以下、図面を参照して、本発明を、カードに文字や画像を印刷記録するとともに、カードに磁気的ないし電気的な情報記録を行う印刷装置に適用した実施の形態について説明する。
<システム構成>
図1および図14に示すように、本実施形態の印刷装置1は印刷システム200の一部を構成している。すなわち、印刷システム200は、大別して、上位装置201(例えば、パーソナルコンピュータ等のホストコンピュータ)と、印刷装置1とで構成されている。
印刷装置1は、図示を省略したインターフェースを介して、上位装置201に接続されており、上位装置201から印刷装置1に印刷データや磁気的ないし電気的記録データ等を送信して、記録動作等を指示することが可能である。なお、印刷装置1は、オペパネ部(操作表示部)5を有しており(図14参照)、上位装置201からの記録動作指示の他、オペパネ部5からの記録動作指示も可能である。
上位装置201には、デジタルカメラやスキャナ等の画像入力装置204、上位装置201に命令やデータを入力するためのキーボードやマウス等の入力装置203、上位装置201によって生成されたデータ等の表示を行なう液晶ディスプレイ等のモニタ202が接続されている。
<印刷装置>
図2に示すように、印刷装置1はハウジング2を有しており、ハウジング2には情報記録部Aと画像形成部Bと媒体収容部Cと収容部Dとが備えられる。
情報記録部Aは、磁気記録部24と、非接触式IC記録部23と、接触式IC記録部27とで構成される。
媒体収容部Cは、複数枚のカードを立位姿勢で整列して収納しており、その先端には分離開口7が設けられて、ピックアップローラ19にて最前列のカードから繰り出し供給するようになっている。
繰り出されたカードは、先ず搬入ローラ22にて反転ユニットFに送られる。反転ユニットFはハウジング2に旋回動可能に軸受け支持された回転フレーム80と、このフレームに支持された2つのローラ対20、21にて構成される。そして、ローラ対20、21は回転フレーム80に回転自在に軸支持されている。
反転ユニットFが旋回する外周には、磁気記録部24と、非接触式IC記録部23および接触式IC記録部27が配置されている。そして、ローラ対20、21は、これらの情報記録部23、24、27の何れかに向けて搬入する媒体搬入経路65を形成し、これらの記録部にてカードには磁気的若しくは電気的にデータが書き込まれる。
画像形成部Bは、カードの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成するもので、媒体搬入経路65の延長上にカードを移送する媒体搬送経路P1が設けられている。また、媒体搬送経路P1にはカードを搬送する搬送ローラ29、30が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
画像形成部Bはフィルム状媒体搬送装置を備えて、この搬送装置にて搬送される転写フィルム46に対して、先ずサーマルヘッド40にて画像を形成する印刷部B1と、続いてヒートローラ33にて媒体搬送経路P1にあるカード(印刷媒体)の表面に転写フィルム46に形成された画像を転写する転写部B2とを備えている。
画像形成部Bの下流側には収容スタッカ60に印刷後のカードを移送する媒体搬送経路P2が設けられている。媒体搬送経路P2にはカードを搬送する搬送ローラ37、38が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
搬送ローラ37と搬送ローラ38の間にはデカール機構36が配置され、搬送ローラ37、38間に保持されたカード中央部を押圧することにより、ヒートローラ33による熱転写により生じたカールを矯正する。このためデカール機構36は図示しないカムなどによる昇降機構にて図2に示す上下方向に位置移動可能に構成されている。
収容部Dは、画像形成部Bから送られたカードを収容スタッカ60に収容するように構成されている。収容スタッカ60は、昇降機構61にて図2で下方に移動するように構成されている。
上記した印刷装置1の全体構成の中で画像形成部Bについて、更に詳しく説明する。
転写フィルム46は、モータMr2の駆動にて回転する転写フィルムカセットの巻取ロール47と操出ロール48にそれぞれ巻回されている。フィルム搬送ローラ49は、転写フィルム46を移送する主要な駆動ローラであり、このローラ49の駆動を制御することで転写フィルム46の搬送量および搬送停止位置が決まる。このフィルム搬送ローラ49は不図示のステッピングモータに連結されている。フィルム搬送ローラ49の駆動時にモータMr2も駆動するが、巻取ロール47が繰り出された転写フィルム46を巻き取るためのものであって、転写フィルム46を搬送の主体となって駆動するものではない。
フィルム搬送ローラ49の周面には、ピンチローラ32aとピンチローラ32bとが配置されている。ピンチローラ32a、32bは、図2では示されていないが、フィルム搬送ローラ49に対して進出および退避するよう移動可能に構成されており、図の状態はフィルム搬送ローラ49に進出して圧接することで転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付けている。これにより、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49の回転数に応じた距離の正確な搬送が行われる。
インクリボン41はインクリボンカセット42に収納され、このカセット42にインクリボン41を供給する供給スプール43とインクリボン41を巻き取る巻取スプール44が収容され、巻取スプール44はモータMr1にて駆動し、供給スプール43はモータMr3にて駆動する。モータMr1およびモータMr3には正逆転可能なDCモータが用いられている。また、図2に示すSe2は、インクリボン41の終端部に付されインクリボン41の使用限界を表すエンプティマークを検出するための透過型センサである。なお、インクリボン41は、カラーリボンパネルであるY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)と、Bk(ブラック)のリボンパネルを長手方向に面順次に繰り返すことで構成されている(図18(A)参照)。
プラテンローラ45とサーマルヘッド40とは印刷部B1を構成しており、プラテンローラ45に対向する位置にサーマルヘッド40が配置されている。サーマルヘッド40は、ヘッドコントロール用IC(図示せず)により画像データに従って加熱制御されて、昇華型のインクリボン41を用いて転写フィルム46に画像を印刷する。なお、冷却ファン39はサーマルヘッド40を冷やす為のものである。
転写フィルム46への印刷が終了したインクリボン41は、剥離コロ25と剥離部材28とで転写フィルム46から引き剥がされる。剥離部材28はカセット42に固設されており、剥離コロ25は印刷時に剥離部材28に当接して両者で転写フィルム46とインクリボン41とを挟持することで剥離が行われる。そして、剥離されたインクリボン41はモータMr1の駆動による巻取スプール44に巻き取られ、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49により、プラテンローラ31とヒートローラ33とを含む転写部B2まで搬送される。
転写部B2では、転写フィルム46はカードと共にヒートローラ33およびプラテンローラ31とで挟持されて、転写フィルム46上の画像がカード表面に転写される。なお、ヒートローラ33は、転写フィルム46を介してプラテンローラ31に圧接・離間するように昇降機構(不図示)に取り付けられている。
印刷部B1の構成をその作用と共に更に詳しく説明する。図3乃至図5にて示すように、ピンチローラ32a、32bはピンチローラ支持部材57の上端部と下端部にそれぞれ支持されて、ピンチローラ支持部材57はその中央部を挿通する支持シャフト58に回動自在に支持されている。支持シャフト58は、図10にて示すごとく、両端部がピンチローラ支持部材57に設けられる長穴76、77に架け渡されると共に、中間部でブラケット50の固定部78にて固定されている。また、長穴76、77は支持シャフト58に対して水平方向および垂直方向に空間を持たせている。よって、後述するフィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32a、32bの調整を可能にしている。
そして、支持シャフト58にはバネ部材51(51a、51b)が装着されて、ピンチローラ支持部材57のピンチローラ32a、32bが装着される側の端部は、それぞれバネ部材51と接してそのバネ力によりフィルム搬送ローラ49の方向へ付勢されている。
ブラケット50は、カム受81にてカム53のカム作動面と当接しており、駆動モータ54(図10参照)にて駆動するカム軸82を支点とするカム53の矢印方向への回動に応じてフィルム搬送ローラ49に対して図で左右方向に移動するように構成している。従って、ブラケット50がフィルム搬送ローラ49に向けて進出したとき(図4および図5)、ピンチローラ32a、32bはバネ部材51に抗して転写フィルム46を挟んでフィルム搬送ローラ49に圧接し、転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付ける。
このときブラケット50の回動支点となる軸95から遠い位置にあるピンチローラ32bが先ずフィルム搬送ローラ49を圧接し、続いてピンチローラ32aが圧接する。このように、回動支点である軸95をフィルム搬送ローラ49より上方に配置することで、ピンチローラ支持部材57は平行移動ではなく回動しながらフィルム搬送ローラ49と当接することになり、平行移動させるよりも幅方向のスペースが少なくてすむ利点がある。
また、ピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49へ圧接したときの圧接力は、バネ部材51により転写フィルム46の幅方向の対して均一となる。その際、ピンチローラ支持部材57の両側に長穴76、77が設けられて支持シャフト58は固定部78で固定されているために、ピンチローラ支持部材57を3方向に調整することができ、フィルム搬送ローラ49の回転により転写フィルム46はスキューを起こすことなく正しい姿勢にて搬送される。なお、ここで言う3方向の調整とは、(i)フィルム搬送ローラ49に対してピンチローラ32a、32bの軸方向の圧接力を均一にするために、フィルム搬送ローラ49の軸に対するピンチローラ32a、32bの軸の水平方向の平行度を調整すること、(ii)フィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32aの圧接力とフィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32bの圧接力とを均一にするために、フィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32aとピンチローラ32bとの移動距離を調整すること、および(iii)フィルム進行方向に対してピンチローラ32a、32bの軸が垂直になるように、フィルム搬送ローラ49の軸に対するピンチローラ32a、32bの軸の垂直方向の平行度を調整することである。
そして、ブラケット50には、ブラケット50がフィルム搬送ローラ49に向けて進出したとき、転写フィルム46のフィルム搬送ローラ49に巻き付けられていない部分と当接する張力受け部材52を設けている。
張力受け部材52は、ピンチローラ32a、32bが転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に圧接した際に生じる転写フィルム46の張力にて、ピンチローラ32a、32bがそれぞれバネ部材51の付勢力に抗してフィルム搬送ローラ49から退避するのを防止するために設けられる。よって、張力受け部材52は、ピンチローラ32a、32bより図で左の位置で転写フィルム46と当接するようブラケット50の回動側端部の先端に取り付けられている。図2は張力受け部材52が転写フィルム46と当接している状態を示している。
これにより、転写フィルム46の弾性から生じる張力は張力受け部材52を通してカム53にて直接受け止めることができる。したがって、この張力にてピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49から退避してピンチローラ32a、23bの圧接力が弱まることが防止されるため、転写フィルム46のフィルム搬送ローラ49への密着した巻き付け状態が維持されて正確な搬送を行うことができる。
転写フィルム46の横幅方向に沿って配置されるプラテンローラ45は、図9に示すごとく、軸71を支点として回動自在な一対のプラテン支持部材72に支持されている。一対のプラテン支持部材72はプラテンローラ45の両端を支持している。プラテン支持部材72はそれぞれ、軸71を共通の回動軸とするブラケット50Aの端部にバネ部材99を介して接続されている。
ブラケット50Aは、基板87と、この基板87からのプラテン支持部材72の方向に折り曲げて形成されるカム受支持部85とから成り、カム受支持部85でカム受84を保持している。そして、基板87とカム受支持部85の間には、駆動モータ54にて駆動するカム軸83を支点に回動するカム53Aを配設して、カム作動面とカム受84とが当接するよう構成している。従って、カム53Aの回動によりブラケット50Aがサーマルヘッド40の方向へ進出すると、プラテン支持部材72も移動してプラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接する。
このようにブラケット50Aとプラテン支持部材72との間にバネ部材99とカム53Aとを上下に配置することにより、このプラテン移動ユニットはブラケット50Aとプラテン支持部材72との間隔内に収めることができる。また、幅方向はプラテンローラ45の幅内に収めることができ省スペース化が図れる。
また、カム受支持部85は、プラテン支持部材72に形成した穿孔部72a、72b(図9参照)に嵌合させているために、カム受支持部85をプラテン支持部材72の方向に突出して形成しても、ブラケット50Aとプラテン支持部材72との間隔が広がることがなく、その面でも省スペース化が図れる。
プラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接したとき、それぞれのプラテン支持部材72に接続されたバネ部材99は、それぞれ転写フィルム46の幅方向への圧接力が均一となるように作用する。よって、転写フィルム46がフィルム搬送ローラ49にて搬送されるときスキューが防止され、転写フィルム46の印刷領域が幅方向にずれることがなくサーマルヘッド40による熱転写を正確に行うことができる。
ブラケット50Aの基板87には、剥離コロ25の両端を支持する一対の剥離コロ支持部材88がバネ部材97を介して設けられており、剥離コロ25は、ブラケット50Aがカム53Aの回動にてサーマルヘッド40に対し進出したとき、剥離部材28と当接して両者で挟持している転写フィルム46とインクリボン41とを剥離する。剥離コロ支持部材88もプラテン支持部材72と同様に剥離コロ25の両端にそれぞれ設けられており、剥離部材28に対する幅方向の圧接力が均一となるように構成されている。
ブラケット50Aの軸支59側の端部と反対側の端部には、張力受け部材52Aが設けられている。張力受け部材52Aは、プラテンローラ45と剥離コロ25とをサーマルヘッド40と剥離部材28とにそれぞれ圧接する際に生じる転写フィルム46の張力を吸収するように設けられている。バネ部材99とバネ部材97は、転写フィルム46の幅方向への圧接力を均一にするために設けられるが、逆にバネ部材99、97が転写フィルム46の張力に負けて転写フィルム46への圧接力が弱まってしまわないよう、張力受け部材52Aにて転写フィルム46からの張力を受けている。なお、張力受け部材52Aも上述の張力受け部材52と同様にブラケット50Aに固定されているため、転写フィルム46の張力はブラケット50Aを介してカム53Aで受けることになるので、転写フィルム46の張力に負けることはない。これにより、サーマルヘッド40とプラテンローラ45との圧接力および、剥離部材28と剥離コロ25との圧接力が保たれるので、良好な印刷および剥離を行うことができる。また、フィルム搬送ローラ49の駆動時に転写フィルム46の搬送量に誤差を生じることがなく、前記印刷領域の長さ分が正確にサーマルヘッド40に搬送されて精度良く印刷できる。
カム53とカム53Aは、ベルト98(図3参照)が張架されて同一の駆動モータ54にて駆動させている。
このような、画像形成部Bが図6に示す待機ポジションにあるときカム53およびカム53Aは図3に示す状態にあり、ピンチローラ32a、32bはフィルム搬送ローラ49に圧接しておらず、またプラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接していない。換言すると、待機ポジションにあるときは、プラテンローラ45とサーマルヘッド40とは両者が離間した離間位置に位置している。なお、本実施形態では、プラテンローラ45とサーマルヘッド40とが離間位置に位置した状態において、インクリボン41を弛ませるとともにインクリボン41の頭出しが行われるが、この詳細については後述する(<印刷装置1の特色等>(原理の具体的適用)参照)。
そして、カム53およびカム53Aが連動して回転して図4に示す状態となると、画像形成部Bは図7に示す印刷ポジションに移行する。その際、まずピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49に転写フィルム46を巻き付けると共に、張力受け部材52は転写フィルム46と当接する。その後プラテンローラ45がサーマルヘッド40に圧接する。この印刷ポジションでは、プラテンローラ45がサーマルヘッド40に向けて移動して転写フィルム46とインクリボン41を挟み圧接して、剥離ローラ25が剥離部材28と接している。換言すれば、印刷ポジションでは、プラテンローラ45とサーマルヘッド40とが、転写フィルム46とインクリボン45とをニップするニップ位置に位置している。
この状態で、フィルム搬送ローラ49の回転により転写フィルム46の搬送が開始されると、同時にインクリボン41もモータMr1の動作により巻取スプール44にて巻き取られて同じ方向に搬送される。この搬送の間、転写フィルム46に設けた位置出し用マークがセンサSe1を通過して所定量移動し、転写フィルム46が印刷開始位置に到達した時点で、転写フィルム46の所定領域にサーマルヘッド40による印刷が行われる。特に印刷中は転写フィルム46の張力が大きくなるため、転写フィルム46の張力はフィルム搬送ローラ46からピンチローラ32a、23bを離間させる方向および、剥離部材28とサーマルヘッド40から剥離コロ25とプラテンローラ45とを離間させる方向に働く。しかし、上記したように、転写フィルム46の張力は張力受け部材52、52Aが受けているため、ピンチローラ32a、32bの圧接力が弱くなることがなく、正確なフィルム搬送を行うことができ、サーマルヘッド40とプラテンローラ45との圧接力および、剥離部材28と剥離コロ25との圧接力も弱くなることがないため、正確な印刷および剥離を行うことができる。印刷終了後のインクリボン41は転写フィルム46から引き剥がされて巻取スプール44に巻き取られる。
転写フィルム46の搬送による移動量、すなわち印刷が施される前記印刷領域の搬送方向の長さは、フィルム搬送ローラ49に設けられたエンコーダ(不図示)にて検知され、それに応じてフィルム搬送ローラ49の回転が停止し、同時にモータMr1の動作による巻取スプール44による巻き取りも停止する。これにより、サーマルヘッド40による転写フィルム46の前記印刷領域への1色目の印刷が終了する。
そして、カム53およびカム53Aが連動して更に回転し図5に示す状態となると、画像形成部Bは図8に示す搬送ポジションに移行して、プラテンローラ45はサーマルヘッド40から退避する方向(上述した離間位置)に復帰する。この状態では依然として、ピンチローラ32a、32bはフィルム搬送ローラ49に転写フィルム46を巻き付けて、張力受け部材52は転写フィルム46と接しており、フィルム搬送ローラ49の逆方向の回転により転写フィルム46は初期位置にまで逆搬送される。このときも転写フィルム46の移動量はフィルム搬送ローラ49の回転によって制御されるが、印刷が施された前記印刷領域の搬送方向の長さ分が逆搬送される。なお、インクリボン41もモータMr3により所定量巻き戻された後、インクリボン41に弛みが形成されるとともにインクリボン41の頭出しが行われるが、この詳細については後述する(<印刷装置1の特色等>(原理の具体的適用)参照)。
そして、カム53、53Aによる制御状態は再び図4に示す状態となって図7に示す印刷ポジションとなり、プラテンローラ45をサーマルヘッド40に圧接させ、フィルム搬送ローラ49が再び正方向への回転を行って転写フィルム46を前記印刷領域の長さ分移動させると、サーマルヘッド40にて次色による印刷が行われる。
こうして、印刷ポジションと搬送ポジションでの動作は全ての色(本例では、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の4色)の印刷が終了するまで繰り返される。そして、サーマルヘッド40による印刷(転写フィルム46への画像形成)が終了すると、転写フィルム46に画像形成された領域をヒートローラ33まで搬送するが、このときカム53および53Aは図3に示す状態に移動して、転写フィルム46への圧接を解除する。その後、巻取ロール47の駆動で転写フィルム46を搬送しながらカードへの転写が行われる。
このような画像形成部Bは、3通りのユニット90、91、92に分割してそれぞれ一体化される。
図9に示す第1のユニット90は、ユニット枠体75にモータ54(図10参照)の駆動により回転する駆動軸70を装架しており、駆動軸70にフィルム搬送ローラ49を装着している。フィルム搬送ローラ49の下方には、ブラケット50Aと一対のプラテン支持部材72とが配置されており、これら部材はユニット枠体75の両側板に装架される軸71に回動自在に支持されている。
図9においては、プラテン支持部材72に形成した穿孔部72a、72bからブラケット50Aの一部である一対のカム受支持部85が表れている。カム受支持部85は、その後方に配置される一対のカム受84を保持する。そして、カム受84の更に後方には、ユニット枠体75を挿通しているカム軸83に装着されるカム53Aが配置されている。カム軸83はユニット枠体75の両側板に装架される。
転写フィルム46とインクリボン41の搬送パスを挟みプラテンローラ45と対向する位置にはサーマルヘッド40が配置される。サーマルヘッド40、加熱に関する部材および冷却ファン39は図11に示すように第3のユニット92に一体化しており、第1のユニット90に対向して配置される。
第1のユニット90は、移動可能なブラケット50Aにて、印刷動作により位置を変動するプラテンローラ45と剥離コロ25と張力受け部材52Aとを一括して保持することで、これら部材間の位置調整が不要となる。しかも、カム53の回動にてブラケット50Aを移動させることでこれら部材を所定の位置にまで移動させることができる。また、ブラケット50Aを設けたことで、固定のフィルム搬送ローラ49と同一のユニットに収納でき、転写フィルムを精度良く搬送しなければならないフィルム搬送ローラ49による搬送駆動部分と、プラテンローラ45による転写位置規制部分とが同じユニットに含まれるために両者間の位置調整が不要となる。
図10に示す第2のユニット91は、ユニット枠体55にカム53が装着されるカム軸82を挿通させて、カム軸82を駆動モータ54の出力軸に連結している。そして、第2のユニット91は、カム53と当接するようブラケット50をユニット枠体55に移動自在に支持しており、ブラケット50には、ピンチローラ支持部材57を回動自在に支持している支持シャフト58と張力受け部材52とが固設されている。
ピンチローラ支持部材57には、支持シャフト58にバネ部材51a、51bが取り付けられていて、その端部をピンチローラ32a、32bを支持しているピンチローラ支持部材57の両端にそれぞれ当接させて、フィルム搬送ローラ49の方向へ付勢している。そして、ピンチローラ支持部材57は、長穴76、77に支持シャフト58を挿入しており、支持シャフト58は中央部でブラケット50に固定支持される。
ブラケット50とピンチローラ支持部材57との間には、ピンチローラ支持部材57をブラケット50に向けて付勢するバネ89を設けている。このバネ89によりピンチローラ支持部材57は第1のユニット90のフィルム搬送ローラ49から後退する方向に付勢されるために、転写フィルムカセットを印刷装置1にセットするときに第1のユニット90と第2のユニット91の間に転写フィルム46を容易に通すことができる。
第2のユニット91は、印刷動作に応じて位置が変動するピンチローラ32a、32bと張力受け部材52とをブラケット50Aにて保持し、カム53の回動にてブラケット50Aを移動させることでピンチローラ32a、32bと張力受け部材52とを移動させるために、両者間の位置調整やピンチローラ32a、32bとフィルム搬送ローラ49との位置調整が簡略化される。このような第2のユニット91は、転写フィルム46を挟み第1のユニット90に対向して配置される。
このようにユニット化することで第1のユニット90、第2のユニット91および第3のユニット92は、転写フィルム46やインクリボン41の各カセットと同様に、それぞれ印刷装置1の本体から引き出すことも可能になる。従って、転写フィルム46やインクリボン41の消耗によるカセットの交換時にこれらユニット90、91、92も必要に応じてユニットを取り出しておけばカセット挿入時の転写フィルム46やインクリボン41を簡単に装置内に装架することができる。
上記したように、プラテンローラ45とブラケット50Aとカム53Aとプラテン支持部材72とを一体化した第1のユニット90と、ピンチローラ32a、32bとブラケット50とカム53とバネ部材51とを一体化した第2のユニット91とを組み合わせると共に、サーマルヘッド40が取り付けられた第3のユニット92をプラテンローラ45に対向して配置して組み付けることで、印刷装置の製造時における組み立てやメンテナンス時の調整を容易且つ正確に行うことができる。しかも、一体化したことで装置からの取り外しも容易に行えて、印刷装置としての取扱い性が向上する。
<インクリボンカセット>
次に、インクリボン41を収納するカセット42について詳述する。図12に示すように、カセット42は、カセット42の基台となる矩形板状のベース11を有している。ベース11には、本体装置(印刷装置1)に装着するための本体接続突起15、16が突設されている。本体装着突起15、16にはバネが巻き掛けられており、これらのバネにより本体装置にスライド可能に装着される。
ベース11の長手方向一側(図12の上側)には巻取スプール44が回転可能に配置されており、ベース11の長手方向他側(図12の下側)には供給スプール43が回転可能に配置されている。すなわち、ベース11の長手方向一側および他側には、それぞれ巻取スプール44および供給スプール43の一側の軸(図13の符号119参照)を回転可能に軸支する円形状の貫通穴が形成されている。巻取スプール44は軸の反対側に大径の係合部115を有しており、供給スプール43は軸119の反対側に係合部115より小径の係合部112を有している。このように係合部115と係合部112との径が異なるのは、カセット42を本体装置に装着する際に、図12に示す上下方向で誤って装着しようとしても装着できないようにするためである。
また、カセット42は、ベース11と交差する方向に、巻取スプール44および供給スプール43を覆うカバー17を有している。カバー17はベース11の長手方向に沿う端部に固定されている。さらに、カセット42には、図12の下側から上側の順に、シャフト14、13、シャフト状の剥離部材28、シャフト12が、供給スプール43ないし巻取スプール44の軸線と平行となるように配設されている。これらのシャフトは、それぞれ、一側がベース11に固定されており、他側がカバー17からベース11と対向するように張り出した延出部に固定されている。
従って、供給スプール43から繰り出されたインクリボン41は一面側でシャフト14、13、剥離部材28およびシャフト12に摺接して巻取スプール44に巻き取られるように、またはその逆に、シャフト12、剥離部材28およびシャフト14、13に摺接して供給スプール43に巻き戻されるように搬送される。
ここで、カセット42が本体装置に装着された際の本体装置側のセンサSe2およびサーマルヘッド40とこれらのシャフトとの配置関係について付言すると、図16(A)に示すように、供給スプール43から繰り出されたインクリボン41に沿って、シャフト14とシャフト13との間にセンサSe2が位置付けられており、シャフト13と剥離部材28との間にサーマルヘッド41が位置付けられている。
また、カセット42が本体装置に装着された際のインクリボン41、供給スプール43、巻取スプール44等の関係について付言すると、インクリボン41の供給スプール43と巻取スプール44との間で張架された長さが、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の連続する4色のリボンパネルのうち3色のリボンパネルの合計の長さより小さく設定されており、さらに、供給スプール43と巻取スプール44との間で張架されたインクリボン41に沿って、供給スプール43とセンサSe2との間の距離、センサSe2とサーマルヘッド40との間の距離、サーマルヘッド40と剥離部材28との間の距離、および、剥離部材28と巻取スプール44との間の距離が、いずれもインクリボン41の1色のリボンパネルの長さより小さく設定されている。
<スプール本体および本体装置との係合>
次に、図13を参照して、供給スプール43側のスプール本体110およびスプール本体110に係合する印刷装置1の係合部について説明する。図13は供給スプール43の係合部112と本体装置側の係合部材(係合凸部122)との係合状態を示したものであるが、巻取スプール44の係合部と本体装置側の係合部材との係合状態も同様のため、供給スプール43についてのみ説明し、巻取スプール44についての説明は省略する。係合部112は、端部方向へ突出する矩形状の8個の凸部を有している。なお、図12に示した供給スプール43および巻取スプール44はそれぞれスプール本体110にインクリボン41が巻回(保持)されたものであり、供給スプール43にはインクリボン41のうち未使用部分が巻回されており、巻取スプール44にはインクリボン41のうち使用済部分(サーマルヘッド40による熱転写後のインクリボン41)が巻回される。
スプール本体110は、両側にフランジ113、114を有しインクリボン41を保持する筒状のリボン保持部118と、フランジ113に隣接して一側端部に設けられた係合部112と、フランジ114に隣接して係合部112の反対側に設けられリボン保持部118の筒状部より縮径された軸部119とを有している。
フランジ113、114はスプール本体110の軸方向でインクリボン41のリボン保持部118への巻回を位置規制するため、スプール本体110が回転しても、リボン保持部118から未使用のリンクリボン41が位置ズレすることなく供給され(供給スプール43の場合)、巻き取り側のリボン保持部にはリンクリボン41のうち使用済部分が適正に巻回される(巻取スプール44の場合)。
供給スプール43の係合部112に対する本体装置側の係合部は複数の部材で構成されている。すなわち、ハウジング2に支持軸125が固定されており、支持軸125は円盤状で外縁部にギアを有する係合部材を回転可能に軸支している。係合部材の、係合部112と係合する側には、係合部112の凸部(溝部)とは形状の異なる、2つの係合凸部122が対向するように(係合部材の回転方向に対して180°の位相差ができるように)突設されている。係合部122には、凸部側面に直線状に形成され所定の傾斜角度を有する傾斜面と、隣接する凸部の傾斜面間を連接する底部とで形成された溝が形成されている(図13では係合部112と係合部122の凸部の関係が逆である。)。また、支持軸125にはバネ124が巻き掛けられており、このバネ124により係合部材(係合凸部122)はスライド可能に係合部側に付勢される。ギア123にはモータMr3のモータ軸に嵌着されたギア126が噛合している。このため、スプール本体110にはモータMr3からの回転駆動力が伝達される。
カセット42を本体装置に装着する際に、スプール本体110の係合部112の凸部の先端と装置本体側の係合部材に設けられた係合凸部122の先端とが当接して(ぶつかって)スムーズに挿入されない場合がある。係合部材は支持軸125の軸方向に対してスライド可能に設けられているため、係合部112の凸部の先端と係合凸部122の先端とがぶつかったときには、係合凸部122が一旦装置フレーム側(スプール本体110の反対側)に退避する。その後、係合部材またはスプール本体110が回転すると、係合凸部122が係合部112の凸部間の溝に入り込み、バネ124によってスプール本体110側に付勢され、係合凸部122と係合部112の凸部(間の溝)とは2点で点接触する。
係合部材のギアにはギア121Cが噛合しており、ギア121Cには同軸上にスリット(不図示)が形成された回転板121Aが固着している。回転板121Aには、その中心部から放射状に等間隔で穿設された8本のスリットが形成されている。また、回転板121Aを挟む位置には、発光素子と受光素子とからなる透過一体型のセンサ121Bが配置されている。従って、回転板121Aとセンサ121Bが、インクリボン41を供給する供給スプール43の回転量を検出する回転量検出手段としてのエンコーダ121を構成している。上述したように、巻取スプール44の係合部と本体装置側の係合部材との係合状態も同様であるが、以下、便宜上、供給スプール43に連結されたエンコーダ121を「第1エンコーダ」、巻取スプール44に連結されたエンコーダ121を「第2エンコーダ」と呼ぶことにする。また、上述したフィルム搬送ローラ49に設けられたエンコーダ(不図示)も同様に構成されている。すなわち、上述した駆動軸70(図9参照)に図13に示したギア123と同様のギアが嵌着されており、このギアに噛合するギア(図13のギア121Cに相当)と回転板(図13の回転板121Aに相当)とを有しており、この回転板の回転がセンサ(図13のセンサ121Bに相当)で検出可能に構成されている。
サーマルヘッド40の転写フィルム46への印刷処理に伴って、インクリボン41は供給スプール43側から巻取スプール44へと搬送されることになるが、これに準じて、供給スプール43のリボン径は大径から小径へと移行し、また、巻取スプール44のリボン径は小径から大径へと変化していくことになる。この変化に伴い、インクリボン41を巻取スプール44に巻き取る際の張力(テンション)は、大から小へと移行していき、インクリボン41を供給スプール43に巻き戻す際の張力は、反対に、小から大へと移行していくため、本例では、巻取スプール44の回転駆動源となるモータMr1と、供給スプール43の回転駆動源となるモータMr3との2つのモータを用いている。なお、インクリボン41が巻取スプール44に巻き取られる方向にモータMr1、Mr3を回転する場合を正転駆動、供給スプール43に巻き戻す方向にモータMr1、Mr3を回転する場合を逆転駆動とする。
次に、印刷装置1の制御および電気系統について説明する。図14に示すように、印刷装置1は、印刷装置1全体の動作制御を行う制御部100と、商用交流電源から各機構部および制御部等を駆動/作動可能な直流電源に変換する電源部120とを有している。
<制御部>
図14に示すように、制御部100は、印刷装置1の全体の制御処理を行うマイクロコンピュータ102(以下、マイコン102と略称する。)を備えている。マイコン102は、中央演算処理装置として高速クロックで作動するCPU、印刷装置1の基本制御動作(プログラムおよびプログラムデータ)が記憶されたROM、CPUのワークエリアとして働くRAM、およびこれらを接続する内部バスで構成されている。
マイコン102には外部バスが接続されている。外部バスには、上位装置201との通信を行うための図示を省略したインターフェース、カードに印刷すべき印刷データやカードの磁気ストライプ部や内蔵ICに磁気的ないし電気的に記録すべき記録データ等を一時的に格納するバッファメモリ101が接続されている。
また、外部バスには、各種センサからの信号を制御するセンサ制御部103、各モータに駆動パルスや駆動電力を送出するモータドライバ等を制御するアクチュエータ制御部104、サーマルヘッド40を構成する発熱素子への熱エネルギを制御するためのサーマルヘッド制御部105、オペパネ部5を制御するための操作表示制御部106、および、上述した情報記録部Aが接続されている。
電源部120は、制御部100、サーマルヘッド40、オペパネ部5および情報記録部Aに作動/駆動電源を供給している。
<印刷装置1の特色等>
次に、本実施形態の印刷装置1の特色、基本原理および原理の具体的適用等について説明する。
(特色)
まず、本実施形態の印刷装置1の特色について簡単に説明すると、サーマルヘッド40とプラテンローラ45とが離間位置に位置した状態において、インクリボン41を予め弛ませておき、ニップの際にインクリボン41に掛かるテンションを低減させることで、インクリボン41の切断を防止する。インクリボン41を弛ませるには、供給スプール43および巻取スプール44のいずれか一方からインクリボン41をサーマルヘッド40側に所定量送り出して弛みを形成する。この動作はインクリボン41の頭出しを兼ねており、第1エンコーダ(供給スプール43に連結されたエンコーダ121)および第2エンコーダ(巻取スプール44に連結されたエンコーダ121)のうち回転量の検出精度が高い方のエンコーダに連結されているスプールを回転駆動させてインクリボン41が弛む量(サーマルヘッド40側に送り出される所定量)のバラツキを抑えることで、インクリボン41の頭出しの精度を高めるものであるが、詳しくは以下のとおりである。
(基本原理)
本実施形態では、図15(A)に示すように、インクリボンカセット42が新品状態(供給スプール43と巻取スプール44との外径差が最も大きい状態)で、供給スプール43(側のスプール本体110に巻回されたインクリボン41、図13も参照)の外径D1は55mmに設定されており、巻取スプール44(側のスプール本体110に巻回されたインクリボン41)の外径D2は30mmに設定されている。すなわち、インクリボンカセット42が新品状態で、供給スプール43の円周は約173mm、巻取スプール44の円周は約94mmであり、供給スプール43が1周(回転)する間に巻取スプール44は約1.84周(回転)する。
上述したように、本実施形態の印刷装置1では、供給スプール43に第1エンコーダ、巻取スプール44に第2エンコーダがそれぞれ連結されている。そして、第1、第2エンコーダは、ともに回転板121Aに8本のスリットが形成されており、同じ性能を有している。
インクリボンカセット42が新品状態で、モータMr1およびモータMr3を正転駆動して、インクリボン41を一定量(例えば、5mm)、供給スプール43から繰り出して巻取スプール44に巻き取ったときに、供給スプール43に連結された第1エンコーダからは、図15(C)に示すように、例えば11クロック(パルス)が出力される。一方、巻取スプール44に連結された第2エンコーダからは、図15(B)に示すように、例えば20クロックが出力される。第2エンコーダから出力されるクロック数(20)は第1エンコーダから出力されるクロック数(11)の約1.84倍であり、供給スプール43が1周する間に巻取スプール44は約1.84周することに対応している。
このように、一定量のインクリボン41を搬送する際に、エンコーダから出力されるクロック数が多いほど回転量の検出精度が高い(分解能が細かい)。上記の例では、第2エンコーダの方が第1エンコーダより回転量の検出精度が高い。この性質を利用して、インクリボン41の搬送精度を高めることができる。インクリボン41を使用するに従って、供給スプール43および巻取スプール44の径が変動して回転量の検出精度の差は小さくなり、途中で逆転する(図16参照)。このため、本実施形態では、サーマルヘッド40とプラテンローラ45とが離間位置に位置した状態において(サーマルヘッド40とプラテンローラ45がニップする前に)、第1および第2エンコーダのうち、回転量の検出精度の高い(出力されるクロック数が多い)方のエンコーダに連結されているスプールを回転駆動させてインクリボン41の弛みを形成する。
この弛みを形成する動作はインクリボン41の頭出しを兼ねており(弛み形成と頭出しとを一動作で行い)、回転量の精度の高い方のエンコーダに連結されているスプールを回転駆動させることによってインクリボン41の搬送精度を高めインクリボン41が弛む量のバラツキを抑えることで、インクリボンの頭出しの精度も高める。
(原理の具体的適用)
本実施形態では、インクリボン41を弛ませる量(サーマルヘッド40側に送り出される所定量)を5mmに設定している。この5mmは、プラテンローラ45がサーマルヘッド40に当接する際にインクリボン41が変位する分の長さ4mmと、アローアンス分の長さ1mmとの合計値である。
図18(B)は、インクリボン41のうち一色のカラーリボンパネル(例えば、Y)とカードとの関係を示した説明図である。本実施形態では、インクリボン41のうち一色のカラーリボンパネル(例えば、Y)の長手方向の長さLiが98mmに設定されており、カードの長手方向の長さLcは86.6mmに設定されている。印刷部B1で転写フィルム46の画像形成領域(図示のカードの領域)に対して複数色のカラーリボンパネルを用いて重ね印刷するため、インクリボンの頭出し精度が悪いと、カラーリボンパネルの転写開始位置が転写フィルム46の画像形成領域からずれてしまう。本実施形態では、「プラテンローラ45がサーマルヘッド40に当接する際にインクリボン41が変位する分の長さ4mm」は固定であるため、アローアンス分のインクリボン41送り出し精度が重要になる。つまり、インクリボン41を弛ませる量としては、4mm以上であればインクリボン41が切れることは無いが、弛ませる量を多くしすぎるとインクリボンの頭出し精度が悪くなる。そこで、本実施形態では、カラーリボンパネルの転写開始位置が、{インクリボン41のうち一色のカラーインクリボンの長手方向の長さLi(98mm)}から{カードの長手方向の長さLc(86.6mm)}を差し引いた値(11.4mm)の1/2の値、つまり図示Lhの長さ5.75mmの範囲内であれば転写フィルム46の画像形成位置に対して正しい位置に印刷をすることができる。よって、インクリボン41を弛ませる量のアローアンス分は、5.75mmよりも小さい1mmとし、合計で5mm弛ませる。これにより、リボンパネルの転写開始位置は最大1mmずれるが、余白の5.75mmに対して十分余裕があるため、インクリボンの頭出し精度が向上する。
制御部100のマイコン102のCPU(以下、「CPU」と略称する。)は、印刷装置1に電源が投入された初期設定時において、インクリボン41のBk(ブラック)のリボンパネル(本例では長さ98mm)が搬送される間に、第1エンコーダおよび第2エンコーダから出力されるクロック数を計数する。なお、CPUはセンサSe2およびフィルム搬送ローラ49に設けられたエンコーダからの出力を監視することで、Bk(ブラック)のリボンパネルが98mm搬送されたことを把握することができる。そして、第1エンコーダから出力されたクロック数と第2エンコーダから出力されるクロック数とを比較してクロック数の多い方のエンコーダを特定し、特定結果をマイコン102のRAMに格納しておく。すなわち、印刷部B1のプラテンローラ45とサーマルヘッド40とが上述した印刷ポジションに位置する前に、予め、第1および第2エンコーダのうちいずれが回転量の検出精度が高いかの特定結果を得ておく。なお、このような特定結果は、デフォルト値で、例えば、第1エンコーダの回転量の検出精度が高いときには「0」、第2エンコーダの回転量の検出精度が高いときには「1」がRAMに格納される。
CPUは、予めRAMに格納されたデフォルト値を参照して、図6および図8に示した状態において、図17(A)に示すように、供給スプール43の径が巻取スプール44の径より大きいとき(第2エンコーダの方が第1エンコーダより回転量の検出精度が高いとき)には、モータMr1を逆転駆動させて巻取スプール44からインクリボン41をサーマルヘッド40側に所定量送り出してインクリボン41の弛みを形成するとともにインクリボン41の頭出しを行う。その後、プラテンローラ45をサーマルヘッド40に当接させて転写フィルム46、インクリボン41をニップして印刷部B1で転写フィルム46への画像形成を行う(図7参照)。逆に、巻取スプール44の径が供給スプール43の径より大きいとき(第1エンコーダの方が第2エンコーダより回転量の検出精度が高いとき)には、図17(B)に示すように、モータMr3を正転駆動させて供給スプール43からインクリボン41をサーマルヘッド40側に所定量送り出してインクリボン41の弛みを形成するとともにインクリボン41の頭出しを行う。その後、プラテンローラ45をサーマルヘッド40に当接させて転写フィルム46、インクリボン41をニップして印刷部B1で転写フィルム46への画像形成を行う(図7参照)。なお、第1、第2エンコーダの回転量の検出精度が同じ場合には、いずれのエンコーダに連結されているスプールから所定量のインクリボン41を送り出して弛みを形成してもよい。
また、CPUは、第1エンコーダの回転量の検出精度が高い(デフォルト値が0)のときには、印刷部B1による次の印刷処理に備え(図8参照)、一色のカラーインクリボンの印刷動作中に、カードの長さ(86.6mm)に相当する長さが搬送される間の、第1および第2エンコーダから出力されるクロック数を比較して上述した初期設定の場合と同様に第1および第2エンコーダのうちいずれが回転量の検出精度が高いかの特定結果を得ておき、次のカラーインクリボンパネルの印刷の際に、該特定結果から、供給スプール43、巻取スプール44のいずれかからインクリボン41をサーマルヘッド40側に所定量送り出してインクリボン41の弛みを形成するとともにインクリボン41の頭出しを行う。上述した「カードの長さ(86.6mm)に相当する長さが搬送される間の、第1および第2エンコーダから出力されるクロック数」は、「印刷動作中にサーマルヘッド40が駆動している間の、第1および第2エンコーダから出力されるクロック数」、又は、「印刷動作中に転写フィルム46が86.6mm搬送される間の、第1および第2エンコーダから出力されるクロック数」である。印刷動作中のサーマルヘッド40は、印刷する色データがない場合でも駆動しており、常にカード長さ(86.6mm)の間は駆動しているため、その間の第1および第2エンコーダから出力されるクロック数を検出する。また、転写フィルム46を搬送するフィルム搬送ローラ49は、ステッピングモータで駆動されるため、転写フィルム46の搬送量(86.6mm)を正確に検知することができ、その間の第1および第2エンコーダから出力されるクロック数を検出する。なお、第2エンコーダの回転量の検出精度が高い(デフォルト値が1)のときには、第2エンコーダの回転量の検出精度が高いことが確定しているので(既に回転量の検出精度が図16に示したように逆転済のため)、第1および第2エンコーダのいずれが回転量の検出精度が高いかの判断は行われない。
本実施形態の印刷装置1によれば、CPUが、サーマルヘッド40とプラテンローラ45とが離間位置に位置した状態において、第1および第2エンコーダのうち回転量の検出精度が高い方のエンコーダに連結されているスプールからインクリボン41をサーマルヘッド40側に所定量(5mm)送り出してインクリボン41の弛みを形成するようにモータMr1、Mr3を制御するので、インクリボン41の弛みによりニップの際にインクリボン41に掛かるテンションを低減させることでインクリボンの切断を防止することができるとともに、第1および第2エンコーダのうち回転量の検出精度が高い方のエンコーダに連結されているスプールを回転駆動させてインクリボン41が弛む量のバラツキを抑えることでインクリボン41の頭出しの精度を高めることができる。
なお、本実施形態では、プラテンローラ45をサーマルヘッド40側に移動させてインクリボン41および転写フィルム46をニップする例を示したが、本発明はこれに限らず、例えば、サーマルヘッド40をプラテンローラ45側に移動させてインクリボン41および転写フィルム46をニップするようにしてもよい。また、本実施形態では、サーマルヘッド40に対向配置されたプラテンローラ45を例示したが、本発明はローラないし回転体状のプラテンに限ることなく、例えば、サーマルヘッド40の押圧を受ける受け台状のプラテンや板状のプラテン等を用いるようにしてもよい。さらに、本実施形態では、間接印刷方式の印刷装置1を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、印刷部B1において、転写フィルム46に代えてカード状またはシート状記録媒体に画像を形成すれば、直接転写方式の印刷装置にも適用可能である。
また、本実施形態では、第1、第2エンコーダの回転板121Aに8本のスリットが形成されており、両者が同じ性能を有している例を示したが、本発明はこれに制限されず、第1、第2エンコーダで回転板121Aに形成されたスリット数が異なるように構成してもよい。例えば、第1エンコーダの回転板121Aに200本、第2エンコーダの回転板121Aに8本のスリットが形成されている場合には、常に第1エンコーダの回転量の検出精度が高くなるため(図16に示したような回転量の検出精度の逆転は生ぜず)、第1エンコーダに連結された供給スプール43から所定量のインクリボン41を送り出して弛みを形成するようにしてもよい。この場合には、常に第1エンコーダの回転量の検出精度が高くなるため、CPUは第1、第2エンコーダのうちいずれが回転量の検出精度が高いかの判断をする必要がなく、CPUの負荷が低減される。
さらに、本実施形態では、第1、第2エンコーダの回転量の検出精度が同じ場合には、いずれのエンコーダに連結されているスプールからでも所定量のインクリボン41を送り出して弛みを形成してもよい例を示したが、モータからスプールまでのギア連結数が多い方のスプール側から所定量のインクリボン41を送り出せば、DCモータMr1、Mr3の(慣性による)オーバーランの影響を受けにくくなるため、インクリボン41の搬送精度をより高めることができる。例えば、供給スプール43側において(図13参照)、ギア126とギア123との間にもう一つのギアを入れ、ギア126ともう一つのギアとが噛合し、このもう一つのギアとギア123とが噛合するように構成してもよい。この場合には、第1、第2エンコーダの回転量の検出精度が同じ場合には、連結ギア数の多い供給スプール43側から所定量のインクリボン41を送り出して弛みを形成する。また、そのような構成において、出力されたクロック数とオーバーランの関係を勘案しより精度を高めるために、CPUは、第1エンコーダから出力されたクロック数と第2エンコーダから出力されたクロック数の差が予め設定された範囲内(例えば、両クロック数の差が2以内)の場合には、連結ギア数の多い供給スプール43側から所定量のインクリボン41を送り出して弛みを形成するようにしてもよい。
また、本実施形態では、第1、第2エンコーダから出力されるクロック数の多い方のエンコーダを特定し、特定結果をマイコン102のRAMに格納しておく例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、EPROM等の不揮発性メモリをさらに備え、不揮発性メモリに特定結果を記憶しておくようにしてもよく、または、インクリボンカセット42がICを備え、そのIC(のメモリ部)に特定結果を記憶しておくようにしてもよい。また、初期設定時に第1、第2エンコーダから出力されるクロック数の多い方のエンコーダを特定することに代えて、印刷終了時に第1、第2エンコーダから出力されるクロック数の多い方のエンコーダを特定し、その特定結果を不揮発性メモリやICに記憶しておき、初期設定時に記憶した特定結果を読み出して利用するようにしてもよい。
また、本実施形態では、モータMr1、Mr3をともに正転駆動することでインクリボン41を搬送する例を示したが、本発明はこれに限らず、モータMr1、Mr3の一方を正転駆動し他方を逆転駆動することでインクリボン41を搬送するようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)のリボンパネルを面順次に繰り返すことで構成されたインクリボン41を示したが、この他に保護層等を有していてもよい。また、本実施形態のカラーリボンパネルがY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の順番である例を示したが、少なくとも上記3色を有していれば順番は適宜変更可能であり、他の色(シルバーやゴールド)のリボンパネルを有していてもよい。