JP2017104910A - ピニオンカッタ及び歯切り加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】工場の設備投資の増大を抑えかつ歯切り加工の生産性を高めつつ、歯車の製品不良の発生率の低下及び歯車の加工精度の向上を図ること。
【解決手段】ピニオンカッタ56は、円形状又はリング状のカッタ本体60と、カッタ本体60の外周面にその周方向に沿って間隔を置いて設けられかつ軸方向の一端側に切り刃64tを有した複数の切削歯64とを具備している。各切削歯64の切り刃64tの掬い角θaが負の角度、具体的には、−2〜−10度に設定されている。
【選択図】 図5
【解決手段】ピニオンカッタ56は、円形状又はリング状のカッタ本体60と、カッタ本体60の外周面にその周方向に沿って間隔を置いて設けられかつ軸方向の一端側に切り刃64tを有した複数の切削歯64とを具備している。各切削歯64の切り刃64tの掬い角θaが負の角度、具体的には、−2〜−10度に設定されている。
【選択図】 図5
Description
本発明は、ピニオンカッタ、及び歯車素材に対して歯切り加工を行う歯切り加工方法に関する。
歯車素材に対して歯切り加工を行うために用いられる歯切り工具としてピニオンカッタが広く知られており、一般的なピニオンカッタの構成は、次の通りである。
一般的なピニオンカッタは、歯切り盤における主軸の先端部に着脱可能であって、円形状又はリング状のカッタ本体を具備している。また、カッタ本体は、その外周面(カッタ本体の外周面)に、複数の切削歯を備えており、複数の切削歯は、周方向(カッタ本体の外周面の周方向)に沿って等間隔に並んでいる。各カッタは、軸方向の一端側(先端側)に、切り刃を有しており、各切削歯の切り刃の掬い角は、通常、水平面に対し下向きを正とし、3〜10度に設定されている。
主軸の先端部に取り付けられた一般的なピニオンカッタを用いて、歯切り盤におけるターンテーブルに同心状に保持された歯車素材に対して歯切り加工を行う場合には、次のように行う。
主軸をその軸心(主軸の軸心)周りに回転させかつターンテーブルをその軸心(ターンテーブルの軸心)周りに回転させることにより、ピニオンカッタと歯車素材を同期回転させる。そして、ピニオンカッタに切り込みを与えて、ピニオンカッタを軸方向へ主軸と一体的に往復動させて、そのピニオンカッタの往復動を繰り返す。これにより、歯車素材に対して歯切り加工を行い、歯車素材の外周面又は内周面に外歯又は内歯を創成することができる。換言すれば、歯車素材から外歯又は内歯を有した歯車を製造することができる。
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1から特許文献5に示すものがある。
ところで、前述のように、従来のピニオンカッタでは、各切削歯の切り刃の掬い角が正の小さい角度(3〜10度)に設定されており、歯切り加工中に生成される切屑に対して、切削歯の切り刃による剥ぎ取り力が働く傾向にある(図1(b)参照)。そして、切削歯の切り刃による剥ぎ取り力が大きくなると、歯車素材(歯車)の切削面(加工面)にムシレ(穴状に剥がれた跡)が発生して、歯車の製品不良の発生率の増加又は歯車の加工精度(製品精度)の低下を招くことになる。
一方、歯車素材の切削面のムシレの発生を防止する手法として、ピニオンカッタの切削速度(軸方向の往動速度)を上げること又はピニオンカッタに対する切り込み量を小さくことが知られている。しかしながら、ピニオンカッタの切削速度を上げるには、高性能の歯切り盤が必要になり、工場の設備投資が増大することになる。また、ピニオンカッタに対する切り込み量を小さくすると、歯切り加工の時間が長くなって、歯切り加工の生産性が低下することになる。
つまり、工場の設備投資の増大を抑えかつ歯切り加工の生産性を高めつつ、歯車の製品不良の発生率の低下及び歯車の歯面の加工精度の向上を図ることは困難であるという問題がある。
本願の発明者は、前述の問題を解決するために、試行錯誤的に試作及び試験を繰り返した結果、ピニオンカッタにおける各切削歯の切り刃の掬い角を図1(a)のように負の角度に設定することにより、歯車素材の切削面のムシレの発生を防止できるという新規な第1の知見を得て、本発明を完成するに至った(後述の実施例参照)。第1の知見は、図1(a)(b)に示すように、歯切り加工中に生成される切屑Wcに対して、切削歯Gの切り刃Gtにより剥ぎ取り力F(図1(b)参照)ではなく、歯車素材W側への押し付け力P(図1(a)参照)が働いたことによるものと考えられる。なお、図1(a)は、発明例として、切削歯Gの切り刃Gtの掬い角θaを負の角度に設定した場合における歯車素材Wの切削状況を模式的に示している。図1(b)は、比較例として、切削歯Gの切り刃Gtの掬い角θaを負の角度に設定した場合における歯車素材Wの切削状況を模式的に示している。なお、図面中、「U」は、上方向(鉛直方向上側)、「D」は、下方向(鉛直方向下側)、「A」は、ピニオンカッタの軸方向をそれぞれ指している。
また、本願の発明者は、前述の第1の知見の他に、ピニオンカッタにおける各切削歯の切り刃の掬い角を負の角度に設定することにより、歯車素材に生じるバリを小さくすることができるという新規な第2の知見を得ることができた。第2の知見は、図2(a)(b)に示すように、切削歯Gの切り刃Gtの先端側が切り終わり側になって、歯車素材Wの最終の切削壁Weの高さhが小さくなったことによるものと考えられる。なお、図2(a)は、発明例として、切削歯Gの切り刃Gtの掬い角θa(図1(a)参照)を負の角度に設定した場合における歯車素材Wの最終の切削壁Weを切削する直前の切削状況を模式的に示している。図2(b)は、比較例として、切削歯Gの切り刃Gtの掬い角θa(図1(b)参照)を負の角度に設定した場合における歯車素材Wの最終の切削壁Weを切削する直前の切削状況を模式的に示している。
本発明の第1の態様は、歯車素材に対して歯切り加工を行うために用いられるピニオンカッタであって、円形状又はリング状のカッタ本体と、前記カッタ本体の外周面にその周方向に沿って間隔を置いて設けられ、軸方向の一端側(先端側)に切り刃を有した複数(多数)の切削歯と、を具備し、各切削歯の前記切り刃の掬い角が負の角度に設定されていることである。
本発明の第1の態様によると、前記ピニオンカッタと歯車素材を同期回転させる。そして、前記ピニオンカッタに切り込みを与えて、前記ピニオンカッタを歯車素材に対して相対的に軸方向へ往復動(往動と復動)させて、その前記ピニオンカッタの相対的な往復動を繰り返す。これにより、歯車素材に対して歯切り加工を行い、歯車素材の外周面又は内周面に外歯又は内歯を創成することができる。換言すれば、歯車素材から外歯又は内歯を有した歯車を製造することができる。
ここで、前述のように、各切削歯の前記切り刃の掬い角が負の角度に設定されている。これにより、前述の第1の知見に基づいて、歯車素材の切削面のムシレの発生を防止することができる。換言すれば、前記ピニオンカッタの切削速度(前記軸方向の相対往動速度)を上げることなく又前記ピニオンカッタの切り込み量を小さくすることなく、歯車素材の切削面のムシレの発生を防止することができる。また、前述の第2の知見に基づいて、歯車素材に生じるバリを小さくすることができる。
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様からなるピニオンカッタを用い、前記ピニオンカッタと歯車素材を同期回転させながら、前記ピニオンカッタに切り込みを与えて、歯車素材に対する前記ピニオンカッタの相対的な軸方向の往復動(往動と復動)を繰り返すことにより、歯車素材に対して歯切り加工を行うことである。
本発明の第2の態様によると、本発明の第1の態様と同様の作用を奏する。
本発明によれば、前述のように、前記ピニオンカッタの切削速度を上げることなく又前記ピニオンカッタの切り込み量を小さくすることとなく、歯車素材の切削面におけるムシレの発生を防止することができる。そのため、本発明によれば、工場の設備投資の増大を抑えかつ歯切り加工の生産性を高めつつ、前記歯車の製品不良の発生率の低下及び前記歯車の加工精度の向上を図ることができる。
また、本発明によれば、前述のように、歯車素材に生じるバリを小さくすることができる。そのため、歯切り加工後の後処理であるバリの除去処理の負担を大幅に減らすことができる。
本発明の実施形態に係る歯切り加工方法の実施に使用される一般的な歯切り盤の構成、本発明の実施形態に係るピニオンカッタの構成、及び本発明の実施形態に係る歯切り加工方法等について図面を参照して順次説明する。図面中、「L」は、左方向、「R」は、右方向、「U」は、上方向(鉛直方向上側)、「D」は、下方向(鉛直方向下側)、「A」は、ピニオンカッタ又は主軸の軸方向をそれぞれ指している。
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「歯車素材」とは、歯切り加工によって歯車になる素材のことをいい、「歯車」とは、外歯を有した外歯歯車、内歯を有した内歯歯車、外歯を有した外歯スプライン、及び内歯を有した内歯スプラインを含む意である。「軸方向」とは、ピニオンカッタ又はカッタ本体の軸方向のことをいい、「径方向」とは、ピニオンカッタ又はカッタ本体の径方向のことをいう。「周方向」とは、ピニオンカッタ又はカッタ本体の周方向のことをいう。「設けられる」とは、直接的に設けられることの他に、別部材を介して間接的に設けられることを含む意であって、「備えられる」と同義である。「備える」とは、直接的に備えることの他に、別部材を介して間接的に備えることを含む意であって、「設ける」と同義である。
図3に示すように、歯切り盤10は、例えば機械構造用炭素鋼からなる円形状又はリング状の歯車素材W(円形状の歯車素材Wのみ図示)に対して歯切り加工を行う加工機である。換言すれば、歯切り盤10は、歯車素材Wの外周面又は内周面に外歯又は内歯を創成する加工機である。また、歯切り盤10は、左右方向(水平方向の1つ)へ延びたベッド12と、このベッド12に立設されたコラム14を具備している。
ベッド12は、その上面(ベッド12の上面)に、左右方向(水平方向の1つ)へ移動可能なスライド16を備えている。また、ベッド12は、その適宜位置(ベッド12の適宜位置)に、このスライド16を左右方向へ移動させるためのスライド移動用アクチュエータとしてのモータ18を備えている。
スライド16は、その上側(スライド16の上側)に、ターンテーブル20を備えており、このターンテーブル20は、その軸心(ターンテーブル20の軸心)周りに回転可能になっている。また、ターンテーブル20は、その中央部(ターンテーブル20の中央部)に、歯車素材Wを同心状に保持するチャック(保持部)22を有している。そして、スライド16は、その適宜位置(スライド16の適宜位置)に、ターンテーブル20を回転させるためのテーブル回転用アクチュエータとしてモータ24を備えている。
コラム14は、その右側(コラム14の右側)に、可動フレーム(ハウジング)26を備えており、この可動フレーム26は、上下方向へ位置調節可能になっている。また、コラム14は、その適宜位置(コラム14の適宜位置)に、可動フレーム26を上下方向へ位置調節するための可動フレーム位置調節用アクチュエータとしてのモータ28を備えている。
可動フレーム26は、その適宜位置(可動フレーム26の適宜位置)に、中空状(筒状)の加工ヘッド30を揺動軸(取付軸)32を介して備えており、この加工ヘッド30は、揺動軸32(揺動軸32の軸心)の周りに左右方向(水平方向)へ揺動可能になっている。また、加工ヘッド30は、その内部(加工ヘッド30の内部)に、支持筒34を軸受36を介して備えており、この支持筒34は、その軸心(支持筒34の軸心)周りに回転可能になっている。更に、支持筒34は、その内側(支持筒34の内側)に、上下方向へ延びた主軸38を同心状に備えている。主軸38は、支持筒34に対して軸方向(主軸38の軸方向)へ移動可能になっている。主軸38は、キー(図示省略)等を介して支持筒34と一体的に回転するようになっている。
支持筒34は、その外周部(支持筒34の外周部)に、ウォームホイール40を一体的に備えており、加工ヘッド30は、その内部に、ウォームホイール40に噛合したウォーム42を備えている。そして、加工ヘッド30は、その適宜位置(加工ヘッド30の適宜位置)に、主軸38を支持筒34と一体的に回転させるための主軸回転用アクチュエータとしてのモータ44を備えている。モータ44の出力軸(図示省略)は、ウォーム42に連動連結している。
可動フレーム26は、加工ヘッド30の上方に、水平方向へ延びたクランク軸46を備えている。クランク軸46は、その軸心(クランク軸46の軸心)周りに回転可能であって、その軸心に対して偏心した偏心部(クランクピン)48を有している。また、クランク軸46の偏心部48は、連結ロッド50の上端部に揺動自在(回転自在)に連結されており、連結ロッド50の下端部は、主軸38の上端部に球面軸受52を介して揺動自在に連結されている。そして、可動フレーム26は、その適宜位置に、クランク軸46を回転させるためのクランク軸回転用アクチュエータとしてのモータ54を備えている。換言すれば、可動フレーム26は、その適宜位置に、主軸38をクランク軸46等を介して軸方向へ往復動させるための主軸往復動用アクチュエータとしてのモータ54を備えている。モータ54の出力軸(図示省略)は、クランク軸46に連結ベルト(図示省略)等を介して連動連結している。更に、可動フレーム26は、加工ヘッド30の左側に、クランク軸46の回転に連動して加工ヘッド30を左右方向へ間欠的に揺動させるためのカム機構(図示省略)を備えている。
主軸38は、その下端部(主軸38の下端部)に、歯切り工具としてのピニオンカッタ56を取付具(取付ボルト)58を介して着脱可能に備えており、このピニオンカッタ56は、主軸38と同心状に位置している。また、ピニオンカッタ56は、加工ヘッド30の左右方向の間欠的な揺動によって、軸方向の往動時に加工姿勢になりかつ軸方向の復動時に干渉回避姿勢になるように構成されている。加工姿勢とは、図4(a)に示すように、歯車素材Wに対して歯切り加工を行うための姿勢のことをいう。干渉回避姿勢とは、図4(b)に示すように、歯車素材Wとの干渉を回避するための姿勢のことをいう。
続いて、本発明の実施形態に係るピニオンカッタ56の構成の詳細について説明する。
図5(a)(b)に示すように、本発明の実施形態に係るピニオンカッタ56は、例えば機械構造用炭素鋼からなる歯車素材に対して歯切り加工を行うために用いられる歯切り工具の1つである。また、ピニオンカッタ56は、ハイス鋼(高速度工具鋼)又は超硬からなっており、前述のように、主軸38の下端部(軸方向の先端部)に取付具58を介して着脱可能になっている。
ピニオンカッタ56は、円形状のカッタ本体60を具備しており、このカッタ本体60は、その中央部(カッタ本体60の中央部)に取付具58の一部を挿通させるための挿通穴62を有している。なお、カッタ本体60の形状を円形状でなく、リング状にしてもよい。
カッタ本体60は、その外周面(カッタ本体60の外周面)に、例えばインボリュート歯形の複数の切削歯64を備えており、複数の切削歯64は、周方向(カッタ本体の外周面の周方向)等間隔に並んでいる。また、各切削歯64は、軸方向の一端側(先端側)に、切り刃64tを有している。
各切削歯64の切り刃64tの掬い角θaは、負の角度に設定されている。具体的には、各切削歯64の切り刃64tの掬い角θaは、−2〜−10度、好ましくは、−3〜−5度に設定されている。各切削歯64の切り刃64tの掬い角θaを−2度の絶対値以上にしたのは、−2度の絶対値未満であると、歯切り加工中に生成される切屑に対して、切削歯64の切り刃64tによる歯車素材W側への押し付け力P(図1(a)参照)が十分に働かないためである。各切削歯64の切り刃64tの掬い角θaを−10度の絶対値以下にしたのは、−10度の絶対値を超えると、切削歯64の切り刃64tの切削抵抗が過大になって、ピニオンカッタ56のぶれ(振れ)を抑えることが困難になるからである。
切削歯64の切り刃64tの逃げ角θbは、3.5〜6.5度、好ましくは、4〜5度に設定されている。各切削歯64の切り刃64tの逃げ角θbを3.5度以上にしたのは、3.5度未満であると、切削歯64の逃げ面64fが歯車素材Wの切削面に干渉(接触)し易くなるからである。各切削歯64の切り刃64tの逃げ角θbを6.5度以下にしたのは、6.5度を超えると、切削歯64の切り刃64tの先端に過負荷による初期磨耗が生じ易くなるからである。
各切削歯64が切り刃64tを有する代わりに、図6(a)(b)に示すように、切り刃66tを含みかつ超硬からなる硬質チップ66を有してもよい。この場合には、ピニオンカッタ56における硬質チップ66以外の部分は、ハイス鋼からなっている。前述と同様の理由から、各硬質チップ66の切り刃66tの掬い角θaは、−2〜−10度、好ましくは、−3〜−5度に設定されている。各硬質チップ66の切り刃66tの逃げ角θbは、3.5〜6.5度、好ましくは、4〜5度に設定されている。なお、各硬質チップ66の逃げ面66fが各切削歯64の逃げ面になっている。
続いて、本発明の実施形態に係る歯切り加工方法について、本発明の実施形態の作用を含めて説明する。
チャック22によって円形状の歯車素材Wをターンテーブル20に同心状に保持する。そして、モータ24の駆動によりスライド16を左右方向へ移動させることにより、歯車素材Wをスライド16及びターンテーブル20と一体的に左右方向へ移動させて、ピニオンカッタ56に接近させる。また、モータ28の駆動により可動フレーム26を上下方向へ位置調節することにより、ピニオンカッタ56を歯車素材Wよりも僅かに高い高さ位置に位置させる。これにより、ピニオンカッタ56を所定の加工開始位置に歯車素材Wに対して相対的に位置決めすることができる。なお、所定の加工開始位置とは、歯車素材Wに対する歯切り加工を開始するための所定の位置のことをいう。
ピニオンカッタ56を所定の加工開始位置に位置決めした後に、モータ44の駆動により主軸38を回転させかつモータ24の駆動によりターンテーブル20を回転させることにより、ピニオンカッタ56と歯車素材Wを同期回転させる。次に、モータ24の駆動を制御してスライド16を左方向の移動量(移動速度)を調節することにより、ピニオンカッタ56を歯車素材Wに対して相対的に右方向へ僅かに移動させて、ピニオンカッタ56に径方向の切り込みを与える。併せて、モータ44の駆動を制御して主軸38の回転速度(周速)を調節することにより、ピニオンカッタ56に周方向の切り込みを与える。そして、モータ54の駆動によりクランク軸46等を介して主軸38を軸方向へ往復動させる。すると、カム機構の作用も相まって、ピニオンカッタ56を加工姿勢で軸方向へ往動させて、干渉回避姿勢で軸方向に復動させる。更に、モータ54の駆動によりそのピニオンカッタ56の往復動を繰り返す。これにより、円形状の歯車素材Wに対して歯切り加工を行い、歯車素材Wの外周面に外歯を創成することができる。換言すれば、歯車素材Wから外歯を有した歯車を製造することができる。
なお、リング状の歯車素材Wに対して歯切り加工を行い、歯車素材Wの内周面に内歯を創成する場合も、前述と同様に行うことができる。また、ヘリカル歯車を製造する場合には、歯車素材Wに対する同期回転と歯車素材Wのねじれ角に応じた回転とを合成した回転で、ピニオンカッタ56を回転させる。
ここで、前述のように、各切削歯64の切り刃64t(72)の掬い角θaが負の角度に設定されている。これにより、前述の第1の知見に基づいて、歯車素材Wの切削面のムシレの発生を防止することができる。換言すれば、ピニオンカッタ56の切削速度(換言すれば、ピニオンカッタ56の軸方向の移動速度)を上げることなく又はピニオンカッタ56の切り込み量(径方向又は周方向の切り込み量)を小さくすることなく、歯車素材Wの切削面のムシレの発生を防止することができる。
特に、各切削歯64の切り刃64t(66t)の掬い角θaが−2〜−10度に設定されている。これにより、切削歯64の切り刃64t(66t)の切削抵抗が過大になることを抑えつつ、歯切り加工中に生成される切屑に対して、切削歯64の切り刃64tによる歯車素材W側への押し付け力Pが十分に働いて、歯車素材Wの切削面のムシレの発生を確実に防止することができる。
また、各切削歯64の切り刃64t(72)の掬い角θaが負の角度に設定されているため、前述の第2の知見に基づいて、歯車素材Wに生じるバリを小さくすることができる。
以上の如き、本発明の実施形態によれば、前述のように、ピニオンカッタ56の切削速度を上げることなく又はピニオンカッタ56の切り込み量を小さくすることなく、歯車素材Wの切削面のムシレの発生を確実に防止することができる。そのため、本発明の実施形態によれば、工場の設備投資の増大を抑えかつ歯切り加工の生産性を高めつつ、歯車の製品不良の発生率の低下及び歯車の加工精度の向上を図ることができる。
また、本発明の実施形態によれば、歯車素材Wに生じるバリを小さくすることができる。そのため、歯切り加工後の後処理であるバリの除去処理の負担を大幅に減らすことができる。
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、適宜の変更を行うことにより、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態に限定されないものである。
(本発明の実施例)
切削歯64の切り刃64tの掬い角θaを負の角度(−3度)に設定したピニオンカッタ56を発明品として試作した。切削歯64の切り刃64tの掬い角θaを正の角度(+3度)に設定した点のみがピニオンカッタ56と異なるピニオンカッタを比較品として用いた。そして、発明比及び比較品について、通常の切削条件より厳しい切削条件(ムシレの発生し易い切削条件)で歯切り加工試験を行った。その結果、比較品による歯切り加工の場合には、歯車素材の切削面にムシレが確認されたのに対して、発明品による歯切り加工の場合には、歯車素材の切削面にムシレが確認されなかった。また、比較品による歯切り加工の場合に比べて、発明品による歯切り加工の場合の方が歯車素材に生じるバリを大幅に小さくできることが確認された。
切削歯64の切り刃64tの掬い角θaを負の角度(−3度)に設定したピニオンカッタ56を発明品として試作した。切削歯64の切り刃64tの掬い角θaを正の角度(+3度)に設定した点のみがピニオンカッタ56と異なるピニオンカッタを比較品として用いた。そして、発明比及び比較品について、通常の切削条件より厳しい切削条件(ムシレの発生し易い切削条件)で歯切り加工試験を行った。その結果、比較品による歯切り加工の場合には、歯車素材の切削面にムシレが確認されたのに対して、発明品による歯切り加工の場合には、歯車素材の切削面にムシレが確認されなかった。また、比較品による歯切り加工の場合に比べて、発明品による歯切り加工の場合の方が歯車素材に生じるバリを大幅に小さくできることが確認された。
W 歯車素材
Wc 切屑
We 最終の切削壁
θa 掬い角
θb 逃げ角
G 切削歯
Gt 切り刃
F 剥ぎ取り力
P 歯車素材側への押し付け力
10 歯切り盤
12 ベッド
14 コラム
16 スライド
18 モータ
20 ターンテーブル
22 チャック
26 可動フレーム
30 加工ヘッド
32 揺動軸
34 支持筒
38 主軸
40 ウォームホイール
42 ウォーム
46 クランク軸
48 偏心部
50 連結ロッド
52 球面軸受
54 モータ
56 ピニオンカッタ
60 カッタ本体
62 挿通穴
64 切削歯
64t 切り刃
66 硬質チップ
66t 切り刃
Wc 切屑
We 最終の切削壁
θa 掬い角
θb 逃げ角
G 切削歯
Gt 切り刃
F 剥ぎ取り力
P 歯車素材側への押し付け力
10 歯切り盤
12 ベッド
14 コラム
16 スライド
18 モータ
20 ターンテーブル
22 チャック
26 可動フレーム
30 加工ヘッド
32 揺動軸
34 支持筒
38 主軸
40 ウォームホイール
42 ウォーム
46 クランク軸
48 偏心部
50 連結ロッド
52 球面軸受
54 モータ
56 ピニオンカッタ
60 カッタ本体
62 挿通穴
64 切削歯
64t 切り刃
66 硬質チップ
66t 切り刃
Claims (3)
- 歯車素材に対して歯切り加工を行うために用いられるピニオンカッタであって、
円形状又はリング状のカッタ本体と、
前記カッタ本体の外周面にその周方向に沿って間隔を置いて設けられ、軸方向の一端側に切り刃を有した複数の切削歯と、を具備し、
各切削歯の前記切り刃の掬い角が負の角度に設定されているピニオンカッタ。 - 各切削歯の前記切り刃の掬い角が−2〜−10度に設定されている請求項1に記載のピニオンカッタ。
- 請求項1又は請求項2に記載のピニオンカッタを用い、
前記ピニオンカッタと歯車素材を同期回転させながら、前記ピニオンカッタに切り込みを与えて、歯車素材に対する前記ピニオンカッタの相対的な軸方向の往復動を繰り返すことにより、歯車素材に対して歯切り加工を行う歯切り加工方法。
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---|---|---|---|
JP2015238180A JP2017104910A (ja) | 2015-12-07 | 2015-12-07 | ピニオンカッタ及び歯切り加工方法 |
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2015238180A Pending JP2017104910A (ja) | 2015-12-07 | 2015-12-07 | ピニオンカッタ及び歯切り加工方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2020075296A (ja) * | 2018-11-05 | 2020-05-21 | 株式会社ジェイテクト | 歯車加工装置及び歯車加工方法 |
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2015
- 2015-12-07 JP JP2015238180A patent/JP2017104910A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2020075296A (ja) * | 2018-11-05 | 2020-05-21 | 株式会社ジェイテクト | 歯車加工装置及び歯車加工方法 |
JP7268329B2 (ja) | 2018-11-05 | 2023-05-08 | 株式会社ジェイテクト | 歯車加工装置及び歯車加工方法 |
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