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JP2018049761A - 燃料電池の運転方法、燃料電池システム及び車両 - Google Patents

燃料電池の運転方法、燃料電池システム及び車両 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、高い発電特性を有する燃料電池の運転方法及び燃料電池システムを提供することである。
【解決手段】実施形態の燃料電池の運転方法は、燃料極、電解質膜と酸化極を有する膜電極接合体の燃料極と酸化極に接続した電源を用い、低電位と高電位の繰り返しを含む電位サイクルを有する電圧を印加する運転工程を有し、低電位は燃料極の電位を基準電位として、酸化剤極に対し0.85V以下であり、高電位は燃料極の電位を基準電位として、酸化剤極に対し1.10V以上である。
【選択図】 図1

Description

実施形態は、燃料電池の運転方法、燃料電池システム及び車両に関する。
近年、電気化学セルは盛んに研究されている。電気化学セルのうち、例えば、燃料電池は、水素などの燃料と酸素などの酸化剤とを電気化学的に反応させることにより発電させるシステムを含んでいる。中でも、固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)は、環境への負荷が少ないことから、家庭用定置電源や自動車用電源として実用化されている。PEFCの各電極に含まれる触媒層としては、カーボンブラック担体に触媒材料を担持させたカーボン担持触媒が一般に使用されている。燃料電池の発電によってカーボン担体が腐食し、触媒層および触媒層を含んだ膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)の劣化が大きく、燃料電池耐久性を確保するため多量な触媒が使用されている。PEFCの普及化への一つ大きな課題は、貴金属触媒使用量の低減によるコスト減である。
カーボン担体による触媒劣化を回避し、触媒活性と電気化学セルの特性を高めるため、担体レス貴金属多孔質触媒層またはナノシート状貴金属を含む触媒層が提案され、少ない白金でも優れた耐久性と高い特性を確保できている。しかしながら、これらの触媒層を用いた燃料電池の特性は、製造プロセスまたは使用時(例えば空気中の不純物の平均濃度(体積換算)は硫黄酸化物18ppb、窒素酸化物46ppb)によるコンタミに敏感であり、燃料電池の特性低下が懸念される。
特許第5342824号
本発明が解決しようとする課題は、高い発電特性を有する燃料電池の運転方法及び燃料電池システムを提供することである。
実施形態の燃料電池の運転方法は、燃料極、電解質膜と酸化極を有する膜電極接合体の燃料極と酸化極に接続した電源を用い、低電位と高電位の繰り返しを含む電位サイクルを有する電圧を印加する運転工程を有し、低電位は燃料極の電位を基準電位として、酸化剤極に対し0.85V以下であり、高電位は燃料極の電位を基準電位として、酸化剤極に対し1.10V以上である。
実施形態に係る燃料電池システムの模式図。 実施形態に係るシート状貴金属触媒を含む触媒層のSEM像。 実施形態に係る運転方法のフロチャート。 実施形態に係る車両の模式図。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態は、燃料電池の運転方法とかかる燃料電池の運転方法を行う燃料電池システムに関する。実施形態の燃料電池の運転方法は、燃料極、電解質膜と酸化極を有する膜電極接合体の燃料極と酸化極に接続した電源を用い、低電位と高電位の繰り返しを含む電位サイクルを有する運転工程を有し、低電位は燃料極の電位を基準電位として、酸化剤極に対し0.85V以下であり、高電位は燃料極の電位を基準電位として、酸化剤極に対し1.10V以上である。実施形態の燃料電池システムは、燃料極、酸化極と電解質膜を有し、燃料及び酸化剤が供給されて発電する膜電極接合体と、燃料極と酸化極と接続し、両極間に電位サイクルを有する電圧を印加する電源を有するものである。
図1に第1実施形態の燃料電池システム100の模式図を示す。燃料電池100は、膜電極接合体1と、膜電極接合体1に電気的に接続した電源2と、電源2を制御する制御ユニット3と、燃料供給ユニット4と、酸化剤供給ユニット5と、負荷制御ユニット6を有する。
(膜電極接合体)
膜電極接合体1は、燃料極(アノード)1Aと酸化極(カソード)1B、これらの間に配置された電解質膜1Cとを含む。さらに、燃料極1Aの拡散層として第1拡散層1Dと、酸化極1Bの拡散層として第2拡散層2Eが膜電極接合体1に含まれる。
燃料極1A及び酸化極1Bは、貴金属元素を含む触媒層を有する。触媒層は、第1拡散層1D上又は第2拡散層1Eに設けられている。触媒層は、電解質膜1Cと、第1拡散層1D又は第2拡散層1Eとの間に配置される。第1拡散層1D及び第2拡散層1Eは、触媒層の基板としても機能する。
電解質膜1Cは、プロトン伝導性を有する電解質膜が好ましい。プロトン伝導性を有する電解質膜としては、例えばスルホン酸基を有するフッ素樹脂(例えば、ナフィオン(デュポン社製)、フレミオン(旭化成社製)、およびアシブレック(旭硝子社製)など)や、タングステン酸やリンタングステン酸などの無機物を使用することができる。
第1拡散層1D及び第2拡散層1E(触媒層の基板)としては、導電性多孔質シートが好ましい。導電性多孔質シートとしては、カーボンクロス、カーボンペーパーなどの通気性あるいは通液性を有する材料から形成されたシートを使用することができる。
燃料極1Aには、燃料として水素、メタノール、エタノールとギ酸のうちのいずれか1種以上が供給される。燃料は第1拡散層1Dと接続した燃料供給ユニット4によって、燃料極1Aへの燃料供給が制御される。また、酸化極1Bには、酸化剤として、空気又は酸素(高純度酸素)が供給される。酸化剤は第2拡散層1Eと接続した酸化剤供給ユニット5によって、酸化極1Bへの酸化剤供給が制御される。
触媒層は、高出力な燃料電池特性の観点から、貴金属元素を含む触媒層が好ましい。触媒層は、例えば、Pt、Ru、Rh、Os、Ir、PdおよびAuなどの貴金属元素からなる群のうちの少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。より具体的には、貴金属多孔体またはシート状貴金属を含む多孔質触媒層であることが好ましい。かかる多孔質触媒層は担体に担持されておらず貴金属多孔体またはシート状貴金属で構造形成された担体レス触媒層である。多孔質触媒層は、多孔体構造または多層のシート状貴金属の間に空隙層が存在する積層構造を持つユニットで構成されている。貴金属触媒を使用した場合は少ない使用量においても、膜電極接合体の高い特性と高い耐久性を保つことが可能である。
図2(A)に多孔体構造を持つユニットの走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)像を示す。図2(B)と(C)多層のシート状貴金属及び空隙層を含む積層構造を持つユニットのSEM像を示す。空隙層を含む積層構造の場合は、隣接のナノシート同士は部分的に一体化することが望ましい。積層構造内部へナノセラミックス材料層の導入、または隣接ナノシートまたは材料層の間に、繊維状カーボンを含む多孔質ナノカーボン層を配置したほうは耐久性、ロバスト性がより向上できる。
多孔体触媒層は、例えば、Pt、Ru、Rh、Os、Ir、PdおよびAuなどの貴金属元素からなる群のうちの少なくとも1種の金属を含む金属、合金と金属酸化物のうちのいずれか1種を含む。多孔体触媒層はPtを少なくとも含むことが好ましく、Ru、Rh、Os、Ir、PdおよびAuなどの貴金属元素からなる群のうちの少なくとも1種の金属とPtを含むことがより好ましい。このような触媒材料は、触媒活性、導電性および安定性に優れている。前述の金属は、酸化物として用いることもでき、2種以上の金属を含む複合酸化物または混合酸化物であってもよい。最適な貴金属元素は、膜電極接合体が使用される反応に応じて適宜選択することができる。例えば、燃料電池のカソードとして酸素還元反応を行う場合、Pt1−uで示される組成を有する触媒が望ましい。ここで、uは、0<u≦0.9であり、元素Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Ta、W、Hf、Si、Mo、Ti、Zr、Nb、V、Cr、AlおよびSnよりなる群のうちの少なくとも1種である。この触媒は、0原子%より多く90原子%以下のPt、および10原子%以上100原子%未満の元素Mを含んでいる。燃料電池のアノードとして水素酸化反応を行う場合、Pt1−vで示される組成を有する触媒が望ましい。ここで、vは、0<v≦0.6であり、元素Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Ta、W、Hf、Si、Mo、Ti、Zr、Nb、V、Cr、AlおよびSnよりなる群のうちの少なくとも1種である。元素Mは、一種でも二種以上の元素の組合わせでも良い。
(電源)
電源2は、燃料極1Aと酸化極1Bに接続し、両極間に電位サイクルを有する電圧を印加する手段である。電源2は、例えば、バッテリー(二次電池)や発電機と、インバータ回路やコンバータ回路を組み合わせた構成である。インバータ回路やコンバータ回路がバッテリーや発電機からの電力を電位サイクルを有する波形に変換する。かかる電源2が燃料極1Aと酸化極1Bに印加する電圧は、制御ユニット3で制御される。電位サイクルについては、後述する。
(制御ユニット)
制御ユニット3は、電源2と接続し、電源2からの出力を制御する。より具体的には、電源2のインバータ回路やコンバータ回路を制御して、電源から供給される電力を電位サイクルを有する波形に変換する。制御ユニット3は、ソフトウェア制御又はハードウェア制御されている。制御ユニット3は、マイコンやSoC(System on Chip)などの集積回路を有し、集積回路を用いて電源2の制御を行うことができる。また、他の形態としては、制御ユニット3はコンピュータを有し、コンピュータを用いて電源2を制御してもよい。制御ユニット3は、電源2以外にも、燃料供給ユニット4、酸化剤供給ユニット5、負荷制御ユニット6などとも接続し、これらを制御する構成にしてもよい。電位サイクルについては、後述する。
(燃料供給ユニット)
燃料供給ユニット4は、第1拡散層1Dと接続し、第1拡散層1Dを介して燃料極1Aへ燃料を供給する。燃料供給ユニット4は、ポンプやブロアーとバルブの制御によって、燃料極1Aへの燃料供給量を調整することができる。燃料供給ユニット4は、制御ユニット3からの制御によって燃料供給量が制御されることが好ましい。
(酸化剤供給ユニット)
酸化剤供給ユニット5は、第2拡散層1Eと接続し、第2拡散層1Eを介して酸化極1Bへ酸化剤を供給する。酸化剤供給ユニット5は、ポンプやブロアーとバルブの制御によって、酸化極1Bへの酸化剤供給量を調整することができる。酸化剤供給ユニット5は、制御ユニット3からの制御によって酸化剤供給量が制御されることが好ましい。
(負荷制御ユニット)
負荷制御ユニット6は、膜電極接合体1と図示しない負荷の間に存在する。図中では、負荷と接続する端子を示している。負荷制御ユニット6は、膜電極接合体1で発電した電力を変換するインバータ回路を備えることが好ましい。負荷制御ユニット6は、制御ユニット3と接続し、負荷への電力供給を制御する。
(運転方法)
次に、実施形態の燃料電池の運転方法について説明する。かかる運転方法は、触媒層のクリーニング又はエージング(活性化)処理を行う運転方法である。機能回復又はエージング(活性化)処理を行う運転方法は、燃料極1Aと酸化極1Bに接続した電源を用いて電位サイクルを有する電圧を印加する運転工程を有する。
電位サイクルは、低電位と高電位の繰り返しを含む。燃料極の電位を基準電位として、燃料極1Aと酸化極1B間に電位サイクルを有する電圧を印加する。電位サイクルを有する電圧を印加する際には、燃料極1Aに、水素などの燃料が存在することが好ましい。電位サイクルは、低電位と高電位を含み、低電位と高電位を跨ることが好ましい。触媒層には、燃料電池発電運転等の使用中に高分子等の不純物が吸着したり、触媒層作成プロセス中に不純物のコンタミが発生したりする。この不純物によって、触媒表面が覆われ触媒活性が低下してしまう。触媒層のクリーニング又はエージング(活性化)処理によって、触媒層中の不純物が除去され膜電極接合体1の特性が回復もしくは向上する。
電位サイクルの低電位は、0.85V以下であり、高電位は、1.1V以上である。この低電位と高電位の繰り返しを含む電位サイクルによって、触媒層のクリーニング又はエージング処理が行われる。
低電位は、−0.10V以上0.85V以下が好ましい。低電位において、0.85V超えると、電位が高すぎて低電位状態におけるクリーニング効果と高特性回復が不十分である。また、−0.10V未満では顕著な水素発生が起きるため、電極から外部への水素ガスリークのリスクがある。同観点から、低電位は、0.05V以上0.75V以下がより好ましい。低電位は貴金属の還元電位でもあり、かかる電位において不純物が還元されると考えられる。
高電位は、1.10V以上1.45V以下が好ましい。高電位において、1.10V未満では、電位が低すぎて高電位状態におけるクリーニング効果と高特性回復が不十分である。また、1.45Vを超えると貴金属の溶出が顕著になり、特性低下を招く可能性があり好ましくない。同観点から、高電位は、1.15V以上1.35V以下がより好ましい。高電位は貴金属の溶出電位でもあり、かかる電位において不純物が酸化されると考えられる。
電位サイクルの回数を3〜500回繰り返しを行うことが好ましい。5〜200回がより好ましい。3回未満はクリーニング効果と高特性回復が不十分である。5回以上であれば、クリーニング効果と高特性回復が十分となる。500回を超えるとシステム運転方法としては効率が悪く、実用性が低い。同観点から電位サイクルの回数は200回以上が好ましい。
高電位と低電位のどちらか一方の電位で処理してもクリーニング効果と高特性回復が不十分である。高電位と低電位のどちらか一方の電位で処理した場合、クリーニング効果と高特性回復は、高電位と低電位を繰り返す電位サイクルで処理した場合の1/5以下程度になってしまう。還元処理と酸化処理を繰り返すことによって、高いクリーニング効果と高特性回復が可能となる。
1サイクルあたりの低電位の時間、つまり、1サイクル中の−0.10V以上0.85V以下である時間は、0.05秒以上100秒以下であることが好ましい。0.05秒未満であると低電位による還元効果が少なくなってしまう。還元時間が100秒を超えると還元処理効果は大きくならず処理時間が長くなってしまう。同観点から、0.2秒以上100秒以下が好ましい。また、低電位において、電位の低さによって、より効果的な処理時間がある。電位ごとのより効果的な処理時間は次のいずれかを満たすことが好ましい。1サイクル中の−0.10V以上0.05V以下の時間は0.2秒以上3秒以下が好ましい。1サイクル中の0.05Vより大で0.5V以下の時間は1秒以上10秒以下が好ましい。1サイクル中の0.5Vより大で0.75V以下の時間は3秒以上100秒以下が好ましい。1サイクル中の0.5Vより大で0.85V以下の時間は3秒以上100秒以下が好ましい。
1サイクルあたりの高電位の時間、つまり、1サイクル中の1.10V以上1.35V以下である時間は、0.1秒以上30秒以下であることが好ましい。0.1秒未満であると高電位による酸化効果が少なくなってしまう。酸化時間が30秒を超えると不純物除去は行われるものの、触媒の溶出量が大きくなってしまい好ましくない。同観点から、1秒以上10秒以下が好ましい。また、高電位において、電位の高さによって、より効果的な処理時間がある。電位ごとのより効果的な処理時間は次のいずれかを満たすことが好ましい。1サイクル中の1.10V以上1.35V以下の時間は1秒以上30秒以下が好ましい。1サイクル中の1.35Vより大で1.45V以下の時間は0.1秒以上10秒以下が好ましい。
電位サイクルの波形は、例えば、矩形波、三角波やサイン波など特に限定されない。なお、上下電位における電位維持時間を短くし(極限はゼロ)、電位下限と電位上限との間の掃引レートを調整することによってもクリーニング効果を達成できる。掃引レートは0.5V/秒以下であることが好ましい。
なお、ナノ粒子状の貴金属に対して実施形態の操作は大量な貴金属流出を招く可能性があるが、貴金属多孔体または貴金属多孔体またはシート状貴金属を含む多孔質触媒層では貴金属の流出が殆ど抑制される。詳細なメカニズムはまだ完全に解明されてないが、ナノシート状貴金属触媒の表面構造と、貴金属多孔体またはナノシート状貴金属から構成された貴金属触媒層の構造は電気サイクルにおける貴金属の外部流出を大きく抑制したと推測される。
図3に実施形態の燃料電池の運転方法のチャート図を示す。図3のチャート図には、発電開始工程S01、判定工程S02、発電停止工程S03、電位サイクル工程S04、終了S05の5工程が示される。
発電開始工程S01は、燃料供給ユニット4と酸化剤供給ユニット5を制御して、燃料極1Aと酸化極1Bへの燃料と酸化剤の供給を行い、膜電極接合体1において発電開始する工程である。
判定工程S02は、電位サイクル工程S04の運転を行う必要があるか判定する工程である。判定基準は複数あり、複数の判定基準のうち設定された1つ以上の条件を満たすときに電位サイクル工程S04を行う。判定基準は、例えば、発電電位の低下、発電総時間、発電異常などである。判定工程S02で判定の結果、運転サイクル工程S04を行う必要が無ければ、何らかの制御により発電を停止するまで発電を継続し、所要時間経過後、再び判定工程S02を行うことが好ましい。
発電停止工程S03は、膜電極接合体による発電を停止させる工程である。膜電極接合体1による発電中に電位サイクル工程S04を行うと判断された場合は、電位サイクル工程S04の前に、負荷制御ユニット6を制御して負荷を電気的に膜電極接合体1と遮断する工程を行うことが好ましい。また、酸化剤供給ユニット5を制御して酸化極1Bに供給する酸化剤の流量を低減する、又は、供給を停止する工程を行うことが好ましい。また、燃料供給ユニット4を制御して燃料極1Aに供給する燃料の流量を低減する、又は、供給を停止する工程を行うことが好ましい。これらのいずれかの工程によって、膜電極接合体1による発電を停止する。酸化剤の供給を低減又は停止することがより好ましい。
電位サイクル工程S04は、機能回復又はエージング(活性化)処理を行う工程であり、具体的には、上述の燃料極1Aと酸化極1Bに接続した電源を用いて電位サイクルを有する電圧を印加する運転工程である。電位サイクル工程S04は、発電運転開始前に行ってもよい。エージング処理であれば、チャート図に関係なく、単独で電位サイクル工程S04を行うことが好ましい。電位サイクル工程S04は、電源2を動作させて電位サイクル運転が開始し、電源2の動作の停止によって電位サイクル運転が停止する。また、操作者による指示で、電位サイクル工程S04を単独で行ってもよい。電位サイクル工程S05後、燃料電池システムの運転は終了する(S05)。
なお、燃料電池システムを使用する際において、実施形態の操作の前に発電特性の異常低下を探知する操作手順を入れることが望ましい。例えば、蓄積したデータから通常の特性低下速度より早い場合は本発明の操作を行う。また、負荷を遮断し、酸化剤極に供給する酸化剤の流量を低減または停止することが好ましい。また、実施形態の操作方法は燃料電池のエージング処理としても使用できる。この場合は高電流密度発電などほかの操作方法とセットで行うことでより短時間でエージングできる。
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態の燃料電池システム100を有する車両に関する。図4に実施形態の車両200の模式図を示す。図4の模式図に示す車両は、燃料電池システム100、車体201、モーター202、車軸203と車輪204を有する。燃料電池システムの燃料極1Aと酸化極1Bは、負荷制御ユニット6を介して、負荷であるモーター202とつながっている。モーターは車輪204とつながった車軸203を回転させて車輪を回転させる。
車両200において、実施形態1の燃料電池システム100の上述の燃料極1Aと酸化極1Bに接続した電源を用いて電位サイクルを有する電圧を印加する運転工程を行うことが好ましい。かかる運転を行うことによって車両の動作性能を向上もしくは回復させることができる。電位サイクル工程を自動で行うように制御することによって、車両性能が自動的に回復することが好ましい。電位サイクル工程は、車両200の起動後の燃料電池発電開始前や車両200の停止後の燃料電池発電終了後に行うことが好ましい。
以下、実施例および比較例を説明する。
(実施例1)
<担体レス触媒層を有する電極及び膜電極複合体の作製>
基板として、厚みが30μmの炭素層を有するカーボンペーパーToray060(東レ社製)を用意した。この基板上に、スパッタリング法により多孔体構造を持つユニットから構成する触媒層を形成し、担体レス多孔質触媒層を有する電極を得た。燃料極(アノード)と酸化極(カソード)におけるPt触媒のローディング密度はそれぞれ0.05mg/cm2と0.15mg/cmである。
上記電極から7.07cm×7.07cmの正方形の切片を切り取って、電解質膜(ナフィオン211(デュポン社製 商標))と合わせて、熱圧着して接合することにより膜電極接合体を得た(電極面積は約50cmである)。得られた膜電極接合体を流路が設けられている二枚の拡散層の間にセッティングし、高分子電解質型燃料電池の単セルを作製した。
<発電及び電位サイクル操作>
得られた単セルに対して、70℃に維持し、アノードに燃料として水素を供給するとともにカソードに空気を供給し、1A/cm以上の電流密度において2時間〜一日発電させ、コンディショニングを行った。その後、0.8A/cmの電流密度において発電させた。20時間発電させた後の電圧をV0として記録した。次に、50ppbのSO、100ppbのNO、1ppmのCOと1000ppmのCOを含有する空気を供給し、0.8A/cmの電流密度において発電させ、20時間発電後の電圧をV1として記録した。その後、負荷を遮断し、燃料極と酸化極間に接続した電源を用い、表1に示される各種電位サイクル操作を行った後、再度0.8A/cmの電流密度において発電させ、20時間発電後の電圧をV2として記録した。なお、実施例11は三角波、実施例12はサイン波であり、他の実施例及び比較例は矩形波である。(V2−V1)/(V0−V1)の値を特性回復率として計算し、記録した。上記試験を5回繰り返して行い、平均の特性回復率を表1にまとめる。
上記表1に示されるように、実施例1〜20の操作方法は、特性回復率が80〜110%である。比較例1〜7は、回復率が劣っている。また、表に記入していないが、5回試験後の膜電極接合体の分解評価では比較例5以外は電位サイクル操作による白金量減少が殆ど確認されなかった。また、比較例6については、酸素極側の水素生成が顕著 であり、電圧下限が低すぎたと思われる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、本発明の運転方法により、少ない量の貴金属で高い燃料電池特性を有する燃料電池を提供することが可能である。
なお、本発明は燃料極のエージング処理などに対して行い、特性向上効果が得られる場合はある。燃料極に対して本発明の電位サイクルを行う場合は、酸化極に水素を供給し、酸化極の電位を基準電位として、燃料極1Aと酸化極1B間に電位サイクルを有する電圧を印加する。
明細書中、元素の一部は元素記号のみで表している。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
100…燃料電池システム、1…膜電極接合体、1A…燃料極、1B…酸化極、1C…電解質膜、1D…第1拡散層、1E…第2拡散層、2…電源、3…制御ユニット、4…燃料供給ユニット、5…酸化剤供給ユニット、6…負荷制御ユニット、200…車両、201…車体、202…モーター、203…車軸、204…車輪

Claims (10)

  1. 燃料極、電解質膜と酸化極を有する膜電極接合体の前記燃料極と前記酸化極に接続した電源を用い、低電位と高電位の繰り返しを含む電位サイクルを有する電圧を印加する運転工程を有し、
    前記低電位は燃料極の電位を基準電位として、酸化剤極に対し0.85V以下であり、
    前記高電位は燃料極の電位を基準電位として、酸化剤極に対し1.10V以上である燃料電池の運転方法。
  2. 前記電位サイクルを3回以上繰り返しを行う請求項1に記載の燃料電池の運転方法。
  3. 前記低電位は、燃料極の電位を基準電位として、酸化剤極に対し−0.10V以上0.85V以下である請求項1又は2に記載の燃料電池の運転方法。
  4. 前記高電位は、燃料極の電位を基準電位として、酸化剤極に対し1.10V以上1.45V以下である請求項1又は2に記載の燃料電池の運転方法。
  5. 前記酸化極及び燃料極は、貴金属多孔体またはシート状貴金属を含む多孔質触媒層を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の燃料電池の運転方法。
  6. 前記酸化極と前記燃料極は負荷と接続し、
    前記電位サイクルを印加する運転工程の前に、前記負荷を遮断する工程を有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の燃料電池の運転方法。
  7. 前記電位サイクルを印加する運転工程の前に、前記酸化極に供給する酸化剤の流量を低減する、又は、停止する工程を有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の燃料電池の運転方法。
  8. 前記電位サイクルの1サイクル中の低電位の時間は0.1秒以上であり、
    前記電位サイクルの1サイクル中の高電位の時間は0.1秒以上である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の燃料電池の運転方法。
  9. 膜電極接合体と、
    前記膜電極接合体と接続した電源と、
    請求項1ないし8のいずれか1項に記載の運転方法で燃料電池が運転されるように制御する制御ユニットを有する燃料電池システム。
  10. 請求項9の燃料電池システムを有する車両。
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