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JP2019148731A - 画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】定着装置の定着部材の軸方向における摩耗状態を簡易な方法で検知することにより定着部材の寿命を精度よく予測可能な画像形成装置を提供する。【解決手段】画像形成装置は、画像形成部と、定着装置と、温度検知装置と、制御部と、を備える。定着装置は、記録媒体の搬送方向に対し画像形成部の下流側に配置され、加熱装置により加熱される被加熱回転体と、被加熱回転体に当接して定着ニップ部を形成する加圧部材と、で構成される定着部材を有する。温度検知装置は、被加熱回転体および加圧部材の少なくとも一方の軸方向の複数の領域の表面温度を検知する。制御部は、複数の領域の表面温度が所定温度に到達するまでの時間に基づいて被加熱回転体および加圧部材の少なくとも一方の軸方向における表面層の層厚分布を推定し、推定された層厚分布に基づいて被加熱回転体および加圧部材の少なくとも一方の寿命を予測する。【選択図】図6

Description

本発明は、記録媒体上に転写されたトナー像を定着する定着装置を備えた複写機、プリンター等の画像形成装置に関し、特に、定着ローラーや加圧ローラー等の定着部材の寿命を予測する方法に関するものである。
従来の電子写真方式の画像形成装置においては、帯電装置により均一に帯電された感光体ドラム等の像担持体上に露光装置からレーザー照射を行うことにより、帯電を部分的に減衰させた所定の静電潜像を形成し、現像装置により静電潜像にトナーを付着させてトナー像とした後、転写手段を用いてトナー像を用紙(記録媒体)上に転写し、定着装置により未定着トナーを加熱、加圧して永久像とする画像形成プロセスが実行される。
定着装置は、定着ローラーや定着ベルト等の被加熱回転体と加圧ローラー等の加圧部材とで構成される定着部材で用紙を搬送しながらトナーを溶融する装置である。定着部材は、駆動時間や通紙枚数によって表面の摩耗状態が変化する。寿命を超えて定着部材を使用し続けると、画像不良や定着不良を引き起こす。
そのため、長期に亘って安定した画像品質を得るためには、被加熱回転体や加圧部材等の定着部材の表面状態を正確に検知し、寿命を精度よく予測する必要がある。特に、被加熱部材や加圧部材の軸方向の表面状態は通紙する用紙のサイズ等によって摩耗の度合いが変わるため、正確に予測を行う必要がある。
そこで、定着装置の寿命を予測する方法が種々提案されており、例えば特許文献1には、定着装置の温度を検知する温度検知手段と、記録材のサイズ毎に定着装置を通過した時間を計測する計測手段と、温度検知手段によって検知された温度と、計測手段によって計測された時間とに基づいて定着部材の寿命を判断する制御手段とを備える画像形成装置が開示されている。
また、特許文献2には、所定温度以下の状態からの起動回数を記録し、その起動回数に応じて定着装置の状態を予測して定着装置の温度を制御することにより、消費電力を抑えながら定着装置の消耗を抑えるようにした画像形成装置が開示されている。
特開2016−90830号公報 特開2016−80987号公報
しかしながら、特許文献1のように用紙サイズ毎の定着装置の温度と時間から寿命を精度よく予測するのは実質困難である。その理由は、定着部材の表面の摩耗は用紙の種類によって大きく異なり、同一時間摩擦したとしても摩耗状態は大きく異なるためである。
用紙のエッジ部では裁断による表面粗さの増加や紙粉量の増加により定着部材の摩擦が大きくなる傾向があり、また用紙が通過しない領域は用紙による摩擦が発生せず、定着部材の摩耗量が少なくなるため、用紙サイズは摩耗を予測するうえで重要なパラメータである。しかし、用紙の種類はサイズのみで決まるものではなく、使用される材料によって表面粗さが異なる。定着部材の摩耗は用紙の表面粗さ、圧力(定着ニップ圧)、速度差若しくは摩擦時間によって決まるものであり、用紙のサイズや摩擦時間、温度のみで軸方向の摩耗状態を予測することは困難である。即ち、特許文献1の方法のみで定着部材の摩耗状態を精度よく予測することは困難であった。
また、定着部材の表層はフッ素系のコーティング材若しくはチューブ材を用いるのが一般的であり、用紙と比較すると表面粗さは著しく小さい。この場合、用紙が通過していない状況下においては定着部材同士が接触した状態で長時間回転したとしても表面が摩耗することはほぼ無く、あったとしても通紙時の摩耗と比較すれば無視できる量であるといえる。従って、所定温度以下の状態からの起動回数によって定着装置の寿命を予測する特許文献2の方法を用いて定着部材の摩耗状態を精度よく予測することは困難であった。
本発明は、上記問題点に鑑み、定着装置の定着部材の軸方向における摩耗状態を簡易な方法で検知することにより定着部材の寿命を精度よく予測可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、画像形成部と、定着装置と、温度検知装置と、制御部と、を備えた画像形成装置である。画像形成部は、記録媒体にトナー像を形成する。定着装置は、記録媒体の搬送方向に対し画像形成部の下流側に配置され、加熱装置により加熱される被加熱回転体と、被加熱回転体に当接して定着ニップ部を形成する加圧部材と、で構成される定着部材を有し、定着ニップ部を通過する記録媒体を加熱および加圧することによりトナー像を前記記録媒体に定着させる。温度検知装置は、被加熱回転体および加圧部材の少なくとも一方の軸方向の複数の領域の表面温度を検知する。制御部は、複数の領域の表面温度が所定温度に到達するまでの時間に基づいて被加熱回転体および加圧部材の少なくとも一方の軸方向における表面層の層厚分布を推定し、推定された層厚分布に基づいて被加熱回転体および加圧部材の少なくとも一方の寿命を予測する。
本発明の第1の構成によれば、被加熱回転体および加圧部材の少なくとも一方の軸方向の複数箇所における目標温度までの昇温時間に基づいて、軸方向における表面層の層厚分布を正確に推測することができる。そのため、表面の粗い記録媒体を想定して予め被加熱回転体若しくは加圧部材の寿命を短く設定しておくなどの対策をとる必要がなくなり、ユーザーの使用状況に応じた適正な寿命枚数に設定することが可能となる。また、従来のように定着温度や通紙時間のみで寿命を算出するのではなく、累積印字枚数の増加に伴う表面層の層厚の推移から、印字を継続した場合にどの程度の印字枚数で画像品質が低下し始める層厚に達するのかを推測することができ、被加熱回転体および加圧部材の少なくとも一方の寿命を精度よく予測することができる。
本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の側面断面図 画像形成装置100に搭載される定着装置15の側面断面図 定着装置15に用いられる定着ローラー21の部分断面図 定着装置15に用いられる加圧ローラー22の部分断面図 画像形成装置100の制御経路の一例を示すブロック図 定着ローラー対20に対する第1温度センサー33の配置を示す斜視図 定着ローラー21の表面の摩耗量が大きい領域と小さい領域とで、ヒーター26により定着ローラー21を加熱したときの時間と表面温度との関係を示すグラフ 定着ローラー21の表面の目標温度到達時間とコート層21bの層厚との関係を示すグラフ 図6の領域R1、R2における累積印字枚数と定着ローラー21のコート層21bの層厚との関係を示すグラフ 定着ローラー対20に対する用紙Sの通紙方向を縦通紙とした状態を示す斜視図 本実施形態の画像形成装置100における定着ローラー21の寿命予測と通紙方向の切り換え通知手順を示すフローチャート 加圧ローラー22の表面温度を検知する第2温度センサー35を配置した定着ローラー対20の斜視図
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の側面断面図である。画像形成装置(例えばモノクロプリンター)100内には、帯電、露光、現像及び転写の各工程によりモノクロ画像を形成する画像形成部Pが配設されている。画像形成部Pには、感光体ドラム5の回転方向(図1の時計回り方向)に沿って、帯電装置4、露光装置(レーザー走査ユニット等)7、現像装置8、転写ローラー14、クリーニング装置19が配設されている。
画像形成動作を行う場合、帯電装置4により時計回り方向に回転する感光体ドラム5の表面が一様に帯電される。そして、原稿画像データに基づく露光装置7からのレーザービームにより感光体ドラム5上に静電潜像が形成され、現像装置8により静電潜像に現像剤(以下、トナーという)が付着されてトナー像が形成される。この現像装置8へのトナーの供給はトナーコンテナ9から行われる。なお、画像データはパソコン(図示せず)等から送信される。また、感光体ドラム5の回転方向に対しクリーニング装置19の下流側には、感光体ドラム5表面の残留電荷を除去する除電装置(図示せず)が設けられている。
上記のようにトナー像が形成された感光体ドラム5に向けて、用紙が給紙カセット10又は手差し用紙トレイ11から用紙搬送路12及びレジストローラー対13を経由して搬送され、転写ローラー14(画像転写部)により感光体ドラム5の表面に形成されたトナー像が用紙に転写される。トナー像が転写された用紙は感光体ドラム5から分離され、定着装置15に搬送されてトナー像が定着される。定着装置15を通過した用紙は、用紙搬送路16により画像形成装置100の上部に搬送され、排出ローラー対17により排出トレイ18に排出される。
図2は、図1の画像形成装置100に搭載される定着装置15の側面断面図である。定着装置15は、定着ローラー対20と、定着進入ガイド23と、用紙検知センサー24と、分離板25と、第1温度センサー33とを備えている。なお、図2においては定着装置15のハウジングは記載を省略している。
定着ローラー対20は、駆動モーター(図示せず)により図2において時計回り方向に回転する定着ローラー21と、定着ローラー21に従動して反時計回り方向に回転する加圧ローラー22とで構成される。加圧ローラー22は図示しない付勢手段により所定の圧力で定着ローラー21に圧接されて定着ニップ部Nを形成しており、定着ニップ部Nを通過する用紙上の未定着トナーを定着させる。
本実施形態に用いる定着ローラー21の構成としては、例えば、図3に示すように円筒型ステンレスからなる基材21aの外周面にPFA樹脂(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)のコート層(離型層)21bを積層したものが挙げられる。また、加圧ローラー22の構成としては、図4に示すようにアルミニウム製の芯金22aにシリコーンゴム層(弾性層)22bを積層し、PFAチューブ(離型層)22cで被覆したものが挙げられる。
定着ローラー21内にはヒーター26が内蔵されている。本実施形態ではヒーター26としてハロゲンヒーターを用いている。また、励磁コイルとコアとを有する誘導加熱部を備えたIHヒーターを用いて定着ローラー21の外部から加熱する構成としても良い。
用紙搬送方向(図2の右から左方向)に対し定着ニップ部Nの上流側には、用紙を定着ニップ部Nへ案内するための定着進入ガイド23が設けられている。また、定着進入ガイド23の上流側直近には、用紙の先端部および後端部の通過を検知する用紙検知センサー24が配置されている。用紙検知センサー24は、例えば、用紙搬送路上に突出して用紙の通過により揺動する定着アクチュエーターと、定着アクチュエーターの揺動によりONまたはOFFされるPI(フォトインタラプター)センサーとで構成される。
定着ローラー21の回転方向(時計回り方向)に対し定着ニップ部Nの下流側には、定着ローラー21から用紙を分離する分離板25が配置されている。分離板25は、定着ローラー21の幅方向(図2の紙面と垂直な方向)に延びる板状部材であり、定着処理後の用紙を定着ローラー21の表面から分離する。
用紙搬送方向に対し分離板25の上流側端部(図2では右下端部)であって幅方向(図2の紙面と垂直な方向)の両端縁には、一対の間隔規制部材27が固定されている。間隔規制部材27が定着ローラー21の外周面の軸方向両端部に当接することにより、分離板25の上流側端部と定着ローラー21の表面との間隔が所定間隔に設定される。
転写ローラー14(図1参照)によりトナー像が転写された用紙は図2の左方向に進み、ハウジングの上流側開口部より定着装置15内に搬入され、定着進入ガイド23に沿って定着ローラー対20の定着ニップ部Nに案内される。用紙が定着ニップ部Nを通過するとき、所定の温度および圧力により加熱、加圧され、用紙上のトナー像が永久像とされる。その後、用紙は分離板25により定着ローラー21から分離されてハウジングの下流側開口部より定着装置15の外部に搬送され、排出ローラー対17(図1参照)から画像形成装置100の外部に排出される。
定着ローラー21の回転方向に対し定着ニップ部Nの上流側には、サーミスター等から成る第1温度センサー33が配置されている。第1温度センサー33は、定着ローラー21の表面温度を非接触で検知する。
第1温度センサー33による検知結果は制御部90(図5参照)に送信される。そして、第1温度センサー33の検知結果に基づいて制御部90から制御信号が送信され、ヒーター26に流れる電流をON/OFFすることにより定着温度の制御を行う。また、第1温度センサー33の検知結果に基づいて、後述するように定着ローラー21の表面の摩耗状態を予測する。
図5は、画像形成装置100の制御経路を示すブロック図である。なお、画像形成装置100を使用する上で装置各部の様々な制御がなされるため、画像形成装置100全体の制御経路は複雑なものとなる。そこで、ここでは制御経路のうち、本発明の実施に必要となる部分を重点的に説明する。
画像入力部40は、画像形成装置100にパソコン等から送信される画像データを受信する受信部である。画像入力部40より入力された画像信号はデジタル信号に変換された後、一時記憶部94に送出される。
操作部70には、液晶表示部71、各種の状態を示すLED72が設けられており、画像形成装置100の状態を示したり、画像形成状況や印字部数を表示したりするようになっている。画像形成装置100の各種設定はパソコンのプリンタードライバーから行われる。
制御部90は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)91、読み出し専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)92、読み書き可能な記憶部であるRAM(Random Access Memory)93、一時的に画像データ等を記憶する一時記憶部94、カウンター95、タイマー97、画像形成装置100内の各装置に制御信号を送信したり操作部70からの入力信号を受信したりする複数(ここでは2つ)のI/F(インターフェイス)96を少なくとも備えている。
ROM92には、画像形成装置100の制御用プログラムや、制御上の必要な数値等、画像形成装置100の使用中に変更されることがないようなデータ等が収められている。RAM93には、画像形成装置100の制御途中で発生した必要なデータや、画像形成装置100の制御に一時的に必要となるデータ等が記憶される。
一時記憶部94は、画像入力部40より入力され、デジタル信号に変換された画像信号を一時的に記憶する。カウンター95は、印字枚数を累積してカウントする。タイマー97は、定着ローラー21および加圧ローラー22の表面温度が所定温度に到達するまでの時間を計測する。
上述したように、定着ローラー21の表面に形成された離型層が摩耗することによる画像不良が発生しやすいという問題点があった。具体的には、定着ニップ部Nを通過する用紙との摩擦により定着ローラー21のコート層21bが摩耗すると、用紙上の未定着トナーを溶融した溶融トナーが定着ローラー21の表面に付着し易くなる。その結果、用紙が定着ローラー21に貼り付いてしまいジャムが発生する。また、定着ローラー21に付着した溶融トナーが次の用紙の画像面に再付着して画像汚れが発生する。
そこで、本発明の定着装置15では、定着ローラー21の表面温度が所定温度に到達するまでの時間(昇温速度)に基づいて定着ローラー21の表面の摩耗状態を予測する。以下、定着ローラー21の表面の摩耗状態を予測する方法について説明する。
具体的には、図6に示すように、定着ローラー21の軸方向の複数箇所(ここでは領域R1〜R5の5箇所)において第1温度センサー33により表面温度を継続して測定し、タイマー97により各領域R1〜R5の表面温度が所定温度(目標温度)に到達するまでの時間(目標温度到達時間)を計測する。
図7は、定着ローラー21の表面の摩耗量が大きい領域と小さい領域とで、ヒーター26により定着ローラー21を加熱したときの時間と表面温度との関係を比較したグラフである。定着ローラー21の表面のコート層21bの摩耗量が大きい領域(図5の破線)では、コート層21bの熱容量が減少する。そのため、コート層21bの摩耗量が大きい領域での目標温度Tまでの到達時間t1は、コート層21bの摩耗量が小さい領域(図5の実線)での目標温度Tまでの到達時間t2に比べて短くなる。
図8は、定着ローラー21の表面の目標温度到達時間とコート層21bの層厚との関係を示すグラフである。図8に示すように、目標温度到達時間とコート層21bの層厚とは相関しており、目標温度到達時間に基づいてコート層21bの層厚を推定することができる。
従って、図8に示した目標温度到達時間とコート層21bの層厚との関係を予めRAM93(或いはROM92)に記憶しておき、タイマー97により計測された各領域R1〜R5での目標温度到達時間と比較することで定着ローラー21の軸方向におけるコート層21bの層厚分布を予測することができる。
図9は、図6の領域R1、R2における累積印字枚数と定着ローラー21のコート層21bの層厚との関係を示すグラフである。図9では印字に伴う用紙との摩擦によってコート層21bの層厚が減少する場合を想定しており、コート層21bの層厚が一定値A(例えば5μm)まで低下すると、画像品質が低下するため定着ローラー21の交換が必要となる。
定着ローラー21の軸方向の端部近傍の領域R1は、図6に示したように用紙Sの幅方向のエッジ部の通過頻度が高く摩耗が進行しやすい領域である。そのため、領域R1でのコート層の層厚(図9の▲のデータ系列)は、用紙Sの幅方向のエッジ部分の通過頻度が低く摩耗が進行しにくい領域R2でのコート層の層厚(図9の●のデータ系列)と比べて同じ枚数を印字したときの層厚の減少量が大きくなっている。
従来の方法では、定着ローラー21の軸方向の各部分におけるコート層21bの層厚分布を正確に測定できず、定着ローラー21の寿命を精度よく予測することができなかった。例えば摩耗の小さい部分を測定して寿命に達していないと判断してしまい、画像品質が低下した状態で印字を実行してしまう等の問題が発生する可能性があった。また、画像品質の低下を防ぐために、摩耗が大きい場合を想定して予め定着ローラー21の寿命を短く設定すると、不必要な定着ローラー21の交換を行う場合が生じてしまう。
本実施形態によれば、定着ローラー21の軸方向の複数箇所における目標温度までの昇温時間に基づいて、軸方向におけるコート層21bの層厚分布を正確に推測することができる。そのため、表面の粗い用紙を想定して予め定着ローラー21の寿命を短く設定しておくなどの対策をとる必要がなくなり、ユーザーの使用状況に応じた適正な寿命枚数に設定することが可能となる。
また、従来のように定着温度や通紙時間のみで寿命を算出するのではなく、図9に示した累積印字枚数の増加に伴うコート層21bの層厚の推移から、印字を継続した場合にどの程度の印字枚数で画像品質が低下し始める層厚に達するのかを推測することができ、定着ローラー21の寿命を精度よく予測することができる。
なお、定着ローラー21は製造時の条件、即ちコート層21bの成膜条件によって周方向に層厚ムラが生じている場合がある。そのため、軸方向の各領域R1〜R5における温度測定、およびそれに基づくコート層21bの軸方向の層厚分布、および層厚推移の予測を行う際に、定着ローラー21の周方向の異なる位置で温度測定を行うと、製造時の層厚ムラの影響で温度測定の結果が異なり、層厚分布および層厚推移の予測精度が低下してしまう可能性がある。
そこで、第1温度センサー33による温度測定を行う際に、常に定着ローラー21の周方向において同じ位置を測定することで、層厚分布および層厚推移の予測精度を向上させることができる。定着ローラー21の周方向の同じ位置を測定する方法としては、定着ローラー21の外周面にマーキングを行い、反射型のPI(フォトインタラプター)センサー等でマーキング位置を検知したタイミングで温度測定を行えばよい。
さらに、用紙Sのエッジ部の通過頻度が高くコート層21bの摩耗が進行しやすい領域R1、R5の層厚が一定値以下となった場合、用紙Sの通紙方向を横通紙(図6参照)から図10に示す縦通紙に変更するように通知することが好ましい。これにより、用紙のエッジ部の通過位置が領域R1、R5から領域R2、R4に変わるため、領域R1、R5での摩耗量を低減させて定着ローラー21の寿命を延長することができる。
一方、通常の用紙Sの通紙方向が図10に示す縦通紙である場合は、用紙のエッジ部の通過頻度が高い領域R2、R4の摩耗が進行しやすくなる。そこで、領域R2、R4の層厚が一定値以下となった場合、図6に示すように用紙Sの通紙方向を横通紙に変更するように通知すればよい。なお、画像形成装置100において通紙方向を縦通紙と横通紙の両方に変更できるのは、縦通紙が可能な最大用紙サイズよりも小さい用紙サイズである。例えば縦通紙が可能な最大用紙サイズがA3サイズである場合、通紙方向を縦通紙と横通紙の両方に変更できるのはA4以下のサイズとなる。
図11は、本実施形態の画像形成装置100における定着ローラー21の寿命予測と通紙方向の切り換え通知手順を示すフローチャートである。図1〜図10を参照しながら、図11のステップに沿って定着ローラー21の交換、および用紙の通紙方向を切り換える手順について説明する。
パソコン等の上位機器から印字開始命令が入力されると(ステップS1)、定着ローラー21および加圧ローラー22から成る定着ローラー対20が回転駆動を開始する。同時にヒーター26への通電が開始され、第1温度センサー33による定着ローラー21の表面温度の検知も開始される。
次に、制御部90は第1温度センサー33により定着ローラー21の領域R1〜R5の表面温度の測定を開始する(ステップS2)。そして、目標温度(例えば定着可能温度)に到達するまでの目標温度到達時間を計測する(ステップS3)。制御部90は、計測された目標温度到達時間と、RAM93(またはROM92)に記憶された目標温度到達時間とコート層21bの層厚との関係に基づいてコート層21bの軸方向の層厚分布を推定する(ステップS4)。
なお、ステップS3、S4によるコート層21bの軸方向の層厚分布の推定は、印字毎に行う必要はなく、前回の層厚分布の推定からの累積印字枚数が所定枚数(例えば1k枚)に到達したとき等、所定のタイミングで行えばよい。
次に、制御部90は、領域R1〜R5のいずれかでコート層21bの層厚が閾値A(図9の一定値Aに相当、例えば5μm)以下と推測されるか否かを判断する(ステップS5)。コート層21bの層厚が閾値A以下の領域が存在する場合は(ステップS5でYes)、制御部90からの制御信号により、液晶表示部71に定着ローラー21の交換を促す通知を行い(ステップS6)、処理を終了する。
一方、領域R1〜R5の全てにおいてコート層21bの層厚が閾値Aよりも大きいと推測される場合は(ステップS5でNo)、次に領域R1、R5でコート層21bの層厚が閾値B(B>A)以下と推測されるか否かを判断する(ステップS7)。領域R1、R5でコート層21bの層厚が閾値B以下と推測される場合は、制御部90からの制御信号により、液晶表示部71に横通紙から縦通紙への挿通方向の変更を促す通知を行う(ステップS8)。
領域R1、R5でコート層21bの層厚が閾値Bよりも大きいと推測される場合は(ステップS7でNo)、次に領域R2、R4でコート層21bの層厚が閾値B(B>A)以下と推測されるか否かを判断する(ステップS9)。領域R2、R4でコート層21bの層厚が閾値B以下と推測される場合は、制御部90からの制御信号により、液晶表示部71に縦通紙から横通紙への挿通方向の変更を促す通知を行い(ステップS10)、処理を終了する。
上記の制御によれば、コート層21bの軸方向の層厚分布に基づいて定着ローラー21の交換時期を判断することにより、定着ローラー21の寿命を正確に決定することができる。従って、定着ローラー21が寿命に到達しても交換されないことによる画像不具合の発生や、寿命に到達していないのに係わらず定着ローラー21が交換されてしまう事態を確実に防止することができる。
また、コート層21bの軸方向の層厚分布に基づいて用紙Sの挿通方向を切り換えることにより、用紙Sのエッジ部が当たる位置を変化させてコート層21bの局所的な摩耗を抑制することができ、定着ローラー21の寿命を延長することができる。
なお、上記の制御例では領域R1〜R5のいずれかでコート層21bの層厚が閾値A以下と推測された時点で定着ローラー21の交換を促す通知を行ったが、コート層21bの層厚が閾値Aよりも大きいと推測された時点で領域R1〜R5のいずれかでコート層21bの層厚が閾値A以下になると推定される累積印字枚数を予測し、予測した累積印字枚数に到達したとき定着ローラー21の交換を促す通知を行うようにしてもよい。
また、用紙Sの挿通方向の変更を促す通知を行った場合は、挿通方向が変更された場合にコート層21bの層厚が閾値A以下になると推定される累積印字枚数を予測し、予測した累積印字枚数に到達するまでの印字可能枚数を通知するようにしてもよい。
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、定着ローラー21と加圧ローラー22とで形成される定着ニップ部Nに未定着トナー画像を担持した用紙を挿通することによってトナーを定着する熱ローラー定着方式の定着装置15を例に挙げて説明したが、定着ローラー21に代えて無端状の定着ベルトを備え、定着ベルトとこれに圧接される加圧部材とで形成される定着ニップ部に未定着トナー画像を担持した用紙を挿通することによってトナーを定着するベルト定着方式の定着装置にも適用可能である。
また、上記実施形態では定着ローラー21の軸方向の複数箇所の表面温度を検知する第1温度センサー33を設け、定着ローラー21のコート層21bの層厚分布を推定する例について説明したが、加圧ローラー22のPFAチューブ22cの層厚分布についても同様の方法によって推定することができる。
例えば図12に示すように、第1温度センサー33に加えて加圧ローラー22の軸方向の複数箇所(領域R1′〜R5′)の表面温度を検知する第2温度センサー35を設け、定着ローラー21のコート層21bおよび加圧ローラー22のPFAチューブ22cの両方の層厚分布を推定して定着ローラー21および加圧ローラー22の寿命を予測するようにしてもよい。
また、本発明は図1に示したようなモノクロプリンターに限らず、カラープリンター、モノクロ及びカラー複写機、デジタル複合機、或いはファクシミリ等、定着装置を備えた他の画像形成装置にも適用できるのはもちろんである。
本発明は、定着ローラーや加圧ローラー等の定着部材を備えた定着装置に利用可能である。本発明の利用により、定着部材の軸方向における摩耗状態を簡易な方法で精度よく予測可能な定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
15 定着装置
20 定着ローラー対(定着部材)
21 定着ローラー(被加熱回転体)
21a 基材
21b コート層(表面層)
22 加圧ローラー(加圧部材)
22a 芯金
22b シリコーンゴム層
22c PFAチューブ(表面層)
26 ヒーター(加熱装置)
33 第1温度センサー(温度検知装置)
35 第2温度センサー(温度検知装置)
71 液晶表示部(通知装置)
90 制御部
100 画像形成装置
P 画像形成部
S 用紙(記録媒体)

Claims (5)

  1. 記録媒体にトナー像を形成する画像形成部と、
    前記記録媒体の搬送方向に対し前記画像形成部の下流側に配置され、加熱装置により加熱される被加熱回転体と、前記被加熱回転体に当接して定着ニップ部を形成する加圧部材と、で構成される定着部材を有し、前記定着ニップ部を通過する前記記録媒体を加熱および加圧することにより前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着装置と、
    を備えた画像形成装置において、
    前記被加熱回転体および前記加圧部材の少なくとも一方の軸方向の複数の領域の表面温度を検知可能な温度検知装置と、
    前記複数の領域の表面温度が所定温度に到達するまでの時間に基づいて前記被加熱回転体および前記加圧部材の少なくとも一方の軸方向における表面層の層厚分布を推定し、推定された前記層厚分布に基づいて前記被加熱回転体および前記加圧部材の少なくとも一方の寿命を予測する制御部と、
    を備えたことを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記層厚分布に基づいて予測された前記被加熱回転体および前記加圧部材の少なくとも一方の寿命を通知可能である通知装置を備え、
    前記制御部は、前記複数の領域のいずれかの前記表面層の層厚が閾値A以下であると推定されたとき、前記通知装置を用いて前記被加熱回転体若しくは前記加圧部材の交換を促す通知を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 前記制御部は、前記複数の領域の全てで前記表面層の層厚が閾値Aよりも大きいと推定されたとき、前記複数の領域のいずれかの前記表面層の層厚が閾値A以下になると推定される累積印字枚数を予測し、予測した前記累積印字枚数に到達したとき前記通知装置を用いて前記被加熱回転体若しくは前記加圧部材の交換を促す通知を行うことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
  4. 前記制御部は、前記複数の領域のいずれかの前記表面層の層厚が閾値B(B>A)以下であると推定されたとき、前記通知装置を用いて前記定着ニップ部を通過する前記記録媒体の挿通方向の切り換えを促す通知を行うことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の画像形成装置。
  5. 前記温度検知装置は、前記被加熱回転体および前記加圧部材の少なくとも一方の軸方向の複数の領域の表面温度を、常に周方向において同一の位置で検知することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。
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