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JP3513270B2 - インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置

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JP3513270B2
JP3513270B2 JP16610495A JP16610495A JP3513270B2 JP 3513270 B2 JP3513270 B2 JP 3513270B2 JP 16610495 A JP16610495 A JP 16610495A JP 16610495 A JP16610495 A JP 16610495A JP 3513270 B2 JP3513270 B2 JP 3513270B2
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Ink Jet (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インクジェット記録ヘ
ッド及びこれを備えたインクジェット記録装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】例えば特開昭54−51837号公報に
記載されているインクジェット記録方法は、熱エネルギ
ーを液体に作用させて液滴吐出の原動力を得るという点
において、他のインクジェット記録方法とは異なる特徴
を有している。すなわち、上記公報に開示されているイ
ンクジェット記録方法では、熱エネルギーの作用により
液体が加熱されて気泡を発生し、この気泡発生に基づく
作用力によって、記録ヘッドの先端部の吐出口から液滴
が吐出され、この液滴が被記録部材に付着して情報の記
録が行われる。
【0003】このインクジェット記録方法において用い
られるインクジェット記録ヘッド(以下「記録ヘッド」
ともいう。)は液吐出部を具備し、この液吐出部は一般
に、液体を吐出するために設けられた吐出口、この吐出
口に連通した液流路、及びこの液流路内に設けられ熱エ
ネルギーを液体に作用させる熱発生手段を有している。
熱発生手段としては電気熱変換体があり、この電気熱変
換体は蓄熱のための下部層、発熱部を有する抵抗層、抵
抗層に電気を供給するための一対の配線電極、この配線
電極をインクから保護する保護層を備えている。
【0004】ところで、記録ヘッドの吐出設計の立場か
ら、熱エネルギーをインクに効率よく伝えることが望ま
しいため、発熱部の保護層はできるだけ薄いか又は無い
ほうが望ましい。
【0005】しかしながら従来の記録ヘッドでは、発熱
部と配線電極と境界近傍の保護層を厚くしなければなら
なかった。その理由は、配線電極の厚さは抵抗を小さく
するために厚く形成されており電極パターンの段差が高
く、このような配線電極を保護するためには保護層を厚
くしなければならなかったからである。
【0006】これに対して、抵抗層は電気抵抗が大きい
のでその厚さは配線電極に比較して薄い。したがって、
抵抗層の発熱部(配線電極が積層されていない一対の配
線電極間の抵抗層の領域)では保護層を薄くすることが
できる。
【0007】このような考えに従って特開昭60−23
6758号公報には、発熱部の保護層を薄くすることが
提案されている。しかしながら、保護層が薄くなる場所
については詳細に検討されていない。
【0008】また、特開昭63−191645号公報に
は、発熱部にかかっている有機保護層部分の抵抗層の下
部に配線電極を設けることが提案されている。これは、
有機保護層は耐熱性が低いことから、その有機保護層部
分への到達温度を低くするために行われるものである。
しかしながら、これは、保護層の耐久性の観点から行わ
れたものであり、抵抗層との関係は述べられていない。
【0009】その他の構成として、保護層を有しない膜
構成が、特開昭55−126462号公報において提案
されている。このような膜構成に使用される抵抗層は耐
インク性に優れていなければならない。すなわち、高温
状態での電気化学特性に優れ、かつ泡の消泡時に発生す
るキャビテーションに強くなければいけない。このよう
な特性をもつ抵抗層の材料として、特願平01−467
69号公報にAl−Ta−Irが、特願平02−551
31公報にTa−Irが提案されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、保護層
が発熱部において薄くなっている記録ヘッドの場合、そ
の保護層の厚さによって吐出耐久性が異なり、そのため
吐出特性が非常に悪くなることがあった。
【0011】故障解析によって次のことが分かった。第
1の原因として、保護層の薄くなる場所にクラックが発
生し、そのクラックから侵入したインクによって抵抗層
が高温反応を起こし破壊される。
【0012】第2の原因として、保護層の抵抗層に対す
る熱応力による。この熱応力により抵抗層に生じた破断
箇所は、ちょうど保護層が薄くなる場所であった。さら
に具体的に説明すると、保護層は、電極パターンの段差
を覆うため配線電極層上には比較的厚く形成され、一
方、発熱部上にはできるだけ薄く形成される。その結
果、発熱部と配線電極とのパターン境界付近の発熱部上
において保護層の厚い領域と薄い領域が存在する(図9
参照)。このような領域において抵抗層の発熱部が発熱
すると、保護層の厚い領域と薄い領域との熱膨張差によ
って、それらの領域間で応力が発生し、保護層にクラッ
クが生じたり、その下層の抵抗層にダメージを与えたり
して、最終的には保護層のクラックから侵入するインク
との高温反応によって抵抗層が破壊する。さらには、保
護層の厚い領域と薄い領域との境界付近の下方にある抵
抗層は、上記の保護層の応力を受けて破壊することもあ
る。
【0013】特に本発明では、インクを膜沸騰させその
圧力によってインクを吐出する原理を用いたインクジェ
ット方式を採用しており、抵抗層の発熱部の発熱は非常
に短時間で急激であるため、その上部の保護層は非常に
熱ストレスを受ける。また、保護層の膜厚が変化する部
位では大きな応力が発生する。
【0014】一方、抵抗層の発熱部が直接インクに接す
る膜構成の(発熱部に対して保護層が形成されていな
い)記録ヘッド(図10参照)において同様な吐出試験
を行ったところ、保護層を有する前記の記録ヘッドと同
様に、保護層の有る領域と無い領域との境界付近におい
て耐久性が異なっていた。
【0015】故障解析を行った結果、第1の原因とし
て、前記第2の原因と同様に発熱部の発熱により発生す
る保護層の応力によって、保護層の有る領域と無い領域
とで抵抗層にかかる応力が大きく異なり、その応力によ
って抵抗層が破壊する。
【0016】第2の原因としては電気化学反応によるも
のである。特に、低価格な駆動素子の使用において、低
電流駆動とするために抵抗層の膜厚を薄くしてシート抵
抗値を大きくすると、抵抗層間の電位が大きくなり、電
気化学反応がより促進され、破壊が早い時点で発生す
る。
【0017】ここで、抵抗層の発熱部が直接インクに接
する膜構成における、抵抗層の電気化学反応による破壊
について考察する。抵抗層の電気化学反応による破壊は
次の原因によると考えられる。 (1)アルカリ金属イオンの陰極部へのアタック:抵抗
層および蓄熱層は、特に抵抗層パターン端部において電
気化学反応を受けやすい。 (2)抵抗層の陽極部での溶解。
【0018】以上の電気化学反応は下記の要因によって
促進される。 (i)電圧:抵抗層の駆動電圧が大きければ、発熱部内
での電位差が大きくなり電気化学反応が進むことにな
る。 (ii)温度:電気化学反応は化学反応であるから温度が
高くなると当然、反応が促進される。これは、駆動電圧
が発泡電圧の何倍であるかで決まり、また駆動パルス幅
にも関係する。 (iii)加熱時間:1パルス中の加熱時間で電気化学反
応の進み方が異なる。すなわち駆動パルス幅で決まるこ
とになる。 (iv)インクの種類:当然、インクのイオン種によって
影響される。 (v)抵抗層の材料と膜厚:当然、抵抗層の材料によっ
て電気化学反応は異なるが、さらに膜厚によっても破断
までに至る時間が変わる。当然、膜厚が厚いほうが破断
までに時間がかかる。
【0019】以上のような原因によって電気化学反応の
状況が変わる。特に、駆動素子のコストダウンの目的の
ために低電流駆動を行った場合、抵抗層のシート抵抗を
大きくしなければならず、それによって吐出耐久性が低
下する。
【0020】シート抵抗アップによる吐出耐久性の低下
は次のように考察できる。シート抵抗アップによって、
抵抗層の電位差が大きくなるため、電気化学反応が促進
される。また、抵抗層の膜厚が薄いために抵抗層の耐電
気化学反応性が弱い。以上の2点によって、シート抵抗
アップによる吐出耐久性が低下したと考えられる。
【0021】シート抵抗アップによる吐出耐久性の低下
の場合以外でも、抵抗層のパターン設計によっては駆動
電圧が高くなったり、コストダウンのため駆動電圧を一
本化した場合に記録ヘッドのバラツキによって抵抗層の
到達温度が高くなったり、用紙の選択性向上のために種
々のインクが採用される等、電気化学反応を促進する要
因が増加している。したがって、従来より電気化学的に
安定な膜材料や膜構成が求められている。
【0022】以上説明したように、抵抗層の発熱部に対
して保護層を形成した場合および形成しない場合とも
に、吐出耐久性を向上させるためには、発熱部上の保護
層の膜厚の変化に対して、なんらかの対策を行わなけれ
ばならない。
【0023】そこで本発明の目的は、発熱部上に保護層
を有する記録ヘッドの上記の課題を解決し、インク種に
よらず吐出耐久性に優れ且つ低コストで作製できるイン
クジェット記録ヘッドを提供することである。また、こ
のインクジェット記録ヘッドを備えたインクジェット記
録装置を提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の目的
を達成するために種々の検討を重ねた結果、本発明を完
成した。
【0025】第1の本発明は、インクを吐出する吐出口
を有するインク流路と、蓄熱のための下部層と、該下部
層上に設けられた抵抗層と、該抵抗層上に配され該抵抗
層に電気信号を供給するための一対の配線電極と、を有
し、前記配線電極間の抵抗層を発熱部とした電気熱変換
体と、該発熱部上に存在し前記抵抗層および配線電極を
連続層でインクから保護する保護層と、を具備し、前記
電気熱変換体が前記インク流路に対応して設けられてい
るインクジェット記録ヘッドにおいて、前記発熱部が駆
動時に高温部となる領域と低温部となる領域とを有し、
前記保護層が一つの当該保護層に厚い領域と薄い領域と
を有し、前記発熱部の駆動時に高温部となる領域上には
前記保護層の薄い領域が設けられているとともに、前記
保護層の厚い領域と薄い領域との境界が、前記発熱部の
駆動時の低温部となる領域上にあるように設けられてい
ることを特徴とするインクジェット記録ヘッドに関す
る。
【0026】第2の本発明は、発熱部を構成する抵抗層
の幅が異なることで、発熱部に高温部と低温部が構成さ
れている第1の発明のインクジェット記録ヘッドに関す
る。
【0027】第3の本発明は、発熱部を構成する抵抗層
の厚さが異なることで、発熱部に高温部と低温部が構成
されている第1の発明のインクジェット記録ヘッドに関
する。
【0028】第4の本発明は、発熱部に対応した下部層
の厚さが異なることで、発熱部に高温部と低温部が構成
されている第1の発明のインクジェット記録ヘッドに関
する。
【0029】第5の本発明は、発熱部に対応した下部層
の熱伝導率を異ならせることで、発熱部に高温部と低温
部が構成されている第1の発明のインクジェット記録ヘ
ッドに関する。
【0030】
【0031】
【0032】第8の本発明は、第1〜7の発明のいずれ
かのインクジェット記録ヘッドと、被記録媒体を搬送す
る手段とを備えたインクジェット記録装置に関する。
【0033】以下、本発明を図面を用いて詳細に説明す
る。
【0034】図1に、第1の発明の一態様である第2の
発明のインクジェット記録ヘッドのヒータボードの一例
を示す。図1(b)はヒータボードの平面図、図1
(a)は図1(b)のX−X線断面図である。図1
(a)において、101は基板、102は蓄熱のための
下部層、103は抵抗層、104は抵抗層に電気を供給
するための一対の配線電極層、105は抵抗層と配線電
極層をインクから保護する保護層、106は第2の保護
層、107は第3の保護層である。108は一対の配線
電極間に位置する抵抗層の発熱部、109は保護層(1
05)の薄い領域を示す。図1(b)においては、10
8は発熱部、109は保護層の薄い領域を示す。
【0035】なお、第2の保護層は気泡が消失する際に
生じるキャビテーションを抑制するためのものであり、
第3の保護層はインクの侵入による短絡や損傷をさらに
低減させるためのもの(有機保護層等)である。これら
の保護層は必要により機能向上のために設けられる。後
に示される図2〜4中の第2及び第3の保護層について
も同様である。
【0036】第2の発明の特徴は、抵抗層のパターン幅
を変更することで、駆動時において発熱部に高温部と低
温部を構成し、この低温部上に保護層の厚さが変化して
いる境界部を位置させることである。すなわち、電流密
度が小さくなるように、抵抗層(103)の発熱部(1
08)のパターン幅を発熱部(108)と配線電極層
(104)とのパターン境界付近において広くする。こ
れにより、発熱部と配線電極層とのパターン境界付近に
おける温度上昇を抑え、低温部を設けることができる。
そしてこの低温部に保護層の厚さが変化している境界部
を位置させることで上記パターン境界付近上部の保護層
(105)に生じる熱応力を小さくすることができる。
【0037】発熱部の上記パターン幅を広くしすぎる
と、パターン幅の変化量比が大きくなり、その部分で電
流が集中するため発熱部の破断・損傷が生じる。したが
って、パターン幅の変化量比(B/A)は1.1〜2.
8が適当であり、好ましくは1.2〜2.5である。
【0038】なお、配線電極層下部の抵抗層のパターン
幅については、特に制限されないが、発熱部のパターン
幅(A)より大きい方が望ましく、図1(b)に示すよ
うに発熱部のパターン幅(B)と同じであってもよい。
【0039】また第2の発明は、図1に示すように、発
熱部の、駆動時に高温部となる領域上に保護層の薄い領
域(109)を形成する。この保護層の薄い領域(10
9)は、上記のように形成された抵抗層の発熱部に対し
て次のように設定する。すなわち、発熱部と配線電極層
とのパターン境界付近の保護層の厚い領域と薄い領域と
の境界が、上記の発熱部のパターン幅の広い領域上(駆
動時の低温部)にあるように形成する。パターン幅が広
い領域は温度上昇が小さいため、この領域上に、保護層
の厚い領域と薄い領域との境界があっても保護層に発生
する熱応力は小さく、この熱応力による保護層や抵抗層
の破断・損傷が生じにくい。
【0040】さらに、保護層の薄い領域(109)は、
上記パターン境界付近以外の保護層の厚い領域と薄い領
域との境界が、発熱部上に無いように形成する。なお、
これは従来でも行われていたことである(図9(b)及
び図10(b)参照)。
【0041】また上述の第2の発明は、図1においては
保護層の厚さが変化している境界部が保護層の薄い領域
と厚い領域との境界部であるが、図5に示すように保護
層の厚さが変化している境界部が保護層(505)のあ
る領域と無い領域(509)との境界部である場合に
いても同様である。すなわち、抵抗層の発熱部に対して
保護層が形成されておらず発熱部の表面がインクと直接
接触するヒータボードにおいて、発熱部のパターン幅の
広い領域(駆動時の低温部)上に、保護層のある領域と
無い領域との境界部ある場合についても上述の第2の発
明と同様である。
【0042】図2に、第1の発明の一態様である第3の
発明のインクジェット記録ヘッドのヒータボードの一例
を示す。図2(b)はヒータボードの平面図、図2
(a)は図2(b)のX−X線断面図である。図2
(a)において、101は基板、102は蓄熱のための
下部層、203は抵抗層、104は抵抗層に電気を供給
するための一対の配線電極層、105は抵抗層と配線電
極層をインクから保護する保護層、106は第2の保護
層、107は第3の保護層である。208は一対の配線
電極間に位置する抵抗層の発熱部、109は保護層(1
05)の薄い領域を示す。図2(b)においては、20
8は発熱部、109は保護層の薄い領域を示す。
【0043】第3の発明の特徴は、抵抗層の厚さを変更
することで、駆動時において発熱部に高温部と低温部を
構成し、この低温部上に保護層の厚さが変化している境
界部を位置させることである。すなわち、電流密度が小
さくなるように、発熱部(208)の抵抗層(203)
の厚さを発熱部(208)と配線電極層(104)との
パターン境界付近において厚くする。これにより、発熱
部と配線電極層とのパターン境界付近における温度上昇
を抑え、低温部を設けることができる。そしてこの低温
部に保護層の厚さが変化している境界部を位置させるこ
とで上記パターン境界付近上部の保護層(105)に生
じる熱応力を小さくすることができる。
【0044】発熱部の抵抗層の上記厚さを厚くしすぎる
と、厚さの変化量比が大きくなり、その部分で電流が集
中するため発熱部の破断・損傷が生じる。したがって、
厚さの変化量比(G/F)は1.1〜2.5が適当であ
り、好ましくは1.2〜2.0である。
【0045】なお、配線電極層下部の抵抗層の厚さにつ
いては、特に制限されないが、発熱部の厚さFより厚い
ほうが望ましく、図2(a)に示すように発熱部の厚さ
Gと同じであってもよい。
【0046】また第3の発明は、図2に示すように、発
熱部の、駆動時に高温部となる領域上に保護層の薄い領
域(109)を形成する。この保護層の薄い領域(10
9)は、上記のように形成された抵抗層の発熱部に対し
て次のように設定する。すなわち、発熱部と配線電極層
とのパターン境界付近の保護層の厚い領域と薄い領域と
の境界が、上記の発熱部の抵抗層の厚さの厚い領域上
(駆動時の低温部)にあるように形成する。発熱部の抵
抗層の厚さが厚い領域は温度上昇が小さいため、この領
域に、保護層の厚い領域と薄い領域との境界があっても
保護層に発生する熱応力は小さく、この熱応力による保
護層や抵抗層の破断・損傷が生じにくい。
【0047】さらに、保護層の薄い領域(109)は、
上記パターン境界付近以外の保護層の厚い領域と薄い領
域との境界が、発熱部上に無いように形成する。なお、
これは従来でも行われていたことである(図9(b)及
び図10(b)参照)。
【0048】また上述の第3の発明は、図2においては
保護層の厚さが変化している境界部が保護層の薄い領域
と厚い領域との境界部であるが、図6に示すように保護
層の厚さが変化している境界部が保護層(505)のあ
る領域と無い領域(509)との境界部である場合に
いても同様である。すなわち、抵抗層の発熱部に対して
保護層が形成されておらず発熱部の表面がインクと直接
接触するヒータボードにおいて、発熱部の抵抗層の厚さ
が厚い領域(駆動時の低温部)上に、保護層のある領域
と無い領域との境界部ある場合についても上述の第3の
発明と同様である。
【0049】図3に、第1の発明の一態様である第4の
発明のインクジェット記録ヘッドのヒータボードの一例
を示す。図3(b)はヒータボードの平面図、図3
(a)は図3(b)のX−X線断面図である。図3
(a)において、101は基板、302は蓄熱のための
下部層、303は抵抗層、104は抵抗層に電気を供給
するための一対の配線電極層、105は抵抗層と配線電
極層をインクから保護する保護層、106は第2の保護
層、107は第3の保護層である。308は一対の配線
電極間に位置する抵抗層の発熱部、109は保護層(1
05)の薄い領域を示す。図3(b)においては、30
8は発熱部、109は保護層の薄い領域を示す。
【0050】第4の本発明の特徴は、下部層の厚さを変
更することで、駆動時において発熱部に高温部と低温部
を構成し、この低温部上に保護層の厚さが変化している
境界部を位置させることである。すなわち、下部層(3
02)の厚さを、少なくとも発熱部(308)と配線電
極層(104)とのパターン境界付近の発熱部下部にお
いて、他の領域の発熱部下部における厚さより薄くす
る。これにより、発熱部と配線電極層とのパターン境界
付近における温度上昇を抑え、発熱部に低温部を設ける
ことができる。そしてこの低温部に保護層の厚さが変化
している境界部を位置させることで上記パターン境界付
近上部の保護層(105)に生じる熱応力を小さくする
ことができる。
【0051】下部層の上記厚さを薄くしすぎると、厚さ
の変化量比が大きくなり、その部分で温度差が大きくな
るため発熱部の破断・損傷が生じる。したがって、厚さ
の変化量比(I/H)は0.1〜0.9が適当であり、
好ましくは0.2〜0.8である。
【0052】なお、配線電極層下部の下部層の厚さにつ
いては、特に制限されないが、発熱部下部の下部層の厚
さHより薄いほうが望ましく、図3(a)に示すように
発熱部の下部層の厚さIと同じであってもよい。
【0053】また第4の発明は、図3に示すように、発
熱部の、駆動時に高温部となる領域上に保護層の薄い領
域(109)を形成する。この保護層の薄い領域(10
9)は、上記のように形成された下部層に対して次のよ
うに設定する。すなわち、発熱部と配線電極層とのパタ
ーン境界付近の保護層の厚い領域と薄い領域との境界
が、上記の下部層の厚さの薄い領域上の発熱部(駆動時
の低温部)上にあるように形成する。下部層の厚さが薄
い領域の上部の抵抗層は温度上昇が小さいため、この領
域に、保護層の厚い領域と薄い領域との境界があっても
保護層に発生する熱応力は小さく、この熱応力による保
護層や抵抗層の破断・損傷が生じにくい。
【0054】さらに、保護層の薄い領域(109)は、
上記パターン境界付近以外の保護層の厚い領域と薄い領
域との境界が、発熱部上に無いように形成する。なお、
これは従来でも行われていたことである(図9(b)及
び図10(b)参照)。
【0055】また上述の第4の発明は、図3においては
保護層の厚さが変化している境界部が保護層の薄い領域
と厚い領域との境界部であるが、図7に示すように保護
層の厚さが変化している境界部が保護層(505)のあ
る領域と無い領域(509)との境界部である場合に
いても同様である。すなわち、抵抗層の発熱部に対して
保護層が形成されておらず発熱部の表面がインクと直接
接触するヒータボードにおいて、下部層の厚さの薄い領
域上の発熱部(駆動時の低温部)上に、保護層のある領
域と無い領域との境界部ある場合についても上述の第4
の発明と同様である。
【0056】図4に、第1の発明の一態様である第5の
発明のインクジェット記録ヘッドのヒータボードの一例
を示す。図4(b)はヒータボードの平面図、図4
(a)は図4(b)のX−X線断面図である。図4
(a)において、101は基板、402aは熱伝導率の
低い材料からなる下部層、402bは熱伝導率の高い材
料からなる下部層、303は抵抗層、104は抵抗層に
電気を供給するための一対の配線電極層、105は抵抗
層と配線電極層をインクから保護する保護層、106は
第2の保護層、107は第3の保護層である。308は
一対の配線電極間に位置する抵抗層の発熱部、109は
保護層(105)の薄い領域を示す。図4(b)におい
ては、308は発熱部、109は保護層の薄い領域を示
す。
【0057】第5の発明の特徴は、下部層の材料を変更
することで、駆動時において発熱部に高温部と低温部を
構成し、この低温部上に保護層の厚さが変化している境
界部を位置させることである。すなわち、少なくとも発
熱部(308)と配線電極層(104)とのパターン境
界付近の発熱部下部の下部層を、他の領域の発熱部下部
の下部層より熱伝導率の高い材料で形成する。これによ
り、発熱部と配線電極層とのパターン境界付近における
温度上昇を抑え、低温部を設けることができる。そして
この低温部に保護層の厚さが変化している境界部を位置
させることで上記パターン境界付近上部の保護層(10
5)に生じる熱応力を小さくすることができる。
【0058】下部層の材料としては、例えば、発熱部
(駆動時の高温部)下部の下部層(402a)の材料を
SiO2とすれば、少なくとも発熱部と配線電極層との
パターン境界付近の発熱部(駆動時の低温部)下部の下
部層(402b)の材料としては、SiO2より熱伝導
率の高いSi34やAl23等が挙げられる。
【0059】なお、配線電極層下部の下部層の材料につ
いては、特に制限されないが、発熱部(駆動時の高温
部)下部の下部層(402a)の熱伝導率より高い材料
が望ましく、図4(a)に示すように発熱部(駆動時の
低温部)下部の下部層(402b)の材料と同じであっ
てもよい。
【0060】また第5の発明は、図4に示すように、発
熱部の、駆動時に高温部となる領域上に保護層の薄い領
域(109)を形成する。この保護層の薄い領域(10
9)は、上記のように形成された下部層に対して次のよ
うに設定する。すなわち、発熱部と配線電極層とのパタ
ーン境界付近の保護層の厚い領域と薄い領域との境界
が、上記の下部層の熱伝導率の高い領域上の発熱部(駆
動時の低温部)上にあるように形成する。熱伝導率の高
い材料からなる下部層の領域上部の抵抗層は温度上昇が
小さいため、この領域に、保護層の厚い領域と薄い領域
との境界があっても保護層に発生する熱応力は小さく、
この熱応力による保護層や抵抗層の破断・損傷が生じに
くい。
【0061】さらに、保護層の薄い領域(109)は、
上記パターン境界付近以外の保護層の厚い領域と薄い領
域との境界が、発熱部上に無いように形成する。なお、
これは従来でも行われていたことである(図9(b)及
び図10(b)参照)。
【0062】また上述の第5の発明は、図4においては
保護層の厚さが変化している境界部が保護層の薄い領域
と厚い領域との境界部であるが、図8に示すように保護
層の厚さが変化している境界部が保護層(505)のあ
る領域と無い領域(509)との境界部である場合に
いても同様である。すなわち、抵抗層の発熱部に対して
保護層が形成されておらず発熱部の表面がインクと直接
接触するヒータボードにおいて、下部層の熱伝導率の高
い領域上の発熱部(駆動時の低温部)上に、保護層のあ
る領域と無い領域との境界部ある場合についても上述の
第5の発明と同様である。
【0063】以上のようなヒータボードを備えた本発明
のインクジェット記録ヘッドは、図11に示すような、
記録媒体の記録領域の全幅にわたって対応するように吐
出口が複数設けられているフルラインタイプとすること
ができる。図11において、110は吐出口、111は
ヒータボード、112は天板、113はインク供給口で
ある。
【0064】本発明は、特に、インクジェット記録方式
のなかでも熱エネルギーを利用して液滴を飛翔させて記
録を行うインクジェット記録ヘッド及びインクジェット
記録装置において優れた効果をもたらすものである。
【0065】これらの記録ヘッド及びインクジェット記
録装置の代表的な構成や原理については、例えば、米国
特許第4723129号明細書、同第4740796号
明細書に開示されている基本的な原理を用いるものが好
ましい。
【0066】この原理を用いた方式は、オンデマンド型
およびコンティニュアス型のいずれにも適用可能である
が、特にオンデマンド型の場合に有効である。オンデマ
ンド型方式は次の通りである。液体(インク)が保持さ
れているシートや液路に対応して配置されている電気熱
変換体に、記録情報に対応した、核沸騰を超える急速な
温度上昇を与える一つ以上の駆動信号を印加することに
よって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生させ、記録
ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて駆動信号に1対
1で対応した気泡を液体(インク)内に形成させる。こ
の気泡の成長・収縮によってインク吐出口からインクを
吐出させ、1つ以上の液滴を形成・飛翔させる。
【0067】このときの駆動信号をパルス形状とする
と、信号の印加に対して気泡の成長・収縮が瞬時・適切
に行われ、応答性に優れたインクの吐出が達成できる。
この駆動信号としては、米国特許第4463359号明
細書、同第4345262号明細書に記載されているよ
うなものが適している。また、米国特許第431312
4号明細書に記載の熱作用面の温度上昇率に関する発明
の設定条件を採用すると、さらに優れた記録を行うこと
ができる。
【0068】本発明のインクジェット記録ヘッドの構成
としては、上記の各明細書に記載されているような吐出
口・液路・電気熱変換体を組み合わせた構成(直線状液
流路構成または直角液流路構成)の他に、米国特許第4
558333号明細書および同第4459600号明細
書に開示されている、熱作用部が屈曲する領域に配置さ
れた構成をとってもよい。
【0069】上記構成に加えて、複数の電気熱変換体に
対して共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする
構成(特開昭59−123670号公報に開示)や、熱
エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させ
る構成(特開昭59−138461号公報に開示)に基
づいた構成としても本発明は有効である。
【0070】さらに、記録装置が記録可能な最大記録幅
に対応した長さを有するフルラインタイプのインクジェ
ット記録ヘッドを用いてもよい。このフルラインタイプ
の記録ヘッドとしては、上記の明細書に開示されている
ような記録ヘッドを複数組み合わせた構成や、一体型の
構成のいずれであってもよい。
【0071】その他のインクジェット記録ヘッドのタイ
プとして、インクジェット記録装置本体との電気的接続
や、記録装置本体からのインクの供給が可能になる交換
自在のチップタイプの記録ヘッド、又は記録ヘッド自体
に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイ
プの記録ヘッドであってもよい。
【0072】本発明のインクジェット記録装置の構成ユ
ニットとして、インクジェット記録ヘッドに対する回復
手段や予備的な補助手段等を付加することは、本発明の
効果を一層安定化するため好ましい。これらの手段を具
体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手
段、クリーニング手段、加圧・吸引手段、予備加熱手
段、予備吐出手段等がある。
【0073】さらに本発明のインクジェット記録装置の
記録モードとして、黒色等の主流色のみの記録モード以
外に、異なる色の複色カラーや、混色によるフルカラー
のモードを備えてもよい。
【0074】本発明においては、上述の各インクに対し
て膜沸騰方式が最も有効である。
【0075】本発明のインクジェット記録装置は、被記
録媒体を搬送する手段等を設けてワードプロセッサやコ
ンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として一体
または別体に構成されるものの他、リーダ等と組み合わ
せた複写装置や、送受信機能を有するファクシミリ装置
の形態をとるものであってもよい。
【0076】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】実施例1〜7 図1に示す構成を有するインクジェット記録ヘッドを作
製した。
【0078】まず、基板(101)としてシリコン基板
を用い、その基板上に、蓄熱のための下部層(102)
として膜厚2.0μmのSiO2層を熱酸化により形成
した。この上に、抵抗層(103)として、膜厚0.1
μmのHfB2層をスパッタ法で成膜した。このシート
抵抗値20Ω/□であった。さらに配線電極層(10
4)として、Tiを膜厚0.005μm、Alを膜厚
0.6μmとなるように蒸着により成膜した。
【0079】次いで、フォトリソ技術とエッチングによ
り、図1に示すような、発熱部(108)及び配線電極
層(104)の回路パターンを形成した。各部の寸法
は、図1(b)中の寸法Cを100μm、Dを120μ
m、Eを140μmとし、寸法A及びBについては表1
に示すとおりとした。
【0080】保護層(105)として、膜厚1.0μm
のSiO2層をスパッタ法により形成した。次いで、フ
ォトリソ技術によりパターニングを行って、ドライエッ
チ法により0.8μmにエッチングし、図1に示すよう
に膜厚0.2μmの保護層の薄い領域(109)を形成
した。この保護層の薄い領域の寸法は、Jを40μm、
Kを130μmとした。このとき、発熱部(108)と
配線電極層(104)とのパターン境界付近における保
護層(105)の厚い領域と薄い領域との境界部が、発
熱部のパターン幅が広い領域(幅Bの領域)上にあるよ
うに形成した。
【0081】続いて、第2の保護層(106)として、
Taをスパッタ法によって成膜し、フォトリソ技術とド
ライエッチ法により図1に示すようなパターンを形成し
た。最後に第3の保護層(107)として、塗布により
膜厚2.0μmの感光性ポリイミド層を形成し、次いで
フォトリソ技術によりパターニングした。
【0082】以上のようにして作製したヒータボードを
用いて図11に示すインクジェット記録ヘッドを作製し
た。まず、ヒータボード(111)上に、ネガDFを用
いてフォトリソ技術によりノズル壁を形成した。次い
で、インク供給口(113)を有するガラス製の天板
(112)を接合し、ノズル壁を覆った。最後に、ヒー
タボード・ノズル壁・天板を所定の形状に同時に切断し
て吐出口(110)を形成し、本発明のインクジェット
記録ヘッドを得た。
【0083】実施例8〜13 図2に示す構成を有するインクジェット記録ヘッドを作
製した。
【0084】まず、基板(101)としてシリコン基板
を用い、その基板上に、蓄熱のための下部層(102)
として膜厚2.0μmのSiO2層を熱酸化により形成
した。この上に、抵抗層(203)として、表2に示す
膜厚の寸法Gを有するHfB 2層をスパッタ法で成膜し
た。さらに配線電極層(104)として、Tiを膜厚
0.005μm、Alを膜厚0.6μmとなるように蒸
着により成膜した。
【0085】次いで、フォトリソ技術とエッチングによ
り、図2に示すような、発熱部(208)及び配線電極
層(104)の回路パターンを形成した。さらに、フォ
トリソ技術によってパターニングを行い、ドライエッチ
によって所望の膜厚にエッチングし、図4に示すように
発熱部(208)の一部を薄くした。この薄い部分の膜
厚(F)を表2に示す。発熱部の薄い領域の寸法は20
μm×100μmとした。なお、この寸法の100μm
は図2(a)中のLである。
【0086】保護層(105)として、膜厚1.0μm
のSiO2層をスパッタ法により形成した。次いで、フ
ォトリソ技術によりパターニングを行って、ドライエッ
チ法により0.8μmエッチングし、図2に示すように
膜厚0.2μmの保護層の薄い領域(109)を形成し
た。この保護層の薄い領域の寸法は、実施例1〜7と同
様にJを40μm、Kを130μmとした。このとき、
発熱部(208)と配線電極層(104)とのパターン
境界付近における保護層の厚い領域と薄い領域との境界
部が、発熱部(208)の厚さが厚い領域(厚さGの領
域)上にあるように形成した。
【0087】続いて、第2の保護層(106)として、
Taをスパッタ法によって成膜し、フォトリソ技術とド
ライエッチ法により図2に示すようなパターンを形成し
た。最後に第3の保護層(107)として、塗布により
膜厚2.0μmの感光性ポリイミド層を形成し、次いで
フォトリソ技術によりパターニングした。
【0088】以上のようにして作製したヒータボードを
用いて図11に示すインクジェット記録ヘッドを作製し
た。まず、ヒータボード(111)上に、ネガDFを用
いてフォトリソ技術によりノズル壁を形成した。次い
で、インク供給口(113)を有するガラス製の天板
(112)を接合し、ノズル壁を覆った。最後に、ヒー
タボード・ノズル壁・天板を所定の形状に同時に切断し
て吐出口(110)を形成し、本発明のインクジェット
記録ヘッドを得た。
【0089】実施例14〜17 図3に示す構成を有するインクジェット記録ヘッドを作
製した。
【0090】まず、基板としてシリコン基板を用い、そ
の基板上に、蓄熱のための下部層(302)としてSi
2層を熱酸化により形成した。この熱酸化は2段階で
行い、まず1段階として膜厚が寸法Iとなるように熱酸
化した。次いでSi3NB4膜をCVD法により成膜した
後、フォトリソ技術とエッチングにより、膜厚が薄い領
域(膜厚が寸法Iの領域)としたい下部層上にSi34
膜を残し、膜厚が厚い領域(膜厚が寸法Hの領域)とし
たい下部層上のSi34膜は除去した。Si34膜を除
去した領域は、発熱部の形成位置に従ってその寸法を3
0μm×100μmとした。なお、この寸法の100μ
mは図3(a)中のMである。続いて第2段階の熱酸化
を行い、Si34膜が無い領域に膜厚の寸法がHのSi
2層を形成した。この熱酸化後、Si34膜をエッチ
ングにより除去した。以上のようにして、膜厚が異なる
下部層(302)を基板上に形成した。膜厚の寸法H及
びIを表3に示す。
【0091】抵抗層(303)として膜厚0.1μmの
HfB2層をスパッタ法により成膜した。次いで配線電
極層として、Tiを膜厚0.005μm、Alを膜厚
0.6μmとなるように蒸着により成膜した。続いて、
フォトリソ技術とエッチングにより、図3に示すよう
な、発熱部(308)及び配線電極層(104)の回路
パターンを形成した。
【0092】保護層(105)として、膜厚1.0μm
のSiO2層をスパッタ法により形成した。次いで、フ
ォトリソ技術によりパターニングを行って、ドライエッ
チ法により0.8μmエッチングし、図3に示すように
膜厚0.2μmの保護層の薄い領域(109)を形成し
た。この保護層の薄い領域の寸法は、実施例1〜7と同
様にJを40μm、Kを130μmとした。このとき、
発熱部(308)と配線電極層(104)とのパターン
境界付近における保護層(105)の厚い領域と薄い領
域との境界部が、下部層(302)の薄い領域(膜厚I
の領域)上の発熱部上にあるように形成した。
【0093】続いて、第2の保護層(106)として、
Taをスパッタ法によって成膜し、フォトリソ技術とド
ライエッチ法により図3に示すようなパターンを形成し
た。最後に第3の保護層(107)として、塗布により
膜厚2.0μmの感光性ポリイミド層を形成し、次いで
フォトリソ技術によりパターニングした。
【0094】以上のようにして作製したヒータボードを
用いて図11に示すインクジェット記録ヘッドを作製し
た。まず、ヒータボード(111)上に、ネガDFを用
いてフォトリソ技術によりノズル壁を形成した。次い
で、インク供給口(113)を有するガラス製の天板
(112)を接合し、ノズル壁を覆った。最後に、ヒー
タボード、ノズル壁、天板を所定の形状に同時に切断し
て吐出口(110)を形成し、本発明のインクジェット
記録ヘッドを得た。
【0095】実施例18 図4に示す構成を有するインクジェット記録ヘッドを作
製した。
【0096】まず、基板としてシリコン基板を用い、全
面に厚さ2.0μmのSi34層を成膜した。次に、フ
ォトリソ技術とエッチングにより、熱伝導率の低い材料
からなる下部層(402a)を形成する領域をエッチン
グし、Si34層を除去した。この領域の寸法は30μ
m×100μmとした。なお、この寸法の100μmは
図4(a)中のNである。このエッチングされた部分以
外の領域にフォトレジストをパターン形成した。続い
て、スパッタ法により厚さ2.0μmのSiO2層(4
02a)を成膜し、次いでフォトレジストを除去した。
【0097】抵抗層(303)として膜厚0.1μmの
HfB2層をスパッタ法により成膜した。次いで配線電
極層として、Tiを膜厚0.005μm、Alを膜厚
0.6μmとなるように蒸着により成膜した。続いて、
フォトリソ技術とエッチングにより、図4に示すよう
な、発熱部(308)及び配線電極層(104)の回路
パターンを形成した。
【0098】保護層(105)として、膜厚1.0μm
のSiO2層をスパッタ法により形成した。次いで、フ
ォトリソ技術によりパターニングを行って、ドライエッ
チ法により0.8μmエッチングし、図4に示すように
膜厚0.2μmの保護層の薄い領域(109)を形成し
た。この保護層の薄い領域の寸法は、実施例1〜7と同
様にJを40μm、Kを130μmとした。このとき、
発熱部と配線電極層とのパターン境界付近における保護
層の厚い領域と薄い領域との境界部が、熱伝導率の高い
材料からなる下部層(402b)の領域上の抵抗層上に
あるように形成した。
【0099】続いて、第2の保護層(105)として、
Taをスパッタ法によって成膜し、フォトリソ技術とド
ライエッチ法により図4に示すようなパターンを形成し
た。最後に第3の保護層(107)として、塗布により
膜厚2.0μmの感光性ポリイミド層を形成し、次いで
フォトリソ技術によりパターニングした。
【0100】以上のようにして作製したヒータボードを
用いて図11に示すインクジェット記録ヘッドを作製し
た。まず、ヒータボード(111)上に、ネガDFを用
いてフォトリソ技術によりノズル壁を形成した。次い
で、インク供給口(113)を有するガラス製の天板
(112)を接合し、ノズル壁を覆った。最後に、ヒー
タボード・ノズル壁・天板を所定の形状に同時に切断し
て吐出口(110)を形成し、本発明のインクジェット
記録ヘッドを得た。
【0101】実施例19 Si34に換えてAl23を用いた以外は、実施例18
と同様にして本発明のインクジェット記録ヘッドを作製
した。
【0102】参考 図5に示す構成を有するインクジェット記録ヘッドを作
製した。
【0103】まず、基板としてシリコン基板を用い、そ
の基板上に、蓄熱のための下部層(102)として膜厚
2.0μmのSiO2層を熱酸化により形成した。この
上に、抵抗層(103)として膜厚0.1μmのTa−
Ir層をスパッタ法で成膜した。シート抵抗値は15Ω
/□であった。さらに配線電極層(104)として、T
iを膜厚0.005μm、Alを膜厚0.6μmとなる
ように蒸着により成膜した。
【0104】次いで、フォトリソ技術とエッチングによ
り、図5に示すような、発熱部(108)及び配線電極
層(104)の回路パターンを形成した。各部の寸法
は、図5(b)中の寸法Cを100μm、Dを120μ
m、Eを140μmとし、寸法A及びBについては表5
に示すとおりとした。
【0105】保護層(505)として、塗布により膜厚
2.0μmの感光性ポリイミド層を形成し、次いでフォ
トリソ技術により図5のようにパターニングした。保護
層(505)が無い領域(509)の寸法は、Jを40
μm、Kを130μmとした。このとき、発熱部(10
8)と配線電極層(104)とのパターン境界付近にお
ける保護層(505)のある領域と無い領域との境界部
が、発熱部のパターン幅が広い領域(幅Bの領域)上に
あるように形成した。
【0106】以上のようにして作製したヒータボードを
用いて図11に示すインクジェット記録ヘッドを作製し
た。まず、ヒータボード(111)上に、ネガDFを用
いてフォトリソ技術によりノズル壁を形成した。次い
で、インク供給口(113)を有するガラス製の天板
(112)を接合し、ノズル壁を覆った。最後に、ヒー
タボード・ノズル壁・天板を所定の形状に同時に切断し
て吐出口(110)を形成し、本発明のインクジェット
記録ヘッドを得た。
【0107】比較例1 図9に示す構成を有するインクジェット記録ヘッドを作
製した。この構成において、発熱部の形状を図9に示す
形状とし、この発熱部の寸法としてAを20μmとした
以外は、実施例1〜7と同様にしてインクジェット記録
ヘッドを作製した。
【0108】比較例2 図10に示す構成を有するインクジェット記録ヘッドを
作製した。この構成において、発熱部の形状を図10に
示す形状とし、この発熱部の寸法としてAを20μmと
した以外は、参考と同様にしてインクジェット
記録ヘッドを作製した。
【0109】熱ストレス耐久性の評価(CST評価) ヒータボードをCST法により評価した。すなわち、断
線するまでの時間を測定し、断線するまでの時間が長け
れば長いほど熱ストレス耐久性が優れる。
【0110】次の駆動条件でインクジェットヘッドを駆
動し、断線するまでの時間として破断パルス数で評価し
た。駆動電圧:発泡電圧の1.2倍、駆動パルス幅:
3.0μsec、駆動周波数:3.0kHz。
【0111】評価結果は、比較例の破断パルス数を1と
したときの相対値で示し、表1〜5にまとめた。
【0112】吐出耐久試験による評価 インクジェット記録ヘッドにインクを充填し、実際に吐
出させ、断線までの時間を測定した。駆動条件は次のよ
うに設定した。駆動周波数:3kHz、駆動パルス幅:
3μsec、駆動電圧:発泡電圧の1.2倍、インク組
成;水:77重量%、ジエチレングリコール:12重量
%、尿素:7重量%、染料(C.I.フードブラック
2):4重量%。
【0113】結果を表6に示す。なお、断線に至るまで
の時間は比較例2に対する相対値で表した。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】
【0118】
【表5】
【0119】
【表6】
【0120】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明の
インクジェット記録ヘッドは、吐出耐久性が高い。すな
わちノズル内の発泡安定性がよく、吐出安定性が高いた
め、印字品位および印字安定性に優れる。
【0121】また、吐出耐久性が高いことから、駆動電
流を低くできるため低価格の駆動素子が使用可能とな
り、さらに駆動電圧の一本化も可能となるため、インク
ジェット記録ヘッドを低コストで作製できる。
【0122】加えて、種々のインクに対して耐久性が良
好であるため、用紙の選択の幅が広いインクジェット記
録装置を得ることができる。
【0123】さらに本発明によれば、記録ヘッドの耐久
性を低下させることなく保護層を薄くすることができ
る。このため、記録ヘッド全体の省電力化を達成するこ
とができ、また、これにより印字中における記録ヘッド
本体の温度上昇も小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録ヘッドのヒータボ
ードの説明図である。
【図2】本発明のインクジェット記録ヘッドのヒータボ
ードの説明図である。
【図3】本発明のインクジェット記録ヘッドのヒータボ
ードの説明図である。
【図4】本発明のインクジェット記録ヘッドのヒータボ
ードの説明図である。
【図5】参考例のインクジェット記録ヘッドのヒータボ
ードの説明図である。
【図6】参考例のインクジェット記録ヘッドのヒータボ
ードの説明図である。
【図7】参考例のインクジェット記録ヘッドのヒータボ
ードの説明図である。
【図8】参考例のインクジェット記録ヘッドのヒータボ
ードの説明図である。
【図9】従来のインクジェット記録ヘッドのヒータボー
ドの説明図である。
【図10】従来のインクジェット記録ヘッドのヒータボ
ードの説明図である。
【図11】本発明のインクジェット記録ヘッドの斜視図
である。
【符号の説明】
101 基板 102、302 下部層 103、203、303 抵抗層 104 配線電極層 105、505 保護層 106 第2の保護層 107 第3の保護層 108、208、308 発熱部 109 保護層の薄い領域 110 吐出口 111 ヒータボード 112 天板 113 インク供給口 402a 熱伝導率の低い材料からなる下部層 402b 熱伝導率の高い材料からなる下部層 509 保護層が無い領域
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/05

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクを吐出する吐出口を有するインク
    流路と、 蓄熱のための下部層と、 該下部層上に設けられた抵抗層と、該抵抗層上に配され
    該抵抗層に電気信号を供給するための一対の配線電極
    と、を有し、前記配線電極間の抵抗層を発熱部とした電
    気熱変換体と、 該発熱部上に存在し前記抵抗層および配線電極を連続層
    インクから保護する保護層と、 を具備し、前記電気熱変換体が前記インク流路に対応し
    て設けられているインクジェット記録ヘッドにおいて、 前記発熱部が駆動時に高温部となる領域と低温部となる
    領域とを有し、前記保護層が一つの当該保護層に厚い領域と薄い領域と
    を有し、 前記発熱部の駆動時に高温部となる領域上には前記保護
    層の薄い領域が設けられているとともに、前記保護層の
    厚い領域と薄い領域との境界が、前記発熱部の駆動時の
    低温部となる領域上にあるように設けられていることを
    特徴とするインクジェット記録ヘッド。
  2. 【請求項2】 前記発熱部を構成する抵抗層の幅が異な
    ることで、前記発熱部に高温部と低温部が構成されてい
    る請求項1記載のインクジェット記録ヘッド。
  3. 【請求項3】 前記発熱部を構成する前記抵抗層の厚さ
    が異なることで、前記発熱部に高温部と低温部が構成さ
    れている請求項1記載のインクジェット記録ヘッド。
  4. 【請求項4】 前記発熱部に対応した前記下部層の厚さ
    が異なることで、前記発熱部に高温部と低温部が構成さ
    れている請求項1記載のインクジェット記録ヘッド。
  5. 【請求項5】 前記発熱部に対応した前記下部層の熱伝
    導率を異ならせることで、前記発熱部に高温部と低温部
    が構成されている請求項1記載のインクジェット記録ヘ
    ッド。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項に記載のイ
    ンクジェット記録ヘッドと、被記録媒体を搬送する手段
    とを備えたインクジェット記録装置。
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