JP3569653B2 - エンジン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、排気マフラが受け板と吸音材とを備え、この受け板を排気マフラ内に固定し、この受け板で吸音材を支持したエンジンが知られている。
【0003】
この従来技術では、排気マフラのケーシングを構成する椀形のケーシング部品の内奥端に椀形の受け板を嵌入し、受け板の周壁をケーシング部品の周壁の内面に接当させ、この受け板の周壁をケーシング部品の周壁にスポット溶接で固定している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、次の問題がある。
《1》受け板の取り付け作業が繁雑になる。
受け板の周壁をケーシング部品の周壁にスポット溶接で固定するため、溶接作業中、ケーシング部品の姿勢を頻繁に変更する必要があり、受け板の溶接作業が繁雑になる。
【0005】
《2》受け板の製造コストが高い。
受け板が椀形であるため、絞り加工が必要であり、その製造コストが高い。
【0006】
本発明の課題は、上記問題点を解決できるエンジンを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
主要な請求項1の発明の構成は、次の通りである。
図1に示すように、排気マフラ3が受け板31と吸音材44とを備え、この受け板31を排気マフラ3のケーシング27内に固定し、この受け板31で吸音材44を支持したエンジンにおいて、
前記ケーシング27の一端壁47に押し出し部47aと取り付け部47bとを設け、押し出し部47aは、取り付け部47bを残して、前記ケーシング27の一端壁47の一部をこのケーシング27の外方向に押し出して形成し、取り付け部47bは、押し出し部47aの周縁に残された上記一端壁47の一部で形成し、押し出し部47aの窪み47cに吸音材44を充填し、図6に示すように、受け板31を偏平な多孔板で構成し、受け板31の一部を取り付け部47bの内面に接当させ、この受け板31を取り付け部47bにスポット溶接で固定し、
前記ケーシング(27)の底壁(4)に、このケーシング(27)の内側に突出する押し込み部(5)を形成し、この押し込み部(5)を仕切り(12)として、上記ケーシング(27)内に複数の膨張室(8)(9)を形成した、ことを特徴とするエンジン。
【0008】
【発明の作用及び効果】
(請求項1の発明)
請求項1の発明は、次の作用効果を奏する。
《1》受け板31の溶接作業が容易になる。
図6に示すように、取り付け部47bは、ケーシング27の一端壁47の一部で形成し、受け板31を偏平な多孔板で構成し、受け板31の一部を取り付け部47bの内面に接当させ、この受け板31を取り付け部47bにスポット溶接で固定したため、次の利点がある。受け板31の溶接は、取り付け部47bを構成するケーシング27の一端壁47に対して行えば足りるため、溶接作業中、排気マフラ3の姿勢を頻繁に変える必要がなく、受け板31を取り付け部47bに接当可能であるため、受け板31の固定が容易で、受け板31の溶接作業が容易になる。
《2》受け板31の成型が容易である。
図6に示すように、受け板31を偏平な多孔板で構成したため、絞り加工や曲げ加工が不要となり、その成形が容易である。
【0009】
【0010】
請求項1の発明は、上記の作用効果に加え、次の作用効果を奏する。
《3》排気マフラ3を低コストで製作することができる。
図2に示すように、押し込み部5を仕切り12として用いるため、専用の仕切りを用いる場合に比べ、部品点数が少なくなるとともに、取り付けも不要になるため、排気マフラ3を低コストで製作することができる。
【0011】
(請求項2の発明)
請求項2の発明は、請求項1の発明の作用効果に加え、次の作用効果を奏する。
《4》エンジンを小型化することができる。
図1に示すように、シリンダヘッド1に点火プラグ2を取り付け、シリンダヘッド1上に排気マフラ3を取り付け、前記押し込み部5の窪み6を点火プラグ2の抜き差し作業空間7として用いることができるようにしたため、次の利点がある。排気マフラ3をシリンダヘッド1の上方に配置することができるため、排気マフラ3をシリンダヘッド1の上方から横方向に大きく張り出す必要がなくなり、エンジンを小型化することができる。
【0012】
《5》排気マフラ3の消音効果を高く維持できる。
図1に示すように、排気マフラ3の押し込み部5が底壁4に形成されているが、この押し込み部5を仕切り壁12として有効利用するため、この押し込み部5とは別に新たな仕切りを設ける場合に比べ、排気マフラ3の容積を有効利用でき、消音効果を高く維持できる。
【0013】
(請求項3の発明)
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明の作用効果に加え、次の作用効果を奏する。
《6》排気マフラ3の消音機能を高く維持できる。
図2に示すように、ケーシング27内の上下方向中間部に仕切り板10を設け、このケーシング27内の上部を第1膨張室11とし、ケーシング27の下部に前記押し込み部5を仕切り12とした第2膨張室8と第3膨張室9を設けたため、次の利点がある。押し込み部5を第1膨張室11の仕切り12として使用しないため、第1膨張室11を容積を大きく確保することができる。このため、排気の圧力を第1膨張室11で十分に低下させることができ、排気マフラ3の消音機能を高く維持できる。
(請求項4の発明)
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明の作用効果に加え、次の作用効果を奏する。
《7》ケーシング部品27aの成形が繁雑になるのを抑制することができる。
図6に示すように、ケーシング27の一端壁47として、ケーシング27の一部を構成する椀形のケーシング部品27aの奥端壁を用いたため、次の利点がある。椀形のケーシング部品27aを絞り加工で形成する際に、押し出し部47aを同時に加工することができるため、ケーシング部品27aの成形が繁雑になるのを抑制することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1から図7は本発明の実施形態を説明する図である。この実施形態では、傾斜形の火花点火式エンジンを用いる。
【0015】
このエンジンの構成は次の通りである。
図7に示すように、このエンジンは、シリンダブロック18とシリンダヘッド1とヘッドカバー20と燃料タンク21と排気マフラ3とエアクリーナ22とを備えている。シリンダブロック18は、クランクケース23とシリンダ24とを一体成型したもので、シリンダ24はクランクケース23から斜め上向きに導出されている。シリンダヘッド1は、シリンダ24の導出端に固定され、その上部に点火プラグ2が取り付けられている。ヘッドカバー20はシリンダヘッド1に組み付けられている。燃料タンク21は、シリンダブロック18の上方に取り付けられている。排気マフラ3はシリンダヘッド1とヘッドカバー20の上方に取り付けられている。エアクリーナ22は、シリンダヘッド1の前部に取り付けられている。
【0016】
排気マフラ3の外部構造は、次の通りである。
図7に示すように、排気マフラ3は、排気導入パイプ25とパイプカバー26とケーシング27とケーシングカバー28とを備えている。排気導入パイプ25は、ケーシング27から導出され、その導出端はシリンダヘッド1に固定されている。これにより、ケーシング27は、シリンダヘッド1に支持される。パイプカバー26は、排気導入パイプ25に固定され、これをカバーしている。図6に示すように、ケーシング27は、上部ケーシング27aと下部ケーシング27bとを備えている。これらはいずれも矩形椀型に形成され、図1〜図3に示すように、各開口縁部のフランジ部はカーリングで接合され、矩形箱型のケーシング27が構成される。図1に示すように、ケーシングカバー28は、上部ケーシングカバー28aと下部ケーシングカバー28bとを備え、上部ケーシングカバー28aは、矩形椀型に形成され、上部ケーシング27aに固定され、上部ケーシング27aの天井壁と周壁とを覆っている。下部ケーシングカバー28bも、矩形椀型に形成され、下部ケーシング27bに固定され、下部ケーシング27bの底壁と周壁とを覆っている。
【0017】
排気マフラ3の内部構造は、次の通りである。
図6に示すように、排気マフラ3は、仕切り板10と排気絞りパイプ29と排気放出パイプ30と受け板31とを備えている。仕切り板10は、矩形板状で、図1〜図3に示すように、その周縁部は上部ケーシング27aと下部ケーシング27bの各フランジ部の間に挟まれて固定され、ケーシング27内の上下方向中間部に位置し、ケーシング27内を上下に区画している。図6に示すように、仕切り板10は、補強リブ32と排気導入パイプ挿通孔33と排気絞りパイプ挿通孔34と排気絞り孔35と排気放出パイプ嵌合溝36とを備えている。補強リブ32は、十文字形に形成され、仕切り板10を4領域に区画している。排気導入パイプ挿通孔33は、仕切り板10の第1領域10aに形成され、下部ケーシング27bの底壁を貫通する排気導入パイプ25が挿通されている。図3に示すように、排気導入パイプ25は、上端開口部が半球プラグ37で封止され、周壁の一部が内部に反転状に押し込まれ、ここに排気出口38が形成されている。
【0018】
図6に示すように、排気絞りパイプ挿通孔34は、仕切り板10の長形方向で第1領域10aと隣合う第2領域10bに形成され、排気絞りパイプ29が挿入されている。図3に示すように、排気絞りパイプ29は、縦向き円筒形で、上下ともにプラグ39で封止され、周壁に多数の孔46を備え、上部の孔40は上部ケーシング27aの内空間に臨み、下部の孔46は下部ケーシング27bの内空間に臨んでいる。排気絞りパイプ29の内部通路と孔46とで第1絞り部13が形成される。図6に示すように、排気絞り孔35は、仕切り板10の短形方向で第2領域10bと隣合う第3領域10cに複数個形成されている。この排気絞り孔35で第2絞り部14が形成される。
【0019】
図2に示すように、下部ケーシング27bの底壁に、下部ケーシング27bの内側に向けて湾曲状の押し込み部5が形成され、この押し込み部5で下部ケーシング27b内が区画されている。図1に示すように、押し込み部5は、高部5aと低部5bとを備えている。図6に示すように、低部5bは、仕切り板10の第1境界10eと対向し、この第1境界10eは、仕切り板10の第1領域10aと第2領域10bとを区画する。高部5aは、仕切り板10の第3境界10gと対向し、この第3境界10gは、仕切り板10の第3領域10cと後述する第4領域10dとを区画する。図1に示すように、低部5bと第1境界10eの隙間は、高部5aと第3境界10gの隙間に比べて広い。この前者の隙間が第3絞り部15となり、下部ケーシング27b内の区画された2つの空間が連通される。
【0020】
尚、図6に示すように、第2境界10fは第2領域10bと第3領域10cとを区画し、第4境界10hは第4領域10hと第1領域10aとを区画する。排気放出パイプ嵌合溝36は、仕切り板10の長形方向で第3領域10cと隣合う第4領域10dに形成されている。排気放出パイプ嵌合溝36には、排気放出パイプ30が嵌合されている。図5に示すように、排気放出パイプ30は、横向き円筒形で、その先端はケーシング27から横向きに突出している。排気放出パイプ30の周壁は複数の排気導入孔40を備え、基端はプラグ41で封止され、内部にステンレスネット42が充填されている。
【0021】
図6に示すように、椀形の上部ケーシング27aの上端壁47に押し出し部47aと取り付け部47bとを設けている。押し出し部47bは、取り付け部47bを残して、上部ケーシング27aの上端壁47の一部を上方向に押し出して形成されている。取り付け部47bは、押し出し部47aの周縁に残された上端壁47の一部で形成され、上方向に臨む折り曲げ部のない偏平な形状となっている。押し出し部47aの窪み47cに吸音材44となるグラスウールが充填されている。図6に示すように、受け板31は、折り曲げ部のない偏平な多孔板で構成され、仕切り板10の第1領域10aと対向する部分に切欠部31aを備え、L字形に形成されている。受け板31を、上部ケーシング27aの奥端に内嵌し、受け板31の取り付け部47bの内面に接当させ、この受け板31を取り付け部47bにスポット溶接で固定し、この受け板31で吸音材44を支持している。また、排気導入パイプ25は、受け板31の切り欠き部31aに挿通され、先端の半球プラグ37は、上部ケーシング27aの上端壁47にスポット溶接で固定されている。図6中のX印は、スポット溶接位置を示している。
【0022】
図2に示すように、上記内部構造により、上部ケーシング27a内が第1膨張室11となり、下部ケーシング27b内が押し込み部5の高部5aを仕切り12とした第2膨張室8と第3膨張室9となる。また、図4及び図5に示すように、第1絞り部11と第2絞り部14とで第1膨張室11と第2膨張室8とが連通され、第3絞り部15で第2膨張室8と第3膨張室9とが連通される。第1絞り部13から第3絞り部15までの距離と、第2絞り部14から第3絞り部15までの距離とは異なる長さとなっており、前者の方が短い。
【0023】
排気の流れは、次の通りである。
図4と図5中の矢印は、排気の流れを示す。図4に示すように、燃焼室(図外)からの排気は、矢印のように、排気導入パイプ25を通過し、その排気出口38から第1膨張室11に流入し、ここで膨張する。図5に示すように、この排気は、第1絞り部13と第2絞り部14とから第2膨張室8に流入し、更に膨張する。第1絞り部13から流入した排気と第2絞り部14から流入した排気は、第3絞り部15で合流し、第3膨張室9に流入し、更に膨張する。そして、排気放出パイプ30からケーシング27外に排出される。
【0024】
この排気マフラ3の利点は、次の通りである。
受け板31のスポット溶接は、上部ケーシング27aの上端壁47に対して行えば足りるため、溶接作業中、上部ケーシング27aの姿勢を頻繁に変える必要がなく、受け板31のスポット溶接作業が容易になる。椀形の上部ケーシング27aを絞り加工で形成する際に、押し出し部47aを絞り加工で形成することができるため、上部ケーシング27aの成形が繁雑になるのを抑制することができる。第1膨張室11の容積を大きく確保することができるため、排気の圧力を第1膨張室11で十分に低下させることができ、排気マフラ3の消音性能を高く維持できる。また、第3絞り部15内で逆位相の排気音が重なると、干渉によって相互の排気音が打ち消され、排気マフラ3の消音機能を高めることができる。
【0025】
仕切り12として利用する押し込み部5は、次の機能を備えている。
図1に示すように、押し込み部5の窪み6は、点火プラグ2にその上方から臨み、点火プラグ2の抜き差し作業空間7として用いられる。この抜き差し作業空間7には、ボックスレンチ45を侵入させ、点火プラグ2の着脱が行えるようになっている。
【0026】
この押し込み部5により、次の利点が得られる。
排気マフラ3をシリンダヘッド1の上方に配置することができるため、排気マフラ3をシリンダヘッド1の上方から横方向に大きく張り出す必要がなくなり、エンジンを小型化することができる。また、この押し込み部5は、下部ケーシング27bの底壁4に形成されているため、排気マフラ3の上方から落下してきた泥水等の汚染物質が排気マフラ3で受け止められ、点火プラグ2が汚染されにくい。また、押し込み部5を仕切り12として用いるため、専用の仕切りを用いる場合に比べ、部品点数が少なくなるとともに、取付も不要になる。また、排気マフラ3の容積を有効利用できる。また、押し込み部5を湾曲状にしたため、排気マフラ3の底壁4の剛性が高まり、振動が抑制され、排気マフラ3からの排気騒音の漏れが小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンで用いる排気マフラの縦断背面図である。
【図2】上部ケーシングカバー28aを除いた図1のII−II線断面図である。
【図3】上部ケーシングカバー28aを除いた図1のIII−III線断面図である。
【図4】ケーシングカバー28を除いた図1のIV−IV線断面図である。
【図5】ケーシングカバー28を除いた図1のV−V線断面図である。
【図6】ケーシングカバー28を除いた図1の排気マフラの分解斜視図である。
【図7】図1の排気マフラを備えたエンジンの背面図である。
【符号の説明】
1…シリンダヘッド、2…点火プラグ、3…排気マフラ、4…底壁、5…押し込み部、6…窪み、7…抜き差し作業空間、8…第2膨張室、9…第3膨張室、10…仕切り板、11…第1膨張室、12…仕切り、27…ケーシング、27a…上部ケーシング、31…受け板、44…吸音材、47…一端壁、47a…押し出し部、47b…取り付け部、47c…窪み。
Claims (4)
- 排気マフラ(3)が受け板(31)と吸音材(44)とを備え、この受け板(31)を排気マフラ(3)のケーシング(27)内に固定し、この受け板(31)で吸音材(44)を支持したエンジンにおいて、
前記ケーシング(27)の一端壁(47)に押し出し部(47a)と取り付け部(47b)とを設け、押し出し部(47a)は、取り付け部(47b)を残して、前記ケーシング(27)の一端壁(47)の一部をこのケーシング(27)の外方向に押し出して形成し、取り付け部(47b)は、押し出し部(47a)の周縁に残された上記一端壁(47)の一部で形成し、押し出し部(47a)の窪み(47c)に吸音材(44)を充填し、受け板(31)を偏平な多孔板で構成し、受け板(31)の一部を取り付け部(47b)の内面に接当させ、この受け板(31)を取り付け部(47b)にスポット溶接で固定し、
前記ケーシング(27)の底壁(4)に、このケーシング(27)の内側に突出する押し込み部(5)を形成し、この押し込み部(5)を仕切り(12)として、上記ケーシング(27)内に複数の膨張室(8)(9)を形成した、ことを特徴とするエンジン。 - 請求項1に記載したエンジンにおいて、
シリンダヘッド(1)に点火プラグ(2)を取り付け、シリンダヘッド(1)上に排気マフラ(3)を取り付け、前記押し込み部(5)の窪み(6)を点火プラグ(2)の抜き差し作業空間(7)として用いることができるようにした、ことを特徴とするエンジン。 - 請求項1または請求項2に記載したエンジンにおいて、
前記ケーシング(27)内の上下方向中間部に仕切り板(10)を設け、このケーシング(27)内の上部を第1膨張室(11)とし、このケーシング(27)内の下部に前記押し込み部(5)を仕切り(12)とした第2膨張室(8)と第3膨張室(9)を設けた、ことを特徴とするエンジン。 - 請求項1〜3のいずれかに記載したエンジンにおいて、
前記ケーシング(27)の一端壁(47)として、ケーシング(27)の一部を構成する椀形のケーシング部品(27a)の奥端壁を用いた、ことを特徴とするエンジン。
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