃、3500rpm(2220G)、10分〕にて不溶解物を回収した。上澄み液を取り除き、沈殿物および容器をさらに約15mlのジエチルエーテルで2回洗浄後、沈殿物に40〜60mlのアセトンを加え、完全に溶解するまで攪拌し、遠沈管に移すとともに、容器を少量のアセトンで洗浄した。上澄み液は、遠沈管に移し、遠心分離〔5℃、3500rpm(2220G)、5分〕した後、ガラス繊維濾紙を用いて濾過した。その後100ml容ナスフラスコヘ移し、エバポレーターで約10mlになるまで濃縮し、ジエチルエーテルに滴下後、生成した沈殿区分を遠心分離〔5℃、3500rpm(2220G)、5分〕にて回収し、洗浄のため沈殿物にジエチルエーテルを加え約3回洗浄した。
生成した沈殿を室温暗所で1日保管し、ジエチルエーテルを除いた。その後、遠沈管のまま五酸化ニリン上で減圧乾燥させ恒量を測定し、収率を求めた。これを2次リグノフェノール誘導体とした。
【0071】
(実施例9)フェノール誘導体の導入量の測定
各種2次リグノフェノール誘導体約20mg、内部標準物質としてp−ニトロベンズアルデヒド(PNB)約3mgをlmI容テフロン(テフロンは登録商標である)ライナー付きスクリューバイアルに精秤し、lml容メスピペットにて重水素化ピリジンを150μl加え完全に溶解させた。溶解後テトラメチルシラン0.03%含有重水素化クロロホルムを1ml容メスピペットにて450μl加えた。完全に溶解していることを確認した後、試料溶液を綿ろ過し、NMR測定管(径5mm)に入れて、ALPHAFTNMR Spectrometer(JEOL社製)にて測定した。
【0072】
なお、p−エチルフェノールの導入率は次の式(1)及び(2)によってって求めた。
【数1】

Figure 0003654527
【数2】
Figure 0003654527
【0073】
Iwt(%):導入フェノール(Wt%)
Pwt:PNBの重量(mg)
Pm:PNBの分子量=151
Pn:PNBにおける芳香核H数=4
Pi:PNBにおける芳香核4Hシグナルを示す領域(8.40〜7.80ppm)の積分値
Ci:クレゾールにおけるメチル基3Hシグナルを示す領域(2.30〜1.80ppm)の積分値
Ei:P-エチルフェノールにおけるエチル基のメチル3Hシグナルを示す領域(1.40〜0.80ppm)の積分値
En:P‐エチルフェノールにおけるエチル基のメチルプロトン数=3
Em:P‐エチルフェノールの分子量=122
Lwt:リグノフェール重量
Imo1/C9:導入フェノール量は(mo1/C9
Lm:リグニン1ユニットの分子量=2000(針葉樹)
【0074】
2次リグノフェノール誘導体中のp−エチルフェノールの導入量を図13に示す。
図13に示すように、全ての2次リグノフェノール誘導体において、p−エチルフェノールの導入が確認された。いずれの酸濃度においても、コントロール試料の方が高いp−エチルフェノール導入量を示した。このことは、超音波照射により、リグニンへのフェノール誘導体の導入が促進され、1次リグノフェノール誘導体中の残存活性側鎖が減少したことを示している。
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、リグノセルロース系材料からリグニン誘導体を得るのに際して、リグニン誘導体の物性や生産効率等を制御できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】リグノセルロース系材料中のリグニンにフェノール誘導体を導入して得られる各種リグノフェノール誘導体を例示する図である。
【図2】実施例1で得られたベイマツ由来のリグノフェノール誘導体の反応時間と重量平均分子量との関係を示すグラフである。
【図3】実施例1で得られたブナ由来のリグノフェノール誘導体の反応時間と重量平均分子量との関係を示すグラフである。
【図4】実施例1で得られたベイマツ由来のリグノフェノール誘導体の反応時間と導入クレゾール量との関係を示すグラフである。
【図5】実施例1で得られたブナ由来のリグノフェノール誘導体の反応時間と導入クレゾール量との関係を示すグラフである。
【図6】実施例3で得られたリグノフェノール誘導体の反応時間と収率を示すグラフである。
【図7】実施例4で調製した水不溶解区分の反応時間と収率を示すグラフである。
【図8】実施例4で得られたリグノフェノール誘導体の反応時間と収率との関係を示すグラフである。
【図9】実施例3において得られたリグノフェノール誘導体の反応時間と重量平均分子量との関係を示すグラフである。
【図10】実施例4において得られたリグノフェノール誘導体の反応時間と重量平均分子量との関係を示すグラフである。
【図11】絶乾木紛あたりのリグノフェノール誘導体含有組成物の反応時間と収率との関係を示すグラフである。
【図12】実施例6で得た各種リグノフェノール誘導体含有組成物中のリグニン含有量のグラフを示す
【図13】実施例8で得られた2次リグノフェノール誘導体におけるp−エチルフェノールの導入量を示すグラフである。[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a technique for separating and converting plant constituents, and more particularly to a technique for separating a lignocellulose matrix which is a cell wall constituent and converting it into a usable derivative.
[0002]
[Prior art]
Cell wall constituents that are the main constituents of plant bodies, that is, composite materials containing lignin and cellulose, hemicellulose, etc. (hereinafter referred to as lignocellulosic materials) are separated using phenol derivatives and acids. There is a technique for derivatization (see, for example, Patent Document 1 and Patent Document 2).
In this technique, a method called phase separation is used to separate lignin from the lignin-cellulose matrix. That is, the lignocellulosic material is previously solvated or sorbed with a phenolic compound, and the lignocellulosic material is brought into contact with an acid so that the phenolic compound is grafted onto the lignin and at the same time. Is separated from the matrix with cellulose.
In these methods, there is also a technique for improving the separation efficiency (Patent Document 3).
[0003]
[Patent Document 1]
JP-A-2-233701
[Patent Document 2]
Japanese Patent Laid-Open No. 9-278904
[Patent Document 3]
JP 2001-131201 A
[0004]
[Problems to be solved by the invention]
Currently, the physical properties and the like of the lignin derivative obtained by this method are largely derived from the derived lignocellulosic material, and the molecular weight, the introduction efficiency of the phenol compound, the yield and the like have not been controlled.
However, when a lignin derivative is to be obtained from a lignin-containing material by structural transformation accompanied by such phase separation, it is desired that the yield of lignin derivative, molecular weight, introduction rate of phenol compound, and the like can be controlled to some extent. In particular, when trying to obtain a lignin derivative industrially, an efficient reaction process is desired.
Therefore, an object of the present invention is to provide a technique capable of controlling physical properties, production efficiency, and the like of a lignin derivative when a lignin derivative is obtained from a lignocellulosic material.
[0005]
[Means for Solving the Problems]
The present inventors examined factors required for separation and conversion in separating lignocellulosic materials into cellulose and lignin derivatives, and with phenol derivatives that are mediums having high affinity for lignocellulosic materials. Focusing on the contact process with an acidic medium, which is an affinity process, a component separation medium from the lignin-cellulose complex and also a reaction medium, and examined the addition of physical energy such as ultrasonic waves. It was found that decomplexing by the conversion system of lignin matrix can be promoted. Further, the present inventors have found that the molecular weight, the introduction ratio of the phenol compound, and the like can be controlled in addition to the yield of the lignin derivative obtained by the phase separation conversion by ultrasonic irradiation.
That is, according to the present invention, the following means are provided.
[0006]
(1) A method for producing a phenol derivative of lignin,
A process of making lignocellulosic material compatible with a phenol derivative, and
A step of introducing a phenol derivative into lignin in a reaction system obtained by adding an acid to a lignocellulosic material previously affinityd with a phenol derivative;
The method of irradiating the mixed system containing the lignocellulosic material with ultrasonic waves in at least one of the steps.
(2) The method according to (1), wherein the affinity step is a step of solvating the lignocellulosic material in a liquid phase containing a phenol derivative.
(3) The method according to (1), wherein the affinity step includes a step of preliminarily penetrating a lignocellulosic material with a solvent containing a phenol derivative and a step of removing the solvent.
(4) The acid in the introduction step is added at least at a strength that can swell the lignin-cellulose matrix in the lignocellulosic material, and the mixed system in the introduction step is irradiated with ultrasonic waves. The method according to any one of 3).
(5) Before the introduction step, an acid having a strength that does not swell the lignin-cellulose matrix in the lignocellulosic material is added, and the mixed system in the introduction step is irradiated with ultrasonic waves. (1) to (3) The method in any one of.
(6) A composition comprising a phenol derivative of lignin obtained by the method according to any one of (1) to (5) and a carbohydrate derived from the lignocellulosic material.
[0007]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
The method for producing a lignophenol derivative according to the present invention is such that, in the step of making a lignocellulosic material compatible with a phenol derivative, the mixed system of the lignocellulosic material and the phenol derivative is irradiated with ultrasonic waves, or the phenol derivative is preliminarily applied. It is characterized by irradiating ultrasonic waves to a mixed system in which an acid is added to a lignocellulosic material.
By irradiating the mixed system in the affinity step with ultrasonic waves, the contact between the phenol derivative and the lignocellulosic material can be enhanced, and the sorption and / or solvation of the phenol derivative to the lignocellulosic material can be promoted. .
Moreover, by contacting the lignocellulosic material with affinity with a phenol derivative with an acid, the phenol derivative is introduced into the lignin of the lignin-cellulose matrix to transform the structure, and at the same time, the ligand is separated from the complex by cleavage of the benzyl aryl ether bond. The Conventionally, the lignocellulosic material, which is affinityd with a phenol derivative by external force, specifically mechanical stirring, has been brought into contact with the acid. However, by irradiating this mixed system with ultrasonic waves, the acid-induced carbohydrate It is considered that the decomposition and the improvement of the contact probability between lignin and acid promote the decomposition of the lignin-cellulose complex in which the lignin phase is affinityd with the phenol derivative, and at the same time promote the introduction of the phenol derivative into the lignin.
[0008]
The rate of introduction of the phenol derivative can be increased by promoting decomposition. In particular, by adding an acid at a strength that swells the lignin-cellulose matrix, the conversion / separation of the lignophenol derivative by ultrasonic irradiation can be speeded up.
Furthermore, ultrasonic irradiation is useful in other aspects. That is, the acid strength used in introducing the phenol derivative can be reduced. Thereby, the process of removing the acid from the aqueous layer can be made more efficient. In addition, the decrease in acid strength enables the preparation of various lignophenol derivatives, and the carbohydrate content can be easily adjusted in the composition of the lignophenol derivative and the carbohydrate derived from the lignocellulosic material. .
[0009]
Hereinafter, embodiments of the present invention will be described in detail.
(Lignocellulosic material)
The “lignocellulose-based material” used in the present invention is not particularly limited as long as it is a material containing a lignin-cellulose complex which is a constituent component of a plant cell wall. For example, various materials that are made of wood, mainly wood, such as wood powder, chips, agricultural wastes and industrial wastes associated with wood resources such as waste materials, scraps, and waste paper can be mentioned. In addition, as a kind of wood to be used, any kind of wood such as conifers and hardwoods can be used. Furthermore, the whole or a part of various herbaceous plants such as kenaf, rice, sugar cane, corn, and related agricultural and industrial wastes such as bagasse can be used.
[0010]
(Lignophenol derivative and its production process)
The lignophenol derivative means a polymer containing a 1,1-bis (aryl) propane unit in which a phenol derivative is introduced by a C—C bond at the C1 position of an arylpropane unit (C9 unit) of lignin. . It is a kind of polyphenol.
The lignophenol derivative is also a mixture of lignin-derived polymers obtained by reaction and separation from the lignin-containing material, and the amount and molecular weight of the introduced phenol derivative in the obtained polymer are determined based on the lignin-containing material (typical). In particular, it is lignocellulosic material) and is said to vary frequently depending on the reaction conditions.
[0011]
A lignophenol derivative can be usually obtained by contacting a lignin-containing material, preferably a lignocellulosic material, which has been affinityd by a predetermined phenol derivative with an acid. As for more general description of lignophenol derivatives and the production process thereof, JP-A-2-23701, JP-A-9-278904 and International Publication WO99 / 14223, 2001-64494, No. 2001-261839, 2001-131201, and 2001-34233 (the contents described in these patent documents are all incorporated herein by reference).
[0012]
In this production process, while maintaining the lignocellulosic material on the phenol derivative phase side, it was selectively brought into contact with an acid, the decomposed cellulose was distributed to the acid side, and the phenol derivative was introduced through contact with the acid. It is a process that simultaneously achieves structural transformation and separation of lignin by partitioning lignin to the phenol derivative side. In constructing such a reaction system, it is particularly preferable that the lignocellulosic material is previously affinityd with a phenol derivative. Here, affinity is used to mean solvation, permeation, and absorption and adsorption (also referred to as sorption). That is, in such a reaction system, the complex state of lignocellulose is relaxed, and at the same time, the phenol derivative is selectively grafted to the C1 position (benzyl position) of the arylpropane unit of natural lignin to produce a lignophenol derivative. At the same time, it can be separated into cellulose and lignophenol derivatives.
According to this method, a lignophenol derivative having a 1,1-bis (aryl) propane unit in which the phenol derivative is grafted to the C1 position of the phenylpropane unit of lignin at the ortho position or para position of the used phenol derivative is obtained. be able to. In the obtained lignophenol derivative, an arylpropane unit to which no phenol is grafted usually remains.
[0013]
Various methods can be exemplified as a method for obtaining a lignophenol derivative from a lignocellulosic material.
In any of these forms, the phenol derivative is introduced into the lignin in the step of making the lignocellulosic material compatible with the phenol derivative and the reaction system obtained by adding an acid to the lignocellulosic material previously affinityd with the phenol derivative. Process.
These methods can be distinguished in terms of whether the affinity step is one step or two steps, and can also be distinguished in the separation method of the obtained lignophenol derivative.
In addition, although four types of typical methods are illustrated in the following examples, it is not intended to limit to these four types of methods.
[0014]
The first method is the method described in JP-A-2-233701. This method comprises a single affinity step. The one-step affinity step is a step in which a liquid phenol derivative is infiltrated into a lignocellulosic material such as wood flour, and lignin is solvated with the phenol derivative. The phenol derivative can also be diluted with an inert solvent such as benzene.
Next, the introduction process will be described. The introduction step is a step of adding a concentrated acid (as described above, for example, 72% sulfuric acid) to the lignocellulosic material and mixing to hydrolyze the cellulose component and introduce a phenol derivative into the lignin.
In this step, a phenol derivative obtained by solvating lignin and a concentrated acid dissolving a cellulose component form a two-phase separation system. The lignin solvated by the phenol derivative is contacted with the acid only at the interface where the phenol derivative phase is in contact with the concentrated acid phase, and a reaction occurs. That is, the cation at the side chain C1 position (benzyl position), which is a highly reactive site of the basic structural unit of lignin generated by interfacial contact with an acid, is attacked by the phenol derivative. As a result, the phenol derivative is introduced at the C1 position by a C—C bond, and the benzyl aryl ether bond is cleaved to reduce the molecular weight. As a result, the molecular weight of lignin is reduced, and at the same time, a lignophenol derivative in which a phenol derivative is introduced at the C1 position of the basic structural unit is produced in the phenol derivative phase. From this phenol derivative phase, a lignophenol derivative is extracted. A lignophenol derivative is obtained as an aggregate of low molecular weight forms of lignin in which the benzyl aryl ether bond in lignin is cleaved to reduce the molecular weight. It is known that some phenol derivatives are introduced into the benzyl position through the phenolic hydroxyl group.
FIG. 1 shows that various lignophenol derivatives can be obtained by subjecting natural lignin having an arylpropane unit to phase separation.
[0015]
Extraction of the lignophenol derivative from the phenol derivative phase can be performed, for example, by the following method. That is, the precipitate obtained by adding the phenol derivative phase to a large excess of ethyl ether is collected and dissolved in acetone. The acetone insoluble part is removed by centrifugation or the like, and the acetone soluble part is concentrated. The acetone soluble part is dropped into a large excess of ethyl ether, and the precipitate section is collected. The solvent is distilled off from this precipitation section to obtain a lignophenol derivative. The crude lignophenol derivative can be obtained by simply removing the acetone soluble part by vacuum distillation.
[0016]
The second and third methods include a two-step affinity process. In the two-step affinity process, a lignocellulosic material is infiltrated with a solvent (for example, ethanol or acetone) in which a solid or liquid phenol derivative (for example, p-cresol or 2,4-dimethylphenol) is dissolved. And then the solvent is distilled off.
Next, a concentrated acid is added to the lignocellulosic material to dissolve the cellulose component (corresponding to the introduction step). As a result, as in the first method, the lignin solvated with the phenol derivative is attacked by the phenol derivative with the cation at the highly reactive site (side chain C1 position) of the lignin generated upon contact with the concentrated acid. Derivatives are introduced. In addition, the benzyl aryl ether bond is cleaved to lower the molecular weight of lignin. The properties of the obtained lignophenol derivative are the same as those obtained by the first method. Then, in the same manner as in the first method, the lignophenol derivative introduced with the phenol derivative is extracted with a liquid phenol derivative. Extraction of the lignophenol derivative from the liquid phenol derivative phase can be carried out in the same manner as in the first method (this is referred to as the second method). Alternatively, the entire reaction solution after the concentrated acid treatment is put into excess water, the insoluble sections are collected by centrifugation, deacidified and then dried. The lignophenol derivative is extracted by adding acetone or alcohol to the dried product. Further, the soluble segment is dropped into excess ethyl ether or the like in the same manner as in the first method to obtain a lignophenol derivative as an insoluble segment (this is referred to as a third method). In the above, specific examples of the method for preparing the lignophenol derivative have been described. However, the present invention is not limited to these, and it can be prepared by a method in which these are appropriately improved.
[0017]
The fourth method is a method described in Japanese Patent Application Laid-Open No. 2001-131201. A mixture containing a lignocellulosic material, a phenol derivative, and an acid (also referred to as a reaction system in this specification) is added with benzene, xylene, After mixing with an inert low-boiling hydrophobic organic solvent selected from toluene, hexane, or a mixture thereof, the mixture is centrifuged and separated into three layers, and the lignophenol derivative fraction is separated into a band-like aggregated second layer. It is a method to take. The affinity step and the introduction step until the reaction system is obtained can be carried out in the same manner as in the first to third methods. Further, the separated lignophenol derivative can be divided into an ether-insoluble fraction and then separated into an acetone-soluble fraction as shown in the first and second methods. Thus, it can be poured into excess water to obtain a water-insoluble fraction. Preferably, as in the third method, after fractionating into a water-insoluble fraction, the acid is washed and removed, and a lignophenol derivative is finally obtained in a fraction that dissolves in acetone or the like.
[0018]
(Phenol derivative)
As the lignophenol derivative with which the lignocellulosic material is preliminarily affinityd, a monovalent phenol derivative, a divalent phenol derivative, a trivalent phenol derivative, or the like can be used.
Specific examples of the monovalent phenol derivative include phenol which may have one or more substituents, naphthol which may have one or more substituents, and one or more substituents. A good anthrol, an anthroquinone all optionally having one or more substituents, and the like can be mentioned.
Specific examples of the divalent phenol derivative include catechol which may have one or more substituents, resorcinol which may have one or more substituents, and one or more substituents. Examples include good hydroquinone.
Specific examples of the trivalent phenol derivative include pyrogallol, which may have one or more substituents.
In the present invention, one or more of monovalent phenol derivatives, divalent phenol derivatives and trivalent phenol derivatives can be used, and monovalent phenol is preferably used.
[0019]
The kind of the substituent that the monovalent to trivalent phenol derivative may have is not particularly limited, and may have an arbitrary substituent, but is preferably an electron-withdrawing group (halogen atom). For example, a lower alkyl group-containing substituent having 1 to 4 carbon atoms, preferably 1 to 3 carbon atoms. Considering the introduction rate, a non-bulky substituent such as a methyl group or an ethyl group is preferable. Examples of the lower alkyl group-containing substituent include a lower alkyl group (such as a methyl group, an ethyl group, and a propyl group) and a lower alkoxy group (such as a methoxy group, an ethoxy group, and a propoxy group). Further, it may have an aromatic substituent such as an aryl group (such as a phenyl group). Further, it may be a hydroxyl group-containing substituent.
[0020]
These phenol derivatives are introduced into the phenylpropane unit by bonding a carbon atom in the ortho or para position to the phenolic hydroxyl group to the carbon at the C1 position of the phenylpropane unit of lignin. Therefore, in order to secure the introduction site, it is preferable that at least one of the ortho and para positions does not have a substituent.
[0021]
From the above, in the present invention, in addition to the unsubstituted phenol derivative, at least one phenol derivative in various substituted forms having at least one unsubstituted ortho-position or para-position may be appropriately selected and used. it can.
[0022]
Preferred examples of the phenol derivative include p-cresol, 2,6-dimethylphenol, 2,4-dimethylphenol, 2-methoxyphenol (Guaiacol), 2,6-dimethoxyphenol, catechol, resorcinol, homocatechol, pyrogallol. And phloroglucinol. P-cresol is preferable.
[0023]
(acid)
The acid used in the introduction step is not particularly limited. Examples thereof include sulfuric acid, hydrochloric acid, phosphoric acid, p-toluenesulfonic acid, trifluoroacetic acid, trichloroacetic acid, formic acid and the like. Preferably, the acid is strong enough to swell the lignin-cellulose matrix by nature or concentration. Here, the object to be swollen with acid is mainly cellulose. Examples of such strong acids include 65 wt% or more sulfuric acid, 85 wt% or more phosphoric acid, 35 wt% or more hydrochloric acid, p-toluenesulfonic acid, trifluoroacetic acid, trichloroacetic acid, and formic acid. Preferred acids include 72 wt% sulfuric acid, 95 wt% phosphoric acid, 45 wt% trifluoroacetic acid and formic acid.
In order to efficiently recover cellulose, hemicellulose-derived water-soluble polysaccharides, oligosaccharides, and monosaccharides, it is preferable to use sulfuric acid, which suppresses the action on cellulose and retains its higher order structure to some extent. For recovery, it is preferable to use an acid having a low acid strength such as phosphoric acid.
[0024]
In some cases, a mixed system in which an acid is added to a phenol derivative and a lignocellulosic material at a strength that does not swell the lignin-cellulose matrix may be prepared at the beginning of the introducing step or prior to the introducing step. This is because, by irradiating the mixed system with ultrasonic waves, the decomposition of the lignin-cellulose matrix may be promoted prior to the introduction of the phenol derivative. Here, the acid that does not swell the lignin-cellulose matrix may be weaker than the strength of the acid that can swell the lignin-cellulose matrix. Specific examples include sulfuric acid of less than 65 t%, phosphoric acid of less than 85 wt%, hydrochloric acid of less than 35 wt%, p-toluenesulfonic acid, trifluoroacetic acid, trichloroacetic acid, and formic acid. Preferable acids include 60 wt% or less sulfuric acid, 80 wt% or less phosphoric acid, 30 wt% or less hydrochloric acid, trifluoroacetic acid and formic acid. In the mixed system prior to the introduction step, a weaker acid strength may be used.
[0025]
The frequency of introduction of the phenol derivative varies depending on the presence / absence, position, size, etc. of the substituent of the phenol derivative to be introduced. Therefore, the introduction frequency can be adjusted. In particular, the introduction frequency can be easily adjusted by steric hindrance due to the size of the substituent. When the introduction position or the like is to be controlled using a substituent, the introduction frequency can be easily adjusted depending on the number of carbon atoms and the branched form when a lower alkyl group is used as the substituent. When the substituent is a methyl group, the introduction position can be controlled while maintaining a high introduction frequency.
[0026]
The general and general properties of the primary derivative obtained from the lignocellulosic material are listed below. However, the lignophenol derivative in the present invention is not intended to be limited to those having the following properties.
(1) The weight average molecular weight is about 2000 to 20000.
(2) There is almost no conjugated system in the molecule, and the color tone is very light. Typically a pale pink white powder.
(3) It has a solid-liquid phase transition point at about 170 ° C. derived from conifers and at about 130 ° C. derived from hardwoods.
(4) Easily soluble in methanol, ethanol, acetone, dioxane, pyridine, tetrahydrofuran, dimethylformamide and the like.
[0027]
(Ultrasonic irradiation)
(Ultrasonic irradiation in the affinity process)
In the method of the present invention, it is preferable that the lignocellulosic material and / or the phenol derivative is irradiated with ultrasonic waves in the affinity step of the lignocellulosic material with the phenol derivative. Preferably, in the state where the lignocellulosic material and the phenol derivative are present simultaneously, both are irradiated with ultrasonic waves. By this ultrasonic irradiation, the phenol derivative can be efficiently and sufficiently infiltrated into the lignocellulosic material, and a state in which both are sufficiently compatible can be obtained easily and quickly. As a result, the phenol derivative can be efficiently introduced into the lignin in the subsequent step of introducing the phenol derivative into the lignin.
[0028]
Such an affinity step can be applied to any of the affinity steps exemplified in the first method and the second method described above. In the first method, ultrasonic waves can be irradiated in a state where a liquid phenol derivative is infiltrated into the lignocellulosic material, or in a state where the lignocellulosic material is immersed in the phenol derivative. In the second method, an organic solvent (for example, acetone, ethanol, benzene, hexane, toluene, xylene, or a mixture thereof) in which a phenol derivative is dissolved in a lignocellulosic material is immersed or penetrated. It is possible to irradiate with ultrasonic waves in a state in which the organic solvent is distilled off, preferably before the organic solvent is distilled off. The organic solvent can be distilled off while irradiating with ultrasonic waves.
[0029]
In the present invention, the voltage and frequency of the ultrasonic wave to be used are not particularly limited, and irradiation may be performed under conditions that can improve the affinity between the phenol derivative and the lignocellulosic material. If the power and frequency of an ultrasonic generator that can be normally used (power of about 100 W to about 1500 W, frequency of about 20 kHz to about 40 kHz), the above-mentioned effect can be obtained by irradiation for several tens of seconds to several tens of minutes.
The form of ultrasonic irradiation is not particularly limited, but the oscillator may be in a liquid phenol derivative, or the oscillator is placed in a water bath or the like in which a container containing the liquid phenol derivative is immersed. And may be irradiated.
Further, mechanical agitation may be additionally accompanied with ultrasonic irradiation. Note that the ultrasonic irradiation is not necessarily continuous, and may be intermittent. Further, it is not required to be used over the entire time of the affinity process, and may be used only in a part of the affinity process.
[0030]
(Ultrasonic irradiation in the introduction process)
Moreover, in this invention, it is preferable to irradiate an ultrasonic wave with respect to the reaction system obtained by adding an acid to the lignocellulosic material affinityd previously in the introduction process of the said phenol derivative. When irradiating the reaction system with ultrasonic waves, it is preferable to irradiate the entire area with ultrasonic waves. Alternatively, it is also preferable to accompany other stirring and mixing means, specifically, mechanical stirring means using a stirrer or stirring blades, stirring means using a jet or the like.
[0031]
In the step of introducing a phenol derivative into lignin, the deligation of the lignin-cellulose matrix in the lignocellulosic material can be promoted by irradiating with ultrasonic waves. For this reason, when the acid is sufficiently acidic to swell the cellulose region in the matrix, the acid quickly penetrates, so that the cellulose quickly swells and the lignin is in a large molecular weight state. It becomes easy to be separated from. Therefore, a lignophenol derivative having a relatively high molecular area can be efficiently obtained by ultrasonic treatment.
[0032]
Irradiation with ultrasonic waves also improves the contact probability between lignin and an acid, and has an aspect that a production amount of a lignophenol derivative and a high introduction rate can be obtained at an early stage. Improvement of the introduction rate is also promoted by promoting decomposition.
Therefore, the introduction rate obtained under the same conditions except for simply using mechanical agitation should be achieved in about one-quarter to one-half time by carrying out the introduction step with appropriate ultrasonic irradiation. Can do.
Also, by irradiating with ultrasonic waves under acidity sufficient to swell cellulose in the introduction process, lignophenol derivatives having a high molecular weight and a high introduction rate of phenol derivatives can be easily obtained even at a relatively early stage of the introduction process. Can get to.
When ultrasonic irradiation is performed in the affinity process, the lignocellulosic material and the phenol derivative have a good affinity, so that the deligation of the lignin-cellulose matrix by contact with an acid can be introduced more quickly. In addition, even after the introduction, it is stably distributed to the phenol derivative phase, and separation from cellulose can be facilitated.
[0033]
By performing ultrasonic irradiation in the introducing step in the first method and the fourth method, it is possible to promote the distribution of the produced lignophenol derivative to the phenol derivative phase. That is, phase separation is achieved early. This is presumably due to the efficient introduction of the phenol-introduced lignin to promote conversion.
[0034]
The voltage and frequency of ultrasonic irradiation in the introduction process are not particularly limited as in the affinity process. The contact probability between the phenol derivative and the lignocellulosic material is several tens of seconds to several tens of times if the power and frequency of an ultrasonic generator that can be used normally (power is about 100 W to about 1500 W, frequency is about 20 kHz to about 40 kHz). It can be sufficiently improved by irradiation for about a minute.
The form of ultrasonic irradiation is not particularly limited, but it may be in a state in which an oscillator is infiltrated into a liquid phenol derivative, or an oscillator is placed outside a container containing a liquid phenol derivative. May be. Similarly to the affinity step, mechanical stirring can be additionally accompanied with ultrasonic irradiation, and the irradiation may be continuous or intermittent. Further, it is not required to be used over the entire time of the introduction process, and may be used only in a part of the introduction process. Note that, as described above, the ultrasonic irradiation promotes the decomposition of the lignin-cellulose matrix and the introduction of the lignophenol derivative, so that the ultrasonic irradiation step is preferably performed at least at the initial stage of the introduction step. More preferably, it is performed in the first half of the introduction step.
In addition, the effect by ultrasonic irradiation can also be adjusted by changing the intensity | strength of stirring or dispersion means other than an ultrasonic wave in an introduction process.
[0035]
In addition, as for the irradiation of an ultrasonic wave, as a front stage or a part thereof, a lignocellulosic material previously affinityd with a phenol derivative and a dilute acid solution containing water or an acid that hardly hydrolyzes cellulose. It can also be performed on a mixed solution of After such preliminary irradiation, an acid is added so that the acidity is appropriate, that is, the lignin-cellulose matrix can be swollen, and an introduction step (with or without ultrasonic irradiation) is performed. Can do. Such preliminary ultrasonic irradiation is irradiation in a state in which lignin and cellulose are prevented from immediately decomposing or reacting as in the case of ultrasonic irradiation performed in the affinity process, but the combined state of lignin and cellulose is alleviated or released. Promote. For this reason, the phenol derivative and introduction | transduction in an introduction | transduction process, and decomposition of a lignin-cellulose matrix can be accelerated | stimulated.
[0036]
In the introduction process involving ultrasonic irradiation, the following effects are produced depending on the strength of the acid used.
For example, when the lignin-cellulose matrix can be sufficiently swollen, in other words, under acidic conditions where cellulose can be sufficiently dissolved, for example, when sulfuric acid having a concentration of 72 wt% or more is used, the introduction step requires When sonication is performed, a lignophenol derivative can be obtained at a high yield very early, and the amount of lignophenol derivative to be finally produced can be increased. In particular, the ratio of lignophenol derivatives in the water-insoluble section in the third method can be easily increased (in other words, the cellulose content is decreased), and the subsequent lignophenol fractionation step can be facilitated. .
[0037]
In addition, when ultrasonic treatment is not used in the introduction process, it is difficult to efficiently produce a lignophenol derivative at a concentration that can dissolve cellulose reliably. However, ultrasonic waves are irradiated in the introduction process. Thus, even with sulfuric acid of 62 wt% or more and less than 72 wt% (preferably 65 wt% or more, and preferably 70 wt% or less), cellulose can be sufficiently dissolved and the introduction process can be accelerated. Therefore, in addition to reducing the amount of acid used, for example, as in the fractionation method of the third method, the reaction system after introduction of the phenol derivative is poured into a large amount of water to form a water-insoluble category, and from the water-insoluble category In removing the acid by washing, there is an advantage that the washing step can be simplified.
[0038]
Furthermore, when sulfuric acid of 62 wt% or more and less than 72 wt% is used, the phenol derivative is improved as the conditions (time and strength) of ultrasonic irradiation increase the yield of the lignophenol derivative and the introduction efficiency of the phenol derivative. The introduction rate and the amount of lignophenol derivative produced vary (increase) over a wide range. That is, by adjusting the sonication conditions under such an acidity, the introduction efficiency of the phenol derivative and the production amount of the lignophenol derivative can be easily adjusted in a wide range.
That is, by combining the adjustment of acid strength with the ultrasonic irradiation conditions in the introduction step, the yield of lignophenol derivative, the introduction rate of the phenol derivative, and the molecular region of the resulting lignophenol derivative can be easily adjusted.
[0039]
Further, when adopting the preparative method of the third method, the acid strength is such that the strength of the cellulose in the complex cannot be hydrolyzed, for example, about 60 wt% sulfuric acid or sulfuric acid having a concentration below that, A water-insoluble fraction in which the cellulose content exceeds the lignin or lignophenol derivative content can be easily obtained by adjusting the sonication conditions. In particular, it is possible to selectively and effectively hydrolyze only the amorphous region of cellulose or hemicellulose in a lignocellulosic material by water and make it water-soluble, thereby obtaining a water-insoluble fraction containing a highly crystalline region of cellulose. it can.
Furthermore, in the case of about 65 wt% sulfuric acid, the lignin (or lignophenol derivative) content exceeds the cellulose content from the water-insoluble fraction in which the cellulose content exceeds the lignin (or lignophenol derivative) content by adjusting the ultrasonic treatment conditions. A water-insoluble fraction can be easily obtained. Furthermore, in the case of sulfuric acid of about 72 wt% or more, a water-insoluble fraction in which the lignin content exceeds the cellulose content can be easily obtained by adjusting the ultrasonic treatment conditions.
In the case of 65 wt% or more of sulfuric acid, natural lignin, which is a network polymer, can be converted into a linear lignophenol derivative at the same time as it swells and hydrolyzes to the crystalline region of cellulose. For this reason, a uniform composite system of the lignophenol derivative and the carbohydrate segment can be easily obtained. Such a composite system exhibits thermoplasticity and can be preferably used as a composition for molding, filling and the like.
[0040]
In addition, the irradiation of the ultrasonic wave in this invention is performed with respect to the mixed system in any one process of an affinity process and an introduction process, and can also be performed in both processes. Preferably, ultrasonic irradiation is performed at least in the introduction step.
[0041]
(Lignophenol derivative composition)
The water-insoluble fraction (water-insoluble fraction composition) obtained by introducing the acidic reaction mixture obtained in the introduction step in the second to fourth methods into water is derived from a lignocellulose-based material in addition to the lignophenol derivative. It contains carbohydrates such as water-insoluble cellulose, and can be said to be a lignophenol derivative-containing composition.
As described above, the content ratio of the lignophenol derivative and the carbohydrate such as cellulose in the water-insoluble fraction can be adjusted by a combination of sonication and acid strength. At the same time, the introduction rate and molecular weight of the phenol derivative can be adjusted.
Therefore, by performing ultrasonic treatment in the introduction step, a lignophenol derivative-containing composition in which the content ratio of the lignophenol derivative and the carbohydrate and the introduction ratio of the phenol derivative is adjusted as necessary can be obtained.
From the above, according to the present invention, it is also possible to provide a method for producing a lignophenol derivative-containing composition in which ultrasonication is performed in the affinity step and / or the introduction step.
[0042]
【Example】
Hereinafter, specific examples of the present invention will be described. The present invention is not limited to the following examples.
(Example 1: Preparation of lignophenol derivative by the first method)
Two kinds of defatted wood flour (Douglas fir (60-80 mesh) and 1 g each of Beech (60-80 mesh) are precisely weighed, transferred to a 50 ml beaker, added with 10 ml of p-cresol, and irradiated with ultrasonic waves for 5 minutes. Cresol was sorbed onto the wood flour.The centrifuge tube was fixed to an ultrasonic device adjusted to a water temperature of 30 degrees, and a stirring bar was inserted from above and 20 ml of 62 wt% sulfuric acid was added while stirring at 400 rpm. The reaction time after the addition of sulfuric acid was set to 5, 10, 15, 30, 45, 60 minutes, and ultrasonic waves were continuously applied during that time, and the ultrasonic irradiation was performed with an output of 100 W and 40 kHz. I went there.
The reaction solution after the reaction was centrifuged, the cresol layer was dropped into diethyl ether, the precipitate was dissolved in acetone, the acetone solution was concentrated, dropped again into diethyl ether, and the precipitate was collected by centrifugation.
A control sample was prepared by conducting the same experiment as above except that no ultrasonic wave was used during the acid treatment.
[0043]
(Example 2)
For the lignophenol derivative (lignocresol) obtained by ultrasonic treatment in Example 1 and the control lignophenol derivative, the weight average molecular weight was measured by GPC, and the amount of cresol introduced was measured by NMR.
The results are shown in FIGS.
[0044]
As shown in FIGS. 2 and 3, the weight average molecular weight of the control sample was higher than that of the sonication sample particularly in the early stage of the reaction, and the difference between the two was slight in the 60-minute treatment sample. In contrast, as shown in FIGS. 4 and 5, the amount of cresol introduced was approximately higher than that of the control sample in the sonicated sample.
From these facts, it is apparent that the introduction rate of cresol in the sonication sample is high as a result of the accelerated introduction rate of cresol in the sonication sample, particularly in the initial to first half of the reaction.
Further, regarding the difference in the weight average molecular weight between the sonication sample and the control sample, the sonication conditions in Example 1 are mild, although there is an effect of promoting the decomposition of the lignin-cellulose matrix by the sonication. On the other hand, it reflects the result of efficient (rapid) introduction of cresol by ultrasound.
That is, under the sonication conditions of Example 1, deligation of the lignin-cellulose matrix was promoted slowly, and a large molecular region lignophenol derivative was slowly formed and separated, while the introduction of cresol was well promoted, It is considered that the initial weight average molecular weight was lower than that of the control sample because the low molecular weight lignophenol derivative having high introduction efficiency was produced and separated simultaneously or at an early stage. In addition, since the introduction of cresol is slower in the control sample than in the sonicated sample, the high molecular weight lignophenol derivative with a low cresol introduction rate is extracted in advance, while the reaction is accelerated. It is considered that the initial molecular weight was increased as a result of the relatively low molecular region lignophenol derivative into which cresol was gradually introduced with a high frequency gradually being extracted later than the previous polymer region lignophenol derivative.
[0045]
(Example 3: Preparation of lignophenol derivative by the first method)
As a lignocellulosic material, Batsuga (Tsuga canadensis) wood flour was used. 10 ml of p-cresol was added to 1 g of baitsuga defatted wood flour (corresponding to the absolute dry weight) and stirred for 5 minutes at 150 rpm and the lignin in the material was solvated with cresol. Next, 72 wt% sulfuric acid was added, and the mixture was vigorously stirred at 500 rpm, irradiated with ultrasonic waves (20 kHz, 180 W) with an ultrasonic generator (BRANSON SONIFIER450D), and reacted for 15 minutes, 20 minutes, and 40 minutes, respectively. I let you. In addition, ultrasonic irradiation was performed for a maximum of 20 minutes, with the reaction times of 15 minutes and 20 minutes being continuously irradiated for the entire reaction time, and for the system of 40 minutes being irradiated only for the first 20 minutes.
After the reaction, the reaction product was centrifuged, and the upper cresol phase was added dropwise to diethyl ether with cooling and stirring. The obtained insoluble fraction was extracted with acetone for 24 hours, and the filtrate was concentrated under reduced pressure and then added dropwise to cooled diethyl ether with stirring to obtain a lignophenol derivative.
A control sample was obtained in the same manner as in the above method except that ultrasonic irradiation was not performed during the acid treatment.
[0046]
The following were observed during the reaction with the acid.
That is, after the lignin solvation step with p-cresol, when the acid was added, the viscosity of the system increased rapidly and continued to decrease after several minutes. This is due to the fact that the higher-order structure of carbohydrates swells with acid and then becomes a low molecular weight by hydrolysis. In the ultrasonic irradiation sample, the initially increased viscosity decreased in a very short time. In other words, these results indicate that the aqueous medium rapidly penetrated into the carbohydrate molecules with higher-order structures by the microscopic vibration of the ultrasonic wave, and the swelling and hydrolysis were promoted.
When the reaction system is centrifuged after the acid treatment, the intermediate layer decreases as the treatment time is extended, and a clear green-colored phenol phase and a yellow aqueous phase are clearly separated, increasing the transparency of the aqueous phase. did. This is because the polymer carbohydrate and lignophenol mixed in the intermediate layer as a molecular mixture or complex migrate to the phenol phase and aqueous phase, respectively, as the phase separation reaction proceeds, and the carbohydrate in the aqueous phase is highly hydrolyzed. It can be said that this is because it was converted to water-soluble.
[0047]
(Example 4: Preparation of lignophenol derivative by the second method)
After sorption of 3 mol times (about 0.48 g) of p-cresol per lignin C9 unit to 1 g of degreased wood flour (corresponding to the absolute dry weight) used in Example 3, 72 wt% sulfuric acid was added, and ultrasonic waves were added. While stirring at 500 rpm, ultrasonic waves (20 kHz, 180 W) were irradiated with an ultrasonic generator (BRANSON SONIFIER450D) for 15 minutes, 20 minutes, and 40 minutes, respectively. In addition, ultrasonic irradiation was performed for a maximum of 20 minutes, with the reaction times of 15 minutes and 20 minutes being continuously irradiated for the entire reaction time, and for the system of 40 minutes being irradiated only for the first 20 minutes.
The reaction product is poured into a large excess of deionized water, the insoluble fraction is washed by centrifugation, deoxidized, and lyophilized to obtain a water insoluble fraction composition (lignophenol derivative and carbohydrate derived from lignocellulosic material). Contained). Further, this composition was extracted with acetone, and the dissolution section was concentrated under reduced pressure, and then dropwise added to ice-cooled diethyl ether with stirring to obtain a lignophenol derivative.
A control sample was obtained in the same manner as in the above method except that ultrasonic irradiation was not performed during the acid treatment.
In the reaction step with the acid, as in Example 3, the reaction mixture was reduced in viscosity by extending the reaction time and irradiating with ultrasonic waves, and this tendency was remarkable in the sonicated sample. In addition, when the reaction mixture was dispersed in a large excess of water after the phase separation reaction, the dispersibility was improved by extending the reaction time and irradiating with ultrasonic waves, and the yield of the insoluble fraction was small.
[0048]
(Example 5)
The lignophenol derivative yield and the weight average molecular weight (by GPC) of the lignophenol derivative sample and the control sample prepared in Example 3 and Example 4 were measured. The results are shown in FIGS.
[0049]
(Yield of lignophenol derivatives, etc.)
As shown in FIG. 6, the yield of the lignophenol derivative in Example 3, ie, lignocresol, was significantly higher in the sonicated sample than in the control sample at any treatment time.
In other words, since the yield of the system to which ultrasonic waves were added increased by about 2 times compared to the control, ultrasonic waves as external energy contributed to the increase in the contact frequency of the phenol-acid phase, and the carbohydrate classification It can be said that it effectively promotes the hydrolysis of lignin and the phenol grafting reaction of lignin. In addition, since the lignophenol was already induced in a high yield of 80% or more in 15 minutes from the start of the reaction, the effect of ultrasonic irradiation was manifested in the very initial stage of the phase separation reaction, which It can be said that the typical phase separation reaction time was shortened.
[0050]
Moreover, as shown in FIG. 7, the yield of the carbohydrate-lignophenol composite sample obtained as the water-insoluble section was clearly reduced for the ultrasonic irradiation sample of Example 4. The yield was about 20 to 26% per wood flour regardless of the reaction time. In other words, the irradiation of ultrasonic waves promotes the hydrolysis of carbohydrates, effectively converts them into water-soluble low-molecular sugar classes, and suppresses aggregation between water-insoluble carbohydrate-lignophenol composite particles. Therefore, the yield is thought to have decreased.
On the other hand, as shown in FIG. 8, the yield of lignophenol extracted and purified from the obtained water-insoluble fraction composition was almost the same in all treatments. From this, it was found that fragmentation due to carbohydrate hydrolysis and selective phenol grafting reaction to the lignin C1 position and cleavage of the bond between aryl ether units was effectively promoted by ultrasonic irradiation. These results indicate that the hydrolysis of carbohydrates and the phenol grafting reaction of lignin are significantly accelerated by ultrasound.
[0051]
(Weight average molecular weight of lignophenol derivative)
As shown in FIG. 9, in the control sample of Example 3, the weight average molecular weight of the obtained lignophenol gradually increased with the extension of the reaction time, whereas the lignophenol obtained by sonication was used. Phenol was higher in molecular weight and polydispersed than the control, and became almost constant after a reaction time of 20 minutes. This indicates that the addition of ultrasonic waves rapidly releases the higher-order structure of the carbohydrate, and the converted lignophenol is transferred into the phenol phase in an overall and effective manner. On the other hand, in the control sample with a slow hydrolysis rate of carbohydrates, only the relatively low molecular weight portion of the converted lignophenol was transferred to the phenol phase, so it was thought that it had a low molecular weight at the beginning of the reaction.
[0052]
Moreover, as shown in FIG. 10, the same tendency as the weight average molecular weight (FIG. 9) in the sample of Example 3 was recognized also in each sample obtained in Example 4. However, the difference in molecular weight between the presence and absence of ultrasonic irradiation in Example 4 was small, and the sonicated sample was slightly higher in both weight average molecular weight and dispersion ratio than the control. This is thought to be due to the fact that, as a result of the loss of highly converted lignophenol in the water dispersion process due to the addition of ultrasonic waves, only a relatively limited section was obtained as the final product.
[0053]
(Example 6) Preparation of a lignophenol derivative
(1) Affinity process-sorption of phenol derivatives
Coniferous pine (Pseudotsuga menziessi, hereinafter referred to as Douglas fir) is pulverized in an ultra-centrifugal crusher ZM100 manufactured by Retsh, and then passed through an 80-mesh sieve manufactured by IIDA Corporation to obtain 80-mesh wood powder. It was.
The wood flour was extracted with an ethanol: benzene = 1: 2 (V / V) solution using a Soxhlet extractor for 48 hours. After extraction, the wood powder was spread on a stainless steel vat, and the solvent was completely distilled off in a fume hood. Furthermore, it dried at 105 degreeC with the ventilation dryer for 24 hours, and the absolutely dry wood flour was obtained.
[0054]
Put 3g of absolute dry wood flour into a 100ml separable flask and add about 30ml of phenol derivative acetone solution (Lignin C).9(Including a phenol derivative equivalent to 3 mol times per unit). Next, in order to remove bubbles existing inside the wood flour, the mixture was stirred a little with a stirring blade, and the beaker was covered with aluminum foil and parafilm, and allowed to stand for about 24 hours. After standing, the mixture was stirred vigorously in a fume hood to completely remove acetone. A sample obtained by distilling acetone was used as a phenol derivative sorption wood flour.
[0055]
(2) Introduction process of phenol derivative-sulfuric acid treatment
While adding 60 ml of 60 wt%, 65 wt%, and 72 wt% sulfuric acid aqueous solution adjusted to 30 ° C in advance to the phenol derivative sorption wood flour subjected to affinity treatment in (1), stirring with a stirrer at 500 rpm for a predetermined time. The ultrasonic wave was radiated by an ultrasonic generator (BRANSON SONIFIER450D, 20 kHz, output 180 W), and the introduction process was performed in three treatment times of 5 minutes, 10 minutes, and 20 minutes. After completion of the process, each content was put into a large excess of water (about 600 ml, under forced stirring) in an 11-volume Erlenmeyer flask, the sulfuric acid concentration was lowered to 10% or less, and the mixture was stirred for about 1 hour. In addition, except not irradiating an ultrasonic wave, operation was performed similarly to the above and it was set as each control.
[0056]
(3) Deoxidation treatment
Transfer the contents of the Erlenmeyer flask to a centrifuge tube (made of polypropylene) with deionized water, and separate into water-soluble (including suspended solids) and water-insoluble sections by centrifugation [8800 rpm (10560G), 20 min, 5 ° C]. did. After separation, the soluble section (including suspended matter) in the centrifuge tube is taken out into a 51-volume Erlenmeyer flask using a Komagome pipette, and the water-insoluble section is further added with deionized water, stirred and centrifuged, and unreacted phenol derivative And acid was removed as a soluble fraction. The soluble fraction taken in a 5 liter Erlenmeyer flask was allowed to stand for about 1 day, and the supernatant was taken into a beaker with a suction filtration bell so as not to disturb the precipitate, and filtered with a glass fiber filter paper whose constant weight had been obtained in advance. After that, the constant amount of suspended matter remaining on the filter paper was measured.
[0057]
(4) Drying water-insoluble sections
The insoluble fraction after deoxidation treatment is transferred to a plastic container whose constant weight has been measured in advance using a small amount of deionized water, freeze-dried, and then dried under reduced pressure on diphosphorus pentoxide to obtain the constant weight. The yield based on wood flour was measured.
[0058]
(5) Observation of reaction system in ultrasonic irradiation in introduction process
[Sonication using 60wt% sulfuric acid aqueous solution]
In the reaction system using 60 wt% sulfuric acid, the control sample turned yellow green immediately after the addition of the sulfuric acid aqueous solution, and turned slightly dark green in about 5 to 6 minutes. Regarding the wood powder particles, the wood powder particles were confirmed even after the sulfuric acid treatment. In the sonicated sample, similar particles could be confirmed after the reaction. In addition, when the aqueous sulfuric acid solution was added, an increase in viscosity in the sample could not be confirmed regardless of the presence or absence of ultrasonic irradiation. These results mean that 60% aqueous sulfuric acid cannot cause sufficient swelling of the plant cell wall. After water dispersion, the color of the treated sample tended to turn red as the treatment time changed to 5 minutes, 10 minutes, and 20 minutes in each of the control sample and the sonication sample. Further, the sonicated sample was darker than the control sample. The red coloration of this sample is derived from the degree of conversion of lignin molecules, which are color-forming components in wood.
[0059]
[Sonication using 65wt% sulfuric acid aqueous solution]
In the treatment using the 65 wt% sulfuric acid aqueous solution, the control sample turned green immediately after the addition of the sulfuric acid aqueous solution, and then turned darker in about 3 to 4 minutes. In the ultrasonic treatment sample, the wood powder particles could not be confirmed in about 5 to 6 minutes, but in the control sample, the wood powder particles could not be confirmed in the treatment time of 10 minutes to 13 minutes. After water dispersion, the color of each treated sample turned red as the treatment time increased to 5 minutes, 10 minutes, and 20 minutes. As in the case of 60 wt% sulfuric acid treatment, the sonicated sample was darker than the control sample. Further, in the control sample, a white precipitation section was confirmed when the insoluble section was collected. This white section was also confirmed in the 5 minute and 10 minute samples of sonication, but not in the 20 minute sonication. This white section is considered to be due to aggregation of the poorly hydrolyzed carbohydrate section in the plant cell wall, and the white section of this carbohydrate was not confirmed in the 20 minute treated sample. It has been shown that hydrolysis of is promoted. The red coloration of the phase-separated sample is derived from the degree of conversion of lignin molecules, which are color forming components in wood, as in the case of 60 wt% sulfuric acid treatment.
[0060]
[Sonication using 72wt% sulfuric acid aqueous solution]
In the treatment using the 72 wt% sulfuric acid aqueous solution, unlike the case of adding the 60% sulfuric acid aqueous solution or the 65% sulfuric acid aqueous solution, the color changed to a considerably dark green immediately after the sulfuric acid aqueous solution was added. Then, it darkened a little in about 4-5 minutes. In the sonication sample, wood powder particles could not be confirmed in about 5-6 minutes, and in the control sample, it could not be confirmed in 9-11 minutes. After water dispersion, the color of the phase separation treated sample was green. The color of the sonicated sample did not change as the treatment time increased to 5 minutes, 10 minutes, or 20 minutes, but in the control sample, the treatment time increased to 5 minutes, 10 minutes, or 20 minutes. It turned green. In the control sample, when the treatment time was 5 minutes or 10 minutes, the white section confirmed during the 65 wt% sulfuric acid treatment was confirmed, but when the treatment time was 20 minutes, the white section was not confirmed. . In the sonicated sample, the white section observed during the 65 wt% sulfuric acid treatment was not confirmed. From this, it was shown that the 72 wt% sulfuric acid aqueous solution has the ability to sufficiently hydrolyze carbohydrates, and that the hydrolysis rate of carbohydrates was accelerated by ultrasonic energy.
[0061]
It should be noted that this is only an inference and does not restrict the present invention, but the color change after the addition of the above lignin acid is due to the coniferyl aldehyde present in the initial green color of the lignin. It is considered that when one molecule of p-cresol is introduced, the conjugated system in the molecule is extended. Furthermore, the color changes to dark green over time because the introduction of p-cresol occurs sufficiently and the generation of various types of conjugated systems can increase the absorption wavelength of light. It is thought to be caused by. In addition, the decrease in the brightness of the sonicated sample is considered to be caused by the fact that the hydrolysis of the carbohydrate, which is a white component, progresses to become an oligomer-level sugar having a low polymerization degree, thereby dissolving in the solvent. . The difference in color between the synthesized phase-separated samples is considered to be caused by the difference in the degree of oxidation and the degree of dispersion of the converted lignin molecules.
[0062]
(6) Yield of water-insoluble fraction (composition containing lignophenol derivative)
FIG. 11 shows a graph of the yield of the lignophenol derivative-containing composition per dry wood powder.
When a 60 wt% sulfuric acid aqueous solution was used, the sonicated sample showed a slightly lower yield than the control sample. The decrease in yield due to the treatment with 60% sulfuric acid is considered to have occurred as a result of the hemicellulose section and the amorphous section of cellulose in the wood having low resistance to acid being hydrolyzed by acid and flowing into the aqueous phase.
[0063]
When a 65 wt% sulfuric acid aqueous solution was used, the control sample showed a yield decreasing tendency (that is, a gradual decreasing tendency) almost the same as that during the 60 wt% sulfuric acid treatment. On the other hand, the yield of sonicated samples showed a significant decrease in yield. For the control sample, the 65 wt% sulfuric acid aqueous solution can swell the crystalline region of cellulose and the cellulose section is not fully hydrolyzed. The cause is considered to be. Significant yield reduction in sonicated samples promotes cell wall swelling and hydrolysis by 65 wt% sulfuric acid, which promotes the hydrolysis of carbohydrate segments due to increased sonic energy and increased contact between carbohydrate segments and acids. This is thought to be due to the fact that
[0064]
When the 72 wt% sulfuric acid aqueous solution was used, the control sample showed a yield decreasing tendency almost the same as the ultrasonic irradiation 65 wt% sulfuric acid treated sample. This indicates that the 72% aqueous sulfuric acid solution has the ability to cause cell wall swelling and more fully hydrolyze carbohydrate segments. On the other hand, in the case of the sonicated sample, even if the treatment time was increased to 5 minutes, 10 minutes, and 20 minutes, the yield did not change significantly. It is estimated that the decomposition rate was accelerated and the reaction reached equilibrium in about 5 minutes.
[0065]
(Example 7)
Measurement of lignin content in lignophenol derivative composition
About 200 mg of each composition of Example 6 which has been sufficiently dried is precisely weighed into a 10 ml sample tube, 3 ml of 72% sulfuric acid aqueous solution is added little by little with a glass rod, and the reaction is homogeneous in a 20 ° C. water bath. The reaction was allowed to proceed for 4 hours with sufficient agitation to proceed. After the reaction, it was quantitatively transferred to a 200 ml Erlenmeyer flask marked in advance to 115 ml, and deionized water was added to dilute the sulfuric acid concentration to 3%. The diluted processed product is heated with a gas burner to keep the sulfuric acid concentration at 3% and to remove carbohydrate-derived furfural and methylfurfural from the system. Therefore, deionized water is appropriately used without using a Liebig cooler. Boiled for 2 hours while adding. After the treatment, the content is filtered using a constant weight lG4 glass filter, the insoluble matter is washed with hot water, dried at 105 ° C, the constant weight is measured, and the amount of acid-insoluble lignin in the phase-separated sample Asked. The filtrate was measured for UV absorption at 205 nm with JASCOV-520, the amount of acid-soluble lignin was determined from the following formula, and the total amount of lignin was calculated as the sum of the amount of acid-insoluble lignin.
B = A / (110 × D)
Lignin (%) = B × V × 100 / (1000 × W)
A: Absorbance
D: Dilution rate
V: Total filtrate volume (ml)
W: Sample weight (g)
[0066]
FIG. 12 shows a graph of lignin content in the lignophenol derivative-containing composition.
Blackening was observed in all samples immediately after adding the sulfuric acid aqueous solution. In the sample using 60 wt% sulfuric acid, there was a viscosity at the beginning of the reaction irrespective of the presence or absence of ultrasonic irradiation, but in both the 65 wt% and 72 wt% sulfuric acid treated samples, the expression of viscosity was no longer present when acid was added. I was not able to admit. This is because the cell wall was not sufficiently swollen during the treatment with 60 wt% sulfuric acid, so that viscosity was produced only when 72 wt% sulfuric acid was added later, and the cell wall was already swollen during the treatment with 65 wt% sulfuric acid and 72 wt% sulfuric acid. It is considered that viscosity increase did not occur even when 72 wt% sulfuric acid was added in the latter stage.
[0067]
At the stage of diluting the sulfuric acid concentration to 3 wt%, the sonicated sample was blackened compared to the control sample, but turned red with boiling. This is considered to be because secondary denaturation was suppressed by the conversion of lignin.
Overall, the lignin content tended to increase as the processing time in the introduction process was extended. This corresponds to the longer the reaction time, the more carbohydrate is hydrolyzed and the lower molecular weight carbohydrate fraction flows out into the aqueous phase. Moreover, the acid-soluble lignin showed a higher value than usual. This is because a low molecular weight fraction that could not be self-condensed due to the introduction of a phenol derivative at the C1 position which is the active side chain in the lignin matrix by sonication and the secondary denaturation was suppressed, flowed into the filtrate. It is thought to be caused by.
[0068]
Example 8 Introduction of an additional phenol derivative into a lignophenol derivative
The introduction of this additional phenol derivative, that is, the second conversion treatment is performed to test the amount of active side chain remaining in the first lignophenol derivative obtained by the first conversion treatment already performed. This is the method. In this example, two types of phenol derivatives are introduced into the lignin matrix by a phase separation process using another phenol derivative different from the phenol derivative used in the primary treatment. Hereinafter, the degree of cell wall release and the degree of lignin conversion during the primary treatment were examined by comparing the frequency of introduction of the phenol derivatives introduced into the lignin matrix by the primary conversion treatment and the secondary transformation treatment.
[0069]
A specified amount of the composition (primary treatment sample) obtained in Example 6 (400 mg for the 72 wt% sulfuric acid treatment sample with a small total mass, 600 mg for the 65 wt% sulfuric acid treatment sample with ultrasonic irradiation, and 700 mg for the others) Weigh accurately in a 50 ml centrifuge tube, and there is a prescribed amount of phenol derivative (mixed medium of ethylphenol: benzene = 7: 3) (72 ml% sulfuric acid-treated sample with a small total mass), ultrasonic irradiation 65 wt% sulfuric acid-treated sample 6 ml, others 7 ml), and stirred for about 10 minutes so as to strike with a wing for a stirring frame. After that, add a specified amount of 72 wt% sulfuric acid aqueous solution that has been pre-heated at 30 ° C (8 ml for 72 wt% sulfuric acid treated sample with a small total mass, 12 ml for 65 wt% sulfuric acid treated sample, 14 ml for others), about 1 After stirring for a minute, it was placed on a stirrer and stirred in a water bath at 30 ° C. for a total of 60 minutes (500 rpm). After stirring, the mixture was separated into an organic phase and an aqueous phase by centrifugation [25 ° C., 3500 rpm (2200 G), 3 minutes].
[0070]
150 ml of diethyl ether is added to a 200 ml Erlenmeyer flask, and the organic phase is added dropwise with vigorous stirring with a stirrer while cooling with water, and then a phenol derivative is added to a several ml reaction vessel for interfacial cleaning, followed by centrifugation [25 ° C., 3500 rpm ( 2200G), 3 minutes] and the organic phase was added dropwise to ether. Washing was performed 3 times in total. After that, the oily substance settled and stirred until the supernatant liquid became clear. However, when the supernatant was not clear even after stirring for 1 hour, the insoluble matter was recovered by centrifugation [5 ° C., 3500 rpm (2220 G), 10 minutes]. The supernatant is removed, and the precipitate and the container are further washed twice with about 15 ml of diethyl ether. Then, 40-60 ml of acetone is added to the precipitate, and the mixture is stirred until completely dissolved. Washed with acetone. The supernatant was transferred to a centrifuge tube, centrifuged (5 ° C., 3500 rpm (2220 G), 5 minutes), and then filtered using glass fiber filter paper. Then, transfer to a 100 ml eggplant flask, concentrate to about 10 ml with an evaporator, add dropwise to diethyl ether, collect the resulting precipitate by centrifugation (5 ° C, 3500 rpm (2220G), 5 minutes), precipitate for washing Diethyl ether was added to the product and washed about 3 times.
The resulting precipitate was stored at room temperature in a dark place for 1 day, and diethyl ether was removed. Then, it dried under reduced pressure on niline pentoxide with the centrifuge tube, measured the constant weight, and calculated | required the yield. This was made into the secondary lignophenol derivative.
[0071]
(Example 9) Measurement of introduction amount of phenol derivative
About 20 mg of various secondary lignophenol derivatives and about 3 mg of p-nitrobenzaldehyde (PNB) as an internal standard substance are precisely weighed into a screw vial with an lmI Teflon liner (Teflon is a registered trademark) and weighed with an lml volumetric pipette. 150 μl of hydrogenated pyridine was added and completely dissolved. After dissolution, 450 μl of deuterated chloroform containing 0.03% tetramethylsilane was added using a 1 ml volumetric pipette. After confirming complete dissolution, the sample solution was filtered with cotton, put into an NMR measuring tube (diameter 5 mm), and measured with an ALPHAFT NMR Spectrometer (manufactured by JEOL).
[0072]
The introduction rate of p-ethylphenol was determined by the following formulas (1) and (2).
[Expression 1]
Figure 0003654527
[Expression 2]
Figure 0003654527
[0073]
Iwt (%): Introduced phenol (Wt%)
Pwt: PNB weight (mg)
Pm: Molecular weight of PNB = 151
Pn: H number of aromatic nucleus in PNB = 4
Pi: integrated value of region (8.40-7.80 ppm) showing aromatic nucleus 4H signal in PNB
Ci: integrated value of the region showing the methyl group 3H signal in cresol (2.30 to 1.80 ppm)
Ei: Integration value of the region showing the methyl 3H signal of the ethyl group in P-ethylphenol (1.40 to 0.80 ppm)
En: Number of methyl protons in the ethyl group in P-ethylphenol = 3
Em: Molecular weight of P-ethylphenol = 122
Lwt: Lignofail weight
Imo1 / C9: The amount of phenol introduced is (mo1 / C9)
Lm: Molecular weight of 1 unit of lignin = 2000 (conifers)
[0074]
FIG. 13 shows the amount of p-ethylphenol introduced into the secondary lignophenol derivative.
As shown in FIG. 13, introduction of p-ethylphenol was confirmed in all secondary lignophenol derivatives. The control sample showed a higher p-ethylphenol introduction amount at any acid concentration. This shows that introduction of a phenol derivative into lignin was promoted by ultrasonic irradiation, and the residual active side chain in the primary lignophenol derivative was reduced.
[0075]
【The invention's effect】
ADVANTAGE OF THE INVENTION According to this invention, when obtaining a lignin derivative from a lignocellulosic material, the technique which can control the physical property, production efficiency, etc. of a lignin derivative can be provided.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a diagram illustrating various lignophenol derivatives obtained by introducing a phenol derivative into lignin in a lignocellulosic material.
2 is a graph showing the relationship between the reaction time and the weight average molecular weight of the lignophenol derivative derived from bay pine obtained in Example 1. FIG.
3 is a graph showing the relationship between the reaction time and the weight average molecular weight of the beech-derived lignophenol derivative obtained in Example 1. FIG.
4 is a graph showing the relationship between the reaction time of lignophenol derivatives derived from bay pine and the amount of introduced cresol obtained in Example 1. FIG.
FIG. 5 is a graph showing the relationship between the reaction time of the beech-derived lignophenol derivative obtained in Example 1 and the amount of cresol introduced.
6 is a graph showing the reaction time and yield of the lignophenol derivative obtained in Example 3. FIG.
7 is a graph showing the reaction time and yield of the water-insoluble section prepared in Example 4. FIG.
8 is a graph showing the relationship between the reaction time and yield of the lignophenol derivative obtained in Example 4. FIG.
9 is a graph showing the relationship between the reaction time and the weight average molecular weight of the lignophenol derivative obtained in Example 3. FIG.
10 is a graph showing the relationship between the reaction time and the weight average molecular weight of the lignophenol derivative obtained in Example 4. FIG.
FIG. 11 is a graph showing the relationship between the reaction time and yield of a lignophenol derivative-containing composition per dry wood powder.
12 shows a graph of lignin content in various lignophenol derivative-containing compositions obtained in Example 6. FIG.
13 is a graph showing the amount of p-ethylphenol introduced into the secondary lignophenol derivative obtained in Example 8. FIG.

Claims (5)

リグニンのフェノール誘導体の生産方法であって、
フェノール誘導体によりリグノセルロース系材料を親和する工程、及び
フェノール誘導体により予め親和されたリグノセルロース系材料に酸を添加して得られる反応系においてリグニンにフェノール誘導体を導入する工程、
の少なくとも一つの工程において、リグノセルロース系材料を含む混合系に対して超音波を照射する、方法。
A method for producing a phenol derivative of lignin,
A step of making a lignocellulosic material compatible with a phenol derivative, and a step of introducing a phenol derivative into lignin in a reaction system obtained by adding an acid to a lignocellulosic material previously made affinity with a phenol derivative;
A method of irradiating a mixed system containing a lignocellulosic material with ultrasonic waves in at least one of the steps.
前記親和工程は、フェノール誘導体を含有する液相でリグノセルロース系材料を溶媒和する工程である、請求項1記載の方法。The method according to claim 1, wherein the affinity step is a step of solvating the lignocellulosic material in a liquid phase containing a phenol derivative. 前記親和工程は、フェノール誘導体を含有する溶媒を予めリグノセルロース系材料に浸透させる工程と当該溶媒を除去する工程とを備える、請求項1記載の方法。The method according to claim 1, wherein the affinity step comprises a step of preliminarily impregnating a lignocellulosic material with a solvent containing a phenol derivative and a step of removing the solvent. 前記導入工程における前記酸を、少なくとも、前記リグノセルロース系材料におけるリグニン−セルロースマトリックスを膨潤させうる強度で添加し、当該導入工程における混合系に超音波を照射する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。The acid in the introduction step is added at least with a strength capable of swelling the lignin-cellulose matrix in the lignocellulosic material, and the mixed system in the introduction step is irradiated with ultrasonic waves. The method described in 1. 前記導入工程の前段において、前記リグノセルロース系材料におけるリグニン−セルロースマトリックスを膨潤させない強度の酸を添加し、当該導入工程における混合系に超音波を照射する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。In the front | former stage of the said introduction | transduction process, the acid of the intensity | strength which does not swell a lignin-cellulose matrix in the said lignocellulosic material is added, and ultrasonic waves are irradiated to the mixing system in the said introduction | transduction process. the method of.
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