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JP2006282725A - ケイ素含有新規光学活性化合物 - Google Patents

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JP2006282725A JP2005101429A JP2005101429A JP2006282725A JP 2006282725 A JP2006282725 A JP 2006282725A JP 2005101429 A JP2005101429 A JP 2005101429A JP 2005101429 A JP2005101429 A JP 2005101429A JP 2006282725 A JP2006282725 A JP 2006282725A
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Kuninori Obata
邦規 小畠
Rentei Rin
蓮貞 林
Mitsuhisa Wada
和田満久
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Abstract

【課題】光学活性基を置換基として持ち、かつ透明で重合性を併せ持つなどの優れた特性を有するケイ素含有新規光学活性化合物を提供する。
【解決手段】ケイ素含有新規光学活性化合物は、光学活性基と、重合性置換基とを含んでいる。下記一般式(1)で示され、かつポリシルセスキオキサン誘導体である。式中のRは、次の三つの置換基群から構成されている。Rには第一群の少なくとも一種類の置換基と第二群の少なくとも一種類の置換基とを必ず含み、第三群については含まれないこともある。第一群:不斉源を持つ有機もしくは有機金属置換基第二群:含ビニル基、含メタクリル基、含アクリル基、含エポキシ基第三群:水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、含芳香族置換基また、n/m比は0.0以上1.0以下である。

【選択図】なし

Description

本発明は、キラル中心を含む有機置換基がシリコン原子に直接結合された構造を有し、重合性でかつ透明性に優れたケイ素含有新規光学活性化合物群に関する。
従来より、有機ケイ素化合物は、高い耐熱性や電気特性など、有機化合物には無い特性を持つので、シリコンを骨格の一部に含む高分子は、耐熱性材料、耐候性材料、撥水性材料、絶縁材料、電子材料、熱媒体、セラミック材の前駆体などの様々な分野で実用化されている。 従来より報告されているケイ素含有化合物は、その大部分はシロキサン主骨格に有機官能基が結合したシリコーンオイル、シリコーン樹脂と呼ばれる有機−無機ハイブリッド材料の一群である(例えば、非特許文献1、p.299〜318参照)。また、主鎖がケイ素−ケイ素結合のみから構成されているポリシランポリマーについての報告も数多くなされている(例えば、非特許文献2参照.)。
他方、下記一般式(2)で示されるトリハロシランや下記一般式(3)で示されるトリアルコキシシランを原料とし、このものの加水分解−重縮合反応により、ポリシルセスキオキサンと呼称する一連の化合物が合成できることが知られている(例えば、非特許文献3、p34〜44参照)。
上記一般式(2)および(3)中のRとしては、水素原子、アルキル基、芳香族置換基、重合性置換基などの様々な官能基を導入できることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
とりわけ、カゴ形構造(籠状構造)をとっているものや、カゴ形構造の一部が開環している不完全カゴ形構造(部分籠状構造)を取っているポリシルセスキオキサンは、保存安定性の障害となるシラノール基を持たないかまたは少ないため、保存安定性は良好であり、取り扱いも容易である。他の有機モノマーとの相溶性や共重合性を持たせることも可能であり、分子構造の議論もある程度は可能である。このことから、カゴ形構造をとっているものや、カゴ形構造の一部が開環している不完全カゴ形構造を取っているポリシルセスキオキサンに関する研究が、ここ数年顕著に増加してきている(例えば、非特許文献3、p34〜44参照)。
他方、ケイ素化合物中に光学活性基を含有する化合物も以前から合成されてきた。このうち、ポリマーもしくはその原料となりうるものとしては、例えば、下記一般式(4)で示される、光学活性基を置換基として持つクロロシラン類(例えば、特許文献1参照)を原料とし、このものの還元的脱塩素重縮合により、下記一般式(5)で示される、螺旋性すなわち光学活性を持つポリシランポリマーを合成できることが報告されている(例えば、特許文献2参照)。
また、下記一般式(6)で示される、光学活性基を有する環状ポリシロキサン化合物に関する報告もされている(特許文献3)。
特開平6−306087公報(化学式4) 特開平10−226727公報(化学式5) 特開2003−321483(化学式6) チッソ株式会社、アズマテック株式会社カタログ「特殊シリコン試薬・特殊シリコーン・特殊有機金属試薬」、平成10年11月3日 Miller, R. D.; Michl, J. Chem. Rev., 1989, 89,1359. 小畠邦規、ネットワークポリマー、2004、25、(4)、34.
しかし、光学活性基を持つポリシルセスキオキサン化合物についてはこれまでに報告は無かった。
ポリシルセスキオキサンに光学活性基を導入することにより、透明光学材料など、広い適用範囲があると期待できる。また、ポリシルセスキオキサン分子上には異なる置換基が導入することが可能であることから、ポリシルセスキオキサン中に含まれる光学活性基の比率を変えることにより、分子が持つ光学活性度を制御できることも期待できる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学活性基を置換基として持ち、かつ透明で重合性を併せ持つなどの優れた特性を有するケイ素含有新規光学活性化合物を提供することにある。
本願発明者等は、光学活性基をケイ素上の置換基として持つトリアルコキシシランを原料とし、このものと、重合性置換基などをケイ素上の置換基として持つ他のトリアルコキシシランとの共加水分解−共重合により、光学活性基を置換基として持ち、かつ透明で重合性を併せ持つなどの優れた特性を有するケイ素含有新規光学活性化合物が合成可能であることを見出し本発明を完成するに至った。
請求項1に記載のケイ素化合物は、上記の問題を解決するために、下記一般式(1)で示され、かつポリシルセスキオキサン誘導体であることを特徴としている。
上記の構成にすれば、制御された光学活性を有するケイ素含有新規光学活性化合物を得ることが出来る。
式中のRは、次の三つの置換基群から構成されている。Rには第一群の少なくとも一種類の置換基と第二群の少なくとも一種類の置換基とを必ず含み、第三群については含まれないこともある。
第一群:不斉源を持つ有機もしくは有機金属置換基
第二群:含ビニル基、含メタクリル基、含アクリル基、含エポキシ基
第三群:水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、含芳香族置換基
また、n/m比は0.0以上1.0以下である。

請求項2に記載のケイ素含有新規光学活性化合物は、籠状構造もしくは部分籠状構造であることを特徴としている。
上記の構成にすれば、ケイ素含有新規光学活性化合物の構造に規則性を付与することが出来る。
本発明のケイ素含有新規光学活性化合物は、以上のように、光学活性基および重合性置換基を有するポリシルセスキオキサンであり、さらに籠状構造もしくは部分籠状構造を有する。それゆえ、制御された光学活性および成形性を併せ持つケイ素含有新規光学活性化合物を提供できるという効果を奏する。
本発明のケイ素含有新規光学活性化合物は、下記一般式(1)に示される構造を有する。
式中のRは、下記の三つの置換基群から構成されている。Rには第一群の少なくとも一種類の置換基と第二群の少なくとも一種類の置換基とを必ず含み、第三群については含まれないこともある。

第一群は、不斉源を持つ有機もしくは有機金属置換基である。不斉源を持つ有機もしくは有機金属置換基としては、化学的にケイ素上に導入可能なものであれば特に制限は無く、具体的には以下に示した置換基を挙げることが出来る。
第二群は重合性置換基である。具体的には下記構造を持つ化合物を挙げることが出来る。
これらの重合性置換基のうち、原料となるケイ素モノマーの入手のし易さを考慮すると、ビニル基、アルキレン基、スチリル基、3−アクリロイルプロピル基、3−メタクリロイルプロピル基、3グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基が好ましい。

第三群は、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、もしくは分岐状アルキル基、又は炭素数1〜20のフッ素化されたアルキル基、含芳香族置換基である。炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブ チル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基等を例示でき、特に炭素数1〜12、とりわけ炭 素数1〜10のものが好ましい。なお、フッ素化されたアルキル基は、上記アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものであり、トリフ ルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロピル基などが挙げられる。含芳香族置換基としては、フェニルアルキル基およびその誘導体、フェニル基およびその誘導体、ビフェニル基およびその誘導体、ナフチル基およびその誘導体などが挙げられるが、特にフェニルアルキル基およびその誘導体とフェニル基およびその誘導体が好ましく、とりわけフェニル基およびその誘導体が好ましい。

また、n/m比の値は好ましくは0〜1/2で、より好ましくはポリシルセスキオキサンがカゴ形構造を持つと推定できる、0〜1/3である。ポリシルセスキオキサン誘導体は、6〜100個のケイ素原子、つまり(m+n)が、6〜100である事が好ましい。より好ましくは、8〜50である。ここで、n/m比が0.0の場合は、籠状構造であり、n/m比が0.0を超える場合は、部分籠状構造である。

続いて本発明のケイ素含有新規光学活性化合物の合成法について説明する。

合成は、下記一般式(7)の、加水分解−重縮合反応により行うことができる。
式中のRは、次の三つの置換基群から構成されている。Rには第一群の少なくとも一種類の置換基と第二群の少なくとも一種類の置換基とを必ず含み、第三群については含まれないこともある。
第一群:不斉源を持つ有機もしくは有機金属置換基
第二群:含ビニル基、含メタクリル基、含アクリル基、含エポキシ基
第三群:水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、含芳香族置換基
また、式中のX’は、加水分解性を有する基であれば特に限定されず、ハロゲン原子、アルコキシ基、シクロアルコキシ基また はアリールオキシ基などとすることができる。また、この化合物一分子中には三つのX’が含まれるが、これらは全て同じ基であってもよいし二種以上の異なる基であってもよい。これらのうち、本発明におけるX’は、アルコキシ基であることが好ましい。その理由は、がハロゲン原子である場合には加水分解により腐食性が高い酸が発生することに加えて、この合成反応に大きな影響を及ぼすところの反応系内の水素イオン濃度を大幅に変化させてしまうので、反応の制御が難しくなることである。
上記「アルコキシ基」としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−およびi−プロポキシ基、n−、i−およびt−ブトキシ基等が挙げられる。また、「シクロアルコキシ基」の例としてはシクロヘキシルオキシ基等が、「アリールオキシ基」の例としてはフェニルオキシ基等が挙げられる。 このうち、原料の調達コストが低いことと、アルコキシ基の加水分解性が良好であることから、X’が炭素数1〜3のアルコキシ基であることが好ましい。
とりわけ、メトキシ基は加水分解性が最も高い点でより好ましく、エトキシ基は安全性が最も高い点でより好ましい。
続いて、本発明における合成法である加水分解−重縮合反応について述べる。上記トリアルコキシシランを、溶剤中、塩基性もしくは酸性触媒存在下で水と反応させることにより、加水分解−重縮合反応させることにより、目的物を得る。
上記加水分解は、例えばヒドロシリル基のように、塩基性条件では官能基が水と反応する恐れのあるアルコキシシランを反応に用いる場合には酸性条件下で行う。
酸性触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、炭酸、リン酸、硫酸ジルコニウムなどの無機酸や、パラトルエンスルホン酸、酢酸、カルボン酸類などの有機酸を用いることが出来るが、酸としての活性が高くかつ後処理の際に除去しやすい塩酸もしくは硝酸が好ましい。
塩基性触媒としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの無機化合物や、アンモニア、4級アンモニウム塩、水酸化テトラアルキルアンモニウム、有機アミン類等の有機化合物が使用可能であるが、塩基としての活性が高くかつ後処理の際に除去しやすい水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラアルキルアンモニウムが好ましい。
それぞれの触媒は、予め水溶液として加えることもでき、その水溶液の水素イオン濃度は、1〜0.0001規定が好ましい。
加水分解に用いる水の当量としては、全てのアルコキシ基に対し、1.5〜30当量用いることが出来るが、生成物中の残存アルコキシ基を低減させかつ反応系を均一に出来ることから、3〜10当量が好ましい。
その他の反応条件については特に限定されないが、好ましい反応温度は10〜80℃(より好ましくは 40〜60℃)であり、好適な反応時間は1〜30時間(より好ましくは1〜6時間)である。反応温度が低すぎたり反応時間が短すぎる場合には、重縮合が完結しない恐れがあり、逆に反応温度が高すぎたり反応時間が長すぎる場合には、系中の重合性置換基が反応し、重合性の失活もしくは反応中のゲル化を引き起こす恐れがある。
また、この反応に用いる有機溶媒は特に限定されず、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ヘキサン、リグロイン、アセトニトリル等を用いることができる。このうち、反応系を均一に溶解し得る溶剤として、低級アルコール類やテトラヒドロフランなどの極性溶剤が好ましく、特に、生成物中の残存アルコキシ基を低減させうることから、テトラヒドロフランなどのアプロティックな溶剤が好ましい。
反応後は、反応触媒として加えた酸または塩基を、それぞれ飽和炭酸水素ナトリウム水溶液や飽和塩化アンモニウム水溶液などで中和する。次いで、溶剤などの低沸点部を留去し、その後にジエチルエーテルなどの溶剤を用いて分液・抽出を行い、水次いで飽和塩化ナトリウム水溶液を用いて有機相を洗浄する。有機相を分取し、無水水酸化マグネシウムなどの無機無水塩を加えて3時間以上室温放置し、脱水・乾燥を行う。
最終精製は、生成物に対して難溶性の溶剤がある場合には再沈殿法を用いてもよいが、難溶性の溶剤が無い場合には、塩などの不溶物を濾過により除いた後に減圧乾燥により低沸点部を留去して精製する。
本発明のケイ素含有新規光学活性化合物の用途としては、例えば液晶配向膜などの各種光学材料や、エナンチオマー認識用カラム充填剤としての材料などが挙げられる。
測定機器類旋光度;ユニオン 技研社製 高感度自動旋光計 PM−101 (Automatic Digital Polarimeter PM-101)
NMRスペクトル;Varian Unity 400 スペクトルメーター分子量;GPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)(「日本分光株式会社製 高速液体クロマトグラフィーシステム」に、「昭和電工株式会社製 SEC用カラム(KF−805L)」を取り付けて測定した。)
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
参考例(光学活性基を持つトリアルコキシシランの合成)
還流管、三方コック、20mL容滴下ロート(セプタムキャップ付)、磁気攪拌子を備えた50mL容二口ナス形フラスコを脱気乾燥し、アルゴン気流下とした。これに、β−ピネン(東京化成社製)10.0g(73.4mmoL)、10wt%塩化白金酸2−プロパノール溶液100μLを加え、80℃に加熱しつつ、攪拌した。次に、トリエトキシシラン(東京化成社製)12.1g(73.4mmoL)を5分間かけて滴下した後、80℃で8時間反応させた。生成物を減圧蒸留により単離精製し、目的とするβ−ピネニルトリエトキシシランを得た。無色の液体。沸点;50℃/20mmHg)収量;6.60g(22.0mmoL、29.9%)。
実施例1
光学活性三次元有機ケイ素ポリマーは、次の手法によって合成した。還流管を備えた100mL容ナス形フラスコに、1M水酸化ナトリウム水溶液5.40g、テトラヒドロフラン75mL、β―ピネニルトリエトキシシラン0.451g(1.50mmoL)、3−メタクリロイルトリメトキシシラン2.24g(9.00mmoL)、エチルトリメトキシシラン1.80g(12.0mmoL)、イソブチルトリメトキシシラン1.34g(7.50mmoL)を入れ、磁気攪拌子で攪拌しつつ60℃に加熱し、6時間反応させた。反応後、1M塩酸5.40gを加えて中和した後に、ロータリーエバポレーターにより低沸点部を留去した。次にジエチルエーテルで抽出後、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。塩などの不溶物を濾過により除き、減圧乾燥により低沸点部を留去して精製した。生成物は無色透明の粘稠な液状。収量:2.3g。収率:63%。
実施例2
原料のトリアルコキシシランを、β―ピネニルトリエトキシシラン0.902g(3.00mmoL)、3−メタクリロイルトリメトキシシラン2.24g(9.00mmoL)、エチルトリメトキシシラン1.80g(12.0mmoL)、イソブチルトリメトキシシラン1.07g(6.00mmoL)とした他は、実施例1と同じ手法により合成した。生成物は無色透明の粘稠な液状。収量:2.6g。収率:68%。
実施例3
原料のトリアルコキシシランを、β―ピネニルトリエトキシシラン2.70g(9.00mmoL)、3−メタクリロイルトリメトキシシラン2.24g(9.00mmoL)、エチルトリメトキシシラン1.80g(12.0mmoL)とした他は、実施例1と同じ手法により合成した。生成物は無色透明の粘稠な液状。収量:2.8g。収率:65%。
これら実施例1〜3によって合成した化合物の分子量および構造について表1に要約する。なお、表中のT2とはトリアルコキシシランの三つのアルコキシ基のうち二つが反応してシロキサン結合を形成しているものであり、T3とはトリアルコキシシランの三つのアルコキシ基すべてが反応してシロキサン結合を形成しているものである。これらの比率は29Si-NMR測定により算出でき、仮にT3が100%ならば、その構造は完全に閉じたカゴ形構造と考えられ、T2の比率が増加するに従って、カゴ形構造がより不完全になるものと推定できる。なお、トリアルコキシシランの三つのアルコキシ基のうち一つが反応してシロキサン結合を形成しているT1や、未反応モノマーは検出されなかった。
表1によれば、いずれも分子量分布は狭く、またケイ素核磁気共鳴スペクトルから、いずれの生成物共にそのT2/T3比は約10/90と低いことが分る。また、各々の平均分子量から、いずれも16〜17個のケイ素ユニットから一分子が構成されており、平均して一部が開環した不完全カゴ形構造をとっていることが推定できる。また、水素核磁気共鳴スペクトルからは、合成した化合物中に含まれるケイ素上の置換基の比率は仕込み比とよい一致を示しており、今回用いた合成法は、仕込み比通りの置換基比率を生成物に与えることが確認できた。
実施例4
次に、合成したケイ素含有新規光学活性化合物の旋光度を測定した。結果を表2に要約する。
光学活性基の導入率に直線的に比例して、旋光度が同じ符号で増大していることがわかる。この結果から、これら一連の合成反応を通じ、生成物の光学活性が保持されていることと、合成仕込時の光学活性モノマーの比率を変えることにより、合成した樹脂の旋光度を制御できることが明らかとなった。
応用例
実施例1〜3で合成した樹脂を0.10g取り、これに2wt%イルガキュア651(チバガイギー社製)プロピレングリコールモノメチルエテルアセテート溶液0.15gを混合し、スライドガラス上にキャスト法によりコートした。このものを130℃に加熱して溶剤を除去した後に、メタルハイドレートランプを用いて空気中で2分間光照射し、その後に200℃で1時間加熱し、硬化させた。タックの無い無色透明の塗膜が形成でき、その鉛筆硬度は5Bであった。
以上のように、本発明によれば、ケイ素含有新規光学活性化合物を提供することが可能になる。それらケイ素含有新規光学活性化合物が持つ旋光度で表される光学活性度は、合成時の原料の仕込み比により制御することができる。また、これらケイ素含有新規光学活性化合物は、重合性を併せ持ち、紫外線照射および熱処理により容易に硬化して透明なコーティング膜を形成する。加えて耐久性などの有機無機ハイブリッド材料特有の優れた特性を有することにより、液晶配向膜などの各種光学材料や、エナンチオマー認識用カラム充填剤としての材料として用いることが可能である。


Claims (2)

  1. 下記一般式(1)で示され、かつポリシルセスキオキサン誘導体であることを特徴とするケイ素含有新規光学活性化合物。
    式中のRは、次の三つの置換基群から構成されている。Rには第一群の少なくとも一種類の置換基と第二群の少なくとも一種類の置換基とを必ず含み、第三群については含まれないこともある。
    第一群:不斉源を持つ有機もしくは有機金属置換基
    第二群:含ビニル基、含メタクリル基、含アクリル基、含エポキシ基
    第三群:水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、含芳香族置換基
    また、n/m比は0.0以上1.0以下である。
  2. ポリシルセスキオキサン誘導体が、籠状構造もしくは部分籠状構造であることを特徴とする請求項1記載のケイ素含有新規光学活性化合物。
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