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JP2013139762A - スタータ - Google Patents

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JP2013139762A JP2012214248A JP2012214248A JP2013139762A JP 2013139762 A JP2013139762 A JP 2013139762A JP 2012214248 A JP2012214248 A JP 2012214248A JP 2012214248 A JP2012214248 A JP 2012214248A JP 2013139762 A JP2013139762 A JP 2013139762A
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Abstract

【課題】ピニオン機構にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤとリングギヤとが、安定した適切なヘリカル噛合状態を維持できるスタータを提供する。
【解決手段】ピニオンギヤ74は、リングギヤ23とのヘリカル噛合時に、リングギヤ23の回転速度がピニオンギヤ74の回転速度よりも高い場合には、リングギヤ23から離反する方向にスラスト荷重が発生するように形成され、かつ、ピニオンスプリング74のばね荷重をF1とし、スラスト荷重をF2としたとき、ピニオンスプリング74のばね荷重F1は、F1>F2を満たすように設定されていることを特徴としている。
【選択図】図1

Description

この発明は、例えば自動車に搭載されるスタータに関するものである。
従来から、自動車の始動用に用いられるスタータとして、エンジン始動時にピニオンギヤをリングギヤ側に飛び込ませてリングギヤに噛み合わせ、ピニオンギヤによりリングギヤを駆動することによりエンジンの始動を行う飛び込み式のスタータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、近年、車両の静粛性向上や燃費性改善のために、車両の一時停止時にエンジンを一旦オフする、所謂アイドルストップ機能を備えた車両が増えてきている。
特許文献1に記載のスタータは、上述のアイドルストップ機能を備えた車両にも適用可能とされており、始動用モータのロータ軸に遊星歯車式減速機を介して駆動軸(出力軸)が連結されている。駆動軸には、ピニオンギヤがリングギヤに向けて軸方向に進退自在に設けられている。ピニオンギヤは、有底筒状のクラッチカバーにより、ワンウェイクラッチ(クラッチ機構)と一体的に固定されている(特許文献1の図2参照)。ピニオンギヤおよびワンウェイクラッチは、マグネットスイッチ(電磁装置)によりレバー(ギヤプランジャ)を介して軸方向に進退移動する可動子と連結されている。
エンジン始動時には、マグネットスイッチによりレバー、可動子、およびワンウェイクラッチを介してピニオンギヤをリングギヤ側に飛び込ませてリングギヤに噛み合わせ、ピニオンギヤによりリングギヤを駆動する。リングギヤおよびピニオンギヤは、はすば歯車(ヘリカルギヤ)で構成されており、リングギヤとピニオンギヤとの歯のねじれ方向は、ピニオンギヤとリングギヤとの噛合時に、ピニオンギヤに飛び込み方向のスラスト荷重が発生するように設定されている。
ここで、ピニオンギヤとリングギヤとはヘリカル噛合しているため、エンジン始動時には、ピニオンギヤとリングギヤとの回転速度差に基づいて、ピニオンギヤに発生するスラスト荷重の向きが変化する。具体的には、リングギヤの回転速度がピニオンギヤの回転速度よりも低いときには、ピニオンギヤにはリングギヤに接近する方向にスラスト荷重が発生し、リングギヤ側に変位する。また、リングギヤの回転速度がピニオンギヤの回転速度よりも高いときには、ピニオンギヤにはリングギヤから離反する方向にスラスト荷重が発生し、ピニオンギヤはリングギヤとは反対側に変位する。
このように、ピニオンギヤには、ピニオンギヤとリングギヤとの噛合時およびエンジン始動時に、ピニオンギヤとリングギヤとの間の回転速度差に起因してスラスト荷重が発生する。
また、特許文献2に記載のスタータは、動軸(出力軸)と同軸的に設けられたマグネットスイッチ(電磁装置)により、第二プランジャユニットが軸方向に進退移動可能に配設され、駆動軸には、ピニオンギヤがリングギヤに向けて軸方向に進退自在に設けられている。
また、ピニオンギヤとリングギヤとの噛合時の衝撃を吸収するために、ダンパ機構を有するピニオン機構を備えている。
ダンパ機構を有するピニオン機構は、出力軸に沿ってスライド移動可能に設けられたピニオンインナと、ピニオンインナと同心円状に設けられたピニオンギヤと、ピニオンインナとピニオンギヤとの間に配置されたピニオンスプリングと、を備えている。ダンパ機構を有するピニオン機構は、ピニオンギヤがスライド移動してピニオンスプリングが弾性変形することにより、ピニオンギヤとリングギヤとが当接した時の衝撃を吸収している。
特開2002−130097号公報 特開2011−196222号公報
しかしながら、上述の特許文献1の技術にあっては、ピニオンギヤに対してリングギヤから離反する方向に発生するスラスト荷重と、電磁装置によるピニオンギヤのリングギヤ側への押圧力との関係について、何ら規定されていない。このため、リングギヤから離反する方向に発生するスラスト荷重が大きい場合には、ピニオンギヤとリングギヤとの安定した適切な噛合状態を維持できなくなるという課題がある。
さらに、特許文献2のダンパ機構を有するピニオン機構にあっては、ダンパ機構を機能させつつピニオンギヤとリングギヤとの安定した噛合を確保する必要がある。このため、ピニオンスプリングのばね荷重、ピニオンギヤに発生するスラスト荷重、および電磁装置によるピニオンギヤのリングギヤ側への押圧力の関係を適切に設定することが要求される。
特に、アイドルストップ機能を備えた車両においては、エンジンの停止/始動が頻繁に行われ、一般のスタータよりも使用頻度が高まるため、上記の課題に対する最良の改善策が望まれていた。
そこで本発明は、ピニオン機構にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤとリングギヤとが、安定した適切なヘリカル噛合状態を維持できるスタータの提供を課題とする。
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係るスタータは、モータ部の回転力を受けて回転する出力軸と、前記出力軸上にスライド移動可能に設けられ、エンジンのリングギヤとヘリカル噛合可能なピニオン機構と、前記モータ部への通電、遮断を行うと共に、前記ピニオン機構に前記リングギヤ側へ向かう押圧力を付勢する電磁装置と、を備えたスタータであって、前記ピニオン機構は、出力軸に外挿され、前記出力軸に沿ってスライド移動可能なピニオンインナと、前記ピニオンインナの径方向外側に、前記ピニオンインナと同心円状に設けられ、前記リングギヤとヘリカル噛合可能なピニオンギヤと、前記ピニオンインナと前記ピニオンギヤとの間に配置され、前記ピニオンギヤと前記リングギヤとがヘリカル噛合したときの衝撃を吸収するピニオンスプリングと、を備え、前記ピニオンギヤは、前記リングギヤとのヘリカル噛合時に、前記リングギヤの回転速度が前記ピニオンギヤの回転速度よりも高い場合には、前記リングギヤから離反する方向にスラスト荷重が発生するように形成され、かつ、前記ピニオンスプリングのばね荷重をF1とし、前記スラスト荷重をF2としたとき、前記ピニオンスプリングのばね荷重F1は、F1>F2を満たすように設定されていることを特徴としている。
本発明によれば、
F1>F2・・・(1)
を満たし、ピニオンスプリングのばね荷重F1がリングギヤから離反する方向のスラスト荷重F2よりも大きく設定されるので、ピニオンスプリングは、スラスト荷重F2に抗してピニオンギヤをリングギヤ側に押圧できる。これにより、ピニオンギヤにリングギヤから離反する方向にスラスト荷重F2が発生しても、ピニオンギヤとリングギヤとのヘリカル噛合が解除されることなく、適切なヘリカル噛合状態を維持できる。したがって、ピニオン機構にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤとリングギヤとが、安定した適切なヘリカル噛合状態を維持できる。
また、本発明の請求項2に係るスタータは、前記電磁装置は、励磁コイルと、前記出力軸と同軸的に設けられるとともに、前記励磁コイルへの通電に基づいて前記出力軸に沿ってスライド移動し、前記ピニオン機構に押圧力を付勢するギヤプランジャを吸引するとともに、前記モータ部に通電を行うスイッチプランジャと、を備え、前記電磁装置の前記励磁コイルへの通電で発生した磁界により、前記スイッチプランジャに生じる吸引力をF3とすると、前記ピニオンスプリングのばね荷重F1は、F3>F1を満たすように設定されていることを特徴としている。
本発明によれば、
F3>F1・・・(2)
を満たし、ピニオンスプリングのばね荷重F1が電磁装置の吸引力F3よりも小さく設定されるので、電磁装置は、ピニオンスプリングのばね荷重F1に抗して確実にスイッチプランジャを吸引し続け、モータ部への通電も継続させることができる。したがって、ピニオンギヤとリングギヤとの噛合時における衝撃を吸収しつつ、リングギヤと噛合ったピニオンギヤにモータ部の回転力を付与し続けることができる。
また、(1)式および(2)式を満たすことにより、ピニオンスプリングのばね荷重F1がリングギヤから離反する方向のスラスト荷重F2よりも大きく設定され、電磁装置の吸引力F3よりも小さく設定される。
すなわち、
F3>F1>F2・・・(3)
を満たし、電磁装置の吸引力F3が最も大きくなるので、電磁装置は、ピニオンスプリングのばね荷重F1、およびリングギヤから離反する方向のスラスト荷重F2に抗して、確実にギヤプランジャを吸引し続け、ピニオンギヤをリングギヤ側に押圧できる。これにより、ピニオンギヤとリングギヤとの噛合時における衝撃を吸収しつつ、安定した噛合を実現できる。さらに、エンジン始動時にピニオンギヤとリングギヤとの間に回転速度差に基づいて、リングギヤから離反する方向のスラスト荷重F2が発生しても、確実にスイッチプランジャを吸引し続け、モータ部への通電も継続させることができる。
したがって、ピニオン機構にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤとリングギヤとが、さらに安定した適切なヘリカル噛合状態を維持できる。
また、本発明の請求項3に係るスタータは、前記電磁装置は、前記励磁コイルへの通電に基づいて前記出力軸に沿ってスライド移動し、前記モータ部への電力の供給を断続する可動接点部を備え、前記可動接点部がOFF状態からON状態になる際の前記可動接点部のストローク量をL1とし、前記ピニオンギヤと前記リングギヤとの最大離反距離をL2とし、前記ピニオンスプリングの可動量をL3とし、前記ピニオンギヤと前記リングギヤとの最大噛み合い代をL4とすると、前記ストローク量L1、前記最大離反距離L2、前記可動量L3、および前記最大噛み合い代L4は、LI>L2、かつL4>L3を満たすように設定されていることを特徴としている。
本発明によれば、
LI>L2・・・(4)
を満たし、可動接点部のストローク量L1がピニオンギヤとリングギヤとの最大離反距離L2よりも大きく設定されているので、電磁装置がピニオンギヤと可動接点部とをスライド移動させたときに、可動接点部がON状態となる前に、ピニオンギヤをリングギヤに当接させることができる。ここで、ピニオンギヤとリングギヤとが噛合位相がずれていた場合には、ピニオンギヤが回転することなくピニオンスプリングが弾性変形してダンパ機構が機能するので、ピニオンギヤおよびリングギヤが摺接することなく当接時の衝撃を吸収できる。したがって、ピニオンギヤおよびリングギヤの摩耗を抑制できるので、スタータの耐久性を向上できる。
さらに、
L4>L3・・・(5)
を満たし、ピニオンギヤとリングギヤとの最大噛み合い代L4がピニオンスプリングの可動量L3よりも大きく設定されているので、スラスト荷重によりピニオンスプリングが弾性変形して可動量L3だけ変位し、リングギヤから離反する方向にピニオンギヤがL3だけスライド移動しても、ピニオンギヤとリングギヤとの噛合を確保できる。したがって、ピニオン機構にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤとリングギヤとの安定した適切なヘリカル噛合状態を確実に維持できる。
また、本発明の請求項4に係るスタータは、前記電磁装置は、励磁コイルと、前記励磁コイルへの通電に基づいて前記出力軸に沿ってスライド移動し、前記クラッチ機構に押圧力を付勢するギヤプランジャと、を備え、前記出力軸と同軸的に設けられていることを特徴としている。
本発明によれば、電磁装置と出力軸とが同軸的に設けられた、いわゆる一軸式のスタータに好適に採用できる。したがって、一軸式のスタータにおいても、ピニオン機構にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤとリングギヤとが、安定した適切なヘリカル噛合状態を維持できる。
本発明によれば、
F1>F2・・・(1)
を満たし、ピニオンスプリングのばね荷重F1がリングギヤから離反する方向のスラスト荷重F2よりも大きく設定されるので、ピニオンスプリングは、スラスト荷重F2に抗してピニオンギヤをリングギヤ側に押圧できる。これにより、ピニオンギヤにリングギヤから離反する方向にスラスト荷重F2が発生しても、ピニオンギヤとリングギヤとのヘリカル噛合が解除されることなく、ヘリカル噛合を維持できる。したがって、ピニオン機構にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤとリングギヤとが、安定した適切なヘリカル噛合状態を維持できる。
本発明の実施形態におけるスタータの断面図である。 スイッチプランジャ移動直後の説明図であり、図2(a)は、スタータの動作説明図であり、図2(b)は、ピニオンギヤの動作説明図である。 可動接点板と固定接点板とが当接したときの説明図であり、図3(a)は、スタータの動作説明図であり、図3(b)は、ピニオンギヤの動作説明図である。 ピニオンギヤとリングギヤとが噛合したときの説明図であり、図4(a)は、スタータの動作説明図であり、図4(b)は、ピニオンギヤの動作説明図である。
続いて、本発明の実施形態に係るスタータについて、図面を参照して説明をする。
図1は、本発明の実施形態におけるスタータ1の断面図である。なお、図1では、中心線より上側にスタータ1の静止状態を示し、下側にスタータ1の通電状態(ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが噛合した状態)を示している。
図1に示すように、スタータ1は、不図示のエンジンの始動に必要な回転力を発生するためのものであって、モータ部3と、モータ部3の一方側(図1における左側)に連結されている出力軸4と、出力軸4上にスライド移動可能に設けられたクラッチ機構5およびピニオン機構70と、モータ部3に対する電源供給路を開閉するスイッチユニット7と、スイッチユニット7の可動接点板8およびピニオン機構70を軸方向に沿って移動させるための電磁装置9とを有している。
モータ部3は、ブラシ付直流モータ51と、ブラシ付直流モータ51の回転軸52に連結され、この回転軸52の回転力を出力軸4に伝達するための遊星歯車機構2とにより構成されている。
ブラシ付直流モータ51は、略円筒状のモータヨーク53と、モータヨーク53の径方向内側に配置され、モータヨーク53に対して回転自在に設けられているアーマチュア54とを有している。モータヨーク53の内周面には、複数(本実施形態では6個)の永久磁石57が、周方向に磁極が交互となるように設けられている。
モータヨーク53の他方側(図1における右側)の端部には、モータヨーク53の開口部53aを閉塞するエンドプレート55が設けられている。エンドプレート55の径方向中央には、回転軸52の他方側端を回転自在に支持するための滑り軸受56a、およびスラスト軸受56bが設けられている。
アーマチュア54は、回転軸52と、回転軸52の永久磁石57に対応する位置に外嵌固定されているアーマチュアコア58と、回転軸52のアーマチュアコア58よりも遊星歯車機構2側(図1における左側)に外嵌固定されているコンミテータ61とにより構成されている。
アーマチュアコア58は、放射状に形成された複数のティース(不図示)と、周方向に隣接する各ティース間に形成された複数のスロット(不図示)とを有している。周方向に所定間隔をあけた各スロット間には、コイル59が例えば波巻により巻装されている。コイル59の端末部は、コンミテータ61に向かって引き出されている。
コンミテータ61には、複数枚(例えば、この実施形態では26枚)のセグメント62が周方向に沿って、かつ互いに電気的に絶縁されるように所定間隔を空けた状態で設けられている。
各セグメント62のアーマチュアコア58側端には、折り返すように曲折形成されたライザ63が設けられている。ライザ63には、アーマチュアコア58に巻装されているコイル59の端末部が接続されている。
モータヨーク53のエンドプレート55とは反対側には、有底筒状のトッププレート12が設けられている。トッププレート12には、アーマチュアコア58側の内面に、遊星歯車機構2が設けられている。
遊星歯車機構2は、回転軸52と一体形成されたサンギヤ13と、サンギヤ13に噛合され、サンギヤ13を中心に公転する複数のプラネタリギヤ14と、これらプラネタリギヤ14の外周側に設けられた環状の内歯リングギヤ15とにより構成されている。
複数のプラネタリギヤ14は、キャリアプレート16により連結されている。キャリアプレート16には、各プラネタリギヤ14に対応する位置に複数の支持シャフト16aが立設されており、ここにプラネタリギヤ14が回転自在に支持されている。また、キャリアプレート16の径方向中央には、出力軸4がセレーション係合により噛合っている。
内歯リングギヤ15は、トッププレート12のアーマチュアコア58側の内面に一体成形されている。トッププレート12の内周面における径方向中央には、滑り軸受12aが設けられている。滑り軸受12aは、回転軸52と同軸上に配置されている出力軸4の他方側端(図1における右側端)を回転自在に支持している。
また、トッププレート12には、出力軸4とクラッチ機構5とピニオン機構70と電磁装置9等が内装され、不図示のエンジンにスタータ1を固定するためのアルミニウム製のハウジング17が装着されている。ハウジング17は、一方側(図1における左側)に底部17cを有し、他方側(図1における右側)に開口部17aを有する有底筒状にダイカスト鋳造にて形成されている。
ハウジング17の開口部17a側には、トッププレート12が開口部17aを閉塞するように接合されている。
ハウジング17の開口部17a側の外周面には、軸方向に沿うように雌ネジ部17bが刻設されている。また、モータヨーク53の他方側(図1における右端側)に配置されたエンドプレート55には、雌ネジ部17bに対応する位置にボルト孔55aが形成されている。このボルト孔55aにボルト95を挿入し、雌ネジ部17bにボルト95を螺入することによって、モータ部3とハウジング17とが一体化される。
ハウジング17の内壁には、後述するクラッチアウタ18のモータ部3側への変位を規制するリング状のストッパ94が設けられている。このストッパ94は、樹脂やゴム等により形成され、クラッチアウタ18が当接した際の衝撃を緩和できるようになっている。
ハウジング17の底部17cには、出力軸4と同軸に、有底の軸受孔47が形成されている。軸受孔47は、内径が出力軸4の外径よりも大きく形成されている。
軸受圧入部47aには、出力軸4の一方側端(図1における左側端)を回転自在に支持するための滑り軸受17dが圧入固定されている。この滑り軸受17dには所望の基油からなる潤滑油が含浸されており、出力軸4を円滑に摺接させることができるようになっている。
また、軸受孔47の底部には、ハウジング17の底部17cと出力軸4の一方側端面4cとの間に、荷重受部材50が配置されている。
荷重受部材50は、平板状の金属部材であり、例えばプレスにより形成されたリング状のワッシャが採用される。荷重受部材50は、硬度が出力軸4よりも高く耐摩耗性に優れた材料により形成されている。荷重受部材50の材料としては、例えばSK85等の炭素工具鋼が好適である。
荷重受部材50を配置することにより、一方側(図1における左側)に向かって出力軸4にスラスト荷重が発生したときでも、ハウジング17に設けた荷重受部材50で出力軸4の移動を規制しつつ、出力軸4のスラスト荷重を受けることができる。また、出力軸4の回転時には、出力軸4の一方側端面4cと荷重受部材50とが摺接するので、出力軸4の一方側端面4cとハウジング17とが直接摺接するのを防止できる。したがって、ハウジング17の摩耗を防止して耐久性に優れたスタータ1とすることができる。
なお、荷重受部材50の周囲には、出力軸4の一方側端面4cとの摺接時の摩擦を軽減するためのグリスが塗布されるが、このグリスに、滑り軸受17dに含浸される潤滑油と同種の基油を含むものが採用されているため、滑り軸受17dの潤滑油を長期間保持できるようになっている。
出力軸4の他方側端(図1における右側端)には、回転軸52の一方側端(図1における左側端)を挿入可能な凹部4aが形成されている。凹部4aの内周面には、滑り軸受4bが圧入されており、出力軸4と回転軸52とが相対回転可能に連結されるようになっている。
(クラッチ機構)
出力軸4の軸方向略中央には、ヘリカルスプライン19が形成されている。ヘリカルスプライン19には、クラッチ機構5がヘリカル噛合されている。
クラッチ機構5は、略円筒状のクラッチアウタ18と、このクラッチアウタ18と同軸に形成されたクラッチインナ22と、クラッチアウタ18およびクラッチインナ22を一体的に固定するクラッチカバー6と、を有している。
クラッチ機構5には、クラッチアウタ18側からの回転力はクラッチインナ22に動力を伝達するが、クラッチインナ22側からの回転力はクラッチアウタ18に伝達しない、所謂公知のワンウェイクラッチ機能が設けられている。これにより、エンジン始動時に、クラッチアウタ18よりもクラッチインナ22の方が速くなるオーバーラン状態になった際には、エンジンのリングギヤ23側からの回転力を遮断するように構成されている。また、クラッチ機構5は、クラッチアウタ18とクラッチインナ22との間に生じるトルク差、および回転速度差が所定値以内の場合、互いに回転力を伝達する一方、トルク差および回転速度差が所定値を越えた場合、回転力の伝達が遮断される所謂トルクリミッタ機能も備えている。
クラッチアウタ18の他方側(図1における右側)には、縮径されたスリーブ18aが一体形成されており、この内周面に、出力軸4のヘリカルスプライン19に噛合するヘリカルスプライン18bが形成されている。これにより、クラッチ機構5は、出力軸4に対して軸方向にスライド移動可能に設けられる。なお、出力軸4のヘリカルスプライン19およびクラッチアウタ18のヘリカルスプライン18bの傾斜角度は、軸方向に対して例えば16°程度に設定されている。
クラッチアウタ18の内周面におけるスリーブ18aの一方側には、段部18cが形成されている。段部18cの内周面は、スリーブ18aの内周面よりも大径に形成されており、段部18cの内周面と出力軸4の外周面との間には空間が形成される。この空間には、後述するリターンスプリング21が配置されている。
クラッチアウタ18の外周面18dには、後述するクラッチカバー6が、例えばカシメ等により固定されている。
クラッチインナ22は、クラッチアウタ18のスリーブ18aよりも拡径形成されており、クラッチインナ22、段部18cの内周面および出力軸4との間には、空間が形成されている。この空間には、後述するリターンスプリング21が配置されている。
クラッチインナ22の外周面には、クラッチアウタ18の一方側端面と径方向で対応した位置に、略円盤状のクラッチワッシャ64が外嵌固定されている。
クラッチワッシャ64の一方側(図1における左側)には、規制段差部22bが形成されている。規制段差部22bは、クラッチインナ22の外周面が全周にわたって径方向外側に張り出して形成されている。規制段差部22bは、後述するように、ピニオンギヤ74の他方側(図1における右側)に形成された延長筒部74dと当接することで、ピニオンギヤ74の他方側へのスライド移動量を規制する第一規制部97を形成している。
クラッチカバー6は、本体筒部68と、本体筒部68の一方側(図1における左側)の底壁66と、を有する有底筒状の部材であり、例えば鉄等の金属板材を絞り加工することにより形成されている。
本体筒部68は、クラッチアウタ18およびクラッチワッシャ64に外挿され、本体筒部68の他方側の縁部をクラッチアウタ18の他方側端面にカシメることにより、クラッチアウタ18およびクラッチワッシャ64に固定される。
底壁66の略中央には、一方側と他方側とを貫通する開口が形成されており、出力軸4が挿通されている。また、底壁66の開口には、軸方向の一方側に向かって延びる補強筒部67が形成されている。補強筒部67は、出力軸4と同心円状に形成されている。補強筒部67の内径は、規制段差部22bの外径よりも大きく形成されている。これにより、補強筒部67は、規制段差部22bと干渉することなく、規制段差部22bの径方向外側に配置される。
出力軸4のヘリカルスプライン19よりも一方側(図1における左側)には、移動規制部20が設けられている。
移動規制部20は、出力軸4に外嵌された略リング状の部材であり、サークリップ20aによって軸方向一方側への移動が規制された状態に設けられるとともに、クラッチアウタ18に形成された段部18cと干渉可能なように、段部18cの内周面よりも大径に形成されている。後述するようにクラッチ機構5が一方側にスライド移動したときには、クラッチアウタ18の段部18cと移動規制部20とが干渉する。これにより、クラッチ機構5およびピニオン機構70の一方側へのスライド移動量が規制される。
移動規制部20とクラッチアウタ18のスリーブ18aとの間であって、段部18cの内周面と出力軸4の外周面との間には、出力軸4を取り囲むように形成されたリターンスプリング21が圧縮変形した状態で設けられている。これにより、クラッチアウタ18は、常時モータ部3側へ向かって押し戻されるように付勢された状態になる。
このように形成されたクラッチ機構5には、クラッチインナ22の先端に、ピニオン機構70が一体的に設けられている。
(ピニオン機構)
ピニオン機構70は、クラッチインナ22の先端に一体成形された筒状のピニオンインナ71を有している。ピニオンインナ71の内周面には、軸方向両側にそれぞれ出力軸4にピニオンインナ71を摺動可能に支持するための2つの滑り軸受72,72が設けられている。
ピニオンインナ71の外周面には、クラッチ機構5とは反対側である先端側に、スプライン73が形成されている。このスプライン73には、エンジン(不図示)のリングギヤ23に噛合可能なピニオンギヤ74がスプライン噛合されている。すなわち、ピニオンインナ71の先端側に、スプライン73が形成されている一方、ピニオンギヤ74の内周面の先端側に、スプライン73に噛合うスプライン74aが形成されている。これにより、ピニオンインナ71とピニオンギヤ74とは、互いに相対回転不能かつ軸方向にスライド移動可能に設けられた状態になる。
リングギヤ23およびピニオンギヤ74は、はすば歯車(ヘリカルギヤ)で構成されており、リングギヤ23とピニオンギヤ74との歯のねじれ方向は、ピニオンギヤ74がリングギヤ23を駆動する状態でピニオンギヤ74に飛び込み方向のスラスト荷重が発生するように設定されている。
リングギヤ23およびピニオンギヤ74は、スタータ1の静止状態において最大離反距離がL2となるように設定されている(図1における上側参照)。また、リングギヤ23およびピニオンギヤ74は、スタータ1の通電状態において、最大噛み合い代がL4となるように設定されている(図1における下側参照)。なお、本実施形態では、リングギヤ23とピニオンギヤ74との最大噛み合い代L4は、リングギヤ23の軸方向の幅と略同一となっている。
また、エンジン始動時におけるクランキングの際には、リングギヤ23の回転速度に変動が生じやすい。ここで、ヘリカル噛合しているピニオンギヤ74とリングギヤ23との間に回転速度差が発生すると、ピニオンギヤ74にかかるスラスト荷重の向きが変化する。具体的には、リングギヤ23の回転速度がピニオンギヤ74の回転速度よりも低いときには、ピニオンギヤ74にはリングギヤ23に接近する方向にスラスト荷重が発生するようになっている。また、リングギヤ23の回転速度がピニオンギヤ74の回転速度よりも高いときには、ピニオンギヤ74にはリングギヤ23から離反する方向にスラスト荷重F2(以下、単に「スラスト荷重F2」ということがある。)が発生するようになっている。
ピニオンギヤ74の内周面には、スプライン74aの後端側に、段差部74cを介して拡径された拡径部75が形成されており、ピニオンインナ71とピニオンギヤ74との間に収納部76が形成されるようになっている。
収納部76のクラッチ機構5側に形成されている開口部は、クラッチインナ22の基端側に設けられた段差部71aによって閉塞された状態になっている。すなわち、ピニオンギヤ74は、ピニオンインナ71によって軸方向に摺動可能に支持された状態になっている。これにより、ピニオンギヤ74は、ピニオンインナ71に対して大きくがたつくことなく軸方向にスライド移動する。
収納部76には、ピニオンインナ71の外周面を取り囲むように形成されたピニオンスプリング11が収納されている。ピニオンスプリング11は、例えばコイルスプリングからなり、ばね荷重がF1に設定されている。
ピニオンスプリング11は、収納部76に収納された状態で、ピニオンギヤ74の拡径部75の段差部74cと、ピニオンインナ71の段差部71aとにより圧縮変形されている。これによりピニオンギヤ74は、ピニオンインナ71に対してリングギヤ23側に向かって付勢された状態になる。
ピニオンスプリング11は、後述するように、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが当接したときに軸方向に弾性変形することで衝撃を吸収する、ダンパ機構として機能している。これにより、ピニオンギヤ74およびリングギヤ23の摩耗を抑制し、スタータ1の耐久性向上を図っている。
ここで、ピニオンスプリング11のばね荷重F1は、リングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重F2に対して、
F1>F2・・・(1)
を満たすように設定されている。
したがって、ピニオンスプリング11は、スラスト荷重F2に抗してピニオンギヤ74をリングギヤ23側に押圧している。
ピニオンギヤ74の他方側(図1における右側)の端面には、他方側に向かって延びる延長筒部74dが設けられている。延長筒部74dは、出力軸4と同心円状に形成されている。延長筒部74dは、ピニオンスプリング11が弾性変形してピニオンギヤ74が軸方向の他方側(図1における右側)にスライド移動したとき、クラッチインナ22の規制段差部22bと当接可能となっている。すなわち、ピニオンギヤ74とピニオンインナ71とが互いにスライド移動して、ピニオンギヤ74の延長筒部74dおよびクラッチインナ22の規制段差部22bとが、互いに当接することでピニオンギヤ74の他方側への移動を規制する第一規制部97を構成している。
ここで、延長筒部74dの外径は、クラッチカバー6の開口部66aの直径および補強筒部67の内径よりも小さく形成されている。これにより、ピニオンギヤ74が他方側に移動しても、延長筒部74dがクラッチカバー6と干渉することなく、規制段差部22bと当接可能とされている。
第一規制部97を構成するピニオンギヤ74の延長筒部74dと、クラッチインナ22の規制段差部22bとの離間距離はL3に設定されている。すなわち、ピニオンギヤ74は、他方側に向かってL3だけスライド移動可能となっており、ピニオンスプリング11の可動量はL3となっている。
ここで、ピニオンスプリング11の可動量L3、およびリングギヤ23とピニオンギヤ74との最大噛み合い代L4は、
L4>L3・・・(5)
を満たすように設定されている。このように設定することで、リングギヤ23から離反する方向にピニオンギヤ74がピニオンスプリング11の可動量L3だけスライド移動しても、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との噛合が外れることがない。
ピニオンインナ71の一方側(図1における左側)には、出力軸4に外嵌固定された止め輪77が設けられている。これにより、ピニオンインナ71に対して出力軸4の一方側にピニオンギヤ74が抜けるのを規制している。
(電磁装置)
ハウジング17の内周面には、クラッチ機構5よりもモータ部3側に、電磁装置9を構成するヨーク25が内嵌固定されている。ヨーク25は磁性材からなる有底筒状に形成されており、底部25aの径方向中央の大部分が大きく開口されている。
また、ヨーク25の底部25aとは反対側端には、磁性材からなる円環状のプランジャホルダ26が設けられている。プランジャホルダ26の径方向内側は、軸方向の他方側に向かって延出された円筒部26aとなっている。これにより、後述するギヤプランジャ80の鉄心88との離間距離が狭くなるので、プランジャホルダ26による鉄心88の吸引力(以下、単に「吸引力」ということがある。)を上げることができる。
ヨーク25、およびプランジャホルダ26によって径方向内側に形成される収納凹部25bには、略円筒状に形成された励磁コイル24が収納されている。励磁コイル24は、コネクタを介してイグニションスイッチ(いずれも不図示)に電気的に接続されている。
励磁コイル24の内周面と出力軸4の外周面との間の空隙には、プランジャ機構37が励磁コイル24に対して軸方向にスライド移動可能に設けられている。
プランジャ機構37は、磁性材で形成された略円筒状のスイッチプランジャ27と、このスイッチプランジャ27と出力軸4の外周面との間の空隙に配置されたギヤプランジャ80とを有している。これらスイッチプランジャ27とギヤプランジャ80とは、互いに同心円上に設けられ、軸方向に相対移動可能に設けられている。また、プランジャホルダ26とスイッチプランジャ27との間には、両者を離反方向に付勢する板ばね材からなるスイッチリターンスプリング27aが配設されている。
スイッチプランジャ27のモータ部3側端には、外フランジ部29が一体成形されている。この外フランジ部29の外周部側には、スイッチシャフト30がホルダ部材30aを介して軸方向に沿って立設されている。このスイッチシャフト30は、モータ部3のトッププレート12および後述するブラシホルダ33を貫通している。スイッチシャフト30のトッププレート12から突出した端部には、ブラシ付直流モータ51のコンミテータ61に隣接配置された、スイッチユニット7の可動接点板8(請求項の「可動接点部」に相当。)が連結されている。
可動接点板8は、スイッチシャフト30に対して軸方向に沿ってスライド移動可能に取り付けられていると共に、スイッチスプリング32によって浮動的に支持されている。そして、可動接点板8は、後述のブラシホルダ33に固定されている、スイッチユニット7の固定接点板34に対して接近離反可能になっている。
固定接点板34は、スイッチシャフト30を挟んでコンミテータ61側である径方向内側に配置された第一固定接点板34aと、コンミテータ61とは反対側である径方向外側に配置された第二固定接点板34bとに分割構成されている。これら第一固定接点板34a、および第二固定接点板34bに、可動接点板8が跨るように当接するようになっている。可動接点板8が出力軸4に沿ってストロークし、第一固定接点板34aおよび第二固定接点板34bに当接することにより、第一固定接点板34aおよび第二固定接点板34bがON状態となって電気的に接続される。
また、スイッチプランジャ27の内周面には、後述するギヤプランジャ80と当接および離反するリング部材28が一体的に設けられている。リング部材28は、スイッチプランジャ27がリングギヤ23側へ向かって移動する際、初期的にギヤプランジャ80をリングギヤ23側に向かって押圧するためのものである。
クラッチ機構5のクラッチアウタ18は、リターンスプリング21によりプランジャインナ81へ向かって付勢されている。したがって、スタータ1の静止状態(図1における中心線より上側)において、クラッチ機構5は、ギヤプランジャ80およびリング部材28を介して、スイッチプランジャ27を他方側(図1における右側)に押圧している。これにより、可動接点板8は他方側に押圧されて、固定接点板34と離反したOFF状態となっている。
また、スタータ1の静止状態(図1における中心線より上側)における可動接点板8と固定接点板34との離間距離、すなわち可動接点板8がOFF状態からON状態になる際の、可動接点板8の軸方向に沿ったストローク量はL1に設定される。
ここで、可動接点板8のストローク量L1、およびリングギヤ23とピニオンギヤ74との最大離反距離L2は、
LI>L2・・・(4)
を満たすように設定されている。したがって、後述するように、電磁装置9がピニオンギヤ74と可動接点板8とを一方側(図1における左側)にスライド移動させたときに、可動接点板8がON状態となる前に、ピニオンギヤ74がリングギヤ23に当接する。
スイッチプランジャ27の径方向内側に配置されたギヤプランジャ80は、径方向内側に配置されたプランジャインナ81と、径方向外側に配置されたプランジャアウタ85と、プランジャインナ81とプランジャアウタ85との間に配置されるプランジャスプリング91と、を備えている。
プランジャインナ81は、樹脂等により略円筒形状に形成されている。プランジャインナ81の内径は、出力軸4に外挿可能なように、出力軸4の外径よりも若干大きく形成されている。これにより、プランジャインナ81は、出力軸4に対して軸方向にスライド移動可能に設けられている。
プランジャインナ81の一方側端81a(図1における左側端)は、径方向外側に張り出した外フランジ部82が一体的に形成されている。後述するようにプランジャインナ81が一方側にスライド移動したとき、プランジャインナ81の一方側端81aがクラッチアウタ18の他方側端と当接し、クラッチ機構5およびピニオン機構70を一方側にスライド移動させている。
プランジャインナ81の他方側端81b(図1における右側端)は、他方側から一方側に向かって漸次外径が大きくなる爪部83が周方向に複数個所設けられている。また、爪部83の一方側(図1における左側)には、周方向に沿って溝部84が形成されている。
プランジャアウタ85は、プランジャインナ81と同様に樹脂等により略円筒形状に形成されている。プランジャアウタ85の内径は、プランジャインナ81の外フランジ部82の外径よりも若干大きく形成されており、プランジャインナ81に外挿されている。
プランジャアウタ85の他方側端85a(図1における右側端)には、径方向内側に張り出した内フランジ部86が一体的に形成されている。内フランジ部86の内径は、プランジャインナ81の爪部83の外径よりも小さく、かつプランジャインナ81の溝部84の底部の外径よりも大きくなるように形成されている。そして、プランジャインナ81の溝部84内にプランジャアウタ85の内フランジ部86を配置することで、プランジャインナ81とプランジャアウタ85とが一体化され、プランジャ機構37が構成される。
プランジャアウタ85の内フランジ部86の厚さは、プランジャインナ81の溝部84の幅よりも薄く形成されている。これにより、プランジャアウタ85の内フランジ部86とプランジャインナ81の溝部84との間にはクリアランスが設けられる。したがって、プランジャインナ81とプランジャアウタ85とは、プランジャアウタ85の内フランジ部86とプランジャインナ81の溝部84とのクリアランス分だけ、軸方向に相対的にスライド移動可能となっている。
プランジャアウタ85の他方側端85a(図1における右側端)には、径方向外側に張り出した外フランジ部87が一体的に形成されている。外フランジ部87は、スイッチプランジャ27のリング部材28と当接する当接部として機能している。
また、外フランジ部87の一方側(図1における左側)であって、プランジャアウタ85の外周面には、リング状の鉄心88が設けられている。鉄心88は、例えば樹脂モールドにより、プランジャアウタ85と一体成型されている。鉄心88は、後述するように励磁コイル24に電流が供給されたときに発生する磁束により、所定の吸引力で電磁装置9に吸引される。
ここで、ピニオンスプリング11のばね荷重F1は、スイッチプランジャ27に生じる吸引力F3に対して、
F3>F1・・・(2)
を満たすように設定されている。
したがって、電磁装置9は、ピニオンスプリング11のばね荷重F1に抗して確実にスイッチプランジャ27を吸引し続けることができ、モータ部3への通電も継続させるようになっている。
また、(1)式および(2)式を満たすことにより、ピニオンスプリング11のばね荷重F1がリングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重F2よりも大きく設定され、電磁装置9の吸引力F3よりも小さく設定される。
すなわち、
F3>F1>F2・・・(3)
を満たすように設定されている。
したがって、電磁装置9は、ピニオンスプリング11のばね荷重F1、およびリングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重F2に抗して、確実にスイッチプランジャ27を吸引し続けることができ、モータ部3への通電も継続させるようになっている。
プランジャインナ81の外フランジ部82と、プランジャアウタ85の内フランジ部86との間には、収納部90が形成されている。収納部90には、プランジャインナ81の外周面を取り囲むように形成されたプランジャスプリング91が収納されている。
プランジャスプリング91は、収納部90に収納された状態で、プランジャインナ81の外フランジ部82と、プランジャアウタ85の内フランジ部86とにより圧縮変形させられている。そして、プランジャインナ81は一方側(図1における左側)に向かって、プランジャアウタ85は他方側(図1における右側)に向かって、互いに付勢された状態となっている。
これにより、プランジャスプリング91により、プランジャインナ81は一方側(図1における左側)に向かって、プランジャアウタ85は他方側(図1における右側)に向かって、互いに付勢されており、プランジャインナ81の一方側端81aとクラッチアウタ18の他方側端とは接しておらず、これにより、クラッチアウタ18はリターンスプリング21のばね荷重によって、ストッパ94に押し付けられた状態となっている。これにより、スタータ1の静止状態では、プランジャスプリング91のばね荷重によって、クラッチ機構5を押出さない、つまり、ピニオン機構70を不用意に押出さないように設定されている。
また、スタータ1の通電状態(図1における中心線より上側の状態)では、ギヤプランジャ80が一方側(図1における左側)に最大変位したとき、プランジャインナ81の一方側端81aは常にクラッチ機構5のクラッチアウタ18の他方側端と当接した状態となっている。
すなわち、プランジャスプリング91は、クラッチ機構5とギヤプランジャ80との間における軸方向の空隙の発生を防止し、クラッチ機構5のガタつきを吸収するガタ吸収機構を構成している。
電磁装置9および遊星歯車機構2よりも他方側(図1における右側)には、ブラシホルダ33が設けられている。ここで、第二固定接点板34bの外周側には、軸方向に折曲して一体形成された切起し部34cが設けられ、この切起し部34cの挿通孔を介して軸端子44aがブラシホルダ33の外壁33aを貫通してスタータ1の径方向外側に突出するよう設けられている。さらに、軸端子44aの突出側の先端には、バッテリの陽極が電気的に接続されるターミナルボルト44bが取付けられている。なお、このブラシホルダ33には、固定接点板34、スイッチシャフト30周りを保護するカバー45が装着されている。ブラシホルダ33およびカバー45は、モータヨーク53およびハウジング17に挟持された状態で固定されている。ブラシホルダ33には、コンミテータ61の周囲に4個のブラシ41が、径方向に沿って進退可能に配置されている。
各ブラシ41の基端側には、ブラシスプリング42が設けられている。このブラシスプリング42によって、各ブラシ41がコンミテータ61側に向かって付勢され、各ブラシ41の先端がコンミテータ61のセグメント62に摺接するようになっている。
4個のブラシ41は、2個の陽極側ブラシと2個の陰極側ブラシとで構成され、このうち2個の陽極側ブラシが不図示のピグテールを介して固定接点板34の第一固定接点板34aに接続されている。一方、固定接点板34の第二固定接点板34bには、ターミナルボルト44bを介して不図示のバッテリの陽極が電気的に接続される。
すなわち、固定接点板34に可動接点板8が当接した際、ターミナルボルト44b、固定接点板34およびピグテール(不図示)を介して4個のブラシ41のうちの2個の陽極側ブラシに電圧が印加され、コイル59に電流が供給されるようになっている。
また、4個のブラシ41のうち、2個の陰極側ブラシは、不図示のピグテールを介してリング状のセンタープレートに接続されている。そして、このセンタープレート、ハウジング17、および不図示の車体を介して、バッテリの陰極に4個のブラシ41のうちの2個の陰極側ブラシが電気的に接続されるようになっている。
(スタータの動作)
続いて、図面を用いてスタータ1の動作について説明をする。
図1における中心線の上側の状態に示すように、励磁コイル24に電流を供給する前のスタータ1の静止状態にあっては、リターンスプリング21に付勢されたクラッチアウタ18が、ピニオンギヤ74と一体化されているクラッチインナ22を引っ張った状態で、モータ部3側(図1における右側)へ一杯に付勢されている。そして、クラッチ機構5のクラッチアウタ18がストッパ94に当接した位置で停止しており、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが最大離反距離L2を有した状態で結合が断たれている。
また、スタータ1の静止状態では、プランジャインナ81の一方側端81aとクラッチアウタ18の他方側端とは僅かにクリアランスをもった状態とされ、これにより、クラッチアウタ18はリターンスプリング21のばね荷重によって、ストッパ94に押し付けられた状態となっている。これにより、スタータ1の静止状態では、プランジャスプリング91のばね荷重によって、クラッチ機構5を押圧しない、つまり、不用意にピニオン機構70をリングギヤ23側に押出さないように設定されている。
また、スイッチプランジャ27は、スイッチリターンスプリング27aにより押し戻され、モータ部3側(図1における右側)へ一杯に移動している。そして、スイッチプランジャ27の外フランジ部29がトッププレート12に当接した状態で停止している。さらに、外フランジ部29に立設されているスイッチシャフト30の可動接点板8は、固定接点板34に対して距離L1(すなわち可動接点板8のストローク量L1)だけ離間しており、電気的に切断されている。
図2は、スイッチプランジャ27の移動直後の説明図であり、図2(a)は、スタータ1の動作説明図であり、図2(b)は、ピニオンギヤ74の動作説明図である。なお、図2(b)は、ピニオンギヤ74およびリングギヤ23を径方向から見たときの模式図となっている。また、図2(b)において、移動前のピニオンギヤ74を二点鎖線で図示している。
この状態から車両のイグニションスイッチ(不図示)をオンすると、励磁コイル24に電流が供給されて励磁され、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80を磁束が通る磁路が形成される。これにより、図2(a)に示すように、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側(図2における左側)へ向かってスライド移動する。
図1に示すように、スタータ1の静止状態において、スイッチプランジャ27とプランジャホルダ26とのギャップ(軸方向クリアランス)は、ギヤプランジャ80の鉄心88とプランジャホルダ26とのギャップ(軸方向クリアランス)よりも小さく設定されている。このため、スイッチプランジャ27に発生する吸引力F3は、ギヤプランジャ80に発生する吸引力よりも大きいので、ギヤプランジャ80に先行してスイッチプランジャ27がスライド移動しようとする。
このとき、スイッチプランジャ27の内周面にリング部材28が一体的に設けられていることから、このリング部材28がギヤプランジャ80を押圧し、初期的にギヤプランジャ80をリングギヤ23側に向かって押圧することで、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80が一体となってリングギヤ23側へ向かってスライド移動する。
また、クラッチアウタ18は、出力軸4にヘリカルスプライン噛合されており、スリーブ18aがギヤプランジャ80のプランジャインナ81と当接している。ここで、出力軸4のヘリカルスプライン19およびクラッチアウタ18のヘリカルスプライン18bの傾斜角度は、軸方向に対して例えば16°程度に設定されている。したがって、図2(a)に示すように、クラッチアウタ18は、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側へスライド移動すると、出力軸4に対して、ヘリカルスプライン18bの傾斜角度分、若干相対回転しながら押出される。さらに、ピニオン機構70も、クラッチ機構5を介してギヤプランジャ80のスライド移動に連動し、リングギヤ23側へ押出される。
ピニオンギヤ74は、図2(b)に示すように、リングギヤ23側にリングギヤ23とピニオンギヤ74との最大離反距離L2だけ一方側(図2における左側)に移動する。そして、ピニオンギヤ74の一方側端面74bとリングギヤ23の他方側(図2(b)における右側)端面23aとが当接するか、または両者間の軸方向寸法距離がゼロの状態となっている。
また、このとき、スイッチプランジャ27はギヤプランジャ80と一体となってリングギヤ23側へ向かってスライド移動するため、スイッチプランジャ27およびこれと連動する可動接点板8も、L2だけ一方側(図2における左側)に移動する。
ここで、可動接点板8のストローク量L1、およびリングギヤ23とピニオンギヤ74との最大離反距離L2は、
LI>L2・・・(4)
を満たすように設定されている。したがって、ピニオンギヤ74との最大離反距離L2だけ一方側(図2における左側)に移動したときであっても、可動接点板8と固定接点板34との間に、L1とL2との差に等しいクリアランスCを有した状態で、可動接点板8がOFF状態となっている。すなわち、可動接点板8がON状態となる前に、ピニオンギヤ74の一方側端面74bとリングギヤ23の他方側(図2(b)における右側)端面23aとが当接するか、または両者間の軸方向寸法距離がゼロの状態となる。
図3は、可動接点板8と固定接点板34とが当接したときの説明図であり、図3(a)は、スタータ1の動作説明図であり、図3(b)は、ピニオンギヤ74の動作説明図である。
さらにスイッチプランジャ27が吸引されてリングギヤ23側へ向かってスライド移動すると、図3(a)に示すように、可動接点板8のストローク量がL1となって、固定接点板34に接触する。可動接点板8は、スイッチシャフト30に対して軸方向変位可能に浮動支持されているので、スイッチスプリング32の押圧力が可動接点板8および固定接点板34に加わることになる。
このとき、ピニオンギヤ74の一方側端面74bとリングギヤ23の他方側端面23aとは、互いに当接するか、または両者間の軸方向寸法距離がゼロの状態となっている(図2(b)参照)。このため、ピニオンギヤ74の一方側端面74bとリングギヤ23の他方側端面23aとが互いに当接していた場合には、ピニオン機構70がスイッチプランジャ27によってさらに押出されると、ピニオンスプリング11が縮む。これにより、ピニオンギヤ74の一方側端面74bは、リングギヤ23の他方側端面23aに向かって付勢される。すなわち、ピニオンスプリング11は、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが当接したときのスラスト荷重を吸収するダンパ機構を構成している。したがって、ピニオンギヤ74の一方側端面74bとリングギヤ23の他方側端面23aとが互いに当接していた状態であっても、スイッチプランジャ27を所定の位置にまで押出すことができるとともに、ピニオンギヤ74の一方側端面74bおよびリングギヤ23の他方側端面23aの摩耗を抑制でき、スタータ1の耐久性向上を図ることができる。
さらに、このとき、ピニオンギヤ74とクラッチ機構5とは、ピニオンスプリング11が縮むことにより、相対的に近接するようにスライド移動する。そして、ピニオンギヤ74がピニオンスプリング11の可動量L3だけ他方側にスライド移動すると、ピニオンギヤ74の延長筒部74dと、クラッチインナ22の規制段差部22bとが当接して第一規制部97が機能する。これにより、ピニオンギヤ74とクラッチ機構5との相対スライド移動量が規制される。
ここで、クラッチカバー6の補強筒部67は、第一規制部97を構成する延長筒部74dおよび規制段差部22bよりも径方向外側に配置されている。したがって、クラッチカバー6の補強筒部67と第一規制部97とが干渉することなく、ピニオンスプリング11によるダンパ機構が機能できる。
続いて、図3(a)に示すように、固定接点板34に可動接点板8が接触すると、4個のブラシ41のうちの2個の陽極側ブラシにバッテリ(不図示)の電圧が印加され、コンミテータ61のセグメント62を介してコイル59が通電される。
すると、アーマチュアコア58に磁界が発生し、この磁界とモータヨーク53に設けられている永久磁石57との間で磁気的な吸引力や反発力が生じる。これにより、アーマチュア54が回転し始める。そして、アーマチュア54が回転することにより、このアーマチュア54の回転軸52の回転力(モータ部3の回転力)が遊星歯車機構2を介して出力軸4に伝達され、出力軸4が回転し始める。
出力軸4が回転し始めると、ピニオンギヤ74の一方側端面74bとリングギヤ23の他方側端面23aとが当接していた場合には、その当接状態(図2(b)参照)が解除される。そして、図3(b)に示すように、ピニオンスプリング11の付勢力により、ピニオンギヤ74がリングギヤ23側に押出され、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが噛合し始める。
ここで、ピニオンスプリング11のばね荷重F1は、スイッチプランジャ27に生じる吸引力F3に対して、
F3>F1・・・(2)
を満たすように設定されている。
したがって、電磁装置9は、スイッチプランジャ27を吸引した状態で、モータ部3への通電も継続させるようになっている。
図4は、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが噛合したときの説明図であり、図4(a)は、スタータ1の動作説明図であり、図4(b)は、ピニオンギヤ74の動作説明図である。
出力軸4の回転速度が上昇すると、出力軸4のヘリカルスプライン19に噛合されたクラッチアウタ18に慣性力が作用する。このとき、前述のように、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とがヘリカル噛合していることから、ピニオンギヤ74にリングギヤ23方向(飛び込み方向)へのスラスト荷重が発生する。そして、このスラスト荷重によってピニオンギヤ74はヘリカルスプライン19に沿うように、リターンスプリング21の付勢力に抗してリングギヤ23側(図4における左側)へ向かって移動する。また、図4(a)に示すように、クラッチアウタ18も、慣性力によってヘリカルスプライン19に沿うように、リターンスプリング21の付勢力に抗してリングギヤ23側(図4における左側)へ向かって押し出される。
このとき、ギヤプランジャ80には、リングギヤ23側へ向かう所定の吸引力が作用している。したがって、ギヤプランジャ80は、クラッチアウタ18のスライド移動に連動するように、クラッチアウタ18を押圧しつつリングギヤ23側へ向かってスライド移動する。これにより、図4(b)に示すように、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが所定の噛み合い位置で噛合する。
ここで、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とはヘリカル噛合しているため、出力軸4の回転力をピニオンギヤ74からリングギヤ23に伝達すると、ピニオンギヤ74には一方側(図4における左側)に向かってスラスト荷重が発生する。ピニオンギヤ74に発生したスラスト荷重は、ピニオンギヤ74の一方側に設けられた止め輪77に伝達された後、ピニオンインナ71、クラッチインナ22、クラッチアウタ18および移動規制部20、サークリップ20aを介して、出力軸4に伝達される。このため、出力軸4には一方側(図5における左側)に向かってスラスト荷重が発生し、一方側に向かってスライド移動する。
しかし、図2に示すように、ハウジング17の底部17cには、荷重受部材50が設けられている。これにより、出力軸4は、一方側端面4cが荷重受部材50に当接し、出力軸4の一方側(図5における左側)へのスライド移動が規制され、これにより、出力軸4に加わるスラスト荷重を効果的に受けることができる。
一方、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との噛合後、エンジン始動時におけるクランキングの際には、リングギヤ23の回転速度に変動が生じる。これにより、ピニオンギヤ74には一方側(図4における左側)および他方側(図4における右側)に向かってスラスト荷重が発生する。具体的には、リングギヤ23の回転速度がピニオンギヤ74の回転速度よりも低いときには、ピニオンギヤ74にはリングギヤ23に接近する方向(図4における左側)にスラスト荷重が発生する。また、リングギヤ23の回転速度がピニオンギヤ74の回転速度よりも高いときには、ピニオンギヤ74にはリングギヤ23から離反する方向(図4における右側)にスラスト荷重F2が発生する。
特に、アイドルストップ機能を備えた車両においては、エンジンの停止/始動が頻繁に行われ、一般のスタータよりも使用頻度が高まるため、上述のようなスラスト荷重が頻繁に発生する。
しかし、ピニオンスプリング11のばね荷重F1は、リングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重F2に対して、
F1>F2・・・(1)
を満たすように設定されている。
したがって、ピニオンスプリング11は、スラスト荷重F2に抗してピニオンギヤ74をリングギヤ23側に押圧できる。これにより、ピニオンギヤ74にリングギヤ23から離反する方向にスラスト荷重F2が発生しても、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とのヘリカル噛合が解除されることなく、適切な安定したヘリカル噛合状態を維持できる。
また、ピニオンギヤ74に発生したスラスト荷重は、ピニオンギヤ74の一方側に設けられた止め輪77に伝達された後、ピニオンインナ71、クラッチインナ22、クラッチワッシャ64を介してクラッチカバー6の底壁66に伝達される。しかし、底壁66には補強筒部67が一体的に形成されているので、クラッチカバー6の軸方向への変形が抑制される。
エンジンが始動し、ピニオンギヤ74の回転速度が出力軸4の回転速度を上回ると、クラッチ機構5のワンウェイクラッチ機能が作用してピニオンギヤ74が空転する。また、エンジンが始動に伴って励磁コイル24への通電を停止すると、クラッチアウタ18に対するリターンスプリング21の付勢力により、ピニオンギヤ74がリングギヤ23から離脱すると共に、可動接点板8が固定接点板34から離反してブラシ付直流モータ51が停止する。
(効果)
本実施形態によれば、
F1>F2・・・(1)
を満たし、ピニオンスプリング11のばね荷重F1がリングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重F2よりも大きく設定されるので、ピニオンスプリング11は、スラスト荷重F2に抗してピニオンギヤ74をリングギヤ23側に押圧できる。これにより、ピニオンギヤ74にリングギヤ23から離反する方向にスラスト荷重F2が発生しても、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とのヘリカル噛合が解除されることなく、ヘリカル噛合を維持できる。したがって、ピニオン機構70にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが、安定した適切なヘリカル噛合状態を維持できる。
また、本実施形態によれば、
F3>F1・・・(2)
を満たし、ピニオンスプリング11のばね荷重F1が電磁装置9の吸引力F3よりも小さく設定されるので、電磁装置9は、ピニオンスプリング11のばね荷重F1に抗して確実にスイッチプランジャ27を吸引し続け、モータ部3への通電も継続させることができる。したがって、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との噛合時における衝撃を吸収しつつ、安定した噛合を実現できる。
また、(1)式および(2)式を満たすことにより、ピニオンスプリング11のばね荷重F1がリングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重F2よりも大きく設定され、電磁装置の吸引力F3よりも小さく設定される。
すなわち、
F3>F1>F2・・・(3)
を満たし、電磁装置の吸引力F3が最も大きくなるので、電磁装置9は、ピニオンスプリング11のばね荷重F1、およびリングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重F2に抗して、確実にスイッチプランジャ27を吸引し続け、モータ部3への通電も継続させることができる。これにより、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との噛合時における衝撃を吸収しつつ、安定した噛合を実現できる。さらに、エンジン始動時にピニオンギヤ74とリングギヤ23との間に回転速度差に基づいて、リングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重F2が発生しても、確実にスイッチプランジャ27を吸引し、モータ部3への通電も継続させることができる。
したがって、ピニオン機構70にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが、さらに安定した適切なヘリカル噛合状態を維持できる。
また、本実施形態によれば、
LI>L2・・・(4)
を満たし、可動接点板8のストローク量L1がピニオンギヤ74とリングギヤ23との最大離反距離L2よりも大きく設定されているので、電磁装置9がピニオンギヤ74と可動接点板8とをスライド移動させたときに、可動接点板8がON状態となる前に、ピニオンギヤ74をリングギヤ23に当接させることができる。ここで、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが噛合位相がずれていた場合には、ピニオンギヤ74が回転することなくピニオンスプリング11が弾性変形してダンパ機構が機能するので、ピニオンギヤ74およびリングギヤ23が摺接することなく当接時の衝撃を吸収できる。したがって、ピニオンギヤ74およびリングギヤ23の摩耗を抑制できるので、スタータ1の耐久性を向上できる。
さらに、
L4>L3・・・(5)
を満たし、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との最大噛み合い代L4がピニオンスプリング11の可動量L3よりも大きく設定されているので、スラスト荷重によりピニオンスプリング11が弾性変形して可動量L3だけ変位し、リングギヤ23から離反する方向にピニオンギヤ74がL3だけスライド移動しても、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との噛合を確保できる。したがって、ピニオン機構70にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との安定した適切なヘリカル噛合状態を確実に維持できる。
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
実施形態では、電磁装置9を、励磁コイル24と、プランジャ機構37と、スイッチユニット7とを備えた構成とし、プランジャ機構37と出力軸4とを同軸的に配置した、いわゆる一軸式のスタータ1について説明した。
しかしながら、本発明の適用は一軸式のスタータ1に限られることはなく、ピニオン機構70を進退動作させることができる構成を含むスタータであれば、本発明を適用することが可能である。例えば、電磁装置(プランジャ機構37)と出力軸4とを異なる軸上に配置した、いわゆる二軸式のスタータや、電磁装置(プランジャ機構37)の軸と回転軸52と出力軸4とを異なる軸上に配置した、いわゆる三軸式のスタータ等、様々な形式のスタータに本発明を適用してもよい。
実施形態では、出力軸4にヘリカルスプライン19を形成し、クラッチアウタ18にヘリカルスプライン18bを形成して、クラッチ機構5を出力軸4にヘリカルスプライン噛合することにより、クラッチ機構5を出力軸4に対して軸方向にスライド移動可能としている場合について説明した。このときの、出力軸4のヘリカルスプライン19およびクラッチアウタ18のヘリカルスプライン18bの傾斜角度は、軸方向に対して16°程度に設定されていたが、これに限定されることはない。出力軸4のヘリカルスプライン19およびクラッチアウタ18のヘリカルスプライン18bの軸方向に対する傾斜角度は、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側へスライド移動し始めたとき、クラッチアウタ18が出力軸4に対して若干相対回転しながら押出されるように設定されていればよい。
実施形態では、ピニオンインナ71の先端側に、スプライン73が形成されている一方、ピニオンギヤ74の内周面の先端側に、スプライン73に噛合うスプライン74aが形成されていた。これにより、ピニオンインナ71とピニオンギヤ74とは、互いに相対回転不能かつ軸方向にスライド移動可能に設けられていた。
しかしながら、上述のように、ピニオンインナ71とピニオンギヤ74とをスプライン噛合によりスライド移動可能に形成する場合に限られない。例えば、ピニオンインナ71にキーを設ける一方、ピニオンギヤ74にキー溝を設け、ピニオンインナ71とピニオンギヤ74とをスライド移動可能に形成してもよい。
実施形態では、自動車の始動用に用いられるスタータ1を例に挙げて説明をしているが、スタータ1の適用は自動車に限定されることはなく、例えば自動二輪車等に適用してもよい。
また、実施形態のスタータ1は、上述のように、ピニオン機構70にダンパ機構を設けるとともに、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが安定してヘリカル噛合できる。したがって、スタータ1が適用される自動車の中でも、特にスタータ1の使用頻度の高いアイドリングストップ機能を備えた自動車に好適である。
1 スタータ
3 モータ部
4 出力軸
5 クラッチ機構
8 可動接点板(可動接点部)
9 電磁装置
11 ピニオンスプリング
23 リングギヤ
24 励磁コイル
70 ピニオン機構
71 ピニオンインナ
74 ピニオンギヤ
80 ギヤプランジャ

Claims (4)

  1. モータ部の回転力を受けて回転する出力軸と、
    前記出力軸上にスライド移動可能に設けられ、エンジンのリングギヤとヘリカル噛合可能なピニオン機構と、
    前記モータ部への通電、遮断を行うと共に、前記ピニオン機構に前記リングギヤ側へ向かう押圧力を付勢する電磁装置と、
    を備えたスタータであって、
    前記ピニオン機構は、
    出力軸に外挿され、前記出力軸に沿ってスライド移動可能なピニオンインナと、
    前記ピニオンインナの径方向外側に、前記ピニオンインナと同心円状に設けられ、前記リングギヤとヘリカル噛合可能なピニオンギヤと、
    前記ピニオンインナと前記ピニオンギヤとの間に配置され、前記ピニオンギヤと前記リングギヤとがヘリカル噛合したときの衝撃を吸収するピニオンスプリングと、
    を備え、
    前記ピニオンギヤは、前記リングギヤとのヘリカル噛合時に、前記リングギヤの回転速度が前記ピニオンギヤの回転速度よりも高い場合には、前記リングギヤから離反する方向にスラスト荷重が発生するように形成され、
    かつ、前記ピニオンスプリングのばね荷重をF1とし、
    前記スラスト荷重をF2としたとき、
    前記ピニオンスプリングのばね荷重F1は、
    F1>F2
    を満たすように設定されていることを特徴とするスタータ。
  2. 前記電磁装置は、
    励磁コイルと、
    前記出力軸と同軸的に設けられるとともに、前記励磁コイルへの通電に基づいて前記出力軸に沿ってスライド移動し、前記ピニオン機構に押圧力を付勢するギヤプランジャを吸引するとともに、前記モータ部に通電を行うスイッチプランジャと、
    を備え、
    前記電磁装置の前記励磁コイルへの通電で発生した磁界により、前記スイッチプランジャに生じる吸引力をF3とすると、
    前記ピニオンスプリングのばね荷重F1は、
    F3>F1
    を満たすように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のスタータ。
  3. 前記電磁装置は、前記励磁コイルへの通電に基づいて前記出力軸に沿ってスライド移動し、前記モータ部への電力の供給を断続する可動接点部を備え、
    前記可動接点部がOFF状態からON状態になる際の前記可動接点部のストローク量をL1とし、
    前記ピニオンギヤと前記リングギヤとの最大離反距離をL2とし、
    前記ピニオンスプリングの可動量をL3とし、
    前記ピニオンギヤと前記リングギヤとの最大噛み合い代をL4とすると、
    前記ストローク量L1、前記最大離反距離L2、前記可動量L3、および前記最大噛み合い代L4は、
    LI>L2、かつL4>L3
    を満たすように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスタータ。
  4. 前記電磁装置は、
    励磁コイルと、
    前記励磁コイルへの通電に基づいて前記出力軸に沿ってスライド移動し、前記クラッチ機構に押圧力を付勢するギヤプランジャと、
    を備え、
    前記出力軸と同軸的に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスタータ。
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