JP2009179080A - ステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 コラム支持部材からの外方への張り出し部位が小さく、組付け性が良好であるステアリング装置を提供すること。
【解決手段】 チルトガイドピン71の頭部71bの外周をチルトガイドスライダ72の第1凹部721aおよび第2凹部722aに係合させ、チルトガイドスライダ72をアッパーブラケット30の側壁部32のガイド孔32a内に配置し、さらにガタを除去するための皿バネ73をチルトガイドスライダ72と取付用筒状部424との間の隙間に配設した構造とした。これにより、チルトガイドピン71の頭部71bや皿バネ73がアッパーブラケット30の側壁部32よりも外方に大きく張り出す部分を減少することができる。したがって、張り出し部分に取付用工具が干渉することを防止でき、組付け性(車両搭載性)が良好なステアリング装置とすることができる。
【選択図】 図9
【解決手段】 チルトガイドピン71の頭部71bの外周をチルトガイドスライダ72の第1凹部721aおよび第2凹部722aに係合させ、チルトガイドスライダ72をアッパーブラケット30の側壁部32のガイド孔32a内に配置し、さらにガタを除去するための皿バネ73をチルトガイドスライダ72と取付用筒状部424との間の隙間に配設した構造とした。これにより、チルトガイドピン71の頭部71bや皿バネ73がアッパーブラケット30の側壁部32よりも外方に大きく張り出す部分を減少することができる。したがって、張り出し部分に取付用工具が干渉することを防止でき、組付け性(車両搭載性)が良好なステアリング装置とすることができる。
【選択図】 図9
Description
本発明は、ステアリング装置に関し、特に、ステアリングコラムとこのステアリングコラムを支持するコラム支持部材との間のガタを効果的に除去する構造を有するステアリング装置に係るものである。
従来から、操舵ハンドルの上下方向位置を調整するためのチルト動作が可能なステアリング装置が知られている。特許文献1には、電動アクチュエータの作動によりチルト動作が行われる電動チルト式ステアリング装置が記載されている。このステアリング装置は、ステアリングコラムの一方の側方に、電動モータの回転駆動力を直線動に変換して変換した直線動をコラムチューブに作用させてコラムチューブをチルト傾動させるチルト機構部が設けられている。また、ステアリングコラムの他方の側方に、ステアリングコラムのチルト傾動時にコラムチューブと摺接するスライド部が設けられている。そして、チルト機構部およびスライド部がステアリングコラムの傾動を許容するようにステアリングコラムを支持するコラム支持部材に組み付けられている構造とされている。
特開2002−193110号公報
ステアリングコラムやコラム支持部材を設計する際に、これらを組み付けるための組付けスペースを考慮した設計がなされる場合もある。この場合は、両者を組み付けたときに組付けスペースの分だけ両者間に隙間が生じることもある。また、設計誤差によって組付け時に隙間が生じることもある。このような隙間すなわちガタは、組付け体全体の剛性の低下(特に横剛性の低下)を招く。したがって、組付け時にこのガタを除去する必要がある。ガタを除去する方法として、例えばボルトによりコラム支持部材の外側からコラム支持部材とステアリングコラムとを締結するとともに、ボルトヘッドとコラム支持部材との間にバネなどの弾性体を介挿させ、この弾性体によりガタを除去する方法が考えられる。
しかし、上記の方法では、ボルトヘッドおよび弾性体がコラム支持部材の外方に配置してしまい、コラム支持部材から外方への張り出し部位が大きくなってしまうという問題がある。コラム支持部材から外方への張り出し部位が大きいと、ステアリング装置を車体側の部材に取付ける際に用いる工具にこの張り出し部位が干渉し、組付け性を悪化させるおそれがある。したがって、コラム支持部材から外方への張り出し部位は、できるだけ小さい方が好ましい。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、コラム支持部材からの外方への張り出し部位が小さく、組付け性が良好であるステアリング装置を提供することにある。
本発明のステアリング装置は、ステアリングコラムと、連結部材と、ガイド部材と、コラム支持部材と、弾性体とを備える。ステアリングコラムは、操舵ハンドルに連結されたステアリングシャフトと、このステアリングシャフトを収容する円筒状のチューブ部材とを有するものとして構成され、車体側の部材に傾動可能に、特に車体に対して上下方向に傾動可能に取付けられている。連結部材は、チューブ部材の外周側からチューブ部材に連結する連結軸部およびこの連結軸部の外端側に形成された頭部を備えている。ここで、上記「外端側」とは、連結軸部のチューブ部材に連結している側とは反対側の端部側のことである。また、連結軸部の軸方向はステアリングコラムの傾動平面に直交する方向であるのがよい。ガイド部材は、例えば連結部材の頭部を覆うようにしてこの頭部の外周に係合している。コラム支持部材は車体側の部材に組み付けられ、チューブ部材の側方に配置し且つ長孔が形成された側壁部を有し、ステアリングコラムの傾動に伴って長孔内をガイド部材が摺接して移動することによりステアリングコラムの傾動を許容するように前記ステアリングコラムを支持するものである。このコラム支持部材は、側壁部がチューブ部材の両側に配設され、また両側に配設された側壁部がチューブ部材の上下で連結された囲い構造となっていると、本発明が効果的に適用され得る。また弾性体は、ガイド部材とチューブ部材との隙間に配設されている。
また、コラム支持部材の側壁部の長孔を形成する壁面である長孔側面は傾斜面を有する。この傾斜面は、側壁部の外方面(チューブ部材に対面していない側の面)から内方面(チューブ部材に対面している側の面)に向かうにつれて長孔の幅(長孔を正面から見たときにおける長手方向に直交する方向の長さ)が大きくなるように、長孔の長手方向に平行であって深さ方向(側壁部の外方面から内方面に向かう方向)に傾斜して形成され、側壁部の内方面側に開口している。すなわち長孔側面の少なくとも内方端側が面取りされているようにテーパ状に形成されている。
また、ガイド部材は一対のガイド片からなる。一対のガイド片はそれぞれ長孔内に配置され、長孔の幅方向に離間可能とされる。この一対のガイド片は、長孔内にて互いに係合および離間することが可能とされている。そして、一対のガイド片は凹部および係合面をそれぞれ有している。凹部は、一対のガイド片が係合している係合状態であるときに連結部材の頭部の外周の径よりも小さい径を有する貫通孔を形成する。すなわちこの貫通孔に頭部は係合することはできない。また凹部は、一対のガイド片が長孔の幅方向に離間している離間状態であるときに連結部材の頭部の外周に係合する。したがって、一対のガイド部材が離間状態であるときにガイド部材は頭部と係合される。係合面は、側壁部に形成された上記傾斜面に対面し、傾斜面に係合するように、長孔の長手方向に平行であって深さ方向に傾斜して形成されるている。
この場合、ガイド部材は、上記一対のガイド片が係合状態であって係合面が傾斜面に係合しているときにガイド部材とチューブ部材との隙間の長さが弾性体の自然長以上となり、離間状態であって係合面が傾斜面に係合し、上記凹部に連結部材の頭部外周が係合して離間時頭部係合状態であるときに上記隙間の長さが弾性体の自然長未満となるように配置されているとよい。
上記構成のステアリング装置によれば、連結部材の頭部はその外周がガイド部材に係合する。ここで、ガイド部材はコラム支持部材の側壁部に形成された長孔内に配置しているので、連結部材の頭部自体も長孔内に配置することになる。よって、連結部材の頭部が側壁部よりも外方に大きく張り出すことはない。また、弾性体は長孔に配置したガイド部材とチューブ部材との隙間に配設されている。したがって、この弾性体が側壁部よりも外方に張り出すことはない。このように連結部材の頭部および弾性体の配置構造を工夫することによって、コラム支持部材からの外方への張り出し部位を小さくすることができる。これにより組付け性が良好であるステアリング装置とすることができる。
また、一対のガイド片が係合状態であって係合面が傾斜面に係合しているときに弾性体が配設される隙間の長さが弾性体の自然長以上となるので、ガイド部材を上記係合状態であって係合面が傾斜面に係合するようにして長孔内に配置しておくことにより、弾性体は上記隙間内に容易に組み入れられる。
また、上記のようにして弾性体を上記隙間に配置した後に一対のガイド片が係合状態から離間状態となるように一対のガイド片に力を加えることにより、上記係合面が傾斜面上をスライドする。一対のガイド片はこのスライドにより係合面と傾斜面との係合が維持されたまま長孔内を移動する。このときガイド片は、長孔側面の傾斜面に習って移動するため長孔の幅方向および深さ方向に移動する。長孔の幅方向への移動により一対のガイド片が係合状態から離間状態とされる。また、長孔の深さ方向への移動によりガイド部材とチューブ部材との隙間の長さが短くなる。そして、この離間状態において連結部材の頭部外周が一対のガイド部材の凹部に係合することにより、ガイド部材と連結部材が係合する。この離間時頭部係合状態(離間状態であって係合面が傾斜面に係合し、且つ凹部に連結部材の頭部が係合している状態)においては上記隙間の長さが弾性体の自然長未満であるので、隙間に配された弾性体は圧縮され、圧縮に対する復元力を発生する。この復元力によりガタが除去されるとともに係合面と傾斜面との係合力が高められ、長孔内からのガイド部材の抜け落ちが防止される。
また、上記一対のガイド片は、離間時頭部係合状態であるときに、長孔側面に係合することにより一対のガイド片のそれ以上の離間方向への移動を規制する規制面を有するのが好い。これによれば、一対のガイド片は、規制面と長孔側面の係合によりそれ以上の離間方向への移動が規制される。さらに一対のガイド片は、凹部と連結部材の頭部外周との係合により係合方向への移動も規制される。このようにして一対のガイド片が離間方向および係合方向に移動することを防止することができる。この場合、規制面は、長孔側面のうち傾斜面以外の面に係合するのがよい。特に、上記長孔側面のうち傾斜面以外の面は、長孔の長手方向および深さ方向に平行な面である平行面であり、上記規制面はこの平行面に係合するように、長孔の長手方向および深さ方向に平行な面であるとよい。また、上記傾斜面と平行面とは連続して形成され、上記係合面と規制面とは連続して形成されているものであるとよい。
また、長孔の深さ方向に対する係合面の傾斜角(θ)は、一対のガイド部材が係合状態で長孔に配置しているときの上記隙間の長さ(H1)と、離間時係合状態であるときの上記隙間の長さ(H0)との差、および、一対のガイド部材が係合状態で長孔に配置しているときに形成される上記貫通孔の径のうち長孔の幅方向に沿った径(A1)と、離間時頭部係合状態であるときに形成される一対のガイド部材の凹部により囲まれる空間の径のうち長孔の幅方向に沿った径(A0)との差、に基づいて定められるのがよい。好ましくは、傾斜角(θ)の正接(tanθ)は、一対のガイド部材の一方が長孔の幅方向に移動する長さ((A0−A1)/2)と深さ方向に移動する長さ(H1−H0)の比((A0−A1)/(2(H1−H0))を基に定めるのがよい。
また、上記ガイド部材の凹部を形成する壁面の外方端(ガイド部材を長孔に配置した場合の側壁部の外方面寄りの端)は、係合状態において連結部材の頭部が当接可能となるように面取りされているのがよい。これによれば、一対のガイド片が係合状態であるときであっても、上記頭部は凹部により形成される貫通孔の外方端に形成される面取り部分に当接可能とされる。したがって、連結部材をガイド部材に係合させるときには、まず連結部材の頭部を係合状態となっている一対のガイド部材により形成される貫通孔の面取り部分に当接させる。その後、この頭部をさらに貫通孔内に押し込むように力を加える。この力は面取り部分を介して一対のガイド片に伝達され、この力によって一対のガイド片は係合状態から離間状態とされる。一対のガイド片が離間状態になったときに頭部をガイド部材の凹部に係合させることができる。この場合において、連結部材の連結軸部がチューブ部材にネジ結合する場合には、連結軸部をチューブ部材にねじ込むことにより、一対のガイド片は頭部から貫通孔に押し込む方向への力を受けて係合状態から離間状態とされる。このため、連結部材の連結に要する力を利用して一対のガイド片を係合状態から離間状態に移行させて、凹部内に頭部外周を係合させることができる。
また、上記チューブ部材は、ステアリングシャフトを回動可能且つ軸方向移動不能に支持する筒状のコラムチューブと、コラムチューブの外周に摺接されてコラムチューブに対して軸方向変位可能な筒状のチューブガイド部材とを備え、上記連結部材はチューブガイド部材に連結しているものであるのがよい。これによれば、コラムチューブがチューブガイド部材に対して軸方向移動することにより、このステアリング装置にテレスコピック作動を行わせることができる。したがって、チルト作動のみならずテレスコピック作動を行い得るステアリング装置にも本発明を適用することができる。
以下、本発明の実施形態に係るステアリング装置について図面を用いて説明する。なお、本実施形態に係るステアリング装置は、電動モータなどの電動アクチュエータの作動によって、車両の上下方向にチルト傾動可能であり、且つ車両の前後方向にテレスコピック作動が可能とされたステアリング装置である。図1は、本実施形態に係るステアリング装置の側面図、図2は斜視図である。図に示されるように、ステアリング装置1は、ステアリングコラム10と、ロアーブラケット20と、アッパーブラケット30とを有する。
ステアリングコラム10は、ステアリングシャフト11とコラムチューブ12とを備える。ステアリングシャフト11は、車両後方端側(図1において後側)にて図示省略の操舵ハンドルに連結されたアッパーシャフト111と、車両前方端(図1において前側)にて図示省略のユニバーサルジョイントにより中間軸(図示省略)に連結されたロアーシャフト112とを備える。アッパーシャフト111は筒状に形成され、ロアーシャフト112は棒状に形成される。アッパーシャフト111の車両前方側とロアーシャフト112の車両後方側は、スプライン嵌合により一体回転可能且つ軸方向相対移動可能に同軸連結している。
コラムチューブ12はチューブ本体部121とヨーク部122とに分かれていて、これらが一体動作可能に連結している。チューブ本体部121はアッパーシャフト111の外周を覆うように円筒状に形成されており、その内周側にてベアリングなどを介してアッパーシャフト111を回転可能且つ軸方向相対移動不能に支持している。ヨーク部122はチューブ本体部121の前方側の端部に連結されており、図に示された状態ではロアーシャフト112の外周側に配され、前方側にはアーム部122aがロアーシャフト112の両側方に延びている。このアーム部122aにはステアリングコラム10のコラム軸方向に沿って横長にスリット孔122bが両側方に形成されている。
ロアーブラケット20は、図1に示されるようにステアリングコラム10の車両前方寄りに配置している。ロアーブラケット20は、ステアリングコラム10の上方にてコラム軸方向(チューブ本体部121の軸方向)と直交する方向(図1における紙面に垂直な方向、以下、左右方向と称する。)に長く延びて形成され車体に取付けられる部位である上部取付部21と、この上部取付部21の左右両側からコラムチューブ12(ヨーク部122)を挟むように垂下した一対の支持部22とを備えている。
支持部22には、左右方向に延びたチルトセンタピン23の一端側(頭部)がそれぞれ回動可能に取り付けられている。一対のチルトセンタピン23の他端は、ヨーク部122のアーム部122aに形成されたスリット孔122bを通過してロアーシャフト112の外周に配された図示しないベアリングケースに螺合している。このベアリングケースは内部にベアリングを擁し、このベアリングによってロアーシャフト112が軸回りに回転可能且つ軸方向移動不能にベアリングケースに連結される。したがって、ロアーシャフト112はベアリングケースおよびチルトセンタピン23を介して回転可能且つ軸方向移動不能にロアーブラケット20に支持される。また、チルトセンタピン23がロアーブラケット20に対して軸回りに回転することにより、ロアーシャフト112およびヨーク部122が一体となってチルトセンタピン23を中心に上下方向に傾動する。このようにして、ステアリングコラム10はロアーブラケット20に対して車両の上下方向に傾動可能に支持される構造とされる。
アッパーブラケット30は、ステアリングコラム10をロアーブラケット20よりも車両後方側にて支持するものである。図3は、図1のA−A断面図であり、アッパーブラケット30とステアリングコラム10との組み付け構造を示す図である。図3に示されるように、アッパーブラケット30はチューブ本体部121を四方から取り囲むように配置しており、チューブ本体部121の上方に配置されてステアリングコラム10を跨ぐように左右方向に延びている上板部31と、この上板部31からチューブ本体部121を挟むように垂下してステアリングコラム10の両側方に配置した対の側壁部32,33と、対の側壁部32,33をステアリングコラム10の下方で連結する底面部34とを有する。また、側壁部32,33には、上下方向に延びたガイド孔32a,33aが形成されている。このガイド孔のうちのガイド孔32aが、本発明における長孔である。
また、図3に示されるように、チューブ本体部121のアッパーブラケット30に囲まれている部分には、チューブガイドブッシュ41を介してチューブガイドブラケット42が取り付けられている。チューブガイドブラケット42はコラムチューブ12(チューブ本体部121)に対して軸方向変位可能とされた円筒状の部材である。このチューブガイドブラケット42が本発明におけるガイド部材であり、このチューブガイドブラケット42およびコラムチューブ12により、本発明のチューブ部材を構成する。
チューブガイドブッシュ41は、チューブ本体部121の軸方向の所定の長さに亘り、チューブ本体部121の外周を取り巻くように略円筒形状に形成され、軸方向に切り欠かれたスリット41aが形成されて断面が略C字状とされている。このチューブガイドブッシュ41の外周側にチューブガイドブラケット42が配置している。このチューブガイドブラケット42は、チューブガイドブッシュ41を介してチューブ本体部121の外周に摺接され、チューブ本体部121に対して軸方向変位可能とされる。
図4はチューブガイドブラケット42の断面図である。図3および図4に示すように、チューブガイドブラケット42は、ガイド部421と、チルト用筒状部422と、テレスコ支持部423と、取付用筒状部424と、締め付け部425とを備えて構成されている。ガイド部421は断面がリング状とされた部分であり、周方向の異なった位置にその他の部位(チルト用筒状部422、テレスコ支持部423、取付用筒状部424および締め付け部425)が形成されている。
ガイド部421は、チューブガイドブッシュ41の外周を覆っており、チューブガイドブッシュ41と同じように略円筒形状を呈し、軸方向に延びたスリット421aが形成されて断面が略C字状とされている。締め付け部425はガイド部421の図示下方に位置しており、スリット421aを形成するガイド部421の両縁部から垂下して対面した対の突片425a,425bを備えて構成されている。この対の突片425a、425bを締結ボルト43(図3参照)で締め付けることにより、ガイド部421に周方向に沿った締結力が加えられる。この締結力によりチューブ本体部121がチューブガイドブッシュ41を介して締め付けられて、チューブ本体部121がチューブガイドブラケット42に連結される。この締結力を調整することで、テレスコピック作動時におけるチューブガイドブッシュ41とチューブ本体部121との間の摺動荷重およびガタを調整することができる。
チルト用筒状部422は、図3に示される組み付け状態においてガイド部421の右方側の側周から右方に延びて立設され、左右方向に軸を持つ筒形状に形成されている。チルト用筒状部422の内部には、ナット挿入用凹部422aおよびスクリュ挿入用凹部422bが形成されている。ナット挿入用凹部422aはチルト用筒状部422内にて軸方向に沿って、すなわち左右方向に沿って貫通形成されている。スクリュ挿入用凹部422bは上下方向に延びて貫通形成されている。ナット挿入用凹部422aとスクリュ挿入用凹部422bとは、チルト用筒状部422内にて交差している。また、スクリュ挿入用凹部422bは、その断面が、ガイド部421の軸方向を長径とする楕円形状となるような長孔とされている。
テレスコ支持部423は、図3においてガイド部421の左下側に配置した部分であり、図4に示されるように下方に開口してくり抜かれた断面方形状のナット挿入用凹部423aを有している。このナット挿入用凹部423aには後述するテレスコアジャストナット63が開口した側から挿入される。このテレスコアジャストナット63はずれ防止用の弾性体(ゴム)423bを介してテレスコ支持部423に弾性支持されている(図3参照)。さらにテレスコ支持部423には、組み付け状態にてコラム軸方向に沿った方向に貫通孔423cが形成されている。この貫通孔423cには後述するテレスコスクリュ62が挿通される。
取付用筒状部424はガイド部421を挟んでチルト用筒状部422に対称の位置に形成され、ガイド部421の図3において左方側の側周から左方に延びて立設され、組み付け状態において左右方向に軸を持つ筒状に形成されている。取付用筒状部424は、内部に軸方向に沿ったネジ孔部424aが形成されるとともに、図4に示されるようにその外方端部にて放射状に広がるフランジ部424bが形成されている。ネジ孔部424a内には図3に示されるようにチルトガイドピン71が螺合される。チルトガイドピン71は、ネジ軸部71aと頭部71bとを有する。ネジ軸部71aは外周に雄ネジが形成されている。このネジ軸部71aが、ステアリングコラム10のチルト傾動平面に直交する方向(車両の左右方向)であってステアリングコラム10の径方向外方(外周側)から取付用筒状部424のネジ孔部424aに螺合されることにより、チルトガイドピン71がチューブガイドブラケット42およびコラムチューブ12に連結される。頭部71bはネジ軸部71aの外端側すなわちネジ孔部424aへ挿入される側の端部とは反対の端部側に形成されている。この頭部71bに本発明のガイド部材に相当するチルトガイドスライダ72が組み付けられ、頭部71bの外周が回転可能にチルトガイドスライダ72に係合している。チルトガイドスライダ72は図1に示されるようにアッパーブラケット30の一方の側壁部32に形成されたガイド孔32aに摺接する状態で嵌め込まれており、図1の上下方向に移動可能且つ前後方向(コラム軸方向)に移動不能にアッパーブラケット30に組み付けられている。
また、本実施形態のステアリング装置1は、図1に示されるように電動チルト機構50および電動テレスコピック機構60を備えており、電動モータの駆動により自動的にチルト作動およびテレスコピック作動がなされるようにされている。電動チルト機構50は、チルト用電動モータ51(図1参照)と、チルトスクリュ52(図2、図3参照)と、チルトアジャストナット53(図3参照)とを備えて構成されている。
チルト用電動モータ51は、アッパーブラケット30に連結固定されている。このチルト用電動モータ51にはウォームシャフトやウォームホイールからなるウォーム減速機などの減速機構54(図3参照)を介してチルトスクリュ52が連結している。チルトスクリュ52は外周に雄ネジが設けられており、図3に示されるようにアッパーブラケット30の上板部31に固定されたベアリングBr1および、底面部34にてベアリングケース35およびロックナット36により固定されたベアリングBr2を介して回転可能且つ軸方向移動不能にアッパーブラケット30に支持されている。このチルトスクリュ52は図3の上下方向に延びて形成されている。また、チルトスクリュ52は、チューブガイドブラケット42のチルト用筒状部422のスクリュ挿入用凹部422bを挿通している。
チルトアジャストナット53はチルトスクリュ52に螺合しているナット部材であって、チルトスクリュ52の回転によりネジ送りされる。チルトアジャストナット53は、その内部にネジ孔部53aおよび抑え穴部53bが形成されている。チルトアジャストナット53は、ネジ孔部53aがチルト用筒状部422のスクリュ挿入用凹部422bに軸方向に重ね合わされるようにチルト用筒状部422のナット挿入用凹部422aに挿入されている。この挿入状態において、スクリュ挿入用凹部422bを挿通したチルトスクリュ52がネジ孔部53aにてチルトアジャストナット53に螺合する。スクリュ挿入用凹部422bは上述のように長穴状に形成されており、チルトスクリュ52が挿通した状態において、チルトスクリュ52の径方向に隙間を有している。
また、抑え穴部53bはネジ孔部52aに直交しており、その内部には押圧ホルダ55および押圧バネ56が配設されている。押圧バネ56は抑え穴部53b内にその中心軸方向に沿って配設されている。押圧バネ56は、その一端が抑え穴部53bの開口縁に取り付けられたボルト57に固定され、他端が押圧ホルダ55に固定されている。押圧ホルダ55はチルトスクリュ52の側周に対面配置しており、チルトスクリュ52の外径形状に合うような断面円弧状の曲面がチルトスクリュ52に面する側に形成されている。また、押圧バネ56は図3に示された状態で伸張力を発揮する状態とされている。したがって、押圧バネ56の伸張力により押圧ホルダ55はチルトスクリュ52を付勢する。これによりチルトスクリュ52は押圧ホルダ55とは反対側のネジ孔部53aの内周壁に押し付けられる。ネジ孔部53aの内周壁には雌ネジが形成されているので、この押し付けによりチルトスクリュ52の雄ネジとネジ孔部53aの雌ネジとが確実に螺合する。したがって、上記の付勢力によりチルトスクリュ52とチルトアジャストナット53との間のガタを取り除くことができる。
図3に示されるように、チルトアジャストナット53はナット挿入用凹部422aに挿入されるが、その右方部分はナット挿入用凹部422aから突出する。その突出した部分には、外周を覆うようにチルトガイドスライダ53cが取り付けられている。このチルトガイドスライダ53cは外形が方形状とされ、アッパーブラケット30の他方の側壁部33に形成されたガイド孔33aに嵌め込まれており、その側辺をガイド孔33aにガイドされて、上下方向に移動可能且つ前後方向(コラム軸方向)に移動不能とされている。チルトガイドスライダ72,53cが側壁部32,33のガイド孔32a,33aにて面受けされることにより、チューブガイドブラケット42およびチルトアジャストナット53などを介してステアリングコラム10の全体がその両側方からアッパーブラケット30に支持されている構造とされている。
電動テレスコピック機構60は、テレスコ用電動モータ61(図1、図2参照)と、テレスコスクリュ62(図1〜図3参照)と、テレスコアジャストナット63(図3参照)とを備えて構成されている。テレスコ用電動モータ61は、コラムチューブ12のヨーク部122に固定されている。このテレスコ用電動モータ61は、ウォームシャフトおよびウォームホイールからなるウォーム減速機などの減速機構(図示省略)を介してテレスコスクリュ62に連結している。テレスコスクリュ62は、ステアリングコラム10のコラム軸方向に延びて形成されており、外周に雄ネジが形成されている。また、テレスコスクリュ62は、ヨーク部122にベアリングを介して回転可能且つ軸方向移動不能に支持され、チューブガイドブラケット42のテレスコ支持部423に形成された貫通孔423cを挿通している。
図3に示されるように、テレスコアジャストナット63はテレスコ支持部423のナット挿入用凹部423a内に挿入されており、上述のようにずれ防止用の弾性体423bを介してテレスコ支持部423に移動不能に弾性支持されている。テレスコアジャストナット63の内部には、内周に雌ネジを有するネジ孔部63aが形成され、このネジ孔部63aにてテレスコスクリュ62がテレスコアジャストナット63と螺合する。また、テレスコアジャストナット63の内部には、さらに抑え穴部63bが形成されている。この抑え穴部63bはネジ孔部63aに直交するようにナット挿入用凹部423aの開口端側から図3において上方に延びて形成されており、その先端がネジ孔部63aに連通している。そして、この抑え穴部63bには押圧ホルダ65および押圧バネ66が配設されているとともに、抑え穴部63bの開口端にはボルト67が固定されている。これらの押圧ホルダ65、押圧バネ66およびボルト67によりテレスコスクリュ62とテレスコアジャストナット63との間のガタを取り除くことができる。
図3に示されるように、アッパーブラケット30の上板部31は、チルトスクリュ52の図示上方端を支持するベアリングBr1が固定された部位を有する上方支持部31aと、上方支持部31aから図示左右方向に水平に突出した部分である一対の取付部31b、31bとを有する。取付部31b、31bにはそれぞれ車両後方側に開口したスリット孔31c、31cが形成されている。このスリット孔31c、31cには図示しないボルトなどの締結手段が図3において下側から挿通される。そして、このボルトが車体側の部材に螺合されることによって、アッパーブラケット30が車体側に組み付けられる。なお、ボルトの締結荷重は板バネなどの付勢力により調整されていてもよい。この場合、適正に調整された締結荷重以上の力がアッパーブラケット30に作用すると、ボルトがスリット孔31c、31cから抜け出ることによりアッパーブラケット30と車体側の部材との固定が解除される。これによりアッパーブラケット30は車体から移動離脱し、ステアリングコラム10とともに車体に対して移動可能となる。すなわちこのアッパーブラケット30はブレークアウエイブラケットとして機能する。
上記構成のステアリング装置1において、テレスコ用電動モータ61が駆動すると、減速機構を介してテレスコ用電動モータ61に連結したテレスコスクリュ62が回転する。このときテレスコスクリュ62に螺合したテレスコアジャストナット63がテレスコ支持部423に移動不能に弾性支持されているので、テレスコスクリュ62は回転しながら軸方向に移動する。
テレスコスクリュ62の軸方向移動により、テレスコスクリュ62を支持しているヨーク部122、ヨーク部122に連結するチューブ本体部121、チューブ本体部121に支持されるアッパーシャフト111が移動する。これにより、ロアーシャフト112を残してステアリングコラム10がコラム軸方向である車両前後方向に移動してテレスコピック作動がなされる。このときアッパーシャフト111はロアーシャフト112に対して軸方向移動する。また、ロアーブラケット20およびアッパーブラケット30は車体側に固定されているので、上記テレスコピック作動によっては移動しない。また、チルトガイドスライダ72,53cがガイド孔32a,33aに嵌り込んでいてコラム軸方向への移動が規制されているため、チルトガイドスライダ72、53cが組み付けられたチューブガイドブラケット42およびチューブガイドブッシュ41もテレスコピック作動によってはコラム軸方向へ移動しない。このためテレスコピック作動中、チューブ本体部121は、締め付けボルト43によるチューブガイドブラケット42との間で発生する締結力(摺動抵抗)に抗してチューブガイドブッシュ41を摺接しながら軸方向移動する。また、テレスコピック作動時にロアーブラケット20に取り付けられたチルトセンタピン23がヨーク部122のアーム部122aに形成されたスリット孔122b内をコラム軸方向に移動することによりロアーブラケット20に対するコラムチューブ12の軸方向移動が許容される。
また、チルト用電動モータ51が駆動すると、減速機構54を介してチルト用電動モータ51に連結したチルトスクリュ52が回転する。チルトスクリュ52はアッパーブラケット30に回転可能且つ軸方向移動不能に支持されているので、チルトスクリュ52の回転によりチルトスクリュ52に螺合したチルトアジャストナット53がネジ送りされて、チルトスクリュ52の軸方向に沿って図3の上下方向に移動する。チルトアジャストナット53の移動により、チルトアジャストナット53に連結したチューブガイドブラケット42およびチューブガイドブッシュ41も移動し、さらにチューブガイドブラケット42に摺接したチューブ本体部121も移動する。これによりチューブ本体部121、ヨーク部122、アッパーシャフト111およびロアーシャフト112を含むステアリングコラム10は、ロアーブラケット20にチルトセンタピン23を介して支持された点(支持点)を中心に、車体に対して上下方向に傾動し、チルト作動がなされる。このときチルトガイドスライダ72および53cはガイド孔32a,33aを移動する。このように、アッパーブラケット30は、ステアリングコラム10のチルト作動に併せてチルトガイドスライダ72および53cがガイド孔32a,33a内をその長手方向(図3の上下方向)に移動することにより、ステアリングコラム10のチルト傾動を許容するようにステアリングコラム10を支持する。
また、上記チルト作動によりステアリングコラム10が傾動すると、アッパーブラケット30に対するステアリングコラム10およびチューブガイドブラケット42の傾動角度が変化する。この傾動角度の変化に伴って、チューブガイドブラケット42に取り付けられたチルトアジャストナット53がナット挿入用凹部422a内にて、またチルトガイドピン71がチルトガイドスライダ72内にて、ステアリングコラム10の傾動平面に直交する軸回り(傾動軸と平行な軸回り)に相対的に回転変位する。これにより、チューブガイドブラケット42はステアリングコラム10のチルト作動に伴って傾動平面内で傾動可能とされる。
なお、上記チルト作動によってステアリングコラム10はロアーブラケット20のチルトセンタピン23による支持点を中心に揺動(傾動)するのに対し、チルトアジャストナット53はチルトガイドスライダ53cの移動にしたがってアッパーブラケット30のガイド孔33aの軸方向に沿って直線的に移動する。このためチルト作動の前後において、上記支持点からチルトアジャストナット53までの距離がステアリングコラム10の軸方向に変化する。この軸方向の変化は、アッパーシャフト111(およびコラムチューブ12)がロアーシャフト112に対して軸方向に移動することにより、すなわちテレスコピック作動時と同様にチルトセンタピン23がヨーク部122のスリット孔122bを軸方向に移動することにより許容(吸収)される。
ところで、ステアリング装置1を構成するコラムチューブ12、チューブガイドブラケット42およびアッパーブラケット30は、それぞれ別々に加工されてから組み付けられる。これらの部品は、加工工程において組付け易くするための隙間が設けられた加工寸法に加工されることもある。したがって、これらの部品を組み付けた場合にガタが発生するおそれがある。また、加工精度誤差によってもガタが発生することもある。
このガタは、これらの部品が機械的に連結していない部位に発生する。例えば図3に示されるように、チューブガイドブラケット42は、チルト用筒状部422にてチルトスクリュ52およびチルトアジャストナット53を介してアッパーブラケット30に機械的に連結している。このためチューブガイドブラケット42は、チルト用筒状部422の反対側に位置する取付用筒状部424が形成されている部位にてアッパーブラケット30の側壁部32との間にガタを生じるおそれがある。この部分にガタが生じた場合には、ステアリング装置1の横方向(図3の左右方向)における剛性が低下する。
本実施形態のステアリング装置1は、上記のようにして生じたガタを除去する構造とされている。具体的には図3に示されるように、チューブガイドブラケット42の取付用筒状部424のフランジ部424bとチルトガイドスライダ72との間にガタ除去用の部材としての皿バネ73が配設されている。皿バネ73は、図3に示された配設状態において圧縮されており、圧縮に対する復元力を発揮している。この皿バネ73の復元力(弾性力)により上記ガタが吸収(除去)される。したがって、ステアリング装置1の横方向における剛性が向上する。
また、皿バネ73がチルトガイドスライダ72の内側(チューブ本体部121側)に配設され、さらにチルトガイドスライダ72が側壁部32のガイド孔32a内に配設されているので、側壁部32から外方に張り出す部分がほとんどない。このため、ステアリング装置1を車両に取付ける際の取付性(車両搭載性)が良好となる。すなわち、ステアリング装置1を車両に取付けるためには、アッパーブラケット30の上板部31の取付部31bに形成されたスリット孔31cに下方からボルトが挿通され、このボルトが車体側の部材にネジ止めされる。このときアッパーブラケット30の側壁部32の外方(チューブ本体部121に対面する側と反対側の方向)に張り出した部分があると、ボルトをネジ止めするために用いる工具を回したりするときなどにこの張り出した部分が工具に干渉し、それによって締結手段をネジ止めすることができなくなるおそれがある。例えばチルトガイドピン71の頭部71bが側壁部32の外方に大きく張り出していたり、皿バネ73が側壁部32の外方に大きく張り出していたりすると、この部分に工具が干渉してしまう。しかし、本実施形態のステアリング装置1では上述のように側壁部32の外方に張り出した部分がほとんどないので、工具の締め付け軌跡(工具軌跡)の自由度が大きくなる。よって、ステアリング装置1を車体に取付けるときに取付工具がステアリング装置1に干渉することがなく、取付性(車両搭載性)を良好にすることができるのである。
しかし、アッパーブラケット30がステアリングコラム10の両側に配置された側壁部を有する場合や、本実施形態のように囲い構造となっている場合においては、皿バネ73を圧縮した(潰した)状態でフランジ部424bとチルトガイドスライダ72との間に配置させ、この配置状態のままこれらをアッパーブラケット30の側壁部32,33の間に組付けなければならない。皿バネ73を潰しながら組み付けるためには特殊な工具または治具が必要となり、組付けコストおよび組付け工数が増大してしまう。この点、本実施形態のステアリング装置1は、皿バネ73を圧縮せずに組み付けることができるように、チルトガイドスライダ72や側壁部32のガイド孔32aの形状に工夫が施されている。
図5は、アッパーブラケット30とチューブガイドブラケット42の取付用筒状部424付近の組付け構造を示す分解斜視図である。この図に示されるように、チルトガイドスライダ72と取付用筒状部424との間に皿バネ73が配置されている。皿バネ73はリング形状を呈しており、幅方向(軸方向)に厚みを持っていて、この方向に圧縮されることにより弾性力としての復元力を発生するものである。チルトガイドピン71はチルトガイドスライダ72を皿バネ73とともに取付用筒状部424に螺合する。この螺合が完了すると、チルトガイドスライダ72はアッパーブラケット30の側壁部32に形成されたガイド孔32aに嵌め込まれ、アッパーブラケット30に係合することになる。
図6は、チルトガイドスライダ72を示す図であり、図6(a)が斜視図、図6(b)が正面図、図6(c)が背面図、図6(d)が図6(b)におけるB−B断面図である。図に示されるように、チルトガイドスライダ72は、一対のガイド片(第1ガイド片721および第2ガイド片722)からなる。つまりチルトガイドスライダ72は、第1ガイド片721と第2ガイド片722の2つの部材に分割されている。第1ガイド片721は細長い平板状に形成されており、その長手方向の一方側面が第2ガイド片722との合わせ面721bとされ、この合わせ面721bに大きく円弧状に切り欠かれた第1凹部721aが形成される。同様に、第2ガイド片722も細長い平板状に形成されており、その長手方向の一方側面が第1ガイド片721との合わせ面722bとされ、この合わせ面722bに大きく円弧状に切り欠かれた第2凹部722aが形成される。両合わせ面721b、722bには互いに係合しあうように相補的な形状を有する係合部が形成されている。具体的には、第1ガイド片721の合わせ面721bのうち第1凹部721aが形成されていない平面部分には長手方向に沿って凸辺721cが形成され、一方、第2ガイド片722の合わせ面722bのうち第2凹部722aが形成されていない平面部分には長手方向に沿って溝722cが形成されている。凸辺721cと溝722cは、両者が係合したときに位置決めができるように、互いに相補的な形状とされる。
したがって、凸辺721cと溝722cとを嵌め合わせると、第1ガイド片721と第2ガイド片722が係合する。この係合した状態(係合状態)においては、チルトガイドスライダ72は断面外形が略正方形状であり、平面状に形成された表面72aと、表面72aの背面側に平面状に形成された裏面72bを有する。なお、図6は、係合状態におけるチルトガイドスライダ72を示している。
また、上記係合状態において、第1ガイド片721に形成された第1凹部721aと第2ガイド片722に形成された第2凹部722aとが突き合わされることにより、表面72a側から裏面72b側にかけて貫通した貫通孔72cが形成される。ここで、両凹部721a,722aのそれぞれの断面形状は対称な円弧形状ではあるが半円形状ではなく、円弧中心がそれぞれの凹部721a,722aよりも外方にある。したがって、両凹部721a,722aが合わさって形成される貫通孔72cの断面形状は真円形状ではなく、両凹部721a,722aの接続部位が尖るように両凹部721a,722aの円弧が連結した形状(例えば略紡錘形状)をなしている。
第1凹部721aおよび第2凹部722aは、図6(d)に示されるようにチルトガイドスライダ72の裏面72b側から表面72a側に向かって貫通孔72cの貫通軸方向と平行な方向に沿って延びた円弧状壁面である平行凹部721a1,722a1を有する。この平行凹部721a1,722a1の表面72a側の部分は面取りされており、この面取り部分がテーパ状凹部721a2,722a2とされる。テーパ状凹部721a2,722a2はチルトガイドスライダ72の表面72a側から裏面72b側に向かってすり鉢状に径が小さくなるように形成された円弧状壁面である。
上記係合状態において、平行凹部721a1,722a1により形成される断面略紡錘形状の空間部分の短径(合わせ面721b、722bに垂直な方向の径A1)は、チルトガイドピン71のネジ軸部71aの外径よりも大きく且つ頭部71bの外径よりも小さくなるように設計されている。したがって、係合状態では平行凹部721a1,722a1にチルトガイドピン71の頭部71bが係合することはできない。また、上記係合状態において、テーパ状凹部721a2,722a2により形成され表面72aに開口する断面略紡錘形状の空間部分の短径のうち開口端面における径A2は、チルトガイドピン71の頭部71bの外周よりも大きくされている。このため、係合状態においてはチルトガイドピン71の頭部71bはテーパ状凹部721a2,722a2に当接可能とされる。
また図6(b)および図6(d)に示されるように、第1ガイド片721は、合わせ面721bとは反対側の側面に形成された第1規制面721dおよび第1係合面721eを有する。第1規制面721dは上記合わせ面721bとは反対側の側面のうち表面72a寄りの部分に形成され、第1係合面721eは裏面72b寄りの部分に形成される。つまり、第1規制面721dと第1係合面721eは、第1ガイド片721の長手方向に平行に並ぶように、合わせ面721bの反対側の側面に形成される。第1規制面721dは、貫通孔72cの軸方向および第1ガイド片721の長手方向に平行な面とされている。第1係合面721eは、第1ガイド片721の長手方向に平行で貫通孔72cの軸方向に対して傾斜している面とされている。この第1係合面721eは、図からわかるように、表面72a側から裏面72b側に向かうにつれて合わせ面721b(または平行凹部721a1)との間の距離が長くなるように貫通孔72cの軸方向に対して傾斜している。
同様に第2ガイド片722は、合わせ面722bとは反対側の側面に形成された第2規制面722dおよび第2係合面722eを有する。これらの第2規制面722dおよび第2係合面722eは、上記第1規制面721dおよび第1係合面721eの形状と対称的な形状とされている。第2規制面722dは、合わせ面722bとは反対側の側面のうち表面72a寄りの部分に形成され、第2係合面722eは裏面72b寄りの部分に形成される。つまり、第2規制面722dと第2係合面722eは、第2ガイド片722の長手方向に並ぶように、合わせ面722bの反対側の側面に形成される。第2規制面721dは、貫通孔72cの軸方向および第2ガイド片722の長手方向に平行な面とされている。第2係合面722eは、第2ガイド片722の長手方向に平行で、貫通孔72cの軸方向に対して傾斜している面とされている。この第2係合面722eは、表面72a側から裏面72b側に向かうにつれて合わせ面722b(または平行凹部722a1)との間の距離が長くなるように貫通孔72cの軸方向に対して傾斜している。
第1ガイド片721の外形形状と第2ガイド片722の外形形状は、合わせ面721b、722bの相補形状を除いて対称形状となっている。したがって、第1ガイド片721と第2ガイド片722とを係合させた係合状態における両規制面721d、722dおよび両係合面721e、722eの外形形状は、図6(d)によく示されるように表面72aの縁部から垂直方向に垂下し、途中から据え拡がり状に幅が大きくなる形状とされている。
図7は、チルトガイドスライダ72の第1ガイド片721と第2ガイド片722とがそれぞれ各合わせ面721b,722bから垂直方向に所定距離δだけ離間した状態を示す図であり、図7(a)が斜視図、図7(b)が正面図、図7(c)が背面図、図7(d)が図7(b)におけるC−C断面図である。
図7(b)および図7(c)に示されるように、第1ガイド片721と第2ガイド片722が合わせ面721b,722bに対して垂直方向に離間した離間状態においては貫通孔72cが分断される。このとき第1ガイド片721と第2ガイド片722とを上記垂直方向に距離δだけ離間したときに、第1凹部721aの平行凹部721a1と第2凹部722aの平行凹部722a1とを正面から見たときの外形線は、所定の直径A0の真円上の円弧を描く。また、チルトガイドピン71の頭部71bの断面外形形状は円形であり、その径は上記直径A0とほぼ等しい大きさとされている。したがって、両ガイド片721,722が所定量δだけ離間した離間状態においては、チルトガイドピン71の頭部71bの外周が平行凹部721a1および722a1に係合可能となる。
図8は、チルトガイドピン71を介してアッパーブラケット30の側壁部32にチューブガイドブラケット42を仮組付けした状態を示す図、図9は組付け完了状態を示す図、図10は図8および図9のうちアッパーブラケット30の側壁部32のみを取り出した図である。ここで、図8および図9は、図3においてチルトガイドピン71が組み付けられる部分を直線Lで示す左右方向に切断したときの断面を表している。
図8に示されるように、側壁部32とチューブガイドブラケット42は、ガイド孔32aが取付用筒状部424に形成されたネジ孔部424aに対面するように位置決めされている。また、図10によく示されるように、ガイド孔32aを形成する壁面のうち長手方向に形成される壁面である対の長孔側面321,322は、それぞれ傾斜面321a,322aおよび平行面321b,322bを有する。傾斜面321a,322aは、ガイド孔32aの長手方向に沿って平行に形成されるとともに、側壁部32の外方面(チューブガイドブラケット42に対面していない側の面)32bから内方面(チューブガイドブラケット42に対面している側の面)32cに向かうにつれてガイド孔32aの幅(傾斜面321a,322a間の距離)が大きくなるように、ガイド孔32aの深さ方向(ガイド孔32aの長手方向および幅方向に直交する方向、すなわち側壁部32の厚み方向)に対して傾斜して形成され、側壁部32の内方面32c側に開口している。また、平行面321b,322bは、ガイド孔32aの長手方向および深さ方向に平行な面とされ、その内方側の端部が傾斜面321a,322aの外方側の端部にそれぞれ接続しているとともに側壁部32の外方面32bに開口している。
また、ガイド孔32aの平行面321b,322b間の幅B1は、チルトガイドスライダ72が係合状態である場合における第1規制面721dと第2規制面722dとの間の長さA3(図6(d)参照)よりも大きく、且つ第1係合面721eと第2係合面722eとの間の長さのうち最大長さ(裏面72b側における第1係合面721eと第2係合面722eとの間の長さ)A4(図6(d)参照)よりも小さくされている。また、ガイド孔32aの深さ方向に対する傾斜面321a,322aのそれぞれの傾斜角はいずれも等しい角度θ1とされている。ここで、図6(d)に示されるように、チルトガイドスライダ72の貫通孔72cの軸方向に対する第1係合面721eの傾斜角と、貫通孔72cの軸方向に対する第2係合面722eの傾斜角も等しい角度θ2とされており、上記θ1とθ2は等しいものとされている。
アッパーブラケット30とチューブガイドブラケット42とを組み付けるには、まずチルトガイドスライダ72をガイド孔32aの長孔側面321,322に係合させる。このためには、まずチルトガイドスライダ72を係合状態とし、一対のガイド片721,722が離間する方向(離間方向)をガイド孔32aの幅方向と一致する向きとし(つまり合わせ面721b、722bの方向とガイド孔32aの長手方向を一致させ)、第1規制面721dおよび第2規制面722d側を先頭にして側壁部32の内方面32c側からチルトガイドスライダ72をガイド孔32aに入れ込む。これにより、図8に示されるように、チルトガイドスライダ72の第1規制面721dおよび第2規制面722dが形成されている部分が長孔側面321,322の平行面321b,322bに対面配置される。また、上記対面配置した状態においては、チルトガイドスライダ72の第1係合面721eおよび第2係合面722eは、それぞれ傾斜面321a,322aに対面するとともに面接触状態にてこれに係合する。つまり、チルトガイドスライダ72が図8に示されたようにガイド孔32aに配設されたときには、第1係合面721eおよび第2係合面722eは、ガイド孔32aの長手方向に平行であって深さ方向に傾斜して形成された面となる。なお、上記傾斜面と係合面とが係合している状態においては、図に示されるように第1規制面721dと平行面321bとの間、および第2規制面722dと平行面322bとの間に、それぞれ同一幅の微小隙間が形成される。この微小隙間の長さはδ/2である。
図8に示された状態では、第1凹部721aと第2凹部722aにより形成される貫通孔72cは取付用筒状部424のネジ孔部424aに対面する。また、チルトガイドスライダ72の裏面72bとチューブガイドブラケット42の取付用筒状部424のフランジ部424bとの間には隙間(ガタ)が形成される。この隙間内に皿バネ73が配設される。ここで、隙間の長さH1は皿バネ73の厚さと同程度または若干大きくされる。したがって、上記隙間に容易に皿バネ73を嵌め込むことができる。
上記隙間に皿バネ73を嵌め込んだ後、チルトガイドピン71によってアッパーブラケット30の側壁部32がチューブガイドブラケット42に締結固定される。このときチルトガイドピン71は、ネジ軸部71aの先端側を先頭にして、チューブガイドブラケット42の径方向外方側であって側壁部32の外方面32b側から貫通孔72c内に挿通される。このネジ軸部71aの挿入方向は、ステアリングコラム10のチルト方向(傾動方向)を含む平面(傾動平面)に垂直な方向と一致する。そして、ネジ軸部71aを取付用筒状部424のネジ孔部424aに螺合させる。この螺合によりチルトガイドピン71がネジ軸部71aの軸方向に進んでチルトガイドピン71がネジ孔部424aに差し込まれる。ネジ締めが進行すると、図8に示されるように頭部71bの角部がテーパ状凹部721a2,722a2のそれぞれの略中央部を接触中心としてテーパ状凹部721a2,722a2に接触する。このとき、テーパ状凹部721a2,722a2と接触する頭部71bの角部を面取りしておくとよい。
図8に示される状態からさらにネジ軸部71aをネジ孔部424aに螺合させていき、チルトガイドピン71をさらにネジ孔部424a内にねじ込むと、チルトガイドスライダ72のテーパ状凹部721a2,722a2が頭部71bからねじ込みによる力を受けるようになる。この力はチルトガイドスライダ72の裏面72bとフランジ部424bとの隙間に配設された皿バネ73に伝達される。これにより皿バネ73が圧縮され、弾性力としての復元力を発生する。チルトガイドスライダ72はこの復元力の反力をテーパ状凹部721a2,722a2と頭部71bとの接触部にて受ける。ここで、テーパ状凹部721a2,722a2は復元力の作用方向(すなわちチルトガイドピン71のねじ込み方向)に対して傾斜しているために、この反力はネジ軸部71aの軸方向の力と頭部71bの径方向であって両ガイド片721,722の離間方向の力に分解される。上記径方向の力によって、チルトガイドスライダ72を形成する第1ガイド片721と第2ガイド片722はチルトガイドピン71の頭部71bに押しのけられるようにして離間方向に移動する。このためチルトガイドスライダ72は係合状態から離間状態となり、第1凹部721aと第2凹部722aで囲まれた空間で形成されていた貫通孔72cが分断される。また、上記軸方向の力によってチルトガイドスライダ72はネジ軸部71aの軸方向であって取付用筒状部424に近づく方向に移動する。両ガイド片721,722の離間方向への移動およびチルトガイドピン71のねじ込み方向への移動は同時に行われる。このため両ガイド片721,722は、それぞれ係合面721e、722eが傾斜面321a,322aとの係合状態を維持したまま、傾斜面321a,322aをスライドするようにして移動する。
チルトガイドスライダ72がチルトガイドピン71のねじ込み方向に移動することにより、チルトガイドスライダ72の裏面72bと取付用筒状部424のフランジ部424bとの間の隙間が短くなる。したがって、上記したようにこの隙間に配設されている皿バネ73が圧縮されて弾性力としての復元力を発揮する。また、チルトガイドピン71のねじ込みが進行するにつれてチルトガイドスライダ72が離間方向に移動し、第1凹部721aと第2凹部722aとの間の距離も長くなるので、チルトガイドピン71の頭部71bとチルトガイドスライダ72のテーパ状凹部721a2,722a2との接触位置も上記移動につれて徐々に内側に移動していく。
チルトガイドピン71のねじ込みによる一対のガイド片721,722の離間方向への相対移動距離(離間距離)がδとなったときに、第1規制面721dおよび第2規制面722dが、それぞれ対面している長孔側面321,322の平行面321b、322bに係合する。これにより、チルトガイドスライダ72はそれ以上の離間方向への移動が規制される。また、離間距離がδとなったときは、第1凹部721aの平行凹部721a1と第2凹部722aの平行凹部722a1で囲まれる空間の径がチルトガイドピン71の頭部71bの外径にほぼ等しくなるので、この凹部空間内に頭部71bが挿入可能となる。このため頭部71bはテーパ状凹部721a2,722a2から滑り落ちて平行凹部721a1,722a1に摺接しながらこれらの凹部に囲まれた空間内に挿入されていく。そして、図9に示されるように頭部71bがフランジ部424bに当接した時点でチルトガイドピン71により螺合が完了する。
図9に示されるように、チルトガイドピン71による螺合が完了した状態では、第1ガイド片721と第2ガイド片722は離間状態であって、それぞれの係合面(第1係合面721e,722e)がガイド孔32aの傾斜面321a,322aに係合し、且つ第1凹部721aおよび第2凹部722aにチルトガイドピン71の頭部71bが係合している離間時頭部係合状態とされている。この離間時頭部係合状態では、チルトガイドスライダ72と取付用筒状部424との間の隙間H0が皿バネ73の自然長よりも短くされる。したがって、皿バネ73は圧縮された状態でチルトガイドスライダ72と取付用筒状部424との隙間に配設される。これにより皿バネ73が圧縮に対する復元力としての弾性力を発揮してガタが効果的に除去される。また、皿バネ73の弾性力(復元力)は、チルトガイドスライダ72にその裏面72b側から作用する。この弾性力はチルトガイドスライダ72の両係合面721e、722eと長孔側面321,322の傾斜面321a,322aとの係合力を強める方向に作用する。これによりチルトガイドスライダ72の抜け落ちが防止されるとともに、皿バネ73の圧縮状態が維持され、皿バネ73によるガタの防止機能が維持される。図11は、チルトガイドピン71による螺合が完了したときのアッパーブラケット30とチューブガイドブラケット42の組付け状態を示す断面図である。
以上のように、本実施形態のステアリング装置1は、チルトガイドピン71の頭部71bの外周をチルトガイドスライダ72の第1凹部721aおよび第2凹部722aに係合させ、チルトガイドスライダ72をアッパーブラケット30の側壁部32のガイド孔32a内に配置し、さらにガタを除去するための皿バネ73をチルトガイドスライダ72と取付用筒状部424との間の隙間に配設した構造とした。これにより、チルトガイドピン71の頭部71bや皿バネ73がアッパーブラケット30の側壁部32よりも外方に大きく張り出す部分を減少することができる。したがって、張り出し部分に取付用工具が干渉することを防止でき、組付け性(車両搭載性)が良好なステアリング装置とすることができる。
また、側壁部32のガイド孔32aを形成する長孔側面321,322は、側壁部32の外方面32bから内方面32cに向かうにつれてガイド孔32aの幅が大きくなるようにガイド孔32aの長手方向に平行であって深さ方向に傾斜して形成され側壁部32の内方面32c側に開口した傾斜面321a,322aを有する。一方、チルトガイドスライダ72はガイド孔32aの幅方向に離間可能な一対のガイド片(第1ガイド片721および第2ガイド片722)からなり、この一対のガイド片は、ガイド孔32a内にて互いに係合およびガイド孔32aの幅方向に離間が可能とされる。そして、一対のガイド片は、係合している係合状態であるときにチルトガイドピン71の頭部71bの外周の径より小さい径を有する貫通孔72cを形成するとともに離間している離間状態であるときに頭部71bの外周が係合する第1凹部721aおよび第2凹部722aをそれぞれ有している。さらに、一対のガイド片は、傾斜面321a,322aに対面しこの傾斜面に係合するようにガイド孔32aの長手方向に平行であって深さ方向に傾斜して形成された係合面(第1係合面721eおよび第2係合面722e)をそれぞれ有している。したがって、チルトガイドスライダ72を上記傾斜面と係合面との係合状態を維持しつつ傾斜面に対してスライドさせることで、チルトガイドスライダ72は係合状態から離間状態にされるとともにチルトガイドスライダ72がガイド孔32aの深さ方向にも移動されることにより取付用筒状部424(コラム支持部材)との間の隙間が狭められる。
よって、一対のガイド片が係合状態であって上記係合面が上記傾斜面に係合しているときに上記隙間の長さが皿バネ73の自然長以上となるようにチルトガイドスライダ72をガイド孔32a内に配置することにより、上記隙間内に皿バネ73を自然長のまま、つまり皿バネ73が弾性力を発生していない状態のまま組み入れることができる。このため特殊な治具を使用せずとも皿バネ73をステアリング装置1に組み付けることができる。さらに、一対のガイド片が離間時頭部係合状態であるときに上記隙間の長さが皿バネ73の自然長未満となるように、チルトガイドスライダ72をガイド孔32a内に配置することにより、皿バネ73が弾性力(復元力)を発揮するようになってガタが除去されるとともに、皿バネ73の弾性力が上記係合面と傾斜面との係合力を高めることによりチルトガイドスライダ72の抜け落ちが防止されて、皿バネ73の圧縮状態が維持され、ガタの除去機能も維持される。
ここで、傾斜面の傾斜角θ1と係合面の傾斜角θ2は上述のように共に等しい角度(例えばθ)とされる。この角度θは、以下のように設定するのがよい。すなわち、一対のガイド片が係合状態でガイド孔32aに組み付けられているとき(すなわち図8に示されるような仮組付け状態のとき)の隙間の長さをH1(図8参照)とし、離間時頭部係合状態であるとき(すなわち図9に示されるような組付け完了状態のとき)の隙間の長さをH0(図9参照)とする。また、一対のガイド片が係合状態でガイド孔32aに組み付けられているとき(すなわち図8に示されるような仮組付け状態のとき)に形成される貫通孔72cの径のうち長孔の幅方向に沿った径をA1(図6(d)参照)とし、離間時頭部係合状態であるときに一対のガイド片の凹部(第1凹部721aおよび第2凹部722a)のうち平行凹部721a1,722a1により囲まれて形成される空間の径をA0(図7(b)参照)とする。この場合に角度θは、これらの長さH1,H0,A1,A0に基づいて定められるのがよい。好ましくは、角度θは、H1とH0の差(H1−H0)と、A0とA1との差(A0−A1)に基づいて定められるのがよい。より好ましくは、角度θの正接(tanθ)が、((A0−A1)/(2(H1−H0))となるように、角度θを定めるのがよい。
また、上記一対のガイド片は、離間時頭部係合状態であるときに、長孔側面321,322のうち傾斜面321a,322a以外の面である平行面321b、322bに係合することにより、一対のガイド片のそれ以上の離間方向への移動を規制する規制面(第1規制面721d、第2規制面722d)を有する。このため組付け完了時に一対のガイド片が変位することを防止することができる。
また、チルトガイドスライダ72の第1凹部721aおよび第2凹部722aを形成する壁面の外方端は、係合状態においてチルトガイドピン71の頭部71bが当接可能となるように面取りされたテーパ状凹部721a2,722a2を有している。このため、チルトガイドピン71をチルトガイドスライダ72に係合させる際に、チルトガイドピン71の頭部71bの角部をテーパ状凹部721a2,722a2に当接させ、この状態で頭部71bをさらに貫通孔72c内に押し込むように力を加えることにより、一対のガイド片が押し広げられて係合状態から離間状態とされる。このように、チルトガイドピン71の連結に要する力を利用して一対のガイド片を係合状態から離間状態に移行させることにより、その他の力を利用せずとも第1凹部721aおよび第2凹部722a内に頭部71bの外周を係合させることができる。
また、本実施形態のステアリング装置1は、ステアリングシャフト11を回動可能且つ軸方向移動不能に支持する円筒状のコラムチューブ12と、コラムチューブ12の外周に摺接されてコラムチューブ12に対して軸方向移動可能な円筒状のチューブガイドブラケット42を備え、このコラムチューブ12とチューブガイドブラケット42とにより本発明のチューブ部材を構成している。そして、チルトガイドピン71はチューブガイドブラケット42に連結されている。このような構成とすることにより、コラムチューブ12をチューブガイドブラケット42に対して軸方向移動させてテレスコピック作動を行わせることができる。したがって、チルト作動のみならずテレスコピック作動を行い得るステアリング装置にも本発明を適用することができる。
1…ステアリング装置、10…ステアリングコラム、11…ステアリングシャフト、12…コラムチューブ(チューブ部材)、121…チューブ本体部、20…ロアーブラケット、23…チルトセンタピン、30…アッパーブラケット(コラム支持部材)、31…上板部、31a…上方支持部、31b…取付部、31c…スリット孔、32…側壁部、32a…ガイド孔(長孔)、32b…外方面、32c…内方面、321,322…長孔側面、321a,322a…傾斜面、321b,322b…平行面、33…側壁部、34…底面部、42…チューブガイドブラケット(チューブ部材)、421…ガイド部、422…チルト用筒状部、423…テレスコ支持部、424…取付用筒状部、424a…ネジ孔部、424b…フランジ部、425…締め付け部、50…電動チルト機構、51…チルト用電動モータ、52…チルトスクリュ、53…チルトアジャストナット、53c…チルトガイドスライダ、60…電動テレスコピック機構、61…テレスコ用電動モータ、62…テレスコスクリュ、63…テレスコアジャストナット、71…チルトガイドピン(連結部材)、71a…ネジ軸部、71b…頭部、72…チルトガイドスライダ(ガイド部材)、72a…表面、72b…裏面、72c…貫通孔、721…第1ガイド片、722…第2ガイド片、721a…第1凹部(凹部)、722a…第2凹部(凹部)、721a1,722a1…平行凹部、721a2,722a2…テーパ状凹部、721b,722b…合わせ面、721c…凸辺、722c…溝、721d…第1規制面、722d…第2規制面、721e…第1係合面、722e…第2係合面、73…皿バネ(弾性体)
Claims (6)
- 操舵ハンドルに連結されたステアリングシャフトと、前記ステアリングシャフトを収容する円筒状のチューブ部材とを有し、車体側の部材に傾動可能に取付けられたステアリングコラムと、
前記チューブ部材の外周側から前記チューブ部材に連結する連結軸部およびこの連結軸部の外端側に形成された頭部を備えた連結部材と、
前記頭部の外周に係合するガイド部材と、
車体側の部材に組み付けられ、前記チューブ部材の側方に配置し且つ長孔が形成された側壁部を有し、前記ステアリングコラムの傾動に伴って前記長孔内を前記ガイド部材が摺接して移動することにより前記ステアリングコラムの傾動を許容するように前記ステアリングコラムを支持するコラム支持部材と、
前記ガイド部材と前記チューブ部材との隙間に配設される弾性体と、を備えるステアリング装置であって、
前記長孔を形成する壁面のうち長手方向に形成される壁面である長孔側面は、前記側壁部の外方面から内方面に向かうにつれて前記長孔の幅が大きくなるように前記長孔の長手方向に平行であって深さ方向に傾斜して形成され、前記側壁部の内方面側に開口した傾斜面を有し、
前記ガイド部材は、前記長孔内に配置され、前記長孔の幅方向に離間可能な一対のガイド片からなり、
前記一対のガイド片は、係合している係合状態であるときに前記頭部の外周の径より小さい径を有する貫通孔を形成するとともに離間している離間状態であるときに前記頭部の外周が係合する凹部と、前記傾斜面に対面し前記傾斜面に係合するように前記長孔の長手方向に平行であって深さ方向に傾斜して形成された係合面とをそれぞれ有することを特徴とする、ステアリング装置。 - 請求項1に記載のステアリング装置において、
前記一対のガイド片が前記係合状態であって前記係合面が前記傾斜面に係合しているときに前記隙間の長さが前記弾性体の自然長以上となり、前記離間状態であって前記係合面が前記傾斜面に係合し、且つ前記凹部に前記頭部の外周が係合している離間時頭部係合状態であるときに前記隙間の長さが前記弾性体の自然長未満となるように、前記ガイド部材が配置されていることを特徴とする、ステアリング装置。 - 請求項1または2に記載のステアリング装置において、
前記一対のガイド片は、前記離間時頭部係合状態であるときに前記長孔側面に係合することによりそれ以上の離間方向への移動を規制する規制面を有することを特徴とする、ステアリング装置。 - 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のステアリング装置において、
前記係合面の前記長孔の深さ方向に対する傾斜角は、前記一対のガイド部材が前記係合状態であるときの前記隙間の長さと前記離間時頭部係合状態であるときの前記隙間の長さとの差、および、前記係合状態であるときに形成される前記貫通孔の前記長孔の幅方向に沿った径と前記離間時頭部係合状態であるときに形成される前記一対のガイド部材の前記凹部により囲まれる空間の前記長孔の幅方向に沿った径との差、に基づいて定められることを特徴とする、ステアリング装置。 - 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のステアリング装置において、
前記ガイド部材の前記凹部を形成する壁面の外方端は、前記係合状態において前記頭部が当接可能となるように面取りされていることを特徴とする、ステアリング装置。 - 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のステアリング装置において、
前記チューブ部材は、前記ステアリングシャフトを回動可能且つ軸方向移動不能に支持する筒状のコラムチューブと、前記コラムチューブの外周に配設されて前記コラムチューブに対して軸方向変位可能な筒状のチューブガイド部材とを備え、
前記連結部材は前記チューブガイド部材に連結していることを特徴とする、ステアリング装置。
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JP2011056994A (ja) * | 2009-09-07 | 2011-03-24 | Jtekt Corp | 車両用操舵装置 |
JP2011121440A (ja) * | 2009-12-09 | 2011-06-23 | Jtekt Corp | ステアリング装置 |
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