JP2013253124A - ポリイミド樹脂ワニス及びそれを用いた絶縁電線、電機コイル、モータ - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性及び耐クレージング性に優れるとともに、誘電率の低い絶縁層を形成可能なポリイミド樹脂ワニスを提供する。また耐熱性、耐クレージング性に優れ、コロナ放電開始を高くできる絶縁電線を提供する。
【解決手段】芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応して得られるポリイミド前駆体樹脂を主成分とするポリイミド樹脂ワニスであって、前記ポリイミド前駆体樹脂のイミド化後のイミド基濃度が35.0%よりも大きく36.0%未満であるポリイミド樹脂ワニス。
【選択図】 なし
【解決手段】芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応して得られるポリイミド前駆体樹脂を主成分とするポリイミド樹脂ワニスであって、前記ポリイミド前駆体樹脂のイミド化後のイミド基濃度が35.0%よりも大きく36.0%未満であるポリイミド樹脂ワニス。
【選択図】 なし
Description
本発明は導体に塗布、焼付けして絶縁皮膜を形成することができるポリイミド樹脂ワニス、及びこのポリイミド樹脂ワニスを用いて形成された絶縁層を有する絶縁電線およびそれを用いた電機コイル、モータに関する。
モータ等のコイル用巻線として用いられる絶縁電線において、導体を被覆する絶縁層(絶縁皮膜)には、絶縁性、導体に対する密着性、耐熱性、機械的強度等が求められている。絶縁層を形成する樹脂としてはポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂等がある。
また適用電圧が高い電気機器、例えば高電圧で使用されるモータ等では、電気機器を構成する絶縁電線に高電圧が印加され、その絶縁皮膜表面で部分放電(コロナ放電)が発生しやすくなる。コロナ放電の発生により局部的な温度上昇やオゾンやイオンの発生が引き起こされやすくなり、その結果絶縁電線の絶縁被膜に劣化が生じることで早期に絶縁破壊を起こし、電気機器の寿命が短くなる。高電圧で使用される絶縁電線には上記の理由によりコロナ放電開始電圧の向上も求められており、そのためには絶縁層の誘電率を低くすることが有効であることが知られている。
ポリイミド樹脂は絶縁電線の絶縁層として汎用されている樹脂の中では特に耐熱性に優れている。また誘電率が低く機械特性にも優れるため、要求特性の高い絶縁電線の絶縁層として用いられている。たとえば特許文献1には耐熱区分がC種(180℃以上のクラス)のエナメル線として、導体直上にポリイミド樹脂エナメル皮膜層が塗布焼付けされているエナメル線が開示されている。
また特許文献2には芳香族エーテル構造を有するポリイミド樹脂が記載されている。具体的には、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)等の芳香族エーテル構造を有する酸無水物と、芳香族エーテル構造を有するジアミン及びフルオレン構造を有するジアミンとを反応させてポリイミド前駆体を合成している。芳香族エーテル構造を有する酸無水物及びジアミンを用いることで可とう性を向上している。またこのような構造のポリイミド樹脂は低誘電率でありコロナ発生抑制に優れた絶縁皮膜を得ることができる、と記載されている。
上記のようにポリイミド樹脂は耐熱性、機械的特性、電気特性に優れる材料であるが、絶縁電線の被覆層として汎用的に使用されているポリイミド樹脂の誘電率は3.5でありコロナ放電開始電圧を向上するためには誘電率をさらに低くすることが求められている。本発明者らはポリイミド樹脂のイミド基濃度に着目し、分子量の大きい芳香族ジアミン又は芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いることで極性の高いイミド基の濃度を低減し、ポリイミド樹脂の誘電率を低減できることを見いだし、特願2011−091777号等として既に出願している。
また自動車用のモータ等に用いられるコイルに絶縁電線を使用する場合、使用環境の温度が高いため、絶縁電線には長期の耐熱性が求められる。また絶縁電線の絶縁信頼性を高めるため、捲線してコイルを形成した後に熱硬化性樹脂でディップコートする、いわゆるワニス含浸処理を行うことがある。そこで絶縁電線の皮膜には含浸ワニス(熱硬化性樹脂液)と接触させたときに皮膜にクラックや割れ等が生じないこと(耐クレージング性)も求められる。
本発明者らの検討により、イミド基濃度を低減して誘電率を低くしたポリイミド樹脂を皮膜として使用した絶縁電線はイミド基濃度の高い汎用のポリイミド樹脂と比べると長期耐熱性や耐クレージング性が低下することがわかった。このような絶縁電線であっても絶縁電線の製造後、さらに180℃で10分程度の加熱処理(アニーリング処理)を行うことで耐クレージング性を向上することができるが、製造工程が増えるためにコストが高くなる。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、耐熱性及び耐クレージング特性の低下を起こすことなく低誘電率の絶縁層を形成可能なポリイミド樹脂ワニスを提供することを課題とする。また本発明は上記のポリイミド樹脂ワニスを用いて形成された絶縁層を有し、耐熱性、耐クレージング性及びコロナ放電開始電圧を向上できる絶縁電線、及びそれを用いた電機コイル、モータを提供することを課題とする。
本発明は、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応して得られるポリイミド前駆体樹脂を主成分とするポリイミド樹脂ワニスであって、
前記ポリイミド前駆体樹脂のイミド化後のイミド基濃度が35.0%よりも大きく36.0%未満であるポリイミド樹脂ワニスである(請求項1)。イミド基濃度を上記の範囲とすることで、耐熱性及び耐クレージング性を低下させることなく誘電率を低減できる。
前記ポリイミド前駆体樹脂のイミド化後のイミド基濃度が35.0%よりも大きく36.0%未満であるポリイミド樹脂ワニスである(請求項1)。イミド基濃度を上記の範囲とすることで、耐熱性及び耐クレージング性を低下させることなく誘電率を低減できる。
イミド基濃度は、ポリイミド前駆体をイミド化した後のポリイミド樹脂において
(イミド基部分の分子量)/(全ポリマーの分子量)×100(%)
で計算される値である。ポリイミド前駆体は芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応して得られるので、各モノマー(芳香族ジアミン又は芳香族テトラカルボン酸二無水物)の分子量が大きくなるとイミド基濃度は低くなる。なお絶縁電線の皮膜に汎用されている一般的なポリイミド樹脂はピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを重合して得られるポリイミド前駆体(ポリアミック酸)をイミド化して得られるもので、イミド基濃度は36.6%である。
(イミド基部分の分子量)/(全ポリマーの分子量)×100(%)
で計算される値である。ポリイミド前駆体は芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応して得られるので、各モノマー(芳香族ジアミン又は芳香族テトラカルボン酸二無水物)の分子量が大きくなるとイミド基濃度は低くなる。なお絶縁電線の皮膜に汎用されている一般的なポリイミド樹脂はピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを重合して得られるポリイミド前駆体(ポリアミック酸)をイミド化して得られるもので、イミド基濃度は36.6%である。
イミド基濃度を低くすると誘電率を低下させることができる。しかしイミド基濃度を低くしすぎると耐熱性、耐クレージング性が低下する。イミド基濃度を35.0%〜36.0%の範囲とすることで耐熱性及び耐クレージング性を低下させることなく誘電率を低減できる。ポリイミド前駆体を構成する芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを、イミド基濃度が上記の範囲となるように任意に選択してイミド基濃度を調整する。
芳香族ジアミンとして、2,2−ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、及び1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンからなる群から選択される1種以上を含有することが好ましい(請求項2)。これらの芳香族ジアミンは分子量が大きく、イミド基濃度を低くすることができる。特に芳香族テトラカルボン酸二無水物としてPMDAを選択した場合には耐熱性、耐クレージング性と誘電率とのバランスが取れて好ましい。なお芳香族ジアミンは複数併用しても良い。この場合、上記の分子量の大きい芳香族ジアミンと、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)等の分子量の小さい芳香族ジアンとを組み合わせてイミド基濃度を調整することが好ましい。
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物はピロメリット酸二無水物(PMDA)であると好ましい(請求項3)。ピロメリット酸二無水物は比較的分子量が小さく剛直な構造である。イミド基濃度を調整するためには、芳香族ジアミン、芳香族テトラカルボン酸のいずれかを分子量の大きいものとすることが考えられるが、分子量の大きい芳香族テトラカルボン酸を使用すると耐熱性が低下するため、酸成分には分子量の小さいPMDAを選択し、分子量の大きい芳香族ジアミンを用いてイミド基濃度を調整する方が耐熱性が向上し、好ましい。
請求項4に記載の発明は、導体及び該導体を直接又は他の層を介して被覆する絶縁層を有する絶縁電線であって、前記絶縁層は上記のポリイミド樹脂ワニスを塗布、焼付けして形成されたものである絶縁電線である。絶縁層の誘電率が低いため、コロナ放電開始電圧の高い絶縁電線が得られる。また耐熱性及び耐クレージング性にも優れているため、特にワニス含浸処理して用いられる絶縁電線として好適に用いることができる。
請求項5に記載の発明は、上記の絶縁電線を捲線してなる電機コイルである。また請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電機コイルを有するモータである。耐熱性及び耐クレージング性に優れた絶縁電線を使用していることから高温環境下での使用が可能であり、またワニス含浸処理の際に絶縁層の割れが生じにくい。さらに高電圧が印加された場合でも絶縁皮膜の劣化が起こりにくいので寿命を長くすることが可能である。
本発明によれば、耐熱性及び耐クレージング特性の低下を起こすことなく低誘電率の絶縁層を形成可能なポリイミド樹脂ワニスを提供することができる。また本発明の絶縁電線は耐熱性、耐クレージング性及びコロナ放電開始電圧を向上できる。
本発明のポリイミド樹脂ワニスの主成分であるポリイミド前駆体樹脂(ポリアミック酸)は、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの縮合重合によって得られる。この縮合重合反応は従来のポリイミド前駆体の合成と同様な条件にて行うことができる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ(2,2,2)−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボンキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物等が例示される。
この中でもピロメリット酸二無水物(PMDA)は低分子量で剛直な構造を持つため、ポリイミド樹脂の耐熱性を向上できる点で好ましい。
芳香族ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、4,4’−メチレンジアニリン(MDA)、2,2−ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]シクロヘキサン(4−APBZ)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(3−APB)、1,5−ビス(3−アミノフェノキシ)ナフタレン(1,5−BAPN)等が例示される。
この中でも2,2−ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)は分子量が大きく、イミド基濃度を低減できるため好ましく使用できる。これらの芳香族ジアミンとODA、MDA等の分子量の小さい芳香族ジアミンとを組み合わせて使用することで、イミド基濃度を調整できる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミンは、イミド化後のイミド基濃度が28.0%以上33.0%以下となるように選択する。イミド基濃度はポリイミド前駆体をイミド化した後のポリイミド樹脂において、
(イミド基部分の分子量)/(全ポリマーの分子量)×100
で計算される値である。具体的には以下の方法でイミド基濃度を計算する。
(イミド基部分の分子量)/(全ポリマーの分子量)×100
で計算される値である。具体的には以下の方法でイミド基濃度を計算する。
芳香族テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミンの分子量からユニット単位でのイミド基濃度を計算する。例えば下記式(1)で示されるポリイミドの場合、イミド基濃度は
イミド基分子量=70.03×2=140.06
ユニット分子量=894.96となるため、
イミド基濃度(%)=(140.06)/(894.96)×100=15.6%
となる。
イミド基分子量=70.03×2=140.06
ユニット分子量=894.96となるため、
イミド基濃度(%)=(140.06)/(894.96)×100=15.6%
となる。
上記の芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンを混合して反応させる。芳香族ジアミンの合計量(当量)と、芳香族テトラカルボン酸二無水物の合計量(当量)を約1:1とすると反応が良好に進行して好ましい。それぞれの材料を混合し、有機溶媒中で加熱して反応させてポリイミド前駆体樹脂を得る。
有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性有機溶媒が使用できる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種以上を組み合わせても良い。
有機溶媒の量は、芳香族テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミンを均一に分散させることができる量であれば良く特に制限されないが、通常これらの成分の合計量100質量部あたり100質量部〜1000質量部(樹脂濃度で10%〜50%程度となるように)使用する。有機溶媒量を少なくするとできあがったポリイミド樹脂ワニスの固形分量が多くなりコスト低減に有効である。
ポリイミド樹脂ワニスには顔料、染料、無機又は有機のフィラー、潤滑剤、密着向上剤等の各種添加剤や反応性低分子、相溶化剤等を添加しても良い。密着向上剤としてメラミン、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物、チオール系化合物等を添加すると、導体との密着力を向上できる。さらに本発明の趣旨を損ねない範囲で他の樹脂を混合して使用することもできる。
ポリイミド樹脂ワニスを導体上に直接又は他の層を介して塗布、焼き付けして絶縁層を形成する。焼付け工程でポリイミド前駆体樹脂がイミド化してポリイミドとなる。塗布、焼付けは通常の絶縁電線の製造と同様に行うことができる。例えば、導体に樹脂ワニスを塗布した後、設定温度を350〜500℃とした炉内を1パス当たり5〜10秒間通過させて焼付ける作業を数回繰り返して絶縁層を形成する。絶縁層の厚みは10μm〜150μmとする。
導体としては、銅や銅合金、アルミニウム等を使用できる。導体の大きさやその断面形状は特に限定されないが、丸線の場合は導体径が100μm〜5mmのものが、平角線の場合は一辺の長さが500μm〜5mmのものが一般に使用される。
絶縁層は単層であっても多層であっても良い。絶縁層が単層である場合は上記のポリイミド樹脂ワニスを塗布、焼き付けして形成された絶縁層のみが絶縁層となる。絶縁層を多層にする場合は、上記のポリイミドからなる絶縁層の形成前又は形成後に他の絶縁層を形成する。他の絶縁層を形成する樹脂としては汎用ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド等任意の樹脂を使用できる。
さらに、絶縁層として、最外層に表面潤滑層を有するとさらに加工性が向上して好ましい。また絶縁電線の外側に表面潤滑油を塗布しても良い。この場合はさらにインサート性や加工性が向上する。
図1は本発明の絶縁電線の一例を示す断面模式図である。導体3の外側に多層の絶縁層があり、絶縁層は導体側から第1の絶縁層1、第2の絶縁層2としている。第1の絶縁層1、第2の絶縁層2を全て本発明のポリイミド樹脂ワニスを塗布焼き付けして形成すると、耐熱性、耐クレージング性に優れると共に誘電率の低い絶縁層を有する絶縁電線が得られる。導体との密着力を向上するために、第1の絶縁層1にはポリアミドイミド等、導体との密着性に優れる他の樹脂を使用しても良い。なお本発明の絶縁電線はこの形状に限定されるものではない。
図3(a)は本発明の電機コイルの一例を示す模式図であり、図3(b)は図3(a)のA−A’断面図である。磁性材料からなるコア13の外側に絶縁電線11を捲線して電機コイル12が形成される。コアと電機コイルからなる部材は、モータのロータやステータとして使用される。例えば、図4に示すように、コア13と電機コイル12とからなる分割ステータ14を複数組み合わせて環状に配置したステータ15を、モータの構成部材として使用する。
上記のように巻線した電機コイルの絶縁信頼性を高めるため、捲線後の電機コイルをワニス含浸処理する。具体的には、電機コイルをエポキシ樹脂、キシレン樹脂等の熱硬化性樹脂液に浸漬してコイルの周囲に熱硬化性樹脂を付着させた後、熱処理して熱硬化性樹脂を硬化させる。熱硬化性樹脂の硬化温度は約約100℃〜180℃である。このようにしてワニス含浸処理した電機コイルが得られる。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお本発明の範囲はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1〜3、比較例1〜6)
(ポリイミド前駆体樹脂の作製)
表1に示す種類と量の芳香族ジアミン(ODA、BAPP)をN−メチルピロリドンに溶解させた後、表1に示す種類と量の芳香族テトラカルボン酸無水物(PMDA)を加えて窒素雰囲気下室温で1時間撹拌した。その後60℃で20時間撹拌し反応を終え、室温まで冷却してポリイミド樹脂ワニスを得た。なお表1に記載している配合量の数値はモル比である。各成分の分子量から計算したイミド基濃度を表1中に記載している。
(ポリイミド前駆体樹脂の作製)
表1に示す種類と量の芳香族ジアミン(ODA、BAPP)をN−メチルピロリドンに溶解させた後、表1に示す種類と量の芳香族テトラカルボン酸無水物(PMDA)を加えて窒素雰囲気下室温で1時間撹拌した。その後60℃で20時間撹拌し反応を終え、室温まで冷却してポリイミド樹脂ワニスを得た。なお表1に記載している配合量の数値はモル比である。各成分の分子量から計算したイミド基濃度を表1中に記載している。
(絶縁電線の作製)
厚み1.5mm、幅3.0mmの平角導体の表面に作製したポリイミド樹脂ワニスを常法によって塗布、焼付けする工程を複数回繰り返して厚み約40μmの絶縁層を形成し、実施例1〜3、比較例1〜6絶縁電線を作製した。
厚み1.5mm、幅3.0mmの平角導体の表面に作製したポリイミド樹脂ワニスを常法によって塗布、焼付けする工程を複数回繰り返して厚み約40μmの絶縁層を形成し、実施例1〜3、比較例1〜6絶縁電線を作製した。
(誘電率の測定)
得られた各絶縁電線について、絶縁層の誘電率を測定した。図4に示すように、絶縁電線の表面3カ所に銀ペーストを塗布して測定用のサンプルを作製した(塗布幅は両端2カ所が10mm、中央部分が100mmである)。導体と銀ペースト間の静電容量をLCRメータで測定し、測定した静電容量の値と絶縁層の厚みから誘電率を算出した。なお測定は温度30℃、湿度50%の条件で行った。
得られた各絶縁電線について、絶縁層の誘電率を測定した。図4に示すように、絶縁電線の表面3カ所に銀ペーストを塗布して測定用のサンプルを作製した(塗布幅は両端2カ所が10mm、中央部分が100mmである)。導体と銀ペースト間の静電容量をLCRメータで測定し、測定した静電容量の値と絶縁層の厚みから誘電率を算出した。なお測定は温度30℃、湿度50%の条件で行った。
(熱耐久性の評価)
得られた各絶縁電線1mを温度280℃の恒温槽内に放置し、絶縁層に割れが発生するまでの時間を計測した。48時間以上割れが発生無いことを合格基準とした。
得られた各絶縁電線1mを温度280℃の恒温槽内に放置し、絶縁層に割れが発生するまでの時間を計測した。48時間以上割れが発生無いことを合格基準とした。
(耐クレージング性の評価)
得られた各絶縁電線を10%伸張後、10mをキシレンモノマーに約30秒間浸漬した後取り出して絶縁層を観察し、絶縁電線1mあたり発生した割れの数を計測した。1mあたりの割れ発生数が0個であることを合格基準とした。以上の結果を表1に示す。
得られた各絶縁電線を10%伸張後、10mをキシレンモノマーに約30秒間浸漬した後取り出して絶縁層を観察し、絶縁電線1mあたり発生した割れの数を計測した。1mあたりの割れ発生数が0個であることを合格基準とした。以上の結果を表1に示す。
実施例1〜3及び比較例1〜6は芳香族ジアミンとして分子量の小さいODAと分子量の大きいBAPPを併用し、BAPPの比率を0%〜50%まで変えてイミド基濃度を調整したものである。BAPPの比率を高くしてイミド基濃度が低くなるほど誘電率が低くなっている。しかしイミド基濃度が低くなるほど耐熱性が低下し、耐クレージング性も悪くなっている。耐クレージング性が合格基準を満たすのはイミド基濃度が35.0%を超える実施例3であり、誘電率が汎用ポリイミド(比較例1)の3.5よりも低くなるのはイミド基濃度が36.0%未満の実施例1である。以上のことより、耐熱性、耐クレージング性と低誘電率とを両立できるイミド基濃度は35.0%超36.0%未満であることがわかる。
1 第1の絶縁層
2 第2の絶縁層
3 導体
11 絶縁電線
12 電機コイル
13 コア
14 分割ステータ
15 ステータ
2 第2の絶縁層
3 導体
11 絶縁電線
12 電機コイル
13 コア
14 分割ステータ
15 ステータ
Claims (6)
- 芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応して得られるポリイミド前駆体樹脂を主成分とするポリイミド樹脂ワニスであって、
前記ポリイミド前駆体樹脂のイミド化後のイミド基濃度が35.0%よりも大きく36.0%未満である、ポリイミド樹脂ワニス。 - 前記芳香族ジアミンが、2,2−ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、及び1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンからなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載のポリイミド樹脂ワニス。
- 前記芳香族テトラカルボン酸二無水物が、ピロメリット酸二無水物である、請求項1に記載のポリイミド樹脂ワニス。
- 導体及び該導体を直接又は他の層を介して被覆する絶縁層を有する絶縁電線であって、前記絶縁層は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミド樹脂ワニスを塗布、焼付けして形成されたものである絶縁電線。
- 請求項4に記載の絶縁電線を捲線してなる電機コイル。
- 請求項5に記載の電機コイルを有するモータ。
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