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JP3007247B2 - 溶接性の優れた降伏比80%以下のTS590N/mm2級高張力鋼の製造法 - Google Patents

溶接性の優れた降伏比80%以下のTS590N/mm2級高張力鋼の製造法

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JP3007247B2
JP3007247B2 JP5274477A JP27447793A JP3007247B2 JP 3007247 B2 JP3007247 B2 JP 3007247B2 JP 5274477 A JP5274477 A JP 5274477A JP 27447793 A JP27447793 A JP 27447793A JP 3007247 B2 JP3007247 B2 JP 3007247B2
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Japan
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less
steel
yield ratio
weldability
ts590n
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譲 吉田
博 為広
征司 磯田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Publication date
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は溶接性の優れた降伏比8
0%以下のTS(引張強さ)590N/mm2 級高張力鋼の
製造法に関するもので、鉄鋼業においては厚板ミルに適
用することが最も好ましいが、ホットコイル、形鋼など
にも適用できる。
【0002】
【従来の技術】従来、TS590N/mm2 級高張力鋼(以
下HT60と言う)は、B添加あるいは各種合金の多量
添加による高焼入性の鋼を、焼入焼戻処理することによ
って製造していた。しかし、このようにB添加や合金の
多量添加では、その溶接性が著しく劣り、現場溶接施工
時には溶接割れ防止の観点から、100℃以上の予熱が
必要とされ、施工能率の著しい低下および作業環境の悪
化を招いていた。一方で溶接性の良好なHT60として
ASTM A710鋼に代表されるCuの析出硬化を利
用した鋼が知られている。しかし、高層建築用鋼では地
震時にそのエネルギーを吸収し建物の倒壊を防ぐため降
伏比(YR)の低い鋼(YR≦80%)が要求される
が、Cu析出を利用した鋼では降伏比が高く、耐震性が
劣っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は建築用HT6
0の安価な製造技術を提供するものである。本発明法に
基づいて製造したHT60は、小入熱溶接や拘束溶接
においても溶接割れが発生しにくく、溶接施工において
予熱を軽減あるいは省略することが可能であること、
本HT60を用いた建築物は地震のエネルギーを吸収し
優れた耐震性を有することなどの特徴を持つ。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の具体的手段を下
記(1),(2)に示す。(1)重量比で C :0.04〜0.11%、 Si:0.5%以下、 Mn:0.6〜1.6%、 P :0.03%以下、 S :0.01%以下、 Cu:0.7〜1.2%、 Ni:0.30〜1.00%、 Cr:0.05〜0.50%、 Mo:0.05%以上0.20%未満、 Ti:0.005〜0.025%、Al:0.06%以下、 N :0.006%以下 を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる実質
的にBを含有せず下記式1を満足する鋼を熱間圧延後、
750〜870℃の温度範囲に再加熱して焼入し、引き
続きAc1 変態点以下の温度範囲で焼戻処理することを
特徴とする厚み20mm以上75mm以下の溶接性の優れた
降伏比80%以下のTS590N/mm2 級高張力鋼の製造
法。
【0005】
【数2】
【0006】(2)前記(1)の成分に、重量比でさら
に、 Nb:0.01〜0.03%、 V :0.01〜0.05%、 Ca:0.001〜0.006% の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記
(1)記載の厚み20mm以上75mm以下の溶接性の優れ
降伏比80%以下のTS590N/mm2 級高張力鋼の製
造法。
【0007】
【作用】以下、本発明について説明する。発明者らの研
究によれば、HT60の優れた溶接性と低降伏比を同時
に実現させるにはB無添加、焼入焼戻によるCuの析出
硬化とさらに鋼の成分を適切な焼入性に調整することが
必要であることを見いだした。また微量Ti添加、熱処
理条件の最適化により結晶粒を微細化した鋼では、Cu
による析出硬化を行っても、優れた低温靭性を示すこと
がわかった。
【0008】HT60としての特性を得るために必要な
最低のCu量は0.7%である。しかし、1.2%を超
えるCuの添加ではYRを十分に低下させることが困難
となるため、その上限を1.2%とした。また、YR
80%以下にするためには鋼の焼入性を適切な範囲に調
整することが必要で、下記式1で示される指標にて1.
5〜2.5の範囲に調整する必要がある。
【0009】
【数3】 その理由は、1.5未満では後述の2相組織化熱処理に
てYRが80%以下に低下せず、2.5を超えるとHT
60として強度オーバーが起こるためである。
【0010】次に前述のようなCuの効果を十分に発揮
させ、YRを十分に低めるためには、製造法が適切でな
ければならない。このため熱間圧延後の熱処理条件を限
定する必要がある。まず熱間圧延後に750〜870℃
に再加熱後、焼入し、Ac1 以下の温度に再加熱して焼
戻処理する。750〜870℃に再加熱・焼入する理由
は、降伏比の低減のためである。一般にCuで析出硬化
した鋼はYRが著しく高い。そこで750〜870℃の
(γ+α)2相域に再加熱・焼入を行う。部分的にγ変
態させることによって未変態の領域は軟化、γ変態領域
は硬化してミクロ組織が2相化(軟らかい相と硬い相)
し、降伏比の低減が可能となる。再加熱温度が750℃
以下では、γに変態する領域が小さいために、前述の効
果が得られない。しかし、870℃を超えると大部分が
γ変態し目的とする2相組織が得られず低YR化が達成
できない。
【0011】焼戻処理はCuの析出効果を発揮させるた
めに必須である。しかし、その温度がAc1 点を超える
と強度が著しく低下するので、Ac1 点以下としなけれ
ばならない(望ましい焼戻温度は450〜650℃であ
る)。しかし、Cuの添加量や製造法が適切であって
も、基本成分が適当でないとHT60としての優れた特
性が得られない。以下、この点について説明する。
【0012】Cの下限0.04%は、母材および溶接部
の強度確保ならびにNb,Vなどの添加時に、これらの
効果を発揮させるための最小量である。しかしC量が多
すぎると溶接性の著しい劣化を招くので、上限を0.1
1%とした。Siは多く添加すると溶接性、HAZ靭性
を劣化させるため、上限を0.5%とした。鋼の脱酸は
Al,Tiのみでも十分であり、Siは必ずしも添加す
る必要はない。Mnは強度、靭性を確保する上で不可欠
な元素であり、その下限は0.6%である。しかしMn
量が多すぎると焼入性が増加して溶接性、HAZ靭性を
劣化させるだけでなく、連続鋳造スラブの中心偏析を助
長するので上限を1.6%とした。
【0013】本発明鋼において不純物であるP,Sをそ
れぞれ0.03%,0.01%以下とした理由は、母
材、溶接部の低温靭性をより一層向上させるためであ
る。Pの低減は粒界破壊を防止し、S量の低減はMnS
による靭性の劣化を防止する。好ましいP,S量はそれ
ぞれ0.01%,0.005%以下である。Niは0.
30%以上で溶接性、HAZ靭性に悪影響を及ぼすこと
なく、母材の強度、靭性を向上させるほか、Cu−クラ
ックの防止にも効果がある。しかし、1.0%以上では
極めて高価になるため経済性を失うので、上限は1.0
%とした。Crは母材、溶接部の強度を高める元素で最
低でも0.05%以上が必要である。しかし、多すぎる
と溶接性やHAZ靭性を著しく劣化させるので、その上
限を0.50%とした。
【0014】Moは強度、靭性を共に向上させる元素
で、HT60には0.05%以上が必須である。しかし
多すぎると溶接性、HAZ靭性上好ましくなく、その上
限は0.20%未満である。Tiは炭窒化物を形成して
HAZ靭性を向上させる。Al量が少ない場合Tiの酸
化物を形成しHAZ靭性を向上させるが、0.005%
未満では効果がなく、0.025%を超えるとHAZ靭
性に好ましくない影響があるため、0.005〜0.0
25%に限定する。Alは一般に脱酸上鋼に含まれる元
素であるが、SiおよびTiによっても脱酸は行われる
ので本発明鋼については下限は限定しない。しかしAl
量が多くなると鋼の清浄度が悪くなり、溶接部の靭性が
劣化するので上限を0.06%とした。
【0015】Nは一般的に不可避的不純物として鋼中に
含まれるものであるが、Nb,Vと結合して炭窒化物を
形成して強度を増加させ、またTiNを形成して前述の
ようにHT60の性質を高める。このためN量として最
低0.001%が必要である。しかしながらN量が多く
なるとHAZ靭性の劣化や連続鋳造スラブの表面キズの
発生などを助長するので、その上限を0.006%とし
た。
【0016】本発明鋼の基本成分は以上のとおりであ
り、十分に目的を達成できるが、さらに目的に対し特性
を高めるため、以下に述べる元素即ちNb,V,Caを
選択的に添加すると強度、靭性の向上について、さらに
好ましい結果が得られる。次に、前記添加元素とその添
加量について説明する。Nbは微細な炭窒化物を形成
し、強度を増加させ、またHAZ靭性を向上させる。し
かし0.01%以下では効果が少なく、0.03%を超
えるとYRを十分に低下させることが困難となる。
【0017】VはNbとほぼ同じ効果を持つ元素である
が、Nbに比較して析出硬化能はやや劣る。0.01%
以下では効果が少なく、0.05%を超えるとYRを十
分に低下させることが困難となる。Caは硫化物(Mn
S)の形態を制御し、シャルピー吸収エネルギーを増加
させ低温靭性を向上させる効果がある。しかしCa量は
0.001%未満では実用上効果がなく、0.006%
を超えるとCaO,CaSが多量に生成して大型介在物
となり、鋼の靭性のみならず清浄度も害し溶接性、耐ラ
メラテア性にも悪影響を与えるので、Ca添加量の範囲
を0.001〜0.006%とする。
【0018】
【実施例】周知の転炉、連続鋳造、厚板工程により鋼板
を製造し、その強度、靭性、溶接性(yスリット割れ
性)などを調査した。表1の1〜7に本発明鋼、8〜1
6に比較鋼の化学成分を示す。表2に本発明鋼と比較鋼
の鋼板製造条件とその機械的性質、溶接性を示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】表2の本発明鋼1〜7は、母材の強度、Y
R、靭性ならびに溶接性がバランスよく達成できてい
る。これに対し比較鋼8ではDi値が低いため、YRが
高くなっている。比較鋼9はC量が高く、yスリット割
れ停止温度が非常に高くなっている。比較鋼10ではB
が添加されているため、yスリット割れ停止温度が非常
に高くなっている。比較鋼11ではCu量が低く、強度
不足となっている。また比較鋼12ではCu量が高く、
YRが高くなっている。また比較鋼13ではDi値が高
すぎるため、強度が非常に高くなりHT60の規格強度
をオーバーしている。比較鋼14では2相域焼入時の再
加熱温度が720℃と低く、γ化が不十分でYRが高く
なっている。比較鋼15では2相域焼入時の再加熱温度
が880℃と高いため、殆どがγ化されていたためYR
が高くなっている。
【0023】
【発明の効果】本発明の化学成分および製造法で製造し
た厚鋼板、形鋼、ホットコイルなどの鋼材は溶接性に優
れた低降伏比HT60である。その結果、現場での溶接
施工能率や安全性が著しく向上し建築物などの安全性を
大きく高めることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−179343(JP,A) 特開 昭62−142723(JP,A) 特開 平2−205626(JP,A) 特開 平7−90365(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/00 - 8/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比で C :0.04〜0.11%、 Si:0.5%以下、 Mn:0.6〜1.6%、 P :0.03%以下、 S :0.01%以下、 Cu:0.7〜1.2%、 Ni:0.30〜1.00%、 Cr:0.05〜0.50%、 Mo:0.05%以上0.20%未満、 Ti:0.005〜0.025%、 Al:0.06%以下、 N :0.006%以下、 残部が鉄および不可避的不純物からなる実質的にBを含
    有せず下記式1を満足する鋼を熱間圧延後、750〜8
    70℃の温度範囲に再加熱して焼入し、引き続きAc1
    変態点以下の温度範囲で焼戻処理することを特徴とする
    溶接性の優れた降伏比80%以下のTS590N/mm2
    高張力鋼の製造法。 【数1】
  2. 【請求項2】 請求項1の成分に、重量比でさらに、 Nb:0.01〜0.03%、 V :0.01〜0.05%、 Ca:0.001〜0.006% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項1記載の溶接性の優れた降伏比80%以下のTS59
    0N/mm2 級高張力鋼の製造法。
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