しかしながら、前述した従来のパンチング装置では、パンチを昇降させる昇降機構が装置本体の上部側垂直端面に設けられているため、昇降機構は側面を装置本体に支持された状態になっている。このため、パンチを下降させて金型に押し付けたときの押圧力がパンチと金型の接触面(対応する面)全体で均一にならず、一方側に偏ってしまうことがある。この結果、パンチと金型との接触面に押圧力のばらつきが生じてパンチングの精度が悪くなるという問題がある。
また、前述した従来のパンチング装置は、長尺材のパンチングに使用されるもので、幅の大きなシート状や板状のワークのパンチングには使用できないという問題や、順次ワークを取り替えながらパンチング加工が行われるため、被穿孔部の多いワークの処理には不向きであるという問題がある。さらに、ワークを取り替えたり、移動させたりしながら1回ごとに1ヶ所の被穿孔部をパンチングしていくため、加工に長時間を要するようになり、効率的な処理が行えないという問題もある。
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、パンチを金型に押し付けたときの押圧力にばらつきをなくして精度のよいパンチングが行えるとともに、処理時間を短縮して効率的なパンチングが行えるパンチング装置を提供することである。
前述した問題を解決するため、本発明に係るパンチング装置の構成上の特徴は、上面に金型を露出させるとともに上面にシート状または板状のワークが配置されるテーブルと、金型の上方に設置されパンチを金型に対して進退可能にした状態で支持するヘッド部と、ヘッド部に取り付けられたパンチを昇降させる昇降装置と、ヘッド部を支持する支持機構とを備えたパンチング装置であって、支持機構を、テーブルの縁部側部分から上方に延びる複数の支柱部と複数の支柱部の上部に掛け渡された支持梁部とで構成し、支持梁部の略中央に支持梁部の上面から下面に延びる取付穴を設けるとともに、取付穴にヘッド部を支持梁部に沿って複数並べて取り付け、テーブルにおける複数のヘッド部の下方に、金型をそれぞれ設置したことにある。
前述したように本発明に係るパンチング装置は構成されているため、パンチを金型に押し付けたときに金型からパンチが受ける反力は、支持梁部を介して複数の支柱部に分散して伝わるようになる。このため、パンチは、支持梁部を介して各支柱部に支持され、パンチと金型との接触面(対応する面)の全体に略均一な押圧力を掛けた状態で金型に押し付けられる。この結果、ワークの被穿孔部分には均一なせん断力が加わり、精度のよいパンチング加工が行われる。
また、パンチが取り付けられるヘッド部と金型とをそれぞれ複数個ずつ設けているため、同時または連続した効率的なパンチング処理が行えるようになり、処理時間の短縮化が図れる。また、本発明における複数の支柱部としては、テーブルの両側に設けられた一対のもので構成することが好ましい。また、2個以上の支柱部を設ける場合には、各支柱部間の間隔を略一定にして、各支柱部にかかる金型からの反力が等しくなるようにする。また、テーブルを硬質の金属板等で構成して、テーブル自体またはテーブルの一部を金型とすることもできる。
さらに、金型の上面には、パンチと嵌合可能なダイ穴を形成しておくことが好ましい。これによると、パンチを金型に押し付けたときに、パンチが金型のダイ穴に嵌合するためワークの被穿孔部の周縁部にはより大きなせん断力が加わるようになる。この結果、パンチングの精度がさらに向上する。また、この場合の複数個のパンチの形状および複数個の金型のダイ穴の形状はそれぞれ同一形状にしてもよいし、異なる形状にしてもよい。
また、本発明に係るパンチング装置の他の構成上の特徴は、複数の支柱部を、テーブルの両側部分から上方に向かって延びる一対の支柱部で構成し、複数のヘッド部を、支持梁部の長手方向に並べて取り付けたことにある。これによると、少ない支柱部でバランスのよい支持機構を形成することができる。また、複数のヘッド部が、支持梁部の長手方向に沿って並べて取り付けられているため、支持梁部の長手方向に直交する方向のバランスもよくなる。
また、本発明に係るパンチング装置のさらに他の構成上の特徴は、テーブルの上面に沿って移動可能に取り付けられた枠状体からなり、枠状体の枠内にワークを取り付けることができるワーク把持機構を備えたことにある。これによると、ワークをワーク把持機構とともに移動させながらパンチング加工をすることができるため、ワークの複数の被穿孔部へのパンチング加工を効率よく行える。
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて詳しく説明する。図1および図2は同実施形態に係るパンチング装置10を示している。このパンチング装置10は、基台11上に設置された略門形の支持機構12と、支持機構12の内部下部側部分に設けられ水平面上を前後方向に延びる板状のテーブル13とを備えている。そして、テーブル13における支持機構12に取り付けられた部分の幅方向(図1における左右方向)の中央に穴部13aが形成されている。また、テーブル13の下方には、上面を穴部13aから露出させた状態で2個の金型14,14が並んで設置されている。
そして、テーブル13の上面には、ワーク把持機構15がテーブル13の上面に沿って全ての方向に移動可能な状態で設けられている。また、支持機構12の上部中央には、2個のヘッド部16,16が、2個の金型14,14と対向した状態で並んで設けられている。そして、支持機構12の幅方向の中央における上部後方には、ヘッド部16,16をそれぞれ作動させるためのモータからなる2個の昇降装置17(1個しか図示せず)が、支持機構12の上端部から後方に延びる取付片17aを介して設けられている。
支持機構12は、一対の支柱部18a,18bと、支柱部18a,18bの上端部に掛け渡された支持梁部19とで構成されている。そして、支持梁部19の長手方向に沿った中央部には、支持梁部19の上面から下面に貫通する取付穴19aが形成されている。この取付穴19aは、内部に2個のヘッド部16,16を通すことのできる大きさに設定されており、2個のヘッド部16,16は、この取付穴19aに長手方向を垂直に向けた状態で左右に並んで取り付けられている。
2個の金型14,14は、テーブル13の穴部13aの縁部から少し間隔を保つようにして、ダイベース14a上に固定されており、ダイベース14aは基台11の上面に固定されている。そして、金型14,14の上面には、それぞれ所定の形状のダイ穴(図示せず)が形成されている。また、ワーク把持機構15は、図3に示したように構成されており、図示せぬX軸移動機構,Y軸移動機構及びθ軸移動機構によって、それぞれX軸方向(図1における左右方向)、Y軸方向(水平面内においてX軸方向に直交する方向)、θ軸方向(X軸方向、Y軸方向にそれぞれ直交する垂直軸周りの方向)に移動可能になっている。
このワーク把持機構15は、レール状の基部21と、基部21の両側部分から対向した状態で平行して前方に延びる一対の把持装置21a,21bとを備えている。この基部21と把持装置21a,21bとで平面視が略コ字状の枠体が形成され、その枠内の空間部にシート状のワークWが設置される。把持装置21aは、基部21の一端に固定されたレール部22aと、レール部22aに取り付けられた一対の把持部23a,24aとからなっている。そして、把持部23aは、レール部22aの先端部に固定され、把持部24aは、レール部22aの長手方向に沿って移動可能な状態で取り付けられている。
すなわち、レール部22aの下面(内部)には、ねじ棒からなる回転駆動部(図示せず)が設けられており、この回転駆動部は、基部21の一端後部に設けられたモータ25aの駆動によって回転するように構成されている。そして、把持部24aは、この回転駆動部の回転に応じて回転駆動部(レール部22a)に沿って移動することにより、把持部23aとの間隔を広げたり狭めたりすることができ、ワークWの幅に応じてその間隔を調整できるように構成されている。
また、把持部23a,24aは、それぞれレール部22aの長手方向に直交する方向(図3の左右方向)に延びるシリンダ装置からなるアクチュエータ26aと、アクチュエータ26aの駆動によってワークWを把持したり、開放したりする爪部27aとからなっている。この爪部27aの先端部は、それぞれワークWの縁部を表裏から把持して固定できる一対の爪で構成されており、レール部22aの内側部に位置している。
把持装置21bは、基部21の他端側に移動可能に設けられたレール部22bと、レール部22bに設けられた一対の把持部23b,24bとからなっている。また、基部21の後部には、ねじ棒からなる回転駆動部28とモータ(図示せず)とからなる駆動装置が設けられており、レール部22bは、モータの駆動によって回転駆動部28(基部21)に沿って移動する。レール部22bは、この駆動装置の駆動によって、レール部22aとの間隔を、ワークWの長さに応じて調節できるように構成されている。
そして、把持部23bは、レール部22bの先端部に固定され、把持部24bは、レール部22bの長手方向に沿って移動可能な状態で取り付けられている。すなわち、レール部22bの下面(内部)には、ねじ棒からなる回転駆動部(図示せず)が設けられており、この回転駆動部は、基部21の他端後部に設けられたモータ25bの駆動によって回転するように構成されている。そして、把持部24bは、この回転駆動部の回転に応じて回転駆動部(レール部22b)に沿って移動することにより、把持部23bとの間隔を広げたり狭めたりすることができ、ワークWの幅に応じてその間隔を調整できるように構成されている。
また、把持部23b,24bは、それぞれレール部22bの長手方向に直交する方向に延びるシリンダ装置からなるアクチュエータ26bと、アクチュエータ26bの駆動によってワークWを把持したり、開放したりする爪部27bとからなっている。そして、この爪部27bの先端部は、それぞれワークWの縁部を表裏から把持して固定できる一対の爪で構成されており、レール部22bの内側部に位置している。
したがって、把持装置21bを基部21に沿って移動させることにより、把持部23a,24aと、把持部23b,24bとの間隔をワークWの長さに調節することができる。また、把持部24aをレール部22aに沿って移動させることにより把持部23aと把持部24aとの間隔をワークWの幅に調節することができ、把持部24bをレール部22bに沿って移動させることにより把持部23bと把持部24bとの間隔をワークWの幅に調節することができる。
このため、各把持部23a,24a,23b,24b間を所定間隔に調節して各爪部27a,27bでワークWの各角部を挟持し、さらに、把持部23b,24bを左右方向(図3に矢印aで示した方向)に微調節するとともに、把持部24a,24bを前後方向(図3に矢印bで示した方向)に微調節することによって、ワークWをテンションを掛けた状態で固定することができる。また、基部21の後部中央には取付用部材29が設けられており、ワーク把持機構15は、この取付用部材29を介してパンチング装置10の本体側に設けられたX軸移動機構,Y軸移動機構及びθ軸移動機構に直接または所定の部材を介して間接的に連結されている。
ヘッド部16,16は、同一構造のもので構成されており、それぞれ昇降機構31と、昇降機構31の下端に取り付けられたパンチプレート32と、パンチプレート32に取り付けられた穿孔用のパンチ33とで構成されている。また、昇降機構31は、支持梁部19の取付穴19aに固定された支持筒34と、支持筒34内に設けられ軸回り方向に回転可能になったガイド軸(図示せず)と、ガイド軸の下部側に、ガイド軸の軸方向に沿って移動可能な状態で取り付けられた昇降部35とで構成されている。
そして、昇降部35の下端にパンチプレート32が取り付けられている。各パンチ33は、それぞれ対向する金型14のダイ穴と嵌合することによりワークWに所定形状の穴を穿孔することができるように構成され、ガイド軸が回転することによって、昇降部35およびパンチプレート32とともに昇降する。また、ガイド軸はボールねじで構成され、昇降部35の内部には、ガイド軸と螺合するボールナット(図示せず)が形成されている。
そして、ガイド軸の上端部外周には、プーリ(図示せず)が取り付けられており、このプーリが無端ベルト(図示せず)を介して、昇降装置17に連結されている。したがって、昇降装置17が作動すると、無端ベルトおよびプーリを介してガイド軸が回転駆動し、昇降部35がパンチプレート32およびパンチ33とともに昇降する。また、このパンチング装置10には、昇降装置17やパンチング装置10が備える各種の装置の作動を制御するための制御装置も備わっている。
この構成において、ワークWにパンチング加工を行う際には、まず、ワーク把持機構15をテーブル13上における各金型14から離れた位置に移動させて、把持部23a,24a,23b,24bにワークWの各角部を把持させる。ついで、各パンチ33を上方に上げた状態で、ワーク把持機構15を移動させて、ワークWの所定の2個の被穿孔部が金型14,14のダイ穴に位置するようにする。そして、各昇降装置17を作動させてパンチ33,33を降下させる。これによって、各パンチ33,33はワークWを対応する金型14,14のダイ穴内に押し込みながらダイ穴内に嵌合していき、ワークWの2個の被穿孔部が穿孔される。この際、2個のパンチ33,33は同時に降下させてもよいし、1個ずつ降下させてもよい。
また、この場合、2個のヘッド部16,16は、支持梁部19の中央に設置されているため、各金型14から対応するヘッド部16に掛かる反力は、ヘッド部16の左右部分および前後部分で略等しくなる。同様に、各パンチ33から各金型14のダイ穴に掛かる力は、パンチ33と金型14との対応する部分全体で略等しくなり、ワークWの被穿孔部の周縁部には等しいせん断力が加わるようになる。これによって、ワークWに精度のよい穿孔が行われる。そして、前述した操作を繰り返すことにより、ワークWのすべての被穿孔部に穿孔することができる。
このように、このパンチング装置10では、パンチ33と金型14との対応する面の全体に略均一な押圧力が掛けられるため、ワークWの被穿孔部分には均一なせん断力が加わり、精度のよいパンチングが行われる。また、金型14には、パンチ33と嵌合可能なダイ穴が設けられているため、パンチングの精度がさらに向上する。さらに、ワークWが、テーブル13上で移動可能になったワーク把持機構15に取り付けられるため、ワークWに対する複数の部分へのパンチング加工を効率よく行える。
また、ワーク把持機構15の把持部23a,24a,23b,24bが互いの間隔を調整可能に設けられているため、大きさの異なるワークWのパンチング処理が可能になる。さらに、パンチ22が取り付けられるヘッド部16と金型14とをそれぞれ2個ずつ設けているため、効率的なパンチング処理が行えるようになり、処理時間の短縮化が図れる。また、2個のヘッド部16が、支持梁部19の長手方向に沿って並んで取り付けられているため、支持梁部19の長手方向に直交する方向のバランスもよくなる。
また、図4は、参考例によるパンチング装置40を示している。このパンチング装置40では、ダイベース44aの上面に1個の金型44が設置され、テーブル43の穴部43aが、1個の金型44の上面を露出させることのできる大きさに形成されている。そして、支持機構42の支持梁部49の中央部には、1個のヘッド部46を通すことのできる取付穴(図示せず)が形成され、この取付穴に1個のヘッド部46が取り付けられている。また昇降装置(図示せず)も1個だけ設けられている。このパンチング装置40のそれ以外の部分の構成については、前述したパンチング装置10と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。このように構成したため、作業効率は、前述したパンチング装置10よりも劣るが、精度のよいパンチング加工は可能になる。
また、本発明に係るパンチング装置は、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜変更して実施することができる。例えば、前述した実施形態では、支持機構12を、一対の支柱部18a,18bと支持梁部19とからなる門形のもので構成したが、支柱部を2個以上の複数のもので構成することができる。その場合、各支柱部間の間隔を略一定にして、各支柱部にかかる力が等しくなるようにする。また、支持梁部は、各支柱に支持された状態にし、その中央部にヘッド部を設ける。
さらに、前述した実施形態では、テーブル13に金型14を設けているが、テーブルを、硬質の金属板等で構成して金型としてもよいし、テーブルの一部を金型としてもよい。また、テーブル13に穴部13aを設けず、テーブルの上面に金型を設置してもよい。さらに、前述した実施形態では、ワークWを、シート状のもので構成したが、ワークは板状のもので構成してもよい。また、2個の金型14,14に形成したダイ穴の形状および2個のパンチ33,33の形状は同一にしてもよいし、異なるものにしてもよい。さらに、ヘッド部16や金型14は2個以上の複数個設けてもよい。また、パンチング装置10を構成するその他の部分の構成についても本発明の技術的範囲内で適宜変更することができる。
10…パンチング装置、12…支持機構、13…テーブル、14…金型、15…ワーク把持機構、16…ヘッド部、17…昇降装置、18a,18b…支柱部、19…支持梁部、19a…取付穴、31…昇降機構、33…パンチ、W…ワーク