JP3371423B2 - 耐熱合金線 - Google Patents
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Description
ン部品等の耐熱性が要求される部品,主にばねの素材と
して使用されるγ相(オーステナイト)金属組織を有す
るNi基もしくはNi−Co基耐熱合金線に関するものであ
る。
して、常温から350℃の使用温度域では従来耐熱鋼と
して使用されてきたSUS304, SUS316, SUS631I1などのオ
ーステナイト系ステンレスが用いられている。また、400
℃を越える温度域に使用される部品素材としてNi基耐熱
合金であるInconelX750, Incone1718(商標)などが用
いられている。
求の高まりから、エンジンおよび触媒の高効率化のため
に排気系温度が上昇する傾向にある。このため使用温度
域が600℃程度であったばね部品においても650℃近くま
で上昇し、Ni基耐熱合金であるInconelX750, Incone17
18などを用いても、耐熱特性、特に耐熱ばねに必要な高
温耐へたり性において不十分となる場合がある。
Waspaloy, Udimet700(商標)などのNi-Co基耐熱合金が
考えられるが、必ずしも高温耐へたり性において優れる
性質が得られるとは限らない。
相(Ni3Al を基本形とする析出相)を母相であるγ相
(オーステナイト相)に析出強化させた析出強化型合金
であり、耐熱特性を向上させるためには、母相および
γ’相の組織制御が必要である。
を得るためにMo, W, Al, Ti, Nb, Ta, V といった添加
元素の添加量および、その比率を限定している。また、
特公昭54−6968号公報では高温強度,耐腐食性および耐
脆性を得るために、Mo, Wの含有量やTi, Alの含有量お
よび添加比率などを限定している。
うことのみで耐熱特性(主に高温強度)の向上を図って
おり、耐熱ばねに必要な600℃以上の高温での耐へた
り性の向上を図ったものはない。耐熱ばね用合金線は溶
解鋳造後、圧延,鍛造,溶体化熱処理,伸線,ばね加
工,時効熱処理を行うものであって、その際に行われる
母相γ相の集合組織の形成、結晶粒径の変化も製品の耐
熱特性に大きく影響を及ぼす。
ある耐熱合金の基地であるγ相の粒径制御とγ’相[Ni3
(Al, Ti, Nb, Ta)]の析出制御を行うことによって、
高温域(600℃以上700℃以下)においてもばね材に最適
な高温耐へたり性に優れる耐熱合金線を提供することに
ある。
r:5.0〜25.0, Al:0.2〜8.0を含有し、かつMo:1.0〜1
8.0, W:0.5〜15.0, Nb:0.5〜5.0, Ta:1.0〜10.0, T
i:0.1〜5.0およびB:0.001〜0.05から選択された少な
くとも1種を含有し、さらにFe:3.0〜20.0およびCo:
1.0〜30.0から選択された少なくとも1種を含有し、残
部が主にNiおよび不可避不純物からなる耐熱合金線であ
って、引張強さが1400N/mm2以上1800N/mm2未満であり、
横断面の平均結晶粒径が5μm以上50μm未満であり、
縦断面の結晶粒のアスペクト比(長径/短径比)が1.2
〜10であることを特徴とする。
ため、線引き加工後にばね加工(コイリング)を行う必
要がある。このとき加工に必要な引張強さと加工時の断
線の危険性を考慮し、引張強さで 1400N/mm2以上 1800
N/mm2未満であることが必要である。
超えては高温における十分な耐へたり性を得ることがで
きない。
合金線横断面の平均結晶粒径は10μm以上が望ましい。
結晶粒界で滑りが発生するので、結晶粒界を減少させる
ためである。断面平均結晶粒径が50μm以上となると、
ばね加工に必要な室温での引張強さが得られないため50
μm未満とした。ここにおいて、横断面平均結晶粒径
は、前記したγ相に相当する。
ることが効果的であり、具体的には 1100℃以上 1200℃
未満で溶体化処理を行うことで短時間で容易に規定の結
晶粒径を得ることができる。また、1000℃以上1100℃未
満で溶体化処理を行う場合も、線引き加工後の断面減少
率を5%〜60%,好ましくは10%〜20%にすることで高
温耐へたり性に優れる合金線を得ることができる。
上記結晶粒径制御を施した本発明の合金線にばね加工を
行った後、600℃以上900℃未満で、1時間以上24時間未
満、適切な時効処理を選択し、実施することで必要な高
い耐熱特性が得られる。γ’相はX線回折により検出す
ることが出来る。
を限定する理由を述べる。
高温強度を高める。このとき多量に含有するとき靭性お
よび耐食性の低下が起こる。そこで有効な含有量として
C:0.01〜0.40wt%とした。
る。そこで本発明合金線の他元素成分からNi当量,Cr当
量を算出し、γ相(オーステナイト)の相安定性を考慮
した上で、必要な耐熱特性を得るために 5.0wt%以上、
靭性劣化を考慮し25.0wt%以下とした。
元素であるが、酸化物を形成しやすく溶解精錬時の脱酸
剤としても使用される。但し、過度の添加は熱間加工性
の劣化を生じやすい。そこで0.2〜8.0wt%とした。
張強さ,耐へたり性の向上に大きく寄与する。しかし、
その一方でクリープ破断強さや延性を低下させるσ相な
どのTCP相が形成しやすくなる。そこで耐へたり性向上
に最低限必要な添加量と加工性の劣化を考慮してMo:1.
0〜18.0wt%,W:0.5〜15.0wt%とした。
わち[Ni3 (Al, Ti, Nb, Ta)]の析出強化を行う。以下
に、その構成元素の成分範囲を限定する理由を述べる。
な構成元素であるが、多量に添加するとη相[Ni3Ti:hc
p 構造]を粒界に過剰に析出し、耐熱特性を得るために
必要なγ’相[Ni3 (Al, Ti, Nb, Ta)]の析出を熱処
理のみで制御することが不可能となる。有効な析出量を
得るために0.1〜5.0wt%とする必要がある。
る。このとき強度劣化が見込まれるため0.5〜5.0wt%と
した。
加するとγ相の安定性を失う。過剰な粒界析出を防ぐた
めに1.0〜10.0wt%とした。
下することを防止し、且つ靭性の向上を目的としてB:
0.001〜0.05wt%とした。
て存在する。Feは合金の製造コストを下げる元素として
重宝であるが、γ’相の析出量の低減効果やNb, Moとの
ラーバス相の形成の恐れがある。そこでFe:3.0〜20.0w
t%とした。またCoは積層欠陥エネルギーを下げ、固溶
体強化作用があり、粒界γ’相の固溶限温度を上げ、合
金の耐熱温度を上昇させる効果や粒内γ’の析出量増加
や粒内γ’粒成長抑制効果などがある。そこで有効な含
有量としてCo:1.0〜30.0%とした。
料である。
学成分の鋼材を 150kg真空溶解炉で溶解鋳造し、鍛造後
熱間圧延で直径9.5mmの線材を作製した。その後、溶体
化処理と線引き加工を繰り返し5.2mmで最終の溶体
化処理し、最終的に断面減少率40%の線引き加工を行っ
て線径4mmの試験片を作製した。表1に各試験片の横断面
平均結晶粒径,縦断面結晶粒アスペクト比を示す。
件,線引き加工条件によって変化するが、主に溶体化処
理時の温度によって制御を行った。具体的には比較的高
温である溶体化温度1100℃以上で熱処理することによっ
て、金属組織の再結晶の際、結晶粒の粗大化を促進させ
ることが容易であることを利用し、実施例1〜6、比較例3
〜8の粒径を得た。より粒径の大きいものは、溶体化温度
を高く(例えば1250℃)設定して作製した。縦断面での
結晶粒アスペクト比は、線引き加工条件が一定のため、
主に圧延による断面減少率(80〜99.9%)を適切なもの
に設定することによって得た。また、時効条件について
は、いずれの試料も750℃×8時間とした。
たコイルばねは、線径4,0mm、平均コイル径22.
0mm、有効巻き数4.5巻き、バネ自由長さ50.0
mmであった。試験方法は、図1に示すように、試料1
をコイルばね形状とした後、圧縮荷重を負荷し(負荷せ
ん断応力は600MPa)、試験温度650℃において24hrs. 保
持する。そして、以下に示す方法により残留せん断ひず
みを算出した。この残留せん断ひずみが小さいものほど
高温耐へたり性が優れるばね材料である。表2に試験後
の残留せん断ひずみ量(%)を示す。
/(G×d3)×100 の計算式で求められる。P
1、P2はそれぞれ室温で測定される。
m)) P1(N):応力600MPaに相当する荷重(650
℃の試験前にP1をかけたときのコイルバネの変異をa
(mm) P2(N):650℃の試験後に変異a(mm)まで押
さえたときの荷重 G :横弾性定数 実施例1〜6はいずれも残留せん断歪が小さく、高温耐
へたり性に優れることがわかる。特に、合金線横断面の
平均結晶粒径が10μm以上50μm未満の実施例7〜10は
格別残留せん断歪が小さく、平均結晶粒径を大きくする
ことでより高い高温耐へたり性が得られることがわか
る。
2や、縦断面結晶粒アスペクト比が小さすぎる比較例3,
4、同比が大きすぎる比較例5, 6は残留せん断歪が大き
く高温耐へたり性が劣る。また、成分においてMo、 W、 N
b、 Ta、 TiおよびBの何れも含まない比較例7,8は残留せ
ん断歪が大きい上、引張り強さも低い。
圧延条件,溶体化条件,線引き加工時の断面減少率を変
化させ、高温耐へたり性への影響度を調査した。各条件
と調査結果を表3に示す。表3中の実施例11, 12, 13は
実施例1と同じ成分、実施例14, 15, 16は実施例2と同
じ成分である。
も高い高温耐へたり性を有している。圧延温度または溶
体化温度の高温化,断面減少率の低減は、それぞれ結晶
粒制御(粗大化)の重要な影響因子であることから、設
備的な制限がある場合、これらを的確に設定すること
で、本発明の高い高温耐へたり性を持つ合金線を作製す
ることが可能である。具体的には高温でのγ相(オース
テナイト)の相安定性が低い場合、すなわち圧延温度や
溶体化温度を1100℃以上の高い温度に設定できないよう
な場合に、線引き加工での断面減少率を 5〜60%、好ま
しくは10〜20%に低減させることで、同様の高い高温耐
へたり性を得ることが可能である。
−Co基である耐熱合金の基地であるγ相の粒径制御と
γ’相[Ni3 (Al, Ti, Nb, Ta)]の析出制御を行うこ
とによって、高温域(600℃以上700℃以下)においても
ばね材に必要な高温耐へたり性に優れたものを提供する
ことが可能である。更に、時効条件や溶体化条件,線引
き加工時の断面減少率を限定することで、それ以上の高
温耐へたり性を得ることも可能である。本発明の耐熱合
金線は600℃〜700℃での高温耐へたり性が優れることか
ら、自動車排気系に用いられるフレキシブルジョイント
部品であるボールジョイント,ブレード,三元触媒に用
いられるニットメッシュ,排気マフラーの容量切替リタ
ーンバルブ用ばねなど、比較的使用温度域の高い部品に
用いられる熱ばね材として適したものであり、工業的価
値の高いものである。
Claims (3)
- 【請求項1】 重量%でC:0.01〜0.40, Cr:5.0〜25.
0, Al:0.2〜8.0を含有し、 かつMo:1.0〜18.0, W:0.5〜15.0, Nb:0.5〜5.0, T
a:1.0〜10.0, Ti:0.1〜5.0およびB:0.001〜0.05から
選択された少なくとも1種を含有し、 さらにFe:3.0〜20.0およびCo:1.0〜30.0から選択され
た少なくとも1種を含有し、 残部がNiおよび不可避不純物からなる耐熱合金線であっ
て、 引張強さが1400N/mm2以上1800N/mm2未満であり、 横断面の平均結晶粒径が5μm以上50μm未満であり、 縦断面の結晶粒のアスペクト比(長径/短径比)が1.2
〜10であることを特徴とする耐熱合金線。 - 【請求項2】 合金線横断面の平均結晶粒径が10μm以
上50μm未満であることを特徴とする請求項1記載の耐
熱合金線。 - 【請求項3】 用途がばね用であることを特徴とする請
求項1記載の耐熱合金線。
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