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JP2009013506A - 吸湿・耐油板紙 - Google Patents

吸湿・耐油板紙 Download PDF

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JP2009013506A JP2007172918A JP2007172918A JP2009013506A JP 2009013506 A JP2009013506 A JP 2009013506A JP 2007172918 A JP2007172918 A JP 2007172918A JP 2007172918 A JP2007172918 A JP 2007172918A JP 2009013506 A JP2009013506 A JP 2009013506A
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Abstract

【課題】水や、蒸気等の水分を吸水・吸湿しながら、動植物油等の油分の吸収を抑制する、すなわち吸湿・耐油性を有し、さらに、印刷適性、リサイクル性に優れ、罫線割れの発生もなく、低コストで製造できる板紙(吸湿・耐油板紙)を提供する。
【解決手段】基紙が少なくとも表層及び裏層の2層以上の紙層からなる板紙であって、表層の表面及び/又は裏層の表面に、少なくともアクリル系樹脂と多孔質無機粒子とを含有する塗工液を、片面あたり固形分で2〜40g/m塗布することにより塗工層を設ける。
【選択図】なし

Description

本発明は、水や蒸気等の水分は吸収するが、動植物油等の油分の吸収は抑制することができる特性を有する吸湿・耐油板紙に関する。
従来より、デパートやスーパー、ファーストフード店等では、調理された食品が販売されているが、このような食品はトレーや包装紙、包装箱等の包装容器に収容されて、家庭等に持ち帰られている。このような包装容器として、発泡合成樹脂製等の樹脂容器が広く使用されていた。しかし、最近では、環境面の観点から、この様な容器は、発泡合成樹脂製等の容器から、環境にやさしく、リサイクル可能な紙製の包装容器に変わりつつある。
しかしながら、紙製の包装容器の材料は、セルロース繊維が水素結合したものであるため、繊維間に容易に水や油等が入り込み易いという欠点があった。このため、例えばピザ、お好み焼き、たこやき、シュウマイ等の食用油を多く使用する食品を収容するために用いられる包装容器には、包装容器、または、その包装材料自体に、油分を吸収しない(油分を通さない)ように耐油加工が施されている。
また、例えばピザ、お好み焼き、たこやき、シュウマイ等の食品は、調理直後に包装容器に収容されることから、食品から発生する蒸気によって、食品自体が蒸れてしまい、食品の味落ちを防止する、例えばその食品のサクサク感を損なってしまうことを防止する必要もある。
そこで、紙に耐水性や耐油性を付与する方法として、例えば特許文献1に記載されているような、スチレンアクリルラテックスと顔料とを含む下塗層を板紙基材に直接被着させ、スチレンアクリルラテックスと顔料とを含む上塗層を直接、下塗層に被着させてコーテッド板状素材を製造して耐油性を向上させたものや、例えば特許文献2に記載されているような、1層以上の紙と耐油性樹脂を含浸させた紙との積層体を基材紙とすることにより耐油性を向上させたもの、その他紙の表面にラミネート加工を施したものや、あるいはアルミを蒸着させて耐油性を得た種々の耐油紙が提案され、実用化されているが、これらの容器に用いられる紙や板紙は、油分や水分を分離するものではなかった。
また、このような食品の収容に使用される包装容器や、このような包装容器に使用される包装材料には、耐油性及び吸湿性の機能を兼ね備えることが求められているが、耐水性、吸水性、耐油性等、それぞれ単独の機能を有するものしか存在しないのが実情である。
また、上述したような樹脂を含浸させた紙や、ラミネート加工を施した紙、あるいはアルミを蒸着させた紙等はリサイクルすることが出来ず、近年の省資源や資源の再利用の方向と逆行するものであると共に、樹脂を含浸させる等の加工設備が必要であるので、紙の製造コストが高くなるという問題があった。
また、耐油性とある程度の吸水性を併せ持つものとして例えば特許文献3に記載されているような基材上にバリア層とこのバリア層上に形成された外面印刷層を設け、基紙と外面印刷層の白色度を特定の範囲に規定することにより、水や油を吸収させた際に、黒ずみの発生を阻止し得る耐水耐油紙が開示されている。
しかし、2層以上の塗工層を持たせることは、2種類の塗工液を調整する必要性等、手間とロスが発生しコストが高くなってしまう。
特開平10−331096号公報 特開2000−109157号公報 特開2005−036350号公報
本発明は、上述したような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、水や、蒸気等の水分を吸水・吸湿しながら、動植物油等の油分の吸収を抑制する、すなわち吸湿・耐油性を有し、さらに、印刷適性、リサイクル性に優れ、罫線割れの発生もなく、低コストで製造できる板紙(吸湿・耐油板紙)を提供することにある。
本発明の上記目的は、基紙が少なくとも表層及び裏層の2層以上の紙層からなる板紙において、前記表層の表面及び/又は前記裏層の表面に、少なくともアクリル系樹脂と多孔質無機粒子とを含有する塗工液を、片面あたり固形分で2〜40g/m塗布することにより塗工層を設けたことを特徴とする吸湿・耐油板紙を提供することによって達成される。
また、本発明の上記目的は、前記アクリル系樹脂は、塗工液中に固形分で30〜96重量%含有され、前記多孔質無機粒子は、BET比表面積が10〜500m/gであり、また塗工液中に固形分で2〜50重量%含有されていることを特徴とする吸湿・耐油板紙を提供することによって、効果的に達成される。
さらにまた、本発明の上記目的は、前記塗工層の表面のTAPPI UM−557に準じて測定した耐油度が5〜12であり、またJIS−P8140に準じ水との接触時間を5秒として測定した吸水度が15〜45g/mであることを特徴とする吸湿・耐油板紙を提供することによって、より効果的に達成される。
本発明に係る吸湿・耐油板紙によれば、表層の表面及び/又は裏層の表面に、少なくともアクリル系樹脂と多孔質無機粒子とを含有する塗工液を、片面あたり固形分で2〜40g/m塗布したので、水、蒸気等の水分を吸水・吸湿しながら、動植物油等の油分の吸収を抑制することができる、すなわち吸水・吸湿性、及び耐油性を有する板紙とすることができる。
また、本発明に係る吸湿・耐油板紙は、ラミネート加工やアルミ蒸着等を施す必要がないので、リサイクルをすることが可能である。
以下、本願発明に係る吸湿・耐油板紙について、基紙が表層、中層、及び裏層の3層の紙層から成る場合を例に、詳細に説明する。なお、本願発明に係る吸湿・耐油性を有する多層抄き板紙は、以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内において、その構成を適宜変更できることはいうまでもない。
本願発明に係る吸湿・耐油性を有する多層抄き板紙(以下、「本板紙」という。)は、基紙が表層、中層、及び裏層の3層からなり、表層の表面及び裏層の表面に、少なくともアクリル系樹脂と多孔質無機粒子とを含有する塗工液を、片面あたり固形分で2〜40g/m塗布することにより、塗工層が設けられている。
本板紙に塗布される塗工液に含有されるアクリル系樹脂としては、ポリアクリル酸やアクリル−スチレンポリマー等の共重合体エマルジョンや、自己架橋型アクリル系共重合体エマルジョン等の各種エマルジョンを使用することができる。具体的には、スチレンおよびスチレン誘導体、アクリル酸(メタクリル酸)およびアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルやメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステルなどを共重合したアクリル系コポリマー等である。
アクリルポリマーは吸水性を示すが、特にアクリル酸を酸素等の作用により重合したポリアクリル酸はカルボキシを多数持つことから、非常に親水性が高くなる。さらに架橋を加えて網目状としたポリマーは、ナトリウム塩の形とすると高吸水性が得られる。このため、紙おむつの吸収剤やインクジェット用紙の受理層として使用されている。しかしながら、疎水性であるスチレン樹脂やエポキシ樹脂は本板紙の塗工液の使用には適さない。
さらに、このアクリル系樹脂の分子量は5万〜400万である。なお、皮膜性、耐油性、リサイクル性をバランス良く効果的に得るためにはアクリル系樹脂の分子量が60万〜250万であることが好ましい。
アクリル系樹脂の分子量が5万未満であると塗工後乾燥してもジェル状の塗工皮膜となり、耐油性が得られなくなるばかりか、表面強度が低くなる。一方、分子量が400万を超えると強固な皮膜を形成し耐油性は向上する反面、離解性が悪くなるため、リサイクルし難くなる。
上述したアクリル系樹脂の具体例としては、例えば一方社油脂工業株式会社製の「P501」や、クラリアントジャパン株式会社製「カルタパック0604Eリキッド」、日本触媒株式会社製「ポリメント」等が市販されており、これらを用いることができる。
本板紙に塗布される塗工液には、アクリル系樹脂が固形分で30〜96重量%、より好ましくは55〜79重量%含有されている。アクリル系樹脂の含有率が30重量%未満であると、罫線割れが発生したり、印刷適性が低下する場合がある。一方、アクリル系樹脂の含有率が96%を超えると、離解性が低下するため、リサイクル性が悪くなるおそれがあるである。
また、本板紙に塗布される塗工液には多孔質無機粒子が含有されている。多孔質無機粒子を含有することにより、多孔質部に水分を吸収させることができる。従って、本板紙に吸水・吸湿性を付与することができる。
多孔質無機粒子としては、天然シリカ、合成シリカ、非晶質シリカ、多孔質シリカ粒子等のシリカ粒子、化学修飾されたシリカ系化合物、シリカゲル、アルミナ、アルミノケイ酸塩粒子、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪藻土、ゼオライト、活性炭、バーミキュライト、軽石砂、石炭灰等を用いることができる。
また、多孔質無機粒子のBET比表面積は10〜500m/gであることが好ましく、40〜350m/gとすることがより好ましい。多孔質無機粒子のBET比表面積が10m/g未満であると、多孔質無機粒子の保水面積が小さくなることから、所望とする吸湿性を確保することが難しくなる。一方、BET比表面積が500m/gを超えると、多孔質無機粒子の保水面積が大きくなるため、吸水・吸湿量が多くなり過ぎる。このような板紙が食品等の包装容器等に使用され、この包装容器内に食品が収容されると、包装容器内の湿度が下がり、これにより収容されている食品が乾くため、味落ちする場合がある。
このような多孔質無機粒子の具体例としては、例えば巴工業株式会社製の「セノライトM−732C」等が市販されており、これを用いることができる。
また、本板紙に塗布される塗工液には、多孔質無機粒子が固形分で2〜50重量%含有されている。多孔質無機粒子の含有量が固形分で10〜20重量%であると、より良好な耐油性及び吸水・吸湿性を得ることができるので、より好ましい。
なお、多孔質無機粒子の含有量が2重量%未満であると吸湿量が少なくなり、十分な吸水・吸湿性を得ることができない。一方、50重量%を超えると、耐油性を有するアクリル系樹脂や、バインダーの含有量が少なくなる。従って、所望とする耐油性が得られないとともに、表面強度や、印刷適性も低下してしまう。
さらにまた、本板紙に塗布される塗工液には、ワックス系エマルジョンを含有させることが好ましく、これにより耐油性を更に向上させることができる。このワックス系エマルジョンとしては、パラフィン系ワックス、ポリエチレン系ワックス、マイクロクリスタリン系ワックス等の公知のワックス系エマルジョンを単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
ワックス系エマルジョンの具体例としては、例えば一方社油脂工業株式会社製「セレスタール40」や東邦化学工業株式会社製「リパックスA240」等が市販されており、これを用いることができる。
さらに、本板紙に塗布される塗工液には、バインダーが固形分で2〜20重量%含有されている。バインダーを含有することにより、本板紙の表面強度及び印刷適性を向上させることができる。バインダーの含有量が固形分で4〜10重量%であると、より良好な耐油性、吸水・吸湿性、表面強度、及び印刷適性を本板紙に付与することができるので、より好ましい。
なお、バインダーの含有量が2重量%未満であると、本板紙の所望とする表面強度や印刷適性を得にくくなる。一方、バインダーの含有量が20重量%を超えると、アクリルポリマー系樹脂及び多孔質無機粒子の含有量が必然的に少なくなるため、本板紙の所望とする耐油性及び吸水・吸湿性を得ることができなくなる。
バインダーとしては、例えば酢酸ビニル、アクリル、ポリビニールアルコール(PVA)、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス(SBR)、澱粉、ポリアクリルアマイド(PAM)等の公知のものを用いることができる。
これらの中でも、ガラス転移温度(Tg)が−50〜30℃であるバインダーであることが好ましい。このようなバインダーは、折り曲げ適性に優れる柔らかい性状であり、しかも、乾燥後は、本板紙の表面強度を向上させることができる。従って、本板紙は加工適性に優れるものとなり、さらに印刷適性にもより優れるものとなる。
なお、ガラス転移温度が−50〜30℃のバインダーとしては、例えばスチレン・ブタジエン共重合ラテックス(SBR)を挙げることができ、具体例としては、日本エーアンドエル株式会社製の「スマーテックスPA5306」や、Jオイルミルズ株式会社製の「WR241」等が市販されており、これらを用いることができる。
また、本板紙に塗布される塗工液には、塗工液中の多孔質無機粒子の分散性を向上させるため、増粘剤や分散剤等を助剤として添加しても良い。
上述したような塗工液は、基紙の表層の表面及び裏層の表面に、片面あたり固形分で2〜40g/m塗布され、これにより塗工層が形成される。
このように、塗工液の塗工量を片面あたり固形分で2〜40g/mに調整することにより、本板紙の断熱性、印刷適性を向上させることができるとともに、表面強度もより向上させることができるため、罫線割れが発生しにくくなる。また、塗工液の塗工量を、固形分で4〜25g/mにすると、より良好な耐油性及び吸水・吸湿性を得ることができるとともに、表面強度及び印刷適性をより向上させることができるため、より好ましい。
なお、塗工液の塗工量が片面あたり固形分で2g/m未満であると、塗工層の厚みが薄くなるため、耐油性及び吸水・吸湿性が著しく低下する。また、塗工層の表面も粗くなるため、印刷カスレが発生し易くなる。一方、塗工量が40g/mを超えると、塗工層の厚みが厚くなりすぎるため、塗工層が割れ易くなり、これにより本板紙を食品の包装容器等に加工する際、罫線割れが発生し易くなる。
塗工液を塗工する方法としては、バーコーター、ロッドコーター、エアナイフなどの公知の塗工手段により塗工することができる。また、グラビア印刷機、フレキソ印刷機等の公知の印刷手段により印刷することもできる。これらの中でも特に、塗工液の塗工量を任意に変更できるロッドコーター、エアナイフなどの塗工機が好ましい。
本板紙は、塗工層の表面粗度が2〜20μmになるように、塗工液を塗工後のカレンダー処理により調整することが好ましい。また、塗工層の表面粗度を2〜12μmとすると、より印刷適性を向上させることができ、より優れた美粧印刷を施すことができる板紙とすることができるので、より好ましい。
なお、塗工層の表面粗度が20μmを超えると、板紙の表面が粗すぎ、印刷カスレが発生し易くなるため、美粧印刷を施し難くなる。一方、塗工層の表面粗度を2μm未満にしても、表面粗度が2μmの印刷仕上がりと変わらないため、無理に粗度を下げる必要がない。
なお、本板紙を、優れた耐油性、吸水・吸湿性、及び印刷適性を兼ね備えたものとするためには、紙厚を下げずクッション性のある板紙とする必要がある。このため、塗工液を塗工した後に施されるカレンダー処理は、スチールロールを使用したカレンダー処理よりも、紙厚の低下を抑えながら印刷適性を高めることができるソフトカレンダー処理であることが好ましい。
以上、本板紙を、基紙の表層の表面及び裏層の表面に塗工液を塗布して塗工層が設けられる場合について説明したが、本板紙はこのような場合に限らず、基紙の表層の表面又は裏層の表面の少なくともいずれか一方の表面に塗工液を塗布して塗工層が設けられていれば、本発明の目的は達成することができる。
以下、本板紙の基紙について説明する。
表層の原料パルプとしては、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、または離解・脱墨・漂白古紙パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等、公知の種々のパルプを使用することができる。
本板紙の中層及び裏層の原料パルプとしては、表層と同様に公知の種々のパルプを使用することができる。これらの中でも特に、表層と同様に、本板紙の裏層の役割、各種品質特性等をバランスよく、効率的に達成するためにLBKP、NBKP、LUKP、NUKP、LSBKP、NSBKP、あるいは茶古紙、クラフト古紙から製造された古紙パルプを用いることがコスト低減と環境に良いことから好ましい。
古紙パルプとしては、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、または離解・脱墨・漂白古紙パルプ等を使用することができる。
なお、各原料パルプのフリーネスは本板紙の役割、各種品質特性等をバランスよく、効率的に達成するため任意に調整することができる。
また、本板紙の基紙の坪量は、特に限定されるものではないが、例えば70〜1000g/mが好ましく、120〜600g/mであるとより好ましい。なお、基紙の坪量が70g/m未満であると、本板紙の製造時の塗工適性不良及び/又は印刷適性不良の懸念がある。一方、坪量が1000g/mを超えると、基紙の厚みが厚すぎるため巻取りにし難く、好ましくない。
なお、本板紙の基紙の抄紙方法については、特に限定されるものではないので、酸性抄紙法、中性抄紙法、アルカリ性抄紙法のいずれであってもよい。また、抄紙機も特に限定されるものではなく、例えば長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、円網短網コンビネーション抄紙機等、公知の種々の抄紙機を使用することができる。
上述したようにして構成された本板紙は、耐油性と吸水・吸湿性とを兼ね備える。すなわち、本板紙は、TAPPI UM−557に準じて測定した塗工層の表面の耐油度(キットNo.)が5〜12であるという、優れた耐油性を備えるとともに、JIS−P8140に準じ、水との接触時間を5秒として測定した吸水度が15〜45g/mであるという、優れた吸水・吸湿性を有する。従って、水分、蒸気を吸水・吸湿しながら、動植物油等の油分の吸収を抑制することができる。
このように本板紙は、優れた耐油性及び吸水・吸湿性を有するので、本板紙が、例えばピザ、お好み焼き、たこやき、シュウマイ等の食用油が多く使用され、調理直後に包装容器に収容されるため水蒸気を多く発生する食品の包装容器等に使用に好適である。すなわち、本板紙が、このような食品の包装容器等に使用されると、食品から出た油分が、食品等に再吸収されることを防止することができるとともに、食品から蒸発した蒸気による食品自体のむれを防止することができるので、その食品表面のサクサク感等を損なうことなく、また味落ちすることもなくなる。
以上、本板紙について、紙層が表層、裏層、及び中層の3層の紙層から成る場合について説明してきたが、本願発明はこのような板紙に限らず、この他、例えば表層、2層の中層、及び裏層の4層の紙層を有する板紙、さらには中層の層数を増やして5層以上の紙層を有する板紙としても良い。
本願発明に係る耐油性及び吸水・吸湿性を有する板紙の効果を確認するため、以下のような各種の試料を作製し、これらの各試料に対する品質を評価する試験を行った。なお、本実施例において、配合、濃度等を示す数値は、固形分又は有効成分の重量基準の数値である。また、本実施例で示すパルプ・薬品等は一例にすぎないので、本願発明はこれらの実施例によって制限を受けるものではなく、適宜選択可能であることはいうまでもない。
本発明に係る22種類の板紙(これを「実施例1」ないし「実施例22」とする)と、これらの実施例1ないし実施例22と比較検討するために、6種類の板紙(これを「比較例1」ないし「比較例6」とする)を、表1に示すような構成で作製した。
Figure 2009013506
以下に、各試料の製造条件を示す。なお、特に断りのない限り、表層、中層(3層)及び裏層の各層の原料配合、濾水度、薬品添加条件などは同一とする。
[基紙の製造]
<1>表層
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)30質量%と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)30質量%及び、上質古紙パルプ40質量%とを配合した後に、離解フリーネスを380ccに調整した原料パルプに、硫酸バンド4質量%、サイズ剤(近代化学工業株式会社製R50)を0.3質量%添加して表層用の原料スラリーを生成した。なお、「離解フリーネス(cc)」は、各試料を約3cmの大きさに裁断して約25gの重さの試験片とし、この試験片を1リットルの水に24時間浸漬した後、JIS−P8220に準拠して標準離解機で15分間離解処理し、試験片が完全に離解していることを目視で確認した後、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて測定した濾水度の値である(以下、同様)。
<2>中層(1)
ケント古紙パルプ(NBKP)60質量%と上質古紙パルプ40質量%とを配合した後に、離解フリーネスを350ccに調整した原料パルプに、硫酸バンド4質量%、サイズ剤(近代化学工業株式会社製R50)を0.3質量%添加して中層(1)用の原料スラリーを生成した。
<3>中層(2)、(3)及び裏層
地券古紙パルプ100質量%を、離解フリーネス230ccに調整し、硫酸バンド4質量%、サイズ剤(R50)を0.3質量%添加して中層(2)、(3)、及び裏層用の原料スラリーを生成した。
これらの原料スラリーを用い、ウルトラフォーマー(小林製作所株式会社製)にて、表層、中層(1)、中層(2)、中層(3)及び裏層の5層の紙層を抄き合わせて、付け量を表層が30g/m、中層(1)が40g/m、中層(2)、中層(3)、裏層は後述する塗工液を塗工するため、各付け量を調整し、板紙全体の坪量を220g/mである基紙を5層抄きウルトラヤンキーフォーマー抄紙にて基紙を得た。
[塗工液の調整]
以下に塗工液の実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、例中の%は全て固形重量%を示す。
[樹脂]
<アクリル系樹脂>
(a)P501AB−1(一方社油脂工業株式会社製)、分子量:4万、Tg:−10℃
(b)P501AB−2(一方社油脂工業株式会社製)、分子量:5万、Tg:−10℃
(c)P501AB−3(一方社油脂工業株式会社製)、分子量:120万、Tg:−10℃
(d)P501AB−4(一方社油脂工業株式会社製)、分子量:400万、Tg:−10℃
(e)P501AB−15(一方社油脂工業株式会社製)、分子量:410万、Tg:−10℃

<スチレン系樹脂>
(f)ポリマロン1329(荒川化学工業株式会社製)、分子量:75万、Tg:30℃

<エポキシ樹脂>
(g)アラフィックス100(荒川化学工業株式会社製)、分子量:50万、Tg:30〜100℃

<耐油剤>
(h)インプレスFP200(株式会社理研グリーン製)、固形分:45%

[多孔質無機粒子]
(A)セノライトM−732C−1(巴工業株式会社製)、BET比表面積:9、平均粒子径:5.0μm
(B)セノライトM−732C−2(巴工業株式会社製)、BET比表面積:10、平均粒子径:5.0μm
(C)セノライトM−732C−3(巴工業株式会社製)、BET比表面積:150、平均粒子径:5.0μm
(D)セノライトM−732C−4(巴工業株式会社製)、BET比表面積:500、平均粒子径:5.0μm
(E)セノライトM−732C−5(巴工業株式会社製)、BET比表面積:510、平均粒子径:5.0μm

[バインダー]
スマーテックスPA5306(日本エーアンドエル株式会社製)、Tg:−5℃、固形分:50%

[パラフィンワックスエマルジョン(表1中では「エマルジョン」と略す)]
セレスタール40(一方社油脂工業株式会社製)、固形分:40%

上記の樹脂、多孔質無機粒子、バインダー、及びパラフィンワックスエマルジョンを表1の通りに配合し、全固形濃度65%、粘度400CPSに調整した各塗工液を得た。
[基紙への塗工液の塗工]
上述したように調整した各塗工液を、抄紙機に設置したオンマシンロッドコーターにて、上述した基紙の片面(表層の表面)に、片面あたり固形分で別表の塗工量を塗工した後、ドライヤーシリンダーの表面温度が約100℃のアフタードライヤーにて乾燥させ、その後ソフトカレンダーで別表の通り線圧を掛け、板紙(実施例1ないし実施例22、及び比較例1ないし比較例6)を得た。
これらの全実施例及び比較例について、坪量、耐油試験、吸水・吸湿試験、表面強度等を評価する試験を行った結果は、表2に示すとおりであった。なお、この評価試験はJIS−P8111に準拠して温度23℃±1℃、湿度50±2%の環境条件の下で行った。
表2中の「坪量(g/m)」とは、各試料全層、すなわち本板紙の全体の坪量で、JIS−P8142に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した値である。
「表面粗度(μm)」とは塗工層の表面の粗さを評価したものであり、株式会社ミツトヨ製小形表面粗さ測定機(サーフテストSJ−201)を用いて測定した値である。
「耐油度(キットNo.)」とは、TAPPI UM−557に準拠して測定した値である。
「吸水度(g/m)」とは、各試料(板紙)の吸水・吸湿性を評価するものであり、JIS−P8140(紙及び板紙の吸水度試験方法−コッブ法)に準じて、水との接触時間を5秒として測定した値である。なお、水を捨てるまでの時間は5秒以内とした。
「表面強度(A)」とはJIS−P8129に準拠して測定した値であり、加工適性等を評価したものである。
「罫線割れ」とは、耐折試験法のMIT試験機にて折り込みを10回くり返し折り、塗工層の折目の割れ方を相対評価したもので、その評価基準は下記の通りである。
◎:罫線割れが全く発生していない。
○:罫線割れが殆ど発生していない。
△:罫線割れが多少発生しているが、実用上、問題ない。
×:罫線割れの発生が多く、美粧印刷を施すことができない。
「印刷光沢(%)」とは、各試料(板紙)に、RI印刷試験機(明石製作所製)を用いて藍色インキをベタ印刷した後、印刷面の光沢度をJIS−P8142に準拠して測定した値である。なお、光沢度の数値が大きいほど良いことを示す。また、印刷光沢が10%以下であると印刷適性が低い。
「印刷適性」とは、熊谷理機工業株式会社製KRK万能印刷適性試験機を用いて、JIS−P8129に定めるIGT印刷適性試験機に用いる標準タックグレードインクを、基紙の表面に印刷し、印刷適性(印刷ムラ、白抜け)を相対評価したもので、その評価基準は下記の通りである。
○:良好。
△:問題なし。
×:印刷ムラまたは白抜けが多く、問題あり。
さらにまた、「離解性」とは、下記の再離解性評価(耐水紙が再生できることを規定するための離解試験方法)により評価したものである。すなわち、得られた各試料を、絶乾重量で30gをJIS−P8220に準ずる標準離解機にて10分間離解を行い、得られたパルプスラリーを用いて手抄きシートを作成した。この得られた手抄きシートでパルプの未離解がないか確認し次のように評価した。
○:未離解耐水シートは全く見られない。
△:未離解耐水シートは殆どみられない。
×:未離解耐水シートが散在する。
Figure 2009013506
本発明に係る吸湿・耐油板紙、すなわち実施例1〜実施例22に係る吸湿・耐油板紙は品質評価に優れる、すなわち吸湿・耐油性を有し、さらに、印刷適性、リサイクル性に優れ、罫線割れの発生もなく、低コストで製造できることが分かる。

Claims (3)

  1. 基紙が少なくとも表層及び裏層の2層以上の紙層からなる板紙において、
    前記表層の表面及び/又は前記裏層の表面に、少なくともアクリル系樹脂と多孔質無機粒子とを含有する塗工液を、片面あたり固形分で2〜40g/m塗布することにより塗工層を設けたことを特徴とする吸湿・耐油板紙。
  2. 前記アクリル系樹脂は、塗工液中に固形分で30〜96重量%含有され、
    前記多孔質無機粒子は、BET比表面積が10〜500m/gであり、また塗工液中に固形分で2〜50重量%含有されていることを特徴とする請求項1に記載の吸湿・耐油板紙。
  3. 前記塗工層の表面のTAPPI UM−557に準じて測定した耐油度が5〜12であり、またJIS−P8140に準じ水との接触時間を5秒として測定した吸水度が15〜45g/mであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸湿・耐油板紙。
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