以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
第1実施形態に係る制御装置100は、自動運転車両10(全体は不図示)に搭載されるものであって、自動運転車両10の制御を行うための装置である。制御装置100の説明に先立ち、自動運転車両10の構成について図1を参照しながら説明する。
本実施形態における自動運転車両10は、運転者の操作によることなく自動的な走行を行うことのできる車両として構成されている。また、自動運転車両10は、上記のような自動運転が行われている状態と、従来通り運転者の操作に基づく走行が行われている状態(つまり、自動運転が行われていない状態)とを、切り換えることもできる。自動運転車両10は、内燃機関210と、フライホイール220と、回転数センサ250と、動力伝達機構260と、電気回路部301と、を有している。
内燃機関210は所謂エンジンである。内燃機関210は、供給される燃料を内部で燃焼させ、これにより走行に必要な駆動力を生じさせる。このように、本実施形態における自動運転車両10は、内燃機関210で生じた駆動力により走行する車両として構成されている。
内燃機関210には、可変バルブシステム211が設けられている。可変バルブシステム211は、内燃機関210に設けられた吸気バルブ及び排気バルブ(いずれも不図示)の開閉タイミングを変化させる装置である。本実施形態では、吸気バルブが閉じるタイミングを可変バルブシステム211が変化させることにより、内燃機関210の実圧縮比を変化させることが可能となっている。
例えば、内燃機関210のピストンが下死点を過ぎた後、上死点に向かう途中の段階まで吸気バルブを開状態としておくことにより、内燃機関210の実圧縮比を下げることができる。つまり、可変バルブシステム211は、所謂デコンプレッション機構の一部として構成されている。可変バルブシステム211の動作は、後述の制御装置100によって制御される。内燃機関210の始動時においては、内燃機関210の実圧縮比が低くなるように、可変バルブシステム211の調整がなされる。これにより、内燃機関210を始動させるために必要なスタータ340のエネルギー消費を低く抑えることができる。
尚、このような態様に換えて、可変バルブシステム211の制御を担うECUが別途設けられているような態様であってもよい。この場合、制御装置100は、当該ECUと通信を行うことによって可変バルブシステム211を制御することとなる。
フライホイール220は、内燃機関210の駆動力によって回転する円盤状の部材である。フライホイール220は、その慣性モーメントが比較的大きくなっており、内燃機関210の駆動エネルギーの一部を回転エネルギーとして蓄えておくことができる。フライホイール220と、クランク軸230との間にはクラッチ240が設けられている。クラッチ240が結合されているときには、クランク軸230の回転力がフライホイール220に伝達され、両者は一体となって回転する。
クラッチ240の結合が解除されているときには、クランク軸230の回転力はフライホイール220に伝達されない。このような状態においては、内燃機関210の動作状態によることなく、フライホイール220は惰性で回転し続ける。
クラッチ240の動作は制御装置100によって制御される。尚、このような態様に換えて、クラッチ240の制御を担うECUが別途設けられているような態様であってもよい。この場合、制御装置100は、当該ECUと通信を行うことによってクラッチ240を制御することとなる。
内燃機関210が停止しており、且つフライホイール220が回転している状態において、クラッチ240の結合が行われると、フライホイール220の回転力が、クラッチ240を介して内燃機関210のクランク軸230に伝達される。これにより、停止している内燃機関210のクランク軸230を回転させ、内燃機関210を始動すること(つまり、所謂「押しがけ」を行うこと)ができる。
尚、図1においては説明の便宜上、フライホイール220に繋がるクランク軸230と、後述のスタータ340に繋がるクランク軸230と、動力伝達機構260に繋がるクランク軸230と、がそれぞれ分けて描かれているのであるが、実際のクランク軸230は一つだけである。
回転数センサ250は、内燃機関210の回転数、すなわちクランク軸230の回転数を測定するためのセンサである。回転数センサ250で測定された回転数は、制御装置100に送信される。
動力伝達機構260は、内燃機関210の駆動力を車輪270に伝達し、これにより自動運転車両10を走行させるための機構である。動力伝達機構260には、不図示のトランスミッションやディファレンシャルギア等が含まれる。
内燃機関210を停止させた状態で自動運転車両10が走行しているときには、車輪270の回転力を、動力伝達機構260を介して内燃機関210に伝達することができる。これにより、停止している内燃機関210のクランク軸230を回転させ、内燃機関210を始動することができる。
電気回路部301は、自動運転車両10に搭載された各種の電力消費機器と、これらの電力消費機器に対して電力を供給するための装置類とによって構成されている。以下では、電気回路部301に含まれる各種の電力消費機器のことを、「負荷310」とも表記する。図1においては、複数の電力消費機器からなる負荷310が単一のブロックとして描かれている。
電気回路部301には、上記の負荷310の他に、バッテリ320と、オルタネータ330と、スタータ340と、コンデンサ370と、が含まれている。図1に示されるように、負荷310、バッテリ320、コンデンサ370、オルタネータ330、スタータ340は、互いに並列に接続されている。
バッテリ320は、負荷310やスタータ340等に電力を供給するために設けられた蓄電池であって、例えばリチウムイオンバッテリである。バッテリ320は、オルタネータ330で発電された電力を充電しておくこともできる。バッテリ320は、本実施形態における「蓄電装置」に該当する。
電気回路部301には、バッテリ320の端子間電圧を測定するための電圧センサ350と、バッテリ320に入出力される電流を測定するための電流センサ360とが設けられている。電圧センサ350によって測定された電圧、及び電流センサ360によって測定された電流は、いずれも制御装置100に送信される。
コンデンサ370は、充放電を行うことのできる電気素子である。コンデンサ370は、上記のバッテリ320と同様に、負荷310やスタータ340等に電力を供給したり、オルタネータ330で発電された電力を充電したりすることができる。コンデンサ370は、バッテリ320と共に、本実施形態における「蓄電装置」に該当する。尚、図1においてはコンデンサ370が単一の素子であるように描かれているのであるが、コンデンサ370は複数設けられていてもよい。
オルタネータ330は、内燃機関210の駆動力によって動作する発電機である。内燃機関210の駆動力は、不図示のプーリーによってオルタネータ330に伝達される。オルタネータ330で発電された電力は、バッテリ320、コンデンサ370、負荷310、及びスタータ340のそれぞれに供給される。尚、内燃機関210が停止しているときには、オルタネータ330から負荷310等への電力供給は行われない。このときの負荷310等への電力供給は、バッテリ320及びコンデンサ370のみから行われることとなる。
スタータ340は、バッテリ320やコンデンサ370からの電力の供給を受けて動作する回転電機である。スタータ340の回転力は内燃機関210のクランク軸230に加えられ、これによりクランク軸230を回転させる。スタータ340は、クランク軸230を回転させ、これにより内燃機関210の始動を行うためのものである。このようなスタータ340は、本実施形態における「回転力付与部」に該当する。スタータ340の動作は制御装置100によって制御される。
尚、このような態様に換えて、スタータ340の制御を担うECUが別途設けられているような態様であってもよい。この場合、制御装置100は、当該ECUと通信を行うことによってスタータ340を制御することとなる。
本実施形態において、自動運転車両10が有する自動運転機能には、自動運転車両10の自動的な操舵(以下、「自動操舵」とも称する)を行う機能と、自動運転車両10の自動的な制動(以下、「自動制動」とも称する)を行う機能と、自動運転車両10の自動的な駆動力制御(以下、「自動駆動」とも称する)を行う機能とが含まれる。
負荷310には、上記のような自動運転を行うために動作する複数の機器が含まれる。このような機器には、例えば、自動操舵を行うためのパワーステアリング装置や、自動制動を行うためのブレーキ装置が含まれる。また、自動駆動を行うための、内燃機関210の回転数等を調整するECUも含まれる。
自動運転車両10は、自動運転中において不具合が生じると、安全に停車するための退避走行を自動的に行うように構成されている。このような退避走行としては、例えば、自動制動によって自動運転車両10を減速させ、可能な限り短時間のうちに停車させるようなことが含まれる。また、自動操舵及び自動駆動によって自動運転車両10を安全な場所(例えば道路の端)まで移動させ、その後、自動運転車両10を停止させるようなことも含まれる。退避走行の態様については、ここでは特に限定されない。
負荷310の一部、例えばパワーステアリング装置やブレーキ装置は、上記のような退避走行を実現するための機器に該当する。退避走行を実現するための機器のことを総じて、以下では「退避走行機器」とも称する。退避走行機器に該当するものの種類及び数は非常に多いので、図1ではこれらの個別の図示が省略されており、単一のブロックである負荷310として描かれている。尚、駆動力を生じさせる内燃機関210や、内燃機関210を始動するためのスタータ340等も、以上のような退避走行機器に含まれる。
自動運転車両10のその他の構成について説明する。自動運転車両10には自動運転スイッチ380が設けられている。自動運転スイッチ380は、自動運転のON又はOFFを切り換えるために、運転者が操作するスイッチである。自動運転スイッチ380がONとされているときには、自動運転車両10では自動運転が行われる。自動運転スイッチ380がOFFとされているときには、自動運転車両10では自動運転が行われなくなる。つまり、運転者による手動の運転操作に基づいた走行が行われる。
自動運転車両10には、自動運転車両10の状態や周囲の状況等を検知するためのセンサ類が複数設けられている。図1においては、このようなセンサ類のうち車速センサ381と、位置検知システム382と、燃料計383と、車載カメラ384とが示されている。
車速センサ381は、路面に対する自動運転車両10の走行速度(つまり車速)を検知するためのセンサである。車速センサ381で検知された自動運転車両10の車速は制御装置100に送信される。
位置検知システム382は所謂GPSであって、人工衛星から発信される信号に基づいて自動運転車両10の走行位置を検知するためのシステムである。位置検知システム382で検知された走行位置は、制御装置100に送信される。
燃料計383は、自動運転車両10の燃料タンク(不図示)に貯えられている燃料の量を測定するセンサである。燃料タンクに貯えられている自動運転車両10の燃料はガソリンである。自動運転車両10の燃料は、軽油や天然ガス、水素等であってもよい。燃料計383で検知された燃料量は制御装置100に送信される。
車載カメラ384は、自動運転車両10の周囲、特に前方側を撮影するためのカメラである。車載カメラ384は、例えばCMOSセンサを用いたカメラである。車載カメラ384は、撮影した画像のデータを制御装置100に送信する。制御装置100は、画像を解析することにより、自動運転車両10の周囲における障害物や車線の位置などを把握する。これにより、障害物との衝突を回避するための操舵や制動、及び車線に沿った走行を実現するための操舵等を自動的に行うことができる。尚、上記のような画像処理は、制御装置100とは別に設けられたECUによって行われることとしてもよい。
尚、上記のような車載カメラ384に加えて、障害物を検知するためのレーダー装置やレーザー装置等が備えられているような態様であってもよい。
引き続き図1を参照しながら、制御装置100の構成について説明する。制御装置100は、CPU、ROM、RAM等を有するコンピュータシステムとして構成されている。制御装置100は、機能的な制御ブロックとして、必要量特定部110と、現存量特定部120と、異常判定部130と、制限部140と、を備えている。
必要量特定部110は、退避走行を実行するために退避走行機器が必要とするエネルギー及びパワーの大きさを特定する部分である。「退避走行機器が必要とするエネルギー」とは、退避走行が開始されてから完了するまでの期間において、退避走行機器によって消費されるエネルギーのことである。例えば、退避走行が実行される期間においてバッテリ320等から退避走行機器に供給されるべき「電力量」が、「退避走行機器が必要とするエネルギー」に該当する。
また、「退避走行機器が必要とするパワー」とは、退避走行が実行されている期間において、退避走行機器に対し単位時間あたりに供給されるエネルギー(又は、退避走行機器が単位時間あたりに消費するエネルギー)の最大値のことである。例えば、退避走行が実行される期間において、バッテリ320等から退避走行機器に供給されるべき「電力」の最大値が、「退避走行機器が必要とするパワー」に該当する。
必要量特定部110は、例えば、過去の走行中等において実際に退避走行機器で消費された電力や電力量等を記憶しておき、当該記憶を呼び出すことにより、退避走行機器が必要とするエネルギー及びパワーを特定する。このような態様に換えて、必要量特定部110が、退避走行の態様毎に予め作成されたマップを参照することにより、退避走行機器が必要とするエネルギー等を特定することとしてもよい。
現存量特定部120は、退避走行機器を動作させるためのものとして、自動運転車両10が実際に有しているエネルギー及びパワーの大きさを特定する部分である。「自動運転車両10が実際に有しているエネルギー」とは、例えば、バッテリ320やコンデンサ370に蓄えられている使用可能な電力量である。「使用可能な電力量」とは、ECUの作動停止が起こらず、車両の運転に支障が出ない程度の残存の電力量である。後に説明するように、自動運転車両10の運動エネルギーや位置エネルギーが、「自動運転車両10が実際に有しているエネルギー」に該当する場合もある。
「自動運転車両10が実際に有しているパワー」とは、例えば、バッテリ320やコンデンサ370から出力可能な電力の最大値である。また、バッテリ320と退避走行機器との間に電力変換器が設けられている場合には、当該電力変換器の定格出力が、「自動運転車両10が実際に有しているパワー」に該当する。
異常判定部130は、退避走行機器に異常が生じているか否かを判定する部分である。異常判定部130は、例えばブレーキ装置のような退避走行機器のそれぞれを監視しており、退避走行機器が正常に動作しているかどうかを判定している。いずれかの退避走行機器に異常が生じたと判定された場合には、異常判定部130は、その旨を示す信号を制限部140に送信する。
制限部140は、自動運転車両10が有する自動運転機能の少なくとも一部を制限する処理を行う部分である。
自動運転車両10の走行中に何らかの不具合が生じたときには、上記のように、車両を安全に停止させるための退避走行が行われる。しかしながら、その際においてバッテリ320の蓄電量が低下していた場合には、退避走行の途中であるにもかかわらず、電力の不足によって自動運転機能が喪失してしまう可能性がある。このような自動運転機能の予期せぬ喪失が生じると、自動運転車両10が安全に停止し得ない状態となってしまう可能性がある。
そこで、制限部140は、現存量特定部120によって特定されたエネルギー及びパワーの大きさが、必要量特定部110によって特定されたエネルギー及びパワーの大きさよりも小さい場合には、自動運転車両10が有する自動運転機能の少なくとも一部を制限する処理を行うように構成されている。
「自動運転機能の少なくとも一部を制限する処理」には、自動操舵、自動駆動、自動駆動のうち1つ又は2つのみが実行されており、他が実行されていない状態(つまり、自動運転機能の一部が制限されている状態)とすることが含まれる。つまり、運転操作の一部を運転者に任せてしまうようなことが含まれる。また、自動操舵、自動駆動、自動駆動の全てが実行されていない状態(つまり、自動運転機能の全部が制限されている状態)とすることも、「自動運転機能の少なくとも一部を制限する処理」に含まれる。
更に、自動運転機能を「制限する」ことには、自動駆動等が実行されない状態とすることの他、自動駆動等が制約されながら実行されている状態とすることも含まれる。「制約されながら実行されている状態」とは、例えば自動駆動が、安全に退避走行を行い得る速度(20km/h)を超えない範囲内でのみ実行されるような状態のことである。
制限部140が上記のような処理を行うことにより、不具合が生じるよりも前の時点で、必要に応じて自動運転機能が制限された状態となる。このため、退避走行中における自動運転機能の予期せぬ喪失や、それに伴い自動運転車両10が安全に停止し得ない状態となってしまう事態を防止することができる。
制御装置100によって行われる処理の具体的な内容について、図2を参照しながら説明する。図2に示される一連の処理は、所定の制御周期が経過する毎に、制限部140によって繰り返し実行される。以下では、自動運転が行われていない状態で、図2に示される一連の処理が開始される場合の例について説明する。
最初のステップS01では、制限要否判断が行われる。制限要否判断とは、上記のように自動運転機能の一部又は全部を制限する必要があるか否かを、自動運転車両10の状態等に基づいて判断する処理である。制限要否判断の結果は、制御装置100が備える記憶装置に記憶される。制限要否判断の具体的な内容については、後に図3を参照しながら説明する。
ステップS01に続くステップS02では、自動運転への移行要求があるか否かが判定される。当該判定は、自動運転スイッチ380の状態に基づいて行われる。運転者によって自動運転スイッチ380がOFFとされているときには、自動運転への移行要求がないと判定される。この場合は図2に示される一連の処理を終了する。運転者によって自動運転スイッチ380がONとされているときには、自動運転への移行要求があると判定される。この場合はステップS03に移行する。
ステップS03では、ステップS01で行われた制限要否判断の結果が、制御装置100が備える記憶装置から呼び出され参照される。制限要否判断の結果が「制限不要」であった場合には、ステップS04に移行する。この場合、自動運転機能の一部又は全部を制限する必要がないので、ステップS04では、自動運転の実行が制限なしで許可される。その後、自動運転が開始される。
ステップS03において、制限要否判断の結果が「制限要」であった場合には、ステップS05に移行する。この場合、自動運転機能の一部又は全部を制限しなければならないので、ステップS05では、自動運転の実行が制限付きで許可される。その後、自動運転が開始される。尚、自動運転機能の全部が制限され、自動運転機能の全てが禁止される場合には、ステップS05の後でも自動運転は開始されない。この場合、運転者による手動の運転が継続されることとなる。
図2に示されるように、本実施形態における制限部140によれば、自動運転車両10において自動運転機能が実行されるよりも前の時点で、自動運転機能の一部を制限するか否かの判断(制限要否判断)が行われる。具体的には、自動運転スイッチ380の状態を確認するよりも前の時点(ステップS02よりも前の時点)で、ステップS01の制限要否判断が行われる。制限要否判断は、これとは異なるタイミングで行われてもよい。例えば、ステップS02の処理が行われた後であり、且つステップS03の処理が行われるよりも前の時点で、ステップS1の制限要否判断が行われることとしてもよい。
また、図2に示される一連の処理は、自動運転の実行中において行われてもよい。この場合、ステップS02において自動運転スイッチ380がOFFとされているときには、自動運転を停止させる処理が行われた後に、図2に示される一連の処理を終了することとすればよい。自動運転の継続中において図2の処理が行われる場合には、自動運転機能の全てが制限なく実行されている状態から、自動運転機能の一部又は全部が制限された状態に移行することがある(ステップS05)。逆に、自動運転機能の一部又は全部が制限された状態から、自動運転機能の全てが制限なく実行されている状態に移行することもある(ステップS04)。
ステップS01で行われる制限要否判断の具体的な内容について、図3を参照しながら説明する。図3に示されるフローチャートは、制限要否判断のために行われる具体的な処理の流れを示すものである。当該処理は、制御装置100のうち制限部140によって行われる。
最初のステップS11では、自動運転車両10が実際に有しているエネルギーの大きさを特定する処理が、現存量特定部120によって行われる。
本実施形態では、自動運転中に不具合が発生した場合に実行される退避走行として、自動運転機能の少なくとも一部(例えば自動操舵を行う機能)を維持した状態で所定時間又は所定距離だけ走行させることが想定されている。ステップS11では、そのような退避走行を行うために消費し得るものとして、バッテリ320やコンデンサ370に蓄えられている電力量の大きさが特定される。例えば、バッテリ320に蓄えられている電力量(つまり蓄電量)の大きさは、以下のような方法によって特定することができる。
先ず、自動運転車両10の停車時において、バッテリ320に入出力される電流が0を跨いで変化するように、オルタネータ330を制御する。その際、電流が0となった時点におけるバッテリ320の端子間電圧を、電圧センサ350によって取得する。当該電圧は、バッテリ320の開放電圧に該当する。
制御装置100には、バッテリ320の開放電圧と蓄電量との関係が、マップとして予め記憶されている。このため、電圧センサ350によって取得された電圧と、上記マップを参照することにより、停車時におけるバッテリ320の蓄電量を特定することができる。このように特定された蓄電量を、以下では「初期蓄電量」と称する。
その後は、上記のように初期蓄電量を特定した時点以降において消費された電力量を、負荷310の稼働状況から推定し、これをバッテリ320の初期蓄電量から差し引く。また、初期蓄電量を特定した時点以降においてオルタネータ330で発電された電力量を積算し、これをバッテリ320の初期蓄電量に加える。以上のような演算により、現時点におけるバッテリ320の蓄電量を特定することができる。
尚、バッテリ320の蓄電量は、上記とは異なる方法で特定してもよい。例えば、バッテリ全体の重量や電解液の比重に基づいて、蓄電量を推定することとしてもよい。また、バッテリ320の端子間を瞬間的にショートさせ、この流れた電流の大きさに基づいてバッテリ320の内部抵抗を測定し、これに基づいて蓄電量を推定することとしてもよい。
このように、本実施形態では、バッテリ320やコンデンサ370(つまり、退避走行機器に電力を供給するための蓄電装置)に蓄えられている電力量の大きさが、現存量特定部120によって特定されるエネルギーの大きさとなっている。
ステップS11に続くステップS12では、退避走行に必要な大きさのエネルギーを、自動運転車両10が有しているか否かが判定される。ここでは、ステップS11において現存量特定部120で特定されたエネルギーの大きさと、必要量特定部110で特定されたエネルギーの大きさとが比較される。両者が等しいか、前者の方が大きい場合には、退避走行に必要なエネルギーを自動運転車両10が有していると判断され、ステップS13に移行する。後者の方が大きい場合には、退避走行に必要なエネルギーを自動運転車両10が有していないと判断され、ステップS16に移行する。尚、必要量特定部110によるエネルギーの特定は、ステップS12の直前に行われてもよく、それよりも前のタイミングで予め行われていてもよい。
ステップS13では、自動運転車両10が実際に有しているパワーの大きさを特定する処理が、現存量特定部120によって行われる。上記のように本実施形態では、自動運転中に不具合が発生した場合に実行される退避走行として、自動運転機能の少なくとも一部(例えば自動操舵を行う機能)を維持した状態で所定時間又は所定距離だけ走行させることが想定されている。ステップS13では、そのような退避走行を行うためにバッテリ320やコンデンサ370から出力し得る電力の大きさが、自動運転車両10が実際に有しているパワーの大きさとして特定される。バッテリ320等から出力し得る電力の大きさは、バッテリ320等から実際に出力された電力の履歴等に基づいて特定することができる。
このように、本実施形態では、バッテリ320やコンデンサ370(つまり、退避走行機器に電力を供給するための蓄電装置)から出力可能な電力の大きさが、現存量特定部120によって特定されるパワーの大きさとなっている。
ステップS13に続くステップS14では、退避走行に必要な大きさのパワーを、自動運転車両10が有しているか否かが判定される。ここでは、ステップS13において現存量特定部120で特定されたパワーの大きさと、必要量特定部110で特定されたパワーの大きさとが比較される。前者の方が大きい場合には、退避走行に必要な大きさのパワーを自動運転車両10が有していると判断され、ステップS15に移行する。後者の方が大きい場合には、退避走行に必要な大きさのパワーを自動運転車両10が有していないと判断され、ステップS16に移行する。尚、必要量特定部110によるパワーの特定は、ステップS14の直前に行われてもよく、それよりも前のタイミングで予め行われていてもよい。
ステップS15に移行した場合には、自動運転車両10は、退避走行に必要な大きさのエネルギー及びパワーの両方を有している。このため、ステップS15では、自動運転について「制限不要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の全てが制限なしで実行される。
一方、ステップS16に移行した場合には、自動運転車両10は、退避走行に必要な大きさのエネルギー及びパワーのうち少なくとも一方を有していない。このため、ステップS16では、自動運転について「制限要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の一部又は全部が制限される。
尚、ステップS11において、自動運転車両10が実際に有しているエネルギーの大きさを特定することができなかった場合には、ステップS16に移行する。これは、退避走行の実行中においてエネルギー不足に陥ってしまう可能性に鑑みて、念のために自動運転を制限しておいた方が好ましいからである。同様の理由により、ステップS13において、自動運転車両10が実際に有しているパワーの大きさを特定することができなかった場合には、やはりステップS16に移行する。
本実施形態では、エネルギーについての特定及び判断を行う処理(ステップS11、S12)と、パワーについての特定及び判断を行う処理(ステップS13、S14)と、が連続して行われる。このような態様に換えて、それぞれの処理が互いに異なるタイミングにおいて個別に行われることとしてもよい。
また、エネルギーについての特定及び判断を行う処理(ステップS11、S12)と、パワーについての特定及び判断を行う処理(ステップS13、S14)とのいずれか一方のみを行い、他方の処理を省略するような態様であってもよい。
つまり、必要量特定部110が、退避走行を実行するために退避走行機器が必要とするエネルギー又はパワーのうち、一方のみの大きさを特定することとしてもよい。また、現存量特定部120が、退避走行機器を動作させるためのものとして、自動運転車両10が実際に有しているエネルギー及びパワーのうち、一方のみの大きさを特定することとしてもよい。このような構成において、制限部140は、現存量特定部120によって特定されたエネルギーの大きさが、必要量特定部110によって特定されたエネルギーの大きさよりも小さい場合、又は、現存量特定部120によって特定されたパワーの大きさが、必要量特定部110によって特定されたパワーの大きさよりも小さい場合には、自動運転車両10が有する自動運転機能の少なくとも一部を制限することとしてもよい。
本実施形態では、退避走行機器にエネルギーを供給するエネルギー供給源が複数(バッテリ320及びコンデンサ370)設けられている。このような構成において、ステップS11において現存量特定部120により特定されるエネルギーの大きさは、一部のエネルギー供給源のみに蓄えられているエネルギーの大きさ、としてもよい。この場合、制限部140は、複数のエネルギー供給源のいずれかに異常が生じたと仮定したときに、残りのエネルギー供給源が有しているエネルギーの大きさが、必要量特定部110によって特定されたエネルギーの大きさよりも小さい場合に、自動運転車両10が有する自動運転機能の少なくとも一部を制限することとなる。
同様に、ステップS13において現存量特定部120により特定されるパワーの大きさは、一部のエネルギー供給源のみから出力し得るパワーの大きさ、としてもよい。この場合、制限部140は、複数のエネルギー供給源のいずれかに異常が生じたと仮定したときに、残りのエネルギー供給源から出力し得るパワーの大きさが、必要量特定部110によって特定されたパワーの大きさよりも小さい場合に、自動運転車両10が有する自動運転機能の少なくとも一部を制限することとなる。
第1実施形態の変形例について、図4を参照しながら説明する。この変形例では、制限要否判断のために行われる処理の内容についてのみ上記の第1実施形態(図3)と異なっており、その他の点においては第1実施形態と同じである。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
図4に示される一連の処理は、図3に示される一連の処理に換えて実行されるものである。図4に示される各処理のうち、図3に示される処理と同じものについては、同一の符号が付してある。
この変形例では、ステップS12において、退避走行に必要なエネルギーを自動運転車両10が有していない場合(Noと判定された場合)に、ステップS16ではなくステップS17に移行する。
ステップS17では、自動運転車両10が実際に有しているエネルギーの大きさを特定可能であったか否かが判定される。つまり、ステップS12の判定を行うにあたり、自動運転車両10が実際に有しているエネルギーが特定されたのか否かが判定される。自動運転車両10が実際に有しているエネルギーの大きさを特定することができず、不明であった場合には、ステップS16に移行する。その後は、図3を参照しながら既に説明したものと同様の処理が行われる。ステップS17において、自動運転車両10が実際に有しているエネルギーが特定可能であった場合には、ステップS18に移行する。
ステップS18では、退避走行に必要となるエネルギーを確保するための処理が行われる。ここでは、例えば内燃機関210の回転数を増加させ、オルタネータ330の発電量を増加させる処理が行われる。当該処理は、バッテリ320やコンデンサ370における蓄電量が、所定の目標量に到達するまで行われる。「所定の目標量」とは、不具合の発生時において退避走行を実行し得るような最低限の蓄電量として、予め設定された値である。エネルギーの確保が完了すれば、ステップS13に移行する。その後は、図3を参照しながら既に説明したものと同様の処理が行われる。
ステップS18においてエネルギーの確保が完了した時点で、その旨が運転者に報知されることとしてもよい。このような報知としては、例えば運転席に設けられたランプを点灯させたり、スピーカーから音を発したりすることが考えられる。この場合、運転者は、自動運転機能を実行する準備が完了したことを確認した後に、自動運転スイッチ380をONとすることができる。
本実施形態においても、エネルギーについての特定及び判断を行う処理(ステップS11、S12、S17、S18)と、パワーについての特定及び判断を行う処理(ステップS13、S14)とのいずれか一方のみを行い、他方の処理を省略するような態様であってもよい。
第2実施形態について説明する。第2実施形態では、必要量特定部110によって特定されるエネルギー及びパワーの大きさが、停止状態の内燃機関210を始動させるために必要となるエネルギー及びパワーの大きさとして定義されている。これは、不具合が発生して退避走行に移行する際、内燃機関210を始動させることさえできれば、オルタネータ330で発電される電力により、自動運転機能の少なくとも一部を維持した状態での退避走行が可能になるという考えに基づいている。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
「内燃機関210を始動させるために必要となるエネルギー」とは、スタータ340を動作させるための電気エネルギーであってもよいが、所謂「押しがけ」を行うために要する力学的エネルギーであってもよい。
例えば図5に示されるように、自動運転車両10が走行している路面RDが、傾斜角度θの下り坂であるとする。この場合、自動運転車両10を重力によって走行させることで、運動エネルギー等を用いた内燃機関210の押しがけを行うことが可能である。ただし、前方に障害物が存在していたり、停止を示す交通信号SGが存在していたりする場合には、その位置に到達するよりも前(つまり、自動運転車両10を停止させるよりも前)の時点で内燃機関210を始動させなければならない。
図5の例では、自動運転車両10が初期位置P0から、交通信号SGの位置である目標停止位置P1に到達するまでの間に、自動運転車両10の運動エネルギーは増加する。このため、初期位置P0における自動運転車両10の力学的エネルギーと、バッテリ320等に蓄えられている電気エネルギーとの合計が、内燃機関210を始動させるために必要な大きさ以上となっているのであれば、自動運転車両10が目標停止位置P1に到達するまでの間に内燃機関210を始動させることが可能である。このような場合には、初期位置P0における自動運転車両10が、退避走行に必要なエネルギーを有していると判定することができる。
本実施形態において行われる制限要否判断の流れについて、図6を参照しながら説明する。図6に示される一連の処理は、図3に示される一連の処理に換えて実行されるものである。
最初のステップS21では、道路情報の取得が行われる。ここでいう道路情報には、自動運転車両10が走行する路面RDの傾斜角度θが含まれる。道路情報は、位置検知システム382によって取得された自動運転車両10の現在位置に基づいて、地図データを参照することにより取得される。
ステップS21に続くステップS22では、インフラ情報の取得が行われる。ここでいうインフラ情報には、交通信号の位置等、自動運転車両10を停止させるべき位置が含まれる。インフラ情報は、例えばVICSのような情報通信システムから取得することができる。インフラ情報には、交通渋滞や交通規制に関する情報が含まれていてもよい。また、車載カメラ384によって取得される前方車両の位置等を、上記インフラ情報の一部として用いてもよい。
ステップS22に続くステップS23では、自動運転車両10が実際に有しているエネルギーの大きさを特定する処理が、現存量特定部120によって行われる。
自動運転車両10の重量をmとし、車速をV0とし、停車すべき位置までの距離を距離L1とすると、自動運転車両10が実際に有しているエネルギーの大きさは、以下の式(1)を用いて算出される。
(エネルギー)=1/2mV02+mL1sinθ−(走行抵抗)×(走行時間)・・・(1)
式(1)の右辺第1項は、初期位置における自動運転車両10の運動エネルギーである。右辺第2項は、初期位置における自動運転車両10の位置エネルギーである。右辺第3項は、自動運転車両10が初期位置から停止位置まで走行する間において、走行抵抗を受けることにより減少するエネルギーである。尚、第3項の走行時間は、自動運転車両が距離L1を走行するのに要すると推測される時間である。
尚、停車するまでの間に自動運転車両10が走行し得る距離L1は、ステップS22で取得されるインフラ情報等に基づいて都度算出されてもよいが、予め設定された固定値が用いられてもよい。この場合は、算出されるエネルギーが、考えられ得る範囲で最小の値となるよう、上記固定値が設定されることが好ましい。式(1)の走行時間についても同様である。
また、式(1)における自動運転車両10の重量(m)は、固定値が用いられてもよいが、測定された自動運転車両10の加速度等に基づいて、都度算出されることとしてもよい。
ステップS23に続くステップS24では、退避走行に必要な大きさのエネルギーを、自動運転車両10が有しているか否かが判定される。ここでは、ステップS11において現存量特定部120で特定されたエネルギーの大きさと、必要量特定部110で特定されるエネルギーの大きさとが比較される。
本実施形態において、必要量特定部110で特定されるエネルギーの大きさとは、動力伝達機構260を介してクランク軸230を回転させ内燃機関210を始動させるための力学的エネルギーである。ただし、当該エネルギーは、スタータ340の動作により、クランク軸230を回転させる力がアシストされることを考慮して算出される。
また、クランク軸230を回転させ内燃機関210を始動させるための力学的エネルギーは、可変バルブシステム211によって調整された内燃機関210の実圧縮比の値、に基づいて算出(補正)される。内燃機関210の実圧縮比の値は、可変バルブシステム211の作動状態に基づいて取得すればよい。
このように、必要量特定部110は、実圧縮比変更部である可変バルブシステム211の作動状態に基づいて、スタータ340(回転力付与部)を動作させて内燃機関210を始動させるために必要となるエネルギーの大きさを算出する。
ステップS24において、退避走行に必要な大きさのエネルギー(ここでは、内燃機関210の始動に必要なエネルギー)を、自動運転車両10が有していると判定された場合には、ステップS25に移行する。そうでない場合にはステップS28に移行する。
ステップS25では、自動運転車両10が実際に有しているパワーの大きさを特定する処理が、現存量特定部120によって行われる。本実施形態では、内燃機関210を始動させるために用いられるパワー、具体的には、動力伝達機構260からクランク軸230に加えられ得るトルクが、「自動運転車両10が実際に有しているパワー」に該当する。その値は、動力伝達機構260の状態等に基づき、以下の式(2)を用いて算出される。
(パワー)=(クランク軸230の回転トルク)×(クランク軸230の角速度)・・・(2)
式(2)のうち「クランク軸230の回転トルク」は、以下の式(3)を用いて算出される。
(クランク軸230の回転トルク)=(自動運転車両10の加速度)×(車輪270の半径)×(自動運転車両10の重量)/(動力伝達機構260のギヤ比)・・・(3)
尚、動力伝達機構260のギヤ比は、動力伝達機構260の状態等に基づいて都度算出されてもよいが、予め設定された固定値が用いられてもよい。この場合は、算出されるパワーが、考えられ得る範囲で最小の値となるよう、上記固定値が設定されることが好ましい。
また、式(3)における自動運転車両10の重量は、固定値が用いられてもよいが、測定された自動運転車両10の加速度等に基づいて、都度算出されることとしてもよい。
ステップS25に続くステップS26では、退避走行に必要な大きさのパワーを、自動運転車両10が有しているか否かが判定される。ここでは、ステップS25において現存量特定部120で特定されたパワーの大きさと、必要量特定部110で特定されるパワーの大きさとが比較される。
本実施形態において、必要量特定部110で特定されるパワーの大きさとは、動力伝達機構260を介してクランク軸230を回転させ内燃機関210を始動させるためのパワーである。ただし、当該パワーは、スタータ340の動作により、クランク軸230を回転させる力がアシストされることを考慮して算出される。
また、クランク軸230を回転させ内燃機関210を始動させるためのパワーは、可変バルブシステム211によって調整された内燃機関210の実圧縮比の値、に基づいて算出(補正)される。内燃機関210の実圧縮比の値は、可変バルブシステム211の状態に基づいて取得すればよい。
このように、必要量特定部110は、実圧縮比変更部である可変バルブシステム211の作動状態に基づいて、スタータ340(回転力付与部)を動作させて内燃機関210を始動させるために必要となるパワーの大きさを算出する。
ステップS26において、退避走行に必要な大きさのパワー(ここでは、内燃機関210の始動に必要なパワー)を、自動運転車両10が有していると判定された場合には、ステップS27に移行する。そうでない場合にはステップS28に移行する。
ステップS27に移行した場合には、自動運転車両10は、退避走行に必要な大きさのエネルギー及びパワーの両方を有している。このため、ステップS27では、自動運転について「制限不要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の全てが制限なしで実行される。
一方、ステップS28に移行した場合には、自動運転車両10は、退避走行に必要な大きさのエネルギー及びパワーのうち少なくとも一方を有していない。このため、ステップS28では、自動運転について「制限要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の一部又は全部が制限される。
以上のように、本実施形態においては、自動運転車両10の車輪270と内燃機関210との間で動力の伝達を行う動力伝達機構260が、クランク軸230に回転力を加えて内燃機関210を始動させるための「回転力付与部」として機能する。また、現存量特定部120によって特定されるエネルギーには、自動運転車両10の運動エネルギーが含まれる。このような態様であっても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
尚、必要量特定部110及び現存量特定部120によるエネルギーの特定は、内燃機関210を始動するにあたりスタータ340によるアシストがなされないという条件の下で行われてもよい。つまり、バッテリ320やコンデンサ370の蓄電量を考慮することなく、力学的エネルギーのみによる押し掛けが行われるという条件の下で、必要量特定部110及び現存量特定部120によるエネルギーの特定が行われてもよい。
逆に、必要量特定部110及び現存量特定部120によるエネルギーの特定は、スタータ340の駆動力のみによって内燃機関210の始動が行われる、という条件の下で行われてもよい。この場合、バッテリ320及びコンデンサ370に蓄えられている電力量が、退避走行のために自動運転車両10が有しているエネルギーに該当する。また、バッテリ320及びコンデンサ370からスタータ340に向けて出力し得る電力が、退避走行のために自動運転車両10が有しているパワーに該当する。
本実施形態においても、エネルギーについての特定及び判断を行う処理(ステップS23、S24)と、パワーについての特定及び判断を行う処理(ステップS25、S26)とのいずれか一方のみを行い、他方の処理を省略するような態様であってもよい。
第3実施形態について説明する。第3実施形態では、制限要否判断の内容において第1実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
本実施形態において行われる制限要否判断の流れについて、図7を参照しながら説明する。図7に示される一連の処理は、図3に示される一連の処理に換えて実行されるものである。
最初のステップS31では、内燃機関210を始動させる処理が行われる。尚、内燃機関210が既に動作中であった場合には、そのまま次のステップS32に移行する。
ステップS31に続くステップS32では、内燃機関210の出力を増加させる処理が行われる。ここでは、例えば内燃機関210に対する燃料の供給量を増加させ、これによりクランク軸230の回転数を増加させる処理が行われる。これにより、以降はオルタネータ330における発電量が増加し、バッテリ320等への蓄電量が増加して行く。
ステップS32に続くステップS33では、バッテリ320等の蓄電量が取得される。具体的には、電圧センサ350及び電流センサ360のそれぞれの測定値に基づいて、バッテリ320等の蓄電量が算出される。
ステップS33に続くステップS34では、退避走行に必要な大きさのエネルギーを、自動運転車両10が有しているか否かが判定される。ここでは、ステップS33で取得された蓄電量(つまりエネルギー)と、必要量特定部110で特定されたエネルギーの大きさとが比較される。両者が等しいか、前者の方が大きい場合にはステップS35に移行する。
ステップS35に移行したということは、退避走行に必要なエネルギーを自動運転車両10が有しているということである。このため、ステップS35では、自動運転について「制限不要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の全てが制限なしで実行される。
尚、ステップS34とステップS35との間において、図3のステップS13、S14の処理が行われることとしてもよい。つまり、退避走行に必要なパワーを自動運転車両10が有しているか否かの判断が行われてもよい。この場合も図3の例と同様に、退避走行に必要な大きさのエネルギー及びパワーの両方を自動運転車両10が有しているときにのみ、制限不要と判定されることとすればよい。
ステップS34において、ステップS33で取得された蓄電量(つまりエネルギー)が、必要量特定部110で特定されたエネルギーの大きさよりも小さい場合には、ステップS36に移行する。ステップS36に移行したということは、退避走行に必要なエネルギーを自動運転車両10が有していないということである。
ただし、ステップS32以降は、バッテリ320等の蓄電量の増加が試みられている。このため、しばらく時間が経過した後であれば、自動運転車両10に蓄えられているエネルギーの大きさが、退避走行に必要な大きさ以上となる可能性がある。
ステップS36では、ステップS32の処理が行われた時点から現時点までに、所定時間が経過したか否かが判定される。所定時間が経過していなければ、ステップS33以降の処理が再度行われる。その間において、バッテリ320等の蓄電量が退避走行を行い得る大きさまで回復した場合には、ステップS34からステップS35に移行することとなる。
ステップS36において、所定時間が経過したと判定された場合には、ステップS37に移行する。この場合は、オルタネータ330やバッテリ320等に異常が生じており、十分なエネルギーを蓄えることができない状態である可能性が高い。従って、ステップS37では、自動運転について「制限要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の一部又は全部が制限される。
尚、ステップS36においては、ステップS36への移行回数が所定回数を超えたか否かが判定されることとしてもよい。
以上のように本実施形態では、退避走行に必要なエネルギーを自動運転車両10が有していない場合であっても、自動運転の一部又は全部を制限する処理が直ちには行われない。本実施形態における制限部140は、自動運転車両10が有する自動運転機能の少なくとも一部を制限するに先立って、内燃機関210を動作させることによるエネルギーの回復、すなわち、バッテリ320等に蓄えられている電力量の増加を試みる(ステップS32及びステップS36)。これにより、自動運転機能の全てが制限なしで実行される可能性を高めることができる。
第4実施形態について説明する。第4実施形態では、電気回路部301の構成と、制限要否判断の内容とにおいて第1実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
本実施形態における電気回路部301の構成について、図8を参照しながら説明する。図8に示されるように、オルタネータ330とスタータ340との間には、電力変換器であるDC−DCコンバータ390が設けられている。電気回路部301のうち、DC−DCコンバータ390よりもオルタネータ330側(図8では左側)の部分には、負荷310、バッテリ320、電圧センサ350、電流センサ360、及びコンデンサ370が、第1実施形態と同様に配置されている。また、電気回路部301のうち、DC−DCコンバータ390よりもスタータ340側(図8では右側)の部分には、負荷311、バッテリ321、電圧センサ351、電流センサ361、及びコンデンサ371が、やはり第1実施形態と同様に配置されている。
本実施形態における退避走行機器は、その一部が負荷310に含まれており、残部が負荷311に含まれている。
バッテリ320及びコンデンサ370は、負荷310にエネルギーを供給するためのエネルギー供給源に該当する。また、バッテリ321及びコンデンサ371は、負荷311(つまり、負荷310とは別の機器)にエネルギーを供給するためのエネルギー供給源に該当する。
ただし、DC−DCコンバータ390が動作することにより、バッテリ320等から負荷311にエネルギーを供給することや、バッテリ321等から負荷310にエネルギーを供給することもできる。つまり、本実施形態におけるDC−DCコンバータ390は、バッテリ320等(エネルギー供給源)とバッテリ321等(エネルギー供給源)との間においてエネルギーを融通し合うこと、を可能とする「融通部」に該当する。
融通部として機能するDC−DCコンバータ390を有することにより、本実施形態では、負荷310や負荷311への電力供給を様々な経路で行うことが可能となっている。例えば、オルタネータ330で発電された電力を、DC−DCコンバータ390を介してバッテリ321に供給すること等ができる。
ただし、DC−DCコンバータ390に異常が生じた場合には、上記のような電力の融通ができなくなる。このため、負荷310を動作させるための電力は、バッテリ320、コンデンサ370、及びオルタネータ330からしか供給されない。また、負荷311を動作させるための電力は、バッテリ321及びコンデンサ371からしか供給されない。
従って、DC−DCコンバータ390の異常時においても退避走行を実行し得る状態としておくためには、バッテリ320等とバッテリ321等との両方に、それぞれ十分な電力が蓄えられている必要がある。具体的には、負荷310に含まれる退避走行機器を動作させるのに十分なエネルギーが、バッテリ320及びコンデンサ370に蓄えられている必要がある。それと共に、負荷311に含まれる退避走行機器を動作させるのに十分なエネルギーが、バッテリ321及びコンデンサ371に蓄えられている必要がある。
本実施形態において行われる制限要否判断の流れについて、図9を参照しながら説明する。図9に示される一連の処理は、図3に示される一連の処理に換えて実行されるものである。
最初のステップS41では、内燃機関210を始動させる処理が行われる。尚、内燃機関210が既に動作中であった場合には、そのまま次のステップS42に移行する。
ステップS41に続くステップS42では、DC−DCコンバータ390が作動される。これにより、オルタネータ330で発電された電力が、バッテリ320やコンデンサ370のみならず、バッテリ321やコンデンサ371にも供給され蓄えられる。尚、ステップS42の処理に先立って、図7のステップS32と同様の処理、すなわち内燃機関210の出力を増加させる処理が行われてもよい。
ステップS42に続くステップS43では、バッテリ320、コンデンサ370、バッテリ321、コンデンサ371のそれぞれに蓄えられている電力量が取得される。換言すれば、DC−DCコンバータ390よりもオルタネータ330側の部分に蓄えられている電力量と、DC−DCコンバータ390よりもスタータ340側の部分に蓄えられている電力量とが、個別に取得される。尚、蓄えられている電力量を取得(算出)するための方法は、既に述べたものと同様であるから、ここではその説明を省略する。
ステップS43に続くステップS44では、退避走行に必要な大きさのエネルギーを、自動運転車両10が有しているか否かが判定される。ここでは、負荷310に含まれる退避走行機器を動作させるために必要なエネルギーがバッテリ320とコンデンサ370とに蓄えられており、且つ、負荷311に含まれる退避走行機器を動作させるために必要なエネルギーがバッテリ321とコンデンサ371とに蓄えられている場合には、退避走行に必要な大きさのエネルギーを自動運転車両10が有していると判定される。それ以外の場合には、退避走行に必要な大きさのエネルギーを自動運転車両10が有していないと判定される。
尚、負荷310に含まれる退避走行機器を動作させるために必要なエネルギー、及び、負荷311に含まれる退避走行機器を動作させるために必要なエネルギーのそれぞれは、必要量特定部110によって予め個別に特定される。
退避走行に必要な大きさのエネルギーを自動運転車両10が有していると判定された場合には、ステップS45に移行する。この場合は、DC−DCコンバータ390において仮に異常が生じたとしても、負荷310に含まれる退避走行機器、及び負荷311に含まれる退避走行機器のそれぞれに、退避走行に必要なエネルギーが供給され得るということである。このため、ステップS45では、自動運転について「制限不要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の全てが制限なしで実行される。
尚、ステップS44とステップS45との間において、図3のステップS13、S14の処理が行われることとしてもよい。つまり、退避走行に必要なパワーを自動運転車両10が有しているか否かの判断が行われてもよい。この場合も図3の例と同様に、退避走行に必要な大きさのエネルギー及びパワーの両方を自動運転車両10が有しているときにのみ、制限不要と判定されることとすればよい。
ステップS44の判断が「否」であった場合には、ステップS46に移行する。この場合は、DC−DCコンバータ390において仮に異常が生じたとすると、負荷310に含まれる退避走行機器、及び負荷311に含まれる退避走行機器のいずれかが正常に動作せず、退避走行を行えない可能性がある。
ステップS46では、ステップS42の処理が行われた時点から現時点までに、所定時間が経過したか否かが判定される。所定時間が経過していなければ、ステップS43以降の処理が再度行われる。その間において、バッテリ320等の蓄電量が退避走行を行い得る大きさまで回復した場合には、ステップS44からステップS45に移行することとなる。
ステップS46において、所定時間が経過したと判定された場合には、ステップS47に移行する。この場合は、オルタネータ330やバッテリ320、もしくはDC−DCコンバータ390等のいずれかに異常が生じており、自動運転車両10において十分なエネルギーを蓄えることができない状態である可能性が高い。従って、ステップS47では、自動運転について「制限要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の一部又は全部が制限される。
尚、ステップS46においては、ステップS46への移行回数が所定回数を超えたか否かが判定されることとしてもよい。
以上のように本実施形態では、融通部であるDC−DCコンバータ390に異常が生じ、電力の融通ができなくなったと仮定したときに、全ての退避走行機器に十分な電力を供給し得ないと判定された場合には、自動運転車両10が有する自動運転機能の少なくとも一部が制限部140によって制限される。
負荷311に含まれる退避走行機器について着目した場合には、バッテリ321及びコンデンサ371は、当該退避走行機器にエネルギーを供給するための「第1エネルギー供給源」に該当する。また、バッテリ320及びコンデンサ370は、当該退避走行機器以外の機器にエネルギーを供給するための「第2エネルギー供給源」に該当する。
本実施形態では、上記退避走行機器(負荷311)に対する第2エネルギー供給源からのエネルギーの供給ができなくなったと仮定したときに、第1エネルギー供給源が有しているエネルギー及びパワーの大きさが、必要量特定部110によって特定されたエネルギー及びパワー(この場合、負荷311に含まれる退避走行機器を動作させるために必要なエネルギー及びパワー)の大きさよりも小さい場合には、自動運転車両10が有する自動運転機能の少なくとも一部が制限されることとなる。
尚、内燃機関210が動作しているときには、DC−DCコンバータ390よりもオルタネータ330側の負荷310には、DC−DCコンバータ390が故障している場合であっても、オルタネータ330で発電された電力が供給される。このため、ステップS44における判定においては、バッテリ321(及びコンデンサ371)に十分な電力量が蓄えられているか否かについてのみ判定されることとしてもよい。
また、負荷311には退避走行機器が含まれておらず、退避走行機器の全てが負荷310に含まれているような構成においては、ステップS42の処理は行われなくてもよい。
尚、図8に示される構成には、適宜変更を加えることができる。例えば、スタータ340の位置と、オルタネータ330の位置とが、互いに入れ替わっていてもよい。また、スタータ340とオルタネータ330とが、DC−DCコンバータ390を間に挟んで両側にそれぞれ配置されているのではなく、いずれもがDC−DCコンバータ390の片側(右側又は左側)に配置されているような態様であってもよい。
第4実施形態の変形例について、図10を参照しながら説明する。この変形例では、電気回路部301のDC−DCコンバータ390を、スイッチ391に置き換えた構成となっている。スイッチ391は、制御装置100が行う制御によってその開閉が切り換えられる。本実施形態では、スイッチ391が、DC−DCコンバータ390と同様の「融通部」として機能する。その他の構成や、制御装置100が行う制御の内容については第4実施形態と同じである。ただし、図9のステップS42の処理は、スイッチ391を閉状態とする処理に置き換えられる。
第4実施形態の他の変形例について、図11を参照しながら説明する。この変形例に係る電気回路部301は、コンデンサ370が、スタータ340に供給される電力を蓄えて置くためのものとして機能する。図11に示されるように、電気回路部301は、3つのスイッチ392、393、394を有している。スイッチ392、393、394は、いずれも、制御装置100が行う制御によってその開閉が切り換えられる。
通常の動作時においては、図11に示されるように、スイッチ392が閉状態とされ、スイッチ393、394が開状態とされる。このとき、コンデンサ370はバッテリ320から切り離された状態となるので、コンデンサ370に緊急時用の電力を蓄えておくことができる。
例えばバッテリ320に異常が生じた場合等、バッテリ320によるスタータ340の駆動ができなくなった場合には、スイッチ392、393が開状態とされ、スイッチ394が閉状態とされる。これにより、コンデンサ370からスタータ340に電力が供給されこれにより内燃機関210の始動を行うことができる。尚、コンデンサ370への充電を行う場合にはスイッチ393を閉状態とし、スイッチ392、394を開状態とすればよい。スイッチ392、393、394は、この変形例における「融通部」に該当する。
このような構成においては、負荷310に加えて、スタータ340も退避走行機器として機能する。また、バッテリ320は負荷310にエネルギーを供給するためのエネルギー供給源に該当し、コンデンサ370はスタータ340(退避走行機器)にエネルギーを供給するためのエネルギー供給源に該当する。
この変形例においても、制限部140によって図9と同様の制限要否判断が行われる。ただし、図9のステップS42の処理は、スイッチ393を閉状態とし、スイッチ392、394を開状態とする処理に置き換えられる。このため、ステップS42では、バッテリ320への充電とコンデンサ370への充電とが共に行われることとなる。
また、図9のステップS44においては、負荷310に含まれる退避走行機器を動作させるために必要なエネルギーがバッテリ320に蓄えられており、且つ、スタータ340を動作させ内燃機関210を始動させるために必要なエネルギーがコンデンサ370に蓄えられている場合に、退避走行に必要な大きさのエネルギーを自動運転車両10が有していると判定される。それ以外の場合には、退避走行に必要な大きさのエネルギーを自動運転車両10が有していないと判定される。
尚、図10に示される構成には、適宜変更を加えることができる。例えば、スタータ340の位置と、オルタネータ330の位置とが、互いに入れ替わっていてもよい。また、スタータ340とオルタネータ330とが、スイッチ391を間に挟んで両側にそれぞれ配置されているのではなく、いずれもがスイッチ391の片側(右側又は左側)に配置されているような態様であってもよい。
第5実施形態について説明する。第5実施形態では、電気回路部301の構成と、制限要否判断の内容とにおいて第4実施形態(図8)と異なっている。以下では、第4実施形態と異なる点についてのみ説明し、第4実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
第5実施形態に係る自動運転車両10(全体は不図示)は、所謂ハイブリッド車両として構成されている。自動運転車両10は、内燃機関210の駆動力によって走行することに加えて、モーター342の駆動力によって走行することも可能となっている。本実施形態に係る電気回路部301では、図8のスタータ340がインバータ341に置き換えられている。インバータ341は、DC−DCコンバータ390やバッテリ321等から供給される直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力をモーター342に供給するための電力変換器である。インバータ341の動作は制御装置100によって制御される。
この自動運転車両10では、内燃機関210の駆動力によってモーター342の回転軸を回転させ、モーター342で生じた電力をバッテリ321等に供給することも可能となっている。つまり、インバータ341は、モーター342で生じた交流電力を直流電力に変換し、当該直流電力をバッテリ321やDC−DCコンバータ390等に供給することもできる。尚、本実施形態においては、電気回路部301にオルタネータ330は設けられていない。
本実施形態において行われる制限要否判断の流れについて、図13を参照しながら説明する。図13に示される一連の処理は、図9に示される一連の処理に換えて実行されるものである。
最初のステップS51では、内燃機関210を始動させる処理が行われる。尚、内燃機関210が既に動作中であった場合には、そのまま次のステップS52に移行する。
ステップS51に続くステップS52では、バッテリ320、コンデンサ370、バッテリ321、コンデンサ371のそれぞれに蓄えられている電力量が取得される。換言すれば、DC−DCコンバータ390よりもバッテリ320側(左側)の部分に蓄えられている電力量と、DC−DCコンバータ390よりもインバータ341側(右側)の部分に蓄えられている電力量とが、個別に取得される。尚、蓄えられている電力量を取得(算出)するための方法は、既に述べたものと同様であるから、ここではその説明を省略する。
ステップS52に続くステップS53では、退避走行に必要な大きさのエネルギーを、自動運転車両10が有しているか否かが判定される。ここでは、負荷310に含まれる退避走行機器を動作させるために必要なエネルギーがバッテリ320とコンデンサ370とに蓄えられており、且つ、負荷311に含まれる退避走行機器を動作させるために必要なエネルギーがバッテリ321とコンデンサ371とに蓄えられている場合には、退避走行に必要な大きさのエネルギーを自動運転車両10が有していると判定される。それ以外の場合には、退避走行に必要な大きさのエネルギーを自動運転車両10が有していないと判定される。
尚、負荷310に含まれる退避走行機器を動作させるために必要なエネルギー、及び、負荷311に含まれる退避走行機器を動作させるために必要なエネルギーのそれぞれは、必要量特定部110によって予め個別に特定される。
退避走行に必要な大きさのエネルギーを自動運転車両10が有していると判定された場合には、ステップS54に移行する。この場合は、DC−DCコンバータ390において仮に異常が生じたとしても、負荷310に含まれる退避走行機器、及び負荷311に含まれる退避走行機器のそれぞれに、退避走行に必要なエネルギーが供給され得るということである。このため、ステップS54では、自動運転について「制限不要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の全てが制限なしで実行される。
尚、ステップS53とステップS54との間において、図3のステップS13、S14の処理が行われることとしてもよい。つまり、退避走行に必要なパワーを自動運転車両10が有しているか否かの判断が行われてもよい。この場合も図3の例と同様に、退避走行に必要な大きさのエネルギー及びパワーの両方を自動運転車両10が有しているときにのみ、制限不要と判定されることとすればよい。
ステップS53の判断が「否」であった場合には、ステップS55に移行する。この場合は、DC−DCコンバータ390において仮に異常が生じたとすると、負荷310に含まれる退避走行機器、及び負荷311に含まれる退避走行機器のいずれかが正常に動作せず、退避走行を行えない可能性がある。
ステップS55では、内燃機関210の出力を増加させる処理が行われる。ここでは、例えば内燃機関210に対する燃料の供給量を増加させ、これによりクランク軸230の回転数を増加させる処理が行われる。これにより、以降はモーター342における発電量が増加する。
ステップS55に続くステップS56では、DC−DCコンバータ390が作動される。これにより、モーター342で発電された電力が、バッテリ321やコンデンサ371のみならず、バッテリ320やコンデンサ370にも供給され蓄えられる。
ステップS56に続くステップS57では、退避走行に必要な大きさのエネルギーを、自動運転車両10が有しているか否かが判定される。ここで行われる判定は、ステップS53で行われる判定と同じである。
退避走行に必要な大きさのエネルギーを自動運転車両10が有していると判定された場合には、ステップS54に移行する。以降は、既に述べたように自動運転機能の全てが制限なしで実行される。
ステップS58の判断が「否」であった場合には、ステップS59に移行する。ステップS59では、ステップS56の処理が行われた時点から現時点までに、所定時間が経過したか否かが判定される。所定時間が経過していなければ、ステップS57以降の処理が再度行われる。その間において、バッテリ320等の蓄電量が退避走行を行い得る大きさまで回復した場合には、ステップS58からステップS54に移行することとなる。
ステップS59において、所定時間が経過したと判定された場合には、ステップS60に移行する。この場合は、モーター342やインバータ341、バッテリ320やDC−DCコンバータ390等のいずれかに異常が生じており、自動運転車両10において十分なエネルギーを蓄えることができない状態である可能性が高い。従って、ステップS60では、自動運転について「制限要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の一部又は全部が制限される。
尚、ステップS59においては、ステップS59への移行回数が所定回数を超えたか否かが判定されることとしてもよい。
以上のように本実施形態では、融通部であるDC−DCコンバータ390に異常が生じ、電力の融通ができなくなったと仮定したときに、全ての退避走行機器に十分な電力を供給し得ないと判定された場合には、自動運転車両10が有する自動運転機能の少なくとも一部が制限部140によって制限される。
尚、内燃機関210が動作しているときには、DC−DCコンバータ390よりもモーター342側の負荷311には、DC−DCコンバータ390が故障している場合であっても、モーター342で発電された電力が供給される。このため、ステップS53及びステップS58における判定においては、バッテリ320(及びコンデンサ370)に十分な電力量が蓄えられているか否かについてのみ判定されることとしてもよい。
また、負荷310には退避走行機器が含まれておらず、退避走行機器の全てが負荷311に含まれているような構成においては、ステップS56の処理は行われなくてもよい。
以上のような処理が行われることにより、本実施形態においても第4実施形態(図8、図9)と同様の効果を奏する。
第5実施形態の変形例について、図14を参照しながら説明する。この変形例に係る自動運転車両10の電気回路部301は、2つのモーター342、344を有している点において第5実施形態(図12)と異なっている。
これらのモーター342、344は、遊星歯車345を介して内燃機関210に接続されている。これにより、モーター342、344のそれぞれの駆動力を、遊星歯車345を介して内燃機関210に伝達することができる。また、内燃機関210の駆動力を、遊星歯車345を介してモーター342、344のそれぞれに伝達することもできる。
電気回路部301のうち、DC−DCコンバータ390よりも負荷311側の部分には、インバータ341、343が互いに並列に設けられている。インバータ341は、DC−DCコンバータ390やバッテリ321等から供給される直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力をモーター342に供給するための電力変換器である。インバータ343は、DC−DCコンバータ390やバッテリ321等から供給される直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力をモーター344に供給するための電力変換器である。インバータ341、343の動作は制御装置100によって制御される。
モーター342は、自動運転車両10の減速時において回生電力を生じさせるものとして機能する。また、モーター344は、自動運転車両10の走行に必要な駆動力を生じさせるものとして機能する。
このような構成の変形例においても、図13に示されるものと同じ処理を制限部140が行うことにより、第5実施形態と同じ効果を奏する。
第6実施形態について説明する。第6実施形態では、制限要否判断の内容においてのみ第1実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
本実施形態において、必要量特定部110で特定されるエネルギーの大きさとは、クラッチ240を結合することによってフライホイール220と共にクランク軸230を回転させ、これにより内燃機関210を始動させるためのエネルギーの大きさである。つまり、内燃機関210を始動させるために、フライホイール220において最低限蓄えられているべき回転エネルギーである。
本実施形態において行われる制限要否判断の流れについて、図15を参照しながら説明する。図15に示される一連の処理は、図3に示される一連の処理に換えて実行されるものである。
最初のステップS61では、スタータ340により内燃機関210を始動させる処理が行われる。尚、内燃機関210が既に動作中であった場合には、そのまま次のステップS62に移行する。
ステップS61に続くステップS62では、クラッチ240の結合が行われる。これにより、内燃機関210の駆動力がフライホイール220に伝達されるようになり、フライホイール220の回転数が増加する。換言すれば、フライホイール220に回転エネルギーが蓄えられ始める。
ステップS62に続くステップS63では、内燃機関210の出力を増加させる処理が行われる。ここでは、例えば内燃機関210に対する燃料の供給量を増加させ、これによりクランク軸230の回転数を増加させる処理が行われる。これにより、フライホイール220の回転数が更に大きくなる。
ステップS63に続くステップS64では、フライホイール220の回転数が取得される。ステップS64の処理が行われるときには、クラッチ240が結合されているので、フライホイール220の回転数とクランク軸230の回転数とが互いに一致している。このため、フライホイール220の回転数は回転数センサ250の測定値を参照することによって取得される。このような態様に換えて、フライホイール220の回転数を測定するための専用のセンサが設けられていてもよい。
ステップS64では、フライホイール220の回転エネルギーが、回転数センサ250の測定値に基づいて現存量特定部120により特定(算出)される。
ステップS64に続くステップS65では、退避走行に必要な大きさのエネルギー、すなわち内燃機関210を始動させるために必要なエネルギーを、自動運転車両10が有しているか否かが判定される。ここでは、ステップS64において現存量特定部120で特定されたエネルギーの大きさと、必要量特定部110で特定されるエネルギーの大きさとが比較される。尚、必要量特定部110によるエネルギーの大きさの特定は、ステップS65に移行するよりも前の時点で予め行われる。
既に述べたように、必要量特定部110で特定されるエネルギーの大きさは、内燃機関210を始動させるために、フライホイール220において最低限蓄えられているべき回転エネルギーの大きさである。当該エネルギーは、スタータ340の動作により、クランク軸230を回転させる力がアシストされることを考慮して算出されてもよい。
また、クランク軸230を回転させ内燃機関210を始動させるために必要となるフライホイール220の回転エネルギーは、可変バルブシステム211によって調整された内燃機関210の実圧縮比の値、に基づいて算出(補正)される。内燃機関210の実圧縮比の値は、可変バルブシステム211の状態に基づいて取得すればよい。
ステップS65において、退避走行に必要な大きさのエネルギー(ここでは、内燃機関210の始動に必要なエネルギー)を、自動運転車両10が有していると判定された場合には、ステップS66に移行する。この場合は、自動運転機能の実行中において仮に異常が生じたとしても、フライホイール220の回転エネルギーによって内燃機関210を始動させ、オルタネータ330から退避走行機器への電力供給を行うことができる。このため、ステップS66では、自動運転について「制限不要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の全てが制限なしで実行される。
尚、ステップS65とステップS66との間において、図3のステップS13、S14の処理が行われることとしてもよい。つまり、退避走行に必要なパワーを自動運転車両10が有しているか否かの判断が行われてもよい。この場合も図3の例と同様に、退避走行に必要な大きさのエネルギー及びパワーの両方を自動運転車両10が有しているときにのみ、制限不要と判定されることとすればよい。
ステップS65の判断が「否」であった場合には、ステップS67に移行する。ステップS67では、ステップS63の処理が行われた時点から現時点までに、所定時間が経過したか否かが判定される。所定時間が経過していなければ、ステップS64以降の処理が再度行われる。その間において、フライホイール220の回転数が退避走行(この場合は内燃機関210の始動)を行い得る大きさまで増加した場合には、ステップS65からステップS66に移行することとなる。
ステップS67において、所定時間が経過したと判定された場合には、ステップS68に移行する。この場合は、クラッチ240やフライホイール220、回転数センサ250等のいずれかに異常が生じており、自動運転車両10において十分なエネルギーを蓄えることができない状態である可能性が高い。従って、ステップS68では、自動運転について「制限要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の一部又は全部が制限される。
尚、ステップS67においては、ステップS67への移行回数が所定回数を超えたか否かが判定されることとしてもよい。
以上のように、本実施形態においては、自動運転車両10に設けられたフライホイール220が、クランク軸230に回転力を加えて内燃機関210を始動させるための「回転力付与部」として機能する。このような態様であっても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
第7実施形態について説明する。第3実施形態では、制限要否判断の内容において第1実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
本実施形態において行われる制限要否判断の流れについて、図16を参照しながら説明する。図16に示される一連の処理は、図3に示される一連の処理に換えて実行されるものである。
最初のステップS71では、内燃機関210が動作中であるか否かが判定される。当該判定は、例えば回転数センサ250の測定値等に基づいて行われる。内燃機関210が動作中である場合には、ステップS72に移行する。
ステップS72では、内燃機関210の自動的な停止を禁止する処理が行われる。以降は、例えば、自動運転車両10が信号待ちのために一時停止しているときや、平坦な路面を定速走行しているときであっても、内燃機関210を自動的に停止させて省エネを図るような処理(自動的なアイドルストップ)の実行が禁止される。
このように、本実施形態に係る制御装置100の制限部140は、自動運転車両10において自動運転機能が実行されるよりも前の時点で、自動運転車両10の内燃機関210を始動させ、内燃機関210の自動的な停止を禁止するように構成されている。
内燃機関210の自動的な停止が禁止された状態においては、自動運転機能の実行中において仮に異常が生じたとしても、内燃機関210は常に動作中なのであるから、オルタネータ330から退避走行機器への電力供給を継続的に行うことができる。このため、ステップS72に続くステップS73では、自動運転について「制限不要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の全てが制限なしで実行される。
ステップS71において、内燃機関210が停止していた場合にはステップS74に移行する。ステップS74では、内燃機関210を始動させるためのエネルギーを自動運転車両10が有しているか否かが判定される。
本実施形態では、必要量特定部110によって特定されるエネルギー及びパワーの大きさが、停止状態の内燃機関210を始動させるために必要となるエネルギー及びパワーの大きさとして定義されている。
内燃機関210を始動させるために必要となるエネルギー及びパワーは、スタータ340を動作させるためにバッテリ320等に蓄えられた電気エネルギーであってもよく、「押しがけ」を行うために必要となる自動運転車両10の力学的エネルギーであってもよく、フライホイール220の回転エネルギーであってもよい。ステップS74で行われる判断の具体的な方法は、これまでに説明したものと同じ方法を用いることができる。
内燃機関210を始動させるためのエネルギーを自動運転車両10が有している場合には、ステップS72に移行する。この場合、内燃機関210の停止が禁止されるのであるが、この時点では内燃機関210の始動は行われない。内燃機関210の始動は、例えば前方の交通信号が赤から青に変化した場合等、内燃機関210の駆動力が必要になったタイミングで行われることとすればよい。
ステップS74において、内燃機関210を始動させるためのエネルギーを自動運転車両10が有していない場合にはステップS75に移行する。ステップS75に移行したということは、内燃機関210が停止しており、且つ内燃機関210を始動させるためのエネルギーが不足しているということである。このため、ステップS75では、自動運転について「制限要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の一部又は全部が制限される。
第7実施形態の変形例について、図17を参照しながら説明する。この変形例では、制限要否判断のために行われる処理の内容についてのみ上記の第7実施形態(図16)と異なっており、その他の点においては第7実施形態と同じである。以下では、第7実施形態と異なる点についてのみ説明し、第7実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
図17に示される一連の処理は、図16に示される一連の処理に換えて実行されるものである。図17に示される各処理のうち、図16に示される処理と同じものについては、同一の符号が付してある。
この変形例では、ステップS74において、内燃機関210を始動させるためのエネルギーを自動運転車両10が有している場合(Yesと判定された場合)に、ステップS72ではなくステップS81に移行する。
ステップS81では、図17の一連の処理が開始された時点から現時点までに、所定時間が経過したか否かが判定される。所定時間が経過していなければステップS82に移行する。ステップS82では、例えばスタータ340を駆動させる等、内燃機関210を始動するための処理が行われる。その後、ステップS71以降の処理が再度実行される。内燃機関210の始動に成功していれば、内燃機関210の停止が禁止され(ステップS72)、自動運転について「制限不要」であることが決定される(ステップS73)。
ステップS81において、所定時間が経過したと判定された場合には、ステップS75に移行する。この場合は、内燃機関210の始動を例えば複数回試みたにも拘らず、内燃機関210を始動させることができなかったということである。そこで、ステップS75では、自動運転について「制限要」であることが決定される。
尚、ステップS81においては、ステップS81への移行回数が所定回数を超えたか否かが判定されることとしてもよい。
このように、この変形例では、内燃機関210が停止している場合には、内燃機関210を直ちに始動させるための処理が行われる。これにより、オルタネータ330による発電が行われている状態に迅速に移行し、退避走行のための電力を確実に確保した状態とすることができる。
第8実施形態について説明する。第8実施形態では、制限要否判断の内容において第1実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
本実施形態において行われる制限要否判断の流れについて、図18を参照しながら説明する。図18に示される一連の処理は、図3に示される一連の処理に換えて実行されるものである。
最初のステップS91では、燃料計383の測定値に基づいて、自動運転車両10の燃料タンク(不図示)に貯えられている燃料の量が取得される。当該処理は現存量特定部120によって行われる。
ステップS91に続くステップS92では、退避走行に必要な大きさのエネルギーを、自動運転車両10が有しているか否かが判定される。具体的には、自動運転機能の少なくとも一部を維持した状態で、自動運転車両10を所定時間又は所定距離だけ走行させるために必要な燃料が、燃料タンクに貯えられているか否かが判定される。
必要な燃料の量は、必要量特定部110によって予め特定されている。当該量が、固定値として予め必要量特定部110に記憶されているような態様であってもよい。
退避走行に必要な大きさのエネルギーを自動運転車両10が有している場合には、ステップS93に移行する。ステップS93では、自動運転について「制限不要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の全てが制限なしで実行される。
ステップS92において、退避走行に必要な大きさのエネルギーを自動運転車両10が有していない場合には、ステップS94に移行する。ステップS94では、自動運転について「制限要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の一部又は全部が制限される。
以上のように、本実施形態において必要量特定部110により特定されるエネルギーは、退避走行の実行時において、自動運転車両10を所定時間又は所定距離だけ走行させるために必要となる燃料量である。このような構成は、自動運転車両10の自動的な駆動力制御(自動駆動)を行う機能が、自動運転機能に含まれる場合において特に有効である。
第9実施形態について説明する。第9実施形態では、制限要否判断の内容において第1実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
本実施形態において行われる制限要否判断の流れについて、図19を参照しながら説明する。図19に示される一連の処理は、図3に示される一連の処理に換えて実行されるものである。
最初のステップS101では、退避走行時のエネルギー、すなわち、退避走行機器を動作させた場合において消費されるエネルギーの大きさが、所定の上限値以下であるか否かが判定される。当該判定は、異常判定部130によって行われる。退避走行時のエネルギーの大きさが上限値を超えている場合には、ステップS104に移行する。
この場合、退避走行機器の一部(例えば電動ステアリング装置)が故障しており、その動作に要するエネルギーが増大してしまっていると考えられる。従って、ステップS104に移行した場合には、自動運転機能の一部を維持した状態における退避走行を行うことができない可能性が高い。そこで、ステップS104では、自動運転について「制限要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の一部又は全部が制限される。
ステップS101において、退避走行時のエネルギーの大きさが上限値以下である場合には、ステップS102に移行する。ステップS102では、退避走行時のパワー、すなわち、退避走行機器の動作時におけるパワーの大きさが、所定の下限値以上であるか否かが判定される。当該判定は、異常判定部130によって行われる。退避走行時のパワーの大きさが下限値を下回っている場合には、ステップS104に移行する。
この場合、退避走行機器の一部(例えば電動ステアリング装置)が故障しており、その動作時のパワーが低下してしまっていると考えられる。従って、ステップS104に移行した場合には、自動運転機能の一部を維持した状態における退避走行を行うことができない可能性が高い。そこで、ステップS104では、自動運転について「制限要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の一部又は全部が制限される。
ステップS102において、退避走行時のパワーの大きさが下限値以上である場合には、ステップS103に移行する。ステップS103では、自動運転について「制限不要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の全てが制限なしで実行される。
このように、本実施形態における異常判定部130は、退避走行機器に異常が生じているか否かを判定する。制限部140は、異常判定部130によって退避走行機器に異常が生じていると判定された場合には、自動運転車両10が有する自動運転機能の少なくとも一部を制限する。これにより、退避走行への移行時や退避走行の実行中において、自動運転機能の予期せぬ喪失をより確実に防止することができる。
異常判定部130は、退避走行機器が動作時に消費するエネルギーが所定の上限値を超えている場合、又は、退避走行機器の動作時におけるパワーが所定の下限値を下回っている場合に、退避走行機器に異常が生じていると判定する。退避走行機器に異常が生じているかの判定は、これとは異なる方法によって行われてもよい。
尚、ステップS101における判定ができなかった場合には、ステップS104に移行する。これは、退避走行機器が正常か否かを判定することができないような場合には、念のために自動運転を制限しておいた方が好ましいからである。同様の理由により、ステップS102における判定ができなかった場合にも、やはりステップS104に移行する。退避走行機器に異常が生じているかの判定(S101、102)が、本実施形態とは異なる方法で行われる場合においても同様である。
第10実施形態について説明する。第10実施形態では、制限要否判断の内容において第9実施形態(図19)と異なっている。以下では、第9実施形態と異なる点についてのみ説明し、第9実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
本実施形態において行われる制限要否判断の流れについて、図20を参照しながら説明する。図20に示される一連の処理は、図19に示される一連の処理に換えて実行されるものである。
最初のステップS111では、内燃機関210を始動させる際において消費されるエネルギーの大きさが、所定の上限値以下であるか否かが判定される。当該判定は、異常判定部130によって行われる。内燃機関210を始動させる際のエネルギーの大きさが上限値を超えている場合には、ステップS114に移行する。
この場合、内燃機関210を始動させる際に動作する機器の一部(例えばスタータ340)が故障しており、その動作に要するエネルギーが増大してしまっていると考えられる。従って、ステップS114に移行した場合には、自動運転機能の一部を維持した状態における退避走行を行うことができない可能性が高い。そこで、ステップS114では、自動運転について「制限要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の一部又は全部が制限される。
ステップS111において、内燃機関210を始動させる際において消費されるエネルギーの大きさが上限値以下である場合には、ステップS112に移行する。ステップS112では、内燃機関210を始動させる機器の動作時におけるパワーの大きさが、所定の下限値以上であるか否かが判定される。当該判定は、異常判定部130によって行われる。内燃機関210を始動させる機器の動作時におけるパワーの大きさが下限値を下回っている場合には、ステップS114に移行する。
この場合、内燃機関210を始動させる際に動作する機器の一部(例えばスタータ340)が故障しており、その動作時のパワーが低下してしまっていると考えられる。従って、ステップS114に移行した場合には、自動運転機能の一部を維持した状態における退避走行を行うことができない可能性が高い。そこで、ステップS114では、自動運転について「制限要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の一部又は全部が制限される。
ステップS112において、退避走行時のパワーの大きさが下限値以上である場合には、ステップS113に移行する。ステップS113では、自動運転について「制限不要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の全てが制限なしで実行される。
尚、ステップS111における判定ができなかった場合には、ステップS114に移行する。これは、再始動に必要なエネルギーが不明であるような場合には、念のために自動運転を制限しておいた方が好ましいからである。同様の理由により、ステップS112における判定ができなかった場合にも、やはりステップS114に移行する。
ところで、「内燃機関210を始動させる際に動作する機器」も、退避走行機器の一部に含まれるのであるから、図20に示される一連の処理は、図19に示される処理の具体的な一例ということができる。本実施形態のような態様であっても、第9実施形態と同じ効果を奏する。
第11実施形態について説明する。第11実施形態では、制限要否判断の内容において第10実施形態(図20)と異なっている。以下では、第10実施形態と異なる点についてのみ説明し、第10実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
本実施形態において行われる制限要否判断の流れについて、図21を参照しながら説明する。図21に示される一連の処理は、図20に示される一連の処理に換えて実行されるものである。
最初のステップS121では、可変バルブシステム211が正常に動作し得る状態であるか否かが判定される。当該判定は、異常判定部130によって行われる。可変バルブシステム211が正常に動作し得ない状態である場合には、ステップS123に移行する。
この場合、可変バルブシステム211による実圧縮比の調整や、実圧縮比の値の取得ができなくなっており、内燃機関210の始動に失敗してしまう可能性が高いと考えられる。従って、ステップS123に移行した場合には、自動運転機能の一部を維持した状態における退避走行を行うことができない可能性が高い。そこで、ステップS123では、自動運転について「制限要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の一部又は全部が制限される。
ステップS121において、可変バルブシステム211が正常に動作し得る状態である場合には、ステップS122に移行する。ステップS122では、自動運転について「制限不要」であることが決定される。以降は、既に述べたように自動運転機能の全てが制限なしで実行される。
尚、ステップS121における判定ができなかった場合には、ステップS123に移行する。これは、可変バルブシステム211の状態が不明であるような場合には、必要量特定部110によるエネルギーの特定等を正確に行えない可能性があるので、念のために自動運転を制限しておいた方が好ましいからである。
ところで、内燃機関210における実圧縮比を変更するための可変バルブシステム211は、「内燃機関210を始動させる際に動作する機器」の一部に含まれる。従って、図21に示される一連の処理は、図20に示されるような処理の具体的な一例ということができる。つまり、図21に示される一連の処理は、「内燃機関210を始動させる際に動作する機器」が異常である場合において、自動運転機能の一部又は全部を制限する処理、の一例ということができる。本実施形態のような態様であっても、第10実施形態と同じ効果を奏する。
第10実施形態について説明する。第10実施形態では、制限要否判断の内容において第1実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
本実施形態における制限要否判断は、以上に説明した様々な態様の制限要否判断を組み合わせて、これらを順に実行するような処理となっている。図22を参照しながら、本実施形態における制限要否判断の処理の流れについて説明する。
最初のステップS131では、第1判断として、第9実施形態と同じ制限要否判断、すなわち、図19に示されるような、退避走行機器が正常であるか否かに基づいた制限要否判断が行われる。ステップS131では、第9実施形態と同じ制限要否判断に換えて、第10実施形態(図20)と同じ制限要否判断、又は第11実施形態(図21)と同じ制限要否判断が行われてもよい。
ステップS131に続くステップS132では、第2判断として、第8実施形態と同じ制限要否判断、すなわち、図18に示されるような、燃料量が十分であるか否かに基づいた制限要否判断が行われる。
ステップS132に続くステップS133では、第3判断として、第1実施形態と同じ制限要否判断、すなわち、図3に示されるような、蓄電量が十分であるか否かに基づいた制限要否判断が行われる。ステップS133では、第1実施形態と同じ制限要否判断に換えて、第1実施形態の変形例(図4)と同じ制限要否判断が行われてもよい。
ステップS133に続くステップS134では、第4判断として、第2実施形態と同じ制限要否判断、すなわち、図6に示されるような、自動運転車両10の力学的エネルギーに基づいた制限要否判断が行われる。
ステップS134に続くステップS135では、第5判断として、第6実施形態と同じ制限要否判断、すなわち、図15に示されるような、フライホイール220に十分な回転エネルギーが蓄えられたか否かに基づいた制限要否判断が行われる。
ステップS135に続くステップS136では、第6判断として、第7実施形態と同じ制限要否判断、すなわち、図16に示されるような、内燃機関210の自動的な停止を禁止した上で「制限不要」とするような制限要否判断が行われる。ステップS136では、第7実施形態と同じ制限要否判断に換えて、第7実施形態の変形例(図17)と同じ制限要否判断が行われてもよい。
図22に示される一連の処理では、第1判断乃至第7判断の全てにおいて「制限不要」と判定された場合にのみ、最終的に「制限不要」との判定がなされる。その他の場合、すなわち、第1判断乃至第7判断のいずれかにおいて「制限要」と判定された場合には、最終的に「制限要」との判定がなされる。このように判定することにより、自動運転機能の少なくとも一部を維持した状態での退避走行を、より確実に実行し得る状態で、自動運転を行うことが可能となる。
第1判断乃至第7判断は、その一部が省略されてもよく、図22とは異なる順序で行われることとしてもよい。例えば、内燃機関210を始動させる第5判断が行われた後に、バッテリ320の蓄電量に基づく第3判断が行われることとしてもよい。これにより、退避走行に必要なエネルギーが、バッテリ320とフライホイール220の両方に蓄えられた状態としておくことが可能となる。
ところで、退避走行が行われる際に維持される自動運転機能は、自動操舵であってもよく、自動制動であってもよく、自動駆動であってもよい。また、退避走行が行われる際に、これらのうち2つまたは全ての機能が維持されることとしてもよい。
退避走行を実行するために退避走行機器が必要とするエネルギー及びパワー、すなわち、必要量特定部110によって特定されるエネルギー及びパワーは、退避走行が行われる際に維持される自動運転機能の種類によって当然に異なるものとなる。以下では、必要量特定部110によって特定されるエネルギー等について、補足的な説明を加えることとする。
退避走行は、例えばすぐ近くの路肩に自動運転車両10を停止させるようなものであってもよく、所定の目的地(例えば次のパーキングエリア)まで自動運転車両10を走行させ、その後自動的に停車させるものであってもよい。前者の場合には、自動操舵と自動制動の機能のみが維持されていればよく、自動駆動の機能は停止されていてもよい。一方、後者の場合には、自動操舵、自動制動、及び自動駆動の全ての機能が維持されている必要がある。必要量特定部110では、上記を考慮してエネルギー及びパワーの特定が行われる。尚、前者のように自動駆動が不要である場合であっても、オルタネータ330による発電を維持するために、内燃機関210の始動が必要となることがある。
自動運転中にどのような不具合が生じるかを正確に予測することは難しい。このため、必要量特定部110は、あらゆる態様の不具合を予め想定し、各不具合の発生時において退避走行に必要となるエネルギーを算出した上で、その最大値を特定することが好ましい。
退避走行機器には、退避走行の実行に最低限必要な機器のみが含まれることとしてもよいが、その他の機器が含まれることとしてもよい。例えば、エアバッグ装置やシートベルトプリテンショナ等、乗員の安全を維持するための機器についても退避走行機器に含まれるものとした上で、必要量特定部110が、退避走行機器が必要とするエネルギー及びパワーの大きさを特定することとしてもよい。
同様に、退避走行機器には、エアコンやオーディオ装置等、利便性や快適性を向上させるための機器が含まれていてもよい。更に、ハザードランプや速度表示装置等の機器が退避走行機器に含まれていてもよい。
退避走行の実行時において自動駆動の機能が維持される場合には、必要量特定部110によって特定されるエネルギー及びパワーは、退避走行機器が、退避走行の実行時において自動的な駆動力制御を行うために必要となるエネルギー及びパワーということになる。駆動力制御を行うために必要となるエネルギーは、例えば以下の式(4)を用いて算出することができる。
(駆動力制御を行うために必要となるエネルギー)=内燃機関210の始動に要するエネルギー+所定速度まで加速し、当該速度を維持するためのエネルギー+認知に必要なエネルギー+制御装置100が判断を行うのに要するエネルギー・・・(4)
式(4)の右辺第1項における「内燃機関210の始動に要するエネルギー」は、内燃機関210が停止しているときにのみ算出される。当該エネルギーは、以下の式(5)を用いて算出することができる。
内燃機関210の始動に要するエネルギー=クランキングに要するエネルギー+燃料ポンプを動作させるためのエネルギー+内燃機関210において燃料を噴射させるエネルギー+点火プラグを作動させるエネルギー・・・(5)
尚、上記の「燃料ポンプ」とは、燃料タンクから内燃機関210に向けて燃料を送り出すためのポンプのことである。
式(4)の右辺第1項における「クランキングに要するエネルギー」は、例えば単位時間あたりのクランキングに必要なエネルギーを、内燃機関210の実圧縮比、内燃機関210を通る冷却水の温度、及びその他のパラメータの関数として求めておき、当該関数をクランキングが行われる期間について積分することにより求めることができる。
クランキングが行われる際には、例えばスロットルバルブを全開にしたり、可変バルブシステム211を動作させて実圧縮比を低下させたりすることにより、クランキングに要するエネルギーを低減させることとすればよい。この場合、式(4)の右辺第1項における「クランキングに要するエネルギー」には、スロットルバルブや可変バルブシステム211を動作させるためのエネルギーが含まれることとすればよい。
尚、式(4)の右辺第1項における「クランキングに要するエネルギー」は、上記のような方法で都度算出された値が用いられてもよいのであるが、予め固定値として設定された値が用いられてもよい。
式(4)の右辺第2項における「所定速度まで加速し、当該速度を維持するためのエネルギー」は、以下の式(6)を用いて算出することができる。
所定速度まで加速し、当該速度を維持するためのエネルギー=燃料ポンプを動作させるためのエネルギー+内燃機関210において燃料を噴射させるエネルギー+点火プラグを作動させるエネルギー・・・(6)
式(4)の右辺第3項における「認知に必要なエネルギー」には、車載カメラ384及び位置検知システム382を動作させるためのエネルギーが含まれる。また、車載カメラ384を補助するために用いられるワイパーやライト、デフォッガ、ウォッシャ等を動作させるエネルギーが含まれることとしてもよい。また、車載カメラ384に加えてミリ波レーダー等の認識装置が搭載される場合には、当該認識装置を動作させるためのエネルギーが含まれることとしてもよい。更に、アクセルペダルやブレーキペダルの操作量を検知するセンサ等、各種センサを動作させるためのエネルギーが含まれることとしてもよい。
式(4)の右辺第4項における「制御装置100が判断を行うのに要するエネルギー」には、制御装置100が動作するために必要となるエネルギーの他、回転数センサ250等の各種センサを動作させるためのエネルギーが含まれる。
駆動力制御を行うために必要となるパワー(電力)は、例えば以下の式(7)を用いて算出することができる。
駆動力制御を行うために必要となるパワー=内燃機関210を始動させるためのパワー+燃料ポンプのパワー+内燃機関210において燃料を噴射させるパワー+点火プラグを作動させるパワー+認知に必要なパワー+制御装置100を動作させるためのパワー・・・(7)
式(7)における「認知に必要なパワー」には、車載カメラ384及び位置検知システム382を動作させるためのパワーが含まれる。また、車載カメラ384を補助するために用いられるワイパーやライト、デフォッガ、ウォッシャ等を動作させるパワーが含まれることとしてもよい。また、車載カメラ384に加えてミリ波レーダー等の認識装置が搭載される場合には、当該認識装置を動作させるためのパワーが含まれることとしてもよい。更に、アクセルペダルやブレーキペダルの操作量を検知するセンサ等、各種センサを動作させるためのパワーが含まれることとしてもよい。
式(7)における「制御装置100を動作させるためのパワー」には、制御装置100が動作するために必要となるパワーの他、回転数センサ250等の各種センサを動作させるためのパワーが含まれる。
退避走行の実行時において自動制動の機能が維持される場合には、必要量特定部110によって特定されるエネルギー及びパワーは、退避走行機器が、退避走行の実行時において自動的な制動(つまり制動力制御)を行うために必要となるエネルギー及びパワーということになる。制動力制御を行うために必要となるエネルギーは、例えば以下の式(8)を用いて算出することができる。
制動力制御を行うために必要となるエネルギー=所定速度から停車するために必要なエネルギー×所定回数+認知に必要なエネルギー+制御装置100が判断を行うのに要するエネルギー・・・(8)
式(8)における「所定回数」とは、制動力制御において制動が行われるであろう回数として、予め設定された定数である。式(8)の右辺第1項における「所定速度から停車するために必要なエネルギー」は、例えば以下の式(9)を用いて算出することができる。
所定速度から停車するために必要なエネルギー=ソレノイドバルブの作動エネルギー+油圧ポンプの作動エネルギー・・・(9)
式(9)における「ソレノイドバルブ」とは、油圧ブレーキ装置に対する動作油の供給及び停止を切り換えるための電磁弁のことである。また、式(9)における「油圧ポンプ」とは、油圧ブレーキ装置に動作油を供給するためのポンプのことである。
尚、油圧ブレーキ装置に動作油を供給する配管の内部が、既に高圧になっているような場合には、当該圧力まで油圧を高めるのに要するエネルギーが不要となる。そこで、式(8)の右辺から、当該不要分に相当するエネルギーを差し引くこととしてもよい。
制動力制御を行うために必要となるパワー(電力)は、例えば以下の式(10)を用いて算出することができる。
制動力制御を行うために必要となるパワー=ソレノイドバルブを作動させるためのパワー+油圧ポンプを作動させるためのパワー+認知に必要なパワー+制御装置100を動作させるためのパワー・・・(10)
退避走行の実行時において自動操舵の機能が維持される場合には、必要量特定部110によって特定されるエネルギー及びパワーは、退避走行機器が、退避走行の実行時において自動的な操舵(つまり操舵力制御)を行うために必要となるエネルギー及びパワーということになる。操舵力制御を行うために必要となるエネルギーは、例えば以下の式(11)を用いて算出することができる。
操舵力制御を行うために必要となるエネルギー=所定の操舵アシストに必要なエネルギー×所定回数+認知に必要なエネルギー+制御装置100が判断を行うのに要するエネルギー・・・(11)
式(11)における「所定回数」とは、操舵力制御において操舵が行われるであろう回数として、予め設定された定数である。式(11)の右辺第1項における「所定の操舵アシストに必要なエネルギー」とは、操舵角を所定量だけ変化させる際に、パワーステアリング装置で消費されるエネルギーのことである。
尚、油圧を用いたパワーステアリング装置が用いられる場合には、「所定の操舵アシストに必要なエネルギー」としては、パワーステアリング装置に動作油を供給する油圧ポンプの動作エネルギーが該当する。この場合、パワーステアリング装置に動作油を供給する配管の内部が、既に高圧になっているような場合には、当該圧力まで油圧を高めるのに要するエネルギーが不要となる。そこで、式(11)の右辺から、当該不要分に相当するエネルギーを差し引くこととしてもよい。
操舵力制御を行うために必要となるパワー(電力)は、例えば以下の式(12)を用いて算出することができる。
操舵力制御を行うために必要となるパワー=パワーステアリング装置を動作させるためのパワー+認知に必要なパワー+制御装置100を動作させるためのパワー・・・(12)
尚、油圧を用いたパワーステアリング装置が用いられる場合には、「パワーステアリング装置を動作させるためのパワー」としては、パワーステアリング装置に動作油を供給する油圧ポンプを動作させるためのパワーが該当する。この場合、パワーステアリング装置に動作油を供給する。
内燃機関210を始動させるために必要な大きさのエネルギーを自動運転車両10が有しているか否かの判定(例えば図15のステップS65で行われる判定)を行うにあたっては、自動運転車両10が有しているエネルギーの大きさは以下の式(13)を用いて算出することができる。
(自動運転車両10が有しているエネルギー)=(スタータ340に供給可能な蓄電量)+(フライホイール220の回転エネルギー)+(自動運転車両10の運動エネルギー)・・・(13)
尚、押しがけによって内燃機関210の始動を行う場合には、始動に必要な大きさのエネルギーを自動運転車両10が有しているか否かの判定は、クランク軸230の角速度が所定の閾値よりも大きいか否かに基づいて行ってもよい。この場合、クランク軸230の角速度が上記閾値以下である場合にのみ、式(13)を用いたエネルギーの算出(すなわち、スタータ340によるアシストを考慮したエネルギーの算出)が行われることとしてもよい。
以上においては、退避走行用のエネルギーを蓄えておくための構成要素として、バッテリ320、バッテリ321(図8)、コンデンサ370、コンデンサ371(図8)、フライホイール220が設けられている例について説明した。しかしながら、退避走行用のエネルギーを蓄えておくための構成要素として、上記以外の要素が設けられていてもよい。また、バッテリ等の個数を変更してもよい。更に、各構成要素に蓄えられているエネルギーを、内燃機関210の始動に用いるか、自動運転機能の維持のために用いるかは、任意に設定することができる。
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。