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JP2018159860A - 光学製品 - Google Patents

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知晶 井上
Chiaki Inoue
知晶 井上
加藤 祐史
Yuji Kato
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Abstract

【課題】反射防止等の光学機能を有しながら、抗菌性を呈する光学製品を提供する。【解決手段】図示された反射率分布を有する設計例1に係る誘電体多層膜が、基材に形成されており、当該誘電体多層膜は、4つの低屈折率誘電体層(SiO2層,金属イオン担持ゼオライト含有層を含む)及び3つの高屈折率誘電体層(TiO2層)を含んでいる。誘電体多層膜における最も基材から遠い層である最外層(第7層)として、金属イオン担持ゼオライト(抗菌材)を含む誘電体層が配置されている。【選択図】図1

Description

本発明は、抗菌性を有する光学製品に関する。
抗菌性を有する光学部品として、特開2010−139964号公報(特許文献1)に記載のものが知られている。
この光学部品の表面には反射防止膜が設けられ、更にその反射防止膜の上に、所定の有機系抗菌剤が設けられる。その所定の有機系抗菌剤は、N−(トリメトキシルプロピル)イソチオウロニウムクロライト、N−トリメトキシシリルプロピル−N−アルキル−N−メチルアンモニウムクロライド、又は、N−トリメトキシシリルプロピル−N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムクロライドである。
特開2010−139964号公報
上記光学部品では、表面に所定の有機系抗菌剤の膜が形成されるところ、その有機系抗菌剤の膜は比較的に熱に弱く、又比較的に経時変化が大きくて、耐久性に劣る。
そこで、本発明の主な目的は、反射防止等の光学機能を有しながら、抗菌性を呈する光学製品を提供することである。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、基材と、前記基材の表面に形成された、1以上の低屈折率誘電体層及び1以上の高屈折率誘電体層を含む誘電体多層膜と、を備えており、前記誘電体多層膜における最も前記基材から遠い層である最外層として、金属イオン担持ゼオライトを含む誘電体層が配置されていることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、上記発明において、前記金属イオン担持ゼオライトは、銀イオン担持ゼオライト、銅イオン担持ゼオライト、及び銅亜鉛イオン担持ゼオライトのうちの少なくとも何れかであることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、上記発明において、前記最外層の前記誘電体層は、SiOを含んでいることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、上記発明において、更に、撥水性を呈する撥水層を備えており、前記撥水層は、前記誘電体多層膜における前記最外層の上に配置されていることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、上記発明において、前記撥水層は、含フッ素有機ケイ素化合物であることを特徴とするものである。
本発明の主な効果は、反射防止等の光学機能を有しながら、抗菌性を呈する光学製品を提供することができることである。
設計例1に係る可視域ないしその隣接域の波長域における透過率分布を示すグラフである。 設計例2に係る図1同様のグラフである。
以下、本発明に係る実施の形態の例が、適宜図面に基づいて説明される。
本発明に係る光学製品では、基材に対して誘電体多層膜が形成されている。
基材は、透光性を有する。基材は、板状、ブロック状、レンズ状等、どのような形状であっても良い。基材の材料として、好ましくは熱硬化性樹脂が用いられ、例えばポリウレタン樹脂、チオウレタン樹脂、ウレタン−ウレア樹脂、エピスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂、あるいはこれらの組合せが用いられる。
基材の種類ないし用途は、特に限定されず、好ましくは光学機能や抗菌性を付与しようとするものであり、例えば、カメラ(デジタルカメラや通信機器内蔵カメラ,防犯カメラを含む)や眼鏡等のレンズ、家電製品の筐体、各種フィルム、窓である。
誘電体多層膜は、少なくとも基材の一面において設けられる。基材が板状(レンズ状)である場合、誘電体多層膜は、片面のみに設けられても良いし、両面に設けられても良く、両面に設けられる場合、各誘電体多層膜が互いに同じ構造とされていても良い。
誘電体多層膜は、1以上の低屈折率誘電体層及び1以上の高屈折率誘電体層を含んでいる。
低屈折率誘電体層及び高屈折率誘電体層は、好ましくは何れも複数配置され、又互いに交互に配置される。
低屈折率誘電体層は、好ましくは低屈折率材料の蒸着により形成される。低屈折率材料としては、酸化ケイ素(特にSiO)やフッ化マグネシウム(特にMgF)の少なくとも一方が例示される。
高屈折率誘電体層は、好ましくは高屈折率材料の蒸着により形成される。高屈折率材料としては、酸化ジルコニウム(特にZrO)、酸化チタン(特にTiO)、酸化タンタル(特にTa)、酸化ニオブ(特にNb)の少なくとも何れかが例示される。
蒸着は、好ましくは真空蒸着により行われる。又、酸素イオン及びアルゴンイオンの少なくとも一方等のイオンでアシストしながら、あるいはプラズマ処理をしながら蒸着がなされても良い。
尚、誘電体多層膜と基材の間に、ハードコート膜を始めとする単数又は複数の種類に係る第1の中間膜が付加されても良く、誘電体多層膜が板状の基材の両面に形成される場合には、付加する中間膜の種類が互いに変えられたり、膜の有無が互いに変えられたりしても良い。
本発明では、誘電体多層膜における最も基材から遠い層である最外層(誘電体多層膜における最も空気側の層)として、金属イオン担持ゼオライトを含む誘電体層(抗菌材層)が配置されている。尚、最外層以外の層においても抗菌材層が配置されても良い。
金属イオン担持ゼオライトは、金属イオンがゼオライト(アルミノケイ酸塩)にイオン交換反応によって担持されたものである。
ゼオライトとしては、天然ゼオライト(沸石)や人工ゼオライトが用いられても良いし、A型,Y型,P型等の各種の型のゼオライトが用いられても良い。
ゼオライトに担持される金属イオンは、例えば銀イオン,銅イオン,銅亜鉛イオンのうちの少なくとも1つである。
ゼオライトには、これらの金属イオンから選択される1種類の金属イオンを担持させても良いが、2種以上の金属イオンを担持させることもできる。又、ゼオライトとして、金属イオン担持ゼオライトが1種単独で使用されてもよいが、2種以上の金属イオン担持ゼオライトが組み合わせられても良い。
誘電体多層膜の最外層である抗菌材層は、無機系抗菌材である金属イオン担持ゼオライトの添加が屈折率の上昇を招くことから、好ましくは低屈折率誘電体であるSiOを含んでいる。低屈折率誘電体であるSiOによって屈折率上昇要因である金属イオン担持ゼオライトが保持されることとなり、所望の光学特性が容易に確保されることとなる。
更に、誘電体多層膜における最外層の上に、撥水層が配置されていても良い。この場合、光学製品において、光学機能及び抗菌機能に加え、撥水機能が付与される。
撥水層(撥水膜)は、例えば有機ケイ素化合物を重縮合させたものである。重縮合によって、被膜の厚膜化や緻密化が可能となり、光学多層膜における隣接層との密着性及び表面硬度が高くなって、撥水性に加え撥油性も呈するものとなり、汚れの拭き取り性に優れた被膜が得られ易くなる。
撥水膜は、公知の蒸着法やイオンスパッタリング法等により形成される。
重縮合前の有機ケイ素化合物は、好ましくは、−SiR3−y(Rは1価の有機基、Xは加水分解可能な基、yは0から2までの整数)で表される含ケイ素官能基を有する化合物である。ここで、Xとしては、例えば−OCH,−OCHCH等のアルコキシ基、−OCOCH等のアシロキシ基、−ON=CR等のケトオキシム基(R,Rはそれぞれ一価の有機基を表す)、−Cl,−Br等のハロゲン基、−NR等のアミノ基(R,Rはそれぞれ一価の有機基を表す)などの基が挙げられる。
このような有機ケイ素化合物としては、含フッ素有機ケイ素化合物が好適である。含フッ素有機ケイ素化合物は、撥水撥油性、電気絶縁性、離型性、耐溶剤性、潤滑性、耐熱性、消泡性に総合的に優れている。特に、分子内にパーフルオロアルキル基あるいはパーフルオロポリエーテル基を持つ分子量1000〜50000程度の比較的大きな有機ケイ素化合物は、防汚性に優れる。
尚、誘電体多層膜における最外層の上に、耐傷層を始めとする撥水層以外の層が付与されても良い。
又、誘電体多層膜と撥水層の間に、単数又は複数の種類に係る第2の中間膜が付加されても良く、撥水層が板状の基材の両面に形成される場合には、付加する中間膜の種類が互いに変えられたり、膜の有無が互いに変えられたりしても良い。両面の誘電体多層膜中の片方のみに撥水層が形成されても良い。
本発明に属する実施例、及び本発明に属さない比較例が以下に示される。
以下では、各種の検討例が評価され、その評価により、その検討例が実施例に該当するかあるいは比較例に該当するかについて決定される。
以下の実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
尚、本発明の捉え方によっては、下記の実施例の一部が実質的には比較例となり得、あるいは下記の比較例の一部が実質的には実施例となり得る。
<検討例の作製等>
一辺4cm(センチメートル)で肉厚が1.0mm(ミリメートル)である平坦な矩形板状のポリカーボネート製の基材における片面に対し、各種の誘電体膜材料を順次蒸着することで光学多層膜である誘電体多層膜が形成された。
そして、誘電体多層膜の有無や、付与した誘電体多層膜の構成の相違により、各種の検討例が作製された。
検討例1は、上記基材のみで、誘電体多層膜が付与されていないものである。
検討例2〜10は、上記基材の片面に対し、それぞれ設計例1をベースにした誘電体多層膜が形成されたものである。設計例1は、全7層又は全8層の多層膜構造を有しており、基材側を第1層として、第6層までの奇数層にSiO(二酸化ケイ素,シリカ)を蒸着により配置し、第6層までの偶数層にTiO(二酸化チタン,チタニア)を蒸着により配置し、又第7層に抗菌材料入りのSiOを蒸着により配置し,更に検討例によっては第8層(最表層)に撥水層を撥水剤の蒸着により配置したものである。設計例1に係る各層の材料とその膜厚が次の表1に示され、設計例1の誘電体多層膜付きの基材が可視光(波長域が可視域(ここでは400nm以上760nm以下)内の光)及びその隣接域の光に対して呈する反射率分布のグラフが図1に示される。尚、かような反射率分布は、検討例2のものであり、検討例3〜10の反射率分布は、検討例2のものとさほど変わらない。
設計例1に係る誘電体多層膜は、可視域全域に対して反射率が2%以下であり、410nm以上720nm以下の波長域内で反射率が1%以下であって、反射防止機能(Antireflection,AR)を有しており、反射防止膜となっている。誘電体多層膜のうち、主に第1層から第7層までにより、低屈折率材料(SiO)と高屈折材料(TiO)の交互膜となっており、反射防止機能が形成される。又、第7層により、抗菌機能が形成される。更に、第8層を有する場合には、第8層により撥水機能(防汚機能)が形成される。
Figure 2018159860
これらのうち、検討例2〜5は、設計例1の第7層の材料の一部である抗菌材料として、銀(Ag)イオン担持ゼオライトが用いられたものである。検討例2は、銀イオン担持ゼオライトが、第7層のベースとなるSiOに対し、10重量%の割合で添加されたものである。同様に、検討例3〜5は、銀イオン担持ゼオライトが、第7層のベースとなるSiOに対し、順に20,40,50重量%の割合で添加されたものである。検討例2〜5は、銀イオン担持ゼオライトの割合を除き、互いに同一の構成となっており、撥水層が付与されていないものである。
又、検討例6〜7は、抗菌材料として銀(Ag)イオン担持ゼオライトが用いられ、更に撥水層(第8層,最表層)が付与されたものである。検討例6,7は、銀イオン担持ゼオライトが、第7層のベースとなるSiOに対し、順に15,50重量%の割合で添加されたものである。撥水層の物理膜厚は、10nmである。撥水層(撥水膜)は、ここでは含フッ素有機ケイ素化合物(キヤノンオプトロン株式会社製OF−SR)を撥水剤として蒸着により形成されている。
更に、検討例8〜9は、抗菌材料として銅(Cu)イオン担持ゼオライトが用いられたものである。検討例8,9は、銅イオン担持ゼオライトが、第7層のベースとなるSiOに対し、順に15,30重量%の割合で添加されたものであり、撥水層が形成されていないものである。
加えて、検討例10は、抗菌材料として銅亜鉛(CuZn)イオン担持ゼオライトが用いられたものである。検討例10は、銅亜鉛イオン担持ゼオライトが、第7層のベースとなるSiOに対し30重量%の割合で添加されたものであり、撥水層が形成されていないものである。
検討例11〜18は、上記基材の片面に対し、それぞれ設計例2をベースにした誘電体多層膜が形成されたものである。設計例2は、全32層の多層膜構造を有しており、基材側を第1層として、第31層までの奇数層にTiOを蒸着により配置し、第31層までの偶数層にSiOを蒸着により配置し、又第32層に抗菌材料入りのSiOを蒸着により配置したものである。設計例2に係る各層の材料とその膜厚が次の表2に示され、設計例2の誘電体多層膜付きの基材が可視光及びその隣接域の光に対して呈する分光反射率のグラフが図2に示される。尚、かような反射率分布は、検討例11のものであり、検討例11〜18の反射率分布は、検討例2のものとさほど変わらない。又、表2における上段が第1層〜第10層であり、中上段が第11層〜第20層であり、中下段が第21層〜第30層であり、下段が第31層〜第32層である。
設計例2に係る誘電体多層膜は、可視域及びその隣接領域中、580nm以上790nm以下の波長域内で反射率が約100%であり、その外側の波長域で反射率が数%以下であって、可視域中、波長400nm以上580nm以下の光の反射が抑制され、波長580nm以上760nm以下の光を透過させないフィルタ機能を有しており、可視域中短波長側の光を透過させる光学フィルタ膜(Short Wavelength Pass Filter,SWPF)となっている。
Figure 2018159860
これらのうち、検討例11〜15は、設計例2の第32層の材料の一部である抗菌材料として、銀(Ag)イオン担持ゼオライトが用いられたものである。検討例11〜15は、銀イオン担持ゼオライトが、第7層のベースとなるSiOに対し、順に10,15,20,40,50重量%の割合で添加されたものである。同検討例2〜5は、銀イオン担持ゼオライトの割合を除き、互いに同一の構成となっており、撥水層が付与されていないものである。
更に、検討例16〜17は、抗菌材料として銅(Cu)イオン担持ゼオライトが用いられたものである。検討例16,17は、銅イオン担持ゼオライトが、第32層のベースとなるSiOに対し、順に15,30重量%の割合で添加されたものであり、撥水層が形成されていないものである。
加えて、検討例18は、抗菌材料として銅亜鉛(CuZn)イオン担持ゼオライトが用いられたものである。検討例18は、銅亜鉛イオン担持ゼオライトが、第32層のベースとなるSiOに対し30重量%の割合で添加されたものであり、撥水層が形成されていないものである。
<抗菌性の試験及び評価の手法等>
これら各検討例に対して、抗菌性の試験が行われ、その結果に基づいて抗菌性の評価が行われた。
抗菌性の試験は、次の要領で行われた。
即ち、JIS Z2801(2010年度版)の抗菌力評価法(但しN=1)に準拠し、各検討例における誘電体多層膜の付与された面に対して黄色ブドウ球菌(NBRC12732)の菌液及び大腸菌(NBRC3972)の菌液が滴下され、滴下から24時間±1時間経過した後において10ml(ミリリットル)の試薬で洗い流し、そのうちの1mlにおける各菌の数が測定された。
各菌液の濃度は1/500NB(Nutrient Broth,培地)であり、滴下量は0.4mlである。又、菌液滴下後の各検討例の保存環境は、温度が35℃±1℃であり、湿度が90%以上である。菌液滴下前には、各検討例の表面に紫外線が10分間照射され、清浄化がなされた。
抗菌性は、試験後に基材のみの場合より菌数が抑えられているか否か基準として、次のように評価された。
即ち、まず基準となる基材のみの場合(検討例1)の結果をみると、次の表3に示されるように、黄色ブドウ球菌の菌数がE4(五桁の個数即ち10000個以上99999個以下)で、大腸菌の菌数がE4↑(明らかに六桁以上の個数)であった。尚、検討例1は、本発明に属さない比較例1となる。
Figure 2018159860
そして、黄色ブドウ球菌については、基材のみの場合(検討例1)の菌数が「E4」であることから、菌の数がE4又はE4↑である場合、評価がCとされた。又、菌の数がE3(四桁の個数),E2(三桁の個数)である場合、評価がBとされた。更に、菌の数がE1(三桁の個数),E0(一桁の個数)である場合、及び菌が検出されなかった(不検出である)場合に、評価がAとされた。
他方、大腸菌については、基材のみの場合の菌数が「E4↑」であることから、菌の数がE4↑である場合に評価がCとされ、菌の数がE4である場合に評価がBとされ、菌の数がE3,E2,E1,E0である場合及び菌が検出されなかった(不検出である)場合に評価がAとされた。
<抗菌性の試験及び評価の結果等>
反射防止膜(設計例1)に関し、検討例2〜5(銀イオン担持ゼオライト,撥水層なし),6〜7(銀イオン担持ゼオライト,撥水層あり),8〜9(銅イオン担持ゼオライト),10(銅亜鉛イオン担持ゼオライト)における菌数ないし抗菌性評価について、順に次の表4〜7に示される。
更に、光学フィルタ膜(設計例2)に関し、検討例11〜15(銀イオン担持ゼオライト),16〜17(銅イオン担持ゼオライト),18(銅亜鉛イオン担持ゼオライト)における菌数ないし抗菌性評価について、順に次の表8〜10に示される。
Figure 2018159860
Figure 2018159860
Figure 2018159860
Figure 2018159860
Figure 2018159860
Figure 2018159860
Figure 2018159860
検討例2(設計例1,撥水層なし,銀イオン担持ゼオライト10wt%)では、表4に示されるように、黄色ブドウ球菌の菌数が「E0」で、大腸菌の菌数が「不検出」であり、評価は何れも「A」である。
検討例3,4(銀イオン担持ゼオライト20,40wt%)では、双方共に、黄色ブドウ球菌の菌数が「E2」で、大腸菌の菌数が「E4」であり、評価は何れも「B」である。
検討例5(銀イオン担持ゼオライト50wt%)では、黄色ブドウ球菌の菌数が「不検出」で、大腸菌の菌数が「E2」であり、評価は何れも「A」である。
黄色ブドウ球菌の評価及び大腸菌の評価が双方共に「C」でなければ、少なくとも何れかの菌に対して、基材のみ(検討例1)の状態に比較して抗菌性が高いこととなる。
よって、検討例2〜5は、何れも本発明に属する実施例1〜4となる。
検討例6(設計例1,撥水層あり,銀イオン担持ゼオライト15wt%)では、表5に示されるように、黄色ブドウ球菌の菌数が「E3」で評価「B」であり、大腸菌の菌数が「不検出」で評価「A」である。
検討例7(銀イオン担持ゼオライト50wt%)では、黄色ブドウ球菌の菌数が「不検出」で、大腸菌の菌数が「E0」であり、評価は何れも「A」である。
よって、検討例6,7は、何れも本発明に属する実施例5,6となる。
検討例8,9(設計例1,撥水層なし,銅イオン担持ゼオライト15,30wt%)では、表6に示されるように、双方共に、黄色ブドウ球菌の菌数及び大腸菌の菌数が何れも「不検出」であり、評価「A」である。
よって、検討例8,9は、何れも本発明に属する実施例7,8となる。
検討例10(設計例1,撥水層なし,銅亜鉛イオン担持ゼオライト30wt%)では、表7に示されるように、大腸菌の菌数が「E4↑」であり評価が「C」であり、黄色ブドウ球菌の菌数が「E1」であり評価「A」である。
よって、検討例10は、本発明に属する実施例9となる。
検討例11〜15(設計例2,撥水層なし,銀イオン担持ゼオライト10,15,20,40,50wt%)では、表8に示されるように、何れも、黄色ブドウ球菌の菌数が「E1」又は「不検出」で評価「A」であり、大腸菌の菌数が「E3」,「E1」又は「不検出」で評価「A」である。
よって、検討例11〜15は、何れも本発明に属する実施例10〜14となる。
検討例16,17(設計例2,撥水層なし,銅イオン担持ゼオライト15,30wt%)では、表9に示されるように、双方共に、黄色ブドウ球菌の菌数及び大腸菌の菌数が何れも「不検出」であり、評価「A」である。
よって、検討例16,17は、何れも本発明に属する実施例15,16となる。
検討例18(設計例2,撥水層なし,銅亜鉛イオン担持ゼオライト30wt%)では、表10に示されるように、大腸菌の菌数が「E4」であり評価が「B」であり、黄色ブドウ球菌の菌数が「不検出」であり評価「A」である。
よって、検討例18は、本発明に属する実施例17となる。
<まとめ等>
以上より、設計例1に係る検討例2〜10(実施例1〜9)では、基材(検討例1)と、基材の表面に形成された、4つの低屈折率誘電体層(SiO層,金属イオン担持ゼオライト含有層を含む)及び3つの高屈折率誘電体層(TiO層)を含む誘電体多層膜と、を備えており、誘電体多層膜における最も基材から遠い層である最外層(第7層)として、金属イオン担持ゼオライト(抗菌材)を含む誘電体層が配置されている。
よって、検討例2〜10では、誘電体多層膜によって反射防止機能が確保され、しかも金属イオン担持ゼオライトを含む層により抗菌性が確保される。金属イオン担持ゼオライトは、有機系抗菌材より熱に強く経時変化の少ない無機系抗菌材であるから、有機系抗菌材を含有する光学製品より長期間安定して抗菌作用を発揮する。
又、金属イオン担持ゼオライトを含む層は、反射防止機能を有する誘電体多層膜の最外層となっているから、光学製品のなるべく表面に近い箇所に抗菌材含有層が配置されることとなり、光学製品が抗菌性に優れたものとなる。
更に、誘電体多層膜の最外層のみに金属イオン担持ゼオライト含有層が配置されれば、金属イオン担持ゼオライトの含有による透過率増加等の光学性能への影響が限定されたものとなる。
又、設計例2に係る検討例11〜18(実施例10〜17)では、基材(検討例1)と、基材の表面に形成された、16の低屈折率誘電体層(SiO層,金属イオン担持ゼオライト含有層を含む)及び16の高屈折率誘電体層(TiO層)を含む誘電体多層膜と、を備えており、誘電体多層膜における最も基材から遠い層である最外層(第32層)として、金属イオン担持ゼオライト(抗菌材)を含む誘電体層が配置されている。
よって、検討例11〜18では、誘電体多層膜によって光学フィルタ機能が確保され、しかも金属イオン担持ゼオライトを含む層により、熱に強く経時変化の少ない状態で抗菌性が確保される。
又、金属イオン担持ゼオライトを含む層は、反射防止機能を有する誘電体多層膜の最外層となっているから、光学製品が抗菌性に優れたものとなり、誘電体多層膜の最外層のみに金属イオン担持ゼオライト含有層が配置されれば、金属イオン担持ゼオライトの含有による透過率微減等の光学性能への影響が抑制されたものとなる。
更に、金属イオン担持ゼオライトは、銀イオン担持ゼオライト(検討例2〜7,11〜15)、銅イオン担持ゼオライト(検討例8〜9,16〜17)、又は銅亜鉛イオン担持ゼオライト(検討例10,18)のうちの少なくとも何れかである。よって、金属イオン担持ゼオライト含有層がより低コストで形成し易くなる。
又、検討例2〜18において、最外層の誘電体層は、SiOを含んでいる。よって、金属イオン担持ゼオライト含有層が安定するし、低屈折率誘電体であるSiOによって屈折率上昇要因である金属イオン担持ゼオライトを含有するために所望の光学特性(反射防止特性や光学フィルタ特性等)が容易に確保される。
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学製品。
加えて、検討例6〜7において、撥水性を呈する撥水層を備えており、その撥水層は、誘電体多層膜(反射防止膜)における最外層(第7層)の上(第8層)に配置されている。よって、検討例6〜7において、光学機能及び抗菌機能に加えて、撥水機能(防汚機能)が付与される。
又、検討例6〜7において、撥水層は、含フッ素有機ケイ素化合物である。よって、撥水層(防汚層)は、撥水撥油性、電気絶縁性、離型性、耐溶剤性、潤滑性、耐熱性、消泡性に総合的に優れたものとなる。

Claims (5)

  1. 基材と、
    前記基材の表面に形成された、1以上の低屈折率誘電体層及び1以上の高屈折率誘電体層を含む誘電体多層膜と、
    を備えており、
    前記誘電体多層膜における最も前記基材から遠い層である最外層として、金属イオン担持ゼオライトを含む誘電体層が配置されている
    ことを特徴とする光学製品。
  2. 前記金属イオン担持ゼオライトは、銀イオン担持ゼオライト、銅イオン担持ゼオライト、及び銅亜鉛イオン担持ゼオライトのうちの少なくとも何れかである
    ことを特徴とする請求項1に記載の光学製品。
  3. 前記最外層の前記誘電体層は、SiOを含んでいる
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学製品。
  4. 更に、撥水性を呈する撥水層を備えており、
    前記撥水層は、前記誘電体多層膜における前記最外層の上に配置されている
    ことを特徴とする請求項1ないしは請求項3の何れかに記載の光学製品。
  5. 前記撥水層は、含フッ素有機ケイ素化合物である
    ことを特徴とする請求項4に記載の光学製品。
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