以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
−油圧ショベル−
図1は本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの外観を表す側面図である。この図では、後述するキャブガード31(図6等)を図示省略している。後の図5も同様である。また、本実施形態では作業機の先端のアタッチメント23としてリフティングマグネットを装着した油圧ショベルを例として説明する。但し、アタッチメント23は、リフティングマグネットに代えて、作業に応じてバケットやグラップル等の他のアタッチメントに適宜交換される。以降において、運転席に座ったオペレータから見て前側(図1中の左側)、後側(同右側)、左側(図1の紙面に直交する方向の手前側)、右側(同奥側)を油圧ショベルの前、後、左、右とし、それぞれ単に前側、後側、左側、右側と記載する。
同図に示した油圧ショベルは、車体10及び作業機(フロント作業機)20を備えている。車体10は、走行体(下部構造体)11及び旋回体12を備えている。
走行体11は、本実施形態では無限軌道履帯を有する左右のクローラ13を備えたクローラ式であり、左右の走行駆動装置18により左右のクローラ13をそれぞれ駆動することで走行する。走行駆動装置18は油圧モータと減速機からなる。
旋回体12は、走行体11上に旋回装置(不図示)を介して旋回可能に設けられている。旋回体12の前部(本実施形態では前部左側)には、オペレータが搭乗する運転室(キャブ)14が設けられている。旋回体12における運転室14の後側には、原動機41(図4)や油圧駆動装置等を収容した動力室15が、最後部には機体の前後方向のバランスを調整するカウンタウェイト16が搭載されている。原動機41はエンジン(内燃機関)又は電動機である。旋回体12を走行体11に対して連結する旋回装置には旋回モータ(不図示)が含まれており、旋回モータによって走行体11に対して旋回体12が駆動されて旋回する。本実施形態における旋回モータは油圧モータであるが、電動モータを用いることもあれば、油圧モータ及び電動モータの双方を用いることもある。なお、運転室14は旋回体12のベースフレームである旋回フレーム17にリンクを介して連結され、油圧シリンダ(不図示)によって高さや傾斜角度が変更可能な可動式のものである。可動式の運転室の構成等については特開2013−014914号公報等に詳しく記載されている。
作業機20は土砂の掘削等の作業を行うための装置であり、旋回体12の前部(本実施形態では運転室14の右側)に設けられている。この作業機20は、ブーム21、アーム22、アタッチメント23、ブームシリンダ24、アームシリンダ25及びアタッチメントシリンダ26を備えた多関節型の作業装置である。ブーム21は左右に延びるピン(不図示)によって旋回体12のフレームに連結されている。ブームシリンダ24はブーム21と旋回体12とを連結している。ブームシリンダ24の伸縮に伴って旋回体12に対してブーム21が上下に回動する。アーム22は左右に延びるピン(不図示)によってブーム21の先端に連結されている。アームシリンダ25はアーム22とブーム21とを連結している。アームシリンダ25は作業機20の左右両側の側面にそれぞれ設けられており(計2本設けられており)、作業機20の左右両側の側面においてブーム21及びアーム22の側面に対して両端がそれぞれ回動可能に連結されている。アームシリンダ25の伸縮に伴ってブーム21に対してアーム22が回動する。アタッチメント23は水平左右に延びるピン(不図示)によってアーム22の先端に連結されている。アタッチメントシリンダ26はアタッチメント23とアーム22とをリンクを介して連結している。アタッチメントシリンダ26の伸縮に伴ってアーム22に対してアタッチメント23が回動する。
ブームシリンダ24、アームシリンダ25及びアタッチメントシリンダ26は作業機20を駆動する油圧シリンダである。ブームシリンダ24、アームシリンダ25、アタッチメントシリンダ26のうち複数を挙げる場合に、油圧シリンダ24〜26といったように「油圧シリンダ」と総称する場合がある。
−運転室−
図2は運転室14の外観構造を表す側面図、図3はその前面図である。運転室14は旋回フレーム17(図1)の上部における前部に支持され、旋回フレーム17の旋回中心に対して左右方向の一方側(本例では左側)にオフセットしている。但し、運転室14の配置は機体の右側であっても構わない。運転室14は、特に図示していないが運転席、操作装置51〜53(図4)、コンソールボックス、ゲートロックレバー等をボディ14aの内部に備えている。ボディ14aは運転席を包囲する運転室14の外郭であり、旋回フレーム17に固定されている。前述した通り本例の油圧ショベルは運転室14がリンクを介して昇降可能な構成であるため、厳密にはボディ14aはリンクに支持されたベッド上に固定されており、これらベッド及びリンクを介して旋回フレーム17に取り付けられている。運転室14を非可動式とした場合には、ボディ14aは旋回フレーム17に直接固定される。本実施形態ではボディ14aの左側壁にドア14bが設けられており、オペレータはドア14bを開閉して運転室14に対して乗降する。運転席はオペレータが座る座席であり、ボディ14a内の床板上に固定されている。床板もボディ14aと同様にベッド又は旋回フレーム17上に固定されている。
操作装置51〜53(図4)はそれぞれ油圧シリンダ24〜26の動作を指示するものであるが、上記の旋回モータの動作を指示する操作装置と合わせて、2本の操作レバーで操作する。つまりこれら操作装置は見かけ上は運転席の左右に1つずつ設置された2つの十字操作式のレバー装置であり、2つの操作装置が運転席の左側の1本の操作レバーを共用し、他の2つの操作装置が運転席の右側の1本の操作レバーを共用する。操作レバーは前後左右に傾斜操作され、前後方向の操作で対応する油圧アクチュエータの動作を指示し、左右方向の操作で対応する別の油圧アクチュエータの動作を指示する。なお、運転室14の内部には、例えば運転席の前側に走行操作用の操作装置も左右に並べて配置されている。
ゲートロックレバーは、寝かせた倒伏姿勢でオペレータの降車を妨げるように運転席の乗降側(本例では左側)に設置されたレバー状のゲートである。このゲートロックレバーを引き上げて運転席に対する乗降部を開放しなければ、オペレータは降車できないようになっている。ゲートロックレバーのポジションとして、寝かせた倒伏姿勢を操作系の「ロック解除位置」、引き上げた起立姿勢を操作系の「ロック位置」と記載する。ゲートロックレバーのポジションによってゲートロックバルブ54(図4)が作動するようになっている。
また、運転室14の内部は作業機停止装置の機能を停止させて作業機停止状態を解除する解除スイッチ39a(図4)が設置されている。
−油圧駆動装置−
図4は図1に示した油圧ショベルに備えられた油圧駆動装置の模式的な油圧回路と共に上記作業機停止装置を示す回路図である。説明済みのものについては、同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
まず図4を用いて油圧駆動装置について説明する。油圧駆動装置は、油圧シリンダ24〜26等を駆動する装置であって動力室15に収容されている。この油圧駆動装置30は、油圧ポンプ42〜44、コントロールバルブ45〜47、パイロットポンプ48及び操作装置51〜53等を含んでいる。
油圧ポンプ42〜44は油圧シリンダ24〜26等を駆動する作動油を吐出する可変容量型のポンプであり、原動機41により駆動される。油圧ポンプ42〜44から吐出された作動油は吐出配管42a〜44aを流れ、コントロールバルブ45〜47を経由してそれぞれ油圧シリンダ24〜26に供給される。油圧シリンダ24〜26からの各戻り油は、それぞれコントロールバルブ45〜47を介して戻り油配管49に流れ込んでタンクTに戻される。吐出配管42a〜44aには、この吐出配管42a〜44aの最高圧力を規制するリリーフ弁(不図示)が設けられている。図4では図示していないが、油圧アクチュエータを持つブレーカ等のアタッチメントをリフティングマグネットに代えて作業機20に装着した場合には、アタッチメントのアクチュエータも同様の回路構成で駆動される。なお、本実施形態では油圧シリンダ24〜26に対してそれぞれ異なる油圧ポンプ42〜44から作動油が供給される例を示しているが、油圧シリンダ24〜26に対して2つ以下の油圧ポンプで作動油を供給する構成とすることもある。
コントロールバルブ45〜47は油圧ポンプ42〜44から対応するアクチュエータに供給される作動油の流れ(方向及び流量)を制御する油圧駆動式の流量制御弁であり、油圧駆動部に入力される油圧信号により駆動される。コントロールバルブ45はブームシリンダ用、コントロールバルブ46はアームシリンダ用、コントロールバルブ47はアタッチメントシリンダ用である。旋回モータや走行モータ等の他のアクチュエータ用のコントロールバルブは図示省略してある。コントロールバルブ45〜47の油圧駆動部は対応する操作レバー装置に接続されている。コントロールバルブ45〜47は油圧駆動部に油圧信号が入力されると図中で右行(左切換位置側に移動)又は左行(右切換位置側に移動)し、油圧信号の入力が停止されるとバネの力で中立位置に復帰する構成である。コントロールバルブ45〜47の各中立位置は吐出配管42a〜44aを戻り油配管49に接続し、油圧シリンダ24〜26に対する作動油の給排を停止して、これら油圧シリンダ24〜26の伸縮動作を停止させる。例えばブームシリンダ用のコントロールバルブ45の左側の油圧駆動部に油圧信号が入力されると、図4においてコントロールバルブ45のスプールが油圧信号の大きさに応じた距離だけ右行する。これにより、油圧信号に応じた流量の作動油がブームシリンダ24のボトム側油室に供給され、油圧信号の大きさに応じた速度でブームシリンダ24が伸長しブーム21が上がる。
パイロットポンプ48はコントロールバルブ45〜47等の制御弁を駆動する油圧信号の元圧を出力する固定容量型ポンプであり、油圧ポンプ42〜44と同じく原動機41により駆動される。原動機41とは別の動力源でパイロットポンプ48を駆動する構成とすることもできる。パイロットライン48aはパイロットポンプ48の吐出配管であり、分岐して操作装置51〜53に接続している。このパイロットライン48aを介して、パイロットポンプ48から吐出された作動油が操作装置51〜53の信号出力弁(減圧弁)に供給される。
操作装置51〜53は、それぞれ対応するコントロールバルブ45〜47を駆動する油圧信号を操作に応じて生成し出力する油圧式のレバー操作装置であり、運転室14(図1)に備えられている。操作装置51はブーム操作用、操作装置52はアーム操作用、操作装置53はアタッチメント操作用であり、その他に旋回操作用の操作装置等もある。油圧ショベルの場合、前述した通り一般に操作装置51〜53は十字操作式のレバー装置である。
ブーム操作用の操作装置51は、ブーム上げ指令用の信号出力弁51a及びブーム下げ指令用の信号出力弁51bを備えている。信号出力弁51a,51bの入力ポートにはパイロットライン48aが接続している。ブーム上げ指令用の信号出力弁51aの出力ポートはブームシリンダ用のコントロールバルブ45の左側の油圧駆動部に接続している。ブーム下げ指令用の信号出力弁51bの出力ポートはコントロールバルブ45の右側の油圧駆動部に接続している。例えば操作装置51をブーム上げ指令側に倒すと信号出力弁51aが操作量に応じた開度で開く。これによりパイロットポンプ48の吐出油が、信号出力弁51aで操作量に応じて減圧されてコントロールバルブ45の左側の油圧駆動部に対する油圧信号として出力される。
同様に、アーム操作用の操作装置52は、アームクラウド指令用の信号出力弁52a及びアームダンプ指令用の信号出力弁52bを備えている。アタッチメント操作用の操作装置53は、アタッチメントクラウド指令用の信号出力弁53a及びアタッチメントダンプ指令用の信号出力弁53bを備えている。信号出力弁52a,52b,53a,53bの入力ポートは、パイロットライン48aに接続している。操作装置52,53の信号出力弁52a,53aの出力ポートはコントロールバルブ46,47の左側の油圧駆動部に接続している。操作装置52,53の信号出力弁52b,53bの出力ポートはコントロールバルブ46,47の右側の油圧駆動部に接続している。操作装置52,53の油圧信号の出力原理はブーム操作用の操作装置51と同様である。
また、パイロットライン48aには、ゲートロックバルブ54及び遮断弁装置38が設けられている。ゲートロックバルブ54はパイロットライン48aを開閉する開閉弁であり、この例ではノーマルクローズ型の電磁弁を例示している。上記ゲートロックレバーがロック解除位置にあるとき、例えばゲートロックレバーのポジションを検知するポテンショメータから出力される電気信号がゲートロックバルブ54に入力される。これによりゲートロックバルブ54が図中左側のポジションに切り換わり、パイロットライン48aが開通して操作装置51〜53にパイロット圧(油圧信号の元圧)が供給される。反対に上記ゲートロックレバーがロック位置でポテンショメータからの信号出力が停止した場合、ゲートロックバルブ54のソレノイドが消磁される。これによりゲートロックバルブ54が図中右側のポジションに切り換わり、パイロットライン48aが遮断されて操作装置51〜53へのパイロット圧の供給が遮断される。
−運転室保護装置−
本実施形態では、運転室14を保護するための運転室保護装置が設けられている。本実施形態における運転室保護装置は、キャブガード31(図2等)、フレーム32(図2等)、ガイド33(図2等)、緩衝部材34(図2等)、ガードセンサ35(図2等)、作業機停止装置36(図4)を備えている。
キャブガード31は、運転室14の前面の前側に設けた格子状の保護部材であり、図2に示したように運転室14の前面に沿って運転室14の前面との間に間隙を介して配置されている。またキャブガード31は、図3に示したように前から見ると運転室14の外形に合わせて縦に長い矩形状に形成されており、運転室14の前面を全体に覆っている。また、キャブガード31は上側部分と下側部分に分割されている。下側部分は、フレーム32に対して左右に延びる軸31a(図2)を介して回動可能に連結されている。上側部分は、フレーム32に対して右辺側がヒンジ31bを介して連結されて開閉可能な構成となっている。上側部分の左辺側には開閉をロックするロック装置31cが設けられている。
フレーム32はキャブガード31を支持する矩形の枠体であって、運転室14に搭乗したオペレータの前方の視界を妨げないように中央部は広く開口している。このフレーム32は運転室14とキャブガード31の間に介在し、左右両側のそれぞれ上下(つまり四隅)でガイド33によって運転室14の前面(本例では前支柱)に支持されている。ガイド33はフレーム32を固定的に支持するのではなく、運転室14の前面に対して進退可能(本例では前後にスライド可能)に支持する。ガイド33は前後に延びる短尺の部材であり、例えば外筒とこれに挿入された内筒からなる。運転室14とフレーム32のいずれか一方に外筒が固定され、他方に内筒が固定される。特には図示していないが、ガイド33には外筒に対する内筒の抜け止め機構も備わっている。本実施形態では、緩衝部材34としてコイルばねが各ガイド33の外筒に収容されて運転室14とフレーム32との間に介在している。フレーム32及びキャブガード31には、これらコイルばねの伸び力によって運転室14の前面から離れる方向に力が作用している。前方からの外力が作用していない状態では、これらコイルばねの伸び力に前方に押されてキャブガード31等は運転室14から最も離れた位置に保持される。以下、この状態のキャブガード31の位置を「原位置」と記載する。またキャブガード31に外力が働き、キャブガード31と共にフレーム32が運転室14に向かって移動するときには、その動作を緩衝する役割を緩衝部材34が果たす。
このとき、運転室14には、ガイド33と同様に前後に延びるガイドブラケット14cが固定されている。このガイドブラケット14cにはスライダー32aがスライド可能に係り合っている。スライダー32aは運転室14に対して進退するキャブガード31又はこれと固定関係にある要素に固定されている。本実施形態では、フレーム32における上下方向の中央よりもやや下寄りの位置に固定した棒状部材をスライダー32aとして例示している。ガイドブラケット14cはスライダー32aに位置を対応させて運転室14の前支柱から前方に突出して設けられている。但し、ガイドブラケット14cとスライダー32aの位置については特に限定されるものではない。キャブガード31が原位置にある状態でスライダー32aはガイドブラケット14cの前側に位置する。
また、ガイドブラケット14cには、上記のガードセンサ35が設けられている。ガードセンサ35はキャブガード31の移動を検知するものであり、非接触式のセンサでも良いが、本実施形態では例えば近接スイッチを用いてある。本実施形態では、キャブガード31が原位置にある状態で、ガイドブラケット14cにおけるスライダー32aよりも後側(運転室14に近い側)の位置にこのガードセンサ35が設けられている。つまり、キャブガード31に伴ってガイドブラケット14cに案内されて移動するスライダー32aをガードセンサ35で検知することで、キャブガード31の移動(具体的には後退)を検知する構成である。但し、ガードセンサ35の設置位置は、ガイドブラケット14cに対するスライダー32aの進退範囲の最も運転室14に近い位置よりは前側である。
上記の作業機停止装置36は、本実施形態では上記の遮断弁装置38(図4)で構成されている。遮断弁装置38はパイロットライン48a上でゲートロックバルブ54と直列に配置されており、本実施形態ではゲートロックバルブ54よりも下流側に位置しているが、ゲートロックバルブ54の上流側に配置しても良い。
遮断弁装置38は、電磁切換弁38aと油圧切換弁38bを備えている。電磁切換弁38aはパイロットライン48aから分岐した信号ライン48bに設けられており、油圧切換弁38bはパイロットライン48aに設けられている。油圧切換弁38bはノーマルオープンタイプの開閉弁であり、その油圧駆動部には信号ライン48bが接続している。一方の電磁切換弁38aはノーマルクローズタイプの開閉弁であり、そのソレノイドには、スライダー32aがガードセンサ35で検知されたことに伴って出力される電気信号(本例ではガードセンサ35の信号そのもの)が入力される。電磁切換弁38aのソレノイドが励磁されると信号ライン48bが開き、油圧切換弁38bの油圧駆動部に油圧信号が入力され、パイロットライン48aが閉じる。電磁切換弁38aのソレノイドが消磁されると信号ライン48bが閉じ、油圧切換弁38bの油圧駆動部への油圧信号が遮断され、パイロットライン48aが開く。従って、スライダー32aがガードセンサ35で検知され、キャブガード31が運転室14に向かって所定量移動したことが検知されたら、パイロットポンプ48から操作装置51〜53に供給されるパイロット圧が遮断される。操作装置51〜53へのパイロット圧が遮断されると、操作装置51〜53からコントロールバルブ45〜47に油圧信号が出力不能となり、コントロールバルブ45〜47が中立位置に復帰して油圧シリンダ24〜26の伸縮動作が停止する。なお、本実施形態において油圧切換弁38bが閉じた場合に遮断されるのは、作業機20の動作に関わる操作装置51〜53へのパイロット圧のみであり、例えば旋回操作用の操作装置へのパイロット圧は遮断されないものとする。
また、本実施形態に係る油圧ショベルには、作業機停止装置36の機能を停止させて作業機停止状態を解除する解除装置39が備わっている。解除装置39は解除スイッチ39aとリレースイッチ39bからなる。解除スイッチ39aは前述したように運転室14の内部に設けられている。回路上では、解除スイッチ39aはガードセンサ35に給電する電源37とリレースイッチ39bとの間に配置されており、リレースイッチ39bと電源37の間を接続したり遮断したりする。解除スイッチ39aにはオルタネートスイッチか、切り状態を基本として入り状態にすると入り状態が一定時間継続するようなタイマースイッチを用いることが好ましいが、モーメンタリスイッチを用いることもできる。
リレースイッチ39bは、作業機停止装置36、具体的には電磁切換弁38aのソレノイドとガードセンサ35との間に配置されており、ガードセンサ35と作業機停止装置36との間を接続したり遮断したりする。このリレースイッチ39bは消磁状態で作業機停止装置36とガードセンサ35とを電気的に接続し、解除スイッチ39aが入り状態となって励磁状態になると作業機停止装置36とガードセンサ35との間の電気的接続を遮断する。つまり解除スイッチ39aが入り状態の間は、ガードセンサ35の出力信号が作業機停止装置36に入力されることはなく、作業機停止装置36が機能しなくなる。
−動作−
原動機41を始動させた後、操作装置51〜53等を適宜操作することで、油圧シリンダ24〜26等の各アクチュエータが駆動され、作業機20や旋回体12、走行体11等が動作する。例えば作業機20をアームシリンダ25及びアタッチメントシリンダ26を伸長させて抱え込み姿勢をとると、機種や車格によっては図5に示したようにアタッチメント23が左右から見て運転室14に重なる位置まで移動する場合がある。本例で例示したアタッチメント23としてのリフティングマグネットは、それ自体は位置に関係なく運転室14には干渉しない。しかし、例えば長尺の鉄骨等を把持(吸着)している場合、それが左右に延びる姿勢でリフティングマグネットに把持されていれば、図5の姿勢に至る過程で被把持物である長尺の鉄骨が運転室14に干渉し得る。アタッチメント23の種類等によっては、アタッチメント23自体も運転室14に干渉し得る。以降、被把持物及びこれを把持したアタッチメント23を「被把持物等」と総称する。
被把持物等が運転室14に干渉する場合、被把持物等はキャブガード31に衝突する。被把持物等が衝突したキャブガード31は、ガイド33に案内されつつフレーム32と共に運転室14に近付く方向に移動する。そして、キャブガード31等の移動の過程で、図6に示したようにスライダー32aがガードセンサ35で検知されると、ガードセンサ35から作業機停止装置36に信号が出力される。これにより作業機停止装置36では、電磁切換弁38aが開くと同時に油圧切換弁38bが閉じ、パイロットライン48aが遮断される。こうしてパイロット圧が遮断されることで、操作装置51〜53からの油圧信号の出力が不能になり、コントロールバルブ45〜47が中立位置に強制復帰して作業機20の動作が停止する。操作装置51〜53からの油圧信号が出力不能となることは、操作装置51〜53のパイロットポンプ48と接続されている入力側が油圧切換弁38bを通してタンクTに接続され、出力側が上記入力側を通してタンクTに接続されることによる。
その後、被把持物等をキャブガード31から離して作業に復帰するためには、作業機20を動作させなければならない。被把持物等がキャブガード31に当たったままでは作業機20の停止状態が継続するが、解除スイッチ39aを入り状態にすることでこの状態を脱することができる。解除スイッチ39aを入り状態にすると、リレースイッチ39bが励磁され、ガードセンサ35と作業機停止装置36との電気的接続が遮断される。これにより電磁切換弁38aが消磁されて閉じると同時に油圧切換弁38bが開き、操作装置51〜53からコントロールバルブ45〜47への油圧信号の出力が可能となり、油圧シリンダ24〜26の動作が可能な状態となる。このようにして作業機停止装置36の機能を解除したら、操作装置51〜53を適宜操作して被把持物等をキャブガード31から離す。被把持物等が離れるとキャブガード31は緩衝部材34としてのコイルばねの復元力で運転室14から離れる方向に移動して原位置に復帰する。これに伴ってスライダー32aもガードセンサ35から遠ざかり、ガードセンサ35からの信号出力も停止する。その後、一定時間経過又は手動操作により解除スイッチ39aが切り状態に移行すると、作業機停止装置36を含む回路も被把持物等がキャブガード31に干渉する前の基本状態に復帰する。
−効果−
(1)運転室14に対してキャブガード31が進退可能に装着されているので、上記のように把持物等がキャブガード31に干渉してもキャブガード31が後退し、緩衝装置34も作用してキャブガード31に加わる衝撃荷重は緩和される。これと同時に、キャブガード31の移動がガードセンサ35で検知され、作業機停止装置36が作動して作業機20の動作が強制的に停止される。これによりキャブガード31により運転室14が保護されることは勿論のこと、キャブガード31等の変形も抑制することができる。キャブガード31等の変形が抑制できるので交換部品の発生も抑えられ、仮に部品交換の必要性が生じても変形の程度が抑えられるので交換作業に掛かる労力を低減できる。よって、本実施形態によれば交換部品の発生により休車状態に陥ることを抑制しつつ運転室を保護することができる。油圧ショベルが休車状態に陥ることを抑制できるので、油圧ショベルの稼働率の低下、ひいては現場全体の作業の進捗遅れの発生を抑えることができる。
また、運転室14の前面を全体に覆うキャブガード31で被把持物を受ける構成であるため、運転室14の特定部分に向かってくる被把持物に限らず、運転室14に向かってくる被把持物の全般に対して有効に機能する。
(2)ガードセンサ35の出力信号を作業機停止装置36に直接入力し、ガードセンサ35の出力信号で作業機停止装置36が作動する構成とした。そのためガードセンサ35の移動検知から作業機停止までの遅延時間が極めて短く、作業機停止装置36の迅速な応答性を確保することができる。
但し、発明の基本的な上記効果(1)を得る上では、例えばガードセンサ35の出力信号をコントローラに入力し、ガードセンサ35の出力信号に応じてコントローラから出力される信号により作業機停止装置36が作動する構成としても良い。また、例えば作業機停止装置36への信号線を電源37に接続し、その途中に設けたリレースイッチをガードセンサ35の出力信号で開閉する構成としても良い。
(3)作業機停止装置36が作動して作業機20の動作が不能な状態となっても、解除装置39によって作業機停止装置36の作動状態を解除でき、特に部品交換等の作業を経ずに上記効果(1)も相俟ってそのまま作業に復帰することができる。特に本実施形態では緩衝部材34にコイルばねを用いているので、作業機停止状態の解除手順を経て被把持物等をキャブガード31から離せばキャブガード31等は原位置に自然に復帰し、キャブガード31の位置を戻す作業も不要である。
但し、キャブガード31に対する衝撃荷重を吸収する限りにおいては、コイルばね以外の弾性部材も緩衝部材34として適用可能である。またキャブガード31の原位置への自然復帰の機能が不要な場合には、弾性部材に代えてダンパ等の復元機能を持たない部材や機構を緩衝部材34として用いても良い。
(4)また、仮にキャブガード31の進退範囲の後端でガードセンサ35がキャブガード31のスライダー32aを検知する構成とした場合、検知された時点でキャブガード31が拘束された状態となる。この場合、作業機停止装置36の応答遅延性によってはキャブガード31に必要以上の曲げ荷重が作用する可能性がある。それに対し、本実施形態ではストロークに余裕を残してキャブガード31の移動を検知する構成としたので、キャブガード31が後端まで押し込まれて拘束された状態になるまでに作業機20の動作を止めることができる。これによりキャブガード31に必要以上の曲げ荷重が作用することを抑制し、キャブガード31の変形抑制効果をより高めることができる。
(5)ゲートロックバルブ54も作業機停止装置36と同様に作動時には操作装置51〜53へのパイロット圧の供給を遮断する役割を果たす。しかし、ゲートロックバルブ54は作業機20の動作に関わる操作装置51〜53の他、旋回用の操作装置や走行用の操作装置へのパイロット圧も遮断するのに対し、作業機停止装置36が遮断するのは操作装置51〜53へのパイロット圧に限定される。ゲートロックバルブ54を作業機停止装置36として共用することも考えられるが、この場合にはキャブガード31に被把持物等が干渉した際に作業機20を含めて全ての機体動作が停止状態に陥ってしまう。それに対し、作業機停止装置36をゲートロックバルブ54とは別に設けたことで、キャブガード31に被把持物等が干渉した際に停止状態となるのが作業機20に限定され、走行や旋回等の動作は引き続き行うことができるようにすることができる。
但し、キャブガード31に被把持物等が干渉した際に作業機20を含めて全ての機体動作が停止状態になることが有意義である場合には、作業機停止装置36により操作装置51〜53以外の操作装置へのパイロット圧も遮断できるようにすることができる。また、ガードセンサ35でキャブガード31の移動が検出された際にゲートロックバルブ54が遮断位置に切り換わるように構成し、ゲートロックバルブ54で作業機停止装置36を兼ねる構成とすることもできる。この場合には部品点数を低減できる効果も期待できる。
−変形例−
上記実施形態では、キャブガード31に伴って移動するスライダー32aをガードセンサ35で検知する構成を例示したが、この構成には限定されない。例えばガードセンサ35がキャブガード31に伴って移動する構成とし、所定位置に固定したストライカのところまでガードセンサ35が移動したら信号が出力される構成であっても良い。
また、遮断弁装置38に電磁切換弁38aと油圧切換弁38bの2つの切換弁を用いる構成を例示したが、ゲートロックバルブ54と同様に1つの切換弁を用いた構成としても良い。
運転室と作業機の干渉を防止する干渉防止装置を採用した油圧ショベルにも本発明は適用可能であり、同様の効果を得る。干渉防止装置は標準的なバケットを装着した作業機と運転室の干渉を抑制する機能を備えているが、バケット以外のアタッチメントやアタッチメントで把持した把持物についてまで運転席との干渉を防止する機能を一般的には持たない。また上記実施形態に係る油圧ショベルのように運転室が移動する場合も同様である。従ってアタッチメントを交換した際や長尺物を把持した場合には、それらが運転席に干渉する可能性はある。このような場合にも作業機停止装置36等は有効に機能する。なお、干渉防止装置については、例えば特開平7−109750号公報に記載されている。
また、必要であれば、キャブガード31の移動量を段階的に検知して、例えば第一段階でアーム22の動作停止、第二段階で作業機20の全体の停止といったように段階的なインターロックを行うようにしても良い。
操作装置51〜53は油圧操作式を例示したが、電気レバー装置等の電気操作式の操作装置を採用した油圧ショベルにも本発明は適用可能である。電気操作式の操作装置を採用した場合、一般に操作装置の操作に伴う電気信号に応じてコントローラから指令信号が出力され、これにより駆動される電磁弁で生成された油圧信号によりコントロールバルブが駆動されて作業機が動作する。従って、例えばガードセンサ35の出力信号をコントローラに入力し、ガードセンサ35からの信号入力時には油圧信号を生成する電磁弁に対する指令信号が出力されなくなるようなプログラムをコントローラに格納する。これにより電気操作式の操作装置を採用した油圧ショベルにおいても、上記実施形態と同様のインターロックを実行することができる。
旋回体12を支持する下部構造体として走行体11を有する油圧ショベルに本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、地面や船体に固定されたポストを下部構造体とする定置式の油圧ショベルにも本発明は適用可能である。ホイール式の走行体を備えたホイールショベルにも適用可能である。