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JP2007308047A - 制動機構 - Google Patents

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Abstract

【課題】 設計上の制動力が確実に得られるようにして品質及び信頼性を向上する。
【解決手段】 移動体2を固定体2に対して第1の位置と第2の位置とに切り換えるときに該移動体2の移動速度を第1の制動部材3及び第2の制動部材4により制動する制動機構において、移動体2が前記第1の位置から第2の位置の途中まで移動する間は第1の制動部材3のみが作用し、その後、第2の位置までは第1の制動部材3及び第2の制動部材4の両方が作用するとともに、第1の制動部材3及び第2の制動部材4の各出力部分が固定体又は移動体等に設けられる対応する被係合部15,16と常に係合していることを特徴している。
【選択図】 図6

Description

本発明は、固定体に対し移動体を第1の位置と第2の位置とに切り換えるとき該移動体の移動速度を制動する制動機構に関するものである。
図12は特許文献1に開示の制動機構を示している。この制動機構では、移動体である蓋体84を固定体である本体81に対して図12(a)の実線で示される第1の位置(閉位置)と、図12(b)の実線で示される第2の位置(開位置)とに切り換えるときに、蓋体84の移動速度を第1の制動部材(制動ギア)86及び第2の制動部材(制動ギア)88により制動するものである。符号80は蓋体84を開放方向へ付勢する付勢部材である。この要部は、蓋体84を開放させるとき、蓋体84の開放開始から所定角度までの間は蓋体側に設けられているセクタギヤ82が第1の制動部材86だけと係合するようにし、所定角度から開放完了までの間はセクタギヤ82が第1の制動部材86及び第2の制動部材88の両方と係合するよう設定される。それにより、この制動機構は、所定角度から開放完了までの間は、開放開始から所定角度までと比較して蓋体84の開放速度を遅くすることができる。
特開2002−178818号公報(図10と図11)
上記した制動機構では、蓋体84の開放開始から途中の所定角まで弱い制動力が作用し、所定角から開放完了まで強い制動力が作用するというように、蓋体の開放速度を途中で変えることができる。ところが、この制動機構にあっては、伝達部材であるセクタギヤ82が第1の制動部材86とは常に係合しているが、第2の制動部材88とは蓋体の開放途中で係合(歯同志の噛み合い)する構成であるため、例えば、蓋体84を比較的速く開放するように設定すると、セクタギヤ82が第2の制動部材88とスムースに係合できず作動不良が発生し易くなる。そのような作動不良は適用する装置自体の信頼性を損なうこととなる。そこで、本発明の目的は、以上のような課題を解消して、設計上の制動力が確実に得られるようにして品質及び信頼性を向上することにある。
上記目的を達成するため本発明は、移動体を固定体に対して第1の位置と第2の位置とに切り換えるときに該移動体の移動速度を第1の制動部材及び第2の制動部材により制動する制動機構において、前記移動体が前記第1の位置から第2の位置の途中まで移動する間は前記第1の制動部材のみが作用し、その後、前記第2の位置までは前記第1の制動部材及び第2の制動部材の両方が作用するとともに、前記第1の制動部材及び第2の制動部材の各出力部分が前記固定体又は移動体等に設けられる対応する被係合部と常に係合していることを特徴としている。
以上の制動機構は次のように具体化されることがより好ましい。
(ア)図1〜図9の駆動機構の場合は、前記固定体が出入口用開口を有する収納体であり、前記移動体が前記収納体の開口を開閉可能に取り付けられている回動式の蓋体であること(請求項2)、前記蓋体と前記第2の制動部材との間に設けられて、前記第1の位置から第2の位置へ向かう前記蓋体の移動途中で該蓋体の対応部と係合して蓋体と一緒に動く伝達部材を有し、前記第2の制動部材が前記伝達部材に設けられた被係合部と係合していること(請求項3)である。
(イ)図10と図11の駆動機構の場合は、前記固定体が出入口用開口を有する収納体であり、前記移動体が前記収納体に前記開口から出し入れされる摺動式の引出体であること(請求項4)、前記第1の位置から第2の位置へ向かう前記引出体の移動途中で該引出体の対応部と係合して引出体と一緒に動く保持部材、及び該保持部材を初期位置方向へ付勢している付勢部材を有し、前記第2の制動部材が前記保持部材に保持されていること(請求項5)である。
(ウ)前記第1と第2の制動部材は、ロータリー式ダンパー用ケース内から突出している制動軸に装着された回転ギアであり、前記被係合部であるギア部に係合することで制動力を伝達すること(請求項6)である。なお、この制動機構では、請求項1の「出力部分」が回転ギアの歯に相当し、請求項1の「被係合部」がギア部の歯に相当している。
請求項1の発明では、第1形態及び第2形態から分かるように、移動体が第1の位置から第2の位置の途中まで移動する間は第1の制動部材のみが作用し、途中から第2の位置までは第1の制動部材及び第2の制動部材の両方が作用する点で特許文献1と同様であるが、第1の制動部材及び第2の制動部材の各出力部分(回転ギア)が固定体又は移動体等に設けられる被係合部(ラック)と常に係合していることから、上記従来例のような噛み合い不良の発生を確実に解消できる。これにより、本発明の制動機構は、適用されるボックス構造や引出構造等の信頼性を向上できる。
請求項2と3の発明は第1形態に基づいて特定したものである。まず、請求項2の発明は、上記した作動が蓋体を収納体に対し開閉するような形態に好適である点を明らかにしたものである。その上で、請求項3の発明は、蓋体と第2の制動部材との間に伝達部材を介在し、第2の制動部材がその伝達部材に設けられた被係合部と係合することにより、例えば、第2の制動部材に対する蓋体側の形状を簡素化できる。
請求項4と5の発明は第2形態に基づいて特定したものである。まず、請求項4の発明は、上記した作動が引出体を収納体に対し出し入れするような形態にも好適である点を明らかにしたものである。その上で、請求項5の発明は、第1の位置から第2の位置へ向かう引出体の移動途中で該引出体の対応部と係合して引出体と一緒に動く保持部材、及び該保持部材を初期位置方向へ付勢している付勢部材を有し、第2の制動部材が保持部材に保持されることにより、例えば、第2の制動部材に対する引出体側の形状を簡素化できる。
請求項3の発明では、例えば、各制動部材がロータリー式ダンパーの回転ギアで構成され、ラックとの噛み合いで制動力を伝達するため、摩擦伝達方式などと比べて常に安定した制動が期待できる。
本発明の最良な形態として図1〜図9に示した第1形態と、図10及び図11に示した第2形態について詳述する。
(第1形態)図1〜図9において、第1形態の制動機構は、固定体が上開口した収納体1、移動体が収納体1の上開口を開閉する蓋体2としたボックス構造に適用した場合で、蓋体2を第1の位置である閉位置と第2の位置である開位置とに切り換えるときに該蓋体2の移動速度を第1の制動部材としての回転ギア3と第2の制動部材としての回転ギア4により制動する構成例である。要部は、蓋体2が閉位置から開位置の途中まで移動する間は回転ギア3のみが作用し、その後、途中から最終の開位置までは回転ギア3及び回転ギア4の両方が作用するようになっているとともに、回転ギア3及び回転ギア4の各出力部分である歯が固定体又は移動体等に設けられる対応する被係合部、つまり後述する固定ギア部15とセンターギア16とに常に係合している構成にある。細部は以下の通りである。
収納体1は、図1〜図4に示されるように、両外ケース半体10,11が組み付けられるとともに、両外ケース半体10,11の内側に不図示の内ケースが内設される。外ケース半体10の左右側部又は前後側部10a,10bには、軸穴14が同軸線上に設けられ、蓋体2が両軸穴14に対しアーム12の両側の軸孔12c,12cに挿通される軸部材13,13等を嵌合した状態で回動枢支されている。側壁10aには、回転ギア3と常に係合する被係合部としての固定ギア部15と、ダンパー31用の凹状取付部17とが設けられている。固定ギア部15は、穴部14を中心とした円弧状リブの外周に連続して形成された外歯形のギアである。また、側壁10bには、ラッチ装置40が枠部材19及びねじS1などを介して取り付けられている。
蓋体2は、上蓋20に対し下蓋21をねじS2などを介して取り付けるとともに、上下蓋20,21の間にアーム12を挟持した状態で該アーム12を一体化している。アーム12は、上下蓋20,21に挟持される中間部12aと、中間部12aの両側から下向きに折り曲げられた部分12b,12bと、各部分12bから更に折り曲げられている延長部12dとからなる。各延長部12dには前記軸孔12cが同軸線上に設けられている。また、各延長部12dのうち、側面10aと対応する延長部12dには、他方の延長部12dより長く設定されて、軸孔12cの少し下側に設けられて内側に突出している片部12e、及び端末側に設けられているロータリー式ダンパー30用取付孔12fとが設けられている。片部12eは、延長部12dの対応部をコ形に切り欠くとともに、コ形の切欠部分を内側へ折り曲げた構成である。これに対し、側面10bと対応する延長部12dは、図2のごとく比較的長く形成した先端爪部22a付きの係合片22がねじS3により取り付けられている。なお、この係合片22は、図4に模式的に示したように、延長部12d(この部分に設けられるねじ用孔は省略している)を短く形成し、その分だけ全寸が長く形成されることもある。
以上の蓋体2は、外ケース半体側部10a,10bの両軸穴14,14に対し各軸部材13を介して枢支される。この場合、側壁10aの軸穴14には、軸部材13がアーム12の対応軸孔12cと、セクターギア16の軸孔16bとに挿通された状態で装着されている。側壁10bの軸穴14には、軸部材13が巻バネ32の巻線部32aと、アーム12の対応軸孔12cとに挿通された状態で装着されている。なお、この例では、各軸部材13は、概略筒形であり、ねじS4が筒内から穴部14の底面側に係止されることで側面10a,10bに固定される。
また、アーム側取付孔12fにはダンパー30がねじや接合等により予め装着される。このダンパー30は、ダンパー31と同じロータリー式のオイルダンパー等からなる。すなわち、ダンパー30やダンパー31は、ケース内から突出されて作動油の抵抗を受けている突出軸部に装着された回転ギア3や4を有している。回転ギア3の歯や回転ギア4の歯は各ダンパーの出力部分となる。そして、蓋部2の取付状態において、回転ギア3は固定ギア部15の歯と噛み合っており、回転ギア4は後述するセクターギア16のギア部16aと噛み合っている。
すなわち、セクターギア16は、略扇形の外周にギア部16aを連続して形成しているとともに、ギア部16aと反対の一端側に形成した軸孔16bと、片側外面にあって上下部に設けられている突起16c,16dとを有している。そして、セクターギア16は、蓋体2が軸部材13を支点として閉位置から開方向へ回動される途中でアーム部分12dの対応側の側端面が突起16cに当たって蓋体2と連動して同方向へ回動され、また、蓋体2が軸部材13を支点として開位置から閉方向へ回動される途中でアーム部分12dの片部12eが突起16dに当たって蓋体2と連動して同方向へ回動される。
一方、上記した巻バネ32は、蓋体2を閉位置から開方向へ自動的に回動可能にする付勢手段であり、巻線部32aの一端側がアーム部分12dの対応部に係止され、他端側が軸部材13の対応部に係止されている。なお、本発明の制動機構は、巻バネ32などの付勢手段を必須としていないが、蓋体2が付勢力により開方向へ回動されるタイプだと、その付勢力を弱めるよう作用することになる。
また、側壁10bに対し枠部材19及びねじS1を介して保持されるラッチ装置40は、図3に示されるように、蓋体2が巻ばね32の付勢力に抗して開位置から閉位置へ切り換えたときに係止し、更に蓋体2を同方向へ押して手を離すと係止解除するプッシュ・プッシュ係止機構である。装置構造は、一端側を開口したハウジング41と、係合片22の先端爪部22aと当接する突当部42及びカム溝43を有し、ハウジング41内に配置されてばね部材45の付勢力に抗して移動される摺動体44と、トレースピン46と、衝撃吸収用応動体47と、先端側の爪48a及び基端側の凸部48bを有し、摺動体44に回転可能に枢支されている係止爪48とを備えている。このうち、係止爪48は、摺動体44の対応部に対し軸部を嵌合した状態で枢支されて、摺動体44の移動により、摺動体内にほぼ退避した係止解除位置と、同図のごとく摺動体内から爪48aを突出して先端爪部22aを押さえる係止状態とに切り換えられる。係止解除状態では、摺動体44がばね部材45の付勢力でハウジング41の入口側に移動されるとともに、係合爪48がハウジング内に設けられた不図示のリブに凸部48bを乗り上げることでその状態を保つ。係止位置では、摺動体44が係合片22の押し力によりばね部材45の付勢力に抗してハウジング内側に移動され、該移動後の位置でカム溝43及びトレースピン46の係合を介し維持されると共に、係止爪48が凸部48bを前記したリブの張出部から低くなった部分に移動し、かつ傾動して爪48aを摺動体内から突出する。
(作動)以上の制動機構を蓋体の切り換え操作と共に図5〜図9も参照しながら述べる。
(ア)図1〜図3は、蓋体2が収納体1の上開口を完全に閉じた閉位置の状態である。この閉位置では、回転ギア3が固定ギア部15の歯と係合(噛み合っていること)し、回転ギア4がセクターギア16のギア部16aの歯と係合(噛み合っていること)した状態で、蓋体2がラッチ装置40により巻きバネ32の付勢力に抗して係止されている。そして、蓋体2を開位置に切り換えるときは、蓋体2の前側を下側(これは蓋体2の閉位置から蓋体2を更に同方向、つまり閉方向への押し操作となる)に押して離す。すると、蓋体2は、上述したように係合片22がラッチ装置40から係止解除された後、軸部材13を支点として巻きバネ32の付勢力により開方向へ回動される。
(イ)図5は蓋体2が開方向へ移動し始めた初期段階を示し、図6は蓋体2が更に途中まで移動されてアーム部分12dの上側の側端面がセクターギア16の突起16cに下側より当たった直前の状態を示している。この制動機構では、蓋体2が軸部材13を支点として閉位置から開方向の途中、つまり図6の角度までの間は回転ギア3により制動されるが、回転ギア4によって制動されない。これは、回転ギア3が固定ギア部15との係合を保った状態で蓋体2の回動とアーム2を介して連動して移動するが、回転ギア4がセクターギア16との係合を保っているものの、セクターギア16が蓋体2の回動と非連携となっていて動かないためである。
(ウ)図7は蓋体2が図6の途中開放状態から更に回動されて開位置に切り換えられた状態を示している。この制動機構では、蓋体2が軸部材13を支点として図6の途中開放状態から最終の開位置に達する間は回転ギア3及び回転ギア4の両方により制動されて緩やかに回動される。つまり、この構成では、回転ギア3が前述と同じく固定ギア部15との噛み合い係合を保ち、かつ蓋体2の回動とアーム2を介して連動して移動されるためであり、また、回転ギア4がセクターギア16のギア部16aとの噛み合い係合を保ち、かつセクターギア16がアーム部分12dの上側端面を突起16cに係合した状態で蓋体2の回動と連動して回動されるためである。
(エ)図8は蓋体2が巻きバネ32の付勢力に抗して図6の開位置から閉方向へ少し回動された状態を示し、図9は図7の途中状態から更に閉方向へ回動されて、アーム部分12dに設けられている片部12eがセクターギア16の突起16dに当たった直前の状態を示している。この制動機構では、蓋体2が軸部材13を支点として開位置から閉方向の途中、つまり図9の角度までの間は回転ギア3により制動されるが、回転ギア4によって制動されない。これは、回転ギア3が固定ギア部15との係合を保った状態で蓋体2の回動とアーム2を介して連動して移動するが、回転ギア4がセクターギア16との係合を保っているものの、セクターギア16が蓋体2の回動と非連携となっていて動かないためである。
(オ)しかし、この制動機構では、蓋体2が図9の途中状態から更に回動されて図1の閉位置に切り換えられる間は回転ギア3及び回転ギア4の両方により制動されて緩やかに回動される。つまり、この場合は、回転ギア3が固定ギア部15との噛み合い係合を保ち、かつ蓋体2の回動とアーム2を介して連動して移動されるためであり、また、回転ギア4がセクターギア16のギア部16aとの噛み合い係合を保ち、かつセクターギア16がアーム部分12dの片部12eが突起16dに係合した状態で蓋体2の回動と連動して回動されるためである。
以上のように、この制動機構においては、図12の構成に比べて、特に回転ギア3及び回転ギア4の各出力部分である歯が被係合部である固定ギア部15の歯、セクターギア16のギア部16aと常に係合していることから、従来のような噛み合い不良の発生を確実に解消でき、それによって適用される開閉構造又は装置等の信頼性を向上できる。また、蓋体2と回転ギア4との間に伝達部材としてセクターギア16を介在し、回転ギア4がセクターギア16のギア部16aと係合するようにしたため簡素化できる。
(第2形態)図10及び図11において、第2形態の制動機構は、固定体が前開口した収納体5、移動体が収納体5の前開口から出し入れされる引出体6とした引出構造に適用した場合で、引出体6を第1の位置である押入位置と第2の位置である引出位置とに切り換えるときに該引出体6の移動速度を第1の制動部材としての回転ギア3と第2の制動部材としての回転ギア4により制動する構成例である。要部は、引出体6が押入位置から引出位置の途中まで移動する間は回転ギア3のみが作用し、その後、途中から最終の引出位置までは回転ギア3及び回転ギア4の両方が作用するようになっているとともに、回転ギア3及び回転ギア4の各出力部分である歯が固定体又は移動体等に設けられる対応する被係合部、つまり後述するラック部53とラック部54とに常に係合している構成にある。細部は以下の通りである。なお、回転ギア3と4は、上記第1形態と同様にロータリー式ダンパー30、31を構成しており、ダンパー用ケース内から突出されて作動油の抵抗を受けている突出軸部に装着されている。
収納体5及び引出体6は作図上一部を省略したり簡略化している。収納体5は、内側空間が上下壁50a,50b、左右側壁50c、背面壁50dにより区画されるとともに、前側及び上壁50aの後側部分を開口している。両側壁50cは、内面に対向して設けられている前後方向に延びるガイド部51を有している。下壁50bは、内面にあって、左右略中間に設けられて前後方向へ延びているガイド部52と、ガイド部52に沿って設けられているラック部53と、前側に設けられてラック部53と所定間隔を保ち、かつラック部53より短いラック部54と、ラック部54と所定間隔を保ち、かつラック部54と平行に設けられているガイド溝55と、ガイド溝55の前側に立設されている凸部56a付きの立壁56とを有している。
ガイド溝55には保持部材57が摺動自在に嵌合される。この保持部材57は、ダンパー31を取り付ける支持部57aと、支持部57aの下面前後方向に設けられてガイド溝55に嵌合する係合部57bと、前側に立設されて立壁56と対向する立壁57cと、立壁57cに突設された凸部57dとを有している。そして、保持部材57は、支持部57aに対しダンパー31を取り付けた状態で、係合部57bをガイド溝55に嵌合することにより、ダンパー31の回転ギア4がラック部54の歯と噛み合って係合し、該係合を保ってガイド溝55に沿って前後摺動自在に組み付けられる。また、保持部材57は、立壁56の凸部56aと立壁57cの凸部57dとの間に配置されるコイルスプリング58によりガイド溝55の後方側へ付勢移動されている。このため、保持部材57は、図10(c)のごとくコイルスプリング58の付勢力に抗して前方へ摺動されることになる。
これに対し、引出体6は、引出式のカップホルダー等を想定したもので、ガイド部51,52に嵌合する溝部61,62と、図10に示されているラック部53の歯と係合するダンパー30の回転ギア3と、引出体6の引出過程で保持部材57の立壁57cに係合ないしは当たる突起63と、コンストンバネ64等を有している。コンストンバネ64は、本体が引出体6の上後側に取り付けられて、該本体から引き出される板バネの引き出し端を収納体5の対応部に係止した状態で、引出体6を収納体5に対し常に引出方向へ付勢移動している。このため、引出体6は、コンストンバネ64の付勢力に抗して収納体5に押し込められて押入位置で、不図示のラッチ装置を介して係止される。なお、このラッチ装置は、上記したラッチ装置40と同様に引出体6がコンストンバネ64の付勢力に抗して引出位置から押入位置へ切り換えたときに係止し、更に引出体6を同方向へ押して手を離すと係止解除するプッシュ・プッシュ係止機構からなっている。
(作動)以上の制動機構を引出体の切り換え操作と共に述べる。
(ア)図10(a)は、引出体6が収納体5に押し込められた押入位置の状態である。この押入位置では、回転ギア3がラック部53の歯と係合(噛み合っていること)し、回転ギア4がラック部54dの歯と係合(噛み合っていること)した状態であり、引出体6が不図示のラッチ装置によりコンストンバネ64の付勢力に抗して係止されている。そして、引出体6を引き出すときは、引出体62の前面を後方に押して離す。すると、引出体6は、第1形態と同様にラッチ装置が係止解除状態になるためコンストンバネ64の付勢力により引出方向へ移動開始される。
(イ)図10(b)は引出体6が引出途中まで移動されて、突起63が保持部材57の立壁57cに当たった直前の状態を示している。この制動機構では、引出体6が同図の引出途中までの間は回転ギア3により制動されるが、回転ギア4によって制動されない。これは、回転ギア3がラック部53との係合を保った状態で引出体6と連動して前移動するが、回転ギア4がラック部54との係合を保っているものの、保持部材57が引出体6の前移動と非連携となっていて動かないためである。
(ウ)図10(c)は引出体6が図10(b)の引出途中から更に前進されて引出位置に切り換えられた状態を示している。この制動機構では、引出体6が図10(b)の引出途中から最終の引出位置に達する間は回転ギア3及び回転ギア4の両方により制動されて緩やかに移動される。この構成では、回転ギア3が前述と同じくラック部53との噛み合い係合を保ち、かつ引出体6の移動と連動して移動されるためであり、また、回転ギア4がラック部54との噛み合い係合を保ち、かつ保持部材57が立壁57cに係合する引出体側突起63により該引出体6と連動して移動されるためである。
(エ)引出体6を再び引出位置から押入位置へ切り換える場合は、引出体6がコンストンバネ64の付勢力に抗して押し込め操作される。この制動機構では、引出体6が押入方向の途中、つまり図10(b)の位置に達するまでの間は回転ギア3及び回転ギア4の両方により制動されて緩やかに移動される。つまり、この場合は、回転ギア3がラック部53との噛み合い係合を保ち、かつ引出体6に連動して移動されるためであり、また、回転ギア4がラック部54との噛み合い係合を保ち、かつ保持部材57がコイルスプリング58の付勢力により引出体6の移動と連動して初期位置(ガイド溝55の後側)まで移動されるためである。
(オ)また、この制動機構では、引出体6が図10(b)の途中状態から更に押し込め操作されて図10(a)の押入位置に切り換えられる間は回転ギア3により制動されるが、回転ギア4によって制動されない。これは、回転ギア3がラック部53との係合を保った状態で引出体6と連動して移動するが、回転ギア4がラック部54との係合を保っているものの、保持部材57が引出体6と非連携となっていて動かないためである。
以上のように、この制動機構においても、特に回転ギア3及び回転ギア4の各出力部分である歯が被係合部であるラック部53のラック歯、ラック部54のラック歯と常に係合していることから、従来のような噛み合い不良の発生を確実に解消でき、それによって適用される引出構造又は装置等の信頼性を向上できる。また、引出体6と回転ギア4との間に伝達部材として保持部材57を介在し、回転ギア4が収納体側のラック部54のラック歯と係合するようにしたため簡素化できる。
なお、本発明は、請求項1で特定される構成を備えておればよく、細部は上記した各形態例のように必要に応じて種々変更可能なものである。
第1形態の制動機構を蓋体の閉位置で示す側面図である。 図1と同じ蓋体の閉位置で図1と反対側の側面を示す側面図である。 図2のラッチ装置を示す断面図である。 第1形態の全体構成を示す概略分解図である。 上記蓋体が図1の閉位置から開方向へ移動し始めた初期時での側面図である。 上記蓋体が開方向へ途中まで移動されて両制動部材が共に作用する直前での側面図である。 上記蓋体が開位置に達した状態での側面図である。 上記蓋体が図4の開位置から閉方向へ移動し始めた初期時での側面図である。 上記蓋体が閉方向へ途中まで移動されて両制動部材が共に作用する直前での側面図である。 (a)〜(c)は第2形態の制動機構を引出体の押入状態、引出途中の状態、引出状態で示す模式図である。 第2形態の全体構成を示す概略分解図である。 (a)と(b)は特許文献1の制動機構を示す説明図である。
符号の説明
1…収納体(固定体に相当し、10a,10bは側部、14は軸穴)
2…蓋体(移動体に相当し、12はアーム、13は軸部材)
3…回転ギア(第1の制動部材に相当し、30はダンパー)
4…回転ギア(第2の制動部材に相当し、31はダンパー)
5…収納体(固定体に相当し、55はガイド溝、56は立壁)
6…引出体(移動体に相当し、63は突起)
15…固定ギア部(被係合部に相当する)
16…セクターギア(伝達部材に相当し、16aはギア部、16c,16dは突起)
57…保持部材(伝達部材に相当し、57aは支持部、57bは係合部)
53,54…ラック部(被係合部に相当する)

Claims (6)

  1. 移動体を固定体に対して第1の位置と第2の位置とに切り換えるときに該移動体の移動速度を第1の制動部材及び第2の制動部材により制動する制動機構において、
    前記移動体が前記第1の位置から第2の位置の途中まで移動する間は前記第1の制動部材のみが作用し、その後、前記第2の位置までは前記第1の制動部材及び第2の制動部材の両方が作用するとともに、
    前記第1の制動部材及び第2の制動部材の各出力部分が前記固定体又は移動体等に設けられる対応する被係合部と常に係合していることを特徴とする制動機構。
  2. 前記固定体が出入口用開口を有する収納体であり、前記移動体が前記収納体の開口を開閉可能に取り付けられている回動式の蓋体であることを特徴とする請求項1に記載の制動機構。
  3. 前記蓋体と前記第2の制動部材との間に設けられて、前記第1の位置から第2の位置へ向かう前記蓋体の移動途中で該蓋体の対応部と係合して蓋体と一緒に動く伝達部材を有し、前記第2の制動部材が前記伝達部材に設けられた被係合部と係合していることを特徴とする請求項2に記載の制動機構。
  4. 前記固定体が出入口用開口を有する収納体であり、前記移動体が前記収納体に前記開口から出し入れされる摺動式の引出体であることを特徴とする請求項1に記載の制動機構。
  5. 前記第1の位置から第2の位置へ向かう前記引出体の移動途中で該引出体の対応部と係合して引出体と一緒に動く保持部材、及び該保持部材を初期位置方向へ付勢している付勢部材を有し、前記第2の制動部材が前記保持部材に保持されていることを特徴とする請求項4に記載の制動機構。
  6. 前記第1と第2の制動部材は、ロータリー式ダンパー用ケース内から突出している制動軸に装着された回転ギアであり、前記被係合部であるギア部に係合することで制動力を伝達することを特徴とする請求項1に記載の制動機構。

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