JP2013139762A - スタータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ピニオンギヤ74は、リングギヤ23とのヘリカル噛合時に、リングギヤ23の回転速度がピニオンギヤ74の回転速度よりも高い場合には、リングギヤ23から離反する方向にスラスト荷重が発生するように形成され、かつ、ピニオンスプリング74のばね荷重をF1とし、スラスト荷重をF2としたとき、ピニオンスプリング74のばね荷重F1は、F1>F2を満たすように設定されていることを特徴としている。
【選択図】図1
Description
このように、ピニオンギヤには、ピニオンギヤとリングギヤとの噛合時およびエンジン始動時に、ピニオンギヤとリングギヤとの間の回転速度差に起因してスラスト荷重が発生する。
また、ピニオンギヤとリングギヤとの噛合時の衝撃を吸収するために、ダンパ機構を有するピニオン機構を備えている。
ダンパ機構を有するピニオン機構は、出力軸に沿ってスライド移動可能に設けられたピニオンインナと、ピニオンインナと同心円状に設けられたピニオンギヤと、ピニオンインナとピニオンギヤとの間に配置されたピニオンスプリングと、を備えている。ダンパ機構を有するピニオン機構は、ピニオンギヤがスライド移動してピニオンスプリングが弾性変形することにより、ピニオンギヤとリングギヤとが当接した時の衝撃を吸収している。
F1>F2・・・(1)
を満たし、ピニオンスプリングのばね荷重F1がリングギヤから離反する方向のスラスト荷重F2よりも大きく設定されるので、ピニオンスプリングは、スラスト荷重F2に抗してピニオンギヤをリングギヤ側に押圧できる。これにより、ピニオンギヤにリングギヤから離反する方向にスラスト荷重F2が発生しても、ピニオンギヤとリングギヤとのヘリカル噛合が解除されることなく、適切なヘリカル噛合状態を維持できる。したがって、ピニオン機構にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤとリングギヤとが、安定した適切なヘリカル噛合状態を維持できる。
F3>F1・・・(2)
を満たし、ピニオンスプリングのばね荷重F1が電磁装置の吸引力F3よりも小さく設定されるので、電磁装置は、ピニオンスプリングのばね荷重F1に抗して確実にスイッチプランジャを吸引し続け、モータ部への通電も継続させることができる。したがって、ピニオンギヤとリングギヤとの噛合時における衝撃を吸収しつつ、リングギヤと噛合ったピニオンギヤにモータ部の回転力を付与し続けることができる。
また、(1)式および(2)式を満たすことにより、ピニオンスプリングのばね荷重F1がリングギヤから離反する方向のスラスト荷重F2よりも大きく設定され、電磁装置の吸引力F3よりも小さく設定される。
すなわち、
F3>F1>F2・・・(3)
を満たし、電磁装置の吸引力F3が最も大きくなるので、電磁装置は、ピニオンスプリングのばね荷重F1、およびリングギヤから離反する方向のスラスト荷重F2に抗して、確実にギヤプランジャを吸引し続け、ピニオンギヤをリングギヤ側に押圧できる。これにより、ピニオンギヤとリングギヤとの噛合時における衝撃を吸収しつつ、安定した噛合を実現できる。さらに、エンジン始動時にピニオンギヤとリングギヤとの間に回転速度差に基づいて、リングギヤから離反する方向のスラスト荷重F2が発生しても、確実にスイッチプランジャを吸引し続け、モータ部への通電も継続させることができる。
したがって、ピニオン機構にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤとリングギヤとが、さらに安定した適切なヘリカル噛合状態を維持できる。
LI>L2・・・(4)
を満たし、可動接点部のストローク量L1がピニオンギヤとリングギヤとの最大離反距離L2よりも大きく設定されているので、電磁装置がピニオンギヤと可動接点部とをスライド移動させたときに、可動接点部がON状態となる前に、ピニオンギヤをリングギヤに当接させることができる。ここで、ピニオンギヤとリングギヤとが噛合位相がずれていた場合には、ピニオンギヤが回転することなくピニオンスプリングが弾性変形してダンパ機構が機能するので、ピニオンギヤおよびリングギヤが摺接することなく当接時の衝撃を吸収できる。したがって、ピニオンギヤおよびリングギヤの摩耗を抑制できるので、スタータの耐久性を向上できる。
さらに、
L4>L3・・・(5)
を満たし、ピニオンギヤとリングギヤとの最大噛み合い代L4がピニオンスプリングの可動量L3よりも大きく設定されているので、スラスト荷重によりピニオンスプリングが弾性変形して可動量L3だけ変位し、リングギヤから離反する方向にピニオンギヤがL3だけスライド移動しても、ピニオンギヤとリングギヤとの噛合を確保できる。したがって、ピニオン機構にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤとリングギヤとの安定した適切なヘリカル噛合状態を確実に維持できる。
F1>F2・・・(1)
を満たし、ピニオンスプリングのばね荷重F1がリングギヤから離反する方向のスラスト荷重F2よりも大きく設定されるので、ピニオンスプリングは、スラスト荷重F2に抗してピニオンギヤをリングギヤ側に押圧できる。これにより、ピニオンギヤにリングギヤから離反する方向にスラスト荷重F2が発生しても、ピニオンギヤとリングギヤとのヘリカル噛合が解除されることなく、ヘリカル噛合を維持できる。したがって、ピニオン機構にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤとリングギヤとが、安定した適切なヘリカル噛合状態を維持できる。
図1は、本発明の実施形態におけるスタータ1の断面図である。なお、図1では、中心線より上側にスタータ1の静止状態を示し、下側にスタータ1の通電状態(ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが噛合した状態)を示している。
図1に示すように、スタータ1は、不図示のエンジンの始動に必要な回転力を発生するためのものであって、モータ部3と、モータ部3の一方側(図1における左側)に連結されている出力軸4と、出力軸4上にスライド移動可能に設けられたクラッチ機構5およびピニオン機構70と、モータ部3に対する電源供給路を開閉するスイッチユニット7と、スイッチユニット7の可動接点板8およびピニオン機構70を軸方向に沿って移動させるための電磁装置9とを有している。
ブラシ付直流モータ51は、略円筒状のモータヨーク53と、モータヨーク53の径方向内側に配置され、モータヨーク53に対して回転自在に設けられているアーマチュア54とを有している。モータヨーク53の内周面には、複数(本実施形態では6個)の永久磁石57が、周方向に磁極が交互となるように設けられている。
アーマチュア54は、回転軸52と、回転軸52の永久磁石57に対応する位置に外嵌固定されているアーマチュアコア58と、回転軸52のアーマチュアコア58よりも遊星歯車機構2側(図1における左側)に外嵌固定されているコンミテータ61とにより構成されている。
各セグメント62のアーマチュアコア58側端には、折り返すように曲折形成されたライザ63が設けられている。ライザ63には、アーマチュアコア58に巻装されているコイル59の端末部が接続されている。
遊星歯車機構2は、回転軸52と一体形成されたサンギヤ13と、サンギヤ13に噛合され、サンギヤ13を中心に公転する複数のプラネタリギヤ14と、これらプラネタリギヤ14の外周側に設けられた環状の内歯リングギヤ15とにより構成されている。
ハウジング17の開口部17a側の外周面には、軸方向に沿うように雌ネジ部17bが刻設されている。また、モータヨーク53の他方側(図1における右端側)に配置されたエンドプレート55には、雌ネジ部17bに対応する位置にボルト孔55aが形成されている。このボルト孔55aにボルト95を挿入し、雌ネジ部17bにボルト95を螺入することによって、モータ部3とハウジング17とが一体化される。
軸受圧入部47aには、出力軸4の一方側端(図1における左側端)を回転自在に支持するための滑り軸受17dが圧入固定されている。この滑り軸受17dには所望の基油からなる潤滑油が含浸されており、出力軸4を円滑に摺接させることができるようになっている。
また、軸受孔47の底部には、ハウジング17の底部17cと出力軸4の一方側端面4cとの間に、荷重受部材50が配置されている。
荷重受部材50を配置することにより、一方側(図1における左側)に向かって出力軸4にスラスト荷重が発生したときでも、ハウジング17に設けた荷重受部材50で出力軸4の移動を規制しつつ、出力軸4のスラスト荷重を受けることができる。また、出力軸4の回転時には、出力軸4の一方側端面4cと荷重受部材50とが摺接するので、出力軸4の一方側端面4cとハウジング17とが直接摺接するのを防止できる。したがって、ハウジング17の摩耗を防止して耐久性に優れたスタータ1とすることができる。
なお、荷重受部材50の周囲には、出力軸4の一方側端面4cとの摺接時の摩擦を軽減するためのグリスが塗布されるが、このグリスに、滑り軸受17dに含浸される潤滑油と同種の基油を含むものが採用されているため、滑り軸受17dの潤滑油を長期間保持できるようになっている。
出力軸4の軸方向略中央には、ヘリカルスプライン19が形成されている。ヘリカルスプライン19には、クラッチ機構5がヘリカル噛合されている。
クラッチ機構5は、略円筒状のクラッチアウタ18と、このクラッチアウタ18と同軸に形成されたクラッチインナ22と、クラッチアウタ18およびクラッチインナ22を一体的に固定するクラッチカバー6と、を有している。
クラッチ機構5には、クラッチアウタ18側からの回転力はクラッチインナ22に動力を伝達するが、クラッチインナ22側からの回転力はクラッチアウタ18に伝達しない、所謂公知のワンウェイクラッチ機能が設けられている。これにより、エンジン始動時に、クラッチアウタ18よりもクラッチインナ22の方が速くなるオーバーラン状態になった際には、エンジンのリングギヤ23側からの回転力を遮断するように構成されている。また、クラッチ機構5は、クラッチアウタ18とクラッチインナ22との間に生じるトルク差、および回転速度差が所定値以内の場合、互いに回転力を伝達する一方、トルク差および回転速度差が所定値を越えた場合、回転力の伝達が遮断される所謂トルクリミッタ機能も備えている。
クラッチアウタ18の内周面におけるスリーブ18aの一方側には、段部18cが形成されている。段部18cの内周面は、スリーブ18aの内周面よりも大径に形成されており、段部18cの内周面と出力軸4の外周面との間には空間が形成される。この空間には、後述するリターンスプリング21が配置されている。
クラッチアウタ18の外周面18dには、後述するクラッチカバー6が、例えばカシメ等により固定されている。
クラッチインナ22の外周面には、クラッチアウタ18の一方側端面と径方向で対応した位置に、略円盤状のクラッチワッシャ64が外嵌固定されている。
本体筒部68は、クラッチアウタ18およびクラッチワッシャ64に外挿され、本体筒部68の他方側の縁部をクラッチアウタ18の他方側端面にカシメることにより、クラッチアウタ18およびクラッチワッシャ64に固定される。
底壁66の略中央には、一方側と他方側とを貫通する開口が形成されており、出力軸4が挿通されている。また、底壁66の開口には、軸方向の一方側に向かって延びる補強筒部67が形成されている。補強筒部67は、出力軸4と同心円状に形成されている。補強筒部67の内径は、規制段差部22bの外径よりも大きく形成されている。これにより、補強筒部67は、規制段差部22bと干渉することなく、規制段差部22bの径方向外側に配置される。
移動規制部20は、出力軸4に外嵌された略リング状の部材であり、サークリップ20aによって軸方向一方側への移動が規制された状態に設けられるとともに、クラッチアウタ18に形成された段部18cと干渉可能なように、段部18cの内周面よりも大径に形成されている。後述するようにクラッチ機構5が一方側にスライド移動したときには、クラッチアウタ18の段部18cと移動規制部20とが干渉する。これにより、クラッチ機構5およびピニオン機構70の一方側へのスライド移動量が規制される。
このように形成されたクラッチ機構5には、クラッチインナ22の先端に、ピニオン機構70が一体的に設けられている。
ピニオン機構70は、クラッチインナ22の先端に一体成形された筒状のピニオンインナ71を有している。ピニオンインナ71の内周面には、軸方向両側にそれぞれ出力軸4にピニオンインナ71を摺動可能に支持するための2つの滑り軸受72,72が設けられている。
リングギヤ23およびピニオンギヤ74は、スタータ1の静止状態において最大離反距離がL2となるように設定されている(図1における上側参照)。また、リングギヤ23およびピニオンギヤ74は、スタータ1の通電状態において、最大噛み合い代がL4となるように設定されている(図1における下側参照)。なお、本実施形態では、リングギヤ23とピニオンギヤ74との最大噛み合い代L4は、リングギヤ23の軸方向の幅と略同一となっている。
収納部76のクラッチ機構5側に形成されている開口部は、クラッチインナ22の基端側に設けられた段差部71aによって閉塞された状態になっている。すなわち、ピニオンギヤ74は、ピニオンインナ71によって軸方向に摺動可能に支持された状態になっている。これにより、ピニオンギヤ74は、ピニオンインナ71に対して大きくがたつくことなく軸方向にスライド移動する。
ピニオンスプリング11は、収納部76に収納された状態で、ピニオンギヤ74の拡径部75の段差部74cと、ピニオンインナ71の段差部71aとにより圧縮変形されている。これによりピニオンギヤ74は、ピニオンインナ71に対してリングギヤ23側に向かって付勢された状態になる。
ピニオンスプリング11は、後述するように、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが当接したときに軸方向に弾性変形することで衝撃を吸収する、ダンパ機構として機能している。これにより、ピニオンギヤ74およびリングギヤ23の摩耗を抑制し、スタータ1の耐久性向上を図っている。
F1>F2・・・(1)
を満たすように設定されている。
したがって、ピニオンスプリング11は、スラスト荷重F2に抗してピニオンギヤ74をリングギヤ23側に押圧している。
ここで、延長筒部74dの外径は、クラッチカバー6の開口部66aの直径および補強筒部67の内径よりも小さく形成されている。これにより、ピニオンギヤ74が他方側に移動しても、延長筒部74dがクラッチカバー6と干渉することなく、規制段差部22bと当接可能とされている。
ここで、ピニオンスプリング11の可動量L3、およびリングギヤ23とピニオンギヤ74との最大噛み合い代L4は、
L4>L3・・・(5)
を満たすように設定されている。このように設定することで、リングギヤ23から離反する方向にピニオンギヤ74がピニオンスプリング11の可動量L3だけスライド移動しても、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との噛合が外れることがない。
ハウジング17の内周面には、クラッチ機構5よりもモータ部3側に、電磁装置9を構成するヨーク25が内嵌固定されている。ヨーク25は磁性材からなる有底筒状に形成されており、底部25aの径方向中央の大部分が大きく開口されている。
また、ヨーク25の底部25aとは反対側端には、磁性材からなる円環状のプランジャホルダ26が設けられている。プランジャホルダ26の径方向内側は、軸方向の他方側に向かって延出された円筒部26aとなっている。これにより、後述するギヤプランジャ80の鉄心88との離間距離が狭くなるので、プランジャホルダ26による鉄心88の吸引力(以下、単に「吸引力」ということがある。)を上げることができる。
ヨーク25、およびプランジャホルダ26によって径方向内側に形成される収納凹部25bには、略円筒状に形成された励磁コイル24が収納されている。励磁コイル24は、コネクタを介してイグニションスイッチ(いずれも不図示)に電気的に接続されている。
プランジャ機構37は、磁性材で形成された略円筒状のスイッチプランジャ27と、このスイッチプランジャ27と出力軸4の外周面との間の空隙に配置されたギヤプランジャ80とを有している。これらスイッチプランジャ27とギヤプランジャ80とは、互いに同心円上に設けられ、軸方向に相対移動可能に設けられている。また、プランジャホルダ26とスイッチプランジャ27との間には、両者を離反方向に付勢する板ばね材からなるスイッチリターンスプリング27aが配設されている。
ここで、可動接点板8のストローク量L1、およびリングギヤ23とピニオンギヤ74との最大離反距離L2は、
LI>L2・・・(4)
を満たすように設定されている。したがって、後述するように、電磁装置9がピニオンギヤ74と可動接点板8とを一方側(図1における左側)にスライド移動させたときに、可動接点板8がON状態となる前に、ピニオンギヤ74がリングギヤ23に当接する。
プランジャインナ81は、樹脂等により略円筒形状に形成されている。プランジャインナ81の内径は、出力軸4に外挿可能なように、出力軸4の外径よりも若干大きく形成されている。これにより、プランジャインナ81は、出力軸4に対して軸方向にスライド移動可能に設けられている。
プランジャインナ81の他方側端81b(図1における右側端)は、他方側から一方側に向かって漸次外径が大きくなる爪部83が周方向に複数個所設けられている。また、爪部83の一方側(図1における左側)には、周方向に沿って溝部84が形成されている。
プランジャアウタ85の他方側端85a(図1における右側端)には、径方向内側に張り出した内フランジ部86が一体的に形成されている。内フランジ部86の内径は、プランジャインナ81の爪部83の外径よりも小さく、かつプランジャインナ81の溝部84の底部の外径よりも大きくなるように形成されている。そして、プランジャインナ81の溝部84内にプランジャアウタ85の内フランジ部86を配置することで、プランジャインナ81とプランジャアウタ85とが一体化され、プランジャ機構37が構成される。
また、外フランジ部87の一方側(図1における左側)であって、プランジャアウタ85の外周面には、リング状の鉄心88が設けられている。鉄心88は、例えば樹脂モールドにより、プランジャアウタ85と一体成型されている。鉄心88は、後述するように励磁コイル24に電流が供給されたときに発生する磁束により、所定の吸引力で電磁装置9に吸引される。
F3>F1・・・(2)
を満たすように設定されている。
したがって、電磁装置9は、ピニオンスプリング11のばね荷重F1に抗して確実にスイッチプランジャ27を吸引し続けることができ、モータ部3への通電も継続させるようになっている。
すなわち、
F3>F1>F2・・・(3)
を満たすように設定されている。
したがって、電磁装置9は、ピニオンスプリング11のばね荷重F1、およびリングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重F2に抗して、確実にスイッチプランジャ27を吸引し続けることができ、モータ部3への通電も継続させるようになっている。
プランジャスプリング91は、収納部90に収納された状態で、プランジャインナ81の外フランジ部82と、プランジャアウタ85の内フランジ部86とにより圧縮変形させられている。そして、プランジャインナ81は一方側(図1における左側)に向かって、プランジャアウタ85は他方側(図1における右側)に向かって、互いに付勢された状態となっている。
また、スタータ1の通電状態(図1における中心線より上側の状態)では、ギヤプランジャ80が一方側(図1における左側)に最大変位したとき、プランジャインナ81の一方側端81aは常にクラッチ機構5のクラッチアウタ18の他方側端と当接した状態となっている。
すなわち、プランジャスプリング91は、クラッチ機構5とギヤプランジャ80との間における軸方向の空隙の発生を防止し、クラッチ機構5のガタつきを吸収するガタ吸収機構を構成している。
各ブラシ41の基端側には、ブラシスプリング42が設けられている。このブラシスプリング42によって、各ブラシ41がコンミテータ61側に向かって付勢され、各ブラシ41の先端がコンミテータ61のセグメント62に摺接するようになっている。
続いて、図面を用いてスタータ1の動作について説明をする。
図1における中心線の上側の状態に示すように、励磁コイル24に電流を供給する前のスタータ1の静止状態にあっては、リターンスプリング21に付勢されたクラッチアウタ18が、ピニオンギヤ74と一体化されているクラッチインナ22を引っ張った状態で、モータ部3側(図1における右側)へ一杯に付勢されている。そして、クラッチ機構5のクラッチアウタ18がストッパ94に当接した位置で停止しており、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが最大離反距離L2を有した状態で結合が断たれている。
この状態から車両のイグニションスイッチ(不図示)をオンすると、励磁コイル24に電流が供給されて励磁され、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80を磁束が通る磁路が形成される。これにより、図2(a)に示すように、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側(図2における左側)へ向かってスライド移動する。
このとき、スイッチプランジャ27の内周面にリング部材28が一体的に設けられていることから、このリング部材28がギヤプランジャ80を押圧し、初期的にギヤプランジャ80をリングギヤ23側に向かって押圧することで、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80が一体となってリングギヤ23側へ向かってスライド移動する。
また、このとき、スイッチプランジャ27はギヤプランジャ80と一体となってリングギヤ23側へ向かってスライド移動するため、スイッチプランジャ27およびこれと連動する可動接点板8も、L2だけ一方側(図2における左側)に移動する。
LI>L2・・・(4)
を満たすように設定されている。したがって、ピニオンギヤ74との最大離反距離L2だけ一方側(図2における左側)に移動したときであっても、可動接点板8と固定接点板34との間に、L1とL2との差に等しいクリアランスCを有した状態で、可動接点板8がOFF状態となっている。すなわち、可動接点板8がON状態となる前に、ピニオンギヤ74の一方側端面74bとリングギヤ23の他方側(図2(b)における右側)端面23aとが当接するか、または両者間の軸方向寸法距離がゼロの状態となる。
さらにスイッチプランジャ27が吸引されてリングギヤ23側へ向かってスライド移動すると、図3(a)に示すように、可動接点板8のストローク量がL1となって、固定接点板34に接触する。可動接点板8は、スイッチシャフト30に対して軸方向変位可能に浮動支持されているので、スイッチスプリング32の押圧力が可動接点板8および固定接点板34に加わることになる。
ここで、クラッチカバー6の補強筒部67は、第一規制部97を構成する延長筒部74dおよび規制段差部22bよりも径方向外側に配置されている。したがって、クラッチカバー6の補強筒部67と第一規制部97とが干渉することなく、ピニオンスプリング11によるダンパ機構が機能できる。
すると、アーマチュアコア58に磁界が発生し、この磁界とモータヨーク53に設けられている永久磁石57との間で磁気的な吸引力や反発力が生じる。これにより、アーマチュア54が回転し始める。そして、アーマチュア54が回転することにより、このアーマチュア54の回転軸52の回転力(モータ部3の回転力)が遊星歯車機構2を介して出力軸4に伝達され、出力軸4が回転し始める。
ここで、ピニオンスプリング11のばね荷重F1は、スイッチプランジャ27に生じる吸引力F3に対して、
F3>F1・・・(2)
を満たすように設定されている。
したがって、電磁装置9は、スイッチプランジャ27を吸引した状態で、モータ部3への通電も継続させるようになっている。
出力軸4の回転速度が上昇すると、出力軸4のヘリカルスプライン19に噛合されたクラッチアウタ18に慣性力が作用する。このとき、前述のように、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とがヘリカル噛合していることから、ピニオンギヤ74にリングギヤ23方向(飛び込み方向)へのスラスト荷重が発生する。そして、このスラスト荷重によってピニオンギヤ74はヘリカルスプライン19に沿うように、リターンスプリング21の付勢力に抗してリングギヤ23側(図4における左側)へ向かって移動する。また、図4(a)に示すように、クラッチアウタ18も、慣性力によってヘリカルスプライン19に沿うように、リターンスプリング21の付勢力に抗してリングギヤ23側(図4における左側)へ向かって押し出される。
このとき、ギヤプランジャ80には、リングギヤ23側へ向かう所定の吸引力が作用している。したがって、ギヤプランジャ80は、クラッチアウタ18のスライド移動に連動するように、クラッチアウタ18を押圧しつつリングギヤ23側へ向かってスライド移動する。これにより、図4(b)に示すように、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが所定の噛み合い位置で噛合する。
しかし、図2に示すように、ハウジング17の底部17cには、荷重受部材50が設けられている。これにより、出力軸4は、一方側端面4cが荷重受部材50に当接し、出力軸4の一方側(図5における左側)へのスライド移動が規制され、これにより、出力軸4に加わるスラスト荷重を効果的に受けることができる。
一方、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との噛合後、エンジン始動時におけるクランキングの際には、リングギヤ23の回転速度に変動が生じる。これにより、ピニオンギヤ74には一方側(図4における左側)および他方側(図4における右側)に向かってスラスト荷重が発生する。具体的には、リングギヤ23の回転速度がピニオンギヤ74の回転速度よりも低いときには、ピニオンギヤ74にはリングギヤ23に接近する方向(図4における左側)にスラスト荷重が発生する。また、リングギヤ23の回転速度がピニオンギヤ74の回転速度よりも高いときには、ピニオンギヤ74にはリングギヤ23から離反する方向(図4における右側)にスラスト荷重F2が発生する。
特に、アイドルストップ機能を備えた車両においては、エンジンの停止/始動が頻繁に行われ、一般のスタータよりも使用頻度が高まるため、上述のようなスラスト荷重が頻繁に発生する。
F1>F2・・・(1)
を満たすように設定されている。
したがって、ピニオンスプリング11は、スラスト荷重F2に抗してピニオンギヤ74をリングギヤ23側に押圧できる。これにより、ピニオンギヤ74にリングギヤ23から離反する方向にスラスト荷重F2が発生しても、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とのヘリカル噛合が解除されることなく、適切な安定したヘリカル噛合状態を維持できる。
本実施形態によれば、
F1>F2・・・(1)
を満たし、ピニオンスプリング11のばね荷重F1がリングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重F2よりも大きく設定されるので、ピニオンスプリング11は、スラスト荷重F2に抗してピニオンギヤ74をリングギヤ23側に押圧できる。これにより、ピニオンギヤ74にリングギヤ23から離反する方向にスラスト荷重F2が発生しても、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とのヘリカル噛合が解除されることなく、ヘリカル噛合を維持できる。したがって、ピニオン機構70にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが、安定した適切なヘリカル噛合状態を維持できる。
F3>F1・・・(2)
を満たし、ピニオンスプリング11のばね荷重F1が電磁装置9の吸引力F3よりも小さく設定されるので、電磁装置9は、ピニオンスプリング11のばね荷重F1に抗して確実にスイッチプランジャ27を吸引し続け、モータ部3への通電も継続させることができる。したがって、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との噛合時における衝撃を吸収しつつ、安定した噛合を実現できる。
また、(1)式および(2)式を満たすことにより、ピニオンスプリング11のばね荷重F1がリングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重F2よりも大きく設定され、電磁装置の吸引力F3よりも小さく設定される。
すなわち、
F3>F1>F2・・・(3)
を満たし、電磁装置の吸引力F3が最も大きくなるので、電磁装置9は、ピニオンスプリング11のばね荷重F1、およびリングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重F2に抗して、確実にスイッチプランジャ27を吸引し続け、モータ部3への通電も継続させることができる。これにより、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との噛合時における衝撃を吸収しつつ、安定した噛合を実現できる。さらに、エンジン始動時にピニオンギヤ74とリングギヤ23との間に回転速度差に基づいて、リングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重F2が発生しても、確実にスイッチプランジャ27を吸引し、モータ部3への通電も継続させることができる。
したがって、ピニオン機構70にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが、さらに安定した適切なヘリカル噛合状態を維持できる。
LI>L2・・・(4)
を満たし、可動接点板8のストローク量L1がピニオンギヤ74とリングギヤ23との最大離反距離L2よりも大きく設定されているので、電磁装置9がピニオンギヤ74と可動接点板8とをスライド移動させたときに、可動接点板8がON状態となる前に、ピニオンギヤ74をリングギヤ23に当接させることができる。ここで、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが噛合位相がずれていた場合には、ピニオンギヤ74が回転することなくピニオンスプリング11が弾性変形してダンパ機構が機能するので、ピニオンギヤ74およびリングギヤ23が摺接することなく当接時の衝撃を吸収できる。したがって、ピニオンギヤ74およびリングギヤ23の摩耗を抑制できるので、スタータ1の耐久性を向上できる。
さらに、
L4>L3・・・(5)
を満たし、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との最大噛み合い代L4がピニオンスプリング11の可動量L3よりも大きく設定されているので、スラスト荷重によりピニオンスプリング11が弾性変形して可動量L3だけ変位し、リングギヤ23から離反する方向にピニオンギヤ74がL3だけスライド移動しても、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との噛合を確保できる。したがって、ピニオン機構70にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との安定した適切なヘリカル噛合状態を確実に維持できる。
しかしながら、本発明の適用は一軸式のスタータ1に限られることはなく、ピニオン機構70を進退動作させることができる構成を含むスタータであれば、本発明を適用することが可能である。例えば、電磁装置(プランジャ機構37)と出力軸4とを異なる軸上に配置した、いわゆる二軸式のスタータや、電磁装置(プランジャ機構37)の軸と回転軸52と出力軸4とを異なる軸上に配置した、いわゆる三軸式のスタータ等、様々な形式のスタータに本発明を適用してもよい。
しかしながら、上述のように、ピニオンインナ71とピニオンギヤ74とをスプライン噛合によりスライド移動可能に形成する場合に限られない。例えば、ピニオンインナ71にキーを設ける一方、ピニオンギヤ74にキー溝を設け、ピニオンインナ71とピニオンギヤ74とをスライド移動可能に形成してもよい。
3 モータ部
4 出力軸
5 クラッチ機構
8 可動接点板(可動接点部)
9 電磁装置
11 ピニオンスプリング
23 リングギヤ
24 励磁コイル
70 ピニオン機構
71 ピニオンインナ
74 ピニオンギヤ
80 ギヤプランジャ
Claims (4)
- モータ部の回転力を受けて回転する出力軸と、
前記出力軸上にスライド移動可能に設けられ、エンジンのリングギヤとヘリカル噛合可能なピニオン機構と、
前記モータ部への通電、遮断を行うと共に、前記ピニオン機構に前記リングギヤ側へ向かう押圧力を付勢する電磁装置と、
を備えたスタータであって、
前記ピニオン機構は、
出力軸に外挿され、前記出力軸に沿ってスライド移動可能なピニオンインナと、
前記ピニオンインナの径方向外側に、前記ピニオンインナと同心円状に設けられ、前記リングギヤとヘリカル噛合可能なピニオンギヤと、
前記ピニオンインナと前記ピニオンギヤとの間に配置され、前記ピニオンギヤと前記リングギヤとがヘリカル噛合したときの衝撃を吸収するピニオンスプリングと、
を備え、
前記ピニオンギヤは、前記リングギヤとのヘリカル噛合時に、前記リングギヤの回転速度が前記ピニオンギヤの回転速度よりも高い場合には、前記リングギヤから離反する方向にスラスト荷重が発生するように形成され、
かつ、前記ピニオンスプリングのばね荷重をF1とし、
前記スラスト荷重をF2としたとき、
前記ピニオンスプリングのばね荷重F1は、
F1>F2
を満たすように設定されていることを特徴とするスタータ。 - 前記電磁装置は、
励磁コイルと、
前記出力軸と同軸的に設けられるとともに、前記励磁コイルへの通電に基づいて前記出力軸に沿ってスライド移動し、前記ピニオン機構に押圧力を付勢するギヤプランジャを吸引するとともに、前記モータ部に通電を行うスイッチプランジャと、
を備え、
前記電磁装置の前記励磁コイルへの通電で発生した磁界により、前記スイッチプランジャに生じる吸引力をF3とすると、
前記ピニオンスプリングのばね荷重F1は、
F3>F1
を満たすように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のスタータ。 - 前記電磁装置は、前記励磁コイルへの通電に基づいて前記出力軸に沿ってスライド移動し、前記モータ部への電力の供給を断続する可動接点部を備え、
前記可動接点部がOFF状態からON状態になる際の前記可動接点部のストローク量をL1とし、
前記ピニオンギヤと前記リングギヤとの最大離反距離をL2とし、
前記ピニオンスプリングの可動量をL3とし、
前記ピニオンギヤと前記リングギヤとの最大噛み合い代をL4とすると、
前記ストローク量L1、前記最大離反距離L2、前記可動量L3、および前記最大噛み合い代L4は、
LI>L2、かつL4>L3
を満たすように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスタータ。 - 前記電磁装置は、
励磁コイルと、
前記励磁コイルへの通電に基づいて前記出力軸に沿ってスライド移動し、前記クラッチ機構に押圧力を付勢するギヤプランジャと、
を備え、
前記出力軸と同軸的に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスタータ。
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