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JP3564663B2 - ドーム型スピーカの製造法 - Google Patents

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JP3564663B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、カーステレオなどに使用されるドーム型スピーカ、より詳しくは、金属などの通気性のない所謂ハードタイプのダイアフラムを使用したドーム型スピーカにあっても、聴感上の音質が劣化することのない品質のよい、また生産性のよいドーム型スピーカの製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
Hi−Fi用のツイータとして使用されるドーム型スピーカの多くは、例えば、図5に示すように、センターポール5aを有するボトムヨーク5上にリング状のマグネット4を固定するとともに、このマグネット4上にトッププレート3を固定し、さらに、このトッププレート3上にフレーム7をビス等によって固着する。ついで、このフレーム7の中央部に配設した、ドーム状のダイアフラム1の内側に設けたボイスコイル2を、前記トッププレート3とセンターポール5aとの間に形成された磁気ギャップ内に臨ませたもので、前記ボイスコイル2に電流が流れると、電磁力が作用して電流の向きに応じてダイアフラム1が上下に振動するもので、このダイアフラム1は薄く、軽く、丈夫で折れ曲がらないことが求められている。
【0003】
このようなドーム型スピーカに使用されるダイアフラムは、例えば、ポリエステル布にポリウレタンを塗布した通気性を有する所謂ソフトタイプのものと、アルミニウム、チタンなどの薄い金属板を成形してなる、ハードタイプのものが多く用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
なかでも、非通気性のダイアフラムを使用したドーム型スピーカにあっては、ダイアフラム内部を含めた空洞部(キャビティ)、具体的には、センターポール5aの外周面とマグネット4の内周面との間に形成される隙間と、この隙間に連通するダイアフラムの内側に形成される隙間とで形成される空洞部が、ほぼ完全密封された状態となる。そのため、外気圧や外気温の変化、あるいはスピーカ使用時における発熱によって、さらには製造時における熱処理などによって、ダイアフラム内部において空気の膨張や収縮が生じてダイアフラム自体が変形する可能性があるという欠点があるので、一部のドーム型スピーカにおいては、前記空洞部内の空気を磁気回路部に形成した溝を利用して外部に逃がす手段が講じられている。
【0005】
しかしながら、前記のように、空洞部内の空気を、磁気回路部に形成した溝を利用して外部に逃がす手段は、スピーカを製造するには大きな隘路となるため、スピーカの生産性を損なうとともに、空気の流出入の調整が難しく、信頼性の点においても問題がある。
【0006】
この発明はかかる現状に鑑み鋭意研究の結果、ドーム型の振動板を構成するダイアフラム、又はダイアフラムの外周縁部に一体的に取付けられるエッジの一部に微小な径の孔を形成することによって、空気の流出入の調整と背圧の調整が簡単にできることを見出し、この発明を完成させた。
【0007】
この発明の目的は、空気の流出入の調整と背圧の調整が容易にでき、しかもダイアフラムのひずみ率を減少させた信頼性の高いドーム型スピーカの製造法を提供せんとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、この発明のドーム型スピーカの製造法は、
振動板を構成する非通気性のダイアフラム、又はダイアフラムに一体的に設けられた非通気性のエッジ部の所要部位に、あらかじめレーザの発振周波数によって発熱又は励起を促進させる物質を展着し、
当該物質の展着部にレーザ光を照射して、微小な径の通気孔を形成すること
を特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
この発明のドーム型スピーカの製造法は、図1に示すように、振動板を構成する非通気性のダイアフラム10、又は該ダイアフラム10と一体の非通気性のエッジ部11に、微小な径の通気孔12を、簡単かつ容易に設けることを最大の特徴とするものである。
【0010】
この発明のドーム型スピーカの製造法において、前記の非通気性のダイアフラム、又は非通気性のダイアフラムと一体の非通気性のエッジ部は、ダイアフラムを介して空気が内外に流通しないものであれば、その材質には特段の制限はなく、金属、合成樹脂、ゴムのいずれであってもよく、あるいは通気性材料からなるダイアフラム、もしくはダイアフラムと一体の通気性を有するエッジ部の表面及び/又は裏面に、ゴム又は合成樹脂をコーティングして非通気性としたものであってもよい。
【0011】
前記ダイアフラム10に形成する通気孔12は、当該通気孔の形成によってダイアフラムの外観を損なわず、かつ空気の流通がスムーズにできる程度の微小な径の孔であればよく、その大きさはおおむね径が1.5mm以下のものである。
【0012】
また、ダイアフラムに形成する通気孔の形状も、空気の流通がスムーズにできるものであれば、丸、楕円、三角、四角、ひし形など自由に選択することができるもので、なんら制限はないものである。
【0013】
かかる通気孔は、非通気性のダイアフラム、又は当該ダイアフラムと一体の非通気性からなるエッジ部の所要の部位に、針又はレーザビーム等を使用して開けることが可能であるが、この発明は、生産性の観点からレーザビームを使用して形成するものである
【0014】
なお、非通気性のダイアフラム10、又は当該ダイアフラム10と一体の非通気性からなるエッジ部11に針Nを使用して通気孔12を形成する場合、図2に示すように、所要の径の針Nをダイアフラム10に刺し通したとき、通気孔12の周縁部がダイアフラム10の裏側にバリとして顕出し、通気性を阻害するおそれもあるので、バリが生じた場合には、これを適宜な手段で除去するものである。
【0015】
この発明において、レーザビームを使用して、ダイアフラムに通気孔を形成するには、炭酸ガスレーザ方式あるいはYAGレーザ方式のいずれであっても使用することができるもので、具体的には、図3に示すような装置を使用することができる。
【0016】
すなわち、例えば、レーザビームLを照射するネオジム(Nd)を含むイットリウム−アルミニウム−ガーネット結晶を用いたレーザ発振器13と、このレーザビームLの照射方向を変化させる照射位置制御装置14と、照射方向が変化したレーザビームLの焦点を合わせるフィールドレンズ15と、このフィールドレンズ15に対向してダイアフラム10を保持する保持装置16、及びこれら全体を制御する制御装置(図示せず)などで構成したレーザ加工機17を使用してダイアフラム10に通気孔を形成するものである。
なお、前記の照射位置制御装置14の反射鏡14aはモータなどで回動自在に保持されている。
【0016】
このレーザ加工機17は、あらかじめ設定されたデータに従い、保持装置16に保持されたダイアフラム10の所要の部位に、レーザビームLを照射して通気孔を形成するものである。
【0017】
その際、レーザビームLを照射する部位にあらかじめ、発振波長(1.06μm)のYAGレーザを吸収し、発熱又は励起を促進させる物質を展着しておくことによって、レーザビームLを所要の部位に集光させ、ダイアフラム10の当該部位を瞬時に気化させて除去することができ、通気孔を形成したときに、その周縁部に生ずる溶融を抑え、レーザトリミングを容易にすることができる。
【0018】
なお、ダイアフラム10への通気孔の形成に際しては、通気孔を形成したい部位に、レーザによって発熱または励起を促進させるために展着させる物質としては、緑色又は緑色に近い色相を有する化合物、例えば、クロムまたはクロム化合物、及び銅又は銅系の化合物の微細な紛体を含有させた樹脂の被膜を形成しておくことが好ましい。
【0019】
また、かかるレーザ加工手段を用いると、組みあがったスピーカユニットにおけるダイアフラム、あるいは当該ダイアフラムと一体のエッジ部に対してもきわめて容易に通気孔を形成することができるものである。
【0020】
因みに、レーザ加工による孔開け時間は、直径0.4mmの通気孔を四つ形成するのに0.6秒で達成することができるのに対し、針による手作業で同様の通気孔を開ける場合は、約8秒とレーザビームで処理する場合に比べ、その処理時間の約10倍の時間が掛かることになり、レーザ加工手段を用いると、通気孔を形成するための作業時間を大幅に短縮することができる。
【0021】
【実施例】
図3に示すレーザ加工機17の保持装置16上に、半球状に成形したポリエステル布製の振動板主体の表面に、ポリウレタン樹脂を塗布して非通気性としたダイアフラムをセットし、レーザトリミングの条件を、平均レーザ出力46.8W、Qスイッチ周波数4,000Hz、ビームポジショナの移動速度30mm/secにして、レーザビームをダイアフラム10に当てることにより、レーザビームが当たった部分の周辺に余分なダメージを与えず、急速にダイアフラム10に直径0.4mmの通気孔を2つ形成した。
【0022】
このダイアフラム10は直径が25.4mmの大きさで、振動板主体はチタン製、エッジ部はエラストマーでいずれも当然のことであるが非通気性材料で、通気孔を形成する前のダイアフラムと間でスピーカのひずみ周波数特性を比較したところ、図4に示すように、直径0.4mmの2つの通気孔を形成したダイアフラムを使用したスピーカが、すべての周波数帯域においてひずみ率が改善されていることが明らかで、特に、200Hz以下の帯域では大幅に特性が改善されたことが分かる。
【0023】
【発明の効果】
この発明のドーム型スピーカの製造法は、振動板を構成する非通気性のダイアフラム又は、ダイアフラムと一体の非通気性のエッジ部に、レーザ光を照射して微小な径の通気孔を形成するので、音感のよい信頼性の高いドーム型スピーカを効率的に生産することができる。
【0024】
特に、通気孔を形成しようとする部位に、あらかじめレーザの発振周波数によって発熱又は励起する物質を展着することによって、レーザビームを集光させて、ダイアフラムを瞬時に気化し、通気孔を形成することができ、通気孔の周縁部の溶融を抑えレーザトリミングがし易くなる。
【0025】
また、この発明の方法によって得られたドーム型スピーカは、振動板を構成する非通気性のダイアフラム又は該ダイアフラムと一体の非通気性のエッジ部に、微小な径の通気孔を形成したので、ダイアフラムの装着によって磁気回路内に形成される空洞部が外部と連通し、密閉空間で生ずる空洞部内の気体圧の高まりを調整し、ひずみ率を減少させることによって聴感上の音質を改善し、また、ダイアフラムの変形対策とダイアフラムからの放熱効果を上げることによって耐入力を増大させ、信頼性の向上を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかるドーム型スピーカの製造法によって得られるダイアフラムの要部の拡大断面図である。
【図2】ダイアフラムに通気孔を形成する一手段の説明図である。
【図3】この発明にかかるドーム型スピーカの製造法に使用されるレーザ加工機の一例を示す説明図である。
【図4】この発明の製造法で得られたドーム型スピーカのひずみ周波数特性図である。
【図5】従来のドーム型スピーカの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
10 ダイアフラム
11 エッジ部
12 通気孔
13 レーザ発振器
14 照射位置制御装置
15 フィールドレンズ
17 レーザ加工機
L レーザビーム

Claims (5)

  1. 振動板を構成する非通気性のダイアフラム、又はダイアフラムに一体的に設けられた非通気性のエッジ部の所要部位に、あらかじめレーザの発振周波数によって発熱又は励起を促進させる物質を展着し、
    当該物質の展着部にレーザ光を照射して、微小な径の通気孔を形成すること
    を特徴とするドーム型スピーカの製造法。
  2. 前記ダイアフラム又はエッジ部は、
    その材質が金属、合成樹脂、ゴムのいずれかであること
    を特徴とする請求項1に記載のドーム型スピーカの製造法
  3. 前記ダイアフラム又はエッジ部は、
    通気性材料からなるダイアフラム、もしくはダイアフラムと一体の通気性を有するエッジ部の表面及び/又は裏面に、ゴム又は合成樹脂をコーティングして非通気性としたものである
    ことを特徴とする請求項1に記載のドーム型スピーカの製造法
  4. 前記物質は、
    緑色又は緑色に近い色相を有する化合物であること
    を特徴とする請求項1に記載のドーム型スピーカの製造法。
  5. 前記通気孔は、
    丸、楕円,三角、四角、ひし形のいずれか一つであること
    を特徴とする請求項に記載のドーム型スピーカの製造法。
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