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JP2020203838A - エステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物、表面処理剤及び物品 - Google Patents

エステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物、表面処理剤及び物品 Download PDF

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JP2020203838A
JP2020203838A JP2019111068A JP2019111068A JP2020203838A JP 2020203838 A JP2020203838 A JP 2020203838A JP 2019111068 A JP2019111068 A JP 2019111068A JP 2019111068 A JP2019111068 A JP 2019111068A JP 2020203838 A JP2020203838 A JP 2020203838A
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Abstract

【課題】親油性、耐熱性に優れた硬化被膜を形成し得るヒンダートエステル基を含有する(加水分解性)オルガノシラン化合物、該化合物及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤、並びに該表面処理剤で表面処理された物品等を提供する。【解決手段】下式(1)で表されるオルガノシラン化合物。(式中、Wは独立に炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基であり、Yは独立に2価の有機基であり、Xは独立に水酸基又は加水分解性基であり、Rは独立に炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、qは1〜4の整数であり、rは0〜3の整数であり、q+rは1〜4の整数であり、nは1〜3の整数である。)【選択図】なし

Description

本発明は、分子中に水酸基又は加水分解性基を有するシリル基と、エステル基、特には、分子中に存在する1〜4個の全てのエステル基について、該エステル基のアルコール側のβ炭素に水素原子を有さないエステル基(即ち、ヒンダートエステル基)とを含有するエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物等に関し、詳細には、親油性、耐熱性に優れた被膜を形成するヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物、該エステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤、並びに該表面処理剤で表面処理された(即ち、該表面処理剤の硬化被膜を表面に有する)物品等に関する。
近年、携帯電話をはじめ、ディスプレイのタッチパネル化が加速している。これらは指で触れて操作をするため、指紋等の汚れが付着し見苦しいことが問題となっている。そこで、外観や視認性を良くするためにディスプレイの表面に指紋を付きにくくする技術や、指紋を目立たなくする技術の要求が年々高まってきており、これらの要求に応えることのできる材料の開発が望まれている。
一般に、ガラスや布などの基材の表面改質剤として、シランカップリング剤が良く知られており、各種基材表面のコーティング剤として幅広く利用されている。シランカップリング剤は、1分子中に有機官能基と反応性シリル基(一般にはアルコキシシリル基等の加水分解性シリル基)を有し、この加水分解性シリル基が、空気中の水分などによって自己縮合反応を起こして被膜を形成する。該被膜は、加水分解性シリル基がガラスや金属などの表面と化学的・物理的に結合することにより耐久性を有する強固な被膜となる。
そこで、フルオロポリエーテル基含有化合物に加水分解性シリル基を導入したフルオロポリエーテル基含有ポリマーを用いることによって、基材表面に、撥水撥油性、防汚性等を有する被膜を形成しうる組成物が数多く開示されている(特許文献1〜6:特表2008−534696号公報、特表2008−537557号公報、特開2012−072272号公報、特開2012−157856号公報、特開2013−136833号公報、特開2015−199906号公報)。
しかし、従来のフルオロポリエーテル基含有ポリマーを用いて作製した被膜層は、その高い撥水撥油性から汚れ拭取り性に優れるものの、指紋に含有する皮脂が表面に弾かれることで微小な油滴を形成し、光が散乱するために指紋が目立ち易いという問題点があった。
また、脂肪酸エステルに加水分解性シリル基を導入したシラン化合物を用いることによって、基材表面に密着し、且つ基材表面に、親油性を有する被膜を形成しうる組成物も開示されている(特許文献7:特開2001−353808号公報)。
しかし、特許文献7に記載のシラン化合物は、指紋が見えづらくなるまでに数日の時間を要するため、実用上満足できる指紋低視認性を有するものではない。
特表2008−534696号公報 特表2008−537557号公報 特開2012−072272号公報 特開2012−157856号公報 特開2013−136833号公報 特開2015−199906号公報 特開2001−353808号公報 特願2017−206986号
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、親油性、耐熱性に優れた硬化被膜を形成し得るヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物、該ヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤、並びに該表面処理剤で表面処理された物品等を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を解決すべく、親油性化合物に加水分解性シリル基を導入したシラン化合物を用いることによって、基材表面に密着し、且つ基材表面に、親油性を有する被膜を形成しうる表面処理剤を提案している(特願2017−206986号:特許文献8)。しかし、このシラン化合物は、皮脂の屈折率約1.5に近い屈折率を有する硬化被膜を形成するために指紋の低視認性を十分発揮できるが、エステル基のアルコール側のβ炭素−水素結合が熱により分解され易いために、高温暴露により指紋低視認性が低下してしまうことがあった。
そこで、本発明者らは、更なる検討を行った結果、エステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物において、後述する一般式(1)で表されるように、分子中に存在する1〜4個の全てのエステル基について、該エステル基のアルコール側のβ炭素に水素原子を有さない(即ち、エステル基のアルコール側のβ炭素が全てC−C炭素結合を有する4級炭素である)エステル基(即ち、ヒンダートエステル基)と、水酸基もしくは加水分解性基を有するシリル基とを含有するヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物を用いることにより、該ヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤が、親油性、耐熱性、基材密着性に優れた硬化被膜を形成することができることを見出し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、下記のエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物、表面処理剤及び物品等を提供する。
〔1〕
下記一般式(1)で表されるエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物。
Figure 2020203838
(式中、Wは独立に炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基であり、Yは独立に2価の有機基であり、Xは独立に水酸基又は加水分解性基であり、Rは独立に炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、qは1〜4の整数であり、rは0〜3の整数であり、q+rは1〜4の整数であり、nは1〜3の整数である。)
〔2〕
前記式(1)において、Yが−O−、−S−、−NR1−、−C(=O)−、−C(=O)NR1−(R1は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基である)、シルアルキレン基、シルアリーレン基、ケイ素原子数2〜10個の直鎖状、分岐状又は環状の2価のオルガノポリシロキサン残基から選ばれる2価の基を含んでいてもよく、また炭素数6〜20のアリーレン基を含んでいてもよい炭素数2〜30のアルキレン基である〔1〕に記載のエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物。
〔3〕
下記式(2)で表されるエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物。
Figure 2020203838
(式中、Wは独立に炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基であり、Qは単結合、又はシルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2〜10個の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価のオルガノポリシロキサン残基から選ばれる2価の基であり、Xは独立に水酸基又は加水分解性基であり、mはそれぞれ独立に1〜20の整数で、Qに連結する2つのmの合計は2〜30であり、qは1〜4の整数である。)
〔4〕
前記式(1)又は(2)において、Xがそれぞれ独立に、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアルコキシ置換アルコキシ基、炭素数1〜10のアシロキシ基、炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、ハロゲン原子、オキシム基、イソシアネート基、及びシアネート基からなる群より選ばれるものである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物。
〔5〕
〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物の少なくとも1種類及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含有する表面処理剤。
〔6〕
更に、溶剤を含むものである〔5〕に記載の表面処理剤。
〔7〕
更に、加水分解縮合触媒を含むものである〔5〕又は〔6〕に記載の表面処理剤。
〔8〕
25℃、相対湿度40%におけるオレイン酸接触角が30°以下の硬化被膜を与えるものである〔5〕〜〔7〕のいずれかに記載の表面処理剤。
〔9〕
硬化した被膜に1kg荷重で皮脂を付着させた際のヘーズが10以下となるものである〔5〕〜〔8〕のいずれかに記載の表面処理剤。
〔10〕
〔5〕〜〔9〕のいずれかに記載の表面処理剤の硬化被膜を表面に有する物品。
本発明のヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物は、分子内に親油性に優れるエステル基を有することで皮脂が付着した際に皮脂を基材上に濡れ広げることができる。また、該オルガノシラン化合物は、ヒンダートエステル基を含有することで、高温暴露によっても化学結合が分解され難い。更に、該オルガノシラン化合物は、シラノール基あるいは加水分解性シリル基を複数含有することで、ガラスや金属などの表面と強く結合する。よって、該オルガノシラン化合物は、親油性、耐熱性、基材密着性に優れた硬化被膜を形成し得る。
本発明の分子内にヒンダートエステル基を含有する(加水分解性)オルガノシラン化合物は、下記一般式(1)で表されるものであり、混合物でもよい。
Figure 2020203838
(式中、Wは独立に炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基であり、Yは独立に2価の有機基であり、Xは独立に水酸基又は加水分解性基であり、Rは独立に炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、qは1〜4の整数であり、rは0〜3の整数であり、q+rは1〜4の整数であり、nは1〜3の整数である。)
本発明のヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物は、親油性及び耐熱性に優れるヒンダードエステル基と、好ましくは複数のアルコキシシリル基等の加水分解性シリル基あるいは水酸基含有シリル基とを含有し、親油性、耐熱性、基材密着性に優れることを特徴としている。
上記式(1)において、Wは独立に炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基であり、アルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、またこれらの組み合わせでもよい。好ましくは炭素数1〜8の直鎖状のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基である。
Wとして、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。Wとして、好ましくはメチル基、エチル基である。
上記式(1)において、Xは互いに異なっていてよい水酸基又は加水分解性基である。このようなXとしては、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基などの炭素数2〜10のアルコキシ置換アルコキシ基、アセトキシ基などの炭素数1〜10のアシロキシ基、イソプロペノキシ基などの炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、オキシム基、イソシアネート基、シアネート基などが挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、塩素原子が好適である。
上記式(1)において、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基であり、中でもメチル基が好適である。
上記式(1)において、Yは2価の有機基であり、−O−、−S−、−NR1−、−C(=O)−、−C(=O)NR1−(R1は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、上記Rと同様のものが例示できる)、シルアルキレン基、シルアリーレン基、ケイ素原子数2〜10個の直鎖状、分岐状又は環状の2価のオルガノポリシロキサン残基から選ばれる2価の基を含んでいてもよく、また炭素数6〜20のアリーレン基を含んでいてもよい炭素数2〜30、特に炭素数2〜20のアルキレン基であることが好ましく、より好ましくは下記式(a)で表される2価の基である。
Figure 2020203838
上記式(a)において、R2は独立に2価の炭化水素基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数1〜30のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6〜20のアリーレン基を含む炭素数7〜30のアルキレン基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜20のアルキレン基である。なお、これらR2の炭素数の合計は2〜30である。
上記式(a)において、Zは単結合、又は−O−、−S−、−NR1−、−C(=O)−、−C(=O)NR1−、シルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2〜10個、好ましくは2〜5個の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価のオルガノポリシロキサン残基から選ばれる2価の基であり、R1は上記と同じである。
ここで、シルアルキレン基、シルアリーレン基としては、下記に示すものが例示できる。
Figure 2020203838
(式中、R3はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基等の炭素数6〜10のアリール基であり、R3は同一でも異なっていてもよい。R4は炭素数1〜12のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6〜12のアリーレン基である。)
また、ケイ素原子数2〜10個、好ましくは2〜5個の直鎖状、分岐状又は環状の2価のオルガノポリシロキサン残基としては、下記に示すものが例示できる。
Figure 2020203838
(式中、R3は上記と同じである。gは1〜9、好ましくは1〜4の整数であり、hは1〜8、好ましくは1〜3の整数である。)
Yの具体例としては、例えば、下記の基が挙げられる。
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
上記式(1)において、qは1〜4の整数であり、rは0〜3の整数であり、q+rは1〜4の整数であり、nは1〜3の整数である。好ましくは、qは2、3又は4であり、rは0又は1であり、q+rは3又は4であり、nは2又は3であり、より好ましくは、qは4、rは0、nは3である。
上記式(1)で表されるヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物としては、下記式で表されるものが例示できる。
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
本発明の上記式(1)で表されるヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物として、更に好ましくは下記一般式(2)で表されるものである。
Figure 2020203838
(式中、Qは単結合、又はシルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2〜10個の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価のオルガノポリシロキサン残基から選ばれる2価の基であり、mはそれぞれ独立に1〜20の整数で、Qに連結する2つのmの合計は2〜30であり、q、W及びXは上記と同じである。)
上記式(2)において、Qは単結合、又はシルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2〜10個、好ましくは2〜5個の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価のオルガノポリシロキサン残基から選ばれる2価の基である。
ここで、シルアルキレン基、シルアリーレン基、ケイ素原子数2〜10個、好ましくは2〜5個の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価のオルガノポリシロキサン残基は、上述した式(a)のZ中のシルアルキレン基、シルアリーレン基、もしくはケイ素原子数2〜10個、好ましくは2〜5個の直鎖状、分岐状又は環状の2価のオルガノポリシロキサン残基として例示したものと同様のものが例示できる。
mはそれぞれ独立に1〜20の整数、好ましくは2〜10の整数であり、Qに連結する2つのmの合計は2〜30である。
上記式(2)で表されるヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物として、具体的には、下記式で表されるものが例示できる。
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
上記式(1)で表されるヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物、特にYが炭素数2〜30のアルキレン基であり、rが0であるヒンダートエステル基含有加水分解性オルガノシラン化合物の調製方法としては、例えば、下記のような方法が挙げられる。
ヒンダートエステル基及びオレフィン部位(例えば、アルケニル基)をそれぞれ有する化合物を40〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは約80℃の温度で加熱撹拌し、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を添加する。続いて、分子鎖末端に加水分解性シリル基とSiH基をそれぞれ有するシラン化合物を滴下し、40〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは約80℃の温度で、10分〜12時間、好ましくは1〜6時間、より好ましくは約3時間熟成させる。また、反応を行う際、有機溶剤で希釈してもよい。
ヒンダートエステル基及びオレフィン部位をそれぞれ有する化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物が例示できる。
Figure 2020203838
(式中、Vは単結合又は炭素数1〜28のアルキレン基であり、W、qは上記と同じである。)
上記式(3)において、Vは単結合、又は炭素数1〜28、好ましくは炭素数1〜14のアルキレン基であり、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基、ジメチルメチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が例示できる。
式(3)で表される化合物として、具体的には、下記一般式(b)〜(e)で表される化合物が例示できる。
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
(式中、V、Wは上記と同じである。)
式(b)で表される化合物として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
Figure 2020203838
式(c)で表される化合物として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
Figure 2020203838
式(d)で表される化合物として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
Figure 2020203838
式(e)で表される化合物として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
Figure 2020203838
上記式(3)、特に式(b)〜(e)で表されるヒンダートエステル基及びオレフィン部位をそれぞれ有する化合物の調製方法としては、β炭素に水素原子が結合していないアルコール基を有する化合物(例えば、ペンタエリトリトール(別名:ペンタエリスリトール))を0〜40℃、より好ましくは20〜30℃の温度で撹拌し、脱水縮合触媒を添加する。続いて、カルボキシル基及びオレフィン部位をそれぞれ有する化合物を滴下し、0〜40℃、より好ましくは20〜30℃の温度で、10分〜12時間、好ましくは1〜6時間熟成させて脱水縮合反応を行う。また、反応を行う際、有機溶剤で希釈してもよい。
ここで、β炭素に水素原子が結合していないアルコール基(特に1級アルコール基)を有する化合物としては、下記一般式(4)で表される化合物が例示できる。
Figure 2020203838
(式中、W、qは上記と同じである。)
式(4)で表される化合物として、具体的には、下記に示すものが挙げられる。
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
Figure 2020203838
また、カルボキシル基及びオレフィン部位をそれぞれ有する化合物として、具体的には、下記に示すものが挙げられる。
Figure 2020203838
上記式(3)、特に式(b)〜(e)で表されるヒンダートエステル基及びオレフィン部位をそれぞれ有する化合物の調製において、カルボキシル基及びオレフィン部位をそれぞれ有する化合物の使用量は、β炭素に水素原子が結合していないアルコール基を有する化合物中のアルコール1当量に対して1.0〜1.4当量、より好ましくは1.1〜1.3当量用いることができる。
上記式(3)、特に式(b)〜(e)で表されるヒンダートエステル基及びオレフィン部位をそれぞれ有する化合物の調製において、脱水縮合触媒としては、例えば、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−カルボニルジイミダゾール、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、ジフェニルリン酸アジド、BOP試薬、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸、リン酸などが挙げられる。これらの中では、カルボジイミド化合物が好ましい。
脱水縮合触媒の使用量は、β炭素に水素原子が結合していないアルコール基を有する化合物中のアルコール1当量に対して1.0〜1.4当量、より好ましくは1.1〜1.3当量用いることができる。
上記式(3)、特に式(b)〜(e)で表されるヒンダートエステル基及びオレフィン部位をそれぞれ有する化合物の調製には有機溶剤を用いてもよい。用いられる有機溶剤としては、エーテル系溶剤(ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素溶剤(ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン)等を例示することができる。これらの中では特にジクロロエタンが好ましい。
有機溶剤の使用量は、β炭素に水素原子が結合していないアルコール基を有する化合物100質量部に対して、50〜2,000質量部、好ましくは100〜1,500質量部用いることができる。
続いて、反応を停止し、溶剤及び未反応成分を留去することで、上記式(3)、特に式(b)〜(e)で表されるヒンダートエステル基及びオレフィン部位をそれぞれ有する化合物が得られる。
式(1)で表されるヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物の調製において、分子鎖末端に加水分解性シリル基とSiH基をそれぞれ有するシラン化合物として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
Figure 2020203838
Figure 2020203838
分子鎖末端に加水分解性シリル基とSiH基をそれぞれ有するシラン化合物の使用量は、上記ヒンダートエステル基及びオレフィン部位をそれぞれ有する化合物中のオレフィン1当量に対して1〜8当量、より好ましくは2〜6当量用いることができる。
上記式(1)で表されるヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物の調製において、ヒドロシリル化反応触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン、アセチレンアルコール類等との錯体等、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属系触媒が挙げられる。好ましくはビニルシロキサン配位化合物等の白金系化合物である。
ヒドロシリル化反応触媒の使用量は、上記ヒンダートエステル基及びオレフィン部位をそれぞれ有する化合物の質量に対して、遷移金属換算(質量)で0.1〜1,000ppm、好ましくは1〜500ppmとなる量で使用する。
上記式(1)で表されるヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物の調製には有機溶剤を用いてもよい。用いられる有機溶剤としては、エーテル系溶剤(ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、トルエン、キシレンなど)を例示することができる。これらの中では特にトルエンが好ましい。
有機溶剤の使用量は、ヒンダートエステル基及びオレフィン部位をそれぞれ有する化合物100質量部に対して、10〜300質量部、好ましくは50〜150質量部用いることができる。
続いて、反応を停止し、溶剤及び未反応成分を留去することで、上記式(1)で表されるヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物が得られる。
例えば、ヒンダートエステル基及びオレフィン部位をそれぞれ有する化合物として、下記式で表される化合物
Figure 2020203838
を使用し、分子鎖末端に加水分解性シリル基とSiH基をそれぞれ有するシラン化合物として、下記式で表される化合物
Figure 2020203838
を使用した場合には、下記式で表される化合物が得られる。
Figure 2020203838
以上のような反応で得られる一般式(1)で表されるヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物は、濃縮、カラム精製、蒸留、抽出等の精製単離操作を行い、また反応溶液をそのまま一般式(1)で表されるヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物を含む混合物として、あるいは有機溶剤等で更に希釈して使用することもできる。
以上のようにして得られる本発明のヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物は、例えば、各種基材の表面保護のための表面処理剤として用いることで、基材表面に親油性を与えることができ、これによって、基材表面は指紋が目立ちづらくなる。このため、本発明のヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物は、人体が触れて人脂、化粧品等により汚される可能性のある物品の表面に施与される塗装膜もしくは保護膜を形成するための表面処理剤として特に有用である。
本発明は、更に上記ヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物を含有する表面処理剤を提供する。該表面処理剤は、該ヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物を1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、該ヒンダートエステル基含有オルガノシラン化合物の水酸基を部分的に縮合させて得られる部分縮合物、又は該ヒンダートエステル基含有加水分解性オルガノシラン化合物の末端加水分解性基を予め公知の方法により部分的に加水分解した水酸基を縮合させて得られる部分加水分解縮合物を含んでいてもよい。
該表面処理剤は、適当な溶剤を含んでもよい。このような溶剤としては、アルコール系溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブタノール、イソプロパノールなど)、エーテル系溶剤(ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、トルエン、キシレンなど)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)を例示することができる。これらの中では、溶解性、濡れ性などの点で、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤が望ましく、特には、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジブチルエーテルが好ましい。
上記溶剤は、その2種以上を混合してもよく、ヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物及びその部分(加水分解)縮合物を均一に溶解させることが好ましい。なお、溶剤に溶解させるヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物及びその部分(加水分解)縮合物の最適濃度は、処理方法により異なり、秤量し易い量であればよいが、直接塗工する場合は、溶剤及びヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物(及びその部分(加水分解)縮合物)の合計100質量部に対して0.01〜10質量部、特に0.05〜5質量部であることが好ましく、蒸着処理をする場合は、溶剤及びヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物(及びその部分(加水分解)縮合物)の合計100質量部に対して1〜100質量部、特に3〜30質量部であることが好ましく、ウェット処理する場合は、溶剤及びヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物(及びその部分(加水分解)縮合物)の合計100質量部に対して0.01〜10質量部、特に0.05〜1質量部であることが好ましい。
表面処理剤には、加水分解縮合触媒、例えば、有機錫化合物(ジブチル錫ジメトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫など)、有機チタン化合物(テトラn−ブチルチタネートなど)、有機酸(酢酸、メタンスルホン酸など)、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸など)を添加してもよい。これらの中では、特に酢酸、テトラn−ブチルチタネート、ジラウリン酸ジブチル錫などが望ましい。
加水分解縮合触媒を使用する場合の添加量は、ヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物及び/又はその部分(加水分解)縮合物100質量部に対して0.1〜150質量部、特に25〜125質量部であることが好ましく、更に50〜110質量部であることが好ましい。
本発明の表面処理剤は、刷毛塗り、ディッピング、スプレー、蒸着処理など公知の方法で基材に施与することができる。蒸着処理時の加熱方法は、抵抗加熱方式でも、電子ビーム加熱方式のどちらでもよく、特に限定されるものではない。また、硬化温度は、硬化方法によって異なるが、例えば、直接塗工(刷毛塗り、ディッピング、スプレー等)の場合は、25〜200℃、特に25〜150℃にて15分〜36時間、特に30分〜24時間とすることが好ましい。加湿下で硬化させてもよい。また、蒸着処理で施与する場合は、20〜200℃の範囲が望ましい。加湿下で硬化させてもよい。硬化被膜の膜厚は、基材の種類により適宜選定されるが、通常0.1〜100nm、特に1〜20nmである。また、例えばスプレー塗工では予め水分を添加した有機溶剤に希釈し、加水分解、つまりSi−OHを生成させた後にスプレー塗工すると塗工後の硬化が速い。
本発明の表面処理剤は、接触角計Drop Master(協和界面科学社製)を用いて測定した、25℃、相対湿度40%におけるオレイン酸に対する接触角が、好ましくは30°以下、より好ましくは25°以下である硬化被膜を形成することができる。従って、皮脂が付着した場合、接触角が小さく、視認性が低くなり、指紋が目立たない。なお、オレイン酸に対する接触角を上記値とするためには、表面処理剤中のヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物において、ヒンダートエステル基を1分子中に2個以上有すること(q+rが2〜4の整数であること)が好ましい。
本発明の表面処理剤は、1kg荷重で皮脂を付着させた際の、ヘーズメーターNDH5000(日本電色工業社製)を用いて測定したヘーズが10以下、より好ましくは7以下である硬化被膜を形成することができる。従って、皮脂が付着した場合、ヘーズが小さく、視認性が低くなり、指紋が目立たない。なお、上記ヘーズ値とするためには、表面処理剤中のヒンダートエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物において、形成される硬化被膜の親油性を高めるために、ヒンダートエステル基を1分子中に2個以上有すること(q+rが2〜4の整数であること)が好ましい。
本発明の表面処理剤で処理される基材は特に制限されず、紙、布、金属及びその酸化物、ガラス、プラスチック、セラミック、石英など各種材質のものであってよい。本発明の表面処理剤は、前記基材に親油性を付与することができる。特に、SiO2処理されたガラスやフイルムの表面処理剤として好適に使用することができる。
本発明の表面処理剤で処理される物品としては、カーナビゲーション、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、PDA、ポータブルオーディオプレーヤー、カーオーディオ、ゲーム機器、眼鏡レンズ、カメラレンズ、レンズフィルター、サングラス、胃カメラ等の医療用器機、複写機、PC、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、保護フイルム、反射防止フイルムなどの光学物品が挙げられる。本発明の表面処理剤は、前記物品に指紋及び皮脂が付着しても視認しづらく、特にタッチパネルディスプレイ、反射防止フイルムなどの親油層として有用である。
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
[合成例1]
反応容器に入れたペンタエリスリトール10.0g(7.34×10-2mol)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩63.4g(3.31×10-1mol)、及びジクロロエタン100gを室温(23℃±3℃、以下同じ)で混合した。続いて、ペンテン酸33.1g(3.31×10-1mol)を添加した後、室温で3時間撹拌した。その後、水100gを添加した後、分液操作により有機層を回収し、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(A)
Figure 2020203838
で示される化合物を40.1g得た。
1H−NMR
δ2.0(CH2=CH−C 2 −)8H
δ2.3(−OC(=O)−C 2 −)8H
δ4.1(−C(=O)O−C 2 −)8H
δ5.0(C 2 =CH−)8H
δ5.8(CH2=C−)4H
[実施例1]
反応容器に入れた、上記で得られた下記式(A)
Figure 2020203838
で表される化合物5.0g(1.08×10-2mol)、トリメトキシシラン21.0g(1.72×10-1mol)、及びトルエン5.0gを80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液5.0×10-3g(Pt単体として1.5×10-8molを含有)を添加した後、80℃にて3時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(B)
Figure 2020203838
で示される生成物(エステル基含有加水分解性オルガノシラン化合物1)を5.5g得た。
1H−NMR
δ0.5(−C 2 −Si−)8H
δ1.2−1.5(−(C 2 2−)16H
δ2.3(−OC(=O)−C 2 −)8H
δ3.6(−Si(OC 3 3)36H
δ4.1(−C(=O)O−C 2 −)8H
[合成例2]
反応容器に入れたペンタエリスリトール10.0g(7.34×10-2mol)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩63.4g(3.31×10-1mol)、及びジクロロエタン100gを室温で混合した。続いて、ウンデセン酸59.5g(3.23×10-1mol)を添加した後、室温で3時間撹拌した。その後、水100gを添加した後、分液操作により有機層を回収し、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(C)
Figure 2020203838
で示される化合物を54.1g得た。
1H−NMR
δ1.2−1.5(−(C 2 6−)48H
δ2.0(CH2=CH−C 2 −)8H
δ2.3(−OC(=O)−C 2 −)8H
δ4.1(−C(=O)O−C 2 −)8H
δ5.0(C 2 =CH−)8H
δ5.8(CH2=C−)4H
[実施例2]
反応容器に入れた、上記で得られた下記式(C)
Figure 2020203838
で表される化合物5.0g(6.24×10-3mol)、トリメトキシシラン12.2.g(9.99×10-2mol)、及びトルエン5.0gを80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液5.0×10-3g(Pt単体として1.5×10-8molを含有)を添加した後、80℃にて3時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(D)
Figure 2020203838
で示される生成物(エステル基含有加水分解性オルガノシラン化合物2)を5.0g得た。
1H−NMR
δ0.5(−C 2 −Si−)8H
δ1.2−1.5(−(C 2 8−)64H
δ2.3(−OC(=O)−C 2 −)8H
δ3.6(−Si(OC 3 3)36H
δ4.1(−C(=O)O−C 2 −)8H
[合成例3]
反応容器に入れたトリメチロールプロパン10.0g(7.45×10-2mol)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩50.7g(2.64×10-1mol)、及びジクロロエタン100gを室温で混合した。続いて、ペンテン酸26.5g(2.64×10-1mol)を添加した後、室温で3時間撹拌した。その後、水100gを添加した後、分液操作により有機層を回収し、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(E)
Figure 2020203838
で示される化合物を33.7g得た。
1H−NMR
δ1.2−1.5(−C2 5 )5H
δ2.0(CH2=CH−C 2 −)6H
δ2.3(−OC(=O)−C 2 −)6H
δ4.1(−C(=O)O−C 2 −)6H
δ5.0(C 2 =CH−)6H
δ5.8(CH2=C−)3H
[実施例3]
反応容器に入れた、上記で得られた下記式(E)
Figure 2020203838
で表される化合物5.0g(1.31×10-2mol)、トリメトキシシラン19.3g(1.58×10-1mol)、及びトルエン5.0gを80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液5.0×10-3g(Pt単体として1.5×10-8molを含有)を添加した後、80℃にて3時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(F)
Figure 2020203838
で示される生成物(エステル基含有加水分解性オルガノシラン化合物3)を4.8g得た。
1H−NMR
δ0.5(−C 2 −Si−)6H
δ1.2−1.5(−(C 2 2−,−C2 5 )17H
δ2.3(−OC(=O)−C 2 −)6H
δ3.6(−Si(OC 3 3)27H
δ4.1(−C(=O)O−C 2 −)6H
[合成例4]
反応容器に入れたトリメチロールエタン10.0g(8.32×10-2mol)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩57.4g(3.00×10-1mol)、及びジクロロエタン100gを室温で混合した。続いて、ペンテン酸30.0g(3.00×10-1mol)を添加した後、室温で3時間撹拌した。その後、水100gを添加した後、分液操作により有機層を回収し、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(G)
Figure 2020203838
で示される化合物を37.5g得た。
1H−NMR
δ1.2−1.5(−C 3 )3H
δ2.0(CH2=CH−C 2 −)6H
δ2.3(−OC(=O)−C 2 −)6H
δ4.1(−C(=O)O−C 2 −)6H
δ5.0(C 2 =CH−)6H
δ5.8(CH2=C−)3H
[実施例4]
反応容器に入れた、上記で得られた下記式(G)
Figure 2020203838
で表される化合物5.0g(1.36×10-2mol)、トリメトキシシラン20.0g(1.64×10-1mol)、及びトルエン5.0gを80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液5.0×10-3g(Pt単体として1.5×10-8molを含有)を添加した後、80℃にて3時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(H)
Figure 2020203838
で示される生成物(エステル基含有加水分解性オルガノシラン化合物4)を5.1g得た。
1H−NMR
δ0.5(−C 2 −Si−)6H
δ1.2−1.5(−(C 2 2−,−C 3 )15H
δ2.3(−OC(=O)−C 2 −)6H
δ3.6(−Si(OC 3 3)27H
δ4.1(−C(=O)O−C 2 −)6H
[合成例5]
反応容器に入れた2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール10.0g(9.60×10-2mol)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩44.2g(2.30×10-1mol)、及びジクロロエタン100gを室温で混合した。続いて、ペンテン酸23.1g(2.30×10-1mol)を添加した後、室温で3時間撹拌した。その後、水100gを添加した後、分液操作により有機層を回収し、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(I)
Figure 2020203838
で示される化合物を30.3g得た。
1H−NMR
δ1.2−1.5(−C 3 )6H
δ2.0(CH2=CH−C 2 −)4H
δ2.3(−OC(=O)−C 2 −)4H
δ4.1(−C(=O)O−C 2 −)4H
δ5.0(C 2 =CH−)4H
δ5.8(CH2=C−)2H
[実施例5]
反応容器に入れた、上記で得られた下記式(I)
Figure 2020203838
で表される化合物5.0g(1.86×10-2mol)、トリメトキシシラン18.2g(1.49×10-1mol)、及びトルエン5.0gを80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液5.0×10-3g(Pt単体として1.5×10-8molを含有)を添加した後、80℃にて3時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(J)
Figure 2020203838
で示される生成物(エステル基含有加水分解性オルガノシラン化合物5)を5.2g得た。
1H−NMR
δ0.5(−C 2 −Si−)4H
δ1.2−1.5(−(C 2 2−,−C 3 )14H
δ2.3(−OC(=O)−C 2 −)4H
δ3.6(−Si(OC 3 3)18H
δ4.1(−C(=O)O−C 2 −)4H
[合成例6]
反応容器に入れた2,2−ジメチル−1−プロパノール10.0g(1.13×10-1mol)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩26.1g(1.36×10-1mol)、及びジクロロエタン100gを室温で混合した。続いて、ペンテン酸13.6g(1.36×10-1mol)を添加した後、室温で3時間撹拌した。その後、水100gを添加した後、分液操作により有機層を回収し、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(K)
Figure 2020203838
で示される化合物を21.2g得た。
1H−NMR
δ1.2−1.5(−C 3 )9H
δ2.0(CH2=CH−C 2 −)2H
δ2.3(−OC(=O)−C 2 −)2H
δ4.1(−C(=O)O−C 2 −)2H
δ5.0(C 2 =CH−)2H
δ5.8(CH2=C−)1H
[実施例6]
反応容器に入れた、上記で得られた下記式(K)
Figure 2020203838
で表される化合物5.0g(2.94×10-2mol)、トリメトキシシラン14.4g(1.17×10-1mol)、及びトルエン5.0gを80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液5.0×10-3g(Pt単体として1.5×10-8molを含有)を添加した後、80℃にて3時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(L)
Figure 2020203838
で示される生成物(エステル基含有加水分解性オルガノシラン化合物6)を5.0g得た。
1H−NMR
δ0.5(−C 2 −Si−)2H
δ1.2−1.5(−(C 2 2−,−C 3 )13H
δ2.3(−OC(=O)−C 2 −)2H
δ3.6(−Si(OC 3 3)9H
δ4.1(−C(=O)O−C 2 −)2H
[比較例1]
反応容器に入れた、ペンテン酸エチル5.0g(3.90×10-2mol)、トリメトキシシラン19.1g(1.56×10-1mol)、及びトルエン5.0gを80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液5.0×10-3g(Pt単体として1.5×10-8molを含有)を添加した後、80℃にて3時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(M)
Figure 2020203838
で示される生成物(エステル基含有加水分解性オルガノシラン化合物7)を4.8g得た。
1H−NMR
δ0.5(−C 2 −Si−)2H
δ1.2−1.5(−(C 2 2−,−C 3 )7H
δ2.3(−OC(=O)−C 2 −)2H
δ3.6(−Si(OC 3 3)9H
δ4.1(−C(=O)O−C 2 −)2H
表面処理剤の調製及び硬化被膜の形成
実施例1〜6で得られた式(B)、(D)、(F)、(H)、(J)、(L)で示されるエステル基含有加水分解性オルガノシラン化合物1〜6、及び比較例1の式(M)で示されるエステル基含有加水分解性オルガノシラン化合物7を、濃度20質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させて表面処理剤を調製した。最表面にSiO2を10nm処理したガラス(コーニング社製 Gorilla)に、各表面処理剤5μLを真空蒸着し(処理条件は、圧力:2.0×10-2Pa、加熱温度:700℃)、25℃、相対湿度40%の雰囲気下で12時間硬化させ、厚さ2〜10nmの硬化被膜を作製した。
指紋低視認性の評価
[指紋視認性の評価]
上記にて作製した硬化被膜を形成したガラスに1kg荷重で皮脂を付着させ、その視認性について以下4段階にて目視による官能評価を行った。結果を表1に示す。
4:指紋がほとんど見えない
3:指紋がわずかに見える
2:指紋が薄いがはっきり見える
1:指紋がはっきり見える
[ヘーズの評価]
上記にて作製した硬化被膜を形成したガラスに1kg荷重で皮脂を付着させ、ヘーズメーターNDH5000(日本電色工業社製)を用いてヘーズ(HAZE)を測定した。結果を表1に示す。
[初期親油性の評価]
上記にて作製した硬化被膜を形成したガラスについて、接触角計Drop Master(協和界面科学社製)を用いて、硬化被膜のオレイン酸に対する接触角(親油性)を測定した(液滴:2μl、温度:25℃、相対湿度:40%)。結果(初期オレイン酸接触角)を表1に示す。
耐熱性の評価
[耐熱試験後の親油性の評価]
上記にて作製した硬化被膜を形成したガラスを95℃の雰囲気下に10日間置いた。その後、接触角計Drop Master(協和界面科学社製)を用いて、硬化被膜のオレイン酸に対する接触角(耐熱試験後の親油性)を測定した(液滴:2μl、温度:25℃、相対湿度:40%)。結果(耐熱試験後オレイン酸接触角)を表1に示す。
Figure 2020203838
本発明のエステル基含有加水分解性オルガノシラン化合物を用いた実施例1〜6は、いずれにおいても指紋が全く見えず、更に耐熱試験後もオレイン酸接触角の変化が少なく、高い耐熱性が確認された。一方、エステル基のβ炭素に水素原子を有する、ヒンダートエステルではないエステル基を含有する加水分解性オルガノシラン化合物を用いた比較例1は、指紋は目立たないものの、耐熱性が低かった。
ヘーズメーターによるヘーズの測定では、実施例はいずれもヘーズの値が低く、官能評価の結果と良い相関となった。

Claims (10)

  1. 下記一般式(1)で表されるエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物。
    Figure 2020203838
    (式中、Wは独立に炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基であり、Yは独立に2価の有機基であり、Xは独立に水酸基又は加水分解性基であり、Rは独立に炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、qは1〜4の整数であり、rは0〜3の整数であり、q+rは1〜4の整数であり、nは1〜3の整数である。)
  2. 前記式(1)において、Yが−O−、−S−、−NR1−、−C(=O)−、−C(=O)NR1−(R1は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基である)、シルアルキレン基、シルアリーレン基、ケイ素原子数2〜10個の直鎖状、分岐状又は環状の2価のオルガノポリシロキサン残基から選ばれる2価の基を含んでいてもよく、また炭素数6〜20のアリーレン基を含んでいてもよい炭素数2〜30のアルキレン基である請求項1に記載のエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物。
  3. 下記式(2)で表されるエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物。
    Figure 2020203838
    (式中、Wは独立に炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基であり、Qは単結合、又はシルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2〜10個の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価のオルガノポリシロキサン残基から選ばれる2価の基であり、Xは独立に水酸基又は加水分解性基であり、mはそれぞれ独立に1〜20の整数で、Qに連結する2つのmの合計は2〜30であり、qは1〜4の整数である。)
  4. 前記式(1)又は(2)において、Xがそれぞれ独立に、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアルコキシ置換アルコキシ基、炭素数1〜10のアシロキシ基、炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、ハロゲン原子、オキシム基、イソシアネート基、及びシアネート基からなる群より選ばれるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のエステル基含有(加水分解性)オルガノシラン化合物の少なくとも1種類及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含有する表面処理剤。
  6. 更に、溶剤を含むものである請求項5に記載の表面処理剤。
  7. 更に、加水分解縮合触媒を含むものである請求項5又は6に記載の表面処理剤。
  8. 25℃、相対湿度40%におけるオレイン酸接触角が30°以下の硬化被膜を与えるものである請求項5〜7のいずれか1項に記載の表面処理剤。
  9. 硬化した被膜に1kg荷重で皮脂を付着させた際のヘーズが10以下となるものである請求項5〜8のいずれか1項に記載の表面処理剤。
  10. 請求項5〜9のいずれか1項に記載の表面処理剤の硬化被膜を表面に有する物品。
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