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JP3543923B2 - グルコース濃度測定装置 - Google Patents

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JP3543923B2
JP3543923B2 JP20911998A JP20911998A JP3543923B2 JP 3543923 B2 JP3543923 B2 JP 3543923B2 JP 20911998 A JP20911998 A JP 20911998A JP 20911998 A JP20911998 A JP 20911998A JP 3543923 B2 JP3543923 B2 JP 3543923B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は生体におけるグルコース濃度の測定装置に関し、詳細には眼球部の前眼房水内におけるグルコース濃度を非侵襲的に測定する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
血液中のグルコース濃度は個人差によりその平均レベルは異なるが、特に糖尿病疾患に対する投薬の要否を決定するための重要な指標値となっている。
【0003】
ところでこの血中グルコース濃度は、食餌、肉体的活動、その他疾患の併発等によって極短時間の間に大きく変動する特性を有しており、急激な血中グルコース濃度の上昇によって緊急に投薬を要する場合も少なくない。
【0004】
このため、このような疾患を有する患者についてはなるべく短い間隔で血中グルコース濃度をモニタすることが望まれているが、一方でこの血中グルコース濃度のモニタは通常、指先を穿切して実際に採血し、この血液を分析することにより血液中に含まれるグルコースの濃度(以下、単に血中グルコース濃度という)を測定することにより行なう必要があり、この穿切に伴う痛みのため患者に1日に何回も測定を強要するのは困難な状況にある。
【0005】
そこで近年、このような欠点を有する上記侵襲型(侵入型)の測定に代えて、痛み等を伴わない非侵襲型(非侵入型)の測定装置が種々提案されている。
【0006】
これらは主として、人の眼球部の角膜と水晶体との間にある前眼房を満たす眼房水中のグルコース濃度が、個人差はあるものの血中グルコース濃度と極めて高い相関関係を有していることに着目したものであり、眼房水中のグルコース濃度を非侵襲で測定するものである。
【0007】
例えば特開昭51-75498号(米国特許第 3,958,560号)によれば、眼房水中に入射した赤外線の旋光度を求めることにより、この旋光度と関連のあるグルコース濃度を得ることができる。また特表平6−503245号により開示された技術は、グルコースの誘導ラマン光を測定するものである。
【0008】
さらに特開平6-237898 号では、水晶体による反射光の光学的性質を測定するデバイスの発明が記載されている。その他、米国特許第 5,433,197号においても眼房水中のグルコース濃度を測定する装置が記載されている。
【0009】
また本願出願人においても、眼房水の吸光度を計測することにより眼房水中のグルコース濃度を測定する装置を提案している(特願平8−121790号)。この装置は、信号光である眼球の前眼房と水晶体との間の境界面からの反射光の強度を検出することにより、眼房水の吸光度を計測するものであるが、この信号光には、角膜と前眼房との間の境界面からの反射光がノイズとして混入するため、ヘテロダイン検出方法を利用してこのノイズを除去し、眼房水中のグルコース濃度を精度高く検出するという意義を有している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平6-237898 号に記載された発明は、角膜と眼房水との境界面での反射光を除去することができず、また角膜での吸収情報も一緒に検出されるため眼房水中のグルコース濃度決定の精度が低下する。
【0011】
また、微小な吸光度変化を具体的にどのような技術的手段によって測定するかについての開示がないため実用上問題がある。
【0012】
一方、米国特許第3,958,560 号の技術では、眼球の各境界面でそれぞれ偏光が生じ、それらのうちの眼房水によるものだけを分離することができない、という問題がある。
【0013】
また、特表平6-503245 号によれば、グルコースの誘導ラマン光の測定のため大きな出力のポンプレーザ光を前眼房部に、視線光軸に対して垂直に導入するため実用的な測定系の構成が困難である。
【0014】
さらに特願平8−121790号をはじめ、眼房水の吸光度に基づいてグルコース濃度を求める技術では、眼房水に含まれるグルコース以外の成分(例えばNaClなど)の吸光度に与える影響を除去するために、5種以上の複数の波長の光を用いて計測の繰返しを行なう必要があるとともに、光が通過する前眼房の深部と浅部との間の温度差による吸光度の補正処理を行う必要があるなど、計測およびデータ処理が複雑になるという問題がある。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、精度よく、かつ従来に比べてより簡単な構成により、眼房水中のグルコース濃度を非侵襲的に測定する装置を提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明のグルコース濃度測定装置は、本発明者らの研究により、眼房水中のグルコース濃度と眼房水の屈折率との間に極めて高い相関を見いだしたことを基礎として、発明するに至ったものであり、眼球に照射した光による、前眼房からの反射光強度等から前眼房を満たす眼房水の屈折率を求め、この屈折率および予め実験的に求めた、眼房水中のグルコース濃度と眼房水の屈折率との対応関係に基づいて、眼房水中のグルコース濃度を非侵襲的に測定するものである。そして、本発明の各グルコース濃度測定装置は、その眼房水の屈折率の求め方がそれぞれ相異なる。
【0017】
本発明の第1のグルコース濃度測定装置は、眼球の角膜と空気との境界面による第1の後方散乱光の強度および角膜と前眼房との境界面による第2の後方散乱光の強度をそれぞれ検出し、これらの強度に基づいて、眼房水の屈折率を求め、上記対応関係と併せて眼房水中のグルコース濃度を求めるものであり、以下の本発明の第2から第5のグルコース濃度測定装置の基本となるものである。
【0018】
【0019】
ここで、上記第1および第2の後方散乱光の強度に基づいて、眼房水の屈折率を求める2つの方法(AおよびB)について、図面を用いて具体的に説明する。
【0020】
(A)は眼球 200に外部から光を入射させる様子を示す図である。
【0021】
眼球 200を照射する光の強度をI0 、眼球 200の外部雰囲気である空気 300の屈折率をn0 、角膜の屈折率をn1 としたとき、角膜 210と空気 300との境界面R1 での反射光(第1の後方散乱光)の強度IR1は、IR1=I0 {(n0 −n1 )/(n0 +n1 )}2 (1)
となり、ここで第1の後方散乱光の強度IR1は実際に測定された値が用いられ、入射光の強度I0 および空気 300の屈折率n0 は既知(n0 =1)であることから、角膜 210の屈折率n1 が求められる。
【0022】
次に、{(n0 −n1 )/(n0 +n1 )}2 を反射率R1、角膜 210と前眼房220との境界面R2 での反射光(第2の後方散乱光)の強度をIR2、角膜 210の吸光度をa、角膜 210の厚さをd、角膜の屈折率をn2 としたとき、IR2=I0 (1−R1)2 10-2ad{(n1 −n2 )/(n1 +n2 )}2 (2)
より、k=(IR2/I0 )とし、眼房水 220の屈折率n2 が求められる。
【0023】
この屈折率n2 の解は、下記の2種類存在するが、上段のものが実験データに整合した値を示した。
【0024】
2 =(-2kn1-2n1+4k1/2 1 )/{2(k-1)} (3)
2 =(-2kn1-2n1-4k1/2 1 )/{2(k-1)} (4)
屈折率の求め方は以下に説明する発明(本発明の第6のグルコース濃度測定装置を除く)においても同様に適用可能である。
【0025】
(B)また、上述した屈折率の求め方では、眼球に入射する光の強度I0 が既知であることを前提としているが、現実に眼球に入射した光の強度を測定することはできないため、光源から出射した光の強度をそのまま入射した光の強度とし、または光源から眼球までの光路上にこの光の一部を分割する分岐を設けてこの分岐で分割された一部のモニタ光の強度を計測することによって、上記入射光の強度としている。このようなグルコース濃度測定装置によれば、上記光源から眼球までの間または上記分岐から眼球までの間の光路上に光学的ロスが無いか、またはロスがあっても屈折率計測精度上無視しうるものであるときは何ら問題はない。しかし、光学的ロス(対物レンズ表面に塵埃が付着した場合など)までも考慮してより高精度で眼房水の屈折率を求めるときは以下に示す方法を適用して、眼房水の屈折率を求めるのが望ましい。
【0026】
すなわち、第1および第2の後方散乱光の強度を検出するのと同じ操作により、眼球に代えて反射率が既知の標準反射板に光源からの光を照射し、この標準反射板による反射光の強度Is を検出し、反射光の強度Is 、検出された第1の後方散乱光の強度IR1、検出された第2の後方散乱光の強度IR2、および標準反射板の反射率Rsに基づいて、下記式に従って空気と角膜との境界面R1 による反射率R1および角膜と前眼房との境界面R2 による反射率R2を求める。
【0027】
R1=Rs×IR1/Is (5)
R2=Rs×IR2/Is (6)
ここで、上記式は、光学ロスを表す係数kおよび現実に眼球に入射したと考えられる光の強度I0 を用いて表される各後方散乱光および反射光IR1=I0 ×k×R1 (7)
R2=I0 ×k×R2 (8)
Is =I0 ×k×Rs (9)
に基づいて、係数kおよび現実に眼球に入射したと考えられる光の強度I0 を消去して得られたものである。この式によれば、各後方散乱光および反射光はいずれも光学ロスが織り込まれた(すなわち光学ロスを含む)ものである。
【0028】
次いで、求められた反射率R1および空気の屈折率をn0 に基づいて、下記式にしたがって角膜の屈折率n1 を求め、R1={(n0 −n1 )/(n0 +n1 )}2 (10)
求められた反射率R2および角膜の屈折率n1 に基づいて、下記式にしたがって眼房水の屈折率n2 を求める。
【0029】
R2={(n1 −n2 )/(n1 +n2 )}2 (11)
なお、この屈折率の求め方についても、以下の各発明(本発明の第6のグルコース濃度測定装置を除く)に適用することができる。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
本発明の第1のグルコース濃度測定装置は、所定の位置に予め配された眼球に光を照射する光源装置と、前記光源装置から出射された光に照射された前記眼球の角膜と空気との境界面による第1の後方散乱光の強度および角膜と前眼房との境界面による第2の後方散乱光の強度をそれぞれ検出する光検出器と、前記第1および第2の後方散乱光の強度に基づいて、前記前眼房内を満たす眼房水の屈折率を求める屈折率算出手段と、眼房水の屈折率と該眼房水中のグルコース濃度との対応関係が予め記憶された記憶部と、前記記憶部に記憶された対応関係、および前記屈折率算出手段により求められた眼房水の屈折率に基づいて、該眼房水中のグルコース濃度を求めるグルコース濃度算出手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0048】
ここで、上記記憶部に記憶された眼房水の屈折率と眼房水中のグルコース濃度との対応関係は、テーブル化されたものであってもよいし、上述した回帰式のように関数として記憶されたものであってもよい。以下の発明においても同様である。
【0049】
屈折率算出手段は前述した(A)または(B)のいずれの作用をなすものであってもよい。
【0050】
また屈折率算出手段は、眼房水の温度に応じて眼房水の屈折率を補正する眼房水屈折率補正手段をさらに備えたものであるのが望ましく、眼房水屈折率補正手段は、具体的には、下記(1)から(4)のうちいずれかの構成を採用するのがより好ましい。
【0051】
(1)角膜の表面温度、角膜の近傍の皮膚温または角膜の近傍の外気温を測定する外表面温度検出手段と、この表面温度、皮膚温または外気温に応じて予め設定された眼球内温度分布テーブルと、外表面温度検出手段により検出された表面温度、皮膚温または外気温に応じて眼球内温度分布テーブルを参照することにより眼房水の温度を決定する眼房水温度決定手段とを備えた構成。
一般に、眼球内の温度分布は、角膜表面温度と前眼房深部温度すなわち体温とから一義的に定めることができ、体温は例えば36.5度C等で代表できるため、角膜表面温度のみにより眼球内温度分布を規定することができる。したがって、角膜表面温度ごとの眼球内温度分布を予め実験的若しくは臨床的に設定しておくことにより、この設定された眼球内温度分布を参照して眼球内温度分布を求め、角膜表面から一定の深さ方向の距離にある眼房水の温度を求めることができる。この温度分布はルックアップテーブルの形式や関数の形式等で設定しておくことができ、複数の角膜表面温度に応じて離散的に設定されている場合には、補間処理等により、測定された角膜表面温度に適合する温度分布を求めるようにしてもよい。
なお、角膜表面温度は、角膜近傍の皮膚温や角膜近傍の外気温と一定の相関を有することから、角膜表面温度を測定するのに代えて、角膜近傍の皮膚温または外気温を測定する装置を採用してもよい。
角膜表面温度の測定は例えば、角膜の表面からの輻射赤外線を測定することにより行えばよく、非侵襲的に計測することができる。角膜表面温度以外の他の代用特性を測定する装置としては、通常の体温計、寒暖計、熱伝対等、公知の種々の装置を採用することができる。
【0052】
(2)角膜の表面温度、角膜の近傍の皮膚温または角膜の近傍の外気温を測定する外表面温度検出手段と、外表面温度検出手段により検出された表面温度、皮膚温または外気温に応じて眼球内温度分布を求める眼球内温度分布決定手段と、眼球内温度分布決定手段により決定された眼球内温度分布にしたがって眼房水の温度を決定する眼房水温度決定手段とを備えた構成。
上記(1)の装置では、角膜の表面温度等に応じて温度分布が予め設定されているものとしたが、この(2)の装置では、角膜表面温度等に応じて眼球内温度分布を求めるものである。
【0053】
(3)角膜の表面温度、角膜の近傍の皮膚温または角膜の近傍の外気温を測定する外表面温度検出手段と、前眼房の深部温度を測定する深部温度検出手段と、表面温度、皮膚温または外気温と深部温度とに応じて予め設定された眼球内温度分布テーブルと、外表面温度検出手段により検出された表面温度、皮膚温または外気温と深部温度検出手段により検出された深部温度とに応じて眼球内温度分布テーブルを参照することにより眼房水の温度を決定する眼房水温度決定手段とを備えた構成。
(1)の装置では、前眼房深部温度を代表値1つとしたが、この装置では、複数の前眼房深部温度ごとに、眼球内温度分布を設定したものである。前眼房深部温度は、前述したように体温と略同一であり、体温は、外耳道内深部からの輻射赤外線を測定する装置により測定すればよく、この装置によれば非侵襲的に計測することができる。なお、他の公知の装置を採用してもよい。
【0054】
(4)角膜の表面温度、該角膜の近傍の皮膚温または該角膜の近傍の外気温を測定する外表面温度検出手段と、前記前眼房の深部温度を測定する深部温度検出手段と、前記外表面温度検出手段により検出された前記表面温度、前記皮膚温または前記外気温と前記深部温度検出手段により検出された前記深部温度とに応じて眼球内温度分布を求める眼球内温度分布決定手段と、該眼球内温度分布決定手段により決定された眼球内温度分布にしたがって前記眼房水の温度を決定する眼房水温度決定手段とを備えた構成。
(2)の装置では、前眼房深部温度を代表値1つとして眼球内温度分布を求めるのに対し、この装置では前眼房深部温度と角膜表面温度等とに応じて温度分布を求める装置である。
なお、上述した眼房水の温度に応じた各眼房水屈折率補正手段においては、さらに、眼球内温度分布に基づいて角膜の温度分布を求め、この角膜の温度分布に応じて、角膜の屈折率および/または吸光度をも補正するようにしてもよく、眼房水の屈折率のみを補正したものに比して、より精度高く眼房水の屈折率を求めることができる。
【0055】
なお、上記(3)または(4)に示した眼房水屈折率補正手段の構成における深部温度検出手段としては、外耳道内深部からの輻射赤外線を測定する赤外線測定手段を備えた構成とするのが望ましい。
【0056】
また、外表面温度検出手段を、角膜の表面からの輻射赤外線を測定する赤外線測定手段としてもよい。
【0057】
なお、上述した眼房水屈折率補正手段による眼房水屈折率の補正に併せて、さらに、眼球内温度分布に基づいて角膜の温度分布を求め、この角膜の温度分布に応じて、角膜の屈折率および/または吸光度をも補正する角膜光学特性補正手段を備えた構成を採用することもできる。
【0058】
また、光源装置が半導体レーザであり、この半導体レーザから出射された光の光路上に、出射された光の進行方向に垂直な面に対して傾斜してNDフィルタを設けた構成としてもよく、半導体レーザに戻り光(各種反射光や後方散乱光等)が入射するのを阻止して、半導体レーザの出射光強度が不安定になるのを防止することができる。なお、NDフィルタは、そのOD値が3〜4のものが適切である。一般的に用いられる半導体レーザから出射される数mWのレーザ光を通過させることにより、眼球に入射させるのに適当な10μW程度までその出力を低下させることもできるからである。
眼房水の屈折率と該眼房水中のグルコース濃度との相関関係は、例えば、に示すようなものを適用可能である。図示した相関関係は、代表的には下記の回帰式で表すことができる(相関係数 0.9516 )。
2 1.33322 1.6 × 10 -6 ×Gただし、Gはグルコース濃度( mg dl )。
【0059】
なお、以上の各構成の説明は以下の各グルコース濃度測定装置においても同様に適用することができる。
【0060】
本発明の第2のグルコース濃度測定装置は、上記本発明の第1のグルコース濃度測定装置と同様に、眼球の角膜と空気との境界面による第1の後方散乱光の強度および角膜と前眼房との境界面による第2の後方散乱光の強度をそれぞれ検出し、これらの強度に基づいて、眼房水の屈折率を求め、上記対応関係と併せて眼房水中のグルコース濃度を求めるものであるが、第1の後方散乱光と第2の後方散乱光とを分離して検出する方法として、両光の光路長差を利用して、可干渉距離の短い低コヒーレンスな光を用いた光ヘテロダイン検出を適用するものである。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
本発明の第2のグルコース濃度測定装置は、低コヒーレンスな光を出射する光源装置と、該光源装置から出射された低コヒーレンスな光を互いに異なる2つの光路に沿って各別に進行する参照光と眼球に入射される信号光とに分割する光路分割手段と、該信号光と参照光とで僅かな周波数差が生じるように両光のうち少なくとも一方を変調する、該少なくとも一方の光路上に設けられた変調手段と、前記参照光が進行する光路の長さを調整する光路長調整手段と、前記眼球の角膜と空気との境界面による信号光の第1の後方散乱と前記参照光、および前眼房と角膜との境界面による前記信号光の第2の後方散乱光と前記参照光とを、それぞれ波面整合させる波面整合手段と、前記参照光と前記第1の後方散乱光との波面整合による第1の干渉光および前記参照光と前記第2の後方散乱光との波面整合による第2の干渉光の強度を光電的に検出する光検出器と、該各干渉光の強度に基づいて前記第1および第2の後方散乱光の強度を求めるヘテロダイン演算手段と、前記第1および第2の後方散乱光の強度に基づいて、前記前眼房内を満たす眼房水の屈折率を求める屈折率算出手段と、眼房水の屈折率と該眼房水中のグルコース濃度との対応関係が予め記憶された記憶部と、前記記憶部に記憶された対応関係、および前記屈折率算出手段により求められた眼房水の屈折率に基づいて、該眼房水中のグルコース濃度を求めるグルコース濃度算出手段とを備えたことを特徴とするものである。
ここで、上記低コヒーレンスな光としては、可干渉距離が数十μm程度と短い例えばSLD( Super Luminescent Diode )やLED等が用いられる。なお実用上はより指向性の高いSLDを用いるのが望ましい。
また、上記干渉光の強度を測定するとは、上記後方散乱光(信号光)と参照光との差周波数で強弱を繰り返すビート信号(干渉光)の強度を計測することを意味する。以下の発明においても同様である。
【0065】
本発明の第3のグルコース濃度測定装置は、上記本発明の第1のグルコース濃度測定装置と同様に、眼球の角膜と空気との境界面による第1の後方散乱光の強度および角膜と前眼房との境界面による第2の後方散乱光の強度をそれぞれ検出し、これらの強度に基づいて、眼房水の屈折率を求め、上記対応関係と併せて眼房水中のグルコース濃度を求めるものであるが、第1の後方散乱光と第2の後方散乱光とを分離して検出する方法として、両光の光路長を利用して、時間的に鋸歯状に周波数掃引されたコヒーレント光を用いた光ヘテロダイン検出を適用するものである。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
本発明の第3のグルコース濃度測定装置は、時間的に鋸歯状に周波数掃引されたコヒーレント光を出射する光源装置と、該光源装置から出射された周波数掃引されたコヒーレント光を互いに異なる2つの光路に沿って各別に進行する参照光と眼球に入射される信号光とに分割する光路分割手段と、前記眼球の角膜と空気との境界面による前記信号光の第1の後方散乱光と、前記信号光および前記第1の後方散乱光と前記参照光との光路長差に基づく時間差をもって前記光源から出射した、前記第1の後方散乱光とは周波数差を有するコヒーレント光による前記参照光とを、および、前記眼球の前眼房と角膜との境界面による前記信号光の第2の後方散乱光と、前記信号光および前記第2の後方散乱光と前記参照光との光路長差に基づく時間差をもって前記光源から出射した、前記第2の後方散乱光とは周波数差を有するコヒーレント光による前記参照光とを、それぞれ波面整合させる波面整合手段と、前記第1の後方散乱光と該第1の後方散乱光に対して僅かな周波数差を有する参照光との波面整合により得られた第1の干渉光、および前記第2の後方散乱光と該第2の後方散乱光に対して僅かな周波数差を有する参照光との波面整合により得られた第2の干渉光の強度を光電的に検出する光検出器と、該各干渉光の強度に基づいて前記第1および第2の後方散乱光の強度を求めるヘテロダイン演算手段と、前記第1および第2の後方散乱光の強度に基づいて、前記前眼房内を満たす眼房水の屈折率を求める屈折率算出手段と、眼房水の屈折率と該眼房水中のグルコース濃度との対応関係が予め記憶された記憶部と、前記記憶部に記憶された対応関係、および前記屈折率算出手段により求められた眼房水の屈折率に基づいて、該眼房水中のグルコース濃度を求めるグルコース濃度算出手段とを備えたことを特徴とするものである。
ここで上記第1の後方散乱光と干渉せしめられる参照光が「第1の後方散乱光とは周波数差を有する」のは、以下の理由による。
上記信号光が通過する光路長と第1の後方散乱光が通過する光路長との和と、参照光が通過する光路長とには差が設けられており(参照光の光路長の方が短い場合だけでなく、参照光の光路長の方を長く設定することも勿論可能である。)、この光路長差によって、例えば参照光の光路長の方が短い場合には、波面整合(干渉)せしめられる位置に到達するのは参照光の方が第1の後方散乱光よりも早い。
すなわち第1の後方散乱光がその位置に到達したときには、この第1の後方散乱光を生じせしめた信号光と分割された参照光は既にこの位置を通過しており、この信号光が光源から出射された時点よりも遅い時刻に出射されたコヒーレント光の一部である参照光が到達する。
この遅い時刻に出射されたコヒーレント光は、時間的に周波数掃引されているため、第1の後方散乱光とは僅かに周波数差を有するものとなっている。
なお、上記第2の後方散乱光と干渉せしめられる参照光は、第1の後方散乱光と干渉せしめられる参照光とも異なる周波数を有している。これは、第1の後方散乱光が空気と角膜との境界による散乱光であるのに対し、第2の後方散乱光は、その境界よりもさらに眼球の深部である前眼房と角膜との境界による散乱光であるため、両者の光路長差(角膜の厚さの2倍)分に応じた時間差が生じ、この結果、第2の後方散乱光と干渉せしめられる参照光は第1の後方散乱光と干渉せしめられる参照光よりも遅い時刻に光源から出射されたコヒーレント光によるものとなる。
【0073】
本発明の第4のグルコース濃度測定装置は、上記本発明の第1のグルコース濃度測定装置と同様に、眼球の角膜と空気との境界面による第1の後方散乱光の強度および角膜と前眼房との境界面による第2の後方散乱光の強度をそれぞれ検出し、これらの強度に基づいて、眼房水の屈折率を求め、上記対応関係と併せて眼房水中のグルコース濃度を求めるものであるが、第1の後方散乱光と第2の後方散乱光とを分離して検出する方法として、両光の光路長を利用して、超短パルス光を用いた時間軸上での分離検出を行うものである。
【0074】
【0075】
【0076】
本発明の第4のグルコース濃度測定装置は、超短パルス光を出射する光源装置と、該超短パルス光を眼球に入射せしめ、該眼球の角膜と空気との境界面による該超短パルス光の第1の後方散乱光の強度、および前眼房と角膜との境界面による該超短パルス光の第2の後方散乱光の強度を時系列的に各別に求める光時間領域後方散乱測定手段と、前記第1および第2の後方散乱光の強度に基づいて、前記前眼房内を満たす眼房水の屈折率を求める屈折率算出手段と、眼房水の屈折率と該眼房水中のグルコース濃度との対応関係が予め記憶された記憶部と、前記記憶部に記憶された対応関係、および前記屈折率算出手段により求められた眼房水の屈折率に基づいて、該眼房水中のグルコース濃度を求めるグルコース濃度算出手段とを備えたことを特徴とするものである。
ここで上記超短パルス光とは、少なくとも上記第1の後方散乱光の強度と第2の後方散乱光の強度とを、時間的に分離して各別に測定し得る程度の非常に短時間(例えばフェムト秒〜ピコ秒単位程度)だけ発光するパルス状の光、例えばモードロックTi:サファイアレーザーなど等を意味する。このような超短パルス光を用いることにより、第1の後方散乱光に対して前眼房を往復する距離に対応した時間だけ遅れた第2の後方散乱光を、例えばストリークカメラ等の時間分解可能の光検出器を用いて、第1の後方散乱光から分離して検出することができる。
【0077】
本発明の第5のグルコース濃度測定装置は、上記本発明の第1のグルコース濃度測定装置と同様に、眼球の角膜と空気との境界面による第1の後方散乱光の強度および角膜と前眼房との境界面による第2の後方散乱光の強度をそれぞれ検出し、これらの強度に基づいて、眼房水の屈折率を求め、上記対応関係と併せて眼房水中のグルコース濃度を求めるものであるが、第1の後方散乱光と第2の後方散乱光とを分離して検出する方法として、両光の光路長を利用し、共焦点光学系を用いた空間上での分離検出を行うものである。
【0078】
【0079】
【0080】
本発明の第5のグルコース濃度測定装置は、所定の位置に予め配された眼球に光を照射する光源装置と、前記眼球の角膜と空気との境界面による前記光の第1の後方散乱光および前眼房と角膜との境界面による前記光の第2の後方散乱光を、空間的に分離する共焦点光学系(これらの境界面を一方の焦点位置としたときに、他方の焦点位置に配されるピンホールを含む)と、前記共焦点光学系により空間的に分離された前記第1の後方散乱光および前記第2の後方散乱光の各強度をそれぞれ検出する光検出器と、前記第1および第2の後方散乱光の強度に基づいて、前記前眼房内を満たす眼房水の屈折率を求める屈折率算出手段と、眼房水の屈折率と該眼房水中のグルコース濃度との対応関係が予め記憶された記憶部と、前記記憶部に記憶された対応関係、および前記屈折率算出手段により求められた眼房水の屈折率に基づいて、該眼房水中のグルコース濃度を求めるグルコース濃度算出手段とを備えたことを特徴とするものである。
ここで、共焦点光学系により、それぞれ各境界面に共役な位置で各後方散乱光を検出する方法としては、各共役な位置にピンホールを設けて、このピンホールの設けられた位置で焦点を結ぶ後方散乱光だけを通過させて検出すればよく、ピンホールまたはピンホール以外の共焦点光学系の少なくとも一方を光軸方向に可動とすることで、各後方散乱光を選択的に検出することができる。
【0081】
本発明の第6のグルコース濃度測定装置は、眼球に所定の入射角で入射させた円偏光の光の、眼球の角膜と前眼房との境界面による後方散乱光の楕円偏光状態を検出し、この楕円偏光状態に基づいて、眼房水の屈折率を求め、上記対応関係と併せて眼房水中のグルコース濃度を求めるものである。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
発明の第6のグルコース濃度測定装置は、所定の位置に予め配された眼球に対して所定の入射角で円偏光の光を照射する光源装置と、前記眼球の前眼房と角膜との境界面による前記光の後方散乱光を抽出する共焦点光学系と、前記共焦点光学系により抽出された前記後方散乱光の楕円偏光状態を検出する楕円偏光状態検出手段と、前記後方散乱光の楕円偏光状態に基づいて、前記前眼房内を満たす眼房水の屈折率を求める屈折率算出手段と、眼房水の屈折率と該眼房水中のグルコース濃度との対応関係が予め記憶された記憶部と、前記記憶部に記憶された対応関係、および前記屈折率算出手段により求められた眼房水の屈折率に基づいて、該眼房水中のグルコース濃度を求めるグルコース濃度算出手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0086】
楕円偏光状態検出手段としては、光源装置から出射された光を直線偏光とする偏光子(例えばλ/2板等)と、この直線偏光を円偏光とする補償板(例えばλ/4板等)と、円偏光の光を眼球に楕円偏光の光として照射する反射鏡と、眼球による反射光である楕円偏光光の方位角および振幅を検出する検光子および光検出器とを備えた構成等を採用することができる。
ここで、共焦点光学系により、上記境界面に共役な位置で後方散乱光を検出する方法としては、共役な位置にピンホールを設けて、このピンホールの設けられた位置で焦点を結ぶ後方散乱光だけを通過させて検出すればよい。
後方散乱光の楕円偏光状態に基づいて眼房水の屈折率を求めるとは、具体的には例えば、エリプソメーターの原理を利用して屈折率を求めるなどの方法を適用することができる。すなわち、測定により得られた後方散乱光の楕円偏光の楕円率ρと方位角φとにより振幅比ψと位相差Δとを得、既知の眼球への入射角ψ 0 と併せて、下記式により屈折率nを求めることができる。
2 sin 2 ψ 0 [1+{ tan 2 ψ 0 cos 2 2ψ− sin 2 2ψ sin 2 Δ)}/(1+ sin 2ψ cos Δ) 2
【0087】
なお、上記本発明の各グルコース濃度測定装置のうちいずれかにより求められた眼房水中のグルコース濃度ごとに、対応する血中グルコース濃度を各別に侵襲的に求め、その方法・装置により求められた前記眼房水中のグルコース濃度と侵襲的に得た血中グルコース濃度との相関を予め求め、この相関を求めた以後においては、上記各グルコース濃度測定装置のうちいずれかにより求めた眼房水成分中のグルコース濃度とこの相関とに基づいて、血中グルコース濃度を非侵襲的に求めるようにしてもよい。
【0088】
【発明の効果】
本発明の第1のグルコース濃度測定装置によれば、眼球に光を入射せしめて、角膜と空気との境界面による第1の後方散乱光の強度および角膜と前眼房との境界面による第2の後方散乱光の強度をそれぞれ各別に検出し、検出されたこれらの強度に基づいて眼房水の屈折率(眼房水の角膜との境界面近傍の屈折率)を求め、予め求めておいた眼房水の屈折率と眼房水中のグルコース濃度との対応関係および検出された眼房水の屈折率から、非侵襲的に眼房水中のグルコース濃度を求めることができる。
【0089】
本発明の第2のグルコース濃度測定装置によれば、第1の後方散乱光と第2の後方散乱光とがそれぞれ生じる位置の相違による両光の光路長差を利用して、可干渉距離の短い低コヒーレンスな光を用いた光ヘテロダイン後方散乱測定法を適用することにより、まず角膜と空気との境界面による入射光の微弱な第1の後方散乱光IR1および前眼房と角膜との境界面による入射光の微弱な第2の後方散乱光IR2を各別に精度よく検出することができる。そして、検出されたこれらの強度に基づいて眼房水の屈折率(眼房水の角膜との境界面近傍の屈折率)を求め、予め求めておいた眼房水の屈折率と眼房水中のグルコース濃度との対応関係および検出された眼房水の屈折率から、非侵襲的に眼房水中のグルコース濃度を求めることができる。
【0090】
本発明の第3のグルコース濃度測定装置によれば、第1の後方散乱光と第2の後方散乱光とがそれぞれ生じる位置の相違による両光の光路長差を利用して、時間的に鋸歯状に周波数掃引されたコヒーレント光を用いた光ヘテロダイン後方散乱測定法を適用することにより、まず角膜と空気との境界面による入射光の微弱な第1の後方散乱光IR1および前眼房と角膜との境界面による入射光の微弱な第2の後方散乱光IR2を各別に精度よく検出することができる。そして、検出されたこれらの強度に基づいて眼房水の屈折率(眼房水の角膜との境界面近傍の屈折率)を求め、予め求めておいた眼房水の屈折率と眼房水中のグルコース濃度との対応関係および検出された眼房水の屈折率から、非侵襲的に眼房水中のグルコース濃度を求めることができる。
【0091】
本発明の第4のグルコース濃度測定装置によれば、第1の後方散乱光と第2の後方散乱光とがそれぞれ生じる位置の相違による両光の光路長差を利用して、超短パルス光を用いた時間軸上での分離検出(図10参照)を適用することにより、まず角膜と空気との境界面による入射光の微弱な第1の後方散乱光IR1および前眼房と角膜との境界面による入射光の微弱な第2の後方散乱光IR2を各別に精度よく検出することができる。そして、検出されたこれらの強度に基づいて眼房水の屈折率(眼房水の角膜との境界面近傍の屈折率)を求め、予め求めておいた眼房水の屈折率と眼房水中のグルコース濃度との対応関係および検出された眼房水の屈折率から、非侵襲的に眼房水中のグルコース濃度を求めることができる。
【0092】
なおこの図10に示した波形を時間について積分することにより各後方散乱光の光量IR1およびIR2を求めることができる。
【0093】
本発明の第5のグルコース濃度測定装置によれば、第1の後方散乱光と第2の後方散乱光とに対して、両光の光路長を利用し、共焦点光学系を用いた分離検出を適用することにより、まず角膜と空気との境界面による入射光の微弱な第1の後方散乱光IR1および前眼房と角膜との境界面による入射光の微弱な第2の後方散乱光IR2を各別に精度よく検出することができる。そして、検出されたこれらの強度に基づいて眼房水の屈折率(眼房水の角膜との境界面近傍の屈折率)を求め、予め求めておいた眼房水の屈折率と眼房水中のグルコース濃度との対応関係および検出された眼房水の屈折率から、非侵襲的に眼房水中のグルコース濃度を求めることができる。
【0094】
上述した本発明の第1から第5の装置において、前述した(B)による屈折率を求める方式(式(5)〜(11)を適用する方式)を適用したときは、光源から眼球までの間または光源の強度をモニタするための光路の分岐から眼球までの間の光路上に、例えば対物レンズ等に塵埃が付着する等の光学的ロスがあっても、この光学的ロスを考慮した形で反射率が算出され(式(7)〜(9))、この光学ロスが織り込まれた反射率に基づいて角膜および眼房水の屈折率が算出される(式(10)、(11)))ため、より精度高く屈折率を求めることができる。なお、この方式を採用するときは最初に標準反射板を使用して反射光の強度を計測するが、空気/角膜間境界面による後方散乱光および角膜/前眼房間境界面による後方散乱光の計測終了後に再度、標準反射板による反射光の強度を計測して、後方散乱光計測の前後での反射光の強度の差異に基づいて、後方散乱光計測中における塵埃等の付着または離脱の有無を判定することができ、測定精度に影響を与えるこれらの付着または離脱が有ったときは、最初から計測をやり直すなどにより、誤った測定結果を採用するミスを防止することができる。
【0095】
また後方散乱光測定中以外の期間中は、標準反射板を測定系の塵埃侵入防止用のバリヤとして機能させることができる。
【0096】
さらに上記各グルコース濃度測定装置において、眼房水の屈折率を、その温度に応じて補正するものにおいては、眼房水の構成成分の約95%(重量%)を占める水の屈折率が温度に依存して変動したときも、この変動に追従させて眼房水の屈折率を変動させることにより、眼房水の屈折率に対応するグルコース濃度を一層精度よく求めることができる。
【0097】
さらにまた、上記各グルコース濃度測定装置において、眼房水の屈折率だけでなく、角膜の屈折率および/または吸光度をも、その温度に応じて補正するものにおいては、眼房水の屈折率のみを補正したものに比して、より精度高く眼房水の屈折率を求めることができる。これは、角膜の構成成分も多くが水であるため、眼房水と同様に温度補正を行うことにより求められるグルコース濃度のさらなる精度の向上を図ることができる。
【0098】
本発明の第6のグルコース濃度測定装置によれば、角膜と前眼房との境界面で光が反射される(後方散乱光)ときに、円偏光の光の偏光面が楕円偏光に変化されることを利用して、共焦点光学系を用いた分離検出を適用するとともに、検出された楕円偏光の状態に基づいて眼房水の屈折率(眼房水の角膜との境界面近傍の屈折率)を求め、予め求めておいた眼房水の屈折率と眼房水中のグルコース濃度との対応関係および検出された眼房水の屈折率から、非侵襲的に眼房水中のグルコース濃度を求めることができる。
【0099】
なお、このようにして非侵襲的に得られた眼房水中のグルコース濃度と従来の侵襲的に得られた血中グルコース濃度との相関関係を例えば変換テーブル等として各患者ごとに予め準備しておくことにより、その後は血中グルコース濃度を測定することなく眼房水中のグルコース濃度を測定すればよく、患者に苦痛を与えずに繰り返し精度のよい測定を行なうことが可能となる。
【0100】
なお、上記本発明の各グルコース濃度装置において、光源装置が半導体レーザであり、この半導体レーザから出射された光の光路上に、出射された光の進行方向に垂直な面に対して傾斜してNDフィルタが配設されたものによれば、半導体レーザへの戻り光(各種反射光や後方散乱光等)がNDフィルタによりその略全部が反射されるため、半導体レーザに入射するのを阻止することができ、この結果、半導体レーザからの出射光強度が、戻り光の入射によって不安定になるのを防止することができる。したがって、出射光強度の安定度が高く、後方散乱光の検出精度が低下するのを防止することができる。
【0101】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を用いて説明する。
【0102】
は本発明の第1のグルコース濃度測定装置の一実施形態を示す図である。
【0103】
図示のグルコース濃度測定装置 100は、所定の位置に予め配された眼球 200に光(強度I0 )を照射する光源装置10と、この光源装置10から出射された光に照射された眼球 200の角膜 210(参照)と眼球 200の周囲の雰囲気である空気300との境界面R1 による反射光である第1の後方散乱光の強度IR1および角膜210と前眼房 220との境界面R2 による反射光である第2の後方散乱光の強度IR2をそれぞれ各別に検出する光検出器70と、第1および第2の後方散乱光の強度IR1、IR2に基づいて、前眼房 220内を満たす眼房水の屈折率n2 を求める屈折率算出手段80Aと、眼房水の屈折率n2 と眼房水中のグルコース濃度Gとの対応関係が予め記憶された記憶部80Cと、記憶部80Cに記憶された対応関係、および屈折率算出手段80Aにより求められた眼房水の屈折率n2 に基づいて、眼房水中のグルコース濃度Gを求めるグルコース濃度算出手段80Bとを備えた構成である。
【0104】
ここで、上記記憶部80Cに記憶された眼房水の屈折率n2 と眼房水中のグルコース濃度Gとの対応関係は、テーブル化されたものであってもよいし、上述した回帰式のように関数として記憶されたものであってもよい。以下の発明においても同様である。
【0105】
ここで、屈折率算出手段80Aによる、第1および第2の後方散乱光の強度IR1、IR2に基づいて眼房水の屈折率n2 を求める処理について、具体的に説明する。
【0106】
は眼球 200に外部から光を入射させる様子を示す図である。
【0107】
眼球200に照射された光に対する、眼球200の外部雰囲気である空気 300の屈折率をn0 、角膜 210の屈折率をn1 としたとき、角膜 210と空気 300との境界面R1 での反射光(第1の後方散乱光)の強度IR1は、IR1=I0 {(n0 −n1 )/(n0 +n1 )}2 (1)
で求められる。
【0108】
次に、{(n0 −n1 )/(n0 +n1 )}2 を反射率R1、角膜 210と前眼房220との境界面R2 での反射光(第2の後方散乱光)の強度をIR2、角膜 210の吸光度をa、角膜 210の厚さをd、眼房水の屈折率をn2 としたとき、IR2=I0 (1−R1)2 10-2ad{(n1 −n2 )/(n1 +n2 )}2 (2)
より、k=(IR2/I0 )とし、眼房水 220の屈折率n2 は、n2 =(-2kn1-2n1+4k1/2 1 )/{2(k-1)} (3)
または、n2 =(-2kn1-2n1-4k1/2 1 )/{2(k-1)} (4)
と、算出することができる。
【0109】
ここで、屈折率n2 の解は、上記2種類存在するが、上段のものが実験データに整合した値を示した。
【0110】
屈折率n2 の求め方は、以下に説明する実施形態においても同様である。
【0111】
記憶部80Cに記憶された、眼房水の屈折率n2 と眼房水中のグルコース濃度Gとの相関関係は、例えば、に示すようなものを適用可能である。図示した相関関係は、代表的には下記の回帰式で表すことができる。
【0112】
2 = 1.33322+ 1.6×10-6×Gそしてグルコース濃度算出手段80Bが、上記記憶部80Cに記憶された眼房水の屈折率n2 と眼房水中のグルコース濃度Gとの相関関係、および屈折率算出手段80Aにより求められた眼房水の屈折率n2 に基づいて、眼房水中のグルコース濃度Gを求める。
【0113】
このように本実施形態のグルコース濃度測定装置 100によれば、精度よく、かつ従来に比べてより簡単な構成により、眼房水中のグルコース濃度を非侵襲的に測定することができる。
【0114】
また、眼房水の吸光度を計測することでグルコース濃度を測定する従来の方式では、入射した光を吸収する成分が眼房水中に多種存在することによる測定誤差を低減するために、多種(通常5種類以上)の波長の光で繰り返し計測を行う必要があったが、本実施形態のグルコース濃度測定装置では、1種類の波長の光に対する屈折率とグルコース濃度とを対応付けているため、当該波長の光のみで計測を行うことができ、計測時間を大幅に短縮することができる。
【0115】
そしてこのようにして得られた眼房水中のグルコース濃度は、予め各患者ごとに上記装置で求めた眼房水中のグルコース濃度と従来の侵襲的に得た血中グルコース濃度との相関関係を例えば変換テーブル等として、眼房水/血中グルコース濃度変換手段を設けてこれに記憶せしめておき、上記グルコース濃度測定装置からある患者の眼房水中グルコース濃度がこの眼房水/血中グルコース濃度変換手段に入力されたときに、当該患者に対応する眼房水/血中グルコース濃度変換テーブルを参照することで、血中グルコース濃度を算出することができ、血中グルコース濃度の非侵襲的測定を実現することができる。
【0116】
後述する以下の実施形態においても眼房水/血中グルコース濃度変換手段を設ければ上記と同様に効果を得ることができる。
【0117】
は、本発明の第2のグルコース濃度測定装置の一実施形態を示す図であり、第1および第2の後方散乱光の強度IR1、IR2の求め方に関し、に示した実施形態のグルコース濃度測定装置をより具体化したものである。
【0118】
図示のグルコース濃度測定装置 100は、可干渉距離が数十μm程度の低コヒーレンスな光を出射する光源装置(例えばSLD)10Aと、この光源装置10Aから出射された低コヒーレンスな光を直線偏光とする1/2波長板11と、この直線偏光とされた光を集光する集光レンズ13と、入射端から入射した光の偏波面を保持して出射端に出射する第1から第4の偏波面保存ファイバー41,42,43,44と、各偏波面保存ファイバーから入射した光の偏波面を保存して他の偏波面保存ファイバーに光を伝達する偏波面保存カプラー60と、眼球 200に光を導光する第2の偏波面保存ファイバー42中を導光される光(照射光)の周波数を1Hz(変調周波数は1Hzに限るものではない)だけ変調される変調器50と、第2の偏波面保存ファイバー42から出射した照射光を平行光とするレンズ14と、この平行光を円偏光の光に変換する1/4波長板12と、円偏光とされた光を眼球 200の界面R1 ,R2 (参照)に集光する集光レンズ15と、眼球からの反射光(角膜 210と空気300との境界面R1 での反射光である第1の後方散乱光および角膜 210と前眼房220との境界面R2 での反射光である第2の後方散乱光)のみを通過せしめる外光カットフィルター20と、偏波面保存カプラー60により第1の偏波面保存ファイバー41から第3の偏波面保存ファイバー43にも入射せしめられた光(参照光)を平行光とするレンズ17と、この平行光を円偏光の光に変換する1/4波長板12と、円偏光とされた光を反射せしめる、参照鏡18bおよび集光レンズ18aからなる、光軸方向に可動の参照鏡ユニット18と、第2の偏波面保存ファイバー42から戻る光(信号光(第1および第2の後方散乱光))および第3の偏波面保存ファイバー43から戻る参照光を第4の偏波面保存ファイバー44の出射端において平行光とするレンズ16と、偏光方向を90度回転させる1/2波長板11と、この光を光検出器70に集光せしめる集光レンズ19と、集光レンズ19により集光された光の強度を検出する光検出器70と、光検出器70で検出された光の強度に基づいて眼球 200の眼房水 220の屈折率n2 を算出し、さらにこの算出された屈折率n2 およびその内部に記憶された屈折率n2 とグルコース濃度Gとの相関関係に基づいて眼房水 220のグルコース濃度Gを求める信号処理回路80と、求められたグルコース濃度Gを表示する表示装置90とを備えた構成である。
【0119】
なお、信号処理回路80は、屈折率算出手段、グルコース濃度算出手段および記憶部としての機能を有する。
【0120】
次に本実施形態のグルコース濃度測定装置の作用について説明する。
【0121】
まず、光源装置10Aから低コヒーレンスな光が出射され、この光は1/2波長板11により直線偏光とされ、集光レンズ13により第1の偏波面保存ファイバー41に入射せしめられる。第1の偏波面保存ファイバー41の内部を導光された直線偏光の光は偏波面保存カプラー60により、その偏波面が直線偏光のまま保存されて第2および第3の偏波面保存ファイバー42,43に分割して入射される。第2の偏波面保存ファイバー42を進む光は変調器50によりその周波数が例えば1Hzだけシフトされ、第2の偏波面保存ファイバー42から出射されて、レンズ14により平行光とされ、1/4波長板12により円偏光の光に変換され、集光レンズ15により眼球 200の界面R1 ,R2 (参照)に集光される。このときの眼球 200に入射される光の強度はI0 に調整されている。
【0122】
この入射光は各界面R1 ,R2 でそれぞれ反射され、これら各界面R1 ,R2でそれぞれ反射して生じた第1および第2の後方散乱光は外光カットフィルター20を通過して、集光レンズ15、1/4波長板12およびレンズ14を介して、第2の偏波面保存ファイバー42に入射される。
【0123】
ここで第2の偏波面保存ファイバー42に入射された第1および第2の後方散乱光は、1/4波長板12を通過したことによりもとの偏光面に対して90度回転した偏光面を有し、偏波面保存カプラー60に入射する。
【0124】
一方、偏波面保存カプラー60により分割されて第3の偏波面保存ファイバー43に入射せしめられた参照光はレンズ17により平行光とされ、1/4波長板12により円偏光の光に変換されて参照鏡ユニット18で反射され、再び1/4波長板12およびレンズ17を通過して第3の偏波面保存ファイバー43に入射し、偏波面保存カプラー60に導光される。そしてこれらの光は第4の偏波面保存ファイバー44に入射せしめられ、レンズ17、1/2波長板11および集光レンズ19を通過して光り検出器70に入射される。
【0125】
ここで、偏波面保存カプラー60に入射した、第2の偏波面保存ファイバー42から戻った第1または第2の後方散乱光と、第3の偏波面保存ファイバー43から戻った参照光とは、それらの偏光面は一致するため干渉し得るが、第1の偏波面保存ファイバー41から入射した光とは偏光面が一致しないため、これらの光とは干渉し得ない。
【0126】
また、第1または第2の後方散乱光と、第3の偏波面保存ファイバー43から戻った参照光とは、両光の光路長差が一致するとき干渉するが、第1の後方散乱光と第2の後方散乱光とは角膜 210の厚さの2倍だけ光路長差があり、参照鏡ユニット18を光軸方向に移動調整することにより、第1の後方散乱光と第2の後方散乱光とのうちいずれか一方を参照光と選択的に干渉させることができる。また第1の後方散乱光と参照光との干渉光が観測されたときの参照鏡ユニット18の位置から、第2の後方散乱光と参照光との干渉光が観測されたときの参照鏡ユニット18の移動距離を計測することにより、角膜 210の厚さを精度よく計測することもできる。
【0127】
第1または第2の後方散乱光と、第3の偏波面保存ファイバー43から戻った参照光とが干渉すると、両光の周波数差1Hzで強弱を繰り返すビート信号が発生する。このビート信号の強度を光検出器70で検出し、光ヘテロダイン検出処理により、後方散乱光の強度が求められる。そして参照鏡ユニット18の位置を移動させて他方の後方散乱光と参照光とを干渉させることで生じたビート信号の強度を光検出器70で検出し光ヘテロダイン検出処理により当該他方の後方散乱光の強度も求めることができる。
【0128】
このようにして求められた第1の後方散乱光の強度IR1、第2の後方散乱光の強度IR2、参照鏡ユニット18の移動距離に等しい角膜 210の厚さdおよび予め既知の各種屈折率n0 ,n1 、反射率R1、角膜 210の吸光度aに基づいて、信号処理回路80が眼房水の屈折率n2 を上述した式にしたがって算出し、さらに予め記憶された、眼房水の屈折率n2 と眼房水中のグルコース濃度Gとの相関関係にしたがって、計測対照の眼球における眼房水のグルコース濃度Gを算出し、この算出結果を表示装置90に出力する。
【0129】
表示装置90は、入力されたグルコース濃度Gを表示する。
【0130】
このように本実施形態のグルコース濃度測定装置 100によれば、眼球からの微弱な反射光を光ヘテロダイン検出処理により精度よく検出し、かつ従来に比べてより簡単な構成により、眼房水中のグルコース濃度を非侵襲的に測定することができる。
【0131】
また、眼房水の吸光度を計測することでグルコース濃度を測定する従来の方式では、入射した光を吸収する成分が眼房水中に多種存在することによる測定誤差を低減するために、多種(通常5種類以上)の波長の光で繰り返し計測を行う必要があったが、本実施形態のグルコース濃度測定装置 100では、1種類の波長の光に対する屈折率とグルコース濃度とを対応付けているため、当該波長の光のみで計測を行うことができ、計測時間を大幅に短縮することができる。
【0132】
は、本発明の第2のグルコース濃度測定装置の他の実施形態を示す図である。図示のグルコース濃度測定装置 100′は、光源装置10Aが半導体レーザ(SLD)であり、このSLD10Aと1/2波長板11との間に、SLD10Aから出射された光の進行方向に垂直な面に対して約45度の角度だけ傾いてNDフィルタ37が配設されている点と、NDフィルタ37により反射された光の強度を検出する第2の光検出器75を備えている点以外は、に示した実施形態のグルコース濃度測定装置 100と同じ構成である。
【0133】
SLD10Aは、可視領域(<1400nm)で出力が3〜4mWのレーザ光を出射するものであり、またNDフィルタ37は、そのOD値が3〜4に設定されたものであり、SLD10Aから出射されたレーザ光のうち数μW程度のレーザ光を透過し、残りの大部分を、進行方向に対して略直交する方向に反射せしめる。したがって、眼球 200に入射されるレーザ光は上記数μWとなる。この数μWという数値は、目に入射が許容されているMPE値(JIS C-6802:レーザ放射による障害発生率が50%のレベルの1/10のレーザ光強度を規定する値)を下回るものである。NDフィルタ37で反射された大部分のレーザ光は第2の光検出器75に入射し、この光検出器75は、入射したレーザ光の強度を検出し、信号処理回路80に検出した光強度を入力する。信号処理回路80は入力された光強度値とNDフィルタ37のOD値に基づいて、眼球 200に入射したレーザ光の強度I0 を算出し、眼房水の屈折率算出の演算に供する。
【0134】
また、NDフィルタ37は、眼球 200から第1の偏波面保存ファイバー41の内部を導光されてSLD10Aに戻る戻り光である第1および第2の後方散乱光と参照光との干渉光の大部分を反射するため、これらの戻り光はSLD10Aに殆ど入射することはない。したがって、SLD10Aへの戻り光(これらの参照光等)が、SLD10Aに入射するのを阻止することができ、SLD10Aから出射されるレーザ光の強度が、戻り光の入射によって不安定になるのを防止することができ、その結果、本実施形態のグルコース濃度測定装置 100′によれば、安定した強度のレーザ光を眼球 200に入射せしめることができ、眼球 200による後方散乱光の強度も安定し、これら後方散乱光の測定精度が低下するのを防止することができる。
【0135】
に示した実施形態のグルコース濃度測定装置においては、第2の光検出器75を、NDフィルタ37により反射されて入射する光の進行方向に正対させた配置としているが、この配置によれば、第2の光検出器75の受光面で入射光が反射し、この反射した光が入射光の光路を反対向きに進行してSLD10Aに戻る虞もある。
【0136】
そこで、この第2の光検出器75による反射光がSLD10Aに対して戻り光とならないように、第2の光検出器75の受光面をに示すように、入射光の進行方向に対して正対させないように、当該進行方向に垂直な面に対して角度θだけ傾斜させて配置するのが、より望ましい。
【0137】
は、本発明の第3のグルコース濃度測定方法を実施するグルコース濃度測定装置の一実施形態を示す図であり、第1および第2の後方散乱光の強度IR1、IR2の求め方に関し、に示した実施形態のグルコース濃度測定装置をより具体化したものである。
【0138】
図示のグルコース濃度測定装置 101は、周波数が一定の帯域で時間的に鋸歯状に掃引されたレーザ光を出力する周波数掃引レーザ光源装置10Bと、この光源装置10Bから出射された周波数掃引レーザ光を直線偏光とする1/2波長板11と、この直線偏光とされた光を集光する集光レンズ13と、入射端から入射した光の偏波面を保持して出射端に出射する第1から第3の偏波面保存ファイバー45,46,47と、各偏波面保存ファイバーから入射した光の偏波面を保存して波面保存ファイバーに光を伝達する偏波面保存カプラー61と、第2の偏波面保存ファイバー46から出射した照射光を平行光とするレンズ14と、この平行光を円偏光の光に変換する1/4波長板12と、円偏光とされた光を眼球 200の界面R1 ,R2 (参照)に集光する集光レンズ15と、眼球からの反射光(角膜 210と空気 300との境界面R1 での反射光である第1の後方散乱光および角膜 210と前眼房 220との境界面R2 での反射光である第2の後方散乱光)のみを通過せしめる外光カットフィルター20と、第2の偏波面保存ファイバー46から戻る光(信号光(第1および第2の後方散乱光))および1/4波長板12で反射し第2の偏波面保存ファイバー46から戻る参照光を第3の偏波面保存ファイバー47の出射端において平行光とするレンズ16と、偏光方向を90度回転させる1/2波長板11と、この光を光検出器71に集光せしめる集光レンズ19と、集光レンズ19により集光された光の強度を検出する光検出器71と、光検出器71で検出された光の強度に基づいて眼球 200の眼房水 220の屈折率n2 を算出し、さらにこの算出された屈折率n2 およびその内部に記憶された屈折率n2 とグルコース濃度Gとの相関関係に基づいて眼房水220のグルコース濃度Gを求める信号処理回路81と、求められたグルコース濃度Gを表示する表示装置90とを備えた構成である。
【0139】
なお、信号処理回路81は、屈折率算出手段、グルコース濃度算出手段および記憶部としての機能を有する。
【0140】
次に本実施形態のグルコース濃度測定装置 101の作用について説明する。
【0141】
まず光源10Bからレーザー光が出射される。この光はその周波数が時間軸上で掃引されたものであり、に示すように、出射された時刻t0 において周波数をf0 とする。
【0142】
光源装置10Bから出射された周波数f0 の光は、1/2波長板11により直線偏光とされ、集光レンズ13により第1の偏波面保存ファイバー45に入射せしめられる。第1の偏波面保存ファイバー45の内部を導光された直線偏光の光は偏波面保存カプラー61により、その偏波面が直線偏光のまま保存されて第2の偏波面保存ファイバー46に入射される。第2の偏波面保存ファイバー46を進んだ光はその出射端から出射されて、レンズ14により平行光とされ、1/4波長板12により円偏光の光に変換され、集光レンズ15により眼球 200の界面R1 ,R2 に集光される。このときの眼球 200に入射される光の強度はI0 に調整されている。
【0143】
この入射光は各界面R1 ,R2 でそれぞれ反射され、これら各界面R1 ,R2でそれぞれ反射して生じた第1および第2の後方散乱光は外光カットフィルター20を通過して、集光レンズ15、1/4波長板12およびレンズ14を介して、第2の偏波面保存ファイバー42に入射される。
【0144】
ここで第2の偏波面保存ファイバー42に入射された第1および第2の後方散乱光は、1/4波長板12を通過したことによりもとの偏光面に対して90度回転した偏光面を有し、偏波面保存カプラー61に入射する。
【0145】
一方、第2の偏波面保存ファイバー46から出射された光のうち一部は1/4波長板12に反射されて再度第2の偏波面保存ファイバー46に入射し、参照光として偏波面保存カプラー61に入射する。
【0146】
ここで、眼球 200に入射して反射した第1および第2の後方散乱光と1/4波長板12で反射された参照光との光路長差について考察すると、第1の後方散乱光は、1/4波長板12から境界面R1 までの往復距離だけ参照光よりも光路長が長く、一方、第2の後方散乱光は、1/4波長板12から境界面R2 までの往復距離だけ参照光よりも光路長が長い。
【0147】
すなわち、第1の後方散乱光の方が第2の後方散乱光よりも早い時間に1/4波長板12において参照光に到達する。この時間差は角膜 210の厚さの往復分の距離に依存するものである。
【0148】
一方、光源装置10Bからは時間的に周波数掃引されたレーザ光が連続的に出射されており、これらの光も連続的に1/4波長板12に到達する。
【0149】
この結果、時刻t0 に光源装置10Bから出射した光による第1の後方散乱光(周波数f0 )は、1/4波長板12において、時刻t1 (参照)に光源装置10Bから出射された周波数f1 の参照光と出会って波面整合される。したがって、この波面整合による干渉光のビート信号は両光の周波数差(f1 −f0 )で強弱を繰り返す。
【0150】
一方、時刻t0 に光源装置10Bから出射した光による第2の後方散乱光(周波数f0 )は、1/4波長板12において、角膜 210の厚さdの往復分の距離2dを光速cで除した時間2d/cだけ時刻t1 よりも遅い時刻t2 に、光源装置10Bから出射された周波数f2 の参照光と出会って波面整合される。したがって、この波面整合による干渉光のビート信号は両光の周波数差(f2 −f0 )で強弱を繰り返す。
【0151】
光源装置10Bからは周波数が刻々と変化するレーザ光が連続的に出射されるが、上記第1の後方散乱光と第2の後方散乱光との光路長差は不変であるため、上記各後方散乱光との干渉によるビート信号の周波数は常に一定に保たれる。
【0152】
そしてこのように、差周波数(f1 −f0 )で強弱を繰り返す第1の後方散乱光によるビート信号と差周波数(f2 −f0 )で強弱を繰り返す第2の後方散乱光によるビート信号とがそれぞれ、偏波面保存カプラー61から第3の偏波面保存ファイバー47に導光されて光検出器71に検出される。
【0153】
光検出器71はこれらの検出されたビート信号の強度から光ヘテロダイン検出処理により、各後方散乱光の強度を算出し、さらに両ビート信号の周波数差および光源装置10Bの周波数掃引の傾きから両後方散乱光の光路長差、すなわち角膜 210の厚さが求められる。
【0154】
このようにして求められた第1の後方散乱光の強度IR1、第2の後方散乱光の強度IR2、角膜 210の厚さdおよび予め既知の各種屈折率n0 ,n1 、反射率R1、角膜 210の吸光度aに基づいて、信号処理回路81が眼房水の屈折率n2 を上述した式にしたがって算出し、さらに予め記憶された、眼房水の屈折率n2 と眼房水中のグルコース濃度Gとの相関関係にしたがって、計測対照の眼球における眼房水のグルコース濃度Gを算出し、この算出結果を表示装置90に出力する。
【0155】
表示装置90は、入力されたグルコース濃度Gを表示する。
【0156】
このように本実施形態のグルコース濃度測定装置 101によれば、眼球からの微弱な反射光を光ヘテロダイン検出処理により精度よく検出し、かつ従来に比べてより簡単な構成により、眼房水中のグルコース濃度を非侵襲的に測定することができる。
【0157】
また、眼房水の吸光度を計測することでグルコース濃度を測定する従来の方式では、入射した光を吸収する成分が眼房水中に多種存在することによる測定誤差を低減するために、多種(通常5種類以上)の波長の光で繰り返し計測を行う必要があったが、本実施形態のグルコース濃度測定装置では、1種類の波長の光に対する屈折率とグルコース濃度とを対応付けているため、当該波長の光のみで計測を行うことができ、計測時間を大幅に短縮することができる。
【0158】
なお本実施形態のグルコース濃度測定装置 101においても、に示した実施形態のグルコース濃度測定装置 100′と同様に、周波数掃引レーザ光源装置10Bと1/2波長板11との間に、光源装置10Bから出射された光の進行方向に垂直な面に対して、所定の角度だけ傾けたNDフィルタ37を配設した構成とするのがより望ましく、このようにNDフィルタ37を配設した構成により、第1の偏波面保存ファイバー45を導光された、眼球 200からの後方散乱光と参照光との干渉光がレーザ光源10Bに入射するのを防止して安定した強度のレーザ光を眼球 200に入射せしめることができ、眼球 200による後方散乱光の強度も安定し、これら後方散乱光の測定精度が低下するのを防止することができる。しかも、眼球 200に入射されるレーザ光の出力を適切に調整することもできる。
【0159】
は、本発明の第4のグルコース濃度測定装置の一実施形態を示す図である。
【0160】
図示のグルコース濃度測定装置 102は、超短パルス光を出射するTi:サファイアレーザ光源(以下、単に光源という)10Cと、この光源10Cから出射された超短パルス光を平行光とするレンズ21と、平行光とされた超短パルス光を眼球 200の界面R1 ,R2 に集光する集光レンズ23と、眼球 200からの反射光(角膜 210と空気 300との境界面R1 での反射光である第1の後方散乱光および角膜 210と前眼房 220との境界面R2 での反射光である第2の後方散乱光)のみを通過せしめる外光カットフィルター20と、レンズ21により平行光とされた光を透過し眼球200から外光カットフィルター20を透過した光を反射するビームスプリッター22と、第1の後方散乱光の強度および第2の後方散乱光の強度を時系列的に各別に求める、例えばストリークカメラ等の光検出器72と、光検出器72で検出された光の強度に基づいて眼球 200の眼房水 220の屈折率n2 を算出し、さらにこの算出された屈折率n2 およびその内部に記憶された屈折率n2 とグルコース濃度Gとの相関関係に基づいて眼房水 220のグルコース濃度Gを求める信号処理回路82と、求められたグルコース濃度Gを表示する表示装置90とを備えた構成である。
【0161】
なお、信号処理回路82は、屈折率算出手段、グルコース濃度算出手段および記憶部としての機能を有する。
【0162】
ここで上記超短パルス光は、例えばフェムト秒〜ピコ秒という極めて短い時間だけ発光するパルス状の光を意味する。
【0163】
次に本実施形態のグルコース濃度測定装置 102の作用について説明する。
【0164】
まず光源10Cから超短パルス光が出射される。この光はレンズ21に入射されて平行光とされ、ビームスプリッター22を透過して集光レンズ23で集光され、眼球200に入射する。
【0165】
眼球 200に入射した超短パルス光は、空気 300/角膜 210間の境界面R1 、角膜 210/前眼房 220間の境界面R2 で反射し、それぞれ第1の後方散乱光および第2の後方散乱光として外光カットフィルター20を透過し、ビームスプリッター22で反射されて時間分解可能の光検出器72に入射する。
【0166】
このとき、第1の後方散乱光と第2の後方散乱光とは眼球 200から出射するタイミングが互いに異なり、まず第1の後方散乱光が出社し、次いで第2の後方散乱光が眼球 200から出射する。そして各後方散乱光はいずれも超短パルス光であり、この超短パルス光の発光時間は、両光の生じる境界面R1 とR2 との深さの差を通過する時間に対して短いため、両後方散乱光は完全に分離されて眼球 200から順次に出射する。
【0167】
このように順次に眼球 200から出射された各後方散乱光が時間分解可能の光検出器72に順次に検出される。光検出器72により時間分解されて時系列的に各別に検出された各後方散乱光の強度の様子を図10に示す。
【0168】
ここで、図10に示した各後方散乱光の強度を時間について積分することにより各後方散乱光の光量が求められる。また、第1の後方散乱光が検出されてから第2の後方散乱光が検出されるまでに経過した時間に基づいて角膜 210の厚さが求められる。
【0169】
このようにして求められた第1の後方散乱光の強度IR1、第2の後方散乱光の強度IR2、角膜 210の厚さdおよび予め既知の各種屈折率n0 ,n1 、反射率R1、角膜 210の吸光度aに基づいて、信号処理回路82が眼房水の屈折率n2 を上述した式にしたがって算出し、さらに予め記憶された、眼房水の屈折率n2 と眼房水中のグルコース濃度Gとの相関関係にしたがって、計測対照の眼球における眼房水のグルコース濃度Gを算出し、この算出結果を表示装置90に出力する。
【0170】
表示装置90は、入力された眼房水のグルコース濃度Gを表示する。
【0171】
このように本実施形態のグルコース濃度測定装置 102によれば、第1の後方散乱光と第2の後方散乱光とがそれぞれ生じる位置の相違による両光の光路長差を利用して、超短パルス光を用いた時間軸上での分離検出を適用することにより、まず角膜と空気との境界面による入射光の微弱な第1の後方散乱光IR1および前眼房と角膜との境界面による入射光の微弱な第2の後方散乱光IR2を各別に精度よく検出することができる。そして、検出されたこれらの強度に基づいて眼房水の屈折率(眼房水の角膜との境界面近傍の屈折率)を求め、予め求めておいた眼房水の屈折率と眼房水中のグルコース濃度との対応関係および検出された眼房水の屈折率から、非侵襲的に眼房水中のグルコース濃度を精度よく検出し、かつ従来に比べてより簡単な構成により、眼房水中のグルコース濃度を非侵襲的に測定することができる。
【0172】
また、眼房水の吸光度を計測することでグルコース濃度を測定する従来の方式では、入射した光を吸収する成分が眼房水中に多種存在することによる測定誤差を低減するために、多種(通常5種類以上)の波長の光で繰り返し計測を行う必要があったが、本実施形態のグルコース濃度測定装置では、1種類の波長の光に対する屈折率とグルコース濃度とを対応付けているため、当該波長の光のみで計測を行うことができ、計測時間を大幅に短縮することができる。
【0173】
図11は、本発明の第5のグルコース濃度測定装置の一実施形態を示す図である。
【0174】
図示のグルコース濃度測定装置 103は、レーザ光源10Dと、この光源10Dから出射された光を平行光にするレンズ24と、この平行光を直線偏光とする1/2波長板11と、直線偏光とされた光を透過する偏向ビームスプリッター25と、偏向ビームスプリッター25を透過した光を円偏光の光に変換する1/4波長板12と、この円偏光の光の一部を透過するビームスプリッター22と、所定の位置に配された眼球 200の角膜 210と空気 300との境界面R1 、角膜 210と前眼房 220との境界面R2 にそれぞれこの円偏光の光を集光せしめるように光軸方向に移動可能とされた集光レンズ26と、集光レンズ26を光軸方向に移動せしめるレンズ移動装置29と、眼球 200からの反射光(角膜 210と空気 300との境界面R1 での反射光である第1の後方散乱光および角膜 210と前眼房 220との境界面R2 での反射光である第2の後方散乱光)のみを通過せしめる外光カットフィルター20と、集光レンズ26とともに共焦点光学系を構成する集光レンズ27と、この共焦点光学系の眼球側焦点とは反対の焦点位置において集光される光を通過せしめるピンホール28と、ピンホール28を通過した光を検出する光検出器73と、光検出器73により検出された眼球 200の各境界面R1 、境界面R2 からの反射光(第1の後方散乱光および第2の後方散乱光)の強度IR1,IR2、およびレンズ移動装置29の移動距離により算出される角膜 210の厚さdに基づいて、眼球 200の眼房水 220の屈折率n2 を算出し、さらにこの算出された屈折率n2 およびその内部に記憶された屈折率n2 とグルコース濃度Gとの相関関係に基づいて眼房水 220のグルコース濃度Gを求める信号処理回路83と、求められたグルコース濃度Gを表示する表示装置90とを備えた構成である。
【0175】
なお、信号処理回路83は、屈折率算出手段、グルコース濃度算出手段および記憶部としての機能を有する。
【0176】
次に本実施形態のグルコース濃度測定装置 103の作用について説明する。
【0177】
まず、光源10Dからレーザ光が出射され、この光はレンズ24により平行光とされ、1/2波長板11、偏向ビームスプリッター25および1/4波長板12を順次透過する。ここで、1/2波長板11、偏向ビームスプリッター25および1/4波長板12は戻り光カット光学系を構成し、眼球 200からの反射光が光源10D側に戻るのを防止している。
【0178】
1/4波長板12を透過した光は、さらにビームスプリッター22を透過し、集光レンズ26により眼球 200に照射される。ここでレンズ移動装置29を集光レンズ26の光軸方向に移動調整して、眼球 200に照射された光はまず境界面R1 に集光される。このときのレンズ移動装置29の位置は信号処理回路83に入力される。
【0179】
境界面R1 に集光された光は、この境界面R1 で反射され第1の後方散乱光として外光カットフィルター20を透過し、共焦点光学系を構成する集光レンズ26、ビームスプリッター22および集光レンズ27によりピンホール28で集光され、このピンホール28を通過して光検出器73に検出される。このとき検出される光は第1の後方散乱光のみであり、眼球 200の他の境界面で反射した光はピンホール28でカットされ、検出されない。したがって、第1の後方散乱光の強度のみを検出することができる。
【0180】
続いて、レンズ移動装置29を集光レンズ26の光軸方向に移動調整して、眼球 200に照射された光を境界面R2 に集光させる。このときのレンズ移動装置29の位置も信号処理回路83に入力され、信号処理回路83は、境界面R1 に集光されたときのレンズ移動装置29の位置と併せて、レンズ移動装置29の移動量を算出し、集光レンズ26の焦点距離および集光レンズ27の焦点距離に基づいて境界面R1 から境界面R2 までの距離、すなわち角膜 210の厚さdを算出する。
【0181】
境界面R2 に集光された光は、この境界面R2 で反射され第2の後方散乱光として外光カットフィルター20を透過し、共焦点光学系を構成する集光レンズ26、ビームスプリッター22および集光レンズ27によりピンホール28で集光され、このピンホール28を通過して光検出器73に検出される。このとき検出される光は第2の後方散乱光のみであり、眼球 200の他の境界面で反射した光はピンホール28でカットされ、検出されない。したがって、第2の後方散乱光の強度のみを検出することができる。
【0182】
このようにして求められた第1の後方散乱光の強度IR1、第2の後方散乱光の強度IR2、角膜 210の厚さdおよび予め既知の各種屈折率n0 ,n1 、反射率R1、角膜 210の吸光度aに基づいて、信号処理回路83が眼房水の屈折率n2 を上述した式にしたがって算出し、さらに予め記憶された、眼房水の屈折率n2 と眼房水中のグルコース濃度Gとの相関関係にしたがって、計測対照の眼球における眼房水のグルコース濃度Gを算出し、この算出結果を表示装置90に出力する。
【0183】
表示装置90は、入力されたグルコース濃度Gを表示する。
【0184】
このように本実施形態のグルコース濃度測定装置 103によれば、第1の後方散乱光と第2の後方散乱光とがそれぞれ生じる位置の相違による両光の光路長差を利用して、共焦点光学系を用いた空間上での分離検出を適用することにより、まず角膜と空気との境界面による入射光の微弱な第1の後方散乱光IR1および前眼房と角膜との境界面による入射光の微弱な第2の後方散乱光IR2を各別に精度よく検出することができる。そして、検出されたこれらの強度に基づいて眼房水の屈折率(眼房水の角膜との境界面近傍の屈折率)を求め、予め求めておいた眼房水の屈折率と眼房水中のグルコース濃度との対応関係および検出された眼房水の屈折率から、非侵襲的に眼房水中のグルコース濃度を精度よく検出し、かつ従来に比べてより簡単な構成により、眼房水中のグルコース濃度を非侵襲的に測定することができる。
【0185】
また、眼房水の吸光度を計測することでグルコース濃度を測定する従来の方式では、入射した光を吸収する成分が眼房水中に多種存在することによる測定誤差を低減するために、多種(通常5種類以上)の波長の光で繰り返し計測を行う必要があったが、本実施形態のグルコース濃度測定装置では、1種類の波長の光に対する屈折率とグルコース濃度とを対応付けているため、当該波長の光のみで計測を行うことができ、計測時間を大幅に短縮することができる。
【0186】
図12は、本発明の第5のグルコース濃度測定装置の他の実施形態を示す図である。
【0187】
図示のグルコース濃度測定装置 103′は、可視領域(<1400nm)で出力が3〜4mWのレーザ光を出射する半導体レーザ光源10D′と、この光源10D′から出射された光を平行光にするレンズ24と、この平行光のうち数μW程度を透過し、残りの大部分を進行方向に対して略直交する方向に配設された出射光強度検出器78に反射せしめる、OD値が3〜4であって、この平行光の進行方向に垂直な面に対して約45度の角度だけ傾いて配置されたNDフィルタ37と、このNDフィルタ37を透過した光を、後述する標準反射板51の反射面、所定の位置に配された眼球 200の角膜 210と空気 300との境界面R1 および角膜 210と前眼房 220との境界面R2 にそれぞれ集光せしめるように光軸方向(矢印Y方向)に移動可能とされた集光レンズ26と、集光レンズ26をこの光軸方向に移動せしめるレンズ移動装置29と、集光レンズ26の光軸に対して垂直な反射面を有し、集光レンズ26により収束される光が、所定位置に配された眼球 200に集光するのを許容する離脱位置とこの光を進行方向反対方向に反射させる反射位置との間を移動可能に設けられた標準反射板51と、眼球 200からの反射光(角膜 210と空気 300との境界面R1での反射光である第1の後方散乱光および角膜 210と前眼房 220との境界面R2での反射光である第2の後方散乱光)および標準反射板51による反射光に関して集光レンズ26とともに共焦点光学系を構成する集光レンズ27と、この共焦点光学系の眼球側若しくは反射板側焦点とは反対の焦点位置において集光される光のみを通過せしめるピンホール28と、ピンホール28を通過した光を検出する光検出器73と、角膜 210の表面から輻射される赤外線を反射する赤外線反射ミラー38と、この赤外線反射ミラー38により反射された赤外線を検出して角膜 210の表面温度を測定する赤外線温度センサ76と、光検出器73により検出された標準反射板51による反射光の強度Is および眼球 200の各境界面R1 、境界面R2 からの反射光(第1の後方散乱光および第2の後方散乱光)の強度IR1,IR2並びに標準反射板51の設定反射率Rsに基づいて、眼球 200の角膜 210および眼房水 220の各反射率R1,R2を算出し、さらにこの算出された反射率R1および空気の屈折率n2 に基づいて角膜 210の屈折率n1 を求め、得られた角膜 210の屈折率n1 と反射率R2に基づいて眼房水 220の屈折率n2 を求め、求められた眼房水 220の屈折率n2を眼球内温度分布テーブル(図13)を参照して温度補正し、得られた温度補正後の眼房水 220の屈折率n2 ′およびその内部に記憶された屈折率n2 ′とグルコース濃度Gとの相関関係に基づいて眼房水 220のグルコース濃度Gを求める信号処理回路83′と、求められたグルコース濃度Gを表示する表示装置90とを備えた構成である。
【0188】
なお、信号処理回路83′は、屈折率算出手段、グルコース濃度算出手段および記憶部としての機能を有する。
【0189】
信号処理回路83′に記憶されている眼球内温度分布テーブルは図13に示すように、その深部温度が36.5℃のときの、角膜表面温度に応じた分布を表すものであり、予め実験的若しくは臨床的に設定されたものである。この温度分布は上述したようにルックアップテーブルの形式で記憶されているものである他、関数の形式等で記憶されているものであってもよい。また図示のように、複数の角膜表面温度に応じて離散的に設定されている場合においては、補間処理等により、測定された角膜表面温度に適合する温度分布を求めるようにしてもよい。
【0190】
次に本実施形態のグルコース濃度測定装置 103′の作用について説明する。
【0191】
まず、標準反射板51が反射位置(図12に記載されている位置)に移動される。次いで、光源10D′から下記領域で3〜4mWのレーザ光が出射され、この光はレンズ24により平行光とされ、NDフィルタ37に入射する。NDフィルタ37は、入射したレーザ光のうち数μW程度のレーザ光を透過し、残りの大部分を出射光強度検出器78に反射せしめる。
【0192】
出射光強度検出器78は入射した光の強度I0 を検出し、これを信号処理回路83′に入力する。
【0193】
一方、NDフィルタ37を透過したレーザ光は、赤外線反射ミラー38を透過して、集光レンズ26により標準反射板51に照射される。ここでレンズ移動装置29を集光レンズ26の光軸方向に移動調整して、レーザ光を標準反射板51上で集光させる。標準反射板51に集光されたレーザ光は予め設定されている所定の反射率Rsで反射され、その反射光は、共焦点光学系を構成する集光レンズ26、NDフィルタ37および集光レンズ27によりピンホール28で集光され、このピンホール28を通過して光検出器73に検出される。なお、この反射光はNDフィルタ37により略全部が集光レンズ27側に反射され、光源10D′側には殆ど透過しない。したがって、光源10D′の出力が反射光の入射によって不安定になるのを防止することができ、その結果、安定した強度のレーザ光を出射させることができる。
【0194】
ここで、光検出器73により検出された反射光の強度をIs とし、NDフィルタ37と標準反射板51との往復光路およびNDフィルタ37から光検出器73までの光路における光学的ロスを表す係数をk、反射板51の既知の反射率をRs、出射光強度検出器78による検出光の強度をI0 とすれば、反射光の強度Is は下記式(9)で表すことができる。
【0195】
Is =I0 ×k×Rs (9)
次に、標準反射板51が図示矢印X方向に移動して離脱位置で停止される。この作用により、集光レンズ26により集光されたレーザ光が眼球 200に照射される。ここで、レンズ移動装置29を集光レンズ26の光軸方向に移動調整して、眼球 200に照射された光はまず境界面R1 に集光される。
【0196】
境界面R1 に集光された光は、この境界面R1 で反射され第1の後方散乱光として、共焦点光学系を構成する集光レンズ26、NDフィルタ37および集光レンズ27によりピンホール28で集光され、このピンホール28を通過して光検出器73に検出される。このとき検出される光は第1の後方散乱光のみであり、眼球 200の他の境界面で反射した光はピンホール28でカットされ、検出されない。したがって、第1の後方散乱光の強度IR1のみを検出することができる。
【0197】
続いて、レンズ移動装置29を集光レンズ26の光軸方向に移動調整して、眼球 200に照射された光を境界面R2 に集光させる。
【0198】
境界面R2 に集光された光は、この境界面R2 で反射され第2の後方散乱光として、共焦点光学系を構成する集光レンズ26、NDフィルタ37および集光レンズ27によりピンホール28で集光され、このピンホール28を通過して光検出器73に検出される。このとき検出される光は第2の後方散乱光のみであり、眼球 200の他の境界面で反射した光はピンホール28でカットされ、検出されない。したがって、第2の後方散乱光の強度IR2のみを検出することができる。
【0199】
また、眼球 200の角膜 210表面から輻射された赤外線が、集光レンズ26および赤外線反射ミラー38を介して赤外線温度センサ76に入射して角膜 210表面の温度が測定され、この測定された角膜 210表面の温度も信号処理回路83′に入力される。
【0200】
ここで、眼球 200の各境界面R1 ,R2 における反射率をそれぞれR1,R2とすると、上記式(9)と同様に、各後方散乱光の強度IR1,IR2は、下記式(7),(8)で表される。
【0201】
R1=I0 ×k×R1 (7)
R2=I0 ×k×R2 (8)
上記式(7)〜(9)より、下記式(5),(6)が導出されることから、信号処理回路83′は、既知のIR1,IR2,Is ,Rsに基づいて各境界面の反射率R1およびR2を算出する。
【0202】
R1=Rs×IR1/Is (5)
R2=Rs×IR2/Is (6)
ところで、各反射率R1,R2は、空気 300の屈折率をn0 ,角膜 210の屈折率n1 ,眼房水 220の屈折率n2 を用いて、下記式(10),(11)で表される。
【0203】
R1={(n0 −n1 )/(n0 +n1 )}2 (10)
R2={(n1 −n2 )/(n1 +n2 )}2 (11)
したがって、信号処理回路83′は、求められた反射率R1と空気の屈折率n0 に基づいて、式(10)に従って、角膜 210の屈折率n1 を求め、さらに求められた角膜 210の屈折率n1 と反射率R2に基づいて、式(11)に従って、眼房水 220の屈折率n2 を算出する。
【0204】
次いで、信号処理回路83′は、入力された角膜 210表面温度と予め記憶されている、図13に示す眼球内温度分布テーブルを参照して、角膜 210の表面温度に対応する眼球内温度分布を求め、求められた温度分布にしたがって眼房水 220の温度を求める。なお、角膜 210と眼房水(前眼房) 220との境界面R2 の、角膜 210表面からの深さ位置は、レンズ移動装置29の移動距離に基づいて算出することができる。
【0205】
信号処理回路83′に記憶されている眼房水 220の屈折率n2 とグルコース濃度との相関関係は、眼房水 220の温度が予め設定された所定の温度のときのものであるため、求められた屈折率n2 を、求められた眼房水 220の温度に応じて補正し、補正後の屈折率n2 ′と、上記相関関係とに基づいて、眼房水 220中のグルコース濃度Gが算出される。そして、この算出結果が表示装置90に出力される。表示装置90は、入力された眼房水のグルコース濃度Gを表示する。
【0206】
このように本実施形態のグルコース濃度測定装置 103′によれば、第1の後方散乱光と第2の後方散乱光とがそれぞれ生じる位置の相違による両光の光路長差を利用して、共焦点光学系を用いた空間上での分離検出を適用することにより、まず角膜と空気との境界面による入射光の微弱な第1の後方散乱光IR1および前眼房と角膜との境界面による入射光の微弱な第2の後方散乱光IR2を各別に精度よく検出することができる。しかも、光路上の光学的ロス(係数k)を考慮した形で反射率が算出され(式(7)〜(9))、この光学ロスが織り込まれた反射率に基づいて角膜および眼房水の屈折率が算出される(式(10)、(11)))ため、より精度高く眼房水の屈折率を求めることができる。さらに本実施形態において用いられる標準反射板51は、後方散乱光測定中以外の期間中は、装置内への塵埃侵入防止用のバリヤとしても機能するため、装置内の防塵手段としても役立つ。
【0207】
また、眼房水の屈折率を温度補正することにより、眼房水の構成成分の約95%(重量%)を占める水の屈折率が温度に依存して変動したときも、この変動に追従させて眼房水の屈折率を変動させて、眼房水の屈折率に対応するグルコース濃度を一層精度よく求めることができる。
【0208】
さらに、本実施形態のグルコース濃度測定装置 103′は、NDフィルタ37を適用しているため、光源10D′に戻り光が入射するのを防止することもできる。この戻り光を防止する他の手段としては、λ/2板と偏光ビームスプリッタとλ/4板をセットにして使用することが考えられるが、このセットの場合は、偏光を利用するため、複屈折を有する角膜においてこの複屈折の影響が生じて、精度よく屈折率を求めることができない。これに対してNDフィルタを用いた場合は、偏光を利用する必要がないため、このような問題が生じない。しかもNDフィルタは、眼球 200への入射光の強度を低減させることもできるため、MPE値を調節する手段を、別途設ける必要がない。
【0209】
なお、本実施形態において適用した、上記標準反射板を用いた眼房水の屈折率算出方式、屈折率の温度補正、NDフィルタを用いた光源への戻り光防止、の各方法は、前述した各実施形態のグルコース濃度測定装置にも適用することができる。
【0210】
また、角膜 210の表面温度の測定は、図12に示すものの他、図14に示すように、角膜 210に近接して設けた筒部材77を赤外線温度センサ76の受感面に接続したものを用いてもよい。このような筒部材77を接続することにより、角膜 210から輻射される赤外線を、指向性を向上させて赤外線温度センサ76で受感することができる。
【0211】
なお、角膜表面温度を測定するのに代えて、角膜表面温度と強い相関関係を有する、角膜近傍の皮膚温度や角膜近傍の外気温を測定するようにしてもよい。
【0212】
また、角膜表面温度の測定と併せて、眼球深部温度も測定し、両温度に基づいて眼球内温度分布を求めるようにしてもよく、この場合、眼球深部温度は、外耳道深部の温度を、この外耳道深部からの輻射赤外線を測定することで代用するようにしてもよい。
【0213】
図15は、本発明の第6のグルコース濃度測定装置の一実施形態を示す図である。
【0214】
図示のグルコース濃度測定装置 104は、レーザ光源10Eと、この光源10Eから出射された光を平行光にするレンズ30と、この平行光を所定の角度で反射させるミラー31と、反射された光を直線偏光とする1/2波長板11と、直線偏光とされた光を円偏光の光に変換する1/4波長板12と、この円偏光の光を眼球 200の角膜 210と前眼房 220との境界面R2 に、予め設定された入射角で入射し、楕円偏光の光として照射せしめるレンズ32と、この境界面R2 で反射された後方散乱光の楕円偏光の方位角および振幅を検出する検光子34および光検出器74と、検光子34を通過した後方散乱光を所定の角度で反射せしめるミラー31と、眼球 200の各境界面からの反射光(後方散乱光)のうち、角膜 210と前眼房 220との境界面R2 からの後方散乱光のみを空間的に分離検出する共焦点光学系を構成する集光レンズ33,35およびピンホール36と、境界面R2 で反射された後方散乱光の楕円偏光の状態(楕円偏光の方位角および楕円率)および円偏光の光の入射角に基づいて眼球 200の眼房水 220の屈折率n2 を求め、さらにこの求められた屈折率n2およびその内部に記憶された屈折率n2 とグルコース濃度Gとの相関関係に基づいて眼房水 220のグルコース濃度Gを求める信号処理回路84と、求められたグルコース濃度Gを表示する表示装置90とを備えた構成である。
【0215】
なお、信号処理回路84は、屈折率算出手段、グルコース濃度算出手段および記憶部としての機能を有する。
【0216】
信号処理回路84による、楕円偏光の状態に基づいての屈折率n2 を求める処理は、具体的には、検光子34および光検出器74により検出された楕円偏光光の楕円率ρおよび方位角φに基づいて、振幅比ψと位相差Δとを得、既知の眼球への入射角ψ0 と併せて、下記式により屈折率nを求めるものである。
【0217】
2 = sin2 ψ0 [1+{ tan2 ψ0 ( cos2 2ψ− sin2 2ψ sin2 Δ)}/(1+ sin2ψ cosΔ)2
この楕円偏光の状態に基づいて屈折率n2 を求める処理は、エリプソメーターによる屈折率の検出処理の原理を利用したものである。
【0218】
次に本実施形態のグルコース濃度測定装置の作用について説明する。
【0219】
まずレーザ光源10Eからレーザ光が出射され、このレーザ光はレンズ30により平行光とされる。次いで、この平行光はミラー31により所定の角度で反射され、1/2波長板11で直線偏光の光とされ、さらに1/4波長板12を通過して円偏光の光に変換される。この円偏光の光はレンズ32により、眼球 200の角膜 210と前眼房 220との境界面R2 に所定の角度で照射される。
【0220】
このとき円偏光の光は眼球 200に正面からではなく、所定の傾斜した角度で照射されるため、境界面R2 においては楕円偏光となる。
【0221】
また眼球 200に照射されたこの円偏光の光は眼球 200の各境界面R1 、R2 において反射するが、これらの後方散乱光のうち、集光レンズ33および35からなる共焦点光学系により、境界面R2 による後方散乱光のみが、ピンホール36を通過する。
【0222】
ここで、ピンホール36を通過して光検出器74に検出される光量(すなわち、境界面R2 で反射された後方散乱光の光量)が最大となるように、集光レンズ33と集光レンズ35との間に配された検光子34を調整し、そのときの検光子34の方位と光検出器74の出力とから、後方散乱光の方位角φおよび楕円率ρが信号処理回路84により求められる。
【0223】
信号処理回路84は求められた楕円率ρおよび方位角φ、並びに円偏光の眼球への入射角に基づいて、眼球 200の眼房水 220の屈折率n2 を求める。
【0224】
さらに信号処理回路84は、求められた屈折率n2 およびその内部に記憶された屈折率n2 とグルコース濃度Gとの相関関係に基づいて、眼房水 220のグルコース濃度Gを算出する。算出されたグルコース濃度Gは表示装置90に表示される。
【0225】
このように本実施形態のグルコース濃度測定装置によれば、第1の後方散乱光と第2の後方散乱光とがそれぞれ生じる位置の相違による両光の光路長差を利用して、共焦点光学系を用いた空間上での分離検出を適用するとともに、楕円偏光の偏光状態に基づいて、眼房水の屈折率(眼房水の角膜との境界面近傍の屈折率)を求め、予め求めておいた眼房水の屈折率と眼房水中のグルコース濃度との対応関係および検出された眼房水の屈折率から、非侵襲的に眼房水中のグルコース濃度を精度よく検出し、かつ従来に比べてより簡単な構成により、眼房水中のグルコース濃度を非侵襲的に測定することができる。
【0226】
また、眼房水の吸光度を計測することでグルコース濃度を測定する従来の方式では、入射した光を吸収する成分が眼房水中に多種存在することによる測定誤差を低減するために、多種(通常5種類以上)の波長の光で繰り返し計測を行う必要があったが、本実施形態のグルコース濃度測定装置では、1種類の波長の光に対する屈折率とグルコース濃度とを対応付けているため、当該波長の光のみで計測を行うことができ、計測時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1のグルコース濃度測定方法を実施するための基本的な装置構成を示す図
【図2】眼球への入射光と後方散乱光との関係を示す図
【図3】眼房水の屈折率とグルコース濃度との相関関係を示す図
【図4】本発明の第2のグルコース濃度測定方法を実施するための濃度測定装置の一実施形態を示す図
【図5】本発明の第2のグルコース濃度測定方法を実施するための濃度測定装置の他の実施形態を示す図
【図6】図5に示したグルコース濃度測定装置における第2の光検出器75の配置向きの好ましい態様を示す図
【図7】本発明の第3のグルコース濃度測定方法を実施するための具体的な実施形態の構成を示す図
【図8】周波数掃引の様子を示すグラフ
【図9】本発明の第4のグルコース濃度測定方法を実施するための具体的な実施形態の構成を示す図
【図10】時間分解可能の光検出器により検出された各光の強度の概念を示すグラフ
【図11】本発明の第5のグルコース濃度測定方法を実施するための具体的な実施形態の構成を示す図
【図12】本発明の第5のグルコース濃度測定方法を実施するための濃度測定装置の他の実施形態を示す図
【図13】深部温度が36.5℃の場合の、外気温10℃、15℃、20℃、25℃、30℃ごとの眼球内温度分布を示す図
【図14】角膜表面温度を測定する赤外線温度センサ(赤外線測定手段)の他の実施態様を示す図
【図15】本発明の第6のグルコース濃度測定方法を実施するための具体的な実施形態の構成を示す図
【符号の説明】
10 光源装置
70 光検出器
80A 屈折率算出手段
80B グルコース濃度算出手段
80C 記憶部
100 〜104 グルコース濃度測定装置
200 眼球
210 角膜
220 前眼房(眼房水)
230 水晶体

Claims (18)

  1. 所定の位置に予め配された眼球に光を照射する光源装置と、前記光源装置から出射された光に照射された前記眼球の角膜と空気との境界面による第1の後方散乱光の強度および角膜と前眼房との境界面による第2の後方散乱光の強度をそれぞれ検出する光検出器と、前記第1および第2の後方散乱光の強度に基づいて、前記前眼房内を満たす眼房水の屈折率を求める屈折率算出手段と、眼房水の屈折率と該眼房水中のグルコース濃度との対応関係が予め記憶された記憶部と、前記記憶部に記憶された対応関係、および前記屈折率算出手段により求められた眼房水の屈折率に基づいて、該眼房水中のグルコース濃度を求めるグルコース濃度算出手段とを備えたことを特徴とするグルコース濃度測定装置。
  2. 低コヒーレンスな光を出射する光源装置と、該光源装置から出射された低コヒーレンスな光を互いに異なる2つの光路に沿って各別に進行する参照光と眼球に入射される信号光とに分割する光路分割手段と、該信号光と参照光とで僅かな周波数差が生じるように両光のうち少なくとも一方を変調する、該少なくとも一方の光路上に設けられた変調手段と、前記参照光が進行する光路の長さを調整する光路長調整手段と、前記眼球の角膜と空気との境界面による信号光の第1の後方散乱と前記参照光、および前眼房と角膜との境界面による前記信号光の第2の後方散乱光と前記参照光とを、それぞれ波面整合させる波面整合手段と、前記参照光と前記第1の後方散乱光との波面整合による第1の干渉光および前記参照光と前記第2の後方散乱光との波面整合による第2の干渉光の強度を光電的に検出する光検出器と、該各干渉光の強度に基づいて前記第1および第2の後方散乱光の強度を求めるヘテロダイン演算手段と、前記第1および第2の後方散乱光の強度に基づいて、前記前眼房内を満たす眼房水の屈折率を求める屈折率算出手段と、眼房水の屈折率と該眼房水中のグルコース濃度との対応関係が予め記憶された記憶部と、前記記憶部に記憶された対応関係、および前記屈折率算出手段により求められた眼房水の屈折率に基づいて、該眼房水中のグルコース濃度を求めるグルコース濃度算出手段とを備えたことを特徴とするグルコース濃度測定装置。
  3. 時間的に鋸歯状に周波数掃引されたコヒーレント光を出射する光源装置と、該光源装置から出射された周波数掃引されたコヒーレント光を互いに異なる2つの光路に沿って各別に進行する参照光と眼球に入射される信号光とに分割する光路分割手段と、前記眼球の角膜と空気との境界面による前記信号光の第1の後方散乱光と、前記信号光および前記第1の後方散乱光と前記参照光との光路長差に基づく時間差をもって前記光源から出射した、前記第1の後方散乱光とは周波数差を有するコヒーレント光による前記参照光とを、および、前記眼球の前眼房と角膜との境界面による前記信号光の第2の後方散乱光と、前記信号光および前記第2の後方散乱光と前記参照光との光路長差に基づく時間差をもって前記光源から出射した、前記第2の後方散乱光とは周波数差を有するコヒーレント光による前記参照光とを、それぞれ波面整合させる波面整合手段と、前記第1の後方散乱光と該第1の後方散乱光に対して僅かな周波数差を有する参照光との波面整合により得られた第1の干渉光、および前記第2の後方散乱光と該第2の後方散乱光に対して僅かな周波数差を有する参照光との波面整合により得られた第2の干渉光の強度を光電的に検出する光検出器と、該各干渉光の強度に基づいて前記第1および第2の後方散乱光の強度を求めるヘテロダイン演算手段と、前記第1および第2の後方散乱光の強度に基づいて、前記前眼房内を満たす眼房水の屈折率を求める屈折率算出手段と、眼房水の屈折率と該眼房水中のグルコース濃度との対応関係が予め記憶された記憶部と、前記記憶部に記憶された対応関係、および前記屈折率算出手段により求められた眼房水の屈折率に基づいて、該眼房水中のグルコース濃度を求めるグルコース濃度算出手段とを備えたことを特徴とするグルコース濃度測定装置。
  4. 超短パルス光を出射する光源装置と、該超短パルス光を眼球に入射せしめ、該眼球の角膜と空気との境界面による該超短パルス光の第1の後方散乱光の強度、および前眼房と角膜との境界面による該超短パルス光の第2の後方散乱光の強度を時系列的に各別に求める光時間領域後方散乱測定手段と、前記第1および第2の後方散乱光の強度に基づいて、前記前眼房内を満たす眼房水の屈折率を求める屈折率算出手段と、眼房水の屈折率と該眼房水中のグルコース濃度との対応関係が予め記憶された記憶部と、前記記憶部に記憶された対応関係、および前記屈折率算出手段により求められた眼房水の屈折率に基づいて、該眼房水中のグルコース濃度を求めるグルコース濃度算出手段とを備えたことを特徴とするグルコース濃度測定装置。
  5. 所定の位置に予め配された眼球に光を照射する光源装置と、前記眼球の角膜と空気との境界面による前記光の第1の後方散乱光および前眼房と角膜との境界面による前記光の第2の後方散乱光を、空間的に分離する共焦点光学系と、前記共焦点光学系により空間的に分離された前記第1の後方散乱光および前記第2の後方散乱光の各強度をそれぞれ検出する光検出器と、前記第1および第2の後方散乱光の強度に基づいて、前記前眼房内を満たす眼房水の屈折率を求める屈折率算出手段と、眼房水の屈折率と該眼房水中のグルコース濃度との対応関係が予め記憶された記憶部と、前記記憶部に記憶された対応関係、および前記屈折率算出手段により求められた眼房水の屈折率に基づいて、該眼房水中のグルコース濃度を求めるグルコース濃度算出手段とを備えたことを特徴とするグルコース濃度測定装置。
  6. 前記屈折率算出手段が、前記眼球を照射する光の強度をI0 、前記第1の後方散乱光の強度をIR1、前記空気の屈折率をn0 としたとき、IR1=I0 {(n0 −n1 )/(n0 +n1 )}2より、前記角膜の屈折率n1 を求め、{(n0 −n1 )/(n0 +n1 )}2 =R1、前記第2の後方散乱光の強度をIR2、前記角膜の吸光度をa、前記角膜の厚さをdとしたとき、IR2=I0 (1−R1)2 10-2ad{(n1 −n2 )/(n1 +n2 )}2より、前記眼房水の屈折率n2 を求めるものであることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載のグルコース濃度測定装置。
  7. 反射率が既知の標準反射板が、前記眼球の前の光路上に出入れ可能に設けられ、前記屈折率算出手段が、前記光検出器により検出された前記標準反射板による反射光の強度Is 、前記検出された第1の後方散乱光の強度IR1、前記検出された第2の後方散乱光の強度IR2、および前記標準反射板の反射率Rsに基づいて、下記式に従って前記空気と角膜との境界面による反射率R1および前記角膜と前眼房との境界面による反射率R2を求め、R1=Rs×IR1/IsR2=Rs×IR2/Is前記求められた反射率R1および前記空気の屈折率をn0 に基づいて、下記式にしたがって前記角膜の屈折率n1 を求め、R1={(n0 −n1 )/(n0 +n1 )}2前記求められた反射率R2および前記角膜の屈折率n1 に基づいて、下記式にしたがって前記眼房水の屈折率n2 を求めるものであることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載のグルコース濃度測定装置。={(n1 −n2 )/(n1 +n2 )}2
  8. 前記眼房水の温度に応じて該眼房水の屈折率を補正する眼房水屈折率補正手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から7のうちいずれか1項に記載のグルコース濃度測定装置。
  9. 前記眼房水屈折率補正手段が、前記角膜の表面温度、該角膜の近傍の皮膚温または該角膜の近傍の外気温を測定する外表面温度検出手段と、前記表面温度、前記皮膚温または前記外気温に応じて予め設定された眼球内温度分布テーブルと、前記外表面温度検出手段により検出された前記表面温度、前記皮膚温または前記外気温に応じて前記眼球内温度分布テーブルを参照することにより前記眼房水の温度を決定する眼房水温度決定手段とを備えたことを特徴とする請求項記載のグルコース濃度測定装置。
  10. 前記眼房水屈折率補正手段が、前記角膜の表面温度、該角膜の近傍の皮膚温または該角膜の近傍の外気温を測定する外表面温度検出手段と、該外表面温度検出手段により検出された前記表面温度、前記皮膚温または前記外気温に応じて眼球内温度分布を求める眼球内温度分布決定手段と、該眼球内温度分布決定手段により決定された眼球内温度分布にしたがって前記眼房水の温度を決定する眼房水温度決定手段とを備えたことを特徴とする請求項記載のグルコース濃度測定装置。
  11. 前記眼房水屈折率補正手段が、前記角膜の表面温度、該角膜の近傍の皮膚温または該角膜の近傍の外気温を測定する外表面温度検出手段と、前記前眼房の深部温度を測定する深部温度検出手段と、前記表面温度、前記皮膚温または前記外気温と前記深部温度とに応じて予め設定された眼球内温度分布テーブルと、前記外表面温度検出手段により検出された前記表面温度、前記皮膚温または前記外気温と前記深部温度検出手段により検出された前記深部温度とに応じて前記眼球内温度分布テーブルを参照することにより前記眼房水の温度を決定する眼房水温度決定手段とを備えたことを特徴とする請求項記載のグルコース濃度測定装置。
  12. 前記眼房水屈折率補正手段が、前記角膜の表面温度、該角膜の近傍の皮膚温または該角膜の近傍の外気温を測定する外表面温度検出手段と、前記前眼房の深部温度を測定する深部温度検出手段と、前記外表面温度検出手段により検出された前記表面温度、前記皮膚温または前記外気温と前記深部温度検出手段により検出された前記深部温度とに応じて眼球内温度分布を求める眼球内温度分布決定手段と、該眼球内温度分布決定手段により決定された眼球内温度分布にしたがって前記眼房水の温度を決定する眼房水温度決定手段とを備えたことを特徴とする請求項記載のグルコース濃度測定装置。
  13. 前記深部温度検出手段が、外耳道内深部からの輻射赤外線を測定する赤外線測定手段であることを特徴とする請求項11または12記載のグルコース濃度測定装置。
  14. 前記外表面温度検出手段が、前記角膜の表面からの輻射赤外線を測定する赤外線測定手段であることを特徴とする請求項9から13のうちいずれか1項に記載のグルコース濃度測定装置。
  15. 前記角膜の温度分布に応じて、該角膜の屈折率および/または吸光度を補正する角膜光学特性補正手段をさらに備えたことを特徴とする請求項8から14のうちいずれか1項に記載のグルコース濃度測定装置。
  16. 所定の位置に予め配された眼球に対して所定の入射角で円偏光の光を照射する光源装置と、前記眼球の前眼房と角膜との境界面による前記光の後方散乱光を抽出する共焦点光学系と、前記共焦点光学系により抽出された前記後方散乱光の楕円偏光状態を検出する楕円偏光状態検出手段と、前記後方散乱光の楕円偏光状態に基づいて、前記前眼房内を満たす眼房水の屈折率を求める屈折率算出手段と、眼房水の屈折率と該眼房水中のグルコース濃度との対応関係が予め記憶された記憶部と、前記記憶部に記憶された対応関係、および前記屈折率算出手段により求められた眼房水の屈折率に基づいて、該眼房水中のグルコース濃度を求めるグルコース濃度算出手段とを備えたことを特徴とするグルコース濃度測定装置。
  17. 前記光源装置が半導体レーザであり、前記半導体レーザから出射された光の光路上に、該出射された光の進行方向に垂直な面に対して傾斜して配設されたNDフィルタを備えたことを特徴とする請求項1から16のうちいずれか1項に記載のグルコース濃度測定装置。
  18. 前記記憶部に記憶された前記対応関係が、下記式により表されたものであることを特徴とする請求項1から17のうちいずれか1項に記載のグルコース濃度測定装置。
    n= 1.33322+ 1.6×10-6×Gただし、nは眼房水の屈折率、Gはグルコース濃度(mg/dl)。
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