JP3552015B2 - 非磁性黒色顔料粉末、該非磁性黒色顔料粉末を用いた非磁性黒色塗料並びに該非磁性黒色顔料粉末を用いた黒色ゴム・樹脂組成物 - Google Patents
非磁性黒色顔料粉末、該非磁性黒色顔料粉末を用いた非磁性黒色塗料並びに該非磁性黒色顔料粉末を用いた黒色ゴム・樹脂組成物 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、黒色度及び耐熱性が優れており、且つ、より分散性に優れている非磁性黒色顔料粉末を提供するとともに、該非磁性黒色顔料粉末によって着色した場合、耐酸性に優れた黒色塗膜や耐老化性に優れた黒色のゴム・樹脂組成物を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
黒色顔料として代表的なものとしては、マグネタイト粒子粉末、カーボンブラック、フッ化黒鉛等が知られている。これら黒色顔料は、ビヒクル中に混合分散させることにより塗料として、また、ゴムや樹脂中に混練分散させることによりゴムや樹脂の着色剤として広く使用されている。
【0003】
近時、安全衛生の観点並びに省エネルギー時代における作業能率の向上や諸特性の向上という観点から安全、無害であって、黒色度及び耐熱性が優れていることはもちろん、より分散性に優れていることによって、作業性と諸特性に優れた黒色顔料粉末が強く要求されている。
【0004】
従来から使用されているマグネタイト粒子粉末、カーボンブラック、フッ化黒鉛等の黒色顔料は、塗膜にした時、L* 値が10〜25、a* 値が−2.5〜2.5及びb* 値で−2.5〜2.5の値を示しており、黒色度に優れたものである。
【0005】
次に、顔料の耐熱性について言えばゴムや樹脂の成形加工工程においては、高温にさらされることになるので、耐熱性に優れていることが要求される。
【0006】
更に、塗膜を高温で乾燥する焼付塗装においては、塗料樹脂により異なるが100〜400℃の高温においても変色しない顔料が求められている。
【0007】
作業性の向上のためには、顔料が非磁性であって適当な大きさを有するために分散性が優れていることによって取り扱いやすい粉末であることが肝要である。
【0008】
顔料の分散性が良好であることは、色調が鮮明となり、着色力、隠蔽力等顔料本来の基本的特性が向上することはもちろん、塗膜の光沢や鮮映性が良好となり、これらは塗膜の耐酸性、耐老化性等の塗膜物性を向上させることになるので、顔料の分散性の向上が強く要求されている。
【0009】
更に、近年、酸性雨の問題等自然環境、生活環境が悪化しており、特に、屋外で用いられる塗膜形成物及びゴムや樹脂組成物の耐酸性や耐老化性の向上が益々強く要求されている。
【0010】
従来、安全、無害であって、且つ、非磁性である黒色顔料としてMnを含有するヘマタイト粒子粉末が知られている(特公昭43−17288号公報、特公昭47−30085号公報、特公昭54−37004号公報、特開昭49−124127号公報、特開昭51−149200号公報、特開平8−143316号公報等)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
黒色度及び耐熱性が優れており、且つ、より分散性に優れている非磁性黒色顔料は、現在、最も要求されているところであるが、このような諸特性を有する黒色顔料はいまだ得られていない。
【0012】
即ち、前出公知のマグネタイト粒子粉末は、安全、無害ではあるが、150℃以上の温度でマグヘマイトへの変化が生起し始めるため、黒色から茶褐色に変色し耐熱性に問題があった。また、磁性を有するため粒子相互間で再凝集が生じ、分散が困難となり、作業性が悪いものであった。そして、マグネタイト粒子粉末を用いて塗膜を形成した場合、塗膜の耐酸性は、良好とは言い難いものであった。
【0013】
前出公知のカーボンブラックは、耐熱性が十分とは言い難く、0.01〜0.1μm程度の超微細粒子であり、かさ高い粉末であるため、取り扱いが困難で作業性が悪いものである。また、発ガン性等の安全、衛生面からの問題も指摘されている。
【0014】
前出公知のフッ化黒鉛は、安全であるとは言い難く、また、500℃程度で色相が大きく変化するため、耐熱性が十分ではなく、分散性も十分とは言い難い。
【0015】
前出公知のMnを含有するヘマタイト粒子粉末は、安全、無害ではあるが、色相は赤褐色乃至黒褐色で黒色度が十分ではない。また、分散性も十分とは言い難いものである。そして、この粒子粉末を用いて塗膜やゴム・樹脂組成物とした場合、耐酸性や耐老化性は良好なものとは言い難いものであった。
【0016】
そこで、本発明は、安全、無害であって、黒色度及び耐熱性が優れており、且つ、より分散性に優れている非磁性黒色顔料を得ることができ、該非磁性黒色顔料を用いて耐酸性に優れた非磁性黒色塗料や耐老化性に優れた黒色のゴム・樹脂組成物を得ることを技術的課題とする。
【0017】
【課題を解決する為の手段】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0018】
即ち、本発明は、Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する平均径0.1〜10μmの非磁性黒色粒状粒子からなるMn含有量が非磁性黒色顔料粉末に対し5〜70重量%であって、粉体pH値が5.5以上であって、且つ、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で500ppm以下、可溶性硫酸塩の含有量がSO4換算で200ppm以下である非磁性黒色粉末であることを特徴とする非磁性黒色顔料粉末であり、必要により、粒子表面がアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物の少なくとも1種で被覆されている前記非磁性黒色粒状粒子からなる非磁性黒色粉末であることを特徴とする非磁性黒色顔料粉末である。
【0019】
また、本発明は、前記いずれかの非磁性黒色顔料粉末を塗料構成基材中に配合したことを特徴とする非磁性黒色塗料である。
【0020】
また、本発明は、前記いずれかの非磁性黒色顔料粉末をゴム・樹脂組成物構成基材中に配合したことを特徴とする非磁性黒色ゴム・樹脂組成物である。
【0021】
本発明の構成をより詳しく説明すれば、次の通りである。
【0022】
先ず、本発明に係る非磁性黒色顔料粉末について述べる。
【0023】
本発明に係る非磁性黒色粉末は、後出実施例に示す通り、X線回折の結果、ヘマタイト構造であることから、非磁性であることが認められた。
【0024】
本発明に係る非磁性黒色粉末は、粒状粒子からなり、粒子の大きさは、平均径が0.1〜10μmである、0.1μm未満の場合は、微粒子であるため分散が困難となる。10μmを越える場合には、粒子径が大きすぎるため、塗膜や樹脂組成物としたときに、表面の平滑性が得られ難くなる。
【0025】
本発明に係る非磁性黒色粉末の粒子径の幾何標準偏差(σg)は2.0以下であり、好ましくは1.7以下、より好ましくは1.5以下である。σgが2.0を越える場合は、粗大粒子の存在比率が大きくなるため、塗膜や樹脂組成物としたときに、表面の平滑性が得られ難くなる。生産性等の工業性を考慮すれば、σgの下限値は1.01である。
【0026】
本発明に係る非磁性黒色粉末は、Mn含有量が非磁性黒色顔料粉末に対し5〜40重量%である。5重量%未満の場合には、必要な黒色度が得られ難い。40重量%を越える場合には、所望の黒色度は得られるが、黒色度が飽和しており、必要以上に含有させる意味がない。好ましくは9〜35重量%であり、より好ましくは10〜20重量%である。
【0027】
本発明に係る非磁性黒色粉末の粉体pH値は、5.5以上である。粉体pH値が5.5未満の場合には、粒子間に多くの酸性不純物が残存するため、架橋を生じて分散性が阻害される。分散性を考慮すると、粉体pH値は、6.5以上が好ましく、より好ましくは粉体pH値が8.0以上である。その上限値は粉体pH値が12以下、好ましくは粉体pH値が11以下、より好ましくは粉体pH値が10以下である。
【0028】
本発明に係る非磁性黒色粉末の可溶性ナトリウム塩の含有量はNa換算で500ppm以下である。500ppmを越える場合には、粒子間にナトリウム塩を含む不純物が架橋し、分散性が阻害される。また、ビヒクル中における黒色顔料粉末の分散性を考慮すると、好ましくは450ppm以下、より好ましくは400ppm以下、更により好ましくは300ppm以下である。生産性等の工業性を考慮すれば、その下限値は0.01ppm程度である。
【0029】
本発明に係る非磁性黒色粉末の可溶性硫酸塩の含有量はSO4 換算で200ppm以下である。200ppmを越える場合には、粒子間に硫酸塩を含む不純物が架橋し、分散性が阻害される。ビヒクル中おける黒色顔料粉末の分散性を考慮すると、好ましくは170ppm以下、より好ましくは150ppm以下である。生産性等の工業性を考慮すれば、その下限値は0.01ppm程度である。
【0030】
本発明に係る非磁性黒色粉末は、後出実施例に示す通り、L* 値が10〜25であって、a* 値が−2.5〜2.5であって、b* 値が−2.5〜2.5であることから公知の黒色顔料と比べで遜色のないものである。色相を考慮すれば、L* 値は10〜24が好ましく、15〜23がより好ましい。a* 値は−2.5〜2.0が好ましく、−2.0〜1.0がより好ましい。b* 値は−2.5〜2.0が好ましく、−2.5〜1.0がより好ましい。
【0031】
本発明に係る非磁性黒色粉末の耐熱性は0〜2.5である。2.5を越える場合には、黒色顔料粉末を用いて樹脂着色等を行なう場合に、変色等が顕著となり好ましくない。
【0032】
本発明に係る非磁性黒色塗料は、塗膜にした場合、後出実施例に示す通り、L* 値が15〜25であって、a* 値が−2.5〜2.5であって、b* 値が−2.5〜2.5であることから、公知の黒色顔料粉末を用いた場合に比べ、遜色がないものである。また、光沢度は、80%以上であって、耐酸性はΔG値が8.0以下、ΔL* 値が1.0以下である。色相を考慮すれば、L* 値は17〜24が好ましく、20〜23がより好ましい。a* 値は−2.5〜2.0が好ましく、−2.0〜1.0がより好ましい。b* 値は−2.5〜2.0が好ましく、−2.0〜1.0がより好ましい。光沢度は83%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。耐酸性はΔG値が7.0以下が好ましく、6.0以下がより好ましい。ΔL* 値は0.8以下が好ましく、0.6以下がより好ましい。
【0033】
本発明に係る非磁性黒色ゴム・樹脂組成物は、後出実施例に示す通り、L* 値が15〜25であって、a* 値が−2.5〜2.5であって、b* 値が−2.5〜2.5であることから、公知の黒色顔料粉末を用いた場合に比べ、遜色がないものである。また、分散性の目視観察の結果は、4〜5の範囲であった。耐老化性は、190℃で90分加熱した際の変色した部分の割合が15%以下である。色相を考慮すれば、L* 値は17〜24が好ましく、20〜24がより好ましい。a* 値は−2.5〜2.0が好ましく、−2.0〜1.0がより好ましい。b* 値は−2.5〜2.0が好ましく、−2.0〜1.0がより好ましい。耐老化性は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
【0034】
次に、本発明に係る非磁性黒色粉末の製造法について述べる。
【0035】
本発明に係る黒色顔料粉末は、前出特開平4−144924号公報記載の下記製造法により得られたMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する平均粒径が0.05〜5.0μmの八面体状粒子又は球状粒子を含むスラリーを湿式粉砕した後、該スラリーのpH値を13以上に調整し、次いで、80℃以上の温度で加熱処理した後、濾別、水洗、乾燥することにより得ることができる。
【0036】
Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する平均粒径が0.05〜5.0μmの八面体状粒子は、第一鉄塩水溶液と該第一鉄塩水溶液中のFe2+に対して1.01〜1.3当量の水酸化アルカリ水溶液とを反応させて得られた水酸化第一鉄コロイドを含む懸濁液を、45〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気するマグネタイト生成反応により前記水酸化第一鉄コロイドを酸化してマグネタイト粒子を生成させることによってマグネタイト粒子を含む懸濁液とし、当該マグネタイト粒子を含む懸濁液にMn又はMnとFe2+とを水溶液の状態で添加して液中の全Feに対して8〜150原子%のMnを存在させた後、当該懸濁液を前記マグネタイト生成反応と同条件下で加熱酸化することによってマグネタイト粒子表面をMnの水酸化物又はMnとFeの水酸化物とによって被覆し、次いで、当該Mnの水酸化物又はMnとFeの水酸化物とを被覆したマグネタイト粒子を濾別、水洗、乾燥し、次いで、750〜1000℃の温度範囲で加熱焼成することにより得る。
【0037】
Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する平均粒径が0.1〜10μmの球状粒子は、第一鉄塩水溶液と該第一鉄塩水溶液中のFe2+に対して0.80〜0.99当量の水酸化アルカリ水溶液とを反応させて得られた水酸化第一鉄コロイドを含む懸濁液を、45〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気するマグネタイト粒子を生成反応により前記水酸化第一鉄コロイドを酸化してマグネタイト粒子を生成させることによってマグネタイト粒子を含む懸濁液とし、当該マグネタイト粒子を含む懸濁液に液中の全Feに対し8〜150原子%のMn化合物の水溶液と当該Mn化合物と残存Fe2+とに対して1.00当量を越える量の水酸化アルカリ水溶液とを添加した後、前記マグネタイト生成反応と同条件下で加熱酸化することによってマグネタイト粒子表面をMnの水酸化物又はMnとFeの水酸化物とによって被覆し、次いで、当該Mnの水酸化物又はMnとFeの水酸化物とを被覆したマグネタイト粒子を濾別、水洗、乾燥し、次いで、750〜1000℃の温度範囲で加熱焼成することにより得る。
【0038】
上掲Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する八面体状粒子や球状粒子を製造するにあたっての諸条件について述べる。
【0039】
第一鉄塩水溶液としては、硫酸第一鉄、塩化第一鉄等を使用することができる。
【0040】
Mn化合物の水溶液としては、硫酸マンガン、塩化マンガン等を使用することができ、マグネタイト粒子の粒子表面に均一に被覆するためには、水溶液の状態で添加することが好ましい。
【0041】
水酸化アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用することができる。
【0042】
前記八面体状粒子の非磁性黒色顔料粉末が得られる八面体状を呈したマグネタイト粒子を生成させる製造法としては、例えば、特公昭44−668号公報に開示されている技術手段を用いることができる。
【0043】
水酸化アルカリ水溶液の量は、第一鉄塩水溶液中のFe2+に対して1.01〜1.3当量である。1.01当量未満の場合には、アルカリ添加比のコントロールが難しく、場合により当量比が1.0未満となることもあり、また、粒子サイズ等のコントロールも難しくなる。1.3当量を越える場合には、針状ゲータイト粒子が混在してくる。
【0044】
また、反応温度は45〜100℃の温度範囲であり、45℃未満の場合には、針状ゲータイト粒子が混在するおそれがあり、100℃を越える場合にも八面体状を呈したマグネタイト粒子は生成するが経済的ではない。
【0045】
八面体状を呈したマグネタイト粒子の粒子表面にMnの水酸化物又はMnとFeの水酸化物とを被覆するMnの量は、懸濁液中の全Feに対して8〜150原子%である。Mnが8原子%未満の場合には、非磁性の顔料粉末は得られるが、所望の黒色度は得られ難い。150原子%を越える場合には、所望の黒色度は得られるが、黒色度が飽和しており、必要以上に含有させる意味がない。好ましくは10〜100原子%であり、より好ましくは15〜50原子%の範囲である。
【0046】
また、必要により、MnとともにFe2+を添加するのは、マグネタイト粒子の粒子表面にMnを被覆しやすくするためであり、添加するFe2+の量としては、懸濁液中の全Feに対し25原子%未満であり、25原子%を越える場合にも非磁性黒色顔料粉末は得られるが、黒色度においてやゝ劣るものとなる。
【0047】
尚、添加するFe2+の化合物は、マグネタイト粒子の生成に用いた第一鉄塩水溶液と同じものを使用することが望ましく、被覆処理において、さらに水酸化アルカリ水溶液を追加して添加してもよい。また、被覆するための処理温度等の条件は、マグネタイト粒子の生成条件と同一でよい。
【0048】
前記球状粒子の非磁性黒色顔料粉末が得られる球状を呈したマグネタイト粒子を生成する製造法としては、例えば、特公昭62−51208号公報に開示されている技術手段を用いることができる。
【0049】
水酸化アルカリ水溶液の量は、第一鉄塩水溶液中のFe2+に対して0.80〜0.99当量である。0.80当量未満又は0.99当量を越える場合には、球状を呈したマグネタイト粒子を生成することは困難である。
【0050】
また、反応温度は45〜100℃の温度範囲であり、45℃未満の場合には、針状ゲータイト粒子が混在するおそれがあり、100℃を越える場合にも粒状を呈したマグネタイト粒子は生成するが経済的ではない。
【0051】
球状を呈したマグネタイト粒子に添加するMnの量も懸濁液中の全Feに対して8〜150原子%である。好ましくは10〜100原子%であり、より好ましくは15〜50原子%の範囲である。その理由は前記八面体状を呈したマグネタイト粒子の場合と同様である。
【0052】
また、MnとFeの水酸化物とを被覆するために添加する水酸化アルカリの量は、添加するMn化合物と残存するFe2+とに対し1.00当量を越える量である。1.00当量未満の場合には、MnとFe2+とが全量沈澱しないので均一に被覆することができなくなる。1.00当量を越える場合には、経済性を考慮すると、好ましくは1.01〜1.3当量である。
【0053】
尚、添加する水酸化アルカリ水溶液は、マグネタイト粒子の生成に用いた水酸化アルカリ水溶液と同じものを使用することが望ましく、被覆するための処理温度等の条件は、マグネタイト粒子の生成条件と同一でよい。
【0054】
反応の酸化手段としては、酸素含有ガス(例えば、空気)を反応懸濁液に通気することにより行なうことができ、攪拌機能が設置された反応器で行なうことが好ましい。
【0055】
Mnの水酸化物又はMnとFeの水酸化物を被覆したマグネタイト粒子は、次いで、750〜1000℃の温度範囲で加熱してMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒状粒子を得る。750℃未満の場合には、黒色度が不足し、1000℃を越える場合には、粒子が大きくなりすぎて着色力が出なくなる。
【0056】
尚、加熱焼成する場合の雰囲気は空気中で行なう。空気中で加熱焼成するのは、マグネタイトを酸化してヘマタイト構造に変態させるためである。
【0057】
尚、Si,Al,P,B,Cu,Zn,Cr,Co,Sn,Cd,V,Mo等の金属化合物を前出両製造法における反応前又は反応途中において添加してもよく、また、反応終了後のMnの水酸化物若しくはMnとFeの水酸化物を被覆したマグネタイト粒子の粒子表面を前記金属化合物で被覆処理を施して粒子形状の形成や粒子形状の維持を行なってもよい。
【0058】
Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒状粒子は、次いで、乾式で粗粉砕をして粗粒をほぐした後、スラリー化し、次いで、湿式粉砕することにより更に粗粒をほぐす。湿式粉砕は、少なくとも44μm以上の粗粒が無くなるようにボールミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、コロイドミル等を用いて行えばよい。湿式粉砕の程度は44μm以上の粗粒が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは0%である。44μm以上の粗粒が10%を越えて残存していると、次工程におけるアルカリ水溶液中の処理効果が得られ難い。
【0059】
粗粒を除去したMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒状粒子を含むスラリーは、該スラリーに水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を添加してpH値を13以上に調整した後、80℃以上の温度で加熱処理する。
【0060】
Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒状粒子を含むpH値が13以上のアルカリ性懸濁液の濃度は、50〜250g/lが好ましい。
【0061】
Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒状粒子を含むアルカリ性懸濁液中のpH値が13未満の場合には、粒子内部及び粒子表面に存在する可溶性ナトリウム塩、可溶性硫酸塩等の洗い出しが不十分となる。その上限は、pH値が14程度である。可溶性ナトリウム塩、可溶性硫酸塩等の洗い出しの効果、更には、アルカリ性水溶液処理中に粒子表面に付着したナトリウム等のアルカリを除去するための洗浄効果を考慮すれば、pH値は13.1〜13.8の範囲が好ましい。
【0062】
Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒状粒子を含むpH値が13以上のアルカリ性水溶液の加熱温度は、80℃以上が好ましく、より好ましくは90℃以上ある。80℃未満の場合には、粒子内部及び粒子表面に存在する可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩等の洗い出しが不十分となる。加熱温度の上限値は103℃が好ましく、より好ましくは100℃である。103℃を越える場合には、オートクレーブ等が必要となったり、常圧下おいては、被処理液が沸騰するなど工業的に有利でなくなる。
【0063】
アルカリ水溶液中で加熱処理した粒子は、常法により、濾別、水洗することにより、粒子内部及び粒子表面から洗い出した可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩やアルカリ水溶液処理中に粒子表面に付着したナトリウム等のアルカリを除去し、次いで、乾燥する。
【0064】
水洗法としては、デカンテーションによって洗浄する方法、フィルターシックナーを使用して希釈法で洗浄する方法、フィルタープレスに通水して洗浄する方法等の工業的に通常使用されている方法を使用すればよい。
【0065】
尚、Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒状粒子の粒子内部に含有されている可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩を水洗して洗い出しておけば、それ以降の工程、例えば、後出する被覆処理工程において粒子の粒子表面に可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩が付着しても水洗により容易に除去することができる。
【0066】
アルカリ水溶液中で加熱処理した粒状粒子は、必要により、アルカリ水溶液中で加熱処理した後、常法により濾別、水洗し、次いで、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物の少なくとも1種により被覆されていてもよい。
【0067】
被覆処理は、アルカリ水溶液中で加熱処理した粒状粒子のケーキ、スラリー、乾燥粉末を水溶液中に分散して得られる水懸濁液に、アルミニウム化合物、ケイ素化合物又は当該両化合物を添加して混合攪拌することにより、または、必要により、pH値を調整することにより、前記粒状粒子の粒子表面に、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物を被着すればよく、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕する。必要により、更に、脱気・圧密処理等を施してもよい。
【0068】
被覆処理において添加するアルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ塩、アルミナゾル等が使用できる。
【0069】
アルミニウム化合物の添加量は、アルカリ水溶液中で加熱処理した粒状粒子粉末に対しAl換算で0.01〜50.00重量%である。0.01重量%未満である場合には、ビヒクル中における分散が不十分であり、50.00重量%を越える場合には、被覆効果が飽和するため、必要以上に添加する意味がない。
【0070】
被覆処理において添加するケイ素化合物としては、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、コロイダルシリカ等が使用できる。
【0071】
ケイ素化合物の添加量は、アルカリ水溶液中で加熱処理した粒状粒子粉末に対しSiO2 換算で0.01〜50.00重量%である。0.01重量%未満である場合には、ビヒクル中における分散が不十分であり、50.00重量%を越える場合には、被覆効果が飽和するため、必要以上に添加する意味がない。
【0072】
アルミニウム化合物とケイ素化合物とを併せて使用する場合には、アルカリ水溶液中で加熱処理した粒状粒子粉末に対し、Al換算量とSiO2 換算量との総和で0.01〜50.00重量%が好ましい。
【0073】
次に、本発明に係る塗料について述べる。
【0074】
本発明に係る塗料中における非磁性黒色顔料粉末の配合割合は、塗料構成基材100重量部に対し0.1〜200重量部の範囲で使用することができ、塗料のハンドリングを考慮すれば、好ましくは0.1〜100重量部、更に好ましくは0.1〜50重量部である。
【0075】
本発明における塗料構成基材としては、樹脂、溶剤及び必要に応じて体質顔料、乾燥促進剤、界面活性剤、硬化促進剤、助剤等が配合される。
【0076】
樹脂としては、溶剤系塗料用として通常使用されるアクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂等を用いることができる。水系塗料用としては、通常使用される水溶性アルキッド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタンエマルジョン樹脂を用いることができる。
【0077】
溶剤としては、溶剤系塗料用として通常使用されるトルエン、キシレン、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルアルコール、脂肪族炭化水素等を用いることができる。
【0078】
水系塗料用としては、水に加えて通常使用されるブチルセロソルブ、ブチルアルコール等を使用することができる。
【0079】
消泡剤としては、ノプコ8034(商品名)、SNデフォーマー477(商品名)、SNデフォーマー5013(商品名)、SNデフォーマー247(商品名)、SNデフォーマー382(商品名)(以上、いずれもサンノプコ株式会社製)、アンチホーム08(商品名)、エマルゲン903(商品名)(以上、いずれも花王株式会社製)等の市販品を使用することができる。
【0080】
次に、本発明に係るゴム・樹脂組成物及びその製造法について述べる。
【0081】
本発明に係るゴム・樹脂組成物中における非磁性黒色顔料粉末の配合割合は、構成基材100重量部に対し0.01〜200重量部の範囲で使用することができ、ゴム・樹脂組成物のハンドリングを考慮すれば、好ましくは0.05〜100重量部、更に好ましくは0.1〜50重量部である。
【0082】
本発明に係るゴム又は樹脂組成物における構成基材としては、非磁性黒色顔料粉末とゴム又は周知の熱可塑性樹脂とともに、必要により、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種安定剤等の添加剤が配合される。
【0083】
添加剤の量は、非磁性黒色顔料粉末とゴム又は熱可塑性樹脂との総和に対して50重量%以下であればよい。添加物の含有量が50重量%を越える場合には、成形性が低下する。
【0084】
本発明に係るゴム又は樹脂組成物は、ゴム又は樹脂原料と非磁性黒色顔料粉末をあらかじめよく混合し、次に、混練機もしくは押出機を用いて加熱下で強いせん断作用を加えて、黒色顔料粉末の凝集体を破壊し、ゴム又は樹脂中に黒色顔料粉末を均一に分散させた後、目的に応じた形状に成形加工して使用する。
【0085】
【発明の実施の形態】
本発明の代表的な実施の形態は、次の通りである。
【0086】
黒色顔料の平均粒径は、電子顕微鏡写真(×20000)を縦方向及び横方向にそれぞれ4倍に拡大した写真(×80000)に示される粒子約350個について定方向径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0087】
粒子径の幾何標準偏差値(σg)は、下記の方法により求めた値で示した。即ち、上記拡大写真に示される粒子径を測定した値を、その測定値から計算して求めた粒子の実際の粒子径と個数から統計学的手法に従って対数正規確率紙上の横軸に粒子の粒子径を、縦軸に所定の粒子径区間のそれぞれに属する粒子の累積個数(積算フルイ下)を百分率でプロットする。そして、このグラフから粒子の累積個数が50%及び84.13%のそれぞれに相当する粒子径の値を読みとり、幾何標準偏差値(σg)=積算フルイ下84.13%における粒子径/積算フルイ下50%における粒子径(幾何平均径)に従って算出した値で示した。幾何標準偏差値が小さい程、粒子の粒子径の粒度分布が優れていることを意味する。
【0088】
比表面積はBET法により測定した値で示した。
【0089】
黒色顔料粉末の粒子内部や表面に存在するMn、Al及びSiのそれぞれの量は蛍光X線分析装置3063型(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS
K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0090】
粉体pH値は、試料5gを300mlの三角フラスコに秤り取り、煮沸した純水100mlを加え、加熱して煮沸状態を約5分間保持した後、栓をして常温まで放冷した後、栓を開き減量に相当する純水を加えて再び栓をして1分間振り混ぜ、5分間静置した後、得られた上澄み液のpHをJIS Z 8802−7に従って測定し、得られた値を粉体pH値とした。
【0091】
可溶性ナトリウム塩の含有量及び可溶性硫酸塩の含有量は、上記粉体pH値の測定用に作製した上澄み液をNo.5Cの濾紙を用いて濾過し、濾液中のNa+ 及びSO4 2−を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(セイコー電子工業株式会社製)を用いて測定した。
【0092】
黒色顔料粉末の色相は、試料0.5gとヒマシ油0.7ccとをフーバー式マーラーで練ってペースト状とし、このペーストにクリアーラッカー4.5gを加え、混練、塗料化してキャストコート紙上に6milのアプリケーターを用いて塗布した塗布片(塗膜厚み:約30μm)を作製し、該塗料片について、多光源分光測色計MSC−IS−2D(スガ試験機株式会社製)を用いてJIS Z8729に定めるところに従って表色指数L* 値、a* 値、b* 値をそれぞれ測定した値で示した。
【0093】
同様に黒色顔料粉末を用いた塗料の色相については、後述組成の塗料を用いた塗布膜の色相を、樹脂組成物の色相については、後述組成からなる樹脂プレートの色相を、多光源分光測色計MSC−IS−2D(スガ試験機株式会社製)を用いてJIS Z8729に定めるところに従って表色指数L* 値、a* 値、b* 値をそれぞれ測定した値で示した。
【0094】
尚、a* 値は赤味を表し、値が大きい程赤味が強いことを意味する。b* 値は黄味を表し、値が大きい程黄味が強いことを意味する。L* 値は明度を表す。
【0095】
黒色顔料粉末の耐熱性は、試料10gを磁製ルツボに入れ、電気炉を用いて500℃で3時間加熱処理を行い、放冷後、試料粉末の色相を測定し、加熱処理前と後の色相の変化を測定することによって求め、加熱処理前の測色値を基準に下式で示されるΔE* で示した。ΔE* が小さい程、色相の変化が少なく、耐熱性に優れていることを示す。
ΔE* ={(ΔL* )2 +(Δa* )2 +(Δb* )2 }1/2
但し、ΔL* :比較する試料間のL* 値の差
Δa* :比較する試料間のa* 値の差
Δb* :比較する試料間のb* 値の差
【0096】
湿式粉砕後のフルイ残量は、湿式粉砕後のスラリー濃度を別途に求めておき、黒色顔料粉末の固形分100gに相当する量のスラリーを325メッシュ(目開き44μm)のフルイに通し、フルイに残った固形分量を定量することにより求めた。
【0097】
塗料ビヒクルへの分散性は、後出の発明の実施の形態と同様にして作製した塗布膜について、塗布面の光沢度により調べた。
【0098】
光沢度は、グロスメーターUGV−5D(スガ試験機株式会社製)を用いて20°の光沢を測定して求めた。光沢度の値が高い程分散性が良いことを示す。
【0099】
塗料粘度は、後述の処方によって調製した塗料の25℃における塗料粘度をE型粘度計(コーンプレート型粘度計)EMD−R(株式会社東京計器製)を用いて測定し、ずり速度D=1.92sec−1における値で示した。
【0100】
樹脂組成物への分散性は、得られた樹脂組成物表面における未分散の凝集粒子の個数を目視により判定し、5段階で評価した。5が最も分散状態が良いことを示す。
5:未分散物が認められない。
4:1cm2 当たりに1〜4個認められる。
3:1cm2 当たりに5〜9個認められる。
2:1cm2 当たりに10〜49個認められる。
1:1cm2 当たりに50個以上認められる。
【0101】
耐酸性は、後述実施例で得られる黒色顔料粉末を用いた塗料を、冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm:JIS G−3141)に150μmの厚みで塗布、乾燥して製造した塗膜を有する試料を用意し、光沢度及び色相を測定しておく。次に、1000ccのビーカーに5wt%硫酸水溶液を入れ、上記試料を糸でつるして約120mmの深さまで浸し、25℃で24時間静置する。
【0102】
次に、試料を硫酸水溶液中から取り出して流水で静かに洗い、水を振り切った後、試料の中心部分の光沢度及び色相を測定する。そして硫酸水溶液への浸漬前後の光沢度変化(ΔG値)及び色相変化(ΔL* 値:試料間のL* 値の差)を測定し、これの大小で耐酸性を評価した、ΔG値及びΔL* 値がともに小さい程、耐酸性に優れていることを示す。
【0103】
耐老化性は、後述実施例等で得られる黒色顔料粉末を練り込んだ着色樹脂プレート(縦15mm×横15mm×厚み1mm)を190℃で加熱したときに、変色して樹脂が劣化した部分の面積Sを測定した値と加熱前の着色樹脂プレートの表面の面積S0 (15mm×15mm=2.25cm2 )との比S/S0 を5%刻みで定量することにより求めた。
即ち、(S/S0 )×100が0%のときは、劣化が無い状態を示し、(S/S0 )×100が100%のときは、樹脂が完全に劣化した状態を示す。
【0104】
<マグネタイト粒子の製造>
濃度が1.40mol/lの硫酸第一鉄水溶液300lをあらかじめ攪拌機付反応器中に準備された水210l及び15.75Nの水酸化ナトリウム水溶液60lに加え、pH値が13以上、温度85℃において水酸化第一鉄を含む第一鉄塩水溶液の生成を行なった。
【0105】
上記水酸化第一鉄を含む第一鉄塩水溶液に温度90℃において毎分250lの空気を90分間通気してマグネタイト粒子を生成した。
【0106】
次いで、上記マグネタイト粒子32.4kgを含む水懸濁液570lに、濃度1.4mol/lの硫酸第一鉄水溶液100lと1.4mol/lを含む硫酸マンガン水溶液100l(Mn量はFe及びMnに対し20原子%に該当する。)と11.2Nの水酸化ナトリウム水溶液50l(添加Mn量と添加Fe2+量を中和する量に該当する。)とを加え、pH値が13以上、温度90℃において毎分700lの空気を180分間通気してMn及びFeの水酸化物とを被覆しているマグネタイト粒子を生成した。生成した粒子は、常法により、濾別、水洗、乾燥、粉砕して黒色粉末を得た。
【0107】
続いて、得られた黒色粉末をセラミック製の炉心管を有する連続電気炉に通し、空気中900℃、60分間の平均滞留時間を与えて黒色粉末を得た。
【0108】
得られた黒色粉末は、図1の電子顕微鏡(×20000)に示す通り、平均粒子径が0.30μm、粒子径の幾何標準偏差値が1.39の粒状粒子であり、BET比表面積値は3.8m2 /gであった。蛍光X線分析の結果、Mn含有量は13.8重量%であり、粉体pH値は7.4、可溶性ナトリウム塩の含有量はNa換算で712ppm、可溶性硫酸塩の含有量はSO4 換算で856ppm、また、その色相は、L* 値が22.10、a* 値が0.21、b* 値が−1.31であった。
【0109】
また、X線回折の結果、ヘマタイトのピークが認められた。磁性は、外部磁場10kOeを印加した時の磁化値が0.31emu/gであり、略ヘマタイトと同程度であった。
【0110】
更に、上記黒色粉末10gの耐熱試験を行なった、加熱処理後の黒色粉末の色相は L* 値が22.08、a* 値が0.16、b* 値が−1.26、耐熱性はΔEが0.07であり、耐熱性に優れていることが認められた。
【0111】
<黒色顔料粉末のアルカリ加熱処理>
次に、この黒色粉末のうち20kgを純水150lに攪拌機を用いて邂逅し、さらに、ホモミックラインミル(特殊機化工業株式会社製)を3回通して、黒色粉末のスラリーを得た。
【0112】
続いて、得られた黒色スラリーを横形SGM(マイティーミル:井上製作所株式会社製)を用いて、軸回転数2000rpmにおいて5回パスさせた。得られたスラリー中の黒色粉末の325メッシュ(目開き44μm)におけるフルイ残分は0%であった。
【0113】
得られた黒色粉末のスラリーの濃度を100g/lとし、スラリーを150l採取した。このスラリーを攪拌しながら6Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてスラリーのpH値を13.1に調整した。続いて、このスラリーを攪拌しながら加熱して95℃まで昇温し、その温度で3時間保持した。
【0114】
次に、このスラリーをデカンテーション法により水洗し、pH値が10.5のスラリーとした。正確を期すため、この時点でスラリー濃度を確認したところ99g/lであった。このスラリーを50l分取し、濾別、乾燥して黒色粉末(A)を得た。
【0115】
得られた黒色粉末は、図2の電子顕微鏡(×20000)に示す通り、平均粒子径が0.30μm、粒子径の幾何標準偏差値が1.39の粒状粒子であり、BET比表面積値は4.1m2 /gであった。蛍光X線分析の結果、Mn含有量は13.7重量%であり、粉体pH値は8.6、可溶性ナトリウム塩の含有量はNa換算で96ppm、可溶性硫酸塩の含有量はSO4 換算で32ppm、耐熱性はΔEが0.07であった。また、その色相は、L* 値が22.12、a* 値が0.19、b* 値が−1.26であった。
【0116】
また、X線回折の結果、ヘマタイトのピークが認められた。磁性は、外部磁場10kOeを印加した時の磁化値が0.36emu/gであり、略ヘマタイトと同程度であった。
【0117】
<黒色顔料粉末の被覆処理>
残部の前記スラリー100lを加熱して60℃とし、このスラリー中に1.0mol/lのアルミン酸ナトリウム水溶液3667ml(黒顔料粉末に対してAl換算で1.0重量%に該当する。)を加え、30分間保持した後、酢酸を用いてpH値が8.0に調整した。この状態で30分間保持した後、3号水ガラス水溶液685.1g(黒顔料粉末に対してSiO2 換算で2.0重量%に該当する。)を加え、30分間保持した後、酢酸を用いてpH値が7.5に調整した。次いで、濾過、水洗、乾燥、粉砕して粒子表面にアルミニウムの水酸化物とケイ素の酸化物により被覆されている黒色粒子からなる黒色粉末(B)を得た。
【0118】
得られた黒色粉末は、電子顕微鏡写真観察の結果、平均粒子径が0.30μm、粒子径の幾何標準偏差値が1.39の粒状粒子であり、BET比表面積値は11.2m2 /gであった。蛍光X線分析の結果、Mn含有量は13.5重量%、Al含有量は0.97重量%、SiO2 含有量は1.93重量%であり、粉体pH値は8.1、可溶性ナトリウム塩の含有量はNa換算で123ppm、可溶性硫酸塩の含有量はSO4 換算で78ppm、耐熱性はΔEが0.1であった。また、その色相は、L* 値が22.31、a* 値が0.37、b* 値が−1.31であった。また、X線回折の結果、ヘマタイト構造を示すピークが認められた。
【0119】
<黒色顔料粉末を用いた塗料の製造>
140mlのガラスビンに前記黒色顔料粉末(A)及び(B)のそれぞれ10gを用い、塗料組成を下記割合で配合して3mmφガラスビーズ90gとともにペイントシェーカーで90分間混合分散し、ミルベースを作製した。
【0120】
得られた塗料組成は、下記の通りであった。
黒顔料粉末(A)又は(B) 12.2重量部
アミノアルキッド樹脂 19.5重量部
(アミラックNo.1026:関西ペイント株式会社製)
シンナー 7.3重量部
【0121】
上記ミルベースを用いて、塗料組成を下記割合で配合してペイントシェーカーでさらに15分間混合分散して、黒色顔料粉末(A)を含む塗料(A)及び黒色顔料粉末(B)を含む塗料(B)を得た。
【0122】
得られた塗料組成は、下記の通りであった。
ミルベース 39.0重量部
アミノアルキッド樹脂 61.0重量部
(アミラックNo.1026:関西ペイント株式会社製)
【0123】
次に、得られた塗料を冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm:JIS G−3141)に150μmの厚みて塗布、乾燥した。
【0124】
塗料(A)を用いて製造した塗膜は、光沢度が96%、色相は、L* 値が22.81、a* 値が0.41、b* 値が−1.49であり、塗膜の耐酸性テストに基づく光沢度変化ΔG値が3.8%、明度変化ΔL* 値が0.31であった。
【0125】
塗料(B)を用いて製造した塗膜の光沢度が105%、色相は、L* 値が22.76、a* 値が0.37、b* 値が−1.51であり、塗膜の耐酸性テストに基づく光沢度変化ΔG値が2.1%、明度変化ΔL* 値が0.10であった。
【0126】
<黒色顔料粉末を含む樹脂組成物の製造>
前記黒顔料粉末(A)及び(B)のそれぞれを用い、黒色顔料粉末1.5gとポリ塩化ビニル樹脂粉末103EP8D(日本ゼオン株式会社製)48.5gとを秤量し、これらを100ccポリビーカーに入れ、スパチュラでよく混合して混合粉末を得た。
【0127】
得られた混合粉末にステアリン酸カルシウムを0.5gを加えて混合し、160℃に加熱した熱間ロールのクリアランスを0.2mmに設定し、上記混合粉末を少しづつロールに練り込んで樹脂組成物が一体となるまで混練を続けた後、樹脂組成物をロールから剥離して着色樹脂プレート原料をとして用いた。
【0128】
次に、表面研磨されたステンレス板の間に上記樹脂組成物を挟んで180℃に加熱したホットプレス内に入れ、1トン/cm2 の圧力で加圧成形して厚さ1mmの着色樹脂プレート(A)及び(B)を得た。
【0129】
得られた着色樹脂プレート(A)の分散状態は5であった。着色樹脂プレート(A)を1.5cm角に裁断した試験片3枚を190℃に加熱されたギヤオーブン中に入れ、30分毎に1枚づつ取り出し、樹脂劣化の状態を調べたところ、30分後の劣化程度(S/S0 ×100)は0%、60分後の樹脂劣化程度は5%、90分後の樹脂劣化程度は5%であった。
【0130】
得られた着色樹脂プレート(B)の分散状態は5であった。着色樹脂プレート(B)を1.5cm角に裁断した試験片3枚を190℃に加熱されたギヤオーブン中に入れ、60分毎に1枚づつ取り出し、樹脂劣化の状態を調べたところ、30分後の劣化程度(S/S0 ×100)は0%、60分後の樹脂劣化程度は0%、90分後の樹脂劣化程度は0%であった。
【0131】
【作用】
先ず、本発明において最も重要な点は、Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する平均径0.1〜10μmの非磁性黒色粒状粒子からなるMn含有量がFeに対し5〜70重量%であって、粉体pH値が5.5以上であって、且つ、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で500ppm以下、可溶性硫酸塩の含有量がSO4 換算で200ppm以下である非磁性黒色粒状粒子粉末は、黒色度及び耐熱性が優れており、且つ、より分散性に優れているという事実である。
【0132】
黒色度が優れている理由について、本発明者は、Mnが粒子内部に不均一に含有されていたり、表面層のみに含有されているヘマタイト粒子である場合には、黒色度が優れておらず、Mnの水酸化物又はMnとFeの水酸化物とを被覆したマグネタイト粒子を750〜1000℃の温度範囲で加熱焼成することにより、マグネタイトが酸化されてヘマタイト構造に変化するとともに、被覆したMnの水酸化物が粒子表面から粒子内部に拡散した場合には、黒色度が優れていることから、ヘマタイト構造中のMnの存在位置が影響しているものと考えている。
【0133】
耐熱性が優れている理由について、本発明者は、Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒子は、750℃以上の高温で製造されていることによるものと考えている。
【0134】
より分散性が優れていることについて、本発明者は、固体架橋の原因となっている原料に由来する可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩がアルカリ処理により除去できたことにより、固体架橋が解きほぐされ凝集が解けるので、分散性が改善されたものと考えている。
【0135】
次に、本発明において重要な点は、本発明に係るMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒子を用いて得られる塗料やゴム・樹脂組成物は、黒色度及び耐熱性が優れていることはもちろん、塗料の場合には、耐酸性が優れており、ゴム・樹脂組成物の場合には、耐老化性が優れているという事実である。
【0136】
塗料の耐酸性やゴム・樹脂組成物の耐老化性が優れている理由については未だ明らかではないが、本発明者は、加熱処理後の黒色粉末中の耐酸性を阻害する成分、例えば、原料に由来する可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩がアルカリ処理により取り除くことができたものと考えている。
【0137】
【実施例】
次に、実施例並びに比較例を挙げる。
【0138】
<黒色顔料粉末の製造>
実施例1〜6
出発原料1〜4を前記本発明の実施の形態と同様にして製造した。
【0139】
得られた出発原料1〜4の諸特性を表1に示す。
【0140】
出発原料1〜4を用いて、前記本発明の実施の形態と同様にしてMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する黒色顔料粉末を製造した。
【0141】
この時の主要条件及び諸特性を表2に示す。
【0142】
【表1】
【0143】
【表2】
【0144】
実施例7〜12
Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する黒色粉末の種類、湿式粉砕の有無、アルカリ水溶液中加熱処理におけるpH値、温度、時間を種々変化させた以外は、前記本発明の実施の形態と同様にしてアルカリ水溶液処理済黒色顔料粉末を得た。
【0145】
この時の主要製造条件及び諸特性を表3に示す。
【0146】
【表3】
【0147】
実施例13〜18
実施例7〜12の各黒色顔料粉末を用い、表面被覆物の種類及び量を種々変化させた以外は、前記本発明の実施の形態と同様にして粒子表面が被覆物で被覆されている黒色粒子からなる黒色顔料粉末を得た。
【0148】
この時の主要製造条件及び諸特性を表4に示す。
【0149】
【表4】
【0150】
比較例1〜10
アルカリ処理前のMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する黒色顔料粉末である比較例1〜3、公知の黒色顔料粉末である比較例4〜7及びアルカリ処理後のMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する黒色顔料粉末である比較例8〜10を準備した。
【0151】
これら黒色顔料粉末の諸特性を表5及び表6に示す。
【0152】
尚、比較例7のMn固溶酸化鉄系顔料粉末は前出特開平8−143316号公報に記載の製造法に従って製造したものである。
【0153】
【表5】
【0154】
【表6】
【0155】
<塗料の製造>
実施例19〜30及び比較例11〜20
黒色顔料粉末の種類を種々変化させた以外は、前記本発明の実施の形態と同様にして塗料を製造し、塗膜を形成した。
【0156】
この時の主要製造条件及び塗膜特性を表7及び表8に示す。
【0157】
【表7】
【0158】
【表8】
【0159】
<樹脂組成物の製造>
実施例31〜42及び比較例21〜30
黒色顔料粉末の種類を種々変化させた以外は、前記本発明の実施の形態と同様にして樹脂組成物を得た。
【0160】
この時の主要製造条件及び諸特性を表9及び表10に示す。
【0161】
【表9】
【0162】
【表10】
【0163】
【発明の効果】
本発明に係る非磁性黒色顔料粉末は、黒色度及び耐熱性が優れており、且つ、より分散性に優れているので、塗料用、ゴム・樹脂組成物用の着色材及び充填材として好適である。
【0164】
本発明に係る塗料は、上記諸特性を有する非磁性黒色顔料粉末を用いたことに起因して、黒色度が優れており、且つ、耐酸性に優れた塗膜を得ることができる。
【0165】
本発明に係るゴム・樹脂組成物は、上記諸特性を有する非磁性黒色顔料粉末を用いたことに起因して、黒色度が優れており、且つ、耐老化性に優れたゴム・樹脂組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態で得られたアルカリ処理前のMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する黒色顔料粉末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×20000)である。
【図2】本発明の実施の形態で得られたアルカリ処理前のMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有するアルカリ水溶液加熱処理後の黒色顔料粉末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×20000)である。
【産業上の利用分野】
本発明は、黒色度及び耐熱性が優れており、且つ、より分散性に優れている非磁性黒色顔料粉末を提供するとともに、該非磁性黒色顔料粉末によって着色した場合、耐酸性に優れた黒色塗膜や耐老化性に優れた黒色のゴム・樹脂組成物を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
黒色顔料として代表的なものとしては、マグネタイト粒子粉末、カーボンブラック、フッ化黒鉛等が知られている。これら黒色顔料は、ビヒクル中に混合分散させることにより塗料として、また、ゴムや樹脂中に混練分散させることによりゴムや樹脂の着色剤として広く使用されている。
【0003】
近時、安全衛生の観点並びに省エネルギー時代における作業能率の向上や諸特性の向上という観点から安全、無害であって、黒色度及び耐熱性が優れていることはもちろん、より分散性に優れていることによって、作業性と諸特性に優れた黒色顔料粉末が強く要求されている。
【0004】
従来から使用されているマグネタイト粒子粉末、カーボンブラック、フッ化黒鉛等の黒色顔料は、塗膜にした時、L* 値が10〜25、a* 値が−2.5〜2.5及びb* 値で−2.5〜2.5の値を示しており、黒色度に優れたものである。
【0005】
次に、顔料の耐熱性について言えばゴムや樹脂の成形加工工程においては、高温にさらされることになるので、耐熱性に優れていることが要求される。
【0006】
更に、塗膜を高温で乾燥する焼付塗装においては、塗料樹脂により異なるが100〜400℃の高温においても変色しない顔料が求められている。
【0007】
作業性の向上のためには、顔料が非磁性であって適当な大きさを有するために分散性が優れていることによって取り扱いやすい粉末であることが肝要である。
【0008】
顔料の分散性が良好であることは、色調が鮮明となり、着色力、隠蔽力等顔料本来の基本的特性が向上することはもちろん、塗膜の光沢や鮮映性が良好となり、これらは塗膜の耐酸性、耐老化性等の塗膜物性を向上させることになるので、顔料の分散性の向上が強く要求されている。
【0009】
更に、近年、酸性雨の問題等自然環境、生活環境が悪化しており、特に、屋外で用いられる塗膜形成物及びゴムや樹脂組成物の耐酸性や耐老化性の向上が益々強く要求されている。
【0010】
従来、安全、無害であって、且つ、非磁性である黒色顔料としてMnを含有するヘマタイト粒子粉末が知られている(特公昭43−17288号公報、特公昭47−30085号公報、特公昭54−37004号公報、特開昭49−124127号公報、特開昭51−149200号公報、特開平8−143316号公報等)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
黒色度及び耐熱性が優れており、且つ、より分散性に優れている非磁性黒色顔料は、現在、最も要求されているところであるが、このような諸特性を有する黒色顔料はいまだ得られていない。
【0012】
即ち、前出公知のマグネタイト粒子粉末は、安全、無害ではあるが、150℃以上の温度でマグヘマイトへの変化が生起し始めるため、黒色から茶褐色に変色し耐熱性に問題があった。また、磁性を有するため粒子相互間で再凝集が生じ、分散が困難となり、作業性が悪いものであった。そして、マグネタイト粒子粉末を用いて塗膜を形成した場合、塗膜の耐酸性は、良好とは言い難いものであった。
【0013】
前出公知のカーボンブラックは、耐熱性が十分とは言い難く、0.01〜0.1μm程度の超微細粒子であり、かさ高い粉末であるため、取り扱いが困難で作業性が悪いものである。また、発ガン性等の安全、衛生面からの問題も指摘されている。
【0014】
前出公知のフッ化黒鉛は、安全であるとは言い難く、また、500℃程度で色相が大きく変化するため、耐熱性が十分ではなく、分散性も十分とは言い難い。
【0015】
前出公知のMnを含有するヘマタイト粒子粉末は、安全、無害ではあるが、色相は赤褐色乃至黒褐色で黒色度が十分ではない。また、分散性も十分とは言い難いものである。そして、この粒子粉末を用いて塗膜やゴム・樹脂組成物とした場合、耐酸性や耐老化性は良好なものとは言い難いものであった。
【0016】
そこで、本発明は、安全、無害であって、黒色度及び耐熱性が優れており、且つ、より分散性に優れている非磁性黒色顔料を得ることができ、該非磁性黒色顔料を用いて耐酸性に優れた非磁性黒色塗料や耐老化性に優れた黒色のゴム・樹脂組成物を得ることを技術的課題とする。
【0017】
【課題を解決する為の手段】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0018】
即ち、本発明は、Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する平均径0.1〜10μmの非磁性黒色粒状粒子からなるMn含有量が非磁性黒色顔料粉末に対し5〜70重量%であって、粉体pH値が5.5以上であって、且つ、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で500ppm以下、可溶性硫酸塩の含有量がSO4換算で200ppm以下である非磁性黒色粉末であることを特徴とする非磁性黒色顔料粉末であり、必要により、粒子表面がアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物の少なくとも1種で被覆されている前記非磁性黒色粒状粒子からなる非磁性黒色粉末であることを特徴とする非磁性黒色顔料粉末である。
【0019】
また、本発明は、前記いずれかの非磁性黒色顔料粉末を塗料構成基材中に配合したことを特徴とする非磁性黒色塗料である。
【0020】
また、本発明は、前記いずれかの非磁性黒色顔料粉末をゴム・樹脂組成物構成基材中に配合したことを特徴とする非磁性黒色ゴム・樹脂組成物である。
【0021】
本発明の構成をより詳しく説明すれば、次の通りである。
【0022】
先ず、本発明に係る非磁性黒色顔料粉末について述べる。
【0023】
本発明に係る非磁性黒色粉末は、後出実施例に示す通り、X線回折の結果、ヘマタイト構造であることから、非磁性であることが認められた。
【0024】
本発明に係る非磁性黒色粉末は、粒状粒子からなり、粒子の大きさは、平均径が0.1〜10μmである、0.1μm未満の場合は、微粒子であるため分散が困難となる。10μmを越える場合には、粒子径が大きすぎるため、塗膜や樹脂組成物としたときに、表面の平滑性が得られ難くなる。
【0025】
本発明に係る非磁性黒色粉末の粒子径の幾何標準偏差(σg)は2.0以下であり、好ましくは1.7以下、より好ましくは1.5以下である。σgが2.0を越える場合は、粗大粒子の存在比率が大きくなるため、塗膜や樹脂組成物としたときに、表面の平滑性が得られ難くなる。生産性等の工業性を考慮すれば、σgの下限値は1.01である。
【0026】
本発明に係る非磁性黒色粉末は、Mn含有量が非磁性黒色顔料粉末に対し5〜40重量%である。5重量%未満の場合には、必要な黒色度が得られ難い。40重量%を越える場合には、所望の黒色度は得られるが、黒色度が飽和しており、必要以上に含有させる意味がない。好ましくは9〜35重量%であり、より好ましくは10〜20重量%である。
【0027】
本発明に係る非磁性黒色粉末の粉体pH値は、5.5以上である。粉体pH値が5.5未満の場合には、粒子間に多くの酸性不純物が残存するため、架橋を生じて分散性が阻害される。分散性を考慮すると、粉体pH値は、6.5以上が好ましく、より好ましくは粉体pH値が8.0以上である。その上限値は粉体pH値が12以下、好ましくは粉体pH値が11以下、より好ましくは粉体pH値が10以下である。
【0028】
本発明に係る非磁性黒色粉末の可溶性ナトリウム塩の含有量はNa換算で500ppm以下である。500ppmを越える場合には、粒子間にナトリウム塩を含む不純物が架橋し、分散性が阻害される。また、ビヒクル中における黒色顔料粉末の分散性を考慮すると、好ましくは450ppm以下、より好ましくは400ppm以下、更により好ましくは300ppm以下である。生産性等の工業性を考慮すれば、その下限値は0.01ppm程度である。
【0029】
本発明に係る非磁性黒色粉末の可溶性硫酸塩の含有量はSO4 換算で200ppm以下である。200ppmを越える場合には、粒子間に硫酸塩を含む不純物が架橋し、分散性が阻害される。ビヒクル中おける黒色顔料粉末の分散性を考慮すると、好ましくは170ppm以下、より好ましくは150ppm以下である。生産性等の工業性を考慮すれば、その下限値は0.01ppm程度である。
【0030】
本発明に係る非磁性黒色粉末は、後出実施例に示す通り、L* 値が10〜25であって、a* 値が−2.5〜2.5であって、b* 値が−2.5〜2.5であることから公知の黒色顔料と比べで遜色のないものである。色相を考慮すれば、L* 値は10〜24が好ましく、15〜23がより好ましい。a* 値は−2.5〜2.0が好ましく、−2.0〜1.0がより好ましい。b* 値は−2.5〜2.0が好ましく、−2.5〜1.0がより好ましい。
【0031】
本発明に係る非磁性黒色粉末の耐熱性は0〜2.5である。2.5を越える場合には、黒色顔料粉末を用いて樹脂着色等を行なう場合に、変色等が顕著となり好ましくない。
【0032】
本発明に係る非磁性黒色塗料は、塗膜にした場合、後出実施例に示す通り、L* 値が15〜25であって、a* 値が−2.5〜2.5であって、b* 値が−2.5〜2.5であることから、公知の黒色顔料粉末を用いた場合に比べ、遜色がないものである。また、光沢度は、80%以上であって、耐酸性はΔG値が8.0以下、ΔL* 値が1.0以下である。色相を考慮すれば、L* 値は17〜24が好ましく、20〜23がより好ましい。a* 値は−2.5〜2.0が好ましく、−2.0〜1.0がより好ましい。b* 値は−2.5〜2.0が好ましく、−2.0〜1.0がより好ましい。光沢度は83%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。耐酸性はΔG値が7.0以下が好ましく、6.0以下がより好ましい。ΔL* 値は0.8以下が好ましく、0.6以下がより好ましい。
【0033】
本発明に係る非磁性黒色ゴム・樹脂組成物は、後出実施例に示す通り、L* 値が15〜25であって、a* 値が−2.5〜2.5であって、b* 値が−2.5〜2.5であることから、公知の黒色顔料粉末を用いた場合に比べ、遜色がないものである。また、分散性の目視観察の結果は、4〜5の範囲であった。耐老化性は、190℃で90分加熱した際の変色した部分の割合が15%以下である。色相を考慮すれば、L* 値は17〜24が好ましく、20〜24がより好ましい。a* 値は−2.5〜2.0が好ましく、−2.0〜1.0がより好ましい。b* 値は−2.5〜2.0が好ましく、−2.0〜1.0がより好ましい。耐老化性は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
【0034】
次に、本発明に係る非磁性黒色粉末の製造法について述べる。
【0035】
本発明に係る黒色顔料粉末は、前出特開平4−144924号公報記載の下記製造法により得られたMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する平均粒径が0.05〜5.0μmの八面体状粒子又は球状粒子を含むスラリーを湿式粉砕した後、該スラリーのpH値を13以上に調整し、次いで、80℃以上の温度で加熱処理した後、濾別、水洗、乾燥することにより得ることができる。
【0036】
Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する平均粒径が0.05〜5.0μmの八面体状粒子は、第一鉄塩水溶液と該第一鉄塩水溶液中のFe2+に対して1.01〜1.3当量の水酸化アルカリ水溶液とを反応させて得られた水酸化第一鉄コロイドを含む懸濁液を、45〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気するマグネタイト生成反応により前記水酸化第一鉄コロイドを酸化してマグネタイト粒子を生成させることによってマグネタイト粒子を含む懸濁液とし、当該マグネタイト粒子を含む懸濁液にMn又はMnとFe2+とを水溶液の状態で添加して液中の全Feに対して8〜150原子%のMnを存在させた後、当該懸濁液を前記マグネタイト生成反応と同条件下で加熱酸化することによってマグネタイト粒子表面をMnの水酸化物又はMnとFeの水酸化物とによって被覆し、次いで、当該Mnの水酸化物又はMnとFeの水酸化物とを被覆したマグネタイト粒子を濾別、水洗、乾燥し、次いで、750〜1000℃の温度範囲で加熱焼成することにより得る。
【0037】
Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する平均粒径が0.1〜10μmの球状粒子は、第一鉄塩水溶液と該第一鉄塩水溶液中のFe2+に対して0.80〜0.99当量の水酸化アルカリ水溶液とを反応させて得られた水酸化第一鉄コロイドを含む懸濁液を、45〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気するマグネタイト粒子を生成反応により前記水酸化第一鉄コロイドを酸化してマグネタイト粒子を生成させることによってマグネタイト粒子を含む懸濁液とし、当該マグネタイト粒子を含む懸濁液に液中の全Feに対し8〜150原子%のMn化合物の水溶液と当該Mn化合物と残存Fe2+とに対して1.00当量を越える量の水酸化アルカリ水溶液とを添加した後、前記マグネタイト生成反応と同条件下で加熱酸化することによってマグネタイト粒子表面をMnの水酸化物又はMnとFeの水酸化物とによって被覆し、次いで、当該Mnの水酸化物又はMnとFeの水酸化物とを被覆したマグネタイト粒子を濾別、水洗、乾燥し、次いで、750〜1000℃の温度範囲で加熱焼成することにより得る。
【0038】
上掲Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する八面体状粒子や球状粒子を製造するにあたっての諸条件について述べる。
【0039】
第一鉄塩水溶液としては、硫酸第一鉄、塩化第一鉄等を使用することができる。
【0040】
Mn化合物の水溶液としては、硫酸マンガン、塩化マンガン等を使用することができ、マグネタイト粒子の粒子表面に均一に被覆するためには、水溶液の状態で添加することが好ましい。
【0041】
水酸化アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用することができる。
【0042】
前記八面体状粒子の非磁性黒色顔料粉末が得られる八面体状を呈したマグネタイト粒子を生成させる製造法としては、例えば、特公昭44−668号公報に開示されている技術手段を用いることができる。
【0043】
水酸化アルカリ水溶液の量は、第一鉄塩水溶液中のFe2+に対して1.01〜1.3当量である。1.01当量未満の場合には、アルカリ添加比のコントロールが難しく、場合により当量比が1.0未満となることもあり、また、粒子サイズ等のコントロールも難しくなる。1.3当量を越える場合には、針状ゲータイト粒子が混在してくる。
【0044】
また、反応温度は45〜100℃の温度範囲であり、45℃未満の場合には、針状ゲータイト粒子が混在するおそれがあり、100℃を越える場合にも八面体状を呈したマグネタイト粒子は生成するが経済的ではない。
【0045】
八面体状を呈したマグネタイト粒子の粒子表面にMnの水酸化物又はMnとFeの水酸化物とを被覆するMnの量は、懸濁液中の全Feに対して8〜150原子%である。Mnが8原子%未満の場合には、非磁性の顔料粉末は得られるが、所望の黒色度は得られ難い。150原子%を越える場合には、所望の黒色度は得られるが、黒色度が飽和しており、必要以上に含有させる意味がない。好ましくは10〜100原子%であり、より好ましくは15〜50原子%の範囲である。
【0046】
また、必要により、MnとともにFe2+を添加するのは、マグネタイト粒子の粒子表面にMnを被覆しやすくするためであり、添加するFe2+の量としては、懸濁液中の全Feに対し25原子%未満であり、25原子%を越える場合にも非磁性黒色顔料粉末は得られるが、黒色度においてやゝ劣るものとなる。
【0047】
尚、添加するFe2+の化合物は、マグネタイト粒子の生成に用いた第一鉄塩水溶液と同じものを使用することが望ましく、被覆処理において、さらに水酸化アルカリ水溶液を追加して添加してもよい。また、被覆するための処理温度等の条件は、マグネタイト粒子の生成条件と同一でよい。
【0048】
前記球状粒子の非磁性黒色顔料粉末が得られる球状を呈したマグネタイト粒子を生成する製造法としては、例えば、特公昭62−51208号公報に開示されている技術手段を用いることができる。
【0049】
水酸化アルカリ水溶液の量は、第一鉄塩水溶液中のFe2+に対して0.80〜0.99当量である。0.80当量未満又は0.99当量を越える場合には、球状を呈したマグネタイト粒子を生成することは困難である。
【0050】
また、反応温度は45〜100℃の温度範囲であり、45℃未満の場合には、針状ゲータイト粒子が混在するおそれがあり、100℃を越える場合にも粒状を呈したマグネタイト粒子は生成するが経済的ではない。
【0051】
球状を呈したマグネタイト粒子に添加するMnの量も懸濁液中の全Feに対して8〜150原子%である。好ましくは10〜100原子%であり、より好ましくは15〜50原子%の範囲である。その理由は前記八面体状を呈したマグネタイト粒子の場合と同様である。
【0052】
また、MnとFeの水酸化物とを被覆するために添加する水酸化アルカリの量は、添加するMn化合物と残存するFe2+とに対し1.00当量を越える量である。1.00当量未満の場合には、MnとFe2+とが全量沈澱しないので均一に被覆することができなくなる。1.00当量を越える場合には、経済性を考慮すると、好ましくは1.01〜1.3当量である。
【0053】
尚、添加する水酸化アルカリ水溶液は、マグネタイト粒子の生成に用いた水酸化アルカリ水溶液と同じものを使用することが望ましく、被覆するための処理温度等の条件は、マグネタイト粒子の生成条件と同一でよい。
【0054】
反応の酸化手段としては、酸素含有ガス(例えば、空気)を反応懸濁液に通気することにより行なうことができ、攪拌機能が設置された反応器で行なうことが好ましい。
【0055】
Mnの水酸化物又はMnとFeの水酸化物を被覆したマグネタイト粒子は、次いで、750〜1000℃の温度範囲で加熱してMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒状粒子を得る。750℃未満の場合には、黒色度が不足し、1000℃を越える場合には、粒子が大きくなりすぎて着色力が出なくなる。
【0056】
尚、加熱焼成する場合の雰囲気は空気中で行なう。空気中で加熱焼成するのは、マグネタイトを酸化してヘマタイト構造に変態させるためである。
【0057】
尚、Si,Al,P,B,Cu,Zn,Cr,Co,Sn,Cd,V,Mo等の金属化合物を前出両製造法における反応前又は反応途中において添加してもよく、また、反応終了後のMnの水酸化物若しくはMnとFeの水酸化物を被覆したマグネタイト粒子の粒子表面を前記金属化合物で被覆処理を施して粒子形状の形成や粒子形状の維持を行なってもよい。
【0058】
Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒状粒子は、次いで、乾式で粗粉砕をして粗粒をほぐした後、スラリー化し、次いで、湿式粉砕することにより更に粗粒をほぐす。湿式粉砕は、少なくとも44μm以上の粗粒が無くなるようにボールミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、コロイドミル等を用いて行えばよい。湿式粉砕の程度は44μm以上の粗粒が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは0%である。44μm以上の粗粒が10%を越えて残存していると、次工程におけるアルカリ水溶液中の処理効果が得られ難い。
【0059】
粗粒を除去したMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒状粒子を含むスラリーは、該スラリーに水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を添加してpH値を13以上に調整した後、80℃以上の温度で加熱処理する。
【0060】
Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒状粒子を含むpH値が13以上のアルカリ性懸濁液の濃度は、50〜250g/lが好ましい。
【0061】
Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒状粒子を含むアルカリ性懸濁液中のpH値が13未満の場合には、粒子内部及び粒子表面に存在する可溶性ナトリウム塩、可溶性硫酸塩等の洗い出しが不十分となる。その上限は、pH値が14程度である。可溶性ナトリウム塩、可溶性硫酸塩等の洗い出しの効果、更には、アルカリ性水溶液処理中に粒子表面に付着したナトリウム等のアルカリを除去するための洗浄効果を考慮すれば、pH値は13.1〜13.8の範囲が好ましい。
【0062】
Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒状粒子を含むpH値が13以上のアルカリ性水溶液の加熱温度は、80℃以上が好ましく、より好ましくは90℃以上ある。80℃未満の場合には、粒子内部及び粒子表面に存在する可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩等の洗い出しが不十分となる。加熱温度の上限値は103℃が好ましく、より好ましくは100℃である。103℃を越える場合には、オートクレーブ等が必要となったり、常圧下おいては、被処理液が沸騰するなど工業的に有利でなくなる。
【0063】
アルカリ水溶液中で加熱処理した粒子は、常法により、濾別、水洗することにより、粒子内部及び粒子表面から洗い出した可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩やアルカリ水溶液処理中に粒子表面に付着したナトリウム等のアルカリを除去し、次いで、乾燥する。
【0064】
水洗法としては、デカンテーションによって洗浄する方法、フィルターシックナーを使用して希釈法で洗浄する方法、フィルタープレスに通水して洗浄する方法等の工業的に通常使用されている方法を使用すればよい。
【0065】
尚、Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒状粒子の粒子内部に含有されている可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩を水洗して洗い出しておけば、それ以降の工程、例えば、後出する被覆処理工程において粒子の粒子表面に可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩が付着しても水洗により容易に除去することができる。
【0066】
アルカリ水溶液中で加熱処理した粒状粒子は、必要により、アルカリ水溶液中で加熱処理した後、常法により濾別、水洗し、次いで、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物の少なくとも1種により被覆されていてもよい。
【0067】
被覆処理は、アルカリ水溶液中で加熱処理した粒状粒子のケーキ、スラリー、乾燥粉末を水溶液中に分散して得られる水懸濁液に、アルミニウム化合物、ケイ素化合物又は当該両化合物を添加して混合攪拌することにより、または、必要により、pH値を調整することにより、前記粒状粒子の粒子表面に、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物を被着すればよく、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕する。必要により、更に、脱気・圧密処理等を施してもよい。
【0068】
被覆処理において添加するアルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ塩、アルミナゾル等が使用できる。
【0069】
アルミニウム化合物の添加量は、アルカリ水溶液中で加熱処理した粒状粒子粉末に対しAl換算で0.01〜50.00重量%である。0.01重量%未満である場合には、ビヒクル中における分散が不十分であり、50.00重量%を越える場合には、被覆効果が飽和するため、必要以上に添加する意味がない。
【0070】
被覆処理において添加するケイ素化合物としては、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、コロイダルシリカ等が使用できる。
【0071】
ケイ素化合物の添加量は、アルカリ水溶液中で加熱処理した粒状粒子粉末に対しSiO2 換算で0.01〜50.00重量%である。0.01重量%未満である場合には、ビヒクル中における分散が不十分であり、50.00重量%を越える場合には、被覆効果が飽和するため、必要以上に添加する意味がない。
【0072】
アルミニウム化合物とケイ素化合物とを併せて使用する場合には、アルカリ水溶液中で加熱処理した粒状粒子粉末に対し、Al換算量とSiO2 換算量との総和で0.01〜50.00重量%が好ましい。
【0073】
次に、本発明に係る塗料について述べる。
【0074】
本発明に係る塗料中における非磁性黒色顔料粉末の配合割合は、塗料構成基材100重量部に対し0.1〜200重量部の範囲で使用することができ、塗料のハンドリングを考慮すれば、好ましくは0.1〜100重量部、更に好ましくは0.1〜50重量部である。
【0075】
本発明における塗料構成基材としては、樹脂、溶剤及び必要に応じて体質顔料、乾燥促進剤、界面活性剤、硬化促進剤、助剤等が配合される。
【0076】
樹脂としては、溶剤系塗料用として通常使用されるアクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂等を用いることができる。水系塗料用としては、通常使用される水溶性アルキッド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタンエマルジョン樹脂を用いることができる。
【0077】
溶剤としては、溶剤系塗料用として通常使用されるトルエン、キシレン、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルアルコール、脂肪族炭化水素等を用いることができる。
【0078】
水系塗料用としては、水に加えて通常使用されるブチルセロソルブ、ブチルアルコール等を使用することができる。
【0079】
消泡剤としては、ノプコ8034(商品名)、SNデフォーマー477(商品名)、SNデフォーマー5013(商品名)、SNデフォーマー247(商品名)、SNデフォーマー382(商品名)(以上、いずれもサンノプコ株式会社製)、アンチホーム08(商品名)、エマルゲン903(商品名)(以上、いずれも花王株式会社製)等の市販品を使用することができる。
【0080】
次に、本発明に係るゴム・樹脂組成物及びその製造法について述べる。
【0081】
本発明に係るゴム・樹脂組成物中における非磁性黒色顔料粉末の配合割合は、構成基材100重量部に対し0.01〜200重量部の範囲で使用することができ、ゴム・樹脂組成物のハンドリングを考慮すれば、好ましくは0.05〜100重量部、更に好ましくは0.1〜50重量部である。
【0082】
本発明に係るゴム又は樹脂組成物における構成基材としては、非磁性黒色顔料粉末とゴム又は周知の熱可塑性樹脂とともに、必要により、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種安定剤等の添加剤が配合される。
【0083】
添加剤の量は、非磁性黒色顔料粉末とゴム又は熱可塑性樹脂との総和に対して50重量%以下であればよい。添加物の含有量が50重量%を越える場合には、成形性が低下する。
【0084】
本発明に係るゴム又は樹脂組成物は、ゴム又は樹脂原料と非磁性黒色顔料粉末をあらかじめよく混合し、次に、混練機もしくは押出機を用いて加熱下で強いせん断作用を加えて、黒色顔料粉末の凝集体を破壊し、ゴム又は樹脂中に黒色顔料粉末を均一に分散させた後、目的に応じた形状に成形加工して使用する。
【0085】
【発明の実施の形態】
本発明の代表的な実施の形態は、次の通りである。
【0086】
黒色顔料の平均粒径は、電子顕微鏡写真(×20000)を縦方向及び横方向にそれぞれ4倍に拡大した写真(×80000)に示される粒子約350個について定方向径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0087】
粒子径の幾何標準偏差値(σg)は、下記の方法により求めた値で示した。即ち、上記拡大写真に示される粒子径を測定した値を、その測定値から計算して求めた粒子の実際の粒子径と個数から統計学的手法に従って対数正規確率紙上の横軸に粒子の粒子径を、縦軸に所定の粒子径区間のそれぞれに属する粒子の累積個数(積算フルイ下)を百分率でプロットする。そして、このグラフから粒子の累積個数が50%及び84.13%のそれぞれに相当する粒子径の値を読みとり、幾何標準偏差値(σg)=積算フルイ下84.13%における粒子径/積算フルイ下50%における粒子径(幾何平均径)に従って算出した値で示した。幾何標準偏差値が小さい程、粒子の粒子径の粒度分布が優れていることを意味する。
【0088】
比表面積はBET法により測定した値で示した。
【0089】
黒色顔料粉末の粒子内部や表面に存在するMn、Al及びSiのそれぞれの量は蛍光X線分析装置3063型(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS
K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0090】
粉体pH値は、試料5gを300mlの三角フラスコに秤り取り、煮沸した純水100mlを加え、加熱して煮沸状態を約5分間保持した後、栓をして常温まで放冷した後、栓を開き減量に相当する純水を加えて再び栓をして1分間振り混ぜ、5分間静置した後、得られた上澄み液のpHをJIS Z 8802−7に従って測定し、得られた値を粉体pH値とした。
【0091】
可溶性ナトリウム塩の含有量及び可溶性硫酸塩の含有量は、上記粉体pH値の測定用に作製した上澄み液をNo.5Cの濾紙を用いて濾過し、濾液中のNa+ 及びSO4 2−を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(セイコー電子工業株式会社製)を用いて測定した。
【0092】
黒色顔料粉末の色相は、試料0.5gとヒマシ油0.7ccとをフーバー式マーラーで練ってペースト状とし、このペーストにクリアーラッカー4.5gを加え、混練、塗料化してキャストコート紙上に6milのアプリケーターを用いて塗布した塗布片(塗膜厚み:約30μm)を作製し、該塗料片について、多光源分光測色計MSC−IS−2D(スガ試験機株式会社製)を用いてJIS Z8729に定めるところに従って表色指数L* 値、a* 値、b* 値をそれぞれ測定した値で示した。
【0093】
同様に黒色顔料粉末を用いた塗料の色相については、後述組成の塗料を用いた塗布膜の色相を、樹脂組成物の色相については、後述組成からなる樹脂プレートの色相を、多光源分光測色計MSC−IS−2D(スガ試験機株式会社製)を用いてJIS Z8729に定めるところに従って表色指数L* 値、a* 値、b* 値をそれぞれ測定した値で示した。
【0094】
尚、a* 値は赤味を表し、値が大きい程赤味が強いことを意味する。b* 値は黄味を表し、値が大きい程黄味が強いことを意味する。L* 値は明度を表す。
【0095】
黒色顔料粉末の耐熱性は、試料10gを磁製ルツボに入れ、電気炉を用いて500℃で3時間加熱処理を行い、放冷後、試料粉末の色相を測定し、加熱処理前と後の色相の変化を測定することによって求め、加熱処理前の測色値を基準に下式で示されるΔE* で示した。ΔE* が小さい程、色相の変化が少なく、耐熱性に優れていることを示す。
ΔE* ={(ΔL* )2 +(Δa* )2 +(Δb* )2 }1/2
但し、ΔL* :比較する試料間のL* 値の差
Δa* :比較する試料間のa* 値の差
Δb* :比較する試料間のb* 値の差
【0096】
湿式粉砕後のフルイ残量は、湿式粉砕後のスラリー濃度を別途に求めておき、黒色顔料粉末の固形分100gに相当する量のスラリーを325メッシュ(目開き44μm)のフルイに通し、フルイに残った固形分量を定量することにより求めた。
【0097】
塗料ビヒクルへの分散性は、後出の発明の実施の形態と同様にして作製した塗布膜について、塗布面の光沢度により調べた。
【0098】
光沢度は、グロスメーターUGV−5D(スガ試験機株式会社製)を用いて20°の光沢を測定して求めた。光沢度の値が高い程分散性が良いことを示す。
【0099】
塗料粘度は、後述の処方によって調製した塗料の25℃における塗料粘度をE型粘度計(コーンプレート型粘度計)EMD−R(株式会社東京計器製)を用いて測定し、ずり速度D=1.92sec−1における値で示した。
【0100】
樹脂組成物への分散性は、得られた樹脂組成物表面における未分散の凝集粒子の個数を目視により判定し、5段階で評価した。5が最も分散状態が良いことを示す。
5:未分散物が認められない。
4:1cm2 当たりに1〜4個認められる。
3:1cm2 当たりに5〜9個認められる。
2:1cm2 当たりに10〜49個認められる。
1:1cm2 当たりに50個以上認められる。
【0101】
耐酸性は、後述実施例で得られる黒色顔料粉末を用いた塗料を、冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm:JIS G−3141)に150μmの厚みで塗布、乾燥して製造した塗膜を有する試料を用意し、光沢度及び色相を測定しておく。次に、1000ccのビーカーに5wt%硫酸水溶液を入れ、上記試料を糸でつるして約120mmの深さまで浸し、25℃で24時間静置する。
【0102】
次に、試料を硫酸水溶液中から取り出して流水で静かに洗い、水を振り切った後、試料の中心部分の光沢度及び色相を測定する。そして硫酸水溶液への浸漬前後の光沢度変化(ΔG値)及び色相変化(ΔL* 値:試料間のL* 値の差)を測定し、これの大小で耐酸性を評価した、ΔG値及びΔL* 値がともに小さい程、耐酸性に優れていることを示す。
【0103】
耐老化性は、後述実施例等で得られる黒色顔料粉末を練り込んだ着色樹脂プレート(縦15mm×横15mm×厚み1mm)を190℃で加熱したときに、変色して樹脂が劣化した部分の面積Sを測定した値と加熱前の着色樹脂プレートの表面の面積S0 (15mm×15mm=2.25cm2 )との比S/S0 を5%刻みで定量することにより求めた。
即ち、(S/S0 )×100が0%のときは、劣化が無い状態を示し、(S/S0 )×100が100%のときは、樹脂が完全に劣化した状態を示す。
【0104】
<マグネタイト粒子の製造>
濃度が1.40mol/lの硫酸第一鉄水溶液300lをあらかじめ攪拌機付反応器中に準備された水210l及び15.75Nの水酸化ナトリウム水溶液60lに加え、pH値が13以上、温度85℃において水酸化第一鉄を含む第一鉄塩水溶液の生成を行なった。
【0105】
上記水酸化第一鉄を含む第一鉄塩水溶液に温度90℃において毎分250lの空気を90分間通気してマグネタイト粒子を生成した。
【0106】
次いで、上記マグネタイト粒子32.4kgを含む水懸濁液570lに、濃度1.4mol/lの硫酸第一鉄水溶液100lと1.4mol/lを含む硫酸マンガン水溶液100l(Mn量はFe及びMnに対し20原子%に該当する。)と11.2Nの水酸化ナトリウム水溶液50l(添加Mn量と添加Fe2+量を中和する量に該当する。)とを加え、pH値が13以上、温度90℃において毎分700lの空気を180分間通気してMn及びFeの水酸化物とを被覆しているマグネタイト粒子を生成した。生成した粒子は、常法により、濾別、水洗、乾燥、粉砕して黒色粉末を得た。
【0107】
続いて、得られた黒色粉末をセラミック製の炉心管を有する連続電気炉に通し、空気中900℃、60分間の平均滞留時間を与えて黒色粉末を得た。
【0108】
得られた黒色粉末は、図1の電子顕微鏡(×20000)に示す通り、平均粒子径が0.30μm、粒子径の幾何標準偏差値が1.39の粒状粒子であり、BET比表面積値は3.8m2 /gであった。蛍光X線分析の結果、Mn含有量は13.8重量%であり、粉体pH値は7.4、可溶性ナトリウム塩の含有量はNa換算で712ppm、可溶性硫酸塩の含有量はSO4 換算で856ppm、また、その色相は、L* 値が22.10、a* 値が0.21、b* 値が−1.31であった。
【0109】
また、X線回折の結果、ヘマタイトのピークが認められた。磁性は、外部磁場10kOeを印加した時の磁化値が0.31emu/gであり、略ヘマタイトと同程度であった。
【0110】
更に、上記黒色粉末10gの耐熱試験を行なった、加熱処理後の黒色粉末の色相は L* 値が22.08、a* 値が0.16、b* 値が−1.26、耐熱性はΔEが0.07であり、耐熱性に優れていることが認められた。
【0111】
<黒色顔料粉末のアルカリ加熱処理>
次に、この黒色粉末のうち20kgを純水150lに攪拌機を用いて邂逅し、さらに、ホモミックラインミル(特殊機化工業株式会社製)を3回通して、黒色粉末のスラリーを得た。
【0112】
続いて、得られた黒色スラリーを横形SGM(マイティーミル:井上製作所株式会社製)を用いて、軸回転数2000rpmにおいて5回パスさせた。得られたスラリー中の黒色粉末の325メッシュ(目開き44μm)におけるフルイ残分は0%であった。
【0113】
得られた黒色粉末のスラリーの濃度を100g/lとし、スラリーを150l採取した。このスラリーを攪拌しながら6Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてスラリーのpH値を13.1に調整した。続いて、このスラリーを攪拌しながら加熱して95℃まで昇温し、その温度で3時間保持した。
【0114】
次に、このスラリーをデカンテーション法により水洗し、pH値が10.5のスラリーとした。正確を期すため、この時点でスラリー濃度を確認したところ99g/lであった。このスラリーを50l分取し、濾別、乾燥して黒色粉末(A)を得た。
【0115】
得られた黒色粉末は、図2の電子顕微鏡(×20000)に示す通り、平均粒子径が0.30μm、粒子径の幾何標準偏差値が1.39の粒状粒子であり、BET比表面積値は4.1m2 /gであった。蛍光X線分析の結果、Mn含有量は13.7重量%であり、粉体pH値は8.6、可溶性ナトリウム塩の含有量はNa換算で96ppm、可溶性硫酸塩の含有量はSO4 換算で32ppm、耐熱性はΔEが0.07であった。また、その色相は、L* 値が22.12、a* 値が0.19、b* 値が−1.26であった。
【0116】
また、X線回折の結果、ヘマタイトのピークが認められた。磁性は、外部磁場10kOeを印加した時の磁化値が0.36emu/gであり、略ヘマタイトと同程度であった。
【0117】
<黒色顔料粉末の被覆処理>
残部の前記スラリー100lを加熱して60℃とし、このスラリー中に1.0mol/lのアルミン酸ナトリウム水溶液3667ml(黒顔料粉末に対してAl換算で1.0重量%に該当する。)を加え、30分間保持した後、酢酸を用いてpH値が8.0に調整した。この状態で30分間保持した後、3号水ガラス水溶液685.1g(黒顔料粉末に対してSiO2 換算で2.0重量%に該当する。)を加え、30分間保持した後、酢酸を用いてpH値が7.5に調整した。次いで、濾過、水洗、乾燥、粉砕して粒子表面にアルミニウムの水酸化物とケイ素の酸化物により被覆されている黒色粒子からなる黒色粉末(B)を得た。
【0118】
得られた黒色粉末は、電子顕微鏡写真観察の結果、平均粒子径が0.30μm、粒子径の幾何標準偏差値が1.39の粒状粒子であり、BET比表面積値は11.2m2 /gであった。蛍光X線分析の結果、Mn含有量は13.5重量%、Al含有量は0.97重量%、SiO2 含有量は1.93重量%であり、粉体pH値は8.1、可溶性ナトリウム塩の含有量はNa換算で123ppm、可溶性硫酸塩の含有量はSO4 換算で78ppm、耐熱性はΔEが0.1であった。また、その色相は、L* 値が22.31、a* 値が0.37、b* 値が−1.31であった。また、X線回折の結果、ヘマタイト構造を示すピークが認められた。
【0119】
<黒色顔料粉末を用いた塗料の製造>
140mlのガラスビンに前記黒色顔料粉末(A)及び(B)のそれぞれ10gを用い、塗料組成を下記割合で配合して3mmφガラスビーズ90gとともにペイントシェーカーで90分間混合分散し、ミルベースを作製した。
【0120】
得られた塗料組成は、下記の通りであった。
黒顔料粉末(A)又は(B) 12.2重量部
アミノアルキッド樹脂 19.5重量部
(アミラックNo.1026:関西ペイント株式会社製)
シンナー 7.3重量部
【0121】
上記ミルベースを用いて、塗料組成を下記割合で配合してペイントシェーカーでさらに15分間混合分散して、黒色顔料粉末(A)を含む塗料(A)及び黒色顔料粉末(B)を含む塗料(B)を得た。
【0122】
得られた塗料組成は、下記の通りであった。
ミルベース 39.0重量部
アミノアルキッド樹脂 61.0重量部
(アミラックNo.1026:関西ペイント株式会社製)
【0123】
次に、得られた塗料を冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm:JIS G−3141)に150μmの厚みて塗布、乾燥した。
【0124】
塗料(A)を用いて製造した塗膜は、光沢度が96%、色相は、L* 値が22.81、a* 値が0.41、b* 値が−1.49であり、塗膜の耐酸性テストに基づく光沢度変化ΔG値が3.8%、明度変化ΔL* 値が0.31であった。
【0125】
塗料(B)を用いて製造した塗膜の光沢度が105%、色相は、L* 値が22.76、a* 値が0.37、b* 値が−1.51であり、塗膜の耐酸性テストに基づく光沢度変化ΔG値が2.1%、明度変化ΔL* 値が0.10であった。
【0126】
<黒色顔料粉末を含む樹脂組成物の製造>
前記黒顔料粉末(A)及び(B)のそれぞれを用い、黒色顔料粉末1.5gとポリ塩化ビニル樹脂粉末103EP8D(日本ゼオン株式会社製)48.5gとを秤量し、これらを100ccポリビーカーに入れ、スパチュラでよく混合して混合粉末を得た。
【0127】
得られた混合粉末にステアリン酸カルシウムを0.5gを加えて混合し、160℃に加熱した熱間ロールのクリアランスを0.2mmに設定し、上記混合粉末を少しづつロールに練り込んで樹脂組成物が一体となるまで混練を続けた後、樹脂組成物をロールから剥離して着色樹脂プレート原料をとして用いた。
【0128】
次に、表面研磨されたステンレス板の間に上記樹脂組成物を挟んで180℃に加熱したホットプレス内に入れ、1トン/cm2 の圧力で加圧成形して厚さ1mmの着色樹脂プレート(A)及び(B)を得た。
【0129】
得られた着色樹脂プレート(A)の分散状態は5であった。着色樹脂プレート(A)を1.5cm角に裁断した試験片3枚を190℃に加熱されたギヤオーブン中に入れ、30分毎に1枚づつ取り出し、樹脂劣化の状態を調べたところ、30分後の劣化程度(S/S0 ×100)は0%、60分後の樹脂劣化程度は5%、90分後の樹脂劣化程度は5%であった。
【0130】
得られた着色樹脂プレート(B)の分散状態は5であった。着色樹脂プレート(B)を1.5cm角に裁断した試験片3枚を190℃に加熱されたギヤオーブン中に入れ、60分毎に1枚づつ取り出し、樹脂劣化の状態を調べたところ、30分後の劣化程度(S/S0 ×100)は0%、60分後の樹脂劣化程度は0%、90分後の樹脂劣化程度は0%であった。
【0131】
【作用】
先ず、本発明において最も重要な点は、Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する平均径0.1〜10μmの非磁性黒色粒状粒子からなるMn含有量がFeに対し5〜70重量%であって、粉体pH値が5.5以上であって、且つ、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で500ppm以下、可溶性硫酸塩の含有量がSO4 換算で200ppm以下である非磁性黒色粒状粒子粉末は、黒色度及び耐熱性が優れており、且つ、より分散性に優れているという事実である。
【0132】
黒色度が優れている理由について、本発明者は、Mnが粒子内部に不均一に含有されていたり、表面層のみに含有されているヘマタイト粒子である場合には、黒色度が優れておらず、Mnの水酸化物又はMnとFeの水酸化物とを被覆したマグネタイト粒子を750〜1000℃の温度範囲で加熱焼成することにより、マグネタイトが酸化されてヘマタイト構造に変化するとともに、被覆したMnの水酸化物が粒子表面から粒子内部に拡散した場合には、黒色度が優れていることから、ヘマタイト構造中のMnの存在位置が影響しているものと考えている。
【0133】
耐熱性が優れている理由について、本発明者は、Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒子は、750℃以上の高温で製造されていることによるものと考えている。
【0134】
より分散性が優れていることについて、本発明者は、固体架橋の原因となっている原料に由来する可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩がアルカリ処理により除去できたことにより、固体架橋が解きほぐされ凝集が解けるので、分散性が改善されたものと考えている。
【0135】
次に、本発明において重要な点は、本発明に係るMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する粒子を用いて得られる塗料やゴム・樹脂組成物は、黒色度及び耐熱性が優れていることはもちろん、塗料の場合には、耐酸性が優れており、ゴム・樹脂組成物の場合には、耐老化性が優れているという事実である。
【0136】
塗料の耐酸性やゴム・樹脂組成物の耐老化性が優れている理由については未だ明らかではないが、本発明者は、加熱処理後の黒色粉末中の耐酸性を阻害する成分、例えば、原料に由来する可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩がアルカリ処理により取り除くことができたものと考えている。
【0137】
【実施例】
次に、実施例並びに比較例を挙げる。
【0138】
<黒色顔料粉末の製造>
実施例1〜6
出発原料1〜4を前記本発明の実施の形態と同様にして製造した。
【0139】
得られた出発原料1〜4の諸特性を表1に示す。
【0140】
出発原料1〜4を用いて、前記本発明の実施の形態と同様にしてMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する黒色顔料粉末を製造した。
【0141】
この時の主要条件及び諸特性を表2に示す。
【0142】
【表1】
【0143】
【表2】
【0144】
実施例7〜12
Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する黒色粉末の種類、湿式粉砕の有無、アルカリ水溶液中加熱処理におけるpH値、温度、時間を種々変化させた以外は、前記本発明の実施の形態と同様にしてアルカリ水溶液処理済黒色顔料粉末を得た。
【0145】
この時の主要製造条件及び諸特性を表3に示す。
【0146】
【表3】
【0147】
実施例13〜18
実施例7〜12の各黒色顔料粉末を用い、表面被覆物の種類及び量を種々変化させた以外は、前記本発明の実施の形態と同様にして粒子表面が被覆物で被覆されている黒色粒子からなる黒色顔料粉末を得た。
【0148】
この時の主要製造条件及び諸特性を表4に示す。
【0149】
【表4】
【0150】
比較例1〜10
アルカリ処理前のMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する黒色顔料粉末である比較例1〜3、公知の黒色顔料粉末である比較例4〜7及びアルカリ処理後のMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する黒色顔料粉末である比較例8〜10を準備した。
【0151】
これら黒色顔料粉末の諸特性を表5及び表6に示す。
【0152】
尚、比較例7のMn固溶酸化鉄系顔料粉末は前出特開平8−143316号公報に記載の製造法に従って製造したものである。
【0153】
【表5】
【0154】
【表6】
【0155】
<塗料の製造>
実施例19〜30及び比較例11〜20
黒色顔料粉末の種類を種々変化させた以外は、前記本発明の実施の形態と同様にして塗料を製造し、塗膜を形成した。
【0156】
この時の主要製造条件及び塗膜特性を表7及び表8に示す。
【0157】
【表7】
【0158】
【表8】
【0159】
<樹脂組成物の製造>
実施例31〜42及び比較例21〜30
黒色顔料粉末の種類を種々変化させた以外は、前記本発明の実施の形態と同様にして樹脂組成物を得た。
【0160】
この時の主要製造条件及び諸特性を表9及び表10に示す。
【0161】
【表9】
【0162】
【表10】
【0163】
【発明の効果】
本発明に係る非磁性黒色顔料粉末は、黒色度及び耐熱性が優れており、且つ、より分散性に優れているので、塗料用、ゴム・樹脂組成物用の着色材及び充填材として好適である。
【0164】
本発明に係る塗料は、上記諸特性を有する非磁性黒色顔料粉末を用いたことに起因して、黒色度が優れており、且つ、耐酸性に優れた塗膜を得ることができる。
【0165】
本発明に係るゴム・樹脂組成物は、上記諸特性を有する非磁性黒色顔料粉末を用いたことに起因して、黒色度が優れており、且つ、耐老化性に優れたゴム・樹脂組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態で得られたアルカリ処理前のMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する黒色顔料粉末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×20000)である。
【図2】本発明の実施の形態で得られたアルカリ処理前のMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有するアルカリ水溶液加熱処理後の黒色顔料粉末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×20000)である。
Claims (3)
- Mnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する平均径0.1〜10μmの非磁性黒色粒状粒子からなるMn含有量が非磁性黒色顔料粉末に対し5〜40重量%であって、粉体pH値が5.5以上であって、且つ、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で500ppm以下、可溶性硫酸塩の含有量がSO4換算で200ppm以下である非磁性黒色粉末であることを特徴とする非磁性黒色顔料粉末。
【請求項2】粒子表面がアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物の少なくとも1種で被覆されているMnを含有している鉄を主成分とするヘマタイト構造を有する平均径0.1〜10μmの非磁性黒色粒状粒子からなるMn含有量が非磁性黒色顔料粉末に対し5〜40重量%であって、粉体pH値が5.5以上であって、且つ、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で500ppm以下、可溶性硫酸塩の含有量がSO4 換算で200ppm以下である非磁性黒色粉末であることを特徴とする非磁性黒色顔料粉末。 - 請求項1又は請求項2記載の非磁性黒色顔料粉末を塗料構成基材中に配合したことを特徴とする非磁性黒色塗料。
- 請求項1又は請求項2記載の非磁性黒色顔料粉末をゴム・樹脂組成物構成基材中に配合したことを特徴とする非磁性黒色ゴム・樹脂組成物。
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