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JP2009268426A - 粉末ゲル化剤、及びこれを用いたゲル状食品とその製造方法 - Google Patents

粉末ゲル化剤、及びこれを用いたゲル状食品とその製造方法 Download PDF

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Masayasu Yano
誠恭 矢野
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Abstract

【課題】加熱することなくゲル化作用を示す、乳成分からなる粉末ゲル化剤を提供することを目的とする。また、風味の変化がなく、且つ乳清の排出がないゲル状食品とその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の粉末ゲル化剤は、乳糖と乳清蛋白質と不溶性カルシウムとを含有する分散液が噴霧乾燥されたことを特徴とする。本発明のゲル状食品は、前記粉末ゲル化剤と乳類とを含有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、粉末ゲル化剤、及びこれを用いたゲル状食品とその製造方法に関する。
牛乳は、甘味や酸味などとの相性が良く、種々の菓子に用いられている。
また、牛乳の乳蛋白質は凝固しやすい性質を持っているので、菓子類だけでなく、様々な食品の製造などに多く利用されている。
乳蛋白質を凝固させる方法としては、例えば、牛乳にキモシン等の酵素を作用させる方法、牛乳にレモン汁や酢等の酸を添加してpHを下げる方法、及び牛乳に乳酸菌を植えつけてpHを下げる方法などがある(非特許文献1参照。)。
しかしながら、牛乳に酵素や酸を作用させて、乳蛋白質の凝固を促す場合、乳成分はカゼインを主成分とする凝固物と乳清に分離してしまうという問題がある。
一方、牛乳に乳酸菌を植えつけて、乳酸を作らせ、徐々にpHを下げる場合は、乳清をほとんど排出することなく全体を凝固できる。しかしこの方法では、酸味のある凝固物は得られるが、酸味の無い凝固物を得ることができない。
そこで、pH調整をすることなく乳蛋白質を凝固させる方法として、加熱することによって、沈殿もしくはゲルを生じさせる方法が知られている。特に、乳清蛋白質は、加熱によりゲル化することが知られており、ソーセージ、魚肉練り製品等の製品に応用されている(非特許文献2参照。)。
また、乳清蛋白質にミネラルを添加し、更に加熱してゲル化させる方法もあり、ハンバーグやプリン等の食品に用いられている(特許文献1参照。)。
しかしながら、これらの方法では加熱の必要があり、常温でのゲル化は難しかった。
特開平1−277449号公報 伊藤敞敏著「ミルク 至高の食品がわかる」ヒューマンウィングスLLP出版、2007年1月20日、p.27〜30 (社)全国農協乳業プラント協会編集・発行「ミルクのサイエンスII ―ミルクの新しい動き―」平成4年3月、p.39〜45
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、加熱することなくゲル化作用を示す、乳成分からなる粉末ゲル化剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、風味の変化がなく、且つ乳清の排出がないゲル状食品とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の粉末ゲル化剤は、乳糖と乳清蛋白質と不溶性カルシウムとを含有する分散液が噴霧乾燥されたことを特徴とする。
また、本発明の粉末ゲル化剤は、前記乳糖の含有量が20〜60質量%であり、前記乳清蛋白質の含有量が10〜40質量%であり、前記不溶性カルシウムの含有量が3〜14質量%であることが好ましい。
本発明のゲル状食品は、前記粉末ゲル化剤と乳類とを含有することを特徴とする。
本発明のゲル状食品は、前記粉末ゲル化剤と乳類とを含有し、乳類由来の固形分濃度が3.5〜20質量%であることが好ましい。
本発明のゲル状食品の製造方法は、粉末ゲル化剤と乳類とを常温で混合することを特徴とする。
本発明によれば、加熱することなく常温でゲル化作用を示すことができる粉末ゲル化剤を提供することができる。
本発明によれば、風味の変化がなく、且つ乳清の排出がないゲル状食品とその製造方法を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
[粉末ゲル化剤]
本発明の粉末ゲル化剤は、乳糖と乳清蛋白質と不溶性カルシウムとを含有する分散液が噴霧乾燥されたことを特徴とする。
<乳糖>
乳糖とは、D−ガラクトースの1分子と、D−グルコースの1分子がβ‐1,4結合した二糖であり、ラクトースとも呼ばれる。
粉末ゲル化剤の固形分における乳糖の含有量は、20〜60質量%であることが好ましく、25〜55質量%であることがより好ましい。
粉末ゲル化剤の固形分における乳糖の含有量が20質量%以上であればゲル化剤が水に溶解しやすくなる傾向にある。一方含有量が60質量%を超えると、ゲル化強度が下がり良好な食感が得られにくい傾向にある。
なお、本発明において固形分とは、水分を除いた成分を意味する。
<乳清蛋白質>
乳清蛋白質とは乳清中に存在する蛋白質画分のことである。
粉末ゲル化剤の固形分における乳清蛋白質の含有量は、10〜40質量%であることが好ましく、10〜35質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることが更に好ましい。
粉末ゲル化剤の固形分における乳清蛋白質の含有量が10質量%未満の場合、ゲル化強度が下がり良好な食感が得られにくい傾向にある。一方含有量が40質量%以下であれば、ゲル化剤が水に溶解しやすくなる傾向にある。
<不溶性カルシウム>
不溶性カルシウムとは、水に全く或いは殆ど溶解しないカルシウムのことであり、本発明では乳成分由来の不溶性カルシウムを含有させると好ましい。
粉末ゲル化剤の固形分における不溶性カルシウムの含有量は、3〜14質量%であることが好ましく、5〜14質量%であることがより好ましく、8〜14質量%であることが更に好ましい。
粉末ゲル化剤の固形分における不溶性カルシウムの含有量が3質量%未満の場合、ゲル化に大量のゲル化剤が必要となり、製造上不便となる傾向にある。一方含有量が14質量%を超えると、ゲル状食品中に不溶性カルシウムが析出し、食感に好ましくない影響を及ぼす傾向にある。
以上の、乳糖、乳清蛋白質及び不溶性カルシウムの3成分は、各々を市販の単独成分より供給しても、3成分のうち1成分又は2成分以上を含む乳製品などから供給しても良い。
なお、乳成分由来の不溶性カルシウムはミルクカルシウムより供給することができる。ミルクカルシウムは、不溶性カルシウムの他に、乳糖及び乳清蛋白質等を含有しており、3成分すべてを含有する乳製品として用いることもできる。
乳糖及び乳清蛋白質の2成分を含有する乳製品としては、ホエイパウダー、乳清蛋白質濃縮物(WPC)、乳清蛋白質分離物(WPI)等が挙げられる。
ミルクカルシウムとは、牛乳のミネラル分を濃縮・乾燥して得られるミルクミネラルと呼ばれるものの内、特にカルシウム含量を高める処理をされたものを示す。出発原料として、牛乳ではなく乳清を用いた乳清カルシウムと呼ばれるものもあるが、これらを併せてミルクカルシウムと呼ぶ。
ミルクカルシウムは、具体的に以下の方法で得られることが好ましい。
まず、乳清を塩酸でpH3.5に調製し、このpH調製した乳清を限外濾過する。
乳清としては、チーズ製造やカゼイン製造の過程等で得られる乳清を用いることができ、チーズ製造過程で得られる乳清をチーズホエー、カゼイン製造過程で得られる乳清をカゼインホエーという。また、それらを乾燥して得られたホエイパウダーを水に溶解したものを用いることも可能である。
次に、限外濾過した際のパーミエイト(通過液)を水酸化ナトリウムでpH8.0に調製し、生じた沈殿を洗浄して、噴霧乾燥することで、粉末状のミルクカルシウムを精製できる。
ミルクカルシウムを不溶性カルシウムの供給源として用いると、本発明のゲル化剤と乳類とを含有する本発明のゲル状食品において、乳類の風味が損なわれにくい。これは、粉末ゲル化剤の構成成分全体が乳類由来の成分となるためである。
ホエイパウダーとは乳清より噴霧乾燥などにより水分を除いて粉末状にしたものである。
乳清蛋白質濃縮物(WPC)とは、チーズ製造やカゼイン製造の過程などで得られる乳清を原料として、膜処理などで一部の乳糖を除くことにより蛋白質の含量を高めた乳清を粉末化したものである。
乳清蛋白質分離物(WPI)とは乳清から蛋白質以外の成分をほとんど除いたものである。
<その他の成分>
粉末ゲル化剤における、上記3成分の合計が100質量%に満たない場合、残部の成分としては、デキストリン等の炭水化物や水分、脂肪分等が挙げられる。
<製造方法>
本発明の粉末ゲル化剤は、乳糖と乳清蛋白質と不溶性カルシウムとを含有する分散液を噴霧乾燥して得る。
まず、上記の乳糖を供給する原料、乳清蛋白質を供給する原料及び不溶性カルシウムを供給する原料を水に分散させる。このとき、分散液の固形分に占める乳糖の割合が20〜60質量%であり、乳清蛋白質の割合が10〜40質量%であり、不溶性カルシウムの割合が3〜14質量%となるように調製することが好ましい。
次に、得られた分散液を噴霧乾燥する。噴霧乾燥の際の入口温度は140℃〜200℃であることが好ましく、160℃〜200℃であることがより好ましい。入口温度が140℃以上であれば、噴霧乾燥が充分に行われ、得られたゲル化剤の物性が良くなる傾向にある。対して入口温度が200℃以下であれば、乾燥の際のエネルギー効率が良くなる傾向にある。なお、出口温度は70〜95℃であると好ましい。
以上のようにして得られた本発明の粉末ゲル化剤は、常温でゲル化作用を奏する。これは以下の作用によるものであると予測される。
乳清蛋白質、不溶性カルシウム、乳糖の3成分を水に分散させた後に噴霧乾燥することで、乳清蛋白質とカルシウムとが相互に弱く結合した、粉末ゲル化剤が形成されると予測される。
このゲル化剤を水に溶解すると、カルシウムがゆっくりと少量ずつイオン化するため、乳類中のカゼイン同士をネットワーク化してゆっくりとゲル化させることができると考えられる。
また、乳清蛋白質は、カルシウムイオンとカゼインとのネットワーク形成を助ける架橋構造としても作用すると予測される。そのため、加熱の必要がなく常温でゲル化させることができるものと考えられる。
[ゲル状食品]
本発明のゲル状食品は、本発明の粉末ゲル化剤と乳類とを含有することを特徴とする。
ゲル状食品における粉末ゲル化剤由来の固形分濃度は2.5〜20質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることが更に好ましい。
粉末ゲル化剤由来の固形分濃度が2.5質量%以上であれば、ゲル化が速やかに進む傾向にある(概ね数分以内)。対して、20質量%以下であれば、ゲル化剤に由来する蛋白質の味が最終製品に影響を与えにくく、風味が良好な傾向にある。
本発明のゲル状食品における乳類の原料乳としては、牛乳、脱脂乳、これらの濃縮物及び還元脱脂乳が挙げられる。
ゲル状食品における乳類由来の固形分濃度は3.5〜20質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが更に好ましい。
乳類由来の固形分濃度が3.5質量%以上であれば、ゲル状食品がゲル化し易い傾向にある。対して、20質量%を超えた場合、乳由来の風味が強くなり、風味上好ましくなくなる。
また、本発明のゲル状食品において、粉末ゲル化剤由来の固形分量/乳類由来の固形分量は0.25以上であると好ましく、0.5以上であることが更に好ましい。なお、上限値は、10であることが好ましい。
粉末ゲル化剤由来の固形分量/乳類由来の固形分量が0.25以上、10以下であれば、ゲルの保型性がよくなり、スプーンなどで食する際に好適となる傾向にある。
ここで、固形分量とは以下の一般式(I)によって求められた値である。
固形分量=ゲル状食品の総質量×各固形分濃度(質量%)・・・(I)
本発明のゲル状食品には、糖類、甘味料、香料、着色料、ビタミン等を含有させても良い。また、乳類中に乳化させて乳脂肪、植物性脂肪、動物性脂肪などを含有させることもできる。なお、この場合乳化を補助するための乳化剤を添加することもできる。
本発明のゲル状食品は、本発明の粉末ゲル化剤と乳類とを常温で混合することで得られる。ここで、常温とは4〜30℃であることが好ましく、10〜25℃であることがより好ましく、15〜20℃であることが更に好ましい。
混合の際の温度が、4℃以上であればゲル化が速やかに進む傾向にある(概ね数分以内)。対して30℃以下であれば、ゲル状食品の組織がより滑らかになる傾向にある。
このようにして得られたゲル状食品の破断強度は、レオメーターCOMPAC100(サン科学社製)を使用し、試料台速度80mm/minの条件で測定した際、0.01kgf以上であることが好ましく、0.04kgf以上であることがさらに好ましい。破断強度が0.01kgf以上であれば、スプーン等で食する際に好適な強度を備えており、口当たりもゲル状食品として申し分ない。
上記したように、本発明のゲル状食品のゲル化は、本発明のゲル化剤より徐々に溶出されるカルシウムイオンが作用して起こると考えられる。このゲル化は、酸による凝固等に比べて速度が遅い。従って、水分をゲルのネットワークに取り込むようにしてゲル化が進み、乳清の排出がないゲル状食品が得られると考えられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、特に断らない限り「%」は「質量%」を示す。
また、以下「灰分」とは不溶性カルシウムを含まない無機質とする。
[粉末ゲル化剤の調製]
<粉末ゲル化剤A>
まず、チーズホエー(森永乳業(株)製)500kgを1規定塩酸でpH3.5に調製した。このpH調製したチーズホエーを、ウルトラフィルトレーション・メンブランフィルター(DK3840C、Desalination社製)を用いた限外濾過にて分画し、パーミエイト約475kgを得た。
次に、得られたパーミエイトを、1規定水酸化ナトリウムでpH8.0に調製し、沈殿を生じさせた。この沈殿を遠心分離した後水に懸濁し、再び遠心分離し、水で洗浄した。
その後、洗浄した沈殿を噴霧乾燥して、粉末状のミルクカルシウム(I)約1.5kg(不溶性カルシウム25%、乳糖3%、乳清蛋白質9%、乳脂肪1%及び灰分62%含有)を得た。
次に、チーズホエー1000kgを、ウルトラフィルトレーション・メンブランフィルターを用いた限外濾過により濃縮し、リテンテート200kgを得た。
得られたリテンテートを回転円盤式噴霧乾燥装置(Niro社製)を用いて、入口温度160℃、出口温度80℃の条件で噴霧乾燥し、粉末状の乳清蛋白質濃縮物(I)(乳清蛋白質30%、乳糖56%、乳脂肪2%、灰分6%及び水分6%を含有)を得た。
前記ミルクカルシウム(I)10kg、前記乳清蛋白質濃縮物(I)68kg、乳糖(乳糖、森永乳業(株)製)22kg、水150kgを混合し、固形分濃度約40%の分散液250kgを得た。
得られた分散液を入口温度170℃、出口温度85℃で噴霧乾燥して、粉末ゲル化剤A(不溶性カルシウム3%、乳糖60%、乳清蛋白質20%、乳脂肪1.5%、灰分10%及び水分5.5%を含有)40kgを得た。
<粉末ゲル化剤B>
前記ミルクカルシウム(I)56kg、前記乳清蛋白質濃縮物(I)16kg、乳糖28kg、水150kgを混合し、固形分濃度約40%の分散液250kgを得た。
得られた分散液を入口温度190℃、出口温度90℃で噴霧乾燥して、粉末ゲル化剤B(不溶性カルシウム14%、乳糖39%、乳清蛋白質10%、乳脂肪1%、灰分35%及び水分1%を含有)40kgを得た。
<粉末ゲル化剤C>
チーズホエー1000kgを。ウルトラフィルトレーション・メンブランフィルターを用いた限外濾過により濃縮し、リテンテート50kgを得た。
得られたリテンテートを回転円盤式噴霧乾燥装置を用いて、入口温度170℃、出口温度85℃の条件で噴霧乾燥し粉末状の乳清蛋白質濃縮物(II)(乳清蛋白質54%、乳糖31%、乳脂肪4%、灰分6%及び水分5%を含有)を得た。
前記ミルクカルシウム(I)30kg、前記乳清蛋白質濃縮物(II)70kg、水150kgを混合し、固形分濃度約40%の分散液250kgを得た。
得られた分散液を入口温度180℃、出口温度90℃で噴霧乾燥して、粉末ゲル化剤C(不溶性カルシウム8%、乳糖22%、乳清蛋白質40%、乳脂肪3%、灰分22%及び水分5%を含有)40kgを得た。
<粉末ゲル化剤D>
前記ミルクカルシウム(I)40%、前記乳清蛋白質濃縮物(II)60kg、水150kgを混合し、固形分濃度約40%の分散液250kgを得た。
得られた分散液を入口温度180℃、出口温度85℃で噴霧乾燥して、粉末ゲル化剤D(不溶性カルシウム10%、乳糖20%、乳清蛋白質36%、乳脂肪3%、灰分28%及び水分3%を含有)40kgを得た。
[乳類]
以下の各例においては次の乳類を用いた。
乳類A:脱脂濃縮乳:森永乳業(株)製、固形分濃度35%
乳類B:脱脂粉乳:森永乳業(株)製、固形分濃度96%
[ゲル化の評価方法]
<破断強度>
各例で得られた試料の破断強度を、レオメーターCOMPAC100(サン科学社製)を使用し、試料台速度を80mm/minの条件で測定した。
本条件で破断強度が測定不能(破断強度:0.01kgf未満)である場合は、試料は充分な弾性がなく、プリンやゼリーのようなゲル状食品に求められる物性を備えてないと考えられる。
なお、測定不能(破断強度:0.01kgf未満)の場合、表において「×」と表記した。
<沈殿の有無>
各例で得られた試料を24時間静置し、粉末状の沈殿物が生じるか否かを肉眼で確認して、沈殿の有無を判断した。
○:沈殿が生じない。
×:沈殿が生じる。
<乳清分離の有無>
各例で得られた試料を24時間静置し、乳清と凝固物の二層に分かれるか否かを肉眼で確認して、乳清分離の有無を判断した。
○:乳清分離しない。
×:乳清分離している(乳清と凝固物の二層に分かれる。)。
<ゲル化の総合評価>
○:破断強度が上記条件で測定可能であり、粉末状の沈殿が生じず、且つ乳清分離がない。
×:破断強度が上記条件で測定不能である、粉末状の沈殿が生じる、又は乳清分離をする。
[試験例1](粉末ゲル化剤における、乳糖、乳清蛋白質及び不溶性カルシウムの含有量がゲル化に与える影響)
(試料1)
10℃の条件下で、乳類Aに水を加えて、固形分濃度を20%に調整した乳類A溶液1kgに対して、粉末ゲル化剤Aに水を加えて固形分濃度を20%とした粉末ゲル化剤溶解液を1kg添加して、2kgの試料1を作成し、各評価を行った。結果を表1に示す。
(試料2〜4)
粉末ゲル化剤Aの代わりに、粉末ゲル化剤B〜Dを用いた以外は試料1と同様にして試料2〜4を作成し、評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2009268426
表1によれば、ゲル化剤中に乳糖が20〜60%、乳清蛋白質が10〜40%、不溶性カルシウムが3〜14%の範囲で含有されている、ゲル化剤A〜Dを用いた試料1〜4は総て、破断強度が測定可能で、粉末状の沈殿が生じず、且つ乳清分離のないものであり、ゲル化が認められた。
[試験例2](ゲル状食品中の粉末ゲル化剤由来の固形分濃度がゲル化に与える影響)
(試料11)
10℃の条件下で、乳類Aに水を加えて固形分濃度を20%に調整した乳類A溶液1kgに対して、粉末ゲル化剤Aに水を加えて固形分濃度を5%とした粉末ゲル化剤溶解液を1kg添加し、2kgの試料11を作成し、各評価を行った。結果を表2に示す。
なお、試料11における乳類A由来の固形分濃度は10%であり、粉末ゲル化剤A由来の固形分濃度は2.5%である。
また、表2に示す固形分量とは以下の一般式(I)によって求められた値である。
固形分量=試料の総質量×各固形分濃度(質量%)・・・(I)
(試料12〜15)
粉末ゲル化剤溶解液における粉末ゲル化剤Aの固形分濃度を10%、20%、30%、40%とした他は試料11と同様にして試料12〜15を作成し、評価を行った。結果を表2に示す。
なお、各試料の乳類A由来の固形分濃度及び粉末ゲル化剤A由来の固形分濃度は表2に示す。
(試料16〜30)
粉末ゲル化剤Aを粉末ゲル化剤B、C、Dのいずれかとした他は、試料11〜15と同様にして粉末ゲル化剤溶解液の濃度5〜40%の範囲で変化させて、試料16〜30を作成し、評価を行った。結果を表2又は3に示す。
なお、各試料の乳類A由来の固形分濃度及び粉末ゲル化剤由来の固形分濃度は表2又は3に示す。
Figure 2009268426
Figure 2009268426
表2及び表3によれば、試料中の粉末ゲル化剤由来の固形分濃度が2.5〜20%である試料11〜30は、粉末ゲル化剤がA、B、C及びDいずれの場合も総て、破断強度が測定可能で、粉末状の沈殿が生じず、且つ乳清分離のないものであり、ゲル化が認められた。
[試験例3](ゲル状食品中の乳類由来の固形分濃度がゲル化に与える影響)
(試料31)
10℃の条件下で、乳類Bに水を加えて固形分濃度を5%に調整した乳類B溶液1kgに対して、粉末ゲル化剤Aに水を加えて固形分濃度20%とした粉末ゲル化剤溶解液を1kg添加し、2kgの試料31を作成し、各評価を行った。結果を表4に示す。なお、試料31における乳類B由来の固形分濃度は2.5%であり、粉末ゲル化剤A由来の固形分濃度は10%である。
(試料32〜36)
10℃の条件下で、乳類Bの固形分濃度をそれぞれ7%、10%、20%、30%、40%とした乳類B溶液1kgに対して、粉末ゲル化剤Aに水を加えて固形分濃度20%とした粉末ゲル化剤溶解液を1kgを添加し、2kgの試料32〜36を作成し、各評価を行った。結果を表4に示す。
なお、各試料の乳類B由来の固形分濃度及び粉末ゲル化剤A由来の固形分濃度は表4に示す。
(試料37、43、49)
粉末ゲル化剤Aを粉末ゲル化剤B、C、Dのいずれかとした他は、試料31と同様にして試料37、43、49をそれぞれ作成し、各評価を行った。結果を表4及び5に示す。
(試料38〜42)
粉末ゲル化剤Aを粉末ゲル化剤Bとした他は試料32〜36と同様にして、試料38〜42を作成し、各評価を行った。結果を表4に示す。
なお、各試料の乳類B由来の固形分濃度及び粉末ゲル化剤B由来の固形分濃度は表4に示す。
(試料44〜48)
粉末ゲル化剤Aを粉末ゲル化剤Cとした他は試料32〜36と同様にして、試料44〜48を作成し、各評価を行った。結果を表5に示す。
なお、各試料の乳類B由来の固形分濃度及び粉末ゲル化剤C由来の固形分濃度は表5に示す。
(試料50〜54)
粉末ゲル化剤Aを粉末ゲル化剤Dとした他は試料32〜36と同様にして、試料50〜54を作成し、各評価を行った。結果を表5に示す。
なお、各試料の乳類B由来の固形分濃度及び粉末ゲル化剤D由来の固形分濃度は表5に示す。
Figure 2009268426
Figure 2009268426
表4及び表5によれば、試料中の乳類B由来の固形分濃度が2.5%であるとき、試料は増粘するもののゲル化には至らず、破断強度も測定不能である等ゲル状を示さない傾向にある。これは、乳類由来の固形分濃度が少ない場合、全体をゲル化させるためのネットワーク形成が不十分であるためと予測される。
対して、試料中の乳類B由来の固形分濃度が3.5%〜20%であるとき、いずれの場合も総て、破断強度が測定可能で、粉末状の沈殿が生じず、且つ乳清分離のないものであり、良好なゲル化作用を示している。
さらに、表2〜5によれば、試料中の乳類由来の固形分濃度が3.5%〜20%であり、かつゲル化剤由来の固形分量/乳類由来の固形分量が0.25以上であるとき、各試料は良好なゲル化作用を示している。
[試験例4](ゲル状食品中の乳類由来の固形分濃度がゲル化に与える影響)
(試料61)
10℃の条件下で、乳類Aに水を加えて固形分濃度を5%に調整した乳類A溶液100gに対して、粉末ゲル化剤Cに水を加えて固形分濃度40%とした粉末ゲル化剤溶解液を100g添加し、200gの試料61を作成し、各評価を行った。結果を表6に示す。
なお、試料61における乳類A由来の固形分濃度は2.5%であり、粉末ゲル化剤A由来の固形分濃度は20%である。
(試料62、63)
乳類A溶液の固形分濃度をそれぞれ7%、10%とした他は実施例61と同様にして、試料62、63を作成し、各評価を行った。結果を表6に示す。
なお、各試料の乳類B由来の固形分濃度及び粉末ゲル化剤C由来の固形分濃度は表6に示す。
Figure 2009268426
表6によれば、試料中のゲル化剤由来の固形分濃度を20%と高くしても、試料中の乳類B由来の固形分濃度が2.5%である試料61は、増粘したが、破断強度は測定不能であり、ゲル状にはならなかった。これは、乳類由来の固形分濃度が少ない場合、全体をゲル化させるためのネットワーク形成が不十分であるためと予測される。
対して、試料中の乳類B由来の固形分濃度が3.5%又は5%であるとき、いずれの場合も、破断強度が測定可能で、粉末状の沈殿が生じず、且つ乳清分離のないものであり、良好なゲル化作用を示していた。
[試験例5]
(試料71)
10℃の条件下で、乳類Aに水を加えて、固形分濃度を20%に調整した乳類A溶液1kgに対して、乳清蛋白質濃縮物(WPC34、Milei社製;乳清蛋白質34%、乳糖55%、乳脂肪2%、灰分5%及び水分4%を含有)に水を加えて固形分濃度を10%とした乳清蛋白質濃縮物溶解液を1kg添加して、2kgの試料71を作成し、各評価を行った。結果を表7に示す。
(試料72〜74)
乳清蛋白質濃縮物(WPC34)に水を加えて固形分濃度をそれぞれ20%、30%、40%とした他は試料71と同様にして、試料72〜74を作成し、各評価を行った。結果を表7に示す。
Figure 2009268426
表7によれば、常温(10℃)で、ゲル化剤原料として用いる乳清蛋白質濃縮物のみを乳類に添加する場合、ゲル化剤成分である乳糖、乳清蛋白質がいかなる濃度あっても破断強度は測定不能であり、ゲル化はなされなかった。
[試験例6]
(試料81)
10℃の条件下で、乳類Aに水を加えて、固形分濃度を20%に調整した乳類A溶液1kgに対して、ミルクカルシウム(Ca−28、森永乳業(株)製;乳清蛋白質3%、乳糖17%、不溶性カルシウム28%、灰分49%及び水分3%を含有)に水を加えて固形分濃度を1%としたミルクカルシウム分散液を1kg添加して、2kgの試料81を作成し、各評価を行った。結果を表8に示す。
(試料82、83)
ミルクカルシウム分散液として、それぞれ固形分濃度を5%、10%としたものを用いた他は試料81と同様にして、試料82、83を作成し、各評価を行った。結果を表8に示す。
Figure 2009268426
表8によれば、常温(10℃)で、ゲル化剤原料として用いるミルクカルシウムのみを乳類に添加する場合、ミルクカルシウム中の不溶性カルシウムによる粉末状の沈殿物が観察され、且つゲル化剤成分である乳糖、乳清蛋白質及び不溶性カルシウムがいかなる濃度であっても破断強度は測定されず、ゲル化はなされなかった。
[試験例7]
(試料91〜94)
10℃の条件下で、乳類Aに水を加えて固形分濃度を20%に調整した乳類A溶液1kgに、本発明のゲル化剤の原料となる乳清蛋白質濃縮物(WPC34)の20%溶解液とミルクカルシウム(Ca―28)の5%分散液とを表9に記載の割合で混合し、試料91〜94を作成し、各評価を行った。結果を表9に示す。
Figure 2009268426
表9によれば、本発明のゲル化剤の原料となる成分(乳清蛋白質濃縮物及びミルクカルシウム)を噴霧乾燥することなくそのまま、常温(10℃)で用いる場合、ミルクカルシウム中の不溶性カルシウムによる粉末状の沈殿物が観察され、且つゲル化剤成分である乳糖、乳清蛋白質及び不溶性カルシウムの各成分がいかなる濃度であっても破断強度は測定されず、ゲル化はなされなかった。
[実施例1]
固形分濃度を20%とした乳類A溶液400g、クリーム(森永乳業(株)製;乳糖3%、蛋白質2%、乳脂肪45%、灰分0.4%及び水分50.4%を含有)100g、ぶどう糖果糖液糖(ニューフラクト55、昭和産業(株)製)80g、香料(小川香料(株)製)1.5g、及び水18.5gを混合し80℃10分間保持して殺菌後20℃に冷却した乳類含有液を、カップ(PP71−110、(株)シンギ製)に60g充填した。
次にカップに、固形分濃度が20%になるように溶解した粉末ゲル化剤C溶解液(別途80℃10分間保持殺菌後20℃に冷却したもの)を40g充填し、20℃の条件下で混合することで、ミルクプリン100gを製造し、各評価を行った。結果を表10に示す。

更に、完成したミルクプリンは食感、風味とも良好であった。またこのプリンは1カップあたり825mgのカルシウムを含有し、カルシウム源として非常に優れたものであった。
[実施例2]
固形分濃度を35%とした乳類A溶液400g、ぶどう糖果糖液糖100g、香料1g、及び水399gを混合し、80℃10分間保持して殺菌後4℃に冷却した乳類含有液を、容積150mlのスパウト付パウチ((株)細川洋行製)に90ml充填した。
次にスパウト付パウチに、固形分濃度が20%になるように溶解した粉末ゲル化剤D溶解液(別途80℃10分間保持殺菌後4℃に冷却したもの)を60ml充填し、25℃の条件下でよく振って混合した後静置することで、ゲル状食品150ml作製し、各評価を行った。結果を表9に示す。
Figure 2009268426
表10で示されるように、実施例1及び2で得られた製品は、本発明のゲル化剤と、所定量の濃度の乳類とを含有しており、粉末状の沈殿や乳清分離がなく、ゲル化が顕著なものであった。
具体的に、実施例1で製造したミルクプリンは、食感、風味とも良好であった。またこのプリンは1カップあたり825mgのカルシウムを含有し、カルシウム源として非常に優れたものであった。
一方、実施例2で製造したゲル状食品は、スパウト部から吸うようにして摂食することができ、ゼリーのような食感で、風味も良好であった。またこの食品は100mlあたり約900mgのカルシウムを含み、カルシウム源として非常に優れたものであった。

Claims (5)

  1. 乳糖と乳清蛋白質と不溶性カルシウムとを含有する分散液が噴霧乾燥されたことを特徴とする粉末ゲル化剤。
  2. 前記乳糖の含有量が20〜60質量%であり、前記乳清蛋白質の含有量が10〜40質量%であり、前記不溶性カルシウムの含有量が3〜14質量%であることを特徴とする請求項1記載の粉末ゲル化剤。
  3. 請求項1記載の粉末ゲル化剤と乳類とを含有するゲル状食品。
  4. 請求項1記載の粉末ゲル化剤と乳類とを含有し、乳類由来の固形分濃度が3.5〜20質量%である請求項3に記載のゲル状食品。
  5. 請求項1に記載の粉末ゲル化剤と乳類とを常温で混合する、ゲル状食品の製造方法。
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