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JP3553444B2 - 枚葉印刷機のシート案内装置 - Google Patents

枚葉印刷機のシート案内装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、枚葉印刷機の排紙部において、印刷を終えたシート(枚葉紙)を安定的に排紙テーブルへ移送・案内し排紙テーブル上で積重させるシート案内装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な枚葉印刷機、および、その排紙部にそなえられる一般的なシート案内装置の構成について、図5〜図8を参照しながら説明する。
ここで、図5は一般的な枚葉印刷機およびその排紙部の概略構成を模式的に示す側面図、図6は図5に示す枚葉印刷機の排紙部にそなえられる従来のシート案内装置の構成を模式的に示す側面図、図7は図6に示す従来のシート案内装置における真空車を示す縦断面図、図8は図7のVIII−VIII矢視拡大断面図である。
【0003】
図5に示すように、一般的な枚葉印刷機は、主なユニット(構成要素)として給紙装置(図示省略),印刷装置16,排紙装置4等をそなえて構成されている。各ユニットの機能について簡単に説明する。
給紙装置は、給紙テーブル(図示省略)上に被印刷物のシート(枚葉紙)1を積重され、このシート1を1枚ずつ順次次工程の印刷装置16へ供給する装置である。
【0004】
印刷装置16は、通常、墨,藍,紅,黄色等々のインキや、その他、特殊な色のインキでシート1に対する印刷を行なう複数組の印刷ユニット16a〜16n(図5では2組図示)を並設したものであり、インキの色毎に印刷ユニット16a〜16nをそなえている。
この印刷装置16において、前記給紙装置から連続的に供給されてくるシート1は、圧胴17や中間胴29に具備させた爪装置を用いて順次移送され、その途上において次々と必要な色のインキが転写され、多色印刷が施されるようになっている。
【0005】
この印刷装置16の各印刷ユニット16a〜16nでは、必要量のインキを、インキ装置(図示省略)で供給調整した後、版胴30に装着している刷版31へ供給し、刷版31の絵柄部分に転移したインキをさらにゴム胴32へ転写し、ゴム胴32外周面のインキをゴム胴32と圧胴17との間を搬送されているシート1へ転写することにより印刷を行ない、印刷終了後のシート1を下流の印刷ユニットもしくは排紙装置4へ移送するようになっている。
【0006】
排紙装置4は、エンドレスチェン18,爪装置19などからなるシート搬送部と、シート積重装置2とから構成されており、印刷装置16において印刷を完了したシート1は、最終印刷ユニット16nの圧胴17から従動軸(排紙軸)18aで駆動されているエンドレスチェン18に設備された爪装置(チェングリッパ)19により移送された後、シート積重装置2の排紙テーブル3上へ順次積重され、この排紙テーブル3上のシート1が設定した規定量(所定枚数)に至ると、束として外部へ搬出されるようになっている。なお、排紙テーブル3は、図示省略したモータによって駆動される昇降装置60を用いて、任意の位置に昇降・配置することができるようになっている。
【0007】
上記構成のもと、所定の印刷を終えたシート1は、最終印刷ユニット16nの圧胴17から回転走行するエンドレスチェン18のチェングリッパ19へ受け渡され、チェングリッパ19に把持された状態で排紙テーブル3上まで移送される。その後、シート1は、紙放しカム20により所定位置でチェングリッパ19から解放され、排紙テーブル3上へ落下積重されるようになっている。排紙テーブル3においては順次投入されるシート1によって最上面の高さが上昇するため、所定落差を維持すべく、排紙テーブル3は、昇降装置60によって連続的もしくは段階的に下降駆動されている。
【0008】
上記動作により、所定枚数のシート1が排紙テーブル3上に積重されると、シート投入部へ仕切り板(図示省略)を挿入し、後続するシート1をこの仕切り板上に積重させる。また、仕切り板を挿入すると同時に、昇降装置60により排紙テーブル3を急降下させ、最下降位置(二点鎖線で示す位置)において、フォークリフト等により最下段のパレット3aと共に積重したシート1を外部へ搬出する。
【0009】
続いて、空となった排紙テーブル3上に新しいパレット3aを載せた後、昇降装置60により排紙テーブル3を上昇させて初期位置に配置してから、前記仕切り板にて仮支持させておいたシート1を排紙テーブル3上へ受け渡し、シート積重装置2の稼働を再開する。
以後、上述と同じ動作を繰り返すことによって、シート1に対する印刷を連続的に実行することができるようになっている。
【0010】
ところで、シート積重装置2には、図5および図6に示すように、下流側上方において紙当て21が設けられており、チェングリッパ19に把持された状態で移送されて来たシート1は、紙放しカム20によりシート進行方向における適宜の位置でチェングリッパ19から解放されて落下する。そして、シート1は、紙当て21に当接しながらその前端が揃えられ、排紙テーブル3上へ積重される。
【0011】
このようなシート1の落下に際して、シート1の走行速度を制動し減速させることによって、シート1が紙当て21に激突する不具合を解消するとともに、落下するシート1の姿勢を制御する手段(シート積重装置2の排紙テーブル3上へ落下積重されるシート1の姿勢安定化手段)として、通常、シート積重装置2の上方入り口部には、真空車5がそなえられている。
【0012】
図6〜図8に示すように、真空車5は、シャフト33まわりに回転可能にそなえられており、シャフト33は、フレーム50(図9参照)に軸支され、モータ(図示省略)により回転駆動されるか、もしくは、枚葉印刷機の速度と連動して回転するようになっている。
この真空車5は、その外周面の全域に複数個の吸引孔34を穿設した外筒28を有し、この外筒28のフランジ部28aをシャフト33に対して固定することにより、シャフト33に取り付けられている。また、真空車5において、外筒28の内周側には、周面の一部をスリット状に切り欠いた切欠部35aを有する内筒35が嵌装・摺設されている。
【0013】
この内筒35は、その外周面を外筒28の内周面に対して摺接させるように配置されるとともに、軸受け35bを介してシャフト33の外周に装着されており、シャフト33および外筒28の回動に関係なく固定された状態となっている。この内筒35は、ブラケット36を介し切欠部35aを上にした状態で、真空車5に並設した横梁37に対して固定されている。なお、外筒28の周速度vは、シート1の走行速度vよりも遅く設定されている。
【0014】
また、内筒35の軸方向端部には、ブラケット36を介して配管11の一端側が連結されるとともに、この配管11の他端側は、ブロア13の空気吸引口に連結されている。従って、ブロア13を駆動すれば、内筒35の内部が負圧になり、切欠部35aの位置を通過する吸引孔34群から外部空気が吸入されるようになっている。なお、切欠部35aの位置を通過していない吸引孔34は内筒35外周面にてシールされる。
【0015】
一般的なシート案内装置は上述のごとく構成されたもので、シート1が剛性の低い薄紙である場合には、真空車5の吸引作用力によりシート1が引き付けられて外筒28の周面に沿うため、シート1が外筒28の吸引領域(図8参照)内の吸引孔34を塞いで十分に吸引され、抵抗力が高くなり十分な制動力をシート1に付加することが可能になる。
【0016】
しかし、シート1が剛性の高い例えば厚紙等である場合には、シート1がほとんど変形せず、外筒28の外周面に沿わせることができず、真空車5に接触したシート1の接線方向の前後に隙間が生じ、空気が漏れて吸引力が弱くなる。このため、シート1へ制動力が作用しなくなり、シート1の速度や姿勢の制御を行なえなくなるおそれがある。
【0017】
そこで、近年、図9〜図12に示すようなシート案内装置も提案されている。ここで、図9および図10は他の従来のシート案内装置の要部構成を示すもので、図9はその平面図、図10はその模式的な側断面図である。また、図11および図12はさらに他の従来のシート案内装置の要部構成を示すもので、図11はその平面図、図12はその模式的な側断面図である。
【0018】
図9および図10に示すシート案内装置においては、前述した真空車5のシート移送方向上流側に、真空車5に近接して圧縮空気ボックス(エアチャンバ)38がそなえられている。この圧縮空気ボックス38は、上表面に複数の空気吐出孔(ベルヌーイ孔)10を有しており、圧縮空気ボックス38の下端は、配管11,電磁弁39等を介してブロア13の吐出口へ連結されている。なお、空気吐出孔(ベルヌーイ孔)10は、横幅方向中心を基準として両外側方向へ空気を吐出するように形成・配置されている。
【0019】
一方、図11および図12に示すシート案内装置においては、前述した真空車5に代えて、前後一対のローラ40a,40b,エンドレスベルト41および空気吸引ボックス42がそなえられている。
前後一対のローラ40a,40bは、いずれも、フレーム50に対して回転可能にそなえられており、これらのローラ40a,40bには、エンドレスベルト41が巻回されている。
【0020】
また、空気吸引ボックス42は、その上側面をエンドレスベルト41の裏面(内側面)に接触させるようにして配置されている。
そして、エンドレスベルト41のベルト面には多数個の孔43が穿設されるとともに、空気吸引ボックス42の上側面にも複数個の空気吸引孔44が穿設されている。
【0021】
従って、外部空気は空気吸引ボックス42の空気吸引孔44とベルト41の孔43とが対応した状態において吸入され、走行するシート1を吸着し、このシート1に制動力を作用させることになる。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6〜図8に示した、真空車5だけをそなえたシート案内装置では、前述した通り、シート1が薄紙である場合には効果的に機能するが、厚紙1である場合には空気漏れが発生して減圧することができず、シート1を吸引する力が弱くなるため、シート1の速度を減速することができず、落下するシート1の姿勢制御が不可能であった。
【0023】
また、図9および図10に示した、圧縮空気ボックス38を付加したシート案内装置では、空気吐出孔10から吐出する空気流の作用により、薄いシート1に発生する皺を少なくする効果があるものの、図6〜図8に示した装置と同様、剛性の低い薄紙にしか対応できず、厚紙等には適応させることができないといった不具合があった。
【0024】
さらに、図11および図12に示した、エンドレスベルト41や空気吸引ボックス42等からなるシート案内装置では、孔43や空気吸引孔44から吸入する空気流の作用により、大きな制動力を作用させることが可能で、厚紙印刷の場合でも薄紙印刷の場合でも、吸引機能を十分に発揮することができる。
しかし、エンドレスベルト41は、構造上、柔軟性のある材質のものしか採用することができないため、一般に表面を研磨したクロムメッキに比べ滑らかでなく(荒い)、また、一般に摩擦係数が高いため、シート1とベルト41表面との速度差に伴うスリップによって、シート1の下面へ傷が入り易い。このため、図11および図12に示した装置は、裏面の傷が目立ちにくいか傷がついても構わない印刷物(シート1)にしか採用することができないといった課題があった。
【0025】
上述したように、従来のシート案内装置では、それぞれに長所と短所があり、薄紙から厚紙まで、つまり、多様な剛性をもつ種々シートの全般に亘って理想的(効果的)な姿勢制御を行なうには不完全なものであった。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、シートを傷付けることなく、薄紙から厚紙まで、多様な剛性をもつ種々のシートの全般に亘って効果的な姿勢制御を行なえるようにした、枚葉印刷機のシート案内装置を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の枚葉印刷機のシート案内装置は、枚葉印刷機の排紙部にそなえられ、印刷完了後のシートを排紙テーブルへ移送・案内し該排紙テーブル上で積重させるものであって、該排紙テーブルの上部であって該シートの移送方向上流側に配置され該シートの移送速度よりも遅い外周速度で回転駆動されながら該シートを吸引して該排紙テーブルへ移送・案内する真空車と、該真空車よりも該シートの移送方向上流側に、該真空車に隣接して配置され該シートを該真空車による吸引方向と同じ方向に吸引しうる複数個の空気吸引孔を有する空気吸引ボックスと、該空気吸引ボックスよりも該シートの移送方向上流側に配置され該シートに対し該シートの幅方向外側へ向けて空気を吐出し該吐出空気により負圧を形成しうる複数個の空気吐出孔を有する空気吐出ボックスと、該真空車および該空気吸引ボックスからの空気吸引と該空気吐出ボックスへの空気供給とを行なう吸引・吐出源とをそなえてなることを特徴としている(請求項1)。
【0027】
このとき、該空気吸引ボックスと該吸引・吐出源とを連通接続する吸引用配管に、該空気吸引ボックスによる空気吸引動作を行なう際に該吸引用配管を連通状態に切り換える吸引用切換弁を介装するとともに、該空気吐出ボックスと該吸引・吐出源とを連通接続する吐出用配管に、該空気吐出ボックスによる空気吐出動作を行なう際に該吐出用配管を連通状態に切り換える吐出用切換弁を介装してもよい(請求項2)。
【0028】
また、該空気吸引ボックスにおいて、該複数個の空気吸引孔を、該シートの幅方向に少なくとも一列形成してもよいし(請求項3)、該空気吸引ボックスにおいて、該複数個の空気吸引孔を、該シートの幅方向中央から両外側へ向かって斜めに、且つ、中央の空気吸引孔を該シートの移送方向最上流側に位置させるように配列してもよい(請求項4)。
【0029】
さらに、該空気吸引ボックスおよび該空気吐出ボックスを昇降駆動しうる昇降機構をそなえてもよい(請求項5)。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
〔1〕第1実施形態の説明
図1および図2は本発明の第1実施形態としての枚葉印刷機のシート案内装置の要部構成を示すもので、図1はその平面図、図2はその模式的な側断面図である。なお、本実施形態(第1〜第3実施形態)のシート案内装置も、図5にて説明した枚葉印刷機に適用されるものであり、図中、既述の符号と同一の符号は同一の部分もしくはほぼ同一の部分を示しているので、その説明は省略する。
【0031】
第1実施形態のシート案内装置も、シート積重装置2の排紙テーブル3上へ落下積重されるシート1の姿勢安定化手段として機能するもので、図6〜図8を参照しながら前述した真空車5を有している。
この真空車5は、前述した通り、排紙テーブル3の上部であってシート1の移送方向上流側に配置され、シート1の移送速度(印刷速度)よりも十分に遅い外周速度で回転駆動されながら、シート1を吸引して排紙テーブル3へ移送・案内するものである。なお、以下の説明中では、シート1の移送方向を、シート1の流れ方向として表記する場合もある。
【0032】
そして、第1実施形態のシート案内装置では、図1および図2に示すように、真空車5に加えて、この真空車5の上流側で且つ一対のフレーム50,50の間において、空気吸引ボックス7および空気吐出ボックス8を有するシート姿勢制御用の紙ガイド6が併設されている。この紙ガイド6は、真空車5の上流側において、シート1の移送方向に複数個(本実施形態では2個)の空間に分割され、それぞれの空間が、空気吸引ボックス7および空気吐出ボックス8として機能するようになっている。
【0033】
空気吸引ボックス7は、真空車5よりもシート1の移送方向上流側に配置され、シート1を真空車5による吸引方向と同じ方向(図2の下方向)に吸引しうる複数個の空気吸引孔9を有している。
本実施形態では、空気吸引ボックス7を真空車5にできるだけ近付けて(図1の寸法D参照)設置し、その空気吸引ボックス7の上表面には、空気吸引孔9が、シート1の流れ方向にできるだけ短い寸法(図1の寸法L参照)の範囲(図1に一点鎖線で示す矩形領域内)において、シート1の幅方向(シート1の流れ方向に直交する方向)に一列だけ形成されている。なお、空気吸引孔9は、上記矩形領域内に複数列そなえてもよい。
【0034】
さらに、空気吐出ボックス8は、空気吸引ボックス7よりもシート1の移送方向上流側に配置され、シート1に対しシート1の幅方向外側へ向けて空気を吐出しうる複数個の空気吐出孔10を有している。なお、図1に示す空気吐出孔10は、幅方向中央を中心として幅方向外側に向けて空気を噴出するようになっているが、図3(第2実施形態)に示すごとく、空気吐出孔10の向きを、シート1の流れ方向上流側に傾けてもよい。
【0035】
一方、図2に示すように、空気吸引ボックス7からの空気吸引を行なうべく、空気吸引ボックス7と吸引・吐出源であるブロア13の吸引口との間が吸引用配管11aにより連通接続されるとともに、空気吐出ボックス8への空気供給を行なうべく、空気吐出ボックス8と吸引・吐出源であるブロア13の吐出口との間が吐出用配管11bにより連通接続されている。なお、真空車5も、従来と同様、図1では図示省略の配管(図6や図7の符号11参照)を介して、ブロア13の吸引口に接続されている。
【0036】
そして、吸引用配管11aには、空気吸引ボックス7による空気吸引動作を行なう際に、吸引用配管11aを連通状態に切り換える三方電磁弁(吸引用切換弁)14が介装されるとともに、吐出用配管11bには、空気吐出ボックス8による空気吐出動作を行なう際に、吐出用配管11bを連通状態に切り換える三方電磁弁(吐出用切換弁)12が介装されている。吸引系の三方電磁弁14および吐出系の三方電磁弁12は、各々、独立して制御される。
【0037】
つまり、本実施形態において、空気吸引ボックス7による吸引のみをシート1に作用させる場合、三方電磁弁14は、ブロア13の吸引口と空気吸引ボックス7とを連通状態にするように制御されるとともに、三方電磁弁12は、ブロア13の吐出口と大気とを連通状態にするように制御される。
また、空気吐出ボックス8による吐出のみをシート1に作用させる場合、三方電磁弁12は、ブロア13の吐出口と空気吐出ボックス8とを連通状態とするように制御されるとともに、三方電磁弁14は、ブロア13の吸引口と大気とを連通状態にするように制御される。
【0038】
さらに、空気吸引ボックス7による吸引および空気吐出ボックス8による吐出の両方をシート1に作用させる場合には、三方電磁弁14は、ブロア13の吸引口と空気吸引ボックス7とを連通状態にするように制御されるとともに、三方電磁弁12は、ブロア13の吐出口と空気吐出ボックス8とを連通状態にするように制御される。
【0039】
なお、紙ガイド6の上面、特に空気吸引ボックス7の上面には、クロムメッキを施し、研磨するなどして、シート1が吸引され接触してもシート1に傷が入らないようになっている。
上述のごとく構成された第1実施形態のシート案内装置では、シート1を搬送し、排紙装置4のシート積層装置2(図5参照)に積層させる際に、次のごとく作用する。
【0040】
シート1は、印刷装置16からシート積層装置2へ搬送される際、シート1の前端をチェングリッパ19により把持された状態で印刷速度で搬送されてくる。そして、シート1がチェングリッパ19から解放されてシート積層装置2に落される直前に、シート1の速度を遅くするために、印刷速度(搬送速度)よりも遅い周速度で回転している真空車5により搬送中のシート1の後方を吸引してブレーキ力を作用させ、シート1の前端が放された時に、シート1が整然とした姿勢で落下するようにしている。これにより、シート1は、静かに紙当て21に当たり、排紙テーブル3上できれいに揃うようになる。
【0041】
このとき、第1実施形態のシート案内装置は次のように作用する。
先ず、薄いシート1に対して印刷を施す場合は、搬送姿勢がばたつくことが多く、その影響で排紙テーブル3上での揃いが悪くなることがあるので、空気吐出ボックス8を作用させて、空気の噴流により負圧を形成し、シート1を引き付け幅方向に広げて、シート1の搬送姿勢を良くする。
【0042】
薄いシート1の場合は、真空車5でブレーキをかけるだけで十分なブレーキ力を得ることができる場合があるので、状況に応じ、空気吸引ボックス7と空気吐出ボックス8との両方を動作させるか、空気吐出ボックス8のみを動作させるかを、三方電磁弁12,14によって切り換える。
また、厚いシート1に対して印刷を施す時は、シート1の搬送姿勢はあまり問題なく、ブレーキがかかりにくいので、空気吸引ボックス7による吸引力をブレーキ力としてシート1に作用させる。真空車5は円筒形であるため、厚いシート1は円形になじまず、真空車5の吸引孔34から大気が吸入されてしまい真空度が下がりブレーキがかかりにくくなる。しかし、本実施形態の空気吸引ボックス7において空気吸引孔9を設けた面は平面であるため、厚いシート1も確実に常時吸着することができる。
【0043】
ただし、シート1の後端が空気吸引ボックス7の空気吸引孔9の位置を通過してしまうと、大気を吸引するので真空度が下がり、ブレーキが効かなくなる。そこで、本実施形態では、空気吸引孔9をできるだけ真空車5に近付け、空気吸引孔9の領域幅“L”も小さくすることにより、より遅くまでブレーキ力をシート1に作用させることができる。従って、厚いシート1の印刷においても、排紙テーブル3上でのシート1の揃えが非常によくなる。シート1の搬送速度が高速になるほど、上述のような作用・効果が顕著に現れる。
【0044】
また、空気吸引ボックス7の上面を平滑にできるとともに、エンドレスベルトを用いないので、ブレーキをかけたときシート1に傷が入りにくいという効果もある。
このように、本発明の第1実施形態としてのシート案内装置によれば、薄いシート1に対する印刷を行なう場合には、シート1の搬送姿勢を整然と整えることができるので、排紙テーブル3上での紙揃えが良くなる。また、厚いシート1に対する印刷を行なう場合には、シート1に対するブレーキが良く効くので、やはり、排紙テーブル3上での紙揃えが良くなる。さらに、シート1にブレーキ力を作用させても、シート1に傷が入りにくい。
【0045】
つまり、第1実施形態のシート案内装置によれば、シート1を傷付けることなく、空気吸引ボックス7と空気吐出ボックス8とを制御することにより、薄紙から厚紙まで、多様な剛性をもつ種々のシートの全般に亘って効果的な姿勢制御を行なうことができるので、薄いシート1から厚いシート1まで、排紙テーブル3上での紙揃えを良くすることができるのである。
【0046】
〔2〕第2実施形態の説明
図3は本発明の第2実施形態としての枚葉印刷機のシート案内装置の要部構成を示す平面図であり、この図3に示すように、第2実施形態のシート案内装置も、図1および図2に示した第1実施形態のものとほぼ同様に構成されている。
ただし、第1実施形態の空気吸引ボックス7においては、空気吸引孔9の全体配列状態が図1に一点鎖線で示す矩形領域内に一列だけとなっているが、第2実施形態では、空気吸引ボックス7において、複数個の空気吸引孔9が、シート1の幅方向に対してシート1の流れ方向上流側に傾斜を付けた領域(図3の一鎖線で示す領域参照)内に配列されている。
【0047】
つまり、第2実施形態では、複数個の空気吸引孔9が、シート1の幅方向中央から両外側へ向かって斜めに、且つ、中央の空気吸引孔9をシート1の移送方向最上流側に位置させるように配列されている。
また、第2実施形態では、第1実施形態で前述したように、空気吐出ボックス8において、空気吐出孔10は、図3に示すように、幅方向中央を中心として幅方向外側、且つ、シート1の流れ方向上流側に向けて空気を噴出するように形成されている。
【0048】
上述のごとく構成された第2実施形態のシート案内装置も、排紙装置4のシート積層装置2(図5参照)に積層させる際に、上述した第1実施形態のシート案内装置と同様に作用するほか、第2実施形態のシート案内装置では、上述のごとく空気吸引孔9が配列されているので、搬送中のシート(印刷紙)1に空気吸引ボックス7による吸引力を作用させる際に、シート1の中央が先行して外側に向けて広げられることになり、シート1のしわが確実に伸ばされることになる。
【0049】
このように、本発明の第2実施形態としてのシート案内装置によれば、上述した第1実施形態と同様の作用効果が得られるほか、より確実なシート1のしわ伸ばし効果が得られる。
〔3〕第3実施形態の説明
図4は本発明の第3実施形態としての枚葉印刷機のシート案内装置の要部構成を示す正面図であり、第3実施形態のシート案内装置は、基本的には第1実施形態もしくは第2実施形態の装置と同様に構成されているが、第3実施形態の装置では、第1実施形態もしくは第2実施形態の装置において、図4に示すように、空気吸引ボックス7および空気吐出ボックス8を昇降駆動しうる昇降機構22が付加されている。
【0050】
つまり、第3実施形態では、図4に示すように、紙ガイド6(空気吸引ボックス7および空気吐出ボックス8)を昇降機構22により上下方向に平行移動できるように構成されており、紙ガイド6の構造としては、第1実施形態もしくは第2実施形態のものが採用される。
図4に示す昇降機構22では、紙ガイド6の両幅端(図4では一端側のみ図示)が、フレーム50に固設したレール23を介して、上下方向に移動可能にフレーム50に支持され、紙ガイド6が自由に昇降することができるようになっている。また、紙ガイド6の両幅端下側には、それぞれ、ブラケット24を介して雌ネジ25が取り付けられ、各雌ネジ25には、モータ26の軸端部に固設された雄ネジ27が螺合されている。このモータ26は、ブラケット45によりフレーム50に固定されている。
【0051】
このような構成のもと、モータ26を駆動させることにより、紙ガイド6を適宜(任意)に昇降させることができるようになっている。
なお、昇降機構22としては、上述したもの以外に、リンク機構,シリンダ,カムを利用したもの等々(図示省略)、様々な形式のものを用いることができる。
【0052】
また、本実施形態では、紙ガイド6の現在位置を検出するポテンショメータ46をそなえ、このポテンショメータ46の検出結果に応じてモータ26の動作を制御することにより、紙ガイド6の高さ位置をフィードバック制御することができるようになっている。
上述のごとく構成された第3実施形態のシート案内装置も、排紙装置4のシート積層装置2(図5参照)に積層させる際に、上述した第1実施形態のシート案内装置と同様に作用するほか、第3実施形態のシート案内装置では、上述のごとく紙ガイド6(空気吸引ボックス7および空気吐出ボックス8)を昇降機構22により昇降可能に構成したので、薄いシート1に印刷を施す場合には、図8に示す真空車5の吸引領域の全域をシート1が覆う高さまで紙ガイド6を下降させる一方、逆に剛性の高い厚いシート1に印刷を施す場合には、真空車5の上面と、紙ガイド6の上面とが水平になるよう上昇させる。
【0053】
上述のごとく、シート1の厚さに応じて、紙ガイド6の高さ位置を変更することにより、以下のような作用効果を得ることができる。
▲1▼シート1が薄い場合、シート1は、横幅方向に押し広げられた状態で、真空車5の外筒28の周面に沿って搬送されるので、真空車5の吸引領域から大気を直接吸引する吸引孔34が無くなり、真空度が上がり、シート1に対するブレーキの効きがよく、良好な形態でブレーキ力をシート1に作用させることができ、搬送テーブル3上でのシート1の紙揃えが良好になる。
【0054】
▲2▼変形の少ない厚いシート1の場合、紙ガイド6を上昇させることによりシート1が真空車5と紙ガイド6との上を水平に搬送され、シート1の下面と紙ガイド6の上面との高さ位置の不一致による空気漏れが少なくなり、空気吸引ボックス7により厚いシート1を吸引する力が増大し、シート1への制動力が向上する。これにより、シート速度の減速機能や姿勢制御機能を大幅に向上させることができる。
【0055】
▲3▼シート1の仕様(紙厚)をインプットされた時点で、ポテンショメータ46で紙ガイド6の高さ位置を検知し、紙厚に応じた紙ガイド6の高さ位置と実高さ位置との差を知り、期待する位置に紙ガイド6をプリセットすることが可能であり、人手によることなく、紙ガイド6の配置高さの位置決めを自動的に行なうことができ、生産性を大幅に高めることができる。
【0056】
〔4〕その他
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0057】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の枚葉印刷機のシート案内装置によれば、薄いシートに対して印刷を施す場合は、空気吐出ボックスを作用させて、空気の噴流により負圧を形成し、シートを引き付け幅方向に広げてシートの搬送姿勢を良くするほか、状況に応じ、空気吸引ボックスと空気吐出ボックスとの両方を動作させるか、空気吐出ボックスのみを動作させるかを切り換える。また、厚いシートに対して印刷を施す場合は、空気吸引ボックスにより、厚いシートを確実に吸着してこのシートにブレーキ力を確実に作用させることができる。
【0058】
従って、空気吸引ボックスと空気吐出ボックスとを制御することにより、シートを傷付けることなく、薄紙から厚紙まで、多様な剛性をもつ種々のシートの全般に亘って効果的な姿勢制御を行なうことができるので、薄いシートから厚いシートまで、排紙テーブル上での紙揃えを確実に良くすることができる。
また、複数個の空気吸引孔を、シートの幅方向中央から両外側へ向かって斜めに、且つ、中央の空気吸引孔をシートの移送方向最上流側に位置させるように配列することにより、搬送中のシートに空気吸引ボックスによる吸引力を作用させる際に、シートの中央が先行して外側に向けて広げられることになり、シートのしわが確実に伸ばされるという効果がある。
【0059】
さらに、空気吸引ボックスおよび空気吐出ボックスを昇降機構により昇降可能に構成することで、シートの厚さに応じた高さ位置に空気吸引ボックスおよび空気吐出ボックスを配置でき、より確実にシートにブレーキ力を作用させることができるので、シート速度の減速機能や姿勢制御機能を大幅に向上させることができ、搬送テーブル上でのシートの紙揃えがより良好になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態としての枚葉印刷機のシート案内装置の要部構成を示す平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態としての枚葉印刷機のシート案内装置の要部構成を模式的に示す側断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態としての枚葉印刷機のシート案内装置の要部構成を示す平面図である。
【図4】本発明の第3実施形態としての枚葉印刷機のシート案内装置の要部構成を示す正面図である。
【図5】一般的な枚葉印刷機およびその排紙部の概略構成を模式的に示す側面図である。
【図6】図5に示す枚葉印刷機の排紙部にそなえられる従来のシート案内装置の構成を模式的に示す側面図である。
【図7】図6に示す従来のシート案内装置における真空車を示す縦断面図である。
【図8】図7のVIII−VIII矢視拡大断面図である。
【図9】他の従来のシート案内装置の要部構成を示す平面図である。
【図10】図9に示すシート案内装置の要部構成を模式的に示す側断面図である。
【図11】さらに他の従来のシート案内装置の要部構成を示す平面図である。
【図12】図11に示すシート案内装置の要部構成を模式的に示す側断面図である。
【符号の説明】
1 シート(枚葉紙,印刷紙)
3 排紙テーブル
5 真空車
7 空気吸引ボックス
8 空気吐出ボックス
9 空気吸引孔
10 空気吐出孔(ベルヌーイ孔)
11a 吸引用配管
11b 吐出用配管
12 三方電磁弁(吐出用切換弁)
13 ブロア(吸引・吐出源)
14 三方電磁弁(吸引用切換弁)
22 昇降機構

Claims (5)

  1. 枚葉印刷機の排紙部にそなえられ、印刷完了後のシートを排紙テーブルへ移送・案内し該排紙テーブル上で積重させるシート案内装置であって、
    該排紙テーブルの上部であって該シートの移送方向上流側に配置され、該シートの移送速度よりも遅い外周速度で回転駆動されながら該シートを吸引して該排紙テーブルへ移送・案内する真空車と、
    該真空車よりも該シートの移送方向上流側に、該真空車に隣接して配置され、該シートを該真空車による吸引方向と同じ方向に吸引しうる複数個の空気吸引孔を有する空気吸引ボックスと、
    該空気吸引ボックスよりも該シートの移送方向上流側に配置され、該シートに対し該シートの幅方向外側へ向けて空気を吐出し該吐出空気により負圧を形成しうる複数個の空気吐出孔を有する空気吐出ボックスと、
    該真空車および該空気吸引ボックスからの空気吸引と該空気吐出ボックスへの空気供給とを行なう吸引・吐出源とをそなえてなることを特徴とする、枚葉印刷機のシート案内装置。
  2. 該空気吸引ボックスと該吸引・吐出源とを連通接続する吸引用配管に、該空気吸引ボックスによる空気吸引動作を行なう際に該吸引用配管を連通状態に切り換える吸引用切換弁を介装するとともに、
    該空気吐出ボックスと該吸引・吐出源とを連通接続する吐出用配管に、該空気吐出ボックスによる空気吐出動作を行なう際に該吐出用配管を連通状態に切り換える吐出用切換弁を介装することを特徴とする、請求項1記載の枚葉印刷機のシート案内装置。
  3. 該空気吸引ボックスにおいて、該複数個の空気吸引孔が、該シートの幅方向に少なくとも一列形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の枚葉印刷機のシート案内装置。
  4. 該空気吸引ボックスにおいて、該複数個の空気吸引孔が、該シートの幅方向中央から両外側へ向かって斜めに、且つ、中央の空気吸引孔を該シートの移送方向最上流側に位置させるように配列されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の枚葉印刷機のシート案内装置。
  5. 該空気吸引ボックスおよび該空気吐出ボックスを昇降駆動しうる昇降機構をそなえたことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の枚葉印刷機のシート案内装置。
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