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JP2014165108A - リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極の製造方法、リチウムイオン二次電池用正極、及び、リチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極の製造方法、リチウムイオン二次電池用正極、及び、リチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、リチウムイオン二次電池に用いた際の電気的特性を確保することが可能であり、且つ、正極活物質としてMnやNiを含有する正極活物質を使用した場合であっても集電体の腐食を十分に抑制することができる、リチウムイオン二次電池の正極材料を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の正極材料は、MnおよびNiの少なくとも一方を含有する正極活物質と、酸性官能基含有単量体単位の含有割合が15〜60質量%であり、重量平均分子量が10000〜200000である重合体Aと、酸性官能基含有単量体単位の含有割合が10質量%以下である粒子状重合体Bと、導電材と、水と、を含むリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極の製造方法、リチウムイオン二次電池用正極、及び、リチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。そのため、近年では、リチウムイオン二次電池に関して、新しい電極材料の開発などの様々な試みがなされている。
リチウムイオン二次電池は、主に、電極(正極及び負極)、電解液、並びに、セパレータから構成されている。そして、リチウムイオン二次電池用の電極としては、電極活物質、導電材、バインダーなどから構成される電極活物質層を集電体上に形成したものが用いられている。なお、電極活物質層は、電極活物質、導電材、バインダーなどを溶媒に分散させてなるスラリー組成物を集電体上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
ここで、電極の形成に用いられるスラリー組成物に関し、近年では、環境負荷低減などの観点から、分散媒として水系媒体を用いた水系スラリー組成物への関心が高まっている。
そして、水系スラリー組成物としては、例えば、形成される電極の強度向上および電極活物質や導電材の結着性向上を目的として重量平均分子量が50万以上の水溶性高分子を配合した水系スラリー組成物が提案されている。具体的には、例えば特許文献1では、電極活物質と、導電材と、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体単位を5〜50質量%含み、重量平均分子量が50万以上である水溶性高分子と、ポリマー粒子の水分散体とを含む水系スラリー組成物が提案されている。
国際公開第2012/008539号
しかしながら、上記特許文献1の水系スラリー組成物を用いて得られる電極を備える二次電池には、重量平均分子量が大きい水溶性高分子が電解液に対して膨潤し難く、リチウムイオンの移動が妨げられるので、リチウムイオン二次電池の、出力特性等の電気的特性が損なわれるという問題があった。また、重量平均分子量が大きい水溶性高分子は、凝集作用を発揮するため、当該水溶性高分子を含む特許文献1の水系スラリー組成物は安定性が低く、その結果、当該水系スラリー組成物を用いて形成した電極を備えるリチウムイオン二次電池の、出力特性等の電気的特性が損なわれるという問題もあった。即ち、上記従来の水系スラリー組成物には、当該水系スラリー組成物を用いて形成したリチウムイオン二次電池の電気的特性を向上させるという点において改善の余地があった。
なお、リチウムイオン二次電池の電気的特性は、電解液を構成する溶媒の凝固や粘度上昇によりリチウムイオンの移動が妨げられ易い低温環境下において特に損なわれ易かった。
また、リチウムイオン二次電池には更なる高容量化が求められているため、近年では、リチウムイオン二次電池の正極において電極活物質(正極活物質)としてマンガン(Mn)やニッケル(Ni)を含有する化合物を使用することにより、リチウムイオン二次電池の高容量化を図る技術が提案されている。
しかし、前述したMnやNiを含有する正極活物質中には、活物質の製造時に使用される炭酸リチウム(LiCO)や水酸化リチウム(LiOH)等のアルカリ分が残存している。そのため、MnやNiを含有する正極活物質を含む水系のスラリー組成物をアルミニウム等からなる集電体上に塗布し、正極を作製すると、正極活物質からアルカリ分が溶出し、集電体が腐食してしまうという問題が生じる。
そのため、正極の形成に使用される水系スラリー組成物には、電気的特性が損なわれるという上記課題を解決することに加え、リチウムイオン二次電池の高容量化を達成しつつ集電体の腐食も抑制することが求められている。
そこで、本発明は、リチウムイオン電池の正極の形成に使用される水系スラリー組成物であって、当該水系スラリー組成物を用いて形成したリチウムイオン二次電池の電気的特性を十分に確保することができ、且つ、正極活物質としてMnやNiを含有する正極活物質を使用した場合であっても集電体の腐食を十分に抑制することができる正極用スラリー組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、その正極用スラリー組成物を用いたリチウムイオン二次電池用正極の製造方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、集電体の腐食を十分に抑制することができると共に、優れた電気的特性を有するリチウムイオン二次電池を構成することができる、リチウムイオン二次電池用正極を提供することを目的とする。
また、本発明は、正極の集電体の腐食を十分に抑制することができると共に、優れた電気的特性を有するリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、酸性官能基含有単量体単位の含有割合および重量平均分子量が特定の範囲内にある重合体と、酸性官能基含有単量体単位の含有割合が特定の範囲内にある粒子状重合体とを含有するスラリー組成物を正極材料として用いることで、MnおよびNiの少なくとも一方を含有する正極活物質が原因で生じる集電体の腐食を十分に抑制することが可能であり、且つ、優れた電気的特性を有するリチウムイオン二次電池を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記目的を達成するための本発明の要旨構成は、以下の通りである。
[1]MnおよびNiの少なくとも一方を含有する正極活物質と、
酸性官能基含有単量体単位の含有割合が15〜60質量%であり、重量平均分子量が10000〜200000である重合体Aと、
酸性官能基含有単量体単位の含有割合が10質量%以下である粒子状重合体Bと、
導電材と、
水と、を含むリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
このように、上記特定の重合体Aを含む水系スラリー組成物を用いれば、MnおよびNiの少なくとも1つを含有する正極活物質を使用した場合であっても、集電体の腐食を十分に抑制することができる。また、MnおよびNiの少なくとも1つを含有する正極活物質を使用し、且つ、上記特定の重合体Aおよび粒子状重合体Bを含むスラリー組成物を用いて正極を形成すれば、電池容量や低温出力特性などの電気的特性が優れているリチウムイオン二次電池を得ることができる。
[2]前記粒子状重合体Bの質量(b)に対する前記重合体Aの質量(a)の比(a/b)が、0.01〜0.3の範囲内である、前記[1]に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
このように、スラリー組成物中の粒子状重合体Bの質量(b)に対する重合体Aの質量(a)の比(a/b)を上記の範囲とすれば、集電体の腐食を好適に抑制しつつ、本発明のスラリー組成物中の各成分の分散性を良好なものとして、スラリー組成物を用いて形成した正極活物質層と集電体との密着性や、リチウムイオン二次電池の電気的特性を更に良好なものとすることができる。
[3]前記重合体Aが、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む、前記[1]又は[2]に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
このように、重合体Aがフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含んでいれば、本発明のスラリー組成物を用いて得られるリチウムイオン二次電池の低温出力特性を十分に確保することができる。
[4]前記粒子状重合体Bが、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、(メタ)アクリロニトリル単量体単位とを含む、前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
このように、粒子状重合体Bが(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と(メタ)アクリロニトリル単量体単位とを含んでいれば、本発明のスラリー組成物を用いて得られる正極の柔軟性を確保することができると共に、粒子状重合体Bの結着力が十分なものとなり、正極の強度やリチウムイオン二次電池の電気的特性を十分に確保することができる。
[5]集電体上に、前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を塗布する工程と、前記集電体上に塗布された前記リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を乾燥し、正極活物質層を形成する工程とを含む、リチウムイオン二次電池用正極の製造方法。
上述したリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を用い、このような製造方法で製造される正極を使用すれば、正極の集電体の腐食が十分に抑制されていると共に、優れた電気的特性を有しているリチウムイオン二次電池が得られる。
[6]MnおよびNiの少なくとも一方を含有する正極活物質と、
酸性官能基含有単量体単位の含有割合が15〜60質量%であり、重量平均分子量が10000〜200000である重合体Aと、
酸性官能基含有単量体単位の含有割合が10質量%以下である粒子状重合体Bと、導電材とを含むリチウムイオン二次電池用正極。
このように、上記特定の重合体Aを含有すれば、MnおよびNiの少なくとも1つを含有する正極活物質を使用した場合であっても集電体の腐食を十分に抑制することができる。また、MnおよびNiの少なくとも1つを含有する正極活物質を使用し、上記特定の重合体Aおよび粒子状重合体Bを含むこの正極を使用すれば、電池容量や低温出力特性などの電気的特性が優れているリチウムイオン二次電池を形成することができる。
[7]前記粒子状重合体Bの質量(b)に対する前記重合体Aの質量(a)の比(a/b)が、0.01〜0.3の範囲内である、前記[6]に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
このように、粒子状重合体Bの質量(b)に対する重合体Aの質量(a)の比(a/b)を上記範囲内とすれば、集電体の腐食を好適に抑制しつつ、正極活物質層と集電体との密着性や、リチウムイオン二次電池の電気的特性を更に良好なものとすることができる。
[8]前記重合体Aが、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む、前記[6]又は[7]に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
このように、重合体Aがフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含んでいれば、該正極を用いたリチウムイオン二次電池の低温出力特性を十分に確保することができる。
[9]前記粒子状重合体Bが、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と(メタ)アクリロニトリル単量体単位とを含む、前記[6]〜[8]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池用正極。
このように、粒子状重合体Bが(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と(メタ)アクリロニトリル単量体単位とを含んでいれば、正極の柔軟性を確保することができると共に、粒子状重合体Bの結着力が十分なものとなり、正極の強度や該正極を用いたリチウムイオン二次電池の電気的特性を十分に確保することができる。
[10]前記[6]〜[9]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備えるリチウムイオン二次電池。
上述したリチウムイオン二次電池用正極を備えるリチウムイオン二次電池は、正極の集電体の腐食を抑制することができると共に、電池容量や低温出力特性などの電気的特性に優れている。
[11]前記電解液が、電解質と溶媒とを含み、前記溶媒中の、エチレンカーボネートの含有割合が30〜60体積%である、前記[10]に記載のリチウムイオン二次電池。
このようなエチレンカーボネートの含有割合の溶媒を使用した電解液を用いたリチウムイオン二次電池は、その電解液中にLiPF等のリチウム塩を大量に溶解させることができ、リチウムイオン濃度を高いレベルで維持できるため、電気的特性に優れる。また、凝固点が高いエチレンカーボネートの含有割合を適度なものとして、低温出力特性を確保することができる。
本発明によれば、正極としてリチウムイオン二次電池に用いた際にリチウムイオン二次電池の電気的特性を十分に確保することが可能であり、且つ、集電体の腐食を十分に抑制することができる、リチウムイオン二次電池の正極材料として好適なスラリー組成物、及び、そのスラリー組成物を用いたリチウムイオン二次電池用正極の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、集電体の腐食を十分に抑制することができると共に、優れた電気的特性を有するリチウムイオン二次電池を構成することができる、リチウムイオン二次電池用正極を提供することができる。
さらに、本発明によれば、正極の集電体の腐食を十分に抑制することができると共に、優れた電気的特性を有するリチウムイオン二次電池を提供することができる。
<リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物>
本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、MnおよびNiの少なくとも一方を含有する正極活物質と、酸性官能基含有単量体単位の含有割合が15〜60質量%であり、重量平均分子量が10000〜200000である重合体Aと、酸性官能基含有単量体単位の含有割合が10質量%以下である粒子状重合体Bと、導電材と、水とを含む水系のスラリー組成物である。
なお、本明細書において、適宜、「MnおよびNiの少なくとも一方を含有する正極活物質」を「Mn及び/又はNi含有正極活物質」と、「酸性官能基含有単量体単位の含有割合が15〜60質量%であり、重量平均分子量が10000〜200000である重合体A」を、「酸性重合体A」と、「酸性官能基含有単量体単位の含有割合が10質量%以下である粒子状重合体B」を、「粒子状重合体B」と略記するものとする。
また、本明細書において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味し、「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中にその単量体由来の構造単位が含まれている」ことを意味する。
(MnおよびNiの少なくとも一方を含有する正極活物質)
本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、正極活物質として、Mn及び/又はNi含有正極活物質を使用する。正極活物質は、正極において用いられる電極活物質であり、リチウムイオン二次電池の正極において電子の受け渡しをする物質である。そして、Mn及び/又はNi含有正極活物質を用いれば、リチウムイオン二次電池の容量を高めることができる。
ここで、Mn及び/又はNi含有正極活物質としては、遷移金属としてMnとNiの少なくとも一方を含有する活物質であれば特に限定されないが、リチウムイオン二次電池の更なる高容量化の観点からは、少なくともNiを含有する正極活物質であることが好ましく、Ni及びMnを含有する正極活物質であることが更に好ましい。なお、高容量化に加え電池の安全性の確保をより十分なものとする観点からは、Li、O、Ni、Mn、Co、及び、Feから構成される正極活物質がより好ましく、Li、O、Ni、Mn、及び、Coから構成される正極活物質がさらにより好ましい。
具体的には、Mn及び/又はNi含有正極活物質としては、リチウムと、遷移金属としてMnとNiの少なくとも一方を含有するリチウム含有複合金属酸化物などが挙げられる。なお、リチウム含有複合金属酸化物は、Mn、Ni以外に、例えば、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、Mo等の遷移金属を含有していてもよい。
ここで、Mn含有正極活物質としては、例えば、Co−Ni−Mnのリチウム複合酸化物、並びに、マンガン酸リチウム(LiMn)およびそのMnの一部を他の遷移金属で置換した化合物が挙げられる。
Ni含有正極活物質としては、例えば、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO)およびNi−Co−Alのリチウム複合酸化物が挙げられる。
Mn及びNi含有正極活物質としては、Ni−Mn−Alのリチウム複合酸化物が挙げられる。
そして、Mn及び/又はNi含有正極活物質としては、リチウムイオン二次電池の高容量化の観点から、LiNiCoMn(0<a≦2、0<b<1、0≦c<1 0<d<1)の一般式で表される正極活物質が好ましい。このような正極活物質としては、例えば、Li1.2Ni0.17Co0.07Mn0.56、LiNi1/3Co1/3Mn1/3が挙げられ、これらの中でも、リチウムイオン二次電池の高容量化の観点から、正極活物質としては、LiNi1/3Co1/3Mn1/3が特に好ましい。
<酸性重合体A>
本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物に含まれる酸性重合体Aは、Mn及び/又はNi含有正極活物質から溶出した、水酸化リチウム(LiOH)等のアルカリ性の腐食物質を酸性官能基により中和することが可能な重合体である。
なお、該中和により生成した酸性重合体Aのリチウム塩は、本発明のスラリー組成物を用いて得られた電極を備えるリチウムイオン二次電池の電解液中で、リチウムイオンを放出することができる。従って、酸性重合体Aを含むスラリー組成物を用いて形成した正極を備えるリチウムイオン二次電池では、電解液中のリチウムイオン濃度を高いレベルで維持することができる。更に、当該リチウムイオン二次電池では、酸性重合体Aのリチウム塩の存在に起因した電解液中のリチウムイオン濃度の上昇により、電解液の凝固点が降下する。従って、低温域において電解液中でのリチウムイオンの移動の容易性が確保され、リチウムイオン二次電池の電気的特性(例えば低温出力特性)を向上させることができる。
酸性重合体Aは、酸性官能基含有単量体単位を含む。ここで、酸性重合体Aの酸性官能基含有単量体単位の含有割合は、その下限を15質量%以上とする必要があり、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、その上限を60質量%以下とする必要があり、より好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。酸性重合体Aの酸性官能基含有単量体単位の含有割合が15質量%以上であることで、集電体の腐食を抑制することができる。また、リチウムイオン二次電池とした際に上述の電解液中へのリチウムイオンの放出が十分となり、低温出力特性を確保することができる。また、酸性重合体Aの酸性官能基含有単量体単位の含有割合が60質量%以下であることで、酸性重合体Aの凝集が抑制されリチウムイオンの放出が十分となり、低温出力特性を確保することができる。また、正極の柔軟性を確保することができ、それに伴いリチウムイオン二次電池のサイクル特性を確保することができる。そして更に、酸性重合体Aの酸性官能基含有単量体単位の含有割合を上記の範囲とすることで、本発明のスラリー組成物を用いて得られる正極活物質層と集電体との密着性を確保することができる。
酸性重合体Aの重量平均分子量は、その下限を10000以上とする必要があり、好ましくは15000以上、より好ましくは20000以上、特に好ましくは50000以上であり、その上限を200000以下とする必要があり、好ましくは150000以下、より好ましくは100000以下、特に好ましくは80000以下である。酸性重合体Aの重量平均分子量が10000以上であることで、リチウムイオン二次電池を形成した際に、酸性重合体Aがリチウムイオン二次電池の電解液に溶解するのを抑制することができる。従って、電解液の粘度の上昇およびそれに伴うリチウムイオンの移動の抑制の問題が生じ難くなり、リチウムイオン二次電池の低温出力特性及びサイクル特性等の電気的特性を確保することができる。さらに、酸性重合体Aの重量平均分子量が50000以上であることで、本発明のスラリー組成物を用いて得られる正極における、正極活物質層と集電体との密着性を良好なものとすることができる。また、酸性重合体Aの重量平均分子量が200000以下であることで、酸性重合体Aの電解液中での膨潤性が確保され、リチウムイオン二次電池の低温出力特性及びサイクル特性等の電気的特性を良好なものとすることができる。また、酸性重合体Aが強い凝集作用を発揮することがなく、スラリー組成物の安定性を十分なものとして、当該スラリー組成物を用いて形成したリチウムイオン二次電池の出力特性等の電気的特性を良好なものとすることができる。即ち、酸性重合体Aの重量平均分子量が200000超であると、リチウムイオン二次電池とした際に酸性重合体Aが膨潤し難く、酸性重合体Aによりリチウムイオンの移動が阻害されてリチウムイオン二次電池の電気的特性が低下する。また、スラリー組成物の安定性が低下して、リチウムイオン二次電池の電気的特性が低下する。なお、酸性重合体Aの重量平均分子量は、酸性重合体Aの調製時に公知の分子量調整剤を用いることで、調整することができる。
また、酸性重合体Aは、水溶性である。酸性重合体Aが水溶性であることで、水系のスラリー組成物中において、好適に正極活物質に吸着し、正極活物質の分散性を高めることができる。このように正極活物質が均一に分散していることで、リチウムイオン二次電池の容量を高くすることができる。ここで、酸性重合体Aが水溶性であるとは、酸性重合体Aが25℃でpH7超9以下の水系媒体中に10質量%以上の濃度で溶解することをいい、好ましくは、25℃でpH7超の水系媒体中に10質量%以上の濃度で溶解することをいう。なお、酸性重合体Aの水系媒体への溶解度は、例えば、酸性官能基含有単量体の含有割合を変更することで調整することができる。
なお、本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、Mn及び/又はNi含有正極活物質のアルカリ性の腐食物質等の影響により、通常25℃でのpHが7超である。従って、水溶性である酸性重合体Aは、該スラリー組成物中で十分に溶解することができる。そして、該スラリー組成物を用いて得られた正極を含むリチウムイオン二次電池の電解液中においては、粒子状を維持する粒子状重合体Bとは異なり、不定形な状態で正極活物質、導電材、粒子状重合体Bの周りに存在することとなる。
ここで、酸性重合体Aは、酸性官能基含有単量体、及び他の任意の単量体を含む単量体組成物を付加重合することによって調製される。従って、β−グルコースが縮合重合してなるセルロースの誘導体であるカルボキシメチルセルロースなどは、本発明に用いる酸性重合体Aには含まれない。酸性重合体Aの製造に使用可能な酸性官能基含有単量体の例としては、リン酸基含有単量体、スルホン酸基含有単量体、及び、カルボキシル基含有単量体を挙げることができる。なお、酸性重合体Aは、少なくともカルボキシル基含有単量体を用いて調製することが好ましい。カルボキシル基は、リチウム塩となった際にリチウムが電離し易いので、カルボキシル基を有する酸性重合体Aは、電解液の凝固点を十分に降下させることができるからである。
上記酸性重合体Aの製造に使用可能なリン酸基含有単量体は、リン酸基、及び他の単量体と共重合しうる重合性の基を有する単量体である。このリン酸基含有単量体としては、−O−P(=O)(−OR)−OR基を有する単量体(R及びRは、独立して、水素原子、又は任意の有機基である。)、又はこの塩を挙げることができる。R及びRとしての有機基の具体例としては、オクチル基等の脂肪族基、フェニル基等の芳香族基等が挙げられる。
上記酸性重合体Aの製造に使用可能なリン酸基含有単量体としては、例えば、リン酸基及びアリロキシ基を含む化合物、及びリン酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。リン酸基及びアリロキシ基を含む化合物としては、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンリン酸を挙げることができる。リン酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、ジオクチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、モノメチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジメチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、モノエチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジエチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、モノイソプロピル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジイソプロピル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、モノn−ブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジn−ブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、モノブトキシエチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブトキシエチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、モノ(2−エチルヘキシル)−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジ(2−エチルヘキシル)−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、モノエチル‐2−アクリロイロキシエチルホスフェートなどが挙げられる。
上記酸性重合体Aの製造に使用可能なスルホン酸基含有単量体は、スルホン酸基、及び他の単量体と共重合しうる重合性の基を有する単量体である。スルホン酸基含有単量体の例を挙げると、スルホン酸基及び重合性の基以外に官能基をもたないスルホン酸基含有単量体またはその塩、スルホン酸基及び重合性の基に加えてアミド基を含有する単量体またはその塩、並びに、スルホン酸基及び重合性の基に加えて水酸基を含有する単量体またはその塩などが挙げられる。
スルホン酸基及び重合性の基以外に官能基をもたないスルホン酸基含有単量体としては、例えば、イソプレン及びブタジエン等のジエン化合物の共役二重結合の1つをスルホン化した単量体、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルメタクリレート、スルホブチルメタクリレートなどが挙げられる。また、その塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。スルホン酸基及び重合性の基に加えてアミド基を含有する単量体としては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)などが挙げられる。また、その塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。スルホン酸基及び重合性の基に加えて水酸基を含有する単量体としては、例えば、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(HAPS)などが挙げられる。また、その塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。
上記酸性重合体Aの製造に使用可能なカルボキシル基含有単量体は、カルボキシル基及び重合可能な基を有する単量体とすることができる。カルボキシル基含有単量体の例としては、具体的には、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を挙げることができる。
上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の例としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸及びその誘導体、エチレン性不飽和ジカルボン酸及びその酸無水物並びにそれらの誘導体が挙げられる。エチレン性不飽和モノカルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、及びクロトン酸が挙げられる。エチレン性不飽和モノカルボン酸の誘導体の例としては、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α−アセトキシアクリル酸、β−trans−アリールオキシアクリル酸、α−クロロ−β−E−メトキシアクリル酸、及びβ−ジアミノアクリル酸が挙げられる。エチレン性不飽和ジカルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸が挙げられる。エチレン性不飽和ジカルボン酸の酸無水物の例としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、及びジメチル無水マレイン酸が挙げられる。エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体の例としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸等のマレイン酸メチルアリル;並びにマレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキル等のマレイン酸エステルが挙げられる。
これら酸性官能基含有単量体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、本発明に用いる酸性重合体Aは、酸性官能基含有単量体単位を、1種類だけ含んでいてもよく、2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。そして、これら酸性官能基含有単量体の中でも、得られるスラリー組成物の保存安定性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、モノエチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、モノエチル‐2−アクリロイロキシエチルホスフェートがより好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
本発明に用いる酸性重合体Aは、酸性官能基含有単量体単位に加えて、他の単量体単位を含むことができる。かかる他の単量体単位の例としては、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、フッ素を含有しない(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、架橋性単量体単位、反応性界面活性剤単位が挙げられる。これらの中でも、本発明のスラリー組成物を用いて得られるリチウムイオン二次電池の低温出力特性の観点から、酸性重合体Aは、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むことが好ましい。なお、本明細書において、単に「(メタ)アクリル酸エステル単量体単位」という場合は、「フッ素を含有しない(メタ)アクリル酸単量体単位」をさすものとする。
上記酸性重合体Aの製造に使用可能なフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、下記の式(I)で表される単量体が挙げられる。
Figure 2014165108
前記の式(I)において、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
前記の式(I)において、Rは、フッ素原子を含有する炭化水素基を表す。炭化水素基の炭素数は、通常、1以上18以下である。また、Rが含有するフッ素原子の数は、1個でもよく、2個以上でもよい。
式(I)で表されるフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体の例としては、(メタ)アクリル酸フッ化アルキル、(メタ)アクリル酸フッ化アリール、及び(メタ)アクリル酸フッ化アラルキルが挙げられる。なかでも(メタ)アクリル酸フッ化アルキルが好ましい。このような単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸β−(パーフルオロオクチル)エチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル、(メタ)アクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸1H,1H,9H−パーフルオロ−1−ノニル、(メタ)アクリル酸1H,1H,11H−パーフルオロウンデシル、(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチル、(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸3[4〔1−トリフルオロメチル−2、2−ビス〔ビス(トリフルオロメチル)フルオロメチル〕エチニルオキシ〕ベンゾオキシ]2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステルが挙げられ、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
そして、これらフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体の中でも、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を更に向上する観点からは、メタクリル酸1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル、メタクリル酸1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル、メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチルが好ましく、メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチルが特に好ましい。
本発明に用いる酸性重合体Aにおけるフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらにより好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは6質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合を0.1質量%以上とすることにより、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を向上させることができる。一方、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合を50質量%以下とすることにより、脱フッ素を起こり難くして、フッ素によるリチウムイオン二次電池内の電極等の腐食を抑制でき、良好なサイクル特性を確保することができる。
上記酸性重合体Aの製造に使用可能なフッ素を含有しない(メタ)アクリル酸エステル単量体の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
そして、これら(メタ)アクリル酸エステル単量体の中でも、共重合が容易であること、及び、正極活物質層と集電体との密着性を良好なものとするため、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルが好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルが特に好ましい。
本発明に用いる酸性重合体Aにおいて、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合を50質量%以上とすることにより、本発明のスラリー組成物を用いて得られる正極の柔軟性及び本発明のスラリー組成物を用いて得られる二次電池の低温出力特性を確保することができ、90質量%以下とすることにより、本発明のスラリー組成物を用いて得られる正極活物質層と集電体との密着性を優れたものとすることができる。
なお、酸性重合体Aにおいて、本発明のスラリー組成物を用いて得られる正極の柔軟性確保の観点から、アクリル酸エチル単量体単位の含有割合は、0〜60質量%であることが好ましく、アクリル酸ブチル単量体単位の含有割合は25〜60質量%が好ましい。
上記酸性重合体Aの製造に使用可能な架橋性単量体としては、重合した際に架橋構造を形成しうる単量体を用いることができる。架橋性単量体の例としては、1分子あたり2以上の反応性基を有する単量体を挙げることができる。より具体的には、熱架橋性の架橋性基及び1分子あたり1つのオレフィン性二重結合を有する単官能性単量体、及び1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を有する多官能性単量体が挙げられる。
単官能性単量体に含まれる熱架橋性の架橋性基の例としては、エポキシ基、N−メチロールアミド基、オキセタニル基、オキサゾリン基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、エポキシ基が、架橋及び架橋密度の調節が容易な点でより好ましい。
熱架橋性の架橋性基としてエポキシ基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5−エポキシ−2−ペンテン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンなどのジエンまたはポリエンのモノエポキシド;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセンなどのアルケニルエポキシド;並びにグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル−4−メチル−3−ペンテノエート、3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステルなどの不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類が挙げられる。
熱架橋性の架橋性基としてN−メチロールアミド基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのメチロール基を有する(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
熱架橋性の架橋性基としてオキセタニル基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−トリフロロメチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、及び2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−4−トリフロロメチルオキセタンが挙げられる。
熱架橋性の架橋性基としてオキサゾリン基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、及び2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンが挙げられる。
2つ以上のオレフィン性二重結合を有する多官能性単量体の例としては、アリル(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−トリ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリグリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキノンジアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、トリメチロールプロパン−ジアリルエーテル、前記以外の多官能性アルコールのアリルまたはビニルエーテル、トリアリルアミン、メチレンビスアクリルアミド、及びジビニルベンゼンが挙げられる。
これらの中でも、乾燥時に架橋するためスラリー組成物の粘度増加を抑制すると共に、スラリー組成物を用いて製造した正極の強度を向上する観点から、架橋性単量体としては、特に、エチレンジメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、及び、グリシジルメタクリレートを好ましく用いることができる。
本発明に用いる酸性重合体Aにおける架橋性単量体単位の含有割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。架橋性単量体単位の含有割合を前記範囲内とすることにより、酸性重合体Aの膨潤度を適当な範囲とし、本発明のスラリー組成物を用いて得られる正極の耐久性を高めることができる。
上記酸性重合体Aの製造に使用可能な反応性界面活性剤は、他の単量体と共重合しうる重合性の基を有し、且つ、界面活性基(親水性基及び疎水性基)を有する単量体である。反応性界面活性剤の重合により得られる反応性界面活性剤単位は、酸性重合体Aの分子の一部を構成し、且つ界面活性作用を奏しうるため、酸性重合体Aの製造時の安定性が高くなる。
好適な反応性界面活性剤の例としては、下記の式(II)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2014165108
式(II)において、Rは2価の結合基を表す。Rの例としては、−Si−O−基、メチレン基及びフェニレン基が挙げられる。式(II)において、Rは親水性基を表す。Rの例としては、−SONHが挙げられる。式(II)において、nは1以上100以下の整数である。反応性界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
好適な反応性界面活性剤の別の例としては、エチレンオキシドに基づく重合単位及びブチレンオキシドに基づく重合単位を有し、さらに末端に、末端二重結合を有するアルケニル基及び−SONHを有する化合物(例えば、商品名「ラテムルPD−104」及び「ラテムルPD−105」、花王株式会社製)を挙げることができる。
本発明に用いる酸性重合体Aにおける反応性界面活性剤単位の含有割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。反応性界面活性剤単位の比率を0.1質量%以上とすることにより、複合粒子の製造の際、スラリー組成物中で酸性重合体Aの分散性を向上させることができる。一方、反応性界面活性剤単位の比率を5質量%以下とすることにより、正極の耐久性を向上させることができる。
本発明に用いる酸性重合体Aが含みうる上記以外の単量体単位としては、下記の単量体に由来する単量体単位が挙げられる。即ち、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系単量体;アクリルアミド等のアミド系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル化合物単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン類単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類単量体;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類単量体;並びにN−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物単量体の1以上を重合した際に得られる単量体単位が挙げられる。酸性重合体Aにおけるこれらの単位の含有割合は、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%である。
本発明に用いる酸性重合体Aは、任意の製造方法で製造することができる。例えば、酸性官能基含有単量体を含み且つ必要に応じて他の任意の単位を与える単量体を含む単量体組成物を、水系溶媒中で付加重合して製造することができる。重合反応に用いる水系溶媒としては、既知の水系溶媒、例えば、特開2011−204573号公報に記載のものを用いることができるが、これらの中でも水が好ましい。
上記のような水系溶媒中での付加重合反応により、水系溶媒に酸性重合体Aが分散した酸性重合体Aの水分散液が得られる。こうして得られた水分散液から酸性重合体Aを取り出して用いてもよいが、そのままスラリー組成物の調製に用いてもよい。
また、上記酸性重合体Aの水分散液をそのままスラリー組成物の調製に用いる場合、該水分散液のpHは、好ましくは3以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは7以下である。酸性重合体Aの水分散液のpHが3以上であることで、酸による装置の腐食や、装置の腐食に伴うスラリー組成物への金属不純物の混入を抑制することができる。また、酸性重合体Aの水分散液のpHが10以下であることで、集電体の腐食を抑制することができ、又、低粘度となるためハンドリングが良好となる。
本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物中、酸性重合体Aの含有量は、特に限定されないが、正極活物質100質量部当たり、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらにより好ましくは0.5質量部以下、特に好ましくは0.2質量部以下、特に好ましくは0.2質量部以下である。酸性重合体Aの含有量をこのような範囲内とすることで、Mn及び/又はNi含有正極活物質から溶出したアルカリ性の腐食物質を中和し、集電体の腐食を十分に抑制することができる。また、本発明のスラリー組成物を用いて得られる正極を使用したリチウムイオン二次電池の低温出力特性などの電気的特性を十分に優れたものとすることができる。
<粒子状重合体B>
本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、粒子状重合体Bを含む。
粒子状重合体Bは、本発明のスラリー組成物を用いて集電体上に形成される正極活物質層において、当該正極活物質層に含まれる成分が正極活物質層から脱離しないように保持しうる成分であり、即ち主にバインダー(結着剤)として機能する成分である。一般的に、正極活物質層における粒子状重合体Bは、電解液に浸漬された際に、電解液を吸収して膨潤しながらも粒状の形状を維持し、正極活物質、導電材を結着させ、正極活物質、導電材が集電体から脱落するのを防ぐ。本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物に粒子状重合体Bを含むことにより、該スラリー組成物を用いて形成した正極中では、正極活物質と導電材が各々偏在することなく良好に分散しており、該正極を用いたリチウムイオン二次電池は出力特性に優れる。従って、該正極を用いたリチウムイオン二次電池は、諸性能を良好に保つことができる。
本発明で用いる粒子状重合体Bは、酸性官能基含有単量体単位の含有割合が、0質量%超であり、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、10質量%以下とする必要があり、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。粒子状重合体Bが酸性官能基含有単量体を含む(即ち、粒子状重合体Bの酸性官能基含有単量体単位の含有割合が0質量%超である)ことで、バインダーとしての結着力が確保され、本発明のスラリー組成物を用いて得られるリチウムイオン二次電池の、サイクル特性等の電気的特性を確保することができる。また、粒子状重合体Bの酸性官能基含有単量体単位の含有割合が10質量%以下であることで、粒子状重合体Bの製造安定性と保存安定性を高くでき、さらに、酸性重合体Aや正極活物質や導電材等と良好に接着することができ、結果としてリチウムイオン二次電池の良好な電気的特性を含む各種性能の確保に寄与する。
ここで、粒子状重合体Bは、酸性官能基含有単量体、及び他の任意の単量体を含む単量体組成物を付加重合することによって調製しうる。粒子状重合体Bの製造に使用可能な酸性官能基含有単量体の例としては、例えば、酸性重合体Aの項において例示したリン酸基含有単量体、スルホン酸基含有単量体、及び、カルボキシル基含有単量体を挙げることができ、それらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。その中でも、粒子状重合体Bの保存安定性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、モノエチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、モノエチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェートが好ましく、アクリル酸、イタコン酸、メタクリル酸がより好ましく、イタコン酸が特に好ましい。
粒子状重合体Bは、上記酸性官能基含有単量体単位に加えて、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及びα,β−不飽和ニトリル単量体単位の少なくとも一方を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とα,β−不飽和ニトリル単量体単位とを含むことがより好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と(メタ)アクリロニトリル単量体単位とを含むことが特に好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルを意味する。
上記粒子状重合体Bの製造に使用可能な(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、酸性重合体Aの項において例示したフッ素を含有しない(メタ)アクリル酸エステル単量体ものと同様のものが挙げられる。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、好ましくは炭素数が4以上、より好ましくは炭素数が6以上、特に好ましくは炭素数が8以上であり、好ましくは炭素数が13以下、より好ましくは炭素数が11以下である。炭素数4以上である(メタ)アクリル酸エステル単量体を使用することにより、電解液中での粒子状重合体Bの膨潤性が低くなり、リチウムイオン二次電池の寿命が向上する。また、炭素数13以下である(メタ)アクリル酸エステル単量体を使用することにより、粒子状重合体Bの耐加水分解性を向上させ、保存安定性を確保することができる。中でも、2−エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。
粒子状重合体Bにおける、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の単量体単位の含有割合を50質量%以上にすることにより、本発明のスラリー組成物を用いて得た正極の柔軟性が向上し、正極を割れ難くできる。また、95質量%以下にすることにより、粒子状重合体Bのバインダーとしての機械強度と結着力とを向上させることができる。
上記粒子状重合体Bの製造に使用可能なα,β−不飽和ニトリル単量体としては、バインダーとしての機械的強度及び結着力向上のため、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルが特に好ましい。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
粒子状重合体Bにおける、α,β−不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。α,β−不飽和ニトリル単量体単位の含有割合を3質量%以上とすることにより、粒子状重合体Bのバインダーとしての機械強度と結着力を高めることができる。また、40質量%以下とすることにより、本発明のスラリー組成物を用いて得た正極の柔軟性が向上し、正極を割れ難くできる。
さらに、粒子状重合体Bは、上述したもの以外の単量体由来の単量体単位を含んでいてもよい。このような単量体の例を挙げると、酸性重合体Aの項において例示したのと同様のものが挙げられる。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
粒子状重合体Bの製造方法は特に限定はされず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法を用いてもよい。また、重合方法としては、ラジカル重合、リビングラジカル重合などの付加重合を用いることができる。また、重合開始剤としては、既知の重合開始剤、例えば、特開2012−184201号公報に記載のものを用いることができる。
粒子状重合体Bは、通常、水系媒体中に粒子状で分散した分散液の状態で製造され、本発明のリチウム電池正極用スラリー組成物においても同様に水系媒体中に粒子状で分散した状態で含まれる。水系媒体中に粒子状で分散している場合、粒子状重合体Bの粒子の50%体積平均粒径は、好ましくは25nm以上であり、好ましくは200nm以下、より好ましくは185nm以下、特に好ましくは160nm以下である。粒子状重合体Bの粒子の体積平均粒径を50nm以上にすることにより本発明のスラリー組成物の安定性を高めることができる。また、200nm以下とすることにより、粒子状重合体Bの結着力を高めることができる。
粒子状重合体Bは、通常、上記分散液のままで保存及び運搬される。このような分散液の固形分濃度は、通常15質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、通常70質量%以下、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。分散液の固形分濃度がこの範囲であると、スラリー組成物を製造する際における作業性が良好である。
また、粒子状重合体Bを含む上記分散液のpHは、好ましくは5以上、より好ましくは7以上であり、好ましくは13以下、より好ましくは11以下である。分散液のpHを上記範囲に収めることにより、粒子状重合体Bの安定性が向上する。
粒子状重合体Bのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−45℃以上、特に好ましくは−40℃以上であり、好ましくは25℃以下、より好ましくは15℃以下、特に好ましくは5℃以下である。粒子状重合体Bのガラス転移温度を前記の範囲に収めることにより、本発明の製造方法により製造されるスラリー組成物を用いて製造した正極の強度及び柔軟性を向上させて、高い低温出力特性を実現できる。
本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物中、粒子状重合体Bの含有量は、特に限定されないが、正極活物質100質量部当たり、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、特に好ましくは0.8質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、特に好ましくは3質量部以下である。粒子状重合体Bの含有量を正極活物質100質量部当たり0.1質量部以上とすることにより、正極活物質、導電材や、集電体との結着性を高めることができる。また、10質量部以下とすることにより、本発明のスラリー組成物を用いて得た正極をリチウムイオン二次電池に適用した際に、粒子状重合体Bによるリチウムイオンの移動の阻害を抑制し、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を小さくできる。
そして本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物中、粒子状重合体Bの質量(b)に対する酸性重合体Aの質量(a)の比(a/b)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であり、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下である。粒子状重合体Bの質量(b)に対する酸性重合体Aの質量(a)の比(a/b)が0.01以上であることで、酸性重合体Aの量が十分となり、集電体の腐食を好適に抑制することができる。また、本発明のスラリー組成物を用いて製造される正極活物質層と集電体との密着性を良好なものとすることができる。そして、粒子状重合体Bの質量(b)に対する酸性重合体Aの質量(a)の比(a/b)が0.3以下であることで、粒子状重合体Bの凝集を抑制し、分散性を良好なものとすることができる。より詳しくは、酸性重合体Aは粒子状重合体B同士を分子間相互作用による架橋により接着させる効果を持っており、好適な強度を有する正極活物質層を形成する要因となる一方、酸性重合体Aの質量が粒子状重合体の質量に比して過剰となると、上記接着させる効果が強すぎることにより粒子状重合体Bの凝集が生じ、得られるスラリー組成物の粘性を変化させ、該スラリー組成物を集電体上に塗布する際に凝集物による塗布欠陥が起きるなどの問題が生じる恐れがある。a/bが0.3以下であることで、粒子状重合体Bの質量(b)に対する酸性重合体Aの質量(a)が過剰とならず、上記のような問題の発生を十分に抑制することができ、結果として本発明のスラリー組成物を用いて製造される正極活物質層と集電体との密着性や、リチウムイオン二次電池の電気的特性を良好なものとすることができる。
<導電材>
本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物中には、導電材が含まれる。導電材としては、特に限定されないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンブラック、グラファイト等の導電性炭素材料;各種金属のファイバー、箔などが挙げられ、アセチレンブラックが特に好ましい。スラリー組成物が導電材を含むことにより、Mn及び/又はNi含有正極活物質同士の電気的接触を向上させることができ、これにより、本発明のスラリー組成物を用いて得られる正極を使用したリチウムイオン二次電池の電気的特性(例えば、低温出力特性)及びその他の特性を向上させることができる。
導電材は、粒子状の形状を有することが好ましく、その粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは100nm以下である。導電材の粒子径を1nm以上とすることにより、導電材の分散性を良好な状態に保つことができる。導電材の粒子径を500nm以下とすることにより、比表面積を所望の大きな値とすることができ、それにより導電材の効果(正極活物質同士の電気的接触の向上)を良好に発現することができ、結果的に抵抗を所望以下の小さい値とすることができる。なお、導電材粒子の平均粒子径としては、50%体積平均粒径を用いる。
本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物中の導電材の含有量は、特に限定されないが、正極活物質100質量部当たり、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、特に好ましくは2質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。導電材の含有量を上記の範囲とすることで、本発明のスラリー組成物を用いて得られる正極を使用したリチウムイオン二次電池の高容量と高い負荷特性とを両立することができる。
<その他の成分>
本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、上記成分の他に、例えば、補強材、分散剤、酸化防止剤、カルボキシメチルセルロースなどの増粘剤、電解液の分解を抑制する機能を有する電解液添加剤などの成分を含有していてもよい。これらその他の成分は、公知のものを使用することができ、例えば特開2012−204303号公報に記載のものを使用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、上記各成分と水とを混合することにより得ることができる。混合手段としては、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどの混合機が挙げられる。また、混合は、通常、室温〜80℃の範囲で、10分〜数時間行う。
本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物中の固形分濃度は、特に限定されないが、スラリー組成物の物性や、乾燥効率の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、また好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
<リチウムイオン二次電池用正極の製造方法>
次に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極の製造方法について説明する。本発明のリチウムイオン二次電池用正極の製造方法は、集電体上に、上記リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を塗布する工程(塗布工程)と、集電体上に塗布されたスラリー組成物を乾燥し、正極活物質層を形成する工程(乾燥工程)とを備える。
(塗布工程)
集電体上に、上記のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えばドクターブレード法、ジップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。この際、該スラリー組成物を集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上のスラリー膜の厚みは、乾燥して得られる正極活物質層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
集電体としては、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる集電体を用い得る。この際、アルミニウムとアルミニウム合金とを組み合わせて用いてもよく、種類が異なるアルミニウム合金を組み合わせて用いてもよい。集電体は一般に電気導電性を有し、かつ、電気化学的に耐久性のある材料が用いられ、特にアルミニウム及びアルミニウム合金は耐熱性を有し、電気化学的に安定であるため、優れた集電体材料である。
アルミニウム合金としては、例えば、鉄、マグネシウム、亜鉛、マンガン及びケイ素よりなる群から選択される1種類以上の元素と、アルミニウムとの合金が挙げられる。
集電体の形状は、特に制限されないが、厚み0.001mm〜0.5mmのシート状のものが好ましい。
また、集電体は、正極活物質層の接着強度を高めるため、予め粗面化処理が施されていてもよい。粗面化方法としては、例えば、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、例えば、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。
(乾燥工程)
集電体上のスラリー組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥条件としては、特に限定されないが、例えば、赤外線の照射による乾燥法を用いる場合、50〜150℃のオーブン中で乾燥する。このように集電体上のスラリー組成物を乾燥することで、正極活物質層と集電体とを備えるリチウムイオン二次電池用正極を得ることができる。
なお、乾燥工程の後、金型プレス又はロールプレスなどを用い、正極活物質層に加圧処理を施す工程を備えてもよい。加圧処理により、正極活物質層と集電体との密着性を向上させることができる。
<リチウムイオン二次電池用正極>
次に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極について説明する。本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、MnおよびNiの少なくとも一方を含有する正極活物質(Mn及び/又はNi含有正極活物質)と、酸性官能基含有単量体単位の含有割合が15〜60質量%であり、重量平均分子量が10000〜200000である重合体A(酸性重合体A)と、酸性官能基含有単量体単位の含有割合が10質量%以下である粒子状重合体B(粒子状重合体B)と、導電材と、を含む。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極中の、Mn及び/又はNi含有正極活物質と、酸性重合体Aと、粒子状重合体Bと、導電材は、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物の項において挙げたものと同様のものを使用することができる。
そして、本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、例えば、上述の本発明のリチウムイオン二次電池用正極の製造方法により製造することができる。また、本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、Mn及び/又はNi含有正極活物質と、酸性重合体Aと、粒子状重合体Bと、導電材とを含むスラリー組成物を用意し、該スラリー組成物を乾燥造粒することにより複合粒子とし、該複合粒子を集電体上に供給し、加圧成形等により集電体上に正極活物質層を形成することで製造することもできる。これらの方法で得られた本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、集電体の腐食が十分に抑制されており、かつ、リチウムイオン二次電池に用いた際に優れた電気的特性を発揮する。ここで、正極活物質層の厚さは50〜120μmの範囲内であることが好ましい。正極活物質の層の厚さを上記の範囲内とすることで、正極の割れを防止し、かつリチウムイオン二次電池を高容量化することができる。
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、上記本発明のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備える。
(負極)
本発明のリチウムイオン二次電池の負極としては、リチウムイオン二次電池用負極に通常用いられる各種の負極を用いることができ、例えば、金属リチウムの薄板を用いることができる。又は例えば、集電体と、集電体の表面に形成された負極活物質層とを備えるものを用いることができる。
負極の集電体としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金等の金属材料からなるものを用いる。中でも、高い電気導電性を有し、かつ電気化学的に安定であるという観点より、銅が特に好ましい。
負極活物質層は、負極活物質及びバインダーを含む層である。
負極活物質、バインダーとしては、それぞれ公知のものを用いることができ、例えば、特開2012−204303号公報に記載のものが挙げられる。バインダーは正極において用いる粒子状重合体Bと同様のものを用いてもよい。また、負極活物質層には、必要に応じて、負極活物質及びバインダー以外の成分が含まれていてもよい。
負極は、例えば、負極活物質、バインダー、及び、水を含む負極用スラリー組成物を用意し、その負極用スラリー組成物の層を集電体上に形成し、その層を乾燥させて製造してもよいし、負極用スラリー組成物を乾燥造粒することにより複合粒子とし、該複合粒子を集電体上に供給し、加圧成形等により集電体上に負極活物質層を形成することにより製造してもよい。
(電解液)
本発明のリチウムイオン二次電池の電解液としては、通常は溶媒に電解質を溶解した電解液が用いられる。また溶媒としては有機溶媒が好適に用いられる。
電解質としては、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらのリチウム塩の中でも、有機溶媒に溶解しやすく、高い解離度を示すという点より、LiPF、LiClO、CFSOLiが好ましく、LiPFが特に好ましい。解離度の高い電解質を用いるほど、リチウムイオンの伝導度を高くすることができる。なお、電解質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
電解液に用いる溶媒としては、電解質を溶解できるものであれば特に限定されず、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の高誘電率溶媒に、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、酢酸メチル、ジメトキシエタン、ジオキソラン、プロピオン酸メチル、ギ酸メチル等の粘度調製溶媒を添加したものが好ましい。そして、溶媒としてエチレンカーボネートを含むことが特に好ましい。エチレンカーボネートは比誘電率が高くリチウム塩を大量に溶解させることができ、そして、分子サイズが小さいため粘度も小さく、常温においてはリチウムイオンの移動を大きく阻害することもないからである。
そして、本発明のリチウムイオン二次電池の溶媒中、温度25℃でのエチレンカーボネートの含有割合は、好ましくは30体積%以上、より好ましくは35体積%以上、特に好ましくは37体積%以上であり、好ましくは60体積%以下、より好ましくは55体積%以下、より好ましくは47体積%以下である。エチレンカーボネートは、上記のような優れた点を有するものの、凝固点が高いため、低温域においては、凝固するか、粘度が大幅に上昇する。従って、エチレンカーボネートの含有割合を大きくし過ぎると、低温でのリチウムイオン二次電池の電気的特性、特に低温出力特性が低下する。なお、本発明のスラリー組成物を用いた正極は、上述の酸性重合体Aを含んでおり、酸性重合体Aは、前述した通り電解液の凝固点を下げる効果を奏するので、本発明のリチウムイオン二次電池では、25℃でのエチレンカーボネートの含有割合が30体積%以上であっても、低温出力特性を良好なものとすることができる。また、25℃でのエチレンカーボネートの含有割合が30体積%以上であることで、リチウム塩を良好に溶解させ、リチウムイオン二次電池のその他の電気的特性を確保することもできる。
また、電解液には、添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート系化合物が挙げられる。
電解液の温度25℃での比誘電率は、特に限定されないが、好ましくは20〜100、より好ましくは20〜90、特に好ましくは25〜90の範囲内である。電解液の比誘電率が上記の範囲内であることで、LiPF等の電解質を十分に溶解させることができる。
電解液の粘度は、特に限定されないが、電解液中のリチウムイオン濃度の変化を抑制し、リチウムイオン二次電池の電気的特性を確保するため、温度25℃での粘度(B型粘度計による測定値)が3mPa・s以下であることが好ましい。
(セパレータ)
セパレータとしては、例えば、特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、二次電池内の電極活物質の比率を高くし、体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
(リチウムイオン二次電池の製造方法)
本発明のリチウムイオン二次電池は、例えば、上述した本発明の正極と、負極とを、セパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。リチウムイオン二次電池の内部の圧力上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。リチウムイオン二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。このようにして得られたリチウムイオン二次電池は、正極の集電体の腐食が十分に抑制されており、かつ、優れた電気的特性を有する。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、集電体の腐食抑制効果、正極活物質層と集電体との密着強度、リチウムイオン二次電池のサイクル特性、及び、リチウムイオン二次電池の低温出力特性の評価方法はそれぞれ以下のものを使用した。
[集電体の腐食抑制効果]
各実施例及び比較例で作製したリチウムイオン二次電池用正極スラリー組成物を、20μmのアルミ箔(集電体)上に乾燥後の膜厚が70μm程度になるように塗布し、50℃にて20分乾燥を行い、正極サンプルを得た。得られた正極サンプルの、正極活物質層側(即ち、スラリー組成物を塗布した側)の表面の10cm×10cmの範囲について、目視にて観察を行い、直径0.5mm以上の塗工不良部分が発生している箇所の数を確認することにより、集電体の腐食抑制効果についての評価を行った。塗工不良部分の発生箇所が少ないほど、アルミ箔(集電体)のアルカリ腐食による水素ガスの気泡の発生が少なく、そして、該気泡による正極活物質表面の凹凸が少ないことを意味し、集電体の腐食が抑制されていることを示す。
A:塗工不良の発生箇所が確認できず、全体がなめらか
B:塗工不良の発生箇所が1箇所以上、5箇所未満
C:塗工不良の発生箇所が5箇所以上、10箇所未満
D:塗工不良の発生箇所が10箇所以上
[正極活物質層と集電体との密着強度]
実施例及び比較例で作製したリチウムイオン二次電池用正極を、長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して試験片とした。この試験片を、正極活物質層の表面を下にして、正極活物質層の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、集電体の一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を3回行い、測定値の平均値を求めて、当該平均値をピール強度とした。ピール強度が大きいほど、正極活物質層と集電体との密着強度が大きいことを示す。
A:応力が20N/m以上
B:応力が15N/m以上20N/m未満
C:応力が10N/m以上15N/m未満
D:応力が10N/m未満
[サイクル特性]
実施例及び比較例で作製したラミネート型セルのリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、このリチウムイオン二次電池を25℃の環境下で、0.5Cの低電流法にて4.2Vまで充電し、3.0Vまで放電する充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。さらに、このリチウムイオン二次電池を60℃の環境下で、前記の充放電と同様の充放電を繰り返し、200サイクル後の容量C2を測定した。サイクル特性(高温サイクル特性)は、ΔC=C2/C0×100(%)で示す容量維持率にて評価した。この容量維持率が高いほど、サイクル特性に優れることを示す。
A:容量維持率ΔCが85%以上
B:容量維持率ΔCが80%以上85%未満
C:容量維持率ΔCが70%以上80%未満
D:容量維持率ΔCが70%未満
[低温出力特性]
実施例及び比較例で作製したラミネート型セルを、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、1Cの低電流法にて5時間かけて充電する操作を行い、そのときの電圧V0を測定した。その後、−10℃環境下で、1Cの放電レートにて放電の操作を行い、放電開始15秒後の電圧V1を測定した。低温出力特性は、ΔV=V0−V1で示す電圧降下で評価した。この電圧降下が小さいほど、低温出力特性に優れることを示す。
A:電圧降下ΔVが120mV以上140mV未満
B:電圧降下ΔVが140mV以上160mV未満
C:電圧降下ΔVが160mV以上180mV未満
D:電圧降下ΔVが180mV以上200mV未満
E:電圧降下ΔVが200mV以上
酸性重合体1〜16、粒子状重合体1〜4を、以下のように製造した。なお、得られた酸性重合体の重量平均分子量は以下の条件により、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。
測定装置:東ソー社製GPC(型番:HLC−8220)
分子量カラム:TSKgel SuperHZM−M(東ソー社製)
移動液:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/min
検量線用標準物質:ポリスチレン
測定方法:重合体の固形物を移動液に固形分が0.5質量%になるように溶解し、0.45μmフィルターにてろ過したものを測定した。
また、得られた粒子状重合体のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に基づき、セイコーインスルメンツ社製 DSC6200Rを用いて測定した。詳細には、第1回目に毎分10℃で150℃まで昇温し10分保った後、−80℃まで冷却速度毎分10℃で冷却し10分保った後、150℃まで加熱速度毎分10℃で昇温し、この第2回目の昇温時に測定されるDSC曲線を用いて補外ガラス転移開始温度(℃)を求め、ガラス転移温度とした。
[酸性重合体1の製造]
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、メタクリル酸(酸性官能基含有単量体)30部、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体)10部、アクリル酸ブチル((メタ)アクリル酸エステル単量体)28.8部、アクリル酸エチル((メタ)アクリル酸エステル単量体)29.2部、エチレンジメタクリレート(架橋性単量体)0.8部、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(花王社製「ラテムルPD−104」、反応性界面活性剤)1.2部、t-ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.1部、イオン交換水150部、及び過硫酸カリウム(重合開始剤)0.5部を入れ、十分に攪拌した。その後、60℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、酸性重合体1の水分散液を得た。
酸性重合体1の重量平均分子量は、50000であり、酸性重合体1の水分散液のpHは5であった。
[酸性重合体2の製造]
メタクリル酸(酸性官能基含有単量体)を20部、アクリル酸エチル((メタ)アクリル酸エステル単量体単位)を39.2部とした以外は、酸性重合体1と同様にして、酸性重合体2の水分散液を得た。
酸性重合体2の重量平均分子量は、50000であり、酸性重合体2の水分散液のpHは5.3であった。
[酸性重合体3の製造]
メタクリル酸(酸性官能基含有単量体)を60部とし、アクリル酸エチル((メタ)アクリル酸エステル単量体単位)を28部とし、アクリル酸ブチル((メタ)アクリル酸エステル単量体単位)を使用しない以外は、酸性重合体1と同様にして、酸性重合体3の水分散液を得た。
酸性重合体3の重量平均分子量は、50000であり、酸性重合体3の水分散液のpHは4であった。
[酸性重合体4の製造]
メタクリル酸(酸性官能基含有単量体)を15部、アクリル酸エチル((メタ)アクリル酸エステル単量体単位)を44.2部とした以外は、酸性重合体1と同様にして、酸性重合体4の水分散液を得た。
酸性重合体4の重量平均分子量は、50000であり、酸性重合体4の水分散液のpHは5.5であった。
[酸性重合体5の製造]
メタクリル酸(酸性官能基含有単量体)30部に代えて2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(酸性官能基含有単量体)15部を使用し、アクリル酸エチル((メタ)アクリル酸エステル単量体単位)を44.2部とした以外は、酸性重合体1と同様にして、酸性重合体5の水分散液を得た。
酸性重合体5の重量平均分子量は、50000であり、酸性重合体5の水分散液のpHは3であった。
[酸性重合体6の製造]
t-ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)を0.05部とした以外は、酸性重合体1と同様にして、酸性重合体6の水分散液を得た。
酸性重合体6の重量平均分子量は、100000であり、酸性重合体6の水分散液のpHは5であった。
[酸性重合体7の製造]
t-ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)を0.2部とした以外は、酸性重合体1と同様にして、酸性重合体7の水分散液を得た。
酸性重合体7の重量平均分子量は、25000であり、酸性重合体7の水分散液のpHは5であった。
[酸性重合体8の製造]
メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体)を使用せず、アクリル酸エチル((メタ)アクリル酸エステル単量体単位)を39.2部とした以外は、酸性重合体1と同様にして、酸性重合体8の水分散液を得た。
酸性重合体8の重量平均分子量は、50000であり、酸性重合体8の水分散液のpHは5であった。
[酸性重合体9の製造]
メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体)を15部とし、アクリル酸ブチル((メタ)アクリル酸エステル単量体単位)を23.8部とした以外は、酸性重合体1と同様にして、酸性重合体9の水分散液を得た。
酸性重合体9の重量平均分子量は、50000であり、酸性重合体9の水分散液のpHは5であった。
[酸性重合体10の製造]
メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体)を5部とし、アクリル酸エチル((メタ)アクリル酸エステル単量体単位)を34.2部とした以外は、酸性重合体1と同様にして、酸性重合体10の水分散液を得た。
酸性重合体10の重量平均分子量は、50000であり、酸性重合体10の水分散液のpHは5であった。
[酸性重合体11の製造]
t-ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)を0.025部とした以外は、酸性重合体1と同様にして、酸性重合体11の水分散液を得た。
酸性重合体11の重量平均分子量は、200000であり、酸性重合体11の水分散液のpHは5であった。
[酸性重合体12の製造]
t-ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)を0.33部とした以外は、酸性重合体1と同様にして、酸性重合体12の水分散液を得た。
酸性重合体12の重量平均分子量は、15000であり、酸性重合体12の水分散液のpHは5であった。
[酸性重合体13の製造]
メタクリル酸(酸性官能基含有単量体)を10部、アクリル酸エチル((メタ)アクリル酸エステル単量体単位)を39.2部、アクリル酸ブチル((メタ)アクリル酸エステル単量体単位)を38.8部とした以外は、酸性重合体1と同様にして、酸性重合体13の水分散液を得た。
酸性重合体13の重量平均分子量は、50000であり、酸性重合体11の水分散液のpHは6であった。
[酸性重合体14]
酸性重合体14として、ポリアクリル酸(重量平均分子量150000、和光純薬製)を用いた。該酸性重合体14に水を加え、酸性重合体14の水分散液を得た。この酸性重合体14の水分散液のpHは3であった。
[酸性重合体15の製造]
t-ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)を0.3部とした以外は、酸性重合体1と同様にして、酸性重合体15の水分散液を得た。
酸性重合体15の重量平均分子量は、8000であり、酸性重合体15の水分散液のpHは5であった。
[酸性重合体16の製造]
t-ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)を0.02部とした以外は、酸性重合体1と同様にして、酸性重合体16の水分散液を得た。
酸性重合体16の重量平均分子量は、400000であり、酸性重合体16の水分散液のpHは5であった。
[粒子状重合体1の製造]
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、イタコン酸(酸性官能基含有単量体)4部、アクリル酸2−エチルヘキシル((メタ)アクリル酸エステル単量体)76部、アクリロニトリル((メタ)アクリロニトリル単量体)20部、ドデシルベンゼンスルホン酸
ナトリウム(界面活性剤)1部、イオン交換水150部、及び過硫酸カリウム(重合開始剤)0.8部を入れ、十分に攪拌した。その後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状重合体1を含む混合物を得た。上記粒子状重合体1を含む混合物に5%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH8に調整した。その後、加熱減圧蒸留によって粒子状重合体1を含む混合物から未反応単量体の除去を行った後、その混合物を30℃以下まで冷却し、所望の粒子状重合体1を含む水分散液を得た。粒子状重合体1のガラス転移温度(Tg)は、−37℃であった。
[粒子状重合体2の製造]
イタコン酸(酸性官能基含有単量体)4部に代えてメタクリル酸(酸性官能基含有単量体)2部を使用し、アクリロニトリル((メタ)アクリロニトリル単量体)を22部とした以外は、粒子状重合体1と同様にして、粒子状重合体2の水分散液を得た。粒子状重合体2のガラス転移温度(Tg)は、−39℃であった。
[粒子状重合体3の製造]
イタコン酸(酸性官能基含有単量体)4部に代えてメタクリル酸(酸性官能基含有単量体)10部を使用し、アクリル酸2−エチルヘキシル((メタ)アクリル酸エステル単量体)を70部とした以外は、粒子状重合体1と同様にして、粒子状重合体3の水分散液を得た。粒子状重合体3のガラス転移温度(Tg)は、−6℃であった。
[粒子状重合体4の製造]
イタコン酸(酸性官能基含有単量体)を20部とし、アクリル酸2−エチルヘキシル((メタ)アクリル酸エステル単量体)を60部とした以外は、粒子状重合体1と同様にして、粒子状重合体4の水分散液を得た。粒子状重合体4のガラス転移温度(Tg)は、88℃であった。
―実施例1―
以下の手順で、実施例1のスラリー組成物、正極、及び、リチウムイオン二次電池を製造した。
[1−1.スラリー組成物の製造]
ディスパー付きのプラネタリーミキサーに正極活物質として体積平均粒子径15μmのLiNi1/3Co1/3Mn1/3(日本化学工業社製「NMC111」)を100部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」)を2部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(日本製紙ケミカル社製「MAC−350HC」)を固形分相当で1部入れ、10分間攪拌混合した。さらに酸性重合体1の水分散液を固形分相当で0.1部入れ、イオン交換水で固形分濃度83%に調整した後、25℃で60分間混合した。さらにバインダーとして、上記粒子状重合体1を含む水分散液の濃度を40%に調製したものを固形分相当で2部入れ、イオン交換水で固形分濃度を65%に調整した後、プラネタリーミキサーにより混合し、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物(pH 10.5)を調製した。このスラリー組成物を用いて、上述した要領で、集電体の腐食抑制効果を評価した。
[1−2.リチウムイオン二次電池用正極の製造]
上記のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミ箔の上に、乾燥後の膜厚が100μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、更に120℃のオーブン内にて2分間加熱処理して、電極原反(正極原反)を得た。そして、得られた正極原反をロールプレスで圧延し、正極活物質層の厚みが100μmのリチウムイオン二次電池用正極を得た。この正極について、上述した要領で、密着強度を評価した。
[1−3.負極用バインダーの製造]
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33.5部、イタコン酸3.5部、スチレン62部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)0.4部、イオン交換水150部、及び過硫酸カリウム(重合開始剤)0.5部を入れ、十分に攪拌した。その後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状バインダー(SBR)を含む混合物を得た。上記粒子状バインダーを含む混合物に5%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH8に調整した。その後、加熱減圧蒸留によって粒子状バインダーを含む混合物から未反応単量体の除去を行った後、その混合物を30℃以下まで冷却し、所望の粒子状バインダーを含む水分散液を得た。
[1−4.負極用スラリー組成物の製造]
ディスパー付きのプラネタリーミキサーに、負極活物質として比表面積5.5m/gの人造黒鉛(体積平均粒子径:24.5μm)100部、及び増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(日本製紙ケミカル社製「MAC−350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部入れ、さらにイオン交換水で固形分濃度65%に調整した後、25℃で60分間混合した。次に、イオン交換水で固形分濃度60%に調整した後、さらに25℃で15分間混合し、混合液を得た。上記混合液に、上記工程1−3の粒子状バインダーを含む水分散液を固形分相当量で1.0部、及びイオン交換水を入れ、最終固形分濃度52%となるように調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い負極用スラリー組成物を得た。
[1−5.負極の製造]
上記工程1−4で得られた負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して負極原反を得た。この負極原反をロールプレスで圧延して、負極活物質層の厚みが80μmの負極を得た。
[1−6.セパレータの用意]
単層のポリプロピレン製セパレータ(セルガード社製「CELGARD(登録商標)2500」)を、5×5cmの正方形に切り抜いた。
[1−7.リチウムイオン二次電池]
電池の外装として、アルミ包材外装を用意した。上記工程1−2で得られた正極を、4×4cmの正方形に切り出し、集電体側の表面がアルミ包材外装に接するように配置した。正極の正極活物質層の面上に、上記工程1−6で得られた正方形のセパレータを配置した。さらに、上記工程1−5で得られた負極を、4.2×4.2cmの正方形に切り出し、これをセパレータ上に、負極活物質層側の表面がセパレータに向かい合うよう配置した。電解液1(溶媒:EC/DEC/VC=40.0/58.5/1.5体積比(25℃)、電解質:濃度1MのLiPF、比誘電率(25℃):36.5、粘度(25℃):1.2mPa・s))を空気が残らないように注入した。さらに、アルミ包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミ外装を閉口し、リチウムイオン二次電池を製造した。このリチウムイオン二次電池について、上述した要領で、サイクル特性及び低温出力特性を評価した。
―実施例2―
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3に代えてLi1.2Ni0.17Co0.07Mn0.56を使用した以外は、実施例1と同様に、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物(pH 10)、正極、及び、リチウムイオン二次電池を製造し、上述の項目について評価した。
―実施例3―
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3に代えてLiNiOを使用した以外は、実施例1と同様に、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物(pH 11)、正極、及び、リチウムイオン二次電池を製造し、上述の項目について評価した。
―実施例4〜9―
酸性重合体1の水分散液に代えて、それぞれ酸性重合体2〜7の水分散液を使用した以外は、実施例1と同様に、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物(それぞれpH 10.8 10.1 11.3 11.3 10.5 10.5)、正極、及び、リチウムイオン二次電池を製造し、上述の項目について評価した。
―実施例10―
粒子状重合体1の水分散液に代えて、粒子状重合体2の水分散液を使用した以外は、実施例1と同様に、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物(pH 10.6)、正極、及び、リチウムイオン二次電池を製造し、上述の項目について評価した。
―実施例11〜13―
酸性重合体1の水分散液に代えて、それぞれ酸性重合体8〜10の水分散液を使用した以外は、実施例1と同様に、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物(それぞれpH 10.5 10.6 10.5)、正極、及び、リチウムイオン二次電池を製造し、上述の項目について評価した。
―実施例14,15―
酸性重合体1の配合量を固形分相当でそれぞれ0.5部、0.02部とした以外は、実施例1と同様に、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物(それぞれpH 10.2 11.3)、正極、及び、リチウムイオン二次電池を製造し、上述の項目について評価した。
―実施例16―
実施例1と同様に、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物(pH 10.5)、正極を製造し、さらに、電解液1に代えて、電解液2(溶媒:EC/DEC/VC=50.0/48.5/1.5体積比(25℃)、電解質:濃度1MのLiPF、比誘電率(25℃):45.4、粘度(25℃):1.3mPa・s)を用いた以外は、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造し、上述の項目について評価した。
―実施例17―
実施例1と同様に、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物(pH 10.5)、正極を製造し、さらに、電解液1に代えて、電解液3(溶媒:EC/DEC/VC=33.0/65.5/1.5体積比(25℃)、電解質:濃度1MのLiPF、比誘電率(25℃):30.2、粘度(25℃):1.1mPa・s)を用いた以外は、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造し、上述の項目について評価した。
―実施例18―
酸性重合体1の配合量を固形分相当で0.85部とした以外は、実施例1と同様に、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物(pH 9.5)、正極、及び、リチウムイオン二次電池を製造し、上述の項目について評価した。
―実施例19,20−
酸性重合体1の水分散液に代えて、それぞれ酸性重合体11,12の水分散液を使用した以外は、実施例1と同様に、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物(いずれもpH 10.5)、正極、及び、リチウムイオン二次電池を製造し、上述の項目について評価した。
―実施例21―
粒子状重合体1の水分散液に代えて、粒子状重合体3の水分散液を使用した以外は、実施例1と同様に、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物(pH 10.3)、正極、及び、リチウムイオン二次電池を製造し、上述の項目について評価した。
―比較例1〜4―
酸性重合体1の水分散液に代えて、それぞれ酸性重合体13〜16の水分散液を使用した以外は、実施例1と同様に、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物(それぞれpH 11.5 10.2 10.5 11)、正極、及び、リチウムイオン二次電池を製造し、上述の項目について評価した。
―比較例5―
粒子状重合体1の水分散液に代えて、粒子状重合体4の水分散液を使用した以外は、実施例1と同様に、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物(pH 10.2)、正極、及び、リチウムイオン二次電池を製造し、上述の項目について評価した。
―比較例6―
酸性重合体1の水分散液を使用しない以外は、実施例1と同様に、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物(pH 12)、正極、及び、リチウムイオン二次電池を製造し、上述の項目について評価した。
Figure 2014165108
Figure 2014165108
なお、表中、MAはメタクリル酸を、AMPSは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を、TFEMはメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルを、EAはアクリル酸エチルを、BAはアクリル酸ブチルを、EDMはエチレンジメタクリレートを、IAはイタコン酸を、2EHAはアクリル酸2−エチルヘキシルを、ANはアクリロニトリルを、AAはアクリル酸を表す。
表の結果から明らかなように、酸性官能基含有単量体単位の含有割合が特定の範囲内であり、且つ、重量平均分子量が特定の範囲内である酸性重合体Aと、酸性官能基含有単量体単位の含有割合が特定の値以下である粒子状重合体Bとを含むスラリー組成物を用いて得られた実施例1〜21のリチウムイオン二次電池は、酸性重合体Aを含まない比較例7に比して、集電体の腐食が抑制されており、低温出力特性、サイクル特性、正極活物質層と集電体との密着強度、について著しく優れていた。
比較例1は、酸性重合体における酸性官能基含有単量体単位の含有割合が低く、実施例1〜21に比して集電体腐食抑制効果に劣り、低温出力特性についても劣っていた。
比較例2は、酸性重合体における酸性官能基含有単量体単位の含有割合が高く、集電体の腐食抑制効果は十分であるものの、酸性重合体Aが(メタ)アクリルエステル単量体単位及びフッ素含有(メタ)アクリルエステル単量体単位を含まないため、実施例1〜21に比して低温出力特性について劣っていた。さらに、酸性重合体における酸性官能基含有単量体単位の含有割合が高いため極板の柔軟性が低く、実施例1〜21に比して密着強度について劣っていた。
比較例3は、酸性重合体の重量平均分子量が小さいため、電解液への溶解が進行し、集電体腐食抑制効果については良好である一方、実施例1〜21に比して低温出力特性及びサイクル特性について劣っていた。
比較例4は、酸性重合体の重量平均分子量が大きいため、酸性重合体Aが電解液中で膨潤し難く、集電体腐食抑制効果については概ね良好である一方、実施例1〜21に比して低温出力特性について劣っていた。
比較例5は、粒子状重合体Bにおける酸性官能基含有単量体単位の含有割合が高くうまく結着できないため、正極活物質と酸性重合体Aと好ましい構造を有する正極活物質層を構成できず、実施例1〜21に比して低温出力特性及びサイクル特性について劣っていた。

Claims (11)

  1. MnおよびNiの少なくとも一方を含有する正極活物質と、
    酸性官能基含有単量体単位の含有割合が15〜60質量%であり、重量平均分子量が10000〜200000である重合体Aと、
    酸性官能基含有単量体単位の含有割合が10質量%以下である粒子状重合体Bと、
    導電材と、
    水と、
    を含むリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
  2. 前記粒子状重合体Bの質量(b)に対する前記重合体Aの質量(a)の比(a/b)が、0.01〜0.3の範囲内である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
  3. 前記重合体Aが、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
  4. 前記粒子状重合体Bが、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、(メタ)アクリロニトリル単量体単位とを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
  5. 集電体上に、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を塗布する工程と、
    前記集電体上に塗布された前記リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を乾燥し、正極活物質層を形成する工程と、
    を含むリチウムイオン二次電池用正極の製造方法。
  6. MnおよびNiの少なくとも一方を含有する正極活物質と、
    酸性官能基含有単量体単位の含有割合が15〜60質量%であり、重量平均分子量が10000〜200000である重合体Aと、
    酸性官能基含有単量体単位の含有割合が10質量%以下である粒子状重合体Bと、
    導電材と、
    を含むリチウムイオン二次電池用正極。
  7. 前記粒子状重合体Bの質量(b)に対する前記重合体Aの質量(a)の比(a/b)が、0.01〜0.3の範囲内である、請求項6に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  8. 前記重合体Aが、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む、請求項6又は7に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  9. 前記粒子状重合体Bが、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と(メタ)アクリロニトリル単量体単位とを含む、請求項6〜8のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  10. 請求項6〜9のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備えるリチウムイオン二次電池。
  11. 前記電解液が、電解質と溶媒とを含み、
    前記溶媒中の、エチレンカーボネートの含有割合が30〜60体積%である、請求項10に記載のリチウムイオン二次電池。
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