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JP2013057630A - 増強微粒子含有半導体ナノ粒子集積体 - Google Patents

増強微粒子含有半導体ナノ粒子集積体 Download PDF

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JP2013057630A JP2011197335A JP2011197335A JP2013057630A JP 2013057630 A JP2013057630 A JP 2013057630A JP 2011197335 A JP2011197335 A JP 2011197335A JP 2011197335 A JP2011197335 A JP 2011197335A JP 2013057630 A JP2013057630 A JP 2013057630A
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Abstract

【課題】蛍光発光する半導体ナノ粒子を高密度に集積させても濃度消光せず、発光輝度の高い半導体ナノ粒子集積体を提供する。
【解決手段】半導体ナノ粒子と蛍光増強粒子、代表的には金属コロイド粒子とを含むことを特徴とするナノ粒子集積体。前記蛍光増強微粒子は、金、銀、白金のいずれかから選ばれる金属またはその合金からなるものであることが好ましく、表面の一部または全部が誘電体からなる層で被覆されていることが好ましく、体積平均粒径は10〜100nmであることが好ましい。また、前記ナノ粒子集積体は、体積平均粒径が40〜1000nmであることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、バイオイメージング法(生体物質を構成する生体分子やその動的現象を可視化する技術手段)に用いられる生体物質標識剤を構成するための蛍光体、具体的には半導体ナノ粒子集積体に関する。
バイオアッセイにおいて、目的とする生体物質を標識するための標識体として蛍光体を使用する場合、蛍光体が発する蛍光強度が大きいほど高いS/N比が得られることから、蛍光強度が高い蛍光体が望まれている。このような理由から、従来の蛍光色素に代わる蛍光標識体として、半導体ナノ粒子が開発された。蛍光発光する半導体ナノ粒子は量子ドットとも呼ばれ、II−VI族、及びIII−V族の半導体ナノ粒子が広く知られている。しかし、バイオアッセイにおける高感度測定には、半導体ナノ粒子においても1粒子あたりの発光強度が低く、さらなる高輝度蛍光粒子の開発が望まれている。
そこで、さらに高輝度化する方法として、複数の半導体ナノ粒子を集積させて、一標識体当たりの輝度を上げる方法が考えられた。しかしながら、高密度で半導体ナノ粒子を集積させると粒子間の距離が近くなりすぎてしまい、濃度消光が起こる。この濃度消光は半導体ナノ粒子同士が接触することにより電子移送が起こり、量子閉じ込め効果が低下することが原因であると考えられる。
このため、半導体ナノ粒子を透明なガラス等のマトリックス中に分散性良く固定する形で閉じ込めることにより、濃度消光を抑制し、高輝度発光特性を示す蛍光体が提案されている。例えば、特許文献1には、逆ミセル法と、ガラスの前駆体として分子の末端に半導体ナノ粒子への吸着性が良い有機官能基を有する有機アルコキシシランとアルコキシドの混合物を用いたゾル−ゲル法とを組み合わせることにより、半導体ナノ粒子を内部に分散固定したガラス蛍光体が開示されている。しかしながら、このガラス蛍光体は有機アルコキシシラン及びアルコキシドの加水分解生成物を含むため、濃度消光は抑制されるかもしれないが、半導体ナノ粒子間の距離が長くなってしまい、それほど高濃度に半導体粒子を集積させることはできないという問題がある。
特開2005−281019号公報
本発明は、上記問題・状況にかんがみてなされたものであり、その解決課題は、蛍光発光する半導体ナノ粒子を高密度に集積させても濃度消光せず、発光輝度の高い半導体ナノ粒子集積体を提供することである。
上記課題を解決した本発明は、以下の事項を包含する。
[1]半導体ナノ粒子と蛍光増強粒子とを含有することを特徴とするナノ粒子集積体。
[2]前記蛍光増強粒子が金属コロイド粒子である、[1]に記載のナノ粒子集積体。
[3]前記蛍光増強微粒子が、金、銀、白金のいずれかから選ばれる金属またはその合金からなる粒子である、[1]または[2]に記載のナノ粒子集積体。
[4]前記蛍光増強粒子の表面の一部または全部が誘電体からなる層で被覆されている、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のナノ粒子集積体。
[5]前記蛍光増強粒子の体積平均粒径が10〜100nmである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のナノ粒子集積体。
[6]前記ナノ粒子集積体の体積平均粒径が40〜1000nmである、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のナノ粒子集積体。
[7][1]〜[6]のいずれか一項に記載のナノ粒子集積体と、当該ナノ粒子集積体に結合した標的認識物質とにより形成されることを特徴とする、生体物質標識剤。
本発明の上記手段により、集積化した蛍光発光する半導体ナノ粒子の濃度消光を抑制し、かつ、蛍光増強粒子による蛍光増強によって、発光輝度の高い半導体ナノ粒子集積体を提供することができる。
半導体ナノ粒子のみからなるナノ粒子集積体では前記濃度消光を起こすため、半導体ナノ粒子の個数分の輝度にはならず、集積体を構成する半導体ナノ粒子の本来の発光輝度の4割程度の発光輝度となる。しかしながら、本発明に係るナノ粒子集積体では、半導体ナノ粒子の近傍に蛍光増強粒子を混在させることにより、従来のナノ粒子集積体よりも著しく高い発光輝度を達成することができる。その理由としては、半導体ナノ粒子同士の近接を抑制して濃度消光が起こる程度を少なくすると共に、蛍光増強粒子の局在化表面プラズモンによる蛍光増強効果によって半導体ナノ粒子が発する蛍光の強度が向上したことが考えられる。
(半導体ナノ粒子)
本発明に係るナノ粒子集積体の一方の構成要素ある半導体ナノ粒子の素材としては、公知の半導体ナノ粒子と同様に、たとえばSi、Ge、InN、InP、GaAs、AlSe、CdSe、AlAs、GaP、ZnTe、CdTe、InAsなどの半導体又はこれらを形成する原料を用いることができる。本発明においては、特に、低毒性という観点からはInPやSiが、可視光の範囲における発光強度の観点からはCdTeやCdSeが好ましく用いられる。
また、前記半導体ナノ粒子をコアとし、その外層にシェルを付加したコア/シェル構造の半導体ナノ粒子を用いてもよい。シェルを形成するための素材としては、公知のコア/シェル構造の半導体ナノ粒子と同様に、II−VI族、III−V族、IV族の無機半導体を用いることができる。例えば、Si、Ge、InN、InP、GaAs、AlSe、CdSe、AlAs、GaP、ZnTe、CdTe、InAsなどの各コア形成無機材料よりバンドギャップが大きく、毒性を有さない半導体又はこれらを形成する原料が好ましい。より具体的には、たとえば、InP、CdTe、及びCdSeをコアとする場合にはZnSが、Siをコアとする場合にはSiO2がシェルとして好適である。なお、コアが部分的に露出しても弊害を生じない限り、シェルはコアの全表面を完全に被覆するものでなくてもよい。
本発明に用いるコア/シェル構造でない(コアのみからなる)半導体ナノ粒子の体積平均粒径は、従来のものと同程度でよいが、1〜15nmであることが好ましい。また、本発明に用いるコア/シェル構造の半導体ナノ体粒子の体積平均粒径も、従来のものと同程度でよいが、1〜20nmであることが好ましい。
なお、本発明において、上述した半導体ナノ粒子、及び以下に述べる蛍光増強微粒子(金属コロイド粒子)やナノ粒子集積体の粒径は、原則として体積平均粒径により表される。この体積平均粒径は、動的光散乱法(Dynamic Light Scattering, DLS)による粒径測定装置(たとえばMalvern Instruments社製、Zetasizer Nano S)を用いて、上記各粒子の作製直後(凝集前)の粒径分布を測定することにより求められる値であり、粒径分布のピーク(中心)位置の粒径をその粒子の体積平均粒径とする。
(半導体ナノ粒子の製造方法)
本発明で用いる半導体ナノ粒子の製造方法としては、液相法又は気相法による方法を採用できる。
液相法の製造方法には、沈殿法、共沈法、ゾル−ゲル法、均一沈殿法、還元法などがある。そのほかに、逆ミセル法、超臨界水熱合成法などもナノ粒子を作製する上で優れた方法である(例えば、特開2002−322468号、特開2005−239775号、特開平10−310770号、特開2000−104058号公報等を参照)。液相法により半導体ナノ粒子を製造する場合は、還元法、すなわち分散用溶媒中で当該半導体の前駆体を還元反応により還元する工程を有する製造方法が特に好ましい。また、この還元法は、半導体前駆体の還元反応は界面活性剤の存在下で行う態様が好ましい。
〈半導体前駆体〉
半導体前駆体は、上記の半導体材料として用いられる元素を含む化合物であり、たとえば半導体がSiの場合、半導体前駆体としてはSiCl4などが挙げられる。その他の半導体前駆体としては、InCl3、P(SiMe33、ZnMe2、CdMe2、GeCl4、トリブチルホスフィンセレンなどが挙げられる。半導体前駆体を用いて半導体ナノ粒子を調製する際の反応温度としては、半導体前駆体の沸点以上かつ溶媒の沸点以下であれば特に制限はないが、70〜110℃の範囲が好ましい。
〈還元剤〉
半導体前駆体を還元する還元剤としては、従来周知の種々の還元剤を反応条件に応じて選択し用いることができる。還元力の強さの観点から、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化トリ(sec−ブチル)ホウ素リチウム(LiBH(sec−C493)及び水素化トリ(sec−ブチル)ホウ素カリウム、水素化トリエチルホウ素リチウムなどの還元剤が好ましく、特に水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)が好ましい。
〈溶媒〉
半導体前駆体の分散用溶媒としては、従来周知の種々の溶媒を使用できるが、エチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、トルエン、デカン、ヘキサンなどの炭化水素類溶媒が好ましく、特にトルエン等の疎水性の溶媒が好ましい。
〈界面活性剤〉
界面活性剤としては、従来周知の種々の界面活性剤を使用でき、陰イオン、非イオン、陽イオン、両性界面活性剤が含まれる。なかでも第四級アンモニウム塩系である、テトラブチルアンモニウムクロリド、ブロミド又はヘキサフルオロホスフェート、テトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)、またはトリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドが好ましく、特にテトラオクチルアンモニウムブロミドが好ましい。
なお、液相法による反応は、液中の溶媒を含む化合物の状態により大きく変化する。単分散性の優れたナノサイズの粒子を製造する際には、特に注意を要する必要がある。例えば、逆ミセル反応法では、界面活性剤の濃度や種類により、反応場となる逆ミセルの大きさや状態が変わってくるため、ナノ粒子が形成される条件が限られてしまう。したがって、適切な界面活性剤と溶媒との組み合わせが必要となる。
一方、気相法の製造方法としては、(1)対向する原料半導体を電極間で発生させた第一の高温プラズマによって蒸発させ、減圧雰囲気中において無電極放電で発生させた第二の高温プラズマ中に通過させる方法(例えば特開平6−279015号公報参照。)、(2)電気化学的エッチングによって、原料半導体からなる陽極からナノ粒子を分離・除去する方法(例えば特表2003−515459号公報参照。)、(3)レーザーアブレーション法(例えば特開2004−356163号参照。)、(4)高速スパッタリング法(例えば特開2004−296781号参照。)などが用いられる。また、原料ガスを低圧状態で気相反応させて、粒子を含む粉末を合成する方法も、好ましく用いられる。
(蛍光増強粒子)
本発明に係るナノ粒子集積体のもう一方の構成要素である蛍光増強粒子とは、ナノ粒子集積体中で半導体ナノ粒子の近傍に混在する粒子であって、それが混在しない場合と比較して、半導体ナノ粒子が発する蛍光の強度を増強する機能を有する粒子をいう。蛍光増強粒子としては、代表的には金属コロイド粒子が挙げられる。金属コロイド粒子は、光源からの光照射によって局在化表面プラズモンを生じる。金属コロイド粒子表面近傍に誘起された強い局所電場により、集積体中での金属コロイド粒子近傍の半導体ナノ粒子からの発光を増強する役割を果たす。それとともに、金属コロイド粒子は一定のサイズを有するため半導体ナノ粒子同士の間隔を広げることができ、半導体ナノ粒子の発光の濃度消光を抑制する役割も果たす。
なお、蛍光増強粒子について金属コロイド粒子を代表例として取り上げながら説明するが、他の粒子を蛍光増強粒子とする場合も、金属種や体積平均粒径などについて、同様の事項を適用することが可能である。
本発明で用いられる蛍光増強粒子としての金属コロイド粒子を構成する金属種には、特に制限はないものの、試料等に対する化学的安定性が高く、可視光により局在化表面プラズモンが効率的に発生することから、金、銀、白金等の貴金属、あるいはこれらの合金が好ましく、中でも金が特に好ましい。金属コロイド粒子の粒径は、上記「コロイド液」中でコロイドとして分散状態を維持でき、且つ本発明の作用・効果を発揮できる程度に局在化表面プラズモンを十分に起こすことができる限り特に制限はない。しかし、一般的に、金属コロイド粒子の最大吸光波長は、構成金属種により変わるほか、構成金属種が同じであっても、金属コロイド粒子の粒径が大きくなるほど大きくなる傾向にある。そのため、金属コロイド粒子の粒径は、同じ集積体に集積化される半導体ナノ粒子からの蛍光が金属コロイド粒子による吸光により消光されないような粒径であることが望ましい。具体的には、蛍光増強粒子としての金属コロイド粒子の体積平均粒径は、一般的には0.1〜1000nmの範囲内にあるが、ナノ粒子集積体中の蛍光増強粒子として用いる場合は、1nm〜100nmの範囲内にあることが好ましく、10〜100nmの範囲内にあることがより好ましい。金属コロイド粒子の形状は任意の形状のものであってもよく、例えば、球状、楕円状、円柱状などの形状を有するものが挙げられる。
このような金属コロイド粒子は、様々な粒径を有する金属コロイド粒子のコロイド溶液の形態で市販品として入手可能である。あるいは、このような金属コロイド粒子を、従来公知の方法、例えば、HAuCl4、H2PtCl4、硝酸銀などの金属化合物の溶液を還元することによって得ることもできる。
また、上記の金属コロイド粒子は、半導体ナノ粒子の金属消光を防止するため、表面の一部または全部が誘電体からなる層で被覆されていてもよい。この層を形成する誘電体としては、たとえばシリカ(SiO2)や酸化チタン、あるいは合成ポリマーが挙げられ、中でもシリカは好適な誘電体として用いることができる。表面に誘電体からなる層が形成された金属コロイド粒子は公知の方法に従って作製することができる。たとえば、金属コロイド粒子を酸性ケイ酸液に添加することにより、シリカからなる誘電体層を有する金属コロイド粒子を作製することができる。誘電体層(たとえばシリカからなるもの)の厚さは1〜20nmが好ましい。誘電体層の材質に応じて誘電体層を形成する際の反応条件を調整することにより、厚さを上記の範囲内にすることができる。
(ナノ粒子集積体)
本発明に係るナノ粒子集積体は、半導体ナノ粒子および蛍光増強粒子を含有するナノ粒子集積体である。ここで「ナノ粒子集積体」とは、複数のナノサイズの粒子(本発明では半導体ナノ粒子および蛍光増強粒子)が相互に接触した状態で集まった集合体をいう。このようなナノ粒子集積体は、半導体ナノ粒子および蛍光増強粒子のみからなるものであってもよいし、本発明の作用効果が奏される範囲で、他の粒子をさらに含有するものであってもよい。ナノ粒子集積体を構成する半導体ナノ粒子および蛍光増強粒子それぞれの個数、あるいは半導体ナノ粒子1個あたりの蛍光増強粒子の個数は特に限定されるものではないが、ナノ粒子集積体が発する蛍光強度を勘案して、必要に応じて製造条件を調整することにより、適切な範囲に収めればよい。なお、ナノ粒子集積体中の半導体ナノ粒子1個あたりの蛍光増強粒子の個数は、たとえば高周波プラズマ発光分析装置を用いた元素分析により算出することができる。
本発明のナノ粒子集積体は、溶媒の塩濃度を調整したり、半導体ナノ粒子および蛍光増強粒子の静電的な相互作用を用いることや、半導体ナノ粒子の形成過程又は形成後の分散過程において、半導体ナノ粒子及びその材料を殆ど溶解しない貧溶媒を使用することにより形成することができる。上記貧溶媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)を用いることができる。たとえば、適切な溶媒中で、ナノ粒子集積体を構成する原料となる半導体ナノ粒子および蛍光増強粒子の混合物を撹拌することにより、それらの粒子で構成されたナノ粒子集積体を調製することができる。
本発明のナノ粒子集積体の体積平均粒径は、10〜1000nmの範囲内であることが好ましく、40〜500nmの範囲内であることがより好ましい。
本発明のナノ粒子集積体が発する蛍光を測定する際は、蛍光増強粒子の吸収波長、すなわち局在化表面プラズモンが発生して半導体ナノ粒子を励起させるエネルギーが放出されることになる波長を含む光を照射する。この際の電場増強効果によって、蛍光増強粒子の近傍において、半導体ナノ粒子発光(蛍光)の強度を向上させることが可能となる。あるいは、蛍光増強粒子の吸収波長と半導体ナノ粒子の励起波長の両方を含む光を照射するようにしてもよい。照射光は、適切な光源(レーザーダイオード、水銀ランプ等)から照射すればよく、また必要に応じて波長スペクトルを調整するための適切な部材(フィルター、ダイクロックミラー等)を透過させたものであってもよい。
(ナノ粒子集積体の用途)
[生体物質標識剤とバイオイメージング]
本発明のナノ粒子集積体の用途は特に限定されるものではないが、代表的には、生体物質標識剤における蛍光体として利用することができる。蛍光標識の標的とする生体物質(標的物質)を有する生細胞もしくは生体に本発明に係る生体物質標識剤を添加することで、標的物質と結合もしくは吸着させることができる。その後、当該結合体もしくは吸着体に所定の波長の励起光を照射し、当該励起光に応じて半導体ナノ粒子から発生する所定の波長の蛍光を検出することにより、上記標的物質の蛍光動態イメージングを行うことができる。すなわち、本発明に係る生体物質標識剤は、バイオイメージング法(生体物質を構成する生体分子やその動的現象を可視化する技術手段)に利用することができる。
〔親水化処理〕
本発明のナノ粒子集積体の表面は、一般的な方法によって作製された場合には疎水性であるため、そのままでは水分散性が悪く、水溶液中でナノ粒子集積体が凝集してしまう等の問題が起こりやすい。そのため、特に生体物質標識剤として使用する場合は、ナノ粒子集積体を構成する半導体ナノ粒子の表面を親水化処理することが好ましい。
親水化処理の方法としては例えば、半導体ナノ粒子を調製した際に残存した表面の親油性基をピリジン等で除去した後に、半導体ナノ粒子の表面に表面修飾剤を化学的および/または物理的に結合させる方法がある。表面修飾剤としては、親水基としてカルボキシル基またはアミノ基を持つ化合物が好ましく、そのような化合物の具体例としてはメルカプトプロピオン酸、メルカプトウンデカン酸、アミノプロパンチオールなどが挙げられる。例えば、半導体ナノ粒子10-5gをメルカプトウンデカン酸0.2gが溶解した純水10ml中に分散させて、40℃、10分間攪拌することにより、表面がカルボキシル基で修飾されたナノ粒子集積体を作製することができる。
〔生体物質標識剤〕
本発明に係る生体物質標識剤は、標的物質と特異的に結合する物質(標的認識物質)と、それを標識化するための蛍光体として、好ましくは上述した親水化処理が施された、ナノ粒子集積体とが、有機分子を介して結合した構造を有する。
〈標的認識物質〉
本発明に係る生体物質標識剤が目的とする標的物質は、それと特異的に結合する物質が存在するものであれば特に限定されるものではないが、代表的にはタンパク質(ペプチド)および核酸分子(ヌクレオチド鎖)が挙げられる。したがって、標的認識物質としては、上記タンパク質を抗原として認識する抗体やそれに特異的に結合する他のタンパク質等、あるいは前記核酸分子にハイブリダイズする塩基配列を有する核酸分子等が挙げられる。
〈有機分子〉
親水化処理されたナノ粒子集積体と、標的認識物質とを結合させる有機分子は、そのような機能を担える有機分子であれば特に限定されるものではなく、一般的な生体物質標識剤に用いられている有機分子を本発明においても用いることができる。例えば、半導体ナノ粒子および標的認識物質を非特異的に吸着させることのできるアルブミン、ミオグロビンおよびカゼイン等のタンパク質を用いることができ、また、アビジンおよびビオチンでそれぞれ半導体ナノ粒子および標的認識物質を修飾し、それらを特異的に結合させる方法も好適である。上記結合の態様は特に限定されず、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合、物理吸着および化学吸着等が挙げられるが、結合の安定性から共有結合などの結合力の強い結合が好ましい。具体的には、たとえば、前述のようにカルボキシル基を有する化合物(メルカプトウンデカン酸など)でナノ粒子集積体の親水化処理した場合、そのカルボキシル基はアビジンのアミノ基と共有結合を形成するための官能基として好適である。一方、標的認識物質(代表的には抗体)も公知の手法によりビオチンを結合させることができる。そのようにして導入されたアビジンおよびビオチンを特異的に結合させることにより、それらを介して半導体ナノ粒子および標的認識物質が結合した生体物質標識剤を作製することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]InP/ZnS半導体ナノ粒子の合成
まず、以下に示す手法によってInP粒子の合成を行った。三つ口フラスコに6mlのオクタデセンを入れ、その溶媒中に1mlのオクタデセンに溶解させたIn(acac)3とトリス(トリメチルシリル)ホスフィンをInとPの比がIn/P=1/1となるように加え、アルゴン雰囲気中で300℃、1h反応させInP粒子(分散液)を得た。このようにして得られたInP粒子は630nmに極大発光波長を持った粒子であった。
続いて、300℃、1h反応後の上記InP粒子分散液を80℃まで放冷した後、その分散液に1mlのオクタデセンに溶解させたステアリン酸亜鉛+硫黄をIn、P、Zn、Sの比がIn/P/Zn/S=1/1/1/1となるように加え、80℃から230℃に昇温し、30分反応させることにより、ZnSシェル付加InP半導体ナノ粒子(InP/ZnS)を得た。動的光散乱法(DLS)による粒径測定装置(Malvern Instruments社製、Zetasizer Nano S)を用いて、半導体ナノ粒子の粒径分布を測定したところ、半導体ナノ粒子(InP/ZnS)の体積平均粒径は8nmであった。さらに、得られた半導体ナノ粒子(InP/ZnS)1mLに、アンモニア水0.1mL、3−MPA(3―メルカプトプロピオン酸)1mLを加えて攪拌、水相に溶解している半導体ナノ粒子(InP/ZnS)1を回収した。
[実施例2]金コロイド粒子の作製
金コロイド(B.B.International社製、体積平均粒径(粒径のカタログ値)40nm)を濃度5×10-4molに調整した水溶液500mLに、APS(3−(アミノプロピル)トリメトキシシラン)水溶液(2.5mL、1mmol)を添加し、15分間強攪拌することにより、金コロイド表面のクエン酸を置換した。pH10〜11に調整したsodiumu silicate 0.54重量%水溶液20mLを前述の金コロイド水溶液に添加し、強攪拌した。24時間経過すると、厚さが約4nmのSiO2被膜が形成された。この溶液を遠心分離により30mLまで濃縮した溶液に、170mLのエタノールを添加した。さらに0.6mLのNH4OH(28%)を滴下し、80μLのTEOS(テトラエトキシシラン)を添加し、8時間ゆっくり攪拌して、厚さ10nmのSiO2被膜を有する蛍光増強粒子1を得た。
[実施例3]ナノ粒子集積体の作製
前記InP/ZnS半導体ナノ粒子1および蛍光増強粒子1をリン酸緩衝液(pH:7.2)中で攪拌、混合し、その後超音波処理行い、ナノ粒子集積体1を得た。また、InP/ZnS半導体ナノ粒子1のみを用い、同様の操作を行い、ナノ粒子集積体2を作製した。得られたナノ粒子集積体懸濁液についてDLS測定を行ったところ、ナノ粒子集積体1、2とも体積平均粒径は200nmであった。さらに、ナノ粒子集積体1について、高周波プラズマ発光分析装置(ICPM−8500、島津製作所製)を用いて元素分析を行い、金ナノ粒子の含有量を算出したところ、ナノ粒子集積体1粒子あたり蛍光増強粒子が平均12個含有されていることがわかった。
[実施例4]半導体ナノ粒子含有ガラス粒子の作製
特許文献1(特開2005−281019号公報)記載の実施例1に従い、当該実施例におけるテルル化カドミウムナノ粒子の代わりに実施例1で作製した半導体ナノ粒子(InP/ZnS)を用いて、シリカマトリックス中にInP/ZnSからなる半導体ナノ粒子が分散したガラス粒子(半導体ナノ粒子含有ガラス粒子)を作製した。上記実施例3と同様にてDLS測定を行ったところ、この半導体ナノ粒子含有ガラス粒子の体積平均粒径も200nmであった。
[実施例5]発光強度の測定および蛍光強度の比較
蛍光強度の測定は、蛍光分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、F−7000)を用いて行った。実施例3で調製したナノ粒子集積体1および2の懸濁液、ならびに実施例4で調製した蛍光ガラス粒子3の懸濁液を、純水を用いて、それぞれ粒子モル濃度を0.01nmol/Lに調整した。励起波長は520nmとし、それぞれの試料の蛍光極大波長650nmにおける蛍光強度を測定した。蛍光強度の測定結果を表1に示す。ナノ粒子集積体1〜3とも体積平均粒径は200nmと等しいにもかかわらず、体積平均粒径40nmの金コロイド粒子が蛍光増強粒子として機能しているナノ粒子集積体1が最も蛍光強度が大きいことがわかる。
Figure 2013057630

Claims (7)

  1. 半導体ナノ粒子と蛍光増強粒子とを含有することを特徴とするナノ粒子集積体。
  2. 前記蛍光増強粒子が金属コロイド粒子である、請求項1に記載のナノ粒子集積体。
  3. 前記蛍光増強微粒子が、金、銀、白金のいずれかから選ばれる金属またはその合金からなる粒子である、請求項1または2に記載のナノ粒子集積体。
  4. 前記蛍光増強粒子の表面の一部または全部が誘電体からなる層で被覆されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノ粒子集積体。
  5. 前記蛍光増強粒子の体積平均粒径が10〜100nmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノ粒子集積体。
  6. 前記ナノ粒子集積体の体積平均粒径が40〜1000nmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のナノ粒子集積体。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のナノ粒子集積体と、当該ナノ粒子集積体に結合した標的認識物質とにより形成されることを特徴とする、生体物質標識剤。
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