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JP2007238451A - 医薬組成物及びその製造方法 - Google Patents

医薬組成物及びその製造方法 Download PDF

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JP2007238451A JP2006058661A JP2006058661A JP2007238451A JP 2007238451 A JP2007238451 A JP 2007238451A JP 2006058661 A JP2006058661 A JP 2006058661A JP 2006058661 A JP2006058661 A JP 2006058661A JP 2007238451 A JP2007238451 A JP 2007238451A
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Abstract

【課題】酒石酸ゾルピデムを含有するにもかかわらず、苦味等の不快な味が低減された、口腔内崩壊錠にも適用可能な医薬組成物、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】酒石酸ゾルピデムと塩基性物質とを含有してなり、かつ、前記酒石酸ゾルピデムと前記塩基性物質とを水を含有する溶媒の存在下で練合して得られることを特徴とする医薬組成物、及び、酒石酸ゾルピデムと塩基性物質とを、水を含有する溶媒の存在下で練合することを特徴とする医薬組成物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、酒石酸ゾルピデムを含有する医薬組成物及びその製造方法に関する。
酒石酸ゾルピデムは苦味等を有する物質であることが知られている。このため、酒石酸ゾルピデムを含有する経口投与用の医薬組成物は、苦味等の不快な味を有するために服用しづらく、特に、口腔内で速やかに溶ける口腔内崩壊錠への適用は困難であるという問題があった。
医薬組成物の苦味低減を目的とした技術としては、例えば、苦味を有する酸性の薬物、メントール、及びアルカリ性物質を含有する経口用固形製剤(特許文献1参照);塩基性薬物の酸付加塩を含有する核が、薬理学的に許容される弱アルカリ性化合物にて覆われてなる、苦味の改善された経口剤(特許文献2参照);pKa4〜11のエステル型プロドラッグタイプの塩基性β−ラクタム系抗生物質の酸付加塩に、薬理学的に許容される弱アルカリ性化合物が配合されてなる、苦味の改善された経口用医薬組成物(特許文献3参照);苦味のある薬剤、アルカリ土類酸化物及びアルカリ土類水酸化物からなる群から選択された塩基性化合物、並びに、薬剤学的に許容されるキャリアからなる、苦味の減少した薬剤組成物(特許文献4参照);などが、これまでに提案されている。
しかしながら、これらの技術はいずれも、酒石酸ゾルピデムを含有する医薬組成物を対象としたものではなく、酒石酸ゾルピデムを含有する医薬組成物に適用した際には、十分な苦味低減効果が得られない場合や、また、口腔内崩壊錠としての製造が困難である場合などがあった。
したがって、酒石酸ゾルピデムを含有するにもかかわらず、苦味等の不快な味が低減された、口腔内崩壊錠にも適用可能な医薬組成物の開発は、未だなされていないのが現状である。
特開平2−76826号公報 特開平4−327529号公報 特開平4−327531号公報 特開平6−206824号公報
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、酒石酸ゾルピデムを含有するにもかかわらず、苦味等の不快な味が低減された、口腔内崩壊錠にも適用可能な医薬組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
<1> 酒石酸ゾルピデムと塩基性物質とを含有してなり、かつ、前記酒石酸ゾルピデムと前記塩基性物質とを水を含有する溶媒の存在下で練合して得られることを特徴とする医薬組成物である。
前記<1>に記載の医薬組成物は、酒石酸ゾルピデムを含有するにもかかわらず、苦味等の不快な味が低減されたものである。これは、酒石酸ゾルピデムと塩基性物質とが水の存在下で接触することによって、酒石酸ゾルピデムが解離し、酒石酸ゾルピデムよりも溶解度の低い、フリー体として存在するようになるためと推測される。
<2> 塩基性物質が、無機塩基性物質である前記<1>に記載の医薬組成物である。
<3> 塩基性物質が、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属ケイ酸塩、複合ケイ酸−アルミニウム化合物、複合アルミニウム−マグネシウム化合物、及び、無機アンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種である前記<1>から<2>のいずれかに記載の医薬組成物である。
<4> 酒石酸ゾルピデムに対する塩基性物質のモル比(塩基性物質/酒石酸ゾルピデム)が、0.3〜8である前記<1>から<3>のいずれかに記載の医薬組成物である。
<5> 更に、酸化鉄を含有してなる前記<1>から<4>のいずれかに記載の医薬組成物である。
前記<5>に記載の医薬組成物は、苦味等の不快な味が低減されただけでなく、更に酸化鉄が含有されることによって、光安定性も向上されたものである。
<6> 酸化鉄が、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、及び、黒酸化鉄からなる群より選択される少なくとも1種である前記<1>から<5>のいずれかに記載の医薬組成物である。
<7> 散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、ドライシロップ剤、液剤、及び、シロップ剤からなる群より選択される前記<1>から<6>のいずれかに記載の医薬組成物である。
<8> 口腔内崩壊錠である前記<1>から<7>のいずれかに記載の医薬組成物である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法であって、酒石酸ゾルピデムと塩基性物質とを、水を含有する溶媒の存在下で練合することを特徴とする医薬組成物の製造方法である。
<10> 酒石酸ゾルピデムと塩基性物質とを、水を含有する溶媒の存在下で練合して練合物を得る練合工程、及び、前記練合物から前記水を含有する溶媒を除去する乾燥工程を含む前記<9>に記載の医薬組成物の製造方法である。
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決することができ、酒石酸ゾルピデムを含有するにもかかわらず、苦味等の不快な味が低減された、口腔内崩壊錠にも適用可能な医薬組成物、及びその製造方法を提供することができる。
(医薬組成物)
本発明の医薬組成物は、酒石酸ゾルピデムと塩基性物質とを含有し、好ましくは更に、酸化鉄などの着色剤を含有し、必要に応じて更に、その他の成分を含有する。
<酒石酸ゾルピデム>
前記酒石酸ゾルピデム((+)−N,N,6−Trimethyl−2−p−tolylimidazo[1,2−a]pyridine−3−acetamide hemi L−tartrate、C1921O・1/2C、分子量382.43)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、TEVA API JAPANから入手することができる。
前記酒石酸ゾルピデムの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記医薬組成物中、0.25〜50質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。前記酒石酸ゾルピデムの含有量が、0.25質量%未満であると、1回の服用量が多くなることがあり、50質量%を超えると、薬物(酒石酸ゾルピデム)が均一に配合された製剤を得られないことがある。一方、前記酒石酸ゾルピデムの含有量が、前記特に好ましい範囲内であると、1回の服用量が小児や老人でも服用しやすく、組成物中における薬物の均一性に優れる点で、有利である。
<塩基性物質>
前記塩基性物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機塩基性物質、有機塩基性物質、塩基性アミノ酸などが挙げられる。
−無機塩基性物質−
前記無機塩基性物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属炭酸水素塩、金属リン酸塩、金属リン酸水素塩、金属ケイ酸塩、複合ケイ酸−アルミニウム化合物、複合アルミニウム−マグネシウム化合物、無機アンモニウム塩、これらの混合物などが挙げられる。
前記金属酸化物としては、例えば、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化アルミニウムなどが挙げられ、これらの中でも、好ましくは、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウムなどが挙げられる。
前記金属水酸化物としては、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、水酸化アルミニウムなどが挙げられ、これらの中でも、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム・共沈物、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈物などが挙げられる。
前記金属炭酸塩としては、例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩などが挙げられ、これらの中でも、好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
前記金属炭酸水素塩としては、例えば、アルカリ金属炭酸水素塩などが挙げられ、中でも、好ましくは、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。
前記金属リン酸塩としては、例えば、リン酸三アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩、二リン酸アルカリ金属塩、二リン酸アルカリ土類金属塩、ポリリン酸アルカリ金属塩などが挙げられ、これらの中でも、好ましくは、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三カルシウム、リン酸三マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウムなどが挙げられる。
前記金属リン酸水素塩としては、例えば、リン酸一水素アルカリ金属塩、などが挙げられ、中でも、好ましくは、リン酸一水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、などが挙げられる。
前記金属ケイ酸塩としては、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属ケイ酸塩、合成ケイ酸アルミニウムなどが挙げられ、これらの中でも、好ましくは、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸マグネシウムナトリウム、タルクなどが挙げられる。
前記複合ケイ酸−アルミニウム化合物としては、例えば、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。
前記複合アルミニウム−マグネシウム化合物としては、例えば、合成ヒドロタルサイトなどが挙げられる。
前記無機アンモニウム塩としては、例えば、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸一水素アンモニウムなどが挙げられる。
−有機塩基性物質−
前記有機塩基性物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機酸の金属塩、有機アミン類などが挙げられる。
前記有機酸の金属塩としては、例えば、クエン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸等の有機酸の金属塩などが挙げられる。また、前記金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。これらの中でも、前記有機酸の金属塩としては、クエン酸三ナトリウム、酒石酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、リンゴ酸ナトリウムなどが好ましい。
前記有機アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、メグルミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、POEアルキルアミンなどが挙げられる。
−塩基性アミノ酸−
塩基性アミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リジン、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、プロリン、オキシプロリン、オルニチン、ヒドロキシリジン、これらの誘導体などが挙げられる。
前記塩基性物質としては、前記無機塩基性物質が好ましく、中でも、前記金属酸化物、前記金属水酸化物、前記金属炭酸塩、前記金属ケイ酸塩、前記複合ケイ酸−アルミニウム化合物、前記複合アルミニウム−マグネシウム化合物、及び、前記無機アンモニウム塩が、優れた苦味低減効果が得られる点で、特に好ましい。
また、前記塩基性物質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記塩基性物質の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記医薬組成物中、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、0.1〜3質量%が特に好ましい。前記塩基性物質の含有量が、0.01質量%未満であると、苦味マスキング作用が得られないことがあり、10質量%を超えると、薬物等の安定性に影響を与えることがある。一方、前記塩基性物質の含有量が、前記特に好ましい範囲内であると、薬物の苦味低減効果及び薬物の安定性の点で、有利である。
<モル比>
前記酒石酸ゾルピデムに対する前記塩基性物質のモル比(塩基性物質/酒石酸ゾルピデム)は、0.3〜8が好ましく、0.5〜4がより好ましく、0.5〜2が特に好ましい。前記モル比が、0.3未満であると、所望の程度の苦味低減効果が得られないことがあり、8を超えると、薬物の安定性や、その他の添加物に影響を与えることがある。一方、前記モル比が、前記特に好ましい範囲内であると、より優れた苦味低減効果を得ることができ、薬物の安定性にも優れる点で、有利である。
ここで、モル比の算出にあたっては、薬物や塩基性物質が水和物の場合には、無水物として算出する。
<着色剤>
また、前記医薬組成物は、更に着色剤を含有することが、光安定性を向上させることができる点で、好ましい。
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、タール系色素、天然系色素、酸化鉄などが挙げられる。これらの中でも、光安定性向上の点で、酸化鉄が好ましい。
前記タール系色素としては、例えば、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色102号、食用青色1号、食用青色2号(インジゴカルミン)、食用黄色4号アルミニウムレーキなどが挙げられる。
前記天然系色素としては、例えば、ウコン抽出液、カラメル、カルミン、カロチン液、β−カロテン、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン、カーボンブラック、薬用炭などが挙げられる。
前記酸化鉄としては、例えば、三二酸化鉄(Fe)、黄色三二酸化鉄(Fe・HO)、黒酸化鉄(Fe)などが挙げられる。
これらの酸化鉄は、医薬品添加物規格2003(以下、薬添規とする)にも収載され、着色剤としての使用前例がある。前記三二酸化鉄としては、例えば、癸巳化成株式会社の商品名三二酸化鉄などを使用でき、前記黄色三二酸化鉄としては、例えば、日本カラコン株式会社の商品名黄色酸化鉄カラコン、純正化学株式会社の商品名黄色三二酸化鉄などを使用できる。三二酸化鉄は赤色から赤褐色又は暗赤紫色の粉末であり、黄色三二酸化鉄は黄色から帯褐黄色の粉末であり、黒酸化鉄は黒色の粉末であり、いずれも水にほとんど溶けない。前記酸化鉄は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、三二酸化鉄と黄色三二酸化鉄とを併用することができる。また、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、及び黒色酸化鉄を含む混合物である褐色酸化鉄を使用することができる。
前記着色剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記着色剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記医薬組成物中、0.01〜3質量%が好ましく、0.02〜1質量%がより好ましく、0.02〜0.5質量%が特に好ましい。前記着色剤の含有量が、0.01質量%未満であると、所望の光安定性向上効果が得られないことがあり、0.5質量%を超えても、光安定性向上効果は変わらず、コスト的に不利となることがある。一方、前記着色剤の含有量が、前記特に好ましい範囲内であると、より優れた光安定性向上効果が得られ、かつ、コスト的にも不利とならない点で、有利である。
<その他の成分>
前記医薬組成物は、前記酒石酸ゾルピデム、前記塩基性物質、及び、前記着色剤の他にも、必要に応じて更に、適宜その他の成分を含有することができる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、コーティング剤、可塑剤、懸濁剤又は乳化剤、着香剤、抗酸化剤、糖衣剤、防湿剤、流動化剤、などが挙げられる。
前記賦形剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、D−マンニト−ル、乳糖(無水乳糖含む)、白糖(精製白糖含む)、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、乳酸カルシウムなどが挙げられる。
前記結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルファー化デンプン、アルギン酸ナトリウム、プルラン、アラビアゴム末などが挙げられる。
前記滑沢剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硬化油、硬化ヒマシ油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリド、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられる。
前記崩壊剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドンなどが挙げられる。
前記コーティング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカリウム、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース等のセルロース誘導体、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS,メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、2−メチル−5−ビニルピリジンメチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー等のアクリル酸系高分子、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、マクロゴール等の合成高分子物質、プルラン、キトサン等の多糖類やゼラチン、コハク化ゼラチン、アラビアゴム、セラック等の天然系高分子物質、などが挙げられる。
前記可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アジピン酸ジオクチル、クエン酸トリエチル、トリアセチン、グリセリン、濃グリセリン、プロピレングリコールなどが挙げられる。
前記懸濁剤又は乳化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合物などが挙げられる。
前記着香剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メントール、はっか油、レモン油、オレンジ油などが挙げられる。
前記抗酸化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、L−システイン、亜硫酸ナトリウム、天然ビタミンEなどが挙げられる。
前記糖衣剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、白糖、乳糖、水アメ、沈降炭酸カルシウム、アラビアゴム、カルナウバロウ、セラック、ミツロウ、マクロゴール、エチルセルロース、メチルセルロース、ポピドンなどが挙げられる。
前記防湿剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、硬化油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、パラフィン、ヒマシ油、マクロゴール、酢酸ビニル樹脂、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、セラックなどが挙げられる。
前記流動化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、重質無水ケイ酸、結晶セルロース、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、第三リン酸カルシウム、タルク、トウモロコシデンプンなどが挙げられる。
前記その他の成分の含有量は、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができる。
<剤型>
前記医薬組成物の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、前記医薬組成物は、経口投与用の剤型に好適である。前記経口投与用の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、ドライシロップ剤、液剤、シロップ剤などが好ましい。
これらの中でも、前記医薬組成物の剤型としては、錠剤が好ましく、また、錠剤が口腔内崩壊錠であることが、特に好ましい。ここで、口腔内崩壊錠とは、崩壊が極めて速い錠剤を意味し、通常は口腔内において、唾液等の極めて少ない水分でも、1分以内に崩壊し得る錠剤のことをいう。口腔内崩壊錠は、欧州薬局方(EP)においても「orodispersible tablet」として規定されている。口腔内崩壊錠は服用しやすく、例えば、通常の錠剤を服用しにくい、小児や老人への投与にも、好適な剤型である。
(製造方法)
本発明の医薬組成物の製造方法は、前記酒石酸ゾルピデムと前記塩基性物質とを、水を含有する溶媒の存在下で練合する練合工程を含み、好ましくは更に、前記練合物から水を含有する溶媒を除去する乾燥工程を含み、必要に応じて更に、その他の工程を含む。
<練合工程>
前記練合工程では、前記酒石酸ゾルピデムと前記塩基性物質とを、水を含有する溶媒の存在下で練合する。
−酒石酸ゾルピデム、塩基性物質−
前記練合工程において、酒石酸ゾルピデム、及び、前記塩基性物質の具体例としては、前記と同様である。
前記練合工程における、前記酒石酸ゾルピデムの使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、練合する固形成分全量に対して、0.25〜90質量%が好ましく、0.5〜50質量%がより好ましく、0.5〜30質量%が特に好ましい。前記酒石酸ゾルピデムの使用量が、0.25質量%未満であると、均一性に影響を与えることがあり、90質量%を超えると、苦味低減効果に不利になることがある。一方、前記酒石酸ゾルピデムの使用量が、前記特に好ましい範囲内であると、苦味低減効果を確保するとともに、目的の組成物を得るための生産性を確保できる点で、有利である。
また、前記練合工程における、前記酒石酸ゾルピデムの使用量に対する前記塩基性物質の使用量のモル比(塩基性物質/酒石酸ゾルピデム)は、0.3〜8が好ましく、0.5〜4がより好ましく、0.5〜1.5が特に好ましい。前記モル比が、0.3未満であると、所望の程度の苦味低減効果が得られないことがあり、8を超えると、薬物の安定性や、その他の添加物に影響を与えることがある。一方、前記モル比が、前記特に好ましい範囲内であると、より優れた苦味低減効果を得ることができ、薬物の安定性にも優れる点で、有利である。
−水を含有する溶媒−
前記水を含有する溶媒としては、水を含むものであれば特に制限はなく、例えば、水そのものであってもよいし、水と他成分との混合溶媒であってもよい。
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、精製水、蒸留水、イオン交換水、超純水、RO(逆浸透膜)水、常水などが挙げられる。
前記他成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、塩化メチレンなどが挙げられる。
前記水を含有する溶媒としては、水そのものを用いることが、薬物の解離を促進し、薬物の苦味をマスキングする点で、最も有利である。ただし、水を含有する溶媒に、更に結合剤や賦形剤などの添加剤を配合して前記医薬組成物を製造する場合には、それらの添加剤を溶解、又は分散させるために、前記水とともに前記他成分を配合することができる。前記水を含有する溶媒が、前記水と前記他成分との混合溶媒である場合、前記水と前記他成分との混合割合としては、質量比で、水:他成分=99:1〜50:50が好ましく、95:5〜55:45がより好ましく、90:10〜60:40が、特に好ましい。前記水の量が、前記他成分の量に対して、質量比で、1未満であると、薬物の解離が十分でなく、苦味が僅かに残ることがあり、99を超えると、水を含有する溶媒に添加した結合剤などが十分に溶解又は均一に分散しないことがある。一方、前記水と前記他成分との混合割合が、前記特に好ましい範囲内であると、苦味マスキング及び生産性の点で、有利である。
前記練合工程における、前記水を含有する溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、練合時の固形成分100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、5〜35質量部がより好ましく、8〜25質量部が特に好ましい。前記水を含有する溶媒の使用量が、練合時の固形成分100質量部に対して、1質量部未満であると、薬物の解離が十分ではなく、最終組成物において僅かに薬物の苦味が残ったり、目的の組成物が得られないことがあり、50質量部を超えると、乾燥工程での乾燥時間や乾燥温度を必要以上に要することがある。一方、前記水を含有する溶媒の使用量が、前記特に好ましい範囲内であると、苦味マスキング及び生産性の点で、有利である。
−練合−
前記練合の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記酒石酸ゾルピデムと前記塩基性物質とを、装置を用いて混合した後、得られた混合物に、前記水を含有する溶媒を添加して、前記装置を用いて更に練合する方法などが挙げられる。
前記練合に使用する装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速回転型混合機(スーパーミキサー、株式会社カワタ)、高速撹拌造粒機(バーチカルグラニュレーター、株式会社パウレック)、エクストルーダー、ラボ用万能粉体処理装置(メカノミル、岡田精工株式会社)、高速攪拌型造粒機(ナラミキサーグラニュレーター、株式会社奈良機械製作所)などが挙げられる。前記装置の使用条件としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記練合工程においては、前記酒石酸ゾルピデム、及び、前記塩基性物質とともに、好ましくは更に前記着色剤、必要に応じて更に前記その他の成分も、同時に練合することができる。これらの成分の使用量は、前記した各成分の医薬組成物中の含有量に、それぞれ準じることができる。また、前記各成分の添加順序には、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<乾燥工程>
前記乾燥工程では、前記練合工程で得られた練合物を、乾燥させる。
前記乾燥工程における乾燥温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50〜70℃が好ましい。
また、前記乾燥工程における乾燥時間としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2〜20時間が好ましい。
また、前記乾燥に使用する装置としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、棚式乾燥機、流動層造粒乾燥機(フローコーター、フロイント産業株式会社)などが挙げられる。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述するような、混合工程、整粒工程、成型工程などが挙げられる。前記その他の工程を行う順序としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記練合工程の前であってもよいし、前記練合工程と前記乾燥工程との間であってもよいし、前記乾燥工程の後であってもよい。
<具体的製法>
前記医薬組成物の具体的な製造方法としては、前記練合工程を含むものであれば特に制限はなく、前記医薬組成物の所望の剤型に応じて、例えば公知の方法を単独で、又は組み合わせて、使用することができる。
−口腔内崩壊錠の製造方法−
前記医薬組成物は口腔内崩壊錠として製造されることが、服用性の点で、特に好ましい。以下に、前記医薬組成物を口腔内崩壊錠として製造する場合の製造方法を、具体的に説明する。前記口腔内崩壊錠の製造方法としても、前記酒石酸ゾルピデムと前記塩基性物質とを、水を含有する溶媒の存在下で練合する練合工程を含む製造方法であれば特に制限はなく、目的に応じて公知の製造方法を任意に使用することができ、例えば、以下の製造方法などが挙げられる。
口腔内崩壊錠の製造工程の好ましい一例を、図1に示す。図1に示す製造方法は、第一の混合工程、練合工程、乾燥工程、整粒工程、第二の混合工程、及び成型工程を含む。
前記第一の混合工程では、例えば、前記酒石酸ゾルピデム、前記塩基性物質、前記着色剤、マンニトール等を加えて混合する。前記各成分の添加順序としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記混合に使用する装置としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、後述する第二の混合工程で使用される装置を利用することができる。また、混合工程と練合工程を1つの装置で連続して行う場合には、練合工程で用いられる装置を利用することができる。例えば、ラボ用万能粉体処理装置(メカノミル、岡田精工株式会社)などが挙げられる。
前記練合工程では、例えば、前記第一の混合工程で得られた混合物に、ポリビニルピロリドンを溶解させた前記水を含有する溶媒を加えて、練合する。前記練合に使用する装置としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速回転型混合機(スーパーミキサー、株式会社カワタ)、高速撹拌造粒機(バーチカルグラニュレーター、株式会社パウレック)、エクストルーダー、ラボ用万能粉体処理装置(メカノミル、岡田精工株式会社)、高速攪拌型造粒機(ナラミキサーグラニュレーター、株式会社奈良機械製作所)などが挙げられる。
前記乾燥工程では、例えば、前記練合工程で得られた練合物から、前記水を含有する溶媒を除去する。前記乾燥に使用する装置としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、棚式乾燥機などが挙げられる。
前記整粒工程では、例えば、前記乾燥工程後の乾燥物を整粒して、顆粒を得る。前記整粒に使用する装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パワーミル(不二パウダル株式会社)、コーミル(株式会社パウレック)、ロールグラニュレーター(日本グラニュレーター株式会社)等の整粒機などが挙げられる。また、篩などを使用してもよい。
前記第二の混合工程では、例えば、前記整粒工程で得られた顆粒に、崩壊剤や滑沢剤等の、成型に必要な添加物を添加し、混合する。前記第二の混合工程に使用する装置としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円筒回転型混合機、V型混合機、タンブラー型混合機(不二パウダル株式会社)、スクリュー式混合機(ナウタミキサ、ホソカワミクロン株式会社)、正立方体型混合機などが挙げられる。また、ポリ袋などを使用してもよい。
前記成型工程では、例えば、前記第二の混合工程後の混合物を、錠剤に成型する。前記成型工程に使用する装置としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単発打錠機、ロータリー打錠機(菊水製作所、株式会社畑鉄工所など)などが挙げられる。圧縮機として材料試験機(オートグラフ、株式会社島津製作所)などを使用することもできる。また、前記ロータリー打錠機は、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を杵臼に塗布できる外部滑沢装置を設置してもよい。
以上のようにして、前記製造方法により、口腔内崩壊錠を得ることができる。
−その他の剤型の製造方法−
前記口腔内崩壊錠以外の錠剤や、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、ドライシロップ剤、液剤、シロップ剤などの剤型である場合の前記医薬組成物の製造方法としても、前記練合工程を含むものであれば特に制限はなく、例えば公知の方法を単独で、又は組み合わせて、使用することができる。
[効果]
本発明の医薬組成物は、酒石酸ゾルピデムを含有するにもかかわらず、苦味等の不快な味が低減されたものである。したがって、本発明の医薬組成物は、経口投与用の剤型、中でも、口腔内崩壊錠として、好適である。
また、本発明の医薬組成物は、好ましくは更に酸化鉄などの着色剤を含有するために、光安定性にも優れたものである。したがって、本発明の医薬組成物は、保存にも適する。
また、本発明の医薬組成物の製造方法は、例えば、口腔内崩壊錠のように、被覆を施し難い剤型であっても、苦味等の不快な味が低減された、服用しやすい医薬組成物を提供することができる。
以下、本発明の試験例及び実施例を説明するが、本発明は、これらの試験例及び実施例に何ら限定されるものではない。
[参考例:酒石酸ゾルピデムの苦味閾値の測定]
酒石酸ゾルピデムの苦味閾値を、以下のような方法により測定した。
(1)酒石酸ゾルピデムの苦味閾値測定のための試験液の調製
酒石酸ゾルピデム100mgをメスフラスコに計量し、精製水を加えて100mLとして、1mg/mLの酒石酸ゾルピデム水溶液を得た。次いで、この1mg/mLの水溶液4mLに精製水を加えて10mLとして、400μg/mLの酒石酸ゾルピデム水溶液を調製した。同様の方法で、500μg/mL、600μg/mL、及び、700μg/mLの酒石酸ゾルピデム水溶液を得た。
(2)酒石酸ゾルピデムの苦味閾値の測定方法
官能試験により評価した。具体的には、調製した各濃度の酒石酸ゾルピデム水溶液を口に含み、数秒後に吐き出した際の、苦味の程度を評価した。
(3)結果
400μg/mLの酒石酸ゾルピデム水溶液は苦味が全く感じられなかったのに対し、500μg/mLの酒石酸ゾルピデム水溶液は僅かに苦味を感じ、更に、600μg/mL、700μg/mLと、濃度が高いほど、強い苦味を呈した。
なお、500μg/mL以上の濃度の水溶液では、口に含んだ瞬間に酸味を感じ、その後苦味を感じた。400μg/mLの水溶液では、苦味同様、酸味も全く感じなかった。
したがって、酒石酸ゾルピデムの苦味閾値は、約400μg/mLと測定された。
[試験例1:各塩基性物質の苦味低減作用の評価]
各塩基性物質の苦味低減作用を、以下のような方法により評価した。
(1)各サンプルの処方
各サンプルの組成物は、いずれも、全質量200mg中に、酒石酸ゾルピデム10mg、及びポリビニルピロリドン2mg、塩基性物質及びマンニトールを配合した。塩基性物質の種類と配合量は、表1に従った。また、マンニトールの配合量は、その塩基性物質の配合量に合わせて、サンプルの全質量が200mgとなるように、適宜増減した。
(2)製造方法
サンプルNo.A−1の場合は、乳鉢に酒石酸ゾルピデム1gとD−マンニトール18.7gを入れて、混合した。得られた混合物に、ポリビニルピロリドン0.2gと水酸化ナトリウム0.1gとを精製水2.5gに溶解した水溶液を加え、練合した。この練合物を乾燥させて、粒状物を得た。
また、サンプルNo.A−2の場合は、乳鉢に酒石酸ゾルピデム1g、D−マンニトール18.7g、及び酸化マグネシウム0.1gを入れて、混合した。得られた混合物に、ポリビニルピロリドン0.2gを含水エタノール(水:エタノール(質量比)=75:25)2.4gに溶解した含水エタノール溶液を加え、練合した。この練合物を乾燥させて、粒状物を得た。
その他のサンプルNo.A−3〜サンプルNo.A−14は、サンプルNo.A−2に従って製造した。
(3)評価方法
注射筒正倒立法(中村ら、Pharm Tech Japan、7巻、77−93頁、1990年)を用いて、各塩基性物質の苦味低減作用を評価した。10mLの注射筒に、各サンプル200mgを採取後、水10mLを加え、30秒間に10回正倒立させて混合を行い、すぐに細孔径0.45μmのミリポアフィルターをセットし、直ちにろ過後、ろ液の酒石酸ゾルピデム濃度を測定した。予め前記参考例の官能試験で求めた酒石酸ゾルピデムの苦味の閾値(約400μg/mL)を基準として、評価した。結果を、表1及び図2に示す。
(4)結果
酒石酸ゾルピデムの苦味閾値は約400μg/mLである(前記参考例参照)。表1及び図2から、例えば、組成物200mg中の塩基性物質の配合量(質量)が、水酸化ナトリウムでは1mg、水酸化マグネシウムでは1mg、水酸化カルシウムでは1mg、炭酸ナトリウムでは5mg、酸化マグネシウムでは0.5mg以上の場合に、完全に酒石酸ゾルピデムの苦味マスキング効果が認められた。また、その他の塩基性物質についても、塩基性物質を添加しない場合(サンプルNo.A−14)と比較して、酒石酸ゾルピデム濃度は低下しており、すなわち、程度に差はあるものの、各種塩基性物質はそれぞれ、酒石酸ゾルピデムを含有する医薬組成物の苦味低減作用(酒石酸ゾルピデムの苦味マスキング作用)を有していることが判った。
<塩基性物質の種類>
また、表1及び図2から、塩基性物質の種類についてみると、クエン酸三ナトリウム(例えば、サンプルNo.A−3)や酒石酸ナトリウム(例えば、サンプルNo.A−4)等の有機塩基性物質に比べて、水酸化ナトリウム(例えば、サンプルNo.A−1)、酸化マグネシウム(例えば、サンプルNo.A−2)、水酸化マグネシウム(例えば、サンプルNo.A−5)等の無機塩基性物質は、顕著に優れた苦味低減作用を有していることが判った。
また更に、前記無機塩基性物質の中でも、炭酸水素ナトリウム(例えば、サンプルNo.A−9)等の金属炭酸水素塩や、リン酸水素ナトリウム(例えば、サンプルNo.A−12)等の金属リン酸水素塩に比べて、酸化マグネシウム(例えば、サンプルNo.A−8)等の金属酸化物、水酸化マグネシウム(例えば、サンプルNo.A−5)、水酸化カルシウム(例えば、サンプルNo.A−6)等の金属水酸化物、及び、炭酸ナトリウム(例えば、サンプルNo.A−7)等の金属炭酸塩は、顕著に優れた苦味低減作用を有していることが判った。
<酒石酸ゾルピデムに対する塩基性物質のモル比>
また、表1及び図2から、酒石酸ゾルピデムに対する各塩基性物質のモル比についてみると、例えば、酸化マグネシウムについて、サンプルNo.A−2(酒石酸ゾルピデムに対する塩基性物質のモル比0.95)とサンプルNo.A−8(酒石酸ゾルピデムに対する塩基性物質のモル比0.47)とを比較すると、いずれも苦味低減作用に優れるが、酒石酸ゾルピデムに対する塩基性物質のモル比が大きい方が、より苦味低減作用に優れることが判った。
また、同様に、炭酸ナトリウムについて、サンプルNo.A−7(酒石酸ゾルピデムに対する塩基性物質のモル比0.67)とサンプルNo.A−13(酒石酸ゾルピデムに対する塩基性物質のモル比0.13)とを比較すると、酒石酸ゾルピデムに対する塩基性物質のモル比が大きく、例えば、該モル比が約0.5以上である場合に、顕著に苦味低減作用に優れることが判った。
[試験例2:酒石酸ゾルピデムに対する塩基性物質のモル比の検討]
更に、酒石酸ゾルピデムに対する塩基性物質のモル比(塩基性物質/酒石酸ゾルピデム)が、苦味低減効果に及ぼす影響を、検討した。
(1)製造方法
酒石酸ゾルピデム0.5gと水酸化マグネシウム0.15gとを乳鉢で混合して、混合物を得た。得られた混合物の全質量に対して、40質量%に相当する量の精製水を添加し、更に乳鉢で練合し、練合物を得た。この練合物を、棚式乾燥機を用いて、60℃で12時間、乾燥させ、酒石酸ゾルピデムに対する水酸化マグネシウムのモル比(水酸化マグネシウム/酒石酸ゾルピデム)が2である粒状物を得た。同様にして、水酸化マグネシウムを0.05g、又は、0.025g用いて、モル比0.65の粒状物、及び、モル比0.33の粒状物を得た。
(2)官能評価
各粒状物を口に含み、苦味の有無を確認した。
(3)結果
モル比0.65の粒状物、及び、モル比2の粒状物は、苦味を感じなかった。一方、モル比0.33の粒状物は、僅かに苦味を感じた。
[実施例1〜3、比較例1〜3:水の存在下(又は非存在下)における口腔内崩壊錠の製造]
(1)処方及び製造方法
表2に示す各処方に従って、実施例1〜3、及び比較例1〜3の口腔内崩壊錠を得た。各例の製造方法を、以下に示す。(なお、酒石酸ゾルピデムに対する水酸化マグネシウムのモル比は、実施例1では3.3、実施例2〜3及び比較例1〜3では0.66である。)
(実施例1)
ラボ用万能粉体処理装置(メカノミル、岡田精工株式会社)に、D−マンニトール259.4g、黄色三二酸化鉄4.0g、三二酸化鉄0.6g、コーンスターチ108g、及び水酸化マグネシウム20gを入れて、混合した。次に、酒石酸ゾルピデム40gを入れ、混合した。更に、ポリビニルピロリドン8gを精製水66gに溶解した水溶液を加え、練合した。この練合物を棚式乾燥機に入れ、60℃で約14時間、乾燥した。乾燥物を取り出し、パワーミル(不二パウダル株式会社)を用い、スクリーン径0.7mmにて整粒した。整粒した有効成分含有粉体330gと、結晶セルロース210gをポリ袋内で約1分間混合し、成形用粉体を得た。成形用粉体を外部滑沢装置付きのロータリー打錠機(菊水製作所)にて成形し、1錠180mgの口腔内崩壊錠を得た。
なお、ラボ用万能粉体処理装置(メカノミル、岡田精工株式会社)は、回転速度800rpmで使用した。また、ロータリー打錠機(菊水製作所)は、成形圧5886N、成形速度30rpm、杵直径8.5mmの条件で使用した。
(実施例2)
ラボ用万能粉体処理装置(メカノミル、岡田精工株式会社)に、D−マンニトール276.32g、黄色三二酸化鉄2.6g、三二酸化鉄0.4g、コーンスターチ108g、及び水酸化マグネシウム4gを入れて、混合した。次に、酒石酸ゾルピデム40gを入れ、混合した。更に、ポリビニルピロリドン8gを精製水66gに溶解した水溶液を加え、練合した。この練合物を棚式乾燥機に入れ、60℃で約14時間、乾燥した。乾燥物を取り出し、パワーミル(不二パウダル株式会社)を用い、スクリーン径0.7mmにて整粒し、有効成分含有粉体とした。結晶セルロース350g、黄色三二酸化鉄0.75g、及び三二酸化鉄0.5gをメカノミルで混合し、色素含有粉体とした。有効成分含有粉体329.49gと色素含有粉体210.51gをポリ袋内で約1分間混合し、成形用粉体を得た。成形用粉体をステアリン酸マグネシウム塗布用の外部滑沢装置付きロータリー打錠機(菊水製作所)にて成形し、1錠180mgの口腔内崩壊錠を得た。
なお、ラボ用万能粉体処理装置(メカノミル、岡田精工株式会社)、及び、ロータリー打錠機(菊水製作所)の使用条件は、実施例1と同様とした。
(実施例3)
ラボ用万能粉体処理装置(メカノミル、岡田精工株式会社)に、D−マンニトール276.32g、黄色三二酸化鉄2.6g、三二酸化鉄0.4g、コーンスターチ108g、ポリビニルピロリドン8g、及び水酸化マグネシウム4gを入れて、混合した。次に、酒石酸ゾルピデム40gを入れ、混合した。更に、水を74g加え、練合した。この練合物を棚式乾燥機に入れ、60℃で約14時間、乾燥した。乾燥物を取り出し、パワーミル(不二パウダル株式会社)を用い、スクリーン径0.7mmにて整粒し、有効成分含有粉体とした。結晶セルロース350gと黄色三二酸化鉄0.75g、三二酸化鉄0.5gをメカノミルで混合し、色素含有粉体とした。有効成分含有粉体329.49gと色素含有粉体210.51gをポリ袋内で約1分間混合し、成形用粉体を得た。成形用粉体をステアリン酸マグネシウム塗布用の外部滑沢装置付きロータリー打錠機(菊水製作所)にて成形し、1錠180mgの口腔内崩壊錠を得た。
なお、ラボ用万能粉体処理装置(メカノミル、岡田精工株式会社)、及び、ロータリー打錠機(菊水製作所)の使用条件は、実施例1と同様とした。
(比較例1)
ラボ用万能粉体処理装置(メカノミル、岡田精工株式会社)に、D−マンニトール275.4g、黄色三二酸化鉄4.0g、三二酸化鉄0.6g、コーンスターチ108g、及び水酸化マグネシウム4gを入れて、混合した。次に、酒石酸ゾルピデム40gを入れ、混合した。更に、ポリビニルピロリドン8gをエタノール66gに溶解したエタノール溶液を加え、練合した。この練合物を棚式乾燥機に入れ、60℃で約14時間、乾燥した。乾燥物を取り出し、パワーミル(不二パウダル株式会社)を用い、スクリーン径0.7mmにて整粒した。整粒した有効成分含有粉体330gと結晶セルロース210gをポリ袋内で約1分間混合し、成形用粉体を得た。成形用粉体をステアリン酸マグネシウム塗布用の外部滑沢装置付きロータリー打錠機(菊水製作所)にて成形し、1錠180mgの口腔内崩壊錠を得た。
なお、ラボ用万能粉体処理装置(メカノミル、岡田精工株式会社)、及び、ロータリー打錠機(菊水製作所)の使用条件は、実施例1と同様とした。
(比較例2)
乳鉢に、D−マンニトール27.54g、黄色三二酸化鉄0.4g、三二酸化鉄0.06g、コーンスターチ10.8g、ポリビニルピロリドン0.8g、及び水酸化マグネシウム0.4gを入れて、混合した。次に、酒石酸ゾルピデム4.0g及び結晶セルロース28gを入れ、混合した。混合物を、杵先にステアリン酸マグネシウムを塗布した型に入れ、オートグラフ(株式会社島津製作所)にて加圧成形し、1錠180mgの口腔内崩壊錠を得た。
(比較例3)
乳鉢に、D−マンニトール28g、コーンスターチ10.8g、ポリビニルピロリドン0.8g、及び水酸化マグネシウム0.4gを入れて、混合した。次に、酒石酸ゾルピデム4.0g及び結晶セルロース28gを入れ、混合した。混合物を、杵先にステアリン酸マグネシウムを塗布した型に入れ、オートグラフ(株式会社島津製作所)にて加圧成形し、1錠180mgの口腔内崩壊錠を得た。
(2)官能評価
得られた各口腔内崩壊錠を口に含み、崩壊を確認後、吐き出した。このとき、苦味を感じるか否かを、下記の基準に従い、評価した。結果を表2に示す。
−評価基準−
○:全く苦味を感じない
△:僅かに苦味を感じる
×:強く苦味を感じる
(3)結果
表2に示す通り、練合の際の溶媒としてエタノールを用いた比較例1、及び、溶媒を使用しない比較例2と比較例3では、酒石酸ゾルピデムを含有する口腔内崩壊錠の苦味低減効果は全く得られなかった。一方、練合の際の溶媒として水を用いた実施例1〜3では、苦味は全く感じられず、酒石酸ゾルピデムを含有する口腔内崩壊錠の苦味が低減されている(酒石酸ゾルピデムの苦味がマスキングされている)ことが確認された。また、実施例1〜3の口腔内崩壊錠では、不快な酸味も感じなかった。
以上の結果から、酒石酸ゾルピデムを含有する医薬組成物の苦味低減には、該医薬組成物の製造時に、水を含有する溶媒の存在下で、酒石酸ゾルピデムと塩基性物質とを練合する必要があることが判った。
[試験例3:水酸化マグネシウムによる光安定性への影響、及び、光安定性に対する酸化鉄の効果の検討]
酒石酸ゾルピデム及び塩基性物質を含有した医薬組成物について、前記実施例1〜3、及び比較例3の速崩性錠剤を用いて、光安定性評価を行った。
(1)光安定性評価
シャーレに、各錠剤を重ならないように広げ、蓋をしない状態で、キセノン光を総照度が1,200,000lx・hとなるまで照射した。酒石酸ゾルピデムの含有量、及び分解物量は、European pharmacopoeia 5.0に記載の、HPLC法にて測定した。ここでの光分解物は、酒石酸ゾルピデムの主ピークの保持時間を基準とした場合、相対保持時間比1.53に出現した。なお、光分解物量は、有効成分含量に対する、分解物量の百分率(%)で示した。結果を表3に示す。
<結果>
酸化鉄を配合しない比較例3は、光分解物量が、0.19%であったのに対し、酸化鉄を配合した実施例1〜3の口腔内崩壊錠は、ICHガイドラインに照らしてみても、十分満足する光安定性が確保できていることが判った。
本発明の医薬組成物は、酒石酸ゾルピデムを含有するにもかかわらず、苦味等の不快な味が低減されているので、経口投与用の剤型、中でも、口腔内崩壊錠として、特に好適である。また、本発明の医薬組成物は、好ましくは更に酸化鉄などの着色剤を含有するために、光安定性にも優れるので、保存にも適する。
また、本発明の医薬組成物の製造方法は、例えば、口腔内崩壊錠のように、被覆を施し難い剤型であっても、苦味等の不快な味が低減された、服用しやすい医薬組成物を提供することができる。
図1は、本発明の医薬組成物の好ましい態様である、口腔内崩壊錠の製造方法の一例を示した図である。 図2は、注射筒正倒立法を用いて各種塩基性物質の苦味低減作用を調べた結果を示すグラフである。

Claims (10)

  1. 酒石酸ゾルピデムと塩基性物質とを含有してなり、かつ、前記酒石酸ゾルピデムと前記塩基性物質とを水を含有する溶媒の存在下で練合して得られることを特徴とする医薬組成物。
  2. 塩基性物質が、無機塩基性物質である請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 塩基性物質が、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属ケイ酸塩、複合ケイ酸−アルミニウム化合物、複合アルミニウム−マグネシウム化合物、及び、無機アンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1から2のいずれかに記載の医薬組成物。
  4. 酒石酸ゾルピデムに対する塩基性物質のモル比(塩基性物質/酒石酸ゾルピデム)が、0.3〜8である請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
  5. 更に、酸化鉄を含有してなる請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
  6. 酸化鉄が、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、及び、黒酸化鉄からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1から5のいずれかに記載の医薬組成物。
  7. 散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、ドライシロップ剤、液剤、及び、シロップ剤からなる群より選択される請求項1から6のいずれかに記載の医薬組成物。
  8. 口腔内崩壊錠である請求項1から7のいずれかに記載の医薬組成物。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法であって、酒石酸ゾルピデムと塩基性物質とを、水を含有する溶媒の存在下で練合することを特徴とする医薬組成物の製造方法。
  10. 酒石酸ゾルピデムと塩基性物質とを、水を含有する溶媒の存在下で練合して練合物を得る練合工程、及び、前記練合物から前記水を含有する溶媒を除去する乾燥工程を含む請求項9に記載の医薬組成物の製造方法。
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