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JP3396433B2 - 試料分析装置 - Google Patents

試料分析装置

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JP3396433B2
JP3396433B2 JP23746998A JP23746998A JP3396433B2 JP 3396433 B2 JP3396433 B2 JP 3396433B2 JP 23746998 A JP23746998 A JP 23746998A JP 23746998 A JP23746998 A JP 23746998A JP 3396433 B2 JP3396433 B2 JP 3396433B2
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flow cell
magnetic
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功夫 山崎
智晴 梶山
裕二 宮原
裕之 富田
健二 保田
也寸志 新山
正樹 芝
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Roche Diagnostics GmbH
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は試料分析装置に係
り、特に、臨床検査の分野で利用されるほか、食品検査
や医学、生命科学の基礎等で用いられる抗原−抗体反応
を利用した分析に好適な試料分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】血清または尿のような生体液を分析し、
この生体液内の抗体と抗原、あるいは抗原抗体免疫複合
物の存在を検出し、その定量を行うことはよく知られて
おり、このような方法は一般に免疫分析と呼ばれてい
る。
【0003】免疫分析の1つの共通の方法は、制限した
量の抗原と2種の抗体の間に生ずる結合反応を使うこと
である。これらの両抗体は抗原と結合することができ、
たとえば一方の抗体に標識をつけて両抗体を抗原を媒介
として結合し、結合した標識付き抗体の比率を計測する
ことにより存在する抗原の量がわかる。
【0004】具体的な手法の1つは特開平8−1460
02号公報に提案されている。このなかで、第1抗体は
固相として磁性粒子の表面に固定化されており、第2抗
体には標識物質が結合されて液相に溶融している。生体
液由来試料を第1抗体が固定化された磁性粒子と混合
し、抗原−抗体反応を生じさせると、試料に含まれる抗
原が第1抗体を介して磁性粒子に結合する。さらに第2
抗体を反応させると、第2抗体が抗原、第1抗体を介し
て磁性粒子に結合する。結合する第2抗体の量は、試料
に含まれる抗原の量に依存して増減する。
【0005】フローセル入口に接続しているシッパープ
ローブを反応混合液に挿入し、フローセル出口に接続す
るシリンジポンプを吸引することで、反応混合物を磁場
のかかるフローセルに流動すると、磁性粒子が磁場によ
り捕捉される。磁場は磁石をフローセルに近接すること
で与える。シッパープローブを緩衝液プローブに移動し
て吸引することでフローセルに緩衝液を流すと、磁性粒
子はフローセルに残されたまま、反応混合物の液相はフ
ローセル外に流し去られる。
【0006】標識物質は電気的に化学ルミネッセンスを
発生する物質である。磁場を除去した後、フローセルの
流路内に電場をかけると、磁性粒子に結合した標識物質
が発光する。発光の強度を検出することにより、試料中
の抗原の量を分析する。その後、フローセルから磁石を
遠ざけ、シッパープローブを洗浄液ボトルに差し替えて
吸引することで、磁性粒子をフローセルから除去する。
【0007】この従来例の場合には、混合物から液相を
除去した場所で電場を与えて発光量を検出するため、磁
性粒子のロスがない。また磁性粒子に磁界を作用させて
混合物の液相と分離するために、磁性粒子の粒径を小さ
くし、反応速度を増大させることができる。また、フロ
ーセルに洗浄液を流して磁性粒子を流し去るので、連続
して複数の試料の分析を行うことができる。
【0008】別の従来技術が、特表平6−508203
号公報に示されている。その中で永久磁石または電磁石
で構成された複数の磁石を、南北極つまりS極とN極を
交互に配置して用いている。この例の場合は、フローセ
ル内の電極面にほとんど水平な磁力線が形成され、その
結果磁性粒子に配向が形成され、電極に供給された電気
化学エネルギーに容易にアクセスできるようになる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来技術には次のような欠点がある。特開平8−1460
02号公報記載の例では、磁性粒子を捕捉するための磁
界発生に用いている均一な磁石では、磁性粒子を磁石の
方向に引き寄せる力は強いが、電極面に平行な方向に働
く力は弱い。したがって電極面に捕捉された磁性粒子が
引き続き流体に流されて、電極面の下流側に片寄ってし
まう。そのため磁性粒子が効率よく発光せず、高感度の
分析ができない。
【0010】また、特表平6−508203号公報記載
例の場合は、複数の磁石を南北極を交互に配置している
ために、磁性粒子に対して電極面に平行な方向に働く力
は強い。しかしながら、複数の磁石が南北極を交互にし
て隣接しているために、それぞれの磁石から発生する磁
界が相殺してしまい、磁性粒子を磁石の方向に引き寄せ
る力が弱い。したがって、フローセル中を流れる磁性粒
子を電極面まで引き寄せるまでに時間がかかり、短時間
での分析ができない。このように従来の方法では、高速
に分析することと高感度で分析することは相反すること
であり、両方を同時に実現することはできなかった。
【0011】本発明の目的は、一定時間に分析できる能
力が高く、かつ磁性粒子をできるだけ均一に捕捉し、高
感度で分析が可能な試料分析装置を提供することであ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するために、フローセルと、前記フローセル内に流通さ
せた試料液の磁性粒子の付着した特定物質を捕捉する磁
界発生手段と、前記捕捉した磁性粒子の発光量を検出す
る検出手段とを備えた試料分析装置において、前記磁界
発生手段は、前記フローセル内の所定領域の磁界強度が
切り換え可能であり、前記磁性粒子の付着した特定物質
を、前記フローセル壁面の所定範囲に一様に捕捉する磁
界を発生するものであり、さらに前記磁界発生手段が発
生する磁界は、前記フローセルの所定領域の磁界発生手
段側の壁面に対しほぼ垂直な磁場ベクトルを有し、前記
壁面に平行な方向の磁力成分を所定範囲に存在させるも
のであることを特徴とする。これにより、試料分析の効
率化と高精度化が図られる。
【0013】より具体的には、入口と出口を有し特定物
質および磁性粒子の含まれる試料液を流通させるフロー
セルと、前記フローセル内の所定領域の磁界強度の切り
換え可能な磁界発生手段と、前記フローセルの入口に連
通するピペッタと、前記フローセルの出口に連通し吸引
量を制御可能なポンプと、前記特定物質の濃度に応じて
発光物質の付着量が変化する磁性粒子を懸濁した試料液
を収容する試料容器と、前記磁性粒子を含まない試薬を
収容する試薬容器と、前記フローセルの洗浄液を収容す
る洗浄液容器と、前記フローセルの所定領域において発
光量を検出する検出器と、前記ポンプ、前記磁界発生手
段および前記検出器の動作を制御するコントローラとを
備えた試料分析装置において、前記磁界発生手段が発生
する磁界は、前記フローセルの所定領域の磁界発生手段
側の壁面に対しほぼ垂直な磁場ベクトルを有し、前記壁
面に平行な方向の磁力成分を所定範囲に存在させるもの
であることを特徴とする。これにより、分析能力の高い
試料分析装置が得られる。
【0014】また、前記磁界発生手段は、前記フローセ
ル側にS極またはN極のいずれかを向ける永久磁石であ
り、前記永久磁石の表面に溝または窪み等の凹部が形成
されていることを特徴とする。また、前記磁界発生手段
は、前記フローセル側にS極またはN極のいずれかを向
ける永久磁石であり、前記永久磁石の表面または内部に
磁界を不均一にする磁性体または非磁性体が混成してい
ることを特徴とする。また、前記フローセルの所定領域
の壁面に、磁界を不均一にする磁性体が埋め込まれてい
ることを特徴とする。このような構成を適宜採用するこ
とにより、磁性粒子の付着した特定物質を、フローセル
壁面の所定範囲にほぼ均一に捕捉することが可能にな
る。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて本発明の実施
の形態を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態の
構成図である。フローセル11はピペッタ27およびポ
ンプ23と、チューブ35およびチューブ36を通して
流体的に接続されている。ピペッタ27はアーム28に
設置されており、懸濁液容器30、緩衝液容器31、洗
浄液容器32がその移動範囲に設置される。チューブ3
5の経路に熱交換器41が設けられている。フローセル
11の出口の下流にバルブ24が設けられ、チューブ3
6を通してポンプ23に接続する。更にチューブ36は
分岐してバルブ25に接続し、バルブ25からは廃液容
器33に配管されている。
【0016】フローセル11の内部は流路18が貫通し
ており、流路18の側面に対向電極14、作動電極15
が設置してある。フローセル11の上に光センサ13が
ケース12に覆われて設置されている。フローセル11
の上部は透明な材料で作られている。モータ21に接続
したレバー22に磁石20が支持されており、フローセ
ル11の下部に近接するように駆動できる。アーム2
8、光センサ13、モータ21、ポンプ23はコントロ
ーラ40に接続されている。流路18の断面は長方形で
あり、この場合は磁石20に対向する方向に測った厚さ
が0.5mmであり、幅が5mmである。作動電極は流
れ方向に5mmの幅がある。
【0017】反応ユニット55で処理された懸濁液の入
った懸濁液容器30が、ガイド56により所定位置に設
置される。反応ユニット55には分析対象となる複数種
類の試料と、複数種類の試薬を選択的に組み合わせて反
応させ、反応生成物を懸濁液容器30に入れてガイド5
6で順次所定位置に送る機能がある。
【0018】図2は、磁石20の形状を示す図である。
1辺が5mmの立方体形状の永久磁石であり、上部に幅
0.5mm、深さ0.5mmの溝が2本刻まれている。磁
極の向きは、溝のある面の方向がN極、反対面の方向が
S極になっている。N極とS極が逆でも構わない。磁石
20は溝のある面がフローセル11に向き、溝の方向が
フローセル流路18の流れ方向に直交するように、レバ
ー22に取り付けられている。
【0019】ここで分析対象となる試料とは、血清や尿
のような生体液由来試料である。試料が血清の場合、分
析されるべき成分はたとえば抗原、ペプチドホルモン、
ステロイドホルモン、薬剤、またはウイルス抗体、ある
いは各種の腫瘍マーカー、抗体、または抗原・抗体複合
物、または、単一蛋白質である。ここでは、特定成分は
たとえばTSH(甲状腺ホルモン)であるとする。
【0020】反応ユニット55内で行われる前処理過程
では、分析対象となる試料がビーズ溶液、第1試薬、第
2試薬、緩衝液と混合して、一定温度(37℃)で一定
時間反応させられる。ここでは、分析対象となる試料は
50μl、第1試薬は50μl、第2試薬は50μl、
緩衝液は100μlが用いられる。ビーズ溶液とは、粒
子状磁性物質をポリスチレンなどのマトリックスに埋め
込んだ磁性粒子(比重1.4、平均粒径2.8μm)を緩
衝液中に分散させてなる溶液であり、マトリックスの表
面には、ビオチンと結合可能なストレプタニジンが結合
されている。
【0021】磁性物質は、たとえば、鉄、酸化鉄、ニッ
ケル、コバルト、酸化クロムなどの磁気吸引物質であれ
ばよく、また、マトリックス自体は、ポリスチレンの他
に多くの合成および天然の重合性物質(たとえばセルロ
ース、ポリエステルなど)の中から選ばれてもよい。
【0022】第1試薬は、磁性粒子を試料中の特定成分
TSHと結合させる物質が含まれており、これには末端
をビオチン処理したTSH抗体が含まれる。第2試薬に
は電気化学反応により発光を生じる標識物質をラベルし
かつ試料中の特定成分と結合する物質が含まれている。
すなわち、第2試薬には末端をビオチン処理し、かつ励
起により化学発光を生じる標識物質、ここではルテニウ
ム(II)トリス(ビピリジル)を結合したTSH抗体
を含む。第1試薬および第2試薬は分析されるべき特定
の成分の種類によって異なり、たとえば免疫グロブリ
ン、抗原、抗体またはその他の生物学的物質が使用され
る。
【0023】緩衝液容器31には、標識物質の電気的な
化学発光を誘引する物質を含む緩衝液が収容されてい
る。具体的には、この緩衝液は電圧印加後による還元
後、標識化合物の励起を誘引する物質、たとえばトリプ
ロピルアミン(TPA)を含む、pHが7.4前後のも
のである。洗浄液容器32には洗浄液が収容されてい
る。
【0024】熱交換器41は、チューブ35を通して流
れる液体の温度を、予め定めた温度になるように制御す
る働きをする。チューブ35、チューブ36およびフロ
ーセル11内の流路18は、分析の動作前に緩衝液が満
たされている。
【0025】次に、本実施形態の動作を説明する。分析
の1サイクルは、懸濁液吸引期間、粒子捕捉期間、BF
分離期間、検出期間、洗浄期間、リセット期間、予備吸
引期間からなっている。反応ユニット55で処理した懸
濁液の収容された懸濁液容器30が、所定位置にセット
されたところから1サイクルが開始する。
【0026】懸濁液吸引期間では、まず、コントローラ
40の信号によりモータ21が回転し、磁石20がフロ
ーセル11下部に接触する位置に移動する。バルブ24
は開き、バルブ25は閉じた状態に設定される。アーム
28がコントローラ40の信号により動作し、ピペッタ
27を懸濁液容器30内に挿入する。続いてコントロー
ラ40の信号で、ポンプ23が一定量の吸引動作する。
するとチューブ内の液体に吸引されて懸濁液容器30内
の懸濁液が、ピペッタ27を経由してチューブ35内に
入る。この状態でポンプ23を停止し、アーム28を動
作してピペッタ27を洗浄機構37を経て緩衝液容器3
1に挿入する。洗浄機構37を通過時に、ピペッタの先
端は洗浄される。
【0027】粒子捕捉期間には、コントローラ40から
の信号でポンプ23は一定速度で吸引する。その間に、
チューブ35内に存在した懸濁液は流路18を通過す
る。流路内には磁石20からの磁界が発生しているため
に、懸濁液に含まれる磁性粒子は磁石に向かって吸引さ
れ、作動電極15の表面に捕捉される。
【0028】BF分離期間には、バルブ24を開き、バ
ルブ25を閉じてポンプ23を吸引する。緩衝液容器3
1から緩衝液が吸引され、流路18内を通過する。その
際、磁性粒子は作動電極15上に保持されたままで残さ
れ、液体成分のみが流路18から流し去られる。磁性粒
子に結合している抗体(B)と結合せずに液体成分に溶
けている抗体(F)が分離される。
【0029】検出器間には、モータ21が回転して磁石
20がフローセル11から遠ざけられる。続いて、コン
トローラ40からの信号で作動電極15と対向電極14
の間に電圧をかける。そのときに作動電極15上の磁性
粒子から発光が生じるが、その発光の強度を光センサ1
3で検出し、信号としてコントローラ40に送る。一定
時間経過後、電圧を除去する。検出期間の間にアーム2
8を動作してピペッタ27を洗浄液容器32に挿入す
る。
【0030】洗浄期間には、ポンプ23を吸引する事に
より、洗浄液容器32から吸引した洗浄液を流路18内
を通過させる。このときは磁界が遠ざかっているため
に、磁性粒子は作動電極15上に保持されず、緩衝液と
ともに流し去られる。
【0031】リセット期間には、バルブ24を閉じ、バ
ルブ25を開いてポンプ23を吐出動作する。ポンプ内
の液は廃液容器33に排出される。予備吸引期間に緩衝
液を吸引し、チューブ35、フローセル流路18、バイ
パス流路19内に緩衝液を満たす。予備吸引期間後、次
のサイクルが実行可能になる。
【0032】コントローラ40は、検出期間に光センサ
13から受け取った信号を演算して、分析対象の試料中
の特定成分の濃度を算出し、出力する。図3に、本実施
形態で用いる磁石が磁性粒子に与える吸引力を計算した
結果を示す。横軸は流れ方向の位置、縦軸は吸引力であ
る。実線で示したFzは、吸引力の作動電極15面に垂
直な方向の成分であり、作動電極15に向かう方向が正
である。破線で示したFxは電極に平行な方向の成分で
あり、流れと反対方向が正である。
【0033】磁石20は磁極を作動電極15に向けてい
るため、作動電極15の面上で磁場ベクトルはほぼ作動
電極に垂直になっている。また磁石20の内部が一様に
1方向に磁化されているため、形成される磁場は強い。
そのため、Fzは非常に大きい。したがって、フローセ
ル流路18を通過する磁性粒子は、作動電極15側に強
く引き寄せられる。粒子捕捉期間に高い流速で流れて
も、効率よく磁性粒子が作動電極15の面に到達する。
Fxは3つの正の峰を持ち、峰の絶対値は大きい。その
ため、作動電極15の面上に付着した磁性粒子が、流れ
によって下流に流されることが防がれる。
【0034】本実施形態の場合には、作動電極15の面
上で、磁性粒子が下流に流されない方向の磁性力が分散
して分布しているために、BF分離が効果的におこなえ
る。つまり、多くの磁性粒子を電極上に残すことができ
るため、発光強度が高くなる。また、緩衝液を流す流速
を高くしても磁性粒子が電極上から流れ去らないので、
短い時間でBF分離が行われ、分析時間の短縮が可能で
ある。また、緩衝液を流す流速を高くすることで、懸濁
液中の液相に含まれる検出阻害物質を効果的に除去でき
るため、ノイズの小さい検出ができる。したがって、特
定成分の濃度を高い感度で分析できる。
【0035】また、本実施形態の場合は、磁性粒子の流
れを阻害する方向に働く磁性力が、作動電極15上に複
数に別れて分散しているため、磁性粒子が1個所に固ま
ってしまうことなく、広い範囲に分散するので、電圧印
加により磁性粒子が効率よく発光し、また、発光を効率
よく光センサ13で検知できるので、高い感度で特定成
分の濃度を分析することができる。
【0036】また、本実施形態では、磁性粒子を電極の
方向に吸引する磁性力が強いため、粒子捕捉のときの流
速を高くしても効率よく捕捉が可能であり、短時間で粒
子の捕捉がおこなえる。そのため、短い時間での分析が
可能である。
【0037】なお、本実施形態では、第1試薬で特異成
分と結合する物質として抗体を用いているが、抗体の代
わりに特異核酸を用いることができる。特異核酸は特定
の標的核酸と結合する性質があり、分析対象となる試料
中の標的核酸と結合する。第2試薬中には、電気化学反
応により発光を生じる標識物質をラベルし、かつ試料中
の特定成分と結合する物質が含まれている。この場合、
血清や尿などの生体液由来試料中の特定の配列を有する
核酸の存在を、非常に高い感度で検出することが可能で
ある。
【0038】また、磁石20の表面の溝は必ずしも2本
である必要はなく、1本でも、あるいは、3本以上でも
よい。溝の形状も四角い必要はなく、半円形でも、三角
形状でもよい。V形の三角形状の場合は加工がしやすい
利点がある。半円形状の溝の場合は、加工がしやすいこ
とと、応力集中が起こりにくく、耐久性が増すという利
点がある。
【0039】溝の深さは第1実施形態では0.5mmと
したが、それに限るものではない。溝の深さが深ければ
Fxの峰がより強くなり、磁性粒子が下流に流れにくく
なる。反面、Fxの峰の領域への磁性粒子の集中が起き
る。溝の深さが浅ければ、磁性粒子が下流に流されるの
を妨げる力は弱くなるが、磁性粒子の集中は起きにくく
なる。粒子の流れやすさは、粒子捕捉時、BF分離時の
流速および磁性粒子の大きさ、性質、浮遊液の性質によ
って異なる。それらの条件にあわせて最適になるよう
に、溝の深さ、形状、数を選ぶことができ、それにより
磁性粒子の流れ去りが少なく、かつ、電極面上の広い領
域に磁性粒子が分布するようにすることができる。
【0040】また、必ずしも溝である必要はなく、表面
に窪みが複数個形成されていてもよい。それらの溝や窪
みは空隙である必要もなく、非磁性体が充填されていて
もよい。溝や窪みに非磁性体を充填した上で表面を平坦
化し、メッキを施すことも可能である。非磁性体の充填
およびメッキは磁石への衝撃への耐久性をあげることが
でき、錆の発生を防ぐ効果もある。
【0041】図4に、本発明の別の実施形態に用いる磁
石20を示す。この場合は、直方体形状の永久磁石の磁
極面上に、強磁性体59と非磁性体58が交互に貼り付
けられている。永久磁石から発生する磁界が強磁性体に
より歪み、磁性粒子の流れ去りを妨げる力が発生する。
この場合も永久磁石は1方向に磁化されており、強磁性
体59と非磁性体58の層は薄く、磁界の損失はわずか
であるので、磁性粒子を作動電極15に引き付ける力は
強い。したがって、短時間で好感度の分析が可能であ
る。
【0042】また、本実施形態の場合は、磁石自体は単
純な形状で、それに強磁性体と非磁性体を貼り付けるの
で、寸法精度の高いものを低コストで製造することがで
き、低価格の分析装置を提供できる。
【0043】図5に、本発明の別の実施形態に用いる磁
石20を示す。この場合、複数の永久磁石の間に非磁性
体58を挟み込んでいる。この場合も、それぞれの永久
磁石は同じ方向に磁化されており、磁場ベクトルは作動
電極にほぼ直交するので、磁性粒子を作動電極15に引
き付ける力は強い。また、非磁性体の部分で磁性粒子が
流されるのを妨げる方向に磁性力が発生するので、作動
電極上の広範囲に磁性粒子を分散して分布させることが
でき、短時間で好感度の分析が可能である。
【0044】図6は、本発明の別の実施形態の主要部分
を示した図である。この実施形態では、磁石20は直方
体形状の磁石で、N極を作動電極15に向けている。実
施形態の1つの形態では、作動電極15の裏側に磁性体
60aが埋め込まれる。この場合、磁石20により生ず
る磁界は、磁性体60aにより曲げられ、その結果、電
極15の表面に付着した磁性粒子を、磁性体60aの方
向に引き寄せる力が発生する。それにより、磁性粒子が
流されることが妨げられ、作動電極上に広く磁性粒子を
分布させることができる。
【0045】この実施形態の場合は、磁石20に溝がな
いために磁力が弱まることがない。そのため、磁性粒子
を作動電極15側に引き寄せる力が強く、粒子捕捉のと
きの流速を高くすることができるので、より短時間での
分析が可能である。また、磁性体60aが作動電極15
のごく近傍にあるため、磁性粒子を引き寄せる力が強
く、効果的に磁性粒子を分散させることが可能である。
【0046】別の実施形態の形態では、図6で磁性体が
60aの位置ではなく、破線で示した60bの位置、つ
まり、流路18を挟んで作動電極と反対側に埋め込まれ
る。この場合も、磁石20から発生する磁界が磁性体6
0bによって曲げられ、磁性粒子が磁性体60bの方向
に引き寄せられる力が発生する。
【0047】この場合は、磁石20の表面に溝が必要な
く、かつ、磁石20とフローセル流路18の間に磁性体
が存在しないので、フローセル流路18における磁場が
弱められることがなく、磁性粒子を作動電極15の方向
に引き寄せる力が、これまでに示した実施形態の中で最
も強い。したがって、最も速い速度で懸濁液を流して
も、効率よく磁性粒子を捕捉することが可能で、短時間
で分析を行うことができる。また、この場合は、磁性体
60bは対向電極14の背後に配置されているので、磁
性粒子から発する光を遮ることがない。
【0048】これまでの実施形態は、電気化学発光を用
いる分析を示したが、本発明は電気化学発光による分析
に限らず、磁性粒子を用いた試料の分析に広く応用する
ことができる。たとえば、化学発光を用いる試料分析に
応用できる。その場合、フローセルには作動電極15と
対向電極14は必要ない。標識物質アクリジニウムエス
テル誘導体、アクリジニウムアシルスルホンアミド誘導
体、イソルミノール誘導体などの化学発光を起こす物質
を用いる。直接化学発光する物質でなく、他の物質の化
学発光を促進する酵素を標識物質として用いることもで
きる。緩衝液容器31には、化学発光物質の種類に応じ
て、過酸化水素水やマイクロペルオキシダーゼ等の発光
誘起物質が含まれた溶液が用意される。
【0049】この場合も、標識された磁性粒子が効率よ
く捕捉され、かつ、フローセル内の広い領域に分散して
分布するので、発光および集光の効率が高く、迅速で高
感度の分析が可能である。また、これらに用いる磁石は
永久磁石である必要はなく、電磁石を用いることも可能
である。その場合、電磁石のコアに溝や窪みをつける、
または磁性体をフローセルに埋め込むことで、磁力を偏
在させることができる。
【0050】
【発明の効果】以上に示したように、本発明によれば、
一様に磁化した磁石を用い、フローセルの壁面に、ほぼ
垂直方向の磁場ベクトルを与えることで、磁性粒子を迅
速に効率よく捕捉することができ、捕捉した磁性粒子が
下流に流されることを、磁力の偏在によって防ぐことが
可能であるので、高速で高感度な分析が可能な試料分析
装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1実施形態の構成を示す系統図
である。
【図2】第1実施形態の主要部分を示す図である。
【図3】第1実施形態における磁力の分布を表す図であ
る。
【図4】第2実施形態の主要部分を示す図である。
【図5】第3実施形態の主要部分を示す図である。
【図6】第4実施形態の主要部分を示す図である。
【符号の説明】
11 フローセル 12 ケース 13 光センサ 14 対向電極 15 作動電極 18 流路 19 バイパス流路 20 磁石 21 モータ 22 レバー 23 ポンプ 24 バルブ 25 バルブ 26 排出口 27 ピペッタ 28 アーム 29 ポンプ 30 懸濁液容器 31 緩衝液容器 32 洗浄液容器 33 廃液容器 35、36 チューブ 37 洗浄機構 40 コントローラ 41 熱交換器 55 反応ユニット 56 ガイド 58 非磁性体 59 強磁性体 60a、60b 磁性体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 梶山 智晴 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地 株式会社 日立製作所 中央研究所内 (72)発明者 宮原 裕二 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地 株式会社 日立製作所 中央研究所内 (72)発明者 富田 裕之 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地 株式会社 日立製作所 中央研究所内 (72)発明者 保田 健二 茨城県ひたちなか市大字市毛882番地 株式会社 日立製作所 計測器事業部内 (72)発明者 新山 也寸志 茨城県ひたちなか市大字市毛882番地 株式会社 日立製作所 計測器事業部内 (72)発明者 芝 正樹 茨城県ひたちなか市大字市毛882番地 株式会社 日立製作所 計測器事業部内 (56)参考文献 特表 平6−505673(JP,A) 特表 平6−508203(JP,A) 特表 平6−509412(JP,A) 特表 平7−508340(JP,A) 特表 平10−509798(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/543 541 G01N 33/543 501 G01N 33/543 597 G01N 33/553

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フローセルと、前記フローセル内に流通
    させた試料液の磁性粒子の付着した特定物質を捕捉する
    磁界発生手段と、前記捕捉した磁性粒子の発光量を検出
    する検出手段とを備えた試料分析装置において、 前記磁界発生手段は、前記フローセル内の所定領域の磁
    界強度が切り換え可能であり、前記磁性粒子の付着した
    特定物質を、前記フローセル壁面の所定範囲に一様に捕
    捉する磁界を発生するものであり、さらに前記磁界発生
    手段が発生する磁界は、前記フローセルの所定領域の磁
    界発生手段側の壁面に対しほぼ垂直な磁場ベクトルを有
    し、前記壁面に平行な方向の磁力成分を所定範囲に存在
    させるものであることを特徴とする試料分析装置。
  2. 【請求項2】 入口と出口を有し特定物質および磁性粒
    子の含まれる試料液を流通させるフローセルと、前記フ
    ローセル内の所定領域の磁界強度の切り換え可能な磁界
    発生手段と、前記フローセルの入口に連通するピペッタ
    と、前記フローセルの出口に連通し吸引量を制御可能な
    ポンプと、前記特定物質の濃度に応じて発光物質の付着
    量が変化する磁性粒子を懸濁した試料液を収容する試料
    容器と、前記磁性粒子を含まない試薬を収容する試薬容
    器と、前記フローセルの洗浄液を収容する洗浄液容器
    と、前記フローセルの所定領域において発光量を検出す
    る検出器と、前記ポンプ、前記磁界発生手段および前記
    検出器の動作を制御するコントローラとを備えた試料分
    析装置において、 前記磁界発生手段が発生する磁界は、前記フローセルの
    所定領域の磁界発生手段側の壁面に対しほぼ垂直な磁場
    ベクトルを有し、前記壁面に平行な方向の磁力成分を所
    定範囲に存在させるものであることを特徴とする試料分
    析装置。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の試料分析装置
    において、 前記磁界発生手段は、前記フローセル側にS極またはN
    極のいずれかを向ける永久磁石であり、前記永久磁石の
    表面に溝または窪み等の凹部が形成されていることを特
    徴とする試料分析装置。
  4. 【請求項4】 請求項1または2に記載の試料分析装置
    において、 前記磁界発生手段は、前記フローセル側にS極またはN
    極のいずれかを向ける永久磁石であり、前記永久磁石の
    表面または内部に磁界を不均一にする磁性体または非磁
    性体が混成していることを特徴とする試料分析装置。
  5. 【請求項5】 請求項1または2に記載の試料分析装置
    において、 前記フローセルの所定領域の壁面に、磁界を不均一にす
    る磁性体が埋め込まれていることを特徴とする試料分析
    装置。
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