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JP2018043234A - ニッケル含有水溶液用浄化剤及びニッケル含有水溶液の浄化方法 - Google Patents

ニッケル含有水溶液用浄化剤及びニッケル含有水溶液の浄化方法 Download PDF

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JP2018043234A JP2017164519A JP2017164519A JP2018043234A JP 2018043234 A JP2018043234 A JP 2018043234A JP 2017164519 A JP2017164519 A JP 2017164519A JP 2017164519 A JP2017164519 A JP 2017164519A JP 2018043234 A JP2018043234 A JP 2018043234A
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Abstract

【課題】 ニッケルと錯生成能力を持つ化合物、及びニッケルを含有する水溶液のニッケル濃度を低減する浄化剤、及びそれを用いたニッケル含有水溶液の浄化方法を提供する。【解決手段】 ジチオカルバミン酸の塩100重量部に対し、重量平均分子量300以上のポリアミンとハロゲン化カルボン酸との混合物を5〜50重量部含む浄化剤を用いて、ニッケル含有水溶液からニッケルを除去する。【選択図】 なし

Description

本発明は、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物、及びニッケルを含有する水溶液から、ニッケルを除去することを可能にする浄化方法に関するものである。
ニッケルを含有した水溶液は、排水処理設備に送り、例えば、鉄イオンを添加してアルカリ性にし、ニッケルイオン等を鉄イオンやその他含有されるイオンと共に水酸化物として沈殿させる等の処理を行い、水溶液から分離した後に放流する方法等が行われてきた。
ニッケルは、化学物質排出把握管理促進法において第1種指定化学物質に指定される有害な重金属であり、水質汚濁に係る環境基準における要監視項目として設定されており、排水処理の重要性が高まっている。
ところで、めっき工場、電子部品・機械部品製造工場、自動車工場、火力発電所、ごみ焼却場等からの排水には、クエン酸、グルコン酸等の有機酸、エチレンジアミン四酢酸(以下、EDTAと略す)、シアン、アミン、アンモニア及びポリ燐酸等、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物が含まれ、上記のような水酸化物法では処理できない事例が多くなっている。
これに対し、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物を化学的に処理した後に、ニッケルを不溶化処理する方法が知られている。しかしながら、例えば、塩素系薬剤による酸化法、電解酸化法、過酸化水素−第一鉄塩法、オゾン酸化法、湿式酸化法等の化学的処理を用いても、共存する重金属元素による酸化反応の阻害、スケールの生成等の問題から、十分な浄化処理が行えない状況である。
排水中に含まれる各種の重金属元素を除去する技術としては、例えば、無機凝集剤又は有機凝集剤の添加による凝集分離除去法、電解による除去法、活性炭、無機吸着剤又は有機高分子材料による吸着除去法、排水を加熱蒸発させる乾固法、膜を用いた逆浸透法、電気透析又は限外ろ過法等が提案されている。
上記した諸方法を用いた場合であっても、以下のような問題が多々あり、いずれの方法もそれらに対する改善の必要性があった。例えば、
(1)凝集分離除去法ではニッケルを充分に処理できない、
(2)吸着除去法等は、例えニッケルを吸着できたとしても処理後に多量の固形成分が発生する、
(3)逆浸透法、電気透析又は限外ろ過法等は、排水中に有機物を含有すると除去が困難であり、また、その処理コストが高い、
(4)加熱蒸発による乾固法は、処理法が煩雑かつ処理コストが高い、
等である。
ところで、ジチオカルバミン酸の塩を排水中の重金属処理剤として使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。しかしながら、これら特許文献に記載の方法では、重金属と錯生成能力を持つ化合物を含むニッケル含有排水からの、当該重金属の浄化処理効果が十分なものではなかった。
また、分子内に三つ以上のアミノ基を有するポリアミンと、アミンのカルボジチオ酸塩を含む重金属処理剤が提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、特許文献5に開示されている方法では、ニッケルの浄化処理効果は不十分であった。
特開2009−249399公報 特開2011−074350公報 特開2014−088477公報 特開2002−177902公報 特開2008−273995公報
本発明は上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物、及びニッケルを含有する水溶液のニッケル濃度を低減する浄化剤、及びそれを用いたニッケル含有水溶液の浄化方法を提供することにある。
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のジチオカルバミン酸と、特定のポリアミン及びハロゲン化カルボン酸の混合物とを含む浄化剤が、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物、及びニッケルを含有する水溶液のニッケル濃度を簡便に低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の要旨を有するものである。
[1]ジチオカルバミン酸の塩100重量部に対し、重量平均分子量300以上のポリアミンとハロゲン化カルボン酸との混合物を5〜50重量部含むニッケル含有水溶液用の浄化剤。
[2]ジチオカルバミン酸の塩が、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれるアミノ基を少なくとも1つ有するアミン化合物と、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物との反応生成物であることを特徴とする上記[1]に記載の浄化剤。
[3]ジチオカルバミン酸の塩が、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれるアミノ基を2つ以上有するアミン化合物と、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物との反応生成物であることを特徴とする上記[1]に記載の浄化剤。
[4]ジチオカルバミン酸の塩が、ピペラジン又はテトラエチレンペンタミンと、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物との反応生成物であることを特徴とする上記[1]に記載の浄化剤。
[5]重量平均分子量300以上のポリアミンが、重量平均分子量300以上のポリエチレンイミンであることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の浄化剤。
[6]重量平均分子量300以上のポリアミンが、重量平均分子量が1800〜200万のポリエチレンイミンであることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の浄化剤。
[7]ハロゲン化カルボン酸と重量平均分子量300以上のポリアミンとのモル比(ハロゲン化カルボン酸/重量平均分子量300以上のポリアミン)が10〜50であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の浄化剤。
[8]ニッケル含有水溶液に、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のニッケル含有水溶液用の浄化剤を添加した後、生成した固形物を除去することを特徴とするニッケル含有水溶液の浄化方法。
[9]ニッケル含有水溶液が、さらにニッケルと錯生成能力を持つ化合物を含むことを特徴とする上記[8]に記載の浄化方法。
[10]ニッケルと錯生成能力を持つ化合物が、カルボキシル基及びアミノ基からなる群より選ばれる官能基を分子内に有する化合物であることを特徴とする上記[9]に記載の浄化方法。
[11]生成した固形物を除去する前に、無機凝集剤を添加することを特徴とする上記[8]〜[10]のいずれかに記載の浄化方法。
[12]生成した固形物を除去する前に、無機凝集剤及び高分子凝集剤を添加することを特徴とする上記[8]〜[10]のいずれかに記載の浄化方法。
[13]無機凝集剤が、鉄化合物及びアルミニウム化合物からなる群より選択されることを特徴とする上記[11]又は[12]に記載の浄化方法。
本発明のニッケル水溶液用の浄化剤は、ニッケルの浄化処理が難しいニッケル含有水溶液(例えば、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物、及びニッケルを含有する水溶液)であっても、ニッケル濃度を低減することができるため、産業上極めて有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のニッケル含有水溶液用の浄化剤は、ジチオカルバミン酸の塩100重量部に対し、重量平均分子量300以上のポリアミンとハロゲン化カルボン酸との混合物を5〜50重量部含むことをその特徴とする。
ジチオカルバミン酸の塩としては、分子内にジチオカルバミル基を有する化合物であれば特に限定されない。例えば、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれるアミノ基を少なくとも1つ有するアミン化合物と、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物を反応させて得られる化合物が挙げられる。1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれるアミノ基を2つ以上有するアミン化合物と、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物を反応させて得られる化合物がより好ましい。
1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれるアミノ基を少なくとも1つ有するアミン化合物としては、具体的には、ジエチルアミン、ピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘプタエチレンオクタミン等が例示される。
これらのうち、ニッケルの処理性能、及び化合物としての安定性の点で、ピペラジン又はテトラエチレンペンタミンと、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物を反応させて得られる化合物が好ましい。ただし、テトラエチレンペンタミンのジチオカルバミン酸の塩は、原料であるテトラエチレンペンタミンが、主成分のリニア体[下記式(1)参照]以外に類縁体[下記式(2)〜(4)参照]を含む組成物のみが工業的に製造されているため、得られるジチオカルバミン酸の塩も組成物となり、品質管理上煩雑になる欠点がある。一方、ピペラジンのジチオカルバミン酸の塩はこのような欠点がなく、特に好ましい。
Figure 2018043234
Figure 2018043234
Figure 2018043234
Figure 2018043234
アルカリ金属水酸化物としては、入手が容易な点で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。
重量平均分子量300以上のポリアミンとしては、例えば、重量平均分子量300以上のポリエチレンイミン類、重量平均分子量300以上のポリエーテルアミン(ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の末端水酸基を1級アミノ基に変換した化合物)等が挙げられる。これらのうち、ニッケルの処理性能の点で、重量平均分子量300以上のポリエチレンイミン類が好ましい。
ポリアミンの重量平均分子量としては、ニッケルの処理能力向上の点で1800以上が好ましい。重量平均分子量を1800以上とすることにより、ジチオカルバミン酸塩を含めた薬剤使用量を低減できる場合がある。これらのうち、ニッケルの処理性能の点で、重量平均分子量1800以上のポリエチレンイミン類がより好ましい。
ハロゲン化カルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ジクロロ酢酸、ジブロモ酢酸、3−クロロプロピオン酸、3−ブロモプロピオン酸、4−クロロ酪酸、4−ブロモ酪酸、5−クロロ吉草酸、5−ブロモ吉草酸が挙げられる。これらのうちニッケル処理性能、水溶性の点でクロロ酢酸、ブロモ酢酸が特に好ましい。
ハロゲン化カルボン酸/重量平均分子量300以上のポリアミンのモル比は、10〜50が好ましく、更に好ましくは15〜25である。モル比を10以上とすることで、十分なニッケルの処理能力が得られるが、モル比を50よりも過剰とした場合はニッケルの処理効果が低下する。
ジチオカルバミン酸の塩100重量部に対する、重量平均分子量300以上のポリアミンとハロゲン化カルボン酸の混合物の添加量は、5〜50重量部が好ましく、更に好ましくは10〜20重量部である。5重量部以上添加することにより、十分なニッケルの処理能力が得られるが、50重量部よりも過剰に添加した場合はニッケルの処理効果が低下する。
本発明の浄化剤は、ニッケル含有水溶液の浄化処理に特に有用である。
本発明のニッケル含有水溶液の浄化方法は、ニッケル含有水溶液に、上記した本発明の浄化剤を添加した後、生成した固形物を除去することを特徴とする。ここで、生成した固形物には、本発明の浄化剤により固定化されたニッケルが含まれる。
本発明の浄化方法は、ニッケルの処理が難しいニッケル含有水溶液(例えば、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物)、及びニッケルを含有する水溶液に対して特に有効である。
ニッケルと錯生成能力を持つ化合物としては、ニッケルと錯体を形成する化合物であれば特に限定されない。例えば、分子内にカルボキシル基及びアミノ基からなる群より選ばれる官能基を有する化合物が挙げられる。具体的には、EDTA、ポリ燐酸等が挙げられ、特にニッケルと強固な錯体を形成する化合物として、EDTAが挙げられる。
固形物の除去を速やかに行うために、固形物を除去する前に、凝集剤を添加することが好ましい。凝集剤としては、例えば、無機凝集剤、高分子凝集剤が挙げられ、無機凝集剤と高分子凝集剤を併用することがより好ましい。
無機凝集剤としては、市販されている無機凝集剤を使用でき、特に限定されない。例えば、塩化第二鉄等の鉄化合物、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物、等が挙げられる。
ニッケル含有水溶液がニッケルと錯生成能力を持つ化合物を含む場合、無機凝集剤の添加量は、ニッケル含有水溶液中に含まれるニッケル錯生成能力を持つ化合物の含有量以上とすることが好ましい。無機凝集剤の添加量をニッケルと錯生成能力を持つ化合物の含有量以上とすることで、凝集性が増し、処理後の水溶液のニッケル濃度を排水基準以下に低減することが容易になる。
ニッケル含有水溶液中の、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物の含有量は、ニッケル含有水溶液中のニッケル錯生成能力を持つ化合物の濃度を、例えば、HPLC、ガスクロマトグラフィー、滴定等の分析を行うことで算出することができる。
高分子凝集剤は、市販されている高分子凝集剤を使用でき、特に限定されない。例えば、アクリル酸ポリマー、アクリルアミドポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレートポリマー等が挙げられる。凝集性能の点で、弱アニオン性のアクリル酸ポリマーが好ましい。固形物を除去する前に高分子凝集剤を添加することで、除去する固形物のハンドリングが容易となる場合がある。
無機凝集剤と高分子凝集剤を併用する場合、これらの凝集剤を添加する順番は特に限定されないが、無機凝集剤を添加し、次に高分子凝集剤を添加することが好ましい。
固形物を除去する方法としては特に限定されず、例えば、ろ過、遠心分離、及び固形物を沈降させた後、上澄み液と分離する方法等が挙げられる。
以下に、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定して解釈されるものではない。
(分析方法)
水溶液中のニッケルイオン濃度は、ICP発光分光分析装置(OPTIMA3300DV、Perkin Elmaer社製)で測定した。
調製例1
実施例、比較例で使用したジチオカルバミン酸の塩は、以下の方法に従って調製した。
(ジチオカルバミン酸の塩Aの調製)
ピペラジン(東ソー社製)112gと純水386gを混合した後、25℃で、窒素気流中で攪拌しながら48重量%水酸化カリウム306g(キシダ化学社製)と二硫化炭素196g(キシダ化学社製)をそれぞれ4分割して交互に滴下した。1時間攪拌し、化学式(5)に示す化合物40重量%を含む水溶液を得た。
Figure 2018043234
(ジチオカルバミン酸の塩Bの調製)
テトラエチレンペンタミン(東ソー社製)159gと純水331gを混合した後、25℃で、窒素気流中で攪拌しながら48重量%水酸化ナトリウム281g(キシダ化学社製)と二硫化炭素230g(キシダ化学社製)をそれぞれ4分割して交互に滴下した。1時間攪拌し、化学式(6)に示す化合物40重量%を含む水溶液を得た。
Figure 2018043234
(ポリアミン)
ポリアミンとして、以下の日本触媒製ポリエチレンイミン類(重量平均分子量1800〜7万)、BASF製ポリエチレンイミン類(重量平均分子量75万〜200万)、及び東ソー社製エチレンアミン類を使用した。
ポリエチレンイミンの重量平均分子量1800品(以下、PEI(1800)と略す)。
ポリエチレンイミンの重量平均分子量1万品(以下、PEI(1万)と略す)。
ポリエチレンイミンの重量平均分子量7万品(以下、PEI(7万)と略す)。
ポリエチレンイミンの重量平均分子量75万品(以下、PEI(75万)と略す)。
ポリエチレンイミンの重量平均分子量200万品(以下、PEI(200万)と略す)。
(ハロゲン化カルボン酸)
ハロゲン化カルボン酸として、関東化学社製のブロモ酢酸を使用した。
調製例2
実施例、比較例で使用したポリアミンとハロゲン化カルボン酸の混合物は、以下の方法に従って調製した。
(ポリアミンとハロゲン化カルボン酸の混合物の合成)
PEI(1万)13.1g、純水120gを混合した溶液に、ブロモ酢酸3.9g、1mol/L水酸化ナトリウム(キシダ化学社製)33mLを加え、60℃で、窒素気流下で撹拌した。6時間撹拌することで、PEI(1万)とブロモ酢酸の混合物(以下、PEI誘導体(1万))10重量%を含む水溶液を得た。
同様にして、ブロモ酢酸の添加量を増減、又は使用するポリアミンの分子量を変えることによって、任意のモル比の及び種々の分子量のポリアミンとハロゲン化カロボン酸の混合物(以下、PEI誘導体(ポリアミンの分子量)と略す)を合成した。
(無機凝集剤)
無機凝集剤として、38重量%塩化第二鉄水溶液(キシダ化学社製)、27重量%硫酸アルミニウム水溶液(キシダ化学社製)、及び30重量%ポリ塩化アルミニウム水溶液(キシダ化学社製)を使用した。
(高分子凝集剤)
高分子凝集剤として、オルガノ社製OA−23(弱アニオンポリマー)を使用した。
実施例1
500mLビーカーに、ジャーテスター(Jar Tester)を設置し、ニッケルイオン10mg/LとEDTA25mg/Lを含む水溶液を500mL添加した。次いで、150rpmで攪拌しながら、ジチオカルバミン酸の塩Aを290mg/L、調製例2で調製した10重量%PEI誘導体(1万)を170mg/L加え、150rpmで10分間攪拌した。次いで、38重量%塩化第二鉄水溶液を800mg/L加え、150rpmで5分間攪拌した。水溶液のpHは、微量の塩酸及び水酸化ナトリウムを用いて、常にpH7となるよう調整した。攪拌終了後、10分間静置し、アドバンテック社製5Aのろ紙で水溶液をろ別し、処理後の水溶液のニッケル濃度を測定した。結果を表1に示す。
実施例2〜6
添加する薬剤を表1に示す薬剤に変更する以外、実施例1と同様にして、処理後の水溶液のニッケル濃度を測定した。これらの結果を表1に併せて示す。
Figure 2018043234
実施例1〜6に示す通り、EDTA含有排水の処理後水溶液のニッケル濃度は3.4mg/L以下であり、ニッケルを低減することができた。
実施例6は、ジチオカルバミン酸の塩Aの代わりにジチオカルバミン酸の塩Bを使用した例である。処理後水溶液のニッケル濃度は3.4mg/Lであり、ニッケルを低減することができた。
比較例1〜3
添加する薬剤を表2に示す薬剤に変更する以外、実施例1と同様にして、処理後の水溶液のニッケル濃度を測定した。これらの結果を表2に示す。
Figure 2018043234
比較例1は、鉄イオンを添加して中和し、ニッケルイオンを鉄イオンと共に水酸化物として沈殿させる処理方法の例である。処理後の水溶液のニッケル濃度は7mg/L以上であり、ニッケルを十分低減することができなかった。
比較例2は、ポリアミンとブロモ酢酸の混合物を添加せずにジチオカルバミン酸の塩Aのみ添加した例である。処理後の水溶液のニッケル濃度は5.2mg/Lであり、ニッケルを十分低減することができなかった。
比較例3は、ジチオカルバミン酸の塩Aを添加せずに、ポリアミンとブロモ酢酸の混合物のみを添加し、次に無機凝集剤を添加してpH7で処理した例である。処理後の水溶液のニッケル濃度は6mg/L以上であり、ニッケルを十分低減することができなかった。
実施例7〜10、比較例4〜5
添加する薬剤を表3に示す薬剤に変更する以外、実施例1と同様にして、処理後の水溶液のニッケル濃度を測定した。これらの結果を表3に示す。
Figure 2018043234
実施例7〜10は、ハロゲン化カロボン酸/ポリアミンのモル比を固定して、ジチオカルバミン酸の塩100重量部に対するポリアミンとブロモ酢酸の混合物の重量部を本発明の範囲内で変化させて処理した例である。ニッケルの濃度は、3.2mg/L以下であり、ニッケルを低減することができた。また、ジチオカルバミン酸の塩100重量部に対するポリアミンとブロモ酢酸の混合物には最適な範囲があり、ポリアミンとブロモ酢酸の混合物の重量部を増加させれば、処理後の水溶液のニッケル濃度もそれに応じて低減するわけではないことが分かる。
比較例4は、ジチオカルバミン酸の塩Aと、本発明の範囲を下回る量のポリアミンとブロモ酢酸の混合物を添加した例である。比較例2に比べてニッケルのイオンの低減効果は見られなかった。
比較例5は、ジチオカルバミン酸の塩Aと、本発明の範囲を超える量のポリアミンとブロモ酢酸の混合物を添加した例である。処理後のニッケルイオンの濃度は5.5mg/Lであり、比較例2に比べてニッケルの処理性能が悪化した。
比較例4、比較例5より、ジチオカルバミン酸の塩と併用するポリアミンとブロモ酢酸の混合物の量には、ニッケルを処理できる好適な範囲が存在することが分かる。
実施例11〜14、比較例6〜7
添加する薬剤を表4に示す薬剤に変更する以外、実施例1と同様にして、処理後の水溶液のニッケル濃度を測定した。これらの結果を表4に示す。
Figure 2018043234
実施例11〜14は、ジチオカルバミン酸の塩100重量部に対するポリアミンとブロモ酢酸の混合物の重量部を固定して、ハロゲン化カロボン酸/ポリアミンのモル比を本発明の範囲内で変化させて処理した例である。ニッケルの濃度は、3.3mg/L以下であり、ニッケルを低減することができた。
比較例6は、ジチオカルバミン酸の塩Aと、ハロゲン化カロボン酸/ポリアミンのモル比が本発明の範囲を下回る量の混合物を添加した例である。比較例2に比べてニッケルのイオンの低減効果は見られなかった。
比較例7は、ジチオカルバミン酸の塩Aと、ハロゲン化カロボン酸/ポリアミンのモル比が本発明の範囲を上回る量の混合物を添加した例である。処理後のニッケルイオンの濃度は6mg/L以上であり、比較例2に比べてニッケルの処理性能が悪化した。
比較例6、比較例7より、ハロゲン化カロボン酸/ポリアミンのモル比には、ニッケルを処理できる好適な範囲が存在することが分かる。
実施例15
500mLビーカーに、ジャーテスター(Jar Tester)を設置し、ニッケルイオン10mg/LとEDTA25mg/Lを含む水溶液を500mL添加した。次いで、150rpmで攪拌しながら、ジチオカルバミン酸の塩Aを290mg/L、調製例2で調製した10重量%PEI誘導体(1万)を170mg/L加え、150rpmで10分間攪拌した。次いで、38重量%塩化第二鉄水溶液を800mg/L加え、150rpmで5分間攪拌した。次いで、高分子凝集剤として0.1重量%OA−23水溶液を2000mg/L加え、50rpmで5分間攪拌した。水溶液のpHは、微量の塩酸及び水酸化ナトリウムを用いて、常にpH7となるよう調整した。攪拌終了後、10分間静置し、アドバンテック社製5Aのろ紙で水溶液をろ別し、処理後の水溶液のニッケル濃度を測定した。結果を表5に示す。
実施例16〜17
使用する無機凝集剤を塩化鉄から27重量%硫酸アルミニウム水溶液、又は30重量%ポリ塩化アルミニウム(以下、PACと略す)水溶液に変更する以外、実施例15と同様にして、処理後の水溶液のニッケル濃度を測定した。これらの結果を表5に併せて示す。
Figure 2018043234
実施例15は、実施例1に高分子凝集剤を添加した例である。処理後の水溶液のニッケル濃度は、高分子凝集剤を添加しない場合と同値であり、ニッケルの処理が十分であった。
実施例16〜17は、無機凝集剤に硫酸アルミニウム水溶液、PAC水溶液を用いた例である。無機凝集剤の種類によらず、処理後の水溶液のニッケル濃度は、3.2mg/L以下であり、ニッケルの処理が十分であった。
実施例18
ニッケルと錯生成能力を持つ化合物としてEDTAをクエン酸に変更する以外、実施例1と同様にして、処理後の水溶液のニッケル濃度を測定した。結果を表6に示す。
実施例19
ニッケルと錯生成能力を持つ化合物としてEDTAをピロリン酸に変更する以外、実施例1と同様にして、処理後の水溶液のニッケル濃度を測定した。結果を表6に併せて示す。
Figure 2018043234
実施例18〜19は、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物としてクエン酸、又はピロリン酸を用いた例である。処理後の水溶液のニッケル濃度は0.1mg/L以下であり、ニッケルを十分低減することができた。
本発明のニッケル含有水溶液の浄化方法によれば、ニッケルの処理が難しい、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物、及びニッケルを含有する水溶液であっても、ニッケル濃度を低減できるため、新規なニッケル含有水溶液の浄化方法として、めっき工場、電子部品・機械部品製造工場、自動車工場等からのニッケル含有排水の処理方法として使用される可能性を有している。

Claims (13)

  1. ジチオカルバミン酸の塩100重量部に対し、重量平均分子量300以上のポリアミンとハロゲン化カルボン酸との混合物を5〜50重量部含むニッケル含有水溶液用の浄化剤。
  2. ジチオカルバミン酸の塩が、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれるアミノ基を少なくとも1つ有するアミン化合物と、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物との反応生成物であることを特徴とする請求項1に記載の浄化剤。
  3. ジチオカルバミン酸の塩が、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれるアミノ基を2つ以上有するアミン化合物と、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物との反応生成物であることを特徴とする請求項1に記載の浄化剤。
  4. ジチオカルバミン酸の塩が、ピペラジン又はテトラエチレンペンタミンと、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物との反応生成物であることを特徴とする請求項1に記載の浄化剤。
  5. 重量平均分子量300以上のポリアミンが、重量平均分子量300以上のポリエチレンイミンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の浄化剤。
  6. 重量平均分子量300以上のポリアミンが、重量平均分子量が1800〜200万のポリエチレンイミンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の浄化剤。
  7. ハロゲン化カルボン酸と重量平均分子量300以上のポリアミンとのモル比(ハロゲン化カルボン酸/重量平均分子量300以上のポリアミン)が10〜50であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の浄化剤。
  8. ニッケル含有水溶液に、請求項1〜7のいずれかに記載のニッケル含有水溶液用の浄化剤を添加した後、生成した固形物を除去することを特徴とするニッケル含有水溶液の浄化方法。
  9. ニッケル含有水溶液が、さらにニッケルと錯生成能力を持つ化合物を含むことを特徴とする請求項8に記載の浄化方法。
  10. ニッケルと錯生成能力を持つ化合物が、カルボキシル基及びアミノ基からなる群より選ばれる官能基を分子内に有する化合物であることを特徴とする請求項9に記載の浄化方法。
  11. 生成した固形物を除去する前に、無機凝集剤を添加することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の浄化方法。
  12. 生成した固形物を除去する前に、無機凝集剤及び高分子凝集剤を添加することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の浄化方法。
  13. 無機凝集剤が、鉄化合物及びアルミニウム化合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項11又は12に記載の浄化方法。
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