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JP2012193067A - ホウケイ酸塩ガラス、多孔質ガラスおよびその製造方法 - Google Patents

ホウケイ酸塩ガラス、多孔質ガラスおよびその製造方法 Download PDF

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Kenji Takashima
Soi Cho
祖依 張
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佳範 小谷
Susumu Sugiyama
享 杉山
Naoyuki Koketsu
直行 纐纈
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Abstract

【課題】 酸化ケイ素の含有割合が多くても相分離を起し、強度が高い多孔質ガラスを製造することができるホウケイ酸塩ガラスおよびそれを用いた多孔質ガラスの製造方法を提供する。
【解決手段】 酸化ケイ素60重量%以上72重量%以下、酸化ホウ素18重量%以上30重量%以下、酸化ナトリウム9.5重量%以上15重量%以下、酸化セリウム0.1重量%以上5.0重量%以下を含有するホウケイ酸塩ガラス。前記ホウケイ酸塩ガラスを加熱による分相処理をしてシリカリッチ相と非シリカリッチ相に相分離させる工程、前記非シリカリッチ相を溶液によるエッチングにより溶出させる工程を有する多孔質ガラスの製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明はホウケイ酸塩ガラス、前記ホウケイ酸塩ガラスを用いて多孔質ガラスの製造方法および多孔質ガラスに関する。
多孔質ガラスの比較的に容易な製造法として相分離現象を利用する方法がある。相分離現象を利用する多孔質ガラスの母材ガラスとしては、酸化ケイ素(シリカ)、酸化ホウ素、アルカリ金属酸化物を構成要素としたホウケイ酸塩ガラスが一般的である。溶融法等で製造されたホウケイ酸塩ガラスを一定温度で保持する熱処理により相分離を起こさせ(以下、分相処理と言う)、酸溶液による選択エッチングで非シリカリッチ相を溶出させて多孔質ガラスを製造する。
多孔質ガラスの骨格を構成するのは主に酸化ケイ素である。骨格径や細孔径、空孔率が同程度の場合、骨格を構成する酸化ケイ素の割合が多いほど強度が上がる。骨格を構成する酸化ケイ素の割合は、母材のホウケイ酸塩ガラスの酸化ケイ素成分が多いと大きくなる。このため、多孔質ガラスの強度を上げるには酸化ケイ素成分が多いホウケイ酸塩ガラスが望ましい。
また多孔質ガラスの骨格径や細孔径、空孔率等の構造は諸特性へ影響を及ぼすため、広範囲にわたる構造の形成制御が必要である。多様なサイズの多孔質構造を有する多孔質ガラスを得るためには、ホウケイ酸塩ガラスの広い組成領域で相分離を起こさせることが望まれる。以上のことから酸化ケイ素が多いホウケイ酸塩ガラスで相分離を誘起させることが必要である。
しかしながら、構成要素が酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化ナトリウムのみのホウケイ酸塩ガラスは特定組成範囲でしか相分離が起こらない。そこで他成分を添加することによって酸化ケイ素が多い組成領域にあるホウケイ酸塩ガラスで相分離の発現を制御することが必要である。
例えば、非特許文献1では、ホウケイ酸塩ガラスに酸化アルミを構成要素として添加しているが、これは相分離を抑制する作用をしている。
特許文献1には、重金属または希土類元素を含んでいる多孔質ガラスが開示されているが、酸化ケイ素成分が60重量%以下のホウケイ酸塩ガラスである。また、重金属や希土類元素を添加物として含んだホウケイ酸塩ガラスであるが、添加物が相分離を促進させる効果を及ぼしていない。
特開2005−060679号公報
John Wiley&Sons,"Introduction to Ceramics",second edition,Chapter 8,1960.
しかしながら、従来の技術では、構成要素が酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化ナトリウムから成り、かつ酸化ケイ素を60重量%以上含むホウケイ酸塩ガラスにおいて、添加物を加えることにより相分離を促進させ、多孔質ガラスを得る報告例はない。
このように、強度が高く、多様な多孔質構造を有する多孔質ガラスを得るために、酸化ケイ素の含有割合が多く、相分離を起こし、そして分相処理後のエッチングにも耐えるホウケイ酸塩ガラスが必要とされていた。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、酸化ケイ素の含有量が多くても相分離を起し、強度が高い多孔質ガラスを製造することができるホウケイ酸塩ガラスを提供するものである。
また、本発明は、酸化ケイ素の含有割合が多くても相分離を起すホウケイ酸塩ガラスを用いて、強度が高い多孔質ガラスの製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記の多孔質ガラスの製造方法により得られた多孔質ガラスを提供するものである。
本発明に係るホウケイ酸塩ガラスは、酸化ケイ素60重量%以上72重量%以下、酸化ホウ素18重量%以上30重量%以下、酸化ナトリウム9.5重量%以上15重量%以下、酸化セリウム0.1重量%以上5.0重量%以下を含有することを特徴とする。
本発明に係る多孔質ガラスの製造方法は、上記のホウケイ酸塩ガラスを加熱による分相処理をしてシリカリッチ相と非シリカリッチ相に相分離させる工程、前記非シリカリッチ相を溶液によるエッチングにより溶出させる工程を有することを特徴とする。
本発明に係る多孔質ガラスは、上記の多孔質ガラスの製造方法により得られた、酸化ケイ素を主成分とする骨格を有する多孔質ガラスである。
本発明によれば、酸化ケイ素の含有割合が多くても相分離を起し、強度が高い多孔質ガラスを製造することができるホウケイ酸塩ガラスを提供することができる。
また、本発明によれば、酸化ケイ素の含有割合が多くても相分離を起すホウケイ酸塩ガラスを用いて、強度が高い多孔質ガラスの製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、上記の多孔質ガラスの製造方法により得られた多孔質ガラスを提供することができる。
実施例1で作成した多孔質ガラス表面の走査電子顕微鏡写真である。 比較例1で作製した多孔質ガラス表面の走査電子顕微鏡写真である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係るホウケイ酸塩ガラスは、酸化ケイ素(SiO)60重量%以上72重量%以下、酸化ホウ素(B)18重量%以上30重量%以下、酸化ナトリウム(NaO)9.5重量%以上15重量%以下、酸化セリウム(CeO)0.1重量%以上5.0重量%以下を含有することを特徴とする。
以下にホウケイ酸塩ガラスについて説明をする。特に、本発明に係るホウケイ酸塩ガラスに酸化セリウム(CeO)を含有することを特徴とする。
相分離を起こし、多孔質ガラスが得られるガラスとして、ホウケイ酸塩ガラスがある。ホウケイ酸塩ガラスは酸化ケイ素、酸化ホウ素、アルカリ金属酸化物とくに酸化ナトリウムを構成要素とするアモルファスが一般的である。このホウケイ酸塩ガラスの組成は酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化ナトリウムに換算した重量比で表現される。
まず、ガラス原料を混合溶融してガラス体を得る。所望の組成となるように原料を調製し、調製した原料を加熱溶融し、必要に応じて所望の形態に成形することによりガラス体を製造する。加熱溶融する場合の加熱温度は、原料組成等により適宜設定すれば良いが、通常は1300から1500℃、特に1350から1450℃の範囲とすることが好ましい。
例えば、原料として炭酸ナトリウム、ホウ酸及び酸化ケイ素を均一に混合し、1350から1450℃に加熱溶融すれば良い。この場合、原料は、所望組成のホウケイ酸塩ガラスが得られれば、どのような原料を用いても良い。
また、多孔質ガラスの形状は、管状、板状、球状、膜状等、どのような形状であってもよいので、それに相応してガラス体の形状も管状、板状、球状、膜状等、どのような形状でもよい。ガラス体を管状、板状、球状、膜状等の形状にする場合は、ガラス原料を混合溶融した後、概ね700から1000℃で、各種の形状に成形すれば良い。例えば、上記原料を溶融した後、溶融温度から温度を降下させて700から1000℃に維持した状態で成形する方法を好適に採用することができる。
特定の組成にあるホウケイ酸塩ガラスは分相処理により酸化ケイ素を主成分とするシリカリッチ相と、酸化ホウ素とアルカリ金属酸化物を主成分とする非シリカリッチ相に相分離する。通常は500から700℃の範囲で相分離が発現する。多孔質ガラスを得るためには、相分離がスピノーダル型に起こることが望ましく、このように相分離するホウケイ酸塩ガラスの組成は主要三成分が特定の割合範囲内にある。特に酸化ケイ素の含有成分が多いホウケイ酸塩ガラスは所望の相分離を起こしにくい。
続いて、相分離したホウケイ酸塩ガラスについて非シリカリッチ相を溶液で溶出させるエッチング処理を行うことで、シリカリッチ相が骨格として残り多孔質ガラスが得られる。
多孔質ガラスを構成する骨格は主に酸化ケイ素である。骨格径や細孔径、空孔率が同程度の場合、骨格を構成する酸化ケイ素の割合が多いほど強度が上がる。また骨格を構成する酸化ケイ素成分が少ない場合、エッチング処理時に割れが発生する可能性がある。骨格を構成する酸化ケイ素の割合は、母材のホウケイ酸塩ガラスの酸化ケイ素成分が多いと大きくなる。このため、多孔質ガラスの強度を上げるには母材ガラスが酸化ケイ素成分の多いホウケイ酸塩ガラスであることが望ましい。
また多孔質ガラスの骨格径や細孔径、空孔率等の構造は諸特性へ影響を及ぼすため、これらの広範囲にわたる制御が必要である。多孔質構造を変化させるためには、母材となるホウケイ酸塩ガラスの組成を変えること、分相処理の温度や時間等のプロファイルを変えることが挙げられる。多孔質サイズを多様に変え、構造形成の自由度を高めるためには、ホウケイ酸塩ガラスの組成を変えることが望ましく、加えてホウケイ酸塩ガラスの広い組成領域で分相処理が行えることが望まれる。
以上のことから、本発明のホウケイ酸塩ガラスは、比較的酸化ケイ素が多い組成領域でありながら、相分離を起こすホウケイ酸塩ガラスである。
[ホウケイ酸塩ガラスの組成の実施態様(1)]
本発明のホウケイ酸塩ガラスの組成の好ましい実施態様(1)は、下記の組成である。
本発明のホウケイ酸塩ガラスは、酸化ケイ素(SiO)60重量%以上72重量%以下、酸化ホウ素(B)18重量%以上30重量%以下、酸化ナトリウム(NaO)9.5重量%以上15重量%以下、酸化セリウム(CeO)0.1重量%以上5.0重量%以下を含有することを特徴とする。
[ホウケイ酸塩ガラスの組成の実施態様(2)]
本発明のホウケイ酸塩ガラスの組成の好ましい実施態様(2)は、下記の組成である。
本発明のホウケイ酸塩ガラスは、酸化ケイ素63重量%以上68重量%以下、酸化ホウ素18重量%以上21重量%以下、酸化ナトリウム9.5重量%以上11重量%以下、酸化セリウム0.1重量%以上5.0重量%以下を含有する組成からなることが望ましい。
[ホウケイ酸塩ガラスの組成の実施態様(3)]
本発明のホウケイ酸塩ガラスの組成のさらに好ましい実施態様(3)は、下記の組成である。
本発明のホウケイ酸塩ガラスは、酸化ケイ素68重量%以上72重量%以下、酸化ホウ素18重量%以上19重量%以下、酸化ナトリウム9.5重量%以上10重量%以下、酸化セリウム0.1重量%以上3.0重量%以下を含有する組成からなることが望ましい。
本発明において、酸化ケイ素(SiO)と酸化セリウム(CeO)におけるシリコン原子に対するセリウム原子の原子比(Ce/Si)が0.01≦Ce/Si≦0.13、好ましくは0.02≦Ce/Si≦0.13であることが望ましい。
本発明の相分離母体ガラスは、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化ナトリウム、酸化セリウム以外のその他の成分を含有していてもよい。例えば、原料に含まれる不純物成分や製造工程で含有される不純物成分が挙げられる。その他の成分としては、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛の酸化物等が挙げられる。その他の成分の含有量は、SiO NaO、CeOの各成分の全体に対して、2重量%以下、特に1重量%以下が好ましい。
本発明において、酸化セリウムを構成要素に加えることによって酸化ケイ素の割合が多いホウケイ酸塩ガラスでの相分離を促進させる。このメカニズムは明らかになっていないが、以下のような仮説が考えられる。構成要素に別化合物が加わることで自由エネルギーが変化し、分相処理時のように温度を上げた際の安定状態も変化する。主要三成分(酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化ナトリウム)で十分な相分離、特にスピノーダル相分離を起こさない組成比であるホウケイ酸塩ガラスへ、酸化セリウムを加える。これにより、ホウケイ酸塩ガラスの自由エネルギーが変化し、分相処理の温度印加時にスピノーダル相分離を起した状態が最安定なるため、スピノーダル型の相分離が発現する。
一方、酸化セリウムの割合が多くなり過ぎると、自由エネルギーの変化が大きくなる。よって、分相処理の温度印加時の最安定状態も変化し、スピノーダル型の相分離が発現しなくなる。また、スピノーダル型の相分離を起こしたとしても、骨格内への酸化セリウムの含有割合が多くなり、多孔質の強度が下がる。よってエッチング時に割れを起こすなどが発生し多孔質ガラスが得られない。
本発明のホウケイ酸塩ガラスにおいて、酸化セリウムの含有量が、0.1重量%以上5.0重量%以下であり、好ましくは2.0重量%以上5.0重量%以下である。
次に、本発明の多孔質ガラスの製造方法について説明する。
本発明に係る多孔質ガラスの製造方法は、上記のホウケイ酸塩ガラスを加熱による分相処理をしてシリカリッチ相と非シリカリッチ相に相分離させる工程、前記非シリカリッチ相を溶液によるエッチングにより溶出させる工程を有することを特徴とする。
ガラス相分離現象は、ホウケイ酸塩ガラスを一般的に500から700℃付近で数時間から数十時間保持する分相処理により、スピノーダル構造またはバイノーダル構造を形成することで発現する。多孔質化にはスピノーダル構造が望ましい。分相処理における工程は、一定温度で保持しても良く、もしくは一定の昇温レートまたは降温レートを保った熱印加処理をしても良い。分相工程の時間は1分以上であり、より好ましくは5分以上である。相分離の発現の様子は走査型電気顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手法で確認できる。
分相処理はその分相温度領域内で温度が高いほど、また保持時間が長いほど、多孔質の骨格径や細孔径が大きくなり、同時に空孔率も増大する傾向がある。この現象についてメカニズムは明確になっていないが、以下のような仮説が考えられる。ある温度における相分離の平衡状態に達するまでには、数百時間ほどの時間がかかる。数時間から数十時間の分相処理の時間領域では時間が長いほど、相分離の平衡状態に近づき、より相分離が顕著になる、すなわち骨格径や細孔径が大きくなると考えられる。また温度が上がることで反応速度が増す効果が現れ、温度が高いほど同じ処理時間で、相分離の平衡状態に近づくことにより、相分離の様子が顕著になる、すなわち骨格径や細孔径が大きくなる。加えて、温度が上がることで、相分離の平衡状態における互いの相の組成は近づく。非シリカリッチ相への酸化ケイ素の含有量が多くなるため、酸エッチングにより除去される部分も比較的多くなり、空孔率が大きくなると考えられる。
相分離したホウケイ酸塩ガラスにおいて非シリカリッチ相は酸、アルカリ、水などの溶液に対して可溶である。よって溶液を接触させる処理により可溶相が溶出し、主に酸化ケイ素より形成される相のみが骨格として残り、多孔質が形成される。溶液をガラスに接触させる手段としては、溶液中にガラスを浸漬させる手段が一般的であるが、ガラスに溶液をかけるなど、ガラスと溶液が接触する手段であれば何ら限定されない。溶液としては、酸溶液、アルカリ溶液、水など、可溶相を溶出可能な既存の如何なる溶液を使用することも可能である。また、用途に応じてこれらの溶液に接触させる工程を複数種類選択してもよい。
一般的な相分離を起こしたガラスのエッチングでは、非可溶相部分への負荷の小さいことと、選択エッチングの度合いの観点から酸処理が好適に用いられる。酸を含む溶液と接触させることによって、酸可溶成分である非シリカリッチ相が溶出除去される一方で、非可溶相であるシリカリッチ相の侵食は比較的小さく、高い選択エッチング性を達成可能である。
酸を含む水溶液としては、例えば塩酸、硫酸、燐酸、硝酸等の無機酸等を好ましく用いることができる。酸を含む溶液は通常は水を溶媒とした水溶液の形態で好適に使用することができる。酸を含む溶液の濃度は、通常は0.1mol/Lから2.0mol/L(0.1から2規定)の範囲内で適宜設定すれば良い。
この工程では、その水溶液の温度を室温から100℃の範囲とし、処理時間は1から100時間程度とすれば良い。
ガラス組成によって、分相処理後のガラス表面にエッチングを阻害するシリカリッチ層が数百ナノメートル程度発生する場合がある。この表面シリカリッチ層を研磨やアルカリ処理などで除去することもできる。
エッチング時にガラス組成によっては骨格部にゲル状シリカが堆積する場合がある。必要であれば、酸性度、アルカリ性度が異なる酸溶液、アルカリ溶液を用い、多段階でエッチングする方法を用いることができる。エッチング温度として、室温から95℃でエッチングを行うこともできる。また必要であれば、エッチング処理中に超音波を印加して行うこともできる。
溶液による浸漬処理の後、多孔質ガラス中に付着した溶液や溶出せずに残った可溶層を除去する目的で、水によるリンスを行うのが一般的である。
エッチングが完了して得られたガラスの多孔質構造の様子は、走査型電気顕微鏡(SEM)などの観察手法で確認できる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
本発明の実施例、比較例のために母材ガラスを作成した。原料化合物としては、酸化ケイ素粉末(SiO)、酸化ホウ素(B)、炭酸ナトリウム(NaCO)であり、加えて酸化セリウム(CeO)を用いた。実施例、比較例で用いたホウケイ酸塩ガラスの含有組成は、各金属元素の酸化物、すなわち酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化ナトリウム、酸化セリウムにおける重量%で換算して表1に示した。
原料の金属化合物を混合した粉末を白金るつぼの中に入れ、1500℃、24時間溶融してガラスを得た。その後、ガラスを1300℃に下げてから、グラファイトの型に流し込んだ。空気中で20分間冷却してホウケイ酸塩ガラスを得た。得られたホウケイ酸塩ガラスのブロックを40mm×30mm×1mmとなるように切断加工し、鏡面まで両面研磨を行った。
(実施例1から3)
表1に記載した各母材ガラスから15mm×15mm×1mmを切り出し、600℃、50時間の分相処理を行った。
分相後のガラスサンプルを酸溶液によりエッチングを行った。酸溶液には1mol/Lの硝酸50gを用いた。ポリプロピレン製の容器に硝酸を入れ、予めオーブンで80℃にした。その中へガラスを白金ワイヤーで溶液内中心部に来るように吊るして入れた。ポリプロピレン容器に蓋をし、80℃に保ったまま、24時間放置した。硝酸による処理が終わったガラスを80℃の水に入れてリンス処理を行った。
走査電子顕微鏡(SEM)による観察により、多孔質ガラスとなっていることを確認した。いずれの多孔質ガラスもスピノーダル構造が見られた。実施例1で得られた多孔質ガラスの走査電子顕微鏡(SEM)像を図1に示す。
得られた多孔質ガラスを蛍光エックス線分析(XRF)で組成分析すると、いずれも酸化物換算で酸化ケイ素が90重量%以上であり、酸化ケイ素の含有が確認された。
(比較例1)
実施例1で使用した組成を元に、酸化セリウムを用いず、他の三成分の比は表1に記載した組成のサンプルを用いた。15mm×15mm×1mmを切り出し、600℃、50時間の分相処理を行った。
分相処理後のガラスサンプルをSEM観察したところ、スピノーダル構造にはなっていなかった。
ガラスサンプルを実施例1と同様に酸溶液によりエッチングを行ったところ割れが生じ、多孔質ガラスは得られなかった。エッチング後のガラスのSEM像を図2に示す。
(比較例2)
表1に記載した組成サンプルを15mm×15mm×1mmを切り出し、600℃、50時間の分相処理を行った。
分相処理後のガラスサンプルをSEM観察したところのスピノーダル構造が見られた。
ガラスサンプルを実施例1と同様に酸溶液によりエッチングを行ったところ割れが生じ、多孔質ガラスは得られなかった。
Figure 2012193067
(注1)シリコン原子に対するセリウム原子の(Ce/Si)原子比は、仕込みの時点の酸化ケイ素(SiO)、酸化セリウム(CeO)から、シリコン原子、セリウム原子のモル量を計算し、Ce/Si原子比を算出した。
(注2)スピノーダル化
○は分相後のSEM観察でスピノーダルが確認されたサンプルを示す。
×は分相後のSEM観察でスピノーダルが確認されなかったサンプルを示す。
(注3)酸処理耐性
○は酸溶液によるエッチングで多孔質化したサンプルを示す。
×は酸溶液によるエッチングで割れなど破壊が発生したサンプルを示す。
本発明のホウケイ酸塩ガラスは、酸化ケイ素の含有割合が多くても相分離が起こるため、強度が高く、多様な多孔質構造を有する多孔質ガラス等に幅広く応用が可能である。

Claims (5)

  1. 酸化ケイ素60重量%以上72重量%以下、酸化ホウ素18重量%以上30重量%以下、酸化ナトリウム9.5重量%以上15重量%以下、酸化セリウム0.1重量%以上5.0重量%以下を含有することを特徴とするホウケイ酸塩ガラス。
  2. 前記酸化セリウムの含有量が、2.0重量%以上5.0重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のホウケイ酸塩ガラス。
  3. 前記酸化ケイ素と酸化セリウムにおけるシリコン原子に対するセリウム原子の原子比(Ce/Si)が0.01≦Ce/Si≦0.13であることを特徴とする請求項1または2に記載のホウケイ酸塩ガラス。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載のホウケイ酸塩ガラスを加熱による分相処理をしてシリカリッチ相と非シリカリッチ相に相分離させる工程、前記非シリカリッチ相を溶液によるエッチングにより溶出させる工程を有することを特徴とする多孔質ガラスの製造方法。
  5. 請求項4に記載の多孔質ガラスの製造方法により得られた、酸化ケイ素を主成分とする骨格を有する多孔質ガラス。
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