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JP2022153758A - センサ素子及びガスセンサ - Google Patents

センサ素子及びガスセンサ Download PDF

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JP2022153758A JP2021056447A JP2021056447A JP2022153758A JP 2022153758 A JP2022153758 A JP 2022153758A JP 2021056447 A JP2021056447 A JP 2021056447A JP 2021056447 A JP2021056447 A JP 2021056447A JP 2022153758 A JP2022153758 A JP 2022153758A
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雄介 藤井
Yusuke Fujii
修 中曽根
Osamu Nakasone
拓 岡本
Taku Okamoto
伸彦 森
Nobuhiko Mori
信和 生駒
Nobukazu Ikoma
稜 伊藤
Ryo Ito
正己 大島
Masami Oshima
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Abstract

【課題】被測定ガス中の特定の酸化物ガス濃度及びアンモニア濃度を精度良く検出する。【解決手段】センサ素子101は、長手方向を有する素子本体101aと、内側ポンプ電極22を有する主ポンプセル21と、被測定ガス中の特定の酸化物ガス濃度を検出するための測定電極44と、検知電極56を有し被測定ガス中のアンモニア濃度に応じた起電力を発生させる混成電位セル55と、ヒータ72と、を備える。素子本体101aの長手方向を前後方向として、内側ポンプ電極22は、素子本体101aのうちの前側に配設されている。検知電極56は、内側ポンプ電極22よりも前方に配設されている。検知電極56及び内側ポンプ電極22は、ヒータ72により加熱されたときに、検知電極56の温度が550℃以上700℃以下の範囲内となり且つ内側ポンプ電極22の最低温度が725℃以上になるという第1温度条件を満たすように、配置されている。【選択図】図1

Description

本発明は、センサ素子及びガスセンサに関する。
従来、自動車の排気ガスなどの被測定ガスにおけるNOxやアンモニアなどの複数の成分の濃度を検出するガスセンサが知られている。例えば、特許文献1には、酸素イオン伝導性の固体電解質層からなる構造体と、混成電位電極と、主ポンプ電極と、測定電極と、基準電極と、を備えたガスセンサが記載されている。構造体には、被測定ガスが導入されるガス導入口と、ガス導入口に連通した予備空室,酸素濃度調整室及び測定空室が形成されている。予備空室には混成電位電極が配設され、酸素濃度調整室には主ポンプ電極が配設され、測定空室には測定電極が配設されている。このガスセンサでは、主ポンプ電極の電圧に基づいて酸素濃度調整室内の酸素濃度を制御し、測定電極のポンプ電流に基づいて測定空室内のNO濃度を測定する。また、混成電位電極の混成電位に基づいてアンモニア濃度を測定する。
特開2019-219177号公報
ところで、このようなガスセンサにおいて、複数の成分の濃度の検出精度をより高めたいという要望があった。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、被測定ガス中の特定の酸化物ガス濃度及びアンモニア濃度を精度良く検出することを主目的とする。
本発明は、上述した主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明のセンサ素子は、
酸素イオン伝導性の固体電解質層を有し、被測定ガスを導入して流通させる被測定ガス流通部が内部に設けられ、長手方向を有する素子本体と、
前記被測定ガス流通部のうちの酸素濃度調整室に配設された調整用ポンプ電極を有し、該酸素濃度調整室の酸素濃度を調整する調整用ポンプセルと、
前記被測定ガス流通部のうちの前記酸素濃度調整室の下流側に設けられた測定室の内周面上に配設され、前記被測定ガス中の特定の酸化物ガス濃度を検出するための測定電極と、
前記素子本体に配設された検知電極を有し、前記被測定ガス中のアンモニア濃度に応じた起電力を発生させる混成電位セルと、
前記素子本体を加熱するヒータと、
を備え、
前記素子本体の前記長手方向を前後方向として、前記調整用ポンプ電極は、前記素子本体のうちの前側に配設されており、
前記検知電極は、前記素子本体のうち前記調整用ポンプ電極よりも前方に配設されており、
前記検知電極及び前記調整用ポンプ電極は、前記ヒータにより加熱されたときに、前記検知電極の温度が550℃以上700℃以下の範囲内となり且つ前記調整用ポンプ電極の最低温度が725℃以上になるという第1温度条件を満たすように、配置されている、
ものである。
このセンサ素子を用いて、例えば以下のように被測定ガスに含まれる特定の酸化物ガス濃度及びアンモニア濃度を検出することができる。まず、調整用ポンプセルを動作させて、被測定ガス流通部内に導入された被測定ガスの酸素濃度を調整する。これにより、酸素濃度の調整後の被測定ガスが測定室に到達する。そして、特定の酸化物ガスに由来して測定室で発生する酸素(特定の酸化物ガスが測定室で還元されたときに発生する酸素)に応じた検出値を取得し、取得した検出値に基づいて被測定ガス中の特定の酸化物ガス濃度を検出する。また、混成電位セルにおいて被測定ガス中のアンモニア濃度に応じた混成電位が生じるため、この混成電位に基づいてアンモニア濃度を検出する。上記の検出値は被測定ガス中のアンモニアの影響も受ける場合があるため、被測定ガス中のアンモニア濃度に基づいて特定の酸化物ガス濃度の補正を行ってもよい。そして、このセンサ素子では、調整用ポンプセルの調整用ポンプ電極が素子本体のうちの前側に配設されており、混成電位セルの検知電極は調整用ポンプ電極よりもさらに前方に配設されている。さらに、検知電極及び調整用ポンプ電極は、ヒータにより加熱されたときに第1温度条件を満たすように配置されている。第1温度条件とは、検知電極の温度が550℃以上700℃以下の範囲内となり且つ調整用ポンプ電極の最低温度が725℃以上になるという条件である。ここで、検知電極の温度が550℃未満では、検知電極の表面にアンモニアが残ってしまうことでアンモニア濃度の変化に対する混成電位の応答性が低下する場合があるが、検知電極の温度が550℃以上ではそのような応答性の低下を抑制できる。また、検知電極の温度が700℃以下では、検知電極周辺のアンモニアが燃焼してしまうことを抑制できるため、混成電位セルを用いたアンモニア濃度の検出精度が高まる。さらに、調整用ポンプ電極の最低温度が725℃以上では、調整用ポンプセルの酸素のポンプ能力が十分高くなるため、酸素濃度調整室の酸素濃度を適切に調整できる。以上のように、本発明のセンサ素子では、調整用ポンプ電極と検知電極とが第1温度条件を満たすように配置されていることで、混成電位セルと調整用ポンプセルとを共に適切に動作させることができる。したがって、被測定ガス中の特定の酸化物ガス濃度及びアンモニア濃度を精度良く検出することができる。
本発明のセンサ素子において、前記検知電極及び前記調整用ポンプ電極は、前記ヒータにより加熱されたときに、前記第1温度条件を満たし且つ前記検知電極の最低温度と前記調整用ポンプ電極の最高温度との差が400℃以下になるという第2温度条件を満たすように、配置されていてもよい。こうすれば、第2温度条件を満たしておりヒータに加熱されたときの検知電極と調整用ポンプ電極との温度差が小さいため、センサ素子が熱衝撃に強くなり、熱衝撃によるセンサ素子のクラックを抑制できる。センサ素子に与えられる熱衝撃は、例えば被測定ガス中の水分の付着に起因して生じる。
この場合において、前記検知電極と前記調整用ポンプ電極との前記前後方向の距離Aが4mm以下であってもよい。距離Aが4mm以下であれば、検知電極と調整用ポンプ電極との温度差が大きくなりすぎないため、第2温度条件を満たしやすい。
本発明のセンサ素子において、前記検知電極と前記調整用ポンプ電極との前記前後方向の距離Aが1mm以上であってもよい。距離Aが1mm以上であれば、調整用ポンプ電極の最低温度を高くしても検知電極の温度を低く維持しやすいため、第1温度条件を満たしやすい。
本発明のセンサ素子において、前記検知電極は、前記被測定ガスと接触するように前記素子本体の外側に配設されていてもよい。こうすれば、検知電極が調整用ポンプ電極よりも前方且つ素子本体の外側に配設される、すなわち検知電極が素子本体の前端付近且つ素子本体の外側に配設されるから、被測定ガスが検知電極に到達しやすくなり、アンモニア濃度の検出の応答性が向上する。
本発明のセンサ素子において、前記検知電極は、前記被測定ガス流通部のうちの前記酸素濃度調整室の上流側に設けられていてもよい。
本発明のガスセンサは、上述したいずれかの態様のセンサ素子を備えたものである。そのため、このガスセンサは、上述した本発明のセンサ素子と同様の効果、例えば被測定ガス中の特定の酸化物ガス濃度及びアンモニア濃度を精度良く検出できる効果が得られる。
ガスセンサ100の断面模式図。 図1の部分拡大図。 制御装置90と各セルとの電気的な接続関係を示すブロック図。 変形例の検知電極156の配置を示す拡大断面図。 変形例のセンサ素子201の断面模式図。
次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるガスセンサ100の構成の一例を概略的に示した断面模式図である。図2は、図1の部分拡大図である。図3は、制御装置90と各セルとの電気的な接続関係を示すブロック図である。このガスセンサ100は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関の排ガス管などの配管に取り付けられる。ガスセンサ100は、内燃機関の排ガスを被測定ガスとして、被測定ガス中の特定の酸化物ガス(ここではNOx)の濃度と、被測定ガス中のアンモニアの濃度とを検出する。
ガスセンサ100は、センサ素子101と、ガスセンサ100全体を制御する制御装置90と、を備えている。センサ素子101は、長尺な直方体形状をした素子本体101aと、素子本体101aの一部を含んで構成される各セル21,41,50,55,80~83と、素子本体101aを被覆する多孔質の保護層85と、を備えている。図1に示すように、素子本体101aの長手方向を前後方向、素子本体101aの厚み方向を上下方向とする。また、素子本体101aの幅方向(長手方向及び厚み方向に垂直な方向)を左右方向とする。
センサ素子101は、それぞれがジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6との6つの層が、図面視で下側からこの順に積層された積層体(素子本体101a)を有する素子である。また、これら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。係るセンサ素子101は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
素子本体101aの前端側(図1の左端部側)であって、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10と、第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40と、第4拡散律速部60と、第3内部空所61とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。
ガス導入口10と、緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40と、第3内部空所61とは、スペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられた上部を第2固体電解質層6の下面で、下部を第1固体電解質層4の上面で、側部をスペーサ層5の側面で区画された素子本体101a内部の空間である。
第1拡散律速部11と、第2拡散律速部13と、第3拡散律速部30とはいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。また、第4拡散律速部60は、第2固体電解質層6の下面との隙間として形成された1本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。なお、ガス導入口10から第3内部空所61に至る部位を被測定ガス流通部とも称する。
また、被測定ガス流通部よりも前端側から遠い位置には、第3基板層3の上面と、スペーサ層5の下面との間であって、側部を第1固体電解質層4の側面で区画される位置に基準ガス導入空間43が設けられている。基準ガス導入空間43には、NOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気が導入される。
大気導入層48は、多孔質セラミックスからなる層であって、大気導入層48には基準ガス導入空間43を通じて基準ガスが導入されるようになっている。また、大気導入層48は、基準電極42を被覆するように形成されている。
基準電極42は、第3基板層3の上面と第1固体電解質層4とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入空間43につながる大気導入層48が設けられている。また、後述するように、基準電極42を用いて第1内部空所20内,第2内部空所40内,及び第3内部空所61内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。基準電極42は、多孔質サーメット電極(例えば、PtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。
被測定ガス流通部において、ガス導入口10は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口10を通じて外部空間から素子本体101a内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。第1拡散律速部11は、ガス導入口10から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。緩衝空間12は、第1拡散律速部11より導入された被測定ガスを第2拡散律速部13へと導くために設けられた空間である。第2拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所20に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。被測定ガスが、素子本体101aの外部から第1内部空所20内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口10から素子本体101aの内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所20へ導入されるのではなく、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13を通じて被測定ガスの圧力変動が打ち消された後、第1内部空所20へ導入されるようになっている。これによって、第1内部空所20へ導入される被測定ガスの圧力変動はほとんど無視できる程度のものとなる。第1内部空所20は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
主ポンプセル21は、第1内部空所20に面する第2固体電解質層6の下面のほぼ全面に設けられた天井電極部22aを有する内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6の上面の天井電極部22aと対応する領域に設けられた外側ポンプ電極23と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層6とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。外側ポンプ電極23は、被測定ガスに接触するように素子本体101aの外側に設けられている。本実施形態では、具体的には、外側ポンプ電極23は素子本体101aの上面に設けられている。
内側ポンプ電極22は、第1内部空所20を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層6および第1固体電解質層4)、および、側壁を与えるスペーサ層5にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所20の天井面を与える第2固体電解質層6の下面には天井電極部22aが形成され、また、底面を与える第1固体電解質層4の上面には底部電極部22bが形成され、そして、それら天井電極部22aと底部電極部22bとを接続するように、側部電極部(図示省略)が第1内部空所20の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に形成されて、該側部電極部の配設部位においてトンネル形態とされた構造において配設されている。
内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23とは、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。なお、被測定ガスに
接触する内側ポンプ電極22は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
主ポンプセル21においては、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に正方向あるいは負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所20内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所20に汲み入れることが可能となっている。
また、第1内部空所20における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42によって、電気化学的なセンサセル、すなわち、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80が構成されている。
主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80における起電力(電圧V0)を測定することで第1内部空所20内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。さらに、電圧V0が目標値となるように可変電源24のポンプ電圧Vp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これによって、第1内部空所20内の酸素濃度は所定の一定値に保つことができる。
第3拡散律速部30は、第1内部空所20で主ポンプセル21の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所40に導く部位である。
第2内部空所40は、あらかじめ第1内部空所20において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル50による酸素分圧の調整を行うための空間として設けられている。これにより、第2内部空所40内の酸素濃度を高精度に一定に保つことができるため、係るガスセンサ100においては精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
補助ポンプセル50は、第2内部空所40に面する第2固体電解質層6の下面の略全体
に設けられた天井電極部51aを有する補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、素子本体101aの外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層6とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
係る補助ポンプ電極51は、先の第1内部空所20内に設けられた内側ポンプ電極22と同様なトンネル形態とされた構造において、第2内部空所40内に配設されている。つまり、第2内部空所40の天井面を与える第2固体電解質層6に対して天井電極部51aが形成され、また、第2内部空所40の底面を与える第1固体電解質層4には、底部電極部51bが形成され、そして、それらの天井電極部51aと底部電極部51bとを連結する側部電極部(図示省略)が、第2内部空所40の側壁を与えるスペーサ層5の両壁面にそれぞれ形成されたトンネル形態の構造となっている。なお、補助ポンプ電極51についても、内側ポンプ電極22と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
補助ポンプセル50においては、補助ポンプ電極51と外側ポンプ電極23との間に所望の電圧Vp1を印加することにより、第2内部空所40内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所40内に汲み入れることが可能となっている。
また、第2内部空所40内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極51と、基準電極42と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81が構成されている。
なお、この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81にて検出される起電力(電圧V1)に基づいて電圧制御される可変電源52にて、補助ポンプセル50がポンピングを行う。これにより第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
また、これとともに、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80の起電力の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80に入力され、その電圧V0の上述した目標値が制御されることにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所40内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
第4拡散律速部60は、第2内部空所40で補助ポンプセル50の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第3内部空所61に導く部位である。第4拡散律速部60は、第3内部空所61に流入するNOxの量を制限する役割を担う。
第3内部空所61は、あらかじめ第2内部空所40において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第4拡散律速部60を通じて導入された被測定ガスに対して、被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間として設けられている。NOx濃度の測定は、主として、第3内部空所61において、測定用ポンプセル41の動作により行われる。
測定用ポンプセル41は、第3内部空所61内において、被測定ガス中のNOx濃度の測定を行う。測定用ポンプセル41は、第3内部空所61に面する第1固体電解質層4の上面に設けられた測定電極44と、外側ポンプ電極23と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4とによって構成された電気化学的ポンプセルである。測定電極44は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を、内側ポンプ電極22よりも高めた材料にて構成された多孔質サーメット電極である。測定電極44は、第3内部空所61内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。
測定用ポンプセル41においては、測定電極44の周囲の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出することができる。
また、測定電極44の周囲の酸素分圧を検出するために、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、測定電極44と、基準電極42とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された起電力(電圧V2)に基づいて可変電源46が制御される。
第2内部空所40内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で第4拡散律速部60を通じて第3内部空所61内の測定電極44に到達することとなる。測定電極44の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N2+O2)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル41によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された電圧V2が一定(目標値)となるように可変電源46の電圧Vp2が制御される。測定電極44の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出されることとなる。
また、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、外側ポンプ電極23と、基準電極42とから電気化学的なセンサセル83が構成されており、このセンサセル83によって得られる起電力(電圧Vref)によりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
このような構成を有するガスセンサ100においては、主ポンプセル21と補助ポンプセル50とを作動させることによって酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスが測定用ポンプセル41に与えられる。したがって、被測定ガス中のNOxの濃度に略比例して、NOxの還元によって発生する酸素が測定用ポンプセル41より汲み出されることによって流れるポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を知ることができるようになっている。
また、素子本体101aには、検知電極56が配設されている。検知電極56は、被測定ガスと接触するように素子本体101aの外側に配設されている。より具体的には、検知電極56は、素子本体101aの上面に配設されている。また、検知電極56は、素子本体101aのうち内側ポンプ電極22よりも前方に配設されている。この検知電極56と、基準電極42と、両電極間の固体電解質層である第2固体電解質層6,スペーサ層5,第1固体電解質層4,及び第3基板層3とによって、混成電位セル55が構成されている。混成電位セル55では、検知電極56において被測定ガス中のアンモニア濃度に応じた混成電位(起電力EMF)が生じる。そして、検知電極56と基準電極42との間の起電力EMFの値が被測定ガス中のアンモニア濃度の検出に用いられる。検知電極56は、アンモニア濃度に応じた混成電位を生じ、アンモニア濃度に対する検出感度を有する材料を主成分として構成されている。検知電極56は、例えば金(Au)などの貴金属を主成分としてもよいし、導電性酸化物を主成分としてもよい。貴金属を主成分とする場合、検知電極56は、Au-Pt合金を主成分とすることが好ましい。ここで、主成分とは、含まれる成分全体のうち存在量(atm%,原子量比)が最も多い成分をいうものとする。本実施形態では、検知電極56は、Au-Pt合金とジルコニアとの多孔質サーメット電極とした。
さらに、センサ素子101は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、素子本体101aを加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部70を備えている。ヒータ部70は、ヒータコネクタ電極71と、ヒータ72と、スルーホール73と、ヒータ絶縁層74と、圧力放散孔75とを備えている。
ヒータコネクタ電極71は、第1基板層1の下面に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒータコネクタ電極71を外部電源と接続することによって、外部からヒータ部70へ給電することができるようになっている。
ヒータ72は、第2基板層2と第3基板層3とに上下から挟まれた態様にて形成される電気抵抗体である。ヒータ72は、スルーホール73を介してヒータコネクタ電極71と接続されており、該ヒータコネクタ電極71を通して外部より給電されることにより発熱し、素子本体101aを形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
また、ヒータ72は、第1内部空所20から第3内部空所61の全域に渡って埋設されており、素子本体101a全体を上記固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。
ヒータ絶縁層74は、ヒータ72の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2基板層2とヒータ72との間の電気的絶縁性、および、第3基板層3とヒータ72との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
圧力放散孔75は、第3基板層3及び大気導入層48を貫通し、基準ガス導入空間43に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層74内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
ここで、センサ素子101のうち主に酸化物ガス濃度(ここではNOx濃度)を検出するため用いられる部分(本実施形態では各セル21,41,50,80~83)を、酸化物ガス検出部(本実施形態ではNOx検出部)とも称する。また、センサ素子101のうち主にアンモニア濃度を検出するために用いられる部分(本実施形態では混成電位セル55)を、アンモニア検出部とも称する。NOx検出部及びアンモニア検出部は、いずれも、素子本体101aのうちの前側、すなわち素子本体101aの前後方向の中央よりも素子本体101aの前端に近い領域に、配設されている。したがって、NOx検出部及びアンモニア検出部に含まれる各電極22,23,42,44,51,56も、素子本体101aのうちの前側に配設されている。
混成電位セル55の検知電極56及び主ポンプセル21の内側ポンプ電極22は、ヒータ72により加熱されたときに、第1温度条件を満たすように配置されている。第1温度条件は、検知電極56の温度が550℃以上700℃以下の範囲内となり且つ内側ポンプ電極22の最低温度が725℃以上になるという条件である。この第1温度条件を満たすことで、混成電位セル55及び主ポンプセル21を共に適切に動作させることができる。第1温度条件は、言い換えると、ヒータ72により検知電極56の温度が550℃以上700℃以下の範囲内となるように加熱されたときに内側ポンプ電極22の最低温度が725℃以上になることを意味する。検知電極56の温度が550℃以上700℃以下の範囲内となるとは、検知電極56のいずれの部分の温度も550℃以上700℃以下の範囲から外れていないことを意味する。内側ポンプ電極22の最低温度が725℃以上になるとは、内側ポンプ電極22のいずれの部分の温度も725℃以上であることを意味する。
なお、ヒータ72により検知電極56の温度が550℃以上700℃以下の範囲内となるように加熱されたときに内側ポンプ電極22の最低温度が常に725℃以上に加熱される必要はなく、そのような加熱が可能であればよい。例えば、検知電極56の温度が550℃以上600℃未満の範囲内にあるときには内側ポンプ電極22の最低温度が725℃以上とならない場合であっても、検知電極56の温度が600℃以上700℃以下の範囲内にあるときに内側ポンプ電極22の最低温度が725℃以上となるのであれば、検知電極56及び内側ポンプ電極22は第1温度条件を満たすように配置されていることになる。
また、検知電極56及び内側ポンプ電極22は、ヒータ72により加熱されたときに、第1温度条件を満たすだけでなくさらに第2温度条件を満たすように配置されていることが好ましい。第2温度条件は、検知電極56の最低温度と内側ポンプ電極22の最高温度との差が400℃以下になるという条件である。第2温度条件を満たすことで、ヒータ72に加熱されたときの検知電極56と内側ポンプ電極22との温度差が小さいため、センサ素子101が熱衝撃に強くなり、熱衝撃によるセンサ素子101のクラックを抑制できる。検知電極56の最低温度と内側ポンプ電極22の最高温度との差は350℃以下であることがより好ましい。
ヒータ72と検知電極56と内側ポンプ電極22との互いの位置関係を調整することで、混成電位セル55と検知電極56とが第1温度条件を満たすようにすることができる。第2温度条件についても同様である。例えば、ヒータ72の発熱中心(最も高温になる部分であり、例えばヒータ72の前後左右の中心)の真上に内側ポンプ電極22を配置することで、内側ポンプ電極22の温度を検知電極56よりも高くしやすい。また、内側ポンプ電極22と検知電極56との距離を調整することで、内側ポンプ電極22と検知電極56との温度差を調整できる。例えば、図2に示す検知電極56と内側ポンプ電極22との前後方向の距離Aが1mm以上であることが好ましい。距離Aが1mm以上であれば、内側ポンプ電極22の最低温度を高くしても検知電極56の温度を低く維持しやすいため、第1温度条件を満たしやすい。また、距離Aは4mm以下であることが好ましい。距離Aが4mm以下であれば、検知電極56と内側ポンプ電極22との温度差が大きくなりすぎないため、第2温度条件を満たしやすい。距離Aは3mm以下としてもよい。
検知電極56は、図1に示すように、外側ポンプ電極23よりも前方に配設されている。また、本実施形態では、外側ポンプ電極23は、上面視で内側ポンプ電極22とほぼ同じ大きさ及び同じ位置になるように配設されている。そのため、検知電極56と外側ポンプ電極23との前後方向の距離は、上述した距離Aと同じ値となっている。
センサ素子101は、図1に示すように、緩衝層84を備えている。緩衝層84は、多孔質体であり、素子本体101aの表面に配設されて保護層85と素子本体101aとを接着する役割を果たす。緩衝層84は、第2固体電解質層6の上面の少なくとも一部を被覆する上側緩衝層84aと、第1基板層1の下面の少なくとも一部を被覆する下側緩衝層84bと、を備えている。上側緩衝層84aは、検知電極56及び外側ポンプ電極23も被覆している。上側緩衝層84a及び下側緩衝層84bの各々は、素子本体101aの前端から、NOx検出部及びアンモニア検出部に含まれる各電極22,23,42,44,51,56よりも後方までの領域に存在している。また、上側緩衝層84a及び下側緩衝層84bの各々は、被測定ガス流通部の後端及び保護層85の後端よりも後方まで存在している。緩衝層84は、例えばアルミナ、ジルコニア、スピネル、コージェライト,マグネシアなどの多孔質セラミックスからなるものである。緩衝層84の主成分は、保護層85の主成分と同じであることが好ましい。本実施形態では、緩衝層84はアルミナからなる多孔質セラミックスであるものとした。
保護層85は、多孔質体であり、素子本体101aの前端部の周辺、より具体的にはNOx検出部及びアンモニア検出部が存在する領域の周囲を被覆している。保護層85は、素子本体101aの前端面を全て被覆し、素子本体101aの上下左右の面の一部を被覆している。保護層85は緩衝層84よりも外側に配置されており、上側緩衝層84aの上面及び下側緩衝層84bの下面を被覆している。保護層85は、被測定ガス流通部の後端よりも後方まで存在している。保護層85は、例えば被測定ガス中の水分等が付着して素子本体101aにクラックが生じるのを抑制する役割を果たす。保護層85は、例えばアルミナ、ジルコニア、スピネル、コージェライト,マグネシアなどの多孔質セラミックスからなるものである。本実施形態では、保護層85はアルミナからなる多孔質セラミックスであるものとした。保護層85は多孔質体であるため、被測定ガスは保護層85の内部を流通してガス導入口10に到達可能である。また、保護層85及び緩衝層84は多孔質体であるため、被測定ガスは保護層85及び緩衝層84の内部を流通して外側ポンプ電極23及び検知電極56に到達可能である。なお、センサ素子101は緩衝層84及び保護層85を備えなくてもよい。
制御装置90は、図3に示すように、上述した可変電源24,46,52と、制御部91と、を備えている。
制御部91は、CPU92,図示しないRAM,及び記憶部94などを備えたマイクロプロセッサである。記憶部94は、例えばEEPROMなどの情報の書き換えが可能な不揮発性メモリであり、各種データを記憶する装置である。制御部91は、混成電位セル55にて検出される起電力EMF、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80にて検出される電圧V0、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81にて検出される電圧V1、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出される電圧V2、センサセル83にて検出される電圧Vref、主ポンプセル21にて検出されるポンプ電流Ip0、補助ポンプセル50にて検出されるポンプ電流Ip1及び測定用ポンプセル41にて検出されるポンプ電流Ip2を入力する。また、制御部91は、可変電源24,46,52が出力する電圧Vp0,Vp1,Vp2を制御し、これにより、主ポンプセル21,測定用ポンプセル41及び補助ポンプセル50を制御する。記憶部94には、後述する目標値V0*,V1*,V2*なども記憶されている。制御部91のCPU92は、これらの目標値V0*,V1*,V2*を参照して、各セル21,41,50の制御を行う。また、制御部91は、ヒータ72に通電する図示しないヒータ電源を制御して、ヒータ電源がヒータ72に供給する電力を制御する。
制御部91は、電圧V0が目標値(目標値V0*と称する)となるように(つまり第1内部空所20の酸素濃度が目標濃度となるように)可変電源24のポンプ電圧Vp0をフィードバック制御する。そのため、ポンプ電流Ip0は被測定ガスの酸素濃度に応じて変化する。そのため、制御部91は、ポンプ電流Ip0に基づいて被測定ガス中の酸素濃度を検出できる。例えば、ポンプ電流Ip0と被測定ガス中の酸素濃度との対応関係を表す関係式又はマップなどを予め実験により作成して記憶部94に記憶しておく。そして、制御部91はポンプ電流Ip0とこの対応関係とを用いて、被測定ガス中の酸素濃度を検出する。
また、制御部91は、電圧V1が一定値(目標値V1*と称する)となるように(つまり第2内部空所40の酸素濃度がNOxの測定に実質的に影響がない所定の低酸素濃度となるように)可変電源52の電圧Vp1をフィードバック制御する。これとともに、制御部91は、電圧Vp1によって流れるポンプ電流Ip1が一定値(目標値Ip1*と称する)となるように、ポンプ電流Ip1に基づいて電圧V0の目標値V0*を設定(フィードバック制御)する。これにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となる。また、第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧が、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御される。目標値V0*は、第1内部空所20の酸素濃度が0%よりは高く且つ低酸素濃度となるような値に設定される。
さらに、制御装置90は、電圧V2が一定値(目標値V2*と称する)となるように(つまり第3内部空所61内の酸素濃度が所定の低濃度になるように)可変電源46の電圧Vp2をフィードバック制御する。これにより、被測定ガス中のNOxが第3内部空所61で還元されることにより発生した酸素が実質的にゼロとなるように、第3内部空所61内から酸素が汲み出される。そして、制御装置90は、特定の酸化物ガス(ここではNOx)に由来して第3内部空所61で発生する酸素に応じた検出値としてのポンプ電流Ip2を取得し、このポンプ電流Ip2に基づいて被測定ガス中のNOx濃度を導出する。
また、制御部91は、混成電位セル55の起電力EMFを取得し、起電力EMFに基づいて被測定ガス中のアンモニア濃度を検出する。起電力EMFは被測定ガス中の酸素の影響も受けるため、制御部91は、起電力EMFと、ポンプ電流Ip0に基づいて導出した被測定ガス中の酸素濃度と、を用いて被測定ガス中のアンモニア濃度を検出することが好ましい。例えば、被測定ガス中の酸素濃度(又は酸素濃度を表す値としてのポンプ電流Ip0)と起電力EMFとアンモニア濃度との対応関係を表す関係式又はマップなどを予め実験により作成して記憶部94に記憶しておく。そして、制御部91は被測定ガス中の酸素濃度と起電力EMFとこの対応関係とを用いて、被測定ガス中のアンモニア濃度を検出する。これにより、制御部91は、酸素濃度による起電力EMFの誤差を補正したアンモニア濃度を導出できる。
ポンプ電流Ip2は、被測定ガス中のアンモニアの影響も受ける。これは、以下の理由による。被測定ガス中にアンモニアが含まれると、アンモニアが被測定ガス流通部内で酸素と反応してNOが生じ、そのNOに由来して第3内部空所61内で酸素が発生する。そのため、測定用ポンプセル41が汲み出す酸素には、このようなアンモニア由来の酸素が含まれてしまう。したがって、ポンプ電流Ip2の値は被測定ガス中のアンモニア濃度によっても変化する。そのため、制御部91は、ポンプ電流Ip2と、上述した起電力EMFに基づいて導出した被測定ガス中のアンモニア濃度と、を用いて被測定ガス中のNOx濃度を検出することが好ましい。例えば、ポンプ電流Ip2とアンモニア濃度とNOx濃度との対応関係を表す関係式又はマップなどを予め実験により作成して記憶部94に記憶しておく。そして、制御部91はポンプ電流Ip2と被測定ガス中のアンモニア濃度とこの対応関係とを用いて、被測定ガス中のNOx濃度を導出する。これにより、制御部91は、アンモニア濃度によるポンプ電流Ip2の誤差を補正したNOx濃度を導出できる。
こうして構成されたガスセンサ100の使用例を以下に説明する。制御部91のCPU92は、まず、ヒータ電源を制御してヒータ72に電力を供給して、ヒータ72の温度が目標温度(例えば900℃など)になるように制御する。CPU92は、例えばヒータ72の温度に換算可能な値(例えばヒータ72の抵抗値,又は電流値など)を取得し、その値に基づいてヒータ電源をフィードバック制御することで、ヒータ72の温度を制御する。ヒータ72の目標温度は、各セル21,41,50,55,80~83の固体電解質が活性化し、検知電極56及び内側ポンプ電極22が上述した第1温度条件の温度になるような値として、予め定めておく。本実施形態では、さらに検知電極56及び内側ポンプ電極22が上述した第2温度条件を満たすような値として、ヒータ72の目標温度が定められている。
ヒータ72の温度が目標温度(又は目標温度付近)に到達すると、CPU92は、上述した各ポンプセル21,41,50の制御や、上述した各センサセル80~83からの各電圧V0,V1,V2,Vrefの取得、及び混成電位セル55からの起電力EMFの取得を開始する。この状態で、被測定ガスが検知電極56に到達すると、混成電位セル55は起電力EMFを発生させる。また、被測定ガスがガス導入口10から導入されると、被測定ガスは、第1拡散律速部11,緩衝空間12及び第2拡散律速部13を通過し、第1内部空所20に到達する。そして、第1内部空所20及び第2内部空所40において被測定ガスの酸素濃度が主ポンプセル21及び補助ポンプセル50によって調整され、調整後の被測定ガスが第3内部空所61に到達する。そして、CPU92は、上述したようにポンプ電流Ip0,起電力EMF,ポンプ電流Ip2,及び記憶部94に記憶された各種の対応関係に基づいて、被測定ガス中のアンモニア濃度及びNOx濃度を導出する。CPU92は、導出したアンモニア濃度及びNOx濃度を例えばエンジンECUに送信する。なお、CPU92は、アンモニア濃度についてはNOx濃度の算出時の補正に用いるのみとして、最終的にエンジンECUに送信するのはNOx濃度のみであってもよい。
このように制御装置90がセンサ素子101を用いてアンモニア濃度及びNOx濃度を検出するにあたり、本実施形態のセンサ素子101では、主ポンプセル21の内側ポンプ電極22が素子本体101aのうちの前側に配設されており、混成電位セル55の検知電極56は内側ポンプ電極22よりもさらに前方に配設されている。さらに、検知電極56及び内側ポンプ電極22は、ヒータ72により加熱されたときに、検知電極56の温度が550℃以上700℃以下の範囲内となり且つ内側ポンプ電極22の最低温度が725℃以上になるという第1温度条件を満たすように配置されている。ここで、検知電極56の温度が550℃以上では、検知電極56の表面に吸着したアンモニアが検知電極56の触媒作用によって燃焼するが、検知電極56の温度が550℃未満では、アンモニアが燃焼しにくくなり検知電極56の表面にアンモニアが残ってしまうことでアンモニア濃度の変化に対する混成電位(起電力EMF)の応答性が低下する場合がある。これに対し本実施形態では、検知電極56の温度が550℃以上となるため、そのような応答性の低下を抑制できる。また、検知電極56の温度が700℃以下であることで、検知電極56周辺のアンモニアが燃焼してしまうことを抑制できるため、混成電位セル55を用いたアンモニア濃度の検出精度が高まる。さらに、内側ポンプ電極22の最低温度が725℃以上であることで、主ポンプセル21を構成する固体電解質が十分活性化して、主ポンプセル21の酸素のポンプ能力が十分高くなるため、第1内部空所20の酸素濃度を適切に調整できる。なお、補助ポンプ電極51及び測定用ポンプセル41も酸素のポンピングを行うが、第1内部空所20は第2内部空所40及び第3内部空所61の上流に位置しており、主ポンプセル21が汲み出す酸素の量は補助ポンプ電極51及び測定用ポンプセル41が汲み出す酸素の量よりもはるかに多い。そのため、主ポンプセル21,補助ポンプ電極51及び測定用ポンプセル41の中でも特に主ポンプセル21についてはポンプ能力が十分高くなるようにする必要がある。本実施形態のセンサ素子101では、内側ポンプ電極22の最低温度が725℃以上となるようにすることで、主ポンプセル21のポンプ能力を十分高くできる。
以上のように、本実施形態のセンサ素子101では、検知電極56と内側ポンプ電極22とが第1温度条件を満たすように配置されていることで、混成電位セル55と主ポンプセル21とを共に適切に動作させることができる。したがって、被測定ガス中のNOx濃度及びアンモニア濃度を精度良く検出することができる。なお、上述したようにアンモニア濃度をNOx濃度の導出に用いる場合は、アンモニア濃度の検出精度が向上することによっても、NOx濃度の検出精度が向上する。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の素子本体101aが本発明の素子本体に相当し、第1内部空所20が酸素濃度調整室に相当し、内側ポンプ電極22が調整用ポンプ電極に相当し、主ポンプセル21が調整用ポンプセルに相当し、第3内部空所61が測定室に相当し、測定電極44が測定電極に相当し、検知電極56が検知電極に相当し、混成電位セル55が混成電位セルに相当し、ヒータ72がヒータに相当する。
以上説明した本実施形態のガスセンサ100によれば、主ポンプセル21の内側ポンプ電極22が素子本体101aのうちの前側に配設されており、混成電位セル55の検知電極56は内側ポンプ電極22よりも前方に配設されている。そして、検知電極56及び内側ポンプ電極22は、ヒータ72により加熱されたときに第1温度条件を満たすように配置されている。したがって、被測定ガス中のNOx濃度及びアンモニア濃度を精度良く検出することができる。
また、検知電極56及び内側ポンプ電極22は、ヒータ72により加熱されたときに、第1温度条件を満たし且つ検知電極56の最低温度と内側ポンプ電極22の最高温度との差が400℃以下になるという第2温度条件を満たすように配置されている。第2温度条件を満たしていればヒータ72に加熱されたときの検知電極56と内側ポンプ電極22との温度差が小さいため、センサ素子101が熱衝撃に強くなり、熱衝撃によるセンサ素子101のクラックを抑制できる。センサ素子101に与えられる熱衝撃は、例えば被測定ガス中の水分の付着に起因して生じる。
さらに、検知電極56と内側ポンプ電極22との前後方向の距離Aが4mm以下であることで、検知電極56と内側ポンプ電極22との温度差が大きくなりすぎないため、第2温度条件を満たしやすい。さらにまた、距離Aが1mm以上であることで、内側ポンプ電極22の最低温度を高くしても検知電極56の温度を低く維持しやすいため、第1温度条件を満たしやすい。
そして、検知電極56が内側ポンプ電極22よりも前方且つ被測定ガスと接触するように素子本体101aの外側に設けられている。すなわち、検知電極56が素子本体101aの前端付近且つ素子本体101aの外側に設けられている。これにより、例えば検知電極56が被測定ガス流通部に配設されている場合と比較して、被測定ガスが検知電極56に到達しやすくなり、アンモニア濃度の検出の応答性が向上する。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、検知電極56が素子本体101aの外側に配設されていたが、素子本体101aの内部に配設されていてもよい。例えば、検知電極56が被測定ガス流通部のうちの第1内部空所20の上流側に設けられていてもよい。図4は、変形例の検知電極156の配置を示す拡大断面図である。検知電極156は第2拡散律速部13の上流の緩衝空間12に設けられている。また、検知電極156は内側ポンプ電極22及び補助ポンプ電極51と同様に、緩衝空間12においてトンネル形態の構造をしている。具体的には、検知電極156は、緩衝空間12の天井面である第2固体電解質層6の下面に形成された天井電極部156aと、緩衝空間12の底面である第1固体電解質層4の上面に形成された底部電極部156bと、天井電極部156aと底部電極部156bとを接続するように形成された側部電極部(図示省略)と、を備えている。このように検知電極156を配置した場合でも、検知電極156と基準電極42とその間の固体電解質層である第2固体電解質層6,スペーサ層5,第1固体電解質層4,及び第3基板層3とによって、混成電位セル55が構成される。そして、検知電極156は、アンモニア濃度に応じた混成電位を生じる。そのため、上述した実施形態と同様に、混成電位セル55の起電力EMFに基づいて被測定ガス中のアンモニア濃度を検出できる。また、図4の例では、上述した実施形態と異なり素子本体101aが第1拡散律速部11を備えず、上述した実施形態よりもガス導入口10の開口面積が大きくなっている。これにより、検知電極156に被測定ガスが到達しやすくなるため、検知電極156によるアンモニア濃度の検出の応答性が向上する。したがって、図4のように第1拡散律速部11を省略することが好ましい。図4には、検知電極156と内側ポンプ電極22との距離Aについても図示した。なお、検知電極156をトンネル形態の構造とせず、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との一方に配設してもよい。また、第1拡散律速部11を省略しなくてもよい。
上述した実施形態では、素子本体101aには基準電極42が1つ配設され、基準電極42がNOx検出部の基準電極とアンモニア検出部の基準電極とを兼ねていたが、これに限られない。例えば、基準電極42はNOx検出部用の基準電極とし、アンモニア検出部の混成電位セル55が備える基準電極を基準電極42とは別に設けてもよい。
上述した実施形態では、外側ポンプ電極23は、主ポンプセル21の一部でありセンサ素子101の外側の被測定ガスに接触する部分に配設された外側主ポンプ電極と、補助ポンプセル50の一部でありセンサ素子101の外側の被測定ガスに接触する部分に配設された外側補助ポンプ電極と、測定用ポンプセル41の一部でありセンサ素子101の外側の被測定ガスに接触する部分に配設された外側測定電極と、を兼ねていたが、これに限られない。外側主ポンプ電極,外側補助ポンプ電極,及び外側測定電極のうちのいずれか1以上を、外側ポンプ電極23とは別にセンサ素子101の外側に設けてもよい。
上述した実施形態では、ガスセンサ100のセンサ素子101は第1内部空所20,第2内部空所40,第3内部空所61を備えるものとしたが、これに限られない。例えば、図5のセンサ素子201のように、第3内部空所61を備えないものとしてもよい。図5に示した変形例のセンサ素子201では、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10と、第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。また、測定電極44は、第2内部空所40内の第1固体電解質層4の上面に配設されている。測定電極44は、第4拡散律速部45によって被覆されてなる。第4拡散律速部45は、アルミナ(Al23)などのセラミックス多孔体にて構成される膜である。第4拡散律速部45は、上述した実施形態の第4拡散律速部60と同様に、測定電極44に流入するNOxの量を制限する役割を担う。また、第4拡散律速部45は、測定電極44の保護膜としても機能する。補助ポンプ電極51の天井電極部51aは、測定電極44の直上まで形成されている。このような構成のセンサ素子201であっても、上述した実施形態と同様に例えばポンプ電流Ip2に基づいてNOx濃度を検出できる。この場合、測定電極44の周囲が測定室として機能することになる。
上述した実施形態では、センサ素子101の素子本体101aは複数の固体電解質層(層1~6)を有する積層体としたが、これに限られない。素子本体101aは、酸素イオン伝導性の固体電解質層を少なくとも1つ含み、且つ被測定ガス流通部が内部に設けられていればよい。例えば、図1において第2固体電解質層6以外の層1~5は固体電解質以外の材質からなる構造層(例えばアルミナからなる層)としてもよい。この場合、センサ素子101が有する各電極は第2固体電解質層6に配設されるようにすればよい。例えば、図1の測定電極44は第2固体電解質層6の下面に配設すればよい。また、基準ガス導入空間43を第1固体電解質層4の代わりにスペーサ層5に設け、大気導入層48を第1固体電解質層4と第3基板層3との間に設ける代わりに第2固体電解質層6とスペーサ層5との間に設け、基準電極42を第3内部空所61よりも後方且つ第2固体電解質層6の下面に設ければよい。
上述した実施形態では、ガスセンサ100は特定の酸化物ガス濃度としてNOx濃度を検出したが、これに限らず他の酸化物濃度を特定の酸化物ガス濃度としてもよい。特定の酸化物ガス濃度を測定する場合には、上述した実施形態と同様に特定の酸化物ガスそのものを第3内部空所61で還元したときに酸素が発生するから、制御部91はこの酸素に応じた検出値を取得して特定の酸化物ガス濃度を検出できる。この場合も、アンモニア濃度に基づく酸化物ガス濃度の補正は上述した実施形態と同様に行うことができる。
上述した実施形態では、CPU92は、測定用ポンプ制御処理として、電圧V2が目標値V2*となるように可変電源46の電圧Vp2をフィードバック制御する処理を行い、このときの検出値(ポンプ電流Ip2)に基づいて被測定ガス中のNOx濃度を検出したが、これに限られない。例えば、CPU92は、測定用ポンプ制御処理として、ポンプ電流Ip2が一定の目標値Ip2*となるように測定用ポンプセル41を制御(例えば電圧Vp2を制御)し、このときの検出値(電圧V2)を用いてNOx濃度を検出してもよい。ポンプ電流Ip2が目標値Ip2*となるように測定用ポンプセル41が制御されることで、ほぼ一定の流量で第3内部空所61から酸素が汲み出されることになる。そのため、被測定ガス中のNOxが第3内部空所61で還元されることにより発生する酸素の多寡に応じて第3内部空所61の酸素濃度が変化し、これにより電圧V2が変化する。したがって、電圧V2が被測定ガス中のNOx濃度に応じた値になる。そのため、この電圧V2に基づいてNOx濃度を算出できる。例えば予め記憶部94に電圧V2とNOx濃度との対応関係を記憶しておけばよい。
上述した実施形態では、制御部91は、ポンプ電流Ip1が目標値Ip1*となるように、ポンプ電流Ip1に基づいて電圧V0の目標値V0*を設定(フィードバック制御)し、電圧V0が目標値V0*となるようにポンプ電圧Vp0をフィードバック制御したが、他の処理を行ってもよい。例えば、制御部91は、ポンプ電流Ip1が目標値Ip1*となるように、ポンプ電流Ip1に基づいてポンプ電圧Vp0をフィードバック制御してもよい。すなわち、制御部91は、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80からの電圧V0の取得や目標値V0*の設定を省略して、ポンプ電流Ip1に基づいて直接的にポンプ電圧Vp0を制御(ひいてはポンプ電流Ip0を制御)してもよい。
上述した実施形態では、制御部91は、電圧V2が目標値V2*となるように可変電源46の電圧Vp2をフィードバック制御する処理を行い、このときのポンプ電流Ip2を検出値として取得し、この検出値に基づいて被測定ガス中のNOx濃度を検出したが、これに限られない。例えば、制御部91は、ポンプ電流Ip2が一定の目標値Ip2*となるように測定用ポンプセル41を制御(例えば電圧Vp2を制御)し、このときの電圧V2を検出値として取得し、この検出値を用いてNOx濃度を検出してもよい。ポンプ電流Ip2が目標値Ip2*となるように測定用ポンプセル41が制御されることで、ほぼ一定の流量で第3内部空所61から酸素が汲み出されることになる。そのため、被測定ガス中のNOxが第3内部空所61で還元されることにより発生する酸素の多寡に応じて第3内部空所61の酸素濃度が変化し、これにより電圧V2が変化する。したがって、電圧V2が被測定ガス中のNOx濃度に応じた値になる。そのため、この電圧V2に基づいてNOx濃度を算出できる。この場合も、アンモニア濃度に基づくNOx濃度の補正は上述した実施形態と同様に行うことができる。例えば、電圧V2とアンモニア濃度とNOx濃度との対応関係を表す関係式又はマップなどを予め実験により作成して記憶部94に記憶しておけばよい。
以下には、ガスセンサの具体的な例を実施例として説明する。実験例4~7,9~14が本発明の実施例に相当し、実験例1~3,8が比較例に相当する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[調整用ポンプ電極のポンプ能力の評価]
図1~3に示したガスセンサ100のセンサ素子101について、調整用ポンプ電極(ここでは内側ポンプ電極22)の温度と内側ポンプ電極22の酸素のポンプ能力との関係を調べた。具体的には、まず、ガスセンサ100を配管に取り付け、制御部91がヒータ72の温度を制御してヒータ72が所定の目標温度に到達した状態、且つ、制御部91が上述した各ポンプセル21,41,50の制御や、上述した各センサセル80~83からの各電圧V0,V1,V2,Vrefの取得、及び混成電位セル55からの起電力EMFの取得を行っている状態とした。この状態で、ベースガスが窒素でありNOx濃度が500ppmであるモデルガスを被測定ガスとして、被測定ガスを配管に流し、時間が経過して値が安定した後のポンプ電流Ip2の値を調べた。このようなポンプ電流Ip2の値の取得を、内側ポンプ電極22の温度を変えて行い、実験例1~7とした。内側ポンプ電極22の温度は、ヒータ72の目標温度を変更することで調整した。実験例1~7の各々について、500ppmのNOx濃度に対応する正しいポンプ電流Ip2の値を基準(100%)として、取得されたポンプ電流Ip2の値を百分率で表した値を、NOx濃度検出の感度(%)の値として算出した。そして、NOx濃度検出の感度が95%を超えていた場合に内側ポンプ電極22のポンプ能力を「A(優)」と判定し、95%以下であった場合に内側ポンプ電極22のポンプ能力を「F(不可)」と判定した。ここで、内側ポンプ電極22の酸素ポンプ能力が低いと、主ポンプセル21による第1内部空所20の酸素の汲み出し量が不足して電圧V0が目標値V0*になかなか到達しなくなる。その結果、制御部91はポンプ電圧Vp0を高くするように可変電源24を制御することになる。そして、ポンプ電圧Vp0が高すぎると第1内部空所20内で被測定ガス中のNOxが分解されやすくなるため、ポンプ電流Ip2の値が実際のNOx濃度に対応する正しい値よりも小さくなる。すなわちNOx濃度検出の感度が低下する。そのため、NOx濃度検出の感度によって内側ポンプ電極22の酸素ポンプ能力を評価することができる。表1に、実験例1~7の各々における内側ポンプ電極22の最低温度,NOx濃度検出の感度,及び内側ポンプ電極22のポンプ能力の評価結果と、をまとめて示す。
Figure 2022153758000002
表1に示すように、内側ポンプ電極22の最低温度が725℃以上である実験例4~7では、NOx濃度検出の感度がいずれも100%であり、内側ポンプ電極22のポンプ能力の評価は「A(優)」であった。これに対し、内側ポンプ電極22の最低温度が725℃未満である実験例1~3では、NOx濃度検出の感度が95%以下に低下しており、ポンプ能力の評価は「F(不可)」であった。また、内側ポンプ電極22の最低温度が低いほどNOx濃度検出の感度が低くなる傾向が確認された。これらの結果から、内側ポンプ電極22の最低温度が725℃以上であれば、内側ポンプ電極22のポンプ能力が十分高くなることが確認された。
[検知電極によるアンモニア濃度検出能力の評価]
図1~3に示したガスセンサ100のセンサ素子101について、距離Aを下記の表2に示すように種々変更したものを、それぞれ実験例8~14とした。この実験例8~14の各々について、実験例4と同じように内側ポンプ電極22の最低温度が725℃となるように制御部91がヒータ72を制御した状態、且つ、制御部91が上述した各ポンプセル等の制御を行っている状態とした。実験例8~14の各々について、この状態における内側ポンプ電極22の最高温度と、検知電極56の最低温度及び最高温度と、を調べた。また、この状態で、ベースガスが窒素でありアンモニア濃度が0ppmであるモデルガスを被測定ガスとして、被測定ガスを配管に流し、混成電位セル55の起電力EMFの値が安定するまで待った。そして、配管内に流す被測定ガスのアンモニア濃度を0ppmから500ppmに変化させた場合における、起電力EMFの値の時間変化を調べた。アンモニア濃度を変化させる直前の起電力EMFの値を0%、アンモニア濃度の変化後に起電力EMFが変化して安定したときの値を100%として、起電力EMFの値が10%を越えたときから90%を越えるまでの経過時間をアンモニア濃度検出の応答時間[sec]とした。この応答時間が短いほどセンサ素子101のアンモニア濃度検出の応答性が高いことを意味する。そして、アンモニア濃度検出の応答時間が0.3sec以下であった場合にアンモニア濃度検出の応答性を「A(優)」と判定し、0.3secを超えていた場合にアンモニア濃度検出の応答性を「F(不可)」と判定した。また、アンモニア濃度の変化後に起電力EMFが変化して安定したときの値(上記の100%に対応するEMFの値)を、アンモニア濃度検出の感度を表す値とした。このアンモニア濃度検出の感度を表す値(起電力EMF)が小さいほど、混成電位セル55のアンモニア濃度の検出精度が低いことを意味する。そして、起電力EMFが170mV以上であった場合に混成電位セル55を用いたアンモニア濃度の検出精度を「A(優)」と判定し、起電力EMFが170mV未満であった場合にアンモニア濃度の検出精度を「F(不可)」と判定した。表2に、実験例8~14の各々における、距離Aと、内側ポンプ電極22の最低温度及び最高温度と、検知電極56の最低温度及び最高温度と、検知電極56の最低温度と内側ポンプ電極22の最高温度との差と、アンモニア濃度検出の感度(起電力EMF)と、検出精度の評価と、アンモニア濃度検出の応答時間と、応答性の評価と、をまとめて示す。
Figure 2022153758000003
表2に示すように、実験例8~14の結果から、内側ポンプ電極22の最低温度が同じ値(ここでは725℃)のときに、距離Aを調整することで検知電極56の温度を調整できることが確認された。例えば距離Aが0mmである実験例8は、検知電極56の最高温度が700℃を超えてしまっていた。一方で実験例8の内側ポンプ電極22の最低温度は725℃であるため、実験例8のセンサ素子101についてヒータ72の目標温度を下げると内側ポンプ電極22の最低温度が725℃未満になってしまう。そのため、実験例8のセンサ素子101は、第1温度条件を満たすように加熱することはできなかった。距離Aが1mm以上である実験例9,10は、表2に示すように内側ポンプ電極22及び検知電極56について第1温度条件を満たすような加熱が可能であった。実験例11~14は、表2では検知電極56の最低温度が550℃未満になっており第1温度条件を満たさなかった。ただし、実験例11~14のセンサ素子101は、表2の場合よりもヒータ72の目標温度を高くして内側ポンプ電極22と検知電極56の温度を共に高くすることで、第1温度条件を満たすような加熱が可能であった。そのため、実験例9,10だけでなく実験例11~14のセンサ素子101も本発明の実施例に相当する。これらの実験例8~14の結果から、距離Aが1mm以上であれば、内側ポンプ電極22の最低温度を725℃以上にしつつ検知電極56の温度を550℃以上700℃以下の範囲内にしやすいため、第1温度条件を満たしやすいと考えられる。
また、距離Aが4mmを超えている実験例13,14では、検知電極56の最低温度と内側ポンプ電極22の最高温度との差が400℃を超えており、第2温度条件を満たさなかった。上述したように実験例13,14のセンサ素子101についてヒータ72の目標温度を高くして第1温度条件を満たすようにした場合でも、温度差は400℃を超えたままであった。そのため、実験例13,14のセンサ素子101は、第1温度条件を満たすことはできるが第2温度条件を満たすことはできなかった。これに対し、距離Aが4mm以下である実験例8~12では、検知電極56の最低温度と内側ポンプ電極22の最高温度との差が400℃以下であった。そのため、実験例9~12は、第1温度条件と第2温度条件とを共に満たすことができた。これらの実験例8~14の結果から、距離Aが4mm以下であれば、第2温度条件を満たしやすいと考えられる。
検知電極56の最高温度が700℃以下である実験例9~14では、アンモニア濃度検出の感度を表す混成電位セル55の起電力EMFがいずれも180mVであり、アンモニア濃度の検出精度の評価は「A(優)」であった。これに対し、検知電極56の最高温度が700℃を超えている実験例8では、起電力EMFが160mVに低下しており、アンモニア濃度の検出精度の評価は「F(不可)」であった。これらの結果から、検知電極56の最高温度が700℃以下であれば、混成電位セル55を用いたアンモニア濃度の検出精度が高くなることが確認された。
また、検知電極56の最低温度が高いほど、アンモニア濃度検出の応答時間が短くなる傾向が確認された。具体的には、検知電極56の最低温度が550℃以上である実験例8~10では、アンモニア濃度検出の応答時間がいずれも0.3sec以下であり、応答性の評価は「A(優)」であった。これに対し、検知電極56の最低温度が550℃未満である実験例11~14は、アンモニア濃度検出の応答時間がいずれも0.6sec以上であり、応答性の評価は「F(不可)」であった。これらの結果から、検知電極56の最低温度が550℃以上であれば、混成電位セル55を用いたアンモニア濃度検出の応答性の低下を抑制できることが確認された。
なお、実験例8~14は、表1の実験例4~7と同じく内側ポンプ電極22の最低温度が725℃以上であるため、内側ポンプ電極22のポンプ能力は十分高くなっていると考えられる。
1 第1基板層、2 第2基板層、3 第3基板層、4 第1固体電解質層、5 スペーサ層、6 第2固体電解質層、10 ガス導入口、11 第1拡散律速部、12 緩衝空間、13 第2拡散律速部、20 第1内部空所、21 主ポンプセル、22 内側ポンプ電極、22a 天井電極部、22b 底部電極部、23 外側ポンプ電極、24 可変電源、30 第3拡散律速部、40 第2内部空所、41 測定用ポンプセル、42 基準電極、43 基準ガス導入空間、44 測定電極、45 第4拡散律速部、46 可変電源、48 大気導入層、50 補助ポンプセル、51 補助ポンプ電極、51a 天井電極部、51b 底部電極部、52 可変電源、55 混成電位セル、56 検知電極、60 第4拡散律速部、61 第3内部空所、70 ヒータ部、71 ヒータコネクタ電極、72 ヒータ、73 スルーホール、74 ヒータ絶縁層、75 圧力放散孔、80 主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル、81 補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル、82 測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル、83 センサセル、84 緩衝層、84a 上側緩衝層、84b 下側緩衝層、85 保護層、90 制御装置、91 制御部、92 CPU、94 記憶部、100 ガスセンサ、101,201 センサ素子、101a 素子本体、156 検知電極、156a 天井電極部、156b 底部電極部。

Claims (7)

  1. 酸素イオン伝導性の固体電解質層を有し、被測定ガスを導入して流通させる被測定ガス流通部が内部に設けられ、長手方向を有する素子本体と、
    前記被測定ガス流通部のうちの酸素濃度調整室に配設された調整用ポンプ電極を有し、該酸素濃度調整室の酸素濃度を調整する調整用ポンプセルと、
    前記被測定ガス流通部のうちの前記酸素濃度調整室の下流側に設けられた測定室の内周面上に配設され、前記被測定ガス中の特定の酸化物ガス濃度を検出するための測定電極と、
    前記素子本体に配設された検知電極を有し、前記被測定ガス中のアンモニア濃度に応じた起電力を発生させる混成電位セルと、
    前記素子本体を加熱するヒータと、
    を備え、
    前記素子本体の前記長手方向を前後方向として、前記調整用ポンプ電極は、前記素子本体のうちの前側に配設されており、
    前記検知電極は、前記素子本体のうち前記調整用ポンプ電極よりも前方に配設されており、
    前記検知電極及び前記調整用ポンプ電極は、前記ヒータにより加熱されたときに、前記検知電極の温度が550℃以上700℃以下の範囲内となり且つ前記調整用ポンプ電極の最低温度が725℃以上になるという第1温度条件を満たすように、配置されている、
    センサ素子。
  2. 前記検知電極及び前記調整用ポンプ電極は、前記ヒータにより加熱されたときに、前記第1温度条件を満たし且つ前記検知電極の最低温度と前記調整用ポンプ電極の最高温度との差が400℃以下になるという第2温度条件を満たすように、配置されている、
    請求項1に記載のセンサ素子。
  3. 前記検知電極と前記調整用ポンプ電極との前記前後方向の距離Aが4mm以下である、
    請求項2に記載のセンサ素子。
  4. 前記検知電極と前記調整用ポンプ電極との前記前後方向の距離Aが1mm以上である、
    請求項1~3のいずれか1項に記載のセンサ素子。
  5. 前記検知電極は、前記被測定ガスと接触するように前記素子本体の外側に配設されている、
    請求項1~4のいずれか1項に記載のセンサ素子。
  6. 前記検知電極は、前記被測定ガス流通部のうちの前記酸素濃度調整室の上流側に設けられている、
    請求項1~4のいずれか1項に記載のセンサ素子。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載のセンサ素子を備えたガスセンサ。
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