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JP3586888B2 - 環状体の焼入れ変形矯正方法及び装置 - Google Patents

環状体の焼入れ変形矯正方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、環状体の焼入れ変形矯正方法及び装置に関わり、特に、転がり軸受などに使用される鋼の環状体を焼入れて最終製品を製造する環状体の焼入れ変形矯正方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、転がり軸受に使用されている一般的な素材としては、炭素(C)含有量が、例えば1重量%の軸受鋼や、炭素含有量が、0.2重量%の肌焼鋼などが挙げられる。
前記のような軸受鋼や肌焼鋼などから構成される環状体は、熱処理(特に、焼入れ処理)により、その形状が変形することが知られている。
【0003】
図1は炭素含有量の違いによる鋼の焼入時(冷却時)における径寸法の変化のしかたの違いを概略で示したものである。マルテンサイト変態による膨張が熱収縮を上回る見かけ上の膨張開始点以後の膨張の割合が、炭素含有量の増加に伴い高くなることがわかる。
さらに、浸炭または浸炭窒化処理を行ったものでは表層部と心部とで変態による膨張収縮のタイミングも異なる。
【0004】
そこで、前記軸受鋼のように、炭素含有量が高く、浸炭処理または浸炭窒化処理を施すことなく、あるいは、浸炭処理および浸炭窒化処理を施さずに焼入れ処理を行うことで、表面から心部まで所望の硬さが均一に得られる鋼(以下、『完全硬化鋼』という)を使用した環状体の場合には、図1に示した通りマルテンサイト変態による膨張量が大きく、当該環状体の熱処理による変形を矯正する方法として、後で理由を述べるように膨張開始後当該環状体を外径側から拘束する方法(以下、『外径拘束』という)により変形矯正が効果的に行われる。
【0005】
なお、本発明では、浸炭処理または浸炭窒化処理のいずれか一方を施すか、あるいは、浸炭処理および浸炭窒化処理の両方を施すことを、以下、『浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施す』ということにする。
一方、前記肌焼鋼のように、炭素含有量が低く、浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した後に焼入れ処理を行うことで、表面に所望の硬さを得る鋼を使用した環状体の場合には、膨張開始点後の膨張量も小さく、心部と表層部との変態のタイミングのずれもあり、後述するように外径拘束ではうまく矯正できない。そこで、当該環状体の熱処理による変形を矯正する方法として、当該環状体を内径側から拘束する方法(以下、『内径拘束』という)が行われている。
【0006】
ここで、前記肌焼鋼は、浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施すことで、焼入れ時に圧縮残留応力が発生し、その疲労強度が向上する特性を備えている。また、前記肌焼鋼は、素材としては炭素含有量が低いので、前加工工程を容易に行えるという利点がある。
しかしながら、肌焼鋼は、完全硬化鋼と比較すると、浸炭処理や浸炭窒化処理を行う分、手間やコストがかかるという問題もある。
【0007】
そこで、近年では、前記コストの増加を抑制することができる素材として、浸炭処理時間または浸炭窒化処理時間を減らしても、表面に所望の硬さを得ることができる中炭素鋼(炭素を0.3重量%以上、0.7重量%以下の範囲内で含有する)が、転がり軸受をはじめとした疲労強度が必要とされる各機械部品に使用されてきている。
【0008】
また、前記環状体の焼入れ変形矯正技術としては、特開平3−44421号公報、特開昭62−37315号公報、特公昭58−31369号公報および実公昭55−13405号公報などに開示された従来例がある。これらの従来例では、肌焼鋼に浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施したものや、完全硬化させるものも、全て同一方法、すなわち、外径拘束か内径拘束のいずれか一方を施すことで環状体の変形矯正を行っている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平3−44421号公報、特開昭62−37315号公報、特公昭58−31369号公報および実公昭55−13405号公報などに開示されている従来例では、肌焼鋼に浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した環状体や、完全硬化させた環状体など、種々の素材から構成されている環状体に、全て同一の方法(外径拘束、内径拘束のうちのいずれか一方)で焼入れ変形矯正を行っているため、得られた種々の環状体に適した効率のよい変形矯正を行うことが非常に困難であるという問題がある。
【0010】
また、特に素材の炭素含有量が、0.3重量%以上、0.7重量%以下である中炭素鋼に、浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した素材から構成された環状体は、図1に示したように、膨張開始点後の膨張量が高炭素鋼(軸受鋼)と低炭素鋼(肌焼鋼)との中間程度であること、およびその表面と心部とで変態するタイミングが異なるということのため、従来の方法では最適な変形矯正を行うことができないという問題がある。
【0011】
すなわち、膨張開始点後外径拘束により変形矯正を行おうとしてもこの時点では心部は変態を終了し、弾性変形に移行していること、さらにまた、中炭素鋼は、変態膨張量が完全硬化鋼より少ないため、十分な変形矯正を行うことができない。
一方、前記中炭素鋼に浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した素材から構成された環状体に、内径拘束を行った場合には、当該環状体は、肌焼鋼から構成された環状体より変態膨張量が大きいため、変形矯正後の膨張による変形が発生するという欠点がある。従って、中炭素鋼に浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した素材から構成された環状体に、完全な変形矯正を行うことができないという問題がある。
【0012】
このように、前記中炭素鋼は、浸炭処理時間または浸炭窒化処理時間を減らしても、表面に所望の硬さを得ることができるという利点がある反面、十分な変形矯正ができないという問題がある。
そして、特に、熱処理後に研削処理を行う転がり軸受では、熱処理変形は研削コストを著しく増加させてしまうと共に、取り代が不均一になり、品質のバラツキを発生させる虞れもある。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点を解決することを課題とするものであり、マルテンサイト変態を伴う鋼に、浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した素材から構成された環状体に一回の変形矯正を行うことで、十分な変形矯正を行うことが可能な環状体の焼入れ変形矯正方法及び装置を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、マルテンサイト変態を伴う炭素含有量が0.2重量%以上、1.0重量%以下である鋼からなる環状体の焼入れ変形矯正方法に関するものであって、焼入れ開始温度から600℃以上の温度の間に、前記環状体の内径側から内径拘束冶具にて内径拘束による変形矯正を開始する第一工程と、前記第一工程に連続して、前記環状体が変態により膨張する直前までに、該環状体の外径側から外径拘束冶具にて外径拘束による変形矯正を開始する第二工程と、を含むことを特徴とする環状体の焼入れ変形矯正方法を提供するものである。
また、前記環状体の焼入れ変形矯正方法において、前記第二工程後あるいはこれと同時に前記内径側および外径側から同時に拘束するようにしてもよい。
請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明である環状体の焼入れ変形矯正方法において、浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した素材を用いるようにした。
請求項3に係る発明は、上記請求項1又は2に係る発明である環状体の焼入れ変形矯正方法において、前記第1工程は、焼入れ開始温度から800℃以上の温度の間に、前記環状体の内径側から拘束を開始する
請求項4に係る発明は、上記請求項1又は2に係る発明である環状体の焼入れ変形矯正方法において、前記環状体を形成する前記鋼の炭素含有量は、0.3重量%以上、0.7重量%以下とした。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4に係る発明である環状体の焼入れ変形矯正方法において、前記第1工程は、前記環状体の内径側を拘束するとともに、前記環状体の幅方向の移動をも拘束するようにした。
【0015】
上記目的を達成するために、請求項6に係る発明は、マルテンサイト変態を伴う炭素含有量が0.2重量%以上、1.0重量%以下である鋼からなる環状体の焼入れ変形矯正装置であって、焼入れ開始温度に加熱された前記環状体が載置される環状体載置部と、前記環状体の内径側を拘束し変形矯正を行う内径拘束冶具と、前記環状体の外径側を拘束し変形矯正を行う外径拘束冶具と、焼入れ剤を収容する焼入れ槽と、焼入れ開始温度から600℃以上の温度の間に前記環状体載置部上に載置された前記環状体の内径側に前記内径拘束冶具を係合させる第1移動手段と、前記環状体の内径側に前記内径拘束冶具を係合した状態のまま前記環状体の外径側に前記外径拘束冶具を係合させる第2移動手段と、前記環状体載置部を前記焼入れ槽の外部と内部との間で移動させる第3移動手段と、を備え、前記第1移動手段及び第2移動手段は、前記内径拘束冶具及び外径拘束冶具を各々独立して移動可能且つ各々同時に移動可能となっていることを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項6記載に係る発明である環状体の焼入れ変形矯正装置において、前記第1移動手段は、焼入れ開始温度から800℃以上の温度の間に、前記環状体の内径側に前記内径拘束部材を係合させるようにした。
請求項8に係る発明は、請求項6又は7記載に係る発明である環状体の焼入れ変形矯正装置において、前記第2移動手段は、前記環状体の温度が600℃未満になったときに、前記環状体の外径側に前記外径拘束冶具を係合させるようにした。
請求項9に係る発明は、請求項7記載に係る発明である環状体の焼入れ変形矯正装置において、前記第2移動手段は、前記環状体の温度が800℃未満になったときに、前記環状体の外径側に前記外径拘束冶具を係合させるようにした。
請求項10に係る発明は、請求項6〜9に係る発明である環状体の焼入れ変形矯正装置において、前記第1移動手段が前記環状体載置部を前記焼入れ槽内に向けて押圧する力は、前記第3移動手段が前記環状体載置部を前記焼入れ槽外に向けて押圧する力よりも大きいものである。
請求項11に係る発明は、請求項6〜10に係る発明である環状体の焼入れ変形矯正装置において、前記第2移動手段は、前記環状体が前記焼入れ槽に入った後に、前記環状体の外径側に前記外径拘束冶具を係合させるようになっている。
請求項12に係る発明は、請求項6〜11に係る発明である環状体の焼入れ変形矯正装置において、前記環状体の形状矯正が終了した際には、前記第1移動手段よりも前記第2移動手段を先に後退させるようになっている。
【0016】
【作用】
本発明によれば、マルテンサイト変態を伴う鋼からなる環状体を焼入れ変形矯正する際に、焼入れ開始温度から600℃以上の温度の間、すなわち、600℃以上、焼入れ開始温度以下の温度範囲にある際に、環状体の内径側から拘束を開始し、これに連続して、前記環状体が変態により膨張する直前までに、外径側から拘束を開始する方法をとっているため、一回の変形矯正で、前記環状体に、内径拘束と外径拘束の両方の特性が十分に付与され、前記環状体に十分な変形矯正が行える。
【0017】
以下、この理由を説明する。
転がり軸受に使用されている肌焼鋼(炭素含有量=0.2重量%)に、浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施したものは、焼入れ時に、その心部は、表面層に比べて早く変態し始め、変態が進むにしたがって、弾性力を持つようになる。このため、心部のマルテンサイト変態開始点(Ms点)またはその付近まで温度が低下してから変形矯正を始めた場合には、環状体の全周(表層部)が変形矯正されても、心部は、弾性変形が支配的になっており、焼入れ完了後に変形矯正冶具を取り外すと、ほとんど変形矯正前の状態に戻ってしまう。
【0018】
すなわち、浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した素材に、内径拘束方式で変形矯正を行う場合には、収縮小のできるだけ高温時から変形矯正を開始し、環状体の収縮と共に、なるべく変態が少ない間に変形矯正することが要求される。
図2は、従来の内径拘束による焼入れ処理後の変形率(%)と内径拘束開始温度(変形矯正開始温度)(℃)との関係を示す図である。
【0019】
鋼の変形率は、環状体の外径と、当該外径の真円度との比である。図3に示すように、各種鋼(SCR420,SCR430,SCR440)の変形率(%)は、内径拘束開始温度(℃)が、600℃以下の場合は、変形率が急速に大きくなる、すなわち、変形矯正能力が急速に低下することが判る。
これより、本発明では、内径拘束開始温度(℃)を、600℃以上、焼入れ開始温度以下、の範囲(焼入れ開始温度から600℃以上の温度の間)で行うように限定した。
【0020】
また、より精密な変形矯正を行うことが必要とされる場合には、内径拘束開始温度(℃)を、800℃以上、焼入れ開始温度以下、の範囲で行うことが好適である。
浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した素材に焼入れ処理を行い、変態硬化させた場合、当該素材の表面に圧縮残留応力が発生する。これは、浸炭処理および/または浸炭窒化処理を行うと、表面部と内部で変態温度が異なり、内部の変態温度が高く表面部は低い。そのため、内部の変態膨張が表面部に先行して起こることで表面に圧縮残留応力が発生する(『金属熱処理技術便覧』第337頁、金属熱処理技術便覧編集委員会編、昭和44年8月31日発行)。
【0021】
熱処理後に研削加工を行う転がり軸受で、表面に圧縮残留応力があり、さらに変形が大きいものは、前記研削加工後に応力のバランスが変化して、再び変形してしまう。このようなものには、再研削しなければならない場合がある。現状では、環状体が焼入れ処理時に真円度がその直径の0.1%を越えた場合に、再研削を行う可能性が高くなる。
【0022】
図3は、従来の内径拘束による焼入れ処理後の変形率(%)と、素材に含有される炭素量(重量%)との関係を示す図である(変形矯正温度600℃の場合)。
素材の炭素含有量が、0.3重量%を越えている場合には、変形矯正が不十分となり、再研削を行う可能性が高くなる。
【0023】
変態膨張量は、焼入れ条件や成分の影響もあるが、おもに焼入れ時に固溶する炭素量によって変化する(『金属熱処理技術便覧』、第355頁、金属熱処理技術便覧編集委員会編、昭和44年8月31日発行)。
素材の炭素含有量が、0.3重量%以上であると、変態膨張量がさらに大きくなり、内径拘束方式で変形矯正を行う場合には、変形矯正後に当該素材が膨張して変形が発生してしまう。
【0024】
すなわち、素材に含まれる炭素量が、0.3重量%以上のものは、肌焼鋼の場合とは異なり、変態膨張量が大きくなりすぎて内径拘束のみでは、完全に変態矯正することができない。従って、本発明では、内径拘束に続いて外径拘束を行うようにした。
外径拘束方式では、Ms点以後、マルテンサイト変態による膨張時に変形矯正を開始して変形矯正を行う。この外径拘束方式では、変態途中に応力が加わると、容易に塑性変形を起こす変態誘起超塑性(以下、『トリップ現象』という)を利用して、環状体が変態膨張して変形矯正冶具にあたり、塑性変形していくことで変形矯正される(『鉄鋼便覧I基礎』、第522頁、日本鉄鋼協会編、昭和56年6月20日発行)。
【0025】
このため、軸受鋼など、素材に含有される炭素量が、1.0重量%程度の完全硬化鋼の場合、当該素材の表面と心部とが、ほぼ同時に変態することに加え、全体の固溶炭素含有量が高く、変態膨張量が大きいので、外径拘束方式を行うことが有効である。
一方、肌焼鋼に、浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施したものに対しては、心部の変態がほぼ終了しているので、心部の弾性力が強く、また、全体の変態膨張量が小さいので、外径拘束方式は、ほとんど変形矯正力がない。
【0026】
図4は、炭素含有量が、0.4重量%以上、0.8重量%以下の素材に、浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した環状体を焼入れた際に、従来の外径拘束方式で変形矯正した場合の変形率(%)と素材の炭素含有量(重量%)との関係を示す図である。
図4に示すように、炭素含有量が、0.7重量%以下になると、変形率(%)が急速に増加する、すなわち、変形矯正能力が急速に低下することが判る。
【0027】
つまり、炭素含有量が、0.7重量%以下の素材に浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施したものは、変態膨張量が、完全硬化鋼より小さくなること、また、心部で変形矯正開始前に変態が進行してしまい弾力性を持つようになることから、外径拘束方式では、完全に変形矯正することができない。
そこで、本発明では、マルテンサイト変態を伴う素材(鋼)、特に、炭素含有量が、0.3重量%以上、0.7重量%以下の素材に浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施したものは、肌焼鋼に浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施したものに比べ、全体の変態膨張量が大きくなること、さらに、心部の変態開始が表面層に比べて早いことに着眼し、600℃以上の温度から内径拘束を開始して変形矯正を行い、続いて、前記環状体が変態により膨張する直前に、外径拘束を開始してトリップ現象による変形矯正を行うことにした。
【0028】
ここで、前記環状体に行う内径拘束は、焼入れ開始温度から600℃以上(より好ましくは800℃以上)の温度の間に行うが、この時、冷却と同時に加圧矯正を加えると、さらに矯正効果が向上される。
また、炭素含有量が、0.3重量%付近にある環状体の変形矯正は、内径拘束が主流となり、外径拘束が内径拘束を補助するかたちとなる。一方、炭素含有量が、0.7重量%付近にある環状体の変形矯正は、内径拘束で補助的に変形矯正した後、外径拘束が主流となって変形矯正されるかたちとなる。
【0029】
すなわち、本発明では、一回の変形矯正で、従来の内径拘束と外径拘束の両方の特性を十分に活用させることができるため、従来では、十分な変形矯正が行えなかったマルテンサイト変態を伴う鋼、特に、中炭素鋼(炭素を0.3重量%以上、0.7重量%以下の範囲内で含有する)に、浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した素材から構成された環状体が、完全に変形矯正される。
【0030】
図5に本発明に係る変形矯正方法により、中炭素鋼に浸炭および/または浸炭窒化したものを変形矯正する場合の冷却時の寸法変化の様子の概略を示す。膨張開始点以後の外径拘束のみをしたとすると、さきにも述べたとおり、この時点では心部の変態はほぼ終了しており、拘束を行っても型を外すと心部の弾性力により、元に戻ってしまう。すなわち、変形矯正をしないのと同じことになってしまう。したがって、収縮中のできるだけ早い時点で内径拘束を開始する。これにより、型に沿って変形する(図のA点からB点)。
【0031】
その後何もしないとB点をすぎてからの膨張量が低炭素鋼の場合と異なり無視できない。B点以降、破線で示すフリーの場合の曲線と平行に膨張を開始し、変形を生じる原因となる。そこで、B点以後のできるだけ早い時点で今後は外径拘束を開始する(図のC点)。B点以降の膨張は、前述のように変態誘起超塑性を利用して変形矯正することができる(図のC点からD点)。このように、ほぼ外径拘束治具の内径面と同じ、歪みの小さな外径面を有する環状体が得られる。
【0032】
また、本発明にかかる変形矯正方法では、環状体の内径側と外径側の両方から変形矯正を行うため、焼入れによる環状体のねじれ変形の発生が最低限に抑えられる。
このねじれ変形は、環状体が焼入れ時に焼入れ冷却剤に浸漬される方向や、焼入れ油の攪拌状況や環状体の形状などによって発生するものである。そして、特に、円錐ころ軸受など、その肉厚が変化するものに浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施したものに発生しやすい。
【0033】
ここで、前記内径拘束に連続して行う外径拘束の開始温度が高すぎると、環状体が冶具と干渉する虞れがある。このため、外径拘束を開始するタイミングを図ることが要求されるが、通常の焼入れでは、数秒で200〜300℃まで油冷され、その後は、比較的ゆっくり冷却されるので、外径拘束を開始するタイミングは取りやすく問題はない。
【0034】
この環状体の焼入れ変形矯正方法を実施する際に使用する環状体の焼入れ変形矯正装置としては、上記請求項6乃至請求項13に記載された環状体の焼入れ変形矯正装置を提供することができる。
【0035】
本発明に係る環状体の焼入れ変形矯正装置では、外径拘束冶具と内径拘束冶具が、各々独立して移動可能且つ各々同時に移動可能であるため、たとえば、加熱された環状体の内径側に内径拘束冶具を係合させて、内径拘束を開始し、内径拘束しながら当該環状体を冷却する工程に続いて、前記内径拘束をしたまま前記環状体の外径側に外径拘束冶具を係合させて、外径拘束を開始し、前記内径拘束と外径拘束とを同時に行うことができる。
【0036】
前記内径拘束冶具および外径拘束冶具は、たとえば、円筒ころ軸受の内輪および外輪、円錐ころ軸受の内輪および外輪などのような、形状矯正を行う環状体の形状に応じた形状のものが使用される。また、内径拘束冶具および外径拘束冶具の形状を任意に変更することで、軸受の内輪や外輪以外の環状体の焼入れ変形矯正を行うこともできる。すなわち、内径拘束冶具および外径拘束冶具の形状を、変形矯正すべき環状体の形状により変更することで、あらゆる形状の環状体の形状矯正が行われる。
【0037】
また、前記内径拘束冶具および外径拘束冶具を着脱可能にすることで、焼入れ変形矯正すべき環状体に応じた内径拘束冶具および外径拘束冶具を簡単に交換することもできる。
そしてまた、前記内径拘束冶具に、環状体の上部と当接して環状体を係止する係止部を配設することで、焼入れ終了後の環状体が膨張して、その外径側が外径拘束冶具に拘束された状態にあっても、当該環状体は、前記係止部に係止された(ひかかった)状態となっているため、内径拘束冶具に対して外径拘束冶具を先に引き上げることができる。従って、前記環状体は、外径拘束冶具と内径拘束冶具との間から簡単に取り外される。
【0038】
このように、前記環状体の焼入れ変形矯正装置を使用することで、従来の内径拘束と外径拘束の両方を行うことができ、前記環状体に、内径拘束と外径拘束の両方の利点が同時に付与される。
【0039】
【実施例】
次に、本発明にかかる一実施例について説明する。本実施例は内周面がテーパ状に形成されている、例えば円錐ころ軸受の外輪を焼入れする場合の一例を示すものである。
図8は、本発明の実施例にかかる環状体の焼入れ変形矯正装置の断面構成図、図9は、図8に示す環状体の焼入れ変形矯正装置の部分拡大図である。
【0040】
図8および図9に示す環状体の焼入れ変形矯正装置1は、架台30上に設置された焼入れ槽17と、焼入れ槽17の上方に配設され且つ図示しないフレームに固定された加圧シリンダ10と、加圧シリンダ10のピストンロッド13に移動可能に配設された外径拘束冶具14と、ピストンロッド13の下端に固定された内径拘束冶具15と、を含んで構成されている。外径拘束治具14の内径は、環状体16を内径拘束後、環状体16が膨張し始めるとまもなくその外径面が接触し、変形矯正(外径拘束)を行い得る大きさに仕上げられている。
【0041】
焼入れ槽17は、その上部の中央が、焼入れ槽17の上部から着脱可能な環状体載置部24となっている。この環状体載置部24には、形状矯正が行われる環状体16が載置される。本実施例においては、焼入れ冷却剤としては油が使用されている。前記環状体載置部24の中央部には、円形状の穴が開口されており、この穴の外周部には、下方から中空の円筒部材からなる焼入れ油配管20が設置されている。そして、焼入れ油配管20から供給される焼入れ油を環状体載置部24の穴から出すことができるようになっている。なお、焼入れ油配管20には、図示しない焼入れ油供給装置が接続されており、ここから焼入れ油配管に所望の焼入れ油が供給されるようになっている。そして、必要な時にのみ、環状体載置部24の穴から焼入れ油を出すことができるように、コントロールされている。
【0042】
この焼入れ油配管20には、焼入れ油配管20を上下運動させる第3移動手段としてのシリンダ装置21が接続されている。すなわち、シリンダ装置21のピストンロッド22に、焼入れ油配管20が取付けれており、ピストンロッド22が上下運動することで、焼入れ油配管20が上下運動するようになっている。ここで、前記環状体載置部24には、この焼入れ油配管20が配設されているため、環状体載置部24は、焼入れ油配管20の上下運動に応じて前記焼入れ槽17内を上下移動可能となる。
【0043】
また、前記焼入れ槽17には、図示しない焼入れ油供給装置から供給される焼入れ油を焼入れ槽17内に供給する焼入れ油噴出口18が複数設けられている。この焼入れ油噴出口18からは、焼入れ油が勢い良く噴出されるように供給される。なお、符号19は、焼入れ油の上面を示している。
前記加圧シリンダ10は、第1移動手段としてのメインプレスシリンダ11と、その下方に配設された第2移動手段としてのサブプレスシリンダ12とを備えている。この加圧シリンダ10のピストンロッド13は、メインプレスシリンダ11のピストンロッドであると同時に、サブプレスシリンダ12のピストンロッドでもある。このメインプレスシリンダ11およびサブプレスシリンダ12共に、空圧シリンダや油圧シリンダなど、種々のシリンダ装置が使用可能である。
【0044】
サブプレスシリンダ11の下面には、環状体16の外径側を拘束する外径拘束冶具14が着脱可能に固定されている。すなわち、この外径拘束冶具14は、後に詳述するが、サブプレスシリンダ11の動きに応じて、ピストンロッド13の軸方向に上下移動可能となっている。また、メインプレスシリンダ11およびサブプレスシリンダ12により外径拘束治具14および内径拘束治具15が最下点に達したときに、外径拘束治具14の底面および内径拘束治具15の底面と環状体載置部24との間には、すきまができるように構成されている。
【0045】
ピストンロッド13の下端には、環状体16の内径側を拘束する内径拘束冶具15が着脱可能に固定されている。
すなわち、外径拘束冶具14と内径拘束冶具15は、各々独立して移動可能となっていると共に、各々同時に移動可能となっている。
外径拘束冶具14および内径拘束冶具15の形状は、環状体16の形状に応じて決定される。本実施例では、図9に示すように、環状体16として、円錐ころ軸受の外輪を使用し、この外輪の形状矯正を行うことが可能な外径拘束冶具14および内径拘束冶具15を用いた。この内径拘束冶具15の外側(外径拘束冶具14側)には、環状体16の上部に当接し、該環状体16を係止する係止部25が設けられている。また、内径拘束治具15には、焼入れ油供給配管20から供給される焼入れ油が内部からワーク(環状体)内周面に焼入れ油を供給可能とするため、複数のスリットが設けられている。
【0046】
このように、前記外径拘束冶具14および内径拘束冶具15は、共に、着脱可能に固定されているため、他の形状を備えた外径拘束冶具および内径拘束冶具と簡単に交換することができる。
次に、本実施例にかかる環状体の焼入れ変形矯正装置1の具体的動作について説明する。
【0047】
先ず、図8(1)では、環状体載置部24上の所定位置に、加熱された環状体16(ここでは、円錐ころ軸受の外輪)を載置する。この時、シリンダ装置21は作動状態で環状体載置部24は最上部にある。
次に、図8(2)では、メインプレスシリンダ11を作動し、ピストンロッド13を下降させ、前記環状体16の内径側に内径拘束冶具15をセットする。この時、同時に、サブプレスシリンダ12および外径拘束冶具14も、ピストンロッド13の下降に伴って下降する。
【0048】
次いで、図8(3)では、シリンダ装置21は作動状態を保っているが、メインプレスシリンダ11の下向きの力の方がシリンダ装置21の上向きの力より強いため押され、環状体を支えた状態でピストンロッド22および焼入れ油供給配管20が下降し、環状体載置部24上に載置された環状体16が焼入れ槽17内に入り、内径拘束を開始する。この時、焼入れ油供給配管20から焼入れ油を噴出させると共に、焼入れ油噴出口18から焼入れ油を噴出させる。なお、この内径拘束は、焼入れ開始温度から600℃以上の温度の間に行った。ここまでの工程は数秒のレベルで行われた。
【0049】
次に、図8(4)では、図8(3)に引き続いて(スタートから数秒〜10数秒後)、サブプレスシリンダ12を作動し、外径拘束冶具14を下降させて環状体16の外径側に外径拘束冶具14をセットし、外径拘束を開始する。このようにして、内径拘束および外径拘束を同時に行う。なお、この外径拘束は、環状体16が変態により膨張する直前に行った。
【0050】
その後、環状体16の形状矯正が終了した際には、サブプレスシリンダ12の作動を停止し、外径拘束冶具14を引き上げて環状体16から外径拘束冶具14を取り外す。この時、環状体16は、膨張しており、その外径側が外径拘束冶具14に拘束された状態となっているが、環状体16は、内径拘束冶具15の係止部25により係止されているため、外径拘束冶具14を簡単に引き上げ、図8(3)の状態にすることができる。また、この状態では、環状体16は、内径拘束部材15に拘束されていないため、内径拘束冶具15を引き上げると、図8(1)の状態に戻る。
【0051】
このように、環状体の焼入れ変形矯正装置1を使用することで、従来の内径拘束と外径拘束の両方を行うことができ、環状体16に、内径拘束と外径拘束の両方の利点同時に付与することができる。この結果、環状体に、十分な変形矯正を行うことが可能となる。次に、本実施例にかかる環状体の焼入れ変形矯正装置1を使用して、以下に示す調査を行った。
【0052】
表1に示す組成の鋼種からなる環状体に、下記に示す熱処理(浸炭処理、焼入れ処理および焼戻し処理)を行う。
Figure 0003586888
但し、SUJ2には、浸炭処理は施さない。
【0053】
【表1】
Figure 0003586888
【0054】
次に、前記熱処理が施された各々の環状体(試験片)に、表2に示す変形矯正を行い、実施例1〜実施例16を得る。
次に、比較として、前記熱処理が施された各々の環状体(試験片)に、表3に示す変形矯正を行い、比較例17〜比較例43を得る。
なお、表2および表3に示す変形矯正方法の内容を以下に示す。
Figure 0003586888
次に、このようにして得られたそれぞれの試験片(実施例1〜実施例16、比較例17〜比較例43)の平均変形率(%)および平均傾斜量(mm)を以下に示す方法で測定する。実施例1〜実施例16の平均変形率(%)および平均傾斜量(mm)を表2に、比較例17〜比較例43の平均変形率(%)および平均傾斜量(mm)を表3に示す。
【0055】
なお、前記傾斜は、焼入れ時に環状体が焼入れ油に浸漬される方向や、焼入れ油の攪拌状況や、環状体の形状によって発生するものである。特に、肉厚が変化する円錐ころ軸受などに、浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施したものに発生しやすい。そして、熱処理後、研削を行う軸受などでは、傾斜の発生により研削工程に著しい支障が発生し、大きい傾斜があると研削不良が発生する場合もある。
(平均変形率測定方法)
試験片の最大径と最小径とを測定し、その差を真円度とする。この真円度を外輪外径(130mm)で割った値を、試験片の変形率(%)とする。測定数は、60個とし、その平均値をもって平均変形率(%)とした。
(傾斜量測定方法)
試験片の外周面で、上下の円弧部を除いた直線部の上端部と下端部における最大径と最小径とを測定する。この最大径部および最小径部における4か所での上下端部の差の平均をもって平均傾斜量(mm)とした。なお、前記上端部と下端部との距離は、18mmであった。
【0056】
【表2】
Figure 0003586888
【0057】
【表3】
Figure 0003586888
【0058】
表2および表3から、800℃から内径拘束を開始し、続けて試験片が変態により膨張する直前に外径拘束を行い、さらに内径拘束および外径拘束を同時に行って得たものと、600℃から内径拘束を開始し、続けて試験片が変態により膨張する直前に外径拘束を行い、さらに内径拘束および外径拘束を同時に行って得たもの(実施例1〜実施例16)は、平均変形率(%)および平均傾斜量(mm)とも小さく、良好な結果が得られたことが判る。そして、特に、800℃から内径拘束を開始し、続けて試験片が変態により膨張する直前に外径拘束を行い、さらに内径拘束および外径拘束を同時に行って得たものの平均変形率(%)および平均傾斜量(mm)が優れていたことが判る。
【0059】
これは、実施例1〜実施例16では、内径拘束と外径拘束の両方の特性が十分に活用され、試験片に十分な変形矯正が行えたためである。
一方、比較例17〜比較例43は、平均変形率(%)および平均傾斜量(mm)とも実施例1〜実施例16に比べて大きくなったことが判る。
これは、比較例17〜比較例43では、内径拘束と外径拘束の両方の特性が十分に活用されず、試験片に十分な変形矯正を行えなかったためである。
【0060】
図6に、内外800、内外600、内外500を行った試験片(素材)に含まれる炭素量(重量%)と、平均変形率(%)との関係を示す。
図6から、内径拘束開始温度が600℃以上で内外径拘束を行った場合、素材の素量が0.2重量%の肌焼鋼から0.3〜0.7重量%の中炭素鋼および1重量%の軸受鋼まで全ての場合で完全に変形矯正できることがわかる。ただし、内径拘束開始温度が500℃である場合(内外500)は内外径拘束を行っても素材の炭素量が比較的低く、内径拘束を主流として変形矯正を行う0.2〜0.6重量%では完全に変形矯正することができなかったことがわかる。
【0061】
図7に、各々の試験片の平均変形率(%)と、平均傾斜量(mm)との関係を示す。
図7から、内外800、内外600、内外500を行った試験片は、同一変形率に対して傾斜量が減少していることが判る。
なお、本実施例では、図8および図9に示す環状体の焼入れ変形矯正装置1を使用した場合について説明したが、これに限らず、本発明にかかる環状体の焼入れ変形矯正方法は、焼入れ開始温度から600℃以上の温度の間に、前記環状体の内径側から拘束を開始し、これに連続して、前記環状体が変態により膨張する直前に、該環状体の外径側から拘束を開始する方法(その後本実施例のように内径側、外径側から同時に拘束してもよい)を行うことができれば、他の構造を備えた変形矯正装置を使用してもよいことは勿論である。
【0062】
また、本実施例で使用した環状体の焼入れ変形矯正装置1の構成要素である外径拘束冶具14および内径拘束冶具15は、図8および図9に示す構造の他、環状体の形状に応じて変更することが可能である。
たとえば、環状体が、円筒ころ軸受の外輪である場合には、図10に示すように、円筒ころ軸受の外輪である環状体16Aの内径側を拘束することが可能な形状を備えた内径拘束冶具15Aと、環状体16Aの外径側を拘束可能な外径拘束冶具14Aを使用すればよい。
【0063】
また、環状体が、円錐ころ軸受の内輪である場合には、図11に示すように、円筒ころ軸受の内輪である環状体16Bの内径側を拘束することが可能な形状を備えた内径拘束冶具15Bと、環状体16Bの外径側を拘束可能な外径拘束冶具14Bを使用すればよい。
さらにまた、前記環状体の焼入れ変形矯正装置1は、軸受の内輪や外輪の焼入れ変形矯正を行うことができる他、外径拘束冶具14および内径拘束冶具15の形状を変更することで、他の形状を備えた環状体の焼入れ変径矯正を行うことが可能である。
【0064】
また、本実施例では、表1に示す組成の鋼種からなる環状体に、浸炭処理を行ったが、これに限らず、浸炭処理に替えて浸炭窒化処理を施してもよく、また、浸炭処理と浸炭窒化処理の両方を施してもよい。
また、上記実施例では、焼入れ冷却剤として焼入れ油を使用しているが、本発明において冷却剤の種類は問わず、油に代え水等としてもよいのは勿論である。
【0065】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明にかかるマルテンサイト変態を伴う鋼からなる環状体を焼入れ変形矯正する際に、焼入れ開始温度から600℃以上の温度の間、すなわち、600℃以上、焼入れ開始温度以下の温度範囲にある際に、環状体の内径側から拘束を開始し、これに連続して、前記環状体が変態により膨張する直前に、外径側から拘束を開始した後、当該環状体を内径側および外径側から同時に拘束することで、前記環状体に、内径拘束と外径拘束の両方の特性を十分に付与することができる。この結果、一回の変形矯正で、前記環状体に十分な変形矯正を行うことができ、傾斜の発生も最小限に抑えることができるという効果がある。
【0066】
また、内径拘束、外径拘束の両方を行えるため、広範囲の炭素含有量の鋼からなる環状体に対し、変形矯正を十分に行うことができる。特に従来、十分な変形矯正が不可能であった中炭素鋼についても本発明により、良好に変形矯正が可能であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼の焼入れ時における時間と寸法との関係を鋼の炭素含有量をパラメータとして示す図である。
【図2】従来の内径拘束による焼入れ処理後の変形率(%)と内径拘束開始温度(℃)との関係を示す図である。
【図3】従来の内径拘束による焼入れ処理後の変形率(%)と、素材に含有される炭素量(重量%)との関係を示す図である。
【図4】炭素含有量が、0.4重量%以上、0.8重量%以下の素材に、浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した環状体を焼入れた際に、従来の外径拘束方式で変形矯正した場合の変形率(%)と素材の炭素含有量(重量%)との関係を示す図である。
【図5】本発明による中炭素鋼の変形矯正の様子の概略を示す図である。
【図6】本発明の実施例にかかる内外800、内外600、内外500を行った試験片(素材)に含まれる炭素量(重量%)と平均変形率(%)との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施例にかかる各々の試験片の平均変形率(%)と平均傾斜量(mm)との関係を示す図である。
【図8】本発明の実施例にかかる環状体の焼入れ変形矯正装置の断面構成図である。
【図9】図8に示す環状体の焼入れ変形矯正装置の部分拡大図である。
【図10】本発明の他の実施例にかかる環状体の焼入れ変形矯正装置の部分拡大断面図である。
【図11】本発明の他の実施例にかかる環状体の焼入れ変形矯正装置の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1 環状体の焼入れ変形矯正装置
10 加圧シリンダ
11 メインプレスシリンダ
12 サブプレスシリンダ
13 ピストンロッド
14 外径拘束冶具
15 内径拘束冶具
16 環状体
17 焼入れ槽
20 焼入れ油供給配管
21 シリンダ装置
24 環状体載置部

Claims (12)

  1. マルテンサイト変態を伴う炭素含有量が0.2重量%以上、1.0重量%以下である鋼からなる環状体の焼入れ変形矯正方法に関するものであって、焼入れ開始温度から600℃以上の温度の間に、前記環状体の内径側から内径拘束冶具にて内径拘束による変形矯正を開始する第一工程と、前記第一工程に連続して、前記環状体が変態により膨張する直前までに、該環状体の外径側から外径拘束冶具にて外径拘束による変形矯正を開始する第二工程と、を含むことを特徴とする環状体の焼入れ変形矯正方法。
  2. 浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した素材を用いることを特徴とした請求項1記載の環状体の焼入れ変形矯正方法。
  3. 前記第1工程は、焼入れ開始温度から800℃以上の温度の間に、前記環状体の内径側から拘束を開始する請求項1又は2記載の環状体の焼入れ変形矯正方法。
  4. 前記環状体を形成する前記鋼の炭素含有量は、0.3重量%以上、0.7重量%以下である請求項1又は2記載の環状体の焼入れ変形矯正方法。
  5. 前記第1工程は、前記環状体の内径側を拘束するとともに、前記環状体の幅方向の移動をも拘束する請求項1乃至4の何れかに記載の環状体の焼入れ変形矯正方法。
  6. マルテンサイト変態を伴う炭素含有量が0.2重量%以上、1.0重量%以下である鋼からなる環状体の焼入れ変形矯正装置であって、焼入れ開始温度に加熱された前記環状体が載置される環状体載置部と、前記環状体の内径側を拘束し変形矯正を行う内径拘束冶具と、前記環状体の外径側を拘束し変形矯正を行う外径拘束冶具と、焼入れ剤を収容する焼入れ槽と、焼入れ開始温度から600℃以上の温度の間に前記環状体載置部上に載置された前記環状体の内径側に前記内径拘束冶具を係合させる第1移動手段と、前記環状体の内径側に前記内径拘束冶具を係合した状態のまま前記環状体の外径側に前記外径拘束冶具を係合させる第2移動手段と、前記環状体載置部を前記焼入れ槽の外部と内部との間で移動させる第3移動手段と、を備え、前記第1移動手段及び第2移動手段は、前記内径拘束冶具及び外径拘束冶具を各々独立して移動可能且つ各々同時に移動可能となっていることを特徴とする環状体の焼入れ変形矯正装置。
  7. 前記第1移動手段は、焼入れ開始温度から800℃以上の温度の間に、前記環状体の内径側に前記内径拘束部材を係合させるようになっている請求項6記載の環状体の焼入れ変形矯正装置。
  8. 前記第2移動手段は、前記環状体の温度が600℃未満になったときに、前記環状体の外径側に前記外径拘束冶具を係合させるようになっている請求項6又は請求項7に記載の環状体の焼入れ変形矯正装置。
  9. 前記第2移動手段は、前記環状体の温度が800℃未満になったときに、前記環状体の外径側に前記外径拘束冶具を係合させるようになっている請求項7記載の環状体の焼入れ変形矯正装置。
  10. 前記第1移動手段が前記環状体載置部を前記焼入れ槽内に向けて押圧する力は、前記第3移動手段が前記環状体載置部を前記焼入れ槽外に向けて押圧する力よりも大きい請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の環状体の焼入れ変形矯正装置。
  11. 前記第2移動手段は、前記環状体が前記焼入れ槽に入った後に、前記環状体の外径側に前記外径拘束冶具を係合させるようになっている請求項6乃至請求項10のいずれかに記載の環状体の焼入れ変形矯正装置。
  12. 前記環状体の形状矯正が終了した際には、前記第1移動手段よりも前記第2移動手段を先に後退させるようになっている請求項6乃至請求項11のいずれかに記載の環状体の焼入れ変形矯正装置。
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