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JP2015215591A - 液晶配向剤、液晶配向膜及びその製造方法、並びに液晶表示素子 - Google Patents

液晶配向剤、液晶配向膜及びその製造方法、並びに液晶表示素子 Download PDF

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JP2015215591A JP2015010338A JP2015010338A JP2015215591A JP 2015215591 A JP2015215591 A JP 2015215591A JP 2015010338 A JP2015010338 A JP 2015010338A JP 2015010338 A JP2015010338 A JP 2015010338A JP 2015215591 A JP2015215591 A JP 2015215591A
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Abstract

【課題】液晶配向性が良好な塗膜を形成することができ、かつ信頼性及び残像特性が良好な液晶表示素子を得ることができる液晶配向剤を提供する。【解決手段】下記式(1)で表される部分構造を主鎖に有する重合体(P)を液晶配向剤に含有させる。(X1は2価の有機基であり、Y1は2価の連結基又は単結合である。ただし、2個のX1の少なくとも一方は2価の芳香族複素環基であり、2個のX1の一方のみが2価の芳香族複素環基である場合、Y1は1個以上の窒素原子を有する2価の連結基であって且つ2個のX1はY1中の同一の又は異なる窒素原子に結合している。2個のX1は同じでも異なっていてもよい。「*」は結合手を示す。)【選択図】なし

Description

本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及びその製造方法、並びに液晶表示素子に関する。
近年、液晶表示素子は、従来のようにパーソナルコンピュータ等の表示端末に使用されるだけでなく、例えば液晶テレビ、カーナビゲーションシステム、携帯電話、スマートフォン、インフォメーションディスプレイなど多種の用途で使用されている。また、液晶表示素子としては、多用途化に伴い表示品位の更なる高品質化が求められており、こうした要求を満たすべく種々の液晶配向剤が提供されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許文献1〜3には、ピペラジン環を有するジアミンと、テトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸又はその誘導体を液晶配向剤の重合体成分として用いることが開示されている。具体的には、特許文献1には、「−ベンゼン環−ピペラジン環−ベンゼン環−」の部分構造を有する芳香族ジアミンをモノマーに用いることが開示され、特許文献3には、「−アルキレン鎖−ピペラジン環−アルキレン鎖−」の部分構造を有するジアミンをモノマーに用いることが開示されている。こうしたジアミンを用いることにより、イオン密度が適正であって長期信頼性を有する液晶配向膜を得る試みがなされている。また、特許文献2には、ピペラジン環を有するジアミンをモノマーに用いた重合によって得られるポリイミドを液晶配向剤に含有させることにより、液晶配向膜の耐熱性及び帯電圧リーク性を改善することが開示されている。
特開2009−175684号公報 特開2010−2501号公報 特開2011−28223号公報
表示品位の向上を図るために液晶配向膜には種々の特性が要求されており、例えば液晶配向性、残像の生じにくさ(残像特性)、信頼性などが重要な特性の一例として挙げられる。特に信頼性は、液晶表示素子の多用途化に伴い、長時間の連続駆動や熱ストレス、光ストレスなどの過酷な環境での使用が想定されるなか、こうした過酷な環境での使用にも耐え得るために重要である。液晶表示素子としては、更なる品質向上を図るべく、これらの各種特性を更に改善することが要求されている。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、液晶配向性が良好な塗膜を形成することができ、かつ信頼性及び残像特性が良好な液晶表示素子を得ることができる液晶配向剤を提供することを主たる目的とする。
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を達成するべく鋭意検討した結果、液晶配向剤の重合体成分として、窒素原子含有の特定の部分構造を主鎖に有する重合体を含有させることにより、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明により以下の液晶配向剤、液晶配向膜、液晶配向膜の製造方法及び液晶表示素子が提供される。
本発明は一つの側面において、下記式(1)で表される部分構造を主鎖に有する重合体(P)を含有する液晶配向剤を提供する。
Figure 2015215591
(式(1)中、Xは2価の有機基であり、Yは、2価の連結基又は単結合である。ただし、2個のXの少なくとも一方は2価の芳香族複素環基であり、2個のXの一方のみが2価の芳香族複素環基である場合、Yは1個以上の窒素原子を有する2価の連結基であって且つ2個のXはY中の同一の又は異なる窒素原子に結合している。2個のXは同じでも異なっていてもよい。「*」は結合手を示す。)
本発明は一つの側面において、上記の液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜に光照射して液晶配向能を付与する工程とを含む液晶配向膜の製造方法、及び上記の液晶配向剤を用いて塗膜を形成する工程と、該塗膜にラビング処理して液晶配向能を付与する工程とを含む液晶配向膜の製造方法を提供する。また、上記液晶配向剤により形成された液晶配向膜及び該液晶配向膜を具備する液晶表示素子を提供する。
本発明は、別の一つの側面において、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種であって、上記式(1)で表される部分構造を主鎖に有する重合体を提供する。
また本発明は、別の一つの側面において、下記式(3)で表される化合物を提供する。
Figure 2015215591
(式(3)中、Xは2価の有機基であり、ただし、2個のXの少なくとも一方は2価の芳香族複素環基である。Zは1級アミノ基又は下記式(z−1)
Figure 2015215591
(式(z−1)中、「*」はXとの結合手を示す。)
で表される基である。Rは、単結合、炭素数1〜6のアルカンジイル基又はシクロヘキシレン基であり、Rは、水素原子若しくは炭素数1〜6のアルキル基であるか、又は2個のRが互いに結合して2個の窒素原子及びRと共に炭素数2〜10の2価の脂環式複素環基を形成する。2個のXは同じでも異なっていてもよく、2個のRは同じでも異なっていてもよい。pは0又は1である。)
本発明の液晶配向剤によれば、重合体成分の少なくとも一部に、特定の構造を有する重合体を含むことにより、液晶配向性が良好な塗膜を形成することができ、かつ信頼性及び残像特性が良好な液晶表示素子を得ることができる。
以下に、本発明の液晶配向剤に含まれる各成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
<重合体(P)>
本発明の液晶配向剤は、重合体成分の少なくとも一成分として下記式(1)で表される構造を主鎖に有する重合体(P)を含有する。
Figure 2015215591
(式(1)中、Xは2価の有機基であり、Yは、2価の連結基又は単結合である。ただし、2個のXの少なくとも一方は2価の芳香族複素環基であり、2個のXの一方のみが2価の芳香族複素環基である場合、Yは1個以上の窒素原子を有する2価の連結基であって且つ2個のXはY中の同一の又は異なる窒素原子に結合している。2個のXは同じでも異なっていてもよい。「*」は結合手を示す。)
上記式(1)におけるXの2価の芳香族複素環基は、芳香族複素環の環を構成する原子から2個の水素原子を取り除いた基であり、環部分に置換基が導入されていてもよい。Xの環部分は、窒素原子含有の芳香族複素環であることが好ましく、その具体例としては、例えばピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、インドール、ベンゾイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、キノキサリン、フタラジン、トリアジン、アゼピン、ジアゼピン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、オキサゾール、チアゾール、カルバゾール、チアジアゾール、ベンゾチアゾール、フェノチアジン、オキサジアゾール等が挙げられる。
の芳香族複素環基の環部分に導入されていてもよい置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基等の鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基等が挙げられる。
上記Xの芳香族複素環基が有する環骨格としては、モノマーの合成しやすさ、液晶表示素子の焼き付き低減及び信頼性の観点から、上記の中でもピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン又はトリアジンであることが好ましく、ピリジン、ピリミジン又はピラジンであることがより好ましい。Xにおける2つの結合手は、他の基に対して1,4−位にあることが好ましい。
の2価の有機基としては、例えば2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。これらの中でも、液晶表示素子の信頼性及び残像特性の改善効果の観点から、2価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、具体例としては、例えばフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。好ましくは、フェニレン基又はビフェニレン基である。
上記式(1)中の2個のXは、液晶表示素子の焼き付き低減及び信頼性の改善効果が高い点で、両方が2価の芳香族複素環基であることが好ましい。
の2価の連結基の具体例としては、例えば−O−、−CO−、−COO−、−NR−、−CONR−、−NRCONR−(ただし、Rは、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基である。)、−N=N−、−COS−、−S−等の2価の官能基;2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基などの2価の炭化水素基;2価の炭化水素基における少なくとも1個のメチレン基を、上記2価の官能基で置き換えてなる基;複素環を有する2価の基、などが挙げられる。
ここで、本明細書における「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。
の2価の連結基としては、液晶表示素子の焼き付き低減及び信頼性の観点から、少なくとも1個の窒素原子を有する基であることが好ましく、2個以上の窒素原子を有する基であることがより好ましい。Yが有する窒素原子の数の上限は特に制限されないが、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下である。
が、1個以上の窒素原子を有する2価の有機基である場合、2個のXの各々は、Y中の窒素原子に結合していることが好ましい。Yが2個以上の窒素原子を有する2価の連結基である場合、2個のXは、Y中の同一の窒素原子に結合していてもよく、異なる窒素原子に結合していてもよいが、Y中の異なる窒素原子に結合していることが好ましい。なお、2個のXのうちの1個のみが2価の芳香族複素環基である場合には、Yは、1個以上の窒素原子を有する2価の連結基となる。この場合、上記式(1)中の2個のXは、Y中の同一の又は異なる窒素原子に結合している。
特に好ましいYの具体例としては、例えば下記式(Y−1)で表される基などが挙げられる。
Figure 2015215591
(式(Y−1)中、Rは、単結合、炭素数1〜6のアルカンジイル基又はシクロヘキシレン基であり、Rは、水素原子若しくは炭素数1〜6のアルキル基であるか、又は2個のRが互いに結合して2個の窒素原子及びRと共に炭素数2〜10の2価の脂環式複素環基を形成する。2個のRは同じでも異なっていてもよい。pは0又は1である。「*」はXとの結合手を示す。)
上記式(Y−1)におけるRの炭素数1〜6のアルカンジイル基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基等が挙げられ、これらは直鎖状でも分岐状でもよい。Rは、好ましくは炭素数1〜6のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数1〜4である。Rがシクロヘキシレン基である場合、1,4−シクロヘキシレン基であることが好ましい。
の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、これらは直鎖状でも分岐状でもよい。当該アルキル基は、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜3である。
pは0又は1であり、液晶表示素子の信頼性及び残像特性を良好する観点から、好ましくはp=1である。
p=1の場合、式(Y−1)中には2個のRが存在する。これら2個のRが互いに結合することによって形成される2価の脂環式複素環基は、脂環式複素環の環を構成する原子から2個の水素原子を取り除いた基であり、具体的には、下記式(Y−1−1)で表すことができる。
Figure 2015215591
(式(Y−1−1)中、R11は1価の置換基であり、kは0〜(a+b)の整数である。a及びbは、a+b≧2を満たす0以上の整数である。「*」は結合手を示す。)
上記式(Y−1−1)のR11としては、例えばハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基等が挙げられる。kは好ましくは0である。
上記式(Y−1−1)で表される脂環式複素環基は、環員数5〜12であることが好ましく、5〜7であることがより好ましい。蓄積電荷の緩和速度が速く、残像の低減効果が高い点で、1,4−ピペラジンジイル基であることが特に好ましい。
上記式(1)で表される構造としては、下記式(2)で表される構造であることが好ましい。
Figure 2015215591
(式(2)中、Xは2価の有機基であり、ただし、2個のXの少なくとも一方は2価の芳香族複素環基である。R、R及びpは上記式(Y−1)と同義である。「*」は結合手を示す。)
上記式(1)で表される構造の好ましい具体例としては、例えば下記式(2−1−1)〜式(2−1−8)、式(2−2−1)〜式(2−2−5)、式(2−3−1)〜式(2−3−3)、式(2−4−1)〜式(2−4−5)、式(2−5−1)〜式(2−5−6)、及び式(2−6−1)のそれぞれで表される構造等が挙げられる。
Figure 2015215591
(式中、「*」は結合手を示す。)
Figure 2015215591
(式中、「*」は結合手を示す。)
上記重合体(P)の主鎖としては、例えばポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド等からなる骨格を挙げることができる。なお、本明細書において重合体の「主鎖」とは、1種又は2種以上のモノマーが結合を繰り返すことで形成される構造であり、重合体のうち最も長い「幹」の部分をいう。したがって、「上記式(1)で表される部分構造を主鎖に有する」とは、この構造が重合体の「幹」の一部分を構成することをいう。ただし、上記重合体(P)において、上記式(1)で表される構造が主鎖以外の部分、例えば側鎖(重合体の「幹」から分岐した部分)にも存在することを排除するものではない。
重合体(P)は、例えば上記式(1)で表される構造を有する化合物をモノマーに用いて重合する方法によって得ることができる。
上記重合体(P)としては、これらから選択される重合体の1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。中でも、上記重合体(P)を、ポリアミック酸、ポリイミド及びポリアミック酸エステルよりなる群から選ばれる少なくとも一種とすることが好ましい。
[ポリアミック酸(P)]
上記重合体(P)がポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸(P)」とも称する。)である場合、当該ポリアミック酸(P)は、例えばテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることができる。具体的には、例えば(i)上記式(1)で表される部分構造を有するテトラカルボン酸二無水物(以下、「特定テトラカルボン酸二無水物」ともいう。)をモノマーに用いて重合する方法;(ii)上記式(1)で表される部分構造を有するジアミン(以下、「特定ジアミン」ともいう。)をモノマーに用いて重合する方法;(iii)特定テトラカルボン酸二無水物及び上記特定ジアミンをモノマーに用いて重合する方法;によって得ることができる。
[テトラカルボン酸二無水物]
(特定テトラカルボン酸二無水物)
上記ポリアミック酸(P)の合成に使用する特定テトラカルボン酸二無水物としては、例えば下記式(3−1b)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2015215591
(式(3−1b)中、X及びYは、それぞれ上記式(1)と同義である。)
上記式(3−1b)のX及びYについては、上記式(1)のX及びYの説明をそれぞれ適用することができる。
上記式(3−1b)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(4−1)〜式(4−8)のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。なお、特定テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 2015215591
上記特定テトラカルボン酸二無水物としては、好ましくは上記式(3−1b)中のYが上記式(Y−1)で表される基であり、具体的には下記式(3−B)で表される化合物である。
Figure 2015215591
(式(3−B)中、R、R及びpは上記式(Y−1)と同義であり、Xは上記式(2)と同義である。)
上記式(3−B)のXについては、上記式(1)のXの説明を適用することができる。また、R及びRについては、上記式(Y−1)のR及びRの説明をそれぞれ適用することができる。pは1であることが好ましい。
上記式(3−B)で表される化合物の具体例としては、例えば上記式(4−1)〜式(4−4)、式(4−7)及び式(4−8)のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。
なお、上記式(3−B)で表される化合物は、有機化学の定法を適宜組み合わせて合成することができる。一例を挙げるならば、上記式(2)で表される構造を有するジアミン(下記式(3−A)で表される化合物)と、カルボキシル基含有ハロゲン化物との反応により、上記式(2)で表される構造を有するテトラカルボン酸を合成し、次いで分子内脱水縮合させることにより得ることができる。
(その他のテトラカルボン酸二無水物)
重合体(P)の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、上記特定テトラカルボン酸二無水物を単独で用いてもよいが、特定テトラカルボン酸二無水物と共にその他のテトラカルボン酸二無水物を用いてもよい。
上記その他のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)などを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを;
それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物等を用いることができる。なお、テトラカルボン酸二無水物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記特定テトラカルボン酸二無水物の好ましい使用割合は、ポリアミック酸(P)の合成方法に応じて異なる。例えば上記(i)の方法の場合、特定テトラカルボン酸二無水物の使用割合を、ポリアミック酸(P)の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全量に対して、5モル%以上とすることが好ましく、10モル%以上とすることがより好ましく、20モル%以上とすることがさらに好ましい。当該使用割合の上限値は特に制限がなく、100モル%以下の範囲で適宜選択することができる。
[ジアミン]
(特定ジアミン)
上記ポリアミック酸(P)の合成に使用する特定ジアミンは、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン等のいずれでもよく、具体的には下記式(3−1a)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2015215591
(式(3−1a)中、X及びYは上記式(1)と同義である。)
上記式(3−1a)のX及びYについては、上記式(1)のX及びYの説明を適用することができる。特定ジアミンは芳香族ジアミンであることが好ましい。
特定ジアミンの具体例としては、例えば下記式(3−1)〜式(3−83)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
Figure 2015215591
Figure 2015215591
Figure 2015215591
Figure 2015215591
Figure 2015215591
Figure 2015215591
Figure 2015215591
上記特定ジアミンの好ましい具体例は、上記式(3−1a)中のYが上記式(Y−1)で表される基である化合物であり、具体的には下記式(3−A)で表すことができる。
Figure 2015215591
(式(3−A)中、R、R及びpは上記式(Y−1)と同義であり、上記式Xは上記式(2)と同義である。)
上記式(3−A)のXについては、上記式(1)のXの説明を適用することができる。また、R及びRについては、上記式(Y−1)のR及びRの説明をそれぞれ適用することができる。pは1であることが好ましい。
上記式(3−A)で表される化合物の具体例としては、例えば上記式(3−1)〜式(3−13)、式(3−16)、式(3−19)、式(3−64)、式(3−65)及び式(3−68)〜式(3−83)のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。
なお、上記式(3−A)で表される化合物は、有機化学の定法を適宜組み合わせることにより合成することができる。その一例としては、上記式(3−A)中の2つの一級アミノ基に代えてニトロ基を有するジニトロ中間体を合成し、次いで、得られたジニトロ中間体のニトロ基を適当な還元系を用いてアミノ化する方法が挙げられる。ジニトロ中間体を合成する方法は、目的とする化合物に応じて適宜選択することができる。
上記ポリアミック酸の合成に使用する特定ジアミンは、これらの化合物の1種を単独で又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
(その他のジアミン)
重合体(P)の合成に使用するジアミンとしては、上記特定ジアミンを単独で用いてもよいが、特定ジアミンと共にその他のジアミンを用いてもよい。
上記その他のジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えばm−キシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
芳香族ジアミンとして、例えばo−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、2,4−ジアミノ−N,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、1−(2,4−ジアミノフェニル)ピペラジン−4−カルボン酸、1,3−ビス(N−(4−アミノフェニル)ピペリジニル)プロパン、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミン、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−6−アミン、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、4,4’−[4,4’−プロパン−1,3−ジイルビス(ピペリジン−1,4−ジイル)]ジアニリン、及び下記式(A−1)
Figure 2015215591
(式(A−1)中、XI及びXIIは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−であり、Rは炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、RIIは単結合又は炭素数1〜3のアルカンジイル基である。aは0又は1であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜20の整数であり、dは0又は1である。但し、a及びbが同時に0になることはない。)
で表される化合物などを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。
上記式(A−1)における「−X−(R−XII−」で表される2価の基としては、炭素数1〜3のアルカンジイル基、−O−、*−COO−又は−O−C−O−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。基「−C2c+1」の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基などを挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
上記式(A−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(A−1−1)〜式(A−1−4)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
Figure 2015215591
なお、上記ポリアミック酸の合成に使用するその他のジアミンとしては、これらの化合物の1種を単独で又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
上記特定ジアミンの好ましい使用割合は、ポリアミック酸(P)の合成方法に応じて異なる。例えば上記(ii)の方法の場合、上記特定ジアミンの使用割合を、ポリアミック酸(P)の合成に使用するジアミンの全量に対して、5モル%以上とすることが好ましく、10モル%以上とすることがより好ましく、20モル%以上とすることがさらに好ましい。当該使用割合の上限値は特に制限がなく、重合体に付与する各種特性(例えばプレチルト角特性など)に応じて、100モル%以下の範囲で任意に設定することができる。
本発明の液晶配向剤をTN型、STN型又は垂直配向型の液晶表示素子の製造に用いる場合、当該液晶配向剤に含有させる重合体(P)の少なくとも一部を、塗膜に対してプレチルト角発現能を付与可能な基(以下、「プレチルト角発現性基」ともいう。)を有する重合体としてもよい。プレチルト角発現性基としては、例えば炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のフルオロアルキル基、炭素数4〜20のアルコキシ基、炭素数17〜51のステロイド骨格を有する基、多環構造を有する基などが挙げられる。
例えば、プレチルト角発現性基を有するポリアミック酸(P)は、上記その他のジアミンとして、プレチルト角発現性基を有するジアミンをモノマー組成に含む重合により得ることができる。プレチルト角発現性基を有するジアミンを使用する場合、その使用量は、目的とするプレチルト角の大きさに応じて適宜設定すればよいが、合成に使用する全ジアミンに対して、例えば1モル%以上とすることができ、3〜70モル%とすることが好ましい。
本発明の液晶配向剤を用いて作製した塗膜に対して光配向法により液晶配向能を付与する場合、当該液晶配向剤に含有させる重合体(P)の少なくとも一種を、光配向性構造を有する重合体としてもよい。
ここで、光配向性構造とは、光配向性基及び分解型光配向部の両者を含む概念である。具体的には、光配向性構造としては、光異性化や光二量化、光分解等によって光配向性を示す基を採用することができ、例えばアゾベンゼン又はその誘導体を基本骨格として含有するアゾベンゼン含有基、桂皮酸又はその誘導体を基本骨格として含有する桂皮酸構造を有する基、カルコン又はその誘導体を基本骨格として含有するカルコン含有基、ベンゾフェノン又はその誘導体を基本骨格として含有するベンゾフェノン含有基、クマリン又はその誘導体を基本骨格として含有するクマリン含有基、ポリイミド又はその誘導体を基本骨格として含有するポリイミド含有構造、炭素−炭素不飽和結合が重合体の主鎖に導入された不飽和結合含有構造、下記式(p−1)
Figure 2015215591
(式(p−1)中、Xは、硫黄原子、酸素原子又は−NH−である。「*」はそれぞれ結合手を示す。但し、2つの「*」のうち少なくとも一方は芳香環に結合している。)
で表される部分構造が重合体の主鎖に導入された芳香環−CO含有構造等が挙げられる。
上記式(p−1)において、X及びカルボニル基の少なくともいずれかと結合する芳香環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等を挙げることができる。これらの中でも、液晶配向性及び透明性の観点からベンゼン環であることが好ましい。上記式(p−1)中の2つの「*」のうち、芳香環に結合しない側の構造は特に限定せず、例えば鎖状炭化水素構造、脂肪族環、芳香環(芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を含む。)、脂環式複素環などが挙げられる。これらのうち、光に対する感度の点で、2つの「*」が共に芳香環に結合していることが好ましく、芳香族炭化水素環に結合していることがより好ましい。Xは、光に対する感度の点で硫黄原子であることが好ましく、入手容易な点及び使用可能なモノマーの選択肢が広い点で酸素原子であることが好ましい。
本発明の液晶配向剤を光配向用とする場合、重合体(P)の少なくとも一部は、光配向性構造を主鎖に有する重合体であることが好ましく、ポリイミド含有構造又は芳香環−CO含有構造を有する重合体であることがより好ましい。
重合体(P)がポリイミド含有構造を有する場合、当該重合体は、ビシクロ[2.2.2]オクテン骨格又はシクロブタン骨格を有することが好ましい。このような重合体は、例えばシクロブタンテトラカルボン酸二無水物及びビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物のうちの少なくともいずれかを含むテトラカルボン酸二無水物と、特定ジアミンを含むジアミン化合物とを反応させることにより得ることができる。
また、重合体(P)が芳香環−CO含有構造を有する場合、当該重合体は、「−ベンゼン環−COO−」又は「−ベンゼン環−OCO−」で表される部分構造を主鎖に有することが好ましい。このような重合体は、例えば当該部分構造を有するテトラカルボン酸二無水物及び当該部分構造を有するジアミンの少なくともいずれかをモノマーに含む重合により得ることができる。当該モノマーの具体例としては、例えば下記式(p−1−1)〜式(p−1−6)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
Figure 2015215591
光配向性構造を主鎖に有する重合体を合成する場合、光配向性構造を有するモノマーの使用割合は、光反応性の観点から、重合体の合成に使用するモノマーの全体量に対して20モル%以上とすることが好ましく、30〜80モル%とすることがより好ましい。
[ポリアミック酸(P)の合成]
ポリアミック酸(P)の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.3〜1.2当量となる割合がより好ましい。
ポリアミック酸(P)の合成に際しては、上記の如きテトラカルボン酸二無水物及びジアミンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成することとしてもよい。かかる末端修飾型の重合体とすることにより、本発明の効果を損なうことなく液晶配向剤の塗布性(印刷性)を更に改善することができる。
分子量調節剤としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸などの酸一無水物、アニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミンなどのモノアミン化合物、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート化合物等を挙げることができる。分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒及びフェノール系溶媒よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される1種以上、又は、第一群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される1種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒及び第二群の有機溶媒の合計量に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下である。
特に好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m−クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と他の有機溶媒との混合物を、上記割合の範囲で使用することが好ましい。
有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して、0.1〜50重量%になる量とすることが好ましい。ポリアミック酸の合成反応における反応温度は、−20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。また、反応時間は0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
以上のようにして、ポリアミック酸(P)を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸(P)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸(P)を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸(P)を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸(P)を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、又は単離したポリアミック酸(P)を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。ポリアミック酸の単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
[ポリアミック酸エステル(P)]
上記重合体(P)としてのポリアミック酸エステル(以下、ポリアミック酸エステル(P)ともいう。)は、例えば、[I]上記合成反応により得られたポリアミック酸(P)と、水酸基含有化合物とエステル化剤とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとを反応させる方法、などによって得ることができる。
ここで、方法[I]で使用するエステル化剤としては、例えばアセタール系化合物、ハロゲン化物、エポキシ基含有化合物等が挙げられる。これらの具体例としては、水酸基含有化合物として、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類などを;アセタール系化合物として、例えばN,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジエチルホルムアミドジエチルアセタールなどを;ハロゲン化物として、例えば臭化メチル、臭化エチル、臭化ステアリル、塩化メチル、塩化ステアリル、1,1,1−トリフルオロ−2−ヨードエタンなどを;エポキシ基含有化合物として、例えばプロピレンオキシドなどを、それぞれ挙げることができる。
方法[II]で使用するテトラカルボン酸ジエステルは、テトラカルボン酸二無水物を上記のアルコール類を用いて開環することにより得ることができる。また、方法[III]で使用するテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物は、上記の如くして得たテトラカルボン酸ジエステルを、塩化チオニル等の適当な塩素化剤と反応させることにより得ることができる。方法[II]及び[III]で使用するジアミンは上記特定ジアミンを含むことが好ましく、必要に応じて上記その他のジアミンを使用してもよい。なお、ポリアミック酸エステル(P)は、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。
[ポリイミド(P)]
上記重合体(P)としてのポリイミド(以下、ポリイミド(P)ともいう。)は、例えば上記の如くして合成されたポリアミック酸(P)を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
上記ポリイミド(P)は、その前駆体であるポリアミック酸(P)が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明の液晶配向剤に含有されるポリイミドは、そのイミド化率が30%以上であることが好ましく、40〜99%であることがより好ましく、50〜99%であることが更に好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は、好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
このようにしてポリイミド(P)を含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。その他、ポリイミド(P)は、ポリアミック酸エステル(P)のイミド化により得ることもできる。
以上のようにして得られるポリアミック酸(P)、ポリアミック酸エステル(P)及びポリイミド(P)は、これを濃度10重量%の溶液としたときに、10〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
上記ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜500,000であり、より好ましくは2,000〜300,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。このような分子量範囲にあることで、液晶表示素子の良好な配向性及び安定性を確保することができる。
<その他の成分>
本発明の液晶配向剤は上記重合体(P)を含有するが、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。当該液晶配向剤に添加してもよいその他の成分としては、例えば、上記重合体(P)以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ基含有化合物」という。)、官能性シラン化合物等を挙げることができる。
[その他の重合体]
上記その他の重合体は、溶液特性や電気特性の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体は、上記式(1)で表される部分構造を有さない重合体であり、その主骨格については特に限定しない。具体的には、例えばポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを主骨格とする重合体を挙げることができる。これらの中でも、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体であることが好ましい。
その他の重合体を液晶配向剤に添加する場合、その配合割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して、50重量部以下とすることが好ましく、0.1〜40重量部とすることがより好ましく、0.1〜30重量部以下とすることが更に好ましい。
[エポキシ基含有化合物]
エポキシ基含有化合物は、液晶配向膜における基板表面との接着性や電気特性を向上させるために使用することができる。このようなエポキシ基含有化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミン等を好ましいものとして挙げることができる。その他、エポキシ基含有化合物の例としては、国際公開第2009/096598号記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを用いることができる。
これらエポキシ化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して、40重量部以下とすることが好ましく、0.1〜30重量部とすることがより好ましい。
[官能性シラン化合物]
上記官能性シラン化合物は、液晶配向剤の印刷性の向上を目的として使用することができる。このような官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
これら官能性シラン化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して、2重量部以下とすることが好ましく、0.02〜0.2重量部とすることがより好ましい。
なお、その他の成分としては、液晶配向剤の調製に通常使用される添加剤を用いることができる。上記以外の添加剤としては、例えば分子内に少なくとも一つのオキセタニル基を有する化合物、酸化防止剤、界面活性剤などを挙げることができる。
<溶剤>
本発明の液晶配向剤は、上記の重合体(P)及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。
使用する有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
本発明の液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより、液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。このとき、固形分濃度が1重量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜が得にくくなる。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜が得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布性が低下する傾向にある。
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法を用いる場合には、固形分濃度(液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)が1.5〜4.5重量%の範囲であることが特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
[液晶配向膜及び液晶表示素子]
上記に説明した本発明の液晶配向剤を用いることにより液晶配向膜を製造することができる。本発明の液晶表示素子は、上記液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。本発明の液晶表示素子の動作モードは特に限定せず、例えばTN型、STN型、VA型(VA−MVA型、VA−PVA型などを含む。)、IPS型、FFS型、OCB型など種々の動作モードに適用することができる。
本発明の液晶表示素子は、例えば以下の工程(1−1)〜(1−3)を含む工程により製造することができる。工程(1−1)は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程(1−2)及び工程(1−3)は各動作モード共通である。
[工程(1−1):塗膜の形成]
先ず、基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
(1−1A)例えばTN型、STN型又はVA型の液晶表示素子を製造する場合、まず、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、本発明の液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後、フォト・エッチングによりパターンを形成する方法;透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法;などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成する面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は、好ましくは0.25〜10分であり、より好ましくは0.5〜5分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポストベーク時間は、好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。このようにして形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
(1−1B)IPS型又はFFS型の液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板の電極形成面と、電極が設けられていない対向基板の一面とに、本発明の液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。このとき使用される基板及び透明導電膜の材質、塗布方法、塗布後の加熱条件、透明導電膜又は金属膜のパターニング方法、基板の前処理、並びに形成される塗膜の好ましい膜厚については上記(1−1A)と同様である。金属膜としては、例えばクロムなどの金属からなる膜を使用することができる。
上記(1−1A)及び(1−1B)のいずれの場合も、基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって液晶配向膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。このとき、塗膜形成後に更に加熱することによって、本発明の液晶配向剤に配合されるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドの脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜としてもよい。
[工程(1−2):配向能付与処理]
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶表示素子を製造する場合、上記工程(1−1)で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向能付与処理としては、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで塗膜を一定方向に擦るラビング処理、塗膜に対して偏光又は非偏光の放射線を照射する光配向処理などが挙げられる。一方、VA型液晶表示素子を製造する場合には、上記工程(1−1)で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向能付与処理を施してもよい。
光配向処理により塗膜に液晶配向能を付与する場合、塗膜に照射する放射線としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。また、用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合、照射の方向は斜め方向とする。
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザーなどを使用することができる。好ましい波長領域の紫外線は、光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。放射線の照射量は、好ましくは100〜50,000J/mであり、より好ましくは300〜20,000J/mである。また、塗膜に対する光照射は、反応性を高めるために塗膜を加温しながら行ってもよい。加温の際の温度は、通常30〜250℃であり、好ましくは40〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃である。
なお、ラビング処理後の液晶配向膜に対して更に、液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成した上で先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにしてもよい。この場合、得られる液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。VA型の液晶表示素子に好適な液晶配向膜は、PSA(Polymer sustained alignment)型の液晶表示素子にも好適に用いることができる。
[工程(1−3):液晶セルの構築]
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより液晶セルを製造する。第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより液晶セルを製造する。いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、さらに、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置に用いることができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
以下の例において、重合体溶液の溶液粘度は以下の方法により測定した。なお、以下では、式Xで表される化合物を単に「化合物X」と記すことがある。
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度[mPa・s]は、所定の溶媒を用い、重合体濃度10重量%に調製した溶液について、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
<化合物の合成>
[実施例1−1:化合物(DA−1)の合成]
下記スキーム1に従って、下記式(DA−1)で表される化合物を合成した。
Figure 2015215591
2−クロロ−5−ニトロピリジン2.5gをトルエン25mlに懸濁させ、そこへトリエチルアミン1.88gを入れた。ピペラジン0.5gをクロロホルム2mlに溶解させた溶液をその容器へゆっくり滴下した。室温で30分攪拌した後、80℃で12時間攪拌した。この時、反応が進むにしたがって黄色い固体が析出した。冷却後、固体を濾過し、水でよく洗浄した後、酢酸エチルでトルエンを除去した。得られた固体を乾燥させ、化合物(DA−1−1) 1.94gを純度99%で得た。
次いで、Pd/C 0.3gを取り分けた三口フラスコを窒素置換し、そこへ酸素脱気したエタノール40mlを加え攪拌した。化合物(DA−1−1) 1.94gをその容器へ入れ、0℃に冷却し5分間攪拌した。攪拌後、反応溶液中にヒドラジン一水和物5mlをゆっくり滴下した。
0℃で3時間、室温で6時間攪拌し、反応を完結させた。酢酸エチル100ml及びTHF80mlを入れ、次に純水60mlを入れ、これを分液した。純水で再度分液したのちこれを濃縮し、化合物(DA−1) 1.5gを純度99%、黄色〜白色の固体として得た。
[実施例1−2:化合物(DA−2)の合成]
下記スキーム2に従って、下記式(DA−2)で表される化合物を合成した。
Figure 2015215591
2−クロロ−5−ニトロピリジン2.68gをトルエン25mlに懸濁させ、そこへトリエチルアミン1.99gを入れた。N,N’−ジメチルエチレンジアミン0.51gをクロロホルム2mlに溶解させた溶液をその容器へゆっくり滴下した。室温で30分攪拌した後、80℃で12時間攪拌した。この時、反応が進むにしたがって黄色い固体が析出した。冷却後、この固体を濾過し、水でよく洗浄後、酢酸エチルでトルエンを除去した。この固体を乾燥させ、化合物(DA−2−1) 1.69gを純度96%で得た。
次いで、Pd/C 0.3gを取り分けた三口フラスコを窒素置換し、そこへ酸素脱気したエタノール40mlを加え攪拌した。化合物(DA−2−1) 1.69gをその容器へ入れ、0℃に冷却して5分間攪拌した。攪拌後、反応溶液中にヒドラジン一水和物5mlをゆっくり滴下した。
0℃で3時間、室温で6時間攪拌し、反応を完結させた。酢酸エチル100ml及びTHF80mlを入れ、次に純水60mlを入れ、これを分液した。純水で再度分液したのちこれを濃縮し、化合物(DA−2) 1.18gを純度97%、黄色の固体1.18gとして得た。
[実施例1−3:化合物(DA−3)の合成]
下記スキーム3に従って、下記式(DA−3)で表される化合物を合成した。
Figure 2015215591
2−クロロ−5−ニトロピリミジン2.82gをトルエン25mlに懸濁させ、そこへトリエチルアミン1.99gを入れた。ピペラジン0.5gをクロロホルム2mlに溶解させた溶液をその容器へゆっくり滴下した。室温で30分攪拌した後、80℃で12時間攪拌した。この時、反応が進むにしたがって黄色い固体が析出した。冷却後、この固体を濾過し、水でよく洗浄後、酢酸エチルでトルエンを除去した。この固体を乾燥させ、化合物(DA−3−1) 1.51gを純度98%で得た。
次いで、Pd/C 0.3gを取り分けた三口フラスコを窒素置換し、そこへ酸素脱気したエタノール40mlを加えて攪拌した。化合物(DA−3−1) 1.51gをその容器へ入れ、0℃に冷却して5分間攪拌した。攪拌後、反応溶液中にヒドラジン一水和物5mlをゆっくり滴下した。
0℃で3時間、室温で6時間攪拌し、反応を完結させた。酢酸エチル100ml及びTHF80mlを入れ、次に純水60mlを入れ、これを分液した。純水で再度分液したのちこれを濃縮し、化合物(DA−3) 1.02gを純度98%、黄色の固体として得た。
[実施例1−4:化合物(DA−4)の合成]
下記スキーム4に従って、下記式(DA−4)で表される化合物を合成した。
Figure 2015215591
4−クロロ−2−ニトロピリジン2.5gをトルエン25mlに懸濁させ、そこへトリエチルアミン1.88gを入れた。ピペラジン0.5gをクロロホルム2mlに溶解させた溶液をその容器へゆっくり滴下した。室温で30分攪拌した後、80℃で12時間攪拌した。この時、反応が進むにしたがって黄色い固体が析出した。冷却後、この固体を濾過し、水でよく洗浄した後、酢酸エチルでトルエンを除去した。この固体を乾燥させ、化合物(DA−4−1) 1.78gを純度96%で得た。
次いで、Pd/C 0.3gを取り分けた三口フラスコを窒素置換し、そこへ酸素脱気したエタノール40mlを加えて攪拌した。化合物(DA−4−1) 1.78gをその容器へ入れ、0℃に冷却して5分間攪拌した。攪拌後、この反応溶液中にヒドラジン一水和物5mlをゆっくり滴下した。
0℃で3時間、室温で6時間攪拌し、反応を完結させた。酢酸エチル100ml及びTHF80mlを入れ、次に純水60mlを入れ、これを分液した。純水で再度分液したのちこれを濃縮し、化合物(DA−4) 1.44gを純度98%、黄色〜白色の固体として得た。
[実施例1−5:化合物(DC−1)の合成]
下記スキーム5に従って、下記式(DC−1)で表される化合物を合成した。
Figure 2015215591
化合物(DA−1)2.7gを純水25mlに懸濁させ、そこへ水酸化カリウム5.6g、ブロモ酢酸13.9gを入れた後、90℃で12時間攪拌した。この時、反応が進むにしたがって茶色に変化した。冷却後、この反応液を冷濃塩酸100mLの中へ投入し、再沈殿した固体を濾過し、水でよく洗浄した。この固体を乾燥させ、化合物(DC−1−1) 3.6gを純度98%で得た。
次いで、化合物(DC−1−1) 3.6g、無水酢酸20mLを容器へ入れ、60℃で6時間撹拌した。冷却後に析出した固体を濾過して化合物(DC−1) 2.2gを純度98%、黄色〜白色の固体として得た。
<重合体の合成>
[実施例2−1:ポリアミック酸(P1)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物50モル部、及びピロメリット酸二無水物50モル部、ジアミンとしてp−フェニレンジアミン50モル部、及び化合物(DA−1)50モル部を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は80mPa・sであった。
[実施例2−2〜2−28及び合成例2−29〜2−32]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量を下記表1のとおり変更した以外は上記実施例2−1と同様にしてポリアミック酸(P2)〜(P32)をそれぞれ合成した。
Figure 2015215591
表1中、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの括弧内の数値は、重合体の合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計100モル部に対する使用割合[モル部]を表す。表1中の略称は、それぞれ以下の意味である。
<テトラカルボン酸二無水物>
t−1:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
t−2:ピロメリット酸二無水物
t−3:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
t−4:p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)
t−5:1R,2S,4S,5R−1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
t−6:エチレンジアミン四酢酸二無水物
<ジアミン>
d−1:p−フェニレンジアミン
d−2:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
d−3:3,5−ジアミノ安息香酸
d−4:4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート
d−5:下記式(d−5)で表される化合物
d−6:下記式(d−6)で表される化合物
d−7:下記式(d−7)で表される化合物
DA−5:下記式(DA−5)で表される化合物
DA−6:下記式(DA−6)で表される化合物
Figure 2015215591
[実施例1A]
(1)液晶配向剤の調製
重合体として上記実施例2−1で得たポリアミック酸(P1)に、溶剤としてNMP及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶媒組成がNMP:BC=50:50(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより液晶配向剤(S1)を調製した。
(2)ラビング配向用液晶表示素子の製造
片面に櫛歯状に設けられたクロム電極を有する厚さ1mmのガラス基板上に、上記で調製した液晶配向剤(S1)をスピンナーにより塗布した。次いで、80℃のホットプレート上で1分間のプレベークを行った後、230℃のホットプレート上で10分間ポストベークして、膜厚約800Åの塗膜を形成した。形成された塗膜面に対し、ナイロン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンを用いて、ロールの回転数1,000rpm、ステージの移動速度25mm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmにてラビング処理を行い、液晶配向能を付与した。さらにこの基板を超純水中で1分間超音波洗浄し、100℃クリーンオーブンで10分間乾燥することにより、櫛歯状のクロム電極を有する面上に液晶配向膜を有する基板を製造した。この液晶配向膜を有する基板を「基板A」とした。
これとは別に、電極を有さない厚さ1mmのガラス基板の一面に、上記と同様にして液晶配向剤(S1)の塗膜を形成し、ラビング処理を行い、洗浄、乾燥して、片面上に液晶配向膜を有する基板を製造した。この液晶配向膜を有する基板を「基板B」とした。
続いて、基板Aの液晶配向膜を有する面の外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、各液晶配向膜におけるラビング方向が逆平行となるように、間隙を介して2枚の基板A,Bを対向配置し、外縁部同士を当接させて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック液晶(メルク社製、MLC−2042)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することによりIPS型液晶セルを製造した。
(3)信頼性の評価
上記(2)で製造した液晶セルを用いて信頼性を評価した。評価は以下のようにして行った。まず、上記の液晶セルに、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(VHR1)を測定した。次いで、液晶セルを、LEDランプ照射下の80℃オーブン中で200時間静置した後、室温中に静置して室温まで自然冷却した。冷却後、液晶セルに5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(VHR2)を測定した。なお、測定装置は(株)東陽テクニカ製「VHR−1」を使用した。このときのVHRの変化率(ΔVHR)を下記数式(2)により算出し、ΔVHRによって信頼性を評価した。評価は、ΔVHRが1%未満であった場合を信頼性「良好(◎)」、1%以上2%未満であった場合を信頼性「可(○)」、2%以上であった場合を信頼性「不良(×)」と判定した。その結果、実施例1Aでは信頼性「良好」であった。
ΔVHR[%]=(VHR1−VHR2)/(VHR1)×100 …(2)
(4)液晶配向性の評価
上記(2)で製造した液晶セルにつき、電圧をオン・オフ(印加・解除)したときの異常ドメインの有無を偏光顕微鏡で観察し、異常ドメインのない場合を液晶配向性「良好」、異常ドメインがひとつでもある場合を液晶配向性「不良」と判定した。その結果、この実施例の液晶セルの液晶配向性は「良好」であった。
(5)残像特性(焼き付き特性)
基板として、櫛歯状にパターニングされたクロムからなる2系統の金属電極(電極a及び電極b)を片面に有するガラス基板と、電極が設けられていない対向ガラス基板とを一対として用いた以外は上記(2)と同様にしてIPS型液晶セルを製造した。次いで、液晶セルの基板の外側両面に偏光板を貼り合わせ、液晶表示素子を製造した。このIPS型液晶表示素子を25℃、1気圧の環境下に置き、電極bには電圧をかけずに、電極aには交流電圧3.5Vと直流電圧5Vの合成電圧を2時間印加した。その直後、電極a及び電極bの双方に交流4Vの電圧を印加した。両電極に交流4Vの電圧を印加し始めた時点から、電極a及び電極bの光透過性の差が目視で確認できなくなるまでの時間を測定した。この時間が100秒未満であった時の残像特性を「良好」、100秒以上150秒未満であった時の残像特性を「可」、そして150秒を超えた場合の残像特性を「不良」として評価した。その結果、実施例1Aの液晶セルでは残像特性「良好」の結果であった。
[実施例2A〜11A、28A及び比較例1,2]
使用する重合体の種類を下記表2に示す通り変更した以外は上記実施例1Aと同じ溶剤比及び固形分濃度で液晶配向剤(S2)〜(S11)及び(S28)〜(S30)をそれぞれ調製した。また、それぞれの液晶配向剤を用いて実施例1Aと同様にして液晶セルを製造するとともに、得られた液晶セルを用いて各種評価を行った。その結果を下記表2に示した。
[実施例12A]
(1)液晶配向剤の調製
使用する重合体の種類をポリアミック酸(P12)に変更した以外は上記実施例1Aと同じ溶剤比及び固形分濃度で液晶配向剤(S12)を調製した。
(2)光配向膜用液晶表示素子の製造
片面に櫛歯状に設けられたクロム電極を有する厚さ1mmのガラス基板上に、上記で調製した液晶配向剤(S12)を、膜厚が0.1μmになるようにスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレート上で1分間のプレベークを行った後、230℃のホットプレート上で10分間ポストベークして塗膜を形成した。この塗膜を有する基板を「基板A」とした。
これとは別に、電極を有さない厚さ1mmのガラス基板の一面に、上記と同様にして液晶配向剤(S12)の塗膜を形成した。この塗膜を有する基板を「基板B」とした。
次いで、基板A及び基板Bの塗膜表面に、Hg−Xeランプを用いて、254nmの輝線を含む偏光の紫外線10,000J/mを基板法線方向から照射し、液晶配向膜を形成した。
次に、上記光照射処理を行った一対の基板について、液晶配向膜を形成した面の縁に液晶注入口を残して直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、光照射時の偏光軸の基板面への投影方向が逆平行となるように基板を重ね合わせて圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、一対の基板間に液晶注入口よりネマチック液晶(メルク社製、MLC−7028)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に、基板の外側両面に、偏光板を貼り合わせて液晶表示素子を作製した。
(3)信頼性の評価
上記(2)で製造した液晶表示素子を用いた以外は上記実施例1Aと同様にして信頼性の評価を行ったところ、この実施例ではΔVHR=1.6%であり、信頼性「可」の結果であった。
(4)液晶配向性の評価
上記(2)で製造した液晶表示素子を用いた以外は上記実施例1Aと同様にして信頼性の評価を行ったところ、この実施例では液晶配向性「良好」の結果であった。
(5)残像特性(焼き付き特性)
液晶配向剤(S12)を用いた点以外は上記実施例1Aと同様にして残像特性を評価したところ、この実施例では残像特性「可」の評価であった。
[実施例13A〜27A及び比較例3,4]
使用する重合体の種類を下記表2に示す通り変更した以外は上記実施例1Aと同じ溶剤比及び固形分濃度で液晶配向剤(S13)〜(S27)、(S31)、(S32)をそれぞれ調製した。また、各液晶配向剤を用いて実施例12Aと同様にして液晶セルを製造するとともに、得られた液晶セルを用いて各種評価を行った。その結果を下記表2に示した。
Figure 2015215591
表2に示すように、実施例1A〜28Aではいずれも、光ストレス及び熱ストレス環境下に長時間(200時間)曝した後であっても電圧保持率の低下が少なく、信頼性が良好であった。これに対し、比較例1〜4では、光ストレス及び熱ストレスの付与によって電圧保持率が大きく低下し、信頼性「不良」の評価であった。
また、液晶配向性について、実施例1A〜28Aではいずれも配向不良は観察されず、残像特性についても、実施例に関してはどのサンプルも「良好」又は「可」の評価であった。
以上のように、実施例に用いられた構造を有する液晶配向膜は液晶配向性を乱すことなく、信頼性の高い特性を有していることが確認された。

Claims (14)

  1. 下記式(1)で表される部分構造を主鎖に有する重合体(P)を含有する、液晶配向剤。
    Figure 2015215591
    (式(1)中、Xは2価の有機基であり、Yは、2価の連結基又は単結合である。ただし、2個のXの少なくとも一方は2価の芳香族複素環基であり、2個のXの一方のみが2価の芳香族複素環基である場合、Yは1個以上の窒素原子を有する2価の連結基であって且つ2個のXはY中の同一の又は異なる窒素原子に結合している。2個のXは同じでも異なっていてもよい。「*」は結合手を示す。)
  2. 前記Yは、1個以上の窒素原子を有する2価の連結基又は単結合であり、
    前記Yが1個以上の窒素原子を有する2価の連結基である場合、上記式(1)中の2個のXは前記Y中の同一の又は異なる窒素原子に結合している、請求項1に記載の液晶配向剤。
  3. 前記部分構造は下記式(2)で表される、請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
    Figure 2015215591
    (式(2)中、Xは2価の有機基であり、ただし、2個のXの少なくとも一方は2価の芳香族複素環基である。Rは、単結合、炭素数1〜6のアルカンジイル基又はシクロヘキシレン基であり、Rは、水素原子若しくは炭素数1〜6のアルキル基であるか、又は2個のRが互いに結合して2個の窒素原子及びRと共に炭素数2〜10の2価の脂環式複素環基を形成する。2個のXは同じでも異なっていてもよく、2個のRは同じでも異なっていてもよい。pは0又は1である。「*」は結合手を示す。)
  4. 前記重合体(P)は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
  5. 前記重合体(P)は、下記式(3)で表される化合物をモノマー組成に含む重合により得られる重合体である、請求項4に記載の液晶配向剤。
    Figure 2015215591
    (式(3)中、Xは2価の有機基であり、ただし、2個のXの少なくとも一方は2価の芳香族複素環基である。Zは1級アミノ基又は下記式(z−1)
    Figure 2015215591
    (式(z−1)中、「*」はXとの結合手を示す。)
    で表される基である。Rは、単結合、炭素数1〜6のアルカンジイル基又はシクロヘキシレン基であり、Rは、水素原子若しくは炭素数1〜6のアルキル基であるか、又は2個のRが互いに結合して2個の窒素原子及びRと共に炭素数2〜10の2価の脂環式複素環基を形成する。2個のXは同じでも異なっていてもよく、2個のRは同じでも異なっていてもよい。pは0又は1である。)
  6. 上記式(1)中の2個のXは2価の芳香族複素環基である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
  7. 前記Yは、2個以上の窒素原子を有する2価の連結基又は単結合であり、
    前記Yが2個以上の窒素原子を有する2価の連結基である場合、前記2個のXは前記Y中の異なる窒素原子に結合している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて塗膜を形成する工程と、前記塗膜に光照射して液晶配向能を付与する工程と、を含む液晶配向膜の製造方法。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて塗膜を形成する工程と、前記塗膜にラビング処理して液晶配向能を付与する工程と、を含む液晶配向膜の製造方法。
  10. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶配向剤により形成された液晶配向膜。
  11. 請求項10に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
  12. ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種であって、下記式(1)で表される部分構造を主鎖に有する重合体。
    Figure 2015215591
    (式(1)中、Xは2価の有機基であり、Yは、2価の連結基又は単結合である。ただし、2個のXの少なくとも一方は2価の芳香族複素環基であり、2個のXの一方のみが2価の芳香族複素環基である場合、Yは1個以上の窒素原子を有する2価の連結基であって且つ2個のXはY中の同一の又は異なる窒素原子に結合している。2個のXは同じでも異なっていてもよい。「*」は結合手を示す。)
  13. 前記部分構造は下記式(2)で表される、請求項12に記載の重合体。
    Figure 2015215591
    (式(2)中、Xは2価の有機基であり、ただし、2個のXの少なくとも一方は2価の芳香族複素環基である。Rは、単結合、炭素数1〜6のアルカンジイル基又はシクロヘキシレン基であり、Rは、水素原子若しくは炭素数1〜6のアルキル基であるか、又は2個のRが互いに結合して2個の窒素原子及びRと共に炭素数2〜10の2価の脂環式複素環基を形成する。2個のXは同じでも異なっていてもよく、2個のRは同じでも異なっていてもよい。pは0又は1である。「*」は結合手を示す。)
  14. 下記式(3)で表される化合物。
    Figure 2015215591
    (式(3)中、Xは2価の有機基であり、ただし、2個のXの少なくとも一方は2価の芳香族複素環基である。Zは1級アミノ基又は下記式(z−1)
    Figure 2015215591
    (式(z−1)中、「*」はXとの結合手を示す。)
    で表される基である。Rは、単結合、炭素数1〜6のアルカンジイル基又はシクロヘキシレン基であり、Rは、水素原子若しくは炭素数1〜6のアルキル基であるか、又は2個のRが互いに結合して2個の窒素原子及びRと共に炭素数2〜10の2価の脂環式複素環基を形成する。2個のXは同じでも異なっていてもよく、2個のRは同じでも異なっていてもよい。pは0又は1である。)
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