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JP2015205333A - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】連続鋳造機にて鋳片に横割れが発生するのを防止し、かつ鋳造速度の増速が可能な連続鋳造方法を提供する。
【解決手段】連続鋳造機の鋳型2の下端における鋳片1の厚みDM(mm)と、鋳片1の引抜き方向に沿って鋳型2内の湯面から3m下方の位置における鋳片1の厚みDV(mm)とが100×(DM−DV)/DM≧5%を満足するように、鋳型2から引抜かれた鋳片1に圧下を加えるとともに、鋳型2の下端と垂直部下端との間で、鋳片1に2次冷却水を吹付けて鋳片1の表面温度を100+(Ar1変態点/2)+(Ar3変態点/2)(℃)以下で40秒以上保持した後、さらに鋳片1を100+Ac3変態点(℃)以上に復熱させる。
【選択図】図3

Description

本発明は、鋳片の横割れの防止に有用な鋼の連続鋳造方法に関するものである。
溶鋼の連続鋳造機は、鋳型から垂直下方へ鋳片を引抜く垂直型、鋳型から垂直下方へ鋳片を引抜いた後に途中で湾曲させて水平方向へ引抜く垂直曲げ型、鋳型の下端から鋳片を湾曲させて水平方向へ引抜く湾曲型が実用化されている。これらの連続鋳造機は、いずれも屋内に設置されるものであるが、垂直型連続鋳造機は、建屋を大幅に高くしなければならず、しかも鋳造速度に制約が生じるので、垂直曲げ型連続鋳造機あるいは湾曲型連続鋳造機が広く普及している。
図1は、垂直曲げ型連続鋳造機における鋳型と鋳片を模式的に示す断面図である。垂直曲げ型連続鋳造機では、鋳片1は、鋳型2の下方へ引抜かれた後、垂直部から湾曲部へ移行し、さらに水平部に移行する。ここでは垂直曲げ型連続鋳造機にて、鋳片が垂直部から湾曲部へ移行することによって矯正される部位を上部矯正帯と記し、湾曲部から水平部へ移行することによって矯正される部位を下部矯正帯と記す。
つまり上部矯正帯および下部矯正帯では、鋳片1に曲げ応力が作用し、上部矯正帯では鋳片1の下面側に引張り歪が生じ、下部矯正帯では鋳片1の上面側に引張り歪が生じる。その結果、鋳片1の上面側や下面側の表面、とりわけコーナー部に、図2に示すような横割れ3が発生し易くなる。このような鋳片1に発生する横割れ3は、その後の工程で様々な加工(たとえば熱間圧延、冷間圧延等)を施しても消滅せず、加工によって欠陥が顕在化することになって各種鋼材の歩留り低下の原因となる。
また、湾曲型連続鋳造機は、図1中の垂直部が存在しない連続鋳造機であり、鋳型2の下端より下で鋳片の曲率半径が小さくなる部分が上部矯正帯となる。したがって垂直曲げ型連続鋳造機と同様に横割れ3が発生し易く、各種鋼材の歩留り低下を招く。
一方で、近年、高強度鋼材の需要の増加に伴ってNb、V、B、N等を添加した種々の鋼材が開発されている。これらの元素を添加した鋼の鋳片は結晶粒界に析出物が生じ易く、割れ感受性が高いので、連続鋳造機の上部矯正帯や下部矯正帯における横割れの発生を抑制するために、鋳造速度を低減する等の操業上の制約を設けているので、連続鋳造機の生産性の低下を招く。しかも横割れが発生した場合には、鋳片の表面を手入れしなければならず、工程の管理に多大な負荷がかかる。
そこで、連続鋳造機の上部矯正帯や下部矯正帯にて横割れが発生するのを防止する技術が検討されている。
たとえば特許文献1には、鋳型から下方へ引抜かれた鋳片の2次冷却を調整することによって横割れを防止する技術の一例として、鋳型下方の2次冷却帯にて強く冷却し、鋳片の表面温度を一旦Ar3変態点以下まで冷却し、その後、Ar3変態点以上の950〜1200℃に復熱させることによって、オーステナイト結晶(以下、γ結晶という)粒界の粗大な析出物を低減して、析出物を粒内に分散する形態とすることにより、横割れを防止する技術が開示されている。
しかし、この技術では、上部矯正帯までの2次冷却帯にて強冷却および復熱を行なうために鋳造速度を減速させる必要があり、連続鋳造機の生産性が低下する。
また、Ar3変態点〜Ar1変態点は鋼種によって異なるものの、一般に600〜780℃程度であり、その温度域の鋳片を均一に冷却する必要がある。ところが、2次冷却帯にて鋳片に噴射する冷却水(以下、2次冷却水という)の伝熱挙動は、700℃付近で膜沸騰→遷移沸騰→核沸騰と変化するので、鋳片を均一に冷却するための温度制御が困難である。しかも2次冷却帯では、2次冷却水の重なり量やノズル閉塞、鋳片のスケール付着状況等に応じて冷却特性が著しく変動するので、所定の強冷却と復熱を精度良く行なうことは極めて困難である。
特に垂直曲げ型連続鋳造機では、一般に、鋳型内の湯面(いわゆるメニスカス)から下方3m前後の位置に上部矯正帯を設けるように設計されており、鋳型の下端から上部矯正帯までの垂直部にて強冷却のみならず復熱を行なう観点から、鋳造速度の増速は期待できない。
特許文献2には、鋳片に歪を付与することによって横割れを防止する技術の一例として、鋳型から下方へ引抜かれた鋳片の表層部に、表面温度が700℃付近において所定の歪速度で5%以上の加工歪を付与することによって、炭窒化物の析出核をγ結晶粒内に生成するとともに、Ar3変態点以下に降温させてからAc3変態点以上に復熱させることによってγ粒を微細にして、下部矯正帯における横割れの発生を防止する技術が開示されている。炭窒化物がγ結晶粒界に連続的に析出すれば、鋳片が脆化して、下部矯正帯にて横割れを発生させる原因となるが、上記のようにγ結晶粒内に析出させるとともにγ結晶粒を微細にして歪を分散することによって、下部矯正帯での横割れを防止することができる。
しかし、この技術を上部矯正帯での割れ防止に適用するには、特許文献1に記載された方法と同様に、上部矯正帯までの2次冷却帯にて強冷却および復熱を行なうために鋳造速度を減速させる必要があることや、この温度域での2次冷却の制御性に課題があることが問題であった。
特許第3239808号公報 特許第1829043号公報
本発明は、連続鋳造機にて鋳片に横割れが発生するのを防止し、かつ鋳造速度の増速が可能な連続鋳造方法を提供することを目的とする。
発明者は、連続鋳造機(特に垂直曲げ型あるいは湾曲型の連続鋳造機)における鋳片の矯正に起因する横割れを防止することが可能な連続鋳造方法について検討し、以下のような知見を得た。
垂直曲げ型連続鋳造機では、鋳片が垂直下方へ引抜かれる垂直部(すなわち湯面から下方3mの範囲)で、オーステナイト→フェライト→オーステナイトの相変態を発現させてγ結晶を微細化することによって、鋳片の高温延性を改善できる。また、同じく垂直部で鋳片に歪を付与することによって、Ar3変態点を約100℃高くすることができるので、700℃付近にて2次冷却水の沸騰現象が膜沸騰→遷移沸騰→核沸騰と変化しても、相変態を安定して制御できる。したがって、鋳造速度を増速することも可能である。
湾曲型連続鋳造機では、垂直部は存在せず、鋳型の下端より下で鋳片の曲率半径が小さくなる部分が上部矯正帯となるが、鋳型内の湯面から下方3mの範囲で歪を付与して、オーステナイト→フェライト→オーステナイトの相変態を発現させれば、同様の効果が得られる。ここで、湯面から下方3mの範囲は、湾曲した鋳片に沿った方向(すなわち引抜き方向)の距離である。
また、鋳片に付与する歪は5%以上必要であるが、鋳片の高温延性を改善することによって、割れの発生を防止できる。しかも湯面から下方3mの範囲では、鋳片の凝固部(いわゆる凝固シェル)の厚みが50mm程度と薄いので、鋳片の短辺方向に圧下して、矯正時に割れの発生し易い鋳片のコーナー部に歪を付与することは容易である。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、連続鋳造機の鋳型の下端における鋳片の厚みDM(mm)と、鋳片の引抜き方向に沿って鋳型内の湯面から3m下方の位置における鋳片の厚みDV(mm)とが下記の(1)式を満足するように、鋳型から引抜かれた鋳片に圧下を加えるとともに、鋳型の下端と鋳型内の湯面から3m下方の位置との間で、鋳片に2次冷却水を吹付けて鋳片の表面温度を100+(Ar1変態点/2)+(Ar3変態点/2)(℃)以下で40秒以上保持した後、さらに鋳片を100+Ac3変態点(℃)以上に復熱させる鋼の連続鋳造方法である。
100×(DM−DV)/DM≧5% ・・・(1)
また、本発明は、垂直曲げ型連続鋳造機の鋳型の下端における鋳片の厚みDM(mm)に対して、垂直曲げ型連続鋳造機の垂直部下端における鋳片の厚みがDMの95%以下となるように鋳型から引抜かれた鋳片に圧下を加えるとともに、鋳型の下端と垂直部下端との間で、鋳片に2次冷却水を吹付けて鋳片の表面温度を100+(Ar1変態点/2)+(Ar3変態点/2)(℃)以下で40秒以上保持した後、さらに鋳片を100+Ac3変態点(℃)以上に復熱させる鋼の連続鋳造方法である。
なお復熱は、2次冷却水の吹付けを軽減あるいは停止することによって可能である。
本発明では、鋳片の鋳造速度を1.5m/分以上として連続鋳造を行なうことが可能である。
ここで規定する鋳片の表面温度は、連続鋳造の操業中に測定したり、伝熱計算によって求められる表面温度であって、特に矯正時に割れが発生し易い、長辺面のコーナー部近傍50mmまでの範囲の温度である。
本発明によれば、連続鋳造機にて鋳片に横割れが発生するのを防止し、かつ鋳造速度を増速することができる。そして、連続鋳造機の省エネルギーおよび生産性向上、手入れ工程の省略が可能となり、鋳片の製造コスト削減を図ることができるので、産業上格段の効果を奏する。
垂直曲げ型連続鋳造機における鋳型と鋳片を模式的に示す断面図である。 鋳片の横割れの例を模式的に示す斜視図である。 図1に示す垂直曲げ型連続鋳造機の垂直部における圧下と冷却の例を模式的に示す断面図である。 強冷却における保持時間と微細γ組織の厚みとの関係を示すグラフである。
連続鋳造機の例として、図1に示す垂直曲げ型連続鋳造機の垂直部における圧下と冷却について、図3を参照して説明する。図3は、図1中の垂直部に配設される圧下ロール4、サポートロール5、強冷却ノズル6、弱冷却ノズル7の配置の例を模式的に示す、鋳片の長辺面に垂直な断面図である。
まず、圧下ロール4による鋳片1の圧下について説明する。
圧下ロール4を鋳型2内の湯面8から下方3mまでに配設して、鋳片1を圧下する。鋳型2の下端における鋳片1の厚みをDM(mm)、鋳型内の湯面から3m下方における鋳片1の厚みをDV(mm)として、下記の(1)式を満足するように、圧下ロール4で鋳片1に圧下を加える。
なお、(1)式中の圧下率(%)は、圧下率(%)=100×(DM−DV)/DMで算出される値である。
圧下率≧5% ・・・(1)
垂直曲げ型連続鋳造機では、上記の鋳型内の湯面から3m下方の位置は、垂直部の下端近くとなることが一般的である。垂直曲げ型連続鋳造機では、垂直部下端における鋳片の厚みが上記のDMの95%以下となるように圧下を加えてもよい。
圧下率が5%未満では、炭窒化物の析出核をγ結晶粒内に生成し、さらに炭窒化物を成長させる効果が得られない。また、歪の付与によりオーステナイト→フェライトの変態温度を上昇させる効果が不十分となって、次に述べる鋳片の表面温度の制御を行なっても、十分にγ結晶を微細化して横割れを防止する効果が得られない場合がある。一方、圧下率が20%を超えると、鋳片1に割れが発生し易く、ひいては未凝固の溶鋼1bが流出するおそれがあり、鋳片の内部割れの発生も顕著となる。したがって、圧下率は5〜20%の範囲内が好ましい。
このようにして、垂直部にて鋳片1に歪を付与することによって、炭窒化物をγ結晶粒内に析出させかつ成長させて、上部矯正帯や下部矯正帯における鋳片1の横割れを防止する。また、歪の付与によってオーステナイト→フェライトの変態温度を上昇させることにより、鋳片の引抜速度が1.5m/分以上の高速鋳造速度条件においても、後述する鋳片の表面温度の制御によって、γ結晶を微細化して横割れを防止する効果が安定して得られる。
図3には4対(合計8個)の圧下ロール4を配設する例を示したが、本発明では圧下ロール4の個数は特に限定しない。圧下率が上記の範囲を満足するように、鋳片1の寸法等に応じて適宜配設すれば良い。
所定の圧下を加えた後は、サポートロール5で鋳片1を支持しつつ下方へ引抜く。このサポートロール5は圧下を加えるものではないので、鋳片1厚みは変化しない。
次に、強冷却ノズル6と弱冷却ノズル7による鋳片1の冷却について説明する。なお、ここで説明する鋳片の温度は、連続鋳造の操業中に測定が可能な鋳片表面の温度である。
鋳型2内の湯面8から下方3mまでに強冷却ノズル6と弱冷却ノズル7を配設して、鋳片1を冷却した後、復熱する。垂直曲げ型連続鋳造機では、上記の鋳型内の湯面から3m下方の位置は、垂直部の下端近くとなることが一般的であり、鋳型の下端から垂直部の下端までの範囲に強冷却ノズル6と弱冷却ノズル7を配設して、鋳片1を冷却した後、復熱するようにしてもよい。
上記の圧下による歪の付与と並行して、鋳型2から下方へ引抜かれた鋳片1に強冷却ノズル6から2次冷却水を吹付けて、鋳片1を100+(Ar1変態点/2)+(Ar3変態点/2)(℃)以下に冷却して40秒以上保持することによって、歪の付与によって相変態温度が上昇することから、オーステナイト→フェライトの相変態が効果的に進行する。
鋳片1の表面温度が100+(Ar1変態点/2)+(Ar3変態点/2)(℃)を超える状態で強冷却を終了すると、オーステナイト→フェライトの相変態が困難になる。ここで相変態はフェライト分率を100%とする必要はなく、フェライト分率が50%以上であれば、後述する逆変態によって鋳片の高温延性を改善する効果が得られる。一方、鋳片1の表面温度を(Ar1変態点/2)+(Ar3変態点/2)未満まで冷却するためには、鋳片1を引抜く速度(すなわち鋳造速度)を著しく減速しなければならないので、生産性の低下を招く。したがって、強冷却における鋳片1の表面温度は(Ar1変態点/2)+(Ar3変態点/2)〜100+(Ar1変態点/2)+(Ar3変態点/2)(℃)の範囲内が好ましく、より好ましくは、Ar3変態点超え〜(Ar1変態点/2)+(Ar3変態点/2)の範囲内とする。ここで、Ar3変態点およびAr1変態点は、鋼成分および冷却速度によって異なり、正確には鋼成分毎に、フォーマスタ試験機等によって、連続鋳造機での鋳片表面の冷却速度に相当する10℃/秒程度の冷却速度において、オーステナイト→フェライト相変態による膨張の開始時点および終了時点の温度として測定されるが、鋼成分を変数とした計算式を測定結果に基づいて作成し、この計算結果で代用することもできる。
また、鋳片1の表面温度を上記の範囲に保持する時間が40秒未満では、オーステナイト→フェライトの相変態が困難になる。つまり、図4に示すように、40秒以上保持すれば、後述する逆変態によって鋳片1の表層2mmの深さまでγ結晶を微細化することが可能となり、高温延性を改善する効果が得られる。鋳片1の表層2mmの深さまでγ結晶を微細化すれば、横割れを防止できる。一方、80秒を超えて保持するためには、鋳造速度を著しく減速しなければならないので、生産性の低下を招く。したがって、鋳片1の温度を上記の範囲に保持する時間は40〜80秒の範囲内が好ましい。
そして、強冷却を行なった後に、弱冷却ノズル7から2次冷却水を吹付けて、鋳片1を100+Ac3変態点(℃)以上に復熱させて、フェライト→オーステナイトの逆変態を発現させる。弱冷却ノズル7から吹付ける2次冷却水の水量は、強冷却ノズル6からの2次冷却水よりも少ないので、凝固シェル1a内の溶鋼1bによって復熱させることが可能である。あるいは、弱冷却ノズル7からの2次冷却水の吹付けを停止しても良い。
復熱による鋳片1の表面温度が100+Ac3変態点(℃)未満では、フェライト→オーステナイトの逆変態が困難になる。一方、鋳片の表面温度が1200℃を超えると、凝固シェルの強度が低下してサポートロール間でのバルジングによる歪が増大し、鋳片の内部割れの発生が顕著となる。したがって、復熱による鋳片1の温度は100+Ac3変態点〜1200(℃)の範囲内が好ましい。ここで、Ac3変態点は、正確には鋼成分毎に、フォーマスタ試験機等によって、フェライト→オーステナイト相変態による収縮の終了時点の温度として測定されるが、鋼成分を変数とした計算式を測定結果に基づいて作成し、この計算結果で代用することもできる。
このようにして、垂直部にてオーステナイト→フェライト→オーステナイトの相変態を発現させてγ結晶を微細化することによって、鋳片の高温延性を改善する。その結果、上部矯正帯や下部矯正帯における鋳片1の横割れを防止することができる。
図3には、鋳片の長辺面に垂直なある断面図において、4対(合計8個)の強冷却ノズル6と3対(合計6個)の弱冷却ノズル7を配設する例を示したが、本発明では強冷却ノズル6と弱冷却ノズル7の個数は特に限定しない。鋳片1の温度が上記の範囲を満足するように、鋳片1の寸法等に応じて適宜配設すれば良い。
本発明を適用すれば、鋳造速度1.5m/分以上で連続鋳造を行なうことができる。ただし鋳造速度が3.0m/分を超えると、上記の相変態が困難になる。したがって、鋳造速度は1.5〜3.0m/分の範囲内が好ましい。
以上に垂直曲げ型連続鋳造機にて本発明を適用して連続鋳造を行なう例について説明したが、湾曲型連続鋳造機では、鋳型内の湯面から下方3mの範囲でオーステナイト→フェライト→オーステナイトの相変態を発現させ、かつ歪を付与すれば、同様の効果が得られる。ここで、湯面から下方3mの範囲は、湾曲した鋳片に沿った方向(すなわち引抜き方向)の距離である。
垂直型連続鋳造機は、上部矯正帯と下部矯正帯が存在しないが、割れ感受性の高い鋼種に本発明を適用して連続鋳造を行なうと、鋳片の割れを防止することができる。
図1に示すような垂直曲げ型連続鋳造機(垂直部長さ:鋳型下端から2.5m、湾曲部半径:9m)で溶鋼の連続鋳造を行なった。ここで、垂直部下端(すなわち上部矯正帯上端)は鋳型2内の湯面8から3m下方に位置する。溶鋼の成分は表1に示す通りである。
Figure 2015205333
そして図3に示すように、湯面8から0.7〜1.6mの範囲(すなわち垂直部内)に4対の圧下ロール4を設置して、対向する各組の圧下ロール毎に4mmずつ(合計16mm)の圧下を加えた。鋳型2の下端における鋳片1の厚みDM=260mmであるから、湯面8から3m下方(すなわち垂直部下端)における鋳片1の厚みDV=244mmとなり、圧下率=100×(DM−DV)/DMは6.15%である。
垂直部では2次冷却水を鋳片1に吹付けて2次冷却を行なった。その際、湯面8から下方0.9〜1.8mの範囲で強冷却(水量密度500 liter/分/m2)を行なって、100+(Ar1変態点/2)+(Ar3変態点/2)(℃)以下まで冷却し、その後に、湯面8から下方2.0〜3.0mの範囲で弱冷却(水量密度50 liter/分/m2)を行なうことによって、表2に示す保持時間の間100+(Ar1変態点/2)+(Ar3変態点/2)(℃)以下に保持した後に、100+Ac3変態点(℃)以上に復熱させた。鋳造速度は表2に示す通りである。これを発明例(表2中のNo.1〜5)とする。
一方、比較例(表2中のNo.6〜15)として、垂直部で鋳片の圧下を加えず、鋳型2の下端における鋳片1の厚みDM=260mmを維持して連続鋳造を行なった。なお、湯面8から下方0.9〜1.8mの範囲で強冷却を行ない、湯面8から下方2.0〜3.0mの範囲で弱冷却を行なった。鋳造速度、強冷却における水量密度と保持時間、弱冷却における水量密度は表2に示す通りである。
No.6〜10の比較例は、強冷却範囲の水量密度をNo.1〜5の発明例よりも増大させて、更に強冷却を図った例であり、No.11〜15の比較例は、強冷却および復熱の2次冷却(水量密度)パターンから、通常の平準化した2次冷却パターンに変更した例である。
Figure 2015205333
得られた鋳片の表面を観察して、横割れの発生状況を調査した。その結果を表2に示す。なお表2では、横割れが認められなかったものを○、横割れが鋳片の引抜き方向1mあたり2個以下のものを△、横割れが鋳片の引抜き方向1mあたり3個以上のものを×として示す。
表2から明らかなように、発明例では横割れは皆無であったが、比較例では横割れが発生した。垂直部で鋳片に圧下を加えずに強冷却および復熱の2次冷却パターンとしたNo.6〜10の比較例では、通常の平準化した2次冷却パターンのNo.11〜15の比較例と比べて、鋳造速度が低い場合には、横割れの低減効果が見られたが、鋳造速度が1.6m/分以上では、顕著な効果は得られなかった。これに対して、垂直部で鋳片に圧下を加えたNo.1〜5の発明例では、100+(Ar1変態点/2)+(Ar3変態点/2)(℃)以下の保持時間は、同じ鋳造速度のNo.6〜10の比較例に対して短いにも関わらず、顕著な横割れ防止効果が確認された。
1 鋳片
1a 凝固シェル
1b 溶鋼
2 鋳型
3 横割れ
4 圧下ロール
5 サポートロール
6 強冷却ノズル
7 弱冷却ノズル
8 湯面

Claims (3)

  1. 連続鋳造機の鋳型の下端における鋳片の厚みDM(mm)と、該鋳片の引抜き方向に沿って前記鋳型内の湯面から3m下方の位置における前記鋳片の厚みDV(mm)とが下記の(1)式を満足するように、前記鋳型から引抜かれた前記鋳片に圧下を加えるとともに、前記鋳型の下端と前記湯面から3m下方の位置との間で、前記鋳片に2次冷却水を吹付けて前記鋳片の表面温度を100+(Ar1変態点/2)+(Ar3変態点/2)(℃)以下で40秒以上保持した後、さらに前記鋳片を100+Ac3変態点(℃)以上に復熱させることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
    100×(DM−DV)/DM≧5% ・・・(1)
  2. 垂直曲げ型連続鋳造機の鋳型の下端における鋳片の厚みDM(mm)に対して、前記垂直曲げ型連続鋳造機の垂直部下端における前記鋳片の厚みが前記DMの95%以下となるように前記鋳型から引抜かれた前記鋳片に圧下を加えるとともに、前記鋳型の下端と前記垂直部下端との間で、前記鋳片に2次冷却水を吹付けて前記鋳片の表面温度を100+(Ar1変態点/2)+(Ar3変態点/2)(℃)以下で40秒以上保持した後、さらに前記鋳片を100+Ac3変態点(℃)以上に復熱させることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
  3. 前記鋳片の鋳造速度を1.5m/分以上とすることを特徴とする請求項1または2に記載の連続鋳造方法。
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