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JP2018527389A - 肝臓の再生を促進する方法 - Google Patents

肝臓の再生を促進する方法 Download PDF

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JP2018527389A JP2018514849A JP2018514849A JP2018527389A JP 2018527389 A JP2018527389 A JP 2018527389A JP 2018514849 A JP2018514849 A JP 2018514849A JP 2018514849 A JP2018514849 A JP 2018514849A JP 2018527389 A JP2018527389 A JP 2018527389A
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Abstract

本発明は、式(A):の化合物またはその薬学的に許容される塩を使用することにより、対象の肝臓の再生を加速するか、促進するか、もしくは増加させるか、または肝容量を増加させる方法に関し、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、m、およびnは、本明細書において記載されるとおりである。進行中の研究努力にもかかわらず、肝臓の再生および修復を促進する改善された方法の必要性が残っている。一連の肝毒性の薬剤、疾患、または病的な状態によって引き起こされる肝障害を処置するために肝実質細胞増殖を促進する治療上の戦略の開発が必要である。本発明は、こうした必要性に対応するものである。

Description

肝不全は、薬剤誘発性の肝毒性、ウイルス感染症、血管傷害、自己免疫性疾患、および外傷を含む、多くの慢性および急性の臨床状態において起こる。そのうえ、代謝の遺伝子異常を起こしやすい患者は、肝不全を発症する危険性があり得る。これらの臨床状態の結果として起こる肝不全の症状は、たとえば、急性肝炎、慢性肝炎、または肝硬変を含む。
慢性肝疾患は、長い間にわたる肝組織の緩やかな破壊によって特徴付けられる。肝硬変および線維症を含むいくつかの肝疾患は、このカテゴリーに入り、後者は、肝硬変の前兆となることが多い。慢性C型肝炎ウイルス感染および非アルコール性脂肪性肝炎は、慢性肝疾患の2つの重大な原因となる。肝硬変または線維症が肝臓で起こると、それは不可逆的になると一般に考えられる。一般的な処置は、現在、肝臓における肝硬変のあらゆるさらなる進行の予防および肝硬変から生じ得る合併症の緩和に集中している。肝硬変のより進行したステージでは、唯一の既知の処置は肝臓移植となる。
急性肝疾患では、肝臓は、損傷後に再生することができる。疾患が、新たな細胞を再生する肝臓の能力を超えて進行すると、体の代謝全体に著しく影響を与える。肝機能の損失は、不可欠な身体機能(すなわちエネルギー供給、酸塩基平衡、および体温調節)の破壊と組み合わさって不安定な代謝をもたらし得る。重大な肝障害後、肝組織は、その再生機能および代謝機能を失い、肝移植が一般に使用される治療上の戦略となる。
しかしながら、肝移植の臨床応用は、ヒト肝実質細胞、肝組織の入手可能性、および一度に安全に移植することができる肝臓細胞の数によって制限される。
肝臓を大きく切除された後に手術前の肝容量まで回復する患者の能力は、よく知られている。様々な媒介物質がインビトロおよびインビボの両方において肝臓の分裂促進因子となることが知られているが、肝再生に関与する正確なメカニズムは、依然として明らかにされていない(Michalopoulos,et al.Science,1997,276,60−66)。肝臓の再生を促進しようと努めるうえでの深刻な問題は、多くの治療剤のインビボにおける有効性が限られていることである。十分な肝機能容量の再生を促進する薬理学的処置の有用性は、そのため、肝不全から多くの死亡を予防し得る著しい進歩になるであろう。
臨床の場で肝実質細胞の増殖を促進するかまたは増加させる能力には、いくつかの重要な応用があるであろう。その能力は、健康な肝臓組織の数量を増加させ、かつ残りの肝機能容量が不十分であることによる術後の期間の肝不全から患者の死亡を予防することにより、以前には切除不可能であった肝臓の悪性疾患を切除することを可能にするであろう。さらに、毒性、代謝、またはウイルスが原因で肝不全に罹患している患者は、肝不全に先立って十分な肝機能を回復させるであろう速度で再生するように自らの肝臓を誘発することができれば、死亡または肝臓移植を免れ得る。
Michalopoulos,et al.Science,1997,276,60−66
進行中の研究努力にもかかわらず、肝臓の再生および修復を促進する改善された方法の必要性が残っている。一連の肝毒性の薬剤、疾患、または病的な状態によって引き起こされる肝障害を処置するために肝実質細胞増殖を促進する治療上の戦略の開発が必要である。本発明は、こうした必要性に対応するものである。
ウサギ(本明細書において「PVE研究ウサギ」と呼ぶ)におけるコンピューター断層撮影(CT)および門脈造影による測定ならびに門脈塞栓術についての研究の概要または実験アプローチならびにスケジュールを示すチャートである。 PVE研究ウサギの体重(グラム)対時間(日数)を示すグラフである。 PVE研究ウサギ(1グループ当たりn=11)の塞栓形成していない葉の尾側の肝体積の増加(CLV、%)対時間(日)を示すグラフである。 コンピューター断層撮影体積(CT、mL)対肝臓重量(グラム)を示すグラフである。 PVE研究ウサギ(1グループ当たりn=11)の塞栓形成した葉の頭側の肝葉体積レベルの減少(CrLV、%)対時間(日)を示すグラフである。 PVEの7日後のPVE研究ウサギの肥大性および萎縮性肝臓切片における増殖細胞核抗原(PCNA)の相対的な発現を示す棒グラフである。 PVEの7日後のPVE研究ウサギの肥大性および萎縮性肝臓切片における肝細胞増殖因子(HGF)の相対的な発現を示す棒グラフである。 PVEの7日後のPVE研究ウサギの肥大性および萎縮性肝臓切片におけるフォークヘッドボックスm1b(Foxm1b)の相対的な発現を示す棒グラフである。 PVEの7日後のPVE研究ウサギの肥大性および萎縮性肝臓切片における細胞分裂周期25B(Cdc25b)の相対的な発現を示す棒グラフである。 PVEの7日後のPVE研究ウサギの肥大性および萎縮性肝臓切片におけるコレステロール7α−ヒドロキシラーゼ(Cyp7a1)の相対的な発現を示す棒グラフである。 PVEの7日後のPVE研究ウサギの肥大性および萎縮性肝臓切片におけるステロール12α−ヒドロキシラーゼ(Cyp8b1)の相対的な発現を示す棒グラフである。 PVE研究ウサギの肥大性および萎縮性肝臓切片における胆汁酸トランスポーターベータ(organic solute transporter beta)(OSTB)の相対的な発現を示す棒グラフである。 PVE研究ウサギの肥大性および萎縮性肝臓切片における低分子ヘテロ二量体パートナー(SHP)の相対的な発現を示す棒グラフである。 PVE研究ウサギの回腸におけるファルネソイドX受容体(FXR)の相対的な発現を示す棒グラフである。 PVE研究ウサギの回腸における低分子ヘテロ二量体パートナー(SHP)の相対的な発現を示す棒グラフである。 PVE研究ウサギの回腸における増殖細胞核抗原(PCNA)の相対的な発現を示す棒グラフである。 PVE研究ウサギの回腸における胆汁酸トランスポーターベータ(OSTB)の相対的な発現を示す棒グラフである。 PVE研究ウサギの回腸における初期増殖応答タンパク質1(EGR1)の相対的な発現を示す棒グラフである。 PVE研究ウサギの回腸におけるフォークヘッドボックスm1b(Foxm1b)の相対的な発現を示す棒グラフである。 PVE研究ウサギの回腸における細胞分裂周期25b(cdc25b)の相対的な発現を示す棒グラフである。 PVE研究ウサギ(1グループ当たりn=5)における血清胆汁酸塩の総濃度(μmol/L)対時間(時間および日)を示すグラフである。 屠殺時の尾側の肝葉体重と相関した、CT容積測定によって決定されたCLVを示すグラフである。 全シーケンシャルスキャン時の1匹のウサギの肝胆道シンチグラフィー画像を示す。 (図11A)処置前の段階の体重1kg当たりのTLVを示す棒グラフである。(図11B)PVE後のCLVの増加を示す棒グラフである。(図11C)PVE後のCrLVの減少を示す棒グラフである。(図11D)肝胆道シンチグラフィーによって決定される99mTc−メブロフェニンの総肝摂取を示す棒グラフである。(図11E)−7日目のベースライン測定値からの、99mTc−メブロフェニン摂取に対する尾側の肝葉の貢献の増加を示す棒グラフである。(図11F)100×倍率のKi67染色肝臓切片の画像およびKi67陽性肝実質細胞の定量化を示す。(図11G)−7日目の値に比べた体重の変化率を示すグラフである。 (図12)PVE前および後の血漿ALT(アラニントランスアミナーゼ)レベルを示す。(図12B)PVE前および後の血漿AST(アスパラギン酸トランスアミナーゼ)レベルを示す。(図12C)PVE前および後の血漿γGT(ガンマ−グルタミルトランスフェラーゼ)レベルを示す。(図12D)PVE前および後の血漿ALP(アルカリホスファターゼ)レベルを示す。(図12E)尾側の肝葉のH&E染色切片の定量的スコアリングを示す。 回腸および肝臓の遺伝子発現に対するオベチコール酸の効果を示す。 循環胆汁酸塩のレベルを示す。 胆汁酸塩ホメオスタシス/増殖に関係する転写物レベルを示す。 部分肝切除術後の再生に対する実質性の肝疾患の影響を示す。 (図17A)コントロール(偽手術)およびOCA処置ありまたはrBDLの7日後の総肝臓重量(体重の割合として表現する)を示す。(図17B)コントロール(偽手術)およびOCA処置ありまたはrBDLの7日後の総肝臓重量(300g体重当たりの乾燥重量として表現する)を示す。(図17C)代表的なKi67染色肝臓切片を示す(図17D)Ki67陽性の定量評価である。(図17E)肝臓における増殖およびFXRに関係する遺伝子の発現レベルを示す。(図17F)回腸における増殖およびFXRに関係する遺伝子の発現レベルを示す。 肝臓増殖パラメーターおよび肝胆道損傷パラメーターの相関分析を示す。 (図19A)健康なラット(上の線)、胆汁うっ滞後のラット(rBDL、真ん中の線)、およびオベチコール酸により処置されたrBDLラット(OCA、下の線)の部分(70%)肝切除術(PHx)後の肝臓再成長を示す。(図19B)PHxの直後(左)および5日後(右)の残り肝臓の乾燥重量を示す。(図19C)PHx後の1日目(左)および5日目(右)の増殖肝実質細胞の数を示す。(図19D)様々な増殖およびFXRに関係する遺伝子の肝臓の発現を示す。 ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E、左)、ピクロシリウスレッド(PSR、右上)、ならびにKi67染色肝臓のスライドの代表的な画像を示す。 Bsep媒介性の胆汁酸を通しての胆汁うっ滞性の損傷に対するOCAの効果を示す。 ラットにおける血漿、肝臓、および胆汁の胆汁酸プール組成に対する閉塞性胆汁うっ滞およびオベチコール酸処置の影響を示す。
本発明の目的は、肝臓の再生を加速するか、促進するか、または増加させ、および肝容量を増加させる方法を提供することである。一態様では、本発明は、低下した肝機能を有する対象の肝臓の再生を加速するか、促進するか、または増加させる方法であって、治療有効量の式(A):
の化合物またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含み、式中、
が水素またはC〜Cアルキルであり、
、R、R、およびRがそれぞれに独立して水素またはヒドロキシルであり、
がCOH、C(O)NH(CHSOH、C(O)NH(CHCOH、またはOSOHであり、および
mおよびnがそれぞれに独立して1、2、または3である、方法に関する。
本発明は、低下した肝機能を有する対象において肝臓の再生を加速するか、促進するか、または増加させるための医薬の製造における、式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用にさらに関し、式中、R、R、R、R、R、R、m、およびnは、本明細書において定義されるとおりである。
本発明は、低下した肝機能を有する対象において肝臓の再生を加速するか、促進するか、または増加させるための式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩にも関し、式中、R、R、R、R、R、R、m、およびnは、本明細書において定義されるとおりである。
別の態様では、本発明は、低下した肝機能を有する対象の肝容量を増加させる方法であって、治療有効量の式(A):
の化合物またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含み、式中、
が水素またはC〜Cアルキルであり、
、R、R、およびRがそれぞれに独立して水素またはヒドロキシルであり、
がCOH、C(O)NH(CHSOH、C(O)NH(CHCOH、またはOSOHであり、および
mおよびnがそれぞれに独立して1、2、または3である、方法に関する。
本発明は、低下した肝機能を有する対象において肝容量を増加させるための医薬の製造における、式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用にさらに関し、式中、R、R、R、R、R、R、m、およびnは、本明細書において定義されるとおりである。
本発明は、低下した肝機能を有する対象において肝容量を増加させるための式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩にも関し、式中、R、R、R、R、R、R、m、およびnは、本明細書において定義されるとおりである。
本発明は、低下した肝機能を有する対象において肝臓の再生を加速するか、促進するか、もしくは増加させるか、または肝容量を増加させるための、式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含む医薬組成物にさらに関し、式中、R、R、R、R、R、R、m、およびnは、本明細書において定義されるとおりである。
本発明は、低下した肝機能を有する対象において肝臓の再生を加速するか、促進するか、もしくは増加させるか、または肝容量を増加させる方法における使用のための式(A)の化合物を含むキットにさらに関し、式中、R、R、R、R、R、R、m、およびnは、本明細書において定義されるとおりである。
特に定義されない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は、すべて本発明が属する当技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において本明細書に記載したものと同様のまたは均等な方法および材料を使用してもよいが、好適な方法および材料を以下に記載する。材料、方法、および例は単に例示であり、限定的であることを意図するものではない。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
定義
本明細書および請求項において使用されるいくつかの用語についてここにまとめる。
本明細書において使用される用語「肝疾患」は、肝臓の障害を指す。一般に、肝疾患は、体内の肝臓の形態学的なおよび/または機能的な完全性を結果として乱すあらゆる状態によって引き起こされ得る。肝疾患の病因および処置は、たとえばOxford Textbook of Medicine(Warrell,Oxford Textbook of Medicine,David A.Warrell,Timothy M.Cox,John D.Firth,Oxford University Press,USA;Fifth edition(July 22,2010))において記載される。
本明細書において使用されるように、用語「慢性肝疾患」は、肝実質の進行性の破壊および再生を伴い、線維症および肝硬変に至る肝臓の疾患プロセスを指す。慢性肝疾患の原因は、体内の肝臓および組織細胞の緩やかな悪化および再生をもたらすあらゆる状態とすることができる。このプロセスは、通常、線維症または肝硬変をもたらし、慢性肝不全の症例では場合により致命的になり得る。慢性肝疾患の原因の分類は5つにグループ分けされる。(i)B型肝炎およびC型肝炎またはサイトメガロウイルスもしくはエプスタインバーウイルスなどのウイルスが原因、(ii)ヘモクロマトーシス、非アルコール性脂肪性肝疾患、またはウィルソン病などの代謝が原因、(iii)自己免疫性慢性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、または原発性硬化性胆管炎などの自己免疫性の応答が原因、(iv)アルコール性肝疾患またはニトロフラントイン、アミオダロン、もしくはメトトレキサートなどの毒素に関係する原因、ならびに(v)右心不全などの他の種々の原因。慢性肝疾患の主な原因は、アルコールの過剰摂取であり、肝硬変および肝炎に至る。そのため、危険性の最も高いグループは、アルコール中毒の傾向がある人々である。慢性肝疾患に関連する症状は、肝臓内の変性のレベルに依存する。
用語「急性肝疾患」は、本明細書において使用されるように、黄疸などの肝疾患の第1のサイン後に急に重度の合併症が出現することを指し、肝臓が持続性の損傷を有していることを示す。合併症は、たとえば、血液中の血清アルブミンのレベルおよびプロトロンビン時間によって測定される、たとえば肝性脳症およびタンパク質合成障害である。1993年の分類は、超急性を1週間以内、急性を8〜28日、亜急性を4〜12週間と定義する(Williams,et al.Lancet,1993,342,273)。これは、疾患進展のペースが予後に強く影響を及ぼすという事実を反映する。根底にある病因は、転帰についてのもう1つの有意な決定要素となる(Grady,et al.Postgrad Med J,2005,81,148)。肝臓が機能するその能力を急に失う場合、「急性肝不全」が起こる。急性肝不全は、肝臓に対する破滅的な傷害後に直ちに進展する複雑な多臓器障害であり、脳症の発症に至る。より一般には、肝不全は、数年経過する間にゆっくりと発症するが、急性肝不全では、肝不全は数日で発症する。
本明細書において使用されるように、「移植された肝臓」は、対象に移植された肝臓を指し、さらに、ドナーの肝臓の一部分からなる移植に相当する、いわゆる「部分的な肝臓移植」を含む。肝移植は、門脈への肝実質細胞(増殖するまたは分化するように遺伝子修飾されたまたは刺激された)の注入も指す。門脈塞栓術(PVE)は、肝臓を大きく切除することが予定されている患者において予定残肝体積を増加させるために使用することができる。
肝移植との関連で使用されるように、用語「肝再生」は、失われた肝組織が肝臓移植片または部分的な肝臓移植片の肝実質細胞増殖によって取り替えられる形態の変化を指すが、肝機能の改善、回復、または正常化などの生化学的変化も含む。本発明の組成物によって処置される特定の対象は、たとえば、肝炎、アルコール、ウイルス、薬剤が原因の、もしくは原因不明の肝硬変症、または肝癌などの肝疾患によって引き起こされる肝不全を処置するために肝臓が完全に切除された後に部分的な肝臓移植を受けた患者を含む。
本明細書において使用される「肝臓の再生を加速する」、「肝臓の再生を促進する」、および「肝臓の再生を増加させる」という語句は、未処置のコントロールと比較した最終的な肝容量もしくは最終的な肝容量の増加(たとえば、コンピューター断層撮影によって決定されるように)またはその両方に達するのに必要な期間がより短いこと、最終的な容量およびその容量に達する速度の増加によって実証される。
式(A)の化合物の「治療有効量」は、1つまたは複数の化合物の量(数量または濃度)である。対象に投与される化合物の量は、肝障害の詳細なステージ、投与のモード、存在する場合には同時投与される化合物、ならびに健康状態、他の疾患、年齢、性別、遺伝子型、体重、および薬剤に対する耐性などの対象の特徴に依存する。当業者は、これらのおよび他の因子に依存して適切な投薬量を決定することができるであろう。
本明細書で使用する場合、「対象」は、ヒトまたは動物(動物の場合、より典型的には哺乳動物)を指す。一態様では、対象はヒトである。
用語「C〜Cアルキル」は、本明細書において使用されるように、1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有する直鎖または分岐炭化水素成分を指す。「C〜Cアルキル」は、1、2、3、または4個の炭素原子を有する直鎖または分岐炭化水素成分を指す。C〜Cアルキル成分の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、およびt−ブチルを含むが、これらに限定されない。
本明細書において使用されるように、用語「代謝産物」は、式(A)の化合物のグルクロン酸抱合誘導体および硫酸化誘導体を指し、1つ以上のグルクロン酸または硫酸成分が本発明の化合物に連結される。グルクロン酸成分は、化合物のヒドロキシル基(たとえば、3−ヒドロキシル、7−ヒドロキシル、11−ヒドロキシル、および/または12−ヒドロキシル)とのグリコシド結合を通して化合物に連結されてもよい。化合物の硫酸化誘導体は、ヒドロキシル基(たとえば、3−ヒドロキシル、7−ヒドロキシル、11−ヒドロキシル、および/または12−ヒドロキシル)の硫酸化を通して形成されてもよい。代謝産物の例は、本明細書において記載される化合物の3−O−グルクロニド、7−O−グルクロニド、11−O−グルクロニド、12−O−グルクロニド、3−O−7−O−ジグルクロニド、3−O−11−O−ジグルクロニド、3−O−12−O−ジグルクロニド、7−O−12−O−ジグルクロニド、および3−O−7−O−12−O−トリグルクロニドならびに本明細書において記載される化合物の3−硫酸塩、7−硫酸塩、11−硫酸塩、12−硫酸塩、3,7−二硫酸塩、3,11−二硫酸塩、3,12−二硫酸塩、7,12−二硫酸塩、3,7,11−三硫酸塩、および3,7,12−三硫酸塩を含むが、これらに限定されない。
本明細書において使用されるように、「薬学的に許容される塩」は、親化合物が、その酸または塩基の塩を形成することによって修飾される本発明の化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例は、アミンなどの塩基性残基の鉱物または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機化合物塩、および同種のものを含むが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩は、たとえば、無毒性の無機または有機酸から形成される、親化合物の一般的な無毒性の塩または第四級アンモニウム塩を含む。たとえば、そのような一般的な無毒性の塩は、2−アセトキシ安息香酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタン二スルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキシルレソルシル酸、ヒドラバム酸(hydrabamic)、臭化水素酸、塩酸、ヒドロヨージド(hydriodide)、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸(napsylic)、硝酸、蓚酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、スバセチン酸(subacetic)、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、およびトルエンスルホン酸から選択される無機酸および有機酸から誘導されるものを含むが、これらに限定されない。
「薬学的に許容されるキャリア」という語句は、当技術分野において認識されており、たとえば、ある器官または体の一部から別の器官または体の一部に任意の対象となる組成物を運搬または輸送するのに関与する、液体または固体の充填剤、希釈薬、賦形剤、溶媒、または封入剤などの薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを含む。それぞれのキャリアは、対象となる組成物の他の成分と適合性であり、患者にとって有害でないという意味で「許容される」。ある実施形態では、薬学的に許容されるキャリアは、非発熱性である。薬学的に許容されるキャリアとしての役割を果たし得る材料のいくつかの例は、(1)ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖、(2)コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン、(3)セルロースならびにカルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのその誘導体、(4)トラガント末、(5)バクガ、(6)ゼラチン、(7)滑石、(8)ココアバターおよび坐剤のろうなどの賦形剤、(9)ラッカセイ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、およびダイズ油などの油、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル、(13)アガー、(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱物質不含水、(17)等張生理食塩水、(18)リンガー溶液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸バッファー溶液、ならびに(21)医薬製剤中に利用される他の無毒性で適合性の物質を含む。
本明細書において使用されるように、「医薬組成物」は、式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含有する製剤を指す。一実施形態では、医薬組成物は、バルクまたは単位剤形である。単位剤形は、たとえば、カプセル剤、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器上の一本のポンプ、またはバイアルを含む様々な形態のいずれかである。組成物の単位用量の活性成分(たとえば、本発明の化合物またはその塩の製剤)の数量は、有効量であり、伴う個々の処置によって変動する。当業者は、患者の年齢および状態に依存して、投薬量に対して定型化された変動を加えることが必要であり得ることを十分に理解するであろう。投薬量は投与ルートにも依存するであろう。経口、眼球、点眼、肺、直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻内などを含む様々なルートが企図される。本出願の化合物の局所または経皮投与のための剤形は、散剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液剤、パッチ、および吸入剤を含む。別の実施形態では、活性化合物は、薬学的に許容されるキャリアおよび必要とされる任意の防腐剤、緩衝液、または噴射剤と滅菌状態下で混合される。
「併用療法」(または「同時療法」)は、本発明の化合物および少なくとも1つの第2の薬剤の、これらの治療剤(すなわち本発明の化合物および少なくとも1つの第2の薬剤)の相互作用から有益な効果を提供することが意図される特定の処置レジメンの一部としての投与を指す。併用の有益な効果は、治療剤の併用から結果として生じる薬物動態学的または薬力学的相互作用を含むが、これらに限定されない。これらの治療剤を併用した投与は、典型的に、定められた期間(通常、選択される併用に依存して数分間、数時間、数日間、または数週間)にわたって実行される。「併用療法」は、偶発的にかつ任意に本出願の併用をもたらす、個別の単独療法レジメンの一部としての2つ以上のこれらの治療剤の投与を包含することが意図されてもよいが、一般には意図されない。「併用療法」は、順次にこれらの治療剤が投与されることを包含することが意図され、すなわち、それぞれの治療剤は、異なる時間に投与され、これらの治療剤または治療剤の少なくとも2つの投与は実質的に同時である。実質的に同時の投与は、たとえば、一定の比率のそれぞれの治療剤を有する単一のカプセル剤を、またはそれぞれの治療剤の単一のカプセル剤を複数回にわたって対象に投与することによって達成することができる。それぞれの治療剤の順次のまたは実質的に同時の投与は、経口ルート、静脈内ルート、筋肉内ルート、および粘膜組織を通した直接的な吸収を含むが、これらに限定されない任意の適切なルートによって行うことができる。治療剤は、同じルートまたは異なるルートによって投与することができる。たとえば、選択される併用の第1の治療剤は、静脈内注射によって投与されてもよく、一方、併用の他の治療剤は、経口的に投与されていてもよい。代わりに、たとえば、治療剤はすべて経口的に投与されてもよく、または治療剤はすべて静脈内注射によって投与されてもよい。治療剤が投与される順序は厳密には重要ではない。
「併用療法」は、他の生物学的活性成分および非薬剤療法(たとえば、外科手術または機械的な処置)とさらに併用した、上記に記載される治療剤の投与も包含する。併用療法が非薬剤処置をさらに含む場合、非薬剤処置は、治療剤および非薬剤処置の併用の相互作用からの有益な効果が実現される限り、任意の適した時間に行われてもよい。たとえば、適切な場合、有益な効果は、非薬剤処置を治療剤の投与からおそらく数日またはさらに数週間にわたり一時的に除く場合になお実現される。
本発明の方法
本発明は、低下した肝機能を有する対象の肝臓の再生を加速するか、促進するか、もしくは増加させるか、または肝容量を増加させる方法であって、治療有効量の式(A):
の化合物またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含み、式中、
が水素またはC〜Cアルキルであり、
、R、R、およびRがそれぞれに独立して水素またはヒドロキシルであり、
がCOH、C(O)NH(CHSOH、C(O)NH(CHCOH、またはOSOHであり、および
mおよびnがそれぞれに独立して1、2、または3である、方法を提供する。
一実施形態では、方法は、肝臓の再生を促進するかまたは増加させることに関する。別の実施形態では、方法は、肝臓の再生を促進することに関する。なおも別の実施形態では、方法は、肝臓の再生を増加させることに関する。一実施形態では、方法は、肝臓の再生を加速することに関する。別の実施形態では、方法は、肝容量を増加させることに関する。
一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、水素である。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、非置換C〜Cアルキルである。さらなる実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、非置換C〜Cアルキルである。さらなる実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、メチル、エチル、およびプロピルから選択される。さらなる実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、エチルである。
一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、水素である。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、ヒドロキシルである。
一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、水素である。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、ヒドロキシルである。
一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、COHである。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、C(O)NH(CHSOHである。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、C(O)NH(CHCOHである。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、OSOHである。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、COHまたはOSOHである。
一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、水素である。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、ヒドロキシルである。
一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、水素である。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、ヒドロキシルである。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、α−ヒドロキシルである。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、β−ヒドロキシルである。
一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、メチル、エチル、またはプロピルであり、およびRは、水素である。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、メチル、エチル、またはプロピルであり、およびRは、水素である。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、メチル、エチル、またはプロピルであり、およびRおよびRは、それぞれ水素である。
一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、Rは、水素であり、およびRは、ヒドロキシルである。
一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、mは、1である。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、mは、2である。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、mは、3である。
一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、nは、1である。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、nは、2である。一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、式中、nは、3である。
一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、化合物は、
またはその薬学的に許容される塩である。
一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、化合物は、
またはその薬学的に許容される塩である。
一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、化合物は、薬学的に許容される塩である。
一実施形態では、本発明において使用される化合物は、式(A)の化合物であり、塩は、ナトリウム塩またはトリエチルアンモニウム塩である。
一実施形態では、本発明において使用される化合物は、
である。
別の実施形態では、本発明において使用される化合物は、
である。
別の実施形態では、式(A)の化合物は、FXRアゴニストである。
肝再生は、たとえば、化学療法、脂肪症、または胆汁うっ滞によって引き起こされる実質性の病態を有する患者において著しく害される[DeMeijer 2010;Farges 2013;Hubert 2015]。
特に閉塞性胆汁うっ滞を有する患者において肝臓の大きい切除を実行する危険性は、数十年前に認識され[Dixon 1983]、胆道悪性疾患(biliary malignancy)を有する、黄疸にかかった患者の現在の外科的治療を形作った。胆汁うっ滞性の肝臓の不良な再生能は、切除に先立って胆汁うっ滞を緩和するためのまたは肝臓のサイズを増加させるための、術前胆道ドレナージ(van der Gaag,et al.N Engl J Med.2010,362(2):129−37)、門脈塞栓術(PVE)[VanGulik 2008]、およびALPPS(Oldhafer,et al.Ann Surg.2016,263(5):839−41)などの侵襲性の手順の導入に拍車をかけた。
ある実施形態では、式(A)の化合物は、損傷を受けた肝臓を再生するか、損傷を受けた肝臓の容量を増加させるか、もしくは損傷を受けた肝臓の機能を改善するのにまたはその組み合わせに使用するためのものである。
肝再生の増強、および/または肝容量の増加、および/または機能の改善は、肝臓または肝臓の切片が、対象の損傷を受けたまたは機能不全の肝臓を取り替えるために対象に移植される場合に所望されてもよい。一実施形態では、対象は、移植された肝臓を有する。一実施形態では、対象は、切除された肝臓を有する。一実施形態では、低下した肝機能は、外科的手術、疾患、病的な状態、または損傷の結果である。別の実施形態では、低下した肝機能は、外科的手術の結果である。一実施形態では、外科的手術は、肝動脈塞栓術または門脈操作(portal venous manipulation)である。一実施形態では、外科的手術は、肝動脈化学塞栓術(TACE)である。一実施形態では、外科的手術は、部分肝切除術である。一実施形態では、化合物は、外科的手術前もしくはその後にまたは組み合わせて投与される。
肝臓の再生を促進するか、または移植された肝臓もしくは肝臓切片の容量を増加させるために、式(A)の化合物は、肝臓が依然として生体外にある間、肝臓レシピエントに対する手術中に直ちに、および/または手術の数日後、移植される肝臓に直接加えられてもよい。肝再生が外科手術による肝臓の一部の計画的な除去(たとえば、肝臓中の腫瘍のために)または肝炎のために必要とされる場合、投与の期間は、手術前および手術後の投与期間に分けることができる。たとえば、投与が4〜5日間である場合、手術に先立って1〜2日間かつ手術後さらに3〜4日間、式(A)の化合物を投与することが可能である。
肝再生を必要とする状態は、肝臓の一部が外科手術のために除去されているか、肝臓が外傷のために損傷を受けているか、または肝臓が、程度が深刻な急性肝機能障害を引き起こした疾患プロセスのために損傷を受けている(除去されていない、たとえば肝炎)状況を含む。
一実施形態では、肝臓の損傷の原因となり得る疾患または状態は、アルコールへの暴露によって誘発される急性肝障害、たとえば脂肪症、アルコール性肝炎、もしくは肝硬変;A型肝炎などの急性ウイルス性肝炎;ウィルソン病などの銅もしくは鉄(ヘモクロマトーシス)の異常な蓄積をもたらす代謝性疾患;薬剤もしくは毒素への暴露によって引き起こされる急性肝障害、自己免疫性肝炎などの自己免疫性のプロセスによって引き起こされる急性肝炎、または急性脂肪性肝炎の肥満もしくは他の原因によって引き起こされる急性肝障害から選択される。
別の実施形態では、肝臓の損傷の原因となり得る疾患または状態は、B型肝炎もしくはC型肝炎ウイルス感染症またはアルコールによって誘発される慢性肝障害から選択される。B型慢性肝炎、肝硬変が含まれるが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)も含まれる。NAFLDは、単純性脂肪症から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)までの範囲に及ぶ、臨床の病的な症候群を説明するために選択された用語である。
一実施形態では、低下した肝機能は、脳腱黄色腫症(CTX)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、薬剤誘導性胆汁うっ滞、妊娠性肝内胆汁うっ滞、経静脈栄養関連胆汁うっ滞(PNAC)、細菌異常増殖または敗血症関連胆汁うっ滞、自己免疫性肝炎、慢性ウイルス性肝炎、アルコール性肝疾患、肝臓移植片関連移植片対宿主病、先天性肝線維症、総胆管結石症、肉芽腫性肝疾患、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、ウィルソン病、ゴーシェ病、ヘモクロマトーシス、およびアルファ1−アンチトリプシン欠損症から選択される疾患または病的な状態の結果である。
肝再生は、機能的であり、未処置コントロールと比較して、様々な凝固因子など、肝臓によって産生されるタンパク質の血清中でのレベルがより高いことによって明白な肝機能の改善をもたらすはずである。特に、肝機能または完全性は、当技術分野においてよく知られている多くのパラメーターのいずれかを測定することによって判定されてもよく、たとえば、長期血清プロトロンビン時間(血液凝固)は、損傷を受けた肝臓のサインであり、アルブミンレベルは、慢性肝疾患において減少し、血漿中のアルカリホスファターゼレベルは、大胆管閉塞症(large bile duct obstruction)、肝内胆汁うっ滞、もしくは肝臓の浸潤性疾患に伴って上がり、総ビリルビンの増加は、肝臓における病気のサインであり得、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)は、軽症で無症状のレベルの肝機能障害でさえ上昇し得、5’ヌクレオチダーゼレベルは、胆汁うっ滞または肝内もしくは肝外胆道系への損傷を反映し、または肝臓のグルコース産生は、損傷を受けた肝臓において低下する。
医薬組成物
「医薬組成物」は、対象への投与に適した形態の式(A)の1つ以上の化合物を含有する製剤である。一実施形態では、医薬組成物は、バルクまたは単位剤形である。投与の容易性および投薬量の均一性のために投薬単位形態で組成物を製剤することは有利であり得る。投薬単位形態についての規格は、活性試薬の特有の特徴および実現されるべき特定の治療効果によって決定され、それらに直接依存する。
考え得る製剤は、経口、舌下、頬、非経口(たとえば、皮下、筋肉内、または静脈内)、直腸、経皮を含む局所、鼻内、および吸入投与に適したものを含む。特定の患者に対する投与の最も適した手段は、処置されている疾患の性質および重症度または使用されている療法の性質ならびに活性化合物の性質に依存するであろうが、可能であれば、経口投与がFXR媒介性の疾患および状態の予防および処置に使用されてもよい。経口投与に適した製剤は、それぞれ所定量の活性化合物を含有する、錠剤、カプセル剤、カシェ剤、ロゼンジなどの別々の単位として、散剤もしくは顆粒剤として、水性もしくは非水性の液体中の溶液剤もしくは懸濁剤として、または水中油型もしくは油中水型のエマルジョン剤として提供されてもよい。
舌下または頬の投与に適した製剤は、活性化合物、ならびに典型的に糖およびアラビアゴムまたはトラガントなどの風味を付けた基剤を含むロゼンジならびにゼラチンおよびグリセリンまたはスクロース、アラビアゴムなどの不活性基剤中に活性化合物を含むパステル剤を含む。
非経口投与に適した製剤は、典型的に、所定の濃度の活性化合物を含有する滅菌水溶液を含み、その溶液は、対象とするレシピエントの血液と等張であってもよい。非経口投与に適したさらなる製剤は、生理学的に適した共溶媒ならびに/または界面活性剤およびシクロデキストリンなどの錯化剤を含有する製剤を含む。水中油型エマルジョン剤は非経口製剤にも適した製剤である。そのような溶液は、静脈内に投与されてもよいが、それらは皮下または筋肉内注射によって投与されてもよい。
直腸投与に適した製剤は、坐剤基剤を形成する1つ以上の固体キャリア、たとえばカカオバター中に活性成分を含む単位用量坐剤として提供されてもよい。
局所または鼻内適用に適した製剤は、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾル、および油を含む。そのような製剤に適したキャリアは、石油ゼリー、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、およびその組み合わせを含む。
本発明の製剤は、任意の適した方法により、典型的には、必要とされる割合で液体もしくは細かく分割された固体キャリアまたはその両方と活性化合物とを均一によく混合し、次いで必要に応じて、結果として生じる混合物を所望の形状にすることにより調製されてもよい。
たとえば、錠剤は、活性成分およびバインダー、滑沢剤、不活性希釈薬、もしくは表面活性分散剤などの1つ以上の任意選択の成分の散剤もしくは顆粒剤を含むよく混ざった混合物を圧縮することにより、または粉末活性成分および不活性液体希釈薬のよく混ざった混合物を成形することにより調製されてもよい。吸入による投与に適した製剤は、様々なタイプの定量加圧エアロゾル、ネブライザー、またはインサフレーターによって生成されてもよい細かい粒子のダストまたはミストを含む。
口を介した肺投与について、散剤または液滴の粒度は、典型的に、気管支紋理への送達を確実にするために0.5〜10μmまたは1〜5μmの範囲にある。経鼻投与について、10〜500μmの範囲の粒度は、鼻腔における保持を確実にするために使用されてもよい。
定量吸入器は、液化噴射剤中に活性成分の懸濁剤または溶液剤の製剤を典型的に含有する加圧エアロゾルディスペンサーである。使用中、これらの装置は、活性成分を含有する細かい粒子スプレー剤を産生するために、典型的に10〜150μmの計量された量を送達するのに適したバルブを通して製剤を放出する。適した噴射剤は、いくつかのクロロフルオロカーボン化合物、たとえばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、およびその混合物を含む。製剤は、そのうえ、1つ以上の共溶媒、たとえば、オレイン酸またはソルビタントリオレエートなどのエタノール界面活性剤、酸化防止剤、および適した着香剤を含有してもよい。
ネブライザーは、圧縮ガス、典型的に空気もしくは酸素の加速により、狭いベンチュリ管の開口部を通して、または超音波撹拌によって活性成分の溶液剤または懸濁剤を治療用エアロゾルミストに変換する市販の装置である。ネブライザーで使用される適した製剤は、液体キャリア中の活性成分からなり、40%w/wまで、好ましくは20%w/w未満の製剤を含む。キャリアは、典型的に、好ましくは、たとえば塩化ナトリウムの追加によって体液と等張にされた水または薄い水性アルコール溶液である。任意選択の添加剤は、製剤が滅菌して調製されていない場合、防腐剤、たとえばメチルヒドロキシ安息香酸、酸化防止剤、着香剤、揮発油、緩衝剤、および界面活性剤を含む。
ガス注入による投与に適した製剤は、インサフレーターによって送達されてもよいか、または嗅剤の方法で鼻腔内に取り入れられてもよい細かく粉砕された散剤を含む。インサフレーターにおいて、散剤は、典型的にゼラチンまたは可塑性物質から作製されたカプセルまたはカートリッジ中に含有され、これらは、インサイツで貫通しまたは開き、散剤は、吸入と同時に装置を通して吸われる空気によってまたは手動操作のポンプによって送達される。インサフレーターにおいて利用される散剤は、活性成分のみまたは活性成分、ラクトースなどの適した散剤希釈薬、および任意選択の界面活性剤を含む粉末ブレンドからなる。活性成分は、典型的に、0.1〜100%w/wの製剤を含む。
さらなる実施形態では、本発明は、少なくとも1つの薬学的キャリアまたは希釈薬と一緒におよび/または混合された、活性成分としての本発明の化合物を含む医薬組成物を提供する。これらの医薬組成物は、肝臓の再生を増加させるために使用されてもよい。
キャリアは、薬学的に許容されており、組成物中の他の成分と適合性でなければならず、すなわち、組成物中の他の成分に対して有毒性の効果がないものでなければならない。キャリアは、固体であっても液体であってもよく、好ましくは単位用量製剤、たとえば、0.05〜95重量%の活性成分を含有してもよい錠剤として製剤される。必要に応じて、他の生理学的活性成分も本発明の医薬組成物中に組み込まれてよい。
詳細に上記に言及された成分に加えて、本発明の製剤は、対象の製剤のタイプに注意し、製薬の当業者に知られている他の薬剤を含んでいてもよい。たとえば、経口投与に適した製剤は着香剤を含んでいてもよく、鼻内投与に適した製剤は香料を含んでいてもよい。
実施例1.式(A)の化合物の合成
式(A)の化合物は、当業者によって容易に調製されてもよい。特に、本発明の化合物は、米国特許第7,786,102号明細書、米国特許第7,994,352号明細書、および米国特許第7,932,244号明細書に公開された手順に従って調製されてもよい。
実施例2.化合物1の合成
メチル3α−ヒドロキシ−7−ケト−5β−コラネートの調製。
17.0kgの3α−ヒドロキシ−7−ケト−5β−コラン酸、68kgのメタノールおよび0.17kgのメタンスルホン酸を反応器に仕込んだ。次いで反応混合物を30〜60℃に1時間加熱し、25.5kgの脱イオン水を加えた。次いで、得られた混合物を撹拌し、良好な沈殿が得られるまで20〜25℃に冷却し、次いで0〜15℃にさらに冷却した。沈殿物を濾過し、水とメタノールとの混合物で洗浄し、約40℃においてオーブンでさらに乾燥させた。こうして15kgのメチル3α−ヒドロキシ−7−ケト−5β−コラネートを得た。化学量論的収率は85.2%であった。
メチル3α−トリメチルシロキシ−7−ケト−5β−コラネートの調製。
15.0kgのメチル3α−ヒドロキシ−7−ケト−5β−コラネート、45kgのトルエン、7.5kgのトリエチルアミンおよび7.5kgのトリメチルクロロシランを反応器に仕込んだ。この混合物を70〜80℃に加熱し、撹拌下、約1時間その温度で維持し、次いで37.5kgの水を加え、混合物を15〜20℃で撹拌した。次いで下層の水相を分離し、除去した。有機相を油状残渣が得られるまで濃縮し、これに15kgのテトラヒドロフランを加えた。メチル3α−トリメチルシロキシ−7−ケト−5β−コラネートを含む、こうして得られた溶液を以下の段階に使用した。
メチル3α,7α−ジ−トリメチルシリロキシ−5β−コラネートの調製。
30kgのテトラヒドロフランを反応槽に導入し、次いで混合物を−90℃〜−60℃の温度にした。9.8kgの100%リチウムジイソプロピルアミドおよび9.3kgのトリメチルクロロシランを加え、(b)で調製したメチル3α−トリメチルシロキシ−7−ケト−5β−コラネートを含むテトラヒドロフランの全溶液を流し込んだ。次いでこの混合物を約1時間−60〜−90℃の温度で1時間撹拌した。次いで4.50kgの炭酸水素ナトリウムおよび60kgの水の溶液を流し込み、混合物を0〜10℃で撹拌し、下層の水相を分離し、除去した。次いで下層の相を油状残渣が得られるまで濃縮し、これに45.0kgの塩化メチレンを加えた。こうして得られたメチル3α,7α−ジ−トリメチルシリロキシ−5β−コラネートの溶液を次の段階に送った。
メチル3α−ヒドロキシ−6−エチリデン−7−ケト−5β−コラネートの調製。
前のステップで得られたメチル3α,7α−ジ−トリメチルシリロキシ−5β−コラネートを塩化メチレンに溶かした全溶液を反応器に仕込み、−90〜−60℃まで冷却した。次いで1.97kgのアセトアルデヒドおよび5.5kgのボロントリフルオリドエーテラートを加えた。反応混合物を撹拌下、上記の温度で2〜4時間維持し、その後、それを30〜35℃に加熱し、その温度で約2〜4時間維持した。次いで60kgの水を加えた。得られた混合物を撹拌し、水相を分離した。メチル3α−ヒドロキシ−6−エチリデン−7−ケト−5β−コラネートを含む、こうして得られた溶液を次のステップに使用した。
3α−ヒドロキシ−6−エチリデン−7−ケト−5β−コラン酸の調製。
前のステップで得られたメチル3α−ヒドロキシ−6−エチリデン−7−ケト−5β−コラネートを塩化メチレンに溶かした溶液を反応器に仕込んだ。次いで溶媒を油状残渣が得られるまで蒸留により除去し、これに15kgのメタノールを加えた。次いで反応混合物を45〜50℃に加熱し、7.5kgの30%水酸化ナトリウムを加え、反応混合物を上記の温度で約1時間維持した。次いで30kgの水、続いて45.0kgの塩化メチレンおよび7.5kgの85%リン酸を加えた。下層の有機相を分離し、続いて水相を除去した。有機相から溶媒を蒸留によりペースト状残渣が得られるまで除去した。残渣に約37.5kgの酢酸エチルを加え、混合物を65〜75℃に加熱し、次いで10〜35℃まで冷却した。沈殿物を得て、濾過し、酢酸エチルで洗浄し、乾燥させた。8.0kgの3α−ヒドロキシ−6−エチリデン−7−ケト−5β−コラン酸を得、メチル3α−ヒドロキシ−7−ケト−5β−コラネートを基に算出した化学量論的収率は51.8%であった。
3α−ヒドロキシ−6β−エチル−7−ケト−5β−コラン酸の調製。
8.0kgの3α−ヒドロキシ−6−エチリデン−7−ケト−5β−コラン酸、48.0kgの水、5.1kgの30%水酸化ナトリウム、0.80kgの5%パラジウム/炭素を反応器に仕込んだ。水素吸収が認められなくなるまで反応混合物を圧力1〜3気圧で水素化した。
3α−ヒドロキシ−6α−エチル−7−ケト−5β−コラン酸の調製。
上記の反応の終了時、混合物を95〜105℃に加熱し、3α−ヒドロキシ−6β−エチル−7−ケト−5β−コラン酸が所望の3α−ヒドロキシ−6α−エチル−7−ケト−5β−コラン酸の対応するエピマーに変換できるようにその温度で数時間維持した。懸濁液を濾過し、触媒を回収した。濾過した溶液に5.1kgの85%リン酸、9.6kgの酢酸エチルを加え、反応混合物を40〜70℃の温度で加熱した。それを温度0〜30℃まで冷却し、沈殿物を濾過により回収した。酢酸エチルで洗浄後、沈殿物をオーブンにおいて65℃で乾燥させた。5.0kgの3α−ヒドロキシ−6α−エチル−7−ケト−5β−コラン酸を得た。化学量論的収率:62.2%。m.p.185〜188℃。
3α,7α−ジヒドロキシ−6α−エチル−5β−コラン酸(化合物1)の調製。
5.0kgの3α−ヒドロキシ−6α−エチル−7−ケト−5β−コラン酸、5.0kgの水、2.50kgの水酸化ナトリウムを反応器に導入した。次いでこの混合物を70〜105℃に加熱し、水素化ホウ素ナトリウムを2.50kgの水に溶解させた混合物を流し込み、次いでこの混合物を1時間保温し、室温まで冷却し、10.0kgの脱イオン水、15.0kgの塩化メチレンおよび3.00kgの85%リン酸を加えた。この混合物を撹拌し、下層の有機相を分離し、水相を除去した。有機溶液を冷却して粗生成物の結晶化を行った。この生成物を50kgの脱イオン水および1.10kgの30%アンモニアに溶解させた。次いでこの混合物を完全な溶液が得られるまで撹拌した。混合物を20〜50℃で維持し、1.50kgのリン酸を流し込んだ。沈殿した混合物を20〜50℃の温度で撹拌し、次いで沈殿物を濾過により回収し、水で洗浄し、乾燥させた。4.50kgの3α,7α−ジ−ヒドロキシ−6α−エチル−5β−コラン酸(化合物1)。化学量論的収率:89.6%。
実施例3.化合物2、3および4の合成
3α−テトラヒドロピラニルオキシ−7−ケト−5β−コラン−24−オイック酸(2A)の調製。
p−トルエンスルホン酸(115mg、0.6ml)および6α−エチル−7−ケトリトコール酸(5.0g、12mmol)をジオキサン(55ml)に溶かした溶液に、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(1.74ml、19mmol)を含むジオキサン(12ml)をゆっくりと滴下した。この反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで水(40ml)を加え、混合物を一部真空下で濃縮し、EtOAcで抽出した(4回/25ml)。合わせた有機画分をブラインで洗浄し(1回/50ml)、無水NaSOで乾燥させ、真空下で蒸発させて6gの化合物2Aを得た。この粗誘導体をさらに精製することなく次のステップに使用した。
3α−テトラヒドロピラニルオキシ−6α−エチル−7−ケト−24−ノル−5β−コラン−23−ヨージド(3A)の調製。
300Wタングステンランプの照射下、2A(5.5g、11mmol)および四酢酸鉛(4.9g、11mmol)をCCl(200ml)に溶かした溶液に、ヨウ素(5g、20mmol)を含むCCl(75ml)を滴下して加えた。反応混合物を色が変わらなくなるまで撹拌した(18時間)。混合物を冷却し、Celite(登録商標)で濾過した。有機相を5%Na溶液、5%NaOH、ブライン(15ml)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で蒸発させた。残渣を、移動相として軽質石油(light petroleum)/EtOAc 95/5の混合物を用いてシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製して4.6gの化合物3A(40%の収率)を得た。
3α−ヒドロキシ−6α−エチル−7−ケト−24−ノル−5β−コラン−23−ヨージド(4A)の調製。
化合物3A(2.2g、3.8mmol)を、37%HClをTHF(50ml)に溶かした溶液中で室温において一晩撹拌した。反応混合物をNaHCOの飽和溶液(20ml)、HO(20ml)およびブライン(20ml)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空下で蒸発させて1.4gの化合物4A(80%の収率)を得た。この粗誘導体をさらに精製することなく次のステップに使用した。
3α−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−6α−エチル−7−ケト−24−ノル−5β−コラン−23−ヨージド(5A)の調製。
4A(1.4g、2.8mmol)をCHCl(30ml)に溶かした溶液に、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(496mg、3.22mmol)およびイミダゾール(230mg、3.36mmol)を加え、この混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物をNaHCOの飽和溶液(30ml)、ブライン(30ml)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させた。有機相を真空下で蒸発させて1.5gの化合物5A(87%の収率)を得た。この粗誘導体をさらに精製することなく次のステップに使用した。
3α−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−6α−エチル−7−ケト−24−ノル−5β−コラン−23−オール(6A)の調製。
5A(1.2g、1.96mmol)をアセトン(12ml)に溶かした溶液に、AgCO(1.1g、3.9mmol)を加えた。反応混合物を一晩還流させ、次いで室温まで冷却し、Celite(登録商標)で濾過し、アセトンで洗浄し、合わせた有機相を濃縮して1gの化合物6Aを得た。この粗誘導体をさらに精製することなく次のステップに使用した。
3α−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−7α−ヒドロキシ−6α−エチル−24−ノル−5β−コラン−23−オール(7A)の調製。
6A(1g、1.96mmol)をTHF(50ml)とHO(12.5ml)との混合物に溶かした溶液に、NaBH(740mg、19.6mmol)を加え、この混合物を室温で1時間30分撹拌した。この反応液を一部真空下で濃縮し、CHClで抽出した(3回/20ml)。合わせた有機層をブラインで洗浄し(1回/50ml)、無水NaSOで乾燥させ、真空下で蒸発させた。粗残渣を、移動相としてCHCl:MeOH 99:1の混合物を用いてシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製して0.8gの7A(81%の収率)を得た。
3α−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−7α−ヒドロキシ−6α−エチル−24−ノル−5β−コラン−23−スルフェートトリエチルアンモニウム塩(化合物2)の調製。
7A(0.5g、0.99mmol)を−3℃で冷却したTHF(7ml)に溶かした溶液に、EtN(0.3ml、2.1mmol)を加え、得られた混合物を10分間撹拌した。ClSOH(0.1ml、1.5mmol)を加え、この混合物を室温で一晩撹拌した。次いで水(10ml)を加え、この混合物をCHClで抽出し(3回/15ml)、無水NaSOで乾燥させ、真空下で蒸発させた。この粗スルフェート誘導体をさらに精製することなく次のステップに使用した。
3α,7α,23−トリヒドロキシ−6α−エチル−24−ノル−5β−コラン−23−スルフェートトリエチルアンモニウム塩(化合物3)の調製。
化合物2(0.5g、0.77mmol)をアセトン(8ml)に溶かした溶液に、PdCl(CHCN)(10mg、0.05当量)を加え、この混合物を室温で3時間撹拌した。反応混合物を濾過し、真空下で濃縮し、MeOH/HO 8/2混合物を移動相として使用して中圧Lichroprep RP−8により精製して0.115gの化合物3(mp 118〜121℃)を得た。
3α,7α,23−トリヒドロキシ−6α−エチル−24−ノル−5β−コラン−23−スルフェートナトリウム塩(化合物4)の調製。
化合物2(0.4g、0.72mmol)をアセトン(4ml)とHO(0.08ml)との混合物に溶かした溶液に、PdCl(CHCN)(10mg、0.05当量)を加え、得られた混合物を室温で3時間撹拌した。この反応混合物をCelite(登録商標)で濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣を10%NaOHのメタノール溶液で2時間処理した。得られた混合物を真空下で濃縮し、移動相としてCHOH/HO(7:3)の混合物を用いて液体中圧精製に供して0.09gの化合物4(25%の収率)を得た。
実施例4.ウサギにおける門脈塞栓術(PVE)に対する化合物1(6−ECDCAとも呼ばれる)の効果
背景
肝臓腫瘍の完全な切除は、悪性肝臓腫瘍の治療処置のための外科的手術である。しかしながら、残りの肝臓が小さすぎるために適当な肝機能および体積の必要を満たすことができないことがあり得る。この理由で、これらの患者の肝臓は、切除不可能であると考えられる。様々な手順が予定残肝(FRL)のサイズおよび機能を手術前に増加させるために開発されてきた。切除不可能な患者においてFRLを増加させる1つの手順は、門脈塞栓術(PVE)である。
PVEは、肝臓の切片における肝臓の再生を他の切片の計画的な肝切除に先立って増加させる臨床手順である。手順中、針が、肝臓および腫瘍の大部分に血液を供給している肝臓の切片上の血管に経皮的に挿入される。マイクロスフェアが、塞栓形成エリアに血流を供給する門脈に注入され、血流の遮断がもたらされる。塞栓形成した葉のこの封鎖は、塞栓形成していない葉が増殖するのを促し、実際に肝臓を騙して再生させる。増殖は、患者が手術後に依存することになる残った肝臓セグメントを増大する効果がある。残るであろう肝臓の量が少ないために腫瘍が手術不可能であると以前に見なされていた患者は、現在では腫瘍を除去するために手術を受けることができる。数週間後、塞栓形成していない側の肝臓は、外科手術が実行可能な選択肢となるレベルまで再生するはずである。
下記のインビボ動物モデルの結果は、6−ECDCAが肝再生を加速し、肝容量を増加させることを実証した。
材料および方法
動物実験
3.0±0.5kgの平均体重を有するメスのニュージーランドホワイトを、恒温室において、標準化された実験条件下で1週間にわたり順応させた。動物は、別々に収容し、標準的な実験用の飼料および水を自由に摂取し、1日当たり12時間の明/暗サイクルに置いた。ウサギは、6−ECDCAを受ける2つのグループおよびビヒクルを受ける2つのコントロールグループに分割した。詳細には、PVE研究のウサギは、以下のグループに分割した。
グループ1:通常の食餌(6−ECDCA 10mg/kg/日、経口胃管栄養)(N=6)、動物はPVE後7日目に屠殺。
グループ2:通常の食餌(ビヒクル)(N=6)、動物はPVE後7日目に屠殺。
グループ3:通常の食餌(6−ECDCA 10mg/kg/日、経口胃管栄養)(N=6)、動物はPVE後3日目に屠殺。
グループ4:通常の食餌(ビヒクル)(N=6)、動物はPVE後3日目に屠殺。
図1は、ウサギにおけるコンピューター断層撮影(CT)および門脈造影による測定ならびに門脈塞栓術についての研究の概要ならびにスケジュールを説明する。
門脈塞栓術
ウサギの肝臓は、4つの肝葉からなり、それらのうちの3つは頭側に位置し、4つ目は尾側に位置する。ウサギPVEモデルにおいて、頭側の肝葉は、総肝体積のおよそ80%を占めるが、これを塞栓形成させた。ウサギは、0.03mg/kgブプレノルフィンおよび0.02mg/kgエンロフロキサシンの皮下注射後、背臥位に置いた。ウサギに、手術後3日間、1日に1回、エンロフロキサシン0.02mg/kgを皮下に与えた。動物は、25.0mg/kgケタミンおよび0.2mg/kgデクスメデトミジンの筋肉内注射によって麻酔をかけた。O/空気(1:0.7L/分)とイソフルラン1%〜2%とを、麻酔を維持するために使用した。心拍数および動脈血酸素飽和度は、手順の始めから終わりまで継続的にパルスオキシメトリーによって測定した。
個々の門脈の枝を同定するために門脈造影を実行した。門脈の枝から尾側の肝葉を通過させた後、マイクロカテーテルは、頭側の肝葉に血液を供給する主要な門脈の枝に位置させた。動物は、造影薬(Visipaque)および90〜180μmのポリビニルアルコール(PVA)粒子の混合物を最初に受け、その後、流れが停止し、3つのプラチナコイル(6mm)が配置されるまで300〜500μmのPVA粒子を注射した。PVE直後の門脈造影により、塞栓形成グループにおける頭側の門脈の血流の完全な閉塞が確認された。尾側および頭側の葉の肥大および萎縮の応答を、塞栓形成前ならびに塞栓形成後3日目および7日目にCT容積測定を使用して測定した。
CT容積測定
多相CTスキャンは、64スライスCTスキャン(Brilliance 64−channel;Philips、Eindhoven、The Netherlands)を使用して実行した。ウサギを背臥位に置いた。ブランクシリーズ後、造影スキャンを、造影薬の注射(4mL Visipaque)、その後に続く3mL NaCl後に15s(動脈相)、30s(門脈相)、および45s(静脈相)で実行した。肝臓の3D再構築物は、再構築された2mmの軸方向のスライスを使用して生成した。肝臓全体ならびに頭側および尾側の肝葉に手で輪郭を描き、総肝体積(TLV)ならびに尾側の肝体積(CLV)および頭側の肝体積(CrLV)を計算した。
PVE前のCLVは、式:
を使用して、TLVの割合として表現した。
PVE後、%CLVは、式:
を使用して計算した。
CLVの増加は、式:
を使用して計算した。
CrLVはこれに従って計算した。
統計分析
統計分析は、Statistical Package for Social Sciences(SPSS 18.0;SPSS、Chicago、Illinois)およびGraphPad Prism(GraphPad Software、San Diego、CA)により実行した。CT容積測定データは、順位データに基づいて混合モデル分析を使用して比較した。連続ノンパラメトリックデータは、マン−ホイットニーのU検定によって比較した。Wilcoxon符号順位検定は、グループ内の異なる時点についてのノンパラメトリック連続データに使用した。変数間の相関性は、ピアソンのr相関係数を使用して検定した。統計検定はすべて両側であり、差異は、≦0.05のP値で有意であると見なした。データは、特に指定のない限り平均値±SDとして表現した。
下記の測定を実行した。(1)体重、(2)塞栓形成したおよび塞栓形成しなかった葉のコンピューター断層撮影、(3)肝臓における、細胞周期に関係するおよび胆汁酸塩ホメオスタシスに関係する転写物の発現、(4)回腸の転写物の発現、ならびに(5)血清総胆汁酸塩濃度。
体重測定
それぞれのウサギの全重量を研究の各日に測定し、このデータを図2に提供する。データは、6−ECDCAまたはビヒクルにより処置した動物の体重間の差異が統計的に有意ではないことを示す。
コンピューター断層撮影
コンピューター断層撮影測定は、ベースラインで、6日目に、ならびに塞栓形成後の3日目および7日目に実行した。図3は、塞栓形成した葉の尾側の肝体積の増加(CLV;%)対時間を示すグラフである。図3のデータは、6−ECDCAが、塞栓形成していない葉の肥大を加速することを実証する。図5は、PVE研究ウサギの塞栓形成した葉の頭側の肝葉体積レベルの減少(CrLV、%)対時間を示すグラフである。図5のデータは、6−ECDCAが、塞栓形成した葉の萎縮に影響を与えないことを示す。
肝臓における、細胞周期に関係するおよびBAホメオスタシスに関係する転写物の発現
図6A〜6Dは、塞栓形成後7日目の肝臓の肥大性および萎縮性切片における細胞周期に関係する転写物の相対的な発現に対する6−ECDCAの効果を説明する。図6E〜6Hは、塞栓形成後7日目の肝臓の肥大性および萎縮性切片における胆汁酸塩ホメオスタシスに関係する転写物の相対的な発現に対する6−ECDCAの効果を説明する。
回腸の転写物の発現
図7A〜7Gは、塞栓形成後7日目の回腸の転写物に対する6−ECDCAの効果を説明する。
血清胆汁濃度
血清胆汁酸塩濃度は、ベースラインで、3時間で、ならびにPVE後の1、3、および7日目に決定した。総血清胆汁酸塩は、メーカーの指示に従って酵素による方法によってアッセイした(Diazyme Laboratories、Poway、CA)。図8は、PVE研究ウサギ(1グループ当たりn=5)における血清胆汁酸塩の総濃度(μmol/L)対時間(日)を示すグラフである。以前に、血漿胆汁酸塩は、PVE後の再生の応答についての予測因子として調べられた。血漿胆汁酸塩レベルが、PVE後、早期にPVEのウサギモデルにおける再生の応答と強く相関することが実証された(Hoekstra,et al.J.Surgical Research,2012,178,773−778)。
対照的に、図8のデータは、6−ECDCAにより処置した動物における血清胆汁酸塩の濃度が、コントロールと比較してPVE後の1日目に比較的低かったことを示すが、6−ECDCAは、コントロールに比べて、塞栓形成していない葉の肥大を加速することが示された(図3を参照)。
実施例5.ウサギにおける門脈塞栓術(PVE)に対する化合物1(6−ECDCAまたはOCAもしくはオベチコール酸とも呼ばれる)の効果
門脈塞栓術(PVE)は、肝臓を大きく切除することが予定されている患者において予定残肝体積を増加させるために使用される。胆汁酸塩に活性化された転写因子ファルネソイドX受容体(FXR)は、部分肝切除術後の初期の代償性肝臓増殖に関係するイベントである増殖性胆汁酸塩シグナル伝達にとって重要な媒介物質である。この研究の目的は、PVE誘発性の肝臓増殖に対する強力なFXRアゴニスト(オベチコール酸、OCA)の効果を評価することであった。肝臓増殖は、CTスキャニング、肝胆道シンチグラフィー、および画像解析によってならびに増殖性マーカーKi67についての免疫組織化学的検査によって判定した。肝臓損傷は、血漿トランスアミナーゼの測定および肝臓組織像の評価によって調べた。
36匹のウサギをOCA(10mg/kg)またはビヒクルと毎日の経口胃管栄養に無作為化し、PVEの7日前から開始してPVEの7日後まで継続した。頭側の肝葉のPVEは、0日目にポリビニルアルコール粒子およびコイルを使用して実行した。尾側の肝体積(CLV)は、−7、−1、+3、および+7日目にCT容積測定によって分析した。肝機能(すなわちメブロフェニン摂取)は、肝胆道シンチグラフィーを使用して動物のサブグループにおいて定量化した。分析した補足的なパラメーターは、血漿トランスアミナーゼレベル、H&EおよびKi67染色肝臓切片の組織学的スコアリング、ならびにFXR標的遺伝子発現とした。
材料および方法
動物
Academic Medical Centerのanimal ethics and welfare committeeは、実験プロトコールをすべて承認した(BEX35ACおよびBEX35AD)。2941(±267)グラムの平均体重を有する36匹のニュージーランドホワイト(Charles River、Gennat、France)は、実験への組み入れ前に1週間順応させた。ウサギは、恒温室にグループで収容し、12時間の明/暗サイクルで、水および標準固形飼料を自由に摂取した。
実験設計
6匹のウサギの6つのグループにPVEを計画した。動物は、経口胃管栄養を介した(3kgの動物に対して1.5mL)、毎日のオベチコール酸(Intercept Pharmaceuticals)処置(1%メチルセルロース中10mg/kg)またはビヒクル(1%メチルセルロース、Sigma Aldrich、Zwijndrecht、the Netherlands)のいずれかに無作為に割り付けた。処置は、PVEの7日前から開始し、PVEの3日または7日後の屠殺まで継続した。
門脈塞栓術
動物は、ケタミン(25mg/kg、Nimatek、Eurovet、Bladel、The Netherlands)およびメデトミジン(0.2mg/kg、Dexdomitor、Orion、Espoo、Finland)の皮下注射によって麻酔をかけた。O/空気(1:1、3L/分)と混合したイソフルラン2%(Forene;Abbott Laboratories、Kent、United Kingdom)は、麻酔を維持するために使用した。手術前の無痛法は、ブプレノルフィン(0.03mg/kg、Temgesic、Reckitt Benckiser Healthcare、Hull、United Kingdom)からなった。抗生物質予防処置は、皮下注射Baytril(0.2mg/kg体重、Bayer Healthcare、Berlin、Germany)からなった。
PVEは、以前に記載されるように実行した(van den Esschert JW,et al.Ann Surg 2012;255(2):311−8)。正中開腹術後、下腸間膜静脈の枝に18Gカテーテルを使用してカニューレ処置した(Hospira Venisystems、Lake Forest、IL、US)。デジタルサブトラクション門脈造影下において、Transend−ex 0.36mm×182cmのガイドワイヤー(Boston Scientific)を有するRenegade 3Fマイクロカテーテル(Boston Scientific、Natick、MA)を頭側の肝葉への主要な門脈の枝中に位置させた。ポリビニルアルコール粒子(直径90〜180μmおよび300〜500μm、Cook、Bloomington、IN)ならびに2つの繊維質のプラチナコイル(4.0および6.0mm;Boston Scientific)を頭側の葉への門脈の枝を閉鎖するためにカテーテルを通して注入した。PVEは、門脈造影によって確認し、腸間膜静脈は、結紮糸を使用して閉じた。腹部は2層で閉じた。Baytrilは、PVE後3日間、毎日投与した。
CT容積測定
多相性CTスキャン(Brilliance 64、Philips、Eindhoven、The Netherlands)を−7、−1、+3、および+7日目に実行した。動物(1処置グループ当たりn=18)に麻酔をかけ、22Gカテーテルを外側耳静脈中に置いた。ベースラインスキャンを行い、3mLの造影剤(Visipaque、GE Healthcara、Waukesha、WI)を注射した。動脈、門脈、および静脈相のスキャンをそれぞれ15、30、および45秒後に行った。容量分析は、5mmの軸方向のスライスの3D再構築物に対して手で輪郭を描いて実行した。尾側の肝体積(CLV)および総肝体積(TLV)を決定し、CLVの増加は、以下の式を使用して決定した。
同じ式を、頭側の肝体積(CrLV;CrLV=TLV−CLV)の減少を計算するために使用した。CLVの増加およびCrLVの減少は、ベースラインとして−1日目の値を使用して計算した。図の目的のために、CLVおよびCrLVの変化が0日目(PVEの時点)から開始して表されることに注意されたい。再生率は、式:
を使用して計算した。
CT容量データを検証すると、屠殺時の容量測定値は、屠殺時の実際の肝臓重量に相関した(高精度、Sartorius、Goettingen、Germany)(図9;灰色の正方形は、コントロールグループの動物を示し、黒色の三角形は、OCAにより処置した動物を示す。相関性は、Spearmanの順位相関係数を使用して検定した)。
肝胆道シンチグラフィー
肝機能は、−7、−1、+3、および+7日目に、99mTc標識(2,4,6トリメチル−3−ブロモ)イミノ二酢酸(99mTc−メブロフェニン、Bridatec、GE Healthcare、Eindhoven、the Netherlands)により肝胆道シンチグラフィー(HBS)を使用して判定した。ウサギ(1処置グループ当たりn=6)に麻酔をかけ、イメージングテーブルの上に置き、肝臓および心臓を広視野シングルフォトンエミッション断層撮影(SPECT/CT)カメラ(Siemens Symbia T16)下に位置させた。注目画像領域は、血液プールの読み取りについては左心室のまわりに、総肝摂取については肝臓全体のまわりに、および尾側の肝葉のまわりに描いた(図10;黄色の注目画像領域(ROI)は左心室を、赤色のROIは肝臓全体を、ピンク色のROIは尾側の肝葉を輪郭付ける。著しい頭側の肝葉活性の減少および尾側の肝葉活性の増加は、門脈塞栓術後に見られた)。ウサギ1匹当たり50MBqの量の99mTc−メブロフェニンを、取得の開始前に外側耳静脈を介して直接投与した。
前方および後方のカメラの幾何平均データセットを分析に使用した。肝臓99mTc−メブロフェニン摂取率は、灌流に対して補正した、2分間にわたる99mTc−メブロフェニン摂取の増加として計算した。総肝摂取は、総肝臓99mTc−メブロフェニン摂取率によって示し、毎分注射した用量の割合として計算した。微量の99mTc−メブロフェニン摂取率をセグメントの活性の分布に基づいて尾側の肝葉について計算し、t=−7日目のベースライン測定値に対して補正した。
組織像
肝組織(左の外側および尾側の葉)を48時間にわたり緩衝ホルマリン中で固定し、続いて脱水し、パラフィン中に包埋した。肝組織の4ミクロンの切片をカットし、標準的なヘマトキシリンおよびエオシン染色剤により染色した。切片を表1に従って小葉および門脈の炎症についてスコア化した。そのうえ、肝臓切片を、以前に詳細に記載されるように、肝実質細胞増殖を定量化するためにKi67抗体により染色し、ヘマトキシリンで対比染色した(van der Loos CM,et al.J Histochem Cytochem 2013;61(1):11−8;Marsman HA,et al.Br J Surg 2013;100(5):674−83)。Ki67陽性の肝実質細胞を、グループ割り付けについて知らせていない肝臓病理学者(hepatopathologist)(JV)が1動物当たり合計5つの強拡大視野において数えた。肝臓組織像は、1処置グループ当たりn=6に対して3日目および7日目に判定した。
臨床化学
血清アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アミノアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、ガンマ−グルタミルトランスフェラーゼ(γGT)、およびアルカリホスファターゼ(ALP)は、1処置グループ当たり12匹の動物から得られたサンプルに対して、Cobas 8000 modular analyzer(Roche、Basel、Switzerland)を使用し、Department of Clinical Chemistry(Academic Medical Center、Amsterdam、The Netherlands)によって決定した。
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)
全RNAを、Tri Reagent(Ambion)を使用し、回腸末端および塞栓形成した(していない)肝葉から単離した。DNAseI(Promega、Leiden、the Netherlands)による処置後、750ngの全RNAを、iSCRIPT cDNA synthesis kit(BioRad、Veenendaal、the Netherlands)を使用してcDNAに変換した。定量RT−PCR(リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応)を、SYBR Green chemistry(SYBR Green MasterMix、BioRad)および鋳型として7.5ngの全RNAに等価なcDNAを使用してIQ5 Cyclerで実行した。発現レベルを、LinReg softwareを使用して計算し(Ramakers C,et al.Neurosci Lett 2003;339(1):62−6)、Rplp0、Hprt、およびGapdhの幾何平均に対して標準化した。プライマー配列を表2に提供する。予測される産物サイズをアガロースゲル電気泳動によってチェックした。PCR分析は、1処置グループ当たりn=6について3および7日目に得られた組織を使用して実行した。
統計分析
グループ間のノンパラメトリックデータの差異は、マン−ホイットニーのU検定またはKruskal−Wallis検定を使用して検定した。CLVの増加またはCrLVの減少に対するOCAの効果は、曲線下面積の分析によって得られた値に対してマン−ホイットニーのU検定を使用して分析した。血漿実験値間の差異は、反復測定ANOVAを使用して分析した。相関性は、Spearmanの順位相関係数を使用して検定した。統計分析はすべてGraphpad Prism 6.0(Graphpad Inc、La Jolla、CA)を使用して実行した。
結果:オベチコール酸は、門脈塞栓術後の肝再生を加速する。
動物は、頭側の肝葉の塞栓形成を受ける前に7日間、FXRアゴニストオベチコール酸(OCA)により前処置した。総(TLV)、尾側(CLV、PVE後に再生する)、頭側の葉(CrLV、PVE後に萎縮する)の体積を実験の経過中に判定した。動物は、PVEの3および7日後に屠殺した。
7日間のOCA前処置は、PVE時のOCAの十分な組織レベルを確実にするように選択した。24マウスでは、コール酸を豊富にした食餌がFXR依存性であり、自発的な肝臓増殖を誘発した(Huang W,et al.Science 2006;312(5771):233−6)。そのため、処置前の時期(−7目日〜−1目日まで)にTLV(全体の体積)を分析することにより、肝臓増殖がOCAによって誘発されたかどうかを最初に判定した(Huang W,et al.Science 2006;312(5771):233−6)。両方の時点で、体重について補正したTLVはグループ間で同様であり、両方のグループ内の時点間で同様であった(図11A;データは、Wilcoxonの対応した符号付き順位検定およびマン−ホイットニーのU検定により分析した。1グループ当たりN=17)。したがって、OCAは、自発的な肝臓増殖を誘発しなかった。
次に、PVE誘発性の肝臓増殖に対するOCAの効果を調べた。PVE手順は、十分に許容できるものであったが、麻酔の誘発および腸間膜静脈カニューレ処置中、技術的に複雑であったために、2匹の動物が実験の終了前に死んだ。したがって、容量データは、PVE後3日まで34匹のウサギについて入手可能であり、一方、22匹の動物からのデータがPVEの7日後の肝体積評価に入手可能であった。
尾側の葉の肝臓肥大は、PVEの3および7日後に判定し、−1日目の値からの増加パーセントとして表現した。PVEの3日後、尾側の塞栓形成していない肝臓の体積は、ビヒクルコントロールと比較して、OCAグループにおいて2.2倍増加した(図11B、56.1±20.3%対26.1±15.4%、P<0.001;値は、−1日目の体積に比べた増加の割合を示す;データは、個々の時点の曲線下面積値に対してマン−ホイットニーのU検定を使用して分析した。3日目まで1グループ当たりN=17および7日目に1グループ当たりN=11)。PVE後7日目に、尾側の肝体積の増加は、OCA処置動物において1.5倍高いままであり(102.0±38.2対67.6±17.7%、P=0.02)、OCAが最初の7日間に肝再生を加速することを示した。塞栓形成したセグメントの肝体積の減少は2つのグループ間で同様であった(図11C;値は、−1日目の体積に比べた減少の割合を示す;データは、個々の時点の曲線下面積値に対してマン−ホイットニーのU検定を使用して分析した。3日目まで1グループ当たりN=17および7日目に1グループ当たりN=11)。理論によって拘束されないが、これらのデータは、OCAが再生に対して直接的な効果を有し、塞栓形成した頭側の葉の萎縮に影響を与えないことを示唆する。
OCAによって誘発される体積増大は、実際の肝機能も増加する場合にのみ適切となる。これは、臨床外科的手段においてごく普通に使用される肝機能についてのマーカーであるメブロフェニン摂取を定量化することによって判定した。メブロフェニンの総肝摂取は、−1日目で同様で、両方のグループにおいて変動のないままであった(図11D;データは、反復測定ANOVAを使用して分析した。1グループ当たりN=6)。総肝臓メブロフェニン摂取に対する塞栓形成していない尾側の肝葉の寄与(CLFの貢献)は、PVEの3および7日後に両方のグループにおいて増加した。しかしながら、増加は、PVEの3日後にOCA処置動物においてより大きく(44.5±5.4%対36.0±3.7%、P=0.02)、OCAが、塞栓形成していない肝葉の機能的能力の増加を促進することを示した(図11E;データは、反復測定ANOVAを使用して分析した。1グループ当たりN=5〜6)。OCA処置動物における増加性の体積増大が肥大または過形成を反映するかどうかを調べるために、肝臓切片を、無活動の肝実質細胞では発現されない増殖マーカーKi67について染色した。Ki67陽性肝実質細胞の数の増加は、+3日目のOCAグループにおいて明らかであり、+7日目のグループでは数は同様であった(図11F;データは、マン−ホイットニーのU検定を使用して分析した)。肝細胞の増殖の増加は、したがって、PVE後3日目のOCA処置動物における肝臓増殖の増大の根拠をなす。
肝体積計算において交絡因子としての体重の変化を除外するために動物の体重を毎日測定した。体重は、PVE後、両方のグループにおいて同程度まで減少した(図11G;データは、反復測定ANOVAを使用して分析した。1グループ当たりN=17)。PVE前の体重増加は、両方のグループにおいて同様であり、OCAが十分に許容できるものであったことを示した。
図9A〜Gにおいて、はグループ間のp<0.05を示し、**はP<0.01を示し、***はP<0.001を示す。略語:OCA、オベチコール酸;TLV、総肝体積;CLV、尾側の肝体積;CrLV、頭側の肝体積;TLF、全肝機能;CLF、尾側の肝機能。
要約
PVEの3日後、OCAグループのCLVの増加は、コントロールの2.2倍で(56.1±20.3%対26.1±15.4、P<0.001)、この増加は、PVEの7日後、より高く有意なままであった(+1.5倍、P=0.02)。+3日目の尾側の肝機能の増加は、OCA処置動物においてより大きかった(+1.2倍、P=0.02)。Ki67陽性肝実質細胞の数は、PVEの3日後、OCA処置動物において1.6倍高かった(P<0.05)。OCAおよびビヒクル処置動物における血漿トランスアミナーゼレベルは同様であり、H&E切片の組織学的スコアリングも両方のグループにおいて同様であった。転写物分析は、回腸および肝臓のFXR活性化を実証した。
OCAは、ウサギモデルにおいてPVE後の肝再生を加速した。OCA処置は、そのため、PVEの効能を増加させ、それにより大きい肝臓切除後に肝不全を予防し、切除の可能性を増加させ得る。
この研究は、OCAが、過形成の作用を通してPVE後の最初の3日間にわたり、塞栓形成していないセグメントの体積増大を加速することを示す。OCAは、肝再生を増強するための薬理的な介入としての可能性を有する。
オベチコール酸は、肝細胞および胆管の著しい損傷には関連しない。
OCA処置が肝臓損傷をもたらすかどうかを調べるために、トランスアミナーゼレベルを実験の経過中に測定した。PVEは、ALTおよびASTの一過性の増加を誘発し、レベルは、両方のグループにおいて+1日目にピークに達し、その後、ベースライン値に戻った(図12A〜B)。レベルは、測定の始めから終わりまでグループ間で同様であった(図12A〜B)。γGTおよびALPも、PVE前には両方のグループにおいて安定したままであった。PVE後、γGTおよびALPは、OCA処置動物においてわずかに高かったが、レベルは、両方のグループにおいてPVE後にベースラインを超えて増加することはなかった(図12C、D)。これらの結果は、OCAが肝細胞の損傷または胆汁うっ滞を引き起こさなかったことを示す。図12A〜Dにおいて、データは、1グループ当たりn=5〜11についての平均値(±SEM)として示す。グループ間の差異は、二元配置ANOVAを使用して検定した。はP<0.05を示し、**はP<0.01を示す。
肝臓組織像に対するOCAの可能性として考えられる効果を調べるために、尾側の葉のH&E染色切片を盲検方式でスコア化した。軽度の門脈および小葉の炎症ならびに軽度の類洞拡張がすべての動物において観察され、グループ間に差異はなかった(図12E;データは、1グループ当たりn=5〜6についての中央値(範囲)として示す;100×倍率のH&E染色した3および7日目の両方のグループの代表的な肝臓切片)。尾側の葉におけるある塞栓材料の逆流によって引き起こされる異物反応が合計4匹の動物において観察され、コントロールグループの2匹は3日目に屠殺し、OCAグループの1匹は3日目に屠殺し、OCAグループの1匹は7日目に屠殺した。これは、グループ間で異ならず、塞栓材料の逆流が肝臓肥大に影響を与えるようには思われなかった。小滴性脂肪変性は、3および7日目の両方のグループにおいて観察され、グループ間に差異はなく、これは、部分肝切除術のマウスモデルにおける軽度の脂肪症についての以前の観察と一致している(Dai G,et al.Hepatology 2008;47(4):1277−87)。
OCAは、回腸および肝臓のFXRを活性化する
OCAの転写効果を判定するために、FXR標的遺伝子の発現を、PVEの3および7日後に採取した回腸末端および肝臓において分析した。FXRは、回腸末端および肝臓の両方において発現され、両方ともウサギにおける肝再生に寄与すると考えられている(Borude,et al.Hepatology 2012;56(6):2344−52;Zhang,et al.Hepatology 2012;56(6):2336−43)。
OCAは、Fxrの回腸の発現自体には効果がなかったが、+3日目に回腸のShpの誘発をもたらした(図13A;動物は、7日間、オベチコール酸(OCA)により前処置し、頭側の肝葉の塞栓形成を受けた。回腸末端(パネルA)および尾側の肝臓(パネルB)は、PVEの3および7日後に屠殺時に採取した。遺伝子発現は、RTqPCRによって分析した。データは、ビヒクルグループと比較した発現倍数として表現する。データは、1グループ当たりn=5〜6についての平均値(±SEM)として示す。はグループ間のP<0.05を示し、**はP<0.01を示す)。これは、ShpがFxrの標的遺伝子であることと一致する。げっ歯動物およびヒトにおいてFxrによって調節されることが報告されたOstβの回腸発現(Landrier,et al.Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 2006;290(3):G476−85;Zollner,et al.Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 2006;290(5):G923−32)は、しかしながら、OCAによって影響を与えられなかった。胆汁酸塩合成酵素Cyp7a1の肝臓の発現は、+3日目にOCA処置動物において強く抑制された(図13B)。これは、リプレッサーShpの転写の誘発を伴うことなく起こり、Shp非依存性のFgf19シグナル伝達が、Cyp7a1の抑制が観察された原因であり得ることを示唆する。Fgf19に対する肝臓の受容体は、Fgfr4およびβKlothoによって形成される。Fgfr4の発現は、OCA処置によって影響を与えられず、転写物レベルの小さいダウンレギュレーションが3日後にβKlothoについて観察された(図13B)。これらの発見は、回腸Fgf19のOCA媒介性の誘発によるCyp7a1のダウンレギュレーションと一致する。
OCA処置は、+7日目に肝臓のFxr発現の低下をもたらした。肝臓におけるOstβ発現は、+3日目にOCA処置動物において上昇した。反対に、回腸のShp発現はOCAによって誘発されるが、これは肝臓において観察されない。最後のOCA投薬および屠殺間の期間は9〜12時間の範囲にあり、この期間は、一貫した長期的な転写効果を観察するには最適以下であった可能性がある。とはいえ、遺伝子発現分析から集めた発見は、OCA処置が回腸および肝臓のFXRの両方の活性化をもたらしたことを示す。
議論
この研究では、PVEのウサギモデルにおける肝再生に対する強力なFXRアゴニストOCAの効果について調べた。OCAは、ビヒクルコントロールと比較したOCA処置動物におけるPVE後の3日目のCLVの2.2倍の増加および7日目のCLVの1.5倍の増加によって証明されるように、PVE後の7日間、肝再生を加速した。そのうえ、肝胆道シンチグラフィーは、OCA処置動物においてPVEの3日後に尾側の肝葉の摂取能力の増強(1.2倍、P=0.02)を明らかにした。これに、Ki67+肝実質細胞の数の増加が伴い、PVEおよびOCAがOCAなしのPVEよりも強い過形成の応答を誘起したことを示した。OCAによって誘発される肝再生の加速は、大きい臨床上の可能性を有する。
このデータは、強力なFXRアゴニストOCAが、標準化されたウサギモデルにおいてPVEの3日後に尾側の葉の体積増大を強く増加させたことを示す。体積の増加は、増殖性マーカーKi67についての肝細胞陽性の増強から推測されるように過形成によるものである。これらの結果は、OCAがPVEから肝臓切除までの時間を短くすることができ得ることを示し、これは、PVE後の化学療法の必要性を回避するなどのいくつかの利点を有し得る。さらに、OCAは、PVEに対する肝臓の増殖応答を改善し得、これは、非常にわずかなFLRのみを有する患者の切除の可能性を増加させ得る。さらに、これらの結果を肝切除術に当てはめて推定すると、OCAによる肝再生の増加は、切除後の肝不全を予防し得る。患者は、広範囲の肝臓切除後の最初の数日間、非常に肝不全になりやすく(Etra JW,et al.HPB(Oxford)2014;16(10):875−83)、肝再生を早期に開始することは、肝不全の発生率が低いことに関連する(Shirabe K,et al.Scand J Surg 2013;102(2):101−5)。この最初の数日間に肝再生を増強することを通して、OCAは、肝不全の危険性を低下させ、結果として罹患率および死亡率を低下させるのに有益となる。
容量のおよび機能的な増大ならびにKi67+肝実質細胞の数の増加は、再生の加速を示し、これは、PVEの3日後に非常に著しかった。本発明者らは、患者のFRLの機能的な増加がPVE後の容量の増加に先行することを以前に示した(de Graaf W,et al.Br J Surg 2011;98(6):825−34)。したがって、OCA処置動物は、PVE後初期、+3日目の肝機能の評価前に既に、コントロール動物に対して摂取能力が増加していた可能性がある。ウサギにおけるより高い代謝速度と一致して、肝臓の再生は、ヒトと比較してウサギにおいてより速いペースで起こるのに対し、マウスおよびラットでは、代謝はウサギよりもさらに速い(West GB,et al.J Exp Biol 2005;208(Pt 9):1575−92)。PVEの7日後のビヒクル処置ウサギにおける67〜71%のCLVの中央値の増加(van den Esschert,et al.Ann Surg.2012;255(2):311−8)
セグメント4を含むPVEを受けた、選択した患者のシリーズにおける中央値34日後の予定残肝体積の62%の増加に匹敵する(Shindoh J,et al.J Am Coll Surg 2013;217(1):126−33;discussion 133−4)。ALPPSの状況において、PVEの7日後のCLVの増加は、ALPPSの第1ステージ後の9日間の時間の中央値後のFRL体積の74%の増加に相当する(Shindoh J,et al.J Am Coll Surg 2013;217(1):126−33;discussion 133−4)。そのため、ウサギの7日間は、ヒトのPVEの4〜5週間およびALPPS後の9日間にたとえられる。これらの期間に、OCAは、可能性としてヒトにおいて再生プロセスを加速する。
OCAは、肝再生を有効に増強する薬理学的介入として使用することができる。PVEのウサギモデルにおいてOCAを使用すると、肝体積、肝機能、および肝実質細胞増殖の点からの肝臓増殖の加速を、組織像および血漿トランスアミナーゼによって判定されるように肝臓の損傷のサインを伴うことなく実現し得ることを示すことができる。OCAは、PVEの効能を増加させるおよびPVEから肝臓切除までの時間を低下させ、かつ大きい肝切除術後に切除後の肝不全を予防する可能性がある[Olthof,et al.2016、提出済み、公開予定]。
実施例5a.ウサギにおける門脈塞栓術(PVE)に対するオベチコール酸の効果
胆汁酸塩シグナル伝達は、肝組織の外科的な損失後の代償性の肝臓再生に必要とされる。胆汁酸塩受容体FXRは、このプロセスにおいて重要な役割を果たす。この研究において、本発明者らは、広範囲の肝臓外科手術を予定されている患者において、予定残肝体積を増加させるための介入である門脈塞栓術(PVE)後の再生の応答にFXRが関与するかどうかを調査した。
方法
成体のメスのウサギは、頭側の肝葉の塞栓形成(0日目)前および後の7日間、ビヒクルまたはFXRアゴニストオベチコール酸(OCA;10mg/kg、毎日の経口胃管栄養)を受けた。PVEの有効性は、門脈造影によって確認し、尾側の肝体積(CLV)は、−7、−1、+3、および+7日目にCT容量分析によって分析した。ウサギは、+3および+7日目に屠殺した(1グループ当たりn=5〜6)。
結果
OCAは、PVE後の3日目にCLVのより大きい増加を誘発し(59.3±19.2%対コントロールの29.7±16.1%、P=0.001)、両方のグループは、7日後、同様に体積を増大させた。両方のグループでは、PVEは、同様のパターンの血清胆汁酸塩上昇をもたらし、レベルは、3時間後に増加し、+3日目に標準的になった。+3日目に採取した組織の分析は、肝臓の胆汁酸塩含有量がOCA処置動物の肥大セグメントにおいて低下したことを明らかにした(60.1[IQR16.0]対コントロールの100.1[IQR75.1]nmol/g;P=0.016)(図14)。胆汁酸塩合成酵素Cyp7a1の発現の低下(−7.1倍;P=0.004)および基底外側胆汁酸塩流出ポンプサブユニットSlc51b(+6.5倍;P=0.004)の発現の増強は、この減少の一因となった可能性がある。有糸分裂への移行に必要とされるホスファターゼであるCdc25bの発現は、OCA処置動物の肥大性の肝臓セグメントにおいて上昇した(+1.6倍;P=0.006)が、萎縮性の肝臓セグメントでは上昇しなかった(+1.1倍;P=0.52)。塞栓形成していないセグメントにおけるCdc25b発現は、FXR標的遺伝子Slc51b(ρ=+0.80、P=0.002)およびCyp7a1(ρ=0.62、P=0.033)と相関し、+3日目のCLVの割合の増加に関連する傾向があった(ρ=+0.57、P=0.055)(図15)。
OCAは、過形成効果を通して尾側の葉のPVE誘発性の体積増大を加速した。OCAは、拡大しつつある尾側の葉において胆汁酸塩含有量を減少させた。胆汁酸塩合成(Cyp7a1)の低下および胆汁酸塩流出(Ostb)の増強は、尾側の胆汁酸塩含有量の低下の一因となり得る。OCAは、尾側の葉において、有糸分裂への移行に必要とされるホスファターゼであるCdc25bの発現を増強した。これは、FXR調節性の遺伝子の発現と相関し、CLVの増大に関連する傾向があった。
結論
OCAは、ウサギにおいてPVE後の最初の3日間で肝再生を加速し、コントロールおよびOCA処置動物は、7日後に、塞栓形成していないセグメントにおいて同様の体積増大を有した。胆汁酸塩ホメオスタシスの改善および増殖性遺伝子(たとえば、Cdc25b)の誘発は、PVE後の初期段階において成長速度が増す根拠をなし得る。
OCA処置は、肝病変の切除の可能性を広げ、かつ切除後の肝不全を予防する可能性を有する。
実施例6.FXRアゴニストオベチコール酸は閉塞性胆汁うっ滞を有するラットにおいて肝臓増殖を誘発する
材料および方法
動物
成体のオスのウィスターラット(300〜325g)をHarlan(Horst、the Netherlands)から購入し、標準化された実験条件下で1週間順応させ、収容し(12時間の明暗サイクル、室温=21±2℃、湿度=50±10%)、水および固形飼料を無条件に摂取させた(Hope Farms、Woerden、the Netherlands)。それぞれの外科的手順前に、動物は、無痛法として0.025mg/kgのブプレノルフィンを皮下に受け、その後、全身麻酔を誘発し、かつ空気/O(1:1の体積比率、2L/分)および2〜3%のイソフルラン(Forene、Abbott Laboratories、Chicago、IL)の混合物により維持した。すべてのラットの深部体温は、手順[NRC 2011]中、暖房用マットおよび暖房用ランプにより37.0±0.2℃に維持した。
実験設計
順応期間後、ラットは、3週間、通常の固形飼料による食餌を継続したか、または中程度の肝臓脂肪症を誘発するためにメチオニンおよびコリン欠損(MCD)食(Harlan Teklad、Madison、WI)に切り替えた[Heger 2011a]。第2の食餌週間の開始時、ラットは偽手術を受けたか、または可逆的胆管結紮(rBDL)を受けた。rBDLについては、肝外の胆管を、遠位の先端を閉じたSilastic Tubing(長さ=±7.5cm、内径=0.8mm、外径=1.4mm、Dow Corning、Midland、MI)に接続したポリエチレンカテーテル(長さ=±1.5cm、内径=0.4mm、外径=0.9mm、Braun、Melsungen、Germany)によりカニューレ処置した[Kloek 2008]。擬似手術した動物は、胆管切断を含む腹部手術を受けたが、胆道閉塞は誘発しなかった。rBDLラットのグループは、未処置のままとしたか、または午前7:30〜9:00にFXRアゴニストオベチコール酸の毎日の経口胃管栄養を受けた(OCA、0.5%メチルセルロース中10mg/kg、300gの体重当たり1.5mL)。
BDLまたは擬似手術の7日後、ラットはすべて70%のPHxを受けた[DeGraaf 2011]。すべてのrBDLラットにおいて、腸への胆汁の流れは、閉じたカニューレの先端を取り外し、十二指腸にカニューレを挿入することによってPHx前に直接回復させた。すべての処置グループの動物は、PHx後、通常の固形飼料を与えた。OCA処置は、PHx後、屠殺まで継続した。手法1において示されるように、研究は、5つの実験グループ(1時点当たり1グループ当たりn=4〜6匹の動物)からなった:コントロール(偽)、脂肪症(MCD)、胆汁うっ滞(rBDL)、脂肪症および胆汁うっ滞の合併(rBDL+MCD)、ならびに胆汁うっ滞+OCA(rBDL+OCA)。
手法1は、研究設計の概略的な概要を示す。130匹のラットを5つの研究アームにわたって分割した。動物は、部分肝切除術前に(PHx、すなわち屠殺0日目)またはPHxの1〜5日後に屠殺した(n=4〜6/グループ)。rBDLグループでは、胆道ドレナージは、PHx後に直接実行した(rBDL=可逆的胆管結紮;Chol.=胆汁うっ滞;MCD=メチオニンおよびコリン欠乏食;OCA=オベチコール酸;rBDL=可逆的胆管結紮;steatochol.=単純性脂肪症および胆汁うっ滞の合併)。
ベースライン(すなわちPHxの直前)およびPHxの1〜5日後、動物は、失血によってイソフルラン麻酔下で安楽死させた。血液サンプルは、大静脈からヘパリン抗凝血バキュテナー(BD、Franklin Lakes、NJ)中に収集し、10分間遠心分離した(3000×g、4℃)。ベースラインで屠殺したrBDL動物において、胆汁は、拡張した肝外の胆管からシリンジにより吸引し、計量し、−80℃で保存した。肝臓および回腸を摘出し、計量し、ローフし(loafed)、および10%(vol/vol)の中和ホルマリン溶液(J.T.Baker、Center Valley、PA)中で固定し、液体窒素中でスナップ凍結し(snap−frozen)、−80℃で保存したまたはRNAlater(Qiagen、Venlo、the Netherlands)中に収集し、−20℃で保存した。肝臓再成長は、再生肝容量から計算し、PHx前の総肝容量の割合として表現した。予測残肝容量は、総肝容量の70%に相当する、切除された肝臓セグメントの重量を使用して計算した。乾燥肝臓重量は、肝臓の含水量について補正するために測定した[Kloek 2010a]。
組織像
ホルマリン固定後、肝臓標本を脱水し、パラフィン包埋し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)、コラーゲンI型およびIII染色剤ピクロシリウスレッド、または増殖マーカーKi67により染色した[Marsman 2013]。H&Eおよびピクロシリウスレッド染色肝臓組織像の半定量分析は、表1に詳述されるスコアリングシステムを使用し、実験グループについて知らせていない熟練の肝臓病理学者(JV)が実行した。Ki67陽性肝実質細胞核は、200×倍率の4つの無作為に選択された顕微鏡視野において、2人の観察者(RFGおよびPBO)が手作業で数えた。
定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応
転写分析を実行した[Olthof 2015]。肝臓サンプルをMagNA Lyserによりホモジナイズし、全RNAをHigh Pure RNA Tissue Kitにより抽出した(ともにRoche Applied Sciences、Penzberg、Germany)。1μgのRNAを、メーカーの指示に従って、SensiFAST cDNA Synthesis Kit(Bioline、London、UK)を使用してcDNAに逆転写した。定量逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応は、SensiFAST SYBR No−ROX mix(Bioline)を使用し、LightCycler 480(Roche、Basel、Switzerland)で実行した。蛍光データを処理し、分析し、回腸サンプルについてはヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Hprt)に対して、肝臓サンプルについてはユビキチンC(Ubc)およびベータ−2−ミクログロブリン(B2m)の幾何平均に対して標準化した。これらの参照遺伝子は、実験グループおよび時点にわたって非常に安定していることが分かった(データを示さず)。プライマーは、イントロンまたはエクソンとエクソンとの接合部にまたがり、かつ除去できなかったゲノムDNAの増幅を予防するよう、NCBI Primer Blastを使用して設計した(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/tools/primer−blast/)(表2)。融解曲線分析およびアガロースゲル電気泳動は、プライマーの特異性を検証するために使用した。
サイトカイン測定
Diax 900 tissue homogenizer(Heidolph、Schwabach、Germany)は、プロテアーゼ阻害剤カクテル(cOmplete ULTRA、Roche)を含有する1400μLの5mM NaPi緩衝液(pH=7.4)において氷上で±100mgのラット肝臓をホモジナイズするために使用した。ホモジネートは、10,000×g(4℃)で10分間、遠心分離し、上清中のTNF−αおよびIL−6のレベルは、キットのマニュアル(R&D systems、Minneapolis、MN)に従ってELISAによって測定した。サイトカイン濃度は、ホモジネートタンパク質含有量に対して標準化した(Protein Assay Kit、Pierce、Rockford、IL)。
胆汁酸プール組成の高速液体クロマトグラフィー分析
胆汁酸は、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分離し、定量化した[Lionarons 2016]。胆汁または血漿のサンプル(20μL)は、5容量のアセトニトリルの追加によってタンパク質を取り除いた。遠心分離(20,000×gで10分間)後、溶媒を上清から蒸発させ、胆汁酸塩は、200μLの25%メタノールにおいて可溶化した。肝臓ホモジネートについては、100mg肝組織を500μLの水において30〜90秒間にわたり超音波処理した。1mLのアセトニトリルをタンパク質沈殿のために追加した。サンプルは、続いて、10分間、20,000×gで遠心分離し、その後、上清を分析のために使用した。結果は、ホモジネートタンパク質含有量に対して補正した。100μLのサンプルを、20℃で作動させたHypersil C18 HPLC column(Thermo Scientific、Waltham、MA)に適用した。出発溶離液は、6.8mMギ酸アンモニウム(pH=3.9)からなり、その後、以下の濃度:28%(1分)、38%(13分)、42%(19分)、61%(20分)、63%(25分)、80%(28分)、80%(31分)、および0%(33分)のアセトニトリルにより直鎖勾配またはイソクラティック溶離を続けた。流速は、0.8mL/分とした。検出は、Nano Quantity Analyte Detector QT−500(Quant Technologies、Blaine、MN)を使用して行った。胆汁酸は、種類ごとに別の検量線を使用して定量化した。胆管胆汁酸量を計算するために胆管胆汁酸濃度に胆汁の総体積を掛けた。
統計分析
統計分析はすべて0.05の有意性レベル(α)に従い、GraphPad Prism(version 6.0、La Jolla、CA)により実行した。数的な変数はすべてガウス分布に(ほぼ)従うと仮定し、そのため、スチューデントのt検定またはテューキーの事後解析ありの一元配置ANOVAを使用して分析した。ペアの変数は、対応のあるt検定を使用して分析した。組織学的スコアリングは、カイ二乗検定を使用して分析した。相関性は、ピアソンの積率相関係数を使用して検定した。
結果
閉塞性胆汁うっ滞は、部分肝切除術後に肝再生を害する
肝再生は、健康な肝臓を有する動物でよく研究されており、これは、化学療法、脂肪症、胆汁うっ滞、またはこれらの要因の組み合わせによって影響を与えられた肝臓を有する患者が中心の外科業務と全く対照的である。これらの状態が肝再生を害し、術後の転帰に負に影響を与えるため[DeMeijer 2010;Farges 2013;Hubert 2015]、第1の目的は、実質性の病態の様々な状態下での70%PHx後の肝再生を調査することとした。PHx前の実質性の炎症に対するrBDLおよびMCD処置の影響は、以前に報告された[Lionarons 2016]。
図16は、健康なラット肝臓がPHx後の5日間でそれらの元の容量のおよそ90%まで再生することを示す(図16A、2番目、コントロールの曲線)。単純性脂肪症を有するラット肝臓は、無傷の肝臓と同じ程度に有効に再生し(図16A、1番目、MCDの曲線)、これは、より一般的な単純性脂肪症ではなく脂肪性肝炎が肝臓の再生を弱めるという以前の発見を確証するものである[Marsman 2013;Reiniers 2013;Reddy 2012;Farrell 2002]。対照的に、肝臓再成長は、単純性脂肪症を有するおよび有していないrBDL動物において著しく害された(図16A〜C)。これらのグループにおける肝再生障害は、PHxの1日後に既に明白であった(図16A〜B)。rBDL肝臓の増殖は、PHx後の2日目に停滞し、最初の肝容量の60%を超えず、他の研究アーム未満であった(図16AおよびC)。
肝再生のパラダイムに従って[Fausto 2006;Michalopoulos 1997]、相違する再成長速度がPHx後のサイトカイン産生に関係したかどうかを決定するために、サイトカインIl−6およびTnf−αの肝臓のレベルを定量化した。前から存在する炎症に伴って[Lionarons 2016]、肝臓のサイトカインレベルは、実質性の肝疾患を有するすべての動物においてPHx前に既に上昇していた(図16D〜E)。Il−6およびTnf−αは、ベースラインと比較して、健康なラットにおいてPHx後1日目に増加したのに対し、この増加は、他の研究グループにおいて観察されなかった(図16D〜E)。PHx後のサイトカインの急上昇がないことは、前から存在する実質性の肝臓損傷を有するラットにおいて、不完全な肝臓再成長の一因となり得る。再生プロファイル(図16A)に基づいて、残りの実験は、rBDL動物におけるPHx後の肝再生の改善に集中した。
オベチコール酸は肝臓切除前に胆汁うっ滞性のラットにおいて肝臓増殖を誘発する
rBDLラットの再生の可能性の減少(手法1)は、おそらく、腸BA送達の中断によって引き起こされた腸Fxrシグナル伝達の抑止および肝臓内BA蓄積に関連する毒性に起因する。rBDLラットにおける肝再生障害は、FXRアゴニストOCAの経口投与を通して腸FXRシグナル伝達を回復させることによって軽減され得る。
PHx前に屠殺した動物の全肝容量は、コントロールグループと比較して、両方のrBDLグループにおいて高かった(図17A)。しかしながら、肝臓の含水量に対して補正した後(たとえば、炎症性水腫のため)、肝容量の増加は、OCA処置動物において観察されたのみであり(図17B)、rBDL誘発性の胆汁うっ滞が炎症に関連したこと(Lionarons,et al.Sci Rep.2016,6:31829)およびOCAが肝臓増殖を刺激したことが確認された。したがって、Ki67染色によって測定される肝実質細胞増殖およびCcnd1によってコードされる細胞周期マーカーCyclinD1の発現は、未処置rBDLまたは非胆汁うっ滞性動物と比較してrBDL+OCAグループにおいてより著しかった(図17C〜E)。Ki67染色およびCcnd1発現の両方はまた、乾燥肝容量と正に相関した(図18A〜C)。損傷していない肝臓における肝実質細胞が静止状態にあるように(図17C〜D)、これらの結果は、rBDLグループにおける増殖が、胆汁うっ滞性の肝障害を修復することを目的とする肝臓のホメオスタシスの応答の一部であることを示唆する。しかしながら、肝臓過形成は、増殖性シグナル伝達に反して、OCA処置の非存在下において7日間のrBDLの期間中に起こらなかった(図17B)。
OCA誘発性の肝実質細胞増殖は、直接的な(肝臓)経路および/または間接的な腸の経路を介して進むことが報告されている。直接的な経路は、肝細胞のFxr標的遺伝子Foxm1によって媒介され[Zhang 2012]、これは、細胞周期進行を媒介し、PHx後の有効な肝再生に不可欠である[Huang 2006;Chen 2010c;Wang 2002a]。間接的な経路は、分裂促進的Fgf15の腸Fxr関連性の産生および肝臓のFgfr4を介したシグナル伝達を含む[PadrissaAltes 2015;Kong 2014;Uriarte 2013]。間接的な経路がまた、肝臓のFoxm1b発現を増加させるかどうかについて意見が一致していないことに注意されたい[Zhang 2012;PadrissaAltes 2015]。
FxrおよびFoxm1の肝臓の発現レベルは、両方のrBDLグループ間で同等であった(図17E)。したがって、直接的な経路は、OCAによって誘発される増殖性シグナル伝達を担っていなかった可能性が高い。対照的に、回腸Fgf15転写は、OCAを受けていたrBDLラットにおいて強くアップレギュレートされ(約20倍)、これは、Fxr標的遺伝子Shpの著しいアップレギュレーションと一致した(図17F)。このように、OCA処置は、腸のFxrの活性化に至り、回腸Fxr自体は小さくダウンレギュレーションした。回腸Fgf15およびShpの発現は、未処置rBDL動物において強く抑制され(図17F)、これは、rBDL後の回腸のFxrリガンド(すなわちBA)の送達の失敗におそらく起因する[Naugler 2014]。Fgf15は、肝実質細胞上のその関連する(共)受容体Fgfr4およびβKlothoに結合し、これは、Stat3経路の活性化を通して増殖性シグナル伝達に至る[PadrissaAltes 2015]。Fgfr4は、場合によりネガティブフィードバックループを通して、転写物レベルがダウンレギュレートされた可能性があるが(図17E)[Fong 2003;Wong 2002]、Stat3は、かなりアップレギュレートされ(図17E)、Fgfr4を通してのシグナル伝達がなお有効であったことを示唆した。したがって、Fgfr4転写レベルは、乾燥肝容量に負に相関するが、Stat3転写レベルは、強い正の相関を示した(図18)。上記の発見は、OCAにより処置したrBDLラットにおける肝臓増殖への腸肝軸の関与を裏付ける。
図17A〜Fは、オベチコール酸が、肝臓切除前に、胆汁うっ滞性のラットにおいて肝実質細胞増殖および肝臓の肥大を誘発することを示す。詳細には、図17A〜Bは、コントロール(偽手術)およびOCA処置ありまたはrBDLの7日後の総肝臓重量を示す(肝臓重量は、体重の割合として(A)または300g体重当たりの乾燥重量として(B)表現する);代表的なKi67染色肝臓切片(C)およびKi67陽性の定量評価(D);ならびに肝臓(E)または回腸(F)における増殖およびFxrに関係する遺伝子の発現レベル(BW=体重;FOV=視野;OCA=オベチコール酸;rBDL=可逆的胆管結紮(胆汁うっ滞)。はp<0.05を示し、**はp<0.01を示し、***はp<0.001を示し、すべてコントロールグループに対するものとする。はp<0.05を示し、##はp<0.01を示し、###はp<0.001を示し、すべて実線で示される実験グループに対するものとする)。
部分肝切除術後の肝臓再成長はオベチコール酸を受けている胆汁うっ滞後のラットにおいて失速する
OCAが胆汁うっ滞性の肝臓のサイズを増加させることを立証した後、OCAが70%PHx後の肝再生も加速するかどうかを調査した。予想外にも、肝臓再成長は、未処置rBDLおよびコントロールラットと比較して、OCA処置rBDL動物において失速した(図19A)。この予想外の発見について考え得る説明が2つある。第1に、Fgfr4発現は、PHxの日に著しくダウンレギュレートされた(図19D)。そのため、OCAグループにおける肝容量の回復がより遅いのは、分裂促進的Fgf15シグナル伝達の中継の低下に起因し得る。Fgfr4転写レベルがコントロールおよび未処置rBDL動物においてPHx後1日目に上昇したという発見は、この考え方を裏付ける(図19D、下記に議論される)。さらに、OCAにより処置していないrBDLラットにおけるPHx後のFgfr4の初期の誘発に、PHx後2日目のFgfr4 mRNAレベルの激減が続き、これは、肝臓再成長の停止と一致する(図19AD)。第2に、PHxの時の残り肝臓の乾燥重量は、他の2つのグループよりもOCAグループにおいて既により高かった(図19B)。肝再生の速度が、除去された肝臓の量に比例し、残りの肝臓のサイズに反比例するように[Michalopoulos 1997;Yamanaka 1993]、OCA処置動物におけるPHx後の再成長速度の低下は、切除前の肝臓サイズの拡大に起因した可能性がある。この前提と一致して、rBDL+OCAラットの肝臓対体重比率は、PHxの5日後、コントロール動物と同様であった(図19B)。この比率は、コントロールに比べて未処置rBDLグループにおいてより低いままであり、OCAグループにおけるより遅い再生速度が最終的に肝容量回復の程度を弱めたものではなかったことを示した。
これらの発見についてよりよく調査するために、FXRに関係する遺伝子の発現および増殖パラメーターをPHx後の最初の5日間にわたりモニターした。Fgfr4以外に、肝臓のFxrがコントロールおよび未処置rBDLラットにおいてPHx後の1日目に著しくアップレギュレートした(図19D)。これらのグループにおけるCcnd1の同時の誘発(図19D)およびKi67+肝実質細胞の出現(図19C)は、Fxr−Fgf15−Fgfr4シグナル伝達軸が肝再生に必要とされるという以前の考えを裏付ける(Uriarte,et al.Gut.2013,62(6):899−910;Naugler PLoS One.2014,9(5):e97426)。したがって、PHx後の2日目の未処置rBDL動物における停滞しつつある再成長は、FxrおよびFgfr4発現の低下と平行して起こる(図19A〜D)。この発見は、胆汁うっ滞性の肝臓における再生が尽きることを説明し得るだけではなく、肝再生を増強するためにこの経路を標的にすることの論理的根拠を強化する。
腸のFgf15発現の強いPHx前の誘発に応じて(図17)、肝臓のFgfr4発現は、再成長段階中、OCA処置動物で低いままであった。肝臓Fxrに対するOCAの効果は、未処置rBDLおよびコントロールラットに比べたFxr標的Shpの高い転写レベルによって示されるように、Phx後の最初の2日間、非常に著しかった。後者は、PHx後1日目の肝臓Fxr mRNAにおけるわずかな減少によって裏付けされる。OCAによる肝臓Fxr標的の誘発の成功にもかかわらず、肝臓のFoxm1発現は、いずれのグループでも肝再生中に変化しなかった(図19D)。
再成長の動態とは対照的に、Ki67肝実質細胞の数は、PHx後の1日目にOCAグループにおいて最も高く(図19Cおよび20)、これは増殖の増加を示す。この差異は、PHx前の肝容量のOCA誘発性の増加に由来し得る。切除前のOCAによる増殖性シグナル伝達の誘発は、PHx後1日目に観察されたKi67染色におけるピークを引き起こした可能性があり、一方、Fgfr4発現の低下ならびに形質転換増殖因子ベータ(Tgfβ)およびサイトカインシグナル伝達サプレッサー3(Socs3)などの肝再生の終了のシグナルの誘発は(図19D)、OCAグループにおける肝容量の回復の遅れを説明し得る。OCAグループにおけるこの再成長の失速は、PHx前に大きかった肝臓(すなわちOCA処置肝臓(図17B))が、一定のあらかじめ定められた肝臓対体重比率に達するのにそれほどの拡大を必要としないように、「hepatostat」というパラダイム(Moschetta,et al.Gastroenterology,2015,149(3):537−40;Naugler,et al.Gastroenterology 2015,149(3):728−40)にも合う。この考えは、OCAグループにおける肝臓サイズがPHxの5日後に健康なコントロールに匹敵したことを示す図19Bによって実証される。
図19は、肝臓再成長が、オベチコール酸により処置された胆汁うっ滞後のラットにおいて失速することを示す。詳細には、図19Aは、健康なラット(黒色の線)、胆汁うっ滞後のラット(rBDL、緑色の線)、およびオベチコール酸により処置されたrBDLラット(OCA、赤色の線)の部分(70%)肝切除術(PHx)後の肝臓再成長を示す。図19Bは、PHxの直後(左)および5日後(右)の残り肝臓の乾燥重量を示す。図19Cは、PHx後の1日目(左)および5日目(右)の増殖肝実質細胞の数を示す。図19Dは、様々な増殖およびFxrに関係する遺伝子の肝臓の発現を示す(BW=体重;rBDL=可逆的胆管結紮(胆汁うっ滞);OCA=オベチコール酸。はコントロールグループに対するp<0.05を示す。は、実線によって示される実験グループに対するp<0.05を示す。は、実験グループ内でのベースラインに対するp<0.05を示す)。
OCAは胆汁酸輸送を調整することによって閉塞性胆汁うっ滞中に胆管の損傷を悪化させる
Fxrアゴニスト[Liu 2003]またはFxr標的FGF19/Fgf15[Luo 2014;Modica 2012]が胆汁うっ滞性の肝臓損傷を減弱することが実証された。Fxrの遺伝子欠失が、BAの解毒および排泄を変化させることによってBDL誘発性の肝臓損傷を実際に低下させることも分かった[Wagner 2003a;Stedman 2006]。OCA処置の効果をさらに調べるために、肝臓の損傷についての血清マーカーおよび組織学的マーカーをPHx前およびPHx後の最初の5日間で判定した。BAホメオスタシスに関係のある様々な遺伝子の発現を同時にモニターした。
胆汁うっ滞
PHx前、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアルカリホスファターゼ(ALP)のレベルは、OCAを受けているrBDLラットにおいて他の2つのグループよりもかなり高く、肝胆道損傷の悪化を示した(図21A〜C)。血漿ガンマグルタミルトランスフェラーゼ濃度は、ALPと同じ動態をたどった。組織学的分析は、PHxの場合にrBDLグループにおいて肝細胞壊死および線維性の変化が同様の程度であったことを明らかにした(図21D)。組織学的変化が胆汁うっ滞性の損傷についての遅行指標であるが、血漿および組織学的損傷プロファイル間に明らかに関連がないのは、おそらくOCA処置およびBDLの組み合わせの期間が比較的短かったことに関係すると思われる。
ベースラインでの肝臓の生化学的組成に対するOCAの効果を調査するために、BAの代謝および輸送に関係する様々なFxr標的遺伝子の発現を判定した。RBDLラットは、基底外側BA排出輸送体Mrp3をアップレギュレートすることによってBAの過負荷に適応したが、図21F、これは、胆汁うっ滞性のマウスおよび患者において見られた応答と類似している[Schaap 2009;Boyer 2006]。OCA処置は、未処置rBDL動物よりもMrp3のより頑健な(robust)誘発(図21F)ならびに同時に基底外側BA排出輸送体OstβおよびMrp4のアップレギュレートに至った(図21F)。そのうえ、毛細胆管BA排出輸送体をコードする典型的なFxr標的Bsepは、ほぼ8倍アップレギュレートされた(図21F)。OCAが胆汁分泌を誘発するように[Roda 2014;Fiorucci 2005a]、ベースラインでの肝臓損傷プロファイルは、おそらく、ふさがれた胆管へのBsepを介したBAの強制的なポンプ輸送によって引き起こされる。これは、胆管の圧力が高められるため、胆管の梗塞を引き起こし得る[Wagner 2003a;Fickert 2002]。7日間のOCA処置後の肝外胆管から回収された胆汁の実質的な増加および胆管のBA量の上昇もこの考えを裏付ける(図21E)。BDL誘発性の肝臓損傷に対する胆汁分泌薬の同等の副作用が観察された[Weerachayaphorn 2014]。この副作用を媒介する際のBsepについての決定的な役割は、Bsepの薬理学的抑制がマウスにおける胆汁うっ滞性の損傷を低下させるという以前の発見によって裏付けられる[Chen 2015]。後者は、PHx前に見られるBsep発現、肝外胆汁体積、および胆管の損傷についてのマーカー間の正の相関によっても確証される(図18)。OCAによる肝臓のBA負荷の低下にもかかわらず(図21E)、肝細胞の損傷は、ベースラインでOCA処置動物でも増加した(図21A)。これは、細胆管反応および関係する好中球流入に対する二次的なものとなり得るまたはより毒性のケノデオキシコール酸を優先したBAプールの組成のわずかな変化に関係し得る(図22)。
特に、基底外側BA取り込み輸送体Ntcpは、OCAグループにおいてややアップレギュレートされた(図22E)のに対し、Ntcpは、肝実質細胞BA負荷を制限するために胆汁うっ滞中にFxrによって通常阻止される[Zollner 2005;Lionarons 2016]。Ntcp抑制の同様の低下は、FxrアゴニストGW4064により処置された肝臓内(肝外ではないが)胆汁うっ滞を有するマウスにおいて以前に見られた[Liu 2003]。肝臓Cyp7a1がShpを介して、Fgf15−Fgfr4を介して、またはその両方の組み合わせにより[Inagaki 2005;Modica 2012;Naugler 2015;Li 2014a]、OCAによって阻止されるであろうことも予想された[Liu 2003]。肝実質細胞Fxr活性化のサイン(上記に議論される)および回腸Fgf15発現(図22F)にもかかわらず、OCAは、肝実質細胞Shp(図21D)もCyp7a1のmRNAレベル(図22F)も変化させなかった。両方の発見は、胆汁うっ滞中のBA合成(の調節)がFXRおよびSHPによって独立してコントロールされるのではなく、たとえばプレグナンX受容体および肝臓核内因子などの他のBA受容体および転写(共)活性化因子を必要とすることを再確認する[Geier 2005;Fiorucci 2014]。胆汁うっ滞性の状態下でのNtcp[Jung 2004;Geier 2007]およびCyp7a1[Wagner 2003a;Schaap 2009]の調節の種間の差異もこれらの観察について説明し得る。しかしながら、rBDLによって引き起こされる肝臓BA含有量の上昇は、OCA処置によって有効に抑えられ(図22E)、これは、OCA処置中のCyp7a1によるBA産生の持続およびNtcpによるBAの摂取がおそらく有害な事象をほとんど伴わないことを示唆する。
再生
通常の胆汁の流れの回復と一致して、肝胆道損傷マーカーは、回復がOCA処置動物でより緩やかであったにもかかわらず、rBDLグループにおいてPHx後48時間以内に標準的になった(図22A〜C)。約4倍減にもかかわらず、ALPレベルは、再生中、他の研究アームよりもOCAグループにおいてより高いままであった(図22B)。ビリルビンクリアランスもOCA処置動物においてわずかに遅れ(図22C)、これは、低ALT値に照らして、肝機能が弱められたというよりも、MRP2による毛細胆管ビリルビン搬出の障害およびMRP3による代償性基底外側搬出を反映し得る(図22F)。組織学的レベルでは、PHx前にrBDLグループにおいて見られた肝細胞の壊死の程度はあまり大きくなかったが、再生段階中に次第におさまり(図5F)、これは、血清損傷マーカーにおける下降傾向と一致する。非細胆管の病因を有する門脈周囲の線維症は、PHx後5日目にすべてのコントロール動物において観察され、これが通常の再生応答の一部であることを示唆した。同様の程度の門脈周囲から隔膜にかけての線維症が両方のrBDLグループにおいて見られた。これは、PHx前にOCAによって引き起こされた胆管損傷マーカーの増加が肝切除術後に肝臓損傷を悪化させなかったことを示す。したがって、再生段階中にいかなる研究グループでも注意すべき死はなかった。
図21において示されるように、血漿中のALT(A)、ALP(B)、およびビリルビンレベル(C)を、部分肝切除術(PHx)前(t=0)および後に、コントロールラット(コントロール系)および未処置のままの(rBDL系)またはオベチコール酸を受ける(OCA、rBDL−OCA系)胆汁うっ滞(後)ラットにおいて得た。肝臓切片の組織学的スコアリングは、平均スコア±範囲(D)として示す。スコアリングシステムおよび代表的な画像を表1および図20に示す。PHx前の血漿、肝組織の総胆汁酸(BA)レベルおよび胆管BA量(E)。コントロールおよびrBDLグループについての全体的なBAデータは、以前の報告でも公開された[Lionarons 2016]。肝実質細胞BAホメオスタシスに関係する遺伝子の発現(F)。(F)におけるグループの色分けは、(A〜E)と同様である(略語:ALP=アルカリホスファターゼ;ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ;rBDL=可逆的胆管結紮(胆汁うっ滞);OCA=オベチコール酸。はコントロールグループに対するp<0.05を示し、は、実線によって示される実験グループに対するp<0.05を示す)。
議論
肝再生障害は、大きい肝臓手術を受ける実質性の肝疾患を有する患者にとって依然として深刻な危険性がある。本明細書で示したデータは、FxrアゴニストOCAが胆汁うっ滞性の患者の外科的治療を改善するために使用されてもよいことを示す。最も重要なことに、OCAは、PHx前に胆汁うっ滞性のラット肝臓の増殖を引き起こした。肝臓サイズの同様の増加は、コール酸含有食を給餌した健康なマウスにおいて観察されたが、Fxrノックアウト動物では見られなかった[Huang 2006]。これは、Fxr(アゴニスト)が、PHxなどの確立された分裂促進的なトリガーの非存在下において肝臓増殖を刺激し得ることを示す。根底にあるメカニズムは十分に理解されていないが、BAは、肝臓サイズを変化させることができるように思われる。無制限のBA合成および循環BAの結果として生じる上昇は、ヒト化マウス肝臓のサイズを約3倍増加させたことが最近示された[Naugler 2015]。しかしながら、肝実質細胞増殖を引き起こすのにBAプールの拡大のみで十分であるかどうかは疑わしく、BDLも全身のBAレベルを増加させるが、場合によりBDL状態下では腸のFxr刺激が不足し得るため、肝臓増殖を誘発しない。ラットおよびマウスにおいてBDL後に総肝容量が増加するため、肝臓の含水量についての補正は、その点で重要に思われ[Modica 2012]、湿肝容量の増加がおそらく炎症性の人為的結果(たとえば、浮腫)に相当することを示す。
Fxrが腸肝軸の両端で発現されるため、肝臓増殖に対するOCAの効果が肝臓および/または小腸で生じるかどうかを見分けるには根拠がない。Fgf15などの腸のFxr標的の強い誘発が増殖性肝臓Fgfr4−Stat3経路の活性化につながったため、本発明者らの転写分析は、後者に注目したものである[Kong 2014;PadrissaAltes 2015]。NtcpおよびCyp7a1などの肝臓のFxr標的の発現に対するOCAの効果は、それほど明らかなものではなかった。肝臓増殖を駆動する際の腸のFxrの明らかな重要性は、Fgf15がPHx後の肝再生に不可欠であることを述べている研究によって裏付けられる[Uriarte 2013;PadrissaAltes 2015]のに対し、肝実質細胞Fxrの選択的遺伝子欠失による再生の遅延は、ごくわずかである[Borude 2012]。肝再生に対する腸および肝臓のFxrの相対的寄与をさらに説明することも、rBDL中にOCAによって引き起こされる胆管損傷の増加に照らして求められる(下記に議論される)。閉塞性胆汁うっ滞中の肝臓のFxr刺激のこの問題を回避するために最近開発されたFGF19アナログM70を使用することができ得る。肝臓増殖に対する遺伝子操作FGF19について予期される効果は、依然として実験で証明されていないが、M70は、Mdr2−/−マウスおよびBDLマウスにおいて肝臓損傷を低下させ[Zhou 2015;Luo 2014]、健康なボランティアにおいてBA合成を抑制する[Luo 2014]。
PHx後の肝容量回復がOCAグループにおいて切除前の肝臓の肥大によって強く影響を及ぼされることを考慮すれば、この実験は、OCAがPHx後の肝再生も加速することができるかどうかについて決定することができない。肝臓サイズの差異およびFgfr4のダウンレギュレーションは、増殖性の応答を鈍くし[Yamanaka 1993]、さらには、増殖ではなく肥大に再生のモードを向け得[Miyaoka 2012]、それにより、他のグループにおける再生動態との正確で信頼できる比較が妨げられる。手術前に肝臓サイズを増加させる能力は、小さい残りの肝臓の増殖を加速させることよりもさらに魅力的であるという解釈も可能である。
PHxおよび胆道ドレナージは、このモデルにおいて同時に実行されたのに対し、PHC患者は、通常、手術の数週間前に胆道ドレナージを受け、肝臓が胆汁うっ滞性の打撃から回復するのを可能にする。オルチプラズ[Weerachayaphorn 2014]およびウルソデオキシコール酸[Fickert 2002]などの他の胆汁分泌誘発化合物でも観察された、OCAにより処置された胆汁うっ滞性の動物において見られる胆管損傷の増加は、おそらく手術前に胆道ドレナージがなされる状況では害をほとんど引き起こさない。この前提は、再生段階中の損傷マーカーの迅速な標準化および原発性胆汁性肝硬変などの胆汁の流れの不完全な閉塞を有する胆汁うっ滞性の状態を処置する際のOCAの治療の成功によって確証される[Hirschfield 2014]。BA排出輸送体の強い誘発を考慮すると、OCAが胆道ドレナージ後にBAクリアランスをさらに促進することができると考えられる。そうであれば、OCAは、ドレナージおよび手術の間隔を小さくすることにより、胆管炎などのドレナージに関連する合併症を低減させ得る[Yokoyama 2014]。ウルソデオキシコール酸などのFxrアゴニストが胆管の固有の免疫機能も増大させるという考えは、ドレナージに関係する合併症をさらに抑制することができ得る[Daldebert 2009]。動物モデルにおける胆管の減圧および肝臓切除を一時的に分離することも、現在の研究で無視することができない切除後の肝臓重量および体重に対する炎症、浮腫、および栄養状態などのパラメーターの影響を制限するであろう。
OCAは、非アルコール性脂肪性肝炎などの良性の障害を有する患者を処置するために専ら使用されてきた[NeuschwanderTetri 2014]。しかしながら、肝臓増殖に対するOCAの効果から利益を得るであろう患者の大部分は、肝胆道悪性疾患に罹患している。増殖性の介入はすべて、PVEについて以前に実証されたように、副作用として腫瘍進行を誘発する危険性をもたらす[Hoekstra 2012b;Simoneau 2015;Kokudo 2001]。悪性疾患に対するOCAの可能性として考えられる効果は、癌のタイプによって異なり得る。一方で、FXR標的Fgf15は、FGFR4陽性肝細胞癌の増殖を促進するように思われる[Ho 2009]。他方で、FXRは、PHC[Dai 2011]および結腸直腸癌[Modica 2008]の増殖を抑制する。予備的な安全性についての研究により、2年間の高用量の処置(25mg/kg)がマウスにおいて悪性転換に至らないことが示されている(Adorini L.,Intercept Pharmaceuticals)。

Claims (19)

  1. 低下した肝機能を有する対象の肝臓の再生を加速するか、促進するか、または増加させる方法であって、治療有効量の式(A):
    の化合物またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含み、式中、
    が水素またはC〜Cアルキルであり、
    、R、R、およびRがそれぞれに独立して水素またはヒドロキシルであり、
    がCOH、C(O)NH(CHSOH、C(O)NH(CHCOH、またはOSOHであり、および
    mおよびnがそれぞれに独立して1、2、または3である、方法。
  2. がCOHまたはOSOHである、請求項1に記載の方法。
  3. がメチル、エチル、またはプロピルであり、およびRおよびRがそれぞれ水素である、請求項1または2に記載の方法。
  4. が水素であり、およびRがヒドロキシルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記化合物が、
    またはその薬学的に許容される塩である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記化合物が、
    またはその薬学的に許容される塩である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記化合物が薬学的に許容される塩である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記塩がナトリウム塩またはトリエチルアンモニウム塩である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記対象が移植された肝臓を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記対象が切除された肝臓を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記低下した肝機能が外科的手術、疾患、病的な状態、または損傷の結果である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記低下した肝機能が外科的手術の結果である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記外科的手術が肝動脈塞栓術または門脈操作である、請求項12に記載の方法。
  14. 前記外科的手術が部分肝切除術である、請求項12に記載の方法。
  15. 前記化合物が前記外科的手術前もしくはその後にまたは組み合わせて投与される、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記低下した肝機能が、脳腱黄色腫症(CTX)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、薬剤誘導性胆汁うっ滞、妊娠性肝内胆汁うっ滞、経静脈栄養関連胆汁うっ滞(PNAC)、細菌異常増殖または敗血症関連胆汁うっ滞、自己免疫性肝炎、慢性ウイルス性肝炎、アルコール性肝疾患、肝臓移植片関連移植片対宿主病、先天性肝線維症、総胆管結石症、肉芽腫性肝疾患、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、ウィルソン病、ゴーシェ病、ヘモクロマトーシス、およびアルファ1−アンチトリプシン欠損症から選択される疾患または病的な状態の結果である、請求項11に記載の方法。
  17. 前記低下した肝機能が、肝細胞癌、肝内悪性疾患、および肝外悪性疾患から選択される疾患または状態の結果である、請求項11に記載の方法。
  18. 前記低下した肝機能が、薬剤誘発性の損傷または身体的な損傷から選択される損傷の結果である、請求項11に記載の方法。
  19. 低下した肝機能を有する対象の肝容量を増加させる方法であって、治療有効量の式(A):
    の化合物またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含み、式中、
    が水素またはC〜Cアルキルであり、
    、R、R、およびRがそれぞれに独立して水素またはヒドロキシルであり、
    がCOH、C(O)NH(CHSOH、C(O)NH(CHCOH、またはOSOHであり、および
    mおよびnがそれぞれに独立して1、2、または3である、方法。
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