JP3567090B2 - ガスタービン,コンバインドサイクルプラント及び圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスタービンに係わり、特にガスタービンの圧縮機の吸気中に液滴を噴霧するガスタービンに関する。
【0002】
また、本発明はコンバインドサイクルプラントに係わり、コンバインドサイクルプラントを構成する圧縮機の吸気中に液滴を噴霧するコンバインドサイクルプラントに関する。
【0003】
また、本発明は圧縮機に係わり、圧縮機の吸気中に液滴を噴霧する圧縮機に関する。
【0004】
【従来の技術】
夏期など気温が上昇するとガスタービンの出力が低下するが、出力回復の方法として、様々な構成が記載されている。
【0005】
特開平7−97933号公報,実公昭61−37794号公報、或いは特開平5−195809号公報には、圧縮機の吸気を冷却することが記載されている。
【0006】
また、特開昭61−283723号公報には、ガス化炉とガスタービンとの複合システムにおいて、圧縮機入口及び圧縮機中間段から水を供給することが記載されている。
【0007】
さらに、実開昭56−43433 号公報には圧縮機内に水滴の供給孔を設けることが記載されており、特開平2−211331 号公報にはガスタービンが高圧及び低圧の2つの圧縮機を備え、前記圧縮機間に中間冷却器を備えたものが記載されている。また、特開平6−10702号公報には、複数の圧縮機段を備えるコンプレッサグループについて、電力消費を低減するために上流の圧縮機段と下流の圧縮機段との間の中間部に水を噴霧する技術が記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平7−97933号公報,実公昭61−37794 号公報或いは特開平5−195809 号公報は単に圧縮機に導入される吸気温度を低下させて出力を向上させることに関して開示されているにすぎない。特開昭61−283723号公報には、圧縮中に液滴を蒸発させタービンの羽根を冷却する媒体として利用を図ること及びタービンサイクル特性を向上させる記載はあるが、出力向上と熱効率向上の双方を共に達成するものではない。
【0009】
ガスタービン,コンバインドサイクルプラントや圧縮機では、出力向上と熱効率向上の双方を達成することが望まれている。
【0010】
また、特開平6−10702号公報或いは特開平2−21133号公報のように、出力の向上と熱効率向上の双方の効果を得るには、圧縮機の中間部の高圧気体の流路に特定の設備を必要とし、圧縮機構成は全体として複雑化及び大型化する問題があった。また、実開昭56−43433 号公報では圧縮機内のケーシング及び静翼に特別な構成を備える必要があった。
【0011】
実際のガスタービン及びコンバインドプラント及び圧縮機を考慮すると、出力向上と熱効率向上を簡単な設備で実現できることが要求される。
【0012】
そこで、本発明は、実用に適する簡単な設備によって、吸気室内に液滴を噴霧して、温度を低下させた吸気室内の空気と共に液滴を圧縮機内に導入し圧縮機内を流下中に気化するようにして、出力の向上と熱効率の向上の双方を実現できるガスタービン及びそのための液滴噴霧装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、供給された空気を圧縮して吐出する圧縮機と、前記圧縮機から吐出した空気と燃料とを燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器で燃焼した燃焼ガスにより駆動されるタービンと、前記圧縮機の上流側に配置され、前記圧縮機に空気を供給する吸気室と、前記吸気室内を流れる空気に微細水滴を噴霧する液滴噴霧装置とを有し、前記液滴噴霧装置は、前記吸気室内に配置され微細水滴を噴霧する液滴噴霧ノズルと、該液滴噴霧ノズルに給水する給水手段とを備え、前記液滴噴霧ノズルから前記吸気室内に噴霧される水滴の一部が前記圧縮機に流入する前に前記吸気室内で気化して前記吸気室内の空気の温度を外気温度より低下させると共に、前記水滴の残りが前記温度を低下させた空気と共に前記圧縮機内に流入し前記圧縮機内を流下中に気化して圧縮空気を冷却し得るようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、供給された空気を圧縮して吐出する圧縮機と、前記圧縮機から吐出した空気と燃料とを燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器で燃焼した燃焼ガスにより駆動されるタービンと、前記圧縮機の上流側に配置され、前記圧縮機に空気を供給する吸気室と、前記吸気室の上流側に配置されたルーバを有するガスタービンの前記圧縮機に供給される空気に微細水滴を噴霧する液滴噴霧装置において、前記液滴噴霧装置は、前記ルーバの下流側で前記吸気室内に配置され微細水滴を噴霧する液滴噴霧ノズルと、該液滴噴霧ノズルに給水する給水手段とを備え、前記液滴噴霧ノズルから前記吸気室内に噴霧される水滴の一部が前記圧縮機に流入する前に前記吸気室内で気化して前記吸気室内の空気の温度を低下させると共に、前記水滴の残りが前記温度を低下させた空気と共に前記圧縮機内に流入し前記圧縮機内を流下中に気化して圧縮空気を冷却し得るようにしたことを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施例を図1を用いて説明する。
【0023】
本発明の実施例のガスタービンは、図1に示すように、気体を圧縮して吐出する圧縮機1,圧縮機により圧縮された気体が供給される燃焼器5,燃焼器5の燃焼ガスにより駆動されるタービン2,タービン2軸に連結されている発電機3,発電機3により生じた電気を送電する送電端4を備える。ガスタービンからの排気7は、スタック8より大気中に排出される。
【0024】
以降の実施例では圧縮機1に供給される気体が空気である場合を示す。
【0025】
圧縮機1は、圧縮機1に供給する吸気6を取り込む吸気室10が連結されている。また、吸気室10の上流側には、ルーバ9が配置されているのが一般的である。ルーバ9は圧縮機側(後流側)に空気フィルタを配置する。ルーバ9の位置のすぐ後ろに空気フィルタを設けているので記載を省略する。
【0026】
図1では、ルーバ9が吸気室の上流側に配置された形態を記載したが、空気フィルタが吸気室の途中にある場合は、本実施例において吸気室10は、空気フィルタより下流側の圧縮機入口までの吸気流路を示す。
【0027】
図1では、圧縮機1,タービン2,発電機3が同軸上に連結されているが、圧縮機1がタービン2とは別軸になっていてもよい。
【0028】
また、T1は圧縮機1に入る前の吸気温度20、T2は圧縮機出口空気温度 21、T3は燃焼温度22、T4はタービン2から排出された排気温度23を示す。
【0029】
特に注釈がなければ、以下に記載した番号で前記のものと同じ番号は同じ対象を示す。
【0030】
第1の実施例は、さらに、吸気室10内に微細液滴を噴出する噴霧装置を備える。例えば噴霧ノズル11が配置される。噴出される液滴のZautor平均粒径 (S.M.D)は、例えば約10μm程度である。噴霧ノズル11には給水手段 13が接続されている。噴霧ノズル11が、このような微細な液滴を得るための微粒化手段を備えている場合には給水手段13のみが接続されてもよいが、噴霧ノズル11に加えて、微粒化手段を備えるようにしてもよい。他に微粒化手段を備えた構成を第2実施例において詳述する。
【0031】
給水手段13は、流量を調整する調節弁15,給水ポンプ16,給水タンク 17,給水タンク17に給水する給水装置18を有している。
【0032】
調節弁15は発電機3の出力に基づく信号と負荷指令信号Pd25とが加算部を経て、調節弁15等の開度信号やその他の指令を出力する関数発生器24に電気的に接続されている。例えば信号ケーブル26等により連絡されている。場合によっては、負荷要求信号25が直接関数発生器24に導入されるようにしてもよい。
【0033】
吸気6は、ルーバ9を通過して吸気室10に至り、給水タンク17の水が所定の開度の調節弁15を通り、給水手段13を経て噴霧ノズル11から微細液滴が噴出される。微細液滴を噴出するのに給気手段12からの給気が必要な場合は、併せて調節弁14を所定の開度にして噴霧液滴の粒径を調整する。吸気6は液滴を含んで噴霧流を形成し、一部蒸発して吸気を冷却したのち圧縮機1に流入する。吸気に含まれる液滴は、圧縮機1の内部で気化し、圧縮空気を冷却する。
【0034】
図4に圧縮機内の圧縮空気の温度分布を示す。圧縮機1出口の空気温度T21は、水噴霧し圧縮機1内で水滴気化させた場合28の方が、水滴を混入しない場合27よりも低下する。圧縮機内においても連続的に低下している。
【0035】
圧縮機1内で液滴が実質的に気化した後、圧縮空気は燃焼器5で燃料と混合して燃焼し、高温高圧のガスとなってタービン2に流入し仕事をする。発電機3で機械エネルギーが電気エネルギーに変換され、送電端4に給電される。仕事を終えた排ガスである排気7は、スタック8から大気に放出される。
【0036】
本実施例により出力向上を得ることができる共に、熱効率を向上できる。
【0037】
本実施例による増出力機構は定性的には、以下のように整理できる。
【0038】
1)圧縮機1に導入される吸気室10内での、等湿球温度線上での吸気の冷却、2)圧縮機1内に導入された液滴の気化による内部ガスの冷却、3)圧縮機1内での気化量に相当するタービン2と圧縮機1を通過する作動流体量の差、4)定圧比熱の大きい水蒸気の混入による混合気の低圧比熱の増大、等である。
【0039】
図11は噴霧ノズル11の吸気室10内の配置の概略を示したものである。
【0040】
噴霧ノズル11は吸気流路の所定の想定断面に、多数配置されている。例えば、吸気の流れ方向に対してほぼ垂直面に配置される。隣接する噴霧ノズル11の間隔は、前記吸気流路の断面の縦方向に対して均等間隔になるように配置する。また、前記吸気流路の断面の横方向に対して均等間隔になるように配置する。全体としては、図に示すように吸気流路を構成する吸気室の壁面近傍を除く領域に多数配置されることができる。
【0041】
隣接する噴霧ノズル間の間隔は他の実施例においても同様に配置することができる。
【0042】
これにより、圧縮機入口に搬入される吸気に水滴を均一に分散することができる。
【0043】
また、噴霧ノズルを備えた従来の吸気の冷却装置では、噴霧した液のうちほとんどを回収する回収装置及び再度噴霧ノズル11に供給する大規模な循環系統を一般に備えているが、本実施例においては、係る大規模な設備を設けなくともよい利点もある。
【0044】
前記噴霧ノズル11は、ルーバ9の空気フィルタより下流側に位置する。これにより、当該液滴を吸気の流れに乗せて安定して圧縮機1に供給することができる。上流側に液滴を供給してルーバ9の空気フィルタに水滴が付着したり、目づまりをおこす可能性を抑制できるからである。
【0045】
また、前記噴霧ノズル11は、吸気室10内を流れる際の気化量等を考慮して圧縮機1の入口から距離を置いて配置することが好ましい。圧縮機1の入口にいわゆるIGVが配置される場合はその上流にある。尚、サイレンサ等が備えられている場合は、当該噴霧ノズルはサイレンサ等の下流側に位置している。
【0046】
一方、吸気室のなかで圧縮機1と吸気室10の境界近傍に噴霧ノズル11を配置する際は、微細な液滴を噴霧できる場合等に、圧縮機内に入る液滴の粒径の把握が容易となる。
【0047】
例えば、より初段側から液滴の気化を起こすことができる。
【0048】
図8は、本発明を具備したガスタービンの詳細構造図を示す。噴霧ノズル11により吸気中に噴出された噴霧液滴は、気流に乗って圧縮機入口から流入する。吸気室を流れる吸気の平均空気流速は例えば20m/sである。液滴37は、流線に沿って圧縮機1の翼間を移動する。圧縮機内では断熱圧縮により吸気は加熱され、この熱で液滴は表面から気化しながら粒径を減少しつつ後段翼側へ輸送される。この過程で、気化に必要な気化潜熱は、圧縮機内の空気から賄われるために圧縮機内の空気の温度は本発明を適用しない場合よりも低下する(図4参照)。液滴は粒径が大きいと圧縮機1の翼やケーシングに衝突し、メタルから熱を得て気化することになるので作動流体の減温効果が阻害されるおそれがある。このため、このような観点からは、液滴の粒径は小さい方が好ましい。
【0049】
噴霧液滴には粒経の分布が存在する。圧縮機1の翼やケーシングに衝突することを抑制することや、翼のエロージョンを防止するという観点から、噴霧される液滴は主に50μm以下の粒径になるようにする。翼に作用する影響をより少なくする観点からは、最大粒径で50μm以下にすることが好ましい。
【0050】
更に、粒径が小さい方が流入空気中に液滴をより均一に分布させることができ、圧縮機内の温度分布が生じることを抑制する観点から、Sautor平均粒径 (S.D.M)で30μm以下にすることが好ましい。噴霧ノズルから噴出される液滴は粒度の分布があることから前記最大粒径では計測が容易ではないので、実用上は前述のようにSautor平均粒径(S.D.M)で測定したものを適応できる。尚、粒径は小さい方が好ましいが、小さい粒径の液滴を作る噴霧ノズルは高精度な製作技術が要求されるので、技術的に小さくできる下限までが、前記粒径の実用範囲となる。よって、係る観点からは、例えば、前記主な粒径,最大粒径、或いは平均粒径がそれぞれ1μmが下限となる。又、細粒径の液滴になる程製造するためのエネルギーが大きくなることが多いので、液滴製造のための使用エネルギーを考慮して前記下限を定めてもよい。大気中に浮遊し落下し難い程度の大きさにすると、一般に、接触表面の状態も良い。
【0051】
液滴が気化することにより作動流体の重量流量が増加する。圧縮機内で気化が完了すると、圧縮機1内の気体はさらに断熱圧縮を受ける。その際水蒸気の定圧比熱は圧縮機内の代表的な温度(300℃)付近では、空気の約2倍の値を有するので、熱容量的には空気換算で、気化する水滴の重量の約2倍の空気が作動流体として増したのと等価な効果がある。すなわち圧縮機の出口空気温度T2′低下に効果(昇温仰制効果)がある。このようにして圧縮機内での水滴の気化により圧縮機出口の空気温度が低下する作用が生じる。圧縮機の動力は、圧縮機出入口の空気のエンタルピの差に等しく空気エンタルピは温度に比例するので、圧縮機出口の空気温度が下がると、圧縮機の所要動力を低減することができる。
【0052】
圧縮機で加圧された作動流体(空気)は、燃焼器で燃料の燃焼により昇温された後タービンに流入して膨張仕事を行う。この仕事はタービンの軸出力と呼ばれタービンの出入口空気のエンタルピ差に等しい。燃料の投入量は、タービン入口のガス温度が所定の温度を越えない様に制御される。例えば、タービン出口の排ガス温度と圧縮機出口の圧力Pcdの実測値からタービン入口温度が計算され、計算値が本発明適用前の値と等しくなる様に燃焼機5への燃料流量が制御される。このような燃焼温度一定制御が行われると、先に述べた様に、圧縮機出口のガス温度T2′が低下している分だけ燃料投入量が増すことになる。また、燃焼温度が不変かつ水噴霧の重量割合が吸気の数パーセント程度であれば、タービン入口部の圧力と圧縮機出口圧力は噴霧の前後で近似的に変わらないので、タービン出口のガス温度T4も変化しない。よって、タービンの軸出力は噴霧の前後で変化しないことになる。一方、ガスタービンの正味出力は、タービンの軸出力から圧縮機の動力を差し引いたものであるから、結局、本発明を適用することで圧縮機の動力が低減した分だけガスタービンの正味出力を増すことができる。
【0053】
タービン2の電気出力QEは、タービン2の軸出力Cp(T3−T4)から圧縮機1の仕事Cp(T2−T1)を差し引いて得られ、近似的には次式で表わせる。
【0054】
【数1】
QE/Cp=T3−T4−(T2−T1) …(数1)
通常、燃焼温度T3は一定となるように運転されるので、ガスタービン出口温度T4は変化せず、タービンの軸出力Cp(T3−T4)も一定である。この時圧縮機出口温度T2が、水噴霧の混入によりT2′(<T2)に低下すると、圧縮機仕事の低下分に等価な増出力T2−T2′が得られることになる。一方、ガスタービンの効率ηは近似的に次式で与えられる。
【0055】
【数2】
【0056】
この場合、T2′<T2であるから、右辺第2項は小さくなるので、水噴霧により効率も向上することがわかる。別な言い方をすると、ガスタービンという熱機関から系外に廃棄される熱エネルギーCp(T4−T1)(数2第2項の分子)は本発明の適用前後で大差ない一方、投入される燃料エネルギーCp(T3− T2′)は本発明の適用時は、Cp(T2−T2′)ほど、すなわち圧縮機仕事の低下分ほど増えている。一方、上述したように圧縮機仕事の低下分は増出力に等しいので、この燃料増加分は、実質全部ガスタービンの出力増加に寄与していることになる。即ち、増出力分は熱効率が100%となる。このため、ガスタービンの熱効率を向上できる。このように、本実施例では、吸気を冷却する従来技術では明示されていない圧縮機の仕事を低減すべく、水噴霧を圧縮機1の吸気に混入させて、トータルのガスタービンの出力アップを図ることができる。一方、燃焼器5入口に水を注入する従来技術は、作動流体を増加することで出力増を図るものであるが、圧縮機1の仕事は低減しないので、効率は逆に低下する。
【0057】
図7は、本発明の熱サイクルを他の熱サイクルと比較して示したものである。サイクル図の閉領域の面積が、単位吸気流量あたりのガスタービン出力、すなわち比出力を表している。図の各番号は、対応するサイクル図の各々の場所の作動流体を示す。図7においては、1は圧縮機入口、1′は1段目の圧縮機を出てインタークーラへの入口、1″インタークーラを出て第2段目の圧縮機の入口、2はブレイトンサイクルにおける燃焼器入口、2′は2段目の圧縮機を出て燃焼器の入口、3は燃焼器を出てタービンの入口、4はタービン出口を表すものとする。
【0058】
図7下欄の温度T−エントロピS線図は、各サイクルの前記1,3及び4の位置の温度T−エントロピSの値を固定した場合の特性の比較を示す。
【0059】
図から明らかなように、比出力の大きさは、本実施例のように圧縮機の吸気室で前述の微細水滴を噴霧して圧縮機入口から水滴を導入させたもの、特開平6− 10702 号公報に開示のような中間冷却サイクル,通常のブレイトンサイクルの順である。特に、中間冷却サイクルとの相違は、本発明が、圧縮機内に導入された水滴が、圧縮機入口部から連続的に気化することに由来しており、サイクルの形状に現れている。
【0060】
中間冷却サイクルの熱効率は、ブレイトンサイクルに劣るのに対し、先に示したように本実施例はブレイトンサイクルに優るので、本発明は中間冷却サイクルよりも熱効率が高い。
【0061】
一般に、圧縮機1内での噴霧液滴の気化する位置が圧縮機1の入口に近いほど、圧縮機1出口の空気温度が下がり、出力増,効率向上の点から有利である。したがって、吸気6に噴霧を混合する方法では、噴霧粒径は小さいほど効果的である。なぜなら、噴霧が圧縮機1流入後速やかに気化するからである。また、噴霧液滴が気中に浮遊し、吸気に同伴して圧縮機にスムーズに導入される。
【0062】
よって、噴霧ノズル11により噴出される液滴は、圧縮機1出口までに実質的全量が気化してしまう程度の大きさであることが好ましい。現実的には、100%より低いが前記構成によって達成できる上限まででよい。実用上は圧縮機出口で90%以上気化していればよい。
【0063】
例えば、圧縮機1の出口圧力Pcdが0.84MPa のとき、外気条件から推定した圧縮機1の出口の絶対湿度とEGV位置での絶対湿度の測定値の相関を考慮して気化割合を算出すると、前記液滴は圧縮機出口までに95%以上気化していた。
【0064】
空気が圧縮機内を通過する時間はわずかであり、この間に液滴を良好に気化させ、気化効率を高める観点からは、Sautor平均粒径(S.D.M)で30μm以下が望ましい。
【0065】
尚、小さい粒径の液滴を作る噴霧ノズルは高精度な製作技術が要求されるので、技術的に小さくできる下限までが、前記粒径の下限となる。例えば、1μmである。
【0066】
液滴が大きすぎると、圧縮機で液滴の良好な気化をし難くなるからである。
【0067】
液滴の導入量は温度及び湿度又は、出力増加の程度により調整することができる。噴霧した液滴が噴霧箇所から圧縮機入口までの間で気化する量を考慮して、吸気重量流量の0.2wt% 以上導入することができる。上限は、圧縮機の機能を良好に維持できる程度にする観点から上限を定める。例えば、上限を5wt%とし、導入範囲をこれ以下にすることができる。
【0068】
夏期等や乾燥条件等を考慮して調整できるが、より出力増加等を図るために 0.8wt% 以上5wt%以下導入することもできる。
【0069】
圧縮機入口に導入される空気温度を低下させるために単に導入空気に液滴(例えば、100〜150μm等)を噴霧し、噴霧後水を回収し再度噴霧に利用するタイプの従来の液滴噴霧手段と比べ、本実施例では、少量の液滴を噴霧することで足りる。
【0070】
噴霧水の消費量は、夏期高温時に低下した出力を定格値まで回復する場合が最大使用量となる。噴霧生成の際に空気を供給する場合の加圧空気消費量は、消費動力として無視できず、目安として消費水量以下が望ましい。したがって、粒径条件さえ満足するなら前記粒径の液滴をつくるために給気のない方が経済的である。
【0071】
本実施例により、外気温に応じて噴霧流量を調節することにより、年間を通じて出力変動を抑制できる発電プラントを提供できる。例えば、圧縮機に導入される空気温度が低い時より高いときの方が噴霧流量を増加するよう調節弁15の開度を調節する。
【0072】
また、等燃焼温度運転時に、前記液滴を供給するよう運転することが好ましい。これにより、効率を向上させると共に、出力を向上できる。
【0073】
また、発電を旨としないガスタービン,ガスタービンの駆動によるトルクを得るためのガスタービンにおいては、燃焼温度を下げてタービン軸出力を低下できる。特に、部分負荷運転時に本実施例を適応して、燃料を節約することができる。
【0074】
本実施例では、外気温から制約される出力以上の範囲においても、要求負荷に応じた出力調整ができる。
【0075】
又、燃焼温度を上昇させなくとも出力を向上できるので、寿命の長いガスタービンを提供することもできる。
【0076】
また、本実施例により、圧縮機内のガスを冷却できる。よって、これを活用してガスタービンの翼の冷却に圧縮機抽気を用いる場合は、冷却用の抽気量を低減できる。また、こうすることでガスタービン内の作動流体量をより多くできるので、高効率,増出力を期待できる。
【0077】
図1において、要求負荷信号Pd25を定格値に設定して、噴霧流量を自動制御するようにすることもできる。
【0078】
次に、ガスタービンの運転方法と制御について述べる。
【0079】
ガスタービン出力を増加する際は、前記噴霧ノズル11からの噴霧液量を増加させる工程と前記燃焼器に供給される燃料量を増加させる。また、ガスタービン出力を減少する際に、前記噴霧液量を減少させ、前記燃焼器に供給される燃料量を減少させる。
【0080】
ガスタービン出力を増加する際は、前記噴霧液量を増加させた後に前記燃焼器に供給される燃料量を増加させる。反対に、ガスタービン出力を減少する際は、前記噴霧ノズル11からの噴霧液量を減少させる前に前記燃焼器に供給される燃料量を減少させる。
【0081】
ガスタービンがベースロード運転状態にあるときの運転の一例を示す。
【0082】
燃焼温度一定の運用を行う場合の運転制御は以下のようにすることができる。負荷要求信号25を基にした目標出力に対応するよう噴霧水量を演算して関数発生器24から調節弁15に開度を増加する指令がでる。所定の量の水が調節弁 15を介して噴霧ノズル11に導かれ噴霧されると共に所定の粒径を得るために必要な圧縮空気量を演算して関数発生器から調節弁14に開度を増加する指令がでて、所定の圧縮空気が調節弁14を介して噴霧ノズル11に導かれる。この間燃料流量は一定としておく。次に、排気温度制御に移行して、燃焼温度(推定値を用いることもできる)が目標値に等しくなるように燃料流量を増す。
【0083】
運転中の排気温度目標値を与える排気温度制御線は、圧縮機吐出圧力Pcdと噴霧量の関数で表現されたものでも良いし、噴霧無しの場合の通常の制御線でもよい。あるいは通常の制御線から推定される目標排気温度に適当なバイアスを加えたものを用いることもできる。
【0084】
このようにして到達したガスタービンの出力が、目標値に対して偏差を有する時は、前記した手順に従って増出力の時には噴霧量を増したのち排気温度制御に移行する。一方、出力低減の時はまず燃料流量を絞り、しかるのちに噴霧量を低下する。
【0085】
このように制御する関数発生器24を備えることにより、燃焼温度の許容値を超えることを防止しつつ、出力の増減ができる。
【0086】
尚、出力降下時は噴霧量の低下を、出力増加時の前記噴霧量の増加の場合より、十分にゆっくりと行い、出力増加時と同様の排気温度制御に従って燃料流量を低下してもよい。
【0087】
上記のように、目標出力を実現させるために噴霧量を連続的に変化させる代わりに、噴霧量を外気温度,湿度等の外気条件を測定し、当該値を基に出力上昇分を考慮して所定の噴霧量に設定して運転するようにしてもよい。例えば、外気温度,湿度等の関数として噴霧量等を算出し、所望の出力上昇量に併せて設定する。これにより、微少な出力変動や気温の変動には追随させない噴霧量固定運転も可能である。本方式は運転制御が容易になるという効果がある。さらに、好ましくは、前記設定後所定時間経過後に再度外気条件を測定し、噴霧量の再設定を行うようにして、比較的容易に外気条件に合わせて、出力上昇量を調整できる。
【0088】
前記ガスタービンの運転は、ガスタービンの圧縮機1に供給する吸気に水滴を噴霧する水滴噴霧装置の制御として捉えることもできる。水滴噴霧装置を前記の運転をすることにより水滴噴霧装置を配置したガスタービンに前記の効果を提供することができる。
【0089】
第2の実施例を図1を用いて説明する。
【0090】
第2の実施例は、前記第1の実施例に対して、前記微細粒径の液滴を得るための微粒化手段を噴霧ノズル11と共に設けた点が主に相違する。例えば前記噴霧ノズル11に加圧空気の供給手段を備えるものである。
【0091】
具体的には、給水手段13を備えた噴霧ノズル11に加え、噴霧ノズル11に加圧空気を供給する給気手段12を備える。給気手段12は、加圧空気を供給する加圧器29を圧縮機1と別設に設け、加圧器29からの加圧空気を前記調節弁14を経て前記噴霧ノズル11に導く経路を備える。また、噴霧ノズル11への気体流量を調節する調節弁14を備える。本実施例の場合は、加圧空気の噴霧ノズルへの供給量を調節する調節弁14aを配置する。
【0092】
調節弁14,調節弁15は発電機3の出力に基づく信号と負荷指令信号Pd25とが加算部を経て、調節弁14,調節弁15等の開度信号やその他の指令を出力する関数発生器24に電気的に接続されている。例えば信号ケーブル26等により連絡されている。場合によっては、負荷要求信号25が直接関数発生器24に導入されるようにしてもよい。
【0093】
吸気6は、ルーバ9を通過して吸気室10に至り、給水タンク17の水が所定の開度の調節弁15を通り、給水手段13を経て噴霧ノズル11に供給する。併せて、加圧器29から生じた加圧空気を所定開度の調節弁14を通り噴霧ノズル11供給される。そして微細液滴を噴霧ノズル11から噴出する。前記ノズルは、供給空気と供給液量を調整して粒径を前述の範囲のうち所望の範囲で調整できるものでもよい。吸気6は液滴を含んで噴霧流を形成し、一部が蒸発して吸気を冷却したのち圧縮機1に流入する。吸気に含まれる液滴は、圧縮機1の内部で気化し、圧縮空気を冷却する。
【0094】
圧縮機1内で液滴が実質的に気化した後、圧縮空気は燃焼器5で燃料と混合して燃焼し、高温高圧のガスとなってタービン2に流入し仕事をする。発電機3で機械エネルギーが電気エネルギーに変換され、送電端4に給電される。仕事を終えた排ガスである排気7は、スタック8から大気に放出される。
【0095】
別設の加圧器29を配置することにより、圧縮機動力を減らすことがないので、前記ガスタービン出力の向上及びガスタービンの熱効率向上の効果の他に、配置上の観点や省動力の観点から効果を生じる場合がある。
【0096】
又、図には示していないが、加圧器29は、ガスタービン駆動用のアトマイズ圧縮機から供給してもよい。
【0097】
前記ノズルとして例えば、内部混合型のエアーミストノズルのうち所望の粒径の液滴が得られるものを用いることができる。
【0098】
前記ガスタービンの運転及び制御時に、ガスタービン出力を増加させる時に、前記のように噴霧水量を増加させるのに併せて、噴霧ノズル11への空気供給量を増加し、噴霧ノズルから噴霧される液滴の粒径が所望の大きさになるようにすることができる。
【0099】
出力を減少させる場合は、噴霧ノズル11への供給液量を減少させると共に噴霧ノズル11への供給空気量を減少させて液滴の粒径を調整する。
【0100】
また、操作を容易化するため、噴霧ノズル11に供給する空気量および液量を調整するのでなく、空気量を一定にして供給液量だけを調整するようにしてもよい。
【0101】
このとき、空気量は、許容最大液量を供給した時に、所望の液滴粒径になるように供給空気量を調整する。これにより最大噴霧液量以下では液滴径は最大噴霧水量時よりも小径化するため、良好な条件を得ることができる。
【0102】
また、前記加圧器29に加えて、或いは別設の加圧器29を設けない代わりに、以下のような構成にすることもできる。
【0103】
給気手段12は、前記圧縮機1の中間段から抽気して前記噴霧ノズル11とを連絡する経路、或いは圧縮機1から吐出された圧縮空気の流れる経路から分岐して前記噴霧ノズル11とを連絡する経路を備える。該経路には、加圧空気供給量の調節弁14bとを備える。噴霧を効果的にする等の要請に応じて、圧縮空気を所望の温度にする冷却器19を有することができる。
【0104】
これにより加圧器29と共に配置する場合は、まず、中間段からの抽気或いは吐出空気を使用し、不足分を加圧器29からの圧縮空気を利用することにより、別設の加圧器29の動力を低減できる。また、加圧器29の代わりに本構成にする場合は設備の簡素化を図ることもできる。
【0105】
また、圧縮機1の中間段もしくは吐出された圧縮空気を、前述のように液滴の微粒化させるために供給する構成においては、プラント起動の過程や外気温が極端に低い場合に、給気のみを供給することにより、前者ではNOxの排出量を抑制した運転が可能となり、後者では吸気温度を上昇でき、氷結を防止できる運転ができる。
【0106】
具体的には、前記調節弁14bを備えた構成においては、調節弁15を閉じ、調節弁14bだけを開けて所望の量だけ吸気に噴出させる。
【0107】
噴霧ノズル11から供給することにより吸気に均一に噴出でき、吸気の温度分布を均一化できる。
【0108】
第3の実施例を図1を用いて説明する。
【0109】
第3実施例は、第1の実施例又は第2の実施例に対して、更に、タービン2の排気部に水分回収装置31を設置し、排気中の水分を回収し噴霧水として再利用すべく、水分回収装置31で回収した水分を給水タンク17に供給する経路を備えている点が主に相違する。
【0110】
回収装置は、冷却による水蒸気の凝縮あるいは物理吸着など種々の原理を利用した装置を適応できる。
【0111】
吸気6は、ルーバ9を通過して吸気室10に至り、前記水分回収装置で回収した水は一旦給水タンクに貯められた後、所定開度にした調節弁15を通り給水手段13を経て噴霧ノズル11から微細液滴が噴出される。微細液滴を噴出するのに給気手段12からの給気が必要な場合は、併せて調節弁14を所定の開度にして噴霧液滴の粒径を調整する。吸気6は液滴を含んで噴霧流を形成し、一部が蒸発して吸気を冷却したのち圧縮機1に流入する。吸気に含まれる液滴は、圧縮機1の内部で気化し、圧縮空気を冷却する。
【0112】
圧縮機1内で液滴が実質的に気化した後、圧縮空気は燃焼器5で燃料と混合して燃焼し、高温高圧のガスとなってタービン2に流入し仕事をする。発電機3で機械エネルギーが電気エネルギーに変換され、送電端4に給電される。仕事を終えた排ガスである排気7は、スタック8から大気に放出される。
【0113】
第3の実施例により、前記ガスタービン出力の向上及びガスタービンの熱効率向上の効果の他に、水を有効に利用することができ、水の節約ができる。
【0114】
尚、排熱回収ボイラ30を有するガスタービンプラントにあっては、前記水分回収装置31を排熱回収ボイラ30の出口に配置することにより、水の回収効率を向上することができる。
【0115】
第4の実施例を図1を用いて説明する。
【0116】
第4の実施例は、第1の実施例又は第2の実施例に対して、燃焼器5の燃料を液化天然ガス(LNG)としている点が特徴である。このため、第1の実施例或いは第2の実施例の構成に加えて、冷熱源としての役割も有する液化天然ガス貯蔵部33を配置し、水分回収装置31として、天然ガス貯蔵部33から供給される天然ガスを昇温して気化する熱交換器32、気化した天然ガスを燃焼器5に導く通路34を備えている。前記熱交換器32はガスタービンの排ガスを利用するよう設置されている。
【0117】
さらに、前記熱交換器32では排気中の水分を回収する。そして、排気中の水分を回収し噴霧水として再利用すべく、熱交換器32で回収した水分を給水タンク17に供給する経路を備えている。
【0118】
ここで、前記実施例同様の運転を行うことにより、前記ガスタービン出力の向上及びガスタービンの熱効率向上の効果の他に、LNG気化設備が不要となり、水も回収できるという効果が生じる。未利用エネルギーの有効活用にもなる。
【0119】
第5の実施例を図1を用いて説明する。本実施例は、吸気への水噴霧と吸気冷却設備を組み合わせたガスタービンである。
【0120】
第5の実施例は、前記第1の実施例又は第2の実施例に対して、更に、外部冷熱源36に接続された空気冷却器35がルーバ9の背面に追設され、冷熱媒体がポンプ42により循環するよう構成されたものである。空気冷却器35は、ルーバ9の前面に配置することもできる。
【0121】
吸気6は、ルーバ9を通過して吸気室10に至り、空気冷却器35を経ることにより冷却され、給水タンク17の水が所定の開度の調節弁15を通り、給水手段13を経て噴霧ノズル11から微細液滴が噴出される。微細液滴を噴出するのに給気手段12からの給気が必要な場合は、併せて調節弁14を所定の開度にして噴霧液滴の粒径を調整する。吸気6は液滴を含んで噴霧流を形成し、一部が蒸発して吸気を冷却したのち圧縮機1に流入する。吸気に含まれる液滴は、圧縮機1の内部で気化し、圧縮空気を冷却する。
【0122】
圧縮機1内で液滴が実質的に気化した後、圧縮空気は燃焼器5で燃料と混合して燃焼し、高温高圧のガスとなってタービン2に流入し仕事をする。発電機3で機械エネルギーが電気エネルギーに変換され、送電端4に給電される。仕事を終えた排ガスである排気7は、スタック8から大気に放出される。
【0123】
本設備では、実施例1で得られるガスタービンの出力向上及びガスタービンの熱効率向上の効果に加えて、吸気冷却により吸気重量流量を増し、水噴霧で圧縮機1の仕事を低減することによる相乗効果で出力増を図るものである。典型的には、空気冷却器35の容量を吸気冷却が効率的に動作できる露点まで冷却できるものとすることにより、水を節約しながら大きな増出力を得ることができる。本実施例は、夏期に渇水が予想される地域への適用に有利である。
【0124】
第6の実施例を図2を用いて説明する。第6の実施例は、第1の実施例又は第2の実施例に対して、具体的に、噴霧ノズル11の位置を吸気室のルーバ9よりに位置したことを明確に示したものである。図2は、噴霧ノズル11の位置について、より理解容易に示したものである。図2は加圧吸気を供給する給気手段 12を備えた構成を記載しているが、前述の所望の液滴が得られるのでれば、実施例1のよう給気手段12を備えなくともよい。
【0125】
圧縮機1内に流入前に気化を促進し、吸気を冷却する効率を高めるという観点では、このように圧縮機1の入口から離して噴霧ノズル11を配置することが好ましい。
【0126】
詳細に説明すると、噴霧ノズル11は、以下のいずれかの位置(11a又は 11b)に配置されることが適当である。
【0127】
1.吸気室10にサイレンサ41を備える場合
(1)サイレンサの下流側に噴霧ノズル11a配置する。
【0128】
これにより、サイレンサによる防音材の濡れを防止することもできる。圧縮機に導入するまでに、液滴が気化する飛距離を考慮して圧縮機までの距離をとって設置されることが好ましい。
【0129】
(2)又は、サイレンサの上流側に噴霧ノズル11bを配置する。
【0130】
例えば、吸気室内のルーバ9の近傍の下流側に配置することにより、圧縮機内に入るまでに吸気中の水滴の分布をより均一化できる。また、ルーバ9部分がその下流の吸気室10より広くなっている場合等においては、当該ノズル11の設置或いはメンテナンスが容易である。
【0131】
2.吸気室10にサイレンサを備えない場合
ルーバ9と圧縮機1入口との間に位置する。圧縮機に導入するまでに、液滴が気化する飛距離を考慮して圧縮機までの距離を設置されることが好ましい。
【0132】
吸気6は、ルーバ9を通過して吸気室10に至り、サイレンサがある場合はサイレンサを通過し、給水タンク17の水が所定の開度の調節弁15を通り、給水手段13を経て噴霧ノズル11から微細液滴が噴出される。微細液滴を噴出するのに給気手段12からの給気が必要な場合は、併せて調節弁14を所定の開度にして噴霧液滴の粒径を調整する。吸気6は液滴を含んで噴霧流を形成し、吸気を冷却したのち圧縮機1に流入する。吸気に含まれる液滴は、圧縮機1の内部で気化し、圧縮空気を冷却する。
【0133】
これにより、吸気冷却による吸気重量流量の増大と圧縮機仕事の低下の2つの原理の相乗効果により、ガスタービンの出力回復をより効率的に行える。
【0134】
具体的には、噴霧ノズルの配置を吸気室内で、圧縮機入口から適当な距離ほど離れた所にすると、噴霧水の一部が気化し湿球温度付近まで吸気を冷却するので、吸気流路に空気冷却器を設置した場合と程度の差こそあれ同様の効果が生じる。圧縮機1の内と圧縮機1の外との両方で圧縮機1の作動流体を効果的に冷却でき、圧縮機入口近傍に噴霧ノズル11を配置する場合より距離をおいた方が増出力が大きくできる。
【0135】
図5,図6は、外気が圧縮機1に導かれて圧縮される過程での作動流体の状態変化、並びに吸気温度と吸気重量流量との関係をそれぞれ示している。
【0136】
図5は、外気条件を30℃,70%湿度(R.H.)とした場合の状態変化を示している。
【0137】
外気状態は点Aで示されている。圧縮機に流入する前までに外気の状態が等湿球温度線に沿って加湿冷却され飽和湿り状態に至るとすると、圧縮機1入口では吸気が状態Bに移動する。前記液滴の噴霧によって圧縮機1内に導入する気体の湿度は、圧縮機導入前の気化を大きくする観点からは、90%以上程度に上昇することが好ましい。より吸気の冷却を図る観点からさらに95%以上にすることが好ましい。吸気室10内で気化しなかった液滴はBからCの圧縮過程で連続気化する。気化の過程が飽和状態を保つと仮定すると状態Cで沸騰は完了し、CからDに至る過程では単層圧縮過程に入り昇温する。気化が等エントロピ変化と仮定すると沸騰終了点は状態C′の過飽和状態に至る。実際には、液滴からの気化速度は有限であるから状態変化は熱的に非平衡であり飽和線からずれて破線の軌跡を辿るものと考えられる。これに対し、通常の圧縮過程は状態がAからD′の軌跡を辿る。
【0138】
図5では、Aでの温度をT1としBでの温度をT1′とすると、温度がT1からT1′に低下することによる吸気流量増大は、図6に模式的に示してあるようにWからW′へ増加する。残りの液滴は、圧縮機1内に導入されて気化することにより圧縮機1の仕事低減に寄与する。
【0139】
図9は、水滴噴霧量とガスタービン出力の増加率との関係を示す。図9(a)は吸気温度に対する出力相対値の変化を示し、図9(b)は噴霧量と増出力との関係を示す。
【0140】
例えば、計算条件は、外気条件35℃,53%相対湿度,圧縮機風量特性を 417kg/s,圧縮機ポリトロープ効率を0.915,タービン断熱効率を0.89,燃焼温度を1290℃,圧縮機抽気量を20%,吐出圧力を1.48MPa ,気化段落圧力0.25MPa としたときの値である。常温水を噴霧すると、吸気流量の0.35% は、圧縮機に流入する前に吸気室の中で気化している。このために、吸気温度が低下し空気の密度が高くなる結果、圧縮機の吸込空気重量流量は数%増し、ガスタービンの増出力に寄与する。噴霧水の残りは、気流に同伴して液滴のまま圧縮機に吸引され内部で気化して、圧縮機の仕事低減に寄与する。
【0141】
2.3%噴霧時の熱効率向上率は相対値で2.8%である。ガスタービン出力を5℃ベースロード運転時の出力まで回復するのに必要な消費水量は吸気重量流量の2.3wt% 程度である。このようにガスタービン出力を最大値まで回復する運転を行った時の増出力の内訳は、圧縮機1に入るまでの冷却に基づくものは約35%、圧縮機内部気化による冷却に基づくものは約37%、タービンと圧縮機内を通過する作動流体量の差、および水蒸気を含むことによる低圧比熱の増大に基づくものは約28%と概算された。
【0142】
図のスケールに記載していないが、さらに噴霧水量を増加して、5wt%程度の噴霧流量で認可出力レベルまでの増出力が得ることもできる。噴霧量が増大する程、圧縮機1外の作用(冷却作用)より、圧縮機1内での水滴の気化作用が出力増加に大きく影響している。
【0143】
また、図12は噴霧量に対する噴霧前後の圧縮機出口温度差との関係を示す。圧縮機1に入る前での気化・冷却が小流量で効率良く行えることが分かる。圧縮機1入口に流入する吸気の到達湿度は約95%付近であった。実線は圧縮機1内に流入した液滴が全量気化したものと仮定して求めた圧縮機1の出口ガスの絶対湿度と圧縮機1の出口ガスエンタルピが噴霧前の値に等しいという2つの条件から算出した圧縮機1の出口ガス温度と噴霧前の温度との差を示している。この線は動力低減がないとした場合のものである。しかし、白丸(理解容易のため破線を引いた)で示した現実の値はこれを上回っており、動力低減が実在している。これは、気化による温度降下量が気化点以降の段落での圧縮過程で増幅することによる。
【0144】
このことからも、前記噴霧ノズル11により圧縮機1に導入された液滴は後段側での気化量より前段側での気化量を大きくすることが好ましく、圧縮機1に導入された液滴は前段側で主に気化させることにより、動力低減上有効であると考えられる。
【0145】
液滴は、圧縮機1から吐出される圧縮空気の温度を噴霧前より5℃以上低下させる程度噴霧する。より出力増加を図る観点からは、25℃以上低下させる程度にする。尚、上限は、実用的見地から定めることができる。例えば、50℃以下にすることが妥当である。
【0146】
第7の実施例を図1を用いて説明する。
【0147】
第7の実施例は第1の実施例又は第2の実施例に対して、噴霧水滴の温度を制御できる機構を備えた点が相違する。
【0148】
第7実施例においては、例えば、コンバインドプラントであり、前述のガスタービンの構成に加えて、タービン2排ガスを熱源とする排熱回収ボイラ30が設置されている。また、図示していないが、排熱回収ボイラ30の発生蒸気により駆動する蒸気タービンを備える。また、少なくとも、ガスタービン或いは蒸気タービンにより駆動される発電機を備える。給気手段12は排熱回収ボイラ30で生じた蒸気を噴霧ノズル11に供給する経路を備え、その経路には調節弁14cを配置している。
【0149】
吸気6は、ルーバ9を通過して吸気室10に至り、給水タンク17の水が所定の開度の調節弁15を通り、給水手段13を経て噴霧ノズル11から微細液滴が噴出される。このとき、蒸気供給量を、調節弁14cにより調節する。
【0150】
又、併せて圧縮空気を噴霧ノズル11に供給する場合は、更に、該加圧器29から噴霧ノズル11への経路にある調節弁14aにより圧縮空気量を調整することができる。
【0151】
これにより、加熱温度が調整できるので、噴霧液滴の温度等を調整する。吸気6は所望の温度の液滴を含んで噴霧流を形成し、吸気を冷却したのち圧縮機1に流入する。吸気に含まれる液滴は、圧縮機1の内部で気化し、圧縮空気を冷却する。
【0152】
本実施例により、実施例1のガスタービンの出力向上及びガスタービンの熱効率向上ができることに加えて、噴霧液の温度を調節することにより、液滴の気化速度を制御することができる。水温を上昇すれば液滴の気化は圧縮機の前段側にシフトさせることができる。これにより圧縮機1の仕事量をより低減できる。条件によっても、噴霧する水滴温度は変動するか、実用的には、10〜80℃が適正な範囲である。水温を制御する方法としては、蒸気を噴霧ノズルに混入させる方法の他、圧縮機の抽気ガス温度の調節や、給水手段13の適切な所にヒータ 51のような温度制御手段を備えて制御する方式をとることもできる。
【0153】
前記空気の給気手段12を設けない場合はヒータ51を設けることが有効である。図の蒸気を供給する方法においては、コンバインドプラント、特にコジェネプラントにおいて、水蒸気を有効活用できるため効果的である。別設の加熱手段等を配置しなくても排熱回収ボイラ30の蒸気を利用できるため、有効である。尚、別設の蒸気発生手段を備えてもよい。
【0154】
或いは、可燃性で蒸気分圧の大きい液体を噴霧水に混入しても効果的である。たとえば、水とアルコールとの混合液等を噴霧ノズル11から噴出するようにする。例えば、不凍液を用いる。グリセリンやエチレングリコールを水に添加して噴霧を形成すると低温で揮発するために圧縮機動力の低減効果が大きい、又、氷点が下がるので冬場等にも液滴の氷結の心配がない。
【0155】
具体的構成としては、冬場等の時期になったら、給水タンク17にグリセリンやエチレングリコールを添加して、混合液として備えておくことができる。
【0156】
第8の実施例を図1を用いて説明する。本実施例のガスタービンは、部分負荷時においても熱効率を向上させることができるものである。
【0157】
第8の実施例は、第1の実施例又は第2の実施例に対して、圧縮機1に導入される吸気に蒸気を供給するようにした点が主な相違点である。
【0158】
具体的には、前記排熱回収ボイラ30で生じた蒸気を給気手段12に供給する経路を備え、前記噴霧ノズル11から供給した蒸気を噴出できるように構成されている。
【0159】
吸気6は、ルーバ9を通過して吸気室10に至り、調節弁15を閉じ、排熱回収ボイラ30で生じた蒸気を、所定の開度の調節弁14cから給気手段12を経て噴霧ノズル11から噴出させる。仮に、給気手段12がなく、給水手段13しかない場合は、図示していないが、給水タンク17からの給水に代えて、前記水蒸気を給水手段13から噴霧ノズル11に供給できるよう構成してもよい。或いは、図示していないが、噴霧ノズル11の他に排熱回収ボイラ30で生じた蒸気が供給される別設の蒸気供給用ノズルを配置してもよい。尚、吸気に噴出させる蒸気量や温度等は、蒸気源によっても異なるが、圧縮機1に入る目標の吸気温度により調整するようにする。
【0160】
所望の温度になった吸気6は圧縮機1に流入される。
【0161】
第8の実施例により、部分負荷運転の熱効率向上方法として以下を挙げることができる。
【0162】
例えば、冬場等において、電力需要が少なく部分負荷運転をせざるをえない状況になったとき、前記のように吸気に蒸気を噴出させることにより、例えば吸気温度が10℃程度であったものを、50℃程度に上昇させて圧縮機1に供給することができる。
【0163】
圧縮機の入口に水蒸気を噴出することにより、吸気温度を上昇できるので、空気の密度が下がり圧縮機の吸込空気重量流量が低減するので、熱効率が低下することを抑制しつつ、ガスタービン出力を低減できる。ガスタービンの部分負荷運転を避け、ベースロード運転をすることができるからである。
【0164】
本実施例は、要求負荷が低下し、出力を下げる場合であっても、IGV調節等による従来の部分負荷運転操作法よりも熱効率が高い運転ができるので季節によりデマンドが小さくなった時に有効である。特に、コンバインドサイクルプラントやコージェネレーションプラントの様に、ガスタービン排ガスで蒸気を生成するプラントでは、余剰蒸気を発電に寄与させることができるので、余剰蒸気の有効利用もできる。
【0165】
尚、場合によっては、排熱回収ボイラからの蒸気でなく、別設の蒸気発生手段を設けていてもよい。
【0166】
第9の実施例を図1を用いて説明する。
【0167】
本実施例は、第1の実施例又は第2の実施例に対して、更に、圧縮機の中間段に加圧空気を送気するノズル等の手段を備えたものである。
【0168】
第9の実施例は前記第1実施例と基本的構成は同様なものを適用できる。圧縮空気源43から供給される圧縮空気を圧縮機1の途中段に送気するライン59には流量調節弁47が設けられている。圧縮空気は、圧縮空気源43から供給される。この圧縮空気源43は、外部設置の圧縮機や燃料噴射用のアトマイズ圧縮機から供給できる。あるいは、効果は若干劣るが、圧縮機1の吐出部から空気を環流してもよい。この場合、送気の温度は低い方が高効率なので、送気ライン59の途中に冷却手段48を設けることが望ましい。
【0169】
圧縮機1内で液滴37が気化して空気を冷却すると、空気の密度が高くなるので、軸流速度46が低下する。このため、図10に示すように速度3角形が歪み、翼45への空気流が46aから46bのように入射角が設計値からずれ、翼面に沿って流れがはく離するので、圧縮機1の断熱効率が低下する。断熱効率が低下すると、圧縮機1の吐出温度が上昇するので、結果的に圧縮機仕事の低減効果が小さくなる。この現象は、噴霧水量が多いほど顕著になると考えられるから、実際面では、噴霧量に制限が加わることになる。これを解消するには、圧縮機1に送気することにより、軸流速度を回復すれば良い。送気の位置は、水滴の気化がほぼ完了する所が効果的である。噴霧量が変化しても軸流速度が設計値に保持される様に、この送気量は、噴霧量の関数としておくことが望ましい。
【0170】
負荷要求信号25を基にした目標出力の増加に対応して、関数発生器24からの指令信号により水量の調節弁15の開度を増加し、流量調整弁47の開度を増加する。
【0171】
前記調節弁15からの供給水量と流量調整弁47からの供給圧縮空気量とは、単調増加関数の関係とすることができる。
【0172】
出力減少時には前記各々の弁開度を減少させるように制御する。
【0173】
このようにすると、噴霧量に対する制約が緩和されると共に、断熱効果の低下をきたさないために単位空気流量当りの圧縮機動力低減幅が大きくなる。さらに、送気による作動流体の増加で、ガスタービンの増出力も大きくなるという効果も生じる。
【0174】
本発明の第10の実施例を図3を用いて説明する。
【0175】
本実施例は、圧縮機1の抽気をタービン翼内に構成されている冷却流路に供給してタービン翼を冷却するタイプのガスタービンについて、前記圧縮機の抽気の温度に対応して、前記抽気流量を制御するものである。
【0176】
タービン翼を冷却する圧縮機1の途中段に圧縮空気を送気する代わりに、タービン翼を冷却するために設けてある圧縮機1の抽気ライン56からの抽気量を、抽気ガスの温度低下に見合って減少させることで、実質的に抽気段以降の流量を増すことができる。
【0177】
このため、抽気ライン56に流量調節弁55もしくは中間開度付の電動弁が設けられている。
【0178】
圧縮機1内で水滴が気化して空気を冷却すると抽気の温度も低下するために、タービンの翼を冷却するための圧縮機抽気の所要風量が少なくて済む。抽気温度を検出する温度検出器57の温度信号を基にした目標抽気量の減少に対応して中期量制御関数発生気58からの指令信号により抽気量の調節弁55の単調減少関数の関係とすることができる。
【0179】
中間開度付きの電動弁を用いる場合は、抽気温度が設定値に到達した時に温度に応じて予め定められた値に弁の開度を調節する。
【0180】
抽気量を減少することで抽気点以降の段落の圧縮機風量を増加できるので、軸流速度が回復し圧縮機の断熱効率が向上し、圧縮機出口のガス温度が低下して、単位風量当たりの圧縮機の動力が低減する。また、タービンに供給される風量が増すので軸出力が増す。これらの作用により出力と熱効率の両方がさらに向上する。
【0181】
前記ガスタービンに関する実施例に関しては、前記ガスタービンを使用し、さらに、前記タービンからの排ガスを熱源として蒸気を発生する排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラの発生蒸気により駆動される蒸気タービンと、を備えたコンバインドサイクルプラントにおいても適応することができる。
【0182】
これにより、前記のような実用に適する簡単な装置によって、コンバインドサイクルプラントの出力向上及び熱効率向上を図ることができる。
【0183】
また、前記各実施例については、圧縮機単体として見ても、圧縮機の所要動力を低減することを、簡便な装置によって実現することができる。
【0184】
具体的には、前述のような微細液滴を圧縮機入口の供給される吸気に噴霧して、圧縮機内で気化させると、前述の以下の主な効果を得ることができる。この場合吸気として圧縮機に流入する気体としては、空気の他、アンモニアやフロン等に適応できる。又噴霧する液滴としては、空気の場合は前述のガスタービンの例に示したように水等を適応できる。アンモニアを吸気とする圧縮機の場合は液体アンモニア,フロン系ガスを吸気とする場合は、液体フロンを噴霧することができる。
【0185】
圧縮機内に入る吸気に液滴と噴霧を含ませない場合と比べ、圧縮機1入口に入るまでに一部が気化して吸気を冷却すると共に、圧縮機入口部から水滴が連続的に気化させることができるので、圧縮機内の気体温度は連続的に低下する。また、吐出温度も低下する。さらに、圧縮機内に導入された液滴が圧縮機内で気化することにより重量流量が増加し、圧縮機内でほぼ気化が終了すると、圧縮機内の気体は断熱圧縮を受け、作動流体として増したのと同様の効果がある。噴霧量を増加させるとそれに伴い圧縮機動力比(ドライ空気の等エントロピ圧縮仕事/液滴の気化を含む等エントロピ二相圧縮過程における圧縮仕事)もより低減できる。
【0186】
さらに、前述の各実施例については、ガスタービンの圧縮機の吸気に液滴を噴霧する液滴噴霧装置として見ても、同装置を備えたガスタービンの出力向上及び熱応力向上を簡便な装置で実現することができるものである。
【0187】
【発明の効果】
本発明によると、実用に適する簡単な設備によって、吸気室内に液滴を噴霧して、温度を低下させた吸気室内の空気と共に液滴を圧縮機内に導入し圧縮機内を流下中に気化させることができ、出力の向上と熱効率の向上の双方を実現できるガスタービン及びそのための液滴噴霧装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の概要図。
【図2】本発明の一実施例を示す図。
【図3】本発明の一実施例を示す図。
【図4】圧縮機内の圧縮空気の温度分布を示す図。
【図5】圧縮過程における空気温度と絶対湿度の関係を示す図。
【図6】吸気温度と吸気重量流量の関係を示す図。
【図7】本発明と他の方法との熱サイクル図の比較。
【図8】ガスタービンの詳細構造図。
【図9】水滴噴霧量とガスタービン出力の増加率との関係図。
【図10】軸流速度と速度三角形の関係。
【図11】噴霧ノズルの吸気室内の配置の概略図。
【図12】噴霧前後の圧縮機出口温度差の概略図。
【符号の説明】
1…圧縮機、2…タービン、3…発電機、4…送電端、5…燃焼器、6…吸気、7…排気、8…スタック、9…ルーバ、10…吸気室、11…噴霧ノズル、 12…給気手段、13…給水手段、14,15…調節弁、16…給水ポンプ、 17…給水タンク、19…冷却器、20…吸気温度、21…圧縮機出口空気温度、22…燃焼温度、23…排気温度、24…関数発生器、25…負荷要求信号、29…加圧器、30…排熱回収ボイラ、31…水分回収装置、32…熱交換器、35…空気冷却器、36…外部冷熱源、37…液滴、48…冷却手段。
Claims (6)
- 供給された空気を圧縮して吐出する圧縮機と、
前記圧縮機から吐出した空気と燃料とを燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器で燃焼した燃焼ガスにより駆動されるタービンと、
前記圧縮機の上流側に配置され、前記圧縮機に空気を供給する吸気室と、
前記吸気室内を流れる空気に微細水滴を噴霧する液滴噴霧装置とを有し、
前記液滴噴霧装置は、
前記吸気室内に配置され微細水滴を噴霧する液滴噴霧ノズルと、該液滴噴霧ノズルに給水する給水手段とを備え、前記液滴噴霧ノズルから前記吸気室内に噴霧される水滴の一部が前記圧縮機に流入する前に前記吸気室内で気化して前記吸気室内の空気の温度を外気温度より低下させると共に、前記水滴の残りが前記温度を低下させた空気と共に前記圧縮機内に流入し前記圧縮機内を流下中に気化して圧縮空気を冷却し得るようにしたことを特徴とするガスタービン。 - 供給された空気を圧縮して吐出する圧縮機と、
前記圧縮機から吐出した空気と燃料とを燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器で燃焼した燃焼ガスにより駆動されるタービンと、
前記圧縮機の上流側に配置され、前記圧縮機に空気を供給する吸気室と、
前記吸気室の上流に配置されたルーバと、
前記吸気室内を流れる空気に微細水滴を噴霧する液滴噴霧装置とを有し、
前記液滴噴霧装置は、
前記ルーバの下流側で前記吸気室内に配置され微細水滴を噴霧する液滴噴霧ノズルと、該液滴噴霧ノズルに給水する給水手段とを備え、前記液滴噴霧ノズルから前記吸気室内に噴霧される水滴の一部が前記圧縮機に流入する前に前記吸気室内で気化して前記吸気室内の空気の温度を低下させると共に、前記水滴の残りが前記温度を低下させた空気と共に前記圧縮機内に流入し前記圧縮機内を流下中に気化して圧縮空気を冷却し得るようにしたことを特徴とするガスタービン。 - 請求項1又は2において、前記タービンから出る排ガス経路に、該排ガス中に含まれる水分を回収する水分回収手段が配置され、該回収された水分を前記液滴噴霧ノズルに供給するようにしたことを特徴とするガスタービン。
- 請求項1又は2において、前記液滴噴霧ノズルに供給される水の供給経路に該水の温度を調節する温度調節装置を備えたことを特徴とするガスタービン。
- 請求項1又は2において、前記圧縮機の中間段に加圧気体を供給する加圧気体供給手段を備えたことを特徴とするガスタービン。
- 供給された空気を圧縮して吐出する圧縮機と、前記圧縮機から吐出した空気と燃料とを燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器で燃焼した燃焼ガスにより駆動されるタービンと、前記圧縮機の上流側に配置され、前記圧縮機に空気を供給する吸気室と、前記吸気室の上流側に配置されたルーバを有するガスタービンの前記圧縮機に供給される空気に微細水滴を噴霧する液滴噴霧装置において、
前記液滴噴霧装置は、
前記ルーバの下流側で前記吸気室内に配置され微細水滴を噴霧する液滴噴霧ノズルと、
該液滴噴霧ノズルに給水する給水手段とを備え、
前記液滴噴霧ノズルから前記吸気室内に噴霧される水滴の一部が前記圧縮機に流入する前に前記吸気室内で気化して前記吸気室内の空気の温度を低下させると共に、前記水滴の残りが前記温度を低下させた空気と共に前記圧縮機内に流入し前記圧縮機内を流下中に気化して圧縮空気を冷却し得るようにしたことを特徴とする液滴噴霧装置。
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