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JP2006039027A - 画像形成装置 - Google Patents

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JP2006039027A JP2004215739A JP2004215739A JP2006039027A JP 2006039027 A JP2006039027 A JP 2006039027A JP 2004215739 A JP2004215739 A JP 2004215739A JP 2004215739 A JP2004215739 A JP 2004215739A JP 2006039027 A JP2006039027 A JP 2006039027A
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Eiji Uekawa
英治 植川
Satoru Izawa
悟 伊澤
Akito Kanamori
昭人 金森
Masaki Mochizuki
正貴 望月
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Abstract

【課題】入力電源電圧が異なっても、ヒータ立ち上げ時に投入するオフセット電力を一定になるように制御し、また目標温度に応じてオフセット電力を変化させることにより、オーバーシュートや電力不足の無い温調制御を提供すること。
【解決手段】ヒータに流れる電流検知回路より、最大許容電流を流す時のヒータ点灯デューティ(限界デューティ)を決定する。限界デューティに所定の掛け率を掛けたデューティによって得られる電力を、PI制御のオフセット電力(I成分)として投入することで、電源電圧によらず常に一定の電力投入が可能となる。また、限界デューティに掛ける掛け率を目標温度に応じて変化させることにより、あらゆる目標温度に対して、オーバーシュートや電力不足の無い良好な温調制御を可能とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電子写真式や静電記録式等の画像形成手段により、記録材上に形成された未定着画像を加熱定着する加熱定着装置を有する画像形成装置に関する。より詳しくは、その加熱定着装置を安定した定着温度で制御する温度制御方法に関する。
従来、電子写真方式を採用する画像形成装置においては、未定着トナー像を担持した記録材を、互いに圧接して回転する定着ローラと加圧ローラとで形成されるニップ部を通過させることにより加熱定着させる、いわゆる熱ローラ方式の加熱定着装置が広く用いられている。また、近年ではスタンバイ時に加熱定着装置に電力を供給せず、消費電力を極力低く抑えたフィルム加熱方式の加熱定着装置が実用化されている。フィルム加熱方式の加熱装置は、例えば特許文献1・特許文献2・特許文献3・特許文献4等に提案されている。
これらの加熱定着装置(以下、定着器と呼ぶ)において、一般的にヒータはトライアック等のスイッチング制御素子を介して交流電源に接続されており、この交流電源により電力が供給される。また、定着器には適所にサーミスタ等の温度検知素子が設けられており、その検知温度情報を基に定着器の温度が目標温度になるように制御される。
一般的な電気機器類の温度制御方法として、検知温度(実温度)が目標温度より低ければ加熱を行い、高ければ加熱を停止するというオン/オフ制御があるが、このような制御を画像形成装置の定着器に対して行うと、紙が通紙される通紙中と紙間で必要な電力が異なったり、紙種によって熱容量が異なったりする為に、実温度が目標温度に対してオーバーシュートしたり、温度リップルが大きくなったりという欠点があった。そこで一般的にはPI制御(比例(Proportional)+積分(Integral)制御)または、PID制御(比例+積分+微分(Differential)制御)により、ヒータを点灯するデューティ(点灯すべき時間)を決定し、そのデューティに応じてエンジンコントローラがスイッチング素子を波数制御あるいは位相制御によりオンオフすることにより、より精細な温度制御を行っている。
ヒータ等の温度制御にPID制御を行う際の一般的な制御式を以下のように示す。
D(t)=D(t-1)+αe(t)+α/TΣe(t)+αT(e(t)−e(t-1))
・・・ 式1
D(t) :次のサイクルでの点灯デューティ
e(t) :現在の目標温度と実温度の温度差
e(t-1) :前回の目標温度と実温度の温度差
α :任意の係数
、T:任意の係数
式1の右辺第二項から順に、比例制御、積分制御、微分制御に対応している。ここでαはデューティの増減量に重み付けを行う為の比例係数であり、Ti、Tdは積分時間および微分時間を示す。定着器の特性に応じて、上述のα、Ti、Tdを設定することで、最適な温度制御を可能にする。
定着器の温度制御は、加熱ヒータを室温状態(あるいはスタンバイ状態)から定着目標温度まで立ち上げる為の立ち上げ区間、定着器に記録剤が通過する区間、記録剤が定着器を通過していない区間(紙間)がある。定着器によっては、より精度の高い温度制御を行う為に、それぞれの区間に対して比例係数αや積分時間Ti、微分時間Tdを変化させたり、積分制御や微分制御を場合分けによって改良したり簡略化したりするなどの工夫を行っている場合も多い。
例えば、フィルム加熱方式等のクイックスタート性に優れた定着器に最適なPI制御の一例を挙げる。時間tにおける次回の点灯デューティを次のような場合分けによって行っている。
D(t)=P(比例制御)成分+I(積分制御)成分 ・・・ 式2
e(t):(目標温度)−(実温度)
P(比例制御)成分:10msec毎に毎回2.5×e(t)パーセント増減する。
I(積分制御)成分:500msec連続してe(t)>0℃なら+2.5パーセント。
連続してe(t)<0℃なら−2.5パーセント。
それ以外のタイミングでは増減無し。
このように、加熱定着装置の熱伝導特性に応じて、制御を簡略化している。
また特にヒータの立ち上げタイミング(t=0において)に、式2の初期デューティとして固定の点灯デューティをI(積分制御)成分として与える場合が多い。この初期デューティによって与えられる電力を初期オフセット電力と呼ぶ。この初期オフセット電力値に対してP成分、I成分を増減することにより、目標温度に対する追従性を向上させ、またヒータ立ち上がり時間短縮を図ることが可能となる。
また他方では、プリンタ・複写機の高速化に伴い、記録剤が単位時間に必要とする熱エネルギーは増加する一方である。その為に定着器は従来よりも出力の大きい(=抵抗値の小さい)ヒータを備えている。ヒータの温度制御をサーミスタ等の温度検知素子によって行っている場合、例えば、厚紙など熱エネルギー吸収量の大きい記録剤が通紙された場合、自動的に多くの電力が供給されることになる。しかしながら一方で、ヒータに流れる電流は、安全規格で定められた定格電流を越えることが出来ない。したがって、定格電流を超えないようにヒータに投入できる電力に制限を設ける手段が必要となってくる。このような問題に対して、例えばヒータに流れる電流値を検知する電流検知回路や、商用電源からの入力電圧値を検知する電圧検知をおこない、ヒータに通電するデューティに定格電流を越えないような制限手段を設けることにより、一定以上の電力が入らないようにしている。
特開昭63−313182号公報 特開平2−157878号公報 特開平4−44075号公報 特開平4−204980号公報
上述した技術的背景をまとめると、プリンタ・複写機等の高速化や、装置の立ち上がり時間短縮といった市場のニーズに対応する為に、定着器はヒータの制御方法についても改善を行ってきた。同時に、従来よりも大きな電力を扱うために、安全面から電力や電流の投入方法を制限しコントロールする手段も必要となってきている。そこで、このような新しい手段を有効に利用しながらも、従来のヒータの制御方法に更なる改善を加えることも新たな課題として挙がってきている。以下に本発明によりクリアすべき課題について述べる。
第一の課題として、定着器のヒータ立ち上げ時において、固定の初期点灯デューティにより与えられる電力を初期オフセット電力としてPID制御を行うような場合、次のような欠点がある。
ヒータに電力供給する交流商用電源は、100V系列であれば85V〜140Vの電源電圧範囲がある。入力電圧に大きな幅があると、初期点灯デューティが固定されていても、実際にヒータに投入される初期オフセット電力は大きく異なる。例えば初期点灯デューティを50%、ヒータの抵抗を10Ωとしたとき、入力電圧が85Vでは、初期オフセット電力は361Wとなる。一方、入力電圧が140Vだと980Wとなり大きく異なる。当然ながら、入力電圧が低ければ、初期オフセット電力投入後にPID制御に移行しても、目標温度への到達には時間がかかったり、記録剤が定着器に到達するタイミングでは目標温度に到達できないまま定着動作に入ることも考えられる。このようなケースでは、定着不良やコールドオフセットなどの画像不良が生じる。また、入力電圧が高ければ、目標温度から大きくオーバーシュートしてしまい、定着画像がホットオフセットしてしまったり、高温異常等の故障と判断されてしまう不具合が発生する。
このような問題は、従来のように画像形成装置のスピードが遅ければ、記録剤が定着ニップに搬送されている間に目標温度に復帰することが容易であったが、スピードが速くなると、目標温度に追いつくまでに記録剤の搬送が終わってしまうので制御が追いつかず、画像不良が顕著に現れてしまうことが多い。
特に、装置が高速化するほど、記録剤が定着ニップに搬送された瞬間に、加熱ヒータの温度が急激に下がる傾向がある。これは、ヒータが目標温度に近くなると、PI制御の働きでデューティが絞られることによるもので、記録剤がニップに入った瞬間に、熱が奪われる為に生じる。この傾向は、特にヒータの点灯デューティのうち、I成分(オフセット電力成分)が占める割合が小さいほど、温度の下がり幅が大きくなる。これらの問題を改善する為に、例えば前回のプリントジョブにおいて、ジョブ終了直前にヒータに投入していたデューティを、次のプリント時において、記録剤がニップに到達する瞬間にオフセット電力として再投入するような電力予測制御を行っている場合も多い。しかしながら、電力予測制御は、例えば前回のプリントジョブと今回のプリントジョブで、紙の種類が異なるような場合、電力の過剰供給や電力不足といった問題が生じる。また、加熱定着装置の温まり具合によっては、前回のジョブを今回のジョブに反映させることは、必ずしも最適ではない場合もある。したがって、本発明に係る第一の課題は、入力電圧が異なるような場合においても、常に最適な初期オフセット電力を与えると共に、電力予測制御等に頼らなくても最適な温調が可能な制御方法を提供することである。
また、本発明における第二の課題は、従来のPID制御では、ヒータ立ち上げ時の初期点灯デューティは入力電圧によらず、常に一定であることが多い他に、プリント開始時に決定される定着目標温度が異なる場合においても、同じ点灯デューティで立ち上げを行っている点である。近年の画像形成装置は、多種多様な記録材に対して良好な画像形成が可能なように、予め複数のモードを設けている場合が多い。定着器について言えば、例えば厚紙、ラフ紙、普通紙、平滑紙、薄紙といった、熱容量や表面性の異なる記録材に対して、それぞれ最適な定着温度で定着出来るように、複数の異なる目標温度を設定したモードが予め設けてある。また、画像形成装置によっては、記録材のサイズや種類によっては通常スピードの半速で画像形成を行うモードもある。このような半速モードでは、通常スピード時よりも定着目標温度をかなり低く設定している場合が多い。このように、モードによって、目標温度が異なるにもかかわらず、ヒータ立ち上げ時のオフセット電力を等しく設定すれば、目標温度が高い場合は電力不足に、低い場合は電力の過剰供給になる。したがって、本発明の第二の課題は、定着目標温度やプロセススピードが異なる場合においても、常に最適な初期オフセット電力を与える制御を提供することである。
本発明は下記の手段構成を特徴とする。
(1)加熱ヒータを有する加熱部材と、加圧部材とが互いに圧接して形成される定着ニップ部に、未定着トナー像が保持された記録剤を通過させて加熱定着する画像形成装置は、加熱ヒータに投入する電力を制御する電力制御手段と、加熱ヒータの温度を検知する温度検知手段を有し、記録剤の加熱定着を行う際の定着目標温度に応じて、加熱ヒータの立ち上げ時に投入する電力を変化させることを特徴とする画像形成装置。
(2)前記電力制御手段は、加熱ヒータに流れる電流値を検知する電流検知手段であり、加熱ヒータ立ち上げ時に投入する電力は、定着目標温度に応じて予め設定した電流値に相当するデューティにより決定することを特徴とする(1)に記載の画像形成装置。
(3)前記電力制御手段は、入力電源電圧を検出する電圧検知手段であり、加熱ヒータ立ち上げ時に投入する電力は、検知した入力電圧値と定着目標温度に応じて予め設定したデューティにより決定することを特徴とする(1)に記載の画像形成装置。
(4)前記加熱ヒータは、PI制御あるいはPID制御によって制御され、加熱ヒータ立ち上げ時に変化させる電力は、PI制御あるいはPID制御のI制御成分(積分制御成分=オフセット電力)として投入させることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の画像形成装置。
(5)前記定着目標温度は、加熱ヒータ立ち上げ前のヒータ温度検知手段の検知温度に応じて決定することを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の画像形成装置。
(6)前記加熱ヒータ立ち上げ時において、まず最初に一定の固定電力をヒータに投入し、定着目標温度より低い温度で設定したレディ温度(待機温度)までヒータを立ち上げ、レディ温度までの立ち上がり時間に応じて定着目標温度を決定し、その定着目標温度に対応した電力を、レディ温度からの再立ち上げ時に投入することを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の画像形成装置。
(7)前記画像形成装置は、所定のタイミングから通電した電力を積算する手段を有し、前記加熱ヒータ立ち上げ時において、定着目標温度より低い温度で設定したレディ温度(待機温度)までヒータを立ち上げ、立ち上げ開始からレディ温度到達までに投入した積算電力量に応じて、定着目標温度を決定し、その定着目標温度に応じた電力を、レディ温度からの再立ち上げ時に投入することを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の画像形成装置。
(8)前記加熱定着装置は、スタンバイ中に加熱ヒータに通電を行わず、クイックスタート性に優れた構成であることを特徴とする(1)〜(7)いずれかに記載の画像形成装置。
(9)前記加熱定着装置の定着部材は、可撓性の薄肉定着フィルムを有する、フィルム加熱方式の加熱定着装置であることを特徴とする(8)に記載の画像形成装置。
本発明によれば、電流検知や入力電源電圧検知等の手段を用いることで、入力電圧が異なっても、ヒータの点灯デューティを制御することによって供給電力をコントロールすることが可能となる。特に本発明においては、定着装置の目標温度に対して適切な電力をヒータの立ち上げ時に投入することにより、オーバーシュートや電力不足等の生じない良好な温調制御が可能となる。これらの制御は特に昨今の画像形成装置の高速化や、立ち上げ時間の短縮化に効果的であり、スタンバイ時に電力を投入しないクイックスタート性に優れた加熱定着器の制御として最適である。また、画像形成装置の使用される環境が異なったり、ユーザーの使用する記録剤が多様化している中で、状況に応じて適正な定着目標温度を決定する必要がある。本発明によれば、加熱ヒータに投入する電力を制御できる利点を用いて、所定の温度に達するのに要する総電力量を比較したり、或いは一定の電力を投入した際の到達温度を比較することにより、加熱定着装置の畜熱状態を正確に把握できるので、精度良く目標温度を決定することが可能となる。
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
(1)画像形成装置例
図1は本実施例における画像形成装置の概略構成図である。
1は感光ドラムであり、OPC、アモルファスSe、アモルファスSi等の感光材料がアルミニウムやニッケルなどのシリンダ状の基盤上に形成されている。感光ドラム1は矢印の方向に回転駆動され、まず、その表面は帯電装置としての帯電ローラ2によって一様帯電される。次に、画像情報に応じてON/OFF制御されたレーザビームによる走査露光が施され、静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置4で現像、可視化される。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法、FEED現像法などが用いられ、イメージ露光と反転現像とを組み合わせて用いられることが多い。
可視化されたトナー像は、転写装置としての転写ローラ5により、所定のタイミングで搬送された記録材P上に感光ドラム1上より転写される。ここで感光ドラム1上のトナー像の画像形成位置と記録材の先端の書き出し位置が合致するように8のセンサにて記録材の先端を検知し、タイミングを合わせている。所定のタイミングで搬送された記録材Pは感光ドラム1と転写ローラ5に一定の加圧力で挟持搬送される。このトナー像が転写された記録材Pは定着装置6へと搬送され、永久画像として定着される。
一方、感光ドラム1上に残存する転写残りの残留トナーは、クリーニング装置7により感光ドラム1表面より除去される。また、9は加熱定着装置6内に設けられた排紙センサであり、紙がトップセンサ8と排紙センサの間で紙詰まりなどを起こした際に、それを検知する為のセンサである。
(2)加熱定着装置6
図2は加熱定着装置6の概略構成模式図である。この加熱定着装置6は基本的には互いに圧接してニップ部Nを形成する定着部材(アセンブリ)10と加圧部材20よりなるフィルム加熱方式の加熱定着装置であり、定着フィルム(加熱定着装用回転体)として金属製のスリーブを用いている。
1)定着部材10
図2の断面図において、定着回転体としての定着部材10は主に加熱ヒータ11、そのヒータ11を保持する断熱ステイホルダー12、定着フィルム(金属スリーブ)13から構成される。
加熱ヒータ11は、定着フィルム(金属スリーブ)13の内面に接触することによりニップ部Nの加熱を行う。アルミナや窒化アルミ等のセラミックス基板11aの表面に、長手方向に沿ってAg/Pd(銀パラジウム)、RuO、TaN等の通電発熱抵抗層11bが、厚み約10μm、幅約1〜5mm程度でスクリーン印刷等により塗工してある。セラミックス基板11aの背面には通電発熱抵抗層11bの発熱に応じて昇温したセラミック基板の温度を検知するためのサーミスタ等の温度検知素子14が配設されている。この温度検知素子14の信号に応じて、長手方向端部にある不図示の電極部から通電発熱抵抗層に印加される電圧のデューティ比や波数等を適切に制御することで、定着ニップ内での定着温度を一定に保つ。また、加熱ヒータ11が定着フィルム(金属スリーブ)13と接する面には、フィルムが滑らかに回転可能なように薄層のガラスコートや、ポリイミド、ポリアミドイミド等の潤滑性樹脂層などの保護層15を設けている。断熱ステイホルダー12は加熱用ヒータ11を保持し、ニップ部N側とは反対方向への放熱を防ぐとともに、定着フィルム(金属スリーブ)13の回転を案内する。剛性、耐熱性、断熱性、耐磨耗性等に優れた、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等の樹脂材料により形成されている。
定着フィルム(金属スリーブ)13は、クイックスタート性とフィルムの耐久性を満足する為の強度を考慮して、総厚20μm以上200μm以下の厚みの耐熱性フィルムである。ポリイミド、ポリアミドイミド等の耐熱性樹脂、あるいは耐熱性、高熱伝導性を有するSUS、Al、Ni、Cu、Zn等の純金属あるいは合金を基層として形成されている。樹脂製の基層の場合は熱伝導性を向上させるために、BN、アルミナ、Al等の高熱伝導性粉末を混入してあっても良い。さらにオフセット防止や記録材の分離性を確保するために表層にはフッ素樹脂、シリコーン樹脂等の離型性の良好な耐熱樹脂を混合ないし単独で被覆して離型性層を形成してある。本実施例ではSUSスリーブを基層に用いた定着フィルムを用いた。
2)加圧部材20
加圧部材20は、SUS(steel use stainless)、SUM(steel use machinability)、Al等の金属製芯金21の外側にシリコンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴムあるいはシリコンゴムを発泡して形成された弾性層22からなる弾性ローラである。この上にPFA、PTFE、FEP等の離型性層23を形成してあってもよい。
3)駆動方法および定着方法
加圧部材20は上記の定着部材10の方向に不図示の加圧手段により、長手方向両端部から加熱定着に必要な定着ニップ部Nを形成するべく十分に加圧されている。そして、長手方向端部から芯金21を介して不図示の回転駆動により、矢印の方向に回転駆動される。これにより上記金属スリーブ13はステイホルダー12の外側を図の矢印方向に従動回転する。あるいは金属スリーブ13の内部に不図示の駆動ローラを設け、駆動ローラを回転駆動することにより、金属スリーブ13を回転させる。
未定着トナー画像を担持した記録剤Pは定着ニップ部N内に搬送され、加熱ヒータ11から金属スリーブ13を介して与えられる熱と加圧部材20による圧力を受けて、未定着トナーは加熱定着される。
また、加熱ヒータ11と金属スリーブ13の間には摺動性を向上するため、耐熱性グリース等の潤滑剤を介在させている。主として、耐熱性に優れたフッ素系のグリースやシリコーン系のグリースが適している。
(3)電流検知回路およびその回路を利用した制限電流制御
図3は、加熱ヒータ11と、その発熱抵抗体11bに流れる電流量を検出する電流検知回路30と、検知に基づいて温度を制御するエンジンコントローラのヒータ制御部35の関係を表す概略回路図である。
電流量を検知する方法として、いくつかの方法があるが、本実施例では位相制御方式を使用したときの電流検出方式を採用している。具体的には、ヒータ電流はカレントトランス36によって電圧に変換され、電流検知回路30に入力される。その入力電圧は、電流検知回路内の半端整流回路部31で半波整流され、次いでその出力を積分回路部32にて積分し、差動増幅回路部33にて前記の半波整流出力と積分出力の差電圧を出力する。さらにこの差電圧はピークホールド回路部34にてその最大値をホールドし、最終的にヒータ入力電流の出力値として検出されることになる。この検出値はHCRRT信号として、エンジンコントローラのヒータ制御部35にA/D入力される。
上述の電流検知方法を用いて、画像形成装置は加熱定着器のヒータ11に流れる電流が、規定の制限値を超えないように次のような電流制限制御を行っている。図4に電流制限制御の具体的な制御フローを説明する。エンジンコントローラにて、加熱ヒータへの電力供給開始の要求が発生すると(S501)、発熱体11bに所定の固定デューティDで通電を行う(S502)。ここで、位相制御の場合、下記表1のように通電デューティD(%)に対応して位相角αが予め決められており、エンジンコントローラはこのような制御表に基づいてヒータ11の制御を行う。
Figure 2006039027
加熱ヒータには固定デューティDに相当する位相角αで電流が供給される。
固定デューティDで通電している時に電流検知回路30から送られるHCRRT信号により電流値Iを検出する(S503)。固定デューティDは予め想定されている入力電圧範囲や発熱体抵抗値のバラツキを考慮して、許容電流を超えない設定とする。つまり、入力電圧が最大値、抵抗値が最小値の場合を想定して固定デューティDを設定する。
エンジンコントローラにて、検出された電流値Iと固定デューティDと予め設定されている通電可能な電流値Ilimit(以下、限界電流と呼ぶ)から、通電可能な上限の電力デューティDlimit(以下、限界デューティと呼ぶ)を算出する(S504)。電流検知回路30がエンジンコントローラ35に送る電流値が実行値の場合、Dlimitは以下の式3によって算出される。
limit=(Ilimit/I×D ・・・ (式3)
限界電流値Ilimitとしては、接続される商用電源の定格電流に対して、加熱ヒータ11以外の部分に供給される電流を差し引いた、加熱ヒータ11に供給可能な許容電流値を設定している。
エンジンコントローラ35は、予め設定した目標温度とサーミスタ14が検知する実温度との差分より、PI制御によって次回に供給する点灯デューティを決定する。ただし、ここで算出されるデューティが限界デューティDlimitを越える場合は、次回の点灯デューティはDlimitで電力を供給する(S505)。つまり、限界デューティDlimit以下のデューティでPI制御を行う。
(4)本実施例の加熱ヒータ立ち上げ制御
本実施例では、加熱ヒータ11に流れる電流を検知する電流検知回路30から決められた限界デューティDlimitを利用し、次のような方法により加熱ヒータ11の立ち上げを行う。
limitの値は入力電圧の値によって異なるが、Dlimitのデューティでヒータを点灯した場合に供給される電力は、ヒータの抵抗値が同じであれば、電圧が異なっても等しい値となる。言い換えれば、Dlimitのデューティで点灯すれば、限界電流Ilimitがヒータに流れるので、Wlimit=Ilimit ×R(ヒータ抵抗値)の電力が投入されることになる。
そこで、ヒータ立ち上げ時において、Dlimitにある割合を掛けたデューティで与えられる電力を、ヒータ立ち上げ時の電力とすれば、入力電圧が異なっても、等しい電力をヒータに投入することが可能となる。より詳しくは次の通りとする。
本実施例ではヒータの温調制御を次のようなPI制御により行っている。
D(t)=D(t)+D(t)=D(t-1)+ΔD+D(t-1)+ΔD
=D(t-1)+ΔD+ΔD=D(t-1)+2.5×e(t)+ΔD
D(t):次回に点灯するデューティ
(t):点灯デューティのうちのP(比例制御)成分
(t):点灯デューティのうちのI(積分制御)成分
e(t):(目標温度)―(実温度)
ΔD:10msec毎に毎回2.5×e(t)パーセント増減する。
ΔD:500msec連続してe(t)>0℃なら+2.5パーセント。
連続してe(t)<0℃なら−2.5パーセント。
それ以外のタイミングでは増減無し。
ここで、ヒータ立ち上げ開始時(t=0)においては、定着目標温度までの迅速な立ち上げを可能にする為、予めI成分(DIt=0:初期オフセットデューティと呼ぶ)によって与えられる電力を、初期オフセット電力(WIt=0)として投入する。本実施例では、デューティDIt=0を次に示す式4のように決定する。また初期オフセット電力(I成分)として与えるのは、実温度が目標温度に近づいた時に、P成分(比例制御成分)によって電力を減じ、オーバーシュートを抑える為である。
It=0=Dlimit×A (%) ・・・ (式4)
A:任意の掛け率
(5)従来例との比較
初期オフセットデューティを上述のように決定することで、従来からのヒータ立ち上げ方法と比較して優れている点について述べる。
本実施例の具体例として、許容限界電流Ilimit=11A(アンペア)、加熱ヒータ11の抵抗値を9Ωとした場合に、入力電圧が100V〜140Vまで振れた際の限界デューティDlimit、そのときの初期オフセットデューティDIt=0、および初期オフセット電力WIt=0について、以下の表2に示す。ここでは限界デューティDlimitの掛け率(上式の定数A)は0.7を用いた。また、比較例として、従来の方法で加熱ヒータ立ち上げ制御を行った場合の初期オフセット電力を入力電圧ごとに記した。従来方法は、入力電圧によらず、初期オフセットデューティDIt=0を一定の50%としている。
Figure 2006039027
表2より明らかなように、限界デューティDlimitの70%の掛け率を初期オフセットデューティDIt=0とすることで、入力電圧が異なっても初期オフセット電力WIt=0を一定にできる。図5にヒータ立ち上げ時のヒータサーミスタ温度の推移を示すが、本実施例を表す実線(a)は目標温度(点線)に対しての追従性がよい。一方で、従来のように入力電圧が異なっても初期オフセットデューティDIt=0が一律に等しい場合では、入力電圧が100〜110Vと低い場合は表2よりオフセット電力が低くなる為、記録材が定着ニップに到達しても、目標温度に達しなかったり、記録材がニップに突入した瞬間にヒータ温度が急激に下がったりするような不具合が発生する(図5の一点鎖線(c)に示す)。また、入力電圧が130〜140Vと高くなると、初期オフセット電力が高すぎる為、ヒータの温度が大きくオーバーシュートするような不具合が出る他、オフセット電力が急に下がらないので目標温度に収束するのに時間がかかる(図5の破線(b)に示す)。本実施例では、入力電圧によらず、立ち上げ時の電力を一定にコントロールができるので、このような不具合を防ぐことができる。
また、本実施例において、初期オフセットデューティDIt=0を限界デューティDlimitの70%と決めたのは次のような理由による。すなわち、本実施例に具備された加熱定着器の場合、220℃の目標定着温度でプリントを行っている時の電力は850W〜1050Wである。例えば、記録材の種類がラフ紙など表面性の粗い場合は、通紙中電力は約850Wであり、最も一般的に用いられる表面の平滑な普通紙であれば950W、また厚紙など多くの電力を必要とする紙であれば1050Wとなる。一般的に、フィルム加熱方式の加熱定着装置において、PI制御を行う場合、記録剤が定着ニップに突入する時の初期オフセット電力(I成分:積分制御)は全点灯デューティに対して、7〜8割くらいを占めるように設定し、残りの2〜3割分をP成分(比例制御)で補うのが、目標温度に対する実温度の追従性が最も良いことが実験的に分かっている。そこで本実施例の場合では、850W〜1050Wの通紙中電力に対して8割の電力を想定した場合、680W〜840Wとなるので、その中心値を採用し初期オフセット電力が760W程度になるように設定した。
(6)本実施例の最良の実施形態
上記(5)に説明したように、立ち上げ時の初期オフセット電力を常に760Wになるように設定しても、定着器の条件や定着モードによっては、そのオフセット電力が過剰であったり、不十分であったりする場合がある。例えば、定着器が室温状態から定着目標温度まで立ち上げるのに最適な電力と、定着器が連続プリント後などでかなり温まった状態から立ち上げるのに必要な電力を比較すると、後者の方が定着器の畜熱量が多く、また定着目標温度も低く設定できるので、当然ながら電力は少なくてよい。また、画像形成装置によっては、多様な記録剤に対して良好な定着画像を得る為に、定着目標温度を低くしたり、同時に画像形成装置のプロセススピードを減速させて画質を向上させるような複数のモードを有する場合が多い。このようなケースでも、定着目標温度がモードによって変われば、それぞれに最適な電力も変化させた方が望ましい。
そこで、定着目標温度に応じて、限界デューティDlimitの掛け率Aを変化させ、目標温度に応じて最適な初期オフセット電力WIt=0を供給することで対応する。以下に本実施例で用いた、初期オフセット電力WIt=0の決定法を示す。エンジンコントローラ35がプリント信号を受信し、次回プリント時の定着目標温度をT℃、そのときの限界デューティをDlimitとするとき、ヒータ立ち上げ時の初期オフセットデューティDIt=0は次式5のように決定する。
It=0=Dlimit×(αT+β) ・・・ (式5)
(αT+β)が、掛け率Aに相当する項であり、α、βは任意の定数である。α、βは定着器の特性によって、目標温度に応じて最適な掛け率が得られるように決定すればよい。本実施例では、α=0.005、β=−0.4とした。そのときの掛け率Aと初期オフセットデューティおよび初期オフセット電力の関係を下記表3に示す。ここでは入力電源電圧を120V、ヒータ抵抗値を9Ωとした場合について計算している。
Figure 2006039027
表3で与えられる初期オフセット電力に従って、加熱ヒータを異なる目標温度(220℃、200℃、180℃)で立ち上げた場合のヒータサーミスタの温度推移を図6に示す。図6より明らかなように、異なる目標温度に対して、最適な初期オフセット電力を供給できるので、オーバーシュートや電力不足のない精度の良い温調制御が可能となっている。なお、図6では、目標温度に対して、ヒータの立ち上げ角度(傾き)が異なっているが、実際には制御上ヒータの立ち上げの傾きは目標温度に寄らず一定に設定している。しかしながら、表3に従って、立ち上げ時の初期オフセット電力を可変としている為、P制御(比例制御)により目標温度に対して電力を補正しても、実際には目標温度が低い方が立ち上げの傾きは緩やかになる。
また、エンジンコントローラ35がプリント信号を受信した時に、定着目標温度を決定する方法としては、何らかの手段で定着器の温まり具合を検知し、検知結果に応じて目標温度を決定する方法が一般的である。本実施例では、加熱ヒータ11の温度を検知するサーミスタ14の温度によって簡易的に検知しているが、別の方法として加圧ローラ20の温度をモニターする非接触式の温度センサ等により検知を行っても良い。
さらに、次回のプリントジョブがスタートする直前のジョブにおいて、例えば封筒やB5サイズ紙等の小サイズ紙が通紙された場合は、加圧ローラ20の非通紙域が端部昇温する。このようなケースでは、エンジンコントローラのヒータ制御部35が直前の通紙情報により、端部昇温が大きいと判断される場合に限って、初期オフセットデューティを一定の割合で減じるような措置を行うと良い。同様な対応は、例えば画像形成装置内の紙詰まりを除去する為に、ユーザーがプロセスカートリッジの脱着を行った後に、加熱定着装置が前多回転等の行為を行って、加圧ローラ20が昇温している状態においても同様の対応が可能である。また、画像形成装置が装置の設置場所の温度や湿度を検知する為の環境検知センサを設けているような場合、それぞれの環境に応じて、高温環境であれば一定のデューティを減じ、低温環境であれば、一定のデューティを増やす等の対応が可能である。
(7)他の実施形態
(初期オフセット電力の決定方法)
本実施例では、限界デューティDlimitに所定の掛け率を掛けることによって、所望のオフセット電力を与えるデューティを決定しているが、本発明の目的を達成する為には、ある電流値Iを流す時に必要なデューティDが電流検知回路30により検知できれば、ヒータ立ち上げ時に投入したい電流量(=電力)Iに相当するデューティDは次式6によって決定できる。
=(I/I×D ・・・ (式6)
従って、電流検知回路30により必ずしも限界デューティDlimitを求める必要はなく、投入電流(=電力)を制御する目的の為に設置されていてもよい。
(入力電源電圧を検知する場合)
これまでに述べた例では、電流検知回路30によって、固定デューティDを投入した際の電流値Iを検知することで、式1から限界デューティDlimitを算出している。電流検知回路の替わりに例えば入力電源電圧を検知する手段を画像形成装置が具備していれば、検知電圧値Vを用いて、
limit=(Ilimit×R/V) ・・・ (式7)
R:ヒータ抵抗値
より、表2に示した、入力電圧Vと限界Dlimitの関係が得られる。ここで、Rは加熱ヒータの抵抗値である。抵抗値には製造上の公差があるので、個体の抵抗値情報を画像形成装置が有さないとDlimitは決定できない。抵抗値Rの値として設計上の抵抗中心値を代用した場合、ある個体で実際には抵抗値が中心値より小さい場合は、中心値で計算したDlimitで通電してしまうと、限界電流Ilimitよりも過剰電流が流れてしまうことになる。したがって、公差上の抵抗値下限をRの値として代用しておけば、抵抗値の値が公差内でそれより大きくなっても、限界電流を越えるような心配はない。もっとも、エンジンコントローラのヒータ制御部35が定着器ヒータの抵抗値情報を有していれば、その値をR値としてDlimitを算出すればよい。
(初期オフセット電力の投入タイミング)
本実施例では、加熱ヒータ11の立ち上げ開始から、定着目標温度に応じたオフセット電力を投入しPI制御を行っている。より立ち上げ時間を短縮する為には、例えば図7に示すように、限界デューティDlimitで与えられる許容最大電力でヒータを立ち上げることも可能である。この場合、目標温度ぎりぎりまで限界デューティで点灯すると、オーバーシュートしてしまう為、目標温度に近づく手前にレディ温度を設け、レディ温度まで限界デューティDlimitでヒータを立ち上げ、レディ温度に到達した時点で、PI制御に移行するような立ち上げ方法であっても良い。その場合、定着目標温度に応じて決定した初期オフセットデューティは、レディ温度到達後PI制御に移行する瞬間(図7中のタイミング(A))に投入できる他、レディ温度から目標温度に向けて再立ち上げする瞬間(図7中のタイミング(B))に投入しても良く、さらには記録剤が定着器に突入する瞬間(図7中のタイミング(C))に投入することも選択できる。
本発明の第2の実施例を説明する。本実施例を代表する画像形成装置および加熱定着装置は実施例1と同様である為省略する。実施例1では、定着器の温まり具合によって目標温度を設定し、その目標温度に対応した初期オフセット電力をヒータ11の立ち上がり時に投入する。また初期オフセット電力は入力電源電圧の値によらず一定となるように制御を行っている。さらに、目標温度の決定方法としてヒータ駆動前のヒータ温度を検知するサーミスタ14の温度により定着器の温まり具合を判断し、その結果によって目標温度を決定している。あるいは、加圧ローラ表面の温度を非接触式の温度センサ等により検知し、その結果から目標温度を決定している。
しかしながら、これらの温度条件だけで目標温度を決めると、例えば直前のプリントジョブで通紙された記録材の枚数が異なれば、定着器全体の畜熱量が異なる。また、画像形成装置の設置環境によっては、スタンバイ中における定着器の冷え方も異なるので、次回のプリントジョブに対して精度の良い目標温度を決定することは困難である。様々な状況に応じて場合分けをし、制御する方法も考えられるが、操作が煩雑になり誤動作や誤検知を招く原因にも繋がる。ユーザー使用する記録材が多様化し、画像形成装置がより高速化する中で、条件に応じて適切な目標温度を決定することがますます重要になってきている。
そこで実施例2では、本発明で使用する画像形成装置が電流検知回路30を元にして電力を制御できることに着目し、次のような方法によって適切な定着目標温度の設定を行う。
図8に本実施例におけるヒータ立ち上げ方法について説明する。図8(a)に立ち上げ時におけるサーミスタ温度のプロファイルを、(b)に制御フローチャートを示す。なお、電流検知回路30を用いて限界デューティDlimitを決定するまでの過程(S501〜S504)は実施例1と同様である為省略する。エンジンコントローラのヒータ制御部35がプリント信号を受け、ヒータの駆動を開始すると、まずヒータ11にDlimitに一定の掛け率を掛けたデューティ(一次デューティ=Dと呼ぶ)でヒータを点灯し立ち上げる(S601)。ここではDlimitに80%の掛け率を乗じた。一次デューティDはオフセット電力として投入するのではなく、実際の投入電力として点灯させ、PI制御は行わない。予め設定したレディ温度(=TRD)まで、一次デューティDでヒータを立ち上げる(S601)。ここではTRD=190℃と設定する。
定着器が室温状態に冷えた状態であれば、レディ温度(=190℃)に達するまで時間がかかり、ヒータオンからレディ温度到達までに投入した総電力量は多くなる。また反対に、定着器が十分に畜熱した状態であれば、レディ温度到達までの時間は短くなる。そこで、ヒータオンからレディ温度到達までの時間tRDを検知し、tRDの長さに応じて定着器の温まり具合を判断し定着目標温度を決定する(S602〜S603)。具体的にはヒータオンからレディ温度TRD到達までの時間が3.5秒未満であれば目標温度を200℃、3.5秒以上4.5秒未満であれば210℃、4.5秒以上であれば220℃と設定した。定着目標温度が決まれば、実施例1の表3に示す適切なオフセット電力が決まる(S604)。レディ温度に到達後ヒータはその温度を維持するためにPI制御に移行し、記録剤がニップに到達するタイミングに、レディ温度から定着目標温度に再立ち上げを行う。このタイミングに目標温度に応じたオフセット電力をI成分として再投入する(S605)。なお本実施例では一次デューティDを限界デューティDlimitの80%と決めたが、レディ温度までの立ち上がり時間をより短縮させたい場合は掛け率を増加させても良い。あるいは、レディ温度到達時のオーバーシュートを抑制する為には掛け率を減少させても良い。
(実施例1との比較)
実施例1のように、ヒータ11の温度を検知するサーミスタ14によってプリント開始前のヒータ温度から、目標温度を決定する場合において、[1]定着器が冷めた状態から、1回目のジョブにおいて3枚の連続プリントを行い、ジョブ終了後ヒータの点灯が切れて10秒後のサーミスタ温度が80℃である場合と、[2]同じく1回目のジョブにおいて50枚の連続プリントを行い、ジョブ終了後40秒が経過してサーミスタ温度が80℃である場合について、次回プリントジョブにおける定着目標温度を同じように200℃と設定した場合の定着後画像について比較を行った。画像の比較はハーフトーン画像を印字させ、印字面を手で擦った際の画像の定着度合いで比較してみた。結果は、[2]のほうは十分に定着して剥がれや擦れは無いのに対して、[1]の定着画像はハーフトーンが剥がれ、定着性が弱くなっていた。
これら[1]、[2]のケースにおいて、実施例2のヒータ立ち上げ制御を行った場合、[1]のケースでは2回目のジョブにおいてヒータオンからレディ温度までにかかった時間は4.1秒であった。一方[2]のケースでは、レディ温度までの時間は3.2秒である。これらは定着器の畜熱状態の違いによる。図8(b)に示したフローチャートより、[1]のケースでは2回目のジョブの目標温度は210℃と判断され、[2]のケースでは200℃と判断される。それぞれの場合において、プリント後の定着画像を比較すると、両者とも良好な定着性を示した。
このように、一定の電力を投入し、レディ温度に到達するまでの時間に応じて目標温度を決定することにより、定着器の畜熱度合いを正確に検知できるので、正確な目標温度設定が可能となる。
また、ユーザーが選択する定着モードや、通紙する記録剤の種類によっては、定着目標温度が上記に設定した190℃よりも低くなる場合もある。このようなケースでは、レディ温度を低く設定し、且つレディ温度までに投入する一次デューティの掛け率を低く設定すればよい。
さらに、一定電力をある所定の時間投入したときに到達する温度によって、目標温度を決定するような制御を行っても同様の効果を得ることができる。
(実施例2の他の実施形態)
上記例では、ヒータ11の立ち上げ時において、レディ温度まで一定の電力を投入して、レディ温度到達時間までの時間を比較することによって目標温度を決定したが、例えば、ヒータオンから、所定の初期オフセット電力を投入して、PI制御によってレディ温度まで立ち上げた場合でも、レディ温度に達するまでにヒータ11に投入した総電力量を検知し、総電力量を比較することで目標温度を決定しても同様の効果を得ることができる。つまり、ヒータオンからPI制御を開始し、実際にヒータを点灯しているデューティを積算すれば、総電力量としてどれだけ投入されたかが把握できる。その結果、定着器が冷めた状態であれば、レディ温度までに投入される総電力量が多くなるので、その場合は目標温度を高く設定し、逆にレディ温度に到達するまでに投入される総電力量が少なければ、目標温度を低く設定すればよい。
本発明の画像形成装置を表す概略断面図である。 本発明の加熱定着装置を表す概略断面図である。 本発明の加熱ヒータと電流検知回路の構成を表す概略回路図である。 本発明の電流検知回路によるヒータ点灯限界デューティDlimitを算出するフローチャートである。 実施例1のヒータ立ち上げ方法と従来方法を比較するヒータ温度のプロファイルである。 実施例1の最良の形態を示すヒータ温度のプロファイルである。 実施例1の他の実施形態を示すヒータ温度のプロファイルである。 実施例2のヒータ立ち上げ方法を示すヒータ温度のプロファイルである。 実施例2のヒータ立ち上げ方法を説明するフローチャートである。
符号の説明
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
3 スキャナー
4 現像装置
5 転写ローラ
6 加熱定着装置
7 クリーニング装置
8 トップセンサ
9 排紙センサ
10 定着部材
11 加熱ヒータ
11a セラミック基板
11b 通電発熱抵抗層
12 ステイホルダー
13 定着フィルム(金属スリーブ)
14 温度検知素子(サーミスタ)
15 保護層
20 加圧ローラ(加圧部材)
21 芯金
22 弾性層
23 フッ素樹脂離型層
30 電流検知回路
31 半波整流回路部
32 積分回路部
33 差動増幅回路部
34 ピークホールド回路部
35 エンジンコントローラのヒータ制御部
36 カレントトランス
P 記録材
L レーザー光

Claims (9)

  1. 加熱ヒータを有する加熱部材と、加圧部材とが互いに圧接して形成される定着ニップ部に、未定着トナー像が保持された記録剤を通過させて加熱定着する画像形成装置において、
    該画像形成装置は、加熱ヒータに投入する電力を制御する電力制御手段と、
    加熱ヒータの温度を検知する温度検知手段を有し、
    記録剤の加熱定着を行う際の定着目標温度に応じて、加熱ヒータの立ち上げ時に投入する電力を変化させることを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記電力制御手段は、加熱ヒータに流れる電流値を検知する電流検知手段であり、
    加熱ヒータ立ち上げ時に投入する電力は、定着目標温度に応じて予め設定した電流値に相当するデューティにより決定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 前記電力制御手段は、入力電源電圧を検出する電圧検知手段であり、
    加熱ヒータ立ち上げ時に投入する電力は、検知した入力電圧値と定着目標温度に応じて予め設定したデューティにより決定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  4. 前記加熱ヒータは、PI制御あるいはPID制御によって制御され、加熱ヒータ立ち上げ時に変化させる電力は、PI制御あるいはPID制御のI制御成分(積分制御成分=オフセット電力)として投入させることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の画像形成装置。
  5. 前記定着目標温度は、加熱ヒータ立ち上げ前のヒータ温度検知手段の検知温度に応じて決定することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の画像形成装置。
  6. 前記加熱ヒータ立ち上げ時において、まず最初に一定の固定電力をヒータに投入し、定着目標温度より低い温度で設定したレディ温度(待機温度)までヒータを立ち上げ、レディ温度までの立ち上がり時間に応じて定着目標温度を決定し、その定着目標温度に対応した電力を、レディ温度からの再立ち上げ時に投入することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の画像形成装置。
  7. 前記画像形成装置は、所定のタイミングから通電した電力を積算する手段を有し、
    前記加熱ヒータ立ち上げ時において、定着目標温度より低い温度で設定したレディ温度(待機温度)までヒータを立ち上げ、立ち上げ開始からレディ温度到達までに投入した積算電力量に応じて、定着目標温度を決定し、その定着目標温度に応じた電力を、レディ温度からの再立ち上げ時に投入することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の画像形成装置。
  8. 前記加熱定着装置は、スタンバイ中に加熱ヒータに通電を行わず、クイックスタート性に優れた構成であることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の画像形成装置。
  9. 前記加熱定着装置の定着部材は、可撓性の薄肉定着フィルムを有する、フィルム加熱方式の加熱定着装置であることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
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