以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明者らは、上記課題を解決するために配向制御の観点で種々の化合物を含有する光学フィルムについて鋭意検討した結果、驚くべきことに、2個以上の脂環式炭化水素基または非芳香族ヘテロ環基が連結した末端にベンゼン環を有し、該ベンゼン環に特定の置換基を有する化合物を光学フィルムに含有させることによって、良好な波長分散性を示し、ブリードアウト耐性が良好なフィルムが得られることを見出した。また、該光学フィルムを用いることで、色ムラが少なく、耐久性に優れる偏光板及び液晶表示装置が得られることを見出した。
すなわち、本発明の一形態は、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする、光学フィルムに関する。
なお、本発明の構成とすることにより上述した作用効果が発揮される詳細な理由は明らかにはなっていないが、該化合物の脂環式炭化水素基または非芳香族ヘテロ環基とベンゼン環とが連結した部分が、セルロースエステルと高度に配向し、ベンゼン環に特定の置換基を有することで、配向軸と直交方向の屈折率が制御されるためだと考えられる。また、該化合物は非対称な構造をしているために、フィルム中で凝集しにくく、ブリードアウト耐性に優れると考えられる。
<一般式(1)で表される化合物の説明>
本発明における光学フィルムは、前記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
前記一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R1及びR2で表される置換基としては、特に制限はないが、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、シクロアルケニル基(2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、アルキニル基(エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等)、ヘテロ環基(2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基等)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、アシルオキシ基(ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等)、アミノ基(アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、アシルアミノ基(ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等)、スルファモイル基(N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’フェニルカルバモイル)スルファモイル基等)、スルホ基、アシル基(アセチル基、ピバロイルベンゾイル基等)、カルバモイル基(カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等)等の各基が挙げられる。これらの置換基は、構造上可能である限り、同様の置換基によって更に置換されていてもよい。
前記一般式(1)において、R3は水素原子または「環構造を有さない置換基」を表す。R3で表される「環構造を有さない置換基」としては、特に制限はないが、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(エチニル基、プロパルギル基等)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等)、アシルオキシ基(ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基等)、アミノ基(アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、アシルアミノ基(ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基等)、アルキルスルホニルアミノ基(メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等)、スルファモイル基(N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基等)、スルホ基、アシル基(アセチル基等)、カルバモイル基(カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等)等の各基が挙げられる。これらの置換基は、構造上可能である限り、同様の置換基によって更に置換されていてもよい。
前記一般式(1)において、Lは単結合または2価の連結基を表す。Lで表される2価の連結基としては、具体的には、2価のアルキル基(メチレン基、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基等)、−NR4−、−O−、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−またはこれらの基の組み合わせから選ばれる2価の連結基を挙げることができる。Lで表わされる2価のアルキル基は置換基を有してもよく、置換基としては特に制限はないが、例えば、前記一般式(1)においてR1で表される置換基と同様の基を挙げることができる。Lは、単結合、2価のアルキル基、−NR4−、−O−、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−またはこれらの基を2〜3個組み合わせた2価の連結基であることが好ましく、単結合、メチレン基、−NR4−、−O−、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−またはこれらの基を2個組み合わせた2価の連結基であることがより好ましい。
なお、前記一般式(1)においてLが−NR4−である場合、R4は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。R4がアルキル基を表すとき、アルキル基としては、例えば、前記一般式(1)においてR1が表すアルキル基の例として説明した基と同様の基を挙げることができ、更に、これらの基は置換基を有してもよく、該置換基としては、例えば、前記一般式(1)においてR1が表すアルキル基が有してもよい置換基と同様の基を挙げることができる。
前記一般式(1)において、Aは2価の脂環式炭化水素基または2価の非芳香族ヘテロ環基を表す。該脂環式炭化水素基または非芳香族ヘテロ環基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のフルオロアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよい。Aで表される2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、下記の構造を有する基が挙げられる。
上記の構造を有する2価の脂環式炭化水素基は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等等の炭素数1〜4のフルオロアルキル基;トリフルオロメトキシ基等の炭素数1〜4のフルオロアルコキシ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
Aとしては、セルロースエステルとの配向性が高くなり、良好な波長分散性が得られるという観点から、6員環の脂環式炭化水素基が好ましく、1,4−シクロヘキシレン基がさらに好ましく、trans−1,4−シクロへキシレン基が特に好ましい。
前記一般式(1)において、nは2以上の整数を表す。したがって、一般式(1)にはLおよびAがそれぞれ複数個存在することになるが、当該複数個のLどうしや、当該複数個のAどうしは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。また、nが大きいほど、一般式(1)で表される化合物がセルロースエステルと配向しやすくなるため好ましいが、nが大きくなりすぎると、セルロースエステルとの相溶性及びブリードアウト耐性が悪くなる。このため、nは3〜7の整数であることが好ましく、3〜6の整数であることがより好ましい。nが1以下の整数の場合は、前記一般式(1)で表わされる化合物がセルロースエステルと配向しにくくなるため、波長分散性を制御することができない。
前記一般式(1)において、Wa及びWbは水素原子又は置換基を表す。また、
(i)Wa及びWbが互いに結合して環を形成するか、
(ii)Wa及びWbの少なくとも一つが環構造を有するか、
のいずれかの条件を満たすことが必要である。
前記一般式(1)における「ベンゼン環−L−A」が連結した部分は、セルロースエステルと配向するため、Wa及びWbはセルロースエステルの配向軸と直交する方向に位置すると考えられる。したがって、Wa及びWbが前記条件(i)又は(ii)を満たすことで、セルロースエステルの配向軸と直交する方向の屈折率を制御することができ、逆波長分散性を付与できると考えられる。
Wa及びWbで表される置換基としては、前記条件(i)または(ii)を満たせば特に制限はないが、例えば、前記一般式(1)においてR1が表す置換基の例として説明した基と同様の基を挙げることができ、更に、これらの基は置換基を有してもよく、該置換基としては、例えば、前記一般式(1)においてR1が表す置換基が有してもよい置換基と同様の基を挙げることができる。
「(i)Wa及びWbが互いに結合して環を形成する」場合のベンゼン環を含む構造の具体例としては、以下のような構造が挙げられる。
上記構造において、Ri、Riiはそれぞれ水素原子又は置換基を表す。Ri、Riiで表される置換基としては、例えば、前記一般式(1)においてR1が表す置換基の例として説明した基と同様の基を挙げることができ、更に、これらの基は置換基を有してもよく、該置換基としては、例えば、前記一般式(1)においてR1が表す置換基が有してもよい置換基と同様の基を挙げることができる。
「(i)Wa及びWbが互いに結合して環を形成する」場合、前記一般式(1)で表される化合物は、良好な波長分散性が得られるという観点から、好ましくは下記一般式(2)で表される化合物である。
前記一般式(2)において、Q1及びQ2はそれぞれ独立に、−O−、−S−、−NRy−(Ryは水素原子または置換基を表す)、−N=、−CO−、―CRaRb−(Ra及びRbは水素原子または置換基を表す)、または−CRc=(Rcは水素原子または置換基を表す)を表す。ここで、Ry、Ra、Rbで表される置換基としては、特に制限はないが、例えば、前記一般式(1)においてR1が表す置換基の例として説明した基と同様の基を挙げることができ、更に、これらの基は置換基を有してもよく、該置換基としては、例えば、前記一般式(1)においてR1が表す置換基が有してもよい置換基と同様の基を挙げることができる。
前記一般式(2)において、YはQ1及びQ2と共に環を形成する非金属原子群を表す。
前記一般式(2)において、R1、R2、R3、L、A、およびnは前記一般式(1)におけるR1、R2、R3、L、A、およびnと同義である。
前記一般式(2)で表わされる化合物は、含窒素5員環であることが好ましく、下記一般式(4)で表される化合物であることが、良好な波長分散性が得られるという観点から特に好ましい。
前記一般式(4)において、Q5は−O−、−S−、−NRz−(Rzは水素原子又は置換基を表す)、−CRcRd(Rc及びRdは水素原子又は置換基を表す)、又は−CO−を表す。Rz、Rc、Rdで表わされる置換基としては、特に制限はないが、例えば、前記一般式(1)においてR1が表す置換基の例として説明した基と同様の基を挙げることができ、更に、これらの基は置換基を有してもよく、該置換基としては、例えば、前記一般式(1)においてR1が表す置換基が有してもよい置換基と同様の基を挙げることができる。
前記一般式(4)において、Xはアリール基またはヘテロ環基を表す。Xで表わされるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。ヘテロ環基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも一つ含むヘテロ環基が挙げられ、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基が好ましい。
これらのアリール基又はヘテロ環基は、少なくとも一つの置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基等が挙げられる。
前記一般式(4)において、R1、R2、R3、L、A、およびnは前記一般式(1)におけるR1、R2、R3、L、A、およびnと同義である。
「(ii)Wa及びWbの少なくとも一つが環構造を有する」場合のベンゼン環を含む構造の具体例としては、以下のような構造が挙げられる。
上記構造において、Ri、Riiはそれぞれ水素原子又は置換基を表す。Ri、Riiで表される置換基としては、例えば、前記一般式(1)においてR1が表す置換基の例として説明した基と同様の基を挙げることができ、更に、これらの基は置換基を有してもよく、該置換基としては、例えば、前記一般式(1)においてR1が表す置換基が有してもよい置換基と同様の基を挙げることができる。
「(ii)Wa及びWbの少なくとも一つが環構造を有する」場合、前記一般式(1)で表される化合物は、良好な波長分散性が得られるという観点から、好ましくは下記一般式(3)で表される化合物である。
前記一般式(3)において、Q3は=N−、又は=CRz−(Rzは水素原子又は置換基を表す)を表し、Q4は第14〜16族の非金属原子を表し、ZはQ3及びQ4と共に環を形成する非金属原子群を表す。Q3、Q4及びZから形成される環は、更に別の環と縮環していてもよい。Q3、Q4及びZから形成される環上の任意の水素原子は、置換基で置換されていてもよく、該置換基としては、例えば、前記一般式(1)においてR1が表す置換基の例として説明した基と同様の基を挙げることができ、更に、これらの基は置換基を有してもよく、該置換基としては、例えば、前記一般式(1)においてR1が表す置換基が有してもよい置換基と同様の基を挙げることができる。
Q3、Q4及びZから形成される環としては、ベンゼン環で縮環した含窒素5員環又は6員環であることが、良好な波長分散性が得られるため、好ましい。かような構造としては、具体的には、下記の構造が挙げられる。
上記構造において、Ri、Riiはそれぞれ水素原子又は置換基を表す。Ri、Riiで表される置換基としては、例えば、前記一般式(1)においてR1が表す置換基の例として説明した基と同様の基を挙げることができ、更に、これらの基は置換基を有してもよく、該置換基としては、例えば、前記一般式(1)においてR1が表す置換基が有してもよい置換基と同様の基を挙げることができる。
前記一般式(3)において、R1、R2、R3、L、A、およびnは前記一般式(1)におけるR1、R2、R3、L、A、およびnと同義である。
以下に、前記一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明で用いることができる前記一般式(1)で表される化合物は、以下の具体例によって何ら限定されることはない。
前記一般式(1)で表される化合物は既知の合成方法を参照して合成することができる。例えば、例示化合物1は以下のスキームによって合成することができる。
(化合物(a)の合成)
トランス−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸125g(867mmol)、炭酸カリウム143.8g(1.04mol)、ベンジルブロミド140.87g(824mmol)及びジメチルアセトアミドを混合した。得られた混合液を窒素雰囲気下、80℃まで昇温して攪拌し、放冷後、水及びメチルイソブチルケトン/ヘプタン(重量比3/2)からなる溶液中に注いだ。得られた溶液を攪拌後、水層を除去、さらに有機層を純水で洗浄した。有機層を乾燥、濾過後、残渣にヘプタンを加えて得られた個体を濾過、真空乾燥して、ベンジルエステル体(化合物(a))を150g得た。収率はトランス−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸基準で75%であった。
(化合物(b)の合成)
化合物(a)30g(128mmol)、トランス−4−ブチルシクロヘキサンカルボン酸23.6g(128mmol)、N、N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド29.08g(141mmol)、N、N−ジメチルアミノピリジン6.26g(51.2mmol)及び脱水クロロホルム60mlを混合した。得られた混合液を窒素雰囲気、40℃下で攪拌し、その後室温で攪拌した。得られた反応溶液にヘプタンを加え、生成した沈殿を濾過し、濾液を回収した。濾液を塩酸で洗浄した。回収した有機層を乾燥、濾過後、残渣に、メタノールを加えて加熱して溶解解した後、メタノール溶液を放冷し、再結晶させ、化合物(h)を32.0g得た。収率は化合物(a)基準で62%であった。
(化合物(c)の合成)
化合物(b)32.0g(80mmol)及び2−プロパノール150mlを混合した。得られた溶液に酢酸(触媒量、0.7g)及びパラジウム−炭素6.40gを加えて、窒素雰囲気下で攪拌した。反応溶液を減圧してから、水素雰囲気下で攪拌し、窒素置換した後、溶液をセライト濾過し、残渣を純水で洗浄後、真空乾燥して、化合物(c)を24.0g得た。収率は化合物(b)基準で97%であった。
(化合物(d)の合成)
化合物(a)30g(128mmol)、化合物(c)39.74g(128mmol)、N、N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド29.08g(141mmol)、N、N−ジメチルアミノピリジン6.26g(51.2mmol)及び脱水クロロホルム60mlを混合した。得られた混合液を窒素雰囲気、40℃下で攪拌し、その後室温で攪拌した。得られた反応溶液にヘプタンを加え、生成した沈殿を濾過し、濾液を回収した。濾液を塩酸で洗浄した。回収した有機層を乾燥、濾過後、残渣に、メタノールを加えて加熱して溶解解した後、メタノール溶液を放冷し、再結晶させ、化合物(d)を39.1g得た。収率は化合物(a)基準で58%であった。
(化合物(e)の合成)
化合物(d)42.14g(80mmol)及び2−プロパノール150mlを混合した。得られた溶液に酢酸(触媒量、0.7g)及びパラジウム−炭素6.40gを加えて、窒素雰囲気下で攪拌した。反応溶液を減圧してから、水素雰囲気下で攪拌し、窒素置換した後、溶液をセライト濾過し、残渣を純水で洗浄後、真空乾燥して、化合物(e)を33.53g得た。収率は化合物(d)基準で96%であった。
(例示化合物1の合成)
Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters.,9,327−332(1999)に記載された方法で、2−フェニル−4−ヒドロキシベンゾチアゾールを合成した。2−フェニル−4−ヒドロキシベンゾチアゾール0.91g(4.0mmol)、化合物(e)1.92g(4.4mmol)、4−ジメチルアミノピリジン0.055g(0.45mmol)、及びクロロホルム87gを混合し、続いてN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)1.0g(4.85mmol)をクロロホルム22gに溶解させた溶液を、滴下し攪拌した。析出した固体を濾別した後、塩酸で洗浄し、回収した有機層に減圧下でメタノールを添加し、固形物を取得した。取得した固形物は、メタノールで洗浄し、例示化合物1を2.27g得た。収率は2−フェニル−4−ヒドロキシベンゾチアゾール基準で88%であった。
また、例示化合物6は以下のスキームによって合成することができる。
(化合物(f)の合成)
サリチルアルデヒド12.21g(100mmol)、2−アミノベンゼンチオール14.27g(114mmol)及びジメチルスルホキシド(DMSO)50mlを混合した。得られた混合液を窒素雰囲気下で、145℃まで昇温し、4時間加熱攪拌した。放冷後、純水を100ml加え、析出した固体を濾別し、純水で洗浄した。得られた固体を真空乾燥した後、ジクロロメタンで再結晶し、化合物(f)を18.64g得た。収率はサリチルアルデヒド基準で82%であった。
(例示化合物6の合成)
化合物(f)0.91g(4.0mmol)、化合物(e)1.92g(4.4mmol)、4−ジメチルアミノピリジン0.055g(0.45mmol)、及びクロロホルム87gを混合し、続いてN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)1.0g(4.85mmol)をクロロホルム22gに溶解させた溶液を、滴下し攪拌した。析出した固体を濾別した後、塩酸で洗浄し、回収した有機層に減圧下でメタノールを添加し、固形物を取得した。取得した固形物は、メタノールで洗浄し、例示化合物6を2.4g得た。収率は化合物(f)基準で89%であった。
その他の化合物についても同様の方法によって合成が可能である。
<一般式(1)で表される化合物の使用方法について>
本発明に係る前記一般式(1)で表される化合物は、添加量を適宜調整して光学フィルムに含有させることができるが、その際の添加量としては光学フィルムを形成する樹脂(例えば、セルロースエステル等)100質量%に対して、1〜15質量%含むことが好ましく、2〜10質量%含むことが特に好ましい。この範囲内であれば、本発明の光学フィルムの機械強度を損なうことなく、光学フィルムに良好な波長分散性を付与することができる。
また、前記一般式(1)で表される化合物の添加方法としては、光学フィルムを形成する樹脂に粉体で添加してもよく、溶媒に溶解した後、光学フィルムを形成する樹脂に添加してもよい。
<光学フィルム>
次に、本発明の光学フィルムの詳細について説明する。
本発明において、「光学フィルム」とは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の各種表示装置に用いられる機能性フィルムのことであり、詳しくは液晶表示装置用の偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、ハードコートフィルム、防眩フィルム、帯電防止フィルム、視野角拡大等の光学補償フィルム等を含む。
本発明の光学フィルムの基材となるフィルムの樹脂としてはセルロースエステル系樹脂(本発明では簡単に、セルロースエステルともいう)が用いられるが、その他の併用可能な樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂等)等を挙げることができる。この中で、セルロースエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂の少なくとも一つの樹脂と併用して用いてもよい。セルロースエステル以外の樹脂を使用する場合、樹脂全体に占めるセルロースエステル以外の樹脂の含有量としては5〜70質量%が好ましい。
本発明に係る光学フィルムは、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムに好ましく用いられる。位相差フィルムが偏光板保護フィルムを兼ねているのが好ましい。
〈セルロースエステル〉
本発明に係るセルロースエステルとしては特に限定されないが、炭素数2〜22程度の直鎖または分岐のカルボン酸エステルであることが好ましく、これらのカルボン酸は環を形成してもよく、芳香族カルボン酸のエステルでもよい。なお、これらのカルボン酸は置換基を有してもよい。セルロースエステルとしては、特に炭素数が6以下の低級脂肪酸エステルであることが好ましい。
好ましいセルロースエステルとして、具体的には、セルロースアセテートの他に、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基またはブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルが挙げられる。 この中で特にセルロースアセテート及びセルロースアセテートプロピオネートが最も好ましく用いられる。
本発明に係る好ましいセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートとしては、下記式(a)および(b)を同時に満足するものが好ましい。
式中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基の置換度である。
本発明ではセルロースエステルの総アシル置換度(X+Y)は1.5以上3.0以下であることが前記一般式(1)で表される化合物との相溶性の観点から好ましい。
アシル基の置換度はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
また、目的に叶う光学特性を得るために置換度の異なる樹脂を混合して用いてもよい。混合比としては10:90〜90:10(質量比)が好ましい。
本発明に係るセルロースエステルの数平均分子量は、60000〜300000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。更に70000〜200000のものが好ましく用いられる。
セルロースエステルの重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
測定条件の一例は以下の通りであるが、これに限られることはなく、同等の測定方法を用いることも可能である。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
本発明に係るセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。
本発明に用いられるセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステルは、公知の方法により製造することができる。具体的には特開平10−45804号に記載の方法を参考にして合成することができる。
本発明の光学フィルムには、セルロースエステル、及び前記一般式(1)で表される化合物に加えて、以下に説明する、糖エステル化合物、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、及び微粒子の少なくとも1つを添加することが好ましい。
〈糖エステル化合物〉
糖エステル化合物としては、例えば、ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物が挙げられる。
エステル化の割合としては、ピラノース構造またはフラノース構造内に存在するOH基の70%以上であることが好ましい。
本発明に用いられる糖エステル化合物の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストースが挙げられる。
この他、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
これらの化合物の中で、特にピラノース構造とフラノース構造を両方有する化合物が好ましい。
例としてはスクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、更に好ましくは、スクロースである。
ピラノース構造またはフラノース構造中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、酢酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができ、より、具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
オリゴ糖のエステル化合物を、ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1〜12個を有する化合物として適用できる。
オリゴ糖は、澱粉、ショ糖等にアミラーゼ等の酵素を作用させて製造されるもので、本発明に適用できるオリゴ糖としては、例えば、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖が挙げられる。
糖エステル化合物の一例を下記に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
モノペットSB:第一工業製薬社製
モノペットSOA:第一工業製薬社製
これらの糖エステル化合物の添加量としては、セルロースエステル等の基材樹脂100質量%に対して、0.5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。
〈可塑剤〉
本発明の光学フィルムは、可塑剤を含有してもよい。可塑剤としては特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤及び多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。そのうち、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは次の一般式(a)で表される。
一般式(a)において、Raはn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性水酸基又はフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基或いはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は3価〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸は次の一般式(b)で表される。
一般式(b)において、Rbは(m+n)価の有機基、mは2以上の正の整数、nは0以上の整数、COOH基はカルボキシル基、OH基はアルコール性水酸基又はフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸またはその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。特にオキシ多価カルボン酸を用いることが、保留性向上などの点で好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては特に制限はなく公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。例えば炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪族飽和アルコールまたは脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコールまたはその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールまたはその誘導体なども好ましく用いることができる。
多価カルボン酸としてオキシ多価カルボン酸を用いる場合は、オキシ多価カルボン酸のアルコール性またはフェノール性の水酸基をモノカルボン酸を用いてエステル化しても良い。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上もつ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に酢酸、プロピオン酸、安息香酸であることが好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でも良いし、二種以上の混合であっても良い。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることが更に好ましい。酸価を上記範囲にすることによってリターデーションの環境変動も抑制されるため好ましい。
(酸価)
酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
特に好ましい多価カルボン酸エステル化合物の例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が挙げられる。
ポリエステル系可塑剤は特に限定されないが、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有するポリエステル系可塑剤を用いることができる。ポリエステル系可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(c)で表される芳香族末端エステル系可塑剤を用いることができる。
一般式(c)において、Bはベンゼンモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。
一般式(c)中、Bで示されるベンゼンモノカルボン酸残基とGで示されるアルキレングリコール残基またはオキシアルキレングリコール残基またはアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基またはアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られる。
本発明で使用されるポリエステル系可塑剤のベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することができる。
本発明に用いることのできるポリエステル系可塑剤の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースエステルとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
また、上記芳香族末端エステルの炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
芳香族末端エステルの炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種または2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等がある。
本発明で使用されるポリエステル系可塑剤は、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、水酸基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、水酸基価は15mgKOH/g以下のものである。
以下、本発明に用いることのできる芳香族末端エステル系可塑剤の合成例を示す。
〈サンプルNo.1(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器にフタル酸410部、安息香酸610部、ジプロピレングリコール737部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.40部を一括して仕込み窒素気流中で攪拌下、還流凝縮器を付して過剰の1価アルコールを還流させながら、酸価が2以下になるまで130〜250℃で加熱を続け生成する水を連続的に除去した。次いで200〜230℃で1.33×104Pa〜最終的に4×102Pa以下の減圧下、留出分を除去し、この後濾過して次の性状を有する芳香族末端エステル系可塑剤を得た。
粘度(25℃、mPa・s);43400
酸価 ;0.2
〈サンプルNo.2(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、フタル酸410部、安息香酸610部、エチレングリコール341部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.35部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s);31000
酸価 ;0.1
〈サンプルNo.3(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、フタル酸410部、安息香酸610部、1,2−プロパンジオール418部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.35部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s);38000
酸価 ;0.05
〈サンプルNo.4(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、フタル酸410部、安息香酸610部、1,3−プロパンジオール418部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.35部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s);37000
酸価 ;0.05
〈(メタ)アクリル系重合体〉
本発明に係る光学フィルムは、可塑剤として(メタ)アクリル系重合体を含有することもできる。
該(メタ)アクリル系重合体は、芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下の重合体Yであることが好ましい。
(メタ)アクリル系重合体としては、少なくとも分子内に芳香環と水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと、分子内に芳香環を有さず水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量3000以上30000以下の重合体X、及び芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下の重合体Yであることがさらに好ましい。
前記重合体Xは下記一般式(X)で示され、前記重合体Yは下記一般式(Y)で示されることがさらに好ましい。
式中、Rc、Re、Rgは、H又はメチル基を表し、Rdは炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表し、Rf、Rhは−CH2−、−C2H4−または−C3H6−を表し、RyはOH、H又は炭素数3以内のアルキル基を表し、Xcは、Xa、Xbに重合可能なモノマー単位を表し、Ybは、Yaに共重合可能なモノマー単位を表し、m、n、k、p及びqは、モル組成比を表す(ただし、m≠0、n≠0、k≠0、m+n+p=100、k+q=100である)。
これらの可塑剤の添加量としてはセルロースエステル等の基材樹脂100質量%に対して、0.5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。
〈紫外線吸収剤〉
本発明に係る光学フィルムは、紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン社製の市販品であり好ましく使用できる。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。
この他、1,3,5−トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
本発明に係る光学フィルムは紫外線吸収剤を2種以上を含有することが好ましい。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、光学フィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、光学フィルムの全質量に対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
〈酸化防止剤〉
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に液晶画像表示装置などが置かれた場合には、光学フィルムの劣化が起こる場合がある。
酸化防止剤は、例えば、光学フィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等により光学フィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、光学フィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、セルロースエステル等の基材樹脂100質量%に対して、1質量ppm〜1.0質量%が好ましく、10〜1000質量ppmが更に好ましい。
〈微粒子〉
本発明に係る光学フィルムは、微粒子を含有することが好ましい。
本発明に使用される微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。また、有機化合物の微粒子も好ましく使用することができる。有機化合物の例としてはポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、アクリルスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系粉末、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、あるいはポリ弗化エチレン系樹脂、澱粉等の有機高分子化合物の粉砕分級物もあげられる。あるいは又懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物、または無機化合物を用いることができる。
微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜400nmが好ましく、更に好ましいのは10〜300nmである。
これらは主に粒径0.05〜0.3μmの二次凝集体として含有されていてもよく、平均粒径100〜400nmの粒子であれば凝集せずに一次粒子として含まれていることも好ましい。
これらの微粒子の含有量は、光学フィルムの全質量100質量%に対して0.01〜1質量%であることが好ましく、特に0.05〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成の光学フィルムの場合は、表層(スキン層)にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂およびアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120および同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vが光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明に係る光学フィルムフィルムにおいては、少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0であることが好ましい。
各種添加剤は製膜前のセルロースエステル含有溶液であるドープにバッチ添加してもよいし、添加剤溶解液を別途用意してインライン添加してもよい。特に微粒子はろ過材への負荷を減らすために、一部または全量をインライン添加することが好ましい。
添加剤溶解液をインライン添加する場合は、ドープとの混合性をよくするため、少量のセルロースエステルを溶解するのが好ましい。好ましいセルロースエステルの量は、溶剤100質量部に対して1〜10質量部で、より好ましくは、3〜5質量部である。
本発明においてインライン添加、混合を行うためには、例えば、スタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。
<リターデーション制御剤>
液晶表示装置等の表示装置の表示品質の向上のために、光学フィルム中にリターデーション制御剤を添加したり、配向膜を形成して液晶層を設け、偏光板保護フィルムと液晶層由来のリターデーションを複合化したりすることにより、光学フィルムに対して光学補償能を付与することができる。リターデーションを調節するために添加する化合物は、欧州特許911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物をリターデーション制御剤として使用することもできる。あるいは、特開2006−2025号公報に記載の棒状化合物が挙げられる。また二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。中でも、特開2006−2026号公報に記載の1,3,5−トリアジン環が特に好ましい。
これらのリターデーション制御剤の添加量は、使用する基材樹脂100質量%に対して、0.5〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
<光学フィルムの製造方法>
次に、本発明に係る光学フィルムの製造方法について説明する。
本発明に係る光学フィルムは、溶液流延法で製造されたフィルムであっても溶融流延法で製造されたフィルムであっても好ましく用いることができる。以下、基材樹脂としてセルロースエステルを用い、溶液流延法によって光学フィルムを製造する場合を例に挙げて、光学フィルムの製造方法を説明する。
本発明に係る光学フィルムの製造は、例えば、セルロースエステル及び添加剤(一般式(1)で表される化合物を必須に含む)を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
まず、ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルの平均酢化度(アセチル基置換度)によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。また、セルロースエステルの溶解に用いられる溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられる。回収溶剤中に、セルロースエステルに添加されている添加剤、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分などが微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を発現させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
もしくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステルを溶解させることができる。
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/cm2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の発現が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
続いて、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度は0〜40℃であり、5〜30℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
光学フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
なお、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、光学フィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
本発明に係る光学フィルムを作製するためには、ウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向(横方向)に延伸を行うことが特に好ましい。剥離張力は300N/m以下で剥離することが好ましい。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点から熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は40〜200℃で段階的に高くしていくことが好ましい。
光学フィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが用いられる。薄膜化の観点から、好ましくは15〜60μmであり、更に好ましくは20〜35μmである。この範囲であれば、本発明の前記一般式(1)で表される化合物による波長分散性とブリードアウト耐性を両立できるため、好ましい。
光学フィルムは、例えば、幅1〜4mのものが用いられる。特に幅1.4〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.6〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる。
(延伸操作、屈折率制御)
本発明に係る光学フィルムを製造する工程においては、延伸操作により屈折率制御(すなわちリターデーションの制御)を行うことが好ましい。
例えばフィルムの長手方向(製膜方向)及びそれとフィルム面内で直交する方向(すなわち幅手方向)に対して、逐次または同時に二軸延伸もしくは一軸延伸することができる。同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。
互いに直交する二軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に0.8〜1.5倍、幅方向に1.1〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に0.9〜1.0倍、幅方向に1.2〜2.0倍に範囲で行うことが好ましい。
延伸温度は120℃〜200℃が好ましく、さらに好ましくは140℃〜180℃で延伸するのが好ましい。
延伸時のフィルム中の残留溶媒量は20〜0質量%が好ましく、さらに好ましくは15〜0質量%で延伸するのが好ましい。
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、或いは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、所謂テンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
製膜工程のこれらの幅保持或いは横方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。なお、搬送方向と幅方向を同時に延伸しても、逐次延伸を行ってもよい。
(物性)
本発明に係る光学フィルムの透湿度は、40℃、90%RHで10〜1200g/m2・24hが好ましい。透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に従い測定することができる。
本発明に係る光学フィルムは、破断伸度が10〜80%であることが好ましい。
本発明に係る光学フィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。
本発明に係る光学フィルムのヘイズは1%未満であることが好ましく0〜0.1%であることが特に好ましい。
また、本発明に係る光学フィルムにさらに液晶層や樹脂層を塗布したり、またそれをさらに延伸することにより、さらに広い範囲にわたる位相差値を得ることができる。
<偏光板>
本発明に係る光学フィルムは、偏光板やそれを用いた液晶表示装置に使用することができる。本発明に係る光学フィルムは、偏光板保護フィルムの機能を兼ねたフィルムとされることが好ましく、その場合偏光板保護フィルムとは別の、位相差を有する光学フィルム(位相差フィルム)を別途用意する必要がないため、液晶表示装置の厚みを薄くでき、かつ、表示装置の製造プロセスを簡略化することもできる。
偏光板は、その主たる構成要素として、偏光子を有する。「偏光子」とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光子の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に10〜20μmであることが好ましい。
本発明に係る偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明に係る光学フィルムの偏光子側をアルカリ鹸化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面には他の偏光板保護フィルムを貼合することができる。本発明に係る光学フィルムは液晶表示装置とされた際に、偏光子の液晶セル側に設けられることが好ましく、偏光子の外側(液晶セルとは反対側)のフィルムとしては従来の偏光板保護フィルムを用いることができる。
従来の偏光板保護フィルムとしては、例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上コニカミノルタオプト(株)製)が好ましく用いられる。
表示装置の表面側に用いられる偏光板保護フィルムには、防眩層又はクリアハードコート層のほか、反射防止層、帯電防止層、防汚層、バックコート層を有することが好ましい。
<液晶表示装置>
本発明の光学フィルムを用いた偏光板を液晶表示装置に用いることによって、種々の視認性に優れた本発明の液晶表示装置を作製することができる。
本発明の光学フィルム、偏光板はSTN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種駆動方式の液晶表示装置に用いることができる。
特にVA(MVA、PVA)型液晶表示装置に用いられることが好ましい。
特に画面が30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、光漏れによる黒表示時の着色を低減し、正面コントラストなど視認性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
なお、本発明の液晶表示装置は、液晶セルの両方の面に、本発明に係る偏光板が粘着層を介して貼り合わされたものであることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
≪実施例1≫
<光学フィルム101の作製>
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、アトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFでろ過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
〈主ドープ液の調整〉
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステルAを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用してろ過し、主ドープ液を調製した。
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースエステルA:アセチル置換度2.42のセルロースジアセテート(アシル基総置換度2.42、表中「DAC」と記載) 100質量部
一般式(1)で表される化合物:例示化合物1 4質量部
モノペットSB(第一工業製薬社製) 5質量部
微粒子添加液1 1質量部
リターデーション制御剤(A−1) 4質量部
以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープ液を温度33℃、1500mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
剥離した光学フィルムを、145℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に30%(1.30倍に)延伸した。延伸開始時の残留溶媒量は14質量%であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。
以上のようにして、乾燥膜厚20μmの光学フィルム101を得た。
<光学フィルム102〜124の作製>
光学フィルム101の作製において、セルロースエステルの種類、本発明に係る前記一般式(1)で表される化合物、及びその他の添加剤を表1のように変更した以外は同様にして、光学フィルム102〜124を作製した。
以下、実施例1で使用した使用した素材の詳細を下記に示す。
セルロースエステルの種類は下記の通りである。
セルロースエステルB:アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(アシル基総置換度2.88、表中「TAC」と記載)
セルロースエステルC:アセチル置換度1.56、プロピオニル置換度0.90のセルロースアセテートプロピオネート(アシル基総置換度2.46、表中「CAP1」と記載)
セルロースエステルD:アセチル置換度0.21、プロピオニル置換度1.62のセルロースアセテートプロピオネート(アシル基総置換度1.83、表中「CAP2」と記載)
セルロースエステルE:アセチル置換度0.12、プロピオニル置換度1.28のセルロースアセテートプロピオネート(アシル基総置換度1.40、表中「CAP3」と記載)
また、一般式(1)で表される化合物、及び比較化合物の構造は下記の通りである。
<光学フィルムの評価>
上記のようにして作製した各々の光学フィルムについて、以下に記載した評価を行った。
(リターデーション)
得られた光学フィルムの幅手方向の中央部のリターデーション値を測定した。測定には自動複屈折計KOBRAー21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で2時間調湿し、波長590nmにおいて、3次元複屈折率測定を行い、測定値を次式に代入して求めた。
式中、nxは、光学フィルムの面内方向において屈折率が最大になる方向xにおける屈折率を表し、nyは、光学フィルムの面内方向において、前記方向xと直交する方向yにおける屈折率を表し、nzは、光学フィルムの厚み方向zにおける屈折率を表し、d(nm)は光学フィルムの厚みを表す。
(波長分散性)
前記光学フィルムの幅手方向の中央部のリターデーション値を測定した。測定には自動複屈折計KOBRAー21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で2時間調湿し、波長450nmおよび630nmにおいて、3次元複屈折率測定を行い、測定値を前記の式(I)に代入してRoの値を求めた。得られたRoを下記の式(III)に代入して波長分散性を求めた。なお、この値が1.00以下であることが好ましい(逆波長分散性)。
(ブリードアウト耐性)
光学フィルムを、80℃、90%RHの高温高湿雰囲気下で1000時間放置後、光学フィルム表面のブリードアウト(結晶析出)の有無を目視観察し、下記基準に従って評価を行った。
A:表面にブリードアウトの発生が全く認められない
B:表面で、部分的なブリードアウトが僅かに認められる
C:表面で、全面に亘りブリードアウトが僅かに認められる
D:表面で、全面に亘り明確なブリードアウトが認められる
ここで、Bレベル以上であれば実用上問題ないが、Aレベルであることが特に好ましい。
以上の評価結果を、下記の表1に示す。
表1から明らかなように、本発明の光学フィルム101〜116は比較の光学フィルム121〜124に比べて、リターデーションの発現性に優れ、良好な波長分散性を示し、かつブリードアウト耐性が良好な実用上優れた光学フィルムであることが分かる。
≪実施例2≫
実施例1の光学フィルム106の作製において、例示化合物6の添加量を表2のような質量部に変化させ、かつ、表2のような膜厚になるように流延時のドープ液の流量を変化させた以外は、実施例1の光学フィルム106の作製と同様にして光学フィルム301〜305を作製し、実施例1と同様な評価を行った。その結果を、下記の表2に示す。
表2から明らかなように、本発明の光学フィルム301〜305はリターデーションの発現性に優れ、逆波長分散性を示し、かつブリードアウト耐性が優れていることが分かる。更に、膜厚が20〜35μmの範囲の光学フィルム、302〜304は波長分散性及びブリードアウト耐性がともに特に優れていることが分かる。
≪実施例3≫
<偏光板の作製>
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。
これをヨウ素0.075質量部、ヨウ化カリウム5質量部、水100質量部からなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6質量部、ホウ酸7.5質量部、水100質量部からなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と前記光学フィルム101〜116、121〜123と、裏面側にはコニカミノルタタックKC4UY(コニカミノルタオプト(株)製セルロースエステルフィルム)を貼り合わせて偏光板を作製した。
工程1:前記光学フィルム101〜116、121〜123を60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化した。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理した光学フィルムの上にのせて配置した。
工程4:工程3で積層した光学フィルムと偏光子の偏光子側の面に前記コニカミノルタタックKC4UYを重ね、圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子と光学フィルムとコニカミノルタタックKC4UYとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、それぞれ対応する偏光板101〜116、121〜123を作製した。
<偏光板の評価>
次に、以下のようにして偏光板の耐久性を評価した。その結果を、下記の表3に示す。
(耐久性)
上記の要領で得られた500mm×500mmの偏光板試料2枚を熱湿処理(条件:80℃、90%RHで100時間放置する)し、直交状態にしたときの縦または横の中心線部分のどちらか大きい方の縁の白抜け部分の長さを測定して、辺の長さ(500mm)に対する比率を算出し、その比率に応じて下記のように判定して耐熱湿性を調べることで、耐久性を評価した。縁の白抜けとは直交状態で光を通さない偏光板の縁の部分が光を通す状態になることで、目視で判定できる。偏光板の状態では縁の部分の表示が見えなくなる故障となる。
A:縁の白抜けが5%未満(偏光板として問題ないレベル)
B:縁の白抜けが5%以上10%未満(偏光板として問題ないレベル)
C:縁の白抜けが10%以上20%未満(偏光板として何とか使えるレベル)
D:縁の白抜けが20%以上(偏光板として問題のあるレベル)
ここで、Bレベル以上であれば実用上問題ないが、Aレベルであることが特に好ましい。
表3から明らかなように、本発明の偏光板101〜116は比較の偏光板121〜123に比べて、耐久性に優れた偏光板であることが分かる。
≪実施例4≫
<液晶表示装置の作製>
視野角測定を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
SONY製40型ディスプレイKLV−40J3000の予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、実施例3で作製した偏光板101〜116、121〜123をそれぞれ液晶セルのガラス面の両面に貼合した。
その際、その偏光板の貼合の向きは、本発明の光学フィルムの面が、液晶セル側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置101〜116、121〜123を各々作製した。
<液晶表示装置としての特性評価>
上記のようにして作製した液晶表示装置について、以下に記載した評価を行った。その結果を、下記の表4に示す。
(色ムラ)
23℃、55%RHの環境でディスプレイを黒表示にし、正面及び斜め45°の角度から観察し、色ムラを下記基準で評価した。
A:色ムラが全くない
B:色ムラが僅かに認められる
C:色ムラがあるが実用上は問題ない
D:色ムラが大きく実用上問題がある
ここで、Cレベル以上であれば実用上問題はないが、Bレベル以上であることが好ましく、Aレベル以上であることが特に好ましい。
(視野角劣化)
23℃、55%RHの環境でELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて液晶表示装置の視野角測定を行った。続いて23℃20%RH、更に23℃80%RHの環境下で、作製した液晶表示装置の視野角を測定し下記基準にて評価した。最後に23℃55%RHの環境でもう一度視野角測定を行い、前記測定の際の変化が可逆変動であることを確認した。尚、これらの測定は、液晶表示装置を当該環境に5時間置いてから測定を行った。
A:視野角変動が認められない
B:視野角変動がやや認められる
C:視野角変動が認められる
ここで、Bレベル以上であれば実用上問題ないが、Aレベルであることが特に好ましい。
表4から明らかなように、本発明の偏光板101〜116を用いた液晶表示装置101〜116は、比較の偏光板121〜123を用いた液晶表示装置121〜123に対して、色ムラが少なく、かつ湿度が変動する条件下でも視野角変動の少ない極めて安定な、耐久性の優れた液晶表示装置であることが分かる。