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JP2011196367A - 内燃機関システム - Google Patents

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Abstract

【課題】着火性・燃焼性の変動を考慮しつつ水素添加し、内燃機関の熱効率が高い内燃機関システムを提供する。
【解決手段】ガソリンを燃焼するガソリンエンジン10Aと、ガソリンエンジン10Aに水素を含む水素含有ガスを添加する水素含有ガス添加手段(水素タンク61、水素インジェクタ63)と、水素含有ガス添加手段による水素添加量を、水素添加によるオクタン価、セタン価の変動を考慮して設定された水素添加量データに基づいて決定する水素添加量決定手段(ECU70)と、を備えることを特徴とする内燃機関システム1である。
【選択図】図1

Description

本発明は、水素を含む水素含有ガスが添加される内燃機関を備える内燃機関システムに関する。
従来、例えば特許文献1〜2に開示されるように、ガソリン、軽油等の燃料を燃焼する内燃機関に、燃焼性の高い水素を添加することで、出力等を向上させ、排気ガス(エミッション)を低減する技術が知られている。
特許第4103867号公報 特許第4196897号公報
ところが、従来は、ガソリン、軽油等の燃料に、水素が添加されたとしても、着火性、燃焼性に関するオクタン価、セタン価等の指数(着火指数)は、固定値として取り扱われていた。
すなわち、ガソリン、軽油に水素が添加されると、燃料の着火は抑制され、ガソリンの場合にはノッキングが抑制され、軽油の場合には着火遅れ期間が長くなり予混合化できる、と知られているので、実際には、そのオクタン価、セタン価が変動していると思われるが、従来は、水素添加によるオクタン価、セタン価の変動を考慮せず、つまり、水素添加の有無に関わらず、一定の固定値として取り扱われていた。
ここで、ガソリンエンジンの場合、高負荷領域では、ノッキングの抑制のために、高オクタン価の燃料が望まれる。そして、ディーゼルエンジンの場合、中高負荷領域では、排気ガス(エミッション)の低減のため予混合燃焼を促進させる低セタン価の燃料が望まれる。
そして、高オクタン価燃料と、低セタン価燃料とは、いずれも低着火性であるので、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンのいずれにおいても、高負荷領域では低着火性の燃料が望まれることになる。
そこで、本発明は、着火性・燃焼性の変動を考慮しつつ水素添加し、内燃機関の熱効率が高い内燃機関システムを提供することを課題とする。
前記課題に鑑み、本願発明者は、内燃機関における水素添加された燃料の燃焼について鋭意検討したところ、水素は着火性が低いが、燃焼速度が大きく、燃焼についてのロバスト性(燃焼ロバスト性)が高い、という特性を有しているので、水素を添加すると、着火性は低くなり、燃焼速度は大きく、燃焼ロバスト性は高くなる、という知見を得た。
すなわち、水素添加量を制御することで、水素添加後の燃料全体の着火性を最適化しつつ、燃焼速度を大きくし、燃焼ロバスト性を高めて、熱効率を高めることができる、という知見を得た。
そして、燃焼速度が大きくなり、ロバスト性が高くなると、燃焼変動率が小さくなるので、EGR率を高めることもでき、排気ガス(エミッション)を低減できる、という知見を得た。また、燃焼速度が大きくなると、ノッキングし難くなる、という知見を得た。
このような知見に基づいて、前記課題を解決するための手段として、本発明は、燃料を燃焼する内燃機関と、前記内燃機関に水素を含む水素含有ガスを添加する水素含有ガス添加手段と、前記水素含有ガス添加手段による水素添加量を、水素添加によるオクタン価、セタン価の変動を考慮して設定された水素添加量データに基づいて決定する水素添加量決定手段と、を備えることを特徴とする内燃機関システムである。
ここで、水素含有ガスは、高純度の水素や、水素を含む改質ガスを含む。
このような内燃機関システムによれば、水素添加量決定手段が、水素添加によるオクタン価、セタン価の変動を考慮して設定された水素添加量データに基づいて、水素添加量を決定し、決定された水素添加量となるように水素含有ガス添加手段が水素含有ガスを添加する。
このように、オクタン価、セタン価の変動を考慮して設定された水素添加量データに基づいて、水素添加量を決定するので、つまり、水素添加後の燃料のオクタン価、セタン価等の着火指数(着火性、燃焼性)を考慮したうえで、水素添加量を適切に決定するので、水素添加後の燃料の着火性・燃焼性は適切となる。
また、水素添加により、燃焼速度は大きく、そして、燃焼ロバスト性は高くなるので、内燃機関における燃焼変動率を小さくすると共に、内燃機関の熱効率を高め、排気ガス中のNOx等を低減できる。
また、前記内燃機関システムにおいて、前記水素添加量決定手段は、EGR量を考慮して、水素添加量を決定することを特徴とする。
このような内燃機関システムによれば、水素添加量決定手段が、EGR量を考慮して、水素添加量を決定するので、水素添加量をより適切にできる。
なお、EGR量(率)が大きくなると、着火し難くなり、燃焼変動率が大きくなる傾向があるので、EGR量(率)が大きくなると、水素添加量を増加させ、燃焼変動率が例えば5%以下となるように制御することが好ましい。
また、前記内燃機関システムにおいて、前記水素含有ガス添加手段が決定された水素添加量で水素含有ガスを添加した後において前記内燃機関でノッキングが発生した場合、前記水素添加量決定手段は水素添加量を増加させることを特徴とする。
このような内燃機関システムによれば、水素含有ガスを添加した後において内燃機関でノッキングが発生した場合、水素添加量決定手段は水素添加量を増加させるので、燃焼性が高まり、その後におけるノッキングを抑制できる。
また、前記内燃機関システムにおいて、前記水素含有ガス添加手段が決定された水素添加量で水素含有ガスを添加した後、前記水素添加量決定手段は、前記内燃機関における着火遅れ時間が所定時間以上となるように、水素添加量を補正することを特徴とする。
このような内燃機関システムによれば、水素添加量決定手段が、内燃機関における着火遅れ時間が所定時間以上となるように、水素添加量を補正するので、着火遅れ時間を所定時間以上で確保できる。
また、前記内燃機関システムにおいて、前記内燃機関における燃焼状態を検出する燃焼状態検出手段と、前記燃焼状態検出手段の検出する燃焼状態に基づいて、前記内燃機関における燃焼が緩慢になるように、EGR量を制御するEGR量制御手段と、を備えることを特徴とする。
このような内燃機関システムによれば、EGR量制御手段が、燃焼状態検出手段の検出する燃焼状態(後記する実施形態では、圧力センサの検出する筒内圧)に基づいて、内燃機関における燃焼が緩慢になるように、EGR量を制御する、つまり、EGR量(率)を増加させる。
このようにして、EGR量が増加すると、内燃機関における熱効率をほとんど低下させずに(後記する図15参照)、内燃機関のクランク角に対する熱発生率を遅らせると共に(後記する図16A〜図16D参照)、(dP/dθ)max及び最大筒内圧Pmaxを下げ(後記する図13、図14参照)、そして、内燃機関の排気ガス中のNOを下げることができる(後記する図17参照)。
また、前記内燃機関システムにおいて、前記水素添加量決定手段は、前記燃焼状態検出手段の検出する燃焼状態に基づいて、前記内燃機関における燃焼が緩慢になるように、水素添加量を決定することを特徴とする。
このような内燃機関システムによれば、水素添加量決定手段が、燃焼状態検出手段の検出する燃焼状態に基づいて、内燃機関における燃焼が緩慢になるように、水素添加量を決定する、つまり、水素添加量を増加させる。そして、この増加して決定された水素添加量に従って、水素含有ガス添加手段が水素含有ガスを添加する。
このようにして、水素添加量が増加すると、(dP/dθ)max及び最大筒内圧Pmaxを下げ(後記する図13、図14参照)、クランク角に対する熱発生率をさらに遅らせると共に(後記する図16A〜図16D参照)、排気ガス中のCO、THC(Total Hydro Carbon、全炭化水素)及び煤(Soot)を低減できる(後記する図18〜図20参照)。
また、前記内燃機関システムにおいて、前記EGR量制御手段が、EGR量を35〜45%に制御した後、前記水素添加量決定手段が、前記燃焼状態検出手段の検出する燃焼状態に基づいて、前記内燃機関における燃焼が緩慢になるように、水素添加量を決定することを特徴とする。
このような内燃機関システムによれば、EGR量制御手段がEGR量を35〜45%に制御した後、水素添加量決定手段が、燃焼状態検出手段の検出する燃焼状態に基づいて、内燃機関における燃焼が緩慢になるように、水素添加量を決定するので、内燃機関における燃焼を緩慢燃焼にさらに近づけることができる。
本発明によれば、着火性・燃焼性の変動を考慮しつつ水素添加し、内燃機関の熱効率が高い内燃機関システムを提供することができる。
第1実施形態に係る内燃機関システムの構成を示す図である。 第1実施形態に係る内燃機関システムの動作を示すフローチャートである。 エンジンの回転速度と、エンジンの必要トルク(負荷)と、水素添加量との関係を示すマップである。 ガソリンに水素添加した場合における水素添加率(発熱量%)と水素添加されたガソリンのオクタン価との関係を示すグラフである。 吸気空気への水素添加量(vol%)とOHラジカル発生量との関係を示すグラフである。 ガソリンエンジンにおけるEGR率(%)と燃焼変動率(%)との関係を示すグラフである。 ガソリンエンジンにおける圧縮比と熱効率(%)との関係を示すグラフである。 第2実施形態に係る内燃機関システムの動作を示すフローチャートである。 軽油に水素添加した場合における水素添加率(発熱量%)と水素添加された軽油のセタン価との関係を示すグラフである。 軽油におけるセタン価とオクタン価との関係を示すグラフである。 ディーゼルエンジンの排気ガス中の一酸化窒素(g/kWh)とスモーク(%)との関係を示すグラフである。 第3実施形態に係る内燃機関システムの動作を示すフローチャートである。 EGR率及び水素添加率と、(dP/dθ)maxとの関係を示すグラフである。 クランク角、EGR率及び水素添加率と、筒内圧との関係を示すグラフである。 EGR率及び水素添加率と熱効率との関係を示すグラフである。 EGR率が0%の場合において、クランク角及び水素添加率と熱発生率との関係を示すグラフである。 EGR率が20%の場合において、クランク角及び水素添加率と熱発生率との関係を示すグラフである。 EGR率が30%の場合において、クランク角及び水素添加率と熱発生率との関係を示すグラフである。 EGR率が40%の場合において、クランク角及び水素添加率と熱発生率との関係を示すグラフである。 EGR率及び水素添加率と排気ガス中のNOとの関係を示すグラフである。 EGR率及び水素添加率と排気ガス中のCOとの関係を示すグラフである。 EGR率及び水素添加率と排気ガス中のTHCとの関係を示すグラフである。 EGR率及び水素添加率とSoot(煤)との関係を示すグラフである。
≪第1実施形態≫
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
≪内燃機関システムの構成≫
図1に示す第1実施形態に係る内燃機関システム1は、図示しない車両に搭載されている。
内燃機関システム1は、ガソリン(燃料)を燃焼するガソリンエンジン10A(内燃機関)と、ガソリンエンジン10Aにガソリンを供給する燃料供給系(燃料供給手段)と、排気ガスの一部を吸気系に導き排気ガスを循環させるEGR(Exhaust Gas Recirculation:排気ガス再循環)系と、ガソリンエンジン10Aに水素(水素含有ガス)を添加する水素添加系(水素含有ガス添加手段)と、これらを電子制御する制御手段であるECU70(Electronic Control Unit、電子制御装置)と、を備えている。
<ガソリンエンジン>
ガソリンエンジン10Aは、4サイクル(吸入、圧縮、燃焼・膨張、排気)を繰り返す4ストローク機関であって、内部に気筒11a(シリンダ)が形成されたシリンダブロック11と、気筒11a内を往復運動するピストン12と、内部に吸気ポート13a及び排気ポート13bが形成されたヘッドカバー13と、吸気ポート13aに設けられた吸気弁14と、排気ポート13bに設けられた排気弁15と、を備えている。
なお、簡単に説明するため、図1では、1つの気筒11aのみを記載しているが、気筒11aの数、気筒11aの配列、ガソリンエンジン10Aの排気量は、変更自由である。
吸気ポート13aには、吸気配管21aが接続されている。そして、ガソリンエンジン10Aが作動すると、車外の空気が自然吸気され、吸気配管21aを通って、吸気ポート13aに向かうようになっている。
排気ポート13bには、排気配管31aが接続されている。そして、ガソリンエンジン10Aからの排気ガスは、排気配管31aを通って、車外に排出されるようになっている。
また、ガソリンエンジン10Aには、圧力センサ16(燃焼状態検出手段)、クランク角センサ17、ノックセンサ18が取り付けられている。圧力センサ16は、気筒11a内の圧力(筒内圧)を検出し、ECU70に出力するようになっている。クランク角センサ17は、クランクシャフト(図示しない)の角度(クランク角)を検出し、ECU70に出力するようになっている。ノックセンサ18は、ガソリンエンジン10Aのノッキング状態を検出し、ECU70に出力するようになっている。
その他、ガソリンエンジン10Aには、点火プラグ(図示しない)が取り付けられている。点火プラグによる点火のタイミングは、クランク角センサ17から入力されるクランク角に基づいて、ECU70によって制御される。
<燃料供給系>
燃料供給系は、ガソリンを貯溜する燃料タンク41と、ガソリンを圧送する燃料ポンプ42と、ガソリンを噴射する燃料インジェクタ43(燃料用インジェクタ)と、を備えている。
燃料タンク41は、配管41a、燃料ポンプ42、配管42aを介して、燃料インジェクタ43に接続されている。そして、燃料ポンプ42がECU70の指令に従って作動すると、燃料タンク41のガソリンが、燃料インジェクタ43に圧送されるようになっている。
燃料インジェクタ43は、ヘッドカバー13に取り付けられており、ECU70からの指令に従って作動(開弁)すると、ガソリンが気筒11a内に直接噴射されるようになっている。ただし、噴射位置はこれに限定されず、吸気ポート13aに噴射される構成でもよい。
また、燃料インジェクタ43は、ECU70に電子制御されるリニアソレノイド型で常閉型の電磁弁で構成されている。これにより、燃料インジェクタ43は、ECU70の指令に従って高精度で開/閉し、よって、ガソリンの噴射量、噴射タイミング、噴射時間が高精度で制御されるようになっている。
<EGR系>
EGR系は、吸気側に戻す排気ガスの流量を制御可能な流量制御弁であるEGR弁51を備えている。
そして、排気配管31aの途中は、配管51a、EGR弁51、配管51bを介して、吸気配管21aに接続されている。次いで、EGR弁51の開度が、ECU70によって制御されることで、排気ガスの一部が吸気側に戻され、排気ガスが再循環し、EGR率(排気ガスの添加割合)が制御されるようになっている。
<水素添加系>
水素添加系は、水素が高圧で封入された水素タンク61と、水素の圧力を所定圧力に減圧するレギュレータ62(減圧弁)と、水素インジェクタ63(水素用インジェクタ)と、を備えている。
水素タンク61は、配管61a、レギュレータ62、配管62aを介して、水素インジェクタ63に接続されており、水素タンク61の水素は、レギュレータ62で減圧された後、水素インジェクタ63に供給されるようになっている。
水素インジェクタ63は、ヘッドカバー13に取り付けられており、ECU70からの指令に従って作動(開弁)すると、水素が吸気ポート13aに噴射されるようになっている。
また、水素インジェクタ63は、燃料インジェクタ43と同様に、リニアソレノイド型で常閉型の電磁弁で構成されている。これにより、水素インジェクタ63は、ECU70の指令に従って高精度で開/閉し、よって、水素の噴射量、噴射タイミング、噴射時間が高精度で制御されるようになっている。
したがって、第1実施形態において、ガソリンエンジン10A(内燃機関)に水素(水素含有ガス)を添加する水素含有ガス添加手段は、水素タンク61と、水素インジェクタ63と、ECU70と、を備えて構成されている。
<ECU>
ECU70(制御手段)は、内燃機関システム1を電子制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、各種機能を発揮し、各種機器を制御する。
また、ECU70には、アクセル開度センサ81の検出したアクセル開度(スロットル開度)が入力されるようになっている。
<ECU−水素添加量決定機能>
また、ECU70(水素添加量決定手段)は、ガソリンエンジン10Aの回転速度と、ガソリンエンジン10Aに要求される必要トルク(出力)と、その内部に記憶された図3のマップ(水素添加量データ)とに基づいて、水素添加量を決定する機能を備えている。
具体的な方法は、後で説明する。
≪内燃機関システムの動作≫
次に、内燃機関システム1の動作について、図2のフローチャートを参照して説明する。
なお、図2に示す制御処理は、例えば、一定のクランク角毎に周期的に実行される。
ステップS101において、ECU70は、アクセル開度センサ81からのアクセル開度に基づいて、ガソリンエンジン10Aが目標値とすべき必要トルク(負荷)を算出する。
なお、この算出に際しては、アクセル開度と必要トルクとが関連付けられたマップが参照され、アクセル開度が大きくなると必要トルクが大きくなる関係となっている。
ステップS102において、ECU70は、ステップS101で算出した必要トルクと、ガソリンエンジン10Aの回転速度と、その内部に記憶された図3のマップ(水素添加量データ)とに基づいて、水素添加量を算出する。
なお、ガソリンエンジン10Aの回転速度は、クランク角センサ17から入力されるクランク角に基づいて算出される。
<水素添加量データ−ガソリンエンジン>
図3は、ある一のEGR率(例えば20%)において、ガソリンエンジン10Aの回転速度と必要トルクとにおける最適な水素添加量を、便宜的に複数の領域に分けて模式的に例示するマップである。
つまり、ECU70には、EGR率が15%、20%、25%、30%の様に、各EGR率毎に、図3と同様のマップが複数記憶されている。そして、ECU70は、現在のEGR率に基づいて、参照すべきマップを選択し、選択したマップにおける必要トルク(負荷)及び回転速度とに基づいて、今回の水素添加量を算出するようになっている。
そして、図3において、左下から右上に向かうにつれて、つまり、回転速度が高くなるにつれて、必要トルクが大きくなるにつれて、目標となる水素添加量が多くなる傾向となっている。
なお、図3では、水素添加量の多少をハッチングの濃淡で示しており、濃い領域になるにつれて、水素添加量が多くなることを示している。
ここで、ガソリンエンジン10Aの場合について、図3のように、領域を設定する方法を説明する。
まず、ガソリンエンジン10Aでは、例えばポンピングロス(吸気抵抗損失)を減らすためにEGR率が高められるが、単にEGR率を高めると燃焼変動率(C.O.V IMEP)が増加してしまうので、水素を添加することにより、燃焼変動率の抑制が図られる。
このように水素が添加されると燃焼変動率が小さくなるのは、水素は着火性が低いが、燃焼速度が大きいので、水素が添加されると、添加後の全体の燃焼速度は大きくなるからである。
なお、燃焼速度が大きくなるとは、燃焼についてのロバスト性(燃焼ロバスト性)が高くなることを意味している。
すなわち、図4に示すように、ガソリンへの水素添加量が増加すると、添加後の全体のオクタン価は大きくなり、着火性は低くなり、燃焼速度は大きくなり、燃焼ロバスト性は高くなる。よって、図4のY軸タイトルである「水素添加されたガソリンのオクタン価」は、水素添加後のガソリン全体の着火性、燃焼性(燃焼速度)、燃焼ロバスト性を示す一指数(パラメータ)となる。
なお、図4は、市販のレギュラーガソリンへの水素の添加率と、水素が添加されたレギュラーガソリンのオクタン価との関係を示すグラフである。水素の添加率は、水素添加されたレギュラーガソリン全体の発熱量における水素の割合で与えられる。また、「SAE Paper 2004−01−0975」によれば、水素のオクタン価は140であると示されている。
そして、図4は、水素が添加されていないレギュラーガソリンのオクタン価を仮に90とした場合、オクタン価が140である水素が10%添加された水素添加後のレギュラーガソリンのオクタン価は、95であると推定されることを示している(図4の矢印参照)。
ここで、水素添加によって、燃焼速度は大きくなり、燃焼ロバスト性は高くなるのは、水素の燃焼速度が大きく、水素が高い燃焼ロバスト性を有するからと考えられる。これは、水素が燃焼反応過程で、強い酸化剤であるOHラジカル(中間体)を生成し、水素添加量が増加すると、OHラジカル量も増加するためと考えられる(図5参照)。
なお、図5は、吸気空気への水素添加量(vol%)が増加すると、OHラジカルの発生量が増加することを示している。
このように、水素添加量が増加すると、燃焼速度が大きくなると共に、ロバスト性が高くなり、燃焼変動率が小さくなる。そして、燃焼変動率が小さくなるので、EGR率を高め、燃焼温度を下げつつ、ポンピングロスを小さくでき、燃費を高めることが可能となる。
また、水素添加によりオクタン価(燃焼速度)が向上するので、ノッキングが抑制されることになる。
さらに、燃焼温度の低下と、オクタン価の向上との相乗効果により、圧縮比を高めることも可能となり、より燃費を高めることも可能となる。
そこで、水素添加量は、水素添加によるこれらの効果を考慮したうえで、事前試験等によって、EGR率(例えば15%、20%、25%、30%)毎に、ガソリンエンジン10Aの回転速度及び必要トルクに対応して、燃焼変動率が例えば5%以下となるように、設定される。
そして、このようにして設定された水素添加量をまとめて便宜的に領域に分けて示したものが図3のマップである。
図2に戻って説明を続ける。
ステップS103において、ECU70は、ステップS102で算出した水素添加濃度となるように、水素インジェクタ63を制御して、水素を添加する。
ステップS104において、ECU70は、所望のEGR率になるように、EGR弁51を制御する。なお、目標とするEGR率は、排気ガス温度等に基づいて、排気ガス温度が高くなり過ぎないように、例えば30%に設定される。
そして、ECU70は、EGR率をこのように制御しながら、現在のEGR率と、ガソリンエンジン10Aの回転速度及び必要トルクと、現在のEGR率に対応した図3のマップとに基づいて、燃焼変動率が5%以下となるように、水素添加濃度を再び算出する。具体的には、EGR率が大きくなると、つまり、吸気空気に混入される排気ガス量が増加すると、燃焼変動率を小さくするため、水素添加濃度を増加させる関係となっている。
なお、燃焼変動率は、圧力センサ16から入力される筒内圧に基づいて算出される。
ステップS105において、ECU70は、ステップS104で算出した水素添加濃度となるように、水素インジェクタ63を制御し、水素を添加する。
ここで、図3のマップは、事前試験等により燃焼変動率が5%以下になるように設定されたものであるから、ステップS104で算出された水素添加量に従ってステップS105で水素を添加することにより、燃焼変動率は5%以下に抑えられる(図6参照)。
ステップS106において、ECU70は、ノックセンサ18を介して、ノッキングを検出した否か判定する。
ノッキングを検出したと判定した場合(S106・Yes)、ECU70の処理は、ステップS107に進む。一方、ノッキングを検出していないと判定した場合(S106・No)、ECU70の処理はリターンを通ってスタートに戻る。
ステップS107において、ECU70は、水素インジェクタ63を制御し、水素を追加して添加する。
このように、ノッキングを検出した場合、水素を添加することにより、つまり、水素添加量を増加させることにより、水素添加後の全体のオクタン価、燃焼速度が大きくなり、その結果、ガソリンエンジン10Aにおける圧縮比が高まり、熱効率が向上する(図7参照)。なお、水素添加量は、例えば、ノッキングの検出頻度が多くなるほど、多くすることが好ましい。
その後、ECU70の処理はリターンを通ってスタートに戻る。
≪内燃機関システムの効果≫
このような内燃機関システム1によれば、次の効果を得る。
ガソリンエンジン10Aの必要トルク(負荷)、回転速度に基づいて、水素添加後のガソリンの着火性、オクタン価、燃焼速度、燃焼ロバスト性等が最適となるように水素添加濃度を決定して水素添加し(S102、S103)、さらに、現在のEGR率に対応した水素添加量を決定して水素添加するので(S104、S105)、燃焼変動率を5%以下にしつつ、広い運転領域(EGR率)におけるガソリンエンジン10Aの低温燃焼を実現できる(図6参照)。
すなわち、このように制御することで、大量EGR(高いEGR率)による吸気抵抗損失(ポンピングロス)と、ノッキングとを抑制できる。つまり、図6に示すように、EGR率を増加させると、燃焼変動率が増加するが、本実施形態のように水素を添加することで、燃焼速度及び燃焼ロバスト性が高くなり、EGR率が30%となっても燃焼変動率は5%以内となり、高いEGR率のまま、ガソリンエンジン10Aを運転することができる(図6の実施例参照)。
なお、水素を添加しないと、図6の比較例に示すように、EGR率が20%を超えると、燃焼変動率が5%を超えてしまう。つまり、第1実施形態では、比較例に対して、ロバスト性が格段に改善されている。
また、このような高いEGR率とすると、燃焼温度を下げ、低温燃焼とすることができる。これにより、圧縮率をさらに高め、吸気抵抗損失(ポンピングロス)を低減し、熱効率を向上させ、排気ガスを低減できる。
さらに、ノッキングを検出した場合(S106・Yes)、高オクタン価である水素をさらに添加するので(S107)、これにより、オクタン価が高められ、図7に示すように、圧縮比を高めることができ、その結果、ガソリンエンジン10Aの熱効率を高めることができる。
≪変形例≫
以上、本発明の第1実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、後記する実施形態と適宜に組み合わせたり、次のように変更できる。
前記した実施形態では、ガソリンが気筒11a内に直接噴射される直噴型のガソリンエンジン10Aを例示したが、その他、ガソリンが吸気ポート13aに噴射されるポート噴射型のガソリンエンジン10Aでもよい。
前記した実施形態では、燃料として車両用のガソリンを使用する構成を例示したが、その他に例えば、軽油、バイオ燃料、DME(Dimethyl ether)、GTL(gas to liquids)、これらが混合された混合燃料も使用できる。
なお、燃料に含まれる炭化水素類は、例えば、アルカン類、アルケン類、アルキン類、芳香族化合物、アルコール類、アルデヒド類、エステル類である。また、バイオ燃料は、例えば、エタノール、脂肪酸メチルエステル等である。
前記した実施形態では、水素含有ガス添加手段が、水素タンク61、水素インジェクタ63等を備える水素添加系である構成を例示したが、水素添加系(水素タンク61、水素インジェクタ63等)に代えて、水素を含む改質ガス(水素含有ガス)を添加する改質ガス添加系で、水素含有ガス添加手段を構成してもよい。
この場合、改質ガス添加系(水素含有ガス添加手段)は、燃料を改質し水素を含む改質ガスを生成する改質器と、改質ガスを圧送するポンプと、水素を含む改質ガスを噴射する改質ガスインジェクタ(水素含有ガス用インジェクタ)と、を備えて構成される。
そして、改質器は、公知の技術に基づいて、その改質反応が、(1)水蒸気改質方法、(2)部分酸化方法、(3)水蒸気改質法と部分酸化法とを組み合わせたオートサーマル改質方法、(4)前記内燃機関がリッチ燃焼することで生成したガスを水性ガスシフト反応させる方法、の少なくとも1つの方法に基づいて生じるように構成される。
また、改質器は、その改質反応が、ガソリンエンジン10Aの排気ガス、空気、酸素富化空気、窒素富化空気、酸素、及び、水蒸気、の少なくとも1つのガス雰囲気下で行われるように構成される。
≪第2実施形態≫
次に、本発明の第2実施形態について、図1、図3、図8〜図11を参照して説明する。
≪内燃機関システムの構成≫
第2実施形態に係る内燃機関システム2は、ガソリンエンジン10Aに代えて、軽油を燃焼させるディーゼルエンジン10B(ディーゼル内燃機関)を備えている(図1参照)。
ここで、ディーゼルエンジン10Bは、気筒11a内に噴射された軽油を圧縮することで自己着火させるものであり、点火プラグを備えていない。ただし、ディーゼルエンジン10Bは、ガソリンエンジン10Aと同様に、シリンダブロック11、ピストン12と、ヘッドカバー13、吸気弁14、排気弁15を備えている。
また、第2実施形態では、燃料タンク41に軽油が貯溜され、燃料ポンプ42は軽油を燃料インジェクタ43に圧送するようになっている。そして、燃料インジェクタ43は、気筒11a内に軽油を直接噴射するようになっている。
≪内燃機関システムの動作≫
次に、内燃機関システム2の動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。
なお、第2実施形態において、ECU70は第1実施形態と同様に、ステップS101〜S103の処理を実行する。
因みに、第2実施形態では、ステップS102において、ECU70は、必要トルクとディーゼルエンジン10Bの回転速度と、現在のEGR率と、現在のEGR率に対応した図3のマップとに基づいて、水素添加量を算出する。
<水素添加量データ−ディーゼルエンジン>
ここで、ディーゼルエンジン10Bの場合について、図3のように、領域を設定する方法を説明する。
まず、ディーゼルエンジン10Bでは、例えば、中高負荷領域において、排気ガス(エミッション、NOx)、煤(Soot)を低減するため、予混合燃焼を促進させる低セタン価の燃料が望まれる。予混合は、着火遅れ時間を長くするために行われる。
そこで、第2実施形態では、着火性の低い水素を軽油に添加することで、着火遅れ時間及び予混合燃焼を制御し、排気ガス等の低減を図っている。
すなわち、図9に示すように、軽油への水素添加量が増加すると、添加後の全体のセタン価は小さくなり、着火性は低くなり、燃焼速度は大きくなり、燃焼ロバスト性は高くなる。よって、図9のY軸タイトルである「水素添加された軽油のセタン価」は、水素添加後の軽油全体の着火性、燃焼性(燃焼速度)、燃焼ロバスト性を示す一指数(パラメータ)となる。
図9は、市販の軽油への水素の添加率と、水素が添加された軽油のセタン価との関係を示すグラフである。水素の添加率は、水素添加された軽油全体の発熱量における水素の割合で与えられる。
そして、図9は、水素が添加されていない軽油(JIS2号軽油)のセタン価を仮に55とした場合、セタン価が−57であると推定される水素が10%添加された水素添加後の軽油のセタン価は、40であると推定されることを示している(図9の矢印参照)。
因みに、水素のセタン価が−57であることは、市販の軽油におけるセタン価とオクタン価との関係を示す図10のグラフと、「SAE Paper 2004−01−0975」によれば水素のオクタン価は140であることと、に基づいて推定される(図10の矢印参照)。
そこで、水素添加量は、事前試験等によって、EGR率(例えば15%、20%、25%、30%、40%)毎に、ディーゼルエンジン10Bの回転速度及び必要トルクに対応して、着火遅れ時間が所定時間以上となるように、設定される。
なお、所定時間は、ディーゼルエンジン10Bの必要トルク(負荷)が大きくなるにつれて、長くなるように設定される。これは、ディーゼルエンジン10Bの必要トルク(負荷)が大きくなるにつれて、特に中高負荷領域では排気ガスを低減するため、着火性の低い水素を添加して、着火遅れ時間を長くし、燃焼前に良好に予混合するためである。
そして、このようにして設定された水素添加量をまとめて便宜的に領域に分けて示したものが図3のマップである。
そして、ステップS103において、ECU70は、ステップS102で算出した水素添加濃度となるように、水素インジェクタ63を制御して、水素を添加する。
続いて、ステップS204において、ECU70は、所望のEGR率となるようにEGR弁51を制御する。なお、目標とするEGR率は、排気ガス温度等に基づいて、排気ガス温度が高くなり過ぎないように、例えば30%〜40%に設定される。
そして、ECU70は、EGR率をこのように制御しながら、現在のEGR率と、ディーゼルエンジン10Bの回転速度及び必要トルクと、現在のEGR率に対応した図3のマップとに基づいて、着火遅れ時間が所定時間以上となるように、水素添加濃度を再び算出(補正)する。
なお、現在の着火遅れ時間は、圧力センサ16を介して検出される筒内圧の変化に基づいて算出される。その他、着火遅れ時間を、電流センサ(図示しない)が検出する筒内圧センサの電流値変化に基づいて算出する構成としてもよい。
ステップS205において、ECU70は、ステップS204で算出した水素添加濃度となるように、水素インジェクタ63を制御し、水素を添加する。
ステップS206において、ECU70は、着火遅れ時間を所定時間以上で確保しながら、最適な軽油の噴射タイミングを決定する。
なお、最適な軽油の噴射タイミングは、ディーゼルエンジン10Bの熱効率がより大きくなり、そして、(dP/dθ)maxがより小さい値となるタイミングに決定される。(dP/dθ)maxは、単位クランク角当たりの筒内圧の圧力上昇率(dP/dθ)の最大値であり、(dP/dθ)maxが小さくなると、ディーゼルエンジン10Bの騒音・振動が小さくなる。
ステップS207において、ECU70は、ステップS206で決定した噴射タイミングに従って、燃料インジェクタ43を制御し、軽油を噴射する。
≪内燃機関システムの効果≫
このような内燃機関システム2によれば、次の効果を得る。
着火性の低い水素を添加することで、着火遅れ時間が所定時間以上で確保されるので(S102、S103、S204、S205)、軽油と空気とが予混合されやすくなる。これにより、図11に示すように、排気ガス中のNOx(窒素酸化物)を低減しつつ、排気ガスに含まれる煙(Smoke)、煤(Soot)も低減できる。
また、水素は、着火性が低いものの、前記したように、燃焼速度が大きく、燃焼ロバスト性が高いので、水素を添加することで、EGR率を高めることができ、その結果、低温で燃焼させることが可能となり、NOxの低減を図ることができる。
なお、図11の比較例に示すように、従来、煙を低減させるとNOxが増加し、逆に、NOxを低減させると煙が増加するという、NOx量と煙量とはトレードオフの関係にある。
また、着火遅れ時間を所定時間以上で確保しつつ、軽油の噴射タイミングを最適化するので(S206、S207)、ディーゼルエンジン10Bの熱効率を向上させることができる。
≪第3実施形態≫
次に、本発明の第3実施形態について、図12〜図20を参照して説明する。
第3実施形態に係る内燃機関システムは、第2実施形態に対して、ECU70に設定されたプログラムが一部異なり、その動作が一部異なる。以下、異なる部分のみを説明する。
図12に示すように、第3実施形態において、ECU70の処理は、ステップS103の後、ステップS301に進む。
ステップS301において、ECU70は、圧力センサ16(燃焼状態検出手段)から入力される筒内圧に基づいて算出される(dP/dθ)maxと、図13のグラフ(マップ)とに基づいて、ディーゼルエンジン10Bにおける燃焼が緩慢となるように、EGR率(量)が35〜45%、好ましくは40%程度となるように、EGR弁51の開度を制御する。
したがって、第3実施形態において、EGR量を制御するEGR量制御手段は、EGR弁51と、これを制御するECU70とを備えて構成されている。
なお、図13は、軽油の噴射圧力を150(MPa)、1ストローク当たりの噴射量Qを29.8(mm/stroke)とした場合を例示しており、その他の噴射圧力、噴射量についてのグラフ(マップ)もECU70に予め記憶されている。
ステップS302において、ECU70は、現在のEGR率と、ディーゼルエンジン10Bの回転速度及び必要トルクと、現在のEGR率に対応した図3のマップとに基づいて、着火遅れ時間が所定時間以上となり、かつ、(dP/dθ)maxが下がるように、水素添加濃度を再び算出(補正)する。すなわち、ECU70は、現在のEGR率、回転速度、必要トルク及び図3のマップと、圧力センサ16から入力される筒内圧(圧力信号)を制御指標として、水素添加量の増減を補正している。
その後、ECU70の処理は、ステップS205に進む。
≪内燃機関システムの効果≫
このような第3実施形態に係る内燃機関システムによれば、次の効果を得る。
EGR率(量)を35〜45%に、望ましくは40%程度となるように制御するので(S301)、(dP/dθ)max、Pmaxを下げて、緩衝燃焼に近づけることができる(図13、図14参照)。そして、水素をさらに添加するので、(dP/dθ)max、Pmaxを下げて、緩衝燃焼に近づけることができる(図13、図14参照)。
このようにして、最大筒内圧Pmaxを下げることができるので、ディーゼルエンジン10Bの骨格を軽量化でき、燃料消費及びフリクションを抑えることができる。
また、EGR率(量)を増加させると、図15、図16A〜図16Dに示すように、熱効率を同等としつつ(図15参照)、クランク角に対する熱発生率を遅らせる、つまり、遅角化できる。
そして、さらに水素を添加すると、熱発生率をさらに遅角化して予混合化を促進し、緩慢燃焼できる(図16A〜図16D参照)。このように、水素を添加すると、熱発生率がさらに遅角化するが、図13に示すように、熱効率は水素を添加しない場合(水素0vol%)と略同等となる。これは、緩慢燃焼により熱損失が小さくなったことと、水素の添加によりロバスト性が高くなったことによると考えられる。
なお、図16A〜図16Dでは、軽油の噴射量を29.8(mm/stroke)とし、燃料噴射のタイミングをBDTC(Before Top Dead Center、圧縮上死点)2deg.とした場合を例示している。
さらに、熱効率を同等としつつ(図15参照)、(dP/dθ)maxを下げることができるので(図13参照)、中高負荷領域において、ディーゼルエンジン10Bの騒音・振動を大幅に低減できる。その結果、パイロット噴射の回数を減らす、又は、パイロット噴射自体を省略でき、燃料消費を抑えることができる。
さらにまた、EGR率(量)を増加させることにより、図17に示すように、排気ガス中のNOを低減でき、水素を添加することにより、さらにNOを低減できる。
これは、緩慢燃焼に近づくことにより、局所的な高温燃焼の部分が少なくなったためと考えられる。
また、水素を添加すると、排気ガス中のCO、THCを低減できる(図18、図19参照)。これは、水素を添加することにより、燃焼についてのロバスト性が高くなったからと考えられる。
さらに、水素を添加すると、排気ガス中のSoot(煤)を低減できる(図20参照)。ここで、水素を添加しない場合、EGR率が増加するにつれてSootが増加するが、水素を添加することにより、Soot(煤)を略0%とできる。
これは、水素を添加することにより、(1)予備混合が促進され、(2)ロバスト性が高まることによりφ−Tマップ上の局所当量比の小さい部分が少なくなり、(3)また、緩慢燃焼に近づくためφ−Tマップ上の局所当量比の小さい部分が少なくなり、(4)
そして、水素の添加により、Soot(煤)の生成しにくい環境になったため、と考えられえる。
1、2 内燃機関システム
10A ガソリンエンジン(ガソリン内燃機関)
10B ディーゼルエンジン(ディーゼル内燃機関)
16 圧力センサ(燃焼状態検出手段)
41 燃料タンク(燃料供給手段)
42 燃料ポンプ(燃料供給手段)
43 燃料インジェクタ(燃料供給手段、燃料用インジェクタ)
51 EGR弁
61 水素タンク(水素含有ガス添加手段)
62 レギュレータ(水素含有ガス添加手段)
63 水素インジェクタ(水素含有ガス添加手段、水素含有ガス用インジェクタ)
70 ECU(水素添加量決定手段、EGR量制御手段)
81 アクセル開度センサ

Claims (7)

  1. 燃料を燃焼する内燃機関と、
    前記内燃機関に水素を含む水素含有ガスを添加する水素含有ガス添加手段と、
    前記水素含有ガス添加手段による水素添加量を、水素添加によるオクタン価、セタン価の変動を考慮して設定された水素添加量データに基づいて決定する水素添加量決定手段と、
    を備える
    ことを特徴とする内燃機関システム。
  2. 前記水素添加量決定手段は、EGR量を考慮して、水素添加量を決定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関システム。
  3. 前記水素含有ガス添加手段が決定された水素添加量で水素含有ガスを添加した後において前記内燃機関でノッキングが発生した場合、
    前記水素添加量決定手段は水素添加量を増加させる
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関システム。
  4. 前記水素含有ガス添加手段が決定された水素添加量で水素含有ガスを添加した後、
    前記水素添加量決定手段は、前記内燃機関における着火遅れ時間が所定時間以上となるように、水素添加量を補正する
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関システム。
  5. 前記内燃機関における燃焼状態を検出する燃焼状態検出手段と、
    前記燃焼状態検出手段の検出する燃焼状態に基づいて、前記内燃機関における燃焼が緩慢になるように、EGR量を制御するEGR量制御手段と、
    を備える
    ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
  6. 前記水素添加量決定手段は、前記燃焼状態検出手段の検出する燃焼状態に基づいて、前記内燃機関における燃焼が緩慢になるように、水素添加量を決定する
    ことを特徴とする請求項5に記載の内燃機関システム。
  7. 前記EGR量制御手段が、EGR量を35〜45%に制御した後、
    前記水素添加量決定手段が、前記燃焼状態検出手段の検出する燃焼状態に基づいて、前記内燃機関における燃焼が緩慢になるように、水素添加量を決定する
    ことを特徴とする請求項6に記載の内燃機関システム。
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