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JP2621114B2 - 無毒の組成物による農作物の保護方法 - Google Patents

無毒の組成物による農作物の保護方法

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JP2621114B2
JP2621114B2 JP62088950A JP8895087A JP2621114B2 JP 2621114 B2 JP2621114 B2 JP 2621114B2 JP 62088950 A JP62088950 A JP 62088950A JP 8895087 A JP8895087 A JP 8895087A JP 2621114 B2 JP2621114 B2 JP 2621114B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は農作物の保護方法に係わるものであつて、詳
しくは桂皮アルデヒドを主成分とする無害かつ安定な組
成物を用いることにより、その農作物保護効果が長時
間、安定に接続できる有利かつ経済的な保護を可能とす
る方法に関する。
〔従来の技術〕
桂皮アルデヒドは の化学構造式で表され、食品添加物として公定書にも収
載されている無毒の物質である。本発明者らはこの桂皮
アルデヒドの制菌効果に注目し、これを農作物の保護方
法に用いると非常に有効であることを見出して、すでに
特公昭61−025682号公報において、「桂皮アルデヒドの
乳化剤を農作物に撒布して、同農作物をこれを加害する
害虫、微生物、病菌より保護することを特徴とする農作
物の保護方法」を提案した。この方法は例えばポリオキ
シエチレン・ポリオキシプロピレンの縮合物からなる非
イオン系界面活性剤で桂皮アルデヒドを乳化したものを
撒布して、例えば子ノウ菌、不完全菌等の糸状菌、藻菌
類、担子菌類、バクテリヤ等の病菌微生物あるいはウイ
ルス病原菌等を媒介伝染するアブラムシ等から農作物を
保護し、特に収穫期での病虫害による経済的損失を除去
し、生産者の健康管理や施設内土壌の保全に有効であ
る。
また本発明者らは特公昭61−032283号公報にて、「桂
皮アルデヒドまたは桂皮アルデヒド誘導体を肥料に付加
して施肥することを特徴とする農作物の保護方法」をも
提案した。
この方法は桂皮アルデヒド又はそのハロゲン化物等の
誘導体を肥料に付加して施肥することにより、無毒性な
土壌消毒を可能とすると共に、土壌有害菌は抑制する
が、有用バクテリヤには全く影響しないという作用によ
つて、土壌中のB/F値の良好なバランスを保ちうるとい
う新規かつ非常に有効な施肥方法である。
〔発明が解決しようとする問題点〕
以上のように桂皮アルデヒドは無毒でしかも制菌効果
に優れた物質ではあるが、一方でその制菌効果の安定性
が不足しており、かかる不安定性の原因は未解明である
ことは、桂皮アルデヒドと液体球茎製品とにより食品を
保護する方法に関する特開昭50−52236号公報にすでに
記載されているとおりである。しかしながら農作物の保
護にあたつては、長期間にわたる効果の安定は特に望ま
れる点である。
桂皮アルデヒドは本来食品の香料として広く使用され
ていたが、本発明者らが開発するまでは農作物の保護に
用いることはなかつたので、長期安定性についての研究
がなされなかつたものと考えられる。
本発明はこのような現状に鑑みてなされたもので、無
害な桂皮アルデヒドを用いて長期間にわたる安全な効果
が得られる農作物の保護方法を提供することを目的とす
るものである。また本発明は桂皮アルデヒドを含む新規
な組成物であつて、無害であり、土壌中の有害菌のを選
択的に強く制菌又は抑制できて、さらにネコブセン虫の
正常行動を選択的に阻害できる効果を有し、この効果を
安定に持続できる組成物を用いて農作物を安全にかつ経
済的に保護できる方法を提供することをも目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は桂皮アルデヒドと、BHT,オイゲノール,ビタ
ミンE及びn−プロピルガレートからなる群れより選ば
れる抗酸化剤からなり、該抗酸化剤が桂皮アルデヒドに
対し0.2〜5重量%の量で配合されてなる組成物を農作
物に撒布して、生物拮抗作用を利用することにより該農
作物を加害する害虫、微生物、病菌より保護することを
特徴とする農作物の保護方法に関する。
本発明の上記組成物として、桂皮アルデヒドと、BHT,
オイゲノール,ビタミンE及びn−プロピルガレートか
らなる群れより選ばれる抗酸化剤及び乳化剤を含有して
なる乳剤又は桂皮アルデヒド及び抗酸化剤を担体に担持
させてなる組成物を用いて行なうことは、特に好ましい
実施態様である。
前記のように従来検討されていなかつた農作物保護に
用いる際の桂皮アルデヒドの効果の安定性改良につき鋭
意検討の結果、本発明者らは桂皮アルデヒドに抗酸化剤
を添加して桂皮アルデヒドの酸化を防止することで、制
菌効果を持続できることを見出し、本発明に到達した。
そして本発明の組成物を用いて農作物の保護に関する種
々の実験を行つたところ、桂皮アルデヒドと、BHT,オイ
ゲノール,ビタミンE及びn−プロピルガレートからな
る群れより選ばれる抗酸化剤との組合せは、上記の抗酸
化効果に加え、さらに次の二つ大きな効果を奏するとい
う驚くべき事実を見出したのである。
すわなちその第一点は、土壌中の有害菌であるフザリ
ウム菌、ピシウム菌、リゾクトニア菌、疫病菌、青枯病
白絹病菌等の病害性糸状菌に対しては強い制菌効果を示
すが拮抗する酵母菌、放線菌有用糸状菌、光栄養細菌等
の有用微生物には何の影響も与えない選択的効果を示す
ことである。
またその第二点はサツマイモネコブセン虫(Meloidog
yne incognitaメロイドジイネ インコグニタ)に対し
てはその正常行動を阻害するにもかかわらず、植物の値
には何ら被害を与えない昆虫寄生線虫(Steinernema fe
ltiaeスタイネルネマ フエルチアエ)に対しては逆に
増殖促進作用のある事である。
この二点の発見は、更に研究を進めることによつて、
有害化学物質による農地の土壌消毒に代る、生物拮抗作
用を利用した新しい農作物の保護法が開発されたことを
示唆する。
本発明において桂皮アルデヒドと抗酸化剤を含有する
組成物を用いて農作物を保護するには、土壌に灌注す
る、植物体へ散布する等のいずれの方法によつてもよ
く、適用する植物体の部位や散布時期についても限定さ
れるところはなく、植物体全体への散布が可能である。
この点の詳細は後の実施例に示す。
まず本発明に用いる組成物から説明する。本発明の組
成物は桂皮アルデヒドと特定の抗酸化剤を有してなるも
ので、このような抗酸化剤としてはビタミンE,n−プロ
ピルガレート,BHT,オイゲノール(以下、まとめて「抗
酸化剤」と称する)が挙げられる。これ等は食品又は食
品添加物であるため安全性の見地からも特に好ましいも
のである。
桂皮アルデヒドに対する抗酸化剤の割合(重量比)
は、本発明者らの実験結果からは0.2〜5%、特に1〜
5%が好ましい。特にオイゲノールについては桂皮アル
デヒドに対して1%の添加で充分に抗酸化力を示すが、
5%を越えての添加は無意味であるだけでなく、高濃度
ではむしろ桂皮アルデヒドの制菌効果を相殺することが
わかつた。
本発明の組成物は農作物に撒布するに適した剤型とす
ることが保存、使用上から好ましく、特に好ましくは乳
剤又は担体に担持させた固形物例えば粉体や粒体等にす
る。以下乳剤の場合と固形物にする場合についてそれぞ
れ説明する。
本発明の乳剤は桂皮アルデヒド及び抗酸化剤に水と乳
化剤を加えてホモジナイズさせることにより得られる。
乳剤に用いる抗酸化剤としては、前記したビタミンE,
n−プロピルガレート,BHT,オイゲノールが挙げられ、と
りわけビタミンEの抗酸化効果が高い。
本発明に用いる乳化剤としては、例えばアニオン系で
は脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、アル
キルアリルスルホン酸塩でありノニオン系ではポリオキ
シエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンア
ルキルフエノエーテル類、ポリオキシエチレンアルキル
エステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキ
シエチレンソルビタンアルキルエステル類でありカチオ
ン系では脂肪族アミノ塩類、第四級アンモニウム塩、ア
ルキルピリジニウム塩があげられる。これら1種類のみ
を用いても、1種以上を組合せて用いてもよい。
本発明に用いる乳剤における各成分の重量比は、例え
ば桂皮アルデヒド5〜50%、抗酸化剤0.01〜0.5%、乳
化剤0.5〜10%、残部水の如くである。なお、圃場での
実使用においては桂皮アルデヒドが5〜50重量%含有の
製剤で充分である。本発明の乳剤の配合例を次に示す
が、あくまで例示でありこれに限定されるものではな
い。なお、L−64,P−102はいずれもポリオキシエチレ
ン・ポリオキシプロピレンの縮合物であつて、商品名プ
ルロニツクL−64,プルロニツクP−102(旭電化製)と
して市販されているものである。
例1 桂皮アルデヒド 400g ビタミン−E80 4g L−64 50g P−102 50g 温水 496g 計 1000g 例2 桂皮アルデヒド 200g BHT 2g L−64 50g P−102 50g 温水 698g 計 1000g 例3 桂皮アルデヒド 400g n−プロピルガレート 4g ポリオキシエチレン 硬化ヒマシ油 50g 温水 546g 計 1000g 例4 桂皮アルデヒド 200g オイゲノール 2g L−64 50g P−102 50g 温水 698g 計 1000g 本発明の固形物タイプ組成物は、桂皮アルデヒドと抗
酸化剤を担体に担持させて得られる。抗酸化剤としては
ビタミンE,BHT,n−プロピルガレート,オイゲノールが
挙げられるが、とりわけオイゲノールは抗酸化効果が高
く好ましい。
本発明に用いる担体としては例えば多孔質無機材料が
挙げられる。一般に吸着用多孔質無機材料としては酸化
カルシウム,酸化硅素,酸化マグネシウム,酸化アルミ
ナ,モンモリナイト,ペントナイト,ゼオライト等が用
いられるが、本発明において特に好ましいものはホワイ
トカーボン,硅酸カルシウムである。硅酸カルシウム微
粉末はその重量の4倍の桂皮アルデヒドを吸着できる
が、ホワイトカーボンでは1.5倍が限度であつた。圃場
での実使用においては桂皮アルデヒド濃度は5〜50重量
%で充分でかつこれ以上の高濃度は要しないので、ホワ
イトカーボン程度の吸着量で充分である。
固形物タイプの組成物の配合例を以下に示すが、あく
までも例示であつて、これに限定されるものではない。
例5 桂皮アルデヒド 100g ホワイトカーボン 200g オイゲノール 1g 計 301g 例6 桂皮アルデヒド 600g ホワイトカーボン 394g オイゲノール 6g 計 1000g 例7 桂皮アルデヒド 300g ホワイトカーボン 685g オイゲノール 15g 計 1000g 本発明の基となつた桂皮アルデヒドと抗酸化剤の組み
合せによる作用効果,抗酸化剤の効果に関する実験,本
発明に用いる組成物の製造法,該組成物を農作物に適用
する方法の詳細については、以下の実施例の項にて説明
する。
ここで注目すべきは乳剤における場合と固形物におけ
る場合とでは、同じ抗酸化剤であつても、その抗酸化防
止効果(抗酸化力)が大きく異なる点である。後述の実
験1,2の結果を示す表−1及び表−4から明らかなよう
に、乳剤においてはビタミンE,BHT,n−プロピルガレー
ト,オイゲノールの効果が高いが、固形物タイプではオ
イゲノールの効果が高い。つまりオイゲノールは両者に
おいて抗酸化効果が高いのであるが、桂皮アルデヒドに
対して1重量%の添加で充分な抗酸化力を示し、1重量
%を越えての添加は無意味であるのみならず、高濃度で
はむしろ桂皮アルデヒドの制菌効果を相殺することがわ
かつたのである。またビタミンEは乳剤の場合にその抗
酸化効果は高いが、固形物においてはその効果が低いの
である。したがつて適用剤型に応じて適切な抗酸化剤を
注意して選択する必要がある。
〔実施例〕
実験1. 桂皮アルデヒド200g、界面活性剤40g、下記〜の
いずれかの抗酸化剤0.4g(桂皮アルデヒドに対し0.2重
量%)、残部水からなる全量1000gの乳化剤を作成し、
比較品として桂皮アルデヒド、界面活性剤は同量として
抗酸化剤を加えず残部水からなり全量1000gの乳剤を作
成した。抗酸化剤としては、いずれも食品添加物として
市販されているジブチル−ヒドロキシトルエン(商品
名BHT、武田薬品製)、甘草抽出液(商品名サンカノ
ン、丸善化成製)、ビタミンE(商品名E−80、天然
ビタミンE80%含有、エーザイ製)、n−プロピルガ
レート(和光純薬製)、L−アスコルビルステアレー
ト(東京化成製)の5種類を用いた。
以上の乳剤を常温の室内に16日間放置した後、ガスク
ロマトグラフ法により、成分分析を行つて、桂皮アルデ
ヒドに対する〜の酸化防止効果を測定した。なお用
いた桂皮アルデヒドの純度はガスクロマトグラフ法によ
り測定の結果、桂皮アルデヒド97.6%、桂皮酸0.4%で
あつた。実験結果は表−1に示すとおりで、効果の高い
方からの順はビタミンE、オイゲノール、n−プロピル
ガレート、BHTであり、サンカノンは殆んど効果がな
く、L−アスコルビルステアレートは逆に酸化を促進さ
せることが判つた。
なお以上の分析は大洋香料(株)研究所研究室長宮脇
英昭氏による。
実施例1 実験1の結果に基き、下記の組成のものを計量してホ
モジナイザにかけ乳化することにより本発明の乳剤A及
び従来の抗酸化剤を加えない乳剤B(比較品)を得て、
両者について室内におけるシヤーレ試験を行つた。結果
を表−2に示す。
乳剤A(本発明品)組成 (重量%) 桂皮アルデヒド 20 BHT 1 プルロニツクL−64 5 プルロニツクP−102 5 温水 69 乳剤B(従来品)組成 (重量%) 桂皮アルデヒド 20 プルロニツクL−64 5 プルロニツクP−102 5 温水 70 検定用培地は桂皮アルデヒド乳剤A,Bを50℃に保つたP
SA培地にそれぞれ200ppm,400ppmになるよう添加し、よ
く振つたのちペトリ皿に流して作成した。その後固化し
た同培地の中央に、あらかじめ他の培地で培養した表−
2の菌種を5mm平方に切断し、置床した。効果判定は検
定用ペトリ皿を25℃で6日間培養し、発育した菌そう阻
止程度を発育直径(mm)で表現した。7cmシヤーレを使
用しているため発育菌そう直径70.0はシヤーレが一杯に
なつた事を示す。
表−2の結果を要約すると試験開始より6日目迄はA,
Bとも大差は無かつたが時間の経過と共に徐々にその差
が現れ、最終検査の30日目にはBは効果を失つたにもか
かわらずAはその効果を接続している。この事は明らか
に桂皮アルデヒドの酸化が防止され本来の制菌効果が持
続されていることを示すものと考えられる。
実施例2 実施例1の乳剤Aと乳剤Bについて、土壌中における
抗菌試験を行つた。キユウリつる割病菌(フザリウム
オキシスポルム ククメリウムFusarium oxysporum cuc
umerinum)の汚染土壌にキユウリ本葉5枚展葉したもの
を移植し、桂皮アルデヒド乳剤A区、同B区、ペノミル
区及び無処理区の4区、3反復(計12ポツト)とした。
フザリウム菌数は乾土1g中105の汚染土を使用した。移
植直後、各乳剤を成分濃度で400ppmに調製しm2当り3lの
割合で直径10cmのポツトに灌注し、30日目に発病株を調
査した。結果を表−3にまとめ示す。表−3から明らか
なように、抗酸化剤を含有しない乳剤Bは制菌効果が非
常に低下する。これに対し本発明品Aは30日後も制菌効
果が持続されている。
以上の実施例1及び2の効果の検定は農水省野菜試験
場久留米支場病害研究室長孫工弥寿雄によつた。
実験2. 本実験ではホワイトカーボン(商品名トクシールN徳
山曹達製)の微粉末を担体とした。製法とその抗酸化効
果について説明する。試料の調製は1容量のポリエチ
レン袋にホワイトカーボン10gと一定量の抗酸化剤を配
合した桂皮アルデヒド(純度98.1%)10gを加え良く混
合することによつた。また対照品としてホワイトカーボ
ン10gに桂皮アルデヒド10gを吸着させたものを同様に調
整した。次に1容量のポリエチレン製透明広口ビンに
該調整試料20gを入れ、開放状態で40℃を保つ恒温槽に1
4日間放置した。この間、ビン中の試料が空気と均一に
接触するよう1日数回振りまぜた。14日後に同試料3gを
計量しソースクレー抽出器でエーテル100mlを用いて抽
出し、エーテル留去後ジアゾメタンで処理をし、桂皮酸
をメチルエステル化して、ガスクロマト法により分析測
定した。結果は表−4に示すとおりであつて、オイゲノ
ールが高い抗酸化効果を示しビタミン−E80、EG−5DX
(日本油脂製−成分組成:ビタミン−E30%、エチルア
ルコール15%、ビタミンC0.1%、植物油脂、没食子酸5
4.9%)は効果を示さなかつた。
次に桂皮アルデヒドに抗酸化剤としてオイゲノール1
%を加えホワイトカーボンに吸着させたものとホワイト
カーボンに桂皮アルデヒドを吸着させたものとについて
土壌中に生息する線虫類にどのような影響を与えるかを
実験した。対象線虫としてサツマイモ根コブ線虫(Melo
idogyne incognita)と昆虫寄生線虫(Stetnernema jel
tiae)を選んだ。前者は農作物に甚大な被害を与える害
虫であり、後者は無害の自活線虫である。土壌中の良好
なバランスは前者の密度が小さく後者の密度が大きい事
が農作物の根の保護に役立つことは一般に知られてい
る。
実験3. 桂皮アルデヒドをホワイトカーボンに吸着させた粉状
のものを桂皮アルデヒドの成分量125ppm,250ppm,500pp
m,1000ppmの4段階に分けコントロール区は無添加とし
た。これらの水溶液中に根コブ線虫100頭を1時間浸漬
し蒸留水で洗浄後24時間蒸留水に浸漬したのち生存頭数
を調べた結果、125ppm区は90頭、250ppm区は69頭、500p
pm区、1000ppm区とも0頭でありコントロール区は98頭
であつた。桂皮アルデヒドにオイゲノール1%を加えこ
れをホワイトカーボンに吸着させたものを水で溶解し上
記と同様の方法で試験した結果、125ppm区は90頭、250p
pm区は58頭、500ppm区1000ppm区とも0頭で薬剤間での
差はなかつた。
実施例3,4 次に土壌中における長期間の効果を試験した。線虫土
壌試験イ(実施例3)では桂皮アルデヒドにオイゲノー
ル1重量%を添加したものの重量比がそれぞれ20%、33
%、66%になるようにホワイトカーボンに吸着させた3
種類の試料を調製した。これを水400ccに対して8g添加
した液を作り、根コブ線虫汚染土壌10lに灌水して、常
に土壌湿度30%となるようにした3試験区と無添加の1
区、計4試験区を設定した。詳細を表−5に示す。
次に線虫土壌試験ロ(実施例4)では桂皮アルデヒド
の重量比がそれぞれ20%、33%、66%になるようにホワ
イトカーボンに吸着させた3種類の試料を調製し、これ
を前述同様土壌に灌水した3試験区と無添加の1区、計
4試験区を設定した。詳細を表−6に示す。両試験とも
4日後、30日後にベールマン法によつて根コブ線虫及び
昆虫寄生線虫の数を調査した。その結果、試験イ、ロと
も4日後の調査では各試験区の有意差はないが30日後の
調査では明らかに試験イの桂皮アルデヒドにオイゲノー
ルを添加したものが優つていた。
以上の線虫の効果試験は佐賀大学農学部応用動物学教
室教授農学博士石橋信義氏によつた。
なお表−5,表−6において、MはMeloidogyne incogn
ita(サツマイモ根コブ線虫)、SはSteinernema jalti
ae(昆虫寄生線虫)である。
オイゲノールが抗酸化効果を有することは公知であ
る。しかし桂皮アルデヒドにオイゲノールを配合して桂
皮アルデヒドの酸化を防止し、その本来有する制菌機能
を維持・発揮せしめるには、どの程度の量を配合すれば
よいのかについては、未だ実験もなされず文献もなかつ
た。
本発明者らは上記の問題点を解決すべく試験を重ねた
結果、桂皮アルデヒドに対し重量1%のオイゲノールで
目的を果せること、1%〜5%のオイゲノール添加で桂
皮アルデヒドの酸化を防止できるが、1%を越えて添加
量を増すほど、制菌効果はむしろ低下することを知つ
た。これは全く予想外の結果であつた。
なぜならば、グラム陽性菌を対象とした石炭酸係数
は、その測定者により多少の差はあるものの、制菌効果
には大差がないと従来報告されていたからである。すな
わち桂皮アルデヒド17に対しオイゲノール15〔文献エ
ー.アール.ペンフオルド、パフユーム アンド エツ
センシヤル オイル レポート、15p.388(1925)〕、
桂皮アルデヒド3.0に対しオイゲノール8.5〔文献エ
ス.リデアル、同上、19P285(1928)〕、桂皮アルデヒ
ド8.8に対しオイゲノール14.4〔文献エイチ.フリュ
ーラー、ザイフエン−エーレ−フエツテ ヴアクゼ98p6
77(1972)〕の如くである。
然るに本発明者らが植物、特に農作物を保護する方法
について試験したところ、農作物を加害するグラム陰性
菌に対する桂皮アルデヒドとオイゲノールの制菌効果に
は甚だしい差があり、桂皮アルデヒドに対してオイゲノ
ールのそれは1/5〜1/10であることを示す数値を得たの
である。つまり上記文献〜のグラム陽性菌に対する
制菌作用、効果からは、グラム陰性菌に対する制菌作
用、効果は全く予想できないものであつた。そして、室
内におけるシヤーレ試験(実験4)、農作物(キユウ
リ)を用いたポツト試験(実験5)の何れにおいてもオ
イゲノールの添加量を増すほど相対的に制菌効果は低下
した。
実験4.シヤーレ試験 ホワイトカーボン60gに下記の如くにオイゲノールを
添加して7段階の濃度の供試薬剤を作製した。供試菌と
しては農作物を加害するポピュラーな菌5種類を選び、
各供試薬剤の桂皮アルデヒド濃度が25〜200ppmの4段階
になる様にPSA培地を作成して検定し、制菌効果を菌そ
うの発育直径で比較した。7cmシヤーレを使用したので7
0(mm)はシヤーレ一杯になつたことを示す。対象菌接
種後3日目及び5日目に測定した数値を表−7に示し
た。
1)供試薬剤組成(重量比) 2)供試菌 フザリウム菌、ピシウム菌,灰色かび病菌,リゾクト
ニア菌,炭そ病菌 3)供試濃度 25,50,100,200(ppm) 4)検定法 PSA平板培地上で検定 実験5.ポツト試験A,B 実験4に用いたものと同じ供試薬剤を用いて、対象菌
は土壌病害菌であるピシウム菌、フザリウム菌を用いて
ポツト試験を行つた。各供試薬剤の希釈倍数は1000倍と
し、対象作物はキユウリ(トキワ光3号P型)を使用し
た。ポツトの大きさ、供試薬剤の施用と施用回数は表と
同様である。すなわち各病原菌汚染土を1/5000ワグネル
ポツトに詰め、キユウリさい芽種子をは種直後に各薬剤
を3l/m2灌注し、以後10日おきに同量灌注し、は種後30
日目に調査した。表8,9にこの結果を示す。何れの試験
区においても桂皮アルデヒドに対するオイゲノールの配
合量は1〜5重量%までが良い結果を示し、オイゲノー
ルの量が増加するに従つてその効果はむしろ低下するこ
とがわかる。
実施例3. 本発明の桂皮アルデヒド水和剤〔組成(重量比)桂皮
アルデヒド39.6、オイゲノール0.4、ホワイトカーボン6
0.0、以下TM水和剤と略す〕を用いて、梅の黒星病に対
する試験を下記の方法で行つた。これは昭和61年度日本
植物防疫協会委託試験として日本植防研高知試験農場で
斉藤正氏により行われ、その結果は表−10に示すとおり
であり、「TM水和剤500倍は対照薬剤に比べてまさる防
除効果が認められた。葉,果実に薬害は認められず実用
性は有るものと思われる。」との考察が得られた。
(試験方法) 実施場所 枝野郡土成町宮川内 現地ほ場 供試品種,樹令 鶯宿 7年生 試験の規模 1区1樹 4連制 対象病害虫の発生状況 やや多発 試験開始前の薬剤散布 なし 処理年月日・量・方法 4月28日,5月9日,5月20日,5月
27日の計4回動力噴霧機で薬液がしたたり落ちる程度に
充分な量を散布した。
試験期間中の気象の概況 4月〜5月の気温は平年に比
べてやや高かつた。雨量は平年に比べて4月,5月ともに
多い状況である。
調査月日・方法 6月3日に1樹当り200果について発
病と薬害の有無について調べた。
〔発明の効果〕 以上の説明および実験、実施例の結果から明らかなよ
うに、本発明の農作物の保護方法は、生物体に対し無
毒、無害な桂皮アルデヒドと抗酸化剤からなる無毒な組
成物を用いることにより、有用微生物には何の影響も与
えずに土壌中の病害性糸状菌に対して選択的に強い制菌
効果を奏し、さらに有害な根コブ線虫を阻害する反面、
無害な線虫例えば昆虫寄生線虫に対しては逆に増殖促進
効果を有するという、生物的な拮抗作用を農作物保護に
有利な方向へと促進する効果を奏し、さらに抗酸化剤の
存在によりこれらの効果が長期間安定に持続できるとい
う優れた方法である。さらに人体及び環境に対する被害
を与えず、土壌改良にも貢献できるのに加え、経済性の
高い点でも有利である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】桂皮アルデヒドと、BHT,オイゲノール,ビ
    タミンE及びn−プロピルガレートからなる群れより選
    ばれる抗酸化剤からなり、該抗酸化剤が桂皮アルデヒド
    に対して0.2〜5重量%の量で配合されてなる組成物を
    農作物に撒布して、生物拮抗作用を利用することにより
    該農作物を加害する害虫、微生物、病菌より保護するこ
    とを特徴とする農作物の保護方法。
  2. 【請求項2】組成物として桂皮アルデヒドと、BHT,オイ
    ゲノール,ビタミンE及びn−プロピルガレートからな
    る群れより選ばれる抗酸化剤(桂皮アルデヒドに対して
    0.2〜5重量%)及び乳化剤を含有してなる乳剤を用い
    て行う特許請求の範囲第1項に記載される農作物の保護
    方法。
  3. 【請求項3】組成物として桂皮アルデヒドと、BHT,オイ
    ゲノール,ビタミンE及びn−プロピルガレートからな
    る群れより選ばれる抗酸化剤(桂皮アルデヒドに対して
    0.2〜5重量%)を担体に担持させてなる組成物を用い
    て行う特許請求の範囲第1項に記載される農作物の保護
    方法。
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