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JP2019208508A - 飲料用香料及び食品用香料 - Google Patents

飲料用香料及び食品用香料 Download PDF

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JP2019208508A JP2019104029A JP2019104029A JP2019208508A JP 2019208508 A JP2019208508 A JP 2019208508A JP 2019104029 A JP2019104029 A JP 2019104029A JP 2019104029 A JP2019104029 A JP 2019104029A JP 2019208508 A JP2019208508 A JP 2019208508A
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Abstract

【課題】飲食品の果実感、呈味感、及び熟味感の全てを向上させることができる飲料用香料及び食品用香料の提供。【解決手段】D−アミノ酸及びチロソールを含有する飲食品用香料。D−アミノ酸は、D−アラニン、D−アスパラギン酸、及びD−グルタミン酸から選択される1種若しくは2種以上であることが好ましい。また、乳酸菌発酵処理を利用することによってより多くのD−アミノ酸を飲食品用香料に含有させることができる。更に、酵母処理を利用することによってより多くのチロソールを飲食品用香料に含有させることができ、D−アミノ酸と共に飲みごたえ・食べごたえの高い飲食品を実現できる。【選択図】なし

Description

本発明は、飲料用香料及び食品用香料に関する。
近年、果実風味の飲料(RTD (Ready to Drink)、清涼飲料水、機能性飲料等)及び食品の多様化が進む中で飲料用香料が最終飲料に求められる風香味への寄与特性も、果実感、呈味感、熟味感の付与やRTD飲料のアルコール感低減、機能性飲料配合機能性成分の風味マスキング等と多種多様となっている。このような需要において、より訴求条件を満たすような飲食品用香料を開発するため、日々企業努力がなされている。
特開2017−225397号公報
香料使用成分や果汁、果皮オイルなどを調合する従来の香料では果実感、呈味感、熟味感のいずれかがもの足りなかった。また、香料使用成分や果汁、果皮オイルなどを調合する従来の香料では、果実感、呈味感、熟味感の複合的な風味を実現することは困難であるという問題があった。
そこで、前記課題を解決する手段は、以下の通りである。
〔1〕 D−アミノ酸及びチロソールを含有する飲料用香料。
〔2〕 前記D−アミノ酸を250ppb以上含有すると共に、前記チロソールを2ppb以上含有する〔1〕に記載の飲料用香料。
〔3〕 前記D−アミノ酸が、D−アラニン、D−アスパラギン酸、及びD−グルタミン酸を含む群から選択される1種若しくは2種以上を含んでなる〔1〕若しくは〔2〕に記載の飲料用香料。
〔4〕 前記D−アミノ酸が、乳酸菌による乳酸菌発酵処理によって生成されてなるものである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の飲料用香料。
〔5〕 前記乳酸菌は、ペディオコッカス・アシドラクティシ(Ped.acidilactici)、ラクトバチルス・カゼイ(Lb.casei)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lb.reuteri)、及びラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lb.delbruekii ssp. bulgaricus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lb.plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lb.brevis)から選ばれる乳酸菌のうち少なくとも1種の乳酸菌である〔4〕に記載の飲料用香料。
〔6〕 前記乳酸菌発酵処理された乳酸菌発酵処理物を含む〔4〕若しくは〔5〕に記載の飲料用香料。
〔7〕 前記チロソールが、酵母による酵母発酵処理によって生成されてなるものである〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の飲料用香料。
〔8〕 前記酵母は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ピキア属(Pichia)から選ばれる酵母のうち少なくとも1種の酵母である〔7〕に記載の飲料用香料。
〔9〕 前記酵母発酵処理された酵母発酵処理物を含む〔7〕若しくは〔8〕に記載の飲料用香料。
〔10〕 D−アミノ酸及びチロソールを配合する飲料用香料の製造方法。
〔11〕 前記D−アミノ酸を250ppb以上配合すると共に、前記チロソールを2ppb以上配合する〔10〕に記載の飲料用香料の製造方法。
〔12〕 前記D−アミノ酸として、D−アラニン、D−アスパラギン酸、及びD−グルタミン酸を含む群から選択される1種若しくは2種以上を配合する〔10〕若しくは〔11〕に記載の飲料用香料の製造方法。
〔13〕 乳酸菌発酵処理によって生成した前記D−アミノ酸を配合する〔10〕〜〔12〕のいずれかに記載の飲料用香料の製造方法。
〔14〕 前記乳酸菌発酵処理によって50ppm以上の前記D−アミノ酸を産生する〔13〕に記載の飲料用香料の製造方法。
〔15〕 前記乳酸菌は、ペディオコッカス・アシドラクティシ(Ped.acidilactici)、ラクトバチルス・カゼイ(Lb.casei)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lb.reuteri)、及びラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lb.delbruekii ssp. bulgaricus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lb.plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lb.brevis)から選ばれる乳酸菌のうち少なくとも1種の乳酸菌である〔13〕若しくは〔14〕に記載の飲料用香料の製造方法。
〔16〕 前記乳酸菌発酵処理された乳酸菌発酵処理物、及び前記D−アミノ酸を同時に配合させる〔13〕〜〔15〕のいずれかに記載の飲料用香料の製造方法。
〔17〕 酵母発酵処理によって生成した前記チロソールを配合する〔10〕〜〔16〕のいずれかに記載の飲料用香料の製造方法。
〔18〕 前記酵母発酵処理によって0.1ppm以上のチロソールを産生する〔17〕に記載の飲料用香料の製造方法。
〔19〕 前記酵母は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ピキア属(Pichia)から選ばれる酵母のうち少なくとも1種の酵母である〔17〕若しくは〔18〕に記載の飲料用香料の製造方法。
〔20〕 前記酵母発酵処理された酵母発酵処理物、及び前記チロソールを同時に配合させる〔17〕〜〔19〕のいずれかに記載の飲料用香料。
〔21〕 D−アミノ酸及びチロソールを含有する飲料用香料を飲料に添加することによって飲料の果実感、呈味感、及び熟味感を改善する方法。
〔22〕 D−アミノ酸及びチロソールを含有する飲料用香料を飲料に添加することによって飲料のケミカル感、若しくはアルコール感を低減する方法。
〔23〕 D−アミノ酸及びチロソールを含有する食品用香料。
〔24〕 前記D−アミノ酸を250ppb以上含有すると共に、前記チロソールを2ppb以上含有する〔23〕に記載の食品用香料。
〔25〕 前記D−アミノ酸が、D−アラニン、D−アスパラギン酸、及びD−グルタミン酸を含む群から選択される1種若しくは2種以上を含んでなる〔23〕若しくは〔24〕に記載の食品用香料。
〔26〕 前記D−アミノ酸が、乳酸菌発酵処理によって生成されてなるものである〔23〕〜〔25〕のいずれかに記載の食品用香料。
〔27〕 前記乳酸菌は、ペディオコッカス・アシドラクティシ(Ped.acidilactici)、ラクトバチルス・カゼイ(Lb.casei)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lb.reuteri)、及びラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lb.delbruekii ssp. bulgaricus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lb.plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lb.brevis)から選ばれる乳酸菌のうち少なくとも1種の乳酸菌である〔26〕に記載の食品用香料。
〔28〕 前記乳酸菌発酵処理された乳酸菌発酵処理物を含む〔26〕若しくは〔27〕に記載の食品用香料。
〔29〕 前記チロソールが、酵母発酵処理によって生成されてなるものである〔23〕〜〔28〕のいずれかに記載の食品用香料。
〔30〕 前記酵母は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ピキア属(Pichia)から選ばれる酵母のうち少なくとも1種の酵母である〔29〕に記載の食品用香料。
〔31〕 前記酵母発酵処理された酵母発酵処理物を含む〔29〕若しくは〔30〕に記載の食品用香料。
本発明に係る発酵処理に使用される乳酸菌としては、ラクトバチルス・ブレビス(Lb.brevis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lb.acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lb.casei)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lb.reuteri)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lb.delbruekii ssp. bulgaricus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lb.plantarum)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lb.buchneri)、ペディオコッカス・アシドラクティシ(Ped.acidilactici)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lb.helveticus)等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ラクチス(Lactococcus lactis ssp. lactis)、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.クレモリス(Lactococcus lactis ssp. cremoris)等のラクトコッカス属細菌、ロイコノストク属細菌、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)等のエンテロコッカス属細菌などが挙げられ、これらから選ばれる一種または二種以上、その他酵母との併用にて使用することができる。
上記の菌種の菌株としては、ラクトバチルス・ブレビスとしては、ラクトバチルス・ブレビス JCM1059等の菌株が挙げられ、ラクトバチルス・カゼイとしては、ラクトバチルス・カゼイJCM1134等の菌株が挙げられる。また、ラクトバチルス・ロイテリとしては、ラクトバチルス・ロイテリJCM1112等の菌株が挙げられる。また、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスとしてはラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスJCM1002等の菌株が挙げられる。また、ラクトバチルス・プランタラムとしては、ラクトバチルス・プランタラムJCM1149等の菌株が挙げられ、ラクトバチルス・ブフネリとしては、ラクトバチルス・ブフネリJCM1115等の菌株が挙げられる。以上の菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構生物遺伝資源部門、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンターなど国内外の公的微生物保存機関から分譲を受けることが可能である。また、ペディオコッカス・アシドラクティシとしては、ペディオコッカス・アシドラクティシFL−263等の菌株が挙げられる。なお、ペディオコッカス・アシドラクティシFL−263株はペディオコッカス・アシドラクティシFL−263株(NITE P−02544)として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託されている。
本発明に係る発酵処理に使用される酵母としては、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ピキア属(Pichia)が挙げられ、これらから選ばれる一種または二種以上を使用することができる。
上記の菌種の菌株としては、サッカロミセス・セルビジエとしては、サッカロミセス・セルビジエ NBRC10217等の菌株が挙げられ、シゾサッカロミセス・ジャポニカスとしてはJCM8263等の菌株が挙げられ、ピキア・パストリスとしては、ピキア・パストリスJCM3650等の菌株が挙げられる。以上の菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構生物遺伝資源部門、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンターなど国内外の公的微生物保存機関から分譲を受けることが可能である。また、サッカロミセス・セルビジエとしては、サッカロミセス・セルビジエFY−229等の菌株が挙げられる。なお、サッカロミセス・セルビジエFY−229株はサッカロミセス・セルビジエFY−229株(NITE P−02668)として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託されている。
本発明によれば、飲食品の果実感、呈味感、及び熟味感の全てを向上させることができる飲料用香料及び食品用香料を提供することができる。
また、本発明に係る飲料用香料もしくは食品用香料によって、果実感、呈味感、及び熟味感を向上させることで、飲食品に飲みごたえ、もしくは食べごたえを付加させることができる。
<乳酸菌スターターの調製例>
水96重量部、酵母エキス(粉体)2重量部、グルコース2重量部からなる培養基を調製し、該培養基を121℃で15分間殺菌し、その後37度まで冷却した。次いで冷却後の培養基にラクトバチルス・ロイテリ(Lb.reuteri)JCM1112株を0.02重量部接種し、37℃で20時間培養させた発酵物をJCM1112スターターとした。
<乳酸発酵トマト汁による乳酸菌発酵処理の例>
濃縮トマト汁(CLEAR TOMATO CONCENTRATE 60°BX (CTC) 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)7.5重量部と水89重量部を混合し、20重量%水酸化ナトリウム水溶液0.5重量部でpHを5.00±0.25に調整後、湯煎にて90℃で1分間殺菌し、その後37℃まで冷却した。冷却した原料混合物に対し、上記で調製したJCM1112スターターを3重量部接種し、37℃で24時間発酵させた。発酵の停止は80℃で1分間加熱することで行った。10℃以下まで冷却後、遠心分離にて不溶性固形分を除去、珪藻土ろ過にて清澄化し、得られた発酵物を試験区1−1とした。
また、前記JCM1112スターターにかえて、水3重量部を前記原料混合物に混合し、10℃以下まで冷却後、遠心分離にて不溶性固形分を除去、珪藻土ろ過にて清澄化し、得られた未発酵物を試験区1−2とした。
<酵母スターターの調製例>
水97.5重量部、濃縮白ぶどう果汁(55°BX白ブドウ透明果汁 日本果実加工株式会社)2重量部、酵母エキス(粉体)0.5重量部からなる培養基を調製し、該培養基を121℃で15分間殺菌し、その後37度まで冷却した。次いで冷却後の培養基にサッカロミセス・セルビジエFY−229株を0.02重量部接種し、30℃で20時間培養させた発酵物をFY−229スターターとした。
<酵母発酵ストロベリー果汁による酵母発酵処理の例>
濃縮ストロベリー果汁(ストロベリー果汁透明TN 雄山株式会社)2.5重量部、酵母エキス(粉体)0.3重量部と水96.7重量部を混合し、湯煎にて90℃で1分間殺菌し、その後30℃まで冷却した。冷却した原料混合物に対し、上記で調製したFY−229スターターを0.5重量部接種し、30℃で72時間発酵させた。発酵の停止は80℃で1分間加熱することで行った。10℃以下まで冷却後、遠心分離にて不溶性固形分を除去、珪藻土ろ過にて清澄化し、得られた発酵物を試験区2−1とした。
また、前記FY−229スターターにかえて、水0.5重量部を前記原料混合物に混合し、10℃以下まで冷却後、遠心分離にて不溶性固形分を除去、珪藻土ろ過にて清澄化し、得られた未発酵物を試験区2−2とした。
<D−アミノ酸量の測定>
試験区1−1、1−2(乳酸菌発酵トマト汁発酵品、未発酵品)中に産生されたD−アラニン(D−Ala)及びL−アラニン、(L−Ala)及びD−アスパラギン酸(D−Asp)及びL−アスパラギン酸(L−Asp)、D−グルタミン酸(D−Glu)及びL−グルタミン酸(L−Glu)の含有量は、次に示すオルトフタルアルデヒド・N−アセチル−L−システインキラル誘導体化法(OPA−NACキラル誘導体化法)を用いたアミノ酸定量分析により測定した。
まず、それぞれの試験区に係る液体状の発酵物に対し、2倍量のメタノールを加え撹拌後、遠心分離機にかけて得られる上清を蒸留水で3倍に希釈したものをキラル誘導体化用試料とした。なお、発酵物に含まれるアミノ酸量に応じ、上清を直接若しくは、蒸留水にて2倍から5倍に希釈したものをキラル誘導体化用試料とすることもできる。
<キラル誘導体化手順>
キラル誘導体化用試料60μlに1%四ホウ酸ナトリウム水溶液40μl、1%N−アセチル−L−システイン水溶液20μl、1.6%オルトーフタルアルデヒドメタノール溶液20μlを添加し、0.45μmセルロースアセテート製メンブレンフィルター(アドバンテック社製)でろ過したものをキラル誘導体化処理液とした。キラル誘導体化処理液を分析用試料として、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、(株)島津製作所製、検出限界値:1nmol/ml)によるアミノ酸分析を行った。
また、キラル誘導体化処理液を分析用試料としたHPLCによるアミノ酸分析にあたり、分析条件としては、次の表1に示す条件を選択した。また、分析の結果を表2に示す。
Figure 2019208508
Figure 2019208508
表2より、未発酵の比較例からはいずれもD−アミノ酸の含有量はHPLCの検出限界値よりも低い値であったのに対して、乳酸菌により発酵処理された発酵物からは高い濃度のD−アミノ酸が検出された。D−アミノ酸総量として99ppmであった。表2の結果より、発酵処理前にはほとんど存在していなかったD−アミノ酸を乳酸菌発酵処理によって高濃度に生成すると共に、その生成と同時に発酵物に混合された状態の飲料用香料若しくは食品用香料の半製品(試験区1−1)を製造することができた。
<チロソール量の測定>
試験区2−1、2−2(酵母発酵ストロベリー果汁発酵品、未発酵品)中に産生されたチロソール含有量は、次に示すSPME(Car/PDMSファイバー)漬込み法を用いた香気成分定量分析により測定した。
まず、それぞれの試験区に係る液体状の発酵物1.2gをバイアルチューブに移し、SPME(Car/PDMSファイバー)を漬け込み、40℃、抽出時間15分の条件で香気成分の抽出を行い分析用試料とした。一方、既知濃度のチロソール(0.1、1、10ppm)を蒸留水に添加したものを検量用試料とし、ガスクロマトグラフィー(GC−MS、アジレント・テクノロジー株式会社製)による香気分析を行った。
GC−MSによる香気成分分析にあたり、分析条件としては、次の表3に示す条件を選択した。また、分析の結果を表4に示す。
Figure 2019208508
Figure 2019208508
表4より、未発酵の比較例からはチロソールの含有量はGC−MSの検出限界値よりも低い値であったのに対して、酵母により発酵処理された発酵物からはチロソールが検出された。チロソール総量として2.4ppmであった。
表4の結果より、発酵処理前にはほとんど存在していなかったチロソールを酵母発酵処理によって生成すると共に、その生成と同時に発酵物に混合された状態の飲料用香料若しくは食品用香料の半製品(試験区2−1)を製造することができた。
<発酵物配合香料の調製例>
本発明の実施例に使用する香料については、上記の試験区1−1、1−2、2−1、2−2を一定の割合で含有するようなグレープ香料、アップル香料、レモン香料のフルーツ香料を調整することで準備した。なお、試験区1−1には、前記乳酸菌発酵処理によって産生されたD−アミノ酸と前記乳酸菌発酵処理された濃縮トマト汁の残部(これを乳酸菌発酵処理物という。)とが、前記乳酸菌発酵処理によって同時に配合されて均一に混合されてなる。また、試験区2−1には、前記酵母発酵処理によって産生されたチロソールと前記酵母発酵処理された濃縮ストロベリー果汁(これを酵母発酵処理物という。)とが、前記酵母発酵処理によって同時に配合されて均一に混合されてなる。各香料の配合組成については以下に具体的に説明する。
グレープ香料は香料成分として、エチルプロピオネート、メチルアンスラニレートを主要成分とし、またアップル香料は香料成分として、トランス−2−ヘキセナール、イソアミルアセテートを主要成分とし、またレモン香料は香料成分として、ゲラニアール、ネラールまたはその混合物(シトラール)、D−リモネンを主要成分とした。また、グレープ香料、アップル香料、及びレモン香料には、それぞれ炭化水素類、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、ケトン類、エーテル類、エステル類、カルボン酸類、ラクトン類、フラン化合物、フラノン類、含窒素・含硫化合物及び天然香料から構成される群から一または二以上の成分を適宜混合することができる。
調整したフルーツ香料の香料処方中における合成或いは天然香料の官能基成分による配合割合は、例えば(1):グレープであればエチルプロピオネート、メチルアンスラニレートをそれぞれ0.0001〜10重量%とし、アップルであればトランス−2−ヘキセナール、イソアミルアセテートをそれぞれ0.0001〜10重量%とし、レモンであればゲラニアール、ネラールまたはその混合物(シトラール)、D−リモネンをそれぞれ0.0001〜10重量%の範囲で使用される。好ましくは、グレープであればエチルプロピオネート、メチルアンスラニレートをそれぞれ0.01〜50重量%、アップルであればトランス−2−ヘキセナール、イソアミルアセテートをそれぞれ0.01〜50重量%、レモンであればゲラニアール、ネラールまたはその混合物(シトラール)、D−リモネンをそれぞれ0.01〜50重量%の範囲とする。
本発明で用いられる溶剤は、可食性の溶剤であれば特に限定されることはなく、例えば
水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、植物性油脂、動物性油脂、中鎖脂
肪酸トリグリセライドなどが例示される。
本発明においては、本発明の効果を阻害しない限度において、種々の任意成分を、食品
添加物として最終飲食物へ併用することもできる。そのような任意成分の例としては、例
えば、甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色料、漂白料、防かび剤、
ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤などを
例示することができる。
上記任意成分中、甘味料、増粘安定剤、苦味料、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤など
は、本発明の香料の風香味増強、改良または変調剤としても使用することができる。
上記香料成分から選択された特定の組合せにて調整し、配合したグレープ香料の例(大洋香料株式会社製 グレープフレーバー6Y-5334)を示す。以下の実施例におけるグレープ香料は当該例に示したものを使用した。
グレープフレーバー 6Y-5334
化合物名 配合割合(重量%)
エチルアセテート 4.51
エチルプロピオネート 3.85
エチルブチレート 1.79
メチルアントラニレート 0.90
フェニルエチルアルコール 0.33
シス−3−ヘキセノール 0.24
マルトール 0.20
アセチックアシド 0.18
イソプロピルアセテート 0.14
トランス−2−ヘキセノール 0.13
ヘキサノール 0.10
プロピオニックアシド 0.07
エチルクロトネート 0.06
メチルN−メチルアントラニレート 0.04
ベータ−ダマセノン 0.02
ヘキサノイックアシド 0.01
フェニルエチルアセテート 0.01
エチル2メチルブチレート 0.01
溶剤 87.41
合計 100.00
上記香料成分から選択された特定の組合せにて調整し、配合したアップル香料の例(大洋香料株式会社製 アップルフレーバー6Y-5138)を示す。以下の実施例におけるアップル香料は当該例に示したものを使用した。
アップルフレーバー6Y-5138
化合物名 配合割合(重量%)
2−メチルブチルアセテート 1.59
ブチルアセテート 0.86
ヘキシルアセテート 0.61
ブタノール 0.46
2−メチルブタノール 0.43
エチルブチレート 0.37
イソアミルアセテート 0.28
ヘキサナール 0.28
ヘキサノール 0.28
トランス−2−ヘキセナール 0.25
プロパノール 0.16
エチルアセテート 0.15
エチル2メチルブチレート 0.12
プロピルアセテート 0.09
イソアミルイソバレレート 0.08
エチルプロピオネート 0.07
エチルヘキサノエート 0.07
プロピオニックアシド 0.06
2−メチルブチリックアシド 0.05
トランス−2−ヘキセノール 0.03
イソブチルアセテート 0.01
溶剤 93.70
合計 100.00
上記香料成分から選択された特定の組合せにて調整し、配合したレモン香料の例(大洋香料株式会社製 レモンフレーバー3Y-751)を示す。以下の実施例におけるレモン香料は当該例に示したものを使用した。
レモンフレーバー3Y-751
化合物名 配合割合(重量%)
レモン香料 1.88
テルピニルアセテート 0.16
ネリルアセテート 0.14
リナロール 0.09
リナリルアセテート 0.30
シトラール 0.03
ゲラニルアセテート 0.01
シス−3−ヘキセノール 0.01
ネロール 0.01
オクチルアセテート 0.01
d−リモネン 0.01
α−テルピネオール 0.01
ネロリドール 0.01
トランス−2−ヘキセナール 0.01
ゲラニオール 0.01
デカナール 0.01
ヘキサナール 0.01
ノナナール 0.01
アセチックアシド 0.01
オクタナール 0.01
シトロネリルアセテート 0.01
シトロネロール 0.01
溶剤 97.24
合計 100.00
上記グレープ香料、アップル香料、レモン香料に追加して、乳酸発酵トマト汁(試験区1−1)0.26重量%(99ppm×0.26重量%≒250ppb)配合且つ酵母発酵ストロベリー果汁(試験区2−1)0.42重量%(2.4ppm×0.42重量%≒10ppb)配合の香料(グレープ、アップル、レモン)を実施香料1〜3とし、乳酸発酵トマト汁未発酵品(試験区1−2)0.26重量%配合且つ酵母発酵ストロベリー果汁未発酵品(試験区2−2)0.42重量%配合の香料(グレープ、アップル、レモン)を比較香料1,4,7とした。また、乳酸発酵トマト汁(試験区1−1)0.26重量%且つ酵母発酵ストロベリー果汁未発酵品(試験区2−2)0.42重量%配合の香料(グレープ、アップル、レモン)を比較香料2,5,8とし、乳酸発酵トマト汁未発酵品(試験区1−2)0.26重量%配合且つ酵母発酵ストロベリー果汁(試験区2−1)0.42重量%配合の香料(グレープ、アップル、レモン)を比較香料3,6,9とした。内訳表を表5に示す。
Figure 2019208508
<発酵物配合香料を添加した飲料の呈味官能試験>
前記の実施香料1〜3に係る発酵物配合香料を添加した無果汁清涼飲料、及び無果汁炭酸飲料、及び果汁入り清涼飲料、及び無果汁アルコール飲料の味について、前記比較香料1,4,7、比較香料2,5,8、比較香料3,6,9を添加した無果汁清涼飲料、及び無果汁炭酸飲料、及び果汁入り清涼飲料、及び無果汁アルコール飲料の味と比較しつつ、官能試験を行った。
表6、表7、表8、表9に、官能試験の対象とした実施例及び比較例の処方の一覧を示す。なお、表6〜表9中に記載された数値は重量%で示されるものとする。
Figure 2019208508
Figure 2019208508
Figure 2019208508
Figure 2019208508
各実施例及び比較例を官能評価試験に供した。具体的には良く訓練され、日常飲料等の評価を行っているパネラー8人(n=8)が飲料を試飲し、香り立ち、果実感、呈味感、熟味感、ケミカル感について採点し、8人がつけた点数の平均値を評価として採用した。また、無果汁アルコール飲料の評価項目についてはアルコール感を追加し評価した。なお、評価点は、対象となる飲料に対して、評価香料の代わりに0.1重量%の水を添加したブランク飲料の各項目の評価点を一律に3.0とし、この3.0点を基準として各実施例及び比較例における各項目が良い評価であれば大きい点をつけることとして、「1、2、3、4、5」のいずれかの点数をつけることによって採点した。
ここで、香り立ちとは、口中香ではなく鼻で感じた香りであり、トップノートで感じるものをいう。香り立ちが高ければ、香料としての本来の効果としての香りづけ効果が高いと評価できるといえる。果実感とは、みずみずしさを想起させる口中香と風味であり、トップノートからミドルノートで感じるものをいう。呈味感とは、直接舌に残るような余韻に起因する口中香と風味であり、ミドルノートからラストノートで感じるものをいう。熟味感とは、まとわりつくような香りを伴う口中香と戻り香及び風味によってなり、ミドルノートからラストノートで感じるものをいう。また、熟味感は、完熟果実に感じられる甘さに感じられるものである。ケミカル感とは、人工的な臭いを伴う口中香及び風味であり、トップノートからミドルノートで感じるものをいう。また、ケミカル感は、香り立ちと共に鼻で感じる臭いとしても認識される。アルコール感は、アルコール由来の刺激感を伴う口中香及び風味であり、ミドルノートからラストノートで感じるものをいう。なお、トップノート、ミドルノート、及びラストノートとは、香りの変化を指し、飲料を口に含んだ直後にトップノートが感じられ、時間が経つにつれてミドルノート、ラストノートが感じられる。
また、特に果実感、呈味感、及び熟味感が向上することによって、飲料の飲みごたえが高まる。一方、ケミカル感は飲料に対して違和感として感じられるため、低いほど飲料の飲み易さが高まる。また、アルコール感に関しても、人により好みが分かれる項目であるものの、低い方が飲み易さを高める。
以上の評価基準をもとに官能評価を行った無果汁清涼飲料、無果汁炭酸飲料、果汁入り清涼飲料、及び無果汁アルコール飲料に関する各実施例及び比較例の評価結果を表10〜表21に示す。
Figure 2019208508
Figure 2019208508
Figure 2019208508
〔無果汁清涼飲料に対する評価結果について〕
表10〜表12の結果より、グレープ、アップル、レモンによる香りづけがされた実施香料1〜3は、いずれも無果汁清涼飲料の香り立ち、果実感、呈味感、熟味感の評価項目においても評価基準としたブランクの評価点3.0を上回り、かつネガティブとした評価項目、ケミカル感ではブランクの評価点3.0を下回った。さらに、実施香料1〜3によれば、果実感、呈味感、熟味感の評価項目が3.5以上の評価点であったことで、無果汁清涼飲料に対する明確な飲みごたえの向上が得られることが分かった。さらに、実施例1−1〜1−3の評価は、各評価項目において、比較例1−1〜1−9の評価結果以上の結果であった。
この結果より、D−アミノ酸発酵液(前記乳酸菌発酵処理によって産生されたD−アミノ酸と前記乳酸菌発酵処理物との混合液)及びチロソール発酵液(前記酵母発酵処理によって産生されたチロソールと酵母発酵処理物との混合液)を併せて配合することによって、全ての評価項目について、標準としたブランクよりも高い評価が得られたことにより、総合的評価として、無果汁清涼飲料の飲みごたえを向上させる飲料用香料を実現することができた。
Figure 2019208508
Figure 2019208508
Figure 2019208508
〔無果汁炭酸飲料に対する評価結果について〕
表13〜表15の結果より、グレープ、アップル、レモンによる香りづけがされた実施香料1〜3は、いずれも無果汁炭酸飲料の香り立ち、果実感、呈味感、熟味感の評価項目においても評価基準としたブランクの評価点3.0を上回り、かつネガティブとした評価項目、ケミカル感ではブランクの評価点3.0を下回った。特に、香り立ち、果実感、呈味感、熟味感の評価項目において、比較香料1〜9ではブランクの評価3.0を下回る評価をされたものがあったのに対して、実施香料1〜3を用いた場合には、香り立ち、果実感、呈味感、熟味感の評価項目において全て評価点3.0を上回った。さらに、実施香料1〜3によれば、果実感、呈味感、熟味感の評価項目が3.5以上の評価点であったことで、無果汁炭酸飲料に対する明確な飲みごたえの向上が得られることが分かった。さらに、実施例2−1〜2−3の評価は、各評価項目において、比較例2−1〜2−9の評価結果以上の結果であった。
この結果より、D−アミノ酸発酵液及びチロソール発酵液を併せて配合することによって、全ての評価項目について標準としたブランクよりも高い評価が得られたことにより、総合的評価として、無果汁清涼飲料の飲みごたえを向上させる飲料用香料を実現することができた。
Figure 2019208508
Figure 2019208508
Figure 2019208508
〔果汁入り清涼飲料に対する評価結果について〕
表16〜表18の結果より、グレープ、アップル、レモンによる香りづけがされた実施香料1〜3は、いずれも果汁入り清涼飲料の香り立ち、果実感、呈味感、熟味感の評価項目においても評価基準としたブランクの評価点3.0を上回り、かつネガティブとした評価項目、ケミカル感ではブランクの評価点3.0を下回った。特に、香り立ち、果実感、呈味感、熟味感の評価項目において、比較香料1〜9ではブランクの評価3.0を下回る評価をされたものがあったのに対して、実施香料1〜3を用いた場合には、香り立ち、果実感、呈味感、熟味感の評価項目において全て評価点3.0を上回った。さらに、実施香料1〜3によれば、果実感、呈味感、熟味感の評価項目が3.5以上の評価点であったことで、果汁入り清涼飲料に対する明確な飲みごたえの向上が得られることが分かった。さらに、実施例3−1〜3−3の評価は、各評価項目において、比較例3−1〜3−9の評価結果以上の結果であった。
この結果より、D−アミノ酸発酵液及びチロソール発酵液を併せて配合することによって、全ての評価項目について標準としたブランクよりも高い評価が得られたことにより、総合的評価として、果汁入り清涼飲料の飲みごたえを向上させる飲料用香料を実現することができた。
Figure 2019208508
Figure 2019208508
Figure 2019208508
〔無果汁アルコール飲料に対する評価結果について〕
表19〜表21の結果より、グレープ、アップル、レモンによる香りづけがされた実施香料1〜3は、いずれも無果汁アルコール飲料の香り立ち、果実感、呈味感、熟味感の評価項目においても評価基準としたブランクの評価点3.0を上回り、かつネガティブとした評価項目であるケミカル感及びアルコール感ではブランクの評価点3.0を下回った。特に、香り立ち、果実感、呈味感、熟味感の評価項目において、比較香料1〜9ではブランクの評価3.0を下回る評価をされたものがあったのに対して、実施香料1〜3を用いた場合には、香り立ち、果実感、呈味感、熟味感の評価項目において全て評価点3.0を上回った。さらに、実施香料1〜3によれば、果実感、呈味感、熟味感の評価項目が3.5以上の評価点であったことで、無果汁アルコール飲料に対する明確な飲みごたえの向上が得られることが分かった。さらに、実施例4−1〜4−3の評価は、各評価項目において、比較例4−1〜4−9の評価結果以上の結果であった。
この結果より、D−アミノ酸発酵液及びチロソール発酵液を併せて配合することによって、全ての評価項目について標準としたブランクよりも高い評価が得られたことにより、総合的評価として、無果汁アルコール飲料の飲みごたえを付加させる飲料用香料を実現することができた。さらに、本発明によれば、当該飲料用香料の製造方法、及び飲料の果実感、呈味感、及び熟味感を向上させることによって改善する方法を提供することができる。
以上より、本発明に係る乳酸菌により発酵処理された乳酸菌発酵処理物と、当該発酵処理によって生成されたD−アミノ酸とを含有し、且つ、酵母により発酵処理された酵母発酵処理物と、当該発酵処理によって生成されたチロソールとを含有する発酵物配合香料を添加することによって、無果汁清涼飲料、及び無果汁炭酸飲料、及び果汁入り清涼飲料、及び無果汁アルコール飲料に対して、果実感、呈味感、熟味感を向上させ、飲みごたえのある飲料とすることができる。また、ケミカル感やアルコール感を低減した飲料とすることができる。
実施香料1に使用したグレープ香料に、化合物単体で構成されてなるD−アミノ酸を250ppbおよび化合物単体で構成されてなるチロソールを2ppb配合した香料(実施香料4)を調整した。
また、同じく実施香料1に使用したグレープ香料に、発酵由来のD−アミノ酸を250ppb含む乳酸発酵トマト汁と発酵由来のチロソールを2ppb含むストロベリー果汁発酵液とを配合した香料(実施香料5)を調製した。内訳を表22に示す。
Figure 2019208508
表23に、官能試験の対象とした実施例及び比較例の処方の一覧を示す。なお、表23で用いた無果汁アルコール飲料は、前記実施例で用いた無果汁アルコール飲料と同一のものである。また、表23中に記載された数値は重量%で示されるものとする。
Figure 2019208508
各実施例を官能評価試験に供した。具体的には良く訓練され、日常飲料等の評価を行っているパネラー6人(n=6)が飲料を試飲し、香り立ち、果実感、呈味感、熟味感、ケミカル感、アルコール感について採点し、6人がつけた点数の平均値を評価として採用した。なお、評価点は、対象となる飲料に対して、評価香料の代わりに0.1重量%の水を添加したブランク飲料の各項目の評価点を一律に3.0とし、この3.0点を基準として各実施例及び比較例における各項目が良い評価であれば大きい点をつけることとして、「1、2、3、4、5」のいずれかの点数をつけることによって採点した。
Figure 2019208508
表24の結果より、実施例5−1及び実施例5−2のいずれにおいても果実感、呈味感、熟味感の評価項目におけるブランクの評価基準3.5を上回り、明確な飲みごたえの向上効果を示した。また、表24の結果から、D−アミノ酸及びチロソールを化合物単体として添加した場合にも飲みごたえの向上効果が得られることが分かった。
さらに、D−アミノ酸含有発酵液、及びチロソール含有発酵液配合香料が添加された実施例5−2においては、果実感、呈味感、及び熟味感が全て4.0を上回り、顕著な飲みごたえの向上効果が得られることが分かった。また、実施例5−1及び実施例5−2のいずれにおいてもネガティブとした評価項目であるケミカル感、アルコール感ではブランクの評価点3.0を下回った。
この結果より、D−アミノ酸及びチロソールを併せて配合することによって、全ての評価項目が標準としたブランクよりもバランスよく高い評価が得られたことにより、総合的評価として、飲料の飲みごたえを付加させる飲料用香料を実現することができた。また、D−アミノ酸及びチロソールは、それぞれを発酵液と共に配合することで、より飲みごたえを高くする効果を発揮し得る飲料用香料を実現することができた。さらに、本発明によれば、当該飲料用香料の製造方法、及び飲料の果実感、呈味感、及び熟味感を向上させることによって改善する方法を提供することができる。また、ケミカル感やアルコール感を低減した飲料とすることができる。
<食品に対する評価>
前期の実施香料4および実施香料5に係る発酵物配合香料を添加したゼリー、シャーベットの比較評価を行った
表25、表26に官能試験の対象とした実施例及び比較例の処方の一覧を示す。なお、表中に記載された数値は重量%で示されるものとする。
Figure 2019208508
Figure 2019208508
各実施例及び比較例を官能評価試験に供した。具体的には良く訓練され、日常食品等の評価を行っているパネラー6人(n=6)がゼリーおよびシャーベットを試飲し、香り立ち、果実感、呈味感、熟味感、ケミカル感について採点し、6人がつけた点数の平均値を評価として採用した。なお、評価点は、対象となる飲料に対して、評価香料の代わりに0.2重量%の水を添加したブランク飲料の各項目の評価点を一律に3.0とし、この3.0点を基準として各実施例及び比較例における各項目が良い評価であれば大きい点をつけることとして、「1、2、3、4、5」のいずれかの点数をつけることによって採点した。
果実感、呈味感、及び熟味感が向上することによって、食品の食べごたえが高まる。一方、ケミカル感は食品に対して違和感として感じられるため、低いほど食品の食べ易さが高まる。
Figure 2019208508
Figure 2019208508
表27,28の結果より、実施例6−1、6−2、7−1、及び7−2のいずれにおいても果実感、呈味感、熟味感の評価項目におけるブランクの評価基準3.0を上回り、かつネガティブとした評価項目であるケミカル感の評価点3.0を下回った。
また、表27の実施例6−1、及び表28の実施例7−1の結果から、D−アミノ酸及びチロソールを化合物単体として添加した場合にも食べごたえの向上効果が得られることが分かった。
さらに、表27の実施例6−2、及び表28の実施例7−2の結果から、D−アミノ酸含有発酵液とチロソール含有発酵液とが配合された香料を添加した場合においては、果実感、呈味感、及び熟味感が全て4.0を上回り、顕著な食べごたえの向上効果が得られることが分かった。さらに香り立ちについても3.0を超える評価が得られ、食べごたえだけでなく果実の香りを強く感じさせる香料を実現することができた。
この結果より、D−アミノ酸及びチロソールを併せて配合することによって、全ての評価項目について標準としたブランクよりも高い評価が得られたことにより、総合的評価として、食品の食べごたえを付加させる食品用香料を実現することができた。さらに、本発明によれば、当該食品用香料の製造方法、及び食品の果実感、呈味感、及び熟味感を向上させることによって改善する方法を提供することができる。また、ケミカル感を低減した食品とすることができる。

Claims (31)

  1. D−アミノ酸及びチロソールを含有する飲料用香料。
  2. 前記D−アミノ酸を250ppb以上含有すると共に、前記チロソールを2ppb以上含有する請求項1に記載の飲料用香料。
  3. 前記D−アミノ酸が、D−アラニン、D−アスパラギン酸、及びD−グルタミン酸を含む群から選択される1種若しくは2種以上を含んでなる請求項1若しくは2に記載の飲料用香料。
  4. 前記D−アミノ酸が、乳酸菌発酵処理によって生成されてなるものである請求項1〜3のいずれかに記載の飲料用香料。
  5. 前記乳酸菌発酵処理に用いられる乳酸菌は、ペディオコッカス・アシドラクティシ(Ped.acidilactici)、ラクトバチルス・カゼイ(Lb.casei)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lb.reuteri)、及びラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lb.delbruekii ssp. bulgaricus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lb.plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lb.brevis)から選ばれる乳酸菌のうち少なくとも1種の乳酸菌である請求項4に記載の飲料用香料。
  6. 前記乳酸菌発酵処理された乳酸菌発酵処理物を含む請求項4若しくは5に記載の飲料用香料。
  7. 前記チロソールが、酵母発酵処理によって生成されてなるものである請求項1〜6のいずれかに記載の飲料用香料。
  8. 前記酵母発酵処理に用いられる酵母は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ピキア属(Pichia)から選ばれる酵母のうち少なくとも1種の酵母である請求項7に記載の飲料用香料。
  9. 前記酵母発酵処理された酵母発酵処理物を含む請求項7若しくは8に記載の飲料用香料。
  10. D−アミノ酸及びチロソールを配合する飲料用香料の製造方法。
  11. 前記D−アミノ酸を250ppb以上配合すると共に、前記チロソールを2ppb以上配合する請求項10に記載の飲料用香料の製造方法。
  12. 前記D−アミノ酸として、D−アラニン、D−アスパラギン酸、及びD−グルタミン酸を含む群から選択される1種若しくは2種以上を配合する請求項10若しくは11に記載の飲料用香料の製造方法。
  13. 乳酸菌発酵処理によって生成した前記D−アミノ酸を配合する請求項10〜12のいずれかに記載の飲料用香料の製造方法。
  14. 前記乳酸菌発酵処理によって50ppm以上の前記D−アミノ酸を産生する請求項13に記載の飲料用香料の製造方法。
  15. 前記乳酸菌発酵処理に用いられる乳酸菌は、ペディオコッカス・アシドラクティシ(Ped.acidilactici)、ラクトバチルス・カゼイ(Lb.casei)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lb.reuteri)、及びラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lb.delbruekii ssp. bulgaricus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lb.plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lb.brevis)から選ばれる乳酸菌のうち少なくとも1種の乳酸菌である請求項13若しくは14に記載の飲料用香料の製造方法。
  16. 前記乳酸菌発酵処理された乳酸菌発酵処理物、及び前記D−アミノ酸を同時に配合させる請求項13〜15のいずれかに記載の飲料用香料の製造方法。
  17. 酵母発酵処理によって生成した前記チロソールを配合する請求項10〜16のいずれかに記載の飲料用香料の製造方法。
  18. 前記酵母発酵処理によって0.1ppm以上のチロソールを産生する請求項17に記載の飲料用香料の製造方法。
  19. 前記酵母発酵処理に用いられる酵母は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ピキア属(Pichia)から選ばれる酵母のうち少なくとも1種の酵母である請求項17若しくは18に記載の飲料用香料の製造方法。
  20. 前記酵母発酵処理された酵母発酵処理物、及び前記チロソールを同時に配合させる請求項17〜19のいずれかに記載の飲料用香料の製造方法。
  21. D−アミノ酸及びチロソールを含有する飲料用香料を飲料に添加することによって飲料の果実感、呈味感、及び熟味感を改善する方法。
  22. D−アミノ酸及びチロソールを含有する飲料用香料を飲料に添加することによって飲料のケミカル感、若しくはアルコール感を低減する方法。
  23. D−アミノ酸及びチロソールを含有する食品用香料。
  24. 前記D−アミノ酸を250ppb以上含有すると共に、前記チロソールを2ppb以上含有する請求項23に記載の食品用香料。
  25. 前記D−アミノ酸が、D−アラニン、D−アスパラギン酸、及びD−グルタミン酸を含む群から選択される1種若しくは2種以上を含んでなる請求項23若しくは24に記載の食品用香料。
  26. 前記D−アミノ酸が、乳酸菌発酵処理によって生成されてなるものである請求項23〜25のいずれかに記載の食品用香料。
  27. 前記乳酸菌は、ペディオコッカス・アシドラクティシ(Ped.acidilactici)、ラクトバチルス・カゼイ(Lb.casei)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lb.reuteri)、及びラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lb.delbruekii ssp. bulgaricus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lb.plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lb.brevis)から選ばれる乳酸菌のうち少なくとも1種の乳酸菌である請求項26に記載の食品用香料。
  28. 前記乳酸菌発酵処理された乳酸菌発酵処理物を含む請求項26若しくは27に記載の食品用香料。
  29. 前記チロソールが、酵母発酵処理によって生成されてなるものである請求項23〜28のいずれかに記載の食品用香料。
  30. 前記酵母は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ピキア属(Pichia)から選ばれる酵母のうち少なくとも1種の酵母である請求項29に記載の食品用香料。
  31. 前記酵母発酵処理された酵母発酵処理物を含む請求項29若しくは30に記載の食品用香料。
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