JP2011171012A - リチウム二次電池用正極 - Google Patents
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Abstract
【課題】高電位での充放電での容量劣化が抑制されたリチウム二次電池用正極を提供する。
【解決手段】本発明に係るリチウム二次電池用正極は、一般式xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2(ここでM1は、平均酸化状態が4+である少なくとも一種の金属元素であり、M2は、少なくとも一種の遷移金属元素である:0<x<1)で示される固溶体化合物と、一般式LiNi1−a−bM3aM4bO2(ここでM3は、Al及び/又はMgであり、M4は、Co,Mn,Fe,CuおよびCrからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素である:0.3≦a≦0.5、0≦b≦0.2)で示される層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物と、を有する。
【選択図】図1
【解決手段】本発明に係るリチウム二次電池用正極は、一般式xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2(ここでM1は、平均酸化状態が4+である少なくとも一種の金属元素であり、M2は、少なくとも一種の遷移金属元素である:0<x<1)で示される固溶体化合物と、一般式LiNi1−a−bM3aM4bO2(ここでM3は、Al及び/又はMgであり、M4は、Co,Mn,Fe,CuおよびCrからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素である:0.3≦a≦0.5、0≦b≦0.2)で示される層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物と、を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、正極に関する。詳しくは、高電位での充放電での容量劣化が抑制されたリチウム二次電池用正極に関する。
正極と負極との間をリチウムイオンが行き来することによって充電および放電するリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン電池)は、軽量で高出力が得られることから、車両搭載用電源あるいはパソコンや携帯端末の電源として今後益々の需要増大が見込まれている。これらの用途においては、電池の小型化・軽量化が求められており、電池のエネルギー密度を高めることが重要な技術課題となっている。エネルギー密度を高めるためには、電池の作動電圧を上昇させることが有効な手段である。現在、4V級のリチウム二次電池を構成できる正極活物質として、層状構造リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)、層状構造リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)、スピネル構造リチウムマンガン複合酸化物(LiMn2O4)等を用いることが考えられているが、さらに高電位の正極活物質が開発されれば、より一層の高エネルギー化が可能になる。
このような目的で、現在、固溶体系正極活物質が検討されている。なかでも、電気的に不活性な層状構造を有するLi[Li1/3Mn2/3]O2と、電気的に活性な層状構造を有するLiMO2(ここでMは、Co,Ni,Mn等)との固溶体は、高容量で、かつ、高電位での電圧作動領域を実現できる正極活物質として期待されている。この種の固溶体系正極活物質に関する従来技術としては特許文献1、2が挙げられる。また、その他、正極活物質に関する従来技術としては特許文献3、4が挙げられる。
しかしながら、上述したLi[Li1/3Mn2/3]O2とLiMO2との固溶体を正極に用いた電池では、充放電電位を高くして使用すると、遷移金属が溶出するという問題がある。遷移金属が溶出すると、溶出した遷移金属に起因して負極活物質および電解液の劣化が進行し、電池容量の低下を引き起こす。そのため、こうした固溶体を正極に用いた電池では充放電電位を高くして使用すると、すぐに容量が劣化し、サイクル特性が悪化する問題があった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、高電位での充放電での容量劣化が抑制されたリチウム二次電池用正極を提供することである。
一般にLiNiO2で表わされる層状構造リチウムニッケル複合酸化物は、充放電電位を高くして使用すると、化合物としての安定性の低下を招き、結晶構造が崩壊してしまう。これに対し、本発明者は、上記LiNiO2のニッケルの一部をアルミニウム及び/又はマグネシウムで置換することによって、結晶構造が安定化し、高電位で使用しても化合物が安定に存在し得ることを見出した。
そして、そのように高電位において安定化した層状構造リチウムニッケル複合酸化物と、xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2で示される固溶体化合物とを有することによって、固溶体化合物からの遷移金属の溶出に起因する性能劣化を抑制し、それにより該正極を含む電池においてサイクル特性を改善し得ることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明によって提供されるリチウム二次電池用正極は、
以下の一般式:
xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2 (1)
(ここでM1は、平均酸化状態が4+である少なくとも一種の金属元素であり、M2は、少なくとも一種の遷移金属元素である:0<x<1)
で示される固溶体化合物と、
以下の一般式:
LiNi1−a−bM3aM4bO2 (2)
(ここでM3は、Al及び/又はMgであり、M4は、Co,Mn,Fe,CuおよびCrからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素である:0.3≦a≦0.5、0≦b≦0.2)
で示される層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物と
を含有する。
以下の一般式:
xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2 (1)
(ここでM1は、平均酸化状態が4+である少なくとも一種の金属元素であり、M2は、少なくとも一種の遷移金属元素である:0<x<1)
で示される固溶体化合物と、
以下の一般式:
LiNi1−a−bM3aM4bO2 (2)
(ここでM3は、Al及び/又はMgであり、M4は、Co,Mn,Fe,CuおよびCrからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素である:0.3≦a≦0.5、0≦b≦0.2)
で示される層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物と
を含有する。
ここで、上記式(2)中のM3はAl及び/又はMgの金属元素である。Al及び/又はMgを含有させることによって、高電位での化合物としての安定性を向上させることができる。好ましくは上記(2)においてM3はAlである。Alは安価で且つ合成が容易であるという点で特に好ましい。
M3の含有割合(即ち式(2)中のaの値)は、0.3≦a≦0.5である。M3の割合が少なすぎる場合(a<0.3)は、M3含有による構造安定化効果が十分に得られないことがある。その一方で、M3の含有割合が多すぎる場合(0.5<a)は、合成時に未反応物が残存したり不純物が生成したりすることがある。したがって、M3の含有割合は、概ね0.3以上が適当であり、通常は0.35以上にすることが好ましく、例えば0.4以上にすることがより好ましく、典型的には0.4≦a≦0.5となるような組成比でM3(Al及び/又はMg)を含有させることが望ましい。
このことにより、M3(Al及び/又はMg)を含有していない若しくはM3の含有割合が0.3未満であるような従来の層状構造リチウムニッケル複合酸化物(典型的にはLiNiO2)と比較して、高電位での構造安定性に優れた化合物とすることができる。そして、そのような高電位で安定化した層状構造リチウムニッケル複合酸化物と、xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2で示される固溶体化合物とを有することによって、充放電電位を高くして使用した場合でも、層状構造リチウムニッケル複合酸化物の構造崩壊を伴うことなく、固溶体化合物からの遷移金属の溶出に起因する性能劣化を抑制することができる。従って、このような正極を用いれば、高電位での充放電での容量劣化が抑制された、サイクル特性の良好なリチウム二次電池を構築することができる。
なお、上記式(2)中のM4は、Co,Mn,Fe,CuおよびCrからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素である。即ち、本発明の層状構造リチウムニッケル複合酸化物は、所定割合のAl及び/又はMgを含むが、さらに他のCo,Mn,Fe,CuおよびCrからなる群から選択される少なくとも一種のマイナー添加元素の存在を許容する(かかるマイナー添加元素は存在しなくてもよい)。M4の含有割合(即ち式(1)中のbの値)は、概ね0≦b≦0.2にすることができる。
また、ここに開示されるリチウム二次電池用正極の一態様では、上記固溶体化合物は、一般式xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2で示される化合物である。ここで、上記xの値は、0<x<1を満たす値であればよい。Li[Li1/3M12/3]O2のM1としては、平均酸化状態が4+である少なくとも一種の金属元素である。例えば、上記式中のM1は、Mn,Zr,TiおよびSnからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素であることが望ましい。これにより、高容量で高エネルギー密度なリチウム二次電池の構築が可能になる。LiM2O2のM2としては、少なくとも一種の遷移金属元素である。上記式中のM2は、平均酸化状態が3+である少なくとも一種の遷移金属元素が好ましく採用され得る。例えば、Mn,Co,NiおよびFeからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属元素であることが望ましい。これにより、高容量で高エネルギー密度のリチウム二次電池を構築することができる。
ここに開示されるリチウム二次電池用正極の好ましい一態様では、上記層状構造リチウムニッケル複合酸化物と上記固溶体化合物との合計質量に対して、上記層状構造リチウムニッケル複合酸化物の含有割合が1質量%〜20質量%である。層状構造リチウムニッケル複合酸化物の含有割合が少なすぎる(典型的には1質量%を下回る)と、該層状構造リチウムニッケル複合酸化物の含有によるサイクル特性改善効果が十分に得られないことがある。その一方で、層状構造リチウムニッケル複合酸化物の含有割合が多すぎる(典型的には20質量%を上回る)と、電池容量が低下傾向となることがある。したがって、層状構造リチウムニッケル複合酸化物の含有割合は、概ね1質量%〜20質量%が適当であり、通常は3質量%〜20質量%にすることが好ましく、例えば5質量%〜15質量%(例えば凡そ10質量%)となるような含有割合で層状構造リチウムニッケル複合酸化物を含有させることが望ましい
また、本発明によると、ここに開示されるいずれかの正極に備えるリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)が提供される。かかるリチウム二次電池は、上述した正極活物質を正極に用いて構築されていることから、より良好な電池特性を示すものであり得る。例えば、高電位で使用した場合でも容量劣化が少なく、充放電サイクル特性に優れたものであり得る。
このようなリチウム二次電池は、車両に搭載される電池として適した性能を備える。したがって本発明によると、ここに開示されるリチウム二次電池(複数のリチウム二次電池が接続された組電池の形態であり得る。)を備える車両が提供される。特に、該リチウム二次電池を動力源(典型的には、ハイブリッド車両または電気車両の動力源)として備える車両(例えば自動車)が提供される。
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を説明する。以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。なお、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、正極および負極を備えた電極体の構成および製法、セパレータや電解質の構成および製法、リチウム二次電池その他の電池の構築に係る一般的技術等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。
本発明によって提供される正極は、一般式xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2で表わされる固溶体化合物と、一般式LiNi1−a−bM3aM4bO2で表わされる層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物とを有する(典型的には両化合物を混合してなる)リチウム二次電池用正極である。
<固溶体化合物>
本実施形態のリチウム二次電池用正極を構成する第1の正極活物質は、一般式xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2(ここでM1は、平均酸化状態が4+である少なくとも一種の金属元素であり、M2は、少なくとも一種の遷移金属元素である:0<x<1)で示される固溶体化合物である。この固溶体化合物は、電気的に不活性な層状構造のLi[Li1/3M12/3]O2と電気的に活性な層状構造のLiM2O2とを固溶させたものであり、このことによって、高容量なリチウム二次電池の構築が可能になる。
本実施形態のリチウム二次電池用正極を構成する第1の正極活物質は、一般式xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2(ここでM1は、平均酸化状態が4+である少なくとも一種の金属元素であり、M2は、少なくとも一種の遷移金属元素である:0<x<1)で示される固溶体化合物である。この固溶体化合物は、電気的に不活性な層状構造のLi[Li1/3M12/3]O2と電気的に活性な層状構造のLiM2O2とを固溶させたものであり、このことによって、高容量なリチウム二次電池の構築が可能になる。
ここで、上記xの値は、0<x<1を満たす値であればよい。Li[Li1/3M12/3]O2のM1としては、平均酸化状態が4+である少なくとも一種の金属元素である。例えば、式中のM1は、MnかZrかTiかSnが好ましく、あるいはこれらの2種以上の組み合わせでもよい。これにより、より高容量で高エネルギー密度のリチウム二次電池を構築することができる。LiM2O2のM2としては、少なくとも一種の遷移金属元素である。上記式中のM2は、平均酸化状態が3+である少なくとも一種の遷移金属元素が好ましく採用され得る。例えば、MnかCoかNiかFeが好ましく、あるいはこれらの2種以上の組み合わせでもよい。これにより、より高容量で高エネルギー密度のリチウム二次電池を構築することができる。
ここで開示される固溶体化合物(xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2)は、従来の同種の複合酸化物と同様、固相法または液相法によって合成することができる。固相法を用いる場合は、当該複合酸化物の構成元素に応じて適宜選択される数種の供給源(Li供給源、M1供給源、M2供給源)を所定のモル比で混合し、当該混合物を適当な手段で焼成することにより合成することができる。典型的には、焼成後、適当な手段で粉砕や造粒を行うことによって所望する平均粒子径および粒径分布の粉末状複合酸化物を調製することができる。なお、各種供給源(M1供給源、M2供給源)は、焼成時に元素拡散が均一に起らず、各種供給源が不純物として残留してしまう場合がある。このため、各種供給源を適当な溶液中に溶解混合した後、各種元素を含む複合炭酸塩、複合水酸化物、複合硫酸塩、複合硝酸塩等として沈殿させ、得られた沈殿混合物を原料として用いることもできる。Li供給源の添加後、適当な手段で焼成することにより上記固溶体化合物が得られる。
例えばリチウム供給源としては、炭酸リチウム、水酸化リチウム等のリチウム化合物を使用することができる。また、M1供給源およびM2供給源としては、これらを構成元素とする水酸化物、酸化物、各種の塩(例えば炭酸塩)、ハロゲン化物(例えばフッ化物)等が選択され得る。例えば特に限定されないが、Li[Li1/3Mn2/3]O2とLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2との固溶体を合成する場合は、ニッケル供給源として、炭酸ニッケル、酸化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル等を用いることができる。また、マンガン供給源としては、炭酸マンガン、酸化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、水酸化マンガン、オキシ水酸化マンガン等を用いることができる。また、コバルト供給源としては、炭酸コバルト、酸化コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルト、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト等が挙げられる。
例えば、Li[Li1/3Mn2/3]O2とLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2との固溶体を合成する場合は、Li供給源、Mn供給源、Ni供給源、Co供給源を所定比率で秤量して混合したものを、大気中あるいは大気よりも酸素がリッチな雰囲気中で、900℃の温度下、5時間焼成することによって合成するとよい。上記のような焼成により得られた固溶体化合物を、好ましくは冷却後、ミルがけ等により粉砕し適当に分級することによって、平均粒子径が1〜25μm程度の微粒子形態の固溶体化合物を得ることができる。
<層状構造リチウムニッケル複合酸化物>
本実施形態のリチウム二次電池用正極を構成する第2の正極活物質は、一般式LiNi1−a−bM3aM4bO2(ここでM3は、Al及び/又はMgであり、M4は、Co,Fe,CuおよびCrからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素である:0.3≦a≦0.5、0≦b≦0.2)で示される層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物である。このリチウムニッケル複合酸化物は、LiNiO2をベースとし、高電位での結晶構造の安定化を目的として結晶中のニッケルの一部をアルミニウム及び/又はマグネシウム(M3)で置換させたものである。即ち、上記式中のM3としては、Al及びMgのいずれか一方を単独で、あるいは両方を組み合わせて使用することができる。M3(Al及び/又はMg)を含有させることによって、高電位での化合物としての安定性を向上させることができる。特に好ましくは上記式においてM3はAlである。Alは安価で且つ合成が容易であるという点で特に好ましい。
本実施形態のリチウム二次電池用正極を構成する第2の正極活物質は、一般式LiNi1−a−bM3aM4bO2(ここでM3は、Al及び/又はMgであり、M4は、Co,Fe,CuおよびCrからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素である:0.3≦a≦0.5、0≦b≦0.2)で示される層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物である。このリチウムニッケル複合酸化物は、LiNiO2をベースとし、高電位での結晶構造の安定化を目的として結晶中のニッケルの一部をアルミニウム及び/又はマグネシウム(M3)で置換させたものである。即ち、上記式中のM3としては、Al及びMgのいずれか一方を単独で、あるいは両方を組み合わせて使用することができる。M3(Al及び/又はMg)を含有させることによって、高電位での化合物としての安定性を向上させることができる。特に好ましくは上記式においてM3はAlである。Alは安価で且つ合成が容易であるという点で特に好ましい。
M3の含有割合(即ち式中のaの値)は、0.3≦a≦0.5である。M3の含有割合が少なすぎる場合(a<0.3)は、M3含有による構造安定化効果が十分に得られないことがある。その一方で、M3の含有割合が多すぎる場合(0.5<a)は、合成時に未反応物が残存したり不純物が生成したりすることがある。したがって、M3の含有割合は、概ね0.3以上が適当であり、通常は0.35以上にすることが好ましく、例えば0.4以上にすることがより好ましく、典型的には0.4≦a≦0.5となるような組成比でM3(Al及び/又はMg)を含有させることが望ましい。
このことにより、M3を含有していない若しくはM3の含有割合が0.3未満であるような従来の層状構造リチウムニッケル複合酸化物(典型的にはLiNiO2)と比較して、高電位での構造安定性に優れた化合物とすることができる。
なお、ここで開示される層状構造リチウムニッケル複合酸化物は、Liと、Niと、Al及び/又はMgを含むが、さらに他のマイナー添加元素M4の存在を許容する。かかるM4は、CoかFeかCuかCrが好ましく、あるいはこれらの2種以上(典型的に2種又は3種)の金属元素が選択される。これら付加的な構成元素は、当該付加元素と、ニッケルおよびM3との合計の20原子%以下、好ましくは10原子%以下の割合で添加される。あるいは添加されないでもよい。即ち、M4の含有割合(即ち式中のbの値)は、概ね0≦b≦0.2にすることができる。
ここで開示される層状構造リチウムニッケル複合酸化物(LiNi1−a−bM3aM4bO2)は、従来の同種の複合酸化物と同様、固相法または液相法によって合成することができる。固相法を用いる場合は、当該複合酸化物の構成元素に応じて適宜選択される数種の供給源(Li供給源、Ni供給源、M2供給源、M1供給源)を所定のモル比で混合し、当該混合物を適当な手段で焼成することにより合成することができる。典型的には、焼成後、適当な手段で粉砕や造粒を行うことによって所望する平均粒子径および粒径分布の粉末状複合酸化物を調製することができる。なお、各種供給源(Ni供給源、M3供給源、M4供給源)は、焼成時に元素拡散が均一に起らず、各種供給源が不純物として残留してしまう場合がある。このため、各種供給源を適当な溶液中に溶解混合した後、各種元素を含む複合炭酸塩、複合水酸化物、複合硫酸塩、複合硝酸塩等として沈殿させ、得られた沈殿混合物を原料として用いることもできる。Li供給源の添加後、適当な手段で焼成することにより上記層状構造リチウムニッケル複合酸化物が得られる。
リチウム供給源およびニッケル供給源としては、上述した固溶体化合物と同様のものを使用することができる。例えば、リチウム供給源としては、炭酸リチウム、水酸化リチウム等のリチウム化合物を使用することができる。また、ニッケル供給源およびマンガン供給源としてこれらを構成元素とする水酸化物、酸化物、各種の塩(例えば炭酸塩)、ハロゲン化物(例えばフッ化物)等が選択され得る。また、アルミニウム源およびマグネシウム源、さらには他の金属供給源化合物(例えばコバルト化合物、鉄化合物、銅化合物、クロム化合物)としては、これらを構成元素とする水酸化物、酸化物、各種の塩(例えば炭酸塩)、ハロゲン化物(例えばフッ化物)等が選択され得る。例えば特に限定されないが、アルミニウム供給源としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、酢酸アルミニウム等が挙げられる。マグネシウム供給源としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム等が挙げられる。
例えば、LiNi0.7Al0.3O2で表わされる複合酸化物を合成する場合には、Li供給源、Ni供給源およびAl供給源をLi:Ni:Al=1:0.7:0.3となるように秤量して混合したものを、大気中あるいは大気よりも酸素がリッチな雰囲気中で、750℃の温度下、10時間焼成することによって合成するとよい。上記のような焼成により得られたリチウムニッケル複合酸化物を、好ましくは冷却後、ミルがけ等により粉砕し適当に分級することによって、平均粒子径が1〜25μm程度の微粒子形態のLiNi0.7Al0.3O2を得ることができる。
<固溶体化合物と層状構造リチウムニッケル複合酸化物との混合>
上述のように、本実施形態の正極活物質は、上記方法により得られた一般式xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2で示される固溶体化合物と、一般式LiNi1−a−bM3aM4bO2で示される層状構造リチウムニッケル複合酸化物とを混合してなるものである。上記化合物の混合は、上記粉砕、分級後のものを、ブレンダー装置等を用いて均一に混合するとよい。あるいは、上記混合は、両方の複合酸化物を、ボールミル装置等により同時に粉砕、分級することによって行うとよい。
上述のように、本実施形態の正極活物質は、上記方法により得られた一般式xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2で示される固溶体化合物と、一般式LiNi1−a−bM3aM4bO2で示される層状構造リチウムニッケル複合酸化物とを混合してなるものである。上記化合物の混合は、上記粉砕、分級後のものを、ブレンダー装置等を用いて均一に混合するとよい。あるいは、上記混合は、両方の複合酸化物を、ボールミル装置等により同時に粉砕、分級することによって行うとよい。
ここに開示されるリチウム二次電池用正極の好ましい一態様では、上記層状構造リチウムニッケル複合酸化物と上記固溶体化合物との合計質量に対して、上記層状構造リチウムニッケル複合酸化物の割合が1質量%〜20質量%である。層状構造リチウムニッケル複合酸化物の混合割合が少なすぎる(典型的には1質量%を下回る)と、該層状構造リチウムニッケル複合酸化物の混合によるサイクル特性改善効果が十分に得られないことがある。その一方で、層状構造リチウムニッケル複合酸化物の混合割合が多すぎる(典型的には20質量%を上回る)と、電池容量が低下傾向となることがある。したがって、層状構造リチウムニッケル複合酸化物の混合割合は、概ね1質量%〜20質量%が適当であり、通常は3質量%〜20質量%にすることが好ましく、例えば5質量%〜15質量%(例えば凡そ10質量%)となるような混合割合で層状構造リチウムニッケル複合酸化物を含有させることが望ましい。
本実施形態のリチウム二次電池用正極によれば、高電位で安定化した層状構造リチウムニッケル複合酸化物と、xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2で示される5V級の固溶体化合物とを有するので、充放電電位を高くして使用した場合でも、層状構造リチウムニッケル複合酸化物の構造崩壊を伴うことなく、固溶体化合物からの遷移金属の溶出に起因する性能劣化(典型的には負極活物質および電解液の性能劣化)を抑制することができる。従って、このような正極を用いれば、高電位での充放電での容量劣化が抑制された、サイクル特性の良好なリチウム二次電池(例えばリチウムイオン電池)を構築することができる。
なお、ここで開示される正極活物質を使用する以外は、従来と同様の材料とプロセスを採用してリチウム二次電池を構築することができる。
例えば、ここで開示される固溶体化合物と層状構造リチウムニッケル複合酸化物との混合から成る粉末(粉末状正極活物質)に、導電材としてアセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラックやその他(グラファイト等)の粉末状カーボン材料を混合することができる。また、正極活物質と導電材の他に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の結着材(バインダ)を添加することができる。これらを適当な分散媒体に分散させて混練することによって、ペースト状(スラリー状またはインク状を含む。以下同じ。)の正極活物質層形成用組成物(以下、「正極活物質層形成用ペースト」という場合がある。)を調製することができる。このペーストを、好ましくはアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金から構成される正極集電体上に適当量塗布しさらに乾燥ならびにプレスすることによって、リチウム二次電池用正極を作製することができる。
他方、対極となるリチウム二次電池用負極は、従来と同様の手法により作製することができる。例えば負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵且つ放出可能な材料であればよい。典型例として黒鉛(グラファイト)等から成る粉末状の炭素材料が挙げられる。そして正極と同様、かかる粉末状材料を適当な結着材(バインダ)とともに適当な分散媒体に分散させて混練することによって、ペースト状の負極活物質層形成用組成物(以下、「負極活物質層形成用ペースト」という場合がある。)を調製することができる。このペーストを、好ましくは銅やニッケル或いはそれらの合金から構成される負極集電体上に適当量塗布しさらに乾燥ならびにプレスすることによって、リチウム二次電池用負極を作製することができる。
本発明の固溶体化合物と層状リチウムニッケル複合酸化物との混合物を正極活物質に用いるリチウム二次電池において、従来と同様のセパレータを使用することができる。例えばポリオレフィン樹脂から成る多孔質のシート(多孔質フィルム)等を使用することができる。
また、電解質としては従来からリチウム二次電池に用いられる非水系の電解質(典型的には電解液)と同様のものを特に限定なく使用することができる。典型的には、適当な非水溶媒に支持塩を含有させた組成である。上記非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等からなる群から選択された一種又は二種以上を用いることができる。また、上記支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiI等から選択される一種または二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)を用いることができる。
また、ここで開示される固溶体化合物(xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2)と層状構造リチウムニッケル複合酸化物(LiNi1−a−bM3aM4bO2)との混合物を正極活物質として採用される限りにおいて、構築されるリチウム二次電池の形状(外形やサイズ)には特に制限はない。外装がラミネートフィルム等で構成される薄型シートタイプであってもよく、電池外装ケースが円筒形状や直方体形状の電池でもよく、或いは小型のボタン形状であってもよい。
以下、捲回電極体を備えるリチウム二次電池(ここではリチウムイオン電池)を例にしてここで開示される正極の使用態様を説明するが、本発明をかかる実施形態に限定することを意図したものではない。
図1に示すように、本実施形態に係るリチウム二次電池100は、長尺状の正極シート10と長尺状の負極シート20が長尺状のセパレータ40を介して扁平に捲回された形態の電極体(捲回電極体)80が、図示しない非水電解液とともに、該捲回電極体80を収容し得る形状(扁平な箱型)の容器50に収容された構成を有する。
容器50は、上端が開放された扁平な直方体状の容器本体52と、その開口部を塞ぐ蓋体54とを備える。容器50を構成する材質としては、アルミニウム、スチール等の金属材料が好ましく用いられる(本実施形態ではアルミニウム)。あるいは、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリイミド樹脂等の樹脂材料を成形してなる容器50であってもよい。容器50の上面(すなわち蓋体54)には、捲回電極体80の正極と電気的に接続する正極端子70および該電極体80の負極20と電気的に接続する負極端子72が設けられている。容器50の内部には、扁平形状の捲回電極体80が図示しない非水電解液とともに収容される。
上記構成の捲回電極体80を構成する材料および部材自体は、正極活物質として固溶体化合物(xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2)と層状構造リチウムニッケル複合酸化物(LiNi1−a−bM3aM4bO2)との混合物を採用する以外、従来のリチウムイオン電池の電極体と同様でよく、特に制限はない。
本実施形態に係る捲回電極体80は、通常のリチウム二次電池の捲回電極体と同様であり、図2に示すように、捲回電極体80を組み立てる前段階において長尺状(帯状)のシート構造を有している。
正極シート10は、長尺シート状の箔状の正極集電体(以下「正極集電箔」と称する)12の両面に正極活物質を含む正極活物質層14が保持された構造を有している。ただし、正極活物質層14は正極シート10の幅方向の一方の側縁(図では下側の側縁部分)には付着されず、正極集電体12を一定の幅にて露出させた正極活物質層非形成部が形成されている。
正極活物質層14は、一般的なリチウム二次電池において正極活物質層の構成成分として使用され得る一種または二種以上の材料を必要に応じて含有することができる。そのような材料の例として、導電材が挙げられる。該導電材としてはカーボン粉末やカーボンファイバー等のカーボン材料が好ましく用いられる。あるいは、ニッケル粉末等の導電性金属粉末等を用いてもよい。その他、正極活物質層の成分として使用され得る材料としては、上記構成材料の結着剤(バインダ)として機能し得る各種のポリマー材料が挙げられる。
負極シート20も正極シート10と同様に、長尺シート状の箔状の負極集電体(以下「負極集電箔」と称する)22の両面に負極活物質を含む負極活物質層24が保持された構造を有している。ただし、負極活物質層24は負極シート20の幅方向の一方の側縁(図では上側の側縁部分)には付着されず、負極集電体22を一定の幅にて露出させた負極活物質層非形成部が形成されている。
負極シート20は、長尺状の負極集電体22の上にリチウムイオン電池用負極活物質を主成分とする負極活物質層24が付与されて形成され得る。負極集電体22には銅箔その他の負極に適する金属箔が好適に使用される。負極活物質は従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、グラファイトカーボン、アモルファスカーボン等の炭素系材料、リチウム含有遷移金属酸化物や遷移金属窒化物等が挙げられる。
捲回電極体80を作製するに際しては、正極シート10と負極シート20とがセパレータシート40を介して積層される。このとき、正極シート10の正極活物質層非形成部分と負極シート20の負極活物質層非形成部分とがセパレータシート40の幅方向の両側からそれぞれはみ出すように、正極シート10と負極シート20とを幅方向にややずらして重ね合わせる。このとうに重ね合わせた積層体を捲回し、次いで得られた捲回体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平状の捲回電極体80が作製され得る。
捲回電極体80の捲回軸方向における中央部分には、捲回コア部分82(即ち正極シート10の正極活物質層14と負極シート20の負極活物質層24とセパレータシート40とが密に積層された部分)が形成される。また、捲回電極体80の捲回軸方向の両端部には、正極シート10および負極シート20の電極活物質層非形成部分がそれぞれ捲回コア部分82から外方にはみ出ている。かかる正極側はみ出し部分(すなわち正極活物質層14の非形成部分)84および負極側はみ出し部分(すなわち負極活物質層24の非形成部分)86には、正極リード端子74および負極リード端子76がそれぞれ付設されており、上述の正極端子70および負極端子72とそれぞれ電気的に接続される。
かかる構成の捲回電極体80を容器本体52に収容し、その容器本体52内に適当な非水電解液を配置(注液)する。そして、容器本体52の開口部を蓋体54との溶接等により封止することにより、本実施形態に係るリチウムイオン電池100の構築(組み立て)が完成する。なお、容器本体52の封止プロセスや電解液の配置(注液)プロセスは、従来のリチウム二次電池の製造で行われている手法と同様にして行うことができる。その後、該電池のコンディショニング(初期充放電)を行う。必要に応じてガス抜きや品質検査等の工程を行ってもよい。 このようにして構築されたリチウム二次電池100は、上述した固溶体化合物(xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2)と層状構造リチウムニッケル複合酸化物(LiNi1−a−bM3aM4bO2)との混合物を正極活物質として用いて構築されていることから、より良好な電池特性を示すものであり得る。例えば、高電位で使用した場合でも容量劣化が少ない(特に高温でのサイクル特性に優れる)、初回放電容量が高い、高温保持特性が良好である、のうちの少なくとも一つ(好ましくは全部)を満たすものであり得る。
以下の試験例において、ここで開示される固溶体化合物と層状構造リチウムニッケル複合酸化物との混合物を正極活物質として使用してリチウム二次電池(サンプル電池)を構築し、その性能評価を行った。
<正極活物質の作製>
まず、固溶体化合物として、0.6Li[Li1/3Mn2/3]O2と0.4LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2との固溶体を合成した。具体的には、リチウム供給源としての水酸化リチウムと、ニッケル供給源としての水酸化ニッケルと、マンガン供給源としての炭酸マンガンと、コバルト供給源としての水酸化コバルトとを所定のモル比となるような分量で混合した。そして該混合物を大気中において約900℃で約5時間焼成した。かかる焼成プロセス後、焼成物を粉砕することにより、0.6Li[Li1/3Mn2/3]O2・0.4LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2で示される固溶体化合物から成る粉末(平均粒子径1μm)を得た。
まず、固溶体化合物として、0.6Li[Li1/3Mn2/3]O2と0.4LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2との固溶体を合成した。具体的には、リチウム供給源としての水酸化リチウムと、ニッケル供給源としての水酸化ニッケルと、マンガン供給源としての炭酸マンガンと、コバルト供給源としての水酸化コバルトとを所定のモル比となるような分量で混合した。そして該混合物を大気中において約900℃で約5時間焼成した。かかる焼成プロセス後、焼成物を粉砕することにより、0.6Li[Li1/3Mn2/3]O2・0.4LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2で示される固溶体化合物から成る粉末(平均粒子径1μm)を得た。
また、層状構造リチウムニッケル複合酸化物として、下記表1で示される層状複合酸化物を合成した。具体的には、リチウム供給源としての水酸化リチウムと、ニッケル供給源としての水酸化ニッケルと、アルミニウム供給源としての酸化アルミニウムと、マグネシウム供給源としての酸化マグネシウムと、コバルト供給源としての水酸化コバルトとを所定のモル比となるような分量で混合した。そして該混合物を大気中において約750℃で約10時間焼成した。かかる焼成プロセス後、焼成物を粉砕することにより、下記表1で示される層状構造リチウムニッケル複合酸化物から成る粉末(平均粒子径5μm)を得た。
そして、上記固溶体化合物の粉末(A)と、上記層状構造リチウムニッケル複合酸化物の粉末(B)とを、下記表1に示す質量比(A/B)となるように混合して正極活物質とした。
<正極の作製>
上記得られた正極活物質粉末(固溶体化合物の粉末と層状構造リチウムニッケル複合酸化物の粉末との混合物)に、導電材としてのアセチレンブラックと、結着剤としてのポリビニリデンフロライド(PVDF)とを、正極活物質とアセチレンブラックとPVDFとの質量比が85:10:5となるように秤量してN−メチルピロリドン(NMP)中で均一に混合し、ペースト状の正極活物質層形成用組成物を調製した。このペースト状正極活物質層形成用組成物をアルミニウム箔(正極集電体:厚さ15μm)の片面に層状に塗布して乾燥することにより、該正極集電体の片面に正極活物質層が設けられた正極シートを得た。
上記得られた正極活物質粉末(固溶体化合物の粉末と層状構造リチウムニッケル複合酸化物の粉末との混合物)に、導電材としてのアセチレンブラックと、結着剤としてのポリビニリデンフロライド(PVDF)とを、正極活物質とアセチレンブラックとPVDFとの質量比が85:10:5となるように秤量してN−メチルピロリドン(NMP)中で均一に混合し、ペースト状の正極活物質層形成用組成物を調製した。このペースト状正極活物質層形成用組成物をアルミニウム箔(正極集電体:厚さ15μm)の片面に層状に塗布して乾燥することにより、該正極集電体の片面に正極活物質層が設けられた正極シートを得た。
<負極の作製>
負極活物質としてのグラファイト粉末に、結着剤としてのポリビニリデンフロライド(PVDF)を、負極活物質とPVDFとの質量比が92.5:7.5となるように秤量してN−メチルピロリドン(NMP)中で均一に混合し、ペースト状の負極活物質層形成用組成物を調製した。このペースト状負極活物質層形成用組成物を銅箔(負極集電体:厚さ15μm)の片面に層状に塗布して乾燥することにより、該負極集電体の片面に負極活物質層が設けられた負極シートを得た。
負極活物質としてのグラファイト粉末に、結着剤としてのポリビニリデンフロライド(PVDF)を、負極活物質とPVDFとの質量比が92.5:7.5となるように秤量してN−メチルピロリドン(NMP)中で均一に混合し、ペースト状の負極活物質層形成用組成物を調製した。このペースト状負極活物質層形成用組成物を銅箔(負極集電体:厚さ15μm)の片面に層状に塗布して乾燥することにより、該負極集電体の片面に負極活物質層が設けられた負極シートを得た。
<コインセルの作製>
上記得られた正極シートを直径1.6mmの円形に打ち抜いて、ペレット状の正極を作製した。また、上記負極シートを直径1.9mmの円形に打ち抜いて、ペレット状の負極を作製した。この正極と、負極と、セパレータ(直径22mm、厚さ0.02mmの3層構造(ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP))の多孔質シートを使用した。)とを、非水電解液とともにステンレス製容器に組み込んで、直径20mm、厚さ3.2mm(2032型)の図3に示すコインセル60(充放電性能評価用のハーフセル)を構築した。図3中、符号61は正極を、符号62は負極を、符号63は電解液の含浸したセパレータを、符号64はガスケットを、符号65は容器(負極端子)を、符号66は蓋(正極端子)をそれぞれ示す。なお、非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを3:7の体積比で含む混合溶媒に支持塩としてのLiPF6を約1mol/リットルの濃度で含有させたものを用いた。このようにしてリチウム二次電池(試験用コインセル)60を作製した。
上記得られた正極シートを直径1.6mmの円形に打ち抜いて、ペレット状の正極を作製した。また、上記負極シートを直径1.9mmの円形に打ち抜いて、ペレット状の負極を作製した。この正極と、負極と、セパレータ(直径22mm、厚さ0.02mmの3層構造(ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP))の多孔質シートを使用した。)とを、非水電解液とともにステンレス製容器に組み込んで、直径20mm、厚さ3.2mm(2032型)の図3に示すコインセル60(充放電性能評価用のハーフセル)を構築した。図3中、符号61は正極を、符号62は負極を、符号63は電解液の含浸したセパレータを、符号64はガスケットを、符号65は容器(負極端子)を、符号66は蓋(正極端子)をそれぞれ示す。なお、非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを3:7の体積比で含む混合溶媒に支持塩としてのLiPF6を約1mol/リットルの濃度で含有させたものを用いた。このようにしてリチウム二次電池(試験用コインセル)60を作製した。
<充放電サイクル試験>
以上のように得られた試験用コインセルを、25℃の温度条件にて、0.1Cの定電流で4.8Vまで充電を行い、次いで、0.1Cの定電流で2.5Vまで放電を行うという充放電サイクルを1サイクル行った。
以上のように得られた試験用コインセルを、25℃の温度条件にて、0.1Cの定電流で4.8Vまで充電を行い、次いで、0.1Cの定電流で2.5Vまで放電を行うという充放電サイクルを1サイクル行った。
続いて、上記0.1Cの1サイクル充放電後の電池を、25℃の温度条件にて、電流1C、電圧4.3Vの定電流定電圧方式で合計充電時間が2時間となるまで充電し、次いで、1Cの定電流で2.5Vまで放電するという充放電サイクルを100回連続して行った。そして、1サイクル目の放電容量(初回放電容量)と、100サイクル目の放電容量との比率から、100サイクル後の放電容量維持率(「100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量(初回放電容量)」×100)を算出した。その結果を表1に示す。
上記表1に示すように、固溶体化合物に層状構造Al含有リチウムニッケル複合酸化物を混合した試験用セル(サンプル1〜5)は、層状構造Al含有リチウムニッケル複合酸化物を混合しなかった試験用セル(サンプル7,8)に比べて、25℃での放電容量維持率が明らかに向上した。また、Alに加えてMgを含有させた層状構造リチウムニッケル複合酸化物を混合した試験用セル(サンプル6)は、Alのみを含有させた層状構造リチウムニッケル複合酸化物を混合した試験用セル(サンプル1〜5)とほぼ同様の性能を有していた。このことから、層状構造を有するAl及び/又はMg含有リチウムニッケル複合酸化物を、上記固溶体化合物に混合して使用することによって、サイクル特性を好ましく改善できることが確かめられた。
なお、本試験例で得られたコバルトを含有するAl含有層状構造リチウムニッケル複合酸化物を混合した試験用セル(サンプル5)は、コバルトを含まないAl含有層状構造リチウムニッケル複合酸化物を混合した試験用セル(サンプル1〜4)とほぼ同様の性能を有していた。このことにより、リチウムを除く他の構成金属元素全体の20原子%以下(好ましくは10原子%以下)の割合でCoのような付加的な金属元素を含ませることができることが確認できた。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
ここに開示されるいずれかのリチウム二次電池100は、上述したように充放電サイクル劣化が少ない。このため、車両に搭載される電池として適した性能を備える。したがって本発明によると、図4に示すように、ここに開示されるリチウム二次電池100(複数のリチウム二次電池が接続された組電池の形態であり得る。)を備える車両1が提供される。特に、該リチウム二次電池を動力源(典型的には、ハイブリッド車両または電気車両の動力源)として備える車両(例えば自動車)が提供される。
1 車両
10 正極シート
12 正極集電体
14 正極活物質層
20 負極シート
22 負極集電体
24 負極活物質層
40 セパレータシート
50 容器
52 容器本体
54 蓋体
60 コインセル
70 正極端子
72 負極端子
74 正極リード端子
76 負極リード端子
80 捲回電極体
82 捲回コア部分
100 リチウム二次電池
10 正極シート
12 正極集電体
14 正極活物質層
20 負極シート
22 負極集電体
24 負極活物質層
40 セパレータシート
50 容器
52 容器本体
54 蓋体
60 コインセル
70 正極端子
72 負極端子
74 正極リード端子
76 負極リード端子
80 捲回電極体
82 捲回コア部分
100 リチウム二次電池
Claims (6)
- 以下の一般式:
xLi[Li1/3M12/3]O2・(1−x)LiM2O2 (1)
(ここでM1は、平均酸化状態が4+である少なくとも一種の金属元素であり、M2は、少なくとも一種の遷移金属元素である:0<x<1)
で示される固溶体化合物と、
以下の一般式:
LiNi1−a−bM3aM4bO2 (2)
(ここでM3は、Al及び/又はMgであり、M4は、Co,Mn,Fe,CuおよびCrからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素である:0.3≦a≦0.5、0≦b≦0.2)
で示される層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物と
を有する、リチウム二次電池用正極。 - 前記層状構造リチウムニッケル複合酸化物と前記固溶体化合物との合計質量に対して、前記層状構造リチウムニッケル複合酸化物の含有割合が1質量%〜20質量%である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極。
- 前記式(1)中のM1は、Mn,Zr,TiおよびSnからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極。
- 前記式(1)中のM2は、Mn,Co,NiおよびFeからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属元素である、請求項1から3の何れか一つに記載のリチウム二次電池用正極。
- 請求項1から4の何れか一つに記載の正極を用いて構築された、リチウム二次電池。
- 請求項5に記載のリチウム二次電池を備える車両。
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