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JP2017167878A - 行動分析システムおよびプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】教師信号なしに行動をモデル化する従来技術においては、センサや行動のマルコフ性を考慮に入れた予測精度の高い行動のモデルを構築することができていない。
【解決手段】本発明は、トピックモデリングを参照モデルとして、センサと行動にマルコフ性を仮定した混合ディリクレ分布で行動をモデル化し、ギブスサンプリングを用いたマルコフ連鎖モンテカルロ法により、効率の良いモデルの学習と予測精度の高い行動の推定を行う行動認識技術を提案する。
【選択図】図1

Description

本発明は、センサネットワーク環境下で人間の行動を認識し、異常行動の検知や行動の識別などの行動分析を行う技術に関する。
従来、住居やオフィスに多様かつ多数のセンサを設置し、ネットワーク経由でそれら情報を収集・分析することで人間の行動を認識する技術(以下、「行動認識技術」と呼ぶ)が用いられてきた。
例えば、特許文献1においては、独居高齢者宅に人体の動きを検知するモーションセンサーを多数設置し、センサ情報の分析に基づいて居住者の行動を認識し、異常な行動が検知された場合には遠隔にいる家族や介助者に通報する技術が開示されている。
このような技術において用いられるセンサは多種多様であり、動画像に基づいて人間の行動を監視する技術、人間に加速度センサを着装し行動を推定する技術、物体にRFIDを接着し物体を持ったことを認識する技術、床圧センサを用いて動線を推定する技術等、多種多様なセンサに基づく行動認識技術が知られている。
しかし、個人の住居において日常生活行動を分析する場合等は特に、利用者のプライバシー漏えいの危険性を考えるとカメラやマイクの設置は難しい。
また、ウェアラブルセンサの着装は利用者にとって煩わしく、日常的に使用してもらえない場合が多い。
さらに、物体一つ一つにセンサ付けたり、床圧センサを後付けで設置したりすることは設置コストが大きい。
このような制約から、行動に関して多くの情報をもたらすセンサが利用できない場合も多く、焦電センサやドアスイッチセンサ等、設置・維持コストが低く利用者負担が小さいものの得られる情報が乏しいセンサしか利用できない場合が多い。
このような情報量が小さいセンサを用いる場合、個人毎に大きく異なる居住環境や行動様式の違いのため、汎用的な行動のモデルを構築することは困難である。
そこで、個人毎に取得したデータから個人に特化した行動のモデルを学習することになるが、行動に該当するデータ区間の切り出しや、その区間がどのような行動に対応するのかを表すラベルの付与等、行動に関する教師信号付きの個人データを、システムの導入前に用意することはコスト的に許容できない場合が多い。
また、生活環境や行動様式は時間とともに変化するので、その都度教師信号付きのデータを用意することはさらに非現実的である。
こうしたシステム導入の負担軽減と再導入の柔軟性の現実的な要請から、個人のデータから教師信号を用いずに行動のモデルを構築する教師なし学習技術が用いることが望ましい。
例えば、特許文献2では、移動速度をモニタリングすることで、移動開始から移動停止までの区間に動線を分割して行動のブロックを自動的に抽出し、得られた行動ブロック毎に、隠れマルコフモデルを用いて観測データの生成モデルをデータから学習させる技術が開示されている。
また、発明者による先行発明(特許文献4)では、センサの発火系列を文字列と見做し、部分文字列の網羅的分析を効率良く行うことができる文字列カーネルを用いる技術が開示されている。
この発明では、センサ発火系列中の部分系列の分析を行うことにより、部分系列の頻度パターンが類似した区間を一つの行動として自動的に分節し、分節された区間から計算される特徴量を用いて異常検知や行動識別を行っている。
ただし、分節そのものは教師なし学習で得られるものの、行動識別を行う際は教師信号を必要とする。
その他、センサデータ系列から教師信号を用いずに行動をモデリングする手法として、非特許文献1のようにLatent Dirichlet Allocation(LDA)(非特許文献2)と呼ばれる、文書のトピックモデリング法を応用した技術が知られている。
トピックモデリングでは、単語が外部からは観測されない文書のトピックに依存して生成されるという確率モデルを仮定し、与えられた文書集合に含まれる単語列だけから、潜在するトピック群を推定した上で、新たな文書に対しても、その単語列からトピックを推定することができる。
単語列をセンサ系列、トピック系列を行動系列に対応させると、トピックモデリング法を用いて行動をモデル化でき、ヒューリスティクスを用いることなく行動モデルの教師なし学習や行動系列の推定を実現できる。
ただし、文書のためのトピックモデルが、行動のモデル化に最適であるかどうかは自明ではない。
特に、LDAをはじめとする文書のトピックモデルにおいては、トピックの多重性、すなわち、一つの文書が複数のトピックを持ち得ることを仮定することが望ましいが、行動モデルの場合には、そのような仮定が適切でない可能性があり、その場合、いたずらに複雑なモデルは学習や推論の精度低下をもたらす危険性がある。
また、行動のモデル化においては、マルコフ性を仮定することが望ましい。すなわち、あるセンサが発火するかどうかは、それ以前、特に直前のセンサの発火に依存するし、ある行動が生じるかどうかは、それ以前、特に直前の行動に依存する。
センサ発火のマルコフ性を導入するためには、非特許文献3で用いられるような単語のマルコフ性を仮定したLDAの拡張モデルを用いることができる。
一方、行動のマルコフ性の導入は、LDAが多重トピックモデルであり、文書中の単語が複数のトピックから生成されることを仮定しているので文書レベルのトピックのマルコフ性の導入は単純ではない。
非特許文献4においては、トピックの上位階層に、文書におけるストーリー展開に対応するより抽象的なトピックの階層を設け、この階層にマルコフ性を導入している。
このようなモデル化をHierarchical Poison-Dirichlet Process(HPDP)を用いて実現しているが、パラメータ数が増大し、学習・推論が複雑化してしまうという問題が生じる。
特開2003−256957号公報 特開2007−249922号公報 特開2011−175349号公報 特開2014−087833号公報
T.Huynh et al.: Discovery of activity patterns using topic models, Proc. of Internat. Conf. on Ubiquitous Computing, pp.10-19 (2008). D.M.Blei et al.: Latent Dirichlet Allocation, Journal of Machine Learning Research,No.3,pp.993-1022(2003). H.M.Wallach: Topic Modeling: Beyond Bag-of-words, Proceedings of the internat. Conf. on Machine Learning, pp.977-984(2006). D.Lan et al.: Sequential Latent Dirichlet Allocation, Knowledge and Information Systems, Vol.31, No.3,pp.475-503(2012). 貞光九月 他:混合ディリクレ分布を用いたトピックに基づく言語モデル,電子情報通信学会論文誌 D-II,J88-D-II(9), pp.1771-1779(2005). 帖佐悦男:ロコモティブシンドローム:運動器疾患を取り囲む新たな概念,Jpn.J.Rehabil.Med.,Vol.50,No.1,pp.48-54(2013). J.Verghese et al.: Abnormality of Gait as a Predictor of Non-Alzheimer’s Dementia, New England Journal of Medicine, Vol.347, No.22,pp.1761-1768(2002).
文書のトピックモデルであるLDAおよびその拡張モデルは、文書の多重トピック性をモデル化しているが、行動をモデル化する場合には、センサ系列が複数の行動から生成されると仮定することは現実的ではなく、モデルと学習・推論アルゴリズムを不必要に複雑化し、ひいては行動の予測の精度を劣化させてしまいかねないという課題がある。
実際、後に述べるように、行動をモデル化する場合には、多重トピックを仮定せず、単一のトピックからセンサ系列が出力されていると仮定する方が、行動の予測精度が良くなることが確認されている。
また、センサや行動のマルコフ性をできるだけモデルを複雑化せずに導入することも課題である。
本発明では、文書中の単語が単一のトピックから、ディリクレ分布を事前分布として生成されると仮定し、そのような生成分布のトピック混合として文書をモデル化する混合ディリクレモデル(非特許文献5)を行動のモデル化法として採用する。
ただし、センサと行動のマルコフ性を導入するために混合ディリクレモデルを拡張し、拡張されたモデルを効率良くかつ精度良く学習・推論するために、ギブスサンプラーを構成し、マルコフ連鎖モンテカルロ法により学習と推論を行う。
本発明の一形態によれば、センサデータに行動ラベルを付与する等の作業が不要となり、センサを設置する以外の作業を必要としないシステム導入の負担が軽減され再導入に柔軟性のある低コストな異常監視が可能となる。
また、センサ系列から直接異常を検出するのではなく、一度行動のレベルに抽象化した上で、推定された行動が日常的に良く観察されるか否かに基づいて異常を検出することができる。
さらに、センサの日常的な誤作動を一つの行動として学習し異常とは見做さないような異常監視が実現できるので、ペットや暖房器具などの熱による誤ったセンサの発火に基づく誤報を減らす効果も有する。
また、別の一形態において、推定された行動列と行動毎に計算される特徴量を分析者に分かり易く提示することにより、居住者の日常行動パターンや問題行動の分析が可能になる。
この際、行動の分節や行動の識別に係る教師信号を与えることなく、センサの発火系列のみから行動列が推定されるので、分析に必要なコストを大幅に低減できる。
さらに、別の一形態において、センサ活動そのものからではなく、行動に基づいて計算される信頼性の高い、活動量、睡眠の質や歩行速度に基づいて、日常的に居住者の健康をモニタリングし、定期的あるいは特定のイベントが発生した時に、健康レポートを自動的に遠隔地の家族や施設スタッフに通知する、低コストで信頼性の高い遠隔健康見守りシステムが実現できる。
異常監視システムの全体図である。 行動モデル学習部をより詳細に説明する図である。 行動モデル推定部をより詳細に説明する図である。 受信部で受信するセンサ生データ(例)を表す図である。 センサ生データから抽出されたフレーム列(例)を表す図である。 行動モデルの構造を表す図である。 カウンタ初期化手段(InitializeCounter)を説明する図である。 フレーム列初期化手段(Initialize)を説明する図である。 カウンタ更新手段(Estimate)を説明する図である。 行動予測精度を比較した実験結果を説明する図である。 行動分析システムの全体図である。 行動分析システムにおける日常行動可視化の例を説明する図である。 健康管理システムの全体図である。
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
(異常監視システム)
(全体構成例)
図1を用いて異常監視システムの全体構成例を説明する。
利用者の居宅に、人体感知センサ(焦電センサ等)や、スイッチセンサ(磁気近接型ドア開閉センサ等)のようなプライバシー侵襲度が低くいセンサを複数設置する。
これらのセンサとしては、電池で1年以上動作し、有線・無線で親機に情報を伝達可能な安価なセンサが利用可能である。
焦電センサについては、理想的には、検知範囲を狭めて天井に設置することで、利用者のおおまかな動線を取得できるように設置することが望ましい。
天井に設置できない場合は、壁面にグリッド状に設置し、センサXとセンサYが同時に発火することを以てXとYの検知範囲の交わる領域で動作が行われたことを検知できる。
これらセンサからの情報を受信部(11)で受信し、センサの発火系列(センサデータ列)が行動モデル学習部あるいは行動モデル推定部に送られる。
学習モードにおいては、センサ発火列は行動モデル学習部(12)に送られ、利用者の行動モデルが学習され、学習されたモデルは行動DB(14)に保存される。
推定モードにおいては、センサ発火系列は行動モデル推定部(13)に送られ、行動DB(14)に保存された行動モデルを参照して、行動の系列が抽出される。
続いて、行動の系列は異常検出部(15)に送られ、行動モデルを参照しながら、抽出された行動毎に、モデルから当該行動が生起し得る確率が計算される。
この確率が一定の閾値よりも低い場合、異常な行動と判断され、異常警報部(16)が警報を発報する。
この警報はインターネット等の居宅外のネットワークを通じて伝搬され、監視センター(17)、あるいは遠隔地で見守る家族やケアワーカーの元へ伝達される。
図2を用いて学習モードで用いられる行動モデル学習部について説明する。
まず、学習に用いるセンサの発火系列からフレームの系列を抽出する(P21)。
図4に示すように、センサの発火系列は、典型的にはセンサの名前(3列目)と、センサの状態(4列目)が変化した日時(1・2列目)が間欠的に記録されたものである。
センサの状態が変化したという情報同様、センサの情報が変化していないという情報も行動を理解するために重要な情報源であるので、データ前処理部は、間欠的な情報を連続する時区間の情報に変換する。
具体的には、ある定められた幅の時間窓(以後フレームと呼ぶ)を動かし、窓内で発火したセンサのIDを発火した時間順に1行に並べる。
図5は、図4の生データに対して、幅30秒の窓を10秒ずつシフトさせて得られるフレームの列を表している。
例えば、ドアセンサD001のIDは63であり、図5において最初の3フレームの間で発火した(ドアが開いた)ことが分かる。
また、1つのフレームに同じIDが複数回現れることは、当該フレームの間に同じセンサが複数回発火したことを示している。
さらに、あるフレームの間にどのセンサも発火しない場合は、図5最後のフレームのように特別なID、0が記録される。
抽出されたフレーム列に基づいて、P22、P23およびP24において、行動モデルが学習される。
本発明では、混合ディリクレ分布を用いた階層的な確率モデルを用いて行動をモデル化するが、行動およびセンサにマルコフ性を仮定する。
図6は、それぞれに1次マルコフ性を仮定した場合のモデルの構造を示している。
ただし、図中、網掛けされた丸は観測できる確率変数を、網掛けされていない丸は潜在する確率変数を表している。
もちろん、マルコフ性は一次に限定する必要はなく、また、場合によれば、どちらかあるいは両方を0次と仮定しても同様な議論を行うことができる。
以降、一次マルコフ性を仮定して説明を行う。
図6では、各フレームの行動を表す確率変数zは、直前の行動tに依存して、θtをパラメータとするカテゴリカル分布から生成される。
また、各フレームのセンサの発火を表す確率変数wは、フレームに割り当てられた行動tと直前のセンサの発火uに依存して、φt,uをパラメータとするカテゴリカル分布から生成される。また、行動、センサ、それぞれのカテゴリカル分布の事前分布として、それぞれαとβをハイパーパラメータとするディリクレ分布を事前分布として仮定している。
このとき、行動系列Zと発火系列Wの同時分布は以下のように書ける。
Figure 2017167878
Figure 2017167878
Figure 2017167878
ここで、Catはカテゴリカル分布を表し、
Figure 2017167878
と書ける。ただし、Tは行動の種類を表し、Σtθq t=1であり、nq,tは、行動qの直後に行動tが現れる頻度を表す。一方、Wについては、
Figure 2017167878
と書ける。ただし、Vはセンサの種類の数を表し、Σwφw t,u=1であり、nt u,wは、行動tにおいてセンサuが発火した直後にセンサwが発火する頻度を表す。
Dirはディリクレ分布を表し、
Figure 2017167878
と書けるが、最初の学習時のように事前情報が全くない場合は、ハイパーパラメータαが一様であると仮定することができる。すなわち、
Figure 2017167878
である場合は、ディリクレ分布は以下のように書ける。
Figure 2017167878
記述の煩雑さを避けるため、以降、ディリクレ分布のハイパーパラメータは一様である場合で説明を行う。
βについても一様性を仮定する場合、すなわち、
Figure 2017167878
の場合、
Figure 2017167878
と書ける。
このようなモデル化を行うと、数式2、数式4、数式8より、
Figure 2017167878
を得る。ここで、nq,・=Σq,tである。
一方で、数式3、数式5、数式10より、
Figure 2017167878
を得る。ここで、nt u,・=Σt u,wである。
行動モデルの学習には、これら頻度nq,tやnt u,wを推定することが必要になる。
以下にその手順を示す。まず、一連のカウンタを初期化する(P22)。
図7では、行動が直前の行動に依存し、ある行動におけるセンサの発火が直前のセンサの発火に依存するというように、行動とセンサが共に一次マルコフ性を有すると仮定する場合に用いるカウンタの初期化法が示されている。
次に、P21において抽出されたフレーム列を入力として、各フレームにランダムに行動を割り当てる初期化を行う(P23)。図8は、やはり一次マルコフ性を仮定する場合の初期化法が示されている。
このとき、各フレームで発火するセンサの頻度を数え上げ、主記憶上に保存し、これをsu,w(m)と表す。
続いて、行動モデルのパラメータを計算するためのカウンタを、各フレーム毎にN回更新する(P24)。
図9は、一次マルコフ性を仮定した行動モデルのパラメータを計算するためのカウンタを、ギブスサンプラーを用いたマルコフ連鎖モンテカルロ法で計算する方法が示されている。
今、統計量cから、m番目のフレームの寄与分c(m)を除いた統計量をc(−m)と表すことにすれば、m番目以外のフレームの統計量が与えられるとき、m番目のフレームの行動の条件付き確率は、次式の右辺に比例する。
Figure 2017167878
m−1番目のフレームの行動をq、m+1番目のフレームの行動をrとするとき、数式11より、右辺第1項は以下のように書ける。
Figure 2017167878
また、右辺第2項は、数式12より以下のように書ける。
Figure 2017167878
数式13に従って、m番目のフレームの行動をランダムにギブスサンプリングし、その結果に基づいて頻度カウンタを更新する。
最後に、カウンタを行動DBに保存する(P25)。
一次マルコフ性を仮定する場合、カウンタから、行動モデルのパラメータは以下のように計算できる。
Figure 2017167878
Figure 2017167878
続いて、図3を用いて、行動系列推定部を説明する。
まず、行動モデル学習部(図2)のP21と同様な方法で、推定したいセンサ発火系列からフレーム列を抽出する(P31)。
次に、行動DBからカウンタを読み出した(P32)後、行動モデル学習部(P23)と同様にフレーム列にランダムに行動の初期値を割り当てる(P33)。
さらに、行動モデル学習部(P24)と同様に、各フレームの行動をランダムにサンプリングしてカウンタを更新する(P34)。
そして最後に、得られたフレーム列に対する行動列Zを行動DBに保存する(P35)。
したがって、行動モデル学習部(図2)と行動モデル推定部(図3)の基本的な違いは、カウンタをゼロに初期化するか否かとカウンタを上書きするか否かの違いである。
一度行動モデルを学習した後に、追加のデータを用いてモデルを再学習させたい場合は、カウンタをゼロに初期化せずに更新し、更新されたカウンタを上書きすれば良い。
つまり、図2、P22のカウンタの初期化を行う代わりに、図3、P32と同様に、行動DBから既に保存されているカウンタを呼び出した後に、カウンタの更新(P23およびP24)を行い、新しいカウンタを行動DBに保存(P25)すれば良い。
最後に、図1の異常検出部(15)について補足する。
行動モデルの下で、あるフレームが日常的にありふれたものであるか否かを判定するためには、そのフレームの尤度を用いれば良い。
例えば、推定された行動列Zと観測されたセンサ発火列Wを所与として、数式18、数式19と数式20を用いてm番目のフレームの尤度を計算することができる。
Figure 2017167878
Figure 2017167878
Figure 2017167878
また、より単純に、数式20を尤度として用いることもできる。
尤度が、あらかじめ決められた閾値、あるいは学習データから決定された閾値、例えば学習の結果得られた尤度の最小値よりも低い場合に、非日常的な行動、すなわち異常と判断することができる。
なお、ここで計算された尤度は、各フレームの属性の1つとして行動DBに保存され、後の分析等に利用される。
図10は、公開されたデータを用いて、本発明で用いる行動モデル化方法に基づいて、行動の推定を行った結果を、他のモデル化方法と比較した図である。
図10の縦軸は、予測された行動列を人間が付与した行動列に照合して一致していた時間の割合を表しており、横軸は、モデル化の際に仮定した行動の種類の数Tである。
図10では、本発明で用いたモデル化方法を、非特許文献2記載のLatent Dirichlet Allocationを用いたモデル化方法(LDA)と、非特許文献5記載の混合ディリクレ分布を用いたモデル化方法(DM)と比較している。
図10から明らかなように、本発明によれば、行動予測精度の大幅な向上が実現でき、この精度向上に依拠して、日常的な行動か否かに基づく異常検知の精度を向上させることが可能になる。
(その他の実施形態)
(行動分析システム)
図11を用いて、行動分析システムの全体構成例を説明する。
センサの構成、受信部(111)、行動モデル学習部(112)、行動モデル推定部(113)および異常検出部(115)については図1記載の異常監視システムと同じである。
これら各部に加えて、行動分析システムは、行動DB(114)に保存された行動モデルを参照して、行動の分析を行う、検索部(118)、頻度計測部(117)および速度計測部(116)を備え、各部の分析結果を表示する行動可視化部(119)を有する。
以下、各部を説明する。
速度計測部(116)では、各行動におけるセンサの発火速度が計算される。今、ある行動の時区間内bで発火したセンサをs1,…,sL、各々の発火時刻をt(si)(1≦i≦L)とすると、発火速度の計算のために、
Figure 2017167878
の他、センサ間の距離d(si,sj)が分かっている場合には、
Figure 2017167878
を用いることができる。
ただし、[P]は、Pが真のとき1、偽のとき0の値を取るとする。
これら計測値は、行動毎に行動DB(114)内に保存される。
頻度計測部(117)では、特定の条件下の特定の行動を、検索部(118)を用いて行動DB(114)から抽出し、その頻度を、行動可視化部(119)を介してユーザに提示可能にする。
例えば、トイレに該当する行動の内、前後に睡眠に該当する行動がある場合の頻度が計測できる。
条件や行動の指定は、行動可視化部(119)を介してユーザからの指示に従う場合の他、あらかじめ決められた条件を埋め込んでおくこともできる。
検索部(118)では、行動可視化部に備わったインタフェースを介したユーザからの指示、あるいは頻度計測部(117)からの要求に応じて、行動DB(114)を参照して特定条件下の特定の行動を検索する。
検索のキーとしても用いることができるのは、時刻・時間、センサの発火情報や推定された行動の他、異常検出部(115)で計測した異常度、速度計測部(116)で計測したセンサ発火速度や頻度計測部(117)で計測した行動頻度などを用いることができる。
行動可視化部(119)では、行動DBが保持する情報や、各部で計測した値などを分かり易くユーザに提示し、居住者の行動パターンの把握や問題行動の分析に利用される。
分かり易い情報提示のためには、行動モデル推定部(113)が出力する行動系列に平滑化処理を施した方が良い場合がある。
例えば、行動列b1,…,bLにおいて同一の行動b(bi=b,1≦i≦L)が連続している場合には、これらを1つの行動bとしてマージして提示することは最も単純な平滑化の1つである。
さらに、抽出された行動をクラスタリングし、類似した行動を一つの行動としてマージするような平滑化を考えることができる。
クラスタリング法としては、k−平均法などの既知の手法を用いることができるが、いずれの方法を使う場合でも行動と行動の距離あるいは類似度を定める必要がある。
本発明における行動のモデル化においては、数式16で示される行動の遷移確率分布や数式17で示されるセンサの発火確率分布が得られるので、これらの分布を用いて与えられた2つの行動に対して距離を定義することができる。例えば、Jensen-Shannon Divergenceを用いて、以下のように行動aとbの距離を定義できる。
Figure 2017167878
Figure 2017167878
ただし、rk=(pk+qk)/2である。もちろん、距離の定義にはθを用いないなど、様々なバリエーションがあり得る。
平滑化を行った結果、複数の連続するフレームが一つの行動としてマージされる場合、新たに得られた時区間を一つのフレームとして再び行動推定部113に入力し、新たなフレーム列に対する行動の推定と尤度の計算を行うことでより精度を高めることができる。
図12は、行動可視化部(119)に接続されたディスプレイ等に表示された、ある1日分のデータの可視化の例が示されている。
最上部には、センサの発火時刻に合わせて縦線がセンサ毎に色分けされて表示されている。
その下には、センサの発火系列から推定された行動列が、破線で囲まれた時区間として表示されている。
また、各行動には異常検出部(115)で計算された尤度が「通常度」として表示されている。
さらに、一群の行動には、行動可視化部(119)に接続されたキーボードやマウス等の入力デバイスを用いてユーザにより付与された行動ラベル「睡眠」および「外出」が表示されている。
図中、ポインタで選択された行動は、睡眠中ベッドから抜け出してトレイに行ってベッドに戻るまでの一連の行動に対応している。
この行動をポイントすることで、この日に行われた複数のトイレ行動がハイライトされて表示されている。
この状態で検索ボタンを押すことで、選択された行動を行動DB中から、検索部(118)を用い検索し表示させることができる。
図では、このような検索の結果、11月中の午後9時から午前6時の間にトイレに行った回数が20回であること、その総時間がおよそ100分であることが表示されている。
また、選択された行動に対して、速度計測部(116)で数式22を用いて計算されたセンサの発火速度が表示されている。
この値は、トイレに行って帰ってくるまでの移動速度が反映されている。
(健康管理システム)
図13を用いて健康管理システムを説明する。
センサの構成、受信部(131)、行動モデル学習部(132)、行動モデル推定部(133)、異常検出部(135)、速度計測部(136)、頻度計測部(137)、検索部(138)については図2記載の行動分析システムと同じである。
健康レポート生成部(139)は、日常行動のモニタリングの結果得られた日常行動に係る指標を用いた健康レポートを、あらかじめ用意されたテンプレートに従って自動的に生成し、一定間隔あるいはあらかじめ定められたイベントの発生時に、家族や施設スタッフ等にインターネット回線網等を介して送信する。
用いる指標としては、異常検出部(135)で計算された行動の異常度を用いることができる。
その他、例えば、居室内の歩行速度も重要な指標となり得る。
歩行速度の低下はロコモティブ症候群(非特許文献6)や認知症(非特許文献7)の早期発見の指標となるからである。
数式22で計算されるセンサの発火速度を歩行速度と見做すためには、居室内の移動行動を識別する必要がある。
そのために、本発明で推定された行動列の内、歩行行動を識別する識別器を健康管理システムに組み込む方法もあるが、より簡便な方法として、数式22で計算したセンサ発火速度の行動毎の平均値の最大値を歩行速度と見做すことができる。この最大値が居室内移動行動に該当している蓋然性が高いからである。例えば、行動tの時区間の集合をDとするとき、以下のように計算されるvを歩行速度と見做すことができる。
Figure 2017167878
また、睡眠の質も有用な指標となるが、その計算のために、睡眠行動の時間、トイレ等で睡眠が妨げられた頻度、寝返りの頻度の計測値を用いることができる。指標として、例えば、一定時間の中断を許容した睡眠行動系列s1,…,sLに対して、以下で計算される睡眠効率を考えることができる。
Figure 2017167878
ただし、te(s)は行動sの開始時刻、tb(s)は終了時刻とする。
この計算のためには、睡眠やトイレという行動が識別されている必要があるが、これら場所に強く結びついた行動の識別は、単純なルールベースの識別器で実現できる。例えば、ベッド周辺のセンサの活動を含み1時間以上継続する行動を睡眠行動と判定すれば、それ以外の時刻に現れる同一の行動全体で睡眠行動を識別できる。
また、寝返りの頻度は、睡眠行動中のベッド周辺のセンサ活動回数でカウントすることができる。
その際、例えば、ベッド周辺のセンサは、日中ベッド周辺に近づいただけでも活動するが、本発明の行動推定を用いれば、前後のセンサ活動の違いから、同じベッド周辺センサの活動でも、睡眠中のものと日中の活動中のものと区別できるので、より信頼性の高い指標となり得る。
さらに、1日の活動量も有用な指標となり得る。
本発明では、センサの発火活動より上位の行動列を取得できるので、1日の中で観察された行動の頻度、時間や種類を活動量として用いることができる。例えば、1日に現れるT種類の行動bの累積時間をt(b)と表すことにすると、以下の平均エントロピーを活動量の指標とすることができる。
Figure 2017167878
ただし、L=Σbt(b)とする。
また、活動量の指標として、数式21で計算されるセンサの発火頻度の総和を用いることもできる。この場合、外出、睡眠やトイレを除いた行動におけるセンサ発火頻度の総和を計算することができるので、より信頼性の高い活動量が計算できる。
外出行動の識別は、センサの活動が全く現れないことが特徴であるが、睡眠中などのセンサ活動が全くない時間帯と区別されなければならない。
本発明の行動推定法によれば、外出前後の玄関周辺のセンサや玄関のドアスイッチセンサの活動などの文脈が考慮されるので、外出行動は部屋の中でじっとしている行動とは区別されて抽出される。
本発明は、センサを設置して発火し得る閉空間または開空間における人のみならず動物等の動体の行動・挙動を識別・分析することを目的とするシステムであって、実施例と同一環境または類似環境において幅広く利用することができる。
1 行動
2 センサ
3 フレーム
4 フレーム数
5 m番目のフレームのセンサ発火数
6 行動の種類の数
7 センサの種類の数
8 1日の回数
9 発火速度
10 行動ラベル付与
21 検索範囲
22 頻度/月
23 総時間/月
11,111,131 受信部
12,112,132 行動モデル学習部
13,113,133 行動モデル推定部
14、114,134 行動DB
15,115、135 異常検出部
16 異常警報部
17 監視センター
116、136 速度計測部
117、137 頻度計測部
118,138 検索部
119 行動可視化部
139 健康レポート生成部

Claims (11)

  1. 少なくともセンサと受信部と行動モデル学習部と行動モデル推定部と行動DBと異常検出部を備えた閉空間または開空間の所定の領域における人の行動の異常監視システムであって、
    前記行動とセンサが共にマルコフ性を有するものとし、
    前記所定の領域には少なくとも人体感知センサとスイッチセンサとを含むセンサが複数個配置され、
    前記受信部において前記各センサから送信された各センサ情報は時系列的に少なくともセンサの名前、センサの状態およびその状態が変化した日時を含むセンサデータ列に変換され行動モデル学習部と行動モデル推定部に送られ、
    前記行動モデル学習部において前記一のセンサデータ列に基づいて前記人の行動が学習されて得られる行動系列からなる初期化行動モデルは、前記一のセンサデータ列に含まれるセンサの初期化された発火頻度(以後頻度カウンタと呼ぶ)ともに行動DBに格納され、
    前記行動モデル推定部において前記他のセンサデータ列に基づいて前記人の行動が推定されて得られる行動系列は、前記他のセンサデータ列に含まれる当該センサの発火頻度で更新された当該頻度カウンタとともに行動DBに格納され、かつ、前記推定された行動系列が抽出されて異常検出部に送られ、
    前記異常検出部において前記抽出された行動系列に関し前記頻度カウンタに基づいて当該行動が生起し得る確率が計算され、
    前記確率に基づいて前記他のセンサデータ列に係る行動の異常を判断する事を特徴とする異常監視システム。
  2. 前記行動モデルは、前記行動がディリクレ分布を事前分布とするカテゴリカル分布に従い生成され、前記センサは前記行動に依存してディリクレ分布を事前分布とするカテゴリカル分布に従い生成される、階層的な確率モデルであることを特徴とする請求項1に記載の異常監視システム。
  3. 前記センサデータ列は所定の幅の時間窓(フレームと呼ぶ)におけるセンサデータ列(フレーム列と呼ぶ)(次数M)であって、
    前記一のセンサデータ列からフレーム列(学習用フレーム列)が行動モデル学習用に抽出され、
    前記他のセンサデータ列からフレーム列(推定用フレーム列)が行動モデル推定用に抽出され、
    前記各フレームの行動を表す確率変数zはそれ以前の行動に依存してカテゴリカル分布に従い生成され、
    前記各フレームのセンサの発火を表す確率変数wは当該フレームに割り当てられた行動zとそれ以前のセンサの発火に依存してカテゴリカル分布に従い生成され、
    前記カテゴリカル分布の各事前分布は前記ディリクレ分布であることを特徴とする請求項2に記載の異常監視システム。
  4. 前記行動モデル学習部および前記行動モデル推定部における前記頻度カウンタはnq,t、nq,・、nt u,・、nt u,vであって、前記学習用フレーム列または前記推定用フレーム列からギブスサンプリングを用いたマルコフ連鎖モンテカルロ法により初期化または更新されたことを特徴とする請求項3に記載の異常監視システム。
    ただし、nq,tは、前記各学習用フレーム列において行動列qの直後に行動tが現れる頻度、nt u,vは、前記各学習用フレーム列において行動tにおいてセンサ列uが発火した直後にセンサwが発火する頻度であって、nq,・=Σtq,tであり、nt u,・=Σvt u,vとする。
  5. 前記行動モデル推定部における前記行動系列の抽出は、前記推定されて前記DBに保存された前記各頻度カウンタを前記DBから読み出して初期値とし、
    前記各頻度カウンタを前記各推定用フレーム列に基づいて前記マルコフ連鎖モンテカルロ法により更新し、
    推定された当該各推定用フレーム列に対応する行動列Zを前記行動DBに格納することを特徴とする請求項4に記載の異常監視システム。
  6. 前記異常検出部において前記推定用フレーム列の各フレームに係る行動について当該フレームの尤度に基づいて異常を判断することを特徴とする請求項5に記載の異常監視システム。
  7. 請求項6に記載の異常監視システムにさらに検索部、頻度計測部、速度計測部、および検索部の検索結果を表示する行動可視化部を備え、
    前記速度計測部において前記推定用フレームに係る行動におけるセンサの発火速度が計算され当該行動毎に行動DBに格納され、
    頻度計測部において行動DBから特定の行動を抽出してその頻度を前記行動DBに格納し、
    前記検索部において前記センサの発火情報、前記異常と判断された前記尤度、前記推定された行動、前記センサ発火速度または前記特定の行動およびその頻度等を索引として前記行動DBの前記行動の検索を可能とし、
    前記一の索引が与えられた場合に前記検索部において前記行動DBから所定の期間(日、週、月、年等)の前記行動を検索して当該行動を行動可視化部において表示することを特徴とする行動分析システム。
  8. 請求項7において前記行動可視化部に代わって健康レポート生成部を備え、前記特定の行動の当該頻度、時間や種類に基づいた活動量を記載した健康レポートを提供することを特徴とする健康管理システム。
  9. 請求項8に記載する健康管理システムであって、
    前記計算された前記センサの発火速度を当該発火センサに係る前記領域の移動に係る前記特定行動の速さと看做して、
    前記所定の期間における前記行動の平均発火速度の最大値を当該人の歩行速度と記載した健康レポートを提供することを特徴とする健康管理システム。
  10. 請求項8に記載する健康管理システムであって、
    さらに特定の前記センサの発火を含み所定時間以上継続する前記行動を睡眠行動と識別し得る識別器を備え、
    前記所定の期間に前記識別器が識別した前記睡眠行動からなる睡眠行動列の中断時間に基づいて前記睡眠行動列に係る睡眠の質と記載した健康レポートを提供することを特徴とする健康管理システム。
  11. 請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の健康管理システム、行動分析システム、異常監視システムに係る前記センサデータおよび関連データを当該処理する事を特徴とするプログラムを記録した記憶媒体。
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