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JP2009266761A - 非水電解質二次電池及びその製造方法 - Google Patents

非水電解質二次電池及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】扁平状に捲回された電極群を備えた非水電解質二次電池において、負極活物質に高容量材料を用いても、負極活物質の膨張収縮に伴う電極群の座屈の発生を抑制し、サイクル寿命特性の優れた非水電解質二次電池を提供することにある。
【解決手段】正極集電体1上に正極活物質2が形成された正極板3、及び負極集電体4上に負極活物質5が形成された負極板6が、セパレータ7を介して捲回された電極群を備え、正極板3の引張り伸び率が、負極板6の引張り伸び率よりも大きい。
【選択図】図1

Description

本発明は、負極活物質にシリコン等の高容量材料を用いた非水電解質二次電池及びその製造方法に関する。
現在、非水電解質二次電池の負極活物質として一般に用いられている黒鉛の実用容量は、約350mAh/g程度まで達しており、黒鉛の理論容量(372mAh/g)にかなり接近している。従って、携帯機器等の高機能化に対応可能な高容量の電池を実現するためには、より大きな容量の負極活物質が求められている。
そこで、高容量材料として、ケイ素(Si)またはスズ(Sn)、またはこれらの化合物が注目されている。これらの元素は、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵および放出することができ、黒鉛に比べて非常に大きな容量の充放電が可能である。例えば、ケイ素は、その理論容量は4199mAh/gであり、黒鉛の11倍の高容量を有することが知られている。
しかしながら、これらの高容量材料からなる負極活物質は、充放電に伴う膨張収縮が大きいため、負極活物質の脱落や、極板の座屈等が起こり、これにより、サイクル寿命特性が劣化するという問題がある。
この問題を解決するために、特許文献1には、表面を租面化した集電体上に、スパッタリング法でシリコン等の薄膜を形成することによって、柱状に分離した活物質薄膜を形成する技術が記載されている。これにより、活物質薄膜に空隙が形成されるため、活物質薄膜の膨張収縮に伴う応力を吸収することができる。
また、特許文献2には、負極集電体として、所定の引張り強さや弾性係数を有する材料を用いる技術が記載されている。これにより、活物質の膨張収縮に伴う応力を受けても集電体が変形するのを抑制することができる。
特開2002−313319号公報 特開2003−007305号公報
しかしながら、扁平状に捲回された電極群が角形電池ケースに収納された電池の場合には、上記のような負極活物質または負極集電体に応力を緩和する機能を設けても、電極群の長手方向の平坦部において、座屈の発生を回避できない場合がある。これは、電極群の長手方向の両側にある湾曲部が、締め付けられた状態で電池ケースによって規制されているため、電極群の全長に亘って応力を緩和することができず、その結果、湾曲部の間にある平坦部に座屈が発生したものと考えられる。
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、扁平状に捲回された電極群を備えた非水電解質二次電池において、負極活物質に高容量材料を用いても、負極活物質の膨張収縮に伴う電極群の座屈の発生を抑制し、サイクル寿命特性の優れた非水電解質二次電池、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本願出願人は、非水電解質二次電池が圧壊によって潰されたときに、電池内で内部短絡が起きる要因を検討していたところ、電極群を構成する正極板、負極板、及びセパレータのうち、引張り伸び率の最も小さい正極板が優先的に破断した結果、正極板の破断部がセパレータを突き破って、正極板と負極板とが短絡していることが分かった。
そこで、さらに、正極板の引張り伸び率を高める方法を検討した結果、正極合剤層を塗布した正極集電体を圧延した後に、所定の温度で熱処理を施すことによって、正極板の引張り伸び率が高まる効果を見出した。
本願出願人は、この知見に基づき、正極板の引張り伸び率を所定の値以上にすることによって、圧壊された非水電解質二次電池における内部短絡の発生を抑制する方法を、特願2007−323217号の出願明細書に開示している。
本願発明者等は、負極活物質の膨張収縮に伴う電極群の座屈発生を抑制する従来の対策が、専ら負極側においてなされていたのに対して、正極側に着目して、電極群の座屈発生との関係を検討した。その結果、正極板の引張り伸び率を、負極板の引張り伸び率よりも大きくすることによって、負極活物質の膨張収縮に伴う電極群の座屈の発生を抑制する効果を見出し、本発明を想到するに至った。
すなわち、本発明に係わる非水電解質二次電池は、正極集電体上に正極活物質が形成された正極板、及び負極集電体上に負極活物質が形成された負極板が、セパレータを介して捲回された電極群を備えた非水電解質二次電池であって、正極板の引張り伸び率が、負極板の引張り伸び率よりも大きいことを特徴とする。
ここで、正極板の引張り伸び率は、3〜10%の範囲にあることが好ましい。
ある好適な実施形態において、上記正極板は、正極活物質を含む正極合剤スラリーが塗布・乾燥された正極集電体を圧延した後、所定の温度で熱処理されたものである。
ここで、上記所定の温度は、200℃以上の温度であることが好ましい。
ある好適な実施形態において、上記負極活物質は、シリコンまたはスズ、またはこれらの化合物からなる。
ある好適な実施形態において、上記電極群は、扁平状に捲回された状態で、角形の電池ケースに収容されている。
ここで、上記扁平状の電極群は、少なくとも最初の充放電時に、電極群の平坦部に対して、1×10N/m以上の圧力処理がなされていることが好ましい。
本発明に係わる非水電解質二次電池の製造方法は、正極集電体上に正極活物質が形成された正極板、及び負極集電体上に負極活物質が形成された負極板が、セパレータを介して捲回された電極群を備えた非水電解質二次電池の製造方法であって、正極板は、正極集電体上に、正極活物質を含む正極合剤スラリーを塗布・乾燥させる工程と、正極合剤スラリーが塗布・乾燥された正極集電体を圧延する工程と、圧延された正極集電体を所定の温度で熱処理する工程とにより形成され、正極板の引張り伸び率が、負極板の引張り伸び率よりも大きいことを特徴とする。
ある好適な実施形態において、上記熱処理工程において、圧延された正極集電体は、200℃以上の温度で熱処理される。
ある好適な実施形態において、上記電極群は、扁平状に捲回された状態で、角形の電池ケースに収容される。
本発明によれば、捲回された電極群を備えた非水電解質二次電池において、正極板の引張り伸び率を、負極板の引張り伸び率よりも大きくすることによって、負極活物質に高容量材料を用いても、負極活物質の膨張収縮に伴う電極群の座屈の発生を抑制することができ、これにより、サイクル寿命特性の優れた非水電解質二次電池を実現することができる。
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
図1は、本発明の実施形態にける非水電解質二次電池の構成を模式的に示した部分切欠斜視図である。
図1に示すように、正極集電体1上に正極活物質2が形成された正極板3、及び負極集電体4上に負極活物質5が形成された負極板6が、セパレータ7を介して扁平状に捲回された電極群が、角形電池ケース8に収納され、封口板9によって封口されている。
正極板3は、正極集電体1上に、正極活物質2を含む正極合剤スラリーを塗布・乾燥したものを圧延した後、所定の温度で熱処理したものからなる。また、負極板6は、負極集電体4上に、高容量な材料からなる負極活物質5、例えば、シリコン(Si)またはスズ(Sn)、またはこれらの化合物を形成したものからなる。
ここで、正極板3の引張り伸び率は、負極板6の引張り伸び率よりも大きくなっている。上述したように、正極板3の引張り伸び率は、正極合剤スラリーを塗布した正極集電体1を圧延した後に、所定の温度で熱処理を施すことによって、引張り伸び率を高めることができる。
なお、本発明における「引張り伸び率」は、試験片を引っ張り、試験片が破断した時の試験片の伸びた割合をいい、例えば、幅が15mmで、有効部の長さが20mmの極板を、20mm/minの速度で引っ張り、極板が破断した時点での伸び率から求められる。
図2は、熱処理温度と引張り伸び率との関係を示したグラフで、図中の矢印Aで示した曲線が、正極板3の引張り伸び率を示す。なお、図中の矢印Bで示した直線は、負極板6の引張り伸び率(一定)を示す。
正極板3及び負極板6の引張り伸び率は、集電体や活物質の材料やその処理方法によって大きさが異なるが、図2に示すように、正極板3の熱処理温度を所定の値以上に設定することによって、正極板3の引張り伸び率を、負極板6の引張り伸び率よりも大きくすることができる。これにより、負極活物質5に高容量材料を用いても、正極板3が、負極活物質5の膨張収縮に追随して、扁平状の電極群の長手方向に伸縮することによって応力を緩和することができる。その結果、電極群の平坦部における座屈の発生を抑制することができ、サイクル寿命特性の優れた非水電解質二次電池を実現することが可能となる。
なお、電極群の座屈を効果的に抑制するためには、正極板3の引張り伸び率は、3.0%以上であることが好ましい。一方、正極板3の引張り伸び率が10%を超えると、電極群を捲回により形成する際、正極板3が変形して均一な捲回ができなくなるため、正極板3の引張り伸び率は、10%以下であることが好ましい。
また、正極板3に十分な大きさの引張り伸び率を与えるためには、正極活物質2を含む正極合剤スラリーが塗布・乾燥された正極集電体1を圧延した後、200℃以上の温度で熱処理することが好ましい。
また、初期の充放電時に電極群の座屈が起きやすいため、少なくとも最初の充放電時に、扁平状の電極群の平坦部に対して、所定の値以上の圧力処理を行うことによって、電極群の座屈の発生をより効果的に抑制することができる。
例えば、扁平状の電極群を角形電池ケース8に収納して電池を形成した後、出荷前の初期充放電時に、角形電池ケース8の長辺側の平面に対して所定の圧力処理を行っておけばよい。なお、十分な効果を得るためには、1×10N/m以上の圧力処理を行うことが好ましい。
ところで、円筒状の電極群は、扁平状の電極群のような締め付けられた状態の湾曲部がないため、扁平状の電極群に比して、座屈の発生が起きにくい構造となっている。しかしながら、負極活物質5に高容量材料を用いた場合には、負極活物質5の膨張収縮が大きいため、座屈の発生には至らないまでも、極板間の距離が変化することによって、サイクル寿命特性にバラツキが生じるおそれがある。それ故、円筒状の電極群においても、負極活物質5の膨張収縮に伴う応力を緩和するため、正極板3の引張り伸び率を、負極板6の引張り伸び率よりも大きくすることが好ましい。
次に、本実施形態における非水電解質二次電池の製造方法について説明する。
厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体1の両面に、例えば、LiCoOからなる正極活物質2を含む正極合剤スラリーを塗布して乾燥させる。そして、正極板3の厚みが120μm程度になるまで圧延した後、例えば、280℃の温度で、180秒間、加熱処理を行って正極板3を形成する。
また、厚みが20μmの銅箔からなる負極集電体4の両面に、例えば、真空蒸着法を用いて、SiOxからなる負極活物質5を、15μm程度の厚みに蒸着して、負極板6を形成する。
次に、正極板3及び負極板6を、厚さ20μmのポリエチレン樹脂からなる微多孔性セパレータ7を介して楕円状に捲回して電極群を形成した後、電極群の長辺面から押圧して扁平状の電極群を形成する。
最後に、扁平状の電極群を有底角形の電池ケース8に収納して、封口板9で封口した後、封口板9に設けた注液孔から非水電解質を注液し、然る後、注液孔をレーザで封口することによって、非水電解質二次電池を完成させる。
なお、本実施形態において、非水電解質二次電池の各構成要素については、特にその材料及び製法に制限はないが、以下に示すような材料及び製法等を適用し得る。
正極合剤スラリーは、正極活物質2の他に、結着剤、導電剤などを含むことができる。正極板3は、例えば、正極活物質2と任意成分からなる正極合剤を液状成分と混合して正極合剤スラリーを調製し、得られたスラリーを正極集電体1に塗布し、乾燥させて作製する。
正極活物質2としては、リチウム複合金属酸化物を用いることができる。例えば、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-y2、LixCoy1-yz、LixNi1-yyz、LixMn24、LixMn2-yy4、LiMePO4、Li2MePO4F(M=Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも一種)が挙げられる。ここで、x=0〜1.2、y=0〜0.9、z=2.0〜2.3である。なお、リチウムのモル比を示すx値は、活物質作製直後の値であり、充放電により増減する。さらに、これら含リチウム化合物の一部を異種元素で置換してもよい。また、金属酸化物、リチウム酸化物、導電剤などで表面処理してもよく、表面を疎水化処理してもよい。
また、正極合剤スラリーの結着剤には、例えば、PVDF(ポリ二フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースなどが使用可能である。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。またこれらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。
また、正極合剤スラリーの導電剤には、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、フェニレン誘導体などの有機導電性材料などが用いられる。
なお、正極活物質2、導電剤および結着剤の配合割合は、それぞれ、正極活物質80〜97重量%、導電剤1〜20重量%、結着剤1〜10重量%の範囲とすることが望ましい。
正極集電体1には、多孔性構造の導電性基板または無孔の導電性基板が使用される。正極集電体1としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、チタンなどが用いられる。これら正極集電体1の厚さは、極板の強度を保持しつつ軽量化を図る観点から、1μm〜500μm(より好ましくは、5μm〜20μm)の範囲にすることがより好ましい。
負極活物質5は、シリコン、スズ、若しくはアルミニウム、またはこれらの化合物からなる材料を用いることができる。例えば、式SiOx(xは0<x<2で示される任意の数)で表される化合物を用いた場合、特に、0<x≦1のときに、高容量、かつ長寿命な負極板6を実現することができる。ここで、xの値は、負極活物質5全体における酸素の比率であり、例えば、燃焼法による酸素定量によって求めることが可能になる。この化合物は、局所的に複数の組成を有するSiOxの集合体でも、完全に均一な組成でも構わない。
負極集電体4上への負極活物質5の形成は、スパッタリング法、真空蒸着法、溶射法、及びショットピーニング法等による物理的な方法や、CVD法またはメッキ法等による化学的な方法によって堆積膜を形成することにより行われる。また、負極合剤スラリーを塗布・乾燥させて焼結膜を形成することにより行ってもよい。
上記方法のなかで、特に、真空蒸着法は、高速で、数μm〜50μmの範囲の堆積膜を形成することができる点で好ましい。なお、堆積膜は、平滑な膜である必要はなく、堆積した活物質が柱状あるいは島状に析出していてもよい。また、焼結膜を形成する方法では、いったん負極活物質5を含む合剤層を形成した後に、加熱またはプラズマにより焼結処理をして焼結膜を形成することが望ましい。
負極活物質5の堆積膜または焼結膜が、Si単体から構成される場合、その厚みは、1μm〜20μmの範囲にあることが好ましい。1μmより薄い膜では、電池中に占める負極集電体4の体積が大きくなり、高容量な電池を作ることが難しくなる。一方、20μmより厚い膜では、負極活物質5の膨張収縮による応力により、負極集電体4または負極板6全体にダメージを与えるおそれがある。また、負極活物質5の堆積膜または焼結膜が、Siを含む合金またはSiを含む化合物から構成される場合は、上記と同じ観点から、その膜厚は、3μm〜50μmの範囲にあることが好ましい。なお、上記膜厚は、リチウム導入前の厚みであり、放電状態(電池が放電終止電圧まで放電された状態)における膜厚にほぼ等しい。
負極合剤スラリーの結着剤は、負極集電体4と負極活物質5とを結合する接着力を有し、かつ、電池が動作する電位範囲において電気化学的に不活性であれば、どのような材料を用いても構わない。例えば、スチレン−ブチレン共重合ゴム、ポリアクリル酸、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等が結着剤として適している。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。結着剤の添加量は、負極合剤層の構造維持の観点からは多いほど好ましいが、電池容量の向上および放電特性の向上の観点からは少ない方が好ましい。また、負極合剤層には、さらに、黒鉛、カーボンブラックまたはカーボンナノチューブなどを代表とする炭素を主とする導電剤が含まれていることが好ましい。これらの導電剤は、負極活物質5と接していることが好ましい。
負極集電体4は、銅箔または銅合金箔を用いることが望ましい。銅合金箔は、銅の含有量が90重量%以上であることが好ましい。また、負極集電体4の強度あるいは柔軟性を向上させる観点からは、銅箔または銅合金箔にP、Ag、Cr等の元素を含ませることが有効である。
負極集電体4の厚みは、6μm〜40μmの範囲にあることが好ましい。6μmより薄い負極集電体4では、取り扱いが困難である上に、負極集電体4に必要な強度も維持しにくく、負極活物質5の膨張収縮によって切れたり、シワが生じたりすることがある。一方、40μmより厚い負極集電体4は、電池に占める負極集電体4の体積割合が大きくなり、電池の種類によっては容量の点で不利となる。また、分厚い負極集電体4は、曲げにくい等、取り扱いも困難である。
セパレータ7には、大きなイオン透過度を持ち、所定の機械的強度と、絶縁性とを兼ね備えた微多孔フィルム、織布、不織布などが用いられる。セパレータ7の材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンが耐久性に優れ、かつシャットダウン機能を有しているため、非水電解質二次電池の安全性の観点から好ましい。セパレータの厚さは、10μm〜40μm(より好ましくは、10μm〜25μm)の範囲にすることが好ましい。さらに、微多孔フィルムは、1種の材料からなる単層膜であってもよく、1種または2種以上の材料からなる複合膜または多層膜であってもよい。また、セパレータ7の空孔率は、30%〜70%(より好ましくは、35%〜60%)の範囲にあることが好ましい。
非水電解質としては、液状、ゲル状または固体(高分子固体電解質)状の物質を使用することができる。液状非水電解質(非水電解液)は、非水溶媒に電解質(例えば、リチウム塩)を溶解させることにより得られる。また、ゲル状非水電解質は、非水電解質と、この非水電解質が保持される高分子材料とを含むものである。この高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリビニリデンフルオライドヘキサフルオロプロピレン等が好適に使用される。
また、電解質を溶解する非水溶媒としては、公知の非水溶媒を使用することが可能である。この非水溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステルなどが用いられる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)などが挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)などが挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)などが挙げられる。非水溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、非水溶媒に溶解させる電解質には、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、ホウ酸塩類、イミド塩類などを用いることができる。ホウ酸塩類としては、ビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ホウ酸リチウム等が挙げられる。イミド塩類としては、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム((CF3SO22NLi)、トリフルオロメタンスルホン酸ノナフルオロブタンスルホン酸イミドリチウム(LiN(CF3SO2)(C49SO2))、ビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミドリチウム((C25SO22NLi)等が挙げられる。電解質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、非水電解液には、添加剤として負極板上で分解してリチウムイオン伝導性の高い被膜を形成し、充放電効率を高くすることができる材料を含んでいてもよい。このような機能を持つ添加剤としては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、4−メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4−エチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、4−プロピルビニレンカーボネート、4,5−ジプロピルビニレンカーボネート、4−フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、およびジビニルエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。なお、上記化合物は、その水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよい。電解質の非水溶媒に対する溶解量は、0.5〜2モル/Lの範囲内とすることが望ましい。
さらに、非水電解液には、過充電時に分解して電極上に被膜を形成し、電池を不活性化する公知のベンゼン誘導体を含有させてもよい。ベンゼン誘導体としては、フェニル基およびフェニル基に隣接する環状化合物基を有するものが好ましい。環状化合物基としては、フェニル基、環状エーテル基、環状エステル基、シクロアルキル基、フェノキシ基などが好ましい。ベンゼン誘導体の具体例としては、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、ベンゼン誘導体の含有量は、非水溶媒全体の10体積%以下であることが好ましい。
以下、本発明の実施例を挙げて本発明の構成及び効果をさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
図1に示した非水電解質二次電池を、以下に示した要領で作製し、サイクル寿命特性について評価した。
(1)負極板の作製
金属Si(純度99.999%、フルウチ化学(株)製、インゴット)を入れた黒鉛製るつぼ、および電子銃を真空蒸着装置内にセットした。この真空蒸着装置内へ、ロールから集電体4となる電解銅箔(古河サーキットフォイル(株)製、厚さ20μm)を一定速度(5cm/min)で導入し、真空蒸着装置内にセットされたノズルから、集電体4の表面に、純度99.7%の酸素ガス(日本酸素(株)製)を流量80sccmで供給しながら、銅箔を400℃に加熱した状態で、その表面にSiOx膜を蒸着した。なお、このときの蒸着条件は、真空度を3×10−6Torr、加速電圧を−8kV、電流を150mAとした。
集電体4の片面の蒸着が終了後、さらに裏側(未蒸着面)にも同様に真空蒸着を行い、両面に、厚さ15μmのSiOxからなる活物質薄膜5が形成されて負極板6を作製した。
なお、活物質薄膜5に、予めリチウムを吸蔵させておくために、活物質薄膜5を形成した後、再度、集電体4を真空蒸着装置中に導入し、抵抗加熱によって金属Liターゲット(本庄ケミカル(株)製)から活物質薄膜5上にLiを蒸着した。蒸着量は、ロールから真空蒸着装置へ導入する集電体4の走行速度を変えることにより調整した。集電体4の走行速度を5cm/minにしたときのLiの蒸着厚みは約5μmであった。
なお、集電体4の両面にSiOx薄膜を形成した後、いったん110℃において15時間真空乾燥し、次いで、露点−60℃以下のドライ雰囲気において室温で保管した。また、Li蒸着後においても、同様に露点−60℃以下のドライ雰囲気に保管することによって、電極中の水分の除去および管理をした。
(2)正極板の作製
LiCOとCoCOとを所定のモル比で混合し、この混合物を950℃で加熱することによって、正極活物質のLiCoOを合成した。これを45μm以下の大きさに分級した。この正極活物質100重量部に、導電剤のアセチレンブラックを5重量部、結着剤のポリフッ化ビニリデンを4重量部、および分散媒の適量N−メチル−2−ピロリドンを加え、十分に混合して正極合剤スラリーを得た。
この正極合剤スラリーを、厚み15μmのアルミニウム箔(昭和電工(株)製)からなる集電体1の両面に塗布し、乾燥し、圧延し、正極板3を作製した。そして、圧延後、正極板3を所定温度で所定時間、加熱処理を施して、正極板3の引張り伸び率を調整した。
この正極板3を、露点−60℃以下のドライ雰囲気において室温で保管し、以下の工程で電池を組み立てる直前に、80℃で真空乾燥することにより電極を脱水処理した。
(3)非水電解質の作製
非水電解質には、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比1:1の割合で混合した非水溶媒に、六フッ化リン酸リチウムを1モル/Lの濃度で溶解したものを用いた。
(4)電池の作製
正極板3及び負極板6の各集電体1、4に、アルミニウムの正極リード及びニッケルの負極リードを取り付けた後、厚さ20μmのポリエチレン樹脂製の微多孔性セパレータ7を介して楕円状に捲回して電極群を作製し、この電極群の長辺面から6.5MPaの圧力で5秒間プレスすることにより扁平状の電極群を得た。
この扁平状の電極群を、マンガン、銅等の金属を微量含有する3000系のアルミニウム合金製で、肉厚0.25mm、幅6.3mm、長さ34.0mm、総高50.0mmの形状にプレス成型した有底角型の電池ケース8内に収納した。
その後、露点−30℃、温度90℃で2時間乾燥することによって、電極群の含有水分量を500ppmから70ppmに下げた。
さらに、封口板9と電池ケース8とをレーザ溶接した後、封口板9に設けた注液孔より、非水電解質を注液した後、注液栓をレーザで封口して、角形の電池を作製した。なお、作製した電池の設計容量は1000mAh(以下、「1ItA」(1時間率電流)という。)であった。
(5)正極板及び負極板の引張り伸び率の測定
電池を分解して取り出した正極板3および負極板6を、幅15mm、有効部長さ20mmの試験片に切り出し、この試験片を20mm/minの速度で引っ張り、破断したときの伸び率を測定し、これを引張り伸び率とした。
(6)サイクル寿命特性の評価
20℃に設定した恒温槽の中で、定電流1ItAで、電池電圧が4.05Vになるまで充電し、次いで、4.05Vで、電流値が0.05ItAになるまで充電し、次いで、1ItAの定電流で、電池電圧が2.5Vに低下するまで放電する操作を繰り返した。そして、2サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の割合を求め、これを容量維持率(%)とした。
表1は、正極板3を圧延した後、加熱温度を120〜320℃の範囲で変えて加熱処理を行った各電池について、100サイクル後の容量維持率を評価した結果を示した表である。なお、加熱処理時間は180秒とした。
Figure 2009266761
表1に示すように、加熱処理温度が高くなると、正極板3の引張り伸び率が大きくなる。そして、正極板の引張り伸び率が、負極板の引張り伸び率(3.1%)よりも大きい電池(実施例1〜4)では、100サイクル後の容量維持率が高いのに対し、正極板の引張り伸び率が、負極板の引張り伸び率よりも小さい電池(比較例1〜3)では、100サイクル後の容量維持率が低いのが分かる。
これは、引張り伸び率の大きな正極板3が、負極活物質5の膨張収縮に追随して、扁平状の電極群の長手方向に伸縮することによって応力を緩和したためと考えられる。その結果、電極群の平坦部における座屈の発生を抑制することができ、優れたサイクル寿命特性を有する電池が得られたものと言える。
なお、加熱処理温度を320℃で行った電池(実施例1)では、容量維持率が少し低下しているが、これは、正極板の引張り伸び率が大きすぎたため(12.2%)、電極群を形成する工程において、均一な捲回ができず、位置ズレが生じたためと考えられる。
また、圧延後の正極板の加熱処理を行っていない電池(比較例3)では、電極群の平坦部において大きな座屈の発生が見られた。
表1の結果から、本実施例においては、圧延後の正極板の加熱処理温度は、200℃以上が好ましいと言える。しかしながら、負極板の引張り伸び率は、例えば、負極活物質を真空蒸着法で形成した場合、蒸着時の負極集電体の加熱温度によっても変化する。本実施例においては、負極集電体(銅箔)を400℃に加熱して蒸着を行ったが、例えば、蒸着時の加熱温度を300℃にした場合には、負極板の引張り伸び率は、約1.4%となる。従って、この場合には、圧延後の正極板の加熱処理温度を200℃以下にしても、正極板の引張り伸び率を、負極板の引張り伸び率よりも大きくすることができる。
表2は、圧延後の正極板の加熱温度を280℃に固定して、加熱処理時間を30〜240秒の範囲で変えて加熱処理を行った各電池について、100サイクル後の容量維持率を評価した結果を示した表である。
Figure 2009266761
表2に示すように、加熱処理時間が長くなると、正極板3の引張り伸び率が大きくなる。そして、正極板の引張り伸び率が、負極板の引張り伸び率(3.1%)よりも大きい電池(実施例5〜9)では、100サイクル後の容量維持率が高いのに対し、正極板の引張り伸び率が、負極板の引張り伸び率よりも小さい電池(比較例4)では、100サイクル後の容量維持率が低いのが分かる。
表3は、初期の充放電時に、扁平状の電極群の平面部に対して加圧する圧力を、0.5×10N〜8.0×10N/mの範囲で変えて加圧処理を行った各電池について、100サイクル後の容量維持率を評価した結果を示した表である。
Figure 2009266761
表3に示すように、初期の充放電時に加圧処理を行った電池(実施例10〜14)では、加圧処理を行っていない電池(比較例5)よりも、100サイクル後の容量維持率が向上しているのが分かる。これは、初期の充放電時に、扁平状の電極群の平面部に対して加圧処理を行うことによって、初期の充放電時に起きやすい電極群の座屈の発生を抑制できたことによるものと考えられる。
なお、十分な効果を発揮するためには、1.0×10N/m以上にすることが好ましく、また、2.0×10N/m以上ではあまり差がない。
本発明の非水電解質二次電池は、高容量で、サイクル寿命特性に優れているため、ノートパソコン、携帯電話、デジタルスチルカメラなどの電子機器の駆動源、さらには高出力を要求される電力貯蔵用や電気自動車の電源として有用である。
本発明の実施形態における非水電解質二次電池の構成を示した部分切欠斜視図である。 本発明の実施形態における熱処理温度と引張り伸び率との関係を示したグラフである。
符号の説明
1 正極集電体
2 正極活物質
3 正極板
4 負極集電体
5 負極活物質
6 負極板
7 セパレータ
8 電池ケース
9 封口板

Claims (10)

  1. 正極集電体上に正極活物質が形成された正極板、及び負極集電体上に負極活物質が形成された負極板が、セパレータを介して捲回された電極群を備えた非水電解質二次電池であって、
    前記正極板の引張り伸び率が、前記負極板の引張り伸び率よりも大きい、非水電解質二次電池。
  2. 前記正極板の引張り伸び率は、3〜10%の範囲にある、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
  3. 前記正極板は、前記正極活物質を含む正極合剤スラリーが塗布・乾燥された前記正極集電体を圧延した後、所定の温度で熱処理されたものである、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
  4. 前記所定の温度は、200℃以上の温度である、請求項3に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
  5. 前記負極活物質は、シリコンまたはスズ、またはこれらの化合物からなる、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
  6. 前記電極群は、扁平状に捲回された状態で、角形の電池ケースに収容されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
  7. 前記扁平状の電極群は、少なくとも最初の充放電時に、前記電極群の平坦部に対して、1×10N/m以上の圧力処理がなされている、請求項6に記載の非水電解質二次電池。
  8. 正極集電体上に正極活物質が形成された正極板、及び負極集電体上に負極活物質が形成された負極板が、セパレータを介して捲回された電極群を備えた非水電解質二次電池の製造方法であって、
    前記正極板は、
    正極集電体上に、正極活物質を含む正極合剤スラリーを塗布・乾燥させる工程と、
    前記正極合剤スラリーが塗布・乾燥された正極集電体を圧延する工程と、
    前記圧延された正極集電体を所定の温度で熱処理する工程と
    により形成され、
    前記正極板の引張り伸び率が、前記負極板の引張り伸び率よりも大きい、非水電解質二次電池の製造方法。
  9. 前記熱処理工程において、前記圧延された正極集電体は、200℃以上の温度で熱処理される、請求項8に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
  10. 前記電極群は、扁平状に捲回された状態で、角形の電池ケースに収容される、請求項8に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
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