本発明の目的は、リガンド結合パートナーとの融合物として存在するときにリガンド結合パートナーの生体内血漿半減期を延ばすことができる安定な血漿タンパク質、特に免疫グロブリン定常ドメイン、に融合したリガンド結合パートナーからなる新規ポリペプチドを提供することによって達成される。また、このポリペプチドをコードするDNA、このポリペプチドを製造するための培養物および方法をも提供する。
安定血漿タンパク質が、同じポリペプチド鎖あるいは異なるポリペプチド鎖が通常はジスルフィド結合および/または非共有結合で結合することによって集合した複数鎖ポリペプチドを形成しており、通常は多量体型で存在する多くの場合(例えば、免疫グロブリンまたはリポタンパク質)には、リガンド結合パートナーを含有する本発明の融合物もまた、安定血漿タンパク質前駆体と本質的に同じ構造を有する多量体として生産され使用されるであろう。これらの多量体は、それが含有するリガンド結合パートナーに関して均一であり得るし、あるいは複数のリガンド結合パートナーを含有することも有り得る。さらにこれらの多量体は1または複数のリガンド結合パートナー部分を含有し得る。
安定血漿タンパク質が免疫グロブリン鎖である好ましい態様として、リガンド結合パートナーを少なくとも1本の鎖中に置換し、また普通はリガンド結合パートナーで免疫グロブリンの可変領域またはその適切な断片を置換する。しかし、本発明が免疫グロブリンの複数の鎖中に同じ、もしくは異なるリガンド結合パートナーが置換された融合物をも包含することは理解されるであろう。複数のリガンド結合パートナーが互いに異なる場合、集合した最終的な複数鎖ポリペプチドは、天然の可変領域を有する多機能抗体では不可能な様式でリガンドを架橋することができる。
この種類に属する特定の複数鎖融合物は、1本の免疫グロブリン鎖の可変領域がCD4などの一次受容体のリガンド結合領域によって置換されており、一方、もう1つの免疫グロブリン鎖の可変領域がLHRの結合機能性によって置換されており、その両免疫グロブリン鎖が本質的に通常の様式で互いに結合し合っているものである。
ペプチド結合もしくは試験管内で生成する結合を通して追加の治療的部分、例えばポリペプチド毒素、診断用標識、あるいは他の機能性など、に結合させることにより、本発明の融合物をさらに修飾することができる。
本発明の融合物の製造は、その融合物をコードする核酸で宿主細胞を形質転換し、その宿主細胞を培養し、その培養から融合物を回収することによって行う。本発明の融合物をコードするベクターおよび核酸、並びに、それらを含有する治療用および診断用組成物をも提供する。
本発明は、そのある側面として、LHR自体に関する。本発明のLHRは、図1〜3および図4〜6に記載のアミノ酸配列を有する全長成熟LHR、および天然に存在する対立遺伝子、試験管内で誘導体化することによって製造した共有結合的誘導体、あるいはそれらの予め決定されたアミノ酸配列変種もしくはグリコシル化変種である。
本発明が提供する新規組成物は精製され、抗ウイルス療法、神経変調療法、あるいは免疫変調療法を必要とする患者に投与するための薬学的に許容される担体中に製剤化され、細胞接着の変調に使用される。本発明は、受容体媒介性の異常を有する患者の治療に特に有用である。さらに本発明が提供する組成物は、その安定血漿タンパク質成分に結合し得る抗体または他の物質を使用することによってその融合物を吸収する、リガンド結合パートナーの組換え細胞培養からの精製の中間体としても有用であり、あるいは、安定血漿タンパク質が間接的標識として働く、リガンド結合パートナーの診断的検定にも有用である。
詳細な説明
本明細書で定義されるリガンド結合パートナーは、標的リガンド分子に特異的に結合するよう機能することが知られているタンパク質であり、その天然状態では一般に分泌ポリペプチドもしくは膜結合ポリペプチドとして存在する。典型的な膜結合型リガンド結合パートナーには疎水性貫膜領域またはリン脂質アンカーが含まれる。リガンド結合パートナーには、受容体、担体タンパク質、ホルモン、細胞接着性タンパク質(ある細胞に対する他の細胞の接着を指示または誘発するタンパク質)、レクチン結合分子、成長因子、酵素、栄養物質などが含まれる。免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーの構成要素でないか、もしくは上記の説明で除外したCD抗原類も適切なリガンド結合パートナーである(Knapp等,Immunology Today 10(8):253-258(1989))。血小板成長因子受容体およびインスリン受容体もリガンド結合パートナーとして選択できる。リガンド結合パートナーには全長天然型のみならず、正常なリガンドに結合する能力の残っている先端が欠失したアミノ酸配列変種またはその他のアミノ酸配列変種も含まれる。
本明細書で使用する場合、用語“リガンド結合パートナー”は免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーの多形性構成要素および非多形性構成要素、並びに、それに相同のタンパク質(例えばクラスIおよびクラスII主要組織適合性抗原、免疫グロブリン、T細胞受容体α、β、γおよびδ鎖、CD1、CD2、CD4、CD8、CD28、CD3のγ、δおよびε鎖、OX-2、Thy-1、細胞間または神経細胞接着分子(I-CAMまたはN-CAM)、リンパ球機能付随抗原-3(LFA-3)、神経細胞質タンパク質(NCP-3)、ポリ-Ig受容体、ミエリン結合糖タンパク質(MAG)、高親和性IgE受容体、抹消ミエリンの主要糖タンパク質(Po)、血小板由来成長因子受容体、コロニー刺激因子-1受容体、マクロファージFc受容体、Fcガンマ受容体、ガン胎児性抗原など)を特に除外する。免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーの構成要素に相同という用語は、この除外のみを目的として、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーの構成要素の配列を有すること、もしくは、このスーパーファミリーの既知の構成要素に対して、上に挙げた特定の例が免疫グロブリン可変または定常ドメインの配列に対して有するアミノ酸配列相同性と同等(もしくはより高度)のアミノ酸配列相同性を有する配列を、その中に含有することを意味する。ただしこの記述は、リガンド結合パートナー融合物がさらに免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーの構成要素またはその融合物と集合して多量体を形成する態様を排除しないことに注意すること。
また、用語“リガンド結合パートナー”からは、分離した遺伝子(複数サブユニットポリペプチドを導く単一鎖前駆体ポリペプチドをコードしない遺伝子)によってコードされ、そのポリペプチドの少なくとも1サブユニットが通常は細胞膜中に挿入されている複数サブユニット(鎖)ポリペプチド(PCT公開WO90/06953(1990年6月28日公開)に例示されている、細胞外マトリックス分子のための細胞受容体(例:インテグリン)を含む)も特に除外される。ただしこの記述は、リガンド結合パートナー融合物がさらに本段落で定義した複数サブユニットポリペプチドまたは複数サブユニット・ポリペプチドの融合物と集合して多量体を形成する態様を排除しないことに注意すること。
安定血漿タンパク質は典型的には約30〜2000残基を有し、その天然の環境において循環中の半減期の延長(例えば約20時間以上)を示すタンパク質である。適切な安定血漿タンパク質の例は、免疫グロブリン、アルブミン、リポタンパク質、アポリポタンパク質およびトランスフェリンである。典型的には、リガンド結合パートナーを、そのリガンド結合パートナーに増大した半減期を付与し得る血漿タンパク質またはその断片のN-末端で、血漿タンパク質に融合する。リガンド結合パートナーは一般にその天然のC-末端で血漿タンパク質に融合する。しかし場合により、リガンド結合パートナーの(貫膜領域および細胞質領域が削除された)先端欠失型を、実質的に疎水性ハイドロパシー特性を示す安定タンパク質の一部、典型的には約20残基以上を有する疎水領域が認められる成熟安定タンパク質の第1部位、に融合する。このような部位はトランスフェリンに存在し、アルブミンおよびアポリポタンパク質にも極めて普遍的であり、その同定に困難は伴わないはずである。次に、リガンド結合パートナーに増大した血漿半減期を付与するのに必要な程度の安定タンパク質の残部を融合物中に組み込む。リガンド結合パートナーの血漿半減期の増大が約100%以上なら満足のゆく結果である。
いくつかの好ましい態様として、結合パートナーをLHRとする。LHRは、図1〜3または図4〜6のLHRと同様の定性的生物活性を有するポリペプチドと定義され、好ましくは図1〜3または図4〜6のLHRの炭水化物結合ドメイン、表皮成長因子ドメイン、もしくは炭水化物結合ドメインと約70%以上相同なドメインを含有する。
本明細書では、LHRに関する相同性を、配列を並べ、必要ならば最大相同性率を達成するために間隙を導入した後に、図1〜3または図4〜6中の炭水化物結合ドメイン、表皮成長因子ドメイン、または補体結合ドメイン中の残基と同一である候補配列中の残基の百分率と定義する。
本明細書で使用する用語としてのLHRの範囲には、図1〜3または図4〜6に記載したHuLHRまたはMLHRのアミノ酸配列を有するLHR、図1〜3または図4〜6のLHRと同様の生物活性を示し得る脱グリコシル化LHR誘導体または非グリコシル化LHR誘導体、図1〜3または図4〜6の配列の相同アミノ酸配列変種、および試験管内で生成したLHRの相同変種および誘導体が含まれる。
LHRまたはLHR断片の生物活性を、1)LHRの少なくとも1つのエピトープと免疫学的に交差反応するか、もしくは2)LHRと質的に同等の少なくとも1つの接着性機能、調節機能またはエフェクター機能を有することと定義する。
LHRの定性的生物活性の一例は、リンパ様組織の特殊化した高内皮細胞上のリガンドに対する結合である。また、リガンド結合にはしばしばカルシウムなどの二価カチオンが必要である。
免疫学的に交差反応性という用語は、本明細書では、候補ポリペプチドが、既知の活性類縁体に対して生じたポリクローナル抗血清とのこの活性を有するLHRの定性的生物活性を競争的に阻害し得ることを意味する。このような抗血清は、完全フロインドアジュバント中の既知の活性類縁体をヤギまたはウサギに例えば皮下注射した後、追加免疫を不完全フロインドで腹腔内注射または皮下注射することによる常法で調製される。
構造的には、図7〜8に示したようにLHRには数個のドメインが含まれ、これらは次のように同定される(±10残基以内):シグナル配列(残基20〜32)、これに続く炭水化物結合ドメイン(図7〜8では“レクチン”ドメインと同定されている)(残基39〜155)、表皮成長因子(egf)ドメイン(残基160〜193)、補体因子結合ドメイン(残基197〜317)、貫膜結合ドメイン(TMD)(残基333〜355)および細胞質ドメイン(残基356〜372)。LHR細胞外ドメインの境界は一般に貫膜ドメインのN-末端もしくはその約30残基以内にあり、LHR配列を精査することによって容易に同定できる。これらのドメインはいずれも、あるいはすべて本発明の実施に使用できる。
図11〜13は、これらのドメインの3つに対していくらかの相同性を有する種々のタンパク質を示している。図11は、炭水化物結合ドメインを示し、図12は表皮成長因子ドメインを示し、図13はいくらか相同な補体結合ドメインを示している。
図7〜8に掲載したHuLHRとMLHRのアミノ酸配列の比較は、全体の配列相同性が高度(〜83%)であることを示している。しかし、HuLHRとMLHRに認められる種々のドメイン間の相同性の程度は様々である。例えばMLHRとHuLHRの間の配列保存度は、炭水化物結合ドメインおよびegfドメインの両者では約83%であるのに対して、第1補体結合反復中の保存度は79%に減少し、第2反復では63%しかなく、補体結合ドメイン全体の相同性は約71%である。さらに、MLHRの2つの補体結合ドメイン反復は同一であるのに対し、HuLHRでは相違が認められ、ネズミの反復とも異なっている。興味深いことに、貫膜配列および周辺領域におけるこれらの2つの受容体間の保存度はほぼ同一であり、おそらく貫膜アンカー領域内に保存的疎水性置換が1つあるだけである。
一般にヘルメスと呼ばれる一連のモノクローナルおよびポリクローナル抗体によって認識される上述の表面糖タンパク質は、本発明の範囲から除外される。
免疫グロブリンおよびそのある種の変異体は既知であり、多くが組換え細胞培養中で製造されている。例えば米国特許第4745055号;EP第256654号;Faulkner等,Nature 298:286(1982);EP120694;EP125023;Morrison,J.Immun.123:793(1979);Kohler等,P.N.A.S.USA 77:2197(1980);Raso等,Cancer Res.41:2073(1981);Morrison等,Ann.Rev.Immunol.2:239(1984);Morrison,Science 229:1202(1985);Morrison等,P.N.A.S.USA 81:6851(1984);EP255694;EP266663;WO88/03559を参照のこと。再分類された免疫グロブリン鎖も知られている。例えば米国特許第4444878号;WO88/03565;EP68763およびこれらに引用された文献を参照のこと。
普通はリガンド結合パートナーをC-末端で、免疫グロブリンの定常領域のN-末端に融合して、その可変領域を置換するが、結合パートナーのN-末端融合も望ましい。貫膜領域または脂質もしくはリン脂質アンカー認識配列を含有するリガンド結合パートナーのこれらの領域または配列は融合に先立って不活化するか削除することが好ましい。
典型的な場合、このような融合物は、免疫グロブリン重鎖の定常領域の少なくとも機能的に活性なヒンジ、CH2およびCH3ドメインを残している。定常ドメインのFc部分のC-末端か、重鎖のCH1または軽鎖の対応する領域のすぐN-末端側で融合を行うこともある。通常これは、適切なDNA配列を構築し、それを組換え細胞培養中で発現させることにより達成される。しかし別法として、本発明のポリペプチドを既知の方法に従って合成することもできる。融合を行う正確な部位は重要ではない。特定の部位はよく知られており、結合パートナーの生物活性、分泌または結合特性を最適化するよう選択することができる。至適部位は定型の実験によって決定されるであろう。
いくつかの態様では、ハイブリッド免疫グロブリンが単量体、あるいはヘテロ多量体またはホモ多量体(特に二量体または四量体)として会合する。一般的にこれらの会合した免疫グロブリンは、次の模式図で表される既知の単位構造を有するであろう。基本4鎖構造単位は、IgG、IgDおよびIgEがとる形態である。高分子量免疫グロブリン中では4鎖単位が反復される。IgMは一般に、互いにジスルフィド結合で結合し合った基本4鎖単位の5量体として存在する。IgAグロブリン、および場合によってIgGグロブリンも多量体型で血清中に存在し得る。多量体の場合、それぞれの4鎖単位は同一であり得るし、異なることもあり得る。
本明細書の模式図において、“A”は、そのリガンドに結合し得るリガンド結合部位を含有するリガンド結合パートナーの少なくとも一部を意味する。Xは追加の薬剤を表し、これはもう1つの機能性リガンド結合パートナー(Aと同一または異なる)であってもよいし、上に定義した複数サブユニット(鎖)ポリペプチド(例えばインテグリン)、あるいは可変領域または可変領域様ドメインなど免疫グロブリン・スーパーファミリーの構成要素の一部(天然またはキメラ免疫グロブリン可変領域を含む)、あるいはシュードモナス外毒素やリシンなどの毒素、あるいは普通は定常ドメインに結合していないポリペプチド治療薬であってもよい。VL、VH、CLおよびCHは免疫グロブリンの軽鎖または重鎖可変または定常ドメインを表す。これらの模式図が単に一般的な会合免疫グロブリン構造の例であって、すべての可能性を包含するものではないことは理解されるであろう。例えば数個の異なる“A”または“X”がこれらの構築物いずれかに存在することが望ましいかも知れないことは理解されるであろう。
これらの模式図が単に例示であること、また多量体の鎖が天然の免疫グロブリンと同じ様式でジスルフィド結合していると考えられることは理解されるであろう。本発明によれば、適切な核酸で形質転換された哺乳類細胞からハリブリッド免疫グロブリンが容易に分泌される。この分泌型には、結合パートナーのエピトープが重鎖二量体、軽鎖単量体または二量体中に存在するもの、並びに、結合パートナーのエピトープが1または複数の軽鎖または重鎖に融合して存在する重鎖および軽鎖ヘテロ四量体(4つまで、あるいは4つすべての可変領域類縁体が置換されているヘテロ四量体を含む)が含まれる。軽-重鎖非結合パートナー可変様ドメインが存在する場合、ヘテロ機能性抗体が提供される。
様々な構造の鎖また基本単位を使用することによって、本発明の単量体、ヘテロ多量体およびホモ多量体および免疫グロブリンを組み立てることができる。これらの基本単位の特定の例を次の模式図に表し、以下の式を省略するための等価表示を示す。
本発明によって製造される会合した新規免疫グロブリンの種々の例を以下に模式的に表す。上に定義した記号に加えて、nは整数を表し、Yは共有結合的架橋部分を表す。
(a)ACL;
(b)ACL−ACL;
(c)ACH−[ACH,ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,VLCL−VHCH,XCH,XCL,XCL−XCH,XCL−VHCH,XCH−VLCL,XCL−ACH,またはACL−XCH];
(d)ACL−ACH−[ACH,ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,VLCL−VHCH,XCH,XCL,XCL−XCH,XCL−VHCH,XCH−VLCL,XCL−ACH,またはACL−XCH];
(e)ACL−VHCH−[ACH, ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,VLCL−VHCH,XCH,XCL,XCL−XCH,XCL−VHCH,XCH−VLCL,XCL−ACH,またはACL−XCH];
(f)VLCL−ACH−[ACH, ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,VLCL−VHCH,XCH,XCL,XCL−XCH,XCL−VHCH,XCH−VLCL,XCL−ACH,またはACL−XCH];
(g)[A−Y]n−[VLCL−VHCH]2;
(h)XCHまたはXCL−[ACH,ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,XCL−ACH,またはACL−XCH];
(i)XCL−XCH−[ACH,ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,XCL−ACH,またはACL−XCH];
(j)XCL−VHCH−[ACH,ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,XCL−ACH,またはACL−XCH];
(k)XCH−VLCL−[ACH,ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,XCL−ACH,またはACL−XCH];
(l)XCL−ACH−[ACH,ACL−ACHH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,VLCL−VHCH,XCH,XCL,XCL−XCH,XCL−VHCH,XCH−VLCL,XCL−ACH,またはACL−XCH];
(m)ACL−XCH−[ACH,ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,VLCL−VHCH,XCH,XCL,XCL−XCH,XCL−VHCH,XCH−VLCL,XCL−ACH,またはACL−XCH];
A、X、VまたはCを共有結合的架橋部分(Y)で、(A−Y)n、(X−Y)nなどになるように改変してもよい。
リガンド結合パートナーAは、例えば任意にAαおよびAβと表される鎖を有する複数鎖分子であってもよい。これらの鎖を一単位として、上で単一鎖“A”と記載した部位に置く。この複数鎖の1本を(残りの鎖が正常な様式で、共有結合的または非共有結合的に融合鎖と結合している状態で)、免疫グロブリン鎖の一本に融合するか、あるいは、リガンド結合パートナーが2つの鎖を含有する場合には、1本の鎖を独立して免疫グロブリン軽鎖に融合し、もう1つの鎖を免疫グロブリン重鎖に融合する。
ここではリガンド結合パートナーの1本の鎖だけを安定血漿タンパク質に融合することが好ましい。この場合、結合パートナー鎖の1本と安定血漿タンパク質との間にペプチド結合による融合を行い、リガンド結合パートナーの他方の鎖は、自然に結合している時の様式、例えばジスルフィド結合や疎水相互作用で、融合鎖に結合させる。ペプチド融合のために選択するリガンド結合パートナー鎖は、貫膜ドメインを含有する鎖であるべきであり、その融合を本質的にその貫膜ドメインのN-末端側から行うか、貫膜および細胞質ドメインを置換するように行うであろう。複数の貫膜ドメインが存在する場合には、通常、融合(または削除後の融合)のためにその1つを選択し、他方を非融合のまま残すか、もしくは削除する。
以下に模式化する構造を有する基本単位は、複数鎖リガンド結合パートナーを伴う単量体、ヘテロ多量体およびホモ多量体(特に二量体および三量体)を作成するために使用するものの例である。
上記の単位構造に使用される2鎖リガンド結合パートナー(“AαおよびAβ”)を有する新規会合抗体の種々の例を以下に模式的に表す。
(n)AαAβCL−[ACH,ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,VLCL−VHCH,XCH,XCL,XCL−XCH,XCL−VHCH,XCH−VLCL,XCL−ACH,ACL−XCH,AαAβCH,AαAβCL,AαCL−AβCH,AβCL−AαCH,AαAβCL−VHCH,AαAβCH−VLCL,AαAβCL−XCH,またはAαAβCH−XCL];
(o)AαAβCH−[ACH,ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,VLCL−VHCH,XCH,XCL,XCL−XCH,XCL−VHCH,XCH−VLCL,XCL−ACH,ACL−XCH,AαAβCH,AαAβCL,AαCL−AβCH,AβCL−AαCH,AαAβCL−VHCH,AαAβCH−VLCL,AαAβCL−XCH,またはAαAβCH−XCL];
(p)AαCL−AβCH−[ACH,ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,VLCL−VHCH,XCH,XCL,XCL−XCH,XCL−VHCH,XCH−VLCL,XCL−ACH,ACL−XCH,AαAβCH,AαAβCL,AαCL−AβCH,AβCL−AαCH,AαAβCL−VHCH,AαAβCH−VLCL,AαAβCL−XCH,またはAαAβCH−XCL];
(q)AβCL−AαCH−[ACH,ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,VLCL−VHCH,XCH,XCL,XCL−XCH,XCL−VHCH,XCH−VLCL,XCL−ACH,ACL−XCH,AαAβCH,AαAβCL,AαCL−AβCH,AβCL−AαCH,AαAβCL−VHCH,AαAβCH−VLCL,AαAβCL−XCH,またはAαAβCH−XCL];
(r)AαAβCL−VHCH−[ACH,ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,VLCL−VHCH,XCH,XCL,XCL−XCH,XCL−VHCH,XCH−VLCL,XCL−ACH,ACL−XCH,AαAβCH,AαAβCL,AαCL−AβCH,AβCL−AαCH,AαAβCL−VHCH,AαAβCH−VLCL,AαAβCL−XCH,またはAαAβCH−XCL];
(s)AαAβCH−VLCL−[ACH,ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,VLCL−VHCH,XCH,XCL,XCL−XCH,XCL−VHCH,XCH−VLCL,XCL−ACH,ACL−XCH,AαAβCH,AαAβCL,AαCL−AβCH,AβCL−AαCH,AαAβCL−VHCH,AαAβCH−VLCL,AαAβCL−XCH,またはAαAβCH−XCL];
(t)AαAβCL−XCH−[ACH,ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,VLCL−VHCH,XCH,XCL,XCL−XCH,XCL−VHCH,XCH−VLCL,XCL−ACH,ACL−XCH,AαAβCH,AαAβCL,AαCL−AβCH,AβCL−AαCH,AαAβCL−VHCH,AαAβCH−VLCL,AαAβCL−XCH,またはAαAβCH−XCL];
(u)AαAβCH−XCL−[ACH,ACL−ACH,ACL−VHCH,VLCL−ACH,VLCL−VHCH,XCH,XCL,XCL−XCH,XCL−VHCH,XCH−VLCL,XCL−ACH,ACL−XCH,AαAβCH,AαAβCL,AαCL−AβCH,AβCL−AαCH,AαAβCL−VHCH,AαAβCH−VLCL,AαAβCL−XCH,またはAαAβCH−XCL];
上の表に示した構造は単に重要な特徴を示すだけであり、例えば上記の構造は免疫グロブリンの結合(J)ドメインや他のドメインを示しておらず、またジスルフィド結合も示していない。これらを簡潔のために省略する。しかし、そのようなドメインが結合活性にとって必要な場合には、その場合に応じて結合パートナーまたは免疫グロブリン分子中でそれらが占める通常の位置にそのようなドメインが存在すると見なされるべきである。
免疫グロブリンVLVH抗体結合部位が上に示されている場合、あるいはXCLまたはXCHが示されておりXが免疫グロブリン可変領域を表す場合は、それが予め決定した抗原に結合し得ることが好ましい。適切な免疫グロブリン結合部位および融合パートナーはIgG-1、-2、-3、または-4サブタイプ、IgA、IgE、IgD、またはIgMから得られるが、IgG-1が好ましい。上記の模式的例は二価抗体の代表例である。より複雑な構造は、他のクラス(例えばIgM)由来の免疫グロブリン重鎖配列を使用することによって齎されるであろう。
特に好ましい態様は、リンパ様組織内皮のための結合部位を含有するLHRのN-末端部分の、免疫グロブリンG1のエフェクター機能を含有する抗体のC-末端Fc部分への融合物である。この種類には2つの好ましい態様がある。その1つは、全重鎖定常領域がLHRの一部に融合している態様であり、もう1つはIgG Fcを化学的に定義するパパイン切断部位のすぐ上流のヒンジ領域に始まる配列(重鎖定常領域の第1残基を114として残基216(Kabat等,"Sequences of Proteins of Immunological Interest",第4版,1987)、もしくは他の免疫グロブリンの類似の部位)がLHRの一部に融合している態様である。後者の態様を実施例4に記述する。
本発明のこれらの組成物、特にリガンド結合パートナーの生物活性部分で免疫グロブリン鎖の可変領域が置換されているものは、生体内血漿半減期の改善を示すと考えられる。これらのハイブリッド免疫グロブリンは、免疫グロブリン様ドメインで免疫グロブリンの可変領域が置換されている構築物と同様の方法で構築される。例えばCapon等,Nature 337:525-531(1989);Traunecker等,Nature 339:68-70(1989);Gascoigne等,Proc.Nat.Acad.Sci.84:2936-2940(1987);公開欧州出願EPO 0 325 224 A2を参照のこと。本発明のハイブリッド免疫グロブリンは、ある種の抗体由来の可変ドメインで別の種の可変ドメインが置換されているキメラ抗体と同様の方法でも構築される。例えばEP 0 125 023;Munro,Nature 312:(1984年12月13日);Neuberger等,Nature 312:(1984年12月13日);Sharon等,Nature 309:(1984年5月24日);Morrison等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984);Morrison等,Science 229:1202-1207(1985);Boulianne等,Nature 312:643-646(1984年12月13日)を参照のこと。結合パートナーをコードするDNAを、目的の結合パートナードメインをコードするDNAの3'末端かその近位、およびその成熟ポリペプチドのN-末端をコードするDNAかその近傍(異なるリーダーの使用を計画する場合)、もしくは結合パートナーのN-末端コード領域かその近位(天然のシグナルを使用する場合)で、制限酵素によって切断する。次にこのDNA断片は、免疫グロブリン軽鎖または重鎖定常領域をコードするDNAに容易に挿入でき、必要ならば欠失変異法によって加工する。ヒトのインビボ(生体内)療法にこの変種を利用したい場合は、これがヒト免疫グロブリンであることが好ましい。
LHR細胞外ドメインは一般にそのC-末端で免疫グロブリン定常領域に融合する。融合を行う正確な部位は重要でない。可溶性LHR-Ig融合物の分泌や結合特性を最適化するために、細胞外領域近傍または細胞外領域内の他の部位を選択してもよい。至適部位は定型の実験によって決定されるであろう。融合は典型的には貫膜ドメインおよび細胞質ドメインの両方またはそのどちらかを置換する。
免疫グロブリン軽鎖または重鎖定常領域をコードするDNAは既知であるか、もしくはcDNAライブラリーから容易に入手可能であるか、あるいは合成できる。例えばAdams等,Biochemistry 19:2711-2719(1980);Gough等,Biochemistry 19:2702-2710(1980);Dolby等,P.N.A.S.USA,77:6027-6031(1980);Rice等,P.N.A.S.USA 79:7862-7865(1982);Falkner等,Nature 298:286-288(1982);Morrison等,Ann.Rev.Immunol.2:239-256(1984)を参照のこと。
LHRをコードするDNA配列を本明細書に記載する。既知の、あるいはcDNAライブラリーから容易に入手可能な他の望ましい結合パートナーをコードするDNA配列も本発明の実施に適している。
本発明の融合物をコードするDNAを、発現用の宿主細胞に導入する。多量体を望む場合には宿主細胞を、その多量体を構成する各鎖をコードするDNAで形質転換するが、この際、その多量体の鎖を目的の様式で組み立て得るように宿主細胞を最適に選択する。宿主細胞がトランスフェクション前に免疫グロブリンを産出している場合には、軽鎖または重鎖に融合した結合パートナーでトランスフェクションするだけでヘテロ抗体を生産することができる。結合パートナードメインを保持する1または複数のアームと、付随の可変領域を保持する1または複数のアームを有する前記の免疫グロブリンは、結合パートナーリガンドと抗原または治療的部分について2重の特異性を齎す。多重に同時形質転換した細胞を上述の組換え法と共に用いることによって、例えば上述のヘテロ四量体免疫グロブリンなど、多重特異性を有するポリペプチドが生産される。
一般的に、融合物は細胞内で発現し、よく分泌されるが、種々の融合物の組換え宿主からの分泌程度にはいつもかなりの多様性が認められることがわかった。
また、異なる特異性を有する免疫グロブリンから完全なヘテロ抗体を生産する方法は既知である。これらの方法をインビトロ合成に採用するか、もしくは免疫グロブリンまたは免疫グロブリンハイブリッドを過去に使用した場合にはその結合パートナー-免疫グロブリン鎖を単に置換することによるヘテロキメラ抗体の生産に採用する。
ヘテロ機能性抗体生産の別法として、結合パートナー-免疫グロブリン融合物を産出する宿主細胞(例えばトランスフェクションした骨髄腫)を、ある抗原に対して望ましい付随特異性を有する抗体を分泌するハイブリドーマまたはB細胞と融合する。ヘテロ二機能性抗体をこのようなハイブリドーマの培養培地から回収することによって、従来のインビトロ再分類法(EP 68763)より多少便利にヘテロ二機能性抗体を生産することができる。
本発明はLHRまたは他の結合パートナーのアミノ酸配列変種をも包含する。結合パートナーのアミノ酸配列変種は種々の意図で調製され、これらの意図にはリガンドに対する結合パートナーの親和性の増大、結合パートナーの安定性、精製および調製の助成、血漿半減期の修正、治療的効用の改善、およびその結合パートナーを治療的に使用する際の副作用の発生またはその重篤度の減少が含まれる。以下の議論に、他のリガンド結合パートナーとして選択し得る変種の典型例であるLHRのアミノ酸配列変種について記述する。
リガンド結合パートナーのアミノ酸配列変種は次の3種類のうちの1または複数に分類できる:挿入変種、置換変種、または欠失変種。これらの変種は通常、リガンド結合パートナーをコードするDNA中のヌクレオチドへの部位特異的変異導入によって変種をコードするDNAを得た後、そのDNAを組換え細胞培養中で発現させることによって生産される。しかし、約100〜150アミノ酸残基までの断片ならばインビトロ合成によって便利に製造できる。以下の議論は部分的にLHRに関するものであるが、リガンド結合パートナーの構造または機能に適用できる範囲で、あらゆるリガンド結合パートナーに対して適合し、等しい効果を与える。
LHRのアミノ酸配列変種は、天然には認められないか、もしくは天然の対立遺伝子に認められない予め決定された変種である。LHR変種は典型的には天然に存在するHuLHRまたはMLHR類縁体と同じ性質の生物活性(例えばリガンド結合活性)を示す。しかし、そのリガンドを結合できないLHR変種および誘導体であっても、少なくとも1つのLHRエピトープが活性なまま残っている限り、(a)LHRまたはLHRに対する抗体の診断的検定で用いる試薬として、(b)既知の方法で不溶化した場合には、抗血清またはハイブリドーマ培養上清から抗LHR抗体を精製するための試薬として、および(c)LHRに対する抗体を引き出すための免疫原として、あるいは免疫検定キットの構成要素(天然LHRに対する競争的試薬として標識したもの、またはLHR検定の標準として非標識のもの)として有用である。
アミノ酸配列変異の導入部位は予め決定するが、変異自体を予め決定する必要はない。例えば、ある部位における変異の効果を最適化するために、ランダム(無作為)または飽和変異法(考え得る20残基のすべてを挿入する)を標的コドンで実施し、発現したLHR変種を、望ましい活性の最適な組み合わせについてスクリーニングする。このようなスクリーニングは当該分野では常法に属する。
アミノ酸挿入は通常約1〜10アミノ酸残基程度であろう。置換は典型的には1残基に対して導入する。欠失(削除)は約1〜30残基の範囲であろう。削除または挿入を隣接した対で行うこと、即ち2残基の削除または2残基の挿入が好ましい。置換、削除、挿入およびそれらのあらゆる組み合わせを導入または組み合わせることにより最終構築物に到達することは以下の議論からよくわかるであろう。
LHRの挿入アミノ酸配列変種は、LHRにとって異種のアミノ酸残基の1または複数が標的LHR中の予め決定した部位に導入され、先に存在していた残基を移動させたものである。
通常、挿入変種はLHRのアミノまたはカルボキシル末端に対する異種タンパク質またはポリペプチドの融合物である。このような変種を、LHR中の挿入を行った位置に通常に認められるもの以外の配列を含有するポリペプチドとLHRとの融合物と言う。融合物のいくつかの群はこれに包含される。
本発明の新規ポリペプチドは、免疫アフィニテイー技術(これ自体は既知である)によるリガンド結合パートナーの診断または精製に有用である。あるいは、結合パートナーの精製に際し、この新規ポリペプチドを使用することによって、不純な混合物から融合物を吸着させた後、その融合物を溶出させ、所望により、結合パートナーを融合物から例えば酵素的切断によって回収する。
結合パートナーの望ましい融合物(免疫学的に活性であっても活性でなくてもよい)には、成熟結合パートナー配列とその結合パートナーにとって異種のシグナル配列との融合物が含まれる。
LHRの場合および他の選択された結合タンパク質に関して望ましい場合、LHRの分泌をより迅速に指示するためにシグナル配列融合物を使用する。異種シグナルで天然のLHRシグナルを置換し、得られた融合物が認識される場合、即ち宿主細胞によるプロセシングを受けて切断される場合に、LHRが分泌される。意図する宿主細胞に基づいてシグナルを選択し、これらのシグナルには細菌、酵母、哺乳類およびウイルスの配列が含まれ得る。天然のLHRシグナルまたはヘルペスgD糖タンパク質シグナルが哺乳類発現系での使用に適している。
置換変種は、図1〜3または図4〜6の配列の少なくとも1残基が除去され、その位置に異なる残基が挿入されたものである。LHRの特徴を微細に調節したい場合には、このような置換は一般に次の表1に従って行われる。
新規アミノ酸配列は活性中心類縁体(アミノ酸ないし他の方法)と共に本発明の範囲に含まれる。
機能または免疫学的同一性の本質的な変化は、表1の置換より保存性の少ない置換を選択することによって、即ち、(a)置換領域内のポリペプチド骨格の構造(例えばシートまたはラセン立体配座)、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性、あるいは(c)側鎖の嵩高さ、の維持に対する効果がより有意に異なる残基を選択することによって起こる。一般的にLHRの性質に最も大きな変化を齎すと考えられる置換は次の置換であろう:(a)親水性側鎖(例:セリンまたはスレオニン残基)で(を)疎水性残基(例:ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリンまたはアラニン残基)を(で)置換する;(b)システインまたはプロリンで(を)他の残基を(で)置換する;(c)正荷電側鎖を有する残基(例:リジン、アルギニンまたはヒスチジン残基)で(を)負荷電残基(例:グルタミン酸またはアスパラギン酸残基)を(で)置換する;もしくは、(d)嵩高い側鎖を有する残基(例;フェニルアラニン)で(を)側鎖をもたない残基(例:グリシン)を(で)置換する。
削除、挿入、および置換のいくつかは、LHR分子の性質に極端な変化を齎さないであろう。しかし置換、削除または挿入を行う前にその正確な効果を予測することが困難な場合、例えばLHR炭水化物結合ドメインまたは免疫エピトープを改変する場合、その効果を日常的なスクリーニング法で評価することを当業者は望むであろう。例えば典型的な場合、変種は、LHRコード核酸への部位特異的変異導入、組換え細胞培養中でのその変種核酸の発現、および任意に、例えば(少なくとも1つの残存免疫エピトープによってその変種を吸着するための)ポリクローナル抗LHRカラムでの免疫アフィニティー吸着による、その細胞培養からの精製によって作成される。次に、その細胞溶解液または精製LHR変種の活性を、目的の特徴に適したスクリーニング検定法でスクリーニングする。例えば、Mel-14などのある抗体に対する親和性など、LHRの免疫学的特徴の変化を、競争型免疫検定法で測定する。LHRの生体内での機能についてより多くのことがわかるようになれば、他の検定法もこのようなスクリーニングに有用になるであろう。酸化還元安定性、熱安定性、疎水性、タンパク分解性の分解に対する感受性、担体との会合傾向、あるいは多量体への会合傾向などのタンパク質の性質の変化は、当業者によく知られた方法で検定する。
LHRの置換変種には、上に定義したLHRドメインの1または複数が、常法によって他のタンパク質の機能的に相同なドメインに置換されている変種も含まれる。変種がLHRの特定のドメインの断片である場合、本明細書に定義した対応するLHRドメインに対して少なくとも〜70%相同であることが好ましい(ただし必須ではない)。このような置換可能なドメインの供給源として、当業者は図11〜13を使用することができる。例えば、図11に配列を示したニクバエレクチンを改変してLHRの炭水化物結合ドメインと少なくとも〜70%相同な程度にし、これでそのドメインを置換することができる。同様に、図12に配列を示した凝固因子Xを改変してLHRのegf-ドメインと少なくとも〜70%相同な程度にし、これでそのドメインを置換することができる。同様の置換をシグナル配列、補体結合ドメイン、貫膜ドメインおよび細胞質ドメインに対して行うことも望ましいであろう。
LHR変種のもう1つの種類は欠失変種である。欠失(削除)はLHR配列から1または複数のアミノ酸残基を除去することを特徴とする。典型的には、LHRの貫膜および細胞質ドメイン、もしくは細胞質ドメインのみを削除する。しかし、LHRの生物活性または免疫交差反応性が保存されるような、LHR C-末端から貫膜領域のN-末端側の他の適切な部位までの欠失が適切である。LHRのアミノ酸配列解明の過程で今までに得られているタンパク質消化断片と、上に同定したLHRドメインのいずれかに対して〜70%より小さい相同性を有するタンパク質断片は欠失変種の範囲から除外される。
免疫グロブリン融合物は、補体結合ドメイン、炭水化物ドメイン、および表皮成長因子ドメインなどのLHR断片を用いて製造できる。補体結合ドメイン融合物は補体媒介性疾患の診断および治療、並びに、この融合物とLHRまたはリンパ球表面上の他の成分とのオリゴマー化に有用である。
システインまたは他の不安定残基の削除も、例えばLHRの酸化安定性を増大させる際に望ましいであろう。潜在的タンパク加水分解部位(例:ArgArg)の削除または置換は、その塩基性残基の1つを削除するか、もしくはグルタミン残基またはヒスチジン残基で置換することによって達成される。
ある態様では、LHRが補体結合ドメインおよび/またはegfドメインを伴わない炭水化物結合ドメインで構成される。この態様は貫膜および細胞質領域の一方または両方を含有してもよいし、含有しなくてもよい。
置換または欠失変異の好ましい種類は、LHRの貫膜領域が関与するものである。LHRサブユニットの貫膜領域は、細胞膜の脂質二重層をまたぐのに適切な大きさを有する高度に疎水的または親油的なドメインである。これらはLHRを細胞膜中に固定すると考えられ、LHRとのホモまたはヘテロ多量体錯体形成を可能にする。
典型的には貫膜ドメイン・ヒドロキシル化残基の削除または置換によって齎されるLHRおよび貫膜ドメインが存在する他の結合パートナーの貫膜ドメインの不活化は、その細胞または膜脂質親和性の減少および水溶性の改善によって回収および製剤化を容易にするであろう。貫膜および細胞質ドメインを削除すれば、その身体によって外来と認識されるかも知れない本来ならば細胞内にあるポリペプチドの露出か、もしくは潜在的に免疫原性の異種ポリペプチドの挿入による潜在的免疫原性エピトープの導入が回避される。膜結合機能の不活化は、この部位に本質的な親水性ハイドロパシー特性を齎すのに充分な数の残基を削除するか、もしくはこれと同じ結果を達成する異種残基で置換することによって達成される。
貫膜失活LHRの基本的な利点は、それが組換え宿主の培養培地中に分泌される得ることである。この変種は、血液などの体液に可溶であり、容易に感知できるような対細胞膜脂質親和性を有さないので、組換え細胞培養からの回収がかなり簡単になる。
一般的提案として、すべての変種は機能的な貫膜ドメインを有さず、また、機能的な細胞質配列を有さないことも好ましいであろう。
例えば貫膜ドメインを、完全に親水性ハイドロパシー特性を示すアミノ酸配列(例:約5〜50のセリン、スレオニン、リジン、アルギニン、グルタミン、アスパラギン酸などの親水性残基からなる無作為または予め決定された配列)で置換することができる。欠失(先端削除型)LHRと同様に、これらの変種は組換え宿主の培養培地中に分泌される。
HuLHRアミノ酸配列変種の例を次の表に記載する。残基番号に続く残基は、置換アミノ酸または挿入されたアミノ酸を示す。
これらの変種は保存的置換体であることが好ましい。いくつかの変種が生物活性の減少または欠失を示すであろうことは理解されるであろう。これらの変種であっても、LHRの免疫エピトープを少なくとも1つ保持している限り、LHRの免疫検定の標準として有用である。
グリコシル化変種はHuLHRの範囲に含まれる。これらにはグリコシル化が完全に欠如している(非グリコシル化)変種、天然型より少なくとも1つグリコシル化部位が少ない(脱グリコシル化)変種およびグリコシル化が変化している変種が含まれる。脱グリコシル化および非グリコシル化アミノ酸配列変種、天然の非改変LHRアミノ酸配列を有する脱グリコシル化および非グリコシル化LHR、および他のグリコシル化変種が含まれる。例えば、置換または欠失変異法を使用することによりLHRのN-またはO-結合型グリコシル化部位を除去する(例えばアスパラギン残基を削除するか、もしくはリジンまたはヒスチジンなど別の塩基性残基で置換する)。あるいは、グリコシル化認識部位を除去することによってグリコシル化を阻害するために、アスパラギン残基には手を加えないが、グリコシル化部位を形成する隣接残基を置換または削除する。
別法として、原核生物はポリペプチドにグリコシル化を導入できないので、天然LHRのアミノ酸配列を有する非グリコシル化LHRを組換え原核細胞中で生産する。
グリコシル化変種を、適切な宿主を選択することによって、もしくはインビトロ法で製造する。例えば酵母は哺乳類系とはかなり異なるグリコシル化を導入する。同様に、そのLHRとは異なる種(例:ハムスター、ネズミ、昆虫、ブタ、ウシまたはヒツジ)あるいは異なる組織起源(例:肺、肝臓、リンパ様、間葉、表皮)の哺乳類細胞も、例えばマンノースレベルの増大、またはマンノース、フコース、シアル酸、および哺乳類糖タンパク質に典型的に認められる他の糖類の比の変化によって特徴づけられる変種グリコシル化を導入する能力について常法でスクリーニングする。LHRのインビトロ・プロセシングは典型的には酵素的加水分解(例:ノイラミニダーゼ消化)によって達成される。
LHR分子の共有結合による修飾はその範囲に含まれる。このような修飾は、回収したタンパク質の標的アミノ酸残基を、選択した側鎖または末端残基と反応し得る有機誘導体化試薬と反応させるか、もしくは選択した組換え宿主細胞中で機能する翻訳後修飾の機構を利用することによって導入される。得られた共有結合的誘導体は、生物活性、LHRの免疫検定、あるいは組換えLHRの免疫アフィニティ−精製用の抗LHR抗体の調製にとって重要な残基を同定するための研究に有用である。例えば、ニンヒドリンとの反応後にそのタンパク質の生物活性が
完全に失活したら、少なくとも1つのアルギニンまたはリジン残基がその活性に必須であることが示唆され、その後、修飾されたアミノ酸残基を含有するペプチド断片を単離することによって、選択した条件下で修飾された個々の残基を同定する。このような修飾は当該技術分野では常法に属し、不都合な実験を伴わずに実行される。
二官能性試薬による誘導体化は、ハイブリッド免疫グロブリンとポリペプチドとの分子間会合体を製造するため、およびハイブリッド免疫グロブリンをそのリガンドの検定またはアフィニティー精製で使用するための非水溶性支持マトリックスまたは表面に架橋するために有用である。さらに、鎖内架橋の研究も立体配座構造に関する直接的情報を提供するであろう。一般に使用される架橋試薬には、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル類(例:4-アジドサリチル酸とのエステル)、ジスクシンイミジルエステル類(例:3,3'-ジチオビス(スクシンイミジル-プロピオネート))を含むホモ二官能性イミドエステル類、およびビス-N-マレイミド-1,8-オクタンなどの二官能性マレイミド類が含まれる。メチル-3-[(p-アジド-フェニル)ジチオ]プロピオイミデートなどの誘導体化試薬によって、光の存在下で架橋を形成し得る光活性化が可能な中間体を得ることができる。別法として、米国特許第3959080号、同第3969287号、同第3691016号、同第4195128号、同第4247642号、同第4229537号、同第4055635号、同第4330440号に記述された系反応性基質および臭化シアン活性化炭水化物などの活性な非水溶性マトリックスをタンパク質の固定化および架橋に使用する。
ある種の翻訳後誘導体化は、発現したポリペプチドに対する組換え宿主細胞の作用の結果である。グルタミンおよびアスパラギン残基はしばしば翻訳後に脱アミド化されて対応するグルタミン酸およびアスパラギン酸残基になる。あるいは、これらの残基を温和な酸性条件下で脱アミド化する。これらの残基のいずれの形態も本発明の範囲に包含される。
他の翻訳後修飾には、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリンまたはスレオニン残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,79〜86頁(1983))、N-末端アミンのアセチル化、および(いくつかの例では)C-末端カルボキシルのアミド化が含まれる。
他の誘導体は、非タンパク質性重合体(ポリマー)に共有結合した本発明の新規ポリペプチドからなる。通常、非タンパク質性重合体は親水性合成ポリマー、即ち天然には認められないポリマーである。しかし天然に存在し、組換え法またはインビトロ法で製造したポリマーも、天然から単離したポリマーと同様に有用である。親水性ポリビニルポリマー(例えばポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドン)は本発明の範囲に含まれる。特に有用なものは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンエステル類、メトキシポリエチレングリコールなどのポリアルキレンエーテル類;ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、およびポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体(プルロニクス(Pluronics))などのポリオキシアルキレン類;ポリメタクリレート類;カルボマー(carbomer)類;糖単量体D-マンノース、D-およびL-ガラクトース、フコース、フルクトース、D-キシロース、L-アラビノース、D-グルクロン酸、シアル酸、D-ガラクトウロン酸、D-マヌロン酸(例えばポリマヌロン酸またはアルギン酸)、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン、D-グルコースおよびノイラミン酸からなる分枝状または非分枝状多糖類(乳糖、アミロペクチン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、アミロース、硫酸デキストラン、デキストラン、デキストリン、グリコーゲンなどのホモ多糖類およびヘテロ多糖類、または酸ムコ多糖類の多糖サブユニット(例:ヒアルロン酸)を含む);ポリソルビトールおよびポリマンニトールなどの糖アルコール・ポリマー;ヘパリンまたはヘパロンである。
多糖が天然のグリコシル化または組換え発現に付随して生じるグリコシル化である場合、その置換部位は、追加または置換N-またはO-結合部位がその分子中に導入された、天然のN-またはO-結合型グリコシル化部位とは異なる位置であってもよい。このようなポリマーの混合物を使用してもよく、またポリマーが均一であってもよい。架橋前のポリマーは水溶性であることが(必要ではないが)好ましく、最終的複合体は水溶性でなければならない。さらに、ポリマーはその複合体型において高度に免疫原性であってはならず、静脈内注入または注射による投与を意図する場合には、そのような方法に適合しない粘度であってはならない。
ポリマーが反応性の基を1つだけ含有することが好ましい。このことはタンパク質分子の架橋を避けるために役立つ。しかし、架橋を減少させるために反応条件を最適化すること、あるいは、本質的に均一な誘導体を回収するためにゲル濾過またはクロマトグラフィー的ふるいを通して反応生成物を精製することは本発明の範囲に含まれる。
ポリマーの分子量は約100〜500000の範囲であることが望ましく、好ましくは約1000〜20000である。選択する分子量はそのポリマーの性質と置換の程度に依存するであろう。一般に、ポリマーの親水性が大きく、置換の程度が大きいほど、使用できる分子量は低くなる。至適分子量は日常的な実験で決定されるであろう。
一般に、ハイブリッドの1または複数のアミノ酸もしくは糖残基およびポリマーと反応する多官能性架橋試薬を通して、ポリマーを本発明のハイブリッド免疫グロブリンに共有結合させる。しかし、誘導体化したポリマーをハイブリッドと反応させることによってポリマーを直接架橋すること、またはその逆も本発明の範囲に含まれる。
ハイブリッド免疫グロブリン上の共有結合架橋部位には、N-末端アミノ基、リジン残基に存在するε-アミノ基、および他のアミノ基、イミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基あるいは他の親水性基が含まれる。多官能性(通常は二官能性)架橋試薬を使用せず、ポリマーを直接ハイブリッドに共有結合させてもよい。アミノ基に対する共有結合は、シアヌル酸クロリド、カルボニルジイミダゾール、アルデヒド反応性基(PEGアルコキシド+ブロモアセトアルデヒドのジエチルアセタール;PEG+DMSOおよび酢酸無水物;あるいはPEGクロリド+4-ヒドロキシベンズアルデヒドのフェノキシド、スクシンイミジル活性エステル類、活性化ジチオカーボネートPEG、2,4,5-トリクロロフェニルトリクロロホルメートまたはp-ニトロフェニルクロロホルメート活性化PEG)に基づく既知の化学によって達成される。カルボキシル基は、カルボジイミドを用いてPEG-アミンをカップリングさせることによって誘導体化する。
ビオチンまたはアビジンによるオリゴ糖類の標識に関してBayer等,Methods in Enzymology,62:310(1979)またはHeitzmann等,P.N.A.S.,71:3537-341(1984)に記述されている方法と同様の方法で、化学品(例:メソ過ヨウ素酸塩)または酵素(例:グルコースまたはガラクトース・オキシダーゼ)(いずれも各炭水化物のアルデヒド誘導体を生成させる)を用いて酸化した後、ヒドラジドまたはアミノ誘導体化ポリマーと反応させることにより、ポリマーをオリゴ糖基に結合させる。さらに、オリゴ糖類とポリマーを結合させるためにこれまでに使用されてきた他の化学法または酵素法も適している。置換オリゴ糖類は、一般に、アミノ酸部位より誘導体化のための置換が少なく、それゆえにオリゴ糖生成物がより均一になるであろうから、特に有利である。任意に、オリゴ糖置換基に、糖を除去するための酵素消化(例:ノイラミニダーゼ消化)によって、ポリマー誘導体化の前に改変を加えてもよい。
ポリマーは、本発明のポリペプチドのアミノ酸側鎖あるいはN-またはC-末端と直接反応する基、もしくは多官能性架橋試薬と反応する基を保持するであろう。一般に、このような反応性基を有するポリマーは固定化タンパク質製造のために知られている。このような化学を本発明で使用するためには、これまでにタンパク質固定化に使用されてきた不溶性ポリマーと同じ様式で誘導体化された水溶性ポリマーを使用すべきである。臭化シアン活性化は多糖類を架橋する際に特に有用な方法である。
出発ポリマーに関する“水溶性”という用語は、複合体のために使用するポリマーまたはその反応性中間体が誘導体化反応に関与し得るほど充分に水溶性であることを意味する。
ポリマー複合体に関する“水溶性”という用語は、その複合体が血液などの生理的液体に可溶であることを意味する。
このようなポリマーによる置換の程度は、タンパク質全体を使用するか、その断片を使用するか、タンパク質が異種タンパク質との融合物であるか否か、タンパク質上の反応性部位の数、ポリマーの分子量、親水性およびその他の性質、選択した特定のタンパク質誘導体化部位に依存して変化するであろう。異種配列はいずれも、その望ましい活性が有意に不利な影響を受けない限り、本質的に無制限の数のポリマー分子で置換できるが、一般に、この複合体は1〜10ポリマー分子を含有する。最適な架橋度は、時間、温度およびその他の反応条件を変化させることによって置換度を変えた後、その複合体が目的の様式で機能する能力を決定する一連の実験により容易に決定できる。
PEGなどのポリマーを、PEGなどの非タンパク質性ポリマーでタンパク質を共有結合的に修飾するための多様な(それ自体は)既知の方法で架橋する。しかしこれらの方法のいくつかは本発明の目的には好ましくない。シアヌル酸クロリドの化学はタンパク質架橋を含む多くの副反応を起こす。さらに、スルフヒドリル基を含有するタンパク質の失活を特に齎しやすい。カルボニルジイミダゾールの化学(Beauchamp等,Anal.Biochem.131:25-33(1983))は高いpH(>8.5)を必要とし、この条件はタンパク質を不活化し得る。さらに、“活性化PEG”中間体は水と反応し得るので、タンパク質に対して大過剰モル量の“活性化PEG”が必要である。カルボニルジイミダゾール化学に必要な高濃度のPEGは、ゲル濾過クロマトグラフィーと疎水相互作用クロマトグラフィーの両方に悪影響を与えるので、精製にも問題を起こす。さらに、高濃度の“活性化PEG”はタンパク質を沈殿させる可能性があり、この問題自体は過去に触れられている(Davis,米国特許第4179337号)。一方、アルデヒド化学(Royer,米国特許第4002531号)は40倍過剰モル量のPEGと1〜2時間のインキュベーションしか必要としないので、より効果的である。しかし、PEGアルデヒドの調製のためにRoyerが提案した二酸化マンガンは、“PEGは金属性酸化剤と錯体を形成する傾向が極めて高いので”(Harris等,J.Polym.Sci.,Polym.Chem.Ed.22:341-352(1984))問題が多い。DMSOと酢酸無水物を使用するモファット酸化(moffatt oxidation)を使用することによって、この問題を回避できる。さらに、Royerが提案した水素化ホウ素ナトリウムは高pHで使用しなければならず、ジスルフィド結合を還元する傾向がかなりある。これに対し、中性pHで作用し、ジスルフィド結合を還元する傾向が殆ど無い水素化シアノホウ素ナトリウムが好ましい。
本発明の複合体を未反応の出発物質からゲル濾過によって分離する。複合体の不均一種を同じ方法で互いに精製する。
ポリマーは親水性ゲルとして、あるいはカテーテルまたはドレナージ導管の形態の外科用チューブとして、非水溶性であってもよい。
LHRおよび他のリガンド結合パートナーをコードするDNAをインビトロ法で合成するか、もしくはリンパ球cDNAライブラリーから容易に得ることができる。LHRをコードするDNAを自動化された装置で、もしくはそのような装置を使用せずに合成する方法は、特に本明細書の教示を考慮すれば、当業者一般に知られている。ポリヌクレオチド合成に関する技術分野の現状の例として、Maniatis等,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1984)およびHorvath等,An Automated DNA Synthesizer Employing Deoxynu cleoside 3'-Phosphoramidites,Methods in Enzymology 154:313-326(1987)を参考にすることができる。
別法として、好ましい態様のための全DNA配列、即ちHuLHR(図1〜3)およびMLHR(図4〜6)が既知であるから、LHRをコードするDNAをネズミまたはヒト以外の供給源から得るためには、HuLHRまたはMLHRもしくはそれらの断片(普通、約20bpより大きく、通常は約50bp)をコードする標識したDNAを用いて、特定の動物から得たcDNAライブラリー中の相同配列を含有するクローンを検出するために、ハイブリッド形成スクリーニングを実施し、次いで制限酵素分析および核酸配列決定によってそのクローンを分析することによって全長クローンを同定するだけでよい。全長クローンがライブラリー中に存在しない場合は、適切な断片を種々のクローンから回収し、それらの断片に共
通の制限部位で連結することにより、全長クローンを組み立てる。他の動物種のLHRをコードするDNAは、その種から得たライブラリーをヒトまたはネズミの配列でプローブすることによって、あるいはその遺伝子をインビトロで合成することによって得られる。配列がわかっている他の結合パートナーのDNAはこれに類する定型のハイブリッド形成法を用いて得ることができる。
本発明は、約10bpより大きく、好ましくは20〜50bpであり、100bpより大きいことさえある、図1〜3または図4〜6の断片と厳密条件下でハイブリッド形成する核酸配列を提供する。また、厳密条件下で、シグナルまたは貫膜ドメインまたは細胞質ドメイン以外のLHR断片とハイブリッド形成する核酸配列も本発明の範囲に含まれる。
さらに、LHRのcDNAか、あるいはLHRのゲノム遺伝子(イントロン、並びに、隣接する遺伝子もしくは約5000bp(どちらがより長くても)に及ぶ5'または3'隣接領域を含む)と、厳密条件下でハイブリッド形成し得る核酸プローブも本発明の範囲に含まれる。
LHRまたは他の結合パートナーのゲノムDNAの同定は、特定のゲノムライブラリーを検出可能な基(例:放射性リン酸基)で標識したcDNAまたはその断片でプローブし、その遺伝子を含むクローンを回収することに外ならない。必要ならば、完全な遺伝子を"ウォーキング(染色体歩行)"によってつなぎ合わせる。典型的な場合、このようなプローブはHuLHRまたはMLHRに対して70%以上相同な配列をコードし、約10〜100bpの長さである。他の結合パートナーに関する相同性と大きさは、不都合な実験を行わなくても決定できる。
本発明に有用なベクターを構築する際には、一般に原核生物をDNA配列のクローニングに使用する。例えば大腸菌K12-294株(ATCC番号31446)は特に有用である。使用し得る他の微生物株には大腸菌Bおよび大腸菌X1776(ATCC番号31537)が含まれる。これらの例は単なる例示であって、限定を意図するものではない。別法として、インビトロ・クローニング法(例:ポリメラーゼ連鎖反応)も適している。
本発明のポリペプチドは、N-末端メチオニル類縁体として、もしくはハイブリッド/部分にとって異種のポリペプチド、好ましくはそのハイブリッド/部分のN-末端に特異的切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドとの融合物として、組換え細胞培養中で直接発現する。例えば、LHRの原核分泌発現ベクターを構築する際には、天然のLHRシグナルを、そのシグナルを認識する宿主と共に使用する。分泌リーダーが宿主によって“認識される”場合、その宿主シグナル・ペプチダーゼは、目的の成熟LHRにC-末端で融合しているリーダー・ポリペプチドの融合物を切断し得る。LHRシグナルをプロセシングしない宿主原核生物については、そのシグナルを、例えばアルカリ性ホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppまたは熱安定エンテロトキシンIIリーダーなどから選択した原核シグナルで置換する。酵母分泌のためには、ヒトLHRシグナルを酵母インベルターゼ、アルファ因子または酸性ホスファターゼ・リーダーで置換することができる。哺乳類細胞発現の場合は、ウイルス分泌リーダー(例:ヘルペス・シンプレックス・gDシグナル)などの他の哺乳類分泌タンパク質シグナルも適当であるが、哺乳類LHRに関しては天然のシグナルで十分である。
本発明の新規ポリペプチドはどの宿主細胞中でも発現し得るが、哺乳類宿主中で合成することが好ましい。しかし原核生物、カビ、酵母、昆虫など由来の宿主細胞も発現に使用される。代表的原核生物は、クローニングに適する株および大腸菌W3110(F−,λ−,原栄養株,ATCC番号27325)、セラチア・マルセサンス(Serratia marcescans)などの腸内細菌科、バチルスおよび種々のシュードモナス科である。好ましくは、宿主細胞が分泌する原核性酵素量は最小限であるべきである。
典型的な場合、発現ベクター中に連結されているハイブリッドをコードするDNAで発現宿主を形質転換する。このようなベクターは通常、複製部位を保持している(ただしこれは染色体組み込みが起こる場合には必要ない)。発現ベクターは、以下に議論するように形質転換細胞中で表現型選択を提供し得る標識配列をも含有する。例えば大腸菌を典型的には、大腸菌種由来のプラスミドpBR322(Bolivar等,Gene 2:95(1977))を用いて形質転換する。pBR322はアンピシリンおよびテトラサイクリン耐性のための遺伝子を含有しており、それゆえに、目的がクローニングであるか発現であるかにかかわらず、形質転換細胞を同定するための容易な手段を提供する。また発現ベクターが転写および翻訳の制御に有用な配列(例:プロモーターおよびシャイン・ダルガルノ配列(原核生物の場合)またはプロモーターおよびエンハンサー(哺乳類細胞の場合))を含有していれば最適であろう。プロモーターは誘導性であってもよいが必ずしもその必要はない。驚くべきことに、哺乳類宿主にとってのCMVプロモーターのように強力な構成プロモーターであっても、宿主細胞毒性を伴わずにLHRを産出することがわかった。発現ベクターが何らかの発現制御、複製配列もしくは選択遺伝子を含有する必要はないと考えられるが、これらの欠失は、ハイブリッド形質転換体の同定および高レベルのハイブリッド免疫グロブリン発現の達成を妨げるであろう。
原核宿主と共に使用するのに適したプロモーターには、例えばβ-ラクタマーゼおよびラクトース・プロモーター系(Chang等,Nature,275:615(1978)およびGoeddel等,Nature,281:544(1979))、アルカリ性ホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel,Nucleic Acids Res.8:4057(1980)および欧州特許出願番号第36776号)、およびtacプロモーターなどのハイブリッド・プロモーター(H.de Boer等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80:21-25(1983))が含まれる。しかし他の機能的細菌性プロモーターも適している。これらのヌクレオチド配列は一般に既知であるから、当業者は、必要な制限部位を供給するためにリンカーやアダプターを使用して、LHRをコードするDNAにこれらを機能的に連結することできる(Siebenlist等,Cell,20:269(1980))。細菌系で使用するプロモーターは、LHRをコードするDNAに機能的に連結されたシャイン・ダルガルノ(S.D.)配列をも含有するであろう。
原核生物に加えて、酵母や糸状菌などの真核微生物も良好な結果を与える。サッカロミセス・セレビシェは最も一般的に使用される真核微生物であるが、他の株のいくつかも一般に利用できる。プラスミドYRp7は酵母における良好な発現ベクターである(Stinchcomb等,Nature 282:39(1979);Kingsman等,Gene,7:141(1979);Tschemper等,Gene,10:157(1980))。このプラスミドは、トリプトファン中での生育能が欠失した酵母の変異株(例:ATCC番号44076またはPEP4-1(Jones,Genetics 85:12(1977)))のための選択標識を提供するtrp1遺伝子を既に含有している。酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrp1欠損の存在は、トリプトファン非存在下での生育による形質転換検出に効果的な環境を提供する。
酵母宿主と共に使用するための適切な促進配列には、3-ホスホグリセレート・キナーゼ(Hitzeman等,J.Biol.Chem.255:2073(1980))または他の解糖酵素(Hess等,J.Adv.Enzyme Reg.7:149(1968)およびHolland,Biochemistry,17:4900(1978))(例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルベート・デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレート・ムターゼ、ピルベート・キナーゼ、トリオセホスフェート・イソメラーゼ、ホスホグルコース・イソメラーゼ、グルコキナーゼなど)のためのプロモーターが含まれる。
生育条件によって転写を制御し得るという追加の利点を有する誘導プロモーターである他の酵母プロモーターは、アルコール・デヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、メタロチオネイン、グリセルルデヒド-3-リン酸・デヒドロゲナーゼ、およびマルトースおよびガラクトース資化に寄与する酵素のプロモーター領域である。酵母発現での使用に適したベクターおよびプロモーターは、R.Hizeman等,欧州特許出願第73657Aにさらに記述されている。
真核生物の発現制御配列は知られている。ほとんど全ての真核遺伝子が、転写が開始する部位から約25〜30塩基上流に位置するAT含量の豊富な領域を持っている。多くの遺伝子の転写開始位置から70〜80塩基上流に認められるもう1つの配列はCXCAAT領域(Xはいずれのヌクレオチドでもよい)である。ほとんどの真核遺伝子の3'末端はAATAAA配列であり、この配列はコード配列の3'末端にポリA尾部を付加するためのシグナルであろう。これらの配列をすべて哺乳類発現ベクター中に挿入する。
哺乳類宿主細胞においてベクターからの転写を制御するための適切なプロモーターは種々の供給源、例えばウイルス(例:ポリオーマウイルス、SV40、アデノウイルス、MMV(ステロイド誘導性)、レトロウイルス(例:HIVのLTR)、B型肝炎ウイルス、並びに、最も好ましくはサイトメガロウイルス)のゲノムから、あるいは異種哺乳類プロモーター(例;ベータ・アクチン・プロモーター)から容易に得られる。SV40の初期および後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点をも含有するSV40制限断片として便利に得られる(Fiers等,Nature,273:113(1978))。ヒト・サイトメガロウイルスの前初期プロモーターはHindIII E制限断片として便利に得られる(Greenaway,P.J.等,Gene 18:355-360(1982))。
ハイブリッド免疫グロブリンおよび/またはハイブリッド部分をコードするDNAのより高等な真核生物による転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増大する。エンハンサーは、通常約10〜300bpからなる、DNAのシス作用性要素であり、プロモーターに作用してその転写を増大させる。エンハンサーは比較的配向および位置非依存性であり、転写単位の5'(Laimins,L.等,PNAS,78:993(1981))および3'(Lusky,M.L.等,Mol.Cell Bio.,3:1108(1983))に発見されており、またイントロン内(Banerji,J.L.等,Cell,33:729(1983))およびコード配列自体の中(Osborne,T.F.等,Mol.Cell Bio.4:1293(1984))にも発見されている。現在、哺乳類遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、およびインスリン)から多くのエンハンサー配列が知られている。しかし典型的には、真核細胞ウイルスのエンハンサーを利用するであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100〜270bp)、サイトメガロウイルス初期プロモーター・エンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマ・エンハンサー、およびアデノウイルス・エンハンサーが含まれる。
真核宿主細胞(酵母、カビ、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物由来の有核細胞)で使用する発現ベクターは、転写の終止に必要であって、mRNA発現に影響を及ぼし得る配列をも含有するであろう。これらの領域は、ハイブリッド免疫グロブリンをコードするmRNAの非翻訳部分中のポリアデニル区分として転写される。この3'非翻訳領域には転写終止部位も含まれる。
発現ベクターは、選択遺伝子(これは選択可能標識とも呼ばれる)を含有することもできる。哺乳類細胞に適した選択可能標識の例には、ジヒドロフォレート・レダクターゼ(DHFR)、チミジン・キナーゼ(TK)、あるいはネオマイシンが含まれる。このような選択可能標識がうまく哺乳類宿主細胞内に導入されるならば、その形質転換哺乳類宿主細胞は選択圧下におかれた場合に生き残ることができる。選択方式には広く用いられている2つの異なった種類がある。第一の種類は細胞の代謝、および補足培地に依存せずに生育する能力を欠く変異株化細胞の使用に基づいている。CHO DHFR−細胞およびマウスLTK−細胞はその2例である。これらの細胞は、チミジンやヒポキサンチンなどの栄養素を添加しない条件下で生育する能力を欠いている。これらの細胞は完全なヌクレオチド合成経路に必要ないくつかの遺伝子を欠いているので、補足培地中に欠失ヌクレオチドを添加しない限り生存することができない。培地を補足するかわりに、無傷のDHFRまたはTK遺伝子を、それぞれの遺伝子を欠く細胞中に導入し、それによってその生育要求性を変化させることもできる。DHFRやTK遺伝子で形質転換されなかった個々の細胞は、非補足培地中で生存できないであろう。
選択法の第二の種類は優性選択、即ちどの細胞型にも使用できる選択法であり、変異株化細胞の使用を必要としない選択法である。この方法は典型的には宿主細胞の生育を停止するための薬剤を使用する。異種遺伝子でうまく形質転換された細胞は薬剤耐性を付与するタンパク質を発現し、それゆえにこの選択法に耐え得る。このような優性選択の例では、薬剤ネオマイシン(Southern等,J.Molec.Appl.Genet.1:327(1982))、マイコフェノール酸(Mulligan等,Science,209:1422(1980))、あるいはハイグロマイシン(Sugden等,Mol.Cell.Biol.5:410-413(1985))を使用する。上記の3例では、真核性の制御下にある細菌性遺伝子を使用することによって、適切な薬剤、即ちそれぞれG418またはネオマイシン(ジェネティシン)、xgpt(マイコフェノール酸)、あるいはハイグロマイシンに対する耐性を獲得する。
ハイブリッド免疫グロブリンの発現に適した真核宿主細胞には、SV40で形質転換されたサルの腎CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒトの胚腎株(293または懸濁培養中での生育のためにサブクローニングされた293細胞、Graham,F.L.等,J.Gen.Virol.36:59(1977))、幼ハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣-細胞-DHFR(CHO、UrlaubおよびChasin,PNAS(USA),77:4216(1980))、マウスのセルトーリ細胞(TM4、Mather,J.P.,Biol.Reprod.23:243-251(1980))、サルの腎細胞(CV1、ATCC CCL 70)、アフリカン・グリーン・モンキー腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587)、ヒトの頸部癌細胞(HELA、ATCC CCL 2)、イヌの腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファロー・ラットの肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒトの肺細胞(W138、ATCC CCL75)、ヒトの肝細胞(HepG2、HB 8065)、マウスの乳房の腫瘍細胞(MMT060562、ATCC CCL 51)、およびTRI細胞(Mather,J.P.等,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982))が含まれる。
目的のコード配列および制御配列を含有する適切なベクターの構築には、標準的な連結技術を用いる。単離したプラスミドもしくはDNA断片を切断し、加工し、目的の形態に再連結することによって必要なプラスミドを形成させる。
構築したプラスミド中の正しい配列を確認するための分析には、その連結混合物を用いて大腸菌K12 294株(ATCC31446)を形質転換し、成功した形質転換体を、それが適当な場合には、アンピシリンもしくはテトラサイクリン耐性によって選択する。Messing等,Nucleic Acids Res.9:309(1981)またはMaxam等,Methods in Enzymology,65:499(1980)の方法で、その形質転換体からプラスミドを調製し、制限分析および/またはDNA配列決定によって分析する。
本発明の発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、プロモーターの誘導、形質転換体の選択または目的の配列をコードする遺伝子の増幅に適するように改良した従来の栄養培地中で培養する。温度やpHなどの培養条件を、発現用に選択した宿主細胞について過去に使用されたものとし、これらの条件は当業者には明白であろう。
本明細書で使用する宿主細胞なる用語は、インビトロ培養中の細胞と共に宿主動物内の細胞をも包含する。
“形質転換”という用語は、DNAが染色体外要素として、もしくは染色体組み込みによって複製されるように、生物内にそのDNAを導入することを意味する。特に断らない限り、本発明で使用する宿主細胞の形質転換法は、Graham,F.およびvan der Eb,A.,Virology,52:456-457(1973)の方法である。しかし、核注入あるいはプロトプラスト融合などによる、細胞にDNAを導入するための他の方法も用いることができる。原核細胞または強固な細胞壁構築物を有する細胞を使用する場合に好ましいトランスフェクション法は、Cohen,F.N.等,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),69:2110(1972)が記述した、塩化カルシウムを用いるカルシウム
処理である。
"トランスフェクション"という用語は、なんらかのコード配列が実際に発現するかどうかにかかわらず、宿主細胞へのDNAの導入を意味する。数多くのトランスフェクション法が当業者一般に知られている(例えば、CaPO4および電気穿孔法)。宿主細胞の形質転換はトランスフェクション成功の証拠である。
本発明の新規ポリペプチドを組換え細胞培養から既知の方法で回収し、精製する。これらの方法には、硫酸アンモニウム沈殿、エタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロース・クロマトグラフィー、免疫アフィニティー・クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイト・クロマトグラフィーおよびレクチン・クロマトグラフィーが含まれる。本発明の範囲に含まれる他の既知の精製法では、固定化した炭水化物、表皮成長因子または補体ドメインを使用する。さらに逆相HPLC、並びに、ハイブリッド免疫グロブリンのリガンドを使用するクロマトグラフィーもハイブリッドの精製にとって有用である。精製の間、低濃度(約1〜5mM)のカルシウムイオンを存在させることが望ましい。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤の存在下でLHRを精製することが好ましい。
LHR-免疫グロブリン・ハイブリッドを治療的に使用すると、リンパ様組織に対するリンパ球の正常な結合と競争する。したがってこのハイブリッドは器官または移植体拒絶にとって特に有用であり、また、例えばリウマチ様関節炎あるいは他の自己免疫疾患などの炎症を伴う患者の治療に特に有用である。LHR-免疫グロブリン・ハイブリッドは、リンパ腫転移の制御、およびリンパ球の蓄積が起こる症状の治療にも適用できる。
LHR-免疫グロブリン・ハイブリッド・ヘテロ二量体およびヘテロ四量体を、治療的部分をリンパ様組織に誘導する際に使用する。例えば、1本のLHR-IgG鎖と1本のCD4-IgG鎖からなるハイブリッド免疫グロブリンを用いることにより、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのウイルスに感染した組織にCD4-IgGを誘導することができる。このハイブリッドは、リンパ節内の内皮組織だけでなく、パイエル斑などの2次リンパ様器官内および脳内の内皮組織にも結合するので、HIV関連痴呆症の治療のために、血液脳障壁を通過してCD4-IgGを送達するために使用し得る。同様に、リシンなどの毒素を目的の組織に送達するために、本明細書に記述するLHR-リシン-あるいはCD4-リシン-免疫グロブリンを有する免疫グロブリン・ヘテロ四量体を使用する。
この方法で、特定の組織に対して特異的な親和性を有するリガンド結合パートナーを選択すれば、安定で比較的長い半減期を有する治療薬を送達する能力が明確に増大し、不都合な実験を行わなくても正確な加工ができる。
本発明の新規ポリペプチドを滅菌等張製剤中に、必要な補因子と共に入れ、任意に当該分野でよく知られた標準的手段で投与する。この製剤は液体であることが好ましく、通常は0.5〜10mM カルシウム、非リン酸緩衝液(pH6.8〜7.6)を含有する生理的塩類溶液であり、あるいは凍結乾燥粉末であってもよい。
静脈内送達、またはカテーテルあるいは他の外科用チューブを通しての送達が主要な治療的投与経路となるであろうと考えている。別の経路には、錠剤など、液体製剤用の市販の噴霧器、および凍結乾燥またはエアゾル化した受容体の吸入が含まれる。液体製剤は粉末製剤から再構成した後に使用することができる。
本発明の新規ポリペプチドを微小球、リポソーム、他の微粒子送達系によって投与してもよく、あるいは血液を含むある種の組織中に入れる徐放性製剤によって投与してもよい。徐放性担体の好適例には、成型物(例:坐剤またはマイクロカプセル)の形態の半透性ポリマー・マトリックスが含まれる。マイクロカプセル徐放性マトリックスまたは埋め込み可能な徐放性マトリックスには、ポリラクチド(米国特許第3773919号、EP第58481号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタメートの共重合体(U.Sidman等,Biopolymers 22(1):547-556(1985))、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクレリート)またはエチレン・ビニル酢酸(R.Langer等,J.Biomed.Mater.Res.15:167-277(1981)およびR.Langer,Chem.Tech.12:98-105(1982))が含まれる。ハイブリッド免疫グロブリンを含有するリポソームは、よく知られた方法で調製される(DE 3218121A;Epstein等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688-3692(1985);Hwang等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4030-4034(1980);EP 52322A;EP 36676A;EP 88046A;EP 143949A;日本特許出願83-11808;米国特許第4485045号および同第4544545号;UP 102342A)。通常リポソームは小さい(約200〜800オングストローム)単層型であって、その脂質成分は、約30モル%コレステロール以上であり、これはポリペプチドの漏出速度を最適化するように調節された比率である。
徐放性ポリペプチド調製物を、炎症部位または治療部位(例:関節炎の関節または末梢リンパ節)の近傍に埋め込むか、もしくは注射する。
医者には充分自明であるように、本発明の新規ポリペプチドの投与量は使用するハイブリッドの性質(例えば結合活性および生体内血漿半減期)、製剤中のハイブリッド濃度、ハイブリッドの投与経路、投与部位、投与速度、関与する患者の臨床的耐性、患者を苦しめている病的症状などに依存するであろう。
本発明のポリペプチドを、上記の症状を治療するために使用される他の医薬(例:抗生物質、抗炎症剤、抗腫瘍剤)と共に投与することもできる。また、本発明のポリペプチドを、γ-インターフェロンや他の免疫変調因子など、他の治療的タンパク質と共に投与することも有用であろう。
以下の実施例の理解を容易にするために、頻繁に使用する方法および/または用語のいくつかについて記述する。
“プラスミド”は、先行して置かれた小文字p、および/またはそれに続く大文字、および/または数字によって指定される。本発明の出発プラスミドは市販されており、誰にでも無制限に利用可能であり、あるいは公表された方法に従って、利用可能なプラスミドから構築することもできる。さらに、これらに等価なプラスミドも本技術分野において知られており、一般の技術者には明白であろう。
具体的には、これらのプラスミドは次の特徴のいくつか、もしくはすべてを有することが好ましい:(1)含有する宿主生物配列の数が最小限度であること;(2)目的の宿主中で安定であること;(3)目的の宿主中で高コピー数型で存在し得ること;(4)制御可能なプロモーターを保持すること;(5)そのプラスミドの、新規DNA配列を挿入する部分から離れた位置にある部分に、選択可能な特徴をコードする少なくとも1つのDNAを有すること。上記の規準に合致するようにプラスミドを改変することは、利用可能な文献および本明細書の教示を考慮すれば、当業者には容易である。上述の性質を有し、それゆえに本発明で使用するのに適した新たなクローニングベクターが存在し、あるいは今後発見されるであろうこと、またこれらのベクターも本発明の範囲に含まれると見なされることを理解すべきである。
DNAの“消化”という用語は、そのDNA中の一定のヌクレオチド配列にしか作用しない制限酵素による、そのDNAの触媒的切断を意味する。本発明で使用する種々の制限酵素は市販されており、反応条件、補因子、および他の必要条件は、当業者に知られているであろうものを用いた。分析が目的の場合、典型的には1μgのプラスミドまたはDNA断片を、約2単位の酵素と共に、約20μlの緩衝溶液中で使用する。プラスミド構築のためのDNA断片を単離する目的の場合は、典型的にはより大きな体積中で、5〜50μgのDNAを20〜250単位の酵素で消化する。特定の制限酵素に適した緩衝液および基質量は、その製造者によって指定されている。通常37℃で約1時間のインキュベーションが用いられるが、その供給者の指示に従って変更することもある。消化後、その反応液を直接ポリアクリルアミドゲルで電気泳動することによって、目的の断片を単離する。
切断した断片のサイズ分離は、Goeddel,D.等,Nucleic Acids Res.8:4057(1980)が記述した8%ポリアクリルアミドゲルを用いて行う。
“脱リン酸化”は、細菌アルカリ性ホスファターゼ(BAP)を用いる処理による末端5'リン酸の除去を意味する。この操作は、1つのDNA断片の2つの制限切断末端が“環化”して、もしくは閉環を形成して、その制限部位への別のDNA断片の挿入を妨害することを防止する。脱リン酸化の操作法と試薬は常法である(Maniatis,T.等,Molecular Cloning,133-134頁(1982))。BAPを使用する反応は、この酵素調製物中に存在するエキソヌクレアーゼ活性を抑止するために、50mM Tris中68℃で実行する。反応は1時間行う。この反応後、DNA断片をゲル精製する。
“オリゴヌクレオチド”は、一本鎖ポリデオキシヌクレオチド、2本の相補的ポリデオキシヌクレオチド鎖、のいずれかを意味し、これらは化学的に合成できる。このような合成オリゴヌクレオチドは5'リン酸を有さないので、キナーゼの存在下でATPを用いてリン酸を付加しない限り、別のヌクレオチドには連結しない。合成オリゴヌクレオチドは、脱リン酸化されていない断片には連結できる。
“ライゲーション”は、2つの二本鎖核酸断片間のホスホジエステル結合の形成過程を意味する(Maniatis,T.等,同上,146頁)。特に述べない限り、ライゲーションは、既知の緩衝液および条件を用い、約等モル量の連結すべきDNA断片0.5μgあたり10単位のT4DNAリガーゼ(“リガーゼ”)を使って遂行する。
“充填”または“平滑化”は、制限酵素で切断した核酸の付着末端中の一本鎖化された末端を二本鎖に変換する操作を意味する。これによって付着末端が除去され、平滑末端が生成する。この工程は、唯一の制限酵素あるいは数少ない他の制限酵素でしか生成しない末端に付着する制限切断末端を、平滑に切断するあらゆる制限エンドヌクレアーゼもしくは充填された他の付着末端に適合する末端に変換するための汎用の手段である。典型的な場合、標的DNA2〜15μgを10mM MgCl2、1mM ジチオスレイトール、50mM NaCl、10mM Tris緩衝液(pH7.5)中約37℃で、DNAポリメラーゼIのクレノー断片 8単位および4種のデオキシヌクレオシド三リン酸各250μMと共にインキュベートすることによって、平滑化を遂行する。このインキュベーションを一般的には30分後に停止させ、フェノールおよびクロロホルム抽出し、エタノール沈殿する。
本発明の組成物の3次元構造は本明細書に記述したその機能にとって重要であると現在考えている。したがって、本発明の組成物が形成する活性構造を模倣するすべての関連構造類縁体は、特に本発明の範囲に包含される。
本発明の教示を特定の問題または状況に適用することが、本明細書に記述された教示の内容を考慮すれば当業者にとって可能な範囲になることは理解される。本発明の産物の例、およびそれを単離し、使用し、製造するための代表的方法を以下に記述するが、これらが本発明を限定すると見なすべきではない。
これらの実施例における"Mel14"モノクローナル抗体もしくは"Mel14"なる記載はすべて、Gallatin等,前掲,Nature 303:30(1983)が記述した、ネズミ型と考えられるリンパ表面タンパク質に対するモノクローナル抗体を意味する。しかし、本明細書にLHRの全DNA配列および全アミノ酸配列が提供されているので、Mel14の使用は本発明にとってもはや必要ではない。
実施例1:MLHRの精製およびクローニング
MLHRをコードするcDNAクローンの単離
界面活性剤で処理したネズミ脾臓から、Mel14モノクローナル抗体を用いる免疫アフィニティー・クロマトグラフィーによってMLHRを単離した。
典型的調製では、ICR雌マウス(16週齢)から得た300個の脾臓を細かく切り、次いで、1mM PMSFおよび1%アプロチニンを含有するダルベッコPBS中の2%トリトンX-100中で、ポッター・エルベジェム組織グラインダー(Potter-Elvehjem tissue grinder)を用いて均質化(ホモジナイズ)した。溶解を浸透機上4℃で30分間続けた。この溶解液を2000xGで5分間、次いで40000xGで30分間遠心分離した。
上清をニテックス・スクリーン(Nitex screen)を通して濾過した後、臭化シアン活性化セファロース(Sepharose)4Bに結合したラット血清(充填ゲル10ml)に吸着させることによって予備浄化した。製造者の指示に従って複合体とカップリングするために、ラット血清を1:10に希釈した。通過液を、セファロース4Bに対して1mlあたり0.5mgの割合で結合したMEL-14抗体の3mlカラムにかけた。すべてのカラム緩衝液に0.02%濃度でアジ化ナトリウムを添加した。
このカラムをPBS中の2%トリトンX-100 25mlで洗浄した後、同じ緩衝液中の10mM CHAPS 25mlで洗浄した。100mM グリシン、200mM NaCl、pH3中の10mM CHAPS 10mlを加えることによって抗原を放出させ、これを1mM TRIS HCl(pH7.6)1ml中に集めることによって中和した。カラムを20mM トリエチルアミン、200mM NaCl、pH11で洗浄し、PBS中の10mM CHAPSで前平衡化した後、中和し、カラム緩衝液100ml中に希釈した抗原を再添加し、洗浄および放出操作を繰り返した。
精製したタンパク質をセントリコン30(Centricon 30;アミコン・インコーポレーテッド)で濃縮し、可視化に銀染色を用いてSDS-PAGE(7.5%アクリルアミド)で分析した。典型的な精製では、オロソムコイド標準との比較に基づいて、マウス300匹あたり30〜40μgの抗原を得た。
ここにはデータを示さないが、精製した物質のポリアクリルアミドゲルは約90000ダルトンに移動する拡散バンドと、180000ダルトン付近のより高分子量のタンパク質を示した。180000ダルトン成分に対する90000ダルトン成分の比は、数多くの調製すべてにおいて10:1か、もしくはそれ以上であった。この物質を10%ポリアクリルアミドゲルの銀染色によって可視化した。
90000ダルトンのバンドの気相エドマン分解は、N-末端アミノ酸そのものを含む単一のN-末端配列(図9A)の同定をもたらした。位置1、19、33および34の4つの空白(X)を伴うN-末端の38アミノ酸を同定した。位置22のアミノ酸シグナルの欠失を、N-結合型グリコシル化部位共通配列(NXT/S)を齎す後続のチロシン残基(Y)およびスレオニン残基(T)と組み合わせることによって、位置22のアスパラギン(N)を推論した。
この38残基長のN-末端の上に示した図9Aの13配列残基は、過去にSiegelman等(前掲)が放射活性標識アミノ酸配列決定法を用いて推定したものであり、本研究で決定したLHRの配列と高度な相同性(13残基中11残基)を示している。
2つの別個のMLHR調製物を用いて行った3回の配列決定実験のいずれでもユビキチン配列は得られなかった。おそらくこの修飾がマウスの脾細胞には欠失しているか、もしくはユビキチンのN-末端がこの供給源から得たLHRではエドマン分解に対して遮蔽されているのであろう。
図4〜6のアミノ酸配列を、Lipman,D.等,Science 227:1435-1441(1981)のアルゴリズムを用いて、デイホッフ(Dayhoff)タンパク質データベース中の既知配列と比較した。
図9Aで下線を付したアミノ酸7から15までの残基を、図9Bに示すオリゴヌクレオチド・プローブを作成するために選択した。これらの残基から32倍に縮重した26マー・オリゴヌクレオチド・プローブを設計し、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)オリゴヌクレオチド合成機で合成した。このプローブには、哺乳類コドン使用則に基づいてコドンCCCを選択した位置9のプロリンを除いて、考え得るすべてのコドン縮重性が含まれている。
細断したマウスの脾臓から得たネズミ脾臓cDNAライブラリーをこのプローブを用いてスクリーニングすることによって、単一のハイブリッド形成cDNAクローンが単離された。操作としては、5μg/ml コンカナバリンAで6時間処理したネズミ脾細胞から単離したmRNAから作成したオリゴdT-プライム化gt10ネズミ脾臓cDNAライブラリー由来の600000プラークを1プレートあたり50000ファージの割合で12プレートに接種し、20% ホルムアミド、5xSSC(150mM NaCl、15mM クエン酸三ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハルト溶液、10% 硫酸デキストラン、20μg/ml 変性剪断サケ精子DNA中42℃で終夜、図9Bに示したP32で標識した32倍縮重26マー・オリゴヌクレオチド・プローブを用いてハイブリッド形成を行った。これらのパラメーターを本明細書では"厳密条件"と呼ぶ。フィルターを1xSSC、0.1%SDS中42℃で30分間2回洗浄し、−70℃で終夜オートラジオグラフィーを行った。一複製陽性クローンを再スクリーニングし、EcoR1挿入物を単離し、これをM13またはPUC 118/119ベクター中に挿入し、配列特異的プライマーを用いて一本鎖鋳型からそのヌクレオチド配列を決定した。
このバクテリオファージに含まれていた2.2キロ塩基のEcoR1挿入物の全DNA配列を図4〜6に示す。最長の読み取り枠は位置106〜108のメチオニンコドンで始まっている。コザック(Kozak)ボックス相同性がこのメチオニンコドンの周辺に認められ、このことはこのコドンがおそらくタンパク質の翻訳開始に際して機能することを示唆している。分子量約42200ダルトンの373アミノ酸を含有するタンパク質配列がこの読み取り枠内にコードされている。翻訳されるタンパク質には、単離したMLHRから決定したN-末端アミノ酸配列と正確に対応する残基40から76までの配列が認められる。
この結果は、MLHRの成熟N-末端が位置39のトリプトファン残基から始まることを示唆している。しかし、LHRの実際のN-末端のいくつかのタンパク加水分解プロセシングが、このタンパク質の単離中に起こったであろうと考え
られる。
このタンパク質の疎水性特性図は、N-末端に位置する、小胞体のルーメンへの挿入のためのシグナル配列として機能し得る疎水性ドメインを明らかにしている。位置39〜333の推定配列は主として親水性であり、その後にストップ・トランスファーまたは膜固定ドメインに特有の22残基疎水性ドメインが続いている。
このタンパク質のまさにC-末端にある細胞内領域と思われる領域は極めて短く、17残基長しかない。貫膜ドメインと予想されるドメインのすぐC-末端側には数個の塩基性アミノ酸があり、これは細胞表面受容体の膜アンカーと細胞質ドメインとの結合部に典型的な性質である(Yarden等,Nature)。潜在的リン酸化部位である一セリン残基が推定上の細胞質ドメイン内に存在する。
このタンパク質は10カ所の潜在的N-結合型グリコシル化部位を含有しており、そのすべてが細胞外ドメインと考えられるドメイン内に存在する。ペプチド配列決定分析において位置60(成熟タンパク質の残基22)のアスパラギンが欠失することは、この部位でのグリコシル化を裏付けており、この領域の細胞外配向を明らかにしている。解読領域には計25個のシステイン残基が含まれているが、このシステイン残基のうち4個はリーダー配列と考えられる配列内に位置している。
MLHR内のタンパク質モチーフ
図11〜13に示すように、推定MLHRアミノ酸配列を、デイホッフ・タンパク質配列データバンク中の他のタンパク質と、fastpプログラム(Lipman,D.およびPearson,W.,Science 227:1435-1441(1985))を用いて比較した結果、いくつかの興味深い配列相同性が認められた。
最も高い配列相同性値を有するタンパク質を、最大の配列相同性を示す領域を実線で囲んで示す。配列の最初に記載した数字は、そのタンパク質内におけるこれらの相同配列の位置を示している。
図11は、LHRのN-末端モチーフ(残基39〜155)が、次に列挙するいくつかの炭水化物結合タンパク質相同性を有することを示している(これらの配列のMLHRに対する相同率(%)をカッコ内に示し、記載した文献は実施例の欄の後に列挙する):Drikamer;Drickamer等(1)が発見したアミノ酸残基、MuLHR;MLHR配列、Hu.HepLec(27.8%);ヒト肝炎レクチン(2)、Barn.Lec(25%);フジツボ・レクチン(3)、Ra.HepLec(23.5%);ラット肝炎レクチン(4)、Ch.HepLec(27.5%);ニワトリ肝炎レクチン(5)、Hu.IgERec(28.6%);ヒトIgE受容体(6)、RaHepLec2(22.6%);ラット肝炎レクチン2(7)、Ra.ASGRec(22.6%);ラット・アシアロ糖タンパク質(asialoglycoprotein)受容体(8)、Ra.IRP(25.6%);ラット島再生タンパク質(9)、Ra.MBP(26.1%);ラット・マンノース結合タンパク質(10)、Ra.MBDA(26.1%);ラット・マンノース結合タンパク質前駆体A(11)、Ra.KCBP(27%);ラット・クッペル細胞結合タンパク質(12)、FlyLec(23.1%);ニクバエ(ニクバエ属)レクチン(13)、およびRab.Surf(20.9%);ウサギ肺界面活性剤(14)。
図11からわかるように、ほとんどN-末端に局在化しているLHRのモチーフは、カルシウム依存性動物レクチン即ちC-型レクチン(1)のいくつかと高度な相同性を示す。これらには、ニワトリ、ラットおよびヒト由来の種々の肝炎糖結合タンパク質、可溶性マンノース結合性レクチン、クッペル細胞由来のレクチン、アシアロ糖タンパク質受容体、軟骨プロテオグリカン核タンパク質、心肺界面活性剤アポタンパク質およびニクバエおよびフジツボ由来の2種の無脊椎動物レクチンが含まれるが、これらに限定されない。Drickamerとその共同研究者(前掲)によって初めてC-型動物レクチンに共通であることが認識された"非変異"アミノ酸のすべてがMLHRの炭水化物結合ドメイン中に完全に保存されているわけではないが、これらの残基およびその他の位置の相同性の程度は明白である。C-型族に属する既知のレクチン類は、末端ガラクトース、N-アセチルグルコサミンおよびマンノースを伴うオリゴ糖類(1)を含む糖結合特異性の範囲を示す。
これらの炭水化物結合タンパク質すべてに不変であることがわかった多くの残基が存在するという事実は、この領域がMLHRにおいて炭水化物結合ドメインとして機能することを強く示唆しており、リンパ球がリンパ様組織の特殊化した内皮に糖およびカルシウム依存的に結合し得るという観測事実を明確に説明している。いくつかの態様では、隣接LHR領域を伴わないLHRの炭水化物結合ドメインを単独で用いて本発明を実施する。
炭水化物結合ドメイン完結のほとんど直後に認められる次のモチーフ(残基160〜193)は、表皮成長因子(egf)族に対して高度な相同性を示す。図12は表皮成長因子(egf)相同性示している:MLHR;MLHR配列、Notch(38.5%);キイロショウジョウバエnotch遺伝子座(15)、S.purp(31.7%);ストロンギロセントロター・プルプラタス(Strongylocentrotur purpuratus)egf様タンパク質(16)、Pro.Z(34.1%);ウシ・プロテインZ(17)、Fact.X(34.2%);凝固因子X(18)、Fact.VII(27.3%);凝固因子VII(19)、Fact.IX(33.3%);凝固因子IX(20)、Lin-12(32.1%);カエノルハドジチス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)Lin-12遺伝子座(21)、Fact.XII(26%);凝固因子XII(22)、およびMu.egf(30%);ネズミegf(23)。
図12からわかるように、MLHRのこの領域における相同性の最大値はショウジョウバエ属の神経原性遺伝子座notchに認められるが、この大きな族の他の構成要素のいくつかにもかなりの相同性が認められる。この族の構成要素間でこのドメインの位置が多様であることは、この領域が、異なる機能のための異なるタンパク質間で入れ換えられ得るゲノム断片内に存在し得ることを示唆している。
6個のシステイン残基に加えて、この族のほとんどすべての構成要素が3個のグリシン残基を共有している。このシステイン残基とグリシン残基の保存はLHRにおけるこの領域の構造上の役割の可能性と一致している。このドメインが、N-末端に位置する炭水化物結合領域をリガンド相互作用に適した配向に位置させると考えられる。またこのドメインは、内皮表面のegf-受容体同族体に結合することによるリンパ球と内皮との相互作用を強化するように働くとも考えられる。
MLHRの細胞外領域中の最後のタンパク質モチーフはアミノ酸197から328までをコードしている。この糖タンパク質のこの領域は、いくつかの補体因子結合タンパク質と高度な相同性を有するアミノ酸モチーフ(図13)を含有する62残基配列の2つの直列反復を含んでいる。
図13は補体結合タンパク質相同性を示している:MLHR;MLHR配列、HuComH(31.9%);ヒト補体プロテインH前駆体(24)、MuComH(28.9%);ネズミ補体プロテインH前駆体(25)、HuBeta(25.6%);ヒトβ-2-グリコプロテインI(26)、HuCR1(29.9%);ヒトCR1(27)、EBV/3d(25%)6;ヒト・エプスタイン-バー・ウイルス/C3d受容体(28)、HuC2(27.1%);ヒト補体C2前駆体(29)、HuB(23.1%);ヒト補体因子B(30)、MuC4b(22%);ネズミC4b結合前駆体(31)、HuC1s(29.2%);ヒトC1sチモーゲン(32)、HuC4b(26.1%);ヒトC4b結合タンパク質(33)、HuDAF(27.1%);ヒト崩壊促進因子(34)、VacSecP(26.2%);ワクシニア・ウイルス分泌ペプチド(35)。
この反復ドメインの複数の広い範囲をコードするこれらのタンパク質には、数あるなかでも、ヒトおよびネズミ補体H前駆体、ヒト・ベータ2糖タンパク質、エプスタイン-バー・ウイルス/C3d受容体、ヒトC4b結合タンパク質、崩壊促進因子およびワクシニアウイルス分泌ポリペプチドが含まれる。
図7CはMLHR中の2つの直列反復と補体結合族に属するタンパク質に認められる直列反復との相同性を示している。補体結合タンパク質のこの群に保存されているアミノ酸の多くが、保存されているシステイン残基の数を含めて、MLHRのこの領域中の2つの反復にも認められる。
興味深いことに、MLHRに含まれる2つの反復は、アミノ酸レベルで厳密に互いの複製であるばかりでなく、ヌクレオチド配列レベル(ヌクレオチド残基685〜865および866〜1056)でも厳密な相同性を示している。この結果がクローニング・アーチファクト(人工産物)によるものであることも考えられるが、MLHR発現細胞株38C13(スタンフォード大学(Palo Alto,California,U.S.A.)から入手可能)から作成した別個のcDNAライブラリーから単離した他のクローンのいくつか、およびヒトのMLHR同族体(後述)にもこの複製領域が認められている。さらに、いくつかの他の遺伝子(最も注目すべきはLp(a)遺伝子である)は、さらに高度なこのドメインの遺伝子内反復配列保存を示す。これらの結果は、MLHRが補体結合族の他の構成要素と同様に、この結合ドメインの複数反復を含有することを示唆している。
結論として、MLHRの細胞外領域は互いに結合することによって新しい1または複数の機能を果している3つの別個のタンパク質モチーフを含有していると思われる。この糖タンパク質に含まれるタンパク質モチーフの要約を図14に示す。
実施例2:HuLHRのクローニング
上記の例に記述したように一般に、上述のネズミMel14抗原cDNAクローンの2.2kbEcoR1挿入物を単離し、P32三リン酸塩を用いるランダム・プライム化DNAポリメラーゼ合成によって高比活性に標識し、これを用いて、一次細胞から得たヒト末梢血液リンパ球mRNA由来のオリゴdTプライム化ラムダgt10cDNAライブラリーから600000クローンをスクリーニングした。フィルターを40%ホルムアミド、5xSSC(1xSSCは30mM NaCl、3mM クエン酸三ナトリウムである)、50mM リン酸ナトリウム(pH6.8)、10% 硫酸デキストラン、5xデンハルト溶液および20μg/ml 剪断煮沸サケ精子DNA中42℃で終夜ハイブリッド形成を行った。これらを0.2xSSC、0.1% 硫酸ドデシルナトリウム中55℃で40分間2回洗浄した。12クローン(50000ファージのプレートあたり約1陽性)を選択し、最大のEcoR1挿入物(〜2.2キロ塩基)を単離し、そのDNA配列を、配列特異的プライマーを用いるバクテリオファージm13内でのジデオキシヌクレオチド配列決定法によって決定した。
この〜2.2kbクローンは、コザック・ボックス相同領域に続くメチオニンで始まる約42200ダルトンの分子量を有する372アミノ酸の読み取り枠をコードしていた。このコード化されたタンパク質には26個のシステイン残基と8カ所の潜在的N-結合型グリコシル化部位が含まれていた。このタンパク質のN-末端の高度に疎水的な領域(残基20〜33)はシグナル配列と考えられ、C-末端に位置する22アミノ酸長のもう1つの高度に疎水的な領域(残基335〜357)はストップ・トランスファーまたは膜固定ドメインと考えられた。このC-末端疎水領域には、荷電した、おそらく細胞質領域と考えられる領域が続いていた。
このヒト・クローンのヌクレオチド配列を既に分かっているMLHRの配列と比較したところ、高度な総DNA配列相同性(〜83%)が認められた。各LHRドメインにおけるMLHRとHuLHRの相対的アミノ酸配列保存度は次の通りである:炭水化物結合ドメイン--83%;egf様ドメイン--82%;補体結合反復1--79%;補体結合反復2--63%;総補体結合ドメイン--71%;貫膜ドメイン--96%。
公開されたヘルメス配列(Jalkanen,前掲)を、図1〜3のHuLHR配列と比較すると、配列相同性が無いことがわかる。
実施例3:MLHRの発現
本発明において単離したネズミcDNAクローンがMLHRをコードしていることを決定的に立証するために、このクローンを発現ベクター中に挿入し、一時的細胞トランスフェクション検定法で分析した。HuLHRの発現も同様の方法で実行した。
上述の読み取り枠を含むEcoR1断片(図4〜6に配列を示した〜2.2キロ塩基EcoR1断片)を単離し、サイトメガロウイルス・プロモーターを含有すpRK5ベクター(Eaton,D.等,Biochemistry 25:8343-8347(1986);欧州公開第307247号(1989年3月15日公開))中に連結した。この挿入cDNAをプロモーターに対して正しい配向で含有しているプラスミドを選択し、CaPO4沈殿法を用いて293ヒト胚腎細胞に導入した。
2日後、細胞を各500μCiのS35システインおよびメチオニンと共にインキュベートした。溶解液と上清を過去に記述されたように調製し(Lasky,L.等,Cell 50:975-985(1987))、Mel14モノクローナル抗体とプロテインA・セファロースとの間に挟まれた抗ラットIgGポリクローナル抗体を使用することによって、Mel14モノクローナル抗体(免疫アフィニティー・クロマトグラフィーで精製したもの)で免疫沈降した。
同時に、MLHRを発現することがわかっている細胞、B-細胞リンパ腫38C13を、上清MLHRを分析するためにメチオニンあるいはシステインで代謝的に標識するか、もしくは細胞に結合したLHRを分析するためにこの細胞表面糖タンパク質をI125およびラクトペルオキシダーゼで標識し、Mel14抗体免疫沈降によって分析した。
得られた免疫沈降物を7.5%ポリアクリルアミドSDSゲルで分析し、−70℃で終夜オートラジオグラフィーにかけた。
これらの検定結果を図10に示す。この図におけるレーンA〜Fの意味を次に説明する:
A.Mel14モノクローナル抗体で免疫沈降した、MLHR発現プラスミドでトランスフェクションした293細胞の溶解液;
B.Mel14モノクローナル抗体で免疫沈降した、MLHR発現プラスミドでトランスフェクションした293細胞の上清;
C.Mel14モノクローナル抗体で免疫沈降した、HIVgp120外被糖タンパク質を発現するプラスミドでトランスフェクションした293細胞の溶解液;
D.Mel14モノクローナル抗体で免疫沈降した、HIV外被発現プラスミドでトランスフェクションした293細胞の上清;
E.Mel14モノクローナル抗体で免疫沈降した38C13細胞上清;
F.I125で表面標識し、Mel14モノクローナル抗体で免疫沈降した38C13細胞溶解液。
図10からわかるように、この構築物でトランスフェクションした細胞は、Mel14抗体と特異的に反応する2種類の細胞結合性タンパク質を生産する。これ
らの細胞結合性タンパク質は約〜70000ダルトンおよび〜85000ダルトンに移動し、このことは〜42200ダルトンの核タンパク質がトランスフェクション細胞中でグリコシル化されるようになることを示唆している。シアリダーゼ処理を行うと、より大きなバンドの分子量が変化する(データは示していない)ことは、このタンパク質が相対的に成熟型の糖タンパク質であることを示唆し、一方、より低分子量のバンドがこの酵素に対して耐性であることは、このタンパク質が前駆体型であり得ることを示している。
一時的トランスフェクション細胞株のMel14抗体によるFAC分析は、これらの細胞中で発現したLHRの一部が細胞表面上で検出可能であることを明らかにした(データは示していない)。
このトランスフェクション細胞株中で生産される、より高分子量の糖タンパク質は、他のトランスフェクション細胞株で得た結果、即ち末梢リンパ節誘導性B-細胞リンパ腫38C13が産出するもの(図10レーンF)より僅かに小さいことがわかった。これはグリコシル化の細胞特異的相違によるものであろう。
興味深いことに、38C13細胞とトランスフェクションしたヒト細胞はどちらも、より低分子量型のMLHRを培地中に放出するようである(図10レーンBおよびE)。この放出分子の性質は明らかではないが、その分子量が小さいことは、これが膜アンカー付近のタンパク加水分解によって生じた細胞表面型の切断産物であることを示唆している。
結論として、これらの結果は、本発明者等が単離したcDNAクローンがMLHRをコードしていることを明確に立証している。
実施例4:先端が欠失したMLHR-IgGキメラの構築、精製および分析 図15は、レクチン、レクチン-egfおよびレクチン-egf-補体調節モチーフを含有するMLHR-IgGキメラ類の構築を示している。この図の最上段は、貫膜アンカードメイン(TMD)および短い細胞質配列と共にN-末端シグナル配列(SS)、レクチン・ドメイン、表皮成長因子(egf)ドメインおよび重複した補体調節ドメイン(CDB)を含有するネズミリンパ球誘導受容体(MLHR)のタンパク質ドメインを示している。レクチン(MLHR-L+IgG)、レクチンおよびegf(MLHR-LE+IgG)、およびレクチン、egfおよび2つの補体調節モチーフ(MLHR-LEC+IgG)を含有する3種類の先端欠失型MLHR-IgGキメラ類も図15に示されている。これらの先端欠失型タンパク質はすべて、これらのキメラがCH2およびCH3定常領域と共に、免疫グロブリン二量化に寄与するヒンジの2個のシステイン残基(C)を含有するように、ヒンジ・ドメイン(H)の直ぐ上流のヒト重鎖ガンマ1領域に結合している。過去に特徴づけられたヒト重鎖IgG1定常領域カセット(Caponet等,前掲(1989))を使用した。LHR配列とヒトIgG配列との接合部位は、ヒンジ領域近傍におけるこれらの分子の結合によって、軽鎖が産出されない条件下でキメラ分子が効率的に合成され、二量化されるように選択した。さらに、ヒトIgG1定常領域を使用することにより、以下に記述する免疫組織化学的実験において、内因性のネズミIgG類との交差反応性に起因する問題を避けることができる。
図16からわかるように、これらのキメラはこれらの一時的トランスフェクション検定中で効率良く合成され、分泌された。抗体を添加しない条件下でのこれらのキメラとプロテインAセファロースとの反応性は、これらの定常領域ドメインが正常に畳み込まれていることを立証している。図16は、これらの分子が非還元的条件下で二量化することを示しており、これらのキメラにおいてヒンジ領域が完全に機能的であることを立証している。最後に、プロテインA反応性は、プロテインAセファロース・カラムによるこれらのキメラのほぼ均一な精製をも可能にする。この実施例の結果は、定常ドメインがヒトIgGガンマ1重鎖由来であり、一方、"可変"ドメインがMLHR由来であると言える抗体様物質の生産を立証している。
キメラの構築
過去に記述されたMLHR-PRK5発現プラスミド(Eaton等(1986);Lasky等,Cell 50:975-985(1987))およびヒト重鎖IgGのcDNAコピー(Capon等,Nature 337:525-531(1989))から出発して、ヒトIgG1定常領域のCH1-CH3領域をコードする1100bpのHindIII断片を、MLHRcDNAのポリA部位の3'に挿入した。m13複製起点およびKO7ヘルパー・ファージを用いてこのプラスミドを一本鎖鋳型に変換した後、貫膜固定領域と推定される領域のN-末端側のレクチン、egfおよび第2補体結合反復とヒンジとの間の領域を、インビトロ変異法(ZollerおよびSmith(1982))により、48マー・オリゴヌクレオチドでループ・アウトした。得られた変異体を、欠失接合部をまたぐ32Pで標識した21マー・オリゴヌクレオチドでスクリーニングし、単離した変異体をスーパーコイル配列決定法を用いて配列決定した。
過去に記述された方法を用いてヒト腎293細胞をトランスフェクションすることによる発現について、正しい変異体を試験した。35Sメチオニンおよびシステインで標識した上清を、抗体を添加しない条件下でプロテインAセファロース・ビーズによる免疫沈降によって分析した。沈降したタンパク質を、β-メルカプトエタノールによる還元下または非還元下、7.5%ポリアクリルアミド-SDSゲルで分析した。正しく発現したキメラを齎すプラスミドを、G418に対する耐性をコードしている選択プラスミドおよびジヒドロ葉酸レダクターゼの存在下でトランスフェクションすることにより、293細胞中に導入した。クローンをG418中で選択し、挿入されたプラスミドをメソトレキセートの存在下で増幅した。各構築物を高レベルで発現する永久細胞株をT-フラスコ中で大量に生育させ、その細胞上清を遠心分離および濾過によって透明化した。得られた上清をアミコン濾過によって濃縮し、標準的プロテインAセファロースカラムに通し、PBSで洗浄し、0.1M 酢酸、0.15M NaCl(pH3.5)で溶出させた。溶出した物質を直ちに3M Tris(pH9)で中和し、SDSゲル電気泳動およびELISA検定法で定量した。
前段落に記述したゲル電気泳動の結果を図16に示す。還元されたタンパク質をレーンA〜Fに、非還元タンパク質をレーンG〜Iに、また精製したタンパク質をレーンJ〜Lに示す。マーカーの分子量をキロダルトンで示す。各レーンの同定を次に説明する:A.分泌されたMLHRLEC-IgG、B.細胞内MLHRLEC-IgG、C.分泌されたMLHRLE-IgG、D.細胞内MLHRLE-IgG、E.分泌されたMLHRL-IgG、F.細胞内MLHRL-IgG、G.分泌されたMLHRLEC-IgG、H.分泌されたMLHRLE-IgG、I.分泌されたMLHRL-IgG、J.精製したMLHRLEC-IgG、K.精製したMLHRLE-IgG、L.精製したMLHRL-IgG。
抗ヒトIgG1-特異的マウス・モノクローナル抗体で被覆したウェルからなる形式のELISAを用いて、単離したLHR-IgGキメラを定量した。未知試料と高度に精製したヒトCD4-IgG1免疫アドヘシン(immunoadhesin)標準を、抗体で被覆したプレートと共にインキュベートした後、そのプレートを洗浄し、結合した物質を西洋ワサビ・ペルオキシダーゼと結合したヤギ抗ヒトIgG1と反応させ、次いでさらに洗浄し、基質を添加した。この定量的検定法によって、サブナノグラム量の単離LHR-IgGキメラが測定できた。
ELISAによるMLHR-IgGキメラPPME反応性の分析
種々のIgGキメラが酵母細胞壁炭水化物、ポリホスホマンナンエステルまたはPPMEを認識する能力を、過去に記述された形式のELISAで分析した(Imai等(1989))。簡単に記述すると、約等量の精製キメラを4℃で終夜微量滴定ウェルに被覆する。非特異的部位をBSAで遮断した後、結合した抗原を5μg/mlのPPME溶液と反応させた。結合した炭水化物を、これに対するポリクローナル抗体および標準的(ベクター(Vector))免疫組織化学的染色試薬を用いて検出した。Mel14による阻害を、PPME添加前にMLHRLEC-IgG含有ウェルをこのモノクローナル抗体と共に予備インキュベートすることにより実行し、一方、結合反応中に10mM EGTAを添加することにより、この誘導受容体-炭水化物相互作用のカルシウム依存性を立証した。阻害を調べる検定として、PPMEインキュベーションの前に他の種々の添加物を加えた。22℃で1時間後、プレートを洗浄し、PPMEに対するウサギ・ポリクローナル抗体と共に22℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、ベクターABC-APと共に30分間インキュベートし、洗浄し、発色させた。得られた検定をプレート読み取り機で測定した。阻害検定に使用した炭水化物はシグマ・ケミカル・コーポレイテッド(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO.)から入手した。
PPME結合分析の結果を図17に示す。各レーンは次のMLHR-IgGキメラを含有する:A.MLHRL-、MLHRLE-およびMLHRLEC-IgGキメラに対するPPMEの結合、B.Mel14モノクローナル抗体およびEGTAによるMLHRLEC-IgG-PPME結合の阻害、C.他の炭水化物によるMLHRLEC-IgG-PPME結合の阻害。
過去に行われた研究によって、LHRが酵母細胞壁マンナン、ホスホマンナンエステルまたはPPMEに結合し得ること(Yednock等,J.Cell Biol.104:725-731(1987))、並びに、この結合がリンパ球の末梢リンパ節高内皮小嚢に対する吸着能を阻害することが立証されており、これは末梢リンパ節LHRレクチン・ドメインが末梢リンパ節内皮上の炭水化物を認識するであろうという仮説に合致している。さらにMel14抗体がリンパ球表面に対するPPMEの結合を阻害することも発見され(Yednock等,前掲(1987))、これは、この炭水化物が末梢リンパ節LHRのレクチン・ドメイン内に結合するという理解と合致している。
レクチン、egfおよび重複した補体結合反復構造を含有するキメラがPPMEを結合することがわかった。この結合はMel14抗体によって阻害可能であり、このことは、MLHRLEC-IgGキメラがこの抗体によって認識されることを立証するデータ(データは示していない)と合致している。またこの結合は、脾細胞から単離されたMLHR(Imai等,印刷中(1989))を用いて過去に認められたものと定量的に同等であり、このことは、これがリンパ球表面上のLHRで認められているタンパク質-炭水化物相互作用(Yednock等,前掲(1987))と同じであることを示唆している。さらに、この結合はカルシウム依存性であることもわかり(StoolmanおよびRosen,J.Cell Biol.96:722-729(1983))、このことは、リンパ球結合受容体について既に示されているように、C型またはカルシウム依存性レクチン・ドメイン(Drickamer,J.Biol.Chem.263:9557-9560(1988))が少なくとも部分的にこの相互作用に寄与することを暗示している(図16b)。
過去に行われた研究によって、PPME以外の種々の炭水化物が脾臓由来のMLHRによって認識され得ることが立証されている(Yednock等,前掲(1987);Imai等,前掲(1989))。これらには、フコイジン、硫酸デキストランおよび脳由来のスルファチド類が含まれる。これらの炭水化物がMLHRLEC-IgGキメラとPPMEとの相互作用を阻害する能力を、この分子の特異性を過去に記述された脾臓由来の糖タンパク質(Imai等,前掲(1989))と比較するために試験した。図16からわかるように、フコイジン、硫酸デキストランおよびスルファチドはすべてPPMEとMLHRLEC-IgGとの相互作用を阻害することができ、このことは、組換え法で誘導したこのタンパク質の炭水化物特異性が、天然に存在するタンパク質に関して過去に記述されたものとよく似ていることを示している。他の2種類の荷電炭水化物、硫酸コンドロイチンおよびヘパリンによって阻害されないことは、この阻害が特異的炭水化物認識に起因するものであり、これらの化合物の高度に荷電した性質による非特異的相互作用に起因するものではないことを示唆している。
MLHR-IgGキメラによる細胞遮断検定
過去に記述された(GeoffreyおよびRosen,J.Cell Biol.,印刷中(1989))パイエル斑およびマウスの末梢リンパ節のクリオスタット切断切片を用いて、スタンプファー・ウッドルフ(Stampfer-Woodruff)細胞遮断検定法(StamperおよびWoodruff,J.Exp.Med.144:828-833(1976))を実行した。簡単に説明すると、MLHR-IgGキメラ、単離した脾臓由来MLHRもしくは緩衝液単独の存在下で、凍結組織切片を腸間膜リンパ球と共にインキュベートした。MLHR-IgGキメラを10μg/切片程度の濃度で添加し、1x107細胞/mlの添加前に凍結切片上で予備インキュベートした。このスライドを洗浄し、デジタル生物形態計測によって、リンパ球付着を、単位面積あたりのこれらのリンパ様器官中のHEVに結合したリンパ細胞数として測定した。
データは示さないが、MLHRLEC-IgGキメラは末梢リンパ節HEVに対するリンパ球の結合を約75%阻害のレベルで阻害し、一方この検定において、脾臓由来のMLHRは約50%のレベルで遮断することがわかった。この阻害はカルシウム依存性であり、MEL14モノクローナル抗体の添加によって遮断された(データは示していない)。
MLHR-IgGキメラの免疫組織化学的分析
単離したMLHR-IgGキメラを、モノクローナル抗体のために用いる方法と同一の方法を用いる免疫組織化学的実験に使用した。8〜10ミクロンの組織切片をクリオスタット中で切断し、0.1M カコジレート、1%パラホルムアルデヒドを用いて4℃で30分間固定した。この切片をダルベッコPBS中で洗浄し、5%正常マウス血清中の種々の量のMLHR-IgGキメラを用いて4℃で30分間染色した。次にこれらの切片を洗浄し、ビオチニル化したヤギ抗ヒトFc特異的抗体(ベクター)を含む第2段階と共にインキュベートした。第2段階の試薬の添加後およびベクターABC錯体の添加前に切片を過酸化水素-メタノールで処理することにより、内因性のペルオキシダーゼを除去した。切片を洗浄し、基質(AEC)と共に5〜10分間インキュベートした。最後に切片を水性ヘマトキシリン(バイオメディア(Biomedia))で対比染色し、ツァイス・アキシオプロット(Zeiss Axioplot)で検査した。
3種類のMLHR-IgGキメラのこれらの免疫組織化学的分析では末梢リンパ節を組織源として用いた。組織学的供給源として末梢リンパ節を選択したのは、リンパ球がこのリンパ様組織のHEVに対して、Mel14によって遮断され得る様式で結合することが多くの過去の文献によって立証されており、これによりMLHRによって認識される最大レベルのリガンドがこの組織中に存在するはずであることが示唆されている(Gallatin等,Nature 304:30-34(1983))ことに基づく。MLHRLEC-IgGキメラは末梢リンパ節HEVを染色することができた。この染色は専ら高壁(high walled)内皮細胞上に認められ、内腔外または内腔近傍領域は染色されなかった。さらに、この染色はMEL14抗体によって遮断可能であり、カルシウムの存在に依存した。このことはMLHRLEC-IgGの末梢リンパ節HEVに対する結合が、リンパ球とHEVとの接着に似ていることを示唆している。PPME結合データと合致して、MLHRLEC-IgGによる末梢リンパ節HEVの染色はフコイジンおよび硫酸デキストランによって阻害可能であり(図10)、一方、硫酸コンドロイチンおよび単純なマンナン類はこの染色反応を阻害できなかった(データは示していない)。このこともまた、この染色反応が、この末梢リンパ節HEV上に発現した炭水化物リガンドの認識によるものであることを示唆している。これらのデータは、末梢リンパ節LHRと相互作用し得る内皮分子の組織分布を調べるために、この型の免疫組織化学的試薬を使用し得ることを明らかにしている。
MLHRリガンドがパイエル斑中に存在する
ここには示さないが、免疫組織化学的検定の結果、本発明者等は、予想外にもMLHRLEC-IgGキメラがパイエル斑の内皮を特異的に認識し得ることを発見した。このキメラは、リンパ細胞を含有するパイエル斑管の高壁内皮を染色するようである。この染色はMEL14抗体によって阻害可能であり、カルシウム依存性でもあった。興味深いことに、パイエル斑HEVの染色は、末梢リンパ節HEVの染色と比較するといくらか弱いように見え、このことは、このリンパ様器官において発現するMLHRリガンドがより低レベルであることを示唆している。これらの結果は、他の接着系もこの器官に含まれ得るが(Holzman等,Cell 56:37-46(1989))、末梢リンパ節LHRに対するリガンドが発現し、それゆえに、このリガンドがこのリンパ様器官の内皮に対するリンパ球の結合に関与することを立証している。
実施例5:CD4-IgG-MLHR-IgGキメラの構築
過去に構築された2種類のPRKプラスミドをMLHR-IgGおよびヒトCD4-IgGの直接発現に使用した。MLHRプラスミドは上の実施例に記述したものである。CD4-Igプラスミドは、CH1ドメインおよび最初のシステイン残基までのヒンジ領域部分をコードする領域を削除することによって改変した、Capon等の文献(前掲)に記述されているものである。これらのプラスミドを上述の標準的リン酸カルシウム法を用いて、2つの遺伝子が高レベルで一時的に発現する細胞を作成するためにPSVT antigenと共に、もしくは2つの遺伝子が安定に発現する細胞クローンを選択するためのネオマイシン耐性を付与するためにPSVneoと共に、ヒト293細胞中に同時トランスフェクションした。放射免疫沈降によって発現を分析した;CD4-IgG、LHR-IgGおよびCD4-IgG-LHR-IgGはすべてIgG Fc部分を含有しているので、これらはすべて標準的方法でプロテインAによって直接沈降させ得る。3種類の分子、CD4-IgGホモ二量体、LHR-IgGホモ二量体およびCD4-IgG-LHR-IgGヘテロ二量体を検出した。これらの分子は還元によってそれぞれの単量体成分に分離し、このことは各二量体の構成成分が、ヘテロ二量体を含めて、ジスルフィド結合によって互いに共有結合していることを示している。
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