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JP2006206635A - メタン分離精製方法およびメタン分離精製装置 - Google Patents

メタン分離精製方法およびメタン分離精製装置 Download PDF

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JP2006206635A JP2005016863A JP2005016863A JP2006206635A JP 2006206635 A JP2006206635 A JP 2006206635A JP 2005016863 A JP2005016863 A JP 2005016863A JP 2005016863 A JP2005016863 A JP 2005016863A JP 2006206635 A JP2006206635 A JP 2006206635A
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Hiroyuki Ida
博之 井田
Kazuo Koda
和郎 幸田
Shunji Ueda
俊司 植田
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Abstract

【課題】簡易な方法および装置により、エネルギーの無駄が少なく、かつ安価で効率的に混合ガスからメタンを分離精製する。
【解決手段】少なくともメタン、二酸化炭素および硫化水素を含む混合ガスから硫化水素を除去する脱硫工程と、前記脱硫工程で混合ガス中から硫化水素が除去された脱硫ガスを、包接水和物を形成する物質の水溶液中に分散させながら供給する分散・供給工程と、前記分散・供給工程で得られた、脱硫ガスと包接水和物を形成する物質の水溶液との混合物を冷却して包接水和物を生成させる包接水和物生成工程と、前記包接水和物生成工程により生成された包接水和物と包接水和物を形成する物質の水溶液とにより形成される包接水和物のスラリーと、未反応ガスとを分離する分離工程と、前記分離工程により分離された包接水和物のスラリーを加温してメタン富化ガスを放出させる放出工程とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、下水処理場、し尿処理場、その他生ごみなどの有機性廃棄物の嫌気性発酵処理施設等から発生する混合ガス、有機廃棄物の埋立地から発生する混合ガス、あるいは石炭鉱山や石炭層から発生する混合ガス中に含まれるメタンを効果的に分離精製するメタン分離精製方法およびメタン分離精製装置に関するものである。
下水処理場、し尿処理場、その他生ごみなどの有機性廃棄物の嫌気性発酵処理施設等から発生する混合ガスは、消化ガスあるいはバイオガスと呼ばれ、その成分は一般に、メタン60〜70%、二酸化炭素30〜40%、硫化水素100ppm〜数1000ppmを含み、その他に、水分などの微量成分を含む構成となっている。
消化ガスの利用例として、全国の下水処理場での消化ガスの利用状況(1998年下水道統計)をみると、発生した消化ガスの約1/3は、使われないまま焼却廃棄されている。これは、前述したように消化ガスには二酸化炭素が多く含まれるため、エネルギー的な利用価値が乏しく、また貯蔵効率が悪いためである。
そこで、エネルギー的な利用効率を上げるために、消化ガスからメタンを分離精製する方法が知られている。その方法として、アミン水溶液や炭酸カリウム水溶液などのアルカリ水溶液でメタンを吸収し加熱再生する化学吸収法、メタンを加圧水に吸収し減圧放散する水吸収法、および、吸着材を充填した吸着塔および脱着塔の加圧、減圧を繰り返し、メタンを吸着/脱着するPSA法(Pressure Swing Adsorption)などが用いられている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
また、包接水和物を利用した特定気体の分離濃縮技術として、アルキルアンモニウム塩をゲスト分子として含む中空の籠状結晶構造を持つ包接水和物を用いて、メタンと二酸化炭素を主成分とする消化ガスから硫化水素を除去するための方法および炭化水素からメタンを分離するための方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開平9−29295号公報 特開2001−187998号公報 特開2003−138281号公報
しかし、上記化学吸収法は吸収液のコストが高く、再生時に大量の熱エネルギーが必要となる。また、上記水吸収法は、約30kg/cm2G(約3MPa)の高圧が必要となり、ランニングコストが高い。また、上記PSA法は、水吸収法より低圧の1〜3kg/cm2G(0.1〜0.3MPa)で運転可能であるが、処理ガス中に水分が含まれている場合には、吸着効率が下がるために、処理ガスの除湿が必要となり、装置コストおよび運転コストが増加するという問題がある。
さらに、前記特許文献3に記載の方法では、上述したように消化ガスの成分には、メタン、二酸化炭素、硫化水素および水が含まれており、これを原料ガスとして処理を行った場合、当初は硫化水素が中空の籠に選択的に包接されるが、硫化水素の成分比が小さくなるにつれて、メタンが中空の籠に包接されはじめ、最終的には硫化水素およびメタン共に空の籠に包接されることとなる。そのため、メタンを利用する場合には、包接過程を制御し、硫化水素とメタンの包接を制限するか、あるいは両ガスが包接された包接化合物から更に硫化水素あるいはメタンの何れかを分離する必要が生じる。前者の場合、硫化水素およびメタンの存在比に依存した競合過程となるため、硫化水素あるいはメタンのみを分離することは困難であり、後者の場合、装置コストおよび運転コストが増加するという問題がある。
上記のように、混合ガスからメタンを分離精製しようとした場合、従来の方法にはエネルギーの無駄、設備の大型化、保守費用がかさむ等の問題があった。
そこで、本発明は、簡易な方法および装置により、エネルギーの無駄が少なく、かつ安価で効率的に混合ガスからメタンを分離精製するためのメタン分離精製方法およびメタン分離精製装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、少なくともメタン、二酸化炭素および硫化水素を含む混合ガスからメタンを分離精製するに際し、前記水吸収法のような高圧は不要であり、また、前記PSA法とは異なり連続的な製造が可能で、さらに、処理ガス中に水分があっても影響がないため吸着材の耐久性の問題がないメタン分離精製方法およびメタン分離精製装置を提供することが可能となった。
また、簡易な方法および装置により、エネルギーの無駄が少なく、かつ安価で効率的に混合ガスからメタンを分離精製するためのメタン分離精製方法およびメタン分離精製装置を提供することが可能となった。
すなわち、本発明は以下のような特徴を有している。
[1]少なくともメタン、二酸化炭素および硫化水素を含む混合ガスからメタンを分離精製するメタン分離精製方法であって、
前記混合ガスから硫化水素を除去する脱硫工程と、
前記脱硫工程で混合ガス中から硫化水素が除去された脱硫ガスを、包接水和物を形成する物質の水溶液中に分散させながら供給する分散・供給工程と、
前記分散・供給工程で得られた、脱硫ガスと包接水和物を形成する物質の水溶液との混合物を冷却して包接水和物を生成させる包接水和物生成工程と、
前記包接水和物生成工程により生成された包接水和物と包接水和物を形成する物質の水溶液とにより形成される包接水和物のスラリーと、未反応ガスとを分離する分離工程と、
前記分離工程により分離された包接水和物のスラリーを加温してメタン富化ガスを放出させる放出工程と
を備えていることを特徴とするメタン分離精製方法。
[2]上記[1]において、放出工程により放出されたメタン富化ガスを、脱硫ガスの全部又は一部として分散・供給工程に供給することを特徴とするメタン分離精製方法。
[3]上記[1]又は[2]において、分離工程により分離された未反応ガスを、分散・供給工程に供給される脱硫ガスに混合することを特徴とするメタン分離精製方法。
[4]上記[1]乃至[3]のいずれかにおいて、分散・供給工程に供給する脱硫ガスを、微細気泡として包接水和物を形成する物質の水溶液中に分散させることを特徴とするメタン分離精製方法。
[5]上記[1]乃至[3]のいずれかにおいて、分散・供給工程に供給する脱硫ガスを、エジェクターを介して包接水和物を形成する物質の水溶液中に分散させることを特徴とするメタン分離精製方法。
[6]上記[1]乃至[5]のいずれかにおいて、包接水和物を形成する物質が、アルキルアンモニウム塩、アルキルホスホニウム塩、アルキルスルホニウム塩またはこれらの2種以上の混合物を含むことを特徴とするメタン分離精製方法。
[7]上記[1]乃至[6]のいずれかにおいて、放出工程により包接水和物のスラリーからメタン富化ガスを放出した後に残る包接水和物を形成する物質の水溶液の少なくとも一部を、分散・供給工程に戻す循環工程を備えていることを特徴とするメタン分離精製方法。
[8]少なくともメタン、二酸化炭素および硫化水素を含む混合ガスからメタンを分離精製するメタン分離精製装置であって、
前記混合ガスから硫化水素を除去する脱硫手段と、
前記脱硫工程で混合ガス中から硫化水素が除去された脱硫ガスを、包接水和物を形成する物質の水溶液中に分散させながら供給する分散・供給手段と、
前記分散・供給手段で得られた、脱硫ガスと包接水和物を形成する物質の水溶液との混合物を冷却して包接水和物を生成させる包接水和物生成手段と、
前記包接水和物生成手段により生成された包接水和物と包接水和物を形成する物質の水溶液とにより形成される包接水和物のスラリーと、未反応ガスとを分離する分離手段と、
前記分離手段により分離された包接水和物のスラリーを加温してメタン富化ガスを放出させる放出手段と
を備えていることを特徴とするメタン分離精製装置。
[9]上記[8]に記載のメタン分離精製装置を2つ以上配置して構成したメタン分離精製装置であって、
前記2つ以上配置したメタン分離精製装置の上流側に位置するメタン分離精製装置の放出手段で放出されたメタン富化ガスの全部又は一部を、下流側に位置するメタン分離精製装置の分散・供給手段に脱硫ガスとして供給するように配置したことを特徴とするメタン分離精製装置。
[10]上記[8]又は[9]において、分離手段で分離された未反応ガスを、分散・供給手段に供給される脱硫ガスに混合する未反応ガス混合手段を備えたことを特徴とするメタン分離精製装置。
[11]上記[8]乃至[10]のいずれかにおいて、分散・供給手段に供給する脱硫ガスを、微細気泡として包接水和物を形成する物質の水溶液中に分散させる微細気泡発生手段を備えたことを特徴とするメタン分離精製装置。
[12]上記[8]乃至[10]のいずれかにおいて、分散・供給手段に供給する脱硫ガスを、包接水和物を形成する物質の水溶液中に分散させるためのエジェクターを備えたことを特徴とするメタン分離精製装置。
[13]上記[8]乃至[12]のいずれかにおいて、放出手段により包接水和物のスラリーからメタン富化ガスを放出した後に残る包接水和物を形成する物質の水溶液の少なくとも一部を、分散・供給手段に戻す循環手段を備えていることを特徴とするメタン分離精製装置。
本発明によれば、簡易な方法および装置により、エネルギーの無駄が少なく、かつ安価で効率的に混合ガスからメタンを分離精製するためのメタン分離精製方法およびメタン分離精製装置が提供される。
以下、図面を用いて、本発明に係るメタン分離精製方法およびメタン分離精製装置について、最良の形態の一例を説明する。
図1は本発明に係るメタン分離精製装置における第1の実施形態を示す概略構成図である。
図1に示すメタン分離精製装置20aは、少なくともメタン、二酸化炭素および硫化水素を含む混合ガス1aから、まず硫化水素を分離して除去する脱硫手段2と、前記脱硫手段2で混合ガス中から硫化水素が除去された脱硫ガス1bを、包接水和物を形成する物質の水溶液10中に分散させながら供給する分散・供給手段3と、前記分散・供給手段3で得られた、脱硫ガス1bと包接水和物を形成する物質の水溶液10との混合物を冷却して包接水和物を生成させる包接水和物生成手段4と、前記包接水和物生成手段4により生成された包接水和物と包接水和物を形成する物質の水溶液とにより形成される包接水和物のスラリーと、脱硫ガス1b中の未反応ガス6とを分離する分離手段5と、前記分離手段5により分離された包接水和物のスラリーを加温してメタン富化ガス9を放出させる放出手段7とを備えている。
なお、図1では、原料となる混合ガス1aを脱硫手段2に供給するためのブロワまたはコンプレッサ、水溶液10の移送のためのポンプ、および各種制御弁等は図示を省略している。また、図1において、前記分散・供給手段3には、例えば、供給配管11を通して包接水和物を形成する物質の水溶液が供給される。
以下、前記各手段について、詳しく説明する。
[脱硫手段2]
脱硫手段2では、少なくともメタン、二酸化炭素および硫化水素を含む混合ガス1aから、まず硫化水素を分離して除去する。ここで、この脱硫手段2における脱硫方法としては、例えば、酸化鉄を充填した脱硫塔内に混合ガス1aを導入して脱硫を行う方法、あるいはアルカリ浴中に混合ガス1aを導入してアルカリ洗浄することにより硫化水素を溶解して脱硫するアルカリ洗浄方法などを用いることができる。
[分散・供給手段3]
次に、分散・供給手段3では、前記脱硫工程で混合ガス中から硫化水素が除去された脱硫ガス1bが包接水和物を形成する物質の水溶液10中に分散されながら供給されると共に、前記脱硫ガス1bの一部は水溶液10中に溶解する。
ここで、前記包接水和物を形成する物質(以下、「包接水和物形成物質」という。)としては、アルキルアンモニウム塩、アルキルホスホニウム塩、アルキルスルホニウム塩またはこれらの2種以上の混合物を含むものを用いることができる。
前記アルキルアンモニウム塩、アルキルホスホニウム塩、アルキルスルホニウム塩としては、それぞれ下記一般構造式(1),(2),(3)で表されるものを用いることができる。
Figure 2006206635
上記一般構造式(1),(2),(3)中において、R、R,R,Rは炭素数1〜5のアルキル基または水素を示し、その少なくとも一つはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基等のアルキル基である。また、Xは陰イオンを示し、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン等のハロゲンイオンや、硝酸イオン、ヒドロキシルイオン等である。
また、前記水溶液10としては、前記包接水和物形成物質を2〜40質量%を含む水溶液を用いることが好ましい。
前記包接水和物形成物質の水溶液10を冷却することにより、包接水和物が生成される。例えば、包接水和物形成物質としてアルキルアンモニウム塩の一種である臭化テトラn−ブチルアンモニウム((C4H9)4NBr:以下、「TBAB」と記す。)を用いる場合、水溶液中のTBABの質量濃度が6%の時は約4℃、10%では約6.7℃、20%では約9℃以下にそれぞれ冷却すると包接水和物が生成される。これらの包接水和物は、水分子で構成される籠状の構造内部に包接水和物形成物質が取り込まれてできたものであるが、それらが取り込まれている籠の周囲に、より小さい中空の12面体の籠状構造が存在すると考えられている。この12面体籠状構造と同程度、またはやや小さい分子サイズの気体が包接水和物形成物質の水溶液中に存在すると、包接水和物形成物質の包接水和物が生成される際に、その気体分子も前記12面体籠状構造に取り込まれることになる。その際、取り込まれる気体には、気体の種類による選択性があり、例えば、包接水和物形成物質の水溶液中に硫化水素とメタンが存在していると、硫化水素の方がより取り込まれやすく、メタンと二酸化炭素が存在する場合には、メタンの方がより取り込まれやすい。この選択性は気体分子のサイズや、気体の水への溶解度に依存すると言われているが、そのメカニズムはまだよく分かっていない。なお、上述の気体分子の取り込みは、圧力が高ければ高いほど取り込み量は多くなるが、設備の耐圧構造化に伴う設備費や運転費等の経済性を考慮する必要がある。
本発明においては、前記脱硫手段2において混合ガス1a中から硫化水素が除去された脱硫ガス1bを水溶液10中に供給しているので、前記混合ガス1a中のメタンが選択的に包接水和物中に取り込まれることとなる。
また、前記分散・供給手段3で水溶液10中に供給される脱硫ガス1bは、微細気泡として水溶液10中に分散させることが好ましい。脱硫ガス1bを微細気泡として水溶液10中に分散させることにより、脱硫ガス1bと水溶液10との接触面積が大きくなり、脱硫ガス1b中のメタンの水溶液10中への溶解がより促進されるからである。
ここで、前記脱硫ガス1bを微細気泡として水溶液10中に分散させる手段としては、例えば、インライン静止混合器(スタティックミキサ)やベンチュリ方式の混合器等の微細気泡発生装置を前記分散・供給手段3に備える、あるいは前記分散・供給手段3を前記微細気泡発生装置とすることにより行うことができる。
前記インライン静止混合器としては、例えば、
図2に示すような構成のものを用いることができる。図2に示すインライン静止混合器50は、入口側が大径で出口側が小径になった2段状の筒状体51からなり、この筒状体51の大径部51a中にガイドベーンと呼ばれる翼体53を有し、その先の小径部51b内に筒の内周面から中央に延びる複数のキノコ状の衝突体55を有している。このようなインライン静止混合器においては、混合器内に供給された水溶液10が翼体53によって旋回流となり、猛烈な遠心力によって外側へ押しやられ、それがキノコ状の衝突体55によってさらに強烈に攪拌され、その中に脱硫ガス1bが巻き込まれて超微細な気泡群に砕かれ、脱硫ガス1bと水溶液10とが分散、混合される。これによって、脱硫ガス1bと水溶液10との接触面積が大きくなり脱硫ガス1bは水溶液10中により効率よく溶け込む。
また、前記ベンチュリ方式の混合器としては、ベンチュリに気液混相流体を流入させ、その出口拡大部で発生する衝撃波で気泡を破砕して微細気泡を発生させる方式がある。
なお、前記脱硫ガス1bを微細気泡として水溶液10中に分散させる手段としては、上記の手段に限定されるものではなく、脱硫ガス1bを水溶液10中に微細な気泡、好ましくは平均直径が100μm程度またはそれ以下、より好ましくは平均直径が10μm程度またはそれ以下の気泡として水溶液10中に分散、供給させられるものであれば良い。
また、本分散・供給手段3で包接水和物形成物質の水溶液10中に供給される脱硫ガス1bは、エジェクターにより前記水溶液10中に分散するようにしても良い。分散・供給手段3にエジェクターを設け、前記エジェクターに脱硫ガス1bと包接水和物形成物質の水溶液10とを通すことで、前記脱硫ガス1bと水溶液10とが強烈に攪拌され、脱硫ガス1bが超微細な気泡群に砕かれ、脱硫ガス1bと水溶液10とが分散、混合される。これによって、脱硫ガス1bと水溶液10との接触面積が大きくなり脱硫ガス1b中のメタンは水溶液10中により効率よく溶け込む。
[包接水和物生成手段4]
次に、包接水和物生成手段4では、前記分散・供給手段3で得られた脱硫ガス1bと包接水和物形成物質の水溶液10との混合物を冷却して包接水和物を生成させる。
前記分散・供給手段3を出た脱硫ガス1bと包接水和物形成物質の水溶液10との混合物は包接水和物生成手段4内に流入し、ここで冷却されて包接水和物を生成すると共に、脱硫ガス1b中のメタンの一部を包接水和物の12面体籠状構造の中に取り込む。上述したように、この際、前記包接水和物の12面体籠状構造の中には脱硫ガス1b中のメタンが優先的に取り込まれる。
包接水和物の生成は発熱反応であるため、この包接水和物生成手段4は脱硫ガス1bと水溶液10との混合物を冷却できる構造のものである必要がある。ここで、この包接水和物生成手段4は冷却できる構造のものであればその形式には特に制限は無いが、冷却効率を高めるために、例えば、二重管式熱交換器や多管式熱交換器等と同様な形式とすることが好ましい。
ここで、前記包接水和物形成物質としてTBABを用いる場合、包接水和物の生成に必要な温度は前述したように、水溶液中のTBABの質量濃度が6%の時は約4℃、10%では約6.7℃、20%では約9℃以下である。しかし、包接水和物の生成反応を早く進めるためには、これらよりも低い温度、例えば、前記温度よりもそれぞれ2〜3℃以上低い温度まで冷却することが好ましい。
なお、図1に示す実施形態においては、前記分散・供給手段3とこの包接水和物生成手段4とを別々に設ける構成としているが、例えば、容器内の上部空間に脱硫ガス1bが存在するように構成した冷却装置付容器内の包接水和物形成物質の水溶液10を機械的に攪拌し、脱硫ガス1bを水溶液10中に混合、攪拌させると同時に冷却する方式とすることで、1つの装置として構成することができる。ここでは、脱硫ガス1bを包接水和物形成物質の水溶液10に十分に接触、溶解させ、包接水和物生成に伴う発熱を除去すれば良い。
[分離手段5]
次に、分離手段5では、前記包接水和物生成手段4で生成された包接水和物と包接水和物形成物質の水溶液とにより形成される包接水和物のスラリーと、脱硫ガス1b中の未反応ガス6とを分離する。
前記包接水和物生成手段4の出口では、固体である包接水和物、気体である未反応ガス、および液体である未反応の包接水和物形成物質の水溶液からなる気固液三相流の状態となっている。ここで、前記固体である包接水和物と液体である未反応の包接水和物形成物質の水溶液とはスラリー(固液二相流体)となっている。
前記包接水和物生成手段4から導出される気固液三相流の状態のものを分離手段5に導き、そこから未反応ガス6を分離する。なお、前記分離された未反応ガス6には、前記包接水和物生成手段4において12面体籠状構造に取り込まれなかったメタンが含まれているため、燃焼させた上で大気中に放散するか、あるいは、有害物質成分の濃度が放出基準を下回っていることを測定した上で、大気中に放散する。または、図示しないが、有機性廃棄物を発酵処理し、消化ガスを生成するメタン発酵槽へ供給し、メタン発酵効率を増加するために使用してもよい。
前記分離手段5では、包接水和物と未反応の包接水和物形成物質の水溶液とによる包接水和物のスラリーと、未反応ガス6とを分離するものであるが、その手段としては、例えば、サイクロンセパレーターを用いることにより行うことができる。
[放出手段7]
次に、放出手段7では、前記分離手段5で分離された包接水和物のスラリーを加温してメタン富化ガス9と包接水和物形成物質の水溶液10とに分離し、メタン富化ガス9を放出させる。
前記分離手段5を出た包接水和物と未反応の包接水和物形成物質の水溶液とによる包接水和物のスラリー(固液二相流体)は、放出手段7で加熱されて包接水和物が分解され、同時に前記包接水和物に取り込まれていたメタン分子が気体として放出される。前記包接水和物から気体を放出させるために必要な加熱温度としては、前記包接水和物の生成に必要な温度以上が必要となる。
例えば、包接水和物形成物質としてTBABを用いた場合には、前記包接水和物の生成に必要な温度としては、包接水和物生成前の水溶液中におけるTBABの質量濃度が6%の時は約4℃、10%では約6.7℃、20%では約9℃となる。しかし、包接水和物に取り込まれている気体の放出を速やかに進めるために、前記温度よりも高い温度、例えば20〜40℃程度の温度まで加熱することが好ましい。
本放出手段7における加熱は、例えば、放出手段7に設けた加熱部71で行なうようにしても良い。前記加熱部71での加熱には、種々の加熱手段を用いることができるが、エネルギーの有効利用という観点から、包接水和物生成工程との間で熱交換を行い、生成熱を最大限に利用することが好ましい。更に不足する熱量については様々な排熱を利用することが可能であるが、例えば、前記包接水和物生成手段4で用いる冷却装置の排熱などを利用することも可能である。
ここで、包接水和物のスラリーを加熱することで、本放出手段7における加熱部71の出口では、包接水和物形成物質の水溶液と包接水和物から放出された気体との気液二相流となる。そして、前記包接水和物から放出された気体は、例えば、前記加熱部71の下流側に設けられるメタン富化ガス分離器72において分離される。なお、前記メタン富化ガス分離器72は、図1に示すように放出手段7の一部として設けてもよく、また、別途の装置として設けても良い。
前述したように、包接水和物中にはメタンが優先的に取り込まれるため、本放出手段7において、前記加熱部71で包接水和物が加熱分解された時に放出され、前記メタン富化ガス分離器72で分離された気体のメタン濃度は、原料である脱硫ガスのメタン濃度よりも高いメタン富化ガスとなる。
また、本放出手段7により放出されたメタン富化ガス9を、脱硫ガスの全部又は一部として分散・供給手段3に供給するようにしても良い。例えば、放出手段7により放出されたメタン富化ガス9を全て、脱硫ガス1bとして分散・供給手段3に供給することにより、バッチ処理的に前記メタン富化ガス9のメタン濃度をさらに高めることが可能となる。また、本放出手段7により放出されたメタン富化ガス9を、脱硫ガスの一部として混合して分散・供給手段3に供給することで、メタン濃度を所定の値に調整した後のメタン富化ガスを原料の混合ガスとして供給することができ、任意の濃度のメタン富化ガスを製造することが可能となる。
なお、前記メタン富化ガスの循環の回数には特に制限は無く、循環回数を増やすことでさらに高濃度のメタン富化ガスの製造が可能となる。
図3は本発明に係るメタン分離精製装置における第2の実施形態を示す概略構成図である。
図3に示すメタン分離精製装置20bは、図1に示すメタン分離精製装置20に対して、放出手段7で包接水和物のスラリーからメタン富化ガスを放出した後に残る包接水和物形成物質の水溶液10の少なくとも一部を、分散・供給手段3に戻す循環手段8を備えたものである。なお、図3に示す、脱硫手段2、分散・供給手段3、包接水和物生成手段4、分離手段5、放出手段7、供給配管11は図1に示したものと同様であるので、ここでの説明を省略する。また、図3においては、原料となる混合ガス1aを脱硫手段2に供給するためのブロワまたはコンプレッサ、水溶液10の移送のためのポンプ、および各種制御弁等は図示を省略している。
以下、前記循環手段8について、説明する。
[循環手段8]
循環手段8は、放出手段7で包接水和物のスラリーからメタン富化ガスを放出した後に残る包接水和物形成物質の水溶液10の少なくとも一部を、分散・供給手段3に戻す。ここで、前記循環手段8としては、放出手段7から排出される水溶液10を分散・供給手段3に搬送するための配管、前記水溶液10を循環移送するためのポンプ、各種制御弁等により構成される。
放出手段7で包接水和物のスラリーからメタン富化ガスを放出した後に残る包接水和物形成物質の水溶液10は、変質等の問題がなく、循環再使用が可能である。そのため、循環手段8を備えることで、包接水和物形成物質の水溶液10を無駄にすることなく再利用可能となり、運転費の低減等の効果を有する。
なお、前記循環手段8には、循環される前記水溶液10中の包接水和物形成物質の濃度を調整できるような手段、例えば、濃縮された水溶液中の包接水和物形成物質の濃度を下げるための、水等の溶媒を添加する手段等を設けても良い。これにより、循環する包接水和物形成物質の水溶液10の濃度を一定に保つことができ、メタン富化ガスの製造を安定して行うことが可能となる。また、前記循環手段8は、前記分散・供給手段3に包接水和物を形成する物質の水溶液を供給する供給配管11の途中につなげるようにしてもよく、また、前記供給配管11を前記循環手段8の途中につなげるようにしてもよい。なお、前記循環手段8により供給される包接水和物形成物質の水溶液10の量が十分であれば、前記供給配管11による包接水和物形成物質の水溶液10の供給は必ずしも必要ではない。
図4は本発明に係るメタン富化ガスの製造装置における第3の実施形態を示す概略構成図である。
図4に示す装置は、図3に示すメタン分離精製装置20bを2つ処理の流れが一連となるように直列に2段配置して構成したものである。なお、以下の記載において、処理の流れに対して上流側に位置するメタン分離精製装置を第一メタン分離精製装置、処理の流れに対して下流側に位置するメタン分離精製装置を第二メタン分離精製装置と記す。
ここで、前記第一メタン分離精製装置における脱硫手段2a、前記第一及び第二メタン分離精製装置における分散・供給手段3a,3b、包接水和物生成手段4a,4b、分離手段5a,5b、放出手段7a,7b、循環手段8a,8b、供給配管11a,11bは、それぞれ図3に示す脱硫手段2、分散・供給手段3、包接水和物生成手段4、分離手段5、放出手段7、循環手段8、供給配管11と同様であるので、ここでの説明を省略する。また、図4においては、原料となる混合ガス1aを分散・供給手段3aに供給するためのブロワまたはコンプレッサ、水溶液10a,10bの移送のためのポンプ、および各種制御弁等は図示を省略している。
前記第一メタン分離精製装置の放出手段7aで放出されたメタン富化ガス9aの全部又は一部は、前記第二メタン分離精製装置の分散・供給手段3bに脱硫ガスとして供給される。前記第二メタン分離精製装置では、メタン富化ガスが脱硫ガスとして供給されるので、第二メタン分離精製装置の放出手段7bで放出されるメタン富化ガス9bのメタン濃度は、前記第一メタン分離精製装置の放出手段7aで放出されるメタン富化ガス9aのメタン濃度よりさらに高いメタン濃度となる。
図4に示す装置構成でのメタン富化ガスの製造は、上述の第1の実施形態における放出手段7で例示した、放出手段7により放出されたメタン富化ガス9を脱硫ガスの全部又は一部として分散・供給手段3に供給するようにした場合と同様の効果を奏するが、上述の第1の実施形態における放出手段7で例示した場合と比較して、メタン富化ガスの製造を連続して行うことが可能となるという効果も奏する。
また、前記第一メタン分離精製装置の放出手段7aで放出されたメタン富化ガスと、メタン濃縮前の脱硫ガスとを混合して前記第二メタン分離精製装置の分散・供給手段3bに供給することで、メタン濃度を所定の値に調整した後のメタン富化ガスを第二メタン分離精製装置に脱硫ガスとして供給することができ、第二メタン分離精製装置の放出手段7aからより高濃度のメタン富化ガスを放出させることが可能となる。
なお、図4においては、メタン分離精製装置を2段直列に接続して配置した場合について記載したが、3段以上接続した構成とすることも可能である。この場合、上流側(上段側)の製造装置で放出したメタン富化ガスを下流側(下段側)の製造装置に脱硫ガスとして供給することで、さらに高いメタン濃度のメタン富化ガスを製造することが可能となる。
また、前記第二メタン分離精製装置の分離手段5bで分離された未反応ガス6bを配管等で導き、前記第一メタン分離精製装置の分散・供給手段3aに、脱硫ガス1bの全部、又は、前記分散・供給手段3aに供給される脱硫ガス1bと混合してその一部として供給することが好ましい。前記第二メタン分離精製装置の分離手段5bで分離された未反応ガス6b中にはメタンを含有する場合があるため、再循環することによりメタンを有効に回収することが可能となるからである。
つまり、メタン分離精製装置を2段以上直列に接続して配置した場合、下流側(下段側)のメタン分離精製装置の分離手段で分離された未反応ガスを、上流側(上段側)のメタン分離精製装置に供給される脱硫ガスの全部又は一部として循環使用することで、メタン濃度の高い未反応のメタン富化ガスを有効に活用でき、高濃度のメタン富化ガスを効率良く製造することが可能となる。
本発明に係るメタン分離精製装置における第1の実施形態を示す概略構成図である。 本発明に係る分散・供給手段におけるインライン静止混合器を示す概略構成図である。 本発明に係るメタン分離精製装置における第2の実施形態を示す概略構成図である。 本発明に係るメタン分離精製装置における第3の実施形態を示す概略構成図である。
符号の説明
1a 混合ガス
1b 脱硫ガス
2,2a 脱硫手段
3,3a,3b 分散・供給手段
4,4a,4b 包接水和物生成手段
5,5a,5b 分離手段
6,6a,6b 未反応ガス
7,7a,7b 放出手段
8,8a,8b 循環手段
9,9a,9b メタン富化ガス
10,10a,10b 水溶液
11,11a,11b 供給配管
20a,20b,20c メタン分離精製装置
71,71a,71b 加熱部
72,72a,72b メタン富化ガス分離器

Claims (13)

  1. 少なくともメタン、二酸化炭素および硫化水素を含む混合ガスからメタンを分離精製するメタン分離精製方法であって、
    前記混合ガスから硫化水素を除去する脱硫工程と、
    前記脱硫工程で混合ガス中から硫化水素が除去された脱硫ガスを、包接水和物を形成する物質の水溶液中に分散させながら供給する分散・供給工程と、
    前記分散・供給工程で得られた、脱硫ガスと包接水和物を形成する物質の水溶液との混合物を冷却して包接水和物を生成させる包接水和物生成工程と、
    前記包接水和物生成工程により生成された包接水和物と包接水和物を形成する物質の水溶液とにより形成される包接水和物のスラリーと、未反応ガスとを分離する分離工程と、
    前記分離工程により分離された包接水和物のスラリーを加温してメタン富化ガスを放出させる放出工程と
    を備えていることを特徴とするメタン分離精製方法。
  2. 放出工程により放出されたメタン富化ガスを、脱硫ガスの全部又は一部として分散・供給工程に供給することを特徴とする請求項1に記載のメタン分離精製方法。
  3. 分離工程により分離された未反応ガスを、分散・供給工程に供給される脱硫ガスに混合することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のメタン分離精製方法。
  4. 分散・供給工程に供給する脱硫ガスを、微細気泡として包接水和物を形成する物質の水溶液中に分散させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のメタン分離精製方法。
  5. 分散・供給工程に供給する脱硫ガスを、エジェクターを介して包接水和物を形成する物質の水溶液中に分散させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のメタン分離精製方法。
  6. 包接水和物を形成する物質が、アルキルアンモニウム塩、アルキルホスホニウム塩、アルキルスルホニウム塩またはこれらの2種以上の混合物を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のメタン分離精製方法。
  7. 放出工程により包接水和物のスラリーからメタン富化ガスを放出した後に残る包接水和物を形成する物質の水溶液の少なくとも一部を、分散・供給工程に戻す循環工程を備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のメタン分離精製方法。
  8. 少なくともメタン、二酸化炭素および硫化水素を含む混合ガスからメタンを分離精製するメタン分離精製装置であって、
    前記混合ガスから硫化水素を除去する脱硫手段と、
    前記脱硫手段で混合ガス中から硫化水素が除去された脱硫ガスを、包接水和物を形成する物質の水溶液中に分散させながら供給する分散・供給手段と、
    前記分散・供給手段で得られた、脱硫ガスと包接水和物を形成する物質の水溶液との混合物を冷却して包接水和物を生成させる包接水和物生成手段と、
    前記包接水和物生成手段により生成された包接水和物と包接水和物を形成する物質の水溶液とにより形成される包接水和物のスラリーと、未反応ガスとを分離する分離手段と、
    前記分離手段により分離された包接水和物のスラリーを加温してメタン富化ガスを放出させる放出手段と
    を備えていることを特徴とするメタン分離精製装置。
  9. 請求項8に記載のメタン分離精製装置を2つ以上配置して構成したメタン分離精製装置であって、
    前記2つ以上配置したメタン分離精製装置の上流側に位置するメタン分離精製装置の放出手段で放出されたメタン富化ガスの全部又は一部を、下流側に位置するメタン分離精製装置の分散・供給手段に脱硫ガスとして供給するように配置したことを特徴とするメタン分離精製装置。
  10. 分離手段で分離された未反応ガスを、分散・供給手段に供給される脱硫ガスに混合する未反応ガス混合手段を備えたことを特徴とする請求項8又は9に記載のメタン分離精製装置。
  11. 分散・供給手段に供給する脱硫ガスを、微細気泡として包接水和物を形成する物質の水溶液中に分散させる微細気泡発生手段を備えたことを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載のメタン分離精製装置。
  12. 分散・供給手段に供給する脱硫ガスを、包接水和物を形成する物質の水溶液中に分散させるためのエジェクターを備えたことを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載のメタン分離精製装置。
  13. 放出手段により包接水和物のスラリーからメタン富化ガスを放出した後に残る包接水和物を形成する物質の水溶液の少なくとも一部を、分散・供給手段に戻す循環手段を備えていることを特徴とする請求項8乃至12のいずれかに記載のメタン分離精製装置。
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