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JP2022165468A - 炭素鋼鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents

炭素鋼鋳片の連続鋳造方法 Download PDF

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JP2022165468A JP2021070797A JP2021070797A JP2022165468A JP 2022165468 A JP2022165468 A JP 2022165468A JP 2021070797 A JP2021070797 A JP 2021070797A JP 2021070797 A JP2021070797 A JP 2021070797A JP 2022165468 A JP2022165468 A JP 2022165468A
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真二 永井
Shinji Nagai
信宏 岡田
Nobuhiro Okada
友一 塚口
Yuichi Tsukaguchi
翔平 望月
Shohei MOCHIZUKI
寛幸 七辺
Hiroyuki Shichibe
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Abstract

【課題】高スループットの条件で鋳造した場合であっても、表面品質および内部品質に優れた鋼鋳片を安定して連続鋳造することが可能な鋼鋳片の製造方法を提供する。【解決手段】溶鋼スループットが3.00ton/min以上6.50ton/min以下の範囲内、鋳型の上部の長辺面外側に設置された電磁撹拌コアを用いて前記鋳型内の溶鋼に交流磁場を印加するとともに、前記鋳型の下部の長辺面外側に設置され、複数かつ異種の磁極が前記長辺面に対向する電磁ブレーキコアを用いて前記溶鋼に静磁場を印加し、前記電磁撹拌コアによる交流磁場の磁束密度を0.02T以上0.15T以下、前記電磁ブレーキコアによる静磁場の磁束密度を0.15T以上0.40T以下とし、水平帯に上下一対の圧下ロールによって前記炭素鋼鋳片の圧下を行う構成とし、前記水平帯における圧下テーパー量を0.10mm/m以上0.80mm/m以下の範囲内とする。【選択図】なし

Description

本発明は、断面矩形状をなす炭素鋼鋳片を連続的に鋳造する炭素鋼鋳片の連続鋳造方法に関するものである。
断面矩形状をなす炭素鋼鋳片(以下、鋳片と称す)を連続的に鋳造する連続鋳造機においては、タンディッシュに一旦貯留された溶鋼を、浸漬ノズルを介して鋳型内に上方から注入し、そこで外周面が冷却され凝固した鋳片を鋳型の下端から引き抜くことにより、連続的に鋳片の鋳造が行われる。鋳片のうち外周面の凝固した部位は、凝固シェルと呼ばれる。鋳型から引き抜かれた鋳片は、連続鋳造機内で冷却されながら搬送され、連続鋳造機の機端で所望の大きさにカットされる。
なお、浸漬ノズルには、鋳型の鋳型長辺方向の両側に、短辺壁に向けてそれぞれ開口する一対の吐出孔が形成されており、一対の短辺壁に向けて溶鋼を吐出するように構成されている。
また、鋳型の下方から引き抜かれた鋳片は、下方に向かって引き出された後に湾曲させられ、水平方向に向けて引き出されることになる。そして、連続鋳造鋳片が水平方向に向けて引き出される水平帯において、鋳片が完全に凝固するように構成されている。
ここで、鋳型から引き抜かれる鋳片は、鋳型から出た時点では完全に凝固しておらず内部に未凝固部を有している。このため、鋳型内の溶鋼の静圧によって鋳片が膨らむように変形するいわゆるバルジング変形を起こすおそれがある。このため、水平帯においては、上下に上下一対の圧下ロールによって鋳片を圧下する構成とされている。
ここで、前述の連続鋳造機においては、浸漬ノズルの内部に介在物が堆積して詰まりが発生すると、溶鋼の供給を安定して供給できなくなり、鋳造を長時間安定して実施することができなくなる。そこで、従来は、浸漬ノズルの詰まりを防止するために、鋳型内に供給される溶鋼に対してアルゴンガス等の非酸化性ガスを吹き込んでいる。
また、鋳型内の溶鋼の上には、溶鋼の保温および凝固シェルと長辺壁および短辺壁との間の潤滑性を確保するために、鋳造パウダーが供給される。
このとき、吹き込まれるアルゴンガスの気泡、および、鋳造パウダーが、鋳型内で成長する凝固シェルに捕捉されると、鋳造された鋳片に表面欠陥が生じる。
また、気泡、鋳造パウダーおよび介在物等が、浸漬ノズルからの吐出流によって鋳型内の下方位置にまで混入することがある。この場合、凝固シェルが十分に成長した位置で、これら気泡、鋳造パウダーおよび介在物等が捕捉され、鋳片の内部欠陥の一因となる。
上述のような表面欠陥および内部欠陥を防止する手段として、例えば特許文献1~3には、鋳型上方に電磁攪拌装置を設けるとともに、鋳型下方に電磁ブレーキ装置を備えた連続鋳造機が提案されている。
電磁攪拌装置は、鋳型内の溶鋼に電磁力を印加して、鋳型内の溶鋼に旋回流を付与するものである。
鋳型内の溶鋼が旋回流を有する場合、凝固シェルとの界面近傍の溶鋼は速度境界層を有し、凝固シェルとの界面に近づくほど流速が遅くなる。このため、この速度境界層内に存在する気泡や鋳造パウダーは、凝固シェルとの界面から遠ざかる方向に力を受け、凝固シェルとの界面から遠ざかる方向の速度成分を有することとなる。溶鋼の流速が速いほど、気泡や鋳造パウダーが凝固シェルとの界面から遠ざかる速度成分も大きくなる。電磁攪拌装置を備えた連続鋳造機においては、このような原理に基づき、鋳型内の溶鋼中の気泡や鋳造パウダー等が凝固シェルに捕捉されるのを防止し、表面品質を向上させることが可能となる。
電磁ブレーキ装置は、浸漬ノズルから噴出する溶鋼の吐出流に対して制動力を作用させるものである。
ここで、浸漬ノズルからの吐出流は、鋳型の短辺壁に衝突することにより、上方向へ向かう上昇流および下方向へ向かう下降流を形成する。電磁ブレーキ装置によって吐出流の勢いが弱められることにより、上昇流の勢いが弱められ、溶鋼の湯面変動が抑制される。また、吐出流が凝固シェルに衝突する勢いも弱められるため、当該凝固シェルの再溶解によるブレイクアウトを抑制する効果も得られる。このように、電磁ブレーキ装置は、高速安定鋳造を目的とした場合によく用いられている。さらに、電磁ブレーキ装置によれば、吐出流によって形成される下降流の流速が抑制されるため、溶鋼中の不純物の浮上分離が促進され、鋳片の内部品質を向上させることが可能になる。
特開平11-156502号公報 特開平05-154623号公報 特開2020-078815号公報
ところで、家電、建材、自動車など向けの汎用の炭素鋼は、大量生産が求められており、連続鋳造においても効率的に鋳片を製造する必要がある。生産効率を向上させる手段としては溶鋼スループットの増加が考えられる。ここで、溶鋼スループットは、単位時間あたりに鋳造される鋳片の質量であり、ton/min単位の溶鋼スループット(ton/min)は、鋳型厚み(mm)×鋳型幅(mm)×鋳造速度(mm/min)×溶鋼密度(7.0×10-6kg/mm)/1000(kg/ton)で計算される。したがって、溶鋼スループットを高めるためには、例えば鋳造速度を高めればよい。鋳造速度は単位時間あたりに鋳造される鋳片の長さとして定義される。
一方で炭素含有量が0.07質量%から0.3質量%である炭素鋼は、溶鋼からの冷却過程でδ相と液相が反応してγ相が生成する包晶反応が起こる範囲に含まれる。とりわけ炭素含有量が0.1質量%から0.18質量%の炭素鋼は亜包晶鋼と呼ばれ、δ相からγ相の変態が比較的高温で起こるため、変態時のひずみによるシェル変形が顕著となり、わずかな不均一凝固が助長されて鋳片表面の割れへと至ったり、不均一凝固を起因としたシェル変形により、鋳型から凝固シェルが乖離して抜熱不十分となり、再溶融性の疵が発生したりするおそれがあった。
このような鋼種を、例えば3ton/min以上の高スループットで鋳造すると、浸漬ノズルの吐出孔からの吐出溶鋼流量が大きくなり、凝固シェルへ衝突することにより不均一凝固がさらに顕著となり再溶融疵が多発したり、再溶融に至らないまでも厚みが不均一なシェルが形成され、これを起因とした表面割れが多発したりする。さらに、高スループット領域では、吐出流が短辺へ衝突したのち湯面方向へ向かう反転上昇流も増大し、この上昇流を起因とし湯面変動や溶鋼温度変動が顕著となる。湯面変動および温度変動により鋳型内での凝固開始点が大きくばらつくため、表面割れやシェルの再溶融の起因となる不均一凝固へつながる。
さらに、炭素鋼の製品の向け先によっては鋳片の厚み中心部の二枚割れが原因で製品成型時の割れが発生する。二枚割れとは、鋳片の厚み中心の最終凝固部に生成する内部欠陥であり、鋳片幅方向に沿って線状に発生する中心偏析の一種である。この欠陥は鋳片断面の観察により筋状の模様が観察されるが、程度が悪くなると鋳片段階でも開口する。二枚割れは圧延工程を経ても中心偏析として残存し、例えば製品の絞り加工の絞り率が大きくなってくると偏析部の延性低下により割れが発生し問題となる。この二枚割れは、特に3ton/min以上の高スループット領域になると、鋳片温度が上昇したり、凝固シェル厚が薄くなることでバルジング量が大きくなり中心偏析が悪化したりして、発生しやすくなる。また、二枚割れは鋳片の幅方向の最終凝固位置の偏差が大きい場合にも発生しやすくなる。この幅方向の最終凝固位置の偏差は、高スループットの条件で拡大する傾向がある。
ここで、上述の特許文献1,2においては、いずれも電磁ブレーキ装置の静磁場が1極であり、静磁場による制動力を大きくしていくと吐出孔に過大な制動力が作用してノズル近傍の上昇流が発生するため、高スループット領域において湯面変動が大きくなり、表面割れが発生するおそれがあった。
また、特許文献3においては、電磁撹拌装置の交流磁場と、電磁ブレーキ装置の複数に分割された静磁場によって溶鋼流動を制御できるため、これら電磁ツールの条件を適正化することで表面割れおよび再溶融性の疵を抑制することが可能となるが、高スループットの条件で鋳造した際には二枚割れが発生するおそれがあった。
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、炭素鋼鋳片を高スループットの条件で鋳造した場合であっても、鋳片の表面欠陥、および、二枚割れの発生を抑制することができ、表面品質および内部品質に優れた鋼鋳片を安定して連続鋳造することが可能な炭素鋼鋳片の製造方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明者は、以下のように鋭意検討を行った。
スループット上昇に伴う吐出流速の増加を抑制する対策としては、浸漬ノズルの吐出孔面積を大きくして線流速を小さくすることが考えられる。一方、吐出孔面積を大きくするとスループットを上昇させる過程において、吐出孔面積に対してスループットが小さくなることで吐出孔圧力が不安定化し、吐出流が偏流したり、吐出孔での負圧が発生し、品質が悪化したりする場合がある。さらに、開口面積が大きいとノズル強度が低下する場合があり、ノズル設計上の制約もある。
そこで、3.00ton/min以上6.50ton/min以下の溶鋼スループットにおける鋳片の表面割れによる表面品質の低下を低減するため、電磁撹拌と電磁ブレーキを併用し、吐出流および鋳型内湯面変動の抑制を考えた。加えて、連続鋳造機の水平帯での鋳片の厚み方向のロール間隔を適正に設定することで、鋳片の厚み中心部の二枚割れ発生の防止を考えた。
本発明に係る炭素鋼鋳片の連続鋳造方法は、鋳型の下方から引き出された断面矩形状をなす炭素鋼鋳片を湾曲させる湾曲帯と、前記炭素鋼鋳片を水平方向に搬送する水平帯とを有する連続鋳造機を用いた炭素鋼鋳片の連続鋳造方法であって、前記炭素鋼は、C:0.07質量%以上0.3質量%以下、Mn:0.01質量%以上1.5質量%以下、Si:0.001質量%以上0.3質量%以下、P:0.07質量%以下、S:0.02質量%以下、残部がFeおよび不純物とされた化学組成とされており、溶鋼スループットが3.00ton/min以上6.50ton/min以下の範囲内とされ、前記鋳型の上部の長辺面外側に設置された電磁撹拌コアを用いて前記鋳型内の溶鋼に交流磁場を印加するとともに、前記鋳型の下部の長辺面外側に設置され、複数かつ異種の磁極が前記長辺面に対向する電磁ブレーキコアを用いて前記溶鋼に静磁場を印加し、前記電磁撹拌コアによる交流磁場の磁束密度を0.02T以上0.15T以下、前記電磁ブレーキコアによる静磁場の磁束密度を0.15T以上0.40T以下とし、前記水平帯においては、上下一対の圧下ロールによって前記炭素鋼鋳片の圧下を行う構成とされており、前記水平帯における圧下テーパー量を0.10mm/m以上0.80mm/m以下の範囲内とすることを特徴としている。
この構成の炭素鋼鋳片の連続鋳造方法においては、前記鋳型の下部の長辺面外側に設置され、複数かつ異種の磁極が前記長辺面に対向する電磁ブレーキコアを用いて前記溶鋼に静磁場を印加し、前記電磁撹拌コアによる交流磁場の磁束密度を0.02T以上0.15T以下、前記電磁ブレーキコアによる静磁場の磁束密度を0.15T以上0.40T以下としているので、鋳型内の溶鋼流動を適切に制御することができ、炭素鋼鋳片の表面割れおよび再溶融性の疵を抑制することが可能となる。
そして、水平帯における圧下テーパー量を0.10mm/m以上0.80mm/m以下の範囲内としているので、前記電磁ブレーキコアによる静磁場の磁束密度を0.40T以下とした場合であっても、炭素鋼鋳片の水平帯におけるバルジング変形を抑制し、二枚割れの発生を十分に抑制することができる。
本発明によれば、炭素鋼鋳片を高スループットの条件で鋳造した場合であっても、鋳片の表面欠陥、および、二枚割れの発生を抑制することができ、表面品質および内部品質に優れた鋼鋳片を安定して連続鋳造することが可能な鋼鋳片の製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態である炭素鋼鋳片の連続鋳造方法を実施する連続鋳造機の一例を示す概略説明図である。 図1に示す連続鋳造機における鋳型設備のY-Z平面での断面図である。 鋳型設備の、図2に示すA-A断面での断面図である。 鋳型設備の、図3に示すB-B断面での断面図である。 鋳型設備の、図3に示すC-C断面での断面図である。 電磁ブレーキ装置によって溶鋼の吐出流に作用する電磁力を示す説明図である。 水平帯に設けられたロールセグメント装置の説明図である。
以下に、本発明の実施形態である炭素鋼鋳片の連続鋳造方法について、添付した図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
また、本明細書に示す各図面では、説明のため、一部の構成部材の大きさを誇張して表現している場合がある。各図面において図示される各部材の相対的な大きさは、必ずしも実際の部材間における大小関係を正確に表現するものではない。
図1に、本実施形態である炭素鋼鋳片の連続鋳造方法を実施する連続鋳造機1の一例を示す。
図1に示すように、本実施形態に係る連続鋳造機1は、連続鋳造用の鋳型110を用いて溶鋼2を連続鋳造し、断面矩形状の鋳片3を製造するための装置である。連続鋳造機1は、鋳型110と、取鍋4と、タンディッシュ5と、浸漬ノズル6と、二次冷却装置7と、鋳片切断機8と、を備える。
取鍋4は、溶鋼2を外部からタンディッシュ5まで搬送するための可動式の容器である。取鍋4は、タンディッシュ5の上方に配置され、取鍋4内の溶鋼2がタンディッシュ5に供給される。
タンディッシュ5は、鋳型110の上方に配置され、溶鋼2を貯留して、当該溶鋼2中の介在物を除去する。
浸漬ノズル6は、タンディッシュ5の下端から鋳型110に向けて下方に延び、その先端は鋳型110内の溶鋼2に浸漬されている。当該浸漬ノズル6は、タンディッシュ5にて介在物が除去された溶鋼2を鋳型110内に連続供給する。
鋳型110は、鋳片3の幅および厚さに応じた四角筒状であり、例えば、一対の長辺鋳型板で一対の短辺鋳型板を両側から挟むように組み立てられる。長辺鋳型板および短辺鋳型板(以下、鋳型板と総称することがある)は、例えば冷却水が流動する水路が設けられた水冷銅板である。鋳型110は、かかる鋳型板と接触する溶鋼2を冷却して、鋳片3を製造する。鋳片3が鋳型110下方に向かって移動するにつれて、内部の未凝固部3bの凝固が進行し、外殻の凝固シェル3aの厚さは、徐々に厚くなる。かかる凝固シェル3aと未凝固部3bを含む鋳片3は、鋳型110の下端から引き抜かれる。なお、鋳型110は振動させてもよい。
なお、以下の説明では、上下方向(すなわち、鋳型110から鋳片3が引き抜かれる方向)を、Z軸方向とも呼称する。Z軸方向のことを鉛直方向とも呼称する。また、Z軸方向と垂直な平面(水平面)内における互いに直交する2方向を、それぞれ、X軸方向およびY軸方向とも呼称する。また、X軸方向を、水平面内において鋳型110の長辺と平行な方向(すなわち、鋳型幅方向又は鋳型長辺方向)として定義し、Y軸方向を、水平面内において鋳型110の短辺と平行な方向(すなわち、鋳型厚み方向又は鋳型短辺方向)として定義する。X-Y平面と平行な方向のことを水平方向とも呼称する。
ここで、図1では図面が煩雑になることを避けるために図示を省略しているが、本実施形態では、鋳型110の長辺鋳型板の外側面に電磁力発生装置が設置される。そして、当該電磁力発生装置を駆動させながら連続鋳造を行う。当該電磁力発生装置は、電磁撹拌装置および電磁ブレーキ装置を備えるものである。本実施形態では、当該電磁力発生装置を駆動させながら連続鋳造を行うことにより、鋳片の品質を確保しつつ、より高速での鋳造が可能になる。当該電磁力発生装置の構成については、図2および図3を参照して後述する。
二次冷却装置7は、鋳型110の下方の二次冷却帯9に設けられ、鋳型110下端から引き抜かれた鋳片3を支持および搬送しながら冷却する。この二次冷却装置7は、鋳片3の厚さ方向両側に配置される複数対の支持ロール(例えば、サポートロール11、ピンチロール12、ガイドロール13、圧下ロール31)と、鋳片3に対して冷却水を噴射する複数のスプレーノズル(図示せず)とを有する。
二次冷却装置7に設けられる支持ロールは、鋳片3の厚さ方向両側に対となって配置され、鋳片3を支持しながら搬送する支持搬送手段として機能する。当該支持ロールにより鋳片3を厚さ方向両側から支持することで、二次冷却帯9において凝固途中の鋳片3のブレイクアウトやバルジングを防止できる。
支持ロールであるサポートロール11、ピンチロール12、ガイドロール13、圧下ロール31は、二次冷却帯9における鋳片3の搬送経路(パスライン)を形成する。このパスラインは、図1に示すように、鋳型110の直下では垂直であり、次いで曲線状に湾曲して、最終的には水平になる。二次冷却帯9において、当該パスラインが垂直である部分を垂直帯9A、湾曲している部分を湾曲帯9B、水平である部分を水平帯9Cと称する。このようなパスラインを有する連続鋳造機1は、垂直曲げ型の連続鋳造機1と呼称される。なお、本発明は、図1に示すような垂直曲げ型の連続鋳造機1に限定されず、湾曲型など他の各種の連続鋳造機にも適用可能である。
サポートロール11は、鋳型110の直下の垂直帯9Aに設けられる無駆動式ロールであり、鋳型110から引き抜かれた直後の鋳片3を支持する。鋳型110から引き抜かれた直後の鋳片3は、凝固シェル3aが薄い状態であるため、ブレイクアウトやバルジングを防止するために比較的短い間隔(ロールピッチ)で支持する必要がある。そのため、サポートロール11としては、ロールピッチを短縮することが可能な小径のロールが用いられることが望ましい。図1に示す例では、垂直帯9Aにおける鋳片3の両側に、小径のロールからなる3対のサポートロール11が、比較的狭いロールピッチで設けられている。
ピンチロール12は、モータ等の駆動手段により回転する駆動式ロールであり、鋳片3を鋳型110から引き抜く機能を有する。ピンチロール12は、垂直帯9A、湾曲帯9Bおよび水平帯9Cにおいて適切な位置にそれぞれ配置される。鋳片3は、ピンチロール12から伝達される力によって鋳型110から引き抜かれ、上記パスラインに沿って搬送される。なお、ピンチロール12の配置は図1に示す例に限定されず、その配置位置は任意に設定されてよい。
ガイドロール13は、湾曲帯9Bに設けられる無駆動式ロールであり、上記パスラインに沿って鋳片3を支持および案内する。ガイドロール13は、パスライン上の位置によって、および、鋳片3のF面(Fixed面、図1では左下側の面)とL面(Loose面、図1では右上側の面)のいずれに設けられるかによって、それぞれ異なるロール径やロールピッチで配置されてよい。
圧下ロール31は、水平帯9Cに設けられるロールであり、上記パスラインに沿って鋳片3を支持および案内するとともに、鋳片3を厚み方向に圧下する。
なお、水平帯9Cに配置される圧下ロール31を備えたロールセグメント装置30については、図7を参照して後述する。
鋳片切断機8は、上記パスラインの水平帯9Cの終端に配置され、当該パスラインに沿って搬送された鋳片3を所定の長さに切断する。切断された厚板状の鋳片3は、テーブルロール15により次工程の設備に搬送される。
以上、図1を参照して、本実施形態に係る連続鋳造機1の全体構成について説明した。なお、本実施形態では、鋳型110に対して後述する構成を有する電磁力発生装置が設置され、当該電磁力発生装置を用いて連続鋳造が行われればよく、連続鋳造機1における当該電磁力発生装置以外の構成は、一般的な従来の連続鋳造機と同様であってよい。従って、連続鋳造機1の構成は図示したものに限定されず、連続鋳造機1としては、あらゆる構成のものが用いられてよい。
続いて、図2~図5を参照して、上述した鋳型110に対して設置される電磁力発生装置の構成について詳細に説明する。図2~図5は、本実施形態に係る鋳型設備10の一構成例を示す図である。
図2は、本実施形態に係る鋳型設備10のY-Z平面での断面図である。図3は、鋳型設備10の、図2に示すA-A断面での断面図である。図4は、鋳型設備10の、図3に示すB-B断面での断面図である。図5は、鋳型設備10の、図3に示すC-C断面での断面図である。なお、鋳型設備10は、Y軸方向において、鋳型110の中心に対して対称な構成を有するため、図2、図4および図5では、一方の長辺鋳型板111に対応する部位のみを図示している。また、図2、図4および図5では、理解を容易にするため、鋳型110内の溶鋼2も併せて図示している。
図2~図5を参照すると、本実施形態に係る鋳型設備10は、鋳型110の長辺鋳型板111の外側面(すなわち、長辺面の外側)に、バックアッププレート121を介して、2つの水箱130、140と、電磁力発生装置170と、が設置されて構成される。
鋳型110は、上述したように、一対の長辺鋳型板111で一対の短辺鋳型板112を両側から挟むように組み立てられる。鋳型板111、112は銅板からなる。ただし、本実施形態はかかる例に限定されず、鋳型板111、112は、一般的に連続鋳造機の鋳型として用いられる各種の材料によって形成されてよい。
ここで、本実施形態では、炭素含有量が0.07質量%以上0.3質量%以下の炭素鋼の鋳片3の連続鋳造を対象としており、鋳片サイズは、例えば幅(すなわち、X軸方向の長さ)800~2300mm程度、あるいは1000~1800mm程度、厚み(すなわち、Y軸方向の長さ)150~300mm程度、あるいは200~270mm程度である。つまり、鋳型板111、112も、当該鋳片サイズに対応した大きさを有する。すなわち、長辺鋳型板111は、少なくとも鋳片3の幅(例えば800~2300mm)よりも長いX軸方向の幅を有し、短辺鋳型板112は、鋳片3の厚み(例えば200~300mm)と略同一のY軸方向の幅を有する。もちろん、鋳片サイズはこの例に限定されない。
また、本実施形態では、電磁力発生装置170による鋳片3の品質向上の効果をより効果的に得るために、Z軸方向の長さが可能な限り長くなるように鋳型110を構成することが好ましい。一般的に、鋳型110内で溶鋼2の凝固が進行すると、凝固収縮のために鋳片3が鋳型110の内壁から離れてしまい、当該鋳片3の冷却が不十分になる場合があることが知られている。そのため、鋳型110の長さは、溶鋼湯面から、長くても1000mm程度が限界とされている。
本実施形態では、かかる事情を考慮して、溶鋼湯面から鋳型板111、112の下端までの長さが1000mm程度となるように、鋳型板111、112のZ軸方向の長さを当該1000mmよりも十分に大きくすることが好ましい。
バックアッププレート121、122は、例えばステンレスからなり、鋳型110の鋳型板111、112を補強するために、当該鋳型板111、112の外側面を覆うように設けられる。以下、区別のため、長辺鋳型板111の外側面に設けられるバックアッププレート121のことを長辺側バックアッププレート121ともいい、短辺鋳型板112の外側面に設けられるバックアッププレート122のことを短辺側バックアッププレート122ともいう。
電磁力発生装置170は、長辺側バックアッププレート121を介して鋳型110内の溶鋼2に対して電磁力を付与するため、少なくとも長辺側バックアッププレート121は非磁性体(例えば、非磁性のステンレス等)によって形成され得る。ただし、長辺側バックアッププレート121の、後述する電磁ブレーキ装置160の鉄芯(コア)162(以下、電磁ブレーキコア162ともいう)の端部164と対向する部位には、電磁ブレーキ装置160の磁束密度を確保するために、磁性体の軟鉄124が埋め込まれる。
長辺側バックアッププレート121には、更に、当該長辺側バックアッププレート121と垂直な方向(すなわち、Y軸方向)に向かって延伸する一対のバックアッププレート123が設けられる。図3~図5に示すように、この一対のバックアッププレート123の間に電磁力発生装置170が設置される。このように、バックアッププレート123は、電磁力発生装置170の幅(すなわち、X軸方向の長さ)、およびX軸方向の設置位置を規定し得るものである。換言すれば、電磁力発生装置170が鋳型110内の溶鋼2の所望の範囲に対して電磁力を付与し得るように、バックアッププレート123の取り付け位置が決定される。以下、区別のため、当該バックアッププレート123のことを、幅方向バックアッププレート123ともいう。幅方向バックアッププレート123も、バックアッププレート121、122と同様に、例えばステンレスによって形成される。
水箱130、140は、鋳型110を冷却するための冷却水を貯水する。本実施形態では、図示するように、一方の水箱130を長辺鋳型板111の上端から所定の距離の領域に設置し、他方の水箱140を長辺鋳型板111の下端から所定の距離の領域に設置する。このように、水箱130、140を鋳型110の上部および下部にそれぞれ設けることにより、当該水箱130、140の間に電磁力発生装置170を設置する空間を確保することが可能になる。以下、区別のため、長辺鋳型板111の上部に設けられる水箱130のことを上部水箱130ともいい、長辺鋳型板111の下部に設けられる水箱140のことを下部水箱140ともいう。
長辺鋳型板111の内部、又は長辺鋳型板111と長辺側バックアッププレート121との間には、冷却水が通過する水路(図示せず)が形成される。当該水路は、水箱130、140まで延設されている。図示しないポンプによって、一方の水箱130、140から他方の水箱130、140に向かって(例えば、下部水箱140から上部水箱130に向かって)、当該水路を通過して冷却水が流される。これにより、長辺鋳型板111が冷却され、当該長辺鋳型板111を介して鋳型110内部の溶鋼2が冷却される。なお、図示は省略しているが、短辺鋳型板112に対しても、同様に、水箱および水路が設けられ、冷却水が流動されることにより当該短辺鋳型板112が冷却される。
電磁力発生装置170は、電磁撹拌装置150と、電磁ブレーキ装置160と、を備える。図示するように、電磁撹拌装置150および電磁ブレーキ装置160は、水箱130、140の間の空間に設置される。当該空間内で、電磁撹拌装置150が上方に、電磁ブレーキ装置160が下方に設置される。つまり、電磁撹拌装置150は、鋳型上部の長辺面外側に設置され、電磁ブレーキ装置160は、鋳型下部の長辺面外側に設置される。
電磁撹拌装置150は、鋳型110内の溶鋼2に対して、交流磁場を印加することにより、当該溶鋼2に対して電磁力を付与する。電磁撹拌装置150は、自身が設置される長辺鋳型板111の幅方向(すなわち、X軸方向)の電磁力を溶鋼2に付与するように駆動される。図4には、電磁撹拌装置150によって溶鋼2に対して付与される電磁力の方向を、模擬的に太線矢印で示している。ここで、図示を省略している長辺鋳型板111(すなわち、図示する長辺鋳型板111に対向する長辺鋳型板111)に設けられる電磁撹拌装置150は、その自身が設置される長辺鋳型板111の幅方向に沿って、図示する方向とは逆向きの電磁力を付与するように駆動される。
このように、一対の電磁撹拌装置150が、水平面内において撹拌流(旋回流)を発生させるように駆動される。電磁撹拌装置150によれば、このような撹拌流を生じさせることにより、湯面変動が抑制される。これにより、鋳造パウダーの巻き込みおよび流入不足が抑制される。さらに、凝固シェル界面における溶鋼2が流動するので、凝固シェル3aへの気泡や介在物の捕捉が抑制されるという洗浄効果も得られる。このため、鋳片3の表面品質を良化させることができる。
電磁撹拌装置150の詳細な構成について説明する。電磁撹拌装置150は、ケース151と、当該ケース151内に格納される鉄芯(コア)152(以下、電磁撹拌コア152ともいう)と、当該電磁撹拌コア152に導線が巻回されて構成される複数のコイル153と、から構成される。
ケース151は、略直方体形状を有する中空の部材である。ケース151の大きさは、電磁撹拌装置150によって溶鋼2の所望の範囲に対して電磁力を付与し得るように、すなわち、内部に設けられるコイル153が溶鋼2に対して適切な位置に配置され得るように、適宜決定され得る。例えば、ケース151のX軸方向の幅W4、すなわち電磁撹拌装置150のX軸方向の幅W4は、鋳型110内の溶鋼2に対して、X軸方向のいずれの位置においても電磁力を付与し得るように、鋳片3の幅よりも大きくなるように決定されることが好ましい。例えば、W4は1800mm~2500mm程度である。また、電磁撹拌装置150では、コイル153からケース151の側壁を通過して溶鋼2に対して電磁力が付与されるため、ケース151の材料としては、例えば非磁性体ステンレス又はFRP(Fiber Reinforced Plastics)等の、非磁性で、かつ強度が確保可能な部材が用いられることが好ましい。
電磁撹拌コア152は、略直方体形状を有する中実の部材であり、ケース151内において、その長手方向が長辺鋳型板111の幅方向(すなわち、X軸方向)と略平行になるように設置される。電磁撹拌コア152は、例えば電磁鋼板を積層することにより形成される。
電磁撹拌コア152に対して、X軸方向を中心軸として導線が巻回されることにより、コイル153が形成される。当該導線としては、例えば断面が10mm×10mmで、内部に直径5mm程度の冷却水路を有する銅製のものが用いられる。電流印加時には、当該冷却水路を用いて当該導線が冷却される。当該導線は、絶縁紙等によりその表層が絶縁処理されており、層状に巻回することが可能である。例えば、一のコイル153は、当該導線を2~4層程度巻回することにより形成される。同様の構成を有するコイル153が、X軸方向に所定の間隔を有して並列されて設けられる。
コイル153のそれぞれには、図示しない交流電源が接続される。当該交流電源によって、電磁撹拌コア152から鋳型内の溶鋼2に交流磁場を印加する。具体的には、隣り合うコイル153における電流の位相が適宜ずれるように当該コイル153に対して電流を印加することにより、溶鋼2に対して撹拌流を生じさせるような電磁力が付与され得る。
なお、当該交流電源の駆動は、プロセッサ等からなる制御装置(図示せず)が所定のプログラムに従って動作することにより、適宜制御され得る。当該制御装置により、コイル153のそれぞれに印加する電流量や、コイル153のそれぞれに電流を印加するタイミング等が適宜制御され、溶鋼2に対して与えられる電磁力の強さが制御され得る。この交流電源の駆動方法としては、一般的な電磁撹拌装置において用いられている各種の公知の方法が適用されてよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
電磁撹拌コア152のX軸方向の幅W1は、電磁撹拌装置150によって溶鋼2の所望の範囲に対して電磁力を付与し得るように、すなわち、コイル153が溶鋼2に対して適切な位置に配置され得るように、適宜決定され得る。例えば、W1は1800mm程度である。
電磁ブレーキ装置160は、鋳型110内の溶鋼2に対して静磁場を印加することにより、当該溶鋼2に対して電磁力を付与する。ここで、図6は、電磁ブレーキ装置160によって溶鋼2に対して付与される電磁力の方向について説明するための図である。図6では、鋳型110近傍の構成の、X-Z平面での断面を概略的に図示している。また、図6では、電磁撹拌コア152、および後述する電磁ブレーキコア162の端部164の位置を模擬的に破線で示している。
図6に示すように、浸漬ノズル6には、短辺鋳型板112に対向する位置に一対の吐出孔が設けられ得る。これらの吐出孔から溶鋼2が鋳型110内に吐出される。溶鋼2の吐出流は、鋳型110の短辺側に向かって進み、短辺側に形成された凝固シェル3aに衝突する。その後、吐出流は、上方向(すなわち、溶鋼の湯面が存在する方向)へ向かう上昇流(反転吐出流)を形成する。なお、凝固シェル3aに衝突した吐出流は、下方向(すなわち、鋳片が引き抜かれる方向)へ向かう下降流を形成する場合もある。電磁ブレーキ装置160は、浸漬ノズル6の当該吐出孔からの溶鋼2の流れ(吐出流)を抑制する方向の電磁力を、当該溶鋼2に対して付与するように駆動される。図6には、吐出流の方向を模擬的に細線矢印で示すとともに、電磁ブレーキ装置160によって溶鋼2に対して付与される電磁力の方向を模擬的に太線矢印で示している。
電磁ブレーキ装置160によれば、このような吐出流を抑制する方向の電磁力を生じさせることにより、吐出流が凝固シェル3aに衝突した際の衝撃を和らげることができる。これにより、凝固シェル3aの再溶融を抑制することができ、ひいては、表面疵およびブレイクアウトの発生を抑制することができる。さらに、吐出流に起因する反転吐出流の勢いが弱められるので、溶鋼2の湯面変動が抑制される。これにより、鋳造パウダーの巻き込みおよび流入不足が抑制される。さらに、吐出流が凝固シェル3aに衝突した際に生じる下降流も抑制されるので、気泡や介在物の浮上分離を促進することもできる。これらの結果、鋳片3の品質が向上する。
電磁ブレーキ装置160の詳細な構成について説明する。電磁ブレーキ装置160は、ケース161と、当該ケース161内にその一部が格納される電磁ブレーキコア162と、当該電磁ブレーキコア162のケース161内の部位に導線が巻回されて構成される複数のコイル163と、から構成される。
ケース161は、略直方体形状を有する中空の部材である。ケース161の大きさは、電磁ブレーキ装置160によって溶鋼2の所望の範囲に対して電磁力を付与し得るように、すなわち、内部に設けられるコイル163が溶鋼2に対して適切な位置に配置され得るように、適宜決定され得る。例えば、ケース161のX軸方向の幅W4、すなわち電磁ブレーキ装置160のX軸方向の幅W4は、鋳型110内の溶鋼2に対して、X軸方向の所望の位置において電磁力を付与し得るように、鋳片3の幅よりも大きくなるように決定される。図示する例では、ケース161の幅W4は、ケース151の幅W4と略同様である。ただし、本実施形態はかかる例に限定されず、電磁撹拌装置150の幅と電磁ブレーキ装置160の幅は異なっていてもよい。
また、電磁ブレーキ装置160では、コイル163からケース161の側壁を通過して溶鋼2に対して電磁力が付与されるため、ケース161は、ケース151と同様に、例えば非磁性体ステンレス又はFRP等の、非磁性で、かつ強度が確保可能な材料によって形成される。
電磁ブレーキコア162は、略直方体形状を有する中実の部材であってコイル163が設けられる一対の端部164と、同じく略直方体形状を有する中実の部材であって当該一対の端部164を連結する連結部165と、から構成される。電磁ブレーキコア162は、連結部165から、Y軸方向であって長辺鋳型板111に向かう方向に突出するように一対の端部164が設けられて構成される。一対の端部164が設けられる位置は、溶鋼2に対して電磁力を付与したい位置、すなわち浸漬ノズル6の一対の吐出孔からの吐出流がそれぞれコイル163によって磁場が印加される領域を通過するような位置に設けられ得る(図6も参照)。電磁ブレーキコア162は、例えば電磁鋼板を積層することにより形成される。
電磁ブレーキコア162の端部164に対して、Y軸方向を中心軸として導線が巻回されることにより、コイル163が形成される。当該コイル163の構造は、上述した電磁撹拌装置150のコイル153と同様である。各端部164について、それぞれ、複数のコイル163が、Y軸方向に所定の間隔を有して並列されて設けられる。
コイル163のそれぞれには、図示しない直流電源が接続される。当該直流電源によって、各コイル163に直流電流を印加することにより、溶鋼2に対して吐出流の勢いを弱めるような電磁力が付与され得る。つまり、各端部164が磁極となり、一方の端部164がN極、他方の端部164がS極となる。したがって、2つの異種の(この例ではN極およびS極の合計2つの)磁極が長辺面に対向することとなる。さらに、2つの磁極間の空間164aに対向する位置に浸漬ノズル6が配置される(図6参照)。なお、他方の長辺にも同様の電磁ブレーキコア162が配置されるので、磁極は合計2対配置されることになる。また、当該直流電源の駆動は、プロセッサ等からなる制御装置(図示せず)が所定のプログラムに従って動作することにより、適宜制御され得る。当該制御装置により、各コイル163に印加する電流量等が適宜制御され、溶鋼2に対して与えられる電磁力の強さが制御され得る。この直流電源の駆動方法としては、一般的な電磁ブレーキ装置において用いられている各種の公知の方法が適用されてよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
電磁ブレーキコア162のX軸方向の幅W0、端部164のX軸方向の幅W2、およびX軸方向における端部164間の距離W3は、電磁撹拌装置150によって溶鋼2の所望の範囲に対して電磁力を付与し得るように、すなわち、コイル163が溶鋼2に対して適切な位置に配置され得るように、適宜決定され得る。例えば、W0は1600mm程度、W2は500mm程度、W3は350mm程度であってもよい。
ここで、例えば上記特許文献1、2に開示された電磁ブレーキ装置は、単独の磁極を有する。単独の磁極が鋳型の長辺面外側に設けられており、当該磁極は、幅方向(つまり、長辺面の長さ方向)の両端に亘って伸びている。このような磁極から発生する磁場は、磁束密度が磁極の幅方向中央部分で最大となる特徴を有する。したがって、電磁ブレーキ装置から発生する磁場の磁束密度を高めた場合、浸漬ノズル近傍の磁束密度が極端に高くなる。このため、浸漬ノズルの吐出孔近傍で、静磁場による制動力が過大となり、吐出流は幅方向に広がることなくノズル近傍で上昇流となりやすい。このような上昇流によって湯面の変動が大きくなる。そして、このような湯面の変動により鋳造パウダーの巻き込み等が発生しうる。なお、特許文献1、2に開示された電磁ブレーキ装置と本実施形態に係る電磁撹拌装置150とを併用しても、このような問題は十分に解消されない。特許文献1、2に開示された電磁ブレーキ装置によって発生した上昇流は強すぎるので、電磁撹拌装置150による電磁撹拌を行っても、当該電磁撹拌の効果が上昇流による大きな湯面変動で打ち消されてしまう。
これに対して、本実施形態では、上記のように、2つの端部164を有するように、すなわち2つの磁極を有するように、電磁ブレーキ装置160が構成される。さらに、2つの磁極間の空間164aに対向する位置に浸漬ノズル6が配置される。かかる構成によれば、例えば、電磁ブレーキ装置160を駆動する際に、これら2つの磁極がそれぞれN極およびS極として機能し、鋳型110の幅方向(すなわち、X軸方向)の略中心近傍の領域の磁束密度が他の領域の磁束密度よりも低下するように、上記制御装置によってコイル163への電流の印加を制御することができる。したがって、浸漬ノズル6の吐出孔近傍で、静磁場による制動力を低減することができるので、過剰な上昇流の発生を抑制することができる。この結果、電磁ブレーキによって電磁撹拌の効果が損なわれにくくなり、ひいては、電磁ブレーキの効果および電磁撹拌の効果をより高めることができる。したがって、より幅広い鋳造条件に対応することが可能となる。
なお、図示する構成例では、電磁ブレーキ装置160は磁極を2つ有するように構成されているが、本実施形態はかかる例に限定されない。電磁ブレーキ装置160は、3つ以上の端部164を有し、3つ以上の異種の磁極を有するように構成されてもよい。この場合、各端部164のコイル163に印加する電流量がそれぞれ適宜調整されることにより、電磁ブレーキに係る溶鋼2への電磁力の印加を更に詳細に制御することが可能となる。
すなわち、磁極の数は浸漬ノズル6の近傍で生じる上昇流の程度等に応じて適宜調整されればよく、特に上限値の制限はない。磁極が3つ以上存在する場合であっても、複数の磁極間の空間に対向する位置に浸漬ノズル6を配置することが好ましい。また、この場合の磁極には、少なくともN極およびS極が少なくとも1つずつ含まれる。
電磁力発生装置の設置位置およびサイズは特に制限されず、例えば特許文献3に開示された設置位置を本実施形態に適用してもよい。例えば、電磁撹拌コア152の高さH1(電磁撹拌コア152の上端から下端までのZ軸方向の長さ)(mm)、および電磁ブレーキコア162の高さH2(電磁ブレーキコア162の上端から下端までのZ軸方向の長さ)(mm)が、以下の(1)式を満たし、さらに(2)式または(3)式を満たすように電磁力発生装置の設置位置およびサイズを設定してもよい。
(1)式:H1+H2≦500mm
(2)式:0.80<H1/H2<2.33
(3)式:1.00<H1/H2<2.00
次に、水平帯9Cに配設された圧下ロール31を備えたロールセグメント装置30について、図7を参照して説明する。
このロールセグメント装置30は、鋳片3の上面側に配置され、複数の圧下ロール31が鋳片3の引抜方向にF間隔を開けて配設された上フレーム33と、鋳片3の下面側に配置され、複数の圧下ロール31が引抜方向Fに間隔を開けて配設された下フレーム34と、これら上フレーム33と下フレーム34とを連結する複数の支持部材35、36と、を有している。
なお、水平帯9Cには、上述のロールセグメント装置30が、鋳片3の引抜方向Fに沿って複数配列されている。
ここで、圧下ロール31の鋳片厚み方向のロール間隔は、水平帯9Cの入側から出側に向かうにしたがい、漸次小さくなるように構成されている。
そして、水平帯9Cの入側に位置するセグメントロールの鋳片厚み方向のロール間隔D1(mm)と、水平帯9Cの出側に位置するセグメントロールの鋳片厚み方向のロール間隔D2(mm)と、水平帯9Cの入側に位置するセグメントロールのメニスカスからの距離L1(m)、水平帯9Cの出側に位置するセグメントロールのメニスカスからの距離L2(m)から以下の(4)式によって圧下テーパー量(mm/m)が規定される。
(4)式:圧下テーパー量=(D1-D2)/(L2-L1)
本実施形態においては、この圧下テーパー量を0.10mm/m以上0.80mm/m以下の範囲内としている。
なお、厚み方向のロール間隔の設定は水平帯のセグメントごとに行い、鋳造方向に沿って厚みが小さくなるような一定の圧下テーパー量を付与した。厚み方向のロール間隔はセグメントごとに小さくしていってもよいし、ロールごとに小さくしていってもよい。
次に、上述した連続鋳造機1を用いた炭素鋼鋳片の連続鋳造方法について説明する。本実施形態に係る炭素鋼鋳片の連続鋳造方法は、C:0.07質量%以上0.3質量%以下、Mn:0.01質量%以上1.5質量%以下、Si:0.001質量%以上0.3質量%以下、P:0.07質量%、S:0.02質量%以下、残部がFeおよび不純物とされた化学組成の炭素鋼鋳片3を3.00ton/min以上6.50ton/min以下の溶鋼スループットで連続鋳造する。なお、炭素鋼鋳片3は、炭素鋼の用途等に応じてさらに他の元素を含んでいてもよい。
ここで、各成分の質量%は、炭素鋼鋳片3の質量(より厳密には、炭素鋼鋳片3の試料の総質量)に対する質量%を意味するものとする。不純物には不可避的不純物、すなわち溶鋼2の製造過程で不可避的に溶鋼2に混入した成分が含まれる。炭素鋼鋳片3の組成は、一般的な分析方法によって測定すればよい。例えば、鋼成分は、ICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いて測定すればよい。なお、Cは燃焼-赤外線吸収法を用いて測定してもよい。
炭素鋼における各元素の含有量を上述のように規定した理由を以下に示す。
(C:0.07質量%以上0.3質量%以下)
炭素鋼の強度を確保するため、C含有量は0.07質量%以上とする。一方、C含有量が多いと炭素鋼の成形性が低下するのでC含有量は0.3質量%以下とする。
(Mn:0.01質量%以上1.5質量%以下)
Mnは炭素鋼を強化する作用があるため、Mnは炭素鋼の必要強度に応じて0.01質量%以上添加される。一方、Mn含有量が多すぎると成形性が低下するのでMn含有量は1.5質量%以下とする。
(Si:0.001質量%以上0.3質量%以下)
Siは炭素鋼を強化する作用があるため、Siは炭素鋼の必要強度に応じて0.002質量%以上添加される。一方、Si含有量が多すぎると成形性が低下するのでSi含有量は0.3%質量%下とする。
(P:0.07質量%以下)
Pは炭素鋼を脆化させる作用があるため、0.07質量%以下に制限する。
(S:0.02質量%以下)
Sは炭素鋼を脆化させる作用があるため、0.02質量%以下に制限する。
次に、スループットの規定理由を以下に説明する。なお、スループット(ton/min)は鋳型厚み(mm)×鋳型幅(mm)×鋳造速度(mm/min)×溶鋼密度(7.0×10-6kg/mm)/1000(kg/ton)で計算される。鋳片短辺への溶鋼流の衝突強度や湯面変動は、浸漬ノズル6の吐出孔からの溶鋼流速に大きく依存するが、これはスループットに比例するためこの指標を用いるのが適している。
スループットが、3.00ton/min未満であれば、浸漬ノズル6の吐出孔からの溶鋼流速が十分に小さく、電磁力を印加せずとも良好な鋳片を鋳造できる。一方、スループットが6.50ton/minを超える領域では溶鋼流速が極めて大きく、電磁力設備の制御範囲から逸脱し、品質が良好な鋳片を安定的に得るのが困難である。(現状の技術では非常に高価な別の設備が必要となり、コストに見合わない)
ここで、上述の化学組成の炭素鋼鋳片を3.00ton/min以上6.50ton/min以下の高スループット条件で連続鋳造する際には、電磁撹拌装置150および電磁ブレーキ装置160によって、鋳型110内の溶鋼流動を制御する。
なお、特に断りが無い限り、後述する電磁撹拌強度および電磁ブレーキ強度の単位「T」はテスラを意味するものとする。
また、本実施形態では、電磁撹拌強度および電磁ブレーキ強度は、冷間状態の溶鋼の存在しない鋳型内において、電磁撹拌コアおよび電磁ブレーキコアを稼働させた際の印加条件(電流、周波数)と当該コアの中心部の磁界強度の関係を測定した結果により決定した。なお、電磁撹拌強度については、交流磁界であるので磁束密度の時間変化の最大値を磁界強度の値とした。
電磁撹拌装置150(すなわち、電磁撹拌コア152)による交流磁場の磁束密度(以下、単に「電磁撹拌強度」とも称する)を0.02T以上0.15T以下とする。
電磁撹拌強度が0.02T未満となる場合には、撹拌による溶鋼温度の均一化が不十分となり、不均一凝固を起因とした鋳片割れが発生しやすくなる。一方、電磁撹拌強度が0.15Tより大きい場合には、撹拌流が過大となり、これによる湯面変動の影響が大きくなり不均一凝固を起因とした鋳片割れが発生する。このことから電磁撹拌強度は0.02T以上0.15T以下とする。
なお、より安定的に鋳片表面割れを抑制するために、電磁撹拌強度は、0.05T以上とすることが好ましい。また、電磁撹拌強度は、0.10T以下とすることが好ましい。
一方、電磁ブレーキ装置160(すなわち、電磁ブレーキコア162)による静磁場の磁束密度(以下、単に「電磁ブレーキ強度」とも称する)を0.15T以上0.40T以下とする。
電磁ブレーキ強度が0.15T未満となる場合には、吐出流の制動が十分でなく、短辺で発生する上昇流により湯面変動が発生し、表面品質が悪化する。さらに、程度が悪いと再溶融性の疵が発生する。一方、電磁ブレーキ強度が0.40Tより大きい場合には、ノズル近傍へ溶鋼が集中し、湯面変動が大きくなるため表面割れが発生する。このことから電磁ブレーキ強度は0.15T以上0.40T以下とする。
なお、より安定的に鋳片表面割れを抑制するために、電磁ブレーキ強度は、0.2T以上とすることが好ましい。
また、従来型の1極(単極)の電磁ブレーキコアを設置した条件では、電磁ブレーキ強度が0.2T以上になると浸漬ノズル6近傍での制動力が過剰に大きくなり、湯面変動が大きくなる現象が発生する。したがって、本実施形態のように電磁ブレーキ装置160が複数の磁極を有する場合、従来の単極型の電磁ブレーキ装置よりも幅広い磁束密度の範囲で鋳片の品質を向上させることができる。
次に、電磁撹拌強度および電磁ブレーキ強度と炭素鋼鋳片3の厚み中心部の二枚割れの関係を述べる。
二枚割れは、鋳片3の幅方向の最終凝固位置の偏差が大きくなることで助長される。一方で、鋳型110内の流動、特に浸漬ノズル6の吐出孔からの溶鋼流動が強いと幅方向の最終凝固位置の偏差が形成される。ここで、電磁ブレーキ強度を0.40Tより大きくすることで、幅方向の最終凝固位置の偏差が十分小さくなり、二枚割れを防止できる。一方、電磁撹拌強度は、最終凝固位置の偏差への影響はほとんど見られなかった。ところで、上述のように、鋳片3の表面品質を良好とするには、電磁ブレーキ強度を0.15T以上0.40T以下にする必要があり、電磁ブレーキ強度の制御のみでは表面品質および二枚割れの両方を良好とするのは困難であることがわかる。
そこで、本実施形態においては、水平帯9Cにおいて、上下一対の圧下ロールによって鋳片3の圧下を行う構成とし、水平帯9Cにおける圧下テーパー量を0.10mm/m以上0.80mm/m以下の範囲内とした。
ここで、圧下テーパー量が0.10mm/mより小さいと、鋳片3を十分に圧下することができず、二枚割れが発生する。一方で、圧下テーパー量が0.80mm/mより大きいと、圧下力および引き抜き力が過大となり、多大な設備投資が必要となる。
よって、水平帯9Cでの圧下テーパー量は0.10mm/m以上0.80mm/m以下が適正である。このような範囲で水平帯9Cでの圧下テーパー量を設定することで、電磁ブレーキ強度を表面品質が確保できる0.15T以上0.40T以下としても、二枚割れの発生が抑制できる。一方で、電磁ブレーキ強度が0.15Tより小さい場合には、表面品質の悪化に加え、最終凝固位置の偏差が大きくなるため、たとえ圧下テーパー量を0.10mm/m以上0.80mm/m以下としても許容できない二枚割れが発生するおそれがある。
なお、より安定的に二枚割れを抑制するために、水平帯9Cでの圧下テーパー量は、0.30mm/m以上とすることが好ましい。
以上のような構成とされた本実施形態である炭素鋼鋳片の連続鋳造方法によれば、鋳型110の下部の長辺面外側に設置され、複数かつ異種の磁極が前記長辺面に対向する電磁ブレーキコア162を用いて溶鋼2に静磁場を印加し、電磁撹拌コア152による交流磁場の磁束密度を0.02T以上0.15T以下、電磁ブレーキコア162による静磁場の磁束密度を0.15T以上0.40T以下としているので、鋳型内110の溶鋼流動を適切に制御することができ、鋳片3の表面割れおよび再溶融性の疵を抑制することが可能となる。
そして、水平帯9Cにおける圧下テーパー量を0.10mm/m以上0.80mm/m以下の範囲内としているので、電磁ブレーキコア162による静磁場の磁束密度を0.40T以下とした場合であっても、鋳片3の水平帯9Cにおけるバルジング変形を抑制し、二枚割れの発生を十分に抑制することができる。
以上、本発明の実施形態である炭素鋼鋳片の連続鋳造方法について具体的に説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、図1に示す連続鋳造機を用いたものとして説明したが、これに限定されることはなく、その他の構成の連続鋳造機等を用いてもよい。
本実施例では、炭素鋼鋳片の連続鋳造方法に関する実機試験を行った。当該実機試験では、実際に操業に用いている連続鋳造機に、図2~図5を参照して説明した本実施形態に係る電磁力発生装置を設置した。なお、比較例2では、電磁ブレーキコアを単極としたものを用いた。
鋳型は銅製水冷式(水冷銅鋳型)で長さが900mm矩形断面を有する。連続鋳造機の形式は垂直曲げ式とした。
そして、溶鋼スループット、電磁撹拌強度、および電磁ブレーキ強度等を様々に変更して炭素鋼鋳片の連続鋳造を行った。ここで、鋳型は銅製水冷式(水冷銅鋳型)で高さ(鋳型の上端から下端までの長さ)が900mmの矩形断面を有する。連続鋳造機の形式は垂直曲げ式とした。
また、C含有量が0.11質量%、Si含有量が0.05質量%、Mn含有量が1.0質量%、P含有量が0.03質量%、S含有量が0.002質量%、残部がFeおよび不純物の溶鋼を用いた。
二次冷却の比水量は1.5~2.5L/kg-steelとした。溶鋼スループット計算の際の比重は、7.0×10-6kg/mmとした。浸漬ノズルのアルゴンガスの吹き込み量は7NL/minとした。
電磁撹拌コアの上端は鋳型の上端から100mmとし、電磁撹拌コア上端から下端までの高さ(鋳造方向距離)H1は250mmとした。電磁ブレーキコアの上端は鋳型の上端から500mmとし、電磁ブレーキコア上端から下端までの高さH2は200mmとした。また、鋳型を一定周期および振幅で上下に振動させた。
連続鋳造機内の鋳片二次冷却スプレーとして、気水混合のミストスプレーを用いた。水平帯の位置は、メニスカスから22mから42mとした。水平帯における厚み方向の圧下ロールのロール間隔の設定は水平帯のロールセグメントごとに行い、鋳造方向に沿って厚みが小さくなるような一定の圧下テーパー量を付与した。
鋳造後、トーチでカットした鋳片の表面を目視にて観察し、表面割れの有無および再溶融性の疵の有無を記録した。表面割れについては、割れが無ければ「A」、圧延時疵にならない長さ10mm未満の割れであれば「B」、手入れが必要な長さ10mm以上50mm未満の疵であれば「C」、手入れ不可能な長さ10mm以上の疵であれば「D」と評価した。
さらにトーチカット後の鋳片断面を観察し二枚割れの有無を調査した。二枚割れが無ければ「A」、製品成型時に問題とならない長さ50mm未満の極軽微な二枚割れであれば「B」、問題となる長さ50mm以上の二枚割れであれば「D」と評価した。
これらを併せて総合評価を行った。再溶融性の疵が無いこと、表面割れ評価がAまたはBであること、二枚割れ評価がAまたはBであること、のすべてを満たした場合を「合格」、いずれかを満たさない場合を「不合格」とした。
(発明例1)
発明例1は、以下の各発明例、比較例のベースとなるものである。発明例1では、鋳片厚み、鋳片幅を薄板向け連鋳機で一般的なサイズである250mm厚、1100mm幅とした。鋳造速度は1.6m/minとした。このときの鋼スループットは3.08ton/minである。
電磁撹拌強度、電磁ブレーキ強度は、あらかじめ実施した流動解析を基に設定し、吐出流が抑制できる条件として、電磁撹拌強度を0.02T、電磁ブレーキ強度を0.20Tとした。電磁撹拌は交流磁場を溶鋼に印可することで行い、電磁ブレーキは静磁場を溶鋼に印可することで行った。電磁ブレーキコア数(すなわち、長辺面に対向する磁極の数)は、吐出孔付近の静磁場強度を小さくできる2個(長辺面の片面あたり2個。すなわち、両面で2対)とした。すなわち、N極、S極の磁極対が長辺面の両面のそれぞれに配置される。そして、水平帯における圧下テーパー量を0.15mm/mに設定した。
発明例1の操業条件は、本実施形態の範囲内であり、再溶融性疵、表面割れおよび二枚割れも発生しておらず良好で総合評価として合格であった。
(発明例2)
発明例2では、発明例1に対し鋳造速度を大きくした条件で、電磁撹拌および電磁ブレーキ強度条件は同様とした。また、圧下テーパー量についても発明例1と同じく0.15mm/mに設定した。
発明例2では、スループットの増大により湯面変動が大きくなりやすいが、再溶融性疵、表面割れ、二枚割れの発生はなく総合評価として合格であった。
(発明例3)
発明例3では、発明例1に対し鋳片幅を大きくした。スループットの増加に伴い電磁撹拌および電磁ブレーキ強度を発明の範囲内で共に大きくした。圧下テーパー量については発明例1と同じく0.15mm/mに設定した。
発明例3においても、再溶融性疵、表面割れ、二枚割れの発生はなく総合評価として合格であった。
(発明例4)
発明例4では、発明例1に対し鋳片幅と鋳造速度を大きくした。スループットの増加に伴い電磁撹拌強度および電磁ブレーキ強度を発明の範囲内でさらに共に大きくした。圧下テーパー量については発明例1と同じく0.15mm/mに設定した。
発明例4では、スループットが高くなったが、再溶融性疵の発生、表面割れの発生は無かった。一方、中心の二枚割れに関しては、鋳造速度の増大によるロール間バルジング量の増加が影響し、極軽微なものが見られたが製品に影響を及ぼす程度ではなく、総合評価として合格であった。
(発明例5,6)
発明例5,6では、発明例1に対し鋳片幅をさらに大きくし、鋳造速度をさらに大きくした。溶鋼スループットは6.35ton/minで、電磁撹拌強度および電磁ブレーキ強度を発明の範囲内で増加させた。圧下テーパー量については発明例1と同じく0.15mm/mに設定した。
発明例5,6では、スループットが高くなったが、再溶融性疵、表面割れは発生していない。二枚割れについては発明例4と同様、極軽微なものが見られたが、総合評価として合格であった。
(発明例7)
発明例7では、発明例1に対して鋳片幅をさらに大きくし、鋳造速度をさらに大きくした。溶鋼スループットは6.35ton/minで、電磁撹拌強度および電磁ブレーキ強度を発明例1と同等とした。圧下テーパー量については発明例1と同じく0.15mm/mに設定した。
発明例7では、再溶融性の疵は発生しなかったが、圧延時に疵とならない極軽微な表面割れが見られた。また、二枚割れについては発明例4と同様に、極軽微なものが見られたが、総合評価として合格であった。
(発明例8)
発明例8では、鋳造速度、電磁撹拌強度および電磁ブレーキ強度を発明例6と同様として、圧下テーパー量を0.30mm/mと増加させた。
発明例8では、再溶融性の疵、表面割れは発明例6と同様発生していない。一方、二枚割れについては、圧下テーパー量を増加させた為、消失した。総合評価としては合格であった。
(発明例9)
発明例9では、発明例11と同様の鋳造速度、電磁撹拌強度、電磁ブレーキ強度とし、圧下テーパー量を0.10mm/mと発明の範囲内で低減した。
発明例9では、再溶融性の疵や表面割れは発明例1と同様発生していない。二枚割れについては、圧下テーパー量を低減した影響で極軽微なものが見られたが、製品に影響を及ぼす程度でなく、総合評価として合格であった。
(発明例10)
発明例10では、発明例1と同様の鋳造速度、電磁撹拌強度、電磁ブレーキ強度とし、圧下テーパー量を0.80mm/mと発明の範囲内で増加した。
発明例10では、再溶融性の疵や表面割れは発明例1と同様発生していない。二枚割れについても発明例1と同様発生しておらず、総合評価として合格であった。
(比較例1)
比較例1では、電磁撹拌コアのみを設置し、電磁ブレーキを付与しなかった。圧下テーパー量については0.15mm/mに設定した。
この比較例1では、吐出流による凝固シェルの再溶解が発生した。また、表面割れについても発生した。二枚割れは発生しなかったが、総合評価として不合格であった。
(比較例2)
比較例2では、電磁撹拌コアと電磁ブレーキコアを設置したものの、電磁ブレーキコアが1対で鋳片幅方向の静磁場を単極とした。圧下テーパー量については0.15mm/mに設定した。
この比較例2では、本発明例の電磁ブレーキコアが2対での結果と比較すると幅中央部分での磁場が大きいため、ノズル近傍での上昇流が発生し湯面変動を引き起こし、この近傍で手入れが必要な表面割れが見られた。一方、再溶融性の疵や二枚割れは発生しなかったが、総合評価は不合格であった。
(比較例3)
比較例3では、電磁撹拌コアと電磁ブレーキコアを2つ設置した、電磁撹拌強度を0.01Tと発明の範囲外とした。電磁ブレーキ強度は0.20T、圧下テーパー量は0.15mm/mに設定した。
この比較例3では、電磁撹拌強度が低く、撹拌力が不十分で、湯面変動、温度不均一を抑制するのに十分な撹拌流が与えられず、凝固不均一起因の手入れ不可能な深い表面割れが発生した。再溶融性の疵および二枚割れの発生は無かったが、総合評価として不合格であった。
(比較例4)
比較例4では、電磁撹拌コアと電磁ブレーキコアを2つ設置し、電磁撹拌強度を0.18Tと発明の範囲外とした。電磁ブレーキ強度は0.20T、圧下テーパー量は0.15mm/mに設定した。
この比較例4では、電磁撹拌による湯面変動が大きくなり、特に、電磁撹拌の流速が大きくなるコーナー近傍での手入れ不可能な深い表面割れが発生した。再溶融性の疵、二枚割れの発生は無かったものの総合評価として不合格であった。
(比較例5)
比較例5では、電磁撹拌コアと電磁ブレーキコアを2つ設置し、電磁ブレーキ強度を0.10Tと発明の範囲外とした。電磁撹拌強度は0.05T、圧下テーパー量は0.15mm/mに設定した。
この比較例5では、再溶融性疵が発生し、手入れが必要な表面割れも発生した。さらに、圧下テーパー量は十分であったものの、電磁ブレーキ強度が0.10Tと最終凝固位置の偏差が大きくなる条件となったため、二枚割れが発生し、総合評価として不合格であった。
(比較例6)
比較例6では、電磁撹拌コアと電磁ブレーキコアを2つ設置し、電磁ブレーキ強度を0.50Tと発明の範囲外とした。電磁撹拌強度は0.05T、圧下テーパー量は0.15mm/mに設定した。
この比較例6では、電磁ブレーキ強度が大きいため、ノズル近傍に溶鋼が集積することで鋳片幅センターでの湯面変動が大きくなり、比較例2と同様に幅センター近傍での表面割れが散見された。再溶融性の疵や二枚割れは発生しなかったが、総合評価として不合格であった。
(比較例7)
比較例7は、電磁撹拌コアと電磁ブレーキコアを2つ設置し、電磁撹拌強度と電磁ブレーキ強度については発明例1と同様とした。一方、圧下テーパー量を0.05mm/mと発明範囲より小さくした。
この比較例7では、再溶融性の疵および表面割れは発生しなかったものの、圧下テーパーの不足によりバルジング起因の二枚割れを抑え込み切れず、製品へ影響がある程度の二枚割れが発生した。そのため、総合評価として不合格であった。
(比較例8)
比較例8では、電磁撹拌コアと電磁ブレーキコアを2つ設置し、電磁撹拌強度は発明例1と同様とし、電磁ブレーキ強度を0.45Tと発明の範囲より大きくした。圧下テーパー量は0.05mm/mと発明範囲より小さくした。
この比較例8では、再溶融性の疵は発生しなかったものの、電磁ブレーキ強度が大きいため、ノズル近傍での湯面変動が大きくなり、比較例2と同様に表面割れが散見された。二枚割れについては、圧下テーパー量が小さいものの電磁ブレーキが十分に大きく、幅方向の最終凝固位置の偏差が小さかったため製品に影響のある二枚割れは発生しなかった。総合評価としては不合格であった。
(比較例9)
比較例9では、電磁撹拌コアと電磁ブレーキコアを2つ設置し、電磁撹拌強度は発明例1と同様とし、電磁ブレーキ強度を0.10Tと発明の範囲より小さくした。圧下テーパー量は0.05mm/mと発明範囲より小さくした。
この比較例9では、再溶融性の疵は発生しなかったものの、電磁ブレーキ強度が十分でないため短辺での上昇流が発生し、これに伴う表面割れが発生した。さらに、圧下テーパー量が十分でないため、二枚割れが発生し、総合評価として不合格であった。
結果を表1にまとめて示す。発明例1~10では炭素鋼鋳片の品質が良好となったが、比較例1~9では炭素鋼鋳片の品質に問題が見受けられた。
以上の実験結果により、本実施形態に係る炭素鋼鋳片の連続鋳造方法によれば、炭素鋼鋳片を高スループットで連続鋳造する場合であっても、高品質の鋳片を安定して鋳造することができることがわかった。
Figure 2022165468000001
1 連続鋳造機
2 溶鋼
3 鋳片(炭素鋼鋳片)
9C 水平帯
10 鋳型設備
30 ロールセグメント装置
31 圧下ロール
110 鋳型
150 電磁撹拌装置
152 電磁撹拌コア
160 電磁ブレーキ装置
162 電磁ブレーキコア
170 電磁力発生装置

Claims (1)

  1. 鋳型の下方から引き出された断面矩形状をなす炭素鋼鋳片を湾曲させる湾曲帯と、前記炭素鋼鋳片を水平方向に搬送する水平帯とを有する連続鋳造機を用いた炭素鋼鋳片の連続鋳造方法であって、
    前記炭素鋼は、C:0.07質量%以上0.3質量%以下、Mn:0.01質量%以上1.5質量%以下、Si:0.001質量%以上0.3質量%以下、P:0.07質量%以下、S:0.02質量%以下、残部がFeおよび不純物とされた化学組成とされており、
    溶鋼スループットが3.00ton/min以上6.50ton/min以下の範囲内とされ、
    前記鋳型の上部の長辺面外側に設置された電磁撹拌コアを用いて前記鋳型内の溶鋼に交流磁場を印加するとともに、前記鋳型の下部の長辺面外側に設置され、複数かつ異種の磁極が前記長辺面に対向する電磁ブレーキコアを用いて前記溶鋼に静磁場を印加し、
    前記電磁撹拌コアによる交流磁場の磁束密度を0.02T以上0.15T以下、前記電磁ブレーキコアによる静磁場の磁束密度を0.15T以上0.40T以下とし、
    前記水平帯においては、上下一対の圧下ロールによって前記炭素鋼鋳片の圧下を行う構成とされており、前記水平帯における圧下テーパー量を0.10mm/m以上0.80mm/m以下の範囲内とすることを特徴とする炭素鋼鋳片の連続鋳造方法。
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